以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」とは、その注記された方向を指す。
<印刷装置の概略構成>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態の印刷装置の概略構成について説明する。
<筐体>
図1〜図4に示すように、本実施形態の印刷装置1は、装置外郭を構成する筐体2を有する。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9とを備える。
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3(収納部に相当)と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4とが備えられている。
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に位置する回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
第1開閉カバー8aの内部には、印字ヘッド11(詳細は後述)を備えたヘッド保持体10が設けられている。そして、第1開閉カバー8aは、回動軸心K1まわりに回動することで、印字ヘッド11を、筐体本体2aに設けられた搬送ローラ12(詳細は後述)に対し離反・近接可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、印字ヘッド11が搬送ローラ12に対し近接した閉じ位置(図1及び図2の状態)から、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離反した開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
第2開閉カバー8bは、第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられ、筐体本体2aの後方側の上端部に位置する回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
そして、これら第1及び第2開閉カバー8a,8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、第1開閉カバー8aの外周部18と第2開閉カバー8bの縁部19とが略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に位置する回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
<粘着テープロール及びその周辺>
このとき、図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方に位置する第1所定位置13には、テープカートリッジTKが着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された粘着テープロールR1(被印字テープロールに相当)を備える。図5に、テープカートリッジTKの詳細構造を示す。
図5に示すように、テープカートリッジTKは、上記粘着テープロールR1と、連結アーム16とを備える。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備える。
第1ブラケット部20,20は、粘着テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では粘着テープロールR1を巻芯39(第1巻芯に相当。図2参照)のまわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により粘着テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
粘着テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際に回転自在となる。粘着テープロールR1は、繰り出しにより消費される粘着テープ150(被印字テープに相当)を、予め上記巻芯39の外周部に巻回している。
図2に示すように、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着により、粘着テープロールR1が上方から受け入れられ、粘着テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、粘着テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、粘着テープ150を繰り出す。
本実施形態では、粘着性を備えた被印字テープである上記粘着テープ150が用いられる場合を例示している。すなわち、粘着テープ150は、被印字層154、基材層153、粘着剤層152、及び剥離材層151が、厚さ方向一方側(図2中の部分拡大図中の上方側)から他方側(図2中の部分拡大図中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。被印字層154は、上記印字ヘッド11によるインクの熱転写により所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材層151は、粘着剤層152を覆う層である。
<搬送ローラ及び印字ヘッド>
図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける第1及び第2収納部3,5の中間上方側には、上記搬送ローラ12が設けられている。搬送ローラ12は、筐体本体2aの内部に設けられた、例えばパルスモータである搬送用モータM1によりギア機構(図示省略)を介して駆動されることで、第1収納部3に収納された粘着テープロールR1から繰り出される粘着テープ150に接触しつつ、当該粘着テープ150を幅方向(テープ幅方向)が左右方向となる姿勢で搬送する。
また、上述のように、第1開閉カバー8aに設けられた上記ヘッド保持体10には、上記印字ヘッド11が備えられている。印字ヘッド11は、上述したように、第1開閉カバー8aが回動軸心K1まわりに回動することで、搬送ローラ12に対し離間・近接可能である。すなわち、第1開閉カバー8aが閉じ状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12に近接し、第1開閉カバー8aが開き状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離間する。この印字ヘッド11は、搬送ローラ12により搬送される粘着テープ150を当該搬送ローラ12と協働して挟持するように、ヘッド保持体10のうち閉じ状態での第1開閉カバー8aにおいて搬送ローラ12の上方に対向する位置に配置されている。したがって、第1開閉カバー8aが閉じ状態である場合には、印字ヘッド11と搬送ローラ12とは、上下方向に対向して配置される。そして、印字ヘッド11は、搬送ローラ12との間に挟まれた状態の粘着テープ150の上記被印字層154に対し、後述のインクリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて、公知の手法により、予め設定された所定の印刷速度(例えば粘着テープ150の搬送速度(テープ搬送速度)と同期した印刷速度)で所望の印字(上記印字部155)を形成し、印字済み粘着テープ150′(印字済みテープに相当)とする。
<インクリボンカートリッジ>
図2及び図3に示すように、筐体本体2aにおける閉じ状態での第1開閉カバー8aの下方でかつテープカートリッジTKの上方となる第2所定位置14には、インクリボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。図6に、インクリボンカートリッジRKの詳細構造を示す。
図2、図3、及び図6に示すように、インクリボンカートリッジRKは、カートリッジ筐体80と、印字ヘッド11による印字形成を行うための未使用のインクリボンIBを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールR4と、リボン巻き取りロールR5とを備える。カートリッジ筐体80は、後方側の繰り出しロール収納部81と、前方側の巻き取りロール収納部82と、連結部83とを有する。連結部83は、リボン繰り出しロールR4から繰り出されたインクリボンIBをカートリッジ筐体80外に露出させるようにしつつ、巻き取りロール収納部82と繰り出しロール収納部81とを連結する。
繰り出しロール収納部81は、略半円筒の上部81aと、下部81bとが組み合わされることにより構成されている。リボン繰り出しロールR4は、繰り出しロール収納部81内において回転自在に支持され、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のD方向)に回転することで、インクリボンIBを繰り出す。
巻き取りロール収納部82は、略半円筒の上部82aと、下部82bとが組み合わされることにより構成されている。リボン巻き取りロールR5は、巻き取りロール収納部82内において回転自在に支持され、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のE方向)に回転することで、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。
すなわち、リボン繰り出しロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、印字ヘッド11と搬送ローラ12との間に挟まれた状態の粘着テープ150のさらに印字ヘッド11側に配置されて印字ヘッド11の下方に接触する。そして、印字ヘッド11からの加熱によりインクリボンIBのインクが、粘着テープ150の被印字層154に転写されて印字形成が実行された後、使用済みのインクリボンIBが、リボン巻き取りロールR5に巻き取られる。
<剥離材ロール及びその周辺>
図2及び図5に示すように、テープカートリッジTKの上記連結アーム16は、例えば略水平なスリット形状を含む引き剥がし部17を備える。引き剥がし部17は、粘着テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済み粘着テープ150′から、剥離材層151を引き剥がす部位である。上述のようにして印字が形成された印字済み粘着テープ150′は、引き剥がし部17により剥離材層151が引き剥がされることで、剥離材層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済み粘着テープ150″(印字済みテープに相当)とに分離される。
テープカートリッジTKは、上述のようにして引き剥がされた剥離材層151が巻芯29の外周部に順次巻回されることでロール状に形成される、剥離材ロールR3を有する。すなわち、テープカートリッジTKの装着により、剥離材ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、印字済み粘着テープ150″の巻回の軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、巻芯29は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離材層151を巻き取る。
このとき、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、剥離材ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では巻芯29(言い換えれば剥離材ロールR3)を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、テープカートリッジTKにおける後方側の上記第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
なお、図5中では、巻芯29の外周部に剥離材層151が巻回されて剥離材ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、剥離材層151のテープ幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形のロールフランジ部f3,f4を図示すると共に、便宜的に剥離材ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
<印字済み粘着テープロール及びその周辺>
一方、図2及び図4に示すように、上記第3収納部4には、印字済み粘着テープ150″を外周部に順次巻き取ってロール状とする巻芯41(第2巻芯に相当)を備えた巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済み粘着テープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、上記巻芯41が軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻取用モータM2(巻芯駆動手段に相当)によりギア機構(図示省略)を介して巻芯41が駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済み粘着テープ150″を巻芯41の外周部に順次巻き取って積層する。これにより、巻芯41の外周部に印字済み粘着テープ150″が順次巻回されてロール状とされることで、印字済み粘着テープロールR2が形成される。
<カッター機構>
また、図2に示すように、粘着テープ150の搬送方向(テープ搬送方向)に沿って印字ヘッド11の下流側でかつ印字済み粘着テープロールR2の上流側には、カッター機構30(切断手段に相当)が設けられている。
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有する。そして、カッターモータMC(後述の図7参照)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済み粘着テープ150″をテープ幅方向に切断する。
<印刷装置の概略動作>
次に、上記構成の印刷装置1の概略動作について説明する。
すなわち、第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、第1収納部3に粘着テープロールR1が収納され、第2収納部5に剥離材ロールR3を形成するための巻芯29及びロールフランジ部f3,f4等が収納される。また、第3収納部4には、印字済み粘着テープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
この状態で、操作者が、粘着テープ150から剥離材層151を手動で引き剥がし、被印字層154、基材層153、及び粘着剤層152からなるテープの先端を、巻き取り機構40の巻芯41に取り付ける。そして、搬送ローラ12が駆動されると、第1収納部3に収納された粘着テープロールR1の回転により繰り出される粘着テープ150が、前方側へ搬送される。そして、搬送される粘着テープ150の被印字層154に対し、印字ヘッド11により所望の印字部155が形成されて印字済み粘着テープ150′となる。印字形成された印字済み粘着テープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離材層151が引き剥がされて印字済み粘着テープ150″となる。引き剥がされた剥離材層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻芯29の外周部に巻回されて剥離材ロールR3が形成される。
一方、剥離材層151が引き剥がされた印字済み粘着テープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の巻芯41の外周部に巻回されて印字済み粘着テープロールR2が形成される。その際、テープ搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が、印字済み粘着テープ150″を切断する。これにより、操作者の所望のタイミングで、巻芯41により巻き取られる印字済み粘着テープ150″を切断し、切断後は印字済み粘着テープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。なお、この切断後において、印字済み粘着テープロールR2に巻回されている印字済み粘着テープ150″が、各請求項記載の印刷物に相当する。
なお、図示による説明を省略するが、印字済み粘着テープ150′から剥離材層151を引き剥がすことなく、巻き取り機構40の巻芯41の外周部に、剥離材層151を含む印字済み粘着テープ150′が巻回されることで、印字済み粘着テープロールR2が形成されてもよい。
また、図示による説明を省略するが、ロールR1に、粘着性を備えない被印字テープである非粘着テープ(上記粘着剤層152及び剥離材層151のないもの)が巻回されていてもよい。この場合においても、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着により、非粘着テープが巻回されたロールR1が上方から受け入れられ、非粘着テープの巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、ロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、非粘着テープを繰り出す。
このとき、非粘着テープ(又は上記粘着テープ150でもよい)の搬送経路を、ロールR2へ向かう側と排出口(図示省略)へ向かう側との相互間で切り替える、シュート15(図2参照)が配設されてもよい。すなわち、切替レバー(図示省略)によるシュート15の切替操作により上記搬送経路を切り替えることで、印字形成後の非粘着テープ(又は上記印字済み粘着テープ150′、又は上記印字済み粘着テープ150″)を第3収納部4内において巻回することなく、筐体2の例えば第2開閉カバー8b側に設けた排出口(図示省略)から、そのまま筐体2外部へ排出してもよい。
<印刷装置の制御系>
次に、図7を参照しつつ、印刷装置1の制御系について説明する。
図7に示すように、印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213及びROM214(記憶手段に相当)に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それにより印刷装置1全体の制御を行う。
また、CPU212は、上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記印字ヘッド11の発熱素子(図示省略)の通電制御を行う印字ヘッド制御回路221と、上記カッターモータMCの駆動制御を行うモータ駆動回路222と、適宜の表示を行う表示部215と、操作者が適宜に操作入力可能な操作部216とに接続されている。また、CPU212は、この例では外部端末としてのPC217に接続されるが、印刷装置1が(いわゆるオールインワンタイプで)単独で動作する場合には、外部端末に接続されなくてもよい。
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラム(後述の図12及び図13のフローチャートに示す処理を実行するプログラムを含む)が記憶されている。なお、後述の図10に示す補正量テーブルも、このROM214に記憶されている。
RAM213には、例えば操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データを、上記粘着テープ150の被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータ(1つの単位印字データ)に展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、上記制御プログラムに基づき、搬送ローラ12により粘着テープ150を搬送しつつ、イメージバッファ213aに記憶されたドットパターンデータに対応した1つのイメージ(単位印字イメージ)を、印字ヘッド11により粘着テープ150の被印字層154に対し繰り返し印刷する。
<本実施形態の特徴>
以上のように構成された本実施形態の特徴は、何らかの理由で搬送ローラ12と粘着テープ150との間に滑りが生じ得る場合であっても、テープ搬送速度が増大するのを防止し、印字品質の低下を防止する手法にある。以下、その詳細を、順を追って説明する。
<駆動トルク制御>
上述したように、粘着テープロールR1から繰り出された粘着テープ150は、搬送用モータM1により駆動される搬送ローラ12により搬送される。そして、所定の印刷速度で印字ヘッド11が粘着テープ150の被印字層154に対し所望の印字部155を形成することで、印字済み粘着テープ150′が生成される。その後、印字済み粘着テープ150′から剥離材層151が引き剥がされて生成された印字済み粘着テープ150″が、粘着巻取用モータM2により駆動される巻芯41の外周部に順次巻き取られることで、印字済み粘着テープロールR2が形成される。
上記のような搬送・巻き取り挙動において、粘着テープ150には、搬送ローラ12が接触して搬送するときの力と、巻芯41により巻き取りが行われるときの力との両方が作用する。本実施形態においては、これら2つの力のバランスを取りつつ円滑な搬送及び巻き取りが行われ、上記所定の印刷速度が実現するように、CPU212が、公知の手法により(印字ヘッド制御回路221を介した印字ヘッド11の駆動制御と同期する形で)モータ駆動回路219を介して粘着巻取用モータM2を駆動制御する。このときの粘着巻取用モータM2の駆動トルクは、モータ駆動回路219により、搬送ローラ12と粘着テープ150との間に滑りがない場合に対応した(=すなわち理論値である)所定の駆動トルク(第1駆動トルクに相当。以下適宜「第1駆動トルク」という)となるように制御される。具体的には、モータ駆動回路219により、粘着巻取用モータM2に対する定トルク制御が行われる。以下、図8を参照しつつ、この定トルク制御について説明する。
<定トルク制御>
図8に示すように、CPU212は、3つの通信用ポートPORT1,PORT2,PORT3を備え、これら通信用ポートPORT1,PORT2,PORT3を介してモータ駆動回路219の3つの入力端子IN1,IN2,IN3にそれぞれ信号を送る。
また、モータ駆動回路219は、2つの出力端子OUT1,OUT2を備える。出力端子OUT1は、粘着巻取用モータM2の一方の極性に接続されており、出力端子OUT2は、粘着巻取用モータM2の他方の極性に接続されている。
そして、CPU212は、ハイレベル信号H又はローレベル信号Lを、通信用ポートPORT1を介してモータ駆動回路219に送信し、モータ駆動回路219は、当該ハイレベル信号H又はローレベル信号Lを、入力端子IN1を介して入力する。また、CPU212は、ハイレベル信号H又はローレベル信号Lを、通信用ポートPORT1とは逆のレベルで、通信用ポートPORT2を介してモータ駆動回路219に送信し、モータ駆動回路219は、当該ハイレベル信号H又はローレベル信号Lを、入力端子IN2を介して入力する。
例えば、CPU212がハイレベル信号Hを通信用ポートPORT1を介してモータ駆動回路219に送信すると共にローレベル信号Lを通信用ポートPORT2を介してモータ駆動回路219に送信し、モータ駆動回路219がハイレベル信号Hを入力端子IN1を介して入力すると共にローレベル信号Lを入力端子IN2を介して入力することで、粘着巻取用モータM2が正転方向に回転する。
一方、CPU212がローレベル信号Lを通信用ポートPORT1を介してモータ駆動回路219に送信すると共にハイレベル信号Hを通信用ポートPORT2を介してモータ駆動回路219に送信し、モータ駆動回路219がローレベル信号Lを入力端子IN1を介して入力すると共にハイレベル信号Hを入力端子IN2を介して入力することで、粘着巻取用モータM2が逆転方向に回転する。
また、CPU212は、電圧設定された電圧指令値Vref(指令値に相当。例えば0〜3[V])を、通信用ポートPORT3を介してモータ駆動回路219に送信し、モータ駆動回路219は、当該電圧指令値Vrefを、入力端子IN3を介して入力する。これにより、モータ駆動回路219は、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、入力された電圧指令値Vrefに対応した一定値とする定トルク制御を行う。なお、この定トルク制御を実行するモータ駆動回路219が、各請求項記載の定トルク制御手段として機能する。このとき、モータ駆動回路219に入力される電圧指令値Vrefの値は、CPU212により、上記第1駆動トルクに対応した所定の電圧指令値(第1指令値に相当。以下適宜「第1電圧指令値」という)となるように制御される。すなわち、モータ駆動回路219は、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、入力された第1電圧指令値に対応した一定値とするような定トルク制御を行う。
<搬送ローラと被印字テープとの間の滑り>
ここで、上記のような第1電圧指令値を用いた定トルク制御が行われる場合であっても、何らかの理由で搬送ローラ12と粘着テープ150との間に滑りが生じることがあり得る。
例えば粘着テープロールR1における粘着テープ150の残量(テープ残量)が比較的多い場合には、当該粘着テープロールR1の外径側から比較的小さい力で粘着テープ150を引き出すことができることから、搬送ローラ12との間にテープ進み方向(テープ搬送方向下流側に対応する方向)への滑りが生じやすい。また例えば粘着テープ150の幅(テープ幅)が比較的狭い場合には、駆動される巻芯41による巻き取り力が印字済み粘着テープ150″の狭い範囲に集中することから、上記同様、搬送ローラ12との間にテープ進み方向への滑りが生じやすい。また例えば粘着テープ150の種類(テープ種類)が布等の摩擦係数が比較的小さいものである場合には、接触する搬送ローラ12との間にテープ進み方向への滑りが生じやすい。また例えば巻芯41の外径が比較的小さい場合には、上記巻芯41による巻き取りが行われるときに印字済み粘着テープ150″に与える張力が大きくなることから、上記同様、搬送ローラ12との間にテープ進み方向への滑りが生じやすい。
これらの場合、上記テープ進み方向への滑りが生じることで、本来同期しているはずの印刷速度とテープ搬送速度とにおいて、テープ搬送速度の方が若干速くなる。この結果、上記テープ進み方向への滑りが生じているときは、例えば図9(a)(b)に対比させて示すように、本来の印字形成態様(図9(a)参照)に比べ、テープ搬送方向に間延びした態様で印字が形成され(図9(b)参照)、いわゆる印字長が長くなる。図9(a)(b)に示す例では、「D−TEC」のテキストを含む1つの単位イメージの長さが、△Lだけ長くなっている。
<電圧指令値の補正>
本実施形態では、上述した第1電圧指令値を用いた定トルク制御の実行時に上記理由により上記テープ進み方向への滑りが生じる可能性に対応し、CPU212が、モータ駆動回路219に出力する電圧指令値Vrefの値を、第1電圧指令値から、上記テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径(外径寸法)に応じた、粘着巻取用モータM2の駆動トルク(第2駆動トルクに相当。以下適宜「第2駆動トルク」という)、に対応した電圧指令値(第2指令値に相当。以下適宜「第2電圧指令値」という)に補正する。具体的には、上記テープ進み方向への滑りが生じ得る場合には、電圧指令値Vrefの値は、第1電圧指令値よりも粘着巻取用モータM2の駆動トルクが小さくなるような第2電圧指令値に補正される。
<補正量テーブル>
本実施形態では、上記補正時の第1電圧指令値の補正量を得るために、上記テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径の組み合わせに応じた、第1電圧指令値の補正量、を表す補正量テーブルが、上記ROM214に記憶されている。図10に、補正量テーブルの例を示す。
図10に示す例では、テープ残量は、未使用の粘着テープロールR1における粘着テープ150の全長(すなわちテープ残量の最大値)を310[m]として、310[m]以下250[m]以上の段階(図中では煩雑防止のため「310−250」と記載)、250[m]未満200[m]以上の段階(図中では煩雑防止のため「249−200」と記載)、200[m]未満150[m]以上の段階(図中では煩雑防止のため「199−150」と記載)、150[m]未満100[m]以上の段階(図中では煩雑防止のため「149−100」と記載)、100[m]未満50[m]以上の段階(図中では煩雑防止のため「99−50」と記載)、50[m]未満0[m]以上の段階(図中では煩雑防止のため「49−0」と記載)の6段階が用意されている。また、テープ幅は、15[mm]、38[mm]、50[mm]の3種類が用意されている。また、テープ種類は、OPP材料(延伸ポリプロピレン。図中では「OPP」と記載)、PET材料(ポリエチレンテレフタラート。図中では「PET」と記載)、布材料(図中では「FAB」と記載)の3種類が用意されている。また、巻芯41の外径(図中では「巻芯外径」と記載)は、75[mm]、30[mm]の2種類が用意されている。そして、これらテープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径の組み合わせに応じて、第1電圧指令値の補正量(単位[%]。図中ではマイナスであるものは数値の前に「△」を記載)が定められている。
例えば、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には補正量は△45[%]であり、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には補正量は△40[%]であり、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には補正量は△35[%]であり、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には補正量は△30[%]であり、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には補正量は△25[%]であり、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には補正量は△20[%]である。
また例えば、テープ幅が50[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には補正量は△15[%]であり、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には補正量は△10[%]であり、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には補正量は△10[%]であり、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には補正量は△5[%]であり、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には補正量は△5[%]であり、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には補正量は△5[%]である。
また例えば、テープ幅が15[mm]で、テープ種類が布材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には補正量は△50[%]であり、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には補正量は△45[%]であり、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には補正量は△40[%]であり、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には補正量は△35[%]であり、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には補正量は△30[%]であり、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には補正量は△25[%]である。
また例えば、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が30[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には補正量は△55[%]であり、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には補正量は△50[%]であり、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には補正量は△45[%]であり、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には補正量は△40[%]であり、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には補正量は△35[%]であり、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には補正量は△30[%]である。
以下、図11を参照しつつ、上記補正量テーブル用いた第1電圧指令値の補正手法の例について説明する。図11には、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ幅が50[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ幅が15[mm]で、テープ種類が布材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が30[mm]であるときの、テープ残量、粘着巻取用モータM2の駆動トルク、及び電圧指令値Vrefの関係をグラフ化して示している。図中では、第1駆動トルクをT1、当該第1駆動トルクT1に対応した第1電圧指令値をVref1として示している。
図11に示すように、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には、補正量は△45[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を45[%]減した0.55Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には、補正量は△40[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を40[%]減した0.6Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には、補正量は△35[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を35[%]減した0.65Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には、補正量は△30[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を30[%]減した0.7Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には、補正量は△25[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を25[%]減した0.75Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には、補正量は△20[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を20[%]減した0.8Vref1を第2電圧指令値とする。
同様に、テープ幅が50[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には、補正量は△15[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を15[%]減した0.85Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合及び200[m]未満150[m]以上の場合には、補正量は△10[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を10[%]減した0.9Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合、100[m]未満50[m]以上の場合、及び50[m]未満0[m]以上の場合には、補正量は△5[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を5[%]減した0.95Vref1を第2電圧指令値とする。
また同様に、テープ幅が15[mm]で、テープ種類が布材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には、補正量は△50[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を50[%]減した0.5Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には、補正量は△45[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を45[%]減した0.55Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には、補正量は△40[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を40[%]減した0.6Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には、補正量は△35[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を35[%]減した0.65Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には、補正量は△30[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を30[%]減した0.7Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には、補正量は△25[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を25[%]減した0.75Vref1を第2電圧指令値とする。
また同様に、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が30[mm]であるとき、テープ残量が310[m]以下250[m]以上の場合には、補正量は△55[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を55[%]減した0.45Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が250[m]未満200[m]以上の場合には、補正量は△50[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を50[%]減した0.5Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が200[m]未満150[m]以上の場合には、補正量は△45[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を45[%]減した0.55Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が150[m]未満100[m]以上の場合には、補正量は△40[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を40[%]減した0.6Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が100[m]未満50[m]以上の場合には、補正量は△35[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を35[%]減した0.65Vref1を第2電圧指令値とし、テープ残量が50[m]未満0[m]以上の場合には、補正量は△30[%]であるので、第1電圧指令値Vref1を30[%]減した0.7Vref1を第2電圧指令値とする。
ここで、テープ幅以外の条件が同等の、例えば、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、及び、テープ幅が50[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるときを対比して分かるように、テープ幅が15[mm]の場合の方が、テープ幅が50[mm]の場合よりも、第2電圧指令値が小さく(言い換えれば第1電圧指令値の補正量が大きく)なるように補正されている。
また、テープ種類以外の条件が同等の、例えば、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、及び、テープ幅が15[mm]で、テープ種類が布材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるときを対比して分かるように、テープ種類が布材料の場合の方が、テープ種類がOPP材料の場合よりも、第2電圧指令値が小さく(言い換えれば第1電圧指令値の補正量が大きく)なるように補正されている。
また、巻芯41の外径以外の条件が同等の、例えば、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるとき、及び、テープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が30[mm]であるときを対比して分かるように、巻芯41の外径が30[mm]の場合の方が、巻芯41の外径が75[mm]の場合よりも、第2電圧指令値が小さく(言い換えれば第1電圧指令値の補正量が大きく)なるように補正されている。
また、テープ幅、巻芯41の外径、及びテープ種類が同等の、例えばテープ幅が15[mm]で、テープ種類がOPP材料で、巻芯41の外径が75[mm]であるときにおける各テープ残量の段階を対比して分かるように、テープ残量が多い段階の方が、テープ残量が少ない段階によりも、第2電圧指令値が小さく(言い換えれば第1電圧指令値の補正量が大きく)なるように補正されている。
<第2電圧指令値を用いた定トルク制御>
そして、CPU212が、(上記第1電圧指令値よりも小さい)補正後の上記第2電圧指令値をモータ駆動回路219に出力し、モータ駆動回路219が、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、入力された第2電圧指令値に対応した一定値とするような定トルク制御を行う。これにより、上記テープ搬送速度の増大を防止することができる。
<制御フロー>
以下、図12を参照しつつ、上述した手法を実現するためにCPU212により実行される処理内容について説明する。
図12において、例えば操作者により印刷装置1の電源がオンにされることにより、図12のフローチャートに示す処理が開始される(「START」位置)。
まず、ステップS202で、CPU212は、操作部216(又はPC217)での操作者の印字済み粘着テープ150″の作成開始操作に対応した、印字済み粘着テープ150″の作成開始指示信号が入力されたか否かを判定する。作成開始指示信号が入力されない場合はステップS202の判定は満たされず(S202:NO)ループ待機する。作成開始指示信号が入力されたらステップS202の判定が満たされ(S202:YES)、ステップS203に移る。
ステップS203では、CPU212は、操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応した、作成する印字済み粘着テープ150″のテープ搬送方向に沿った全長を表す全長データが入力されたか否かを判定する。全長データが入力されない場合はステップS203の判定は満たされず(S203:NO)、上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。全長データが入力されたらステップS203の判定が満たされ(S203:YES)、ステップS204に移る。
ステップS204では、CPU212は、操作部216(又はPC217)での操作者の操作に基づく、粘着テープ150に繰り返し印字形成する上記1つの単位印字データが入力されたか否かを判定する。単位印字データが入力されない場合はステップS204の判定は満たされず(S204:NO)上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。単位印字データが入力されたらステップS204の判定が満たされ(S204:YES)、ステップS205に移る。
ステップS205では、CPU212は、予め設定された所定の印刷速度が実現するように、公知の手法により(印字ヘッド11の駆動制御と同期する形で)上記モータ駆動回路219への電圧指令値Vrefを設定する、電圧指令値設定処理を実行する。このときの電圧指令値Vrefは、搬送ローラ12と粘着テープ150との間に滑りがない場合に対応した上記第1電圧指令値となるように設定される。なお、詳細な説明を省略するが、この設定されたモータ駆動回路219への電圧指令値Vrefに対応して、上記モータ駆動回路218への電圧指令値Vref及び上記モータ駆動回路220への電圧指令値Vrefも併せて設定される。その後、ステップS100に移る。
ステップS100では、CPU212は、上記モータ駆動回路219へ出力する電圧指令値Vrefの値を、上記ステップS205で設定された第1電圧指令値から、上記第2電圧指令値に補正する、電圧指令値補正処理(詳細は後述の図13参照)を実行する。
<電圧指令値補正処理>
以下、図13を参照しつつ、上記ステップS100の電圧指令値補正処理の詳細手順について説明する。
図13において、まず、ステップS101で、CPU212は、上記巻芯41の外径の情報(巻芯41の外径情報)を取得する。このとき、巻芯41の外径情報は、適宜のセンサにより、装着された巻き取り機構40の種類を検出することにより取得してもよいし、操作者による操作部216(又はPC217)での操作入力結果に基づき取得にしてもよい。
その後、ステップS102で、CPU212は、上記テープ種類の情報(テープ種類情報)を取得する。このとき、テープ種類情報は、適宜のセンサにより、装着されたテープカートリッジTKの種類を検出することにより取得してもよいし、操作者による操作部216(又はPC217)での操作入力結果に基づき取得してもよい。
そして、ステップS103で、CPU212は、上記テープ幅の情報(テープ幅情報)を取得する。このとき、テープ幅情報は、上記同様、適宜のセンサにより、装着されたテープカートリッジTKの種類を検出することにより取得してもよいし、操作者による操作部216(又はPC217)での操作入力結果に基づき取得してもよい。
その後、ステップS105で、CPU212は、上記テープ残量の情報(テープ残量情報)を取得する。このとき、テープ残量情報は、適宜の公知の手法で取得すれば足り、例えば、適宜のセンサにより粘着テープロールR1の外径寸法を検出しその検出結果に基づき算出して取得してもよいし、印字形成動作開始後の回転速度を光学式エンコーダ等の適宜の回転検出手段により検出しその検出結果に基づき算出して取得する等でもよい。あるいは、テープカートリッジTK側に設けられた記憶媒体に記憶されたテープ残量情報を有線又は無線通信を介して取得してもよい。さらには、操作者による操作部216(又はPC217)での操作入力結果に基づきテープ残量情報を取得してもよい。
その後、ステップS130では、CPU212は、前述の図10に示す補正量テーブルを参照して、上記ステップS101で取得された巻芯41の外径情報と、上記ステップS102で取得されたテープ種類情報と、上記ステップS103で取得されたテープ幅情報と、上記ステップS105で取得されたテープ残量情報との組み合わせに応じた補正量を抽出する。そして、CPU212は、抽出した補正量を用いて、上記ステップS205で設定された第1電圧指令値を補正し、上記第2電圧指令値とする。これにより、このルーチンに示す処理を終了し、ステップS210に移る。
図12に示すように、ステップS210では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号(すなわち上記ステップS205及びステップS210での設定・補正に沿った電圧指令値Vref)を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用(図中では「AD」と記載)モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始する。特に、粘着巻取用モータM2は、上記ステップS100で補正後の第2電圧指令値を入力したモータ駆動回路219により、駆動トルクが当該第2電圧指令値に対応した一定値となるように駆動制御される。これにより、上記粘着テープ150、印字済み粘着テープ150′、及び印字済み粘着テープ150″の搬送(以下適宜、単に「テープ搬送」という)と、上記印字済み粘着テープ150″の巻き取りとが開始される。
そして、ステップS215で、CPU212は、上記ステップS204で入力された単位印字データに基づき、公知の手法により、印字開始位置に印字ヘッド11が対向する状態までテープ搬送が到達したか否かを判定する。印字開始位置に到達していない場合はステップS215の判定は満たされず(S215:NO)ループ待機する。印字開始位置に到達したらステップS215の判定が満たされ(S215:YES)、ステップS220に移る。
ステップS220では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子に通電を行って、粘着テープ150に、上記ステップS204で入力された単位印字データに対応した単位印字イメージの繰り返し印字形成を開始する。その後、ステップS238に移る。
ステップS238では、CPU212は、上記ステップS204で入力された単位印字データに基づき、公知の手法により、印字終了位置に印字ヘッド11が対向する状態までテープ搬送が到達したか否かを判定する。印字終了位置に到達していない場合はステップS238の判定は満たされず(S238:NO)上記ステップS220に戻って同様の手順を繰り返す。これにより、上述の繰り返し印字形成が続行される。印字終了位置に到達したらステップS238の判定が満たされ(S238:YES)、ステップS240に移る。
ステップS240では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子への通電を停止して、粘着テープ150に対する印字形成を停止する。このとき、テープ搬送は継続して行われている。これにより、それ以降の印字済み粘着テープ150′は、印字が存在しない空白状態となる。その後、ステップS255に移る。
ステップS255では、CPU212は、上記ステップS203で入力された全長データに対応したカッター機構30による切断位置(印字済み粘着テープロールR2として巻回される印字済み粘着テープ150″の、テープ搬送方向に沿った全長が操作者の意図する長さとなるような切断位置)までテープ搬送が到達したか否かを判定する。切断位置に到達していない場合はステップS255の判定は満たされず(S255:NO)ループ待機する。切断位置に到達したらステップS255の判定が満たされ(S255:YES)、ステップS260に移る。
ステップS260では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、テープ搬送が停止する。
その後、ステップS265で、CPU212は、モータ駆動回路222に制御信号を出力してカッターモータMCを駆動し、カッター機構30の作動により印字済み粘着テープ150″の切断を行う。
そして、ステップS270で、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を開始して、印字済み粘着テープ150″を巻き取り機構40の巻芯41の外周部に巻き取る。
その後、ステップS275で、CPU212は、上記ステップS265でのカッター機構30の切断動作から所定時間だけ経過したか否かを判定する。所定時間だけ経過していない場合はステップS275の判定は満たされず(S275:NO)ループ待機する。この所定時間は、印字済み粘着テープ150″を上記巻芯41の外周部へと巻き取れるだけの時間でよい。所定時間が経過したらステップS275の判定が満たされ(S275:YES)、ステップS280へ移る。
ステップS280では、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を停止する。これにより、上記切断により生じた印字済み粘着テープ150″を確実に上記巻芯41の外周部に巻き取ることができる。これにより、このフローチャートに示す処理を終了する。
なお、上記ステップS100を実行するCPU212が、各請求項記載の指令値補正手段及びトルク補正手段として機能する。
<本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態においては、CPU212が、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、テープ残量に応じて、第1駆動トルクから第2駆動トルク(上記の例では第1駆動トルクよりも小さい第2駆動トルク)に補正する。これにより、そのままでは上述のようにテープ進み方向への滑りが生じ得る場合であっても、テープ搬送速度の増大を防止することができる。この結果、テープ搬送速度の増大により生じ得る前述の間延び態様の印字形成(図9(b)参照)を防止し、正しい態様の印字形成を実行することができる。
また、本実施形態では特に、CPU212は、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径にも応じて、第1駆動トルクから第2駆動トルクに補正する。これにより、確実にテープ搬送速度の増大を防止し、正しい態様の印字形成を実行することができる。
また、本実施形態では特に、CPU212は、定トルク制御を行うモータ駆動回路219に出力する電圧指令値Vrefを、テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径のすべてに応じて、第1駆動トルクに対応した第1電圧指令値から、第2駆動トルクに対応した第2電圧指令値(上記の例では第1電圧指令値よりも粘着巻取用モータM2の駆動トルクが小さくなるような第2電圧指令値)に補正する。そして、モータ駆動回路219は、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、入力された第2電圧指令値に対応した一定値とするような定トルク制御を行う。これにより、そのままでは上述のようにテープ進み方向への滑りが生じ得る場合であっても、テープ搬送速度の増大を防止することができ、正しい態様の印字形成を実行することができる。また、テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径のすべてに応じてきめ細やかに精度よく第1電圧指令値を補正することにより、確実に滑りの発生を防止することができる。
また、本実施形態では特に、CPU212は、テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径の組み合わせに応じた補正量を表す補正量テーブル(図10参照)を参照して第1電圧指令値を補正し、第2電圧指令値とする。すなわち、予め算出した種々の場合の補正量をテーブルとして記憶しておいて用いることにより、複雑な処理を行うことなく簡素な処理で迅速かつ信頼性の高い補正を行うことができる。また、例えば将来的にテープ種類等が増え、補正量算出のためのパラメータ(上記の例ではテープ残量、テープ幅、テープ種類、巻芯41の外径等)が新たに加わったり値の範囲が拡張される場合であっても、テーブルのデータを補充又は更新するだけで容易に対応することができる。
また、本実施形態では特に、カッター機構30が、巻芯41により巻き取られる印字済み粘着テープ150″を切断し、印字済み粘着テープロールR2を作成する。これにより、印字済み粘着テープ150″を切断し印字済み粘着テープロールR2を作成する印刷装置1において上記滑りの発生を防止し、印字済み粘着テープロールR2の印字品質の低下を防止することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
(1)補正量の設定態様をシンプル化する場合
上記実施形態においては、テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径のすべての組み合わせに応じた補正量を用いて、第1電圧指令値の補正を行ったが、これに限られない。すなわち、補正量を、テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径のうち、少なくともテープ残量を含む一部に応じて、設定してもよい。
例えば、図14に、テープ残量及びテープ幅の組み合わせに応じた補正量を表す補正量テーブルの例を示す。図14に示す例では、テープ残量は、前述の図10と同様の6段階が用意され、テープ幅は、前述の図10と同様の3種類が用意されており、これらテープ残量及びテープ幅の組み合わせに応じて、第1電圧指令値の補正量が定められている。
また例えば、図15に、テープ残量のみに応じた補正量を表す補正量テーブルの例を示す。図15に示す例では、テープ残量は、前述の図10と同様の6段階が用意されており、このテープ残量のみに応じて、第1電圧指令値の補正量が定められている。
本変形例によれば、少なくともテープ残量に応じて第1電圧指令値を補正することで、上記実施形態と同様、テープ搬送速度の増大を防止することができる。
(2)補正量テーブルを用いずに補正量の算出を行う場合
すなわち、上記実施形態や(1)の変形例のように補正量テーブルを参照して補正量を抽出するのではなく、予め定められた計算式パラメータを用いた演算により補正量を算出してもよい。
図16に、計算式パラメータを用いた演算による補正量算出手法の例を示す。
図16に示す例では、上記「テープ幅」、「テープ残量」、「テープ種類」、及び「巻芯41の外径(図中では「巻芯外径」と記載)」のそれぞれについて、所定の計算式パラメータ(以下適宜、単に「パラメータ」という)の値が数量的に対応付けられている。
すなわち、テープ幅が15[mm]の場合には、パラメータ△45[%]が対応付けられ、テープ幅が38[mm]の場合には、パラメータ△15[%]が対応付けられ、テープ幅が50[mm]の場合には、パラメータ△10[%]が対応付けられている。
また、テープ残量については、「現在のテープ残量/初期(印字開始時)のテープ残量」の値が、パラメータとして対応付けられている。
さらに、テープ種類がOPP材料(図中では「OPP」と記載)の場合には、パラメータ0[%]が対応付けられ、テープ種類がPET材料(図中では「PET」と記載)の場合には、パラメータ0[%]が対応付けられ、テープ幅が布材料(図中では「FAB」と記載)の場合には、パラメータ△5[%]が対応付けられている。
またさらに、巻芯41の外径が75[mm」の場合には、パラメータ0[%]が対応付けられ、巻芯41の外径が30[mm」の場合には、パラメータ△10[%]が対応付けられている。
そして、第1電圧指令値の補正量を求める際には、「テープ幅」のパラメータ値に「テープ残量」のパラメータ値を乗算し、さらに、「テープ種類」のパラメータ値及び「巻芯41の外径」のパラメータ値を加算することにより、算出を行う。図示の例では、テープ幅が15[mm](対応するパラメータ値は△45[%])、テープ残量が200[m](対応するパラメータ値は200/310)、テープ種類が布材料(対応するパラメータ値は△5[%])、巻芯41の外径が30[mm](対応するパラメータ値は△10[%])となっており、この結果、最終的に求められる補正量は、△45×(200/310)+△5+△10≒△45[%]となる。
本変形例の手法であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
(3)環境温度も加味して補正を行う場合
すなわち、上記テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径に加え、印刷装置1の周囲の環境温度にも応じて、第1電圧指令値の補正を行ってもよい。
例えば環境温度が比較的高い場合には、動作時の機械的負荷が軽くなることから、上記テープ進み方向への滑りが生じやすい傾向となる。
本変形例では、図示を省略するが、CPU212は、印刷装置1の周囲の環境温度を検出する環境温度センサにも接続されており、ROM214には、上記テープ残量、テープ幅、テープ種類、巻芯41の外径、及び環境温度の組み合わせに応じた、第1電圧指令値の補正量、を表す補正量テーブルが記憶されている。
そして、CPU212は、上記補正量テーブルを参照して、取得したテープ残量情報と、取得したテープ幅情報と、取得したテープ種類情報と、取得した巻芯41の外径情報と、上記環境温度センサから取得した環境温度の情報(環境温度情報)との組み合わせに応じた補正量を抽出し、抽出した補正量を用いて、第1電圧指令値を補正し、第2電圧指令値とする。
本変形例によれば、CPU212は、環境温度をも加味して第1電圧指令値を第2電圧指令値に補正する。これにより、上記テープ進み方向への滑りの発生をさらに確実に防止することができる。
なお、上記の例では、テープ残量、テープ幅、テープ種類、巻芯41の外径、及び環境温度のすべての組み合わせに応じた補正量を用いて、第1電圧指令値の補正を行ったが、補正量を、テープ残量、テープ幅、テープ種類、及び巻芯41の外径のうち、少なくともテープ残量を含む一部と、環境温度とに応じて、設定してもよい(あるいは上記(2)の変形例のように演算により算出してもよい)。
(4)テープ遅れ方向への滑りが発生する場合
以上においては、搬送ローラ12と粘着テープ150との間にテープ進み方向への滑りが発生する場合を例にとって説明したが、これに限られず、逆に、搬送ローラ12と粘着テープ150との間にテープ遅れ方向への滑りが発生する場合もあり得る。
例えばテープ残量が比較的少ない場合には、粘着テープロールR1の外径側から粘着テープ150を引き出すために比較的大きな力が必要となることから、逆に、搬送ローラ12との間にテープ遅れ方向(テープ搬送方向上流側に対応する方向)への滑りが生じやすい。また例えば巻芯41の外径が比較的大きい場合には、上記巻芯41による巻き取りが行われるときに印字済み粘着テープ150″に与える張力が小さくなることから、上記同様、搬送ローラ12との間にテープ遅れ方向への滑りが生じやすい。また例えば、環境温度が比較的低い場合には、動作時の機械的負荷が重くなることから、上記同様、搬送ローラ12との間にテープ遅れ方向への滑りが生じやすい傾向となる。
これらの場合、上記テープ遅れ方向への滑りが生じることで、本来同期しているはずの印刷速度とテープ搬送速度とにおいて、テープ搬送速度の方が若干遅くなる。この結果、上記テープ遅れ方向への滑りが生じているときは、本来の印字形成態様に比べ、テープ搬送方向に寸詰まりとなった態様で印字が形成され、いわゆる印字長が短くなる。
本変形例では、前述した第1電圧指令値を用いた定トルク制御の実行時に上記理由により上記テープ遅れ方向への滑りが生じる可能性に対応し、CPU212が、上記実施形態等と同様の手法により、モータ駆動回路219に出力する電圧指令値Vrefの値を、第1電圧指令値から、当該第1電圧指令値よりも粘着巻取用モータM2の駆動トルクが大きくなるような第2電圧指令値に補正する。そして、CPU212が、(上記第1電圧指令値よりも大きい)補正後の上記第2電圧指令値をモータ駆動回路219に出力し、モータ駆動回路219が、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、入力された第2電圧指令値に対応した一定値とするような定トルク制御を行う。
本変形例によれば、そのままでは上記のようにテープ遅れ方向への滑りが生じ得る場合であっても、テープ搬送速度の低下を防止することができる。この結果、テープ搬送速度の低下により生じ得る上記寸詰まり態様の印字形成を防止し、正しい態様の印字形成を実行することができる。
なお、例えばテープ幅が比較的広い場合には、駆動される巻芯41による巻き取り力が印字済み粘着テープ150″の広い範囲に分散することから、テープ進み方向への滑りが生じにくい。また例えばテープ種類が樹脂等の摩擦係数が比較的大きいものである場合には、接触する搬送ローラ12との間におけるテープ進み方向への滑りが生じにくい。これらの場合は、印刷速度とテープ搬送速度とが比較的一致しており、良好な印字となる。
(5)その他
以上においては、CPU212が、モータ駆動回路219へ出力する電圧指令値Vrefの値を補正することで、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、第1駆動トルクから第2駆動トルクに補正する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、CPU212は、モータ駆動回路219へ出力する電圧指令値Vref以外の、粘着巻取用モータM2の駆動トルクに対応したパラメータの値を補正することで、粘着巻取用モータM2の駆動トルクを、第1駆動トルクから第2駆動トルクに補正してもよい。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」等という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」等という意味である。但し、例えばしきい値や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
また、図7及び図8に示す矢印は、信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図12及び図13に示すフローチャートは、本発明を図示する手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。