以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」とは、その注記された方向を指す。
<テープ印刷装置の概略構成>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態に係わるテープ印刷装置の概略構成について説明する。
<筐体>
図1〜図4において、本実施形態のテープ印刷装置1(印刷物作成装置に相当)は、装置外郭を構成する筐体2を有している。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9と、を備えている。
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4と、が備えられている。
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に設けられた所定の回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第1開閉カバー8aの内部には、ヘッド保持体10が設けられている(図3も参照)。そして、第1開閉カバー8aは、上記の回動軸心K1まわりに回動することで、ヘッド保持体10に備えられた印字ヘッド11(サーマルヘッドに相当)を、筐体本体2aに設けられた搬送ローラ12に対して相対的に離反・近接可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、印字ヘッド11が搬送ローラ12に対して近接した閉じ位置(図1、図2の状態)から、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離反した開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第2開閉カバー8bは、上記第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられており、筐体本体2aの後方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、上記第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
そして、これら第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、当該第1開閉カバー8aの外周部18と当該第2開閉カバー8bの縁部19とが互いに略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
<被印字テープロール及びその周辺>
このとき、図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方にある第1所定位置13には、テープカートリッジTK(図2参照)が着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された被印字テープロールR1を備えている。
すなわち、テープカートリッジTKは、図5に示すように、被印字テープロールR1と、連結アーム16とを備えている。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備えている。
第1ブラケット部20,20は、上記被印字テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では被印字テープロールR1を巻芯39(図2参照)のまわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により被印字テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
被印字テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際には回転自在となる。被印字テープロールR1は、繰り出しにより消費される被印字テープ150(後述する被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151を備える。図2中拡大図参照)を、あらかじめ左右方向の軸心O1を備えた上記巻芯39まわりに巻回している。
第1収納部3には、上記テープカートリッジTKの装着によって、被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、被印字テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、被印字テープ150を繰り出す。
本実施形態では、粘着性を備えた被印字テープ150が用いられる場合を例示している。すなわち、被印字テープ150は、被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151が、厚さ方向一方側(図2中の上方側)から他方側(図2中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。被印字層154は、上記印字ヘッド11によるインクの熱転写によって所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材層151は、粘着剤層152を覆う層である。
<搬送ローラ及び印字ヘッド>
図2〜図4に戻り、筐体本体2aにおける第1収納部3及び第2収納部5の中間上方側には、上記搬送ローラ12が設けられている。搬送ローラ12は、筐体本体2aの内部に設けられた搬送用モータM1によりギア機構(図示省略)を介して駆動されることで、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1から繰り出される被印字テープ150を、テープ幅方向が左右方向となるテープ姿勢で搬送する。
また、第1開閉カバー8aに設けられた上記ヘッド保持部10には、上記印字ヘッド11が備えられている。印字ヘッド11は、上述したように、第1開閉カバー8aが回動軸心K1まわりに回動することで、搬送ローラ12に対して相対的に離間・近接可能である。すなわち、第1開閉カバー8aが閉じ状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12に近接し、第1開閉カバー8aが開き状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離間する。この印字ヘッド11は、搬送ローラ12により搬送される被印字テープ150を当該搬送ローラ12と協働して挟持するように、ヘッド保持部10のうち閉じ状態での第1開閉カバー8aにおいて搬送ローラ12の上方に対向する位置に配置されている。したがって、第1開閉カバー8aが閉じ状態である場合には、印字ヘッド11と搬送ローラ12とは、互いに上下方向に対向して配置される。そして、印字ヘッド11は、搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150の被印字層154に対し、後述するインクリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて、公知の手法により被印字テープ150の搬送と同期した印刷速度で所望の印字を形成し、印字済みテープ150′とする。
<インクリボンカートリッジ>
図2及び図3に示すように、筐体本体2aにおける閉じ状態での第1開閉カバー8aの下方でかつテープカートリッジTKの上方となる第2所定位置14には、インクリボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。インクリボンカートリッジRKの詳細構造を図6に示す。
図6に示すように、インクリボンカートリッジRKは、カートリッジ筐体80と、未使用のインクリボンIBを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールR4と、リボン巻き取りロールR5とを備えている。カートリッジ筐体80は、後方側の繰り出しロール収納部81と、前方側の巻き取りロール収納部82と、それら両収納部81,82を連結する連結部83と、を有している。連結部83は、リボン繰り出しロールR4から繰り出された上記インクリボンIBをカートリッジ筐体80外に露出させるようにしつつ、上記巻き取りロール収納部82と上記繰り出しロール収納部81とを連結する。
繰り出しロール収納部81は、略半円筒の上部81aと、下部81bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン繰り出しロールR4は、繰り出しロール収納部81内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のD方向)に回転することで、印字ヘッド11による印字形成を行うためのインクリボンIBを繰り出す。
巻き取りロール収納部82は、略半円筒の上部82aと、下部82bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン巻き取りロールR5は、巻き取りロール収納部82内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のE方向)に回転することで、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。
すなわち、図2において、リボン繰り出しロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、印字ヘッド11と搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150のさらに印字ヘッド11側に配置されて印字ヘッド11の下方に接触する。そして、印字ヘッド11からの加熱によりインクリボンIBのインクが、被印字テープ150の被印字層154に転写されて印字形成が実行された後、使用済みのインクリボンIBが、リボン巻き取りロールR5に巻き取られる。
<剥離材ロール及びその周辺>
図5に示すように、テープカートリッジTKの連結アーム16は、例えば略水平なスリット形状を含む引き剥がし部17を備えている。この引き剥がし部17は、被印字テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済みテープ150′から、剥離材層151を引き剥がす部位である。上記のようにして印字が形成された印字済みテープ150′は、図2に示すように、上記引き剥がし部17によって上記剥離材層151が引き剥がされることで、剥離材層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済みテープ150″とに分離される。
テープカートリッジTKは、図2及び図5に示すように、上記引き剥がされた剥離材層151が軸心O3を備えた巻芯29まわりに巻回されることで形成される、上記剥離材ロールR3を有している。すなわち、上述したテープカートリッジTKの装着によって、剥離材ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、巻芯29は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離材層151を巻き取る。
このとき、図5に示すように、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、上記剥離材ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では巻芯29(言い換えれば剥離材ロールR3)を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、後方側の第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
また、図5中では、巻芯29のまわりに剥離材層151が巻回され剥離材ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、当該剥離材層151の幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形の上記ロールフランジ部f3,f4を図示するとともに、便宜的に剥離材ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
<印字済みテープロール及びその周辺>
一方、図2及び図4に示すように、上記第3収納部4には、上記印字済みテープ150″を順次巻回するための巻芯41を備えた巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済みテープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、上記巻芯41が軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻き取り用モータM2により不図示のギア機構を介して巻芯41が駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済みテープ150″を巻芯41の外周側に巻き取って積層する。これにより、巻芯41の外周側に印字済みテープ150″が順次巻回されることで、印字済みテープロールR2が形成される。
<カッター機構>
また、図2に示すように、テープ搬送方向に沿って印字ヘッド11の下流側でかつ印字済みテープロールR2の上流側に、カッター機構30が設けられている。
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有している。そして、カッターモータMC(後述の図7参照)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済みテープ150″を幅方向に切断する。
<テープ印刷装置の動作の概略>
次に、上記構成のテープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
すなわち、上記第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、筐体本体2aの後方側に位置する第1収納部3に被印字テープロールR1が収納され、筐体本体2aの前方側に位置する第2収納部5に剥離材ロールR3を形成する軸心O3側が収納される。また、筐体本体2aの前方側に位置する第3収納部4には、印字済みテープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
この状態で、ユーザが、被印字テープ150(この時点ではまだ印刷が始まっていない)から剥離材層151を手動で引き剥がし、基材層153及び粘着剤層152からなるテープの先端を、上記巻き取り機構40の巻芯41に取り付ける。そして、搬送ローラ12が駆動されると、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1の回転により繰り出される被印字テープ150が、前方側へ搬送される。そして、搬送される被印字テープ150の被印字層154に対し、印字ヘッド11により所望の印字(上記印字部155)が形成されて、印字済みテープ150′となる。印字形成された印字済みテープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離材層151が引き剥がされて印字済みテープ150″となる。引き剥がされた剥離材層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻回されて剥離材ロールR3が形成される。
一方、剥離材層151が引き剥がされた印字済みテープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の巻芯41の外周側に巻回されて印字済みテープロールR2が形成される。その際、搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が印字済みテープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで、印字済みテープロールR2に巻回されていく印字済みテープ150″を切断し、切断後は印字済みテープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。なお、この切断後において、印字済みテープロールR2に巻回されている印字済みテープ150″が各請求項記載の印刷物に相当している。
なおこのとき、図示による説明を省略するが、被印字テープロールR1に、非粘着テープ(上記粘着剤層152及び剥離材層151のないもの)が巻回されていても良い。この場合においても、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着によって、非粘着テープが巻回された被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、非粘着テープの巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、非粘着テープを繰り出す。
またこのとき、上記非粘着テープ(又は上記被印字テープ150でもよい)の搬送経路を、印字済みテープロールR2へ向かう側と排出口(図示省略)へ向かう側との相互間で切り替える、シュート15(図2参照)が配されていても良い。すなわち、切替レバー(図示省略)によるシュート15の切替操作でテープ経路を切り替えることで、印字形成後の非粘着テープ(又は印字済みテープ150″)を後述のように第3収納部4内において巻回することなく、筐体2の例えば第2開閉カバー8b側に設けた排出口(図示省略)から、そのまま筐体2外部へ排出するようにしても良い。
<制御系>
次に、図7を用いて、テープ印刷装置1の制御系について説明する。図7において、テープ印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213及びROM214に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってテープ印刷装置1全体の制御を行う。
また、CPU212は、上記搬送ローラ12を駆動する上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記巻き取り機構40の巻芯41を駆動する上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離材ロールR3を駆動する上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記印字ヘッド11の発熱素子(図示省略)の通電制御を行う印字ヘッド制御回路221と、上記可動刃を備えた走行体を走行させるカッターモータMCの駆動制御を行うモータ駆動回路222と、適宜の表示を行う表示部215と、ユーザが適宜に操作入力可能な操作部216と、印字ヘッド11の温度を検出するヘッド温度センサSR1(ヘッド温度検出手段に相当)と、テープ印刷装置1が配置された場所の周囲の環境温度を検出する環境温度センサSR2(環境温度検出手段に相当)と、に接続されている。また、CPU212は、この例では、外部端末としてのPC217に接続されるが、テープ印刷装置1が(いわゆるオールインワンタイプで)単独で動作する場合には、接続されなくてもよい。
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラム(後述する図14、図15のフローの処理を実行するプログラムを含む)が記憶されている。なお、後述の図10、図11、図12に示すテーブルも、例えばこのROM214に記憶されている。
RAM213には、例えば上記操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データ(後述のステップS204参照)を、上記被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータ(=1つの単位印字データに相当。詳細は後述)に展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、上記制御プログラムに基づき、搬送ローラ12により被印字テープ150を繰り出しつつ、イメージバッファ213aに記憶された上記ドットパターンデータに対応した1つのイメージ(=単位印字イメージに相当。詳細は後述)を、印字ヘッド11によって被印字テープ150に対し繰り返して印刷する(詳細は後述)。
<実施形態の特徴>
以上のように構成された本実施形態の特徴は、印字ヘッド11に対して与える印字エネルギ量を、被印字テープの種類、単位印字データのオンドット数(印字率に相当)、環境温度、サーマルヘッドの温度等の各種パラメータに応じて増減調整することにより、印字かすれや印字つぶれの発生を防止する手法にある。以下、その詳細を、順を追って説明する。
<ドットパターンデータの例>
上述したように、印字ヘッド11は、ドットパターンデータに対応した1つのイメージを被印字テープ150に対し繰り返して印刷する。RAM213のイメージバッファ213aには、(1つの単位印字データに相当する)上記ドットパターンデータが展開され、一時的に記憶される。
図8(a)に上記ドットパターンデータの一例を示し、また図8(b)に当該ドットパターンデータにより生成された印字済みテープ150″を示す。図8(a)に示すドットパターンデータ(単位印字データ)は、この例では、テープ幅方向12ドット×テープ長さ方向16ドット=192のドット列のデータである。このドットパターンデータは、アルファベット「A」の文字からなるイメージ(単位印字イメージ)を印字形成するために用いられる。このデータには、上記192のドット列のうち、J1〜L1ドット、I2〜J2ドット、H3〜I3ドット、F4〜H4ドット、E5〜H5ドット、C6〜E6ドット、G6〜H6ドット、B7〜C7ドット、G7〜H7ドット、A8〜B8ドット、G8〜H8ドット、A9〜B9ドット、G9〜H9ドット、B10〜C10ドット、G10〜H10ドット、C11〜E11ドット、G11〜H11ドット、E12〜H12ドット、F13〜H13ドット、H14〜I14ドット、I15〜J15ドット、及び、J16〜L16ドットの合計54ドットが(オンドット数として)含まれている。なお、この場合の1ラインあたりの平均オンドット数は54/16=3.38となり、上記192ドット全体でみたオンドット数は、54/192=28.1[%]となる。
<印字エネルギの増減制御>
このとき、上述したように、印字ヘッド11は、上記発熱素子が通電されて発熱することによって生じる印字エネルギを用いて、上記ドットパターンデータに対応したイメージを被印字テープ150に形成する。したがって、最適な印字エネルギが与えられていない場合には、発色不足による印字かすれ等が生じたり、発色過剰による印字つぶれ等が生じる場合がある。
本実施形態においては、上記のような印字かすれや印字つぶれの発生を防止するために、上記パラメータに応じて、発熱素子に与える印字エネルギをCPU212によって増減制御する。すなわち、上記図8(a)中に■で示されたドット(オンドット)においては、例えば図9(a)に示すように、1ラインを印刷するときの1つの印字周期(1ライン周期)において、発熱素子は、ある一定時間だけON状態に駆動され(=通電時間)、その後に残りの時間はOFF状態となるように、通電制御される。
なおこのとき、印字ヘッド制御回路221による印字ヘッド11の駆動は、図9(b)に示すような、公知のチョッピング制御(電流のON−OFFを高速で繰り返すことによって実効値としての任意の電圧を擬似的に作り出す制御)が行われる。本実施形態では、前述したように、被印字テープの種類、単位印字データのオンドット数、環境温度、サーマルヘッドの温度に応じて、上記チョッピング制御における1チョッピング周期(図9(b)参照)内に占める通電時間の基準量となるチョッピングデューティ時間(=第1通電因子の一例に相当。図9(b)参照)と、上記1ライン周期内に占めるチョッピング個数(=第2通電因子の一例に相当。図9(b)参照)と、が増減調整されることにより、上記印字エネルギが増減制御される。
<印字エネルギ増減の具体例>
上記を具体的に実行するために、本実施形態では、図10、図11、図12に示す3つのテーブルを用いる。
<テープ種類とチョッピングデューティ時間等との相関>
まず、上記ROM214には、図10に示される、上記被印字テープ150の種類と、(上記第1通電因子の一例としての)チョッピングデューティ時間との相関(第1相関に相当)を表すテーブルが記憶されている(第1記憶手段としての機能)。なお、このとき、図示の相関には、上記チョッピングデューティ時間と併せ、対応するチョッピング個数係数(第1補正係数に相当)も併せて対応づけられている。このチョッピング個数係数は、上記チョッピング制御時の上記チョッピング個数を補正する(詳細は後述)ために用いられる係数であり、上記第1通電因子の他の例に相当している。
すなわち、図10に示す例では、被印字テープ150の種類が「テープA」(例えば材質が紙材料(OPP))である場合には、チョッピングデューティ時間が5[μsec]、チョッピング個数係数が0.8、に設定されている。同様に、被印字テープ150の種類が「テープB」(例えば材質が樹脂材料(PET))である場合には、チョッピングデューティ時間が6[μsec]、チョッピング個数係数が1(すなわち実質的に補正なし)、に設定されている。また、被印字テープ150の種類が「テープC」(例えば材質が布材料)である場合には、チョッピングデューティ時間が7[μsec]、チョッピング個数係数が1.5に設定され、さらに被印字テープ150の種類が「テープD」(例えば材質がマスキングテープ用テープ)である場合には、チョッピングデューティ時間が8[μsec]、チョッピング個数係数が2、に設定されている。
印字開始前においてテープカートリッジTKが装着されたとき、サーマルヘッド11の発熱素子の通電を制御するために上記図10の相関が参照され、上記被印字テープ150の種類に対応した上記第1通電因子としてのチョッピングデューティ時間及びチョッピング個数係数が決定される(第1処理に相当)。
<通電制御パターン>
一方、上記ROM214にはまた、図11に示される、複数の通電制御パターンが記憶されている(第2記憶手段としての機能)。各通電制御パターンには、上記印字ヘッド11の温度区分ごとに変化させる、(上記第2通電因子の一例としての)チョッピング個数の値が表されている。なお、このとき、この例では、上記チョッピング個数と併せ、対応するチョッピングデューティ係数(第2補正係数に相当)も併せて対応づけられている。このチョッピングデューティ係数は、上記チョッピング制御時の上記チョッピングデューティ時間を補正する(詳細は後述)ために用いられる係数であり、上記第2通電因子の他の例に相当している。この図11のテーブルには、印字ヘッドの温度区分ごとに変化させる、上記チョッピング個数の値及び上記チョッピングデューティ係数の値の挙動を含む通電制御パターンが、複数個(この例では6個)記憶されている。
すなわち、図11に示す例では、通電制御パターン「0」では、印字ヘッド11のヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満(図中には単に「0℃」と記載。以下同様)のときチョッピングデューティ係数の値は1、ヘッド温度25[℃]以上40[℃]未満(図中には単に「25℃」と記載。以下同様)のときチョッピングデューティ係数の値は0.9、ヘッド温度40[℃]以上65[℃]未満(図中には単に「40℃」と記載。以下同様)のときチョッピングデューティ係数の値は0.85、ヘッド温度65[℃]以上(図中には単に「65℃」と記載。以下同様)のときチョッピングデューティ係数の値は0.75、となっている。また、ヘッド温度0[℃]、25[℃]、40[℃]、65[℃]のいずれの場合も、チョッピング個数の値は25となっている。
同様に、通電制御パターン「1」では、印字ヘッド11のヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は1、ヘッド温度25[℃]以上40[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.89、ヘッド温度40[℃]以上65[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.8、ヘッド温度65[℃]のときチョッピングデューティ係数の値は0.7、となっている。また、ヘッド温度0[℃]、25[℃]、40[℃]のときにチョッピング個数の値は25であり、ヘッド温度60[℃]のときにチョッピング個数の値は24となっている。
また、通電制御パターン「2」では、印字ヘッド11のヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は1、ヘッド温度25[℃]以上40[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.88、ヘッド温度40[℃]以上65[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.75、ヘッド温度65[℃]のときチョッピングデューティ係数の値は0.65、となっている。また、ヘッド温度0[℃]、25[℃]のときにチョッピング個数の値は25であり、ヘッド温度40[℃]、60[℃]のときにチョッピング個数の値は24となっている。
また、通電制御パターン「3」では、印字ヘッド11のヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は1、ヘッド温度25[℃]以上40[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.87、ヘッド温度40[℃]以上65[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.7、ヘッド温度65[℃]のときチョッピングデューティ係数の値は0.6、となっている。また、ヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときにチョッピング個数の値は25であり、ヘッド温度25[℃]、40[℃]、60[℃]のときにチョッピング個数の値は24となっている。
また、通電制御パターン「4」では、印字ヘッド11のヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は1、ヘッド温度25[℃]以上40[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.86、ヘッド温度40[℃]以上65[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.65、ヘッド温度65[℃]のときチョッピングデューティ係数の値は0.55、となっている。また、ヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときにチョッピング個数の値は25であり、ヘッド温度25[℃]、40[℃]、60[℃]のときにチョッピング個数の値は24となっている。
また、通電制御パターン「5」では、印字ヘッド11のヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は1、ヘッド温度25[℃]以上40[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.85、ヘッド温度40[℃]以上65[℃]未満のときチョッピングデューティ係数の値は0.6、ヘッド温度65[℃]のときチョッピングデューティ係数の値は0.5、となっている。また、ヘッド温度0[℃]以上25[℃]未満のときにチョッピング個数の値は25であり、ヘッド温度25[℃]、40[℃]、60[℃]のときにチョッピング個数の値は24となっている。
以上のように、図11に示すテーブルでは、通電制御パターン「1」〜「5」のいずれにおいても、印字ヘッド11の温度が上昇するほど、上記チョッピングデューティ係数の値が小さくなっている。
また印字ヘッド11のヘッド温度25[℃]の場合で見ると、テーブルの上段から下段に向かって、通電制御パターン番号「0」(チョッピングデューティ係数0.9)、通電制御パターン番号「1」(チョッピングデューティ係数0.89)、通電制御パターン番号「2」(チョッピングデューティ係数0.88)、通電制御パターン番号「3」(チョッピングデューティ係数0.87)、通電制御パターン番号「4」(チョッピングデューティ係数0.86)、通電制御パターン番号「5」(チョッピングデューティ係数0.85)、の順序で並んでいる。また、ヘッド温度40[℃]の場合で見ると、テーブルの上段から下段に向かって、通電制御パターン番号「0」(チョッピングデューティ係数0.85)、通電制御パターン番号「1」(チョッピングデューティ係数0.8)、通電制御パターン番号「2」(チョッピングデューティ係数0.75)、通電制御パターン番号「3」(チョッピングデューティ係数0.7)、通電制御パターン番号「4」(チョッピングデューティ係数0.65)、通電制御パターン番号「5」(チョッピングデューティ係数0.6)、の順序で並んでいる。さらに、ヘッド温度65[℃]の場合で見ると、テーブルの上段から下段に向かって、通電制御パターン番号「0」(チョッピングデューティ係数0.75)、通電制御パターン番号「1」(チョッピングデューティ係数0.7)、通電制御パターン番号「2」(チョッピングデューティ係数0.65)、通電制御パターン番号「3」(チョッピングデューティ係数0.6)、通電制御パターン番号「4」(チョッピングデューティ係数0.55)、通電制御パターン番号「5」(チョッピングデューティ係数0.5)、の順序で並んでいる。すなわち、ヘッド温度の各値に対して、チョッピングデューティ係数が徐々に小さくなるように配列されている。
<オンドット数・環境温度と通電制御パターンとの相関>
上記ROM214にはさらに、図12に示される、1つの単位印字データの上記オンドット数(CPU212により算出)の区分と上記環境温度(環境温度センサSR2により検出)の区分との組み合わせごとに、各組み合わせが上記通電制御パターン「0」〜「5」のいずれかに該当するかを表す相関(第2相関に相当)を表すテーブルが記憶されている(第3記憶手段としての機能)。
すなわち、図12に示す例では、被印字テープ150の種類が上記「テープA」の場合、平均オンドット数が比較的少ないときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満(図中には単に「0℃」と記載。以下同様)のとき上記通電制御パターン「0」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満(図中には単に「20℃」と記載。以下同様)のとき上記通電制御パターン「1」、環境温度40[℃]以上(図中には単に「40℃」と記載。以下同様)のとき上記通電制御パターン「2」、に設定されている。平均オンドット数が比較的多いときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「1」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「2」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「3」、に設定されている。
同様に、被印字テープ150の種類が上記「テープB」の場合、平均オンドット数が比較的少ないときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「1」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「2」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「3」、に設定されている。平均オンドット数が比較的多いときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「2」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「3」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「4」、に設定されている。
また、被印字テープ150の種類が上記「テープC」の場合、平均オンドット数が比較的少ないときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「4」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「4」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「5」、に設定されている。平均オンドット数が比較的多いときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「4」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「5」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「5」、に設定されている。
また、被印字テープ150の種類が上記「テープD」の場合、平均オンドット数が比較的少ないときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「3」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「4」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「4」、に設定されている。平均オンドット数が比較的多いときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「4」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「5」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「5」、に設定されている。
以上のように、図12に示すテーブルでは、被印字テープ150の種類が「テープA」〜「テープD」のいずれであっても、環境温度が高いほど、かつ、平均オンドット数が大きいほど、上記制御パターンの番号が大きくなっている(言い替えれば通電時間が短くなっている;図11のチョッピングデューティ係数の値を参照)。
前述のようにして印字開始前にチョッピングデューティ時間及びチョッピング個数係数が決定された後、印字が開始されて印字ヘッド11の温度が徐々に上昇していくとき、上記図12の相関が参照され、そのときの単位印字データの平均オンドット数(CPU212により算出)と環境温度(環境温度センサSR2により検出)とに対応して上記通電制御パターンが決定される(第2処理に相当)とともに、図11のテーブルにおいてその決定された上記通電制御パターンを参照することで上記印字ヘッドの温度(ヘッド温度センサSR1により検出)に対応したチョッピングデューティ係数及びチョッピング個数の値が決定される(第3処理に相当)。
そして、本実施形態では、上記のように決定されたチョッピングデューティ時間、チョッピングデューティ係数、チョッピング個数、及びチョッピング個数係数の値に対応して定まる通電時間によって、印字ヘッド11の発熱素子への通電が制御される。この結果、被印字テープ150の種類(上記の例では「テープA」「テープB」「テープC」「テープD」のいずれか)や、単位印字データのオンドット数や、環境温度や、サーマルヘッドの温度等、に基づき、通電時間を細かく最適に制御することができる。
上記の制御により、最終的に実現される通電時間の挙動の一例を表すグラフを図13に示す。図13では、上記被印字テープ150が「テープA」、「テープB」、「テープC」、「テープD」、それぞれである場合において、前述の通電制御パターン「0」、通電制御パターン「1」、通電制御パターン「2」、通電制御パターン「3」、通電制御パターン「4」、通電制御パターン「5」がそれぞれ適用された場合の、通電時間[μs]を、横軸に上記印字ヘッド11のヘッド温度を取って示している。
<制御フロー(その1)>
上記手法を実現するためにCPU212により実行される処理内容を、図14のフローにより説明する。図14において、例えばユーザによりテープ印刷装置1の電源がオンにされることによって、このフローが開始される(「START」位置)。
まず、ステップS201において、CPU212は、印字形成中であることを表すフラグF(詳細は後述)を「0」に初期化する。その後、ステップS202に移る。
ステップS202では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの上記印刷物の作成開始操作に対応した、上記印字済みテープ150″の作成開始指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの印刷物の作成開始の意図に対応した上記作成開始指示信号が入力されない場合はステップS202の判定が満たされず(S202:NO)ループ待機する。上記作成開始指示信号が入力されたらステップS202の判定が満たされ(S202:YES)、ステップS203に移る。
ステップS203では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した、作成する上記印字済みテープ150″の搬送方向に沿った全長を表す全長データが入力されたか否かを判定する。ユーザの意図するテープ全長に対応した上記全長データが入力されない場合はステップS203の判定が満たされず(S203:NO)、上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。上記全長データが入力されたらステップS203の判定が満たされ(S203:YES)、ステップS204に移る。
ステップS204では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に基づく、上記被印字テープ150に繰り返し印字形成する上記1つの単位印字データ(上記図8(a)も参照)が入力されたか否かを判定する。単位印字データが入力されない場合はステップS204の判定が満たされず(S204:NO)上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。上記単位印字データが入力されたらステップS204の判定が満たされ(S204:YES)、ステップS205に移る。なお、このステップS204の手順を実行する上記CPU212が、各請求項記載のデータ取得手段として機能する。
その後、ステップS205において、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始して、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送(以下適宜、単に「テープ搬送」と称する)、及び上記印字済みテープ150″の巻き取りを開始する。
そして、ステップS215で、CPU212は、上記ステップS204で取得された単位印字データに基づき、公知の手法により、対応する印字開始位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字開始位置に到達していない場合、判定は満たされず(S215:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。印字開始位置に到達した場合、判定は満たされ(S215:YES)、ステップS217に移る。
ステップS217で、CPU212は、印字形成中を表す上記フラグFを「1」とする。その後、ステップS220に移る。
ステップS220では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の上記発熱素子に通電を行って、被印字テープ150に、上記単位印字データに対応した単位印字イメージの繰り返し印字形成(図8(b)参照)を開始する。このとき、後述の図15のステップS105及びステップS130により決定された上記チョッピングデューティ時間及びチョッピングデューティ係数と、上記チョッピング個数及びチョッピング個数係数とに基づき、上記印字形成時におけるオンドット時の発熱素子への通電時間が決定される。詳細には、例えば上記チョッピングデューティ時間に上記チョッピングデューティ係数を乗じた補正後のチョッピングデューティ時間と、上記チョッピング個数に上記チョッピング個数係数を乗じた補正後のチョッピング個数と、を用いて上記通電時間が決定される。このようにして発熱素子の通電時間が決定されることより、被印字テープ150の種類や、単位印字データのオンドット数や、環境温度や、サーマルヘッドの温度に応じて、印字ヘッド11の印字エネルギがCPU212によって最適に増減制御される。その後、ステップS238に移る。
ステップS238では、CPU212は、上記ステップS204で取得された単位印字データに基づき、公知の手法により、印字終了位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字終了位置に到達していない場合、判定は満たされず(S238:NO)、ステップS220に戻り同様の手順を繰り返す。これにより、上述の繰り返し印字形成が続行される。一方、印字終了位置に到達した場合、判定は満たされ(S238:YES)、ステップS240に移る。
ステップS240では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子への通電を停止して、上記被印字テープ150に対する印字部155の形成を停止する。このとき、テープ搬送は継続して行われている。これにより、それ以降の印字済みテープ150′には、印字部155が存在しない空白状態となる。その後、ステップS250に移る。
ステップS250では、CPU212は、上記フラグFを0にする。その後、ステップS255に移る。
ステップS255では、CPU212は、上記ステップS203で取得された全長データに対応した上記カッター機構30による切断位置(巻き取り機構40によって印字済みテープロールR2として巻回される印字済みテープ150″の、搬送方向に沿った全長が操作者の意図する長さとなるような切断位置)まで、上記テープ搬送が達したか否かを判定する。切断位置に到達していない場合、判定は満たされず(S255:NO)、ループ待機する。切断位置に到達した場合、判定は満たされ(S255:YES)、ステップS260に移る。
ステップS260では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送が停止する。
その後、ステップS265で、CPU212は、モータ駆動回路222に制御信号を出力して上記カッターモータMCを駆動し、上記カッター機構30の作動により印字済みテープ150″の切断を行う。
そして、ステップS270に移り、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を開始して、印字済みテープ150″を巻き取り機構40の巻芯41のまわりに巻き取る。
その後、ステップS275で、CPU212は、上記ステップS265でのカッター機構30の切断動作から所定時間だけ経過したか否かを判定する。所定時間だけ経過していない場合、判定は満たされず(S275:NO)、ループ待機する。この所定時間は、印字済みテープ150″を取り機構40の巻芯41へと巻き取れるだけの時間でよい。所定時間が経過したらこの判定は満たされ(S275:YES)、ステップS280へ移る。
ステップS280では、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を停止する。これにより上記切断により生じた印字済みテープ150″を確実に印字済みテープロールR2で巻き取ることができる。そして、このフローを終了する。
<制御フロー(その2)>
上述したように、本実施形態では、被印字テープ150の種類や、単位印字データのオンドット数や、環境温度や、サーマルヘッドの温度に応じ、印字ヘッド11の発熱素子の印字エネルギが増減制御(具体的には通電時間が長短制御)される。そのためにCPU212により実行される、上記図14のフローとは別のフローを、図15に示す。なお、この図15に示すフローは、図14のフローと同時並行してCPU212によって実行される。このような同時並行処理は、例えば、コンピュータのOS等でしばしば行われる、「マルチタスク処理」と同様の公知の方式により、1つのCPU212によって行わせることができる。
図15において、まず、ステップS100で、CPU212は、被印字テープ150のテープ種別(種類)を取得する。このとき、被印字テープ150の種類情報は、適宜のセンサによって、装着されたテープカートリッジTKの種類を検出することによって取得するようにしてもよいし、操作者による上記操作部216又はPC217での操作入力結果に基づき取得するようにしてもよい。
その後、ステップS105で、CPU212は、前述の図10に示したテーブルを参照し、上記ステップS100で取得されたテープ種類に対応する、上記チョッピングデューティ時間の値と上記チョッピング個数係数の値と、をそれぞれ決定する。その後、ステップS110に移る。
ステップS110では、CPU212は、上記ステップS204で入力された単位印字データに基づき、当該単位印字データにおけるオンドット数(上記の例では平均オンドット数)を算出する。その後、ステップS115に移る。
ステップS115では、CPU212は、上記フラグFが「1」となっているか否かを判定する。フラグF=0のままの場合、判定は満たされず(S115:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。フラグF=1となっていた場合(上記ステップS217参照)、判定は満たされ(S115:YES)、ステップS120に移る。
ステップS120では、CPU212は、上記環境温度センサSR2の検出した、テープ印刷装置1の周辺の環境温度を取得する。その後、ステップS130に移る。
ステップS1330では、CPU212は、前述の図12に示したテーブルを参照し、上記ステップS100で取得されたテープ種類と、上記ステップS110で算出した平均オンドット数と、上記ステップS120で取得された環境温度と、に対応する通電制御パターン(上記通電制御パターン「0」〜「5」のいずれか)を決定する。なお、図12のテーブルの平均オンドット数「多」「少」の適用振り分けについては、予め適宜のしきい値を設けて、上記算出された平均オンドット数と当該しきい値との大小に応じて、区別して適用するようにすれば足りる。その後、ステップS140に移る。
その後、ステップS140で、CPU212は、上記ヘッド温度センサSR1の検出した印字ヘッド11の温度(ヘッド温度)を取得する。なお、このステップS140でのヘッド温度の取得は、後述のステップS160の判定が満たされずにステップS140→ステップS150→ステップS160→・・と複数回繰り返されるとき、その複数回のうちそれぞれの回において実行される。
その後、ステップS150で、CPU212は、上記ステップS140で取得したヘッド温度と、上記ステップS130で決定された通電制御パターンの番号とに基づき、上記図11のテーブルを参照して、対応する上記チョッピング個数の値と上記チョッピングデューティ係数の値と、をそれぞれ決定する。これにより、上記チョッピングデューティ時間に上記チョッピングデューティ係数を乗じた補正後のチョッピングデューティ時間と、上記チョッピング個数に上記チョッピング個数係数を乗じた補正後のチョッピング個数と、を用いて最終的な印字ヘッド11の発熱素子の(オンドット時の)通電時間が決定される。
その後、ステップS160で、CPU212は、上記フラグF=0となったか否かを判定する。前述の単位印字データによる繰り返し印字形成が実行中でフラグF=1のままであった(上記ステップS220、ステップS238参照)場合、判定は満たされず(S160:NO)、ステップS140に戻って同様の手順を繰り返す。印字形成が終了しフラグF=0となった(上記ステップS250参照)場合、判定は満たされ(S160:YES)、このフローを終了する。
なお、図15に示す上記ステップS100〜ステップS160、及び、上記図14のステップS220を実行するCPU212が、各請求項記載の通電制御手段として機能する。
<本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、前述のように決定されたチョッピングデューティ時間、チョッピングデューティ係数、チョッピング個数、チョッピング個数係数の値に対応して定まる通電時間によって、印字ヘッド11の発熱素子への通電が制御される。この結果、上記図11の各通電制御パターンや上記図12及び図12の相関を適宜に設定しておくことで、被印字テープ150の種類や、単位印字データのオンドット数や、環境温度や、サーマルヘッドの温度等、に基づき、通電時間を細かく最適に制御することができる。この結果、印字品質を向上することができる。
具体的には、例えば、熱伝導率が良い材質の被印字テープ150を用いる場合、被印字テープ150により印字ヘッド11の熱が比較的迅速に除去されることから、印字ヘッド11の温度が上がっても、通電時間(発熱素子をONする時間)をあまり減らさないように制御して印字かすれを防止することができる。
また例えば、平均オンドット数が少ない場合(例えば図13の「テープA」〜「テープD」それぞれの通電制御パターンにおいて、より番号が小さい通電制御パターンを参照)には、蓄熱する度合いが低いことから、印字ヘッド11の温度が上がっても、通電時間をあまり減らさないようにして上記同様に印字かすれを防止することができる。
さらに例えば、環境温度が低い場合(例えば図13の「テープA」〜「テープD」それぞれの通電制御パターンにおいて、より番号が小さい通電制御パターンを参照)には、被印字テープ150自体が冷えていることから、印字ヘッド11の温度が上がっても、通電時間をあまり減らさないように制御して上記同様に印字かすれを防止することができる。
そして、本実施形態においては、上記のようなきめの細かい制御を行う場合に、通電時間を構成する要素であるチョッピング個数及びチョッピングデューティ係数の値を、予め用意され記憶された複数の通電制御パターンを用いて決定する(図11参照)。その際、オンドット数と環境温度とに応じて、予め用意された相関(図12参照)に基づき、上記複数の通電制御パターンのうちいずれか1つを選択して用いるようにする。このように、パターン化した複数の制御態様の中から印字開始前・開始後の各パラメータに対応したものを適宜に選択して通電制御を行う。これにより、必要なデータ量を大幅に低減できる。この効果を比較例を用いて説明する。
図16に、比較例として、各パラメータの値の全組み合わせに対しそれぞれ個別に通電時間を設定する場合の例を、テーブル化して示す。この例では、被印字テープ150の種類(上記「テープA」〜「テープD」)、上記平均オンドット数(比較的多い場合と比較的少ない場合の2通り)、印字ヘッド11の温度区分(0[℃]以上25[℃]未満、25[℃]以上40[℃]未満、45[℃]以上60[℃]未満、65[℃]以上、の4区分)、環境温度の温度区分(0[℃]以上20[℃]未満、20[℃]以上40[℃]未満、40[℃]以上、の3区分)のそれぞれの全組み合わせに対し、上記チョッピングデューティ係数と上記チョッピング個数の値が個別に設定されている。この場合、テープ種類4通り×オンドット数2通り×ヘッド温度区分4通り×環境温度区分3通り×チョッピングデューティ係数とチョッピング個数の2通り、をすべて乗算して、合計192個のデータが必要となる。
これに対し、本実施形態では、上述のような手法をとることにより、図1のテーブルのデータ8個、図11のテーブルのデータ48個、図12のテーブルのデータ24個、をすべて加えた、合計80個のデータのみで足りる。したがって、上記比較例に比べ、必要なデータ量を大幅に低減でき、迅速な制御処理を行うことができる。
また、本実施形態においては、特に、被印字テープ150の種類に対応づけられた上記チョッピングデューティ時間の値や、印字ヘッド11の温度に対応づけられた上記チョッピング個数の値を、そのまま用いることなく、さらにそれらを係数(上記チョッピングデューティ係数及びチョッピング個数係数)で適宜に補正したものを用いる。すなわち、上記チョッピングデューティ時間をチョッピングデューティ係数によって補正して用い、また上記チョッピング個数を上記チョッピング個数係数によって補正して用いる。これにより、さらにきめ細やかに精度のよい通電制御を行うことができる。
また特に、本実施形態では、互いに異なる被印字テープ150の種類どうしにおいて、例えば横軸に印字ヘッド11の温度をとり縦軸に通電時間をとって表す挙動(図13参照)が比較的似ている場合に、両者に共通に用いる通電制御パターン(例えば上記通電制御パターン「1」「2」「3」「4」「5」のいずれか1つに相当)を作っておく。そして、その共通の通電制御パターンに対し、各被印字テープ150の種類に応じて上記チョッピング個数係数による微修正(上記図13における縦軸方向の増減倍補正)を行う。さらには、同じオンドット数・同じ環境温度でも被印字テープ150の種類によって印字ヘッド11の温度と通電時間の挙動が異なる場合に別の通電制御パターン(例えば上記5つの通電制御パターン「1」「2」「3」「4」「5」に相当)を作っておき、上記チョッピングデューティ係数による微修正(上記図13における横軸に沿った傾きの補正)を行うようにする。これによって、予め用意しておくべき通電制御パターンの数を減らすこともできるので、さらに必要なデータ量を減らすことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態においては、上記図12に示したように、オンドット数・環境温度と通電制御パターンとの相関が、被印字テープ150の種類別に異なる内容となるように設定されていたが、これに限られない。すなわち、例えば被印字テープ150の種類が少数に限定されている場合等においては、被印字テープ150の種類に関係のない内容としてもよい。この場合には、図12に示すテーブルに代えて、例えば図17に示すテーブルを用いれば足りる。
図17に示す例では、被印字テープ150の種類に関係なく、平均オンドット数が比較的少ないときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満(図中には単に「0℃」と記載。以下同様)のとき上記通電制御パターン「0」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満(図中には単に「20℃」と記載。以下同様)のとき上記通電制御パターン「1」、環境温度40[℃]以上(図中には単に「40℃」と記載。以下同様)のとき上記通電制御パターン「2」、に設定されている。平均オンドット数が比較的多いときは、環境温度0[℃]以上20[℃]未満のとき上記通電制御パターン「1」、環境温度20[℃]以上40[℃]未満のとき上記通電制御パターン「2」、環境温度40[℃]以上のとき上記通電制御パターン「3」、に設定されている。
このテーブルにおいても、上記図12と同様、環境温度が高いほど、かつ、平均オンドット数が大きいほど、上記制御パターンの番号が大きくなっている(言い替えれば通電時間が短くなっている。
このような変形例の手法においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
但し、例えばしきい値や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
なお、以上において、図7に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図14、図15等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。