[1.テープ印刷装置の外部構成]
先ず、本発明の一実施形態に係る「非安定通電制御方法」を実行するテープ印刷装置1の概略構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
図1に示すように、テープ印刷装置1は、筐体内部に内蔵されたテープカセット5(図2参照)から排出されるテープに対して印刷を行う印刷装置であり、筐体上面にキーボード3と液晶ディスプレイ4を有している。また、同じく筐体上面には平面視矩形状のテープカセット5を収納するカセット収納部8(図2参照)が収納カバー9で覆われて配設されている。また、このキーボード3の下側には、制御回路部が構成される制御基板(図示せず)が配設されている。また、カセット収納部8の左側面部には、印字されたテープが排出されるテープ排出口10が形成されている。また、テープ印刷装置1の右側面部には、接続インターフェイス(図示せず)が配設されている。この接続インターフェースは、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)と有線または無線接続をする際に用いられる。従って、テープ印刷装置1は、外部機器から送信された印字データを印刷することも可能である。
ここで、キーボード3は、文字入力キー3A、印刷キー3B、カーソルキー3C、電源キー3D、設定キー3E、リターンキー3R等の複数種類の入力キーを備えている。文字入力キー3Aは、文書データからなるテキストを作成する際の文字入力に用いられる。印刷キー3Bは、作成されたテキスト等からなる印字データの印刷実行を指令する際に用いられる。そして、カーソルキー3Cは、液晶ディスプレイ4上に表示されるカーソルを、上下左右に移動する際に用いられる。また、電源キー3Dは装置本体の電池電源81(後述する図4参照)をON又はOFFする際に用いられる。また、設定キー3Eはテープ印刷装置1の各種設定を行う際に用いられる。また、リターンキー3Rは、改行指令や各種処理の実行、選択決定を指令する際に用いられる。
一方、液晶ディスプレイ4は、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する表示装置であり、キーボード3によって作成される印字データ等を表示しうる。
そして、図2に示すように、テープ印刷装置1は、内部のカセット収納部8に対してテープカセット5を装着可能に構成されている。更に、テープ印刷装置1の内部には、テープ駆動印刷機構16及びカッター17を含むテープ切断機構が配設されている。テープ印刷装置1は、テープ駆動印刷機構16により、テープカセット5から引き出されたテープに対して、所望の印字データに基づく印刷を施すことができる。そして、テープ印刷装置1は、テープ切断機構のカッター17により、印刷されたテープを切断することができる。切断されたテープは、テープ印刷装置1の左側側面に形成されたテープ排出口10から排出される。
そして、テープ印刷装置1の内部には、カセット収納部フレーム18が配設されている。図2に示すように、このカセット収納部フレーム18には、テープカセット5が着脱自在に装着される。
テープカセット5は、その内部に、テープスプール32、リボン供給スプール34、巻取スプール35、基材供給スプール37、接合ローラ39を備えており、夫々回転自在に軸支されている。テープスプール32には、表層テープ31が巻回されている。表層テープ31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明なテープである。そして、リボン供給スプール34には、インクリボン33が巻回されている。このインクリボン33には、インク加熱により溶融或いは昇華するインクが塗布され、インク層を形成している。巻取スプール35は、印刷に使用されたインクリボン33を巻き取る。そして、基材供給スプール37には、二重テープ36が巻回されている。この二重テープ36は、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に対して、剥離テープを貼り合わせて構成されている。また、当該二重テープ36は、剥離テープが外側に位置するように、基材供給スプール37に巻回されている。そして、接合ローラ39は、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させる際に用いられる。
図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、アーム20が、軸20Aを中心として揺動可能に配設されている。アーム20の先端には、プラテンローラ21、搬送ローラ22が回動可能に軸支されている。プラテンローラ21、搬送ローラ22は、何れもゴム等の可撓性部材を表面に有している。
アーム20が最も時計回りに揺動すると、プラテンローラ21は、表層テープ31及びインクリボン33を、後述するサーマルヘッド41に対して圧接する。また、この時、搬送ローラ22は、表層テープ31及び二重テープ36を、接合ローラ39に対して圧接する。
また、カセット収納部フレーム18には、プレート42が立設されている。このプレート42のプラテンローラ21側側面には、サーマルヘッド41が配設されている。サーマルヘッド41は、図3に示すように表層テープ31及び二重テープ36の幅方向と同方向に、複数(例えば、1024個や2048個)の発熱素子41Aを1列に列設させたラインヘッド41B等で構成される。
すなわち、発熱素子41Aが1列に並んだ方向が「サーマルヘッド41の主走査方向D1」である。これに対して、「サーマルヘッド41の副走査方向D2」は、サーマルヘッド41上を表層テープ31及びインクリボン33が移動する方向と一致する。
図2に戻り、テープカセット5が所定位置に装着されると、プレート42は、テープカセット5の凹部43に嵌め込まれる。
また、図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、リボン巻取ローラ46、接合駆動用ローラ47が立設されている。テープカセット5が所定位置に装着されると、リボン巻取ローラ46は、テープカセット5の巻取スプール35内に挿入される。同様に、接合駆動用ローラ47は、テープカセット5の接合ローラ39内に挿入される。
また、カセット収納部フレーム18には、テープ搬送モータ2(後述する図4参照)が配設されている。テープ搬送モータ2による駆動力は、カセット収納部フレーム18に沿って配設されたギア列を介して、プラテンローラ21、搬送ローラ22、リボン巻取ローラ46及び接合駆動用ローラ47等に夫々伝達される。
従って、テープ搬送モータ2に対する電力供給により、テープ搬送モータ2の出力軸の回転が開始されると、巻取スプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21、搬送ローラ22も連動して回転を開始する。これにより、テープカセット5内の表層テープ31、インクリボン33、二重テープ36は、テープスプール32、リボン供給スプール34、基材供給スプール37からそれぞれ巻き解かれ、下流方向(テープ排出口10、巻取スプール35方向)へと搬送される。
その後、表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド41との間を通過する。従って、当該テープ印刷装置1において、表層テープ31、インクリボン33は、プラテンローラ21とサーマルヘッド41とによって挟まれた状態で搬送される。この時、サーマルヘッド41に配列された多数の発熱素子41Aは、制御部60(図4参照)によって、印字データ及び後述する「非安定通電制御方法」に関するプログラムに基づいて選択的かつ間欠的に通電(パルス印加)される。
ここで、各発熱素子41Aは、通電により発熱し、インクリボン33に塗布されているインクを溶融或いは昇華させるので、インクリボン33に形成されたインク層のインクは、表層テープ31にドット単位で転写される。この結果、表層テープ31には、印字データに基づくユーザ所望のドット画像が鏡像で形成される。
その後、インクリボン33は、サーマルヘッド41を通過すると、リボン巻取ローラ46によって巻き取られる。一方、表層テープ31は、二重テープ36と重ねられ、搬送ローラ22と接合ローラ39との間を通過する。この時、表層テープ31と二重テープ36は、搬送ローラ22、接合ローラ39により圧接され、積層テープ38となる。ここで、当該積層テープ38は、ドット印刷済みの表層テープ31の印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされる。従って、ユーザは、表層テープ31の印刷面の裏面側(即ち、積層テープ38の表面側)から印刷画像の正像を視認可能である。
その後、積層テープ38は、搬送ローラ22の更に下流に搬送され、カッター17を含むテープ切断機構に到達する。テープ切断機構は、カッター17と、切断用モータ72(図4参照)により構成されている。そして、カッター17は、固定刃17Aと、回動刃17Bを備えており、固定刃17Aに対して回動刃17Bを回動させることで切断対象物を剪断する鋏形式のカッターである。そして、回動刃17Bは、切断用モータ72によって支点を中心に往復揺動可能に配設されている。従って、切断用モータ72の駆動により、積層テープ38は、固定刃17A、回動刃17Bに剪断される。
切断された積層テープ38は、テープ排出口10を介して、テープ印刷装置1の外部へ排出される。そして、当該積層テープ38は、二重テープ36の剥離紙を剥がし、接着剤層を露出させれば、任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして使用可能である。
[2.テープ印刷装置の内部構成]
次に、テープ印刷装置1の制御構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図4に示すように、テープ印刷装置1内には、制御基板(図示せず)が配設されており、この制御基板上には、制御部60、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70が配設されている。
そして、制御部60は、CPU61、CG−ROM62、EEPROM63、ROM64、RAM66により構成されている。また、当該制御部60は、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70、電池電源81、及びヘッド駆動電圧検出回路82と接続されている。更に、制御部60は、液晶ディスプレイ4、カセットセンサ7、サーミスタ73、キーボード3、接続インターフェース71にも接続されている。
CPU61は、テープ印刷装置1における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。従って、このCPU61は、キーボード3等からの入力信号及び各種制御プログラム等に基づいて、液晶ディスプレイ4等の各周辺装置を制御する。
CG−ROM62は、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶するキャラクタージェネレータ用メモリである。また、EEPROM63は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリであり、当該テープ印刷装置1におけるユーザ設定等を示すデータを格納している。
そして、ROM64には、テープ印刷装置1における各種制御プログラムやデータが格納されている。従って、後述する「非安定通電制御方法」に関するプログラムは、このROM64に格納されている。
また、RAM66は、CPU61での演算結果等を一時的に格納する記憶装置である。このRAM66には、キーボード3の入力により生成された印字データや、外部機器78から接続インターフェース71を介して取り込まれた印字データも格納される。
そして、タイマ67は、テープ印刷装置1の制御を実行する際に所定期間の経過を計時する計時装置である。具体的には、タイマ67は、後述する「非安定通電制御方法」に関するプログラムにおいて、印字周期や、単位時間(250μ秒)や、サーマルヘッド41の発熱素子41Aに対する通電(パルス印加)等の開始・終了を判断する際に参照される。また、サーミスタ73はサーマルヘッド41の温度を検出する為のセンサであり、サーマルヘッド41に取り付けられている。また、ヘッド駆動電圧検出回路82は、ヘッド駆動検出電圧として、サーマルヘッド41の電圧を検出する為の回路である。
ヘッド駆動回路68は、CPU61からの制御信号に基づいて、後述する「非安定通電制御方法」に関する制御プログラムに基づいて、サーマルヘッド41に駆動信号を供給し、サーマルヘッド41の駆動状態を制御する回路である。この時、ヘッド駆動回路68は、発熱素子41A毎に対応付けられたストローブ番号に関連付けられた信号(ストローブ(STB)信号)に基づいて、各発熱素子41Aの通電(パルス印加)の有無を制御することで、サーマルヘッド41全体の発熱態様を制御する。そして、切断用モータ駆動回路69は、CPU61からの制御信号に基づいて切断用モータ72に駆動信号を供給し、切断用モータ72の駆動制御を行う回路である。また、搬送モータ駆動回路70は、CPU61からの制御信号に基づいてテープ搬送モータ2に駆動信号を供給し、テープ搬送モータ2の駆動制御を行う制御回路である。
[3.「非安定通電制御方法」の概要]
次に、上述したテープ印刷装置1で実行される本実施形態に係る「非安定通電制御方法」について説明する。
「非安定通電制御方法」では、印字周期内におけるサーマルヘッド41の通電を打ち切る決定を、非安定制御の短い時間で、サーマルヘッド41の印加電圧を監視しながら行う制御である。その結果、サーマルヘッド41の通電時間は、サーマルヘッド41の印加電圧の積分値と比例関係になる。
特に、本実施形態に係る「非安定通電制御方法」では、印字周期内におけるサーマルヘッド41の通電を打ち切る決定を、単位時間である250μ秒で、サーマルヘッド41の印加電圧を監視しながら行う制御である。図10(a)(b)に示されるように、印字周期Tsが単位時間(250μ秒)で分割され、単位時間(250μ秒)毎にサーマルヘッド41の通電(パルス印加)がチョッピング・デューティー比によって制御される。
チョッピング・デューティー比は、サーマルヘッド41の電圧に基づいて決定される。具体的には、図8のデータ・テーブルの「duty」の欄に示すように、サーマルヘッド41の電圧が7.2V〜7.7Vの範囲内にあるときは、チョッピング・デューティー比は100%であり、当該単位時間(250μ秒)中はサーマルヘッド41の通電(パルス印加)が継続される。つまり、低電圧時は、サーマルヘッド41への通電は一括通電である。
これに対して、サーマルヘッド41の電圧が7.7Vより大きいときは、チョッピング・デューティー比は100%未満となる。そのようなケースでは、当該単位時間(250μ秒)が開始されてから、当該単位時間(250μ秒)にチョッピング・デューティー比を乗算して得られた時間が経過するまで、サーマルヘッド41の通電(パルス印加)が継続される。その後は、当該単位時間(250μ秒)が経過するまで、サーマルヘッド41の通電(パルス印加)が中止される。つまり、7.7Vより大きい高電圧時は、単位時間(250μ秒)毎のチョッピング・デューティー比によるサーマルヘッド41への通電が行われる。
この点、サーマルヘッド41の電圧が7.7Vより大きいときのチョッピング・デューティー比は、サーマルヘッド41の電圧が7.2V〜7.7Vの範囲内にあるときの、つまり、チョッピング・デューティー比が100%であるときの、単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギー平均値に基づいて算出されている。つまり、高電圧時のチョッピング・デューティー比は、チョッピング・デューティー比が100%であるときの低電圧時の印加エネルギー平均値に基づいて算出されている。このようにして、低圧時の印加エネルギー平均値を使用することが可能な理由としては、単位時間(250μ秒)のような細かな時間当たりをもって、高電圧時のチョッピング・デューティー比を設定することが可能なことによる。これにより、高電圧時の各電圧時において必要な印加エネルギーの設定を正確に行うことができる。
具体的には、図8のデータ・テーブルの欄の「Power」によれば、サーマルヘッド41の電圧が7.2Vにあるときに単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーは「598」である。サーマルヘッド41の電圧が7.3Vにあるときに単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーは「600」である。サーマルヘッド41の電圧が7.4Vにあるときに単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーは「596」である。サーマルヘッド41の電圧が7.5Vにあるときに単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーは「608」である。サーマルヘッド41の電圧が7.6Vにあるときに単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーは「595」である。サーマルヘッド41の電圧が7.7Vにあるときに単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーは「603」である。
よって、エネルギー平均値は「600」となる。そこで、サーマルヘッド41の電圧が7.7Vより大きいときのチョッピング・デューティー比は、単位時間(250μ秒)中に与えられるサーマルヘッド41のエネルギーが「600」となるように決定されている。
このようにして、単位時間(250μ秒)毎に、サーマルヘッド41の通電(パルス印加)がチョッピング・デューティー比によって制御される。このようなチョッピング・デューティー比による制御は、単位時間(250μ秒)が経過する毎に算出される変数Cが「0」以上であれば、現在の印字周期Tsが経過していない限り、次の単位時間でも繰り返し行われる。しかしながら、このようなチョッピング・デューティー比による制御は、単位時間(250μ秒)が経過する毎に算出される変数Cが「0」未満になると、変数Cが「0」未満になった単位時間(250μ秒)が経過した以降は、次の印字周期Tsが開始されるまで中断され、サーマルヘッド41の通電(パルス印加)の中止が維持される。
この点、変数Cは、先ず、カセット収納部8に収納されたテープカセット5の種類に応じた定数が代入される。具体的には、図7のデータ・テーブルに示されるように、例えば、カセット収納部8に収納されたテープカセット5の種類がAテープであれば「55440」の定数が変数Cに代入される。その後、単位時間(250μ秒)毎に、サーマルヘッド41の電圧や周辺温度に基づいて決定される値が変数Cから減算される。
尚、サーマルヘッド41の電圧や周辺温度に基づいて決定される値は、以下のようにして算出される。すなわち、先ず、図8のデータ・テーブルの「C(V)」の欄により、サーマルヘッド41の電圧に対応する値が読み取られる。次に、図9のデータ・テーブルの「補正係数」の欄により、サーマルヘッド41の周辺温度に対応する補正係数が読み取られる。それぞれ読み取られた値と補正係数とを乗算することにより、サーマルヘッド41の電圧や周辺温度に基づいて決定される値が算出される。
つまり、上述した概要の本実施形態に係る「非安定通電制御方法」では、一つの印字周期Tsにおいてサーマルヘッド41の電圧が7.2V〜7.7Vの範囲内にあるときは、例えば、図10(a)に示されるように、当該印字周期Tsが開始された時点から変数Cが「0」となる印字周期Tsの途中まで、単位時間(250μ秒)毎に、チョッピング・デューティー比が100%であるサーマルヘッド41の通電(パルス印加)が継続される。尚、図10(a)に示される場合には、当該印字周期Tsが開始された時点から変数Cが「0」となる時点までが通電時間Tである。
これに対して、上述した概要の本実施形態に係る「非安定通電制御方法」では、一つの印字周期Tsにおいてサーマルヘッド41の電圧が7.7Vより大きいときは、例えば、図10(b)に示されるように、当該印字周期Tsが開始された時点から、単位時間(250μ秒)毎に、チョッピング・デューティー比が100%未満であるサーマルヘッド41の通電(パルス印加)が継続される。これにより、高電圧時でも、サーマルヘッド41の温度上昇を抑えることができるので、溶融によるインクリボン33の切断(所謂リボン切れ)や、発熱素子41Aに接触した表層テープ31の部分的な融着(所謂スティック不良)を軽減させることができる。
その後、当該印字周期Tsにおいてサーマルヘッド41の電圧が7.2V〜7.7Vの範囲内になると、上述したように、変数Cが「0」となる印字周期Tsの途中までは、単位時間(250μ秒)毎に、チョッピング・デューティー比が100%であるサーマルヘッド41の通電(パルス印加)が継続される。尚、図10(b)に示される場合でも、当該印字周期Tsが開始された時点から変数Cが「0」となる時点までが通電時間Tである。
[4.「非安定通電制御方法」のフローチャート]
次に、図5に示されたメインプログラムのフローチャートについて説明する。図5に示されたメインプログラムは、制御部60により実行される。
図5に示されたメインプログラムでは、テープ印刷装置1の電池電源81がONされると(S10)、先ず、S11において、本体処理が行われる。この処理では、印刷キー3Bによる印刷指示の受付が主に行われるが、さらに、印字データの表示や、印字データの編集、エラー時の処理等も、キーボード3や液晶ディスプレイ4等を用いて行われる。その後は、S12に進む。
S12では、印刷を開始するか否かが判定される。この判定は、上記S11での印刷指示の受付結果に基づいて行われる。ここで、印刷を開始しない場合(S12:NO)には、上記S11に戻って、上記S11の処理と当該S12の処理とが繰り返される。これに対して、印刷を開始する場合(S12:YES)には、S13に進む。
S13では、サーミスタ73を用いてサーマルヘッド41の周辺温度がアナログ−デジタル変換されながら読み取られる。この処理による温度情報の入手は、環境温度に応じた制御を行うためである。その後は、S14に進む。
S14では、カセット収納部8に収納されているテープカセット5の種類をカセットセンサ7を用いて読み取る。この処理による種類情報の入手は、テープカセット5の種類に応じた制御を行うためである。その後は、S15に進む。
S15では、テープ搬送モータ2がONされる。その後は、S16に進む。
S16では、テープカセット5内の表層テープ31が余白送りされたか否かが判定される。この判定により、いわゆる前余白が確保される。ここで、テープカセット5内の表層テープ31が余白送りされていない場合(S16:NO)には、上記S15に戻って、上記S15の処理と当該S16の処理が繰り返される。これに対して、テープカセット5内の表層テープ31が余白送りされている場合(S16:YES)には、S17に進む。
S17では、サーマルヘッド41のラインヘッド41Bに対応する1ラインのデータ入力が行われる。つまり、印刷イメージデータのビットの並びが、サーマルヘッド41の副走査方向D2からサーマルヘッド41の主走査方向D1に変えられる、いわゆる縦横変換が行われる。そのような縦横変換されたデータから、サーマルヘッド41の副走査方向D2の1ライン目のデータが取り出される。その後は、S18に進む。
S18では、データ処理が行われる。この処理により、上記S17における1ラインのデータをサーマルヘッド41の通電制御を可能にするデータに変換される。その後は、S19に進む。
S19では、上記S18で処理されたデータがヘッド駆動回路68を介してサーマルヘッド41に転送される。この時点で、サーマルヘッド41のシフトレジスタには印字データが転送されており、ラッチが終了している状態にある。その後は、S20に進む。
S20では、本実施形態に係る「非安定通電制御方法」が実行される非安定通電制御が行われる。非安定通電制御の詳細は後述する。その後は、S21に進む。
S21では、エラーが起きたか否かが判定される。ここでのエラーには、電池交換エラー等がある。ここで、エラーが起きた場合(S21:YES)には、印字を強制終了させた後に、上記S11に戻って、上記S11以降の各処理が繰り返される。これに対して、エラーが起きていない場合(S21:NO)には、S22に進む。
S22では、サーマルヘッド41の副走査方向D2の全ラインについて上記S17乃至上記S20の各処理が終了したか否かが判定される。ここで、サーマルヘッド41の副走査方向D2の全ラインについて上記S17乃至上記S20の各処理が終了していない場合(S22:NO)には、上記S17に戻って、上記S17以降の各処理が繰り返される。これにより、上記S20の非安定通電制御がサーマルヘッド41の副走査方向D2の各ライン毎に行われる。これに対して、サーマルヘッド41の副走査方向D2の全ラインについて上記S17乃至上記S20の各処理が終了した場合(S22:YES)には、S23に進む。
S23では、テープカセット5内の表層テープ31が余白送りされたか否かが判定される。この判定により、いわゆる後余白が確保される。ここで、テープカセット5内の表層テープ31が余白送りされていない場合(S23:NO)には、当該S23に戻って、当該S23の処理が繰り返される。これに対して、テープカセット5内の表層テープ31が余白送りされている場合(S23:YES)には、S24に進む。
S24では、テープ搬送モータ2がOFFされる。その後は、S25に進む。
S25では、印字に関する制御を終了させる。その後は、上記S11に戻って、上記S11以降の各処理が繰り返される。
次に、上記図5のS20の非安定通電制御について説明する。上記図5のS20の非安定通電制御では、図6に示すように、先ず、S31において、テープカセット5の種類に応じた定数が変数Cに代入される。変数Cは、RAM66に確保される。
ここで、テープカセット5の種類に応じた定数について説明する。テープカセット5の種類に応じた定数とは、必要な印字エネルギーに関連した固定値であり、印字媒体別に設定されたものである。具体的には、テープカセット5の種類に応じた定数は、図7に示されたデータ・テーブルによると、例えば、テープカセット5の種類がAテープの場合には「55400」、Bテープの場合には「60440」、Cテープの場合には「52440」である。図7に示されたデータ・テーブルは、ROM64に格納されている。つまり、テープカセット5の種類に応じた定数が予め定められたデータ・テーブルがROM64に格納されている。
S32に進むと、サーミスタ73を用いてサーマルヘッド41の周辺温度がアナログ−デジタル変換されながら読み取られる。この処理による温度情報は、RAM66に確保された変数THに代入される。その後は、S33に進む。
S33では、サーマルヘッド41への通電が開始される。その後は、S34に進む。
S34では、通常状態にあるサーマルヘッド41の電圧がアナログ−デジタル変換されながら読み取られる。その読み取られた電圧を変数Vに代入する。変数Vは、RAM66に確保される。その後は、S35に進む。
S35では、チョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyを決定する。その決定の際には、上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)をパラメータにしながらデータ・テーブルに基づいて決定される。そのデータ・テーブルの具体例を図8に示す。図8に示されたデータ・テーブルの「duty」の欄が、チョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyである。尚、変数CHP_Dutyは、RAM66に確保される。図8に示されたデータ・テーブルは、ROM64に格納されている。その後は、S36に進む。
S36では、サーマルヘッド41のパルスON時間(サーマルヘッド41への通電)を継続するか否かが判定される。この判定では、単位時間である250μ秒と上記変数CHP_Dutyとを乗算することにより算出されたサーマルヘッド41のパルスON時間に基づいて行われる。ここで、サーマルヘッド41のパルスON時間(サーマルヘッド41への通電)を継続する場合(S36:YES)には、当該S36自身に戻って、この判定処理が繰り返される。これに対して、サーマルヘッド41のパルスON時間(サーマルヘッド41への通電)を継続しない場合(S36:NO)には、S37に進む。
S37では、サーマルヘッド41への通電が中止される。その後は、S38に進む。
S38では、上記S33の通電開始から単位時間(250μ秒)が経過したか否かが判定される。ここで、上記S33の通電開始から単位時間(250μ秒)が経過していない場合(S38:NO)には、当該S38自身に戻って、この判定処理が繰り返される。これに対して、上記S33の通電開始から単位時間(250μ秒)が経過した場合(S38:YES)には、S39に進む。
S39では、上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)に関連した値C(V)を変数Cから減算した値が変数Cに代入される。上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)に関連した値C(V)は、例えば、図8に示されたデータ・テーブルの「C(V)」の欄から読み出される。具体的には、サーマルヘッド41の電圧が9.0Vであれば「4564」が、上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)に関連した値C(V)として読み出される。また、サーマルヘッド41の電圧が7.5Vであれば「4164」が、上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)に関連した値C(V)として読み出される。
但し、上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)に関連した値C(V)は、上記S32の変数TH(サーマルヘッド41の周辺温度)に関連した補正係数K(TH)で補正される。補正係数K(TH)は、例えば、図9に示されたデータ・テーブルの「補正係数」の欄から読み出される。具体的には、上記S32の変数TH(サーマルヘッド41の周辺温度)が14℃であれば「0.80」が、上記S32の変数TH(サーマルヘッド41の周辺温度)に関連した補正係数K(TH)として読み出される。また、上記S32の変数TH(サーマルヘッド41の周辺温度)が25℃であれば「1.00」が、上記S32の変数TH(サーマルヘッド41の周辺温度)に関連した補正係数K(TH)として読み出される。図9に示されたデータ・テーブルは、ROM64に格納されている。
尚、S39で使用されるサーマルヘッド41の周辺温度やサーマルヘッド41の電圧については、上記S32の変数TH(サーマルヘッド41の周辺温度)と上記S34の変数V(サーマルヘッド41の電圧)とがそのまま使用される。その後は、S40に進む。
S40に進むと、変数Cが「0」以下である否かが判定される。ここで、変数Cが「0」以下でない場合(S40:NO)には、上記S32に戻って、上記S32以降の処理が繰り返される。これに対して、変数Cが「0」以下である場合(S40:YES)には、S41に進む。
S41では、サーマルヘッド41への通電が中止される。その後は、S42に進む。
S42では、印字周期Tsが過ぎたか否かが判定される。ここで、印字周期Tsが過ぎていない場合(S42:NO)には、当該S42に戻って、この判定処理が繰り返される。これに対して、印字周期Tsが過ぎた場合(S42:YES)には、上記図5に示されたメインプログラムに戻って、上記S21の処理に進む。
[5.まとめ]
すなわち、本実施の形態に係る「非安定通電制御方法」を実行するテープ印刷装置1は、発熱素子41Aの熱によって表層テープ31への記録を行うサーマルヘッド41の発熱素子41Aと、サーマルヘッド41に電圧を印加するヘッド駆動回路68と、サーマルヘッド41の印加電圧を検出するヘッド駆動電圧検出回路82と、サーマルヘッド41の発熱素子41Aの周辺温度を検出するサーミスタ73と、表層テープ31(テープカセット5)の種類に応じた定数を記憶するROM64と、単位時間(250μ秒)の経過を計測するタイマ67と、制御部60とを備える。
制御部60は、表層テープ31(テープカセット5)の種類に応じた定数(変数C)から所定値(C(V×K(TH)))を減算し(S39)、ヘッド駆動電圧検出回路82で検出された電圧(変数V)に応じ、チョッピング・デューティー比を算出し(S35)、単位時間(250μ秒)を複数繰り返してなるサーマルヘッド41の通電時間Tを制御する(S31乃至S40)。
そして、テープ印刷装置1で実行される本実施の形態に係る「非安定通電制御方法」では、(1)サーマルヘッド41で印字される表層テープ31(テープカセット5)の種類に応じた固定値が変数Cに設定され(S31)、(2)サーマルヘッド41の通電が当該印字周期Tsの直後に開始されると共に(S33)、サーマルヘッド41の周辺温度及び電圧が検出され(S32、S34)、(3)その検出された電圧を介してチョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyが決定され(S35)、(4)サーマルヘッド41の通電が開始された時点からその決定されたチョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyに基づいて算出されたパルスオン時間が経過する時点までサーマルヘッド41の通電が維持され(S36:YES)、(5)サーマルヘッド41の通電が開始された時点から単位時間(250μ秒)が経過する時点までの間のうち、その決定されたチョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyに基づいて算出されたパルスオン時間が経過した時点から単位時間(250μ秒)が経過する時点までサーマルヘッド41の通電が中止され(S37、S38:NO)、(6)温度及び電圧を介して算出された計算値であるC(V)×K(TH)が変数Cから減算され(S39)、(7)その減算された変数Cが所定値(である「0」)より大きければ(S40:NO)、上記(2)〜上記(6)の各ステップが繰り返し実行される一方、その減算された変数Cが所定値(である「0」)以下であれば当該印字周期Tsが終わる時点までサーマルヘッド41の通電中止が維持される(S41、S42:NO)。上記(1)〜上記(7)の各ステップは印字周期Ts毎に実行される。
すなわち、テープ印刷装置1で実行される本実施の形態に係る「非安定通電制御方法」では、(7)その減算された変数Cが所定値(である「0」)より大きければ(S40:NO)、上記(2)〜上記(6)の各ステップが繰り返し実行される一方、その減算された変数Cが所定値(である「0」)以下であれば当該印字周期Tsが終わる時点までサーマルヘッド41の通電中止が維持される(S41、S42:NO)。この点、(3)のS35では、その検出されたサーマルヘッド41の電圧を介してチョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyが決定され、(6)のS39では、サーマルヘッド41の温度及び電圧を介して算出された計算値であるC(V)×K(TH)が変数Cから減算される。つまり、少なくとも、(6)のステップにおいてサーマルヘッド41の周辺温度を制御に反映させることができる。
また、テープ印刷装置1で実行される本実施の形態に係る「非安定通電制御方法」では、S34で検出された電圧が閾値である7.7V以下である場合には、図8のデータ・テーブルの「duty」の欄に示されるように、S35で決定されるチョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyが「100%」(すなわち、「1」)にされる。つまり、低電圧時でも、印加エネルギーを十分に確保するようにしているので、サーマルヘッド41の通電時間を適切に制御することができる。
また、テープ印刷装置1で実行される本実施の形態に係る「非安定通電制御方法」では、S34で検出された電圧が閾値である7.7Vより大きい場合には、図8のデータ・テーブルの「duty」や「Power」の欄に示されるように、S35で決定されるチョッピング・デューティー比である変数CHP_Dutyは、閾値である7.7V以下にある低電圧時の所定範囲(7.2V〜7.7V)の各電圧時に発生する単位時間(250μ)当たりのエネルギー平均値に基づいて設定されている。よって、高電圧時でも、サーマルヘッド41の通電時間を適切に制御することができる。
[6.その他]
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、上記図6の非安定通電制御において、通常状態にあるサーマルヘッド41の電圧を変数Vに代入すること(S34)は、サーマルヘッド41への通電が開始される処理(S33)の前に行ってもよい。