以下、本発明に係るサーマルプリンタを、テープカセットから排出されるテープに対して印刷を行うテープ印刷装置1に具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るテープ印刷装置1の概略構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るテープ印刷装置1は、筐体内部に内蔵されたテープカセット5(図2参照)から排出されるテープに対して、サーマルヘッド41により印刷を行う。
図1に示すように、テープ印刷装置1は、キーボード3と、液晶ディスプレイ4を筐体上面に有している。そして、筐体上面には、収納カバー9が開閉自在に配設されている。当該収納カバー9は、閉じた場合に、筐体内部に形成されたカセット収納部8を覆う。カセット収納部8は、平面視矩形状のテープカセット5を収納する。更に、尚、このキーボード3の下側には、制御基板(図示せず)が配設されている。
カセット収納部8の左側面部には、テープ排出口10が形成されている。印刷されたテープは、テープ排出口10から排出される。又、接続インターフェイス(図示せず)が、テープ印刷装置1の右側面部に配設されている。当該接続インターフェースは、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)と有線又は無線接続をする際に用いられる。従って、テープ印刷装置1は、外部機器から送信された印刷データを印刷し得る。
キーボード3は、文字入力キー3A、印刷キー3B、カーソルキー3C、電源キー3D、設定キー3E、リターンキー3R等の複数種類の入力キーを備えている。文字入力キー3Aは、文書データからなるテキストを作成する際の文字入力に用いられる。印刷キー3Bは、作成されたテキスト等からなる印刷データの印刷実行を指令する際に用いられる。そして、カーソルキー3Cは、液晶ディスプレイ4上に表示されるカーソルを、上下左右に移動する際に用いられる。又、電源キー3Dは装置本体の電源をON又はOFFする際に用いられる。又、設定キー3Eはテープ印刷装置1の各種設定(印刷密度の設定など)を行う際に用いられる。又、リターンキー3Rは、改行指令や各種処理の実行、選択決定を指令する際に用いられる。
一方、液晶ディスプレイ4は、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する表示装置であり、キーボード3によって作成された印刷データ(図4参照)の内容や、各種設定画面等を表示し得る。
図2に示すように、テープ印刷装置1は、内部のカセット収納部8に対してテープカセット5を装着可能に構成されている。更に、テープ印刷装置1は、筐体内部に、テープ駆動印刷機構16と、テープ切断機構とを有している。従って、テープ印刷装置1は、テープ駆動印刷機構16により、テープカセット5から引き出されたテープに対して、所望の印刷データに基づく印刷を施すことができる。
そして、テープ切断機構は、固定刃17Aと回動刃17Bから構成されるカッター17を有している。従って、テープ印刷装置1は、テープ切断機構のカッター17により、印刷されたテープを切断し得る。上述したように、切断されたテープは、テープ排出口10から排出される。
テープ印刷装置1の内部には、カセット収納部フレーム18が配設されている。図2に示すように、このカセット収納部フレーム18には、テープカセット5が着脱自在に装着される。
テープカセット5は、テープスプール32、リボン供給スプール34、巻取スプール35、基材供給スプール37、接合ローラ39を、その内部に備えており、夫々を回転自在に軸支している。テープスプール32には、表層テープ31が巻回されている。表層テープ31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明なテープである。そして、リボン供給スプール34には、インクリボン33が巻回されている。インクリボン33には、加熱により溶融或いは昇華するインクが塗布されている。巻取スプール35は、印刷に使用されたインクリボン33を巻き取る。そして、基材供給スプール37には、二重テープ36が巻回されている。二重テープ36は、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に対して、剥離テープを貼り合わせて構成されている。又、当該二重テープ36は、剥離テープが外側に位置するように、基材供給スプール37に巻回されている。そして、接合ローラ39は、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させる際に用いられる。
図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、アーム20が、軸20Aを中心として揺動可能に配設されている。アーム20先端には、プラテンローラ21、搬送ローラ22が回動可能に軸支されている。プラテンローラ21、搬送ローラ22は、何れもゴム等の可撓性部材を表面に有している。
アーム20が最も時計回りに揺動すると、プラテンローラ21は、表層テープ31及びインクリボン33を、後述するサーマルヘッド41に対して圧接する。この時、搬送ローラ22は、表層テープ31及び二重テープ36を、接合ローラ39に対して圧接する。
又、カセット収納部フレーム18には、プレート42が立設されている。プレート42のプラテンローラ21側側面には、サーマルヘッド41が配設されている。図3に示すように、サーマルヘッド41は、表層テープ31及び二重テープ36の幅方向と同方向に、複数(例えば、128個や256個)の発熱素子41Aを1列に列設することで構成される。従って、当該サーマルヘッド41の主走査方向は、表層テープ31等の幅方向と同一である。そして、テープカセット5が所定位置に装着されると、プレート42は、テープカセット5の凹部43に嵌め込まれる。
又、カセット収納部フレーム18には、リボン巻取ローラ46、接合駆動用ローラ47が立設されている(図2参照)。テープカセット5が所定位置に装着されると、リボン巻取ローラ46は、テープカセット5の巻取スプール35内に挿入される。同様に、接合駆動用ローラ47は、テープカセット5の接合ローラ39内に挿入される。
そして、カセット収納部フレーム18には、テープ搬送モータ(図示せず)が配設されている。テープ搬送モータによる駆動力は、カセット収納部フレーム18に沿って配設されたギア列を介して、プラテンローラ21、搬送ローラ22、リボン巻取ローラ46及び接合駆動用ローラ47等に夫々伝達される。従って、テープ搬送モータに対する電力供給により、テープ搬送モータの回転駆動が開始されると、巻取スプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21、搬送ローラ22も連動して回転を開始する。これにより、テープカセット5内の表層テープ31、インクリボン33、二重テープ36は、テープスプール32、リボン供給スプール34、基材供給スプール37からそれぞれ巻き解かれ、搬送方向下流方向(テープ排出口10、巻取スプール35方向)へと搬送される。
その後、表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド41との間を通過する。従って、当該テープ印刷装置1において、表層テープ31、インクリボン33は、プラテンローラ21とサーマルヘッド41とによって挟まれた状態で搬送される。この時、サーマルヘッド41に配列された多数の発熱素子41Aは、制御部60(図5参照)によって、印刷データ(図4参照)及び後述する通電制御処理プログラム(図6)に基づいて選択的かつ間欠的に通電される。
ここで、印刷データ50は、上述したように、キーボード3に対する操作、或いは、接続インターフェースを介した外部機器から入力される。図4に示すように、当該印刷データ50は、各発熱素子41Aに対応するドットの集合により構成され、複数の印刷ラインデータ55により構成される。各印刷ラインデータ55は、サーマルヘッド41に列設された発熱素子41Aの数と同数のドットにより構成され、一の印刷周期Tにおける各発熱素子41Aの通電・非通電を規定している。そして、印刷データ50は、副走査方向(即ち、テープの搬送方向)に所定の順番で並んだ複数の印刷ラインデータ55を有している。即ち、当該テープ印刷装置1は、各印刷ラインデータ55を所定の順序に従って、印刷周期T単位で処理することにより、テープに対して印刷データ50に基づく印刷を行う。
そして、各発熱素子41Aは、通電により発熱し、インクリボン33に塗布されているインクを溶融或いは昇華させる。従って、インクリボン33のインクは、表層テープ31にドット単位で転写される。この結果、表層テープ31には、印刷データに基づくユーザ所望のドット画像が鏡像で形成される。
サーマルヘッド41を通過すると、インクリボン33は、リボン巻取ローラ46によって巻き取られる。一方、表層テープ31は、二重テープ36と重ねられ、搬送ローラ22と接合ローラ39との間を通過する。この時、表層テープ31と二重テープ36は、搬送ローラ22、接合ローラ39により圧接され、積層テープ38となる。ここで、当該積層テープ38は、ドット印刷済みの表層テープ31の印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされて構成される。従って、ユーザは、表層テープ31の印刷面の裏面側(即ち、積層テープ38の表面側)から印刷画像の正像を視認し得る。
その後、積層テープ38は、搬送ローラ22から搬送方向下流に搬送され、カッター17を含むテープ切断機構に到達する。テープ切断機構は、カッター17と、切断用モータ72(図4参照)により構成されている。ここで、カッター17は、固定刃17Aに対して回動刃17Bを回動させることで切断対象物を剪断する鋏形式のカッターである。そして、回動刃17Bは、切断用モータ72によって支点を中心に往復揺動可能に配設されている。従って、切断用モータ72の駆動により、積層テープ38は、固定刃17A、回動刃17Bに剪断される。
切断された積層テープ38は、テープ排出口10を介して、テープ印刷装置1外部へ排出される。当該積層テープ38は、二重テープ36の剥離紙を剥がし、接着剤層を露出させれば、任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして使用可能である。
次に、テープ印刷装置1の制御構成について図5を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、テープ印刷装置1内には、制御基板(図示せず)が配設されており、当該制御基板上には、制御部60、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70が配設されている。
制御部60は、CPU61と、CG−ROM62と、EEPROM63と、ROM64と、RAM66とにより構成される。又、当該制御部60は、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70と接続されている。更に、制御部60は、液晶ディスプレイ4、カセットセンサ7、サーミスタ73、キーボード3、接続インターフェース71と接続されている。
CPU61は、テープ印刷装置1における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。従って、このCPU61は、キーボード3等からの入力信号や後述する通電制御処理プログラム等の各種制御プログラムに基づいて、各周辺装置を制御する。
CG−ROM62は、キャラクタージェネレータ用メモリであり、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶している。又、EEPROM63は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリであり、当該テープ印刷装置1におけるユーザ設定等を示すデータを格納している。
そして、ROM64は、テープ印刷装置1における各種制御プログラムやデータを格納している。従って、後述する通電制御処理プログラムは、当該ROM64に格納されている。又、RAM66は、CPU61での演算結果等を一時的に格納する記憶装置である。RAM66には、キーボード3の入力により生成された印刷データや、外部機器78から接続インターフェース71を介して取り込まれた印刷データも格納される。タイマ67は、テープ印刷装置1の制御を実行する際に所定期間の経過を計時する計時装置である。サーミスタ73は、サーマルヘッド41の温度を検出する為のセンサであり、サーマルヘッド41に取り付けられている。
ヘッド駆動回路68は、CPU61からの制御信号、後述する通電制御処理プログラム等に基づいて、サーマルヘッド41に駆動信号を出力し、サーマルヘッド41の駆動態様を制御する。そして、ヘッド駆動回路68は、発熱素子毎に対応付けられたストローブ番号に基づき、各発熱素子41Aの通電の有無を制御することで、サーマルヘッド41全体の発熱態様を制御する。
そして、切断用モータ駆動回路69は、CPU61からの制御信号に基づいて切断用モータ72に駆動信号を出力し、切断用モータ72の駆動制御を行う。又、搬送モータ駆動回路70は、CPU61からの制御信号に基づいてテープ搬送モータ2に駆動信号を出力し、テープ搬送モータ2の駆動制御を行う。
続いて、本実施形態に係る通電制御処理プログラムについて、図6を参照しつつ詳細に説明する。当該通電制御処理プログラムは、印刷データ50を印刷する際にCPU61により実行され、各発熱素子41Aに対する通電制御を行うためのプログラムである。
先ず、S1においては、CPU61は、印刷ラインデータ処理を実行する。当該印刷ラインデータ処理(S1)では、CPU61は、印刷データ50(図4参照)の先読みを行い、加熱条件に適合するドットを確認(計数)して、各印刷ラインデータ55を作成する。そして、CPU61は、印刷ラインデータ55をサーマルヘッド41にデータ転送する。その後、CPU61は、S2に処理を移行する。
S2では、CPU61は、直前の印刷周期における加熱期間Hが印刷周期Tの始期から遅延した遅延状態であるか否かを判断する。遅延状態である場合(S2:YES)、CPU61は、S6に処理を移行する。一方、遅延状態でない場合(S2:NO)、CPU61は、S3に処理を移行する。
上述したように、一の印刷ラインデータ55の印刷は、一の印刷周期Tにより行われ、印刷周期Tは、加熱期間Hと、非加熱期間Cにより構成される。ここで、本実施形態においては、通常、図7(A)に示すように、印刷周期Tは、印刷周期Tの始期と同時に加熱期間Hを開始し、当該加熱期間H経過後に、非加熱期間Cを有している。この図7(A)に示す状態である場合、CPU61は、遅延状態でないと判断する。そして、本実施形態に係るテープ印刷装置1は、所定の遅延条件を満たす場合、加熱期間Hの始期を当該印刷周期Tの始期から所定の加熱遅延期間L分遅延させたタイミングとした遅延状態に設定し得る(図7(B)及び図8参照)。例えば、図7(B)や図8(A)〜(C)に示す状態である場合、CPU61は、遅延状態であると判断する。尚、図7及び図8は、何れも、縦軸にSTB信号の電圧レベルをとり、横軸に時間軸をとったグラフである。
S3に移行すると、CPU61は、遅延条件を満たすか否かを判断する。遅延条件は、加熱期間Hの始期を、当該印刷周期Tの始期から遅延させる際の条件を意味する。本実施形態において、遅延条件は、「加熱条件に適合するドット(即ち、発熱素子41A)の数が所定数以上となる印刷ラインデータ55が、現在の印刷対象である印刷ラインデータ55を含んで2以上連続していること」及び「次に印刷対象となる印刷ラインデータ55における加熱条件に適合するドットが所定数未満であること」の両者を満たすことである。遅延条件を満たす場合(S3:YES)、CPU61は、S4に処理を移行する。一方、遅延条件を満たさない場合(S3:NO)、CPU61は、S8に処理を移行する。
S4では、CPU61は、遅延条件を満たすことに基づいて、加熱遅延タイマの計時を開始する。加熱遅延タイマは、加熱遅延期間Lを計時するためのタイマであり、CPU61のクロック数を用いて計時を行う。換言すれば、加熱遅延タイマは、加熱遅延期間Lを設けた場合において、印刷周期Tの始期を基準とした加熱期間Hの始期を計時するためのタイマである。尚、上記遅延条件を満たす場合、図7(B)に示すように、加熱期間Hは、印刷周期Tの始期から加熱遅延期間L分だけ遅延して開始され、印刷周期Tの終期と同時に終了するように設定される。加熱遅延タイマの計時を開始すると、CPU61は、S5に処理を移行する。
S5においては、CPU61は、当該加熱遅延タイマの計時結果に基づいて、印刷周期Tの始期から加熱遅延期間Lを経過したか否かを判断する。加熱遅延期間Lを経過した場合(S5:YES)、CPU61は、S8に処理を移行する。一方、未だ加熱遅延期間Lを経過していない場合(S5)、CPU61は、加熱遅延期間Lを経過するまで(即ち、加熱期間Hの始期となるまで)、処理を待機する。
直前の印刷周期Tが遅延状態(図7(B)又は図8参照)にある場合に移行するS6においては、CPU61は、遅延解消条件を満たすか否かを判断する。遅延解消条件とは、図7(B)、図8に示すように、加熱期間H前に設定されている加熱遅延期間Lを一気に解消し、通常状態(図7(A)参照)に戻すための条件である。本実施形態において、遅延解消条件は、「次に印刷対象となる印刷ラインデータ55において、加熱条件に適合するドットの数が0であること」を意味する。遅延解消条件を満たす場合(S6:YES)、CPU61は、加熱遅延期間Lを0とすることで、加熱期間Hの始期を印刷周期Tの始期と同期させ(図7(A)参照)、S8に処理を移行する。これにより、遅延解消条件を満たす場合、CPU61は、一気に加熱遅延期間Lを解消し、通常の状態に戻し得る。尚、直前の印刷周期Tが図8(A)〜(C)に示す場合であっても、遅延解消条件を満たせば、CPU61は、一気に加熱遅延期間Lを解消し、通常状態に戻す。一方、遅延解消条件を満たさない場合(S6:NO)、CPU61は、S7に処理を移行する。
S7では、CPU61は、遅延解消処理を実行する。図7(B)に示すように、加熱遅延期間Lは、第1分割遅延期間La、第2分割遅延期間Lb、第3分割遅延期間Lc、第4分割遅延期間Ldにより構成され得る。第1分割遅延期間La〜第4分割遅延期間Ldは、遅延条件を満たした直後の加熱遅延期間L(図7(B)参照)を4等分した期間である。当該遅延解消処理(S7)では、CPU61は、直前の印刷周期Tにおける加熱遅延期間Lを構成する分割遅延期間の数よりも1少ない数で、現在の印刷周期Tにおける加熱遅延期間Lを設定する。
例えば、直前の印刷周期Tにおける加熱遅延期間Lが第1分割遅延期間La〜第4分割遅延期間Ldで構成されていた場合(図7(B)参照)、CPU61は、現在の印刷周期Tにおける加熱遅延期間Lを、第1分割遅延期間La〜第3分割遅延期間Lcにより構成する(図8(A)参照)。同様に、直前の印刷周期Tが図8(A)の状態であれば、現在の印刷周期Tに係る加熱遅延期間Lを、第1分割遅延期間La、第2分割遅延期間Lbにより構成する。又、直前の印刷周期Tが図8(B)の状態であれば、現在の印刷周期Tに係る加熱遅延期間Lを、第1分割遅延期間Laにより構成する。そして、遅延解消処理(S7)では、CPU61は、現在の加熱遅延期間Lを構成する分割遅延期間に応じた数値を、加熱遅延タイマの値として設定する。尚、直前の印刷周期Tが図8(C)の状態であれば、CPU61は、現在の印刷周期Tに係る加熱遅延期間Lを解消し、加熱遅延タイマの値を「0」に設定する。遅延解消処理(S7)を終了すると、CPU61は、S8に処理を移行する。
S8に移行すると、CPU61は、印刷対象である印刷ラインデータ55に基づいて、ヘッド駆動回路68に制御信号を出力し、各発熱素子41Aの加熱を開始する。これにより、当該印刷ラインデータ55において加熱条件に適合するドットが通電される。その後、CPU61は、S9に処理を移行する。
S9では、CPU61は、加熱期間Hを経過したか否かを判断する。加熱期間Hは所定期間であり、CPU61は、タイマ67等の値を参照することで、当該判断を行う。加熱期間Hを経過している場合(S9:YES)、CPU61は、S11に処理を移行する。一方、未だ加熱期間Hを経過していない場合(S9:NO)、CPU61は、S10に処理を移行する。
S10に移行すると、CPU61は、次ラインデータ転送処理を実行する。当該次ラインデータ転送処理(S10)では、CPU61は、次に印刷対象となる印刷ラインデータ55をサーマルヘッド41へ転送する。具体的には、CPU61は、次に印刷対象となる印刷ラインデータ55に基づくパルスデータを、サーマルヘッド41に転送する。その後、CPU61は、S9に処理を戻す。尚、図6においては、加熱期間Hを経過するまでS10に移行するように構成されているが、当該印刷周期Tで最初に移行した場合のみ、CPU61は、S10における上記処理を行えばよく、その後に移行した場合は、何等の処理を行うことなく、S9に処理を戻す。
S11においては、CPU61は、印刷データ50に基づく印刷を完了したか否かを判断する。即ち、CPU61は、印刷データ50を構成する全ての印刷ラインデータ55の印刷処理を終了したか否かを判断する。印刷データ50に基づく印刷を完了している場合(S11:YES)、CPU61は、通電制御処理プログラムを終了する。一方、未だ印刷対象となっていない印刷ラインデータ55が存在する場合(S11:NO)、CPU61は、S12に処理を移行する。
S12では、CPU61は、その他の処理を実行する。この時、CPU61は、発熱素子41Aに対する通電を停止し、非加熱期間Cとする(図7、図8参照)。その後、CPU61は、S2に処理を戻す。
次に、上述した通電制御処理プログラムに基づく印刷周期Tと、サーマルヘッド41の温度の関係性について、図9を参照しつつ説明する。図9上図は、縦軸にSTB信号の電圧レベルをとり、横軸に時間軸をとったグラフであり、図9下図は、縦軸に発熱素子41Aの温度をとり、横軸に図9上図と同一の時間軸をとったグラフである。先ず、図9左側における印刷周期Tにおいては、加熱適合ドットの数が所定数以上である印刷ラインデータ55に基づく印刷が行われたものとする。この場合、当該印刷周期Tの構成は、図7(A)と同様の構成であり、当該印刷周期Tの開始と共に、加熱期間Hとなり、加熱期間H経過後に非加熱期間Cとなる。従って、加熱期間Hにおいては、発熱素子41Aへの通電によりサーマルヘッド41の温度は上昇する。そして、非加熱期間Cになると、発熱素子41Aへの通電が停止されるので、サーマルヘッド41の温度は徐々に低下する。
続く印刷周期T(図9中央)においては、加熱条件に適合するドットの数が所定数以上である印刷ラインデータ55に基づく印刷が行われるものとし、その後に印刷対象となる印刷ラインデータ55の加熱適合ドット数は、所定数未満であるものとする。この場合、上述した遅延条件を満たすので(S3:YES)、図9中央における印刷周期Tにおいては、図7(B)に示す印刷周期Tと同様に、印刷周期Tの開始と共に、第1分割遅延期間La〜第4分割遅延期間Ldにより構成される加熱遅延期間Lとなり、当該加熱遅延期間L経過後に加熱期間Hとなる。ここで、加熱遅延期間Lでは、発熱素子41Aに対する通電は行われることはないので、当該加熱遅延期間Lは、非加熱期間Cとして機能する。従って、先の印刷周期T(図9左側)の非加熱期間Cにより放熱されたサーマルヘッド41の温度は、加熱遅延期間Lによる放熱によって、更に低下する。即ち、当該テープ印刷装置1は、非加熱期間Cを長期間確保し得るので、サーマルヘッド41の温度を十分に低下させることができ、サーマルヘッド41の蓄熱による印刷品質の低下を防止し得る。
その後に続く印刷周期T(図9右側)においては、上述したように、当該印刷周期Tに係る印刷ラインデータ55の加熱適合ドット数は、所定数未満であるため、遅延条件を満たすことはない。又、当該印刷周期Tにおいて、遅延解消条件も満たさないものとする。この場合、直前の印刷周期T(図9中央)が遅延状態であり、遅延解消条件を満たさないので、当該印刷周期T(図9右側)においては、加熱遅延期間Lを、第1分割遅延期間La〜第3分割遅延期間Lcにより構成し、図8(A)と同様の構成とする。従って、先の印刷周期T(図9中央)の加熱期間Hを経過し、当該印刷周期T(図9右側)に移行すると、当該印刷周期Tの開始と同時に、加熱遅延期間L(非加熱期間C)となる。従って、先の印刷周期T(図9中央)における加熱期間Hによって加熱されたサーマルヘッド41の温度は、当該加熱遅延期間L(非加熱期間C)における放熱によって低下する。そして、加熱遅延期間Lを経過すると、加熱期間Hにおいて、発熱素子41Aへの通電によりサーマルヘッド41の温度は上昇する。当該加熱期間H経過後、再度、非加熱期間Cとなるので、当該印刷周期T(図9右側)の加熱期間Hにより上昇したサーマルヘッド41の温度は、当該非加熱期間Cにより低下する。このように、一度遅延した加熱期間Hの始期を、ライン単位での印刷処理(通電処理)の進行に応じて段階的に戻すことにより、当該テープ印刷装置1は、印刷周期Tにおける加熱期間Hの相違に基づく印刷品質の低下を緩和し得る。本実施形態に係るテープ印刷装置1は、所定位置に配設されたサーマルヘッド41に対して、テープを搬送する構成であるため、この加熱期間Hのタイミングを徐々に戻すことで、十分な印刷品質を確保し得る。
以上、説明したように、本実施形態に係るテープ印刷装置1は、印刷周期T毎に、印刷データ50を構成する印刷ラインデータ55単位で、サーマルヘッド41に列設された発熱素子41Aに対して通電制御を行うことにより、印刷データ50に基づく印刷を行う。印刷周期Tは、加熱期間Hと、非加熱期間Cにより構成される。当該テープ印刷装置1においては、通常、印刷周期Tは、当該印刷周期Tの開始と共に加熱期間Hを開始し、加熱期間H経過後に非加熱期間Cを設けるように構成される。
当該テープ印刷装置1は、印刷データの印刷を開始する際に、印刷データの先読みを行う。そして、現在の印刷対象となる印刷ラインデータ55を含む2以上連続する印刷ラインデータ55において、加熱される発熱素子41Aの数が所定数以上であり、且つ、次に印刷対象となる印刷ラインデータ55で加熱される発熱素子41Aの数が所定数未満である場合(S3:YES)、現在の印刷ラインデータ55に係る印刷周期Tに対して、加熱遅延期間Lを設定し、当該加熱遅延期間L経過後に加熱期間Hを設ける。従って、直前の印刷周期Tにおける非加熱期間Cに続いて、現在の印刷周期Tにおける加熱遅延期間L(非加熱期間C)を設け得る(図9参照)。この結果、当該テープ印刷装置1は、長期間の非加熱期間Cを確保することができ、サーマルヘッド41の放熱を十分に行うことができる。これにより、当該テープ印刷装置1は、印刷結果の尾引き等の発生を防止することができる。又、高速印刷を行う場合であっても、当該構成が変わることはないので、当該テープ印刷装置1は、特別な部品(例えば、耐電圧の高い部品等)を用いることなく、高速印刷に対応し得る。
当該テープ印刷装置1は、直前の印刷周期Tにおいて、前記加熱期間Hの始期が前記印刷周期の始期から遅延している場合(S2:YES)に、現在の印刷ラインデータ55に係る印刷周期Tにおいて、前記加熱遅延期間Lを所定段階に分割した分割期間(第1分割遅延期間La〜第4分割遅延期間Ld)分、加熱期間Hの始期を早める(図7、図8参照)。即ち、当該テープ印刷装置1は、図7(B)、図8に示すように、印刷周期Tにおける加熱期間Hの始期が通常の状態(図7(A)参照)よりも遅延している場合に、印刷ラインデータ55の印刷の進行に応じて、段階的に前記通常状態(図7(A)参照)に戻す。これにより、当該サーマルプリンタは、加熱期間Hの始期の相違に基づく印刷結果の乱れを緩和し、高品質な印刷結果を提供し得る。
当該テープ印刷装置1は、直前の印刷周期Tにおいて、前記加熱期間Hの始期が前記印刷周期Tの開始時期から遅延している場合(S2:YES)に、現在の印刷対象である印刷ラインデータ55に基づいて加熱される発熱素子41Aの数が0と計数されると(S6:YES)、当該現在の印刷周期Tの開始と共に前記加熱期間Hを開始し、当該加熱期間Hの経過後に前記非加熱期間Cを設ける。加熱される発熱素子41Aの数が0であるため、加熱期間Hの始期を、現在の印刷周期Tの開始に一致させても印刷結果に乱れは生じない。従って、当該テープ印刷装置1は、印刷結果に乱れを生じさせることなく、加熱期間Hの始期を通常状態とすることができ、もって、高品質な印刷結果を提供し得る。
直前の印刷周期Tにおいて、図8(A)〜(C)のように、加熱期間Hの始期が分割遅延期間単位で遅延している場合(即ち、加熱遅延期間Lを段階的に解消している途中)であっても、遅延解消条件を満たせば(S6:YES)、当該テープ印刷装置1は、当該現在の印刷周期Tの開始と共に前記加熱期間Hを開始し、当該加熱期間Hの経過後に前記非加熱期間Cを設ける。加熱される発熱素子41Aの数が0であるため、加熱期間Hの始期を、現在の印刷周期Tの開始に一致させても印刷結果に乱れは生じない。従って、当該テープ印刷装置1は、印刷結果に乱れを生じさせることなく、加熱期間Hの始期を通常状態とすることができ、もって、高品質な印刷結果を提供し得る。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、本発明に係るサーマルプリンタを、テープ印刷装置1に適用した例をもって説明したが、本発明は、テープ印刷装置に限定されるものではない。複数の発熱素子41Aが列設配置されたサーマルヘッド41を用い、各発熱素子41Aを選択的に通電することで印刷を行うものであれば、種々の装置に適用し得る。
又、本実施形態においては、加熱遅延期間Lを4つに分割し、分割した期間(即ち、第1分割遅延期間La〜第4分割遅延期間Ld)単位で、加熱遅延期間Lを段階的に解消していたが、この態様に限定するものではない。例えば、加熱遅延期間Lを分割する数及び加熱遅延期間Lの解消に要する段階(ステップ)の数は、上述した実施形態に限定されるものではない。