以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面中に「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の注記がある場合は、明細書中の説明における「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」とは、その注記された方向を指す。
<テープ印刷装置の概略構成>
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態に係わるテープ印刷装置の概略構成について説明する。
<筐体>
図1〜図4において、本実施形態のテープ印刷装置1(印刷物作成装置に相当)は、装置外郭を構成する筐体2を有している。筐体2は、筐体本体2aと、後方側開閉部8と、前方側開閉カバー9と、を備えている。
筐体本体2a内には、後方側に設けられた第1収納部3と、前方側に設けられた第2収納部5及び第3収納部4と、が備えられている。
後方側開閉部8は、筐体本体2aの後方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この後方側開閉部8は、回動することで、第1収納部3の上方を開閉可能である。この後方側開閉部8は、第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bにより構成されている。
第1開閉カバー8aは、筐体本体2aの後方側の上部に設けられた所定の回動軸心K1まわりに回動することで、第1収納部3のうち前方側の上方を開閉可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、第1収納部3のうち前方側の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第1収納部3のうち前方側の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第1開閉カバー8aの内部には、ヘッド保持体10が設けられている(図3も参照)。そして、第1開閉カバー8aは、上記の回動軸心K1まわりに回動することで、ヘッド保持体10に備えられた印字ヘッド11を、筐体本体2aに設けられた搬送ローラ12に対して相対的に離反・近接可能である。詳細には、第1開閉カバー8aは、印字ヘッド11が搬送ローラ12に対して近接した閉じ位置(図1、図2の状態)から、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離反した開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
第2開閉カバー8bは、上記第1開閉カバー8aよりも後方側に設けられており、筐体本体2aの後方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K2まわりに回動することで、第1収納部3のうち後方側の上方を、上記第1開閉カバー8aの開閉とは別個に開閉可能である。詳細には、第2開閉カバー8bは、第1収納部3のうち後方側の上方を覆う閉じ位置(図1及び図2の状態)から、第1収納部3のうち後方側の上方を露出させる開き位置(図3及び図4の状態)までの間で回動可能である。
そして、これら第1開閉カバー8a及び第2開閉カバー8bは、それぞれが閉じ状態であるときに、当該第1開閉カバー8aの外周部18と当該第2開閉カバー8bの縁部19とが互いに略接触して、第1収納部3の上方の略全部を覆うように構成されている。
前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上部に対し開閉可能に接続されている。この前方側開閉カバー9は、筐体本体2aの前方側の上端部に設けられた所定の回動軸心K3まわりに回動することで、第3収納部4の上方を開閉可能である。詳細には、前方側開閉カバー9は、第3収納部4の上方を覆う閉じ位置(図1、図2の状態)から、第3収納部4の上方を露出させる開き位置(図3、図4の状態)までの間で回動可能である。
<被印字テープロール及びその周辺>
このとき、図2〜図4に示すように、筐体本体2aにおける、閉じ状態での前方側開閉カバー9の下方にある第1所定位置13には、テープカートリッジTK(図2参照)が着脱可能に装着される。このテープカートリッジTKは、軸心O1まわりに巻回形成された被印字テープロールR1を備えている。
すなわち、テープカートリッジTKは、図5に示すように、被印字テープロールR1と、連結アーム16とを備えている。連結アーム16は、後方側に設けられた左・右一対の第1ブラケット部20,20と、前方側に設けられた左・右一対の第2ブラケット部21,21とを備えている。
第1ブラケット部20,20は、上記被印字テープロールR1を、軸心O1に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では被印字テープロールR1を当該軸心O1まわりに回転可能に保持する。これら第1ブラケット部20,20は、上端部において左右方向に略沿って延設された第1接続部22により被印字テープロールR1の外径との干渉を回避しつつ接続されている。
被印字テープロールR1は、テープカートリッジTKが筐体本体2aの内部に装着された際には回転自在となる。被印字テープロールR1は、繰り出しにより消費される被印字テープ150(後述する被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151を備える。図2中拡大図参照)を、あらかじめ左右方向の軸心O1まわりに巻回している。
第1収納部3には、上記テープカートリッジTKの装着によって、被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、被印字テープ150の巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、被印字テープ150を繰り出す。
本実施形態では、粘着性を備えた被印字テープ150が用いられる場合を例示している。すなわち、被印字テープ150は、被印字層154、基材層153、粘着剤層152、剥離材層151が、厚さ方向一方側(図2中の上方側)から他方側(図2中の下方側)へ向かって、この順序で積層されている。被印字層154は、上記印字ヘッド11によるインクの熱転写によって所望の印字部155(図2中の部分拡大図参照)が形成される層である。粘着剤層152は、基材層153を適宜の被着体(図示省略)に貼り付けるための層である。剥離材層151は、粘着剤層152を覆う層である。
<搬送ローラ及び印字ヘッド>
図2〜図4に戻り、筐体本体2aにおける第1収納部3及び第2収納部5の中間上方側には、上記搬送ローラ12が設けられている。搬送ローラ12は、筐体本体2aの内部に設けられた搬送用モータM1によりギア機構(図示省略)を介して駆動されることで、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1から繰り出される被印字テープ150を、テープ幅方向が左右方向となるテープ姿勢で搬送する。
また、第1開閉カバー8aに設けられた上記ヘッド保持体10には、上記印字ヘッド11が備えられている。印字ヘッド11は、上述したように、第1開閉カバー8aが回動軸心K1まわりに回動することで、搬送ローラ12に対して相対的に離間・近接可能である。すなわち、第1開閉カバー8aが閉じ状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12に近接し、第1開閉カバー8aが開き状態となると、印字ヘッド11が搬送ローラ12から離間する。この印字ヘッド11は、搬送ローラ12により搬送される被印字テープ150を当該搬送ローラ12と協働して挟持するように、ヘッド保持体10のうち閉じ状態での第1開閉カバー8aにおいて搬送ローラ12の上方に対向する位置に配置されている。したがって、第1開閉カバー8aが閉じ状態である場合には、印字ヘッド11と搬送ローラ12とは、互いに上下方向に対向して配置される。そして、印字ヘッド11は、搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150の被印字層154に対し、後述するインクリボンカートリッジRKのインクリボンIBを用いて所望の印字を形成して、印字済みテープ150′とする。
<インクリボンカートリッジ>
図2及び図3に示すように、筐体本体2aにおける閉じ状態での第1開閉カバー8aの下方でかつテープカートリッジTKの上方となる第2所定位置14には、インクリボンカートリッジRKが着脱可能に装着される。インクリボンカートリッジRKの詳細構造を図6に示す。
図6に示すように、インクリボンカートリッジRKは、カートリッジ筐体80と、未使用のインクリボンIBを繰り出し可能に巻回したリボン繰り出しロールR4と、リボン巻き取りロールR5とを備えている。カートリッジ筐体80は、後方側の繰り出しロール収納部81と、前方側の巻き取りロール収納部82と、それら両収納部81,82を連結する連結部83と、を有している。連結部83は、リボン繰り出しロールR4から繰り出された上記インクリボンIBをカートリッジ筐体80外に露出させるようにしつつ、上記巻き取りロール収納部82と上記繰り出しロール収納部81とを連結する。
繰り出しロール収納部81は、略半円筒の上部81aと、下部81bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン繰り出しロールR4は、繰り出しロール収納部81内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のD方向)に回転することで、印字ヘッド11による印字形成を行うためのインクリボンIBを繰り出す。
巻き取りロール収納部82は、略半円筒の上部82aと、下部82bと、が組み合わされることにより構成されている。リボン巻き取りロールR5は、巻き取りロール収納部82内において回転自在に支持されており、インクリボンカートリッジRKが装着された状態において所定の回転方向(図2中のE方向)に回転することで、印字形成後の使用済みのインクリボンIBを巻き取る。
すなわち、図2において、リボン繰り出しロールR4から繰り出されるインクリボンIBは、印字ヘッド11と搬送ローラ12との間に挟まれた状態の被印字テープ150のさらに印字ヘッド11側に配置されて印字ヘッド11の下方に接触する。そして、印字ヘッド11からの加熱によりインクリボンIBのインクが、被印字テープ150の被印字層154に転写されて印字形成が実行された後、使用済みのインクリボンIBが、リボン巻き取りロールR5に巻き取られる。
<剥離材ロール及びその周辺>
図5に示すように、テープカートリッジTKの連結アーム16は、例えば略水平なスリット形状を含む引き剥がし部17を備えている。この引き剥がし部17は、被印字テープロールR1から繰り出されて前方側へと搬送される印字済みテープ150′から、剥離材層151を引き剥がす部位である。上記のようにして印字が形成された印字済みテープ150′は、図2に示すように、上記引き剥がし部17によって上記剥離材層151が引き剥がされることで、剥離材層151と、それ以外の被印字層154、基材層153及び粘着剤層152からなる印字済みテープ150″とに分離される。
テープカートリッジTKは、図2及び図5に示すように、上記引き剥がされた剥離材層151が軸心O3まわりに巻回されることで形成される、上記剥離材ロールR3を有している。すなわち、上述したテープカートリッジTKの装着によって、剥離材ロールR3が上方から上記第2収納部5に受け入れられ、剥離材層巻回用の軸心O3が左右方向となる状態で収納される。そして、剥離材ロールR3は、第2収納部5に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において、筐体本体2a内に設けられた剥離紙巻取用モータM3によりギア機構(図示省略)を介して駆動され、第2収納部5内で所定の回転方向(図2中のC方向)に回転することで、剥離材層151を巻き取る。
このとき、図5に示すように、テープカートリッジTKの上記第2ブラケット部21,21は、上記剥離材ロールR3を、軸心O3に沿った左・右両側から挟みこむようにし、テープカートリッジTKが筐体本体2aに装着された状態では剥離材ロールR3を当該軸心O3まわりに回転可能に保持する。これら第2ブラケット部21,21は、上端部において左右方向に略沿って延設された第2接続部23により接続されている。そして、後方側の第1ブラケット部20,20及び第1接続部22と、前方側の第2ブラケット部21,21及び第2接続部23とは、左・右一対のロール連結ビーム部24,24により連結されている。
また、図5中では、軸心O3まわりに剥離材層151が巻回され剥離材ロールR3が形成される前の状態(未使用のテープカートリッジTKである場合)を示している。すなわち、当該剥離材層151の幅方向両側を挟み込むように設けられている略円形の上記ロールフランジ部f3,f4を図示するとともに、便宜的に剥離材ロールR3が形成される箇所に符号「R3」を付している。
<印字済みテープロール及びその周辺>
一方、図2及び図4に示すように、上記第3収納部4には、上記印字済みテープ150″を順次巻回するための、巻き取り機構40が上方から受け入れられる。巻き取り機構40は、印字済みテープ150″の巻回の軸心O2が左右方向となる状態で、軸心O2まわりに回転可能に支持されるように収納される。そして、巻き取り機構40が、第3収納部4に収納された状態において、筐体本体2aの内部に設けられた粘着巻取用モータM2により不図示のギア機構を介して駆動され、第3収納部4内で所定の回転方向(図2中のB方向)に回転することで、印字済みテープ150″を巻き取って積層する。これにより、巻き取り機構40の外周側に印字済みテープ150″が順次巻回されて、印字済みテープロールR2が形成される。
<カッター機構30>
また、図2に示すように、テープ搬送方向に沿って印字ヘッド11の下流側でかつ印字済みテープロールR2の上流側に、カッター機構30(切断手段に相当)が設けられている。
カッター機構30は、詳細な図示を省略するが、可動刃と、可動刃を支持しテープ幅方向(言い替えれば左右方向)に走行可能な走行体とを有している。そして、カッターモータMC(後述の図7参照)の駆動により走行体が走行し可動刃がテープ幅方向に移動することで、上記印字済みテープ150″を幅方向に切断する。
<テープ印刷装置の動作の概略>
次に、上記構成のテープ印刷装置1の動作の概略について説明する。
すなわち、上記第1所定位置13にテープカートリッジTKが装着されると、筐体本体2aの後方側に位置する第1収納部3に被印字テープロールR1が収納され、筐体本体2aの前方側に位置する第2収納部5に剥離材ロールR3を形成する軸心O3側が収納される。また、筐体本体2aの前方側に位置する第3収納部4には、印字済みテープロールR2を形成するための巻き取り機構40が収納される。
このとき、搬送ローラ12が駆動されると、第1収納部3に収納された被印字テープロールR1の回転により繰り出される被印字テープ150が、前方側へ搬送される。そして、搬送される被印字テープ150の被印字層154に対し、印字ヘッド11により所望の印字が形成されて、印字済みテープ150′となる。印字形成された印字済みテープ150′は、さらに前方側へ搬送されて引き剥がし部17まで搬送されると、当該引き剥がし部17において剥離材層151が引き剥がされて印字済みテープ150″となる。引き剥がされた剥離材層151は、下方側へ搬送されて第2収納部5へ導入され、当該第2収納部5内において巻回されて剥離材ロールR3が形成される。
一方、剥離材層151が引き剥がされた印字済みテープ150″は、さらに前方側へ搬送されて第3収納部4へ導入され、当該第3収納部4内の巻き取り機構40の外周側に巻回されて印字済みテープロールR2が形成される。その際、搬送方向下流側(すなわち前方側)に設けられたカッター機構30が印字済みテープ150″を切断する。これにより、ユーザの所望のタイミングで、印字済みテープロールR2に巻回されていく印字済みテープ150″を切断し、切断後は印字済みテープロールR2を第3収納部4から取り出すことができる。なお、この切断後において、印字済みテープロールR2に巻回されている印字済みテープ150″(後述のように、所定の全長Lを備えている)が、各請求項記載の印刷物に相当している。
なおこのとき、図示による説明を省略するが、被印字テープロールR1に、非粘着テープ(上記粘着剤層152及び剥離材層151のないもの)が巻回されていても良い。この場合においても、第1収納部3には、テープカートリッジTKの装着によって、非粘着テープが巻回された被印字テープロールR1が上方から受け入れられ、非粘着テープの巻回の軸心O1が左右方向となる状態で収納される。そして、被印字テープロールR1は、第1収納部3に収納された状態(テープカートリッジTKが装着された状態)において当該第1収納部3内で所定の回転方向(図2中のA方向)に回転することで、非粘着テープを繰り出す。
またこのとき、上記非粘着テープ(又は上記被印字テープ150でもよい)の搬送経路を、印字済みテープロールR2へ向かう側と排出口(図示省略)へ向かう側との相互間で切り替える、シュート15(図2参照)が配されていても良い。すなわち、切替レバー(図示省略)によるシュート15の切替操作でテープ経路を切り替えることで、印字形成後の非粘着テープ(又は印字済みテープ150″)を後述のように第3収納部4内において巻回することなく、筐体2の例えば第2開閉カバー8b側に設けた排出口(図示省略)から、そのまま筐体2外部へ排出するようにしても良い。
<制御系>
次に、図7を用いて、テープ印刷装置1の制御系について説明する。図7において、テープ印刷装置1には、所定の演算を行う演算部を構成するCPU212が備えられている。CPU212は、RAM213及びROM214に接続されている。CPU212は、RAM213の一時記憶機能を利用しつつROM214に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、それによってテープ印刷装置1全体の制御を行う。
また、CPU212は、上記搬送ローラ12を駆動する上記搬送用モータM1の駆動制御を行うモータ駆動回路218と、上記印字済みテープロールR2を駆動する上記粘着巻取用モータM2の駆動制御を行うモータ駆動回路219と、上記剥離材ロールR3を駆動する上記剥離紙巻取用モータM3の駆動制御を行うモータ駆動回路220と、上記印字ヘッド11の発熱素子の通電制御を行う印字ヘッド制御回路221と、上記可動刃を備えた走行体を走行させるカッターモータMCの駆動制御を行うモータ駆動回路222と、適宜の表示を行う表示部215と、ユーザが適宜に操作入力可能な操作部216と、に接続されている。また、CPU212は、この例では、外部端末としてのPC217に接続されるが、テープ印刷装置1が(いわゆるオールインワンタイプで)単独で動作する場合には、接続されなくてもよい。
ROM214には、所定の制御処理を実行するための制御プログラム(後述する図12、図15のフローの処理を実行するプログラムを含む)が記憶されている。RAM213には、例えば上記操作部216(又はPC217)での操作者の操作に対応して生成された印字データ(後述のステップS204参照)を、上記被印字層154の所定の印字領域に印字するためのドットパターンデータ(=1つの単位印字データに相当。詳細は後述)に展開して記憶する、イメージバッファ213aが備えられている。CPU212は、上記制御プログラムに基づき、搬送ローラ12により被印字テープ150を繰り出しつつ、イメージバッファ213aに記憶された上記ドットパターンデータに対応した1つのイメージ(=単位印字イメージに相当。詳細は後述)を、印字ヘッド11によって被印字テープ150に対し繰り返して印刷する(詳細は後述)。
<実施形態の特徴>
以上のように構成された本実施形態の特徴は、上記印字済みテープロールR2に巻回される印字済みテープ150″を作成(言い替えれば被印字テープ150への印字形成)している途中における、作成一時停止及び作成再開のときの制御にある。以下、その詳細を、比較例を用いつつ詳細に説明する。
<比較例>
上述したように、テープ印刷装置1においては、単位印字イメージ(特定の文字列を画像化したものや特定の図像を含む1つの画像。後述の図8等を参照)が搬送方向に沿って複数回繰り返し形成されて、上記印字済みテープ150″が作成される。例えば、本実施形態の比較例として図8(a)〜(g)に示す例では、「Thank you」のテキストと幅方向両側の枠線とを含む、1つのイメージIM(単位印字イメージ)がテープ搬送方向に沿って繰り返し印刷される。
例えば、まず図8(a)では、被印字テープロールR1からの被印字テープ150の繰り出しが開示された直後の状態を表している。図示の状態では被印字テープ150の先端がまだ印字ヘッド11の位置まで到達しておらず、印字ヘッド11による被印字テープ150への上記イメージIMの形成が開始されていない。
この状態からさらに被印字テープ150の搬送(言い換えれば印字済みテープ150′,150″の搬送。以下適宜、単に「被印字テープ150の搬送」と称する)が所定の一定速度で進むと、被印字テープ150が印字ヘッド11の位置に到達し、上記ドットパターンデータ(1つの単位印字データ)に対応した上記イメージIM(詳細には1番目のイメージIM1)の印字形成が開始される(図8(b)及び図8(c)参照)。1つのイメージIM1の形成が終了すると、同一のドットパターンデータを用いて次に後続するイメージIM2の形成が開始される(図8(d)参照)。このようにして、同一内容である、イメージIM1、イメージIM2、イメージIM3、・・が被印字テープ150に順次形成されて印字済みテープ150″が作成される。なお、上記イメージIM1、イメージIM2、イメージIM3、・・等を特に区別せず記述する場合は、以下適宜、単に「イメージIM」と表記する。
<搬送・印字の一時停止>
ここで、何らかの事情で、例えば上記操作部216(又はPC217)での操作者の操作により、上記印字形成の一時停止指示がなされる場合があり得る。このような場合には、上記搬送ローラ12による被印字テープ150の搬送と印字ヘッド11による被印字テープ150への印字形成が(その後の再開を前提として)一時的に停止される。
図8(d)に示す例では、上記イメージIM2の「Thank you」のテキストの「T」の文字が印字形成された直後に、上記一時停止指示がなされた場合を示している。この場合、上記のように被印字テープ150の搬送が停止されるが、搬送ローラ12や搬送用モータM1等の慣性によりすぐには止まることはできず、予め定められた(例えば上記所定の一定速度に対して固定的に定められた)所定の減速パターンに沿って上記被印字テープ150の搬送速度が減速された後に最終的に停止するよう制御される。なお、この減速に合わせて上記印字ヘッド11の印字形成(言い替えれば発熱素子への通電)も同期制御されるが、これについては公知の手法で行えば足りるので、詳細な説明を省略する。
そして、この比較例では、図8(d)に示した状態から上記減速パターンに沿って直ちに減速が開始された結果、上述のようにして停止までに必要な距離(=制動距離)Ldだけ搬送された後に停止している(図8(e))。しかしながらこの場合、上記のようにして一時的に停止したときの停止位置が、図8(e)に示すように、印字ヘッド11が被印字テープ150に対し上記イメージIM2を形成している途中(この例では「Thank you」のテキストの「o」の文字を印字中)となっている。このような場合、その後印字形成が再開されたときに、図8(f)及び図8(g)に示すように、上記停止位置に対応した「o」の文字において印字つぶれ(あるいは逆に印字かすれや微小な印字空白等もありうる)が生じ、印字済みテープ150″での印字品質が低下するおそれがある。
<本実施形態の手法の一例>
そこで、本実施形態では、上記のような、印字ヘッド11が1つのイメージIM2を形成している途中の状態で搬送が停止しないように、上記の減速開始タイミングを調整する。すなわち、図8(a)〜(c)と同様の図9(a)〜(c)に示す状態を経て、図9(d)において、上記同様、イメージIM2のテキストの「T」の文字が印字形成された直後に上記一時停止指示がなされた場合には、(上記比較例のように直ちに減速を開始するのではなく)距離Lrだけ搬送をそのまま継続し(図9(e)参照)、その搬送が終了したら減速を開始して停止する。なお、上記距離Lrは、前述の比較例における図8(g)にも示したように、上記比較例における一時停止位置から、当該イメージIM2とその次に後続して形成されるイメージIM3との境界部までに相当する距離である。
このように距離Lrの搬送を実行してから上記減速を行うことにより、本実施形態では、図9(f)に示すように、イメージIM2とその次に後続して形成されるイメージIM3との境界部に印字ヘッド11が位置する状態で搬送が停止する。これにより、その後印字形成が再開されたときに、図9(g)に示すように、上記比較例のような印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等が生じるのを抑制できるか、若しくは、発生したとしても印字済みテープ150″の外観への影響を最小限に抑制することができる。
<後続する次のイメージ形成後に停止する例>
上記図9に示した例では、上記一時停止指示がなされたときの印字形成中のイメージIM2とその次に後続するイメージIM3との境界部に、印字ヘッド11が位置する状態で搬送が停止した。しかしながら、上記一時停止指示のタイミングがやや遅く、そのような位置で停止することができない場合には、上記イメージIM3と、さらに後続して形成されるイメージIM4との境界部で搬送が停止されるように制御される。そのような例を図10に示す。
すなわち、図10(a)〜(c)のように、イメージIM1の印字形成が完了し、さらにイメージIM2の印字形成が進んだ後、この例では、図10(d)において、イメージIM2の「Thank you」のテキストの「o」の文字が印字形成された直後に、上記一時停止指示がなされている。この場合には、当該イメージIM2の次に後続して形成されるイメージIM3に印字ヘッド11が進入するようにしつつ(上記距離Lrよりも長い)距離Lr′だけ搬送を継続し(図10(e)参照)、その搬送が終了したら減速を開始して停止する。
上記距離Lr′の搬送を実行してから上記減速を行うことにより、前述と同様、図10(f)に示すように、イメージIM3とその次に後続して形成されるイメージIM4との境界部に印字ヘッド11が位置する状態で搬送が停止する。これにより、その後印字形成が再開されたときに、前述と同様、印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等が生じるのを抑制できるか、若しくは、発生したとしても印字済みテープ150″の外観への影響を最小限に抑制することができる(図10(g)参照)。
<イメージ長さが短い場合等の例>
上記図10に示した例では、上記一時停止指示がなされたときの印字形成中のイメージIM2の次に後続するイメージIM3と、さらに後続して形成されるイメージIM4との境界部で搬送が停止した。しかしながら、1つのイメージIMの搬送方向長さが短かったり、(上記所定の速度である)搬送速度が速かった場合には、さらに後続側のイメージ間境界部に印字ヘッド11が位置する状態で搬送を停止するようにしてもよい。そのような例を図11に示す。
すなわち、図11(a)〜(c)のように、イメージIM1、イメージIM2、イメージIM3、・・の順序で印字形成がなされていき、この例では、図11(d)において、4番目のイメージIM4の印字形成途中に、上記一時停止指示がなされている。そして、この例では、当該イメージIM4の次に後続して形成されるイメージIM5に印字ヘッド11が進入するようにしつつ距離Lr″だけ搬送を継続し(図11(e)参照)、その搬送が終了したら減速を開始して停止する。
但しこの場合、1つのイメージIMの搬送方向長さが短かいことから、このときの減速及び停止に上記制動距離Ld(上記図8、図9、図10の場合とすべて共通の値である)が必要となる結果、図11(f)に示すように、上記4番目のイメージIM4よりも3つ後の順番のイメージIM7と、その次に後続して形成されるイメージIM8との境界部に、印字ヘッド11が位置する状態で搬送が停止する。これにより、その後印字形成が再開されたときに、前述と同様、印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等が生じるのを抑制できるか、若しくは、発生したとしても印字済みテープ150″の外観への影響を最小限に抑制することができる(図11(g)参照)。
<制御処理の内容>
上記手法を実現するためにCPU212により実行される処理内容を、図12のフローにより説明する。図12において、例えばユーザによりテープ印刷装置1の電源がオンにされることによって、このフローが開始される(「START」位置)。
まず、ステップS201において、CPU212は、一時停止指示信号の入力(詳細は後述)を表すフラグFを0に初期化する。その後、ステップS202に移る。
ステップS202では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの作成開始操作に対応した、上記印字済みテープ150″の作成開始指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの作成開始の意図に対応した上記作成開始指示信号が入力されない場合はステップS202の判定が満たされず(S202:NO)ループ待機する。上記作成開始指示信号が入力されたらステップS202の判定が満たされ(S202:YES)、ステップS203に移る。なお、このステップS202の手順を実行する上記CPU212が、各請求項記載の第2信号入力手段として機能する。
ステップS203では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した、作成する上記印字済みテープ150″の搬送方向に沿った全長を表す全長データが入力されたか否かを判定する。ユーザの意図するテープ全長に対応した上記全長データが入力されない場合はステップS203の判定が満たされず(S203:NO)上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。上記全長データが入力されたらステップS203の判定が満たされ(S203:YES)、ステップS204に移る。なお、このステップS203の手順を実行する上記CPU212が、各請求項記載の第1信号入力手段として機能する。
ステップS204では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に基づく、上記被印字テープ150に繰り返し印字形成する1つのイメージIM(図9、図10、図11等参照)に対応した印字データが入力されたか否かを判定する。印字データが入力されない場合はステップS204の判定が満たされず(S204:NO)上記ステップS202に戻って同様の手順を繰り返す。上記印字データが入力されたらステップS204の判定が満たされ(S204:YES)、ステップS205に移る。なお、このステップS204の手順を実行する上記CPU212が、各請求項記載のデータ取得手段として機能する。
その後、ステップS205において、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始して、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送(以下適宜、単に「テープ搬送」と称する)、及び上記印字済みテープ150″の巻き取りを開始する。
そして、ステップS215で、CPU212は、上記ステップS204で取得された印字データに基づき、公知の手法により、対応する印字開始位置に印字ヘッド11が対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字開始位置に到達していない場合、判定は満たされず(S215:NO)、この判定が満たされるまでループ待機する。印字開始位置に到達した場合、判定は満たされ(S215:YES)、ステップS220に移る。
ステップS220では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子に通電を行って上記被印字テープ150への上記イメージIM(図9、図10、図11等参照)の繰り返し印字形成を開始する。その後、ステップS222に移る。
ステップS222では、CPU212は、上記フラグFが1であるか否かを判定する。後述のステップS226で既にF=1となっている場合は判定が満たされ(S222:YES)、後述のステップS228に移る。F=0のままであった場合は判定が満たされず(S222:NO)、ステップS224に移る。
ステップS224では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの作成一時停止操作に対応した、一時停止指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの作成中断の意図に対応した上記一時停止指示信号が入力されない場合はステップS224の判定が満たされず(S224:NO)後述のステップS238に移る。上記一時停止指示信号が入力されたらステップS224の判定が満たされ(S224:YES)、ステップS226に移る。なお、このステップS224の手順を実行する上記CPU212が、各請求項記載の第3信号入力手段として機能する。
ステップS226では、CPU212は、上記フラグFを1にする。その後、ステップS228に移る。
ステップS228では、CPU212は、上記ステップS204で取得された印字データに基づき、この時点で印字ヘッド11が対向している被印字テープ150の搬送方向位置から上記減速パターンで減速した場合における、被印字テープ150の停止位置(印字ヘッド11が被印字テープ150のどの位置に対向した状態で停止するか)を算出する。その後、ステップS230に移る。
ステップS230では、CPU212は、上記ステップS228で算出した被印字テープ150の一時停止位置が、繰り返し形成される複数の上記イメージIMのうち、隣接する2つのイメージIM,IMの間の上記境界部(前述の図9(f)、図10(f)、図11(f)参照)となるか否か、を判定する。上記一時停止位置が上記境界部とならない間はステップS230の判定が満たされず(S230:NO)、ステップS220に戻って同様の手順を繰り返す。上記一時停止位置が上記境界部となる場合はステップS230の判定が満たされ(S230:YES)、ステップS232に移る。これにより、上記減速パターンによりちょうど境界部で停止するようになるまでは、後述の減速を開始することなくそのままの搬送状態が継続されることとなる。
ステップS232では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、上記減速パターンに従いつつ、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を制御し、テープ搬送を減速して停止させ、上記印字済みテープ150″の巻き取りも停止させる。これとともにCPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、(既に述べたように公知の手法によって)印字ヘッド11の発熱素子への通電を上記テープ搬送の減速に同期させつつ制御し、かつテープ搬送が停止したときには上記発熱素子への通電も停止する。その後、ステップS234に移る。なお、上記ステップS228、ステップS230、及びステップS232の手順を実行する上記CPU212が、各請求項記載の停止制御手段として機能する。
ステップS234では、CPU212は、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの作成再開操作に対応した、上記印字済みテープ150″の作成再開指示信号が入力されたか否かを判定する。ユーザの作成再開の意図に対応した上記作成再開指示信号が入力されない間はステップS234の判定が満たされず(S234:NO)ループ待機する。上記作成再開指示信号が入力されたらステップS234の判定が満たされ(S234:YES)、ステップS236に移る。
ステップS236では、CPU212は、上記ステップS205と同様、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を開始して、テープ搬送及び上記印字済みテープ150″の巻き取りを、再び開始する。これとともに、CPU212は、上記ステップS220と同様、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子に通電を行って上記被印字テープ150への印字形成を再び開始する。その後、ステップS238に移る。
ステップS238では、CPU212は、上記ステップS204で取得された印字データに基づき、公知の手法により、印字終了位置に印字ヘッドが対向する状態まで上記テープ搬送が到達したか否かを判定する。印字終了位置に到達していない場合、判定は満たされず(S238:NO)、ステップS220に戻り同様の手順を繰り返す。これにより、上述の印字形成が続行される。一方、印字終了位置に到達した場合、判定は満たされ(S238:YES)、ステップS240に移る。
ステップS240では、CPU212は、印字ヘッド制御回路221に制御信号を出力し、印字ヘッド11の発熱素子への通電を停止して、上記被印字テープ150に対する印字部155の形成を停止する。このとき、テープ搬送は継続して行われている。これにより、それ以降の印字済みテープ150′には、印字部155が存在しない空白状態となる。その後、ステップS255に移る。
ステップS255では、CPU212は、上記ステップS203で取得された全長データに対応した上記カッター機構30による切断位置(巻き取り機構40によって印字済みテープロールRとして巻回される印字済みテープ150″の、搬送方向に沿った全長が操作者の意図する長さとなるような切断位置)まで、上記テープ搬送が達したか否かを判定する。切断位置に到達していない場合、判定は満たされず(S255:NO)、ループ待機する。切断位置に到達した場合、判定は満たされ(S255:YES)、ステップS260に移る。
ステップS260では、CPU212は、モータ駆動回路218,219,220に制御信号を出力し、搬送用モータM1、粘着巻取用モータM2、及び剥離紙巻取用モータM3の駆動を停止する。これにより、上記被印字テープ150、印字済みテープ150′、及び印字済みテープ150″の搬送が停止する。
その後、ステップS265で、CPU212は、モータ駆動回路222に制御信号を出力して上記カッターモータMCを駆動し、上記カッター機構30の作動により印字済みテープ150″の切断を行う。
そして、ステップS270に移り、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を開始して、印字済みテープ150″を巻き取り機構40の軸心O2まわりに巻き取る。
その後、ステップS275で、CPU212は、上記ステップS265でのカッター機構30の切断動作から所定時間だけ経過したか否かを判定する。所定時間だけ経過していない場合、判定は満たされず(S275:NO)、ループ待機する。この所定時間は、印字済みテープ150″を取り機構40の軸心O2へと巻き取れるだけの時間でよい。所定時間が経過したらこの判定は満たされ(S275:YES)、ステップS280へ移る。
ステップS280では、CPU212は、モータ駆動回路219に制御信号を出力し、粘着巻取用モータM2の駆動を停止する。これにより上記切断により生じた印字済みテープ150″を確実に印字済みテープロールR2で巻き取ることができる。そして、このフローを終了する。なお、上記ステップS205、ステップS215、ステップS220、ステップS238、ステップS240、ステップS255、ステップS260、ステップS265、ステップS270、ステップS275、及び、ステップS280を実行するCPU212が、各請求項記載の作成制御手段として機能する。
<本実施形態による効果>
以上説明したように、本実施形態においては、印字済みテープ150″の作成中に作成の一時停止を行う場合には、隣接する2つのイメージIM,IMの境界部に印字ヘッド11が対向した状態となるようにして、テープ搬送及び印字形成が停止される。これにより、当該停止位置において印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等の発生を抑制することができるか、若しくは、発生したとしても印字済みテープ150″の外観への影響を最小限に抑制することができる。この結果、印字済みテープ150″での印字品質を向上することができる。
また、本実施形態では特に、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの作成一時停止操作に対応した、一時停止指示信号が入力されたことを契機に、前述のテープ搬送及び印字形成の停止制御が行われる(上記ステップS224参照)。これにより、操作者が意図的に搬送及び印字形成を一時停止したときにおいて、上記のような印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等の発生による印刷物の印字品質の低下を防止することができる。
また、本実施形態では特に、上記一時停止指示信号が入力されてすぐに減速を行うのではなく、所望の期間(言い換えれば距離Lr,Lr′,Lr′′を搬送される間)一定速度による搬送を続行した後に、所定の減速パターンにより減速してテープ搬送を停止する(図12のステップS228、ステップS230、図9(e)、図10(e)、図11(e)参照)。このように、一定の期間、等速を維持することにより、減速時に起こりうる印字形成ムラを極力抑制し、印字品質の低下を確実に防止することができる。また、固定的に定められた減速パターンを用いて減速し上記境界部への印字ヘッド11の対向状態で停止することにより、上記一時停止指示信号が入力された後直ちに減速して上記境界部への印字ヘッド11の対向状態で停止する場合のように(あらゆる一時停止指示信号の入力タイミングに対応して)数多くの減速パターンを用意する必要がない。この結果、制御を簡素化することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
(1)非印字空白部分への対向状態で停止する場合
上記実施形態では、隣接する2つのイメージIM,IMの間の上記境界部に印字ヘッド11が対向する状態でテープ搬送を一時停止することで、印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等の発生を抑制したが、これに限られない。すなわち、一時停止指示信号が入力された段階で、(上記境界部への対向状態よりも到来タイミングの早い)非印字空白部分(後述)への印字ヘッド11の対向状態でテープ搬送を停止できる場合には、当該対向状態でテープ搬送及び印字形成を停止するようにしてもよい。
すなわち、本変形例においては、図13(a)〜(g)に示すように、「Thank you」のテキストと幅方向両側の枠線(但し破線)とを含む、1つのイメージIM(単位印字イメージ)がテープ搬送方向に沿って繰り返し印刷される。図8(a)〜(c)等と同様の図13(a)〜(c)に示す状態を経て、図13(d)において、イメージIM1のテキストの「o」の文字が印字形成された直後に上記一時停止指示がなされた場合に、直ちに減速を開始するのではなく距離Lr2だけ搬送をそのまま継続し(図13(e)参照)、その搬送が終了したら減速を開始して停止する。なお、上記距離Lr2は、一時停止位置が(前述のイメージIM,IM間の境界部への印字ヘッド11の対向状態ではなく)後述の非印字空白部分への印字ヘッド11の対向状態となることに対応し、この例では、前述の距離Lrとは異なる値となっている。
このように距離Lrの搬送を実行してから上記減速を行うことにより、本変形例では、図13(f)に示すように、イメージIM2中のテキスト「Thank」と「You」との間(この位置では上記破線状の枠線も空白となっている)非印字空白部分に印字ヘッド11が位置する状態で搬送が停止する。このとき、空白領域の搬送方向中央位置で停止するのが最も好ましい。これにより、上記実施形態と同様、停止直前の印字形成及びその後印字形成が再開されたときに、図13(g)に示すように、印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等が生じるのを抑制できるか、若しくは、発生したとしても印字済みテープ150″の外観への影響を最小限に抑制することができる。
なお、本変形例において上記手法を実現するためのCPU212の制御では、図12のステップS230において、ステップS228で算出した被印字テープ150の一時停止位置が、上記非印字空白部分となるか否か、を判定するようにすれば足りる。
本変形例においても、上記実施形態と同様、印字品質を向上することができる。なお、上記においては、前述の境界部への印字ヘッド11の対向状態よりも非印字空白部分への印字ヘッド11の対向状態が早い場合に、当該非印字空白部分への対向状態でテープ搬送及び印字形成を停止するようにしたが、これに限られない。すなわち、前述の境界部への印字ヘッド11の対向状態よりも非印字空白部分への印字ヘッド11の対向状態が遅い場合であっても、境界部におけるイメージIM,IM間の空白領域の大きさが小さすぎる場合等においては、それより後のタイミングとなる上記非印字空白部分への対向状態でテープ搬送及び印字形成を停止するようにしてもよい。
(2)クーリング実行時への応用
上記実施形態及び変形例(1)においては、操作者の操作に基づく一時停止指示信号の入力によって、上述の停止位置の制御を行ったが、これに限られない。すなわち、連続動作による印字ヘッド11の過熱を防止するための、いわゆるクーリング実行時における印字形成の一時停止時において、上記同様の停止位置制御を行ってもよい。以下、そのような変形例を図14及び図15により説明する。
本変形例におけるテープ印刷装置1の制御系を図14に示す。本変形例のテープ印刷装置1では、CPU212に対し、印字ヘッド11の温度を検出する温度センサSR(検出手段に相当)が新たに接続される。またCPU212は、印字制御部212Aと、クーリング制御部212Bと、を機能的に備えている。印字制御部212Aは、上記実施形態及び変形例(1)においてのCPU212の機能と同等の機能を備え、前述した図12のフローの各手順を実行することで、印字ヘッド11、搬送ローラ12、及びカッター機構30等を互いに連携制御する。なお、ステップS228、ステップS230、及びステップS232の手順を実行する印字制御部212Aが、本変形例における、各請求項記載の停止制御手段として機能する。クーリング制御部212Bは、上記温度センサSRの検出結果に基づき、印字制御部212Aに対して上記一時停止指示信号を出力する。
上記クーリング制御部212Bが実行する処理内容を表すフローチャートを、図15に示す。図15において、CPU212のクーリング制御部212Bは、まずステップS110及びステップS120で、印字ヘッド11による印字形成を停止する印字停止温度T1、及び、停止後に再び印字形成を再開するための再開温度T2、をそれぞれ設定する。この設定は、予め適宜の記憶手段に記憶されていた値を読み出してRAM213に格納してもよいし、操作部216での(又は上記PC217での)ユーザの操作に対応した値を取得してRAM213に格納してもよい。その後、ステップS130に移る。
ステップS130では、クーリング制御部212Bは、上記温度センサSRの検出結果に基づき、印字ヘッド11の温度Tが上記印字停止温度T1以上となったか(T≧T1となったか)否か、を判定する。T<T1である間はステップS130の判定が満たされず(S130:NO)、ループ待機する。T≧T1となったらステップS130の判定が満たされ(S130:YES)、ステップS140に移る。
ステップS140では、クーリング制御部212Bは、上述の一時停止指示信号を印字制御部212Aに出力する。これにより、印字制御部212Aによる上記図12のフローのステップS224の判定が満たされ、ステップS226以降の手順が実行されて前述と同様のテープ搬送・印字形成の一時停止制御が行われる。なお、このステップS140の手順を実行するクーリング制御部212Bが、各請求項記載の信号出力手段として機能する。
その後、ステップS150で、クーリング制御部212Bは、上記温度センサ151の検出結果に基づき、印字ヘッド11の温度Tが上記再開温度T2以下となったか(T≦T2となったか)否か、を判定する。T>T2である間はステップS150の判定が満たされず(S150:NO)ループ待機する。T≦T2となったらステップS150の判定が満たされ(S150:YES)、ステップS160に移る。
ステップS160では、クーリング制御部212Bは、上述の作成再開停止指示信号を印字制御部212Aに出力する。これにより、印字制御部212Aによる上記図12のフローのステップS234の判定が満たされ、ステップS236以降の手順が実行されて前述と同様のテープ搬送・印字形成を再開する制御が行われる。その後、このフローを終了する。
本変形例においては、印字ヘッド11の過熱による耐久性低下を防止するためのいわゆるクーリング機能によって搬送及び印字形成が一時停止される際において、前述した実施形態や変形例(1)と同様に、印字つぶれ、印字かすれ、微小な印字空白等の発生による印刷物の印字品質の低下を防止することができる。
なお、以上において、図7、図14に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
また、図12、図15等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。