JP6227584B2 - インクジェット用顔料分散体及びその製造方法、インクセット、並びに画像形成方法 - Google Patents
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Description
例えば、顔料としてC.I.(Colour Index)ピグメントオレンジ71を用いたインクジェット用のインクとして、C.I.ピグメントオレンジ71と、炭素数4以上の1,2−アルカンジオールと、特定のアルコール化合物と、を含有するインクジェット用のインクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
例えば、赤色顔料とC.I.ピグメントオレンジ71とを樹脂に分散させてなる赤色樹脂組成物、及び、この赤色樹脂組成物を用いたカラーフィルターの製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、顔料のうち、特に、C.I.ピグメントオレンジ71及びC.I.ピグメントオレンジ73は、いずれも水を含む媒体(以下、「水系媒体」ともいう)中に分散させることが難しい顔料である。水系媒体中への顔料の分散性は、水系媒体中に顔料を分散させて得られた顔料分散体の保存安定性及び吐出安定性と相関がある。
従って、C.I.ピグメントオレンジ71又はC.I.ピグメントオレンジ73と、水と、を含む顔料分散液(例えば、特許文献1に記載のインク)に対し、保存安定性及び吐出安定性を向上させることが望まれる。
即ち、本発明の目的は、保存安定性及び吐出安定性に優れたインクジェット用顔料分散体及びその製造方法、並びに上記インクジェット用顔料分散体を用いたインクセット及び画像形成方法を提供することである。
<1> 下記式(A)で表される顔料(A)と、下記式(B)で表される顔料(B)と、水と、を含有し、顔料(B)に対する顔料(A)の含有質量比が1.0超であるインクジェット用顔料分散体。
式(B)において、2つのR3及び2つのR4は、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に塩素原子を表すか、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に水素原子を表すか、又は、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共にフェニル基を表す。
<3> 更に、樹脂粒子を含有する<1>又は<2>に記載のインクジェット用顔料分散体。
<5> インクジェット用顔料分散体を得る工程は、顔料(A)と顔料(B)とを混合して顔料混合物を得る段階と、少なくとも顔料混合物と水とを混合し、分散処理してインクジェット用顔料分散体を得る段階と、を含む<4>に記載のインクジェット用顔料分散体の製造方法。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。
本発明のインクジェット用顔料分散体(以下、単に「顔料分散体」ともいう)は、下記式(A)で表される顔料(A)と、下記式(B)で表される顔料(B)と、水と、を含有し、顔料(B)に対する顔料(A)の含有質量比(以下、「含有質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕」ともいう)が1.0超である。
式(B)において、2つのR3及び2つのR4は、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に塩素原子を表すか、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に水素原子を表すか、又は、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共にフェニル基を表す。
顔料(A)において、2つのR1が共に水素原子を表しかつ2つのR2が共にターシャリーブチル基を表す態様の顔料は、C.I.ピグメントオレンジ73(PO73)である。
即ち、顔料(A)は、PO71又はPO73である。
顔料(B)において、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に水素原子を表す態様の顔料は、C.I.ピグメントレッド255(以下、「PR255」ともいう)である。
顔料(B)において、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共にフェニル基を表す態様の顔料は、C.I.ピグメントレッド264(以下、「PR264」ともいう)である。
即ち、顔料(B)は、PR254、PR255、又はPR264である。
この点に関し、本発明の顔料分散体は、顔料(A)に加えて顔料(B)を含むことにより、顔料(A)を含み顔料(B)を含まない顔料分散体と比較して、保存安定性及び吐出安定性が向上する。
なお、インクジェットヘッドからの吐出安定性は、インクジェットヘッドからの連続吐出性によって評価される(後述の実施例参照)。
顔料(A)及び顔料(B)は、式(A)及び式(B)から明らかなとおり、同一の骨格(詳細にはジケトピロロピロール(DPP)骨格)を有している。顔料(A)と顔料(B)との相違点は、DPP骨格に置換する置換基(R1〜R4)の種類である。即ち、顔料(A)と顔料(B)とは、似て非なる顔料ということができる。このため、本発明の顔料分散体では、顔料(A)に対して似て非なる顔料(B)が、顔料(A)に対するシナジストとして機能することにより、顔料(A)を含み顔料(B)を含まない場合と比較して、顔料(A)の水系媒体中への分散安定性が向上すると考えられる。本発明の顔料分散体によれば、この分散安定性の向上に起因して、保存安定性向上及び吐出安定性向上の効果が奏されると考えられる。
このオレンジ色の色相に関し、本発明者の検討の結果、オレンジ色顔料である顔料(A)と赤色顔料である顔料(B)とを含有する本発明の顔料分散体を用いて形成された画像では、顔料(A)を含むが顔料(B)を含まない顔料分散体を用いて形成された画像と比較して、むしろ、オレンジ色の色相の鮮やかさが向上するという予期せぬ効果が奏されることが明らかとなった。
以下、色相とは、特に断りがないかぎり、オレンジ色の色相を意味し、色相が向上するとは、特に断りがないかぎり、オレンジ色の色相の鮮やかさが向上することを意味する。
本発明の顔料分散体が顔料(A)を2種含有する場合、顔料(A)の含有量(含有質量)は、2種の顔料(A)の総含有量(総含有質量)を意味する。
また、本発明の顔料分散体は、顔料(B)を1種のみ(即ち、PR254、PR255、又はPR264)含有していてもよいし、2種以上(即ち、PR254、PR255、及びPR264からなる群から選択される2種以上)含有していてもよい。
本発明の顔料分散体が顔料(B)を2種以上含有する場合、顔料(B)の含有量(含有質量)は、2種以上の顔料(B)の総含有量(総含有質量)を意味する。
即ち、本明細書中における含有質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕は、少なくとも1種の顔料(B)の総含有質量に対する、少なくとも1種の顔料(A)の総含有質量の比を意味する。
また、後述する「顔料(A)及び顔料(B)の合計含有量」は、少なくとも1種の顔料(A)の総含有量と、少なくとも1種の顔料(B)の総含有量と、の合計を意味する。
本発明の効果がより効果的に奏される点から、本発明の顔料分散体は、顔料(A)を1種のみ含有することが好ましい。
含有質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕の上限には特に制限はないが、保存安定性、吐出安定性、及び色相をより向上させる観点から、含有質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕としては、50以下が好ましく、25以下がより好ましく、15以下が更に好ましく、10以下が更に好ましく、8.0以下が更に好ましく、6.0以下が特に好ましい。
含有質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕は、保存安定性、吐出安定性、及び色相をより向上させる観点から、1.1〜50が好ましく、1.1〜25がより好ましく、1.1〜10が特に好ましい。
また、一般的に、顔料分散体が樹脂粒子を含有する場合は、顔料分散体が樹脂粒子を含有しない場合と比較して、顔料の分散安定性が低く、顔料分散体の保存安定性及び吐出安定性が低い傾向となる。
しかし、本発明の顔料分散体は、上述したとおり、顔料(A)だけでなく顔料(B)も含有するため、更に樹脂粒子を含有する場合であっても、顔料分散体の保存安定性及び吐出安定性が高く維持される。言い換えれば、本発明の顔料分散体が更に樹脂粒子を含有する場合には、本発明の顔料分散体が樹脂粒子を含有しない場合と比較して、顔料(B)による改善効果(保存安定性及び吐出安定性の効果)がより顕著に奏される(即ち、顔料(B)による改善幅が大きくなる)。
樹脂粒子は、樹脂からなる粒子である点で、顔料粒子の表面の少なくとも一部を被覆している樹脂分散剤とは異なる。
カルボキシル基を有する自己分散性ポリマー粒子の好ましい態様については後述する。
本発明の顔料分散体は、顔料(A)及び顔料(B)を含有する。
顔料(A)は、前述のとおり、PO71又はPO73である。顔料(A)としては、顔料分散体の分散安定性及び顔料分散体の色相の観点から、PO71が特に好ましい。
顔料(B)は、前述のとおり、PR254、PR255、又はPR264である。顔料(B)としては、顔料分散体の分散安定性及び顔料分散体の色相の観点から、PR254が特に好ましい。
本発明の顔料分散体の特に好ましい態様は、顔料(A)がPO71であり、かつ、顔料(B)がPR254である態様である。
本発明の顔料分散体中における顔料(A)及び顔料(B)の合計含有量は、画像濃度の観点から、顔料分散体の全量に対し、0.5質量%〜35質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましく、2質量%〜10質量%が更に好ましく、2質量%〜6質量%が特に好ましい。
但し、本発明の効果をより効果的に得る観点から、本発明の顔料分散体は、顔料(A)及び顔料(B)以外のその他の顔料を実質的に含有しないことが好ましい。含有する場合には、その他の顔料の含有量が、顔料分散体の全量に対し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
本発明の顔料分散体は、顔料(A)及び顔料(B)を分散させる分散剤を含有することが好ましい。
分散剤としては、樹脂分散剤が好ましい。
樹脂分散剤としては、水溶性樹脂からなる水溶性樹脂分散剤であってもよいし、非水溶性樹脂からなる非水溶性樹脂分散剤であってもよい。
以下、顔料(A)及び顔料(B)からなる顔料粒子の表面の少なくとも一部が樹脂分散剤によって被覆されてなる粒子を、「樹脂被覆顔料粒子」ということがある。
顔料粒子の表面の少なくとも一部に対する樹脂分散剤の被覆は、特開2009−190379号公報に記載された方法等、従来公知の方法で行うことができる。
ここで、親水性構造単位としては、少なくとも1つの親水性基を含む構造単位が好ましい。
親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げられ、カルボキシル基が好ましい。なお、ノニオン性基としては、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基、等が挙げられる。
親水性構造単位と疎水性構造単位との含有質量比〔親水性構造単位:疎水性構造単位〕は、10:90〜40:60の範囲が好ましく、10:90〜30:70の範囲がより好ましく、10:90〜25:75の範囲が特に好ましい。
カルボキシル基を有する構成単位としては、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等に由来の構成単位が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル酸及びβ−カルボキシエチルアクリレートに由来の構造単位が好ましく、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位がさらに好ましい。
これらの中でも、疎水性構造単位としては、炭素数1〜炭素数20のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つに由来する構造単位が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることがさらに好ましい。
これらの疎水性構造単位は、樹脂分散剤中に、1種単独で含まれても、2種以上含まれてもよい。
樹脂分散剤の酸価としては、90mgKOH/g〜150mgKOH/gが好ましく、100mgKOH/g〜120mgKOH/gがより好ましい。
なお、酸価は、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定される。
本発明の顔料分散体は、水を含有する。
即ち、本発明の顔料分散体は、水系の組成物である。このため、水を含まず溶剤を含む溶剤系の組成物と比較して、環境負荷低減及び作業性向上等の点で有利である。
本発明の顔料分散体中における水の含有量には特に制限はないが、顔料分散体の全量に対し、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。
本発明の顔料分散体中における水の含有量の上限は、顔料(A)及び顔料(B)等の量を考慮して適宜設定されるが、水の含有量は、顔料分散体の全量に対し、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
本発明の顔料分散体は、吐出安定性をより向上させる観点から、水溶性溶剤を含有することが好ましい。
水溶性溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオールなどの多価アルコール類;特開2011−42150号公報の段落0116に記載の、糖類や糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1〜4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン;等が挙げられる。
(AO=EO又はPO(EO:PO=1:1)、SP値=20.1)
・nC4H9O(AO)10−H
(AO=EO又はPO(EO:PO=1:1)、SP値=18.8)
・HO(A'O)40−H
(A'O=EO又はPO(EO:PO=1:3)、SP値=18.7)
・HO(A''O)55−H
(A''O=EO又はPO(EO:PO=5:6)、SP値=18.8)
・HO(PO)3−H(SP値=24.7)
・HO(PO)7−H(SP値=21.2)
・1,2−ヘキサンジオール(SP値=27.4)
なお、EO、POは各々、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基を表す。
本発明の顔料分散体中における水溶性溶剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、顔料分散体の全量に対し、2質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましく、8質量%〜30質量%が更に好ましく、10質量%〜25質量%が特に好ましい。
本発明の顔料分散体は、樹脂粒子(即ち、樹脂からなる粒子)を少なくとも1種含有することが好ましい。これにより、画像の耐擦性がより向上する。
特に、本発明の顔料分散体が樹脂粒子を含有し、かつ、この顔料分散体と後述する処理液とを用いて画像を形成した場合には、画像の耐擦性が更に向上する。
より詳細には、樹脂粒子は、記録媒体(特に、記録媒体における、処理液又はこれを乾燥させた領域)と接触した際に、顔料分散体中において分散不安定化して凝集し、増粘することにより顔料分散体を固定化する機能を有する。これにより、画像の耐擦性がより向上する。更に、顔料分散体の記録媒体への密着性等もより向上する。
なお、樹脂粒子は、樹脂からなる粒子である点で、前述した樹脂被覆顔料粒子と区別される。
自己分散性ポリマー粒子とは、自己分散性ポリマーからなる粒子を指す。
自己分散性ポリマーとは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身の官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水系媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーを指す。
ここで分散状態とは、水系媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水系媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
自己分散性ポリマーは、顔料分散体の記録媒体への定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散性ポリマーであることが好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造単位の少なくとも1種と、
炭素数1〜8の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の少なくとも1種と、
カルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位の少なくとも1種と、
を含むポリマー(以下、「ポリマーB」ともいう)が好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートのうち、単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環式(メタ)アクリレートのうち、2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環式(メタ)アクリレートのうち、3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち、2環式(メタ)アクリレート又は3環式の多環式(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
ポリマーBの全量に対する脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量(2種以上である場合には総含有量)としては、20質量%〜90質量%が好ましく、40質量%〜80質量%がより好ましく、40質量%〜70質量%が更に好ましく、30質量%〜70質量%が特に好ましい。
ポリマーBの全量に対する、炭素数1〜8の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量(2種以上である場合には総含有量)としては、10質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜70質量%がより好ましく、20質量%〜60質量%が特に好ましい。
ポリマーBの全量に対するカルボキシル基含有モノマーに由来する構造単位の含有量(2種以上である場合には総含有量)としては、1質量%〜30質量%が好ましく、3質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)により、前述の樹脂分散剤の重量平均分子量と同様の方法によって測定することできる。
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(38/52/10)
・メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/62/10/8)
・メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/72/8)
樹脂粒子の体積平均粒子径は、前述した分散状態での樹脂被覆顔料粒子の体積平均粒子径と同様の方法によって測定される。
上記含有量が1質量%以上であると、画像の耐擦性がより向上する。
上記含有量が30質量%以下であると、インクの吐出性をより向上させることができ、また、低温環境下での析出物の発生を抑制する点でも有利である。
本発明の顔料分散体は、必要に応じて、界面活性剤を少なくとも1種含有することができる。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを合わせ持つ構造を有する化合物を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。さらに、上述した樹脂分散剤を界面活性剤としても用いてもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィン(登録商標)E1010などのEシリーズを挙げることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤が挙げられ、この中でアニオン系界面活性剤がより好ましい。アニオン系界面活性剤の例としては、CAPSTONE(登録商標) FS−63、同FS−61(Dupont社製)、フタージェント(登録商標)100、同110、同150(株式会社ネオス社製)、CHEMGUARD(登録商標) S−760P(Chemguard Inc.社製)等が挙げられる。
ここで、顔料分散体の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、液温25℃の条件下で測定された値を指す。
本発明の顔料分散体は、尿素を含有することができる。
尿素は、保湿機能が高いため、固体湿潤剤として、インクの望ましくない乾燥又は凝固を効果的に抑制することができる。
本発明の顔料分散体が尿素を含有する場合、尿素の含有量は、顔料分散体の全量に対し、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
本発明の顔料分散体は、上記成分に加えて必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、尿素以外の固体湿潤剤、コロイダルシリカ、消泡剤、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
この場合、顔料分散体が(後述の処理液を用いる場合には、顔料分散体及び処理液の少なくとも一方が)、更に重合開始剤を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、例えば、2011−184628号公報の段落0128〜0144、特開2011−178896号公報の段落0019〜0034、又は特開2015−25076の段落0065〜0086等に記載されている重合性化合物(例えば、2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物)が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、特開2011−184628号公報の段落0186〜0190、特開2011−178896号公報の段落0126〜0130、又は特開2015−25076の段落0041〜0064に記載されている公知の重合開始剤が挙げられる。
本発明の顔料分散体の物性には特に制限はないが、以下の物性であることが好ましい。
本発明の顔料分散体は、凝集速度及び組成物の分散安定性の観点から、25℃(±1℃)におけるpHが7.5以上であることが好ましい。
顔料分散体のpH(25℃±1℃)は、pH7.5〜13が好ましく、7.5〜10がより好ましい。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて30℃の条件下で測定されるものである。
上述した本発明のインクジェット用顔料分散体を製造する方法としては、以下の実施形態の製造方法が好適である。
即ち、本実施形態のインクジェット用顔料分散体の製造方法は、少なくとも顔料(A)と顔料(B)と水とを混合し、分散処理してインクジェット用顔料分散体を得る工程(以下、「第1工程」ともいう)を有する。
本実施形態の製造方法によれば、顔料(A)が水に分散された分散体と顔料(B)が水に分散された分散体とを別個に製造し、これらを混合して顔料分散体を得る方法と比較して、顔料(A)の分散性に優れる。このため、保存安定性及び吐出安定性に優れた顔料分散体を得ることができる。
この態様によれば、顔料(A)が水に分散された分散体と顔料(B)が水に分散された分散体とを別個に製造し、これらを混合して顔料分散体を得る方法と比較して、顔料(A)の分散性に特に優れる。このため、保存安定性及び吐出安定性に特に優れた顔料分散体を得ることができる。
但し、第1工程の態様は上記好ましい態様には限定されず、水に対して顔料(A)及び顔料(B)を同時に又は別々に添加し、次いで分散処理する態様など、その他の態様であってもよい。
第1工程における混合及び分散処理は、例えば、二本ロール、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸押出機、2軸押出機、等を用いて行うことができる。
なお、混合及び分散処理の詳細については、T.C. Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載を参照することもできる。
その他の成分としては、分散剤(好ましくは樹脂分散剤)が好ましい。分散剤の好ましい範囲は前述したとおりである。
第1工程以外の工程としては、第1工程で得られた顔料分散体(インクジェット用顔料分散体)に対し、更に、成分を添加する第2工程が挙げられる。
第2工程で添加する成分としては、前述した顔料分散体に含まれ得る各成分(例えば、水溶性溶剤、界面活性剤、尿素、樹脂粒子等)のうちの少なくとも1種が挙げられる。また、第2工程で添加する成分としては、水も挙げられる。
本実施形態のインクセットは、上述した本発明のインクジェット用顔料分散体であるインクと、このインク中の成分を凝集させる酸(以下、「酸性化合物」ともいう)を含有する処理液と、を含む。
本実施形態のインクセットによれば、耐擦性に優れた画像を形成できる。
処理液は、酸性化合物を少なくとも1種含有する。
酸性化合物としては、インクのpHを低下させ得る酸性物質が挙げられる。
酸性化合物としては、有機酸性化合物及び無機酸性化合物のいずれを用いてもよく、有機酸性化合物の少なくとも1種と無機酸性化合物の少なくとも1種とを併用してもよい。
有機酸性化合物としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、及びカルボキシル基等を挙げることができる。本実施形態において酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
これにより、カルボキシル基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク中の顔料やポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
無機酸性化合物としては、リン酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、塩酸などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。無機酸性化合物としては、画像部の光沢ムラの発生抑制とインクの凝集速度の観点から、リン酸が最も好ましい。
特に、記録媒体として炭酸カルシウムを含有するコート層を有する記録媒体を使用した場合、処理液に含まれる無機酸性化合物としてはリン酸が有利である。
酸性化合物として有機酸性化合物と無機酸性化合物とを併用する場合において、有機酸性化合物と無機酸性化合物との含有比は、凝集速度と光沢ムラ抑制の観点から、有機酸性化合物の含有量に対する無機酸性化合物の含有量が、5モル%〜50モル%であることが好ましく、10モル%〜40モル%であることがより好ましく、15モル%〜35モル%であることがさらに好ましい。
多価金属塩やカチオン性ポリマーについては、例えば、特開2011−042150号公報の段落0155〜0156に記載されている多価金属塩やカチオン性ポリマーを用いることができる。
処理液は、水溶性高分子化合物を少なくとも一種含むことが好ましい。
水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性高分子化合物としては、後述する特定高分子化合物や、特開2013−001854号公報の段落0026〜0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
含有量が0.1質量%以上であれば、インク滴の広がりをより促進でき、含有量が10質量%以下であれば、処理液の増粘をより抑制できる。また、含有量が10質量%以下であれば、処理液中の泡に起因する処理液の塗布ムラをより抑制できる。
特定高分子化合物におけるイオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、アンモニウム基、又はこれらの塩等が挙げられる。中でも、好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、又はこれらの塩であり、より好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの塩であり、さらに好ましくは、スルホン酸基又はその塩である。
イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位としては、イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構造単位が好ましい。
水溶性高分子化合物中におけるイオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位の含有量としては、水溶性高分子化合物の全質量中、例えば10質量%〜100質量%とすることができ、10質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜70質量%であることがより好ましく、10質量%〜50質量%であることがさらに好ましく、20質量%〜40質量%であることが更に好ましい。
疎水性の構造単位としては、(メタ)アクリル酸エステル(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜4のアルキルエステル)に由来する構造単位が好ましい。
処理液は水を含有することが好ましい。
水の含有量は、処理液の全質量に対して、好ましくは50質量%〜90質量%であり、より好ましくは60質量%〜80質量%である。
処理液は、水溶性溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
水溶性溶剤として、具体的には、本発明の顔料分散体が含むことができる水溶性溶剤を、処理液においても同様に用いることができる。
中でも、カール抑制の観点から、ポリアルキレングリコール又はその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
処理液は、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。表面張力調整剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
処理液は、必要に応じ、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
処理液に含有され得るその他の成分としては、前述した顔料分散体に含有され得るその他の成分と同様である。
処理液は、インクの凝集速度の観点から、25℃(±1℃)におけるpHが0.1〜0.5であることが好ましい。
処理液のpHが0.1以上であると、記録媒体のザラツキがより低減され、画像部の密着性がより向上する。
処理液のpHが0.5以下であると、凝集速度がより向上し、記録媒体上におけるインクによるドット(インクドット)の合一がより抑制され、画像のザラツキがより低減される。
処理液のpH(25℃±1℃)は、0.2〜0.4がより好ましい。
本実施形態の画像形成方法は、記録媒体上に、上述した本発明のインクジェット用顔料分散体であるインクを、インクジェット法によって付与して画像を形成する付与工程と、上記記録媒体上に、上記インク中の成分を凝集させる酸を含有する処理液を付与する処理液付与工程と、を有する。
本実施形態の画像形成方法によれば、耐擦性に優れた画像を形成できる。
また、記録媒体としては、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
インク付与工程は、インク(前述の本発明の顔料分散体)を記録媒体にインクジェット法で付与する工程である。
本工程では、記録媒体上に選択的にインクを付与でき、所望の可視画像を形成できる。
本実施形態の画像形成方法では、処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する。
処理液付与工程は、インク中の成分を凝集させる酸性化合物を含む処理液を記録媒体に付与し、処理液をインクと接触させて画像化する。この場合、インク中の樹脂粒子をはじめとする分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。
なお、処理液の好ましい態様については前述した通りである。
本実施形態においては、処理液付与工程の後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。
具体的には、記録媒体上に、インクを付与する前に、予めインク中の成分(上述の分散粒子)を凝集させるため処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインクを付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
本実施形態の画像形成方法は、インク付与工程及び処理液付与工程後の画像を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。
上記乾燥としては、加熱乾燥が好ましい。
画像の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
画像の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、記録媒体の画像形成面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、記録媒体の画像形成面に温風又は熱風をあてる方法、記録媒体の画像形成面又は画像形成面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、これらの複数を組み合わせた方法、等が挙げられる。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましい。
画像の加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒〜60秒が好ましく、5秒〜30秒がより好ましく、5秒〜20秒が特に好ましい。
本実施形態の画像形成方法に用いることができる画像形成装置には、特に制限はなく、特開2010−83021号公報、特開2009−234221号公報、特開平10−175315号公報等に記載の公知の画像形成装置を用いることができる。
次に、本実施形態の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット記録装置の一例を図1を参照して具体的に説明する。
図1は、インクジェット記録装置全体の構成例を示す概略構成図である。
塗布ローラ22は、対向ローラ24と対をなして記録媒体を搬送可能に構成されており、記録媒体は、塗布ローラ22と対向ローラ24との間を通って処理液乾燥ゾーン13に送られる。
また、溶媒除去ローラ等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を記録媒体から取り除く方式も用いられる。
本実施形態では、特色インク(A)及び特色インク(B)のいずれか一つとして、本発明の顔料分散体であるインク(オレンジインク)を用いる。即ち、本発明の顔料分散体であるインクは、インク吐出用ヘッド30A及び30Bのいずれか一方から吐出される。
本実施形態のインクジェット記録装置では、インク吐出用ヘッド30A及び30Bの他方は、省略されていてもよい。また、インク吐出用ヘッド30A及び30Bに加え、その他の特色インク吐出用ヘッドを備えていてもよい。
以下の実施例における、「樹脂被覆顔料粒子の分散液」及び「インク」は、いずれも「顔料分散体」の一態様である。
<水溶性樹脂分散剤P−1の合成>
メタクリル酸(172部)と、メタクリル酸ベンジル(828部)と、イソプロパノール(375部)と、を混合することにより、モノマー供給組成物を調製した。また、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)と、イソプロパノール(187.5部)と、を混合することにより、開始剤供給組成物を調製した。
次に、イソプロパノール(187.5部)を、窒素雰囲気下、80℃に加温し、そこに、上記モノマー供給組成物及び上記開始剤供給組成物の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間、80℃に保った後、25℃まで冷却した。
冷却後、溶媒を減圧除去することにより、重量平均分子量約30,000、酸価112mgKOH/gの水溶性樹脂分散剤P−1を得た。
上記で得られた水溶性樹脂分散剤P−1(150部)に水酸化カリウム水溶液を加えることにより、pHが9であり水溶性樹脂分散剤濃度が25質量%である水溶性樹脂分散剤水溶液を得た。
また、表1に示す顔料(A)及び顔料(B)を、表1に示す質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕にて混合し、顔料混合物を得た。
上記水溶性樹脂分散剤水溶液(97.2部)と、上記顔料混合物(48.6部)と、水(78.2部)と、ジプロピレングリコール(100部)と、を混合し、ビーズミル(ビーズ径0.1mmφ、ジルコニアビーズ)で分散処理を行い、分散液全量に対する顔料(A)及び顔料(B)の合計含有量が12質量%である、樹脂被覆顔料粒子の分散液(顔料分散体)を得た。
得られた分散液中の樹脂被覆顔料粒子の体積平均粒子径を、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法によって測定した。結果を表1に示す。
下記組成の下記成分を混合し、インク(詳細には、オレンジインク)を得た。
なお、得られたインクも、顔料分散体の一態様である。
・上記で得られた樹脂被覆顔料粒子の分散液 … 30質量%
・サンニックスGP−250(水溶性溶剤) … 10.0質量%
・PG(プロピレングリコール;水溶性溶剤) … 10.0質量%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製)… 1.0質量%
・尿素 … 5.0質量%
・イオン交換水 … 全体で100質量%としたときの残量
得られたインクを用い、以下の評価を行った。
評価結果を表1に示す。
上記で得られたインクを30mlポリエチレン製ボトルに25g入れ、次いでこのポリエチレン製ボトルを、60℃に設定した恒温槽中で2週間保存した。
上記保存の前後においてインクの粘度を測定し、下記式に従ってΔ粘度を算出した。
Δ粘度 = (60℃2週間保存後のインクの粘度)−(保存前のインクの粘度)
Δ粘度が小さいほど、インクの保存安定性に優れ、好ましい。また、Δ粘度が大きいほど、インクの保存安定性に劣る。
下記評価基準において、A、B、Cであれば、実用上の許容範囲内である。
A: Δ粘度 ≦ 0.3mPa・s
B: 0.3mPa・s < Δ粘度 ≦ 0.6mPa・s
C: 0.6mPa・s < Δ粘度 ≦ 1.0mPa・s
D: 1.0mPa・s < Δ粘度 ≦ 2.0mPa・s
E: 2.0mPa・s < Δ粘度
吐出安定性の評価として、以下に示す連続吐出性の評価を行った。
(株)リコー製のプリンターヘッド(GELJET(登録商標) GX5000)を用意した。
このプリンターヘッドを、図1に示すインクジェット記録装置と同様の構成を有するインクジェット記録装置に固定した。この固定の際のプリンターヘッドの配置は、このプリンターヘッドの96本のノズルが並ぶラインヘッドの方向が、ステージの移動方向と同一平面上で直交する方向に対して、75.7°傾斜する配置とした。
次いで、上記で得られたインクを、上記96本のノズルから、インク液滴量2pL、吐出周波数24kHzにて、45分間連続で吐出させた。なお、この吐出の開始時には、予め、96本の全ノズルからインクが吐出していることを確認しておいた。
45分間の連続吐出終了後に、最後まで吐出できたノズル数(45分連続吐出終了後の吐出ノズル数)を数えた。この吐出ノズル数を用い、下記式によりインク吐出率を算出し、下記の評価基準に従って、インクの連続吐出性の評価を行なった。
なお、実用上許容できるものは、A、B、及びCに分類されるものである。
上記式において、全ノズル数は96である。
A:45分間連続吐出終了後のインク吐出率が100%である。
B:45分間連続吐出終了後のインク吐出率が98%以上100%未満である。
C:45分間連続吐出終了後のインク吐出率が96%以上98%未満である。
D:45分間連続吐出終了後のインク吐出率が94%以上96%未満である。
E:45分間連続吐出終了後のインク吐出率が94%未満である。
上記インク及び上記インクジェット記録装置を用い、吐出量を2.0pLに設定して、オレンジ色のベタ画像を、OKトップコート(登録商標)127gms(王子製紙社製)及びNPI(登録商標)フォームNEXT−IJ70(日本製紙社製)の各用紙に描画した。
得られたベタ画像を5人の評価者が目視で観察し、各評価者が下記評価点数に従って採点した。
次いで、5人の評価者による評価点数の平均点を求め、得られた平均点に基づき、下記評価基準に従って色相を評価した。
5:ベタ画像が非常に鮮やかなオレンジ色の色相であり、濃度も十分に濃かった。
4:ベタ画像のオレンジ色の色相が鮮やかで、濃度も濃かった。
3:ベタ画像のオレンジ色の色相の鮮やさが劣り、濃度も薄いが、実用上許容できる範囲であった。
2:ベタ画像のオレンジ色の色相の鮮やさがなく、濃度も薄く、実用上、支障を来たす品質であった。
1:ベタ画像のオレンジ色の色相の鮮やさが全くなく、濃度もとても薄く、実用上、支障を来たす品質であった。
A:5人の評価者による評価点数の平均点が、4.5以上5.0以下であった。
B:5人の評価者による評価点数の平均点が、4.0以上4.5未満であった。
C:5人の評価者による評価点数の平均点が、3.5以上4.0未満であった。
D:5人の評価者による評価点数の平均点が、3.0以上3.5未満であった。
E:5人の評価者による評価点数の平均点が、3.0未満であった。
顔料(A)の種類、顔料(B)の種類、及び質量比〔顔料(A)/顔料(B)〕の組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
実施例2〜9並びに比較例1及び2では、顔料(A)及び顔料(B)の合計量については、実施例1と同じ量とした。
特に、比較例1及び2では、顔料(B)を用いず、実施例1における顔料(A)及び顔料(B)の合計量と同じ量の顔料(A)を用いた。
結果を表1に示す。
これに対し、比較例1のインクは、保存安定性及び連続吐出性に劣っており、比較例2のインクは、連続吐出性に劣っていた。
更に、実施例1〜9のインクによって形成された画像は、比較例1及び2のインクによって形成された画像と比較して、オレンジ色の色相の鮮やかさにも優れていた。
実施例2〜9のインクの中でも、量比〔顔料(A)/顔料(B)〕が1.1〜10の範囲に含まれる実施例3〜9のインクは、連続吐出性に特に優れていた。
実施例4において、インクの組成を、以下の組成に変更したこと以外は実施例4と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
・実施例4における樹脂被覆顔料粒子の分散液 … 30質量%
・サンニックスGP−250(水溶性溶剤) … 5.0質量%
・PG(プロピレングリコール;水溶性溶剤) … 10.0質量%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製)… 1.0質量%
・尿素 … 5.0質量%
・下記の自己分散性ポリマー粒子B−01(樹脂粒子) … 8質量%
・イオン交換水 … 全体で100質量%としたときの残量
自己分散性ポリマー粒子B−01は、以下のようにして作製した。
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。次いで反応容器内の還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流状態を保った)、反応容器内のメチルエチルケトンに対し、メチルメタクリレート220.4g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製の重合開始剤;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート))2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌した後に、この1時間攪拌後の溶液に対し、下記工程(1)の操作を行った。
工程(1) … 「V−601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。
反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷することにより、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=38/52/10[質量比])共重合体を含む重合溶液(固形分濃度41.0%)を得た。
上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が63000であり、酸価が65.1(mgKOH/g)であった。
次に、70℃に昇温された溶液に対し、蒸留水380gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化を行った(分散工程)。
その後、減圧下、反応容器内の液体の温度を70℃で1.5時間保つことにより、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)。得られた液体に対し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)を0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)添加した。
得られた液体を、1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収することにより、固形分濃度26.5%の自己分散性ポリマー粒子B−01の水性分散物を得た。
得られた自己分散性ポリマー粒子B−01の水性分散物をイオン交換水で希釈することにより、固形分濃度25.0%の液を調製した。得られた固形分濃度25.0%の液の物性を測定した結果、pH7.8、電気伝導度461mS/m、粘度14.8mPa・sであった。
実施例101において、「実施例4における樹脂被覆顔料粒子の分散液」を、実施例102については実施例5における樹脂被覆顔料粒子の分散液に、比較例101については比較例1における樹脂被覆顔料粒子の分散液に、それぞれ変更したこと以外は実施例101と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
これに対し、樹脂粒子、顔料(A)、及び顔料(B)を含有する実施例101のインク(表2参照)は、樹脂粒子を含有せず、顔料(A)及び顔料(B)を含有する実施例4のインク(表1参照)と同等の、保存安定性及び連続吐出性を示した。
同様に、樹脂粒子、顔料(A)、及び顔料(B)を含有する実施例102のインク(表2参照)は、樹脂粒子を含有せず、顔料(A)及び顔料(B)を含有する実施例5のインク(表1参照)と同等の、保存安定性及び連続吐出性を維持していた。
以上の結果より、インクが樹脂粒子を含有する場合には、インクが樹脂粒子を含有しない場合と比較して、顔料(B)による保存安定性及び連続吐出性の改善効果がより顕著となる(即ち、改善幅がより大きくなる)ことが確認された。
樹脂粒子を含有する実施例101及び102のインクと、インク中の成分を凝集させる酸を含有する処理液と、を用いて画像を形成することにより、処理液を用いずに画像を形成する場合と比較して、画像の耐擦性をより向上させることができる。
処理液としては、例えば、以下の組成の処理液を用いることができる。
以下の組成の処理液の物性は、例えば、粘度2.9mPa・s(25℃)、表面張力41.0mN/m(25℃)、pH0.7(25℃)である。
ここで、粘度、表面張力、及びpHは、それぞれ、VISCOMETER TV−22
(TOKI SANGYO CO.LTD製)、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)、及びpHメーターWM−50EG(東亜DDK(株)製)を用いて測定する。
・TPGmME(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル) … 4.8質量%
・DEGmBE(ジエチレングリコールモノブチルエーテル) … 4.8質量%
・マロン酸 … 9.0質量%
・リンゴ酸 … 8.0質量%
・プロパントリカルボン酸 … 2.5質量%
・リン酸85質量%水溶液 … 6.0質量%
・下記水溶性ポリマー1 … 0.5質量%
・消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSA−739(15%);エマルジョン型シリコーン消泡剤)
… シリコーンオイルの量として0.01質量%
・ベンゾトリアゾール … 1.0質量%
・イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
処理液を用いた画像形成方法の例を以下に示す。
実施例1における連続吐出性の評価と同様に、(株)リコー製GELJET(登録商標) GX5000プリンターヘッド(即ち、96本のノズルが並ぶラインヘッド)を用意し、このプリンターヘッドを、前述の図1に示すインクジェット記録装置と同様の構成のインクジェット記録装置に固定配置する。
記録媒体としてのOKトップコート(登録商標)をインクジェット記録装置のステージ上に固定し、次いで記録媒体が固定されたステージを直線方向に500mm/秒で定速移動させながら、記録媒体に上記の処理液をワイヤーバーコーターで約1.5g/m2となるように塗布する。
処理液の付与が終了した箇所において、この箇所への処理液の付与終了時から1.5秒後に、ドライヤを用いて50℃の条件で処理液の乾燥を開始し、処理液の付与終了時から3.5秒後に乾燥を終了する。このときの乾燥時間は2秒となる。
処理液の乾燥が終了した記録媒体を、ステージ速度50mm/秒で定速移動させながら、記録媒体の処理液が付与された面に対し、上記プリンターヘッドから実施例101又は102のインクをライン方式で吐出し、画像を形成する。インクの吐出は、処理液の乾燥終了から2秒以内に開始する。
インクの吐出条件は、例えば、インク液滴量3.5pL、吐出周波数24kHz、解像度1200dpi×1200dpi(dot per inch)とする。
印画直後の画像を70℃で10秒間乾燥する。
13・・・処理液乾燥ゾーン
14・・・インク吐出部
15・・・インク乾燥ゾーン
30K、30C、30M、30Y、30A、30B・・・インク吐出用ヘッド
Claims (7)
- 下記式(A)で表される顔料(A)と、下記式(B)で表される顔料(B)と、水と、を含有し、
前記顔料(B)に対する前記顔料(A)の含有質量比が1.0超であるインクジェット用顔料分散体。
式(A)において、2つのR1及び2つのR2は、2つのR1が共にシアノ基を表しかつ2つのR2が共に水素原子を表すか、又は、2つのR1が共に水素原子を表しかつ2つのR2が共にターシャリーブチル基を表す。
式(B)において、2つのR3及び2つのR4は、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に塩素原子を表すか、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共に水素原子を表すか、又は、2つのR3が共に水素原子を表しかつ2つのR4が共にフェニル基を表す。 - 前記顔料(B)に対する前記顔料(A)の含有質量比が、1.1〜50である請求項1に記載のインクジェット用顔料分散体。
- 更に、樹脂粒子を含有する請求項1又は請求項2に記載のインクジェット用顔料分散体。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用顔料分散体を製造する方法であって、
少なくとも前記顔料(A)と前記顔料(B)と水とを混合し、分散処理して前記インクジェット用顔料分散体を得る工程を有するインクジェット用顔料分散体の製造方法。 - 前記インクジェット用顔料分散体を得る工程は、
前記顔料(A)と前記顔料(B)とを混合して顔料混合物を得る段階と、
少なくとも前記顔料混合物と水とを混合し、分散処理して前記インクジェット用顔料分散体を得る段階と、
を含む請求項4に記載のインクジェット用顔料分散体の製造方法。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用顔料分散体であるインクと、
前記インク中の成分を凝集させる酸を含有する処理液と、
を含むインクセット。 - 記録媒体上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用顔料分散体であるインクをインクジェット法によって付与して画像を形成するインク付与工程と、
前記記録媒体上に、前記インク中の成分を凝集させる酸を含有する処理液を付与する処理液付与工程と、
を有する画像形成方法。
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