JP2010150326A - インクセットおよび画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像の耐擦過性を維持しながらインクジェットヘッドのノズル面のメンテナンス性を向上させることが可能なインクセットを提供する。
【解決手段】インクセットを、色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクと、前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液と、を含んで構成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクセットおよび画像形成方法に関する。
近年の情報技術産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発されると共に、各々の情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も実用化されている。これらの中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から広く利用されるようになっている。そして、インクジェット記録方法を利用した記録では、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきている。
一般に染料インクを用いたインクジェット記録方法に比べて顔料インクを用いたインクジェット記録方法は保存性に優れるとされている。しかし、顔料インクを用いたインクジェット記録方法では、耐擦過性の悪化という別の問題が生じ得ることが知られている。
また、顔料インクは、インク中の水分が蒸発して固化すると、固化したまま再溶解しないため、インクジェットヘッドのノズル先端部等で目詰まりの原因となり、インクの不吐出を生じさせていた。また、キャップ、ワイプ部分等でインクが固化すると、ワイピング等が困難となり、メンテナンス系に負担がかかるという問題があった。
固化したインクによってワイピング等のメンテナンス系統に負担がかかることなく、紙への固着性が良好なインクジェット記録用水性顔料インクを提供することを目的として、顔料、水及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用水性顔料インクであって、前記水が蒸発すると固化して固形物となり、かつ、前記固形物は、固化していないインクジェット記録用水性顔料インクに再溶解することを特徴とするインクジェット記録用水性顔料インクが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、記録ヘッドのノズル面に拭き残りが少なくクリーニング効率が高い複数のインクを用いるインクジェット記録装置を提供することを目的として、インクジェット記録装置に用いる複数のインクについて、記録ヘッドのノズル面に対する後退メニスカス速度(RMV)値(mm/sec)を測定したとき、最大値を有するインクの値がRMVmaxであり、最小値を有するインクの値がRMVminであるとき、それぞれの値が所定の関係を有することを特徴とするインクジェット記録装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−107631号公報 特開2003−182093号公報
しかし、上記従来の技術においても、インクジェット方式で形成された画像の耐擦過性を維持しながらインクジェットヘッドのノズル面のメンテナンス性を向上させることは困難な場合があった。
本発明の課題は、画像の耐擦過性を維持しながらインクジェットヘッドのノズル面のメンテナンス性を向上させることが可能なインクセットおよび画像形成方法を提供することである。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクと、前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液と、を含むインクセット。
<2> 前記凝集促進剤は、酸性化合物、カチオンポリマー、及び多価金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む前記<1>に記載のインクセット
<3> 前記色材は、ポリマー分散剤で分散された顔料である前記<1>または<2>に記載のインクセット。
<4> 前記色剤は、転相乳化法によりポリマー被覆された顔料である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
<5> 前記ポリマー粒子は、自己分散性ポリマー粒子である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクセット。
<6> 前記インクは、前記ポリマー粒子に対する前記色材の固形分含有比が、質量基準で2.0以下である前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクセット。
<7> 前記溶剤の70質量%以上が、SP値が27.5以下の溶剤である前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載のインクセット。
<8> 前記凝集促進剤を含有しない第2の洗浄液を更に含む前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインクセット。
<9> 色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクを、記録媒体上にインクジェット方式で吐出して画像を形成する画像形成工程と、前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液を、前記インクを吐出するヘッドのノズル面に付与する洗浄液付与工程と、前記洗浄液が付与されたノズル面から固着物を除去する固着物除去工程と、を備えた画像形成方法。
<10> 前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する凝集液を記録媒体上に付与する工程をさらに備えた前記<9>に記載の画像形成方法。
本発明によれば、画像の耐擦過性を維持しながらインクジェットヘッドのノズル面のメンテナンス性を向上させることが可能なインクセットおよび画像形成方法を提供することができる。
<インクセット>
本発明のインクセットは、色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクの少なくとも1種と、前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液の少なくとも1種とを含む。
第1の洗浄液が凝集促進剤を含有することで、本発明のインクセットをインクジェット記録に適用した場合に、インクジェットヘッドのノズル面におけるインク由来の付着物を固形物としてかきとることができ、ノズル面におけるインク由来の付着物の付着量を減らすことが可能になる。これによりノズル面の撥インク性を良好な状態で維持することがより容易にでき、メンテナンス性が向上する。
[第1の洗浄液]
本発明における第1の洗浄液は、後述するインクと接触して該インクの凝集を促進する凝集促進剤の少なくとも1種を含み、必要に応じて水系溶媒、および界面活性剤等のその他の成分を含んで構成することができる。
前記第1の洗浄液は、例えば、インク由来の付着物が付着したインクジェットヘッドのノズル面に付与される。付与された洗浄液はノズル面におけるインク由来の付着物の凝集を促進し、これを固形物とすることができる。固形物となった付着物は、例えば、ブレード等を用いて容易にかきおとすことができ、かきおとし後の付着物の残存量も減らすことができる。
尚、前記インク由来の付着物は、インクそのものであっても、インクからインクを構成する成分(例えば、水、溶剤等)の少なくとも一部が除去された残存物であってもよい。
また、第1の洗浄液はインクジェットヘッドのノズル面に限らず、インク由来の付着物が付着した領域であれば特に制限なく適用でき、インク由来の付着物の除去に用いることができる。
(凝集促進剤)
前記凝集促進剤は、インクの凝集を促進可能な化合物であれば特に制限はなく、インクの構成に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、インクのpHを変化させることが可能な化合物、多価金属塩、カチオン性有機化合物等を挙げることができる。
前記インクのpHを変化させることが可能な化合物は、インクの構成に応じて、pHを上昇させる化合物であっても、低下させる化合物であってもよい。本発明においては、インクの凝集性の観点から、インクのpHを低下させる化合物であることが好ましく、酸性化合物であることがより好ましい。
酸性化合物としては、無機酸であっても有機酸であってもよく、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インクの凝集性とヘッドのメンテナンス性の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物が好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることがより好ましい。
前記カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩(例えば多価金属塩)等を挙げることができ、これらの中から選ばれることが好ましい。
またリン酸基を有する化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ポリリン酸およびこれらの誘導体、ならびにこれらの塩等を挙げることができる。
これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
第1の洗浄液中における前記酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、洗浄液の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3〜80質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。
前記多価金属塩を構成する陽イオンとしては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)のイオン、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)のイオン、周期表の第13属の金属(例えば、アルミニウム)のイオン、ランタニド類(例えば、ネオジム)のイオン等を挙げることができる。
また多価金属塩を構成する陰イオンとしては、ハロゲン化物イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、塩素酸イオン、カルボン酸(ギ酸、酢酸、安息香酸など)のイオン、チオシアン酸イオン等を挙げることができる。
前記多価金属塩の中でも、好ましくは、カルボン酸(ギ酸、酢酸、安息香酸など)のカルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩、硝酸のカルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化アルミニウム、ならびにチオシアン酸のカルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩である。
これら多価金属塩は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多価金属塩の第1の洗浄液中における含有量としては、凝集効果の観点から、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
また前記カチオン性有機化合物は、高分子化合物(カチオンポリマー)であっても、低分子化合物であってもよい。
カチオンポリマーとしては、例えば、ポリビニルピリジン塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルイミダゾール、ポリビグアニド、ポリグアニド、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジシアンジアミド−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミン−ジシアンジアミドアンモニウム縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、エピクロロヒドリン−ジアルキルアミンの付加ポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムポリマー、およびジアリルジメチルアンモニウムクロリド−SOのコポリマー、ならびにこれらの誘導体などを挙げることができる。
前記カチオンポリマーの重量平均分子量としては特に制限はないが、第1の洗浄液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。例えば第1の洗浄液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、1,000〜500,000の範囲が好ましく、1,500〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは2,000〜100,000の範囲である。
また重量平均分子量は、1000以上であると凝集性の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、洗浄液をインクジェット以外の方法でヘッドのノズル面に付与する場合には、この限りではない。
さらに、低分子量のカチオン性有機化合物としては、例えば、1級、2級、又は3級アミン塩型の化合物を好ましく挙げることができる。このアミン塩型の化合物の例として、塩酸塩および酢酸塩等の化合物(例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンなどの塩酸塩および酢酸塩)、第4級アンモニウム塩型化合物(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムなど)、ピリジニウム塩型化合物(例えば、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイドなど)、イミダゾリン型カチオン性化合物(例えば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリンなど)、高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物(例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミンなど)等のカチオン性の化合物や、例えば、アミノ酸型の両性界面活性剤、R−NH−CHCH−COOH型の化合物(Rはアルキル基等を表す)、カルボン酸塩型両性界面活性剤(例えば、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタインなど)、硫酸エステル型、スルホン酸型、又は燐酸エステル型等の両性界面活性剤など所望のpH領域でカチオン性を示す両性界面活性剤などを挙げることができる。中でも、2価以上のカチオン性有機化合物が好ましい。
カチオン性有機化合物は、1種単独で用いるほか2種以上併用してもよい。
またカチオン性有機化合物の第1の洗浄液中における含有量としては、凝集効果の観点から、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
本発明における第1の洗浄液は凝集促進剤の少なくとも1種を含有するが、凝集促進剤の2種以上を含んでいてもよい。前記凝集促進剤は、インク凝集性の観点から、酸性化合物、カチオンポリマーおよび多価金属塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、酸性化合物またはその多価金属塩を含むことがより好ましく、カルボキシル基を有する化合物またはその多価金属塩を含むことがさらに好ましい。
また本発明における第1の洗浄液は、インク凝集性の観点から、凝集促進剤として酸性化合物、カチオンポリマーおよび多価金属塩から選ばれる少なくとも1種を、0.1質量%以上含むことが好ましく、酸性化合物またはその多価金属塩を0.5〜80質量%含むことがより好ましく、カルボキシル基を有する化合物またはその多価金属塩を1〜50質量%含むことがさらに好ましい。
本発明における第1の洗浄液は、前記凝集促進剤に加えて水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
前記水系溶媒は、溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。前記溶剤としては、後述のインクにおける溶剤と同様のものを第1の洗浄液においても好ましく適用することができる。また第1の洗浄液における溶剤の含有量としては、洗浄性の観点から、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
さらに本発明における第1の洗浄液は、界面活性剤、防黴剤、防錆剤等のその他の成分を含むことができる。これらその他の成分としては、後述のインクにおけるその他の成分と同様のものを第1の洗浄液においても好ましく適用することができる。
本発明における第1の洗浄液のpH(25℃±1℃)としては、インクの凝集性の観点から、1〜6であることが好ましく、1.2〜5であることがより好ましく、1.5〜4であることが更に好ましい。この場合、後述するインクのpH(25±1℃)は、7.5〜9.5(より好ましくは8.0〜9.0)であることが好ましい。
第1の洗浄液の粘度としては、インクの凝集性の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
また、第1の洗浄液の表面張力としては、インクの凝集性の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
[第2の洗浄液]
本発明のインクセットは、前記凝集促進剤を含有しない第2の洗浄液を更に含むことが好ましい。前記第1の洗浄液と第2の洗浄液を併用することで、ヘッドにおけるインク由来の付着物を、より効果的に除去することができる。
第2の洗浄液は、例えば、第1の洗浄液を用いてインク由来の付着物の凝固を促進した後に、第1の洗浄液が付与された領域に付与されることで、付着物の除去後の該領域における凝集促進剤の影響を抑制することができる。
前記第2の洗浄液は、前記第1の洗浄液の構成から凝集促進剤を除いた以外は、第1の洗浄液と同様にして構成することができる。例えば、溶剤と水とを含んで構成することが好ましい。
[インク]
本発明におけるインクは、色材の少なくとも1種と、水と、溶剤の少なくとも1種と、ポリマー粒子の少なくとも1種とを含有する。かかる構成であることにより、インクの液安定性および吐出安定性が向上し、耐擦過性に優れる画像を形成することができる。
前記インクはフルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するためには、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクとして用いることが好ましく、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクとして用いてもよい。また、イエロー、マゼンタ、シアン色調インク以外のレッド、グリーン、ブルー、白色インクやいわゆる印刷分野における特色インク等として用いることができる。
(色材)
本発明におけるインクは、色材の少なくとも1種を含有する。
色材としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である色材であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、顔料であることがより好ましい。
本発明においては、水不溶性の顔料自体または分散剤で表面処理された顔料自体を色材とすることができる。
本発明において用いられる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
本発明において顔料は、1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
<水分散性顔料>
本発明における顔料は、液安定性及び吐出安定性の観点から、下記(1)〜(4)の水分散性顔料のいずれかであることが好ましい。
(1)カプセル化顔料、即ち、ポリマー粒子に顔料を含有させてなるポリマーエマルションであり、より詳しくは、親水性水不溶性の樹脂(ポリマー分散剤)で顔料を被覆し、顔料表面の樹脂層にて親水化することで顔料を水に分散したものである。
(2)自己分散顔料、即ち、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料、より詳しくは、主にカーボンブラックなどを表面酸化処理して親水化し、顔料単体が水に分散するようにしたものである。
(3)樹脂分散顔料、即ち、重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物により分散された顔料。
(4)界面活性剤分散顔料、即ち、界面活性剤により分散された顔料。
好ましい例として、(1)カプセル化顔料と(2)自己分散顔料を挙げることができ、特に好ましい例として、(1)カプセル化顔料を挙げることができる。
前記カプセル化顔料を構成する樹脂は、限定されるものではないが、水と水溶性有機溶剤との混合液中で自己分散能または溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子化合物であることが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1、000〜100、000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、またはインクの塗膜としての機能を十分に発揮することができる。樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
カプセル化顔料の樹脂の具体例としては、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、フッ素系高分子化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニル系、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系の材料、あるいはそれらの共重合体または混合物などのアニオン性基を有する材料などが挙げられる。
上記樹脂の中、アニオン性アクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、アニオン性基含有アクリルモノマーという)と、更に必要に応じてこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン基からなる群から選ばれる1個以上のアニオン性基を有するアクリルモノマーが挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
カルボキシキル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
カプセル化顔料は、上記した成分を用いて、従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。本発明における好ましい態様は、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号の各公報に開示されている方法によって製造することができる。
本発明においては、インクの安定性、吐出性の観点から、色材がポリマー分散剤で分散された顔料であることが好ましく、転相乳化法(以下、単に「転相法」ともいう)によりポリマー被覆された顔料であることがより好ましい。
前記転相法とは、例えば、自己分散能または溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる、自己分散化(転相乳化)方法をいう。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、また溶解して混合した状態、またはこれら両者の状態のいずれの状態をも含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に開示されているものと同様であってよい。
本発明において、自己分散型顔料も好ましい例として挙げることができる。自己分散型顔料とは、顔料表面に多数の親水性官能基および/またはその塩(以降、分散性付与基という)を、直接またはアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させたもので、分散剤なしに水性媒体中に分散可能な顔料である。ここで「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても水性媒体中に分散可能な状態をいう。
自己分散型顔料を着色剤として含有するインクは、通常の顔料を分散させるために含有させる分散剤を含む必要が無いため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんど無く吐出安定性に優れるインクが調製しやすい。
自己分散型顔料の表面に結合される分散性付与基としては、−COOH、−CO、−OH、−SOH、−PO及び第4級アンモニウム並びにそれらの塩が例示でき、これらは、原料となる顔料に物理的処理または化学的処理を施すことで、分散性付与基または分散性付与基を有する活性種を顔料の表面に結合(グラフト)させることによって製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
本発明においては、次亜ハロゲン酸及び/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、またはオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散型顔料を好ましい例として挙げることができる。自己分散型顔料としては市販品を利用することも可能であり、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(以上商品名;キャボット社製)等が例示できる。
本発明における色材の含有量は、発色性、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク中に、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
−分散剤−
本発明において、カプセル化顔料あるいは樹脂分散顔料で用いられる分散剤としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が使用できる。
例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、酢酸ビニル、酢酸アリル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、芳香族基を置換してもよいアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、芳香族基を置換してもよいメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、ビニルアルコール、並びに上記化合物の誘導体等が挙げられる。
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独若しくは複数を共重合して得られる共重合体がポリマー分散剤として使用される。
具体的には、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
本発明における分散剤は、重量平均分子量で2,000〜60,000のものが好ましい。また顔料に対する添加量比率が、質量基準で25〜140質量%であることが好ましく、25〜50質量%であることがより好ましい。
(溶剤)
前記インクは、インク溶媒として水と溶剤の少なくとも1種を含有する。前記溶剤は、乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤等の目的で、水溶性有機溶剤が好ましく使用される。
ノズルのインク噴射口において該インクジェット用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で乾燥防止剤や湿潤剤が用いられ、乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。
また、インクを被記録媒体である紙により良く浸透させる目的で、浸透促進剤として水溶性有機溶剤が好適に使用される。
本発明においては、カールを抑制する目的のため、溶剤は、SP値27.5以下の溶剤を70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することが好ましい。
本発明でいう溶剤の溶解度パラメーター(SP値)とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1967)に記載の方法で計算することができ、本発明においてはこの数値を採用する。
また、溶剤は、更なるカールの抑制を目的として、下記構造式(1)で表される化合物を含有してもよい。
Figure 2010150326
ここで、「SP値27.5以下の溶剤」と「構造式(1)で表される化合物」とが同一であっても、異なるものであってもよい。
構造式(1)中、l、m、及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数で、かつ、l+m+n=3〜15を表す。
l+m+nが3未満だとカール抑制力が小さく、また15を超えると吐出性が悪化する場合がある。
上記の中でも、l+m+nが3〜12が好ましく、3〜10がより好ましい。
上記構造式(1)中、AOは、エチレンオキシ基(EO)及びプロピレンオキシ基(PO)の少なくとも一方を表すが、中でも、プロピレンオキシ基が好ましい。
前記(AO)、(AO)、及び(AO)の各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。
以下に、SP値が27.5以下に該当する溶剤及び上記構造式(1)で表される化合物の例について、SP値(カッコ内)と共に示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.5)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.1)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(21.3)
ジプロピレングリコール(27.2)
Figure 2010150326
・nCO(AO)−H (AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1) (20.1)
・nCO(AO)10−H (AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1) (18.8)
・HO(A’O)40−H (A’O=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:3) (18.7)
・HO(A’’O)55−H (A’’O=EO又はPOで、比率はEO:PO=5:6) (18.8)
・HO(PO)−H (24.7)
・HO(PO)−H (21.2)
・1,2−ヘキサンジオール (27.4)
本発明において、EO、POはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基をそれぞれ表す。
上記構造式(1)の化合物の溶剤中に占める割合(質量基準)は、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、更に50%以上が好ましい。その値が高くとも問題は生じるものではない。
上記範囲とすることにより、インクの安定性や吐出性を悪化させずにカールを抑制することができ好ましい。
また本発明においては、SP値が27.5以下の溶剤に加えて、他の溶剤を併用しても良い。その場合、SP値が27.5以下の溶剤の含有比率が70%未満にならないことが好ましく、90%未満にならないことがより好ましい。
併用できる水溶性有機溶媒の例として、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;
エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、などのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
乾燥防止剤や湿潤剤の目的としては,多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透剤の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等が好ましい例として挙げることができる。
本発明に使用される溶剤は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。
溶剤の含有量としては、全インク組成物中、安定性および吐出信頼性確保の点から、1質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下が特に好ましく使用される。
本発明に使用される水の添加量は特に制限は無いが、全インク中、安定性および吐出信頼性確保の点から、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
(ポリマー粒子)
本発明におけるポリマー粒子としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する樹脂の粒子が挙げられる。
本発明におけるポリマー粒子としては、吐出安定性及び後述の色材(特に顔料)を用いた場合の液安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性ポリマー粒子が好ましく、カルボキシル基を有する自己分散性ポリマー粒子がより好ましい。自己分散性ポリマー粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、インクとしたときの凝集速度と定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマーや、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中でも、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位および脂環式モノマーに由来する構成単位の少なくとも一方と、を含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方がより好ましい。
またノニオン性親水性基を有するモノマーとしては、例えば、2−メトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)モノメタクリレートなどの(ポリ)エチレンオキシ基またはポリプロピレンオキシ基を含有するエチレン性不飽和モノマーや、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
また、ノニオン性親水性基を有するモノマーとしては、末端が水酸基のエチレン性不飽和モノマーよりも、末端がアルキルエーテルのエチレン性不飽和モノマーのほうが、粒子の安定性、水溶性成分の含有量の観点で好ましい。
本発明における親水性の構成単位としては、アニオン性の解離性基を有する親水性単位のみを含有する態様、および、アニオン性の解離性基を有する親水性の構成単位と、ノニオン性親水性基を有する親水性の構成単位とを両方含有する態様のいずれかであることが好ましい。
また、アニオン性の解離性基を有する親水性単位を2種以上含有する態様や、アニオン性の解離性基を有する親水性の構成単位と、ノニオン性親水性基を有する親水性の構成単位を2種以上併用する態様であることもまた好ましい。
前記自己分散性ポリマーにおける親水性構成単位の含有率は、インク組成物の粘度と経時安定性の観点から、25質量%以下であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、2〜23質量%であることがさらに好ましく、4〜20質量%であることが特に好ましい。
また2種以上の親水性の構成単位を有する場合、親水性の構成単位の総含有率が前記範囲内であることが好ましい。
前記自己分散性ポリマーにおけるアニオン性の解離性基を有する構成単位の含有量は、酸価が後述する好適な範囲となるような範囲が好ましい。
また、ノニオン性親水性基を有する構成単位の含有量としては、吐出安定性と経時安定性の観点から、好ましくは0〜25質量%であって、より好ましくは0〜20質量%であって、特に好ましいのは0〜15質量%である。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性と処理液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100であるポリマーを含むことがより好ましい。更に、前記酸価は、自己分散性と処理液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。
特に、酸価は、25以上であると自己分散性の安定性が良好になり、100以下であると凝集性が向上する。
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
また、芳香族基含有モノマーとしてスチレン系モノマーを用いる場合、自己分散性ポリマー粒子とした際の安定性の観点から、スチレン系モノマーに由来する構成単位は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、スチレン系モノマーに由来する構成単位を含まない態様が特に好ましい。
ここで、スチレン系モノマーとは、スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン、クロロスチレンなど)、および、ポリスチレン構造単位を有するスチレンマクロマーのことを指す。
前記脂環式モノマーは、脂環式炭化水素基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はないが、分散安定性の観点から、脂環式(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換または置換された脂環式炭化水素基を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。尚、前記脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
また、「脂環式(メタ)アクリレート」とは、脂環式炭化水素基を有する、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
脂環式炭化水素基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含むものであれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基や、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、およびビシクロ[4.3.0]ノナン等を挙げることができる。
前記脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびシアノ基等が挙げられる。
また脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。
本発明における脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
脂環式炭化水素基とアルコールに由来する構造部位とを結合する連結基としては、炭素数1から20までの、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アラルキル基、アルコキシ基、モノまたはオリゴエチレングルコール基、モノまたはオリゴプロピレングリコール基などが好適なものとして挙げられる。
本発明における脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、自己分散性ポリマー粒子の分散安定性と、定着性、ブロッキング耐性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートを少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明において、自己分散性ポリマー粒子に含まれる脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有率としては、自己分散状態の安定性、脂環式炭化水素基同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、20質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。特に好ましいのは50質量%以上80質量%以下である。
脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を20質量%以上とすることで、定着性、ブロッキングを改良することができる。一方、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位が90質量%以下であることでポリマー粒子の安定性が向上する。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、例えば、疎水性の構成単位として、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位および脂環式モノマーに由来する構成単位に加えて、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでもよい。
前記その他の構成単位を形成するモノマー(以下、「その他共重合可能なモノマー」ということがある)としては、前記親水性基含有モノマー、芳香族基含有モノマーおよび脂環式モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点および自己分散性ポリマーの分散安定性の観点から、炭素数が1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートの少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは炭素数が1〜4の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートである。ここで、鎖状アルキル基とは、直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基のことをいう。
本発明においてその他共重合可能なモノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
自己分散性ポリマー粒子が、その他の構成単位を含有する場合、その含有量は10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜75質量%であって、特に好ましいのは20〜70質量%である。その他の構成単位を形成するモノマーを、2種以上を組み合わせて使用する場合、その総含有量が前記範囲であることが好ましい。
また本発明における自己分散性ポリマーは、分散安定性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートおよび脂環式(メタ)アクリレートの少なくとも一方、その他共重合可能なモノマー、ならびに親水性基含有モノマーの少なくとも3種を重合して得られるポリマーであることもまた好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートおよび脂環式(メタ)アクリレートの少なくとも一方、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基含有(メタ)アクリレート、ならびに親水性基含有モノマーの少なくとも3種を重合して得られるポリマーであることがより好ましい。
本発明においては、分散安定性の観点から、炭素数が9以上の直鎖または分岐鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、および、芳香族基含有マクロモノマー(例えば、スチレンマクロマー)等に由来する疎水性が大きい置換基を有する構成単位の含有量は、実質的に含まないことが好ましく、全く含まない態様であることがより好ましい
本発明における自己分散性ポリマーは、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
本発明における自己分散性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。更に加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25〜95であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
本発明における自己分散性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位)を共重合比率として自己分散性ポリマー粒子の全質量の15〜80質量%を含み、酸価が25〜100で重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましい。
また自己分散性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含み、酸価が25〜95で重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
また本発明の自己分散性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20質量%以上90質量%以下と、解離性基含有モノマーに由来する構造と、炭素数1〜8の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造の少なくとも1種とを含み、酸価が20〜120であって、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が3000〜20万であるビニルポリマーであることもまた好ましい。
さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として30質量%以上90質量%以下と、炭素数1〜4の鎖状アルキル基を含有する(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として10〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構造を酸価が25〜100の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が10000〜20万であるビニルポリマーであることがより好ましい。
さらに、2環式または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として40質量%以上80質量%以下と、少なくともメチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートに由来する構造を共重合比率として20〜70質量%含み、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構造を酸価が30〜80の範囲で含み、親水性構造単位の総含有率が25質量%以下であって、重量平均分子量が30000〜15万であるビニルポリマーであることが特に好ましい。
以下に、樹脂粒子を構成するポリマーの具体例として、芳香族基含有ポリマーとして例示化合物B−01〜B−19を、脂環式基含有ポリマーとして例示化合物B−20〜B−35を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
(芳香族基含有ポリマー)
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸 共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(45/45/10)
(脂環式基含有ポリマー)
B−20:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/72/8)
B−21:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/62/8)
B−22:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(40/52/8)
B−23:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/42/8)
B−24:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/50/14/6)
B−25:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(40/50/10)
B−26:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/フェノキシエチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(30/50/14/6)
B−27:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2)/メタクリル酸 共重合体(30/54/10/6)
B−28:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2)/メタクリル酸 共重合体(54/35/5/6)
B−29:メチルメタクリレート/アダマンチルメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=23)/メタクリル酸 共重合体(30/50/15/5)
B−30:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/50/22/8)
B−31:エチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(50/45/5)
B−32:イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/アクリル酸 共重合体(40/50/10)
B−33:n−ブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/スチレン/アクリル酸 共重合体(30/55/10/5)
B−34:メチルメタクリレート/ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(40/52/8)
B−35:ラウリルメタクリレート/ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(25/65/10)
本発明における自己分散性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度とインク組成物としたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成されたポリマーを含み、該ポリマーはカルボキシル基を有し、(好ましくは酸価が20〜100であって)該ポリマーのカルボキシル基の一部又は全部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。すなわち、本発明における自己分散性ポリマー粒子の製造は、有機溶媒中でポリマーを合成する工程と、前記ポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを設けて行なうことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):ポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程
工程(2):前記混合物から前記有機溶媒を除去する工程
前記工程(1)は、まずポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。
アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。本発明における自己分散性ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明における自己分散性ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
ポリマー粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)の平均粒子径は、体積平均粒子径で10〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましく、特に好ましくは10〜50nmの範囲である。10nm以上の平均粒子径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、ポリマー粒子を2種以上混合して使用してもよい。
なお、ポリマー粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
ポリマー粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)のインク中における含有量としては、画像の光沢性などの観点から、全インク質量に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
また本発明においては、インク凝集性の観点から、ポリマー粒子に対する前記色材の固形分含有比が、質量基準で2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、0.5以上1.5以下であることが更に好ましい。
ポリマー粒子(特に自己分散性ポリマー粒子)は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
(その他の成分)
本発明に用いられるインクは、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、固体湿潤剤等の公知の添加剤が挙げられる。
界面活性剤としてはノニオン、カチオン、アニオン、ベタイン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の添加量は、インクジェットで良好に打滴するために、インクの表面張力を20〜60mN/mに調整する量が好ましく、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
本発明における界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(ポリマー分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレンジオール誘導体がもっとも好ましい。
インクに添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
固体湿潤剤としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ヒアルロン酸類;尿素類等を挙げることができる。
−インク物性−
インクの表面張力は、吐出安定性の点で、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
インクの20℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
[凝集液]
本発明のインクセットは、凝集液の少なくとも1種を更に含むことができる。前記凝集液は、前記インクと接触してインクを凝集させる液体組成物であって、記録媒体上に付与される。インクと凝集液とを用いて、記録媒体上に画像を形成することにより、形成される画像の発色性が向上し、高速画像形成が可能になる。
尚、凝集液の記録媒体上への付与は、インクが付与される前であっても、インクが付与された後であってもよい。
前記凝集液は、インクと接触してインクの凝集を促進する凝集促進剤の少なくとも1種を含有して構成されることが好ましい。また前記凝集液は、必要に応じて、水、溶剤、およびその他の成分をさらに含んで構成される。
凝集液が含有する凝集促進剤、溶剤、およびその他の成分は、前記第1の洗浄液における凝集促進剤、溶剤、およびその他の成分と同義であり、好ましい態様も同様である。
また本発明において凝集液は、第1の洗浄液と同一の構成を有するものであっても、互いに異なる構成を有するものであってもよい。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクを記録媒体上にインクジェット方式で吐出して画像を形成する画像形成工程と、前記インクを吐出するヘッドのノズル面に、前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、前記洗浄液が付与されたノズル面から前記インク由来の固着物を除去する固着物除去工程と、を備え、必要に応じてその他の工程をさらに備えて構成される。
かかる構成であることにより、形成される画像の耐擦過性が維持されながら、インクジェットヘッドにおけるノズル面のメンテナンス性を向上させることが可能な画像形成方法とすることができる。
本発明に好ましいインクジェット記録方法として、インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の記録媒体、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する方法を挙げることができる。尚、本発明に好ましいインクジェット記録方法として特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
(画像形成工程)
本発明における画像形成工程では、色材、水およびポリマー粒子を含有するインクを記録媒体上にインクジェット方式で吐出して画像を形成する。
本発明における記録媒体としては特に制限は無く、例えば、普通紙、上質紙、塗工紙等を好ましく挙げることができる。また、インクジェット方式によるインクの吐出は以下の態様を好ましく挙げることができる。
インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう。)には、公知のものを適用でき、コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号公報に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドはインクの温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。インク吐出工程においては、インク粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。ノズルの形状は必ずしも円形である必要はなく、楕円形、矩形等、形にはこだわらない。ノズル径は10〜100μmの範囲であることが好ましい。尚、ノズルの開口部自身必ずしも真円とは限らないが、その場合にノズル径とは該開口部の面積と同等の円を仮定しその径とする。
画像形成工程におけるインク吐出時のインクの温度は、10℃以上であることが吐出時のインクの温調およびワイプ性向上の観点から好ましく、15℃以上がさらに好ましい。また、インク安定性および吐出信頼性の観点から、70℃以下が好ましい。
ヘッドのノズル面は、インクの付着性を低下させるために、撥インク処理されていることが好ましい。PTFE、PFA、FEP等のパーフルオロポリマーを用いてノズル面を被覆することにより、撥液性能が特に良好となる。
本発明における画像形成工程は、インクと接触してインクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する凝集液を記録媒体上に付与する工程をさらに備えることが好ましい。インクと凝集液とを記録媒体上に付与することで、インクを構成する成分(例えば、色材、ポリマー粒子等)が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。凝集液を構成する各成分の詳細および好ましい態様については既述の通りである。
凝集液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
凝集液の付与は、記録媒体上にインクを付与する工程の前又は後のいずれに設けてもよい。
本発明においては、凝集液を付与した後にインクを付与する工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インクを付与する前に、予めインク中の成分(例えば、色材、ポリマー粒子等)の凝集を促進する凝集促進剤を含む凝集液を付与しておき、記録媒体上に付与された凝集促進剤に接触するようにインクを付与して画像を形成する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
凝集液の付与量としては、インクを凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集促進剤(例えば、酸性化合物、カチオンポリマー、多価金属塩等)の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集促進剤の付与量が0.1〜1.0g/mとなる量が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8g/mである。凝集促進剤の付与量は、0.1g/m以上であると凝集反応が良好に進行し、1.0g/m以下であると光沢度が高くなり過ぎず好ましい。
また、本発明においては、凝集液を付与する工程後にインクを付与する工程を設け、凝集液を記録媒体上に付与した後、インクが付与されるまでの間に、記録媒体上の凝集液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インクを付与する工程前に予め凝集液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の凝集液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の凝集液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
洗浄液付与工程では、インクを吐出するヘッドのノズル面に、前記第1の洗浄液が付与される。第1の洗浄液の付与方法としては特に制限はなく、通常用いられる液体付与方法を適用することができる。例えば、洗浄液付与用のノズルから洗浄液を吐出する方法、インクを吐出するヘッドのノズル面を洗浄液に浸漬する方法、ローラーで塗布する方法等を挙げることができる。
なお、本発明に用いられる第1の洗浄液の詳細については、既述の通りである。
第1の洗浄液がヘッドのノズル面上に付与され、洗浄液中の凝集促進剤がノズル面上のインク由来の付着物と接触することで、インク由来の付着物が凝集し固形物化する。これにより後述の固着物除去工程における固着物の除去を効率よく行なうことができ、ノズル面上のインク由来の付着物の残留量を減少させることができる。
洗浄液付与工程における、洗浄液の付与量としてはヘッドのノズル面上のインク由来の付着物を凝集可能であれば特に制限はなく、インク由来の付着物の付着量に応じて適宜設定することができる。
本発明においては、洗浄液の付与後にヘッドのノズルにおいて加圧もしくは吸引パージをさらに行なうことが好ましい。これによりノズル先端部における凝集物をノズル面上に配置することができ、より効果的にインク由来の付着物を除去することができる。また加圧もしくは吸引パージの条件としては、特に制限はなく、インク由来の付着物量、洗浄液付与量等に応じて適宜設定することができる。
固着物除去工程では、ヘッドのノズル面からインク固着物が除去される。ノズル面のインク由来のインク固着物を除去する方法は特に限定されるものではないが、ワイパブレードを用いてノズル面を擦り(ワイピング)、インク固着物を掻き落とす方法が好ましい。ワイパブレードの材質は弾性を有するゴムが好ましく、具体的な材質としては、ブチルゴム、クロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、二トリルゴム等が挙げられる。ワイパブレードに撥インク性を付与するためにフッ素樹脂等によりコーティングしてあるワイパブレードを用いても構わない。
本発明の画像形成方法では上記所定のインクと洗浄液とを用いるため、ノズル面のインク由来のインク固着物を固形物として容易に掻き取ることができる。
本発明の画像形成方法においては、インク吐出工程での被記録媒体上へのインクの吐出による画像形成の後、該被記録媒体を加熱して画像を定着する工程(加熱定着工程)をさらに有していてもよい。
前記加熱定着工程としては、前記インクジェット記録方法で用いられるインク中に含まれるポリマー粒子を溶融定着する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
以下のようにして、インク1と洗浄液1とをそれぞれ調製して、インク1と洗浄液1とからなるインクセット1を得た。
〜インクの調製〜
[顔料分散物(色材)の調製]
(ポリマー分散剤P−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(シアン分散物の調製)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220) 10部と、ポリマー分散剤P−1 5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液 5.5部と、イオン交換水87.2部を混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、4時間分散した。
得られた分散物から減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2%のポリマー被覆顔料分散物を得た。
[自己分散性ポリマー粒子の調製]
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/L NaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー粒子(P−2)の水分散物(エマルション)を得た。
上記で得られた色材(シアン分散物)と、水溶性溶剤と界面活性剤と水とを用いて、最終的なインク組成が下記インク組成となるように各成分を混合した。これを5μmのメンブレンフィルターを通過させて、インク1を作製した。
(インク1の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・自己分散性ポリマー粒子P−2(固形分) :8%
・下記化合物1(溶剤、SP値23.2) :15%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :70%
Figure 2010150326
〜洗浄液の調製〜
最終的な組成が下記洗浄液組成となるように各成分を混合し、洗浄液1を調製した。
(洗浄液1の組成)
・マロン酸 :2%
(凝集促進剤、酸性化合物)
・上記化合物1(溶剤、SP値23.3) :10%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :87%
<実施例2〜5>
実施例1において、インク組成が以下の組成となるようにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてインクセット2〜5を調製した。
(インク2の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・自己分散性ポリマー粒子P−2(固形分) :8%
・上記化合物1(溶剤、SP値23.2) :9%
・ジエチレングリコール(溶剤、SP値30.6) :6%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :70%
(インク3の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・自己分散性ポリマー粒子P−2(固形分) :8%
・上記化合物1(溶剤、SP値23.2) :16%
・トリエチレングリコール(溶剤、SP値27.8) :4%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :65%
(インク4の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・自己分散性ポリマー粒子P−2(固形分) :1.5%
・上記化合物1 (溶剤、SP値23.2) :16%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :75.5%
(インク5の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・自己分散性ポリマー粒子P−2(固形分) :3%
・下記化合物2(溶剤、SP値26.4) :20%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :70%
Figure 2010150326
<実施例6>
実施例1において、洗浄液の組成が以下の組成となるように変更した以外は実施例1と同様にしてインクセット6〜12を得た。
(洗浄液6の組成)
・クエン酸 :5%
(凝集促進剤、酸性化合物)
・上記化合物2(溶剤、SP値26.4) :10%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :84%
(洗浄液7の組成)
塩化カルシウム :1%
上記化合物2(溶剤、SP値26.4) :15%
オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
イオン交換水 :83%
(洗浄液8の組成)
・硫酸マグネシウム :2%
(凝集促進剤、多価金属塩)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(溶剤、SP値21.1) :10%
・イオン交換水 :88%
(洗浄液9の組成)
・硝酸アルミニウム :4%
・上記化合物2(溶剤、SP値26.4) :10%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :85%
(洗浄液10の組成)
・ポリアリルアミン :1%
・上記化合物2(溶剤、SP値26.4) :10%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :88%
(洗浄液11の組成)
・ポリエチレンイミン :3%
・上記化合物1 (溶剤、SP値23.2) :15%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :81%
(洗浄液12の組成)
・ジアリルジメチルアンモニウムクロリド :2%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(溶剤、SP値21.1) :10%
・イオン交換水 :88%
<実施例13>
実施例1において、自己分散性ポリマーP−2の代わりに、以下のようにして調製したポリマー分散物を用いてインクを調製した以外は実施例1と同様にして、インクセット13を得た。
(ポリマー分散物)
水120gに、ラテムルASK((株)花王製、カルボン酸塩系乳化剤)19.8g、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液6g、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.3gを加え、均一に溶解させた。70℃に加熱し、窒素気流下に、スチレン25.9gとブチルアクリレート26.3gとアクリル酸5.1gのモノマー混合物を2時間かけて添加した。その後、70℃で2時間、80℃で3時間加熱した。室温に冷却後、pHが9前後になるように、攪拌しながら1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えて、ポリマー分散物を得た。得られたポリマー分散物の体積平均粒子径は115nmであった。また固形分は33質量%であった。
<比較例1>
実施例1のインクの調製において、インク組成を以下のように変更した以外は実施例1と同様にしてインクC1を調製した以外は実施例1と同様にしてインクセットC1を得た。
(インクC1の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・トリエチレングリコール(溶剤、SP値27.8) :20%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :73%
<比較例2>
実施例1において、インク組成を以下のように変更し、さらに洗浄液の調製において凝集促進剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして洗浄液C2を調製した以外は実施例1と同様にしてインクセットC2を得た。
(インクC2の組成)
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3) :4%
・ポリマー分散剤P−1(固形分) :2%
・自己分散性ポリマー粒子P−2(固形分) :8%
・トリエチレングリコール(溶剤、SP値27.8) :20%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :65%
<比較例3>
実施例1のインクの調製において、自己分散性ポリマー粒子P−2を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてインクC3を調製した以外は実施例1と同様にしてインクセットC3を得た。
<比較例4>
実施例1の洗浄液の調製において、凝集促進剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして洗浄液C4を調製した以外は実施例1と同様にしてインクセットC4を得た。
[評価]
上述のようにして得られたインクセットを用い、インクジェット記録装置のメンテナンス性、記録媒体のカール、並びに、形成された画像の画像ムラ及び耐擦過性について評価した。評価方法及び評価基準は以下の通りである。得られた結果を表1に示す。
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置として、富士フイルムダイマティックス社製のダイマティクス・マテリアル・プリンター DMP−2831(カートリッジは10pl吐出用(DMC−11610)を外部から液供給出来るように改造したもの)を用いた。
<記録媒体>
記録媒体としては特菱アート両面N(84.9g/m品)(三菱製紙(株)製)に対し、下記凝集液を5g/mとなるように塗布し、60℃、15m/sの乾燥風で1分間乾燥したものを用いた。
凝集液は、以下の材料を混合して調製した。
(組成)
・クエン酸 :15g
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1g
・イオン交換水 :84g
<メンテナンス性の評価>
インクを下記条件で吐出後に、洗浄液付与工程を実施した。次いでワイパブレード(水素化NBR)でインクジェットヘッドのノズル面をワイピングし、その後の再吐出性評価の結果より合否を判定した。
尚、洗浄液付与工程は、以下のようにして実施した。
1)インクジェットヘッドのノズル面を洗浄液(第1の洗浄液)に3秒間浸漬して、ノズル面に第1の洗浄液を付与した。
2)次いで、インクジェットヘッドのノズル面を下記組成の第2の洗浄液に3秒間浸漬して、ノズル面に第2の洗浄液を付与した。
3)次いで、30kPaで10秒間、加圧パージした。
(第2の洗浄液の組成)
・グリセリン :10%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製、界面活性剤) :1%
・イオン交換水 :89%
(1)60分連続吐出終了直後に、洗浄液付与工程を実施して、ブレードワイプを1回実施した。その後のインク吐出率が90%以上の場合、合格。
(2)1分間吐出後30分休止した。休止後に洗浄液付与工程を実施して、ブレードワイプを1回実施した。その後のインク吐出率が90%以上の場合、合格。
(3)10分間吐出終了直後に、洗浄液付与工程を実施してブレードワイプを1回実施した。その後に形成された画像に画像ムラが見られない場合、合格。
〜インク吐出率の測定法〜
実験開始時に全ノズルが吐出していることを確認し、メンテナンスを含めた実験終了後の吐出ノズル数をカウントして、下記の通り吐出率を算出した。
吐出率(%)=[メンテナンス後の吐出ノズル数]/[全ノズル数]×100(%)
−評価基準−
◎:3項目とも合格の場合
○:2項目が合格の場合
△:1項目のみ合格の場合
×:3項目とも不合格の場合
<カール評価>
インク塗設量が5g/mとなる量でベタ印画した後の記録媒体を、カール方向が50mmとなるように5×50mmに裁断し、温度25℃、湿度50%の条件下で24時間放置して、曲率(C)を確認した。
−評価基準−
◎:曲率Cが15を超えなかった。
○:曲率Cが15以上20未満であった。
×:曲率Cが20を超えた。
〜曲率の測定法〜
カール方向が50mmとなるように5×50mmに裁断したサンプルについて、カールを半径Rの円の弧とみなして、曲率(C)を次式のようにして算出した。
C=1/R(m)
<画像ムラ・耐擦過性評価>
5cm×5cmサイズで印画したサンプルを乾燥後、100℃10秒間定着加熱した後に、下記の合否を判定した。
−画像ムラ−
印画面を目視により画像ムラを観測し、下記評価基準に従って評価した。
−評価基準−
◎:ムラが全く観測されなかった。
○:ムラがほとんど観測されなかった。
×:ムラが観測された。
−耐擦過性−
印画面を特菱アート両面N(84.9g/m品)で2kg/cmの加重により10回往復で擦った後に、印画物の表面および擦るために用いた用紙の表面を観測し、下記の合否を判定した。
(1)印画物の剥がれが生じ、下地の一部が観測された場合、不合格。
(2)擦るために用いた紙に色材の付着が観測された場合、不合格。
−評価基準−
◎:2項目とも合格
○:1項目のみ合格
×:2項目とも不合格
Figure 2010150326
表1から、本発明のインクセットを用いることで形成される画像の耐擦過性を維持しながら、インクジェットヘッドのノズル面のメンテナンス性を向上できることが分かる。

Claims (10)

  1. 色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクと、
    前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液と、
    を含むインクセット。
  2. 前記凝集促進剤は、酸性化合物、カチオンポリマー、及び多価金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記色材は、ポリマー分散剤で分散された顔料である請求項1または請求項2に記載のインクセット。
  4. 前記色材は、転相乳化法によりポリマー被覆された顔料である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記ポリマー粒子は、自己分散性ポリマー粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記インクは、前記ポリマー粒子に対する前記色材の固形分含有比が、質量基準で2.0以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 前記溶剤の70質量%以上が、SP値が27.5以下の溶剤である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインクセット。
  8. 前記凝集促進剤を含有しない第2の洗浄液を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
  9. 色材、水、溶剤およびポリマー粒子を含有するインクを、記録媒体上にインクジェット方式で吐出して画像を形成する画像形成工程と、
    前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する第1の洗浄液を、前記インクを吐出するヘッドのノズル面に付与する洗浄液付与工程と、
    前記洗浄液が付与されたノズル面から固着物を除去する固着物除去工程と、
    を備えた画像形成方法。
  10. 前記インクと接触して前記インクの凝集を促進する凝集促進剤を含有する凝集液を記録媒体上に付与する工程をさらに備えた請求項9に記載の画像形成方法。
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