JP5513031B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
<1> 塗工紙に、(i)インク組成物中の成分を固定化させる多価金属化合物を15質量%以上含み、かつ、25℃における粘度が2mPa・s〜8mPa・sである処理液を、ブリストー法による液体吸収性測定で得られる前記塗工紙の粗さ指数Vrと吸収係数の値が変化する屈曲点における転移量Viとから下記式(I)により求められるΔV[ml/m2]に対して−50%以上+50%以下の範囲で付与する処理液付与工程と、(ii)前記塗工紙上の前記処理液の液量が0.20ml/m 2 以下となるように乾燥処理及び浸透処理の少なくとも一方の処理を行なう処理工程と、(iii)着色剤、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含むインク組成物を、インクジェット法により前記処理液が付与された塗工紙に吐出して画像を記録する画像記録工程と、を有するインクジェット記録方法である。
ΔV=Vi−Vr ・・・式(I)
本発明のインクジェット記録方法は、塗工紙に、(i)インク組成物中の成分を固定化させる多価金属化合物を15質量%以上含み、かつ、25℃における粘度が2mPa・s〜8mPa・sである処理液を、ブリストー法による液体吸収性測定で得られる前記塗工紙の粗さ指数Vrと吸収係数の値が変化する屈曲点における転移量Viとから下記式(I)により求められるΔV[ml/m2]に対して−50%以上+50%以下の範囲で付与する処理液付与工程と、(ii)前記塗工紙上の前記処理液の液量が0.20ml/m 2 以下となるように乾燥処理及び浸透処理の少なくとも一方の処理を行なう処理工程と、(iii)着色剤、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含むインク組成物を、インクジェット法により前記処理液が付与された塗工紙に吐出して画像を記録する画像記録工程と、を有するインクジェット記録方法である。
ΔV=Vi−Vr ・・・式(I)
そのため、表面荒れなど紙表面が変化して最終的な画像面を損なうことがなく、細線や微細な画像部分等を精細にかつ均質に描画でき、ベタ記録など広範囲にインクを付与した際にはムラの発生を抑えて濃度均一性の高い画像を得ると共に、画像の光沢性、耐擦性(紙との密着性)も向上する。また、高濃度の画像記録が可能で、画像の色再現性も良好になる。
塗工紙をブリストー法により測定すると、吸収係数が変化する屈曲点が存在する。本発明において吸収係数の値が変化する「屈曲点」とは、液体が塗工紙のコート層から内部層である原紙へ浸透し、ある吸収係数で浸透する際の浸透速度などの浸透挙動が変化する点をいう。すなわち、横軸に時間、縦軸に液体の転移量(液体が塗工紙外部から塗工紙内部へ転移する量;液体吸収量)をとって、経過時間に対する転移量の関係を線(吸収線)で表したときに、ある時間経過時に転移量の増加または減少の程度がそれまでと比べて大きくなり、吸収線が屈曲する点を「屈曲点」と称する。
粗さ指数Vrと、屈曲点における液体の転移量Viから前記式(I)によって求められるΔVは、ほぼコート層の空隙のみに液体が吸収された量と考えられる。
本発明では、塗工紙の空隙を埋める観点から付与量を制御することが第1に重要であり、第2に、処理液の濃度、特に、処理液中の多価金属化合物の濃度を制御することが重要である。
処理液の多価金属化合物の濃度については後述する。
また、処理液の塗工紙への付与量については、0.5〜3.5ml/m2の範囲が好ましい。
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体として、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙を用いる。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。
本発明における処理液付与工程では、後述のインク組成物中の成分を凝集させる(「固定化させる」ともいう)成分である多価金属化合物を15質量%以上含み、25℃における粘度が2mPa・s〜8mPa・sであり、上記した式(I)により求められるΔV[ml/m2]に対して−50%以上+50%以下となる処理液を塗工紙に付与する。インクジェット記録方法を、前記処理液の存在下でインク組成物を用いて画像記録する構成とすることにより、記録後のカールとカックル、及びインクハジキの発生に対する抑制効果も得られ、耐擦過性が良好な画像を記録することができる。
本発明における処理液は、インク組成物中の成分を固定化させる多価金属化合物の少なくとも1種を含有する。本発明における多価金属化合物は、紙上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物を固定化(凝集)可能なものであり、固定化剤として機能する。例えば、処理液を塗工紙に付与することにより紙上に多価金属化合物が存在している状態で、インク組成物がさらに着滴して多価金属化合物に接触することにより、インク組成物中の成分を凝集させて、インク組成物を紙上に固定化することができる。
また、インク組成物中の成分を固定化させる成分として、多価金属化合物のほかに、酸性物質、カチオン性化合物を併用することができる。本明細書では、多価金属化合物、酸性物質、及びカチオン性化合物の3種を「固定化剤」と称する。
本発明における多価金属化合物は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの酢酸塩、酸化物等を挙げることができる。
本発明において、前記処理液が付与された塗工紙にインク組成物を吐出したときのインク組成物の凝集反応は、インク組成物中に分散した粒子、例えば、顔料に代表される着色剤や、樹脂粒子等の粒子の分散安定性を減じ、インク組成物全体の粘度を上昇させることで達成することができる。例えば、インク組成物中の顔料や、樹脂粒子などの粒子がカルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するとき、当該粒子は前記弱酸性の官能基の働きにより分散安定化しているが、当該粒子の表面電荷を、
多価金属化合物と相互作用させることにより減じ、分散安定性を低下することができる。したがって、処理液に含まれる固定化剤としての多価金属化合物は、凝集反応の観点で、価数が2価以上、すなわち多価であることが必要であり、凝集反応性の観点で、3価以上の多価金属イオンからなる多価金属化合物であることが好ましい。
塩とは、上記のような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、溶媒に可溶なものであることを要する。ここで、前記溶媒とは、多価金属化合物とともに処理液を構成する媒質であり、例えば、水や後述する水溶性有機溶剤が挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
また、陰イオンとしては、溶解性などの観点から、NO3 −が特に好ましい。
前記多価金属化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
多価金属化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%〜35質量%であることが好ましく、20質量%〜30質量%であることがより好ましい。
前記酸性物質としては、具体的には、リン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、フタル酸などが挙げられる。また、これらとpKa、溶解度が類似した他の酸性物質も使用可能である。
このように、固定化剤は、インク組成物の固定化能とは別の副次的因子により、適宜選択して使用することも可能である。
前記多価金属化合物とともに、酸性物質及びカチオン性化合物の少なくとも1種併用するとき、酸性物質及びカチオン性化合物の処理液中における含有量(酸性物質及びカチオン性化合物の全含有量)は、前記多価金属化合物の全含有量に対して、5質量%〜95質量%が好ましく、20質量%〜80質量%がより好ましい。
本発明における処理液は、前記固定化剤に加えて、一般には水溶性有機溶剤を含むことができ、更にその他の各種添加剤を用いて構成することができる。水溶性有機溶剤、その他の各種添加剤の詳細については、後述のインク組成物におけるものと同様である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、処理液を25℃の条件下で測定されるものである。
既述のように、処理液の塗工紙への付与量については、0.5ml/m2〜3.5ml/m2の範囲が好ましく、0.5ml/m2〜3.5ml/m2の塗布を安定に行なう観点から、処理液の25℃での粘度は、2.0mPa・s〜8.0mPa・sであることが好ましく、2.0mPa・s〜7.0mPa・sであることがより好ましい。
本発明においては、上記のようにして塗工紙に処理液を付与した後、前記塗工紙上の前記処理液の液量が0.20ml/m2以下となるように乾燥処理及び浸透処理の少なくとも一方の処理を行なう(処理工程)ことが好ましい。処理工程は、乾燥処理又は浸透処理のいずれか一方のみでもよく、乾燥処理及び浸透処理の両方を行なうものであってもよい。
前記処理工程を経て塗工紙上の前記処理液の液量を0.20ml/m2以下とすることで、塗工紙のコート層表面よりもコート層内部に主に処理液を付与することができる。
塗工紙上の前記処理液の液量が0.20ml/m2以下であることは、塗工紙上の成分をガスクロマトグラフィー測定することにより確認することができる。
処理液が塗工紙内部に均一浸透していることは、塗工紙内部の成分をガスクロマトグラフィー測定することにより確認することができる。
処理液が付与された塗工紙を放置する時間は、処理液の付与量や塗工紙の処理液付与面の面積にもよるが、通常、処理液付与面の面積1m2に対し、0.01秒〜1秒である。
本発明における画像記録工程は、着色剤、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含むインク組成物をインクジェット法により処理液が付与された塗工紙に吐出して画像を記録する。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
本発明におけるインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)は、着色剤の少なくとも1種と、樹脂粒子の少なくとも1種と、溶媒の少なくとも1種とを含んでなり、必要に応じて、界面活性剤等のその他の成分を用いて構成することができる。
また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインク組成物や、いわゆる印刷分野における特色のインク組成物等を用いることができる。
上記の各色調のインク組成物は、着色剤(例えば顔料)の色相を所望により変更することにより調製できる。
なお、インク組成物の詳細については後述する。
着色剤としては、着色により有色画像を形成できる機能を有するものであればよく、顔料や染料、着色微粒子を使用することができる。前記顔料の中では、水分散性顔料が好ましい。
(1)カプセル化顔料、即ち、ポリマー微粒子に顔料を含有させてなるポリマー分散物であり、より詳しくは、親水性水不溶性の樹脂で顔料を被覆し、顔料表面の樹脂層にて親水化することで顔料を水に分散可能にしたもの
(2)自己分散顔料、即ち、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料、より詳しくは、主にカーボンブラックなどを表面酸化処理して親水化し、顔料単体が水に分散するようにしたもの
(3)樹脂分散顔料、即ち、重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物により分散された顔料
(4)界面活性剤分散顔料、即ち、界面活性剤により分散された顔料
これらのうち、好ましくは(1)カプセル化顔料、(2)自己分散顔料であり、特に好ましくは(1)カプセル化顔料である。
カプセル化顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水と水溶性有機溶剤の混合溶媒中で自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常は数平均分子量が1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は、有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量は、この範囲内であると顔料における被覆膜として又はインクとした際の塗膜としての機能を発揮することができる。樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で用いられるのが好ましい。
これら樹脂のうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、「アニオン性基含有アクリルモノマー」という。)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1個以上のアニオン性基を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相乳化法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相乳化法が好ましい。転相乳化法、酸析法については後述する。
自己分散顔料を着色剤として含有するインクは、通常、顔料を分散させるために含有させる分散剤を含む必要がないため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんどなく、吐出安定性に優れるインクを調製しやすい。自己分散顔料の表面に結合される分散性付与基には、−COOH、−CO、−OH、−SO3H、−PO3H2及び第4級アンモニウム並びにそれらの塩が例示でき、これらは顔料に物理的処理又は化学的処理を施すことで、分散性付与基又は分散性付与基を有する活性種を顔料表面に結合(グラフト)させることにより結合される。前記物理的処理としては、例えば、真空プラズマ処理等が例示できる。また、前記化学的処理としては、例えば、水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法、等が例示できる。
例えば、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、あるいはオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散顔料を好ましい例として挙げることができる。
自己分散顔料として市販品を使用してもよく、具体的には、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(商品名;キャボット社製)等が挙げられる。
−a)転相乳化法−
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相乳化法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
−b)酸析法−
酸析法は、樹脂と顔料とからなる含水ケーキを用意し、その含水ケーキ中の、樹脂が有するアニオン性基の一部又は全部を、塩基性化合物を用いて中和することによって、マイクロカプセル化顔料を製造する方法である。
酸析法は、具体的には、(1)樹脂と顔料とをアルカリ性水性媒体中に分散し、必要に応じて加熱処理を行なって樹脂のゲル化を図る工程と、(2)pHを中性又は酸性にすることによって樹脂を疎水化して、樹脂を顔料に強く固着する工程と、(3)必要に応じて、濾過及び水洗を行なって含水ケーキを得る工程と、(4)含水ケーキを中の、樹脂が有するアニオン性基の一部または全部を、塩基性化合物を用いて中和し、その後、水性媒体中に再分散する工程と、(5)必要に応じて加熱処理を行ない、樹脂のゲル化を図る工程と、を含む方法がある。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料が含まれる。
例えば、前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
着色剤として水分散性顔料を用いる場合、カプセル化顔料あるいは樹脂分散顔料では分散剤の少なくとも1種を用いることができる。分散剤としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が使用できる。
また、分散剤の顔料に対する添加量としては、質量基準で顔料の10%以上100%以下の範囲が好ましく、顔料の20%以上70%以下がより好ましく、更に好ましくは顔料の40%以上50%以下である。
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有する。水溶性有機溶剤は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
水溶性有機溶剤のインク組成物中における含有量としては、1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
本発明におけるインク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
本発明におけるインク組成物は、少なくとも1種の樹脂粒子を含む。樹脂粒子を含むことにより、主にインク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。樹脂粒子は、既述の処理液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有する。このような樹脂粒子は、水及び有機溶剤に分散されているものが好ましい。
アクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。前記アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、液体組成物としたときの凝集速度と定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
特に、酸価は、25以上であると自己分散性の安定性が良好になり、100以下であると凝集性が向上する。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
また、水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことがより好ましく、更には加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25〜95であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/45/10)
工程(1):ポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程
工程(2):前記混合物から前記有機溶媒を除去する工程
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、水不溶性粒子を2種以上混合して使用してもよい。
なお、樹脂粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
樹脂粒子のインク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
本発明におけるインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の分散剤(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
界面活性剤のインク組成物中における界面活性剤の具体的な量としては、前記表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
前記各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
防黴剤は、インク組成物中の含有量が0.02〜1.00質量%である範囲とするのが好ましい。
本発明におけるインク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定されるものである。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定されるものである。
本発明のインクジェット記録方法は、上記の処理液付与工程と画像記録工程に加え、必要に応じて、他の工程を設けて構成することができる。
(1)シアン顔料インクCの調製
−顔料分散液の調製−
着色剤としてシアニンブルーA−22(PB15:3、大日精化社製)10gと、下記低分子量分散剤2−1の10.0gと、グリセリン4.0gと、イオン交換水26gとを攪拌混合して、粗分散液を調製した。次いで、この粗分散液に、超音波照射装置(SONICS社製、Vibra-cell VC−750、テーパーマイクロチップ:φ5mm、Amplitude:30%)を用いて超音波を2時間、間欠照射(照射0.5秒、休止1.0秒)して顔料を更に分散させ、20%顔料分散液とした。
上述したものとは別に、以下に示す組成中の化合物を秤量した後、攪拌混合して、混合液Iを調製した。
〜組成〜
・ジプロピレングリコール(水溶性有機溶剤)・・・5.0g
・ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤)・・・10.0g
・オルフィンE1010(ノニオン性界面活性剤、日信化学工業社製)・・・1.1g
イオン交換水・・・10.9g
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート180.0g、メチルメタクリレート162.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、さらに「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、さらに2時間攪拌を続けることにより重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。
次に、重合体溶液668.3gを秤量し、これにイソプロパノール388.3g及び1mol/LのNaOH水溶液145.7mlを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次いで、蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化した。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
なお、自己分散性ポリマー粒子(B−01)の構造は下記の通りであり、下記構造中の各構成単位の右下の数字は「質量比」を表す。
上記で得た混合液Iを、攪拌している固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物36.2gにゆっくりと滴下して攪拌混合し、混合液IIを調製した。得られた混合液IIを上記で得た20%顔料分散液にゆっくりと滴下しながら攪拌混合して、インク組成物であるシアン顔料インクC(シアンインク)100gを調製した。
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、シアン顔料インクCのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
前記シアン顔料インクCの調製において、顔料として用いたシアニンブルーA−22をCromophtal Jet Magenta DMQ(PR−122、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に代えたこと以外は、上記のシアン顔料インクCの調製と同様の方法により、マゼンタ顔料インクM(マゼンタインク)を調製した。
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、マゼンタ顔料インクMのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
前記シアン顔料インクCの調製において、顔料として用いたシアニンブルーA−22をIrgalite Yellow GS(PY74、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に代えたこと以外は、上記のシアン顔料インクCの調製と同様の方法により、イエロー顔料インクY(イエローインク)を調製した。
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、イエロー顔料インクYのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
前記シアン顔料インクCの調製において調製した顔料分散液の代わりに、顔料分散体CAB−O−JETTM 200(カーボンブラック、CABOT社製)を用いたこと以外は、上記のシアン顔料インクCの調製と同様の方法により、ブラック色の黒顔料インクK(ブラックインク)を調製した。
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、黒顔料インクKのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
(処理液1)
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が15質量%の処理液1を調製した。処理液1のVISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)により測定した粘度(25℃)は、2.0mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸カルシウム(固定化剤)・・・15g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・10g
・イオン交換水・・・75g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が20質量%の処理液2を調製した。処理液2の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、2.1mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸カルシウム(固定化剤)・・・20g
・GP−250・・・10g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・5g
・イオン交換水・・・65g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が30質量%の処理液3を調製した。処理液3の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、2.6mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸カルシウム(固定化剤)・・・30g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル・・・15g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・54g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が20質量%の処理液4を調製した。処理液4の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、5.5mPa・sであった。
〜組成〜
・ポリ水酸化アルミニウム(固定化剤)・・・20g
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・10g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・69g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が10質量%の処理液5を調製した。処理液5の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、1.5mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸カルシウム(固定化剤)・・・10g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・69g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が35質量%の処理液6を調製した。処理液6の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、7.0mPa・sであった。
〜組成〜
・塩化カルシウム(固定化剤)・・・35g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・44g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が15質量%の処理液7を調製した。処理液7の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、1.8mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸マグネシウム(固定化剤)・・・15g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・64g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が40質量%の処理液8を調製した。処理液7の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、9.0mPa・sであった。
〜組成〜
・塩化カルシウム(固定化剤)・・・40g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・10g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・49g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が10質量%の処理液9を調製した。処理液6の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、3.0mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸カルシウム(固定化剤)・・・10g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・40g
・オルフィンE1010(日信化学工業製)・・・1g
・イオン交換水・・・49g
下記組成の成分を混合して、多価金属化合物濃度が20質量%の処理液10を調製した。処理液10の上記同様の方法で測定した粘度(25℃)は、3.5mPa・sであった。
〜組成〜
・硝酸カルシウム(固定化剤)・・・20g
・マロン酸(固定化剤)・・・10g
・GP−250・・・10g
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・5g
・イオン交換水・・・55g
記録媒体(塗工紙)として、下記表1に示すように、ユーライト(坪量104.7g/m2)、特菱アート(坪量104.7g/m2)、OKトップコート+(坪量104.7g/m2)を用意し、下記表1に示すように処理液の種類、付与量等を変更して、以下に示すようにして画像を記録した。
インク組成物として、上記で得られたシアン顔料インクC、マゼンタ顔料インクM、イエロー顔料インクY、黒顔料インクKを用い、下記表1に示す処理液と共に、4色シングルパス記録によりライン画像とベタ画像の記録を実施した。このとき、ライン画像は、1200dpiの1ドット幅のライン、2ドット幅のライン、4ドット幅のラインをシングルパスで主走査方向に吐出することにより記録し、ベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインク組成物を吐出することによりベタ記録した。なお、記録する際の諸条件は下記の通りである。
(1)処理液付与工程
まず、記録媒体の全面に、アニロックスローラー(線数100〜300/インチ)で塗布量が制御されたロールコーターにて付与量が下記表1に示す値になるように処理液を塗布した。
次いで、記録媒体に塗布された処理液の記録媒体上の液量が、下記表1の「処理後の液量」欄に示す値〔ml/m2〕となるまで、下記条件にて処理液が塗布された記録媒体について乾燥処理及び浸透処理を施した。記録媒体上の液量が、下記表1の「処理後の液量」欄に示す値〔ml/m2〕となることは、島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−2014及び、水素炎イオン化検出器FID−2014を用いて測定、検出することにより確認した。また、島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−2014、水素炎イオン化検出器FID−2014を用いて測定、検出したところ、いずれも記録媒体の表面から均一の深さで処理液が浸透していることがわかった。
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱
・送風領域:450mm(乾燥時間0.7秒)
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に下記条件にてインク組成物をインクジェット法で吐出し、ライン画像、ベタ画像を記録した。
・ヘッド:1,200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:0pL、2.0pL、3.5pL、4.0pLの4値記録
・駆動周波数:30kHz(記録媒体の搬送速度635mm/sec)
次いで、インク組成物が付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱
・送風領域:640mm(乾燥時間:1秒間)
次に、下記条件でローラ対を通過させることにより加熱定着処理を実施した。
・シリコンゴムローラ(硬度50°、ニップ幅5mm)
・ローラ温度:70℃
・圧力:0.3MPa
上記のように記録したライン画像、ベタ画像に対して下記の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
マゼンタ顔料インクMによるベタ画像上にシアン顔料インクCをベタ記録したときの均一画像部を目視にて観察し、濃度ムラの程度を下記の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
A:ムラが見られず、ベタ部の濃度は均一であった。
B:一部に僅かにムラが見られたが、実用上問題ないレベルであった。
C:ムラが発生し、実用上許容限界レベルであった。
D:ムラの発生が顕著であり、実用性の極めて低いレベルであった。
記録媒体上に記録された、1ドット幅のライン、2ドット幅のライン、4ドット幅のラインについて、下記の評価基準にしたがって描画性を評価した。
(評価基準)
A:全てのラインが均質なラインであった。
B:1ドット幅のラインは均質であったが、2ドット幅及び4ドット幅のラインの一部にライン幅の不均一やラインの切れが認められた。
C:1ドット幅のラインは均質であったが、2ドット幅及び4ドット幅のラインの全般にライン幅の不均一やラインの切れが認められた。
D:ライン全体にライン幅の不均一やラインの切れが顕著に認められた。
未記録の記録媒体及び、非画像部(画像形成後のインクが描画されていない部分)表面の60°鏡面光沢を光沢度計(IG−331、株式会社堀場製作所製)にて測定した。未記録の記録媒体と非画像部との間の表面光沢の変動幅が小さい程、良好な画像であることを示す。
(評価基準)
A:未記録の記録媒体の光沢度に対し±5%以内の変動
B:未記録の記録媒体の光沢度に対し±5%より大きく、±10%以内の変動
C:未記録の記録媒体の光沢度に対し±10%より大きく、±20%以内の変動
D:未記録の記録媒体の光沢度に対し±20%より大きい変動
ベタ画像が記録された記録媒体に2cm四方のベタ部を印字直後、記録していない記録媒体(記録に用いたものと同じ記録媒体(以下、本評価において未使用サンプルという。)を重ねて荷重150kg/m2をかけて10往復擦り、未使用サンプルの白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
A:インクの転写は全くなかった。
B:インクの転写はほとんど目立たなかった。
C:インクの転写が多少見られた。
D:インクの転写が顕著であった。
「多価金属濃度[%]」は、処理液中の多価金属化合物の濃度[質量%]を表し、「付与量(割合)[%]」は、各処理液の付与量のΔVに対する割合[質量%]を表す。「固定化剤の量[部]」は、各処理液中の固定化剤(多価金属化合物)の各記録媒体上の付与量[質量部]を表す。
これに対し、比較例では、濃度ムラ、ライン画像の描画性に劣っており、画像の耐擦過性も悪かった。特に、処理液の塗布量の少ない場合には、濃度ムラの発生防止及び細かい画像の描画が悪くなり、逆に処理液の塗布量が多すぎる場合には、紙表面が荒れてしまうために光沢が低下し、画像の耐擦過性も悪化した。
Claims (7)
- 塗工紙に、(i)インク組成物中の成分を固定化させる多価金属化合物を15質量%以上含み、かつ、25℃における粘度が2mPa・s〜8mPa・sである処理液を、ブリストー法による液体吸収性測定で得られる前記塗工紙の粗さ指数Vrと吸収係数の値が変化する屈曲点における転移量Viとから下記式(I)により求められるΔV[ml/m2]に対して−50%以上+50%以下の範囲で付与する処理液付与工程と、(ii)前記塗工紙上の前記処理液の液量が0.20ml/m 2 以下となるように乾燥処理及び浸透処理の少なくとも一方の処理を行なう処理工程と、(iii)着色剤、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、及び水を含むインク組成物を、インクジェット法により前記処理液が付与された塗工紙に吐出して画像を記録する画像記録工程と、を有するインクジェット記録方法。
ΔV=Vi−Vr ・・・式(I) - 前記多価金属化合物が、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、及びZr4+からなる群より選ばれる少なくとも1つの多価金属イオンと、Cl−、NO3 −、I−、Br−、ClO3 −、CH3COO−、及びSO4 2−からなる群より選ばれる少なくとも1つの陰イオンとの塩、ポリ水酸化アルミニウム並びにポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記処理工程では、前記塗工紙上の前記処理液の液量が0.03ml/m 2 以上0.20ml/m2以下となるように乾燥処理及び浸透処理の少なくとも一方の処理を行なう請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記処理液の前記塗工紙への付与は、塗布により行なう請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記樹脂粒子が、自己分散性ポリマーの粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記自己分散性ポリマーが、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含む請求項6に記載のインクジェット記録方法。
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