JP2004309806A - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定的な作製が可能であるとともに、帯電防止性の付与されたハロゲン化銀写真感光材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料である。式中、mは15〜40を表し、nは8〜24を表す。mおよびnはそれぞれ、単一であっても分布があってもよく、分布がある場合はその平均値を表す。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料である。式中、mは15〜40を表し、nは8〜24を表す。mおよびnはそれぞれ、単一であっても分布があってもよく、分布がある場合はその平均値を表す。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタチック耐性、帯電防止性に優れたハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ化アルキル鎖を有する化合物が界面活性剤として知られている。このような界面活性剤は、フッ化アルキル鎖の独特の性質(撥水・撥油性、潤滑性、帯電防止性等)により種々の表面改質を行うことができ、繊維、布、カーペット、樹脂等、幅広い基材の表面加工に用いられている。また、フッ化アルキル鎖を持つ界面活性剤(以降含フッ素系界面活性剤と称する)を種々基質の水性媒体溶液に添加すると、塗膜形成時にハジキのない、均一な被膜を形成することができるばかりでなく、界面活性剤の吸着層を基質表面に形成することができ、上記のフッ化アルキル鎖が持つ独特の性質を被膜表面にもたらすことができる。
【0003】
写真感光材料においても、種々の界面活性剤が用いられ、重要な役割を果たしている。写真感光材料は、通常、親水性コロイドバインダー(例えばゼラチン)の水溶液を含む複数の塗布液を、支持体上に個々に塗布して複数の層を形成し作製される。しばしば、複数の親水性コロイド層を同時多層塗布することも行われる。これらの層には、帯電防止層、下塗り層、ハレーション防止層、ハロゲン化銀乳剤層、中間層、フィルター層、保護層等が含まれ、各層には各機能を発現するための種々の素材が添加される。また、膜物理性改良のためにポリマーラテックスを親水性コロイド層に含有させることもある。さらに、カラーカプラー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スベリ剤等の水に難溶性の機能性化合物を親水性コロイド層に含有させるために、これらの素材をそのまま、あるいはリン酸エステル系化合物、フタル酸エステル化合物などの高沸点有機溶媒に溶解させた状態で、親水性コロイド溶液中に乳化分散させて、塗布液の調製に用いる場合がある。この様に、一般的に、写真感光材料は種々の親水性コロイド層から構成されており、その製造に際して、種々の素材を含む塗布液を、ハジキや塗布ムラなどの欠陥なく均一に高速塗布することが要求される。このような要求に応えるため、界面活性剤を塗布助剤として塗布液中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
一方で、写真感光材料はその製造、撮影、現像処理の間に種々の物質と接触する。例えば、処理の工程において、感光材料が巻き取られた状態にあると、支持体の裏面に形成されたバック層と表面層が接触する場合がある。また、処理の工程において搬送される際に、ステンレス、ゴムローラー等と接触する場合がある。これらの材料と接触すると、感光材料の表面(ゼラチン層)は正に帯電しやすく、場合によっては不要な放電を起こすため、感光材料に望ましくない露光跡(「スタチックマーク」と称される)を残すことになる。このゼラチンの帯電性を軽減するには、帯電の防止(帯電量を少なくする)、蓄積された電荷を漏洩させやすくする等が挙げられる。帯電の防止にはフッ素原子を有する化合物が有効であり、フッ素系界面活性剤を添加することがしばしば行われている。また、蓄積された電荷を漏洩させやすくする手段としてはポリエチレンオキシドを含有する界面活性剤を添加し、感材の表面抵抗値を下げることがしばしば行われている。これら帯電の防止と電荷の漏洩の観点から、ハロゲン化銀写真感光材料、特にX線照射に対して感光性のあるハロゲン化銀写真感光材料(Xレイ感材)では炭化水素系ノニオン界面活性剤とフッ素系ノニオン界面活性剤とフッ素系アニオン界面活性剤を微妙なバランスで組み合わせてスタチックに対する耐性を持たせることがしばしば行われている(例えば特許文献1、2、3)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−109044号公報
【特許文献2】
特開平7−159929号公報
【特許文献3】
特開昭61−47948号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤は塗布膜の均質性を付与するための塗布助剤、あるいは写真感光材料の帯電防止性付与の両機能を担う素材として用いられており、例えば特開昭49−46733号公報、同51−32322号公報、同57−64228号公報、同64−536号公報、特開平2−141739号公報、同3−95550号公報、同4−248543号公報等にその具体例が開示されている。
しかしながら、これらの素材は近年の写真感光材料の高感度化および高速塗布化の要請に対して、必ずしも満足する性能を有するものではなく、さらなるフッ素系界面活性剤の改良が望まれている。また、国際公開WO02/092719号公報に記載されているように従来汎用的に使用されてきた電解フッ素化により得られるパーフルオロオクタンスルホン酸から誘導された界面活性剤は生態への蓄積性が懸念されている。そこでパーフルオロオクタンスルホン酸を含まず、かつ短鎖なフッ化アルキル基を有する界面活性剤の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、新規な短鎖なフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤を含有することにより、スタチック耐性および帯電防止能に優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
<1> 下記一般式(1)で表されるフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
(式中、mは15〜40を表し、nは8〜24を表す。mおよびnは単一であっても分布があってもよく、分布がある場合はその平均値を表す。)
<2> 前記一般式(1)中、mが20〜40、nが10〜18であることを特徴とする<1>記載のハロゲン化銀写真感光材料
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0010】
まず、一般式(1)で表されるフッ素化合物に関して詳細に説明する。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
【0011】
mは15〜40を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。mとして好ましくは20〜40である。
nは8〜24を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。nとして好ましくは10〜20であり、より好ましくは12〜20であり、更に好ましくは12〜18である。
【0012】
一般式(1)として好ましくは下記一般式(1−A)である。
一般式(1−A)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)p−OCqH2q+1
【0013】
pは20〜40を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。qは12〜18を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。帯電防止の観点からは、pは25〜40が好ましい。
【0014】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は、以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0015】
FS−1 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)20−OC18H37
FS−2 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)21−OC12H25
FS−3 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)23−OC16H33
FS−4 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)25−OC12H25
FS−5 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)40−OC16H33
FS−6 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)32−OC14H29
【0016】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物は、“Journal of Fluorine Chemistry, 84(1997), 53−61頁”に記載の方法などによって合成できる。つまり、フッ化アルキル基を置換基に有するエポキシド化合物と水酸基を含有する化合物をルイス酸存在下で加熱することでさまざまな誘導体が合成可能である。
【0017】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物(「本発明のフッ素化合物」という場合がある)は、該化合物を溶解および/または分散する媒体等と混合して、ハロゲン化銀写真感光材料中に添加してもよい。また、目的に応じて、他の成分を適宜含んでいてもよい。
本発明のフッ素化合物を溶解または分散させる媒体としては、水系媒体が好ましい。水系媒体には、水、および有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒が含まれる(水が50質量%以上が好ましい)。水系媒体として好ましくは、水単独または、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)との混合溶媒であり、更に好ましくは水単独、または水とメタノールとの混合溶媒であり、特に好ましくは水単独である。
【0018】
本発明のフッ素化合物を添加する際の、溶液及び/または分散液中における該化合物の濃度は、好ましくは0.001質量%〜40質量%であり、より好ましくは0.01質量%〜20質量%であり、更に好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、特に好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0019】
本発明のフッ素化合物は1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明のフッ素化合物とともに他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができる。また併用する界面活性剤は、高分子界面活性剤であってもよく、本発明のフッ素化合物以外のフッ素系界面活性剤であってもよい。併用する界面活性剤としては、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。併用可能な界面活性剤としては、例えば特開昭62−215272号公報(649〜706頁)、リサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月);同18716,650頁(1979年11月);同307105,875〜876頁(1989年11月);等に記載の界面活性が挙げられる。
【0020】
本発明のフッ素化合物の使用量については、用いる化合物の構造やその用途、併用する他の材料の種類や量、および媒体の構成等に応じて、その使用量を任意に決定することができる。
例えば、本発明のフッ素化合物をハロゲン化銀写真感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層に含有させる場合、親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液中の本発明のフッ素化合物の濃度としては、0.003〜0.5質量%であることが好ましく、またゼラチン固形分に対しては0.03〜5質量%であることが好ましい。
【0021】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、その他、種々の材料を含んでいてもよい。それらの材料を媒体に溶解および/または分散させた塗布組成物を用いて、ハロゲン化銀写真感光材料の種々の層を形成することにより、該材料を各層に含有させることができる。写真感光材料の構成層中に含有される種々の材料としては、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、カブリ防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤等を挙げることができる。また、前述したように、本発明のフッ素化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料の最上層の親水性コロイド層中に添加するのが好ましいが、この場合は、前記親水性コロイド層中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)および本発明のフッ素化合物以外に、他の界面活性剤、マット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有させることができる。
【0022】
本発明の含フッ素化合物を用いるハロゲン化銀写真感光材料は、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であるのが好ましく、白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーネガフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータ―ベースからレーザー照射により感光された紙、熱により現像処理された感材から選択される。ハロゲン化銀写真感光材料としては、X線照射に感光性のあるハロゲン化銀写真感光材料(Xレイ用感光材料)が好ましい。
【0023】
以下、本発明のハロゲン化銀写真感光材料に関して詳細に説明する。
[ハロゲン化銀乳剤]
まず、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤について説明する。
1)ハロゲン組成
感光性ハロゲン化銀粒子は、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができるが、上述のように迅速処理の観点から感光性ハロゲン化銀粒子中に含まれるヨード量が平均で0モル%以上0.45モル%以下である。このヨード量として、好ましくは平均で0.05モル%以上0.40モル%以下、より好ましくは、0.10モル%以上0.30モル%以下である。ここで、感光性ハロゲン化銀粒子に含まれるヨード量の「平均」とは、個々の感光性ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成から求められるヨード含有率の平均値を意味する。感光性ハロゲン化銀の粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ上に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよい。また、感光性ハロゲン化銀粒子としては、コア/シェル構造を有する感光性ハロゲン化銀粒子を用いることもできる。
【0024】
2)粒子形状
感光性ハロゲン化銀粒子としては、英国特許第635841号明細書、米国特許第3622318号明細書に記載されているような、いわゆるハロゲン変換型(コンバージョン型)の粒子も好適に挙げられる。ハロゲン変換の方法としては、通常ハロゲン変換前の粒子表面のハロゲン組成よりも銀との溶解度積の小さいハロゲン水溶液を添加することにより行う。例えば、塩化銀や塩臭化銀平板状粒子に対しては臭化カリウム及び/又は沃化カリウム水溶液を添加し、臭化銀や沃臭化銀平板に対しては沃化カリウム水溶液を添加してコンバージョンをおこす。これらの添加する水溶液の濃度は、低濃度のほうが好ましく、30%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。さらにハロゲン変換前のハロゲン化銀1モルあたり毎分1モル%以下の速度で、変換ハロゲン溶液を添加するのが好ましい。さらに、ハロゲン変換時に、増感色素及び/又はハロゲン化銀吸着性物質の一部もしくは全部を存在させてもよく、変換ハロゲン水溶液のかわりに、臭化銀や、沃臭化銀、沃化銀のハロゲン化銀微粒子を添加してもよい。これらの微粒子の大きさは、通常0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下であることが望ましい。本発明で使用できるハロゲン変換方法は、上記した方法に限定されるものではなく、目的に応じ適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
3)粒子サイズ
感光性ハロゲン化銀粒子の形成方法は当業界では良く知られており、例えば特開平2−68539号公報、米国特許第3700458号明細書、及びリサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号に記載されている方法等を用いることによって調製することができる。
【0026】
4)化学増感方法
化学増感方法としては、特開平2−68539号公報第10頁右上欄13行目から同左下欄16行目、特開平5−313282号公報、及び特開平6−110144号公報に記載の方法を用いることができる。
ハロゲン化銀乳剤の化学増感の方法としては、具体的には、ハロゲン化銀吸着性物質の存在下で硫黄増感法、セレン増感法、還元増感法、金増感法などの知られている方法を用いることができ、単独又は組合せて用いられる。
【0027】
貴金属増感法のうち金増感法はその代表的なもので金化合物、主として金錯塩を用いる。金以外の貴金属、たとえば白金、パラジウム、イリジウム等の錯塩を含有しても差支えない。その具体例は米国特許2448060号明細書、英国特許618061号明細書などに記載されている。
硫黄増感剤としては、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、たとえばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。具体例は米国特許1574944号明細書、同2278947号明細書、同2410689号明細書、同2728668号明細書、同5501313号明細書、同8656955号明細書に記載されたものである。また、セレン増感剤としては特開平6−110144号公報に記載されている。
チオ硫酸塩による硫黄増感と、セレン増感及び金増感の併用は有用である。還元増感剤としては第一すず塩、アミン類、ホルムアミンジスルフィド酸、シラン化合物などを用いることができる。
【0028】
5)カブリ防止剤・安定剤
本発明で用いることができるカブリ防止剤・安定剤としては、特開平2−68539号公報第10頁左下欄17行目から同第11頁左上欄7行目及び同第3頁左下欄2行目から同第4頁左下欄に記載のものを使用できる。
【0029】
具体的には、アゾール類(例えばベンゾチアゾリウム塩、エトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、クロモベンズイミダゾール類、ニトロインダゾール類、ベンゾトリアゾール類、アミノトリアゾール類など);メルカプト化合物類(例えばメルカプトテアゾール類、メルカプトベンジチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、メルカプトピリミジシ類、メルカプトトリアジン類など);例えばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類(例えばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類など);ベンゼンチオスルホン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸アミド等のようなカブリ防止剤又は安定剤として知られる化合物を加えることができる。
【0030】
特に特開昭60−76743号公報、同60−87322号公報に記載のニトロン及びその誘導体、特開昭60−80839号公報に記載のメルカプト化合物、特開昭57−164735号公報に記載のヘテロ環化合物、及びヘテロ環化合物と酸の錯塩(例えば1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール類)などを好ましく用いることができる。
【0031】
さらに、プリン類又は核酸類、あるいは特公昭61−36213号公報、特開昭59−90844号公報等に記載の高分子化合物などを使用することもできる。なかでも特にアザインデン類とプリン類、核酸類は好ましく用いることができる。これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モルあたり0.5〜5.0ミリモル、好ましくは0.5〜3.0ミリモルである。
【0032】
6)色調改良剤
本発明で使用できる色調改良剤としては、特開昭62−276539号公報第2頁左下欄7行目から同第10頁左下欄20行目、並びに特開平3−94249号公報第6頁左下欄15行目から第11頁右上欄19行目に記載のものが挙げられる。
具体的には、ハロゲン化銀写真乳剤層の被覆力が60以上とし、ハロゲン化銀写真乳剤層及び/又は他の層中に、520〜560nmの間に極大吸収波長を有する染料と570〜700nmの間に極大吸収波長を有する染料とを、現像処理後の末露光部透過濃度の含有染料による光学濃度の増加が0.03以下となるように含めることができる。
【0033】
ハロゲン化銀写真乳剤層の被覆力を60以上とする乳剤としては、代表的には平板状乳剤、微粒子乳剤などを挙げることができる。特には、ハロゲン化銀写真乳剤が0.4μm以下の粒子厚みをもつ平板状ハロゲン化銀粒子からなる場合、あるいは高ヨード表面感光性字乳剤と微粒子で内部がかぶった粒子からなる乳剤との混合乳剤を用いると色調改良の効果が大きい。
本発明で色調改良用に使用できる染料としては、520〜560nm、好ましくは530〜555nmの間に極大吸収波長を有する染料と570〜700nm、好ましくは580〜650nmの間に極大吸収波長を有する染料との併用である。極大吸収波長とは、染料を感光材料中に存在させた状態における極大吸収波長を意味する。
【0034】
本発明で用いられる染料としては、例えば、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、インドアニリン染料、オキソノール染料、カルボシアニン染料、スチリル染料、トリフェニルメタン染料などの中から所定の極大波長を有するものが選択される。現像処理に対する安定性や光堅牢性や、減感、カブリ、ステイン等の写真性能に対する影響を考慮すると、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、及びインドアニリン染料の中から好ましいものが用いられる。
好ましい化合物は、特開昭62−276539号公報第3頁左上欄5行目から同第9頁左上欄9行目に記載されている。
このような染料は、乳剤層その他の親水性コロイド層(中間層、保護層、アンチハレーション層、フィルター層など)中に種々の知られた方法で分散することができ、具体的には、特開昭62−276539号公報第9頁左上欄14行目から同第10頁左下欄20行目に記載されている。
【0035】
7)分光増感色素
本発明で用いることができる分光増感色素としては、特開平2−68539号公報第4頁右下欄4行目から同第8頁右下欄に記載されているものが挙げられる。
具体的には、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーランアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。
本発明に使用される有用な増感色素は例えば米国特許3522052号明細書、同3617197号明細書、同3713828号明細書、同3615643号明細書、同3615632号明細書、同3617293号明細書、同3628964号明細書、同3703377号明細書、同3666480号明細書、同3667960号明細書、同3679428号明細書、同3672897号明細書、同3769026号明細書、同3556800号明細書、同3615613号現細書、同3613638号明細書、同3615635号明細書、同3705809号明細書、同3632349号明細書、同3677765号明細書、同3770449号明細書、同3770440号明細書、同3769025号明細書、同3745014号明細書、同3713826号明細書、同8567458号明細書、同3625698号明細書、同2526632号明細書、同2503776号明細書、特開昭48−76525号公報、ベルギー特許第691807号明細書などに記載されている。増感色素の添加量はハロゲン化銀1モルあたり0.5mmol以上4mmol未満、好ましくは0.5mmol以上1.5mmol未満がよい。
増感色素の具体例としては、特開平2−68539号公報第5頁から同第8頁に記載されているII−1〜II−47が挙げられる。
【0036】
8)帯電防止剤
本発明では、塗布用助剤、帯電防止剤あるいは帯電調整剤として、特開平2−68539号公報第11頁左上欄14行目から同第12頁左上欄9行目に記載の界面活性剤を用いることができる。
このような目的に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えばサポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、シリコーンのポリエチレンオキサイド化合物類)、糖のアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン類、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、などのアニオン界面活性剤;アルキルベタイン類、アルキルスルホベタイン類などの両性界面活性剤;脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類、ビリジニウム塩類、イミダゾリウム塩類などのカチオン界面活性剤を用いることができる。
【0037】
この内、サポニン、ドデシルベンゼンスルホン酸Na塩、ジ−2−エチルへキシルα−スルホコハク酸Na塩、p−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸Na塩、ドデシル硫酸Na塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸Na塩、N−メチル−オレオイルタウリンNa塩などのアニオン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、N−オレオイル−N’,N’,N’−トリメチルアンモニオジアミノプロパンブロマイド、ドデシルピリジウムクロライドなどのカチオン、N−ドデシル−N,N−ジメナルカルボキシベタイン、N−オレイル−N,N−ジメチルスルホブチルベタインなどのベタイン、ポリ(平均重合度n−10)オキシエチレンセチルエーテル、ポリ(n=25)オキシエチレンp−ノニルフェノールエーテル、ビス(1−ポリ(n=15)オキシエチレン−オキシ−2,4−ジ−t−ベンチルフェニル)エタンなどのノニオンを特に好ましく用いることができる。
また、帯電防止剤としては、特開昭60−80848号公報、同61−112144号公報、特開昭62−172343号公報、特開昭62−173459号公報などに記載のノニオン系界面活性剤、アルカリ金属の硝酸塩、導電性酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化バナジウム又はこれらにアンチモン等をドープした複合酸化物を好ましく用いることができる。
【0038】
9)マット剤・滑り剤・可塑剤
本発明で用いることができるマット剤・滑り剤・可塑剤としては、特開平2−68539号公報第12頁左上欄10行目から同右上本欄10行目、及び同第14頁左下欄10行目から同右下欄1行目に記載のものが挙げられる。
具体的には、マット剤としては米国特許第2992101号明細書、同2701245号明細書、同4142894号明細書、同4396706号明細書に記載の如きポリメチルメタクリレートのホモポリマー又はメチルメタクリレートとメタクリル酸とのコポリマー、デンプンなどの有機化合物、シリカ、二酸化チタン、硫酸、ストロンチウムバリウム等の無機化合物の微粒子を用いることができる。粒子サイズとしては1.0〜10μm、特に2〜5μmであることが好ましい。
本発明の写真感光材料の表面層には、滑り剤として米国特許第3489576号明細書、同4047958号明細書等に記載のシリコーン化合物、特公昭56−23139号公報に記載のコロイダルシリカの他に、パラフィンワックス、高級脂肪酸エステル、デン粉誘導体等を用いることができる。
【0039】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の親水性コロイド層には、トリメチロールプロパン、ぺンタンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン等のポリオール類を可塑剤として用いることができる。また、本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層には圧力特性を改良するためポリマーや乳化物などの可塑剤を含有させることができる。
例えば、英国特許第738618号明細書には異節環状化合物を、同738637号明細書にはアルキルフタレートを、同738639号明細書にはアルキルエステルを、米国特許第2960404号明細書には多価アルコールを、同3121060号明細書にはカルボキシルアルキルセルロースを、特開昭49−5017号公報にはパラフィンとカルボン酸塩を、特公昭53−28086号公報にはアルキルアクリレートと有機酸を用いる方法等が開示されており、本発明でもこれらの方法を使用することができる。
【0040】
10)親水性コロイド
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層や中間層及び表面保護層に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
本発明で用いることができる親水性コロイドとしては、特開平2−68539号公報第12頁右上欄11行目から同左下欄16行目に記載のものが挙げられる。
【0041】
例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、デキストラン、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール(ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンや酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
これらの中でもゼラチンとともに平均分子量10万以下のデキストランやポリアクリルアミドを併用することが好ましい。特開昭63−68887号公報、特開昭63−149641号公報に記載の方法は本発明でも有効である。
【0042】
11)硬膜剤
本発明で用いる写真乳剤及び非感光性の親水性コロイドには無機又は有機の硬膜剤を含有してよい。本発明で用いることができる硬膜剤は、特開平2−68539号公報第12頁左下欄17行目から同第13頁右上欄6行目に記載のものが挙げられる。
具体的には、例えばクロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、ダリタールアルデヒドなど)、N一メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルとダントインなど)、ジオキサン誘導体(2,3−ジヒドロキシジオキサンなど)、活性ビニル化合物(1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホニル)メチルエーテル、N,N’−メチレンビス−(β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド)など)、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンなど)、ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など)イソオキサゾール類、ジアルデヒドでん粉、2−クロル−6−ヒドロキシトリアジニル化ゼラチンなどを、単独又は組合せて用いることができる。中でも、特開昭53−41221号公報、同53−57257号公報、同59−162546号公報、同60−80846号公報に記載の活性ビニル化合物及び米国特許第3325287号明細書に記載の活性ハロゲン化物が好ましい。
【0043】
本発明では、硬膜剤として高分子硬膜剤も有効に利用することができる。本発明に用いられる高分子硬膜剤としては例えばジアルデヒド澱粉、ポリアクロレイン、米国特許3396029号明細書に記載のアクロレイン共重合体のようなアルデヒド基を有するポリマー、米国特許第3623878号明細書に記載のエポキシ基を有するポリマー、米国特許第3362827号明細書、リサーチ・ディスクロージャー誌17333(1978)などに記載されているジクロロトリアジン基を有するポリマー、特開昭56−66841号公報に記載されている活性エステル基を有するポリマー、特開昭56−142524号公報、米国特許第4161407号明細書、特開昭54−65033号公報、リサーチ・ディスクロージャー誌16725(1978)などに記載されている活性ビニル基、あるいはその前駆体となる基を有するポリマーなどが挙げられ、活性ビニル基、あるいはその前駆体となる基を有するポリマーが好ましく、中でも特開昭56−142524号公報に記載されているような、長いスペーサーによって活性ビニル基、あるいはその前駆体となる基がポリマー主鎖に結合されているようなポリマーが特に好ましい。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料中の親水性コロイド層はこれらの硬膜剤により水中での膨潤率が300%以下、特に230%以下になるように硬膜されていることが好ましい。
【0044】
12)支持体
本発明で用いる支持体としては特開平2−68539号公報第13頁右上欄7行目から20行目に記載のものが挙げられる。具体的には、支持体としてはポリエチレンテレフタレートフィルム又は三酢酸セルロースフィルムが好ましい。
支持体は親水性コロイド層との密着力を向上せしめるために、その表面をコロナ放電処理、あるいはグロー放電処理あるいは紫外線照射処理する方法が好ましく、あるいは、スチレンブタジエン系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス等からなる下塗層を設けてもよくまた、その上層にゼラチン層を更に設けてもよい。
またポリエチレン膨潤剤とゼラチンを含む有機溶剤を用いた下塗層を設けてもよい。これらの下塗層は表面処理を加えることで更に親水性コロイド層との密着力を向上することもできる。
【0045】
13)クロスオーバーカット法
クロスオーバー光が鮮鋭度を大幅に低下させることは当業界では周知の事実である。写真感光材料のクロスオーバー光が12%以下であるようにする手段としては、米国特許4130429号明細書、特開昭61−116354号公報などにX線蛍光スクリーンの発光波長と一致する波長の光を増感色素や染料を用いて吸収する方法が開示されている。
【0046】
さらに、米国特許4800150号明細書には支持体と乳剤層の間に染料を微結晶分散物の形として存在させクロスオーバー光が10%以下であるようにする技術が開示されている。また、特開昭63−305345号公報には、カチオン性ポリマーラテックスを用いてアニオンは染料を特定層に固定する技術が、さらに特開平1−166031号公報には染料の固定層を支持体の下塗り層にする技術が開示されている。本発明の感光材料ではこれらのいずれの方法をも用いることができるが、染料による着色層は下塗り層であることが好ましく、染料は特開平1−166031号公報に記載の方法で固定されていること、特に染料が米国特許第4803150号明細書に記載の微結晶分散物のかたちで下塗り層に固定されていることが望ましい。本発明ではこれらの方法を適宜組み合わせることが可能である。
本発明で好ましく用いることができる染料としては、特開平2−264944号公報第4頁左下欄から第9頁右上欄に記載のものが挙げられる。
また、媒染層としては、特開平2−264944号公報第9頁右下欄から第14買右上欄に記載のものを使用することができる。
【0047】
14)ポリヒドロキシベンゼン類
本発明で使用できるポリヒドロキシベンゼン類としては、特開平3−39948号公報第11頁左上欄から同第12頁左下欄、EP特許第452772A号公報に記載のものが挙げられる。
具体的には、特開平8−39948号公報第11頁左上欄に記載の一般式(III)の化合物、その具体的化合物である同公報第11頁左下欄から第12頁左下欄に記載の(III)−1〜25の化合物が挙げられる。
これらポリヒドロキシベンゼン化合物の添加量としては、ハロゲン化銀1モルあたり5×10−1モル未満であればよく、好ましくはハロゲン化銀1モルあたりl×10−1から5×10−3モルの添加量である。
【0048】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に、感光性ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤層(感光層)と、例えば、中間層、表面保護層、バック層、バック面保護層、アンチハレーション層、フィルター層等の少なくとも1層の非感光性の親水性コロイド層とから構成されるが、その他用いられる乳剤増感法や各種添加剤に関しては特に制限はなく、例えば特開平2−68539号公報等に記載のものを好適に用いることができる。
【0049】
15)表面保護層・バック保護層
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、表面保護層及びバック保護層を有しているのが好ましく、前記表面保護層及びバック保護層は、ゼラチンなどの親水性コロイドをバインダーとして、様々な薬品を含有している。その層の主成分がゼラチンである場合は防腐剤などが必要である。また、必要に応じてマット剤、滑り剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、硬膜剤、増粘剤、染料、導電性物質などを含有することが好ましい。
【0050】
16)現像処理方法
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理方法としては、特開平2−103037号公報第16頁右上欄7行目から同第19頁左下欄15行目、特開平2−115837号公報第3頁右下欄5行目から同第6頁を上欄10行目、及び特開2000−112078号公報第34頁左欄42行目から同35頁左欄2行目に記載の方法を採用することができる。また、熱現像感光材料においては特開平2001−255617号公報第37項左欄40行目から同35頁左欄43行目に記載の方法等を採用することができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作などは本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0052】
【実施例1】
<ハロゲン化銀写真感光材料>
1.下塗り支持体の作製
1)下塗層用染料分散物D−1の調製
下記染料を特開昭68−197943号公報に記載の方法でボールミル処理した。
【0053】
【化1】
【0054】
水434mL及びTritonX−200界面活性剤(TX−200)の6.7質量%水溶液791mLとを2リットルのボールミルに入れた。染料20gをこの溶液に添加した。酸化ジルコニウム(ZrO)のビーズ400mL(2mm径)を添加し、内容物を4日間粉砕した。この後、12.5質量%ゼラチン160gを添加した。脱泡したのち、濾過によりZrOビーズを除去した。得られた染料分散物を観察したところ、粉砕された染料の粒径は直径0.05〜1.15μmにかけての広い分布を有していて、平均粒径は0.37μmであった。さらに、遠心分離操作を行うことで0.9μm以上の大きさの染料粒子を除去した。こうして染料分散物D−1を得た。
【0055】
2)支持体の作製
二軸延伸された厚さ183μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、コロナ放電処理を行い、下記の組成の第1下塗液を塗布量が5.1mL/m2となるようにワイヤーバーローターにより塗布し、175℃にて1分間乾燥した。次に、反対面にも同様にして第1下塗層を設けた。使用したポリエチレンテレフタレートには下記構造の染料が0.04質量%含有されているものを用いた。
【0056】
【化2】
【0057】
−第1下塗液の組成−
支持体の片側1m2当たりの塗布液量を4.9mLとし、各添加素材の支持体の片側1m2当たりの塗布量は以下の通りである。
・ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス
(固形分として) 0.31g
*ラテックス溶液中には、
乳剤分散物として下記構造の界面活性剤がラテックス固形分に
対して0.4質量%含有されている。
・2,4−ジクロロ−6
−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム 8mg
【0058】
【化3】
【0059】
さらに、上記支持体における両面の第1下塗層上に下記組成からなる第2の下塗液を塗布量が下記に記載の量となるように片側ずつ、両面にワイヤー・バーコーター方式により150℃で塗布・乾燥して、第2下塗り層を形成した。
【0060】
−第2下塗り層の組成−(片側1m2当たりの塗布量)
・ゼラチン 81mg
・C12H25O(CH2CH2O)10H 3.8mg
・防腐剤D 0.28mg
・ポリメチルメタクリレートの
平均粒径2.5μmのマット剤 2.3mg
・エチルアクリレート/アクリル酸(=95/5)の
組成を有するポリマーラテックス 21mg
*ポリマー固形分に対してA−9を3質量%含有する。
・染料分散物D−1 8.2mg
・酢酸 0.6mg
【0061】
【化4】
【0062】
2.塗布液の調製
1)ハロゲン化銀乳剤T−1の調製
水1リットル中に臭化カリウム6g、ゼラチン7gを添加し55℃に保った容器中へ攪拌しながら硝酸銀水溶液37mL(硝酸銀4.00g)と臭化カリウム5.9gを含む水溶液38mLとをダブルジェット法により37秒間で添加した。次に、ゼラチン18.6gを添加した後、70℃に昇温して硝酸銀水溶液89mL(硝酸銀9.8g)を22分間かけて添加した。ここで25%のアンモニア水溶液7mLを添加し、そのままの温度で10分間物理熟成した後、100%酢酸溶液を6.5mL添加した。引き続いて硝酸銀153gの水溶液と臭化カリウムの水溶液をpAg8.5に保ちながらコントロールダブルジェット法で35分かけて添加した。次に硝酸銀水溶液を用いてpBr2.8に調整した後、2mol/Lのチオシアン酸カリウム溶液15mLを添加した。5分間そのままの温度で物理熟成したのち35℃に温度を下げた。平均投影面積直径1.10μm、厚み0.165μm、直径の変動係数18.5%の単分散純臭化銀平板状粒子を得た。
この後、沈降法により可溶性塩類を除去した。再び40℃に昇温してゼラチン30gごとフェノキシエタノール2.35g及び増粘剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.8gを添加し、水酸化ナトリウムと硝酸銀溶液でpH5.90、pAg8.25に調整した。この乳剤を攪拌しながら56℃に保った状態で化学増感を施した。但し、AgI微粒子を化学増感前と中にそれぞれ単分散純臭化銀平板状粒子1モルについて0.05モル%分添加した。先ず、二酸化チオ尿素0.043mgを添加し、22分間そのまま保持して還元増感を施した。次に、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン20mgと増感色素Aを400mgを添加した。さらに塩化カルシウム0.83gを添加した。引き続き、増感剤としてチオ硫酸ナトリウム1.5mg、セレン増感剤を2.2mg、塩化金酸2.6mg及びチオシアン酸カリウム90mgを添加し40分後に35℃に冷却した。こうして平板状のハロゲン化銀乳剤T−1を調製した。得られたハロゲン化銀乳剤T−1のハロゲン化銀粒子に含まれるヨード量の平均は、0.1モル%であった。
【0063】
【化5】
【0064】
2)ハロゲン化銀乳剤T−2の調製
AgI微粒子の添加量を、化学増感前と中にそれぞれ0.5モル%分添加に変更した以外は、上記のハロゲン化銀乳剤T一1と同様な方法でハロゲン化銀乳剤T−2を調製した。
ハロゲン化銀乳剤T−2のハロゲン化銀粒子に含まれるヨード量の平均は、1.0モル%であった。
【0065】
3)塗布試料の調製
【0066】
【0067】
【化6】
【0068】
【0069】
及び下記に記載の化合物を使用した。
【化7】
【0070】
【0071】
3.塗布
上記準備した下塗り支持体上に、上記乳剤層用塗布液T−1、T−2及び表面保護層用塗布液を同時押し出し法により両面に塗布し、乳剤層と表面保護層とを形成し、片面当りの塗布銀量は1.75g/m2とした。
また、本発明のフッ素化合物FS−1〜FS−5および比較化合物1、2をそれぞれ3.2mg/m2になるように塗布した試料をそれぞれ試料101〜105および比較試料1〜2とした(表1参照)。
【0072】
4.試料の評価
各試料の最外保護層の表面抵抗を測定した(25℃、25%RH調湿下)。結果を表1に示す。表面抵抗が小さいものほど帯電特性に優れる。
【0073】
【表1】
【0074】
比較化合物A(特開昭62−109044号公報記載化合物)
C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16OH
比較化合物B(特開昭61−47948号公報記載化合物)
C11F23−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)15−OC3H7
【0075】
表1の結果より、ポリエチレンオキシド鎖長が長いほど表面抵抗低下能が高いことが分かる。本発明のフッ素化合物は短鎖フッ化アルキル基であるにも関わらず、従来のパーフルオロオクタンスルホン酸型の化合物と同様に表面抵抗低下能に優れていることが分かる。
【0076】
5.スタチックテスト
カセッテFuji EC CASSETTEN(富士写真フイルム(株)社製)の内側に、Hi−SCREEN B−2(富士写真フイルム(株)社製)を貼り付け、25℃25%の状況下で上記スクリーンを繊維で擦り、シシド静電気(株)社製 商品名 静電電位測定機M2で測定して、上記スクリーン表面の静電気の電圧が3〜4kvとなるように、富士写真フイルム(株)社製 Xレイ増感紙用 商品名 富士ASクリーナーの塗布と、アセトン及びクロロホルムによる脱膜により調節し、そのカセッテの中に比較例及び各試料をセットした。そして、25℃25%の暗室で30分放置し、カセッテから取り出し、自動現像機(富士写真フイルム(株)、商品名CEPROS−M2にて現像液CED−1(富士写真フイルム(株)社製)を用い34℃にて25秒全処理90秒現像した。定着液はCEF−1(富士写真フイルム(株)社製)を用い、水洗には水道水を用いた。
以上の過程を経て得られたサンプルのスタチックの発生状況から判断する。
評価:
1 : スタチックマークの発生が全く無い
2 : 僅かにスタチックマークの発生がある
3 : 中程度のスタチックマークの発生がある
4 : スタチックマークの発生が大きい
5 : 著しくスタチックマークの発生が大きい
【0077】
【表2】
【0078】
表2の結果より、本発明のフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材は非常に優れたスタチック耐性を示すことが実証された。
【0079】
【発明の効果】
本発明のフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料は、フッ化アルキル基が短い化合物でも十分に表面に配向し、表面抵抗を下げるため、スタチック耐性に優れることがわかる。さらに本発明のフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料は安定的な作製が可能であるとともに、帯電防止性の付与されたハロゲン化銀写真感光材料を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、スタチック耐性、帯電防止性に優れたハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ化アルキル鎖を有する化合物が界面活性剤として知られている。このような界面活性剤は、フッ化アルキル鎖の独特の性質(撥水・撥油性、潤滑性、帯電防止性等)により種々の表面改質を行うことができ、繊維、布、カーペット、樹脂等、幅広い基材の表面加工に用いられている。また、フッ化アルキル鎖を持つ界面活性剤(以降含フッ素系界面活性剤と称する)を種々基質の水性媒体溶液に添加すると、塗膜形成時にハジキのない、均一な被膜を形成することができるばかりでなく、界面活性剤の吸着層を基質表面に形成することができ、上記のフッ化アルキル鎖が持つ独特の性質を被膜表面にもたらすことができる。
【0003】
写真感光材料においても、種々の界面活性剤が用いられ、重要な役割を果たしている。写真感光材料は、通常、親水性コロイドバインダー(例えばゼラチン)の水溶液を含む複数の塗布液を、支持体上に個々に塗布して複数の層を形成し作製される。しばしば、複数の親水性コロイド層を同時多層塗布することも行われる。これらの層には、帯電防止層、下塗り層、ハレーション防止層、ハロゲン化銀乳剤層、中間層、フィルター層、保護層等が含まれ、各層には各機能を発現するための種々の素材が添加される。また、膜物理性改良のためにポリマーラテックスを親水性コロイド層に含有させることもある。さらに、カラーカプラー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スベリ剤等の水に難溶性の機能性化合物を親水性コロイド層に含有させるために、これらの素材をそのまま、あるいはリン酸エステル系化合物、フタル酸エステル化合物などの高沸点有機溶媒に溶解させた状態で、親水性コロイド溶液中に乳化分散させて、塗布液の調製に用いる場合がある。この様に、一般的に、写真感光材料は種々の親水性コロイド層から構成されており、その製造に際して、種々の素材を含む塗布液を、ハジキや塗布ムラなどの欠陥なく均一に高速塗布することが要求される。このような要求に応えるため、界面活性剤を塗布助剤として塗布液中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
一方で、写真感光材料はその製造、撮影、現像処理の間に種々の物質と接触する。例えば、処理の工程において、感光材料が巻き取られた状態にあると、支持体の裏面に形成されたバック層と表面層が接触する場合がある。また、処理の工程において搬送される際に、ステンレス、ゴムローラー等と接触する場合がある。これらの材料と接触すると、感光材料の表面(ゼラチン層)は正に帯電しやすく、場合によっては不要な放電を起こすため、感光材料に望ましくない露光跡(「スタチックマーク」と称される)を残すことになる。このゼラチンの帯電性を軽減するには、帯電の防止(帯電量を少なくする)、蓄積された電荷を漏洩させやすくする等が挙げられる。帯電の防止にはフッ素原子を有する化合物が有効であり、フッ素系界面活性剤を添加することがしばしば行われている。また、蓄積された電荷を漏洩させやすくする手段としてはポリエチレンオキシドを含有する界面活性剤を添加し、感材の表面抵抗値を下げることがしばしば行われている。これら帯電の防止と電荷の漏洩の観点から、ハロゲン化銀写真感光材料、特にX線照射に対して感光性のあるハロゲン化銀写真感光材料(Xレイ感材)では炭化水素系ノニオン界面活性剤とフッ素系ノニオン界面活性剤とフッ素系アニオン界面活性剤を微妙なバランスで組み合わせてスタチックに対する耐性を持たせることがしばしば行われている(例えば特許文献1、2、3)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−109044号公報
【特許文献2】
特開平7−159929号公報
【特許文献3】
特開昭61−47948号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤は塗布膜の均質性を付与するための塗布助剤、あるいは写真感光材料の帯電防止性付与の両機能を担う素材として用いられており、例えば特開昭49−46733号公報、同51−32322号公報、同57−64228号公報、同64−536号公報、特開平2−141739号公報、同3−95550号公報、同4−248543号公報等にその具体例が開示されている。
しかしながら、これらの素材は近年の写真感光材料の高感度化および高速塗布化の要請に対して、必ずしも満足する性能を有するものではなく、さらなるフッ素系界面活性剤の改良が望まれている。また、国際公開WO02/092719号公報に記載されているように従来汎用的に使用されてきた電解フッ素化により得られるパーフルオロオクタンスルホン酸から誘導された界面活性剤は生態への蓄積性が懸念されている。そこでパーフルオロオクタンスルホン酸を含まず、かつ短鎖なフッ化アルキル基を有する界面活性剤の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、新規な短鎖なフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤を含有することにより、スタチック耐性および帯電防止能に優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
<1> 下記一般式(1)で表されるフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
(式中、mは15〜40を表し、nは8〜24を表す。mおよびnは単一であっても分布があってもよく、分布がある場合はその平均値を表す。)
<2> 前記一般式(1)中、mが20〜40、nが10〜18であることを特徴とする<1>記載のハロゲン化銀写真感光材料
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0010】
まず、一般式(1)で表されるフッ素化合物に関して詳細に説明する。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
【0011】
mは15〜40を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。mとして好ましくは20〜40である。
nは8〜24を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。nとして好ましくは10〜20であり、より好ましくは12〜20であり、更に好ましくは12〜18である。
【0012】
一般式(1)として好ましくは下記一般式(1−A)である。
一般式(1−A)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)p−OCqH2q+1
【0013】
pは20〜40を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。qは12〜18を表し、単一であっても分布があってもよい。分布がある場合はその平均値を表す。帯電防止の観点からは、pは25〜40が好ましい。
【0014】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は、以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0015】
FS−1 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)20−OC18H37
FS−2 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)21−OC12H25
FS−3 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)23−OC16H33
FS−4 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)25−OC12H25
FS−5 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)40−OC16H33
FS−6 : C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)32−OC14H29
【0016】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物は、“Journal of Fluorine Chemistry, 84(1997), 53−61頁”に記載の方法などによって合成できる。つまり、フッ化アルキル基を置換基に有するエポキシド化合物と水酸基を含有する化合物をルイス酸存在下で加熱することでさまざまな誘導体が合成可能である。
【0017】
前記一般式(1)で表されるフッ素化合物(「本発明のフッ素化合物」という場合がある)は、該化合物を溶解および/または分散する媒体等と混合して、ハロゲン化銀写真感光材料中に添加してもよい。また、目的に応じて、他の成分を適宜含んでいてもよい。
本発明のフッ素化合物を溶解または分散させる媒体としては、水系媒体が好ましい。水系媒体には、水、および有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、nーブタノール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、アセトン等)と水との混合溶媒が含まれる(水が50質量%以上が好ましい)。水系媒体として好ましくは、水単独または、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)との混合溶媒であり、更に好ましくは水単独、または水とメタノールとの混合溶媒であり、特に好ましくは水単独である。
【0018】
本発明のフッ素化合物を添加する際の、溶液及び/または分散液中における該化合物の濃度は、好ましくは0.001質量%〜40質量%であり、より好ましくは0.01質量%〜20質量%であり、更に好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、特に好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0019】
本発明のフッ素化合物は1種類を単独で用いてもよいし、また2種類以上を混合して用いてもよい。また、本発明のフッ素化合物とともに他の界面活性剤を用いてもよい。併用可能な界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を挙げることができる。また併用する界面活性剤は、高分子界面活性剤であってもよく、本発明のフッ素化合物以外のフッ素系界面活性剤であってもよい。併用する界面活性剤としては、アニオン系もしくはノニオン系活性剤がより好ましい。併用可能な界面活性剤としては、例えば特開昭62−215272号公報(649〜706頁)、リサーチ・ディスクロージャー(RD)Item17643,26〜27頁(1978年12月);同18716,650頁(1979年11月);同307105,875〜876頁(1989年11月);等に記載の界面活性が挙げられる。
【0020】
本発明のフッ素化合物の使用量については、用いる化合物の構造やその用途、併用する他の材料の種類や量、および媒体の構成等に応じて、その使用量を任意に決定することができる。
例えば、本発明のフッ素化合物をハロゲン化銀写真感光材料の最上層の親水性コロイド(ゼラチン)層に含有させる場合、親水性コロイド(ゼラチン)層用塗布液中の本発明のフッ素化合物の濃度としては、0.003〜0.5質量%であることが好ましく、またゼラチン固形分に対しては0.03〜5質量%であることが好ましい。
【0021】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、その他、種々の材料を含んでいてもよい。それらの材料を媒体に溶解および/または分散させた塗布組成物を用いて、ハロゲン化銀写真感光材料の種々の層を形成することにより、該材料を各層に含有させることができる。写真感光材料の構成層中に含有される種々の材料としては、種々のカプラー、紫外線吸収剤、混色防止剤、スタチック防止剤、スカベンジャー、カブリ防止剤、硬膜剤、染料、防黴剤等を挙げることができる。また、前述したように、本発明のフッ素化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料の最上層の親水性コロイド層中に添加するのが好ましいが、この場合は、前記親水性コロイド層中には、親水性コロイド(例えばゼラチン)および本発明のフッ素化合物以外に、他の界面活性剤、マット剤、スベリ剤、コロイダルシリカ、ゼラチン可塑剤等を含有させることができる。
【0022】
本発明の含フッ素化合物を用いるハロゲン化銀写真感光材料は、光、レーザーまたはX線照射に感光性のある材料であるのが好ましく、白黒リバーサルフィルム、白黒ネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーネガフィルム、感光性写真成分がデジタルスキャンされたフィルム、白黒反転紙、白黒紙、カラー紙、反転カラー紙、感光性写真成分がデジタルデータ―ベースからレーザー照射により感光された紙、熱により現像処理された感材から選択される。ハロゲン化銀写真感光材料としては、X線照射に感光性のあるハロゲン化銀写真感光材料(Xレイ用感光材料)が好ましい。
【0023】
以下、本発明のハロゲン化銀写真感光材料に関して詳細に説明する。
[ハロゲン化銀乳剤]
まず、本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤について説明する。
1)ハロゲン組成
感光性ハロゲン化銀粒子は、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができるが、上述のように迅速処理の観点から感光性ハロゲン化銀粒子中に含まれるヨード量が平均で0モル%以上0.45モル%以下である。このヨード量として、好ましくは平均で0.05モル%以上0.40モル%以下、より好ましくは、0.10モル%以上0.30モル%以下である。ここで、感光性ハロゲン化銀粒子に含まれるヨード量の「平均」とは、個々の感光性ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成から求められるヨード含有率の平均値を意味する。感光性ハロゲン化銀の粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ上に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよい。また、感光性ハロゲン化銀粒子としては、コア/シェル構造を有する感光性ハロゲン化銀粒子を用いることもできる。
【0024】
2)粒子形状
感光性ハロゲン化銀粒子としては、英国特許第635841号明細書、米国特許第3622318号明細書に記載されているような、いわゆるハロゲン変換型(コンバージョン型)の粒子も好適に挙げられる。ハロゲン変換の方法としては、通常ハロゲン変換前の粒子表面のハロゲン組成よりも銀との溶解度積の小さいハロゲン水溶液を添加することにより行う。例えば、塩化銀や塩臭化銀平板状粒子に対しては臭化カリウム及び/又は沃化カリウム水溶液を添加し、臭化銀や沃臭化銀平板に対しては沃化カリウム水溶液を添加してコンバージョンをおこす。これらの添加する水溶液の濃度は、低濃度のほうが好ましく、30%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。さらにハロゲン変換前のハロゲン化銀1モルあたり毎分1モル%以下の速度で、変換ハロゲン溶液を添加するのが好ましい。さらに、ハロゲン変換時に、増感色素及び/又はハロゲン化銀吸着性物質の一部もしくは全部を存在させてもよく、変換ハロゲン水溶液のかわりに、臭化銀や、沃臭化銀、沃化銀のハロゲン化銀微粒子を添加してもよい。これらの微粒子の大きさは、通常0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.05μm以下であることが望ましい。本発明で使用できるハロゲン変換方法は、上記した方法に限定されるものではなく、目的に応じ適宜組み合わせて使用することができる。
【0025】
3)粒子サイズ
感光性ハロゲン化銀粒子の形成方法は当業界では良く知られており、例えば特開平2−68539号公報、米国特許第3700458号明細書、及びリサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号に記載されている方法等を用いることによって調製することができる。
【0026】
4)化学増感方法
化学増感方法としては、特開平2−68539号公報第10頁右上欄13行目から同左下欄16行目、特開平5−313282号公報、及び特開平6−110144号公報に記載の方法を用いることができる。
ハロゲン化銀乳剤の化学増感の方法としては、具体的には、ハロゲン化銀吸着性物質の存在下で硫黄増感法、セレン増感法、還元増感法、金増感法などの知られている方法を用いることができ、単独又は組合せて用いられる。
【0027】
貴金属増感法のうち金増感法はその代表的なもので金化合物、主として金錯塩を用いる。金以外の貴金属、たとえば白金、パラジウム、イリジウム等の錯塩を含有しても差支えない。その具体例は米国特許2448060号明細書、英国特許618061号明細書などに記載されている。
硫黄増感剤としては、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、たとえばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。具体例は米国特許1574944号明細書、同2278947号明細書、同2410689号明細書、同2728668号明細書、同5501313号明細書、同8656955号明細書に記載されたものである。また、セレン増感剤としては特開平6−110144号公報に記載されている。
チオ硫酸塩による硫黄増感と、セレン増感及び金増感の併用は有用である。還元増感剤としては第一すず塩、アミン類、ホルムアミンジスルフィド酸、シラン化合物などを用いることができる。
【0028】
5)カブリ防止剤・安定剤
本発明で用いることができるカブリ防止剤・安定剤としては、特開平2−68539号公報第10頁左下欄17行目から同第11頁左上欄7行目及び同第3頁左下欄2行目から同第4頁左下欄に記載のものを使用できる。
【0029】
具体的には、アゾール類(例えばベンゾチアゾリウム塩、エトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、クロモベンズイミダゾール類、ニトロインダゾール類、ベンゾトリアゾール類、アミノトリアゾール類など);メルカプト化合物類(例えばメルカプトテアゾール類、メルカプトベンジチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、メルカプトピリミジシ類、メルカプトトリアジン類など);例えばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類(例えばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類など);ベンゼンチオスルホン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸アミド等のようなカブリ防止剤又は安定剤として知られる化合物を加えることができる。
【0030】
特に特開昭60−76743号公報、同60−87322号公報に記載のニトロン及びその誘導体、特開昭60−80839号公報に記載のメルカプト化合物、特開昭57−164735号公報に記載のヘテロ環化合物、及びヘテロ環化合物と酸の錯塩(例えば1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール類)などを好ましく用いることができる。
【0031】
さらに、プリン類又は核酸類、あるいは特公昭61−36213号公報、特開昭59−90844号公報等に記載の高分子化合物などを使用することもできる。なかでも特にアザインデン類とプリン類、核酸類は好ましく用いることができる。これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モルあたり0.5〜5.0ミリモル、好ましくは0.5〜3.0ミリモルである。
【0032】
6)色調改良剤
本発明で使用できる色調改良剤としては、特開昭62−276539号公報第2頁左下欄7行目から同第10頁左下欄20行目、並びに特開平3−94249号公報第6頁左下欄15行目から第11頁右上欄19行目に記載のものが挙げられる。
具体的には、ハロゲン化銀写真乳剤層の被覆力が60以上とし、ハロゲン化銀写真乳剤層及び/又は他の層中に、520〜560nmの間に極大吸収波長を有する染料と570〜700nmの間に極大吸収波長を有する染料とを、現像処理後の末露光部透過濃度の含有染料による光学濃度の増加が0.03以下となるように含めることができる。
【0033】
ハロゲン化銀写真乳剤層の被覆力を60以上とする乳剤としては、代表的には平板状乳剤、微粒子乳剤などを挙げることができる。特には、ハロゲン化銀写真乳剤が0.4μm以下の粒子厚みをもつ平板状ハロゲン化銀粒子からなる場合、あるいは高ヨード表面感光性字乳剤と微粒子で内部がかぶった粒子からなる乳剤との混合乳剤を用いると色調改良の効果が大きい。
本発明で色調改良用に使用できる染料としては、520〜560nm、好ましくは530〜555nmの間に極大吸収波長を有する染料と570〜700nm、好ましくは580〜650nmの間に極大吸収波長を有する染料との併用である。極大吸収波長とは、染料を感光材料中に存在させた状態における極大吸収波長を意味する。
【0034】
本発明で用いられる染料としては、例えば、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、インドアニリン染料、オキソノール染料、カルボシアニン染料、スチリル染料、トリフェニルメタン染料などの中から所定の極大波長を有するものが選択される。現像処理に対する安定性や光堅牢性や、減感、カブリ、ステイン等の写真性能に対する影響を考慮すると、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、及びインドアニリン染料の中から好ましいものが用いられる。
好ましい化合物は、特開昭62−276539号公報第3頁左上欄5行目から同第9頁左上欄9行目に記載されている。
このような染料は、乳剤層その他の親水性コロイド層(中間層、保護層、アンチハレーション層、フィルター層など)中に種々の知られた方法で分散することができ、具体的には、特開昭62−276539号公報第9頁左上欄14行目から同第10頁左下欄20行目に記載されている。
【0035】
7)分光増感色素
本発明で用いることができる分光増感色素としては、特開平2−68539号公報第4頁右下欄4行目から同第8頁右下欄に記載されているものが挙げられる。
具体的には、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーランアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。
本発明に使用される有用な増感色素は例えば米国特許3522052号明細書、同3617197号明細書、同3713828号明細書、同3615643号明細書、同3615632号明細書、同3617293号明細書、同3628964号明細書、同3703377号明細書、同3666480号明細書、同3667960号明細書、同3679428号明細書、同3672897号明細書、同3769026号明細書、同3556800号明細書、同3615613号現細書、同3613638号明細書、同3615635号明細書、同3705809号明細書、同3632349号明細書、同3677765号明細書、同3770449号明細書、同3770440号明細書、同3769025号明細書、同3745014号明細書、同3713826号明細書、同8567458号明細書、同3625698号明細書、同2526632号明細書、同2503776号明細書、特開昭48−76525号公報、ベルギー特許第691807号明細書などに記載されている。増感色素の添加量はハロゲン化銀1モルあたり0.5mmol以上4mmol未満、好ましくは0.5mmol以上1.5mmol未満がよい。
増感色素の具体例としては、特開平2−68539号公報第5頁から同第8頁に記載されているII−1〜II−47が挙げられる。
【0036】
8)帯電防止剤
本発明では、塗布用助剤、帯電防止剤あるいは帯電調整剤として、特開平2−68539号公報第11頁左上欄14行目から同第12頁左上欄9行目に記載の界面活性剤を用いることができる。
このような目的に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えばサポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、シリコーンのポリエチレンオキサイド化合物類)、糖のアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン類、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、などのアニオン界面活性剤;アルキルベタイン類、アルキルスルホベタイン類などの両性界面活性剤;脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類、ビリジニウム塩類、イミダゾリウム塩類などのカチオン界面活性剤を用いることができる。
【0037】
この内、サポニン、ドデシルベンゼンスルホン酸Na塩、ジ−2−エチルへキシルα−スルホコハク酸Na塩、p−オクチルフェノキシエトキシエタンスルホン酸Na塩、ドデシル硫酸Na塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸Na塩、N−メチル−オレオイルタウリンNa塩などのアニオン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、N−オレオイル−N’,N’,N’−トリメチルアンモニオジアミノプロパンブロマイド、ドデシルピリジウムクロライドなどのカチオン、N−ドデシル−N,N−ジメナルカルボキシベタイン、N−オレイル−N,N−ジメチルスルホブチルベタインなどのベタイン、ポリ(平均重合度n−10)オキシエチレンセチルエーテル、ポリ(n=25)オキシエチレンp−ノニルフェノールエーテル、ビス(1−ポリ(n=15)オキシエチレン−オキシ−2,4−ジ−t−ベンチルフェニル)エタンなどのノニオンを特に好ましく用いることができる。
また、帯電防止剤としては、特開昭60−80848号公報、同61−112144号公報、特開昭62−172343号公報、特開昭62−173459号公報などに記載のノニオン系界面活性剤、アルカリ金属の硝酸塩、導電性酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化バナジウム又はこれらにアンチモン等をドープした複合酸化物を好ましく用いることができる。
【0038】
9)マット剤・滑り剤・可塑剤
本発明で用いることができるマット剤・滑り剤・可塑剤としては、特開平2−68539号公報第12頁左上欄10行目から同右上本欄10行目、及び同第14頁左下欄10行目から同右下欄1行目に記載のものが挙げられる。
具体的には、マット剤としては米国特許第2992101号明細書、同2701245号明細書、同4142894号明細書、同4396706号明細書に記載の如きポリメチルメタクリレートのホモポリマー又はメチルメタクリレートとメタクリル酸とのコポリマー、デンプンなどの有機化合物、シリカ、二酸化チタン、硫酸、ストロンチウムバリウム等の無機化合物の微粒子を用いることができる。粒子サイズとしては1.0〜10μm、特に2〜5μmであることが好ましい。
本発明の写真感光材料の表面層には、滑り剤として米国特許第3489576号明細書、同4047958号明細書等に記載のシリコーン化合物、特公昭56−23139号公報に記載のコロイダルシリカの他に、パラフィンワックス、高級脂肪酸エステル、デン粉誘導体等を用いることができる。
【0039】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の親水性コロイド層には、トリメチロールプロパン、ぺンタンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン等のポリオール類を可塑剤として用いることができる。また、本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層には圧力特性を改良するためポリマーや乳化物などの可塑剤を含有させることができる。
例えば、英国特許第738618号明細書には異節環状化合物を、同738637号明細書にはアルキルフタレートを、同738639号明細書にはアルキルエステルを、米国特許第2960404号明細書には多価アルコールを、同3121060号明細書にはカルボキシルアルキルセルロースを、特開昭49−5017号公報にはパラフィンとカルボン酸塩を、特公昭53−28086号公報にはアルキルアクリレートと有機酸を用いる方法等が開示されており、本発明でもこれらの方法を使用することができる。
【0040】
10)親水性コロイド
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層や中間層及び表面保護層に用いることのできる結合剤又は保護コロイドとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
本発明で用いることができる親水性コロイドとしては、特開平2−68539号公報第12頁右上欄11行目から同左下欄16行目に記載のものが挙げられる。
【0041】
例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、デキストラン、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール(ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンや酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
これらの中でもゼラチンとともに平均分子量10万以下のデキストランやポリアクリルアミドを併用することが好ましい。特開昭63−68887号公報、特開昭63−149641号公報に記載の方法は本発明でも有効である。
【0042】
11)硬膜剤
本発明で用いる写真乳剤及び非感光性の親水性コロイドには無機又は有機の硬膜剤を含有してよい。本発明で用いることができる硬膜剤は、特開平2−68539号公報第12頁左下欄17行目から同第13頁右上欄6行目に記載のものが挙げられる。
具体的には、例えばクロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、ダリタールアルデヒドなど)、N一メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルとダントインなど)、ジオキサン誘導体(2,3−ジヒドロキシジオキサンなど)、活性ビニル化合物(1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホニル)メチルエーテル、N,N’−メチレンビス−(β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド)など)、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンなど)、ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など)イソオキサゾール類、ジアルデヒドでん粉、2−クロル−6−ヒドロキシトリアジニル化ゼラチンなどを、単独又は組合せて用いることができる。中でも、特開昭53−41221号公報、同53−57257号公報、同59−162546号公報、同60−80846号公報に記載の活性ビニル化合物及び米国特許第3325287号明細書に記載の活性ハロゲン化物が好ましい。
【0043】
本発明では、硬膜剤として高分子硬膜剤も有効に利用することができる。本発明に用いられる高分子硬膜剤としては例えばジアルデヒド澱粉、ポリアクロレイン、米国特許3396029号明細書に記載のアクロレイン共重合体のようなアルデヒド基を有するポリマー、米国特許第3623878号明細書に記載のエポキシ基を有するポリマー、米国特許第3362827号明細書、リサーチ・ディスクロージャー誌17333(1978)などに記載されているジクロロトリアジン基を有するポリマー、特開昭56−66841号公報に記載されている活性エステル基を有するポリマー、特開昭56−142524号公報、米国特許第4161407号明細書、特開昭54−65033号公報、リサーチ・ディスクロージャー誌16725(1978)などに記載されている活性ビニル基、あるいはその前駆体となる基を有するポリマーなどが挙げられ、活性ビニル基、あるいはその前駆体となる基を有するポリマーが好ましく、中でも特開昭56−142524号公報に記載されているような、長いスペーサーによって活性ビニル基、あるいはその前駆体となる基がポリマー主鎖に結合されているようなポリマーが特に好ましい。
本発明のハロゲン化銀写真感光材料中の親水性コロイド層はこれらの硬膜剤により水中での膨潤率が300%以下、特に230%以下になるように硬膜されていることが好ましい。
【0044】
12)支持体
本発明で用いる支持体としては特開平2−68539号公報第13頁右上欄7行目から20行目に記載のものが挙げられる。具体的には、支持体としてはポリエチレンテレフタレートフィルム又は三酢酸セルロースフィルムが好ましい。
支持体は親水性コロイド層との密着力を向上せしめるために、その表面をコロナ放電処理、あるいはグロー放電処理あるいは紫外線照射処理する方法が好ましく、あるいは、スチレンブタジエン系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス等からなる下塗層を設けてもよくまた、その上層にゼラチン層を更に設けてもよい。
またポリエチレン膨潤剤とゼラチンを含む有機溶剤を用いた下塗層を設けてもよい。これらの下塗層は表面処理を加えることで更に親水性コロイド層との密着力を向上することもできる。
【0045】
13)クロスオーバーカット法
クロスオーバー光が鮮鋭度を大幅に低下させることは当業界では周知の事実である。写真感光材料のクロスオーバー光が12%以下であるようにする手段としては、米国特許4130429号明細書、特開昭61−116354号公報などにX線蛍光スクリーンの発光波長と一致する波長の光を増感色素や染料を用いて吸収する方法が開示されている。
【0046】
さらに、米国特許4800150号明細書には支持体と乳剤層の間に染料を微結晶分散物の形として存在させクロスオーバー光が10%以下であるようにする技術が開示されている。また、特開昭63−305345号公報には、カチオン性ポリマーラテックスを用いてアニオンは染料を特定層に固定する技術が、さらに特開平1−166031号公報には染料の固定層を支持体の下塗り層にする技術が開示されている。本発明の感光材料ではこれらのいずれの方法をも用いることができるが、染料による着色層は下塗り層であることが好ましく、染料は特開平1−166031号公報に記載の方法で固定されていること、特に染料が米国特許第4803150号明細書に記載の微結晶分散物のかたちで下塗り層に固定されていることが望ましい。本発明ではこれらの方法を適宜組み合わせることが可能である。
本発明で好ましく用いることができる染料としては、特開平2−264944号公報第4頁左下欄から第9頁右上欄に記載のものが挙げられる。
また、媒染層としては、特開平2−264944号公報第9頁右下欄から第14買右上欄に記載のものを使用することができる。
【0047】
14)ポリヒドロキシベンゼン類
本発明で使用できるポリヒドロキシベンゼン類としては、特開平3−39948号公報第11頁左上欄から同第12頁左下欄、EP特許第452772A号公報に記載のものが挙げられる。
具体的には、特開平8−39948号公報第11頁左上欄に記載の一般式(III)の化合物、その具体的化合物である同公報第11頁左下欄から第12頁左下欄に記載の(III)−1〜25の化合物が挙げられる。
これらポリヒドロキシベンゼン化合物の添加量としては、ハロゲン化銀1モルあたり5×10−1モル未満であればよく、好ましくはハロゲン化銀1モルあたりl×10−1から5×10−3モルの添加量である。
【0048】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に、感光性ハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤層(感光層)と、例えば、中間層、表面保護層、バック層、バック面保護層、アンチハレーション層、フィルター層等の少なくとも1層の非感光性の親水性コロイド層とから構成されるが、その他用いられる乳剤増感法や各種添加剤に関しては特に制限はなく、例えば特開平2−68539号公報等に記載のものを好適に用いることができる。
【0049】
15)表面保護層・バック保護層
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、表面保護層及びバック保護層を有しているのが好ましく、前記表面保護層及びバック保護層は、ゼラチンなどの親水性コロイドをバインダーとして、様々な薬品を含有している。その層の主成分がゼラチンである場合は防腐剤などが必要である。また、必要に応じてマット剤、滑り剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、硬膜剤、増粘剤、染料、導電性物質などを含有することが好ましい。
【0050】
16)現像処理方法
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理方法としては、特開平2−103037号公報第16頁右上欄7行目から同第19頁左下欄15行目、特開平2−115837号公報第3頁右下欄5行目から同第6頁を上欄10行目、及び特開2000−112078号公報第34頁左欄42行目から同35頁左欄2行目に記載の方法を採用することができる。また、熱現像感光材料においては特開平2001−255617号公報第37項左欄40行目から同35頁左欄43行目に記載の方法等を採用することができる。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作などは本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0052】
【実施例1】
<ハロゲン化銀写真感光材料>
1.下塗り支持体の作製
1)下塗層用染料分散物D−1の調製
下記染料を特開昭68−197943号公報に記載の方法でボールミル処理した。
【0053】
【化1】
【0054】
水434mL及びTritonX−200界面活性剤(TX−200)の6.7質量%水溶液791mLとを2リットルのボールミルに入れた。染料20gをこの溶液に添加した。酸化ジルコニウム(ZrO)のビーズ400mL(2mm径)を添加し、内容物を4日間粉砕した。この後、12.5質量%ゼラチン160gを添加した。脱泡したのち、濾過によりZrOビーズを除去した。得られた染料分散物を観察したところ、粉砕された染料の粒径は直径0.05〜1.15μmにかけての広い分布を有していて、平均粒径は0.37μmであった。さらに、遠心分離操作を行うことで0.9μm以上の大きさの染料粒子を除去した。こうして染料分散物D−1を得た。
【0055】
2)支持体の作製
二軸延伸された厚さ183μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、コロナ放電処理を行い、下記の組成の第1下塗液を塗布量が5.1mL/m2となるようにワイヤーバーローターにより塗布し、175℃にて1分間乾燥した。次に、反対面にも同様にして第1下塗層を設けた。使用したポリエチレンテレフタレートには下記構造の染料が0.04質量%含有されているものを用いた。
【0056】
【化2】
【0057】
−第1下塗液の組成−
支持体の片側1m2当たりの塗布液量を4.9mLとし、各添加素材の支持体の片側1m2当たりの塗布量は以下の通りである。
・ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス
(固形分として) 0.31g
*ラテックス溶液中には、
乳剤分散物として下記構造の界面活性剤がラテックス固形分に
対して0.4質量%含有されている。
・2,4−ジクロロ−6
−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム 8mg
【0058】
【化3】
【0059】
さらに、上記支持体における両面の第1下塗層上に下記組成からなる第2の下塗液を塗布量が下記に記載の量となるように片側ずつ、両面にワイヤー・バーコーター方式により150℃で塗布・乾燥して、第2下塗り層を形成した。
【0060】
−第2下塗り層の組成−(片側1m2当たりの塗布量)
・ゼラチン 81mg
・C12H25O(CH2CH2O)10H 3.8mg
・防腐剤D 0.28mg
・ポリメチルメタクリレートの
平均粒径2.5μmのマット剤 2.3mg
・エチルアクリレート/アクリル酸(=95/5)の
組成を有するポリマーラテックス 21mg
*ポリマー固形分に対してA−9を3質量%含有する。
・染料分散物D−1 8.2mg
・酢酸 0.6mg
【0061】
【化4】
【0062】
2.塗布液の調製
1)ハロゲン化銀乳剤T−1の調製
水1リットル中に臭化カリウム6g、ゼラチン7gを添加し55℃に保った容器中へ攪拌しながら硝酸銀水溶液37mL(硝酸銀4.00g)と臭化カリウム5.9gを含む水溶液38mLとをダブルジェット法により37秒間で添加した。次に、ゼラチン18.6gを添加した後、70℃に昇温して硝酸銀水溶液89mL(硝酸銀9.8g)を22分間かけて添加した。ここで25%のアンモニア水溶液7mLを添加し、そのままの温度で10分間物理熟成した後、100%酢酸溶液を6.5mL添加した。引き続いて硝酸銀153gの水溶液と臭化カリウムの水溶液をpAg8.5に保ちながらコントロールダブルジェット法で35分かけて添加した。次に硝酸銀水溶液を用いてpBr2.8に調整した後、2mol/Lのチオシアン酸カリウム溶液15mLを添加した。5分間そのままの温度で物理熟成したのち35℃に温度を下げた。平均投影面積直径1.10μm、厚み0.165μm、直径の変動係数18.5%の単分散純臭化銀平板状粒子を得た。
この後、沈降法により可溶性塩類を除去した。再び40℃に昇温してゼラチン30gごとフェノキシエタノール2.35g及び増粘剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.8gを添加し、水酸化ナトリウムと硝酸銀溶液でpH5.90、pAg8.25に調整した。この乳剤を攪拌しながら56℃に保った状態で化学増感を施した。但し、AgI微粒子を化学増感前と中にそれぞれ単分散純臭化銀平板状粒子1モルについて0.05モル%分添加した。先ず、二酸化チオ尿素0.043mgを添加し、22分間そのまま保持して還元増感を施した。次に、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン20mgと増感色素Aを400mgを添加した。さらに塩化カルシウム0.83gを添加した。引き続き、増感剤としてチオ硫酸ナトリウム1.5mg、セレン増感剤を2.2mg、塩化金酸2.6mg及びチオシアン酸カリウム90mgを添加し40分後に35℃に冷却した。こうして平板状のハロゲン化銀乳剤T−1を調製した。得られたハロゲン化銀乳剤T−1のハロゲン化銀粒子に含まれるヨード量の平均は、0.1モル%であった。
【0063】
【化5】
【0064】
2)ハロゲン化銀乳剤T−2の調製
AgI微粒子の添加量を、化学増感前と中にそれぞれ0.5モル%分添加に変更した以外は、上記のハロゲン化銀乳剤T一1と同様な方法でハロゲン化銀乳剤T−2を調製した。
ハロゲン化銀乳剤T−2のハロゲン化銀粒子に含まれるヨード量の平均は、1.0モル%であった。
【0065】
3)塗布試料の調製
【0066】
【0067】
【化6】
【0068】
【0069】
及び下記に記載の化合物を使用した。
【化7】
【0070】
【0071】
3.塗布
上記準備した下塗り支持体上に、上記乳剤層用塗布液T−1、T−2及び表面保護層用塗布液を同時押し出し法により両面に塗布し、乳剤層と表面保護層とを形成し、片面当りの塗布銀量は1.75g/m2とした。
また、本発明のフッ素化合物FS−1〜FS−5および比較化合物1、2をそれぞれ3.2mg/m2になるように塗布した試料をそれぞれ試料101〜105および比較試料1〜2とした(表1参照)。
【0072】
4.試料の評価
各試料の最外保護層の表面抵抗を測定した(25℃、25%RH調湿下)。結果を表1に示す。表面抵抗が小さいものほど帯電特性に優れる。
【0073】
【表1】
【0074】
比較化合物A(特開昭62−109044号公報記載化合物)
C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)16OH
比較化合物B(特開昭61−47948号公報記載化合物)
C11F23−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)15−OC3H7
【0075】
表1の結果より、ポリエチレンオキシド鎖長が長いほど表面抵抗低下能が高いことが分かる。本発明のフッ素化合物は短鎖フッ化アルキル基であるにも関わらず、従来のパーフルオロオクタンスルホン酸型の化合物と同様に表面抵抗低下能に優れていることが分かる。
【0076】
5.スタチックテスト
カセッテFuji EC CASSETTEN(富士写真フイルム(株)社製)の内側に、Hi−SCREEN B−2(富士写真フイルム(株)社製)を貼り付け、25℃25%の状況下で上記スクリーンを繊維で擦り、シシド静電気(株)社製 商品名 静電電位測定機M2で測定して、上記スクリーン表面の静電気の電圧が3〜4kvとなるように、富士写真フイルム(株)社製 Xレイ増感紙用 商品名 富士ASクリーナーの塗布と、アセトン及びクロロホルムによる脱膜により調節し、そのカセッテの中に比較例及び各試料をセットした。そして、25℃25%の暗室で30分放置し、カセッテから取り出し、自動現像機(富士写真フイルム(株)、商品名CEPROS−M2にて現像液CED−1(富士写真フイルム(株)社製)を用い34℃にて25秒全処理90秒現像した。定着液はCEF−1(富士写真フイルム(株)社製)を用い、水洗には水道水を用いた。
以上の過程を経て得られたサンプルのスタチックの発生状況から判断する。
評価:
1 : スタチックマークの発生が全く無い
2 : 僅かにスタチックマークの発生がある
3 : 中程度のスタチックマークの発生がある
4 : スタチックマークの発生が大きい
5 : 著しくスタチックマークの発生が大きい
【0077】
【表2】
【0078】
表2の結果より、本発明のフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材は非常に優れたスタチック耐性を示すことが実証された。
【0079】
【発明の効果】
本発明のフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料は、フッ化アルキル基が短い化合物でも十分に表面に配向し、表面抵抗を下げるため、スタチック耐性に優れることがわかる。さらに本発明のフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料は安定的な作製が可能であるとともに、帯電防止性の付与されたハロゲン化銀写真感光材料を提供することができる。
Claims (1)
- 下記一般式(1)で表されるフッ素化合物を含有するハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(1)
C4F9−CH2CH(OH)CH2−(OCH2CH2)m−OCnH2n+1
(式中、mは15〜40を表し、nは8〜24を表す。mおよびnはそれぞれ、単一であっても分布があってもよく、分布がある場合はその平均値を表す。)
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