JP7098817B2 - インクセット及び画像記録方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、ヘッドの吐出安定性に対する悪影響を抑制したインクジェット装置用洗浄液として、標準状態(25℃、1気圧)における水への溶解量が10wt%以下のポリオールを含むことを特徴とするインクジェット装置用洗浄液が開示されている。
また、特許文献3には、色剤濃度が高く、また顔料インクを使用するインクジェットプリンタに適用する場合でも優れた洗浄性を発揮し、かつ部材を侵すことなく既存のインクジェットプリンタで使用可能であり、消泡性、防腐防黴効果も優れる新規のインクジェット記録用メンテナンス液として、水と、可塑剤と、保湿剤とを含んでなることを特徴とする、インクジェット記録用メンテナンス液が開示されている。
また、特許文献4には、反応液によるノズル面の吐出不良を解消することが可能なインクジェットヘッドのメンテナンス方法として、インク組成物の成分を凝集または増粘させる凝集剤を含む反応液を吐出するインクジェットヘッドのノズル面に対して、メンテナンス液を付着させて上記ノズル面をクリーニングするメンテナンス工程、あるいは、メンテナンス液を供給したヘッド保湿キャップで上記ノズル面を覆い保湿するメンテナンス工程の少なくとも何れかを備え、上記メンテナンス液は、沸点が280℃以下の水溶性有機溶剤と、水と、を含む、インクジェットヘッドのメンテナンス方法が開示されている。
本発明者等の検討により、乾燥性に優れたインクジェットインクに対し、疎水的な性質を有する特定の有機溶剤を含有するメンテナンス液を用いることにより、ノズル面からのインクジェットインク及び/又はその乾燥物の除去性を向上させ得ることが判明した。
上記特許文献1~4では、乾燥性に優れたインクジェットインクを用いた場合のこれらの問題については、一切考慮されていない。
<1> 顔料、樹脂分散剤、及び水を含有し、沸点210℃超の有機溶剤の含有量が1質量%未満であるインクジェットインクと、
溶剤MA、溶剤MB、及び水を含有するメンテナンス液と、
を備え、
溶剤MAは、-OH、-OCH2CH2OH、-OCH2CHCH3OH、-OCH2CH2-、-OCH2CHCH3-、-COOH、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-O-、-NH2、-NH-、-CN、及び-NO2からなる群から選択される少なくとも1種である親水性部分と、親水性部分以外の部分である疎水性部分と、からなり、下記式(MA)で表されるMA値が5.8以下である有機溶剤であり、
溶剤MBは、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であり、
溶剤MAの含有量が、メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%であるインクセット。
MA値 = 7+4.02×log(分子量W/分子量O) … 式(MA)
式(MA)中、分子量Wは、上記親水性部分の分子量を表し、分子量Oは、上記疎水性部分の分子量を表す。
メンテナンス液の全量に対する溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合に、Y及びZの合計が、20以上80以下である<1>に記載のインクセット。
<3> メンテナンス液の全量に対する溶剤MAの含有量をY質量%とし、
メンテナンス液の全量に対する溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合に、Y及びZの合計に対するYの比が、0.05以上0.20以下である<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4> インクジェットインクが、更に、樹脂粒子を含有する<1>~<3>のいずれか1つに記載のインクセット。
<5> インクジェットインクの全固形分量に対する、樹脂粒子と樹脂分散剤との合計含有量をX質量%とした場合に、Xが、40以上85以下である<4>に記載のインクセット。
<6> インクジェットインクの全固形分量に対する、樹脂粒子と樹脂分散剤との合計含有量をX質量%とし、
メンテナンス液の全量に対する溶剤MAの含有量をY質量%とし、
メンテナンス液の全量に対する溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合に、
Y及びZの合計に対するXの比が、0.7以上3.5未満である<4>又は<5>のいずれか1つに記載のインクセット。
<8> MA値が5.8以下である有機溶剤が、モノアルコール化合物及びジアルコール化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<1>~<7>のいずれか1つに記載のインクセット。
<9> MA値が5.8以下である有機溶剤が、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、4-メチルベンジルアルコール、1,7-ヘプタンジオール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、ベンジルアルコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メトキシブタノール、及び1,5-ペンタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載のインクセット。
<10> 溶剤MAは、親水性部分と疎水性部分とからなりMA値が5.0以下である有機溶剤を含み、
MA値が5.0以下である有機溶剤の含有量が、メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である<1>~<9>のいずれか1つに記載のインクセット。
<11> 溶剤MAは、親水性部分と疎水性部分とからなりMA値が4.8以下である有機溶剤を含み、
MA値が4.8以下である有機溶剤の含有量が、メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である<1>~<10>のいずれか1つに記載のインクセット。
<12> 溶剤MAは、親水性部分と疎水性部分とからなりMA値が5.8以下であり沸点が100℃以上である有機溶剤を含み、
沸点が100℃以上である有機溶剤の含有量が、メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である<1>~<11>のいずれか1つに記載のインクセット。
インクジェットヘッドからインクジェットインクを吐出することにより、基材上にインクジェットインクを付与して画像を記録する工程と、
インクジェットヘッドにおけるインクジェットインクの吐出面に付着した、インクジェットインク及びインクジェットインクの乾燥物の少なくとも一方を、メンテナンス液を用いて除去する工程と、
を含む画像記録方法。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタクリルアミドの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
本開示のインクセットは、顔料、樹脂分散剤、及び水を含有し、沸点210℃超の有機溶剤の含有量が1質量%未満であるインクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう)と、水、溶剤MA、及び溶剤MBを含有するメンテナンス液と、を備える。
溶剤MAは、-OH、-OCH2CH2OH、-OCH2CHCH3OH、-OCH2CH2-、-OCH2CHCH3-、-COOH、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-O-、-NH2、-NH-、-CN、及び-NO2からなる群から選択される少なくとも1種である親水性部分と、親水性部分以外の部分である疎水性部分と、からなり、下記式(MA)で表されるMA値が5.8以下である有機溶剤である。
溶剤MBは、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である。
溶剤MAの含有量は、メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である。
式(MA)中、分子量Wは、上記親水性部分の分子量を表し、分子量Oは、上記疎水性部分の分子量を表す。
本開示のインクセットによって上述した効果が奏される理由は、以下のように推測される。
しかし、上記インクは、インクジェットヘッドのノズル面においても速やかに乾燥し、ノズル面にも、乾燥物(例えばインク膜)を速やかに形成する。このため、上記インクは、ノズル面からの除去性に関しては不利なインクである。
かかる除去性の効果には、本開示におけるメンテナンス液に含有される、上記MA値5.8以下の溶剤MAが寄与していると考えられる。ここで、溶剤MAのMA値が5.8以下であることは、概略的に言えば、溶剤MAが疎水的な有機溶剤であることを示している。上記メンテナンス液を用い、ノズル面からインク及び/又はその乾燥物を除去する際には、メンテナンス液に含有される疎水的な溶剤MAと、インク及び/又はその乾燥物中の樹脂分散剤と、が相互作用することにより、ノズル面からインク及び/又はその乾燥物の除去性が向上すると考えられる。上述した溶剤MAの効果は、溶剤MAの含有量がメンテナンス液の全量に対して0.5質量%以上であることによって発現されると考えられる。
この理由は、以下のように考えられる。
メンテナンス液に接触していない状態のインク中では、顔料と樹脂分散剤との相互作用により、顔料の分散安定性及びインクの吐出安定性が確保されていると考えられる。しかし、疎水的な溶剤MAを含有するメンテナンス液を用いてノズル面のインク及び/又はその乾燥物(例えばインク膜)を除去する場面では、ノズル面に付与されたメンテナンス液中において、メンテナンス液中の成分である溶剤MAと、インク及び/又はその乾燥物中の樹脂分散剤と、が相互作用することにより、顔料と樹脂分散剤との相互作用が弱められ、その結果、顔料同士が凝集した粗大な粒子が形成されやすいと考えられる。形成された粗大な粒子がノズル面に残存することにより、インクの吐出安定性の低下(例えば吐出不良)が引き起こされると考えられる。
かかる吐出安定性の効果には、
溶剤MAの含有量がメンテナンス液の全量に対して10質量%以下に制限されていることと、
メンテナンス液が、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である溶剤MBを含有することと、
が寄与していると考えられる。
溶剤MBは、概略的に言えば、親水的な有機溶剤である。
メンテナンス液がこの溶剤MBを含有すること、及び、溶剤MAの含有量がメンテナンス液の全量に対して10質量%以下に制限されていることにより、ノズル面に付与されたメンテナンス液中における顔料同士の凝集(即ち、粗大な粒子の形成)が抑制され、インクの吐出安定性の低下(例えば吐出不良)が抑制されると考えられる。
また、本開示のインクセットは、上記メンテナンス液を、1種のみ備えていてもよいし、2種以上備えていてもよい。
本開示のインクセットの好ましい態様の一つとして、2種以上のインクと、1種以上のメンテナンス液と、を備える態様が挙げられる。
かかる態様によれば、多色の画像を記録することができる。
以下、2種以上のインクとしては、
シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクからなる3種のインク;
シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクからなる4種のインク;
上記3種の着色インクと、ホワイトインク、グリーンインク、オレンジインク、バイオレットインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク及びライトイエローインクから選択される少なくとも1つと、からなる4種以上のインク;
上記4種の着色インクと、ホワイトインク、グリーンインク、オレンジインク、バイオレットインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク及びライトイエローインクから選択される少なくとも1つと、からなる5種以上のインク;
等が挙げられる。
但し、2種以上のインクは、これらの具体例には限定されない。
本開示のインクセットは、インク(即ち、インクジェットインク)を少なくとも1種備える。
本開示のインクセットにおけるインクは、顔料、樹脂分散剤、及び水を含有し、沸点210℃超の有機溶剤の含有量が1質量%未満である。
本開示におけるインクにおいて、沸点210℃超の有機溶剤の含有量は1質量%未満である。これにより、インクの乾燥性が高められる。
ここで、インクにおいて、沸点210℃超の有機溶剤の含有量が1質量%未満であるとは、インクが、沸点210℃超の有機溶剤を含有しないか、又は、含有する場合でも、沸点210℃超の有機溶剤の含有量が、インクの全量に対し、1質量%未満であることを意味する。
インクにおいて、沸点210℃超の有機溶剤の含有量は1質量%未満であることは、概略的に言えば、インクが、沸点210℃超の有機溶剤を実質的に含有しないことを示している。
インクは、水を含有する。
水の含有量は、インクの全量に対し、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。
水の含有量の上限は、他の成分の量にもよるが、インクの全量に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
インクは、沸点210℃以下の水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
これにより、インクの吐出性がより向上し得る。
インクは、顔料を少なくとも1種含有する。
顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料;酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料;等が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、上記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。上記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。具体的には特開2007-100071号公報記載の顔料等が挙げられる。
インクは、樹脂分散剤を少なくとも1種含有する。
樹脂分散剤としては、水不溶性樹脂が好ましい。
ここで、「水不溶性」とは、25℃の水に樹脂を混合したときに、水に溶解する樹脂の量が、混合した樹脂の全量に対する質量比で10質量%以下であることをいう。
本開示において、アクリル樹脂とは、アクリル酸、アクリル酸の誘導体(例えば、アクリル酸エステル等)、メタクリル酸、及びメタクリル酸の誘導体(例えば、メタクリル酸エステル等)からなる群から選択される少なくとも1種を含む原料モノマーの重合体(単独重合体又は共重合体)を意味する。
より好ましくは、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位と、を含むアクリル樹脂であり、
更に好ましくは、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位と、炭素数1~4のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、を含むアクリル樹脂である。
以下では、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を、ベンジル(メタ)アクリレート単位と称することがある(他の構造単位についても同様に称することがある)。
樹脂分散剤における、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び炭素数1~4のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレート単位の総含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは80質量%~98質量%であり、より好ましくは85質量%~97質量%であり、更に好ましくは90質量%~97質量%である。
樹脂分散剤における、(メタ)アクリル酸単位の含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは2質量%~20質量%であり、より好ましくは3質量%~15質量%であり、更に好ましくは3質量%~10質量%である。
・フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5[質量比])
・フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6[質量比])
・フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6[質量比])
・フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5[質量比])
・ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(60/30/10[質量比])
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
D/P比が0.06以上である場合には、インクの分散安定性及び画像の耐擦性がより向上する。
D/P比が3以下である場合には、インクの分散安定性がより向上する。
インクは、樹脂粒子を少なくとも1種含有することが好ましい。
即ち、インクは、樹脂分散剤とは別に、樹脂からなる粒子である樹脂粒子を含有することが好ましい。
これにより、記録される画像の強度が高められ、画像の耐擦性が向上する。
また、後述する前処理液を用いて画像を記録する場合には、基材上で、インク中の樹脂粒子と前処理液中の凝集剤とが接触した際に、インク中の樹脂粒子が凝集又は分散不安定化することによりインクが増粘する。これにより、画像の画質が向上し、また、画像記録の高速化が図られる。
しかし、本開示のインクセットを用いる場合には、溶剤MAを含有するメンテナンス液を用いてインクの除去を行うことにより、インクが樹脂粒子を含有する場合においても、ノズル面からのインクの除去性が確保される。
本開示において、ポリウレタン樹脂とは、主鎖にウレタン結合を含む高分子化合物を意味する。
インクに含有される樹脂粒子がアクリル樹脂粒子を含む場合、インクに含有される樹脂粒子に占めるアクリル樹脂粒子の比率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
インクに含有される樹脂粒子に占めるアクリル樹脂粒子の比率が60質量%以上である場合には、画像の密着性が更に向上する。
自己分散性樹脂粒子としては、例えば、特開2016-188345号公報の段落0062~0076、国際公開第2013/180074号の段落0109~0140等に記載の自己分散性ポリマー粒子が挙げられる。
より好ましくは、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位からなる群から選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸単位と、を含むアクリル樹脂であり、
更に好ましくは、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位からなる群から選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリル酸単位と、炭素数1~4のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレート単位と、を含むアクリル樹脂である。
イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、及び環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位の総含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは20質量%~80質量%であり、好ましくは30質量%~75質量%である。
樹脂粒子における樹脂において、ベンジル(メタ)アクリレート単位、フェノキシエチル(メタ)アクリレート単位、環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート単位、及び炭素数1~4のアルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレート単位の総含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは80質量%~98質量%であり、好ましくは85質量%~97質量%であり、更に好ましくは90質量%~95質量%である。
樹脂粒子における樹脂において、(メタ)アクリル酸単位の含有量は、樹脂分散剤の全量に対して、好ましくは2質量%~20質量%であり、好ましくは3質量%~15質量%であり、更に好ましくは5質量%~10質量%である。
なお、括弧内は、共重合成分の質量比を表す。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCの詳細については、既述した通りである。
測定装置としては、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)が挙げられる。
画像の耐擦性及び画像記録のレイテンシーをより向上させる観点から、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは80℃以上である。
樹脂粒子の製造適性の観点から、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは130℃以下である。
ガラス転移温度の具体的な測定は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行う。
本開示におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)である。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂粒子のガラス転移温度より約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し、示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本開示におけるガラス転移温度は、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
詳細には、下記数式1において、Siに、インクに含有されるi種目(iは1以上の整数を表す)の樹脂粒子のガラス転移温度を代入し、Wiに、インクに含有される樹脂粒子全体に占めるi種目の樹脂粒子の質量分率を代入することにより、下記数式1におけるXとして、インクに含有される個々の樹脂粒子のガラス転移温度の加重平均値を算出することができる。
Xが40以上である場合、画像の耐擦性がより向上する。
Xが85以下である場合、インクの除去性がより向上する。
インクは、上記成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、界面活性剤、コロイダルシリカ、尿素、尿素誘導体、ワックス、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
本開示のインクの粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上13mPa・s未満であることがより好ましく、2.5mPa・s以上10mPa・s未満であることが好ましい。
粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。
粘度計としては、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業(株)製)を用いることができる。
表面張力は、25℃の温度下で測定される値である。
表面張力の測定は、例えば、Automatic Surface Tentiometer CBVP-Z(共和界面科学(株)製)を用いて行うことができる。
インクの25℃におけるpHは、市販のpHメーターを用いて測定する。
本開示のインクセットは、後述の溶剤MA、後述の溶剤MB、及び水を含有し、溶剤MAの含有量が、メンテナンス液の全量に対して0.5質量%~10質量%であるメンテナンス液を少なくとも1種備える。
上記メンテナンス液を用い、ノズル面に付着したインク及び/又はその乾燥物の除去を行うことにより、除去性向上及び除去後吐出安定性向上の効果が得られる。
前述のとおり、除去性向上の効果には、疎水的な有機溶剤である溶剤MAが寄与していると考えられ、除去後吐出安定性向上の効果には、親水的な有機溶剤である溶剤MBが寄与していると考えられる。
メンテナンス液は、下記の溶剤MAを含有する。
溶剤MAは、-OH、-OCH2CH2OH、-OCH2CHCH3OH、-OCH2CH2-、-OCH2CHCH3-、-COOH、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-O-、-NH2、-NH-、-CN、及び-NO2からなる群から選択される少なくとも1種である親水性部分と、親水性部分以外の部分である疎水性部分と、からなり、下記式(MA)で表されるMA値が5.8以下である有機溶剤である。
メンテナンス液に含有される溶剤MA(即ち、MA値が5.8以下である有機溶剤)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
式(MA)中、分子量Wは、親水性部分の分子量を表し、分子量Oは、疎水性部分の分子量を表す。
MA値は、有機溶剤一分子を、親水性部分と疎水性部分とに区分けし、両者の比に基づいて、有機溶剤の疎水性の程度を数値化したものである。
MA値が小さい程、疎水性が強くなる(即ち、親水性が弱くなる)。
溶剤MAは、MA値が5.8以下であることから、ある程度疎水的な有機溶剤であるといえる。
-OHは、ヒドロキシエチルオキシ基、2-ヒドロキシプロピルオキシ基、及びカルボキシ基のいずれの構造中にも含まれていないヒドロキシ基を意味する。
-OCH2CH2OHは、ヒドロキシエチルオキシ基を意味する。
-OCH2CHCH3OHは、2-ヒドロキシプロピルオキシ基を意味する。
-OCH2CH2-は、炭素数2以上のヒドロキシアルキルオキシ基及び炭素数3以上のアルキレンオキシ基のいずれの構造中にも含まれていないエチレンオキシ基を意味する。
-OCH2CHCH3-は、炭素数3以上のヒドロキシアルキルオキシ基及び炭素数4以上のアルキレンオキシ基のいずれの構造中にも含まれていない1,2-プロピレンオキシ基を意味する。
-COOHは、カルボキシ基を意味する。
-OC(=O)-は、カルボキシ基、オキシカルボニルオキシ基、及び下記-NHC(=O)O-のいずれにも含まれていないカルボニルオキシ基を意味する。
-OC(=O)O-は、オキシカルボニルオキシ基を意味する。
-NHC(=O)O-は、ウレタン基を意味する。
-NHC(=O)NH-は、ウレア基を意味する。
-O-は、ヒドロキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、2-ヒドロキシプロピルオキシ基、エチレンオキシ基、1,2-プロピレンオキシ基、カルボキシ基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基、及びウレタン基のいずれの構造中にも含まれていないエーテル基を意味する。
-NH2は、アミノ基を意味する。
-NH-は、アミノ基、ウレタン基、及びウレア基のいずれの構造中にも含まれていないイミノ基を意味する。
-CNは、シアノ基を意味する。
-NO2は、ニトロ基を意味する。
溶剤MAにおけるMA値の下限としては、3.0、3.5、3.7等が挙げられる。
言うまでもないが、ここでいう溶剤MAの含有量は、メンテナンス液が溶剤MAを2種以上含有する場合には、2種以上の溶剤MAの総含有量を意味する。
溶剤MAの含有量が0.5質量%以上であることにより、インクの除去性が向上する。
溶剤MAの含有量が10質量%以下であることにより、インクの除去後吐出安定性が向上する。
MA値が5.8以下である有機溶剤の含有量は、メンテナンス液の全量に対し、好ましくは1質量%~8質量%であり、更に好ましくは2質量%~6質量%であり、更に好ましくは3質量%~6質量%である。
-OH、-OCH2CH2OH、-OCH2CHCH3OH、-OCH2CH2-、-OCH2CHCH3-、-COOH、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-O-、-NH2、-NH-、-CN、及び-NO2からなる群から選択される少なくとも1種である。
溶剤MAにおける親水性部分として、
好ましくは、-OH、-OCH2CH2OH、及び-OCH2CHCH3OHからなる群から選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは-OHである。
溶剤MAにおける疎水性部分として、
好ましくは、炭化水素基であり、
より好ましくは、アルキル基、アルキレン基、3価の鎖状炭化水素基、4価の鎖状炭化水素基、アリール基、アラルキル基、及びアルキルアリール基からなる群から選択される少なくとも1種である。
モノアルコール化合物の炭素数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4~10であり、更に好ましくは4~8である。
ジアルコール化合物の炭素数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4~10であり、更に好ましくは4~8である。
ここで、オクタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ペンタノール、及びブタノールの各々は、全ての異性体を含む概念である。例えば、オクタノールは、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、及び4-オクタノールを包含する概念である。
各化合物のMA値については後述する。
除去性をより向上させる観点から、MA値が5.8以下である有機溶剤の沸点は、70℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
MA値が5.8以下である有機溶剤の沸点の上限には特に制限はないが、上限として、例えば300℃が挙げられる。
溶剤MAが、MA値5.8以下、沸点100℃以上の有機溶剤を含む場合、MA値5.8以下、沸点100℃以上の有機溶剤の含有量は、メンテナンス液の全量に対し、好ましくは0.5質量%~10質量%であり、より好ましくは1質量%~8質量%であり、更に好ましくは2質量%~6質量%であり、更に好ましくは3質量%~6質量%である。
溶剤MAが、親水性部分及び疎水性部分からなりMA値が5.0以下である有機溶剤を含む場合、メンテナンス液は、MA値が5.0以下である有機溶剤と、MA値が5.0超5.8以下である有機溶剤と、を含有しても構わない。
溶剤MAが、MA値が5.0以下である有機溶剤を含む場合、MA値が5.0以下である有機溶剤の含有量は、メンテナンス液の全量に対し、好ましくは0.5質量%~10質量%であり、より好ましくは1質量%~8質量%であり、更に好ましくは2質量%~6質量%であり、更に好ましくは3質量%~6質量%である。
溶剤MAが、親水性部分及び疎水性部分からなりMA値が4.8以下である有機溶剤を含む場合、メンテナンス液は、MA値が4.8以下である有機溶剤と、MA値が4.8超5.8以下である有機溶剤と、を含有しても構わない。
溶剤MAが、MA値が4.8以下である有機溶剤を含む場合、MA値が4.8以下である有機溶剤の含有量は、メンテナンス液の全量に対し、好ましくは0.5質量%~10質量%であり、より好ましくは1質量%~8質量%であり、更に好ましくは2質量%~6質量%であり、更に好ましくは3質量%~6質量%である。
但し、溶剤MAは、以下の具体例には限定されない。
2-エチルヘキサノール(MA値3.7、沸点184℃)、
1-ヘプタノール(MA値3.9、沸点176℃)、
1-ヘキサノール(MA値4.2、沸点157℃)、
1-ペンタノール(MA値4.5、沸点138℃)、
2-メチル-2-ブタノール(MA値4.5、沸点102℃)、
2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(MA値4.9、沸点244℃)、
1,8-オクタンジオール(MA値4.9、沸点279℃)、
1-ブタノール(MA値4.9、沸点118℃)、
イソブチルアルコール(MA値4.9、沸点108℃)、
sec-ブチルアルコール(MA値4.9、沸点99.5℃)、
tert-ブチルアルコール(MA値4.9、沸点82℃)、
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(MA値4.9、沸点232℃)、
4-メチルベンジルアルコール(MA値3.8、沸点217℃)、
1,7-ヘプタンジオール(MA値5.2、沸点259℃)、
3-エチル-3-オキセタンメタノール(MA値5.4、沸点250℃(at 700mmHg)、
ベンジルアルコール(MA値4.1、沸点205℃)、
1,6-ヘキサンジオール(MA値5.4、沸点250℃)、
3-メトキシブタノール(MA値5.7、沸点158℃)、
1,5-ペンタンジオール(MA値5.7、沸点242℃)。
式(MA)からみて当然であるが、各異性体間で、MA値は変化しない。
例えば、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、及び4-オクタノールの間では、MA値は変化しない。
1,4-ブタンジオール(MA値6.1)、
エチレングリコールモノブチルエーテル(MA値6.3)、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(MA値8.1)、
等が挙げられる。
メンテナンス液は、溶剤MBを含有する。
溶剤MBは、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である。
溶剤Bは、親水的な有機溶剤である。
メンテナンス液は、溶剤MBを含有することにより、インクの除去後吐出安定性が向上する。
溶剤MBの含有量が15質量%以上である場合、インクの除去後吐出安定性がより向上する。
溶剤MBの含有量が80質量%以下である場合、インクの除去性がより向上する。
Y+Zが15以上である場合、インクの除去後吐出安定性がより向上する。
Y+Zが85以下である場合、インクの除去性がより向上する。
Y/(Y+Z)が0.02以上である場合には、インクの除去性がより向上する。
Y/(Y+Z)が0.25以下である場合には、インクの除去後吐出安定性がより向上する。
インクの全固形分量に対する、樹脂粒子と樹脂分散剤との合計含有量をX質量%とし、
メンテナンス液の全量に対する溶剤MAの含有量をY質量%とし、
メンテナンス液の全量に対する溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合、
Y及びZの合計に対するXの比(即ち、X/(Y+Z))は、好ましくは0.5以上4.0以下であり、より好ましくは0.6以上3.5以下であり、更に好ましくは0.7以上3.5未満である。
X/(Y+Z)が0.5以上である場合、耐擦性及び除去後吐出安定性がより向上する。
X/(Y+Z)が4.0以下である場合、除去後吐出安定性がより向上する。
メンテナンス液は、溶剤MA及び溶剤MB以外のその他の有機溶剤を少なくとも1種含有してもよい。
その他の有機溶剤については、公知の水溶性有機溶剤(例えば、国際公開第2013/180074号の段落0039~0054に記載の有機溶剤)の中から、溶剤MA及び溶剤MBに該当しないものを適宜選択して用いることができる。
メンテナンス液は、水を含有する。
水の含有量は、メンテナンス液の全量に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。
水の含有量の上限は、他の成分の量にもよるが、メンテナンス液の全量に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
メンテナンス液は、界面活性剤を少なくとも1種含有する。
界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
下記一般式(1)で表される化合物は、インクの乾燥物(例えばインク膜)に浸透して乾燥物の溶解性を促進する。これにより、インクの除去性がより向上する。
メンテナンス液は、界面活性剤として下記一般式(1)で表される化合物を含有する場合、含有される一般式(1)で表される化合物は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
一般式(1)で表される化合物の好ましい例として、R1がデシル基であり、mが6~7の整数である化合物があげられる。
HLB=20×(ポリエチレンオキシド基の式量)/(分子量)
メンテナンス液は、塩基性化合物の少なくとも1種を含有してもよい。
塩基性化合物を含有することで、メンテナンス液が保管等で経時した場合に、含有成分の分解等でpH低下するのを防ぐための緩衝作用を持たせることができる。
塩基性化合物としては、水に5mmol/L以上の溶解度を有する化合物が好ましい。
・カコジル酸(pKa:6.2)
・2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノール(pKa:6.5)
・ピペラジン-N,N’-ビス-(2-エタン硫酸)(pKa:6.8)
・リン酸(pKa2:6.86)
・イミダゾール(pKa:7.0)
・N’-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’,2-エタン硫酸(pKa:7.6)
・N-メチルモルホリン(pKa:7.8)
・トリエタノールアミン(pKa:7.8)
・ヒドラジン(pKa:8.11)
・トリスヒドロキシメチルアミノメタン(pKa:8.3)
メンテナンス液は、消泡剤を少なくとも1種含んでもよい。
消泡剤としては、例えばシリコーン系化合物、プルロニック系化合物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン系消泡剤を含むことがより好ましい。シリコーン系消泡剤としては、ポリシロキサン構造を有しているものが好ましく、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK-024が特に好ましい。
メンテナンス液は、上記の成分に加え、必要に応じて、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤(ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等)、粘度調整剤、特開2011-63777号公報に記載のシリコーン系化合物等のその他の添加剤を含むことができる。
また、メンテナンス液は、既述の一般式(I)で表される化合物以外の界面活性剤を更に含んでもよい。
粘度は、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃で測定される値である。
ここで、メンテナンス液が顔料を実質的に含まないとは、メンテナンス液が顔料を含有しないか、又は、メンテナンス液が顔料を含有する場合には、顔料の含有量がメンテナンス液の全量に対し、1質量%未満であることを指す。
本開示のインクセットのインクセットは、更に、前処理液を少なくとも1種備えていてもよい。
前処理液は、インクを用いた画像記録の前に、基材上の画像が記録される側の面を前処理するための液体である。
凝集剤としては、多価金属化合物、有機酸、金属錯体、及び水溶性カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
凝集剤は、有機酸を含むことが好ましい。
多価金属化合物としては、周期表の第2族のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3族の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13族からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。
これらの金属の塩としては、後述する有機酸の塩、硝酸塩、塩化物、又はチオシアン酸塩が好適である。
中でも、好ましくは、有機酸(ギ酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、又は、チオシアン酸のカルシウム塩若しくはマグネシウム塩である。
多価金属化合物は、前処理液中において、少なくとも一部が多価金属イオンと対イオンとに解離していることが好ましい。
有機酸としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシ基等を挙げることができる。
上記酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
なお、上記酸性基は、前処理液中において、少なくとも一部が解離していることが好ましい。
多価カルボン酸としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、4-メチルフタル酸、又はクエン酸が好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタル酸、又はクエン酸がより好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク中の顔料、ポリマー粒子などの粒子の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
金属錯体としては、金属元素として、ジルコニウム、アルミニウム、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体が好ましい。
金属錯体としては、配位子として、アセテート、アセチルアセトネート、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、オクチレングリコレート、ブトキシアセチルアセトネート、ラクテート、ラクテートアンモニウム塩、及びトリエタノールアミネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属錯体が好ましい。
水溶性カチオン性ポリマーとしては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体、ポリ-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、等が挙げられる。
水溶性カチオン性ポリマーについては、特開2011-042150号公報(特に、段落0156)、特開2007-98610号公報(特に、段落0096~0108)等の公知文献の記載を適宜参照できる。
水溶性カチオン性ポリマーの市販品としては、シャロール(登録商標)DC-303P、シャロールDC-902P(以上、第一工業製薬(株)製)、カチオマスター(登録商標)PD-7、カチオマスターPD-30(以上、四日市合成(株)製)、ユニセンスFPA100L(センカ(株)製)が挙げられる。
インクの凝集速度の観点から、前処理液の全量に対する凝集剤の含有量は、0.1質量%~40質量%であることが好ましく、0.1質量%~30質量%であることがより好ましく、1質量%~20質量%であることが更に好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
前処理液は、水を含有することが好ましい。
水の含有量は、前処理液の全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
水の含有量の上限は、他の成分の量にもよるが、前処理液の全量に対し、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
前処理液は樹脂粒子を含んでもよい。前処理液が樹脂粒子を含むことにより、基材に対する画像の密着性がより向上する。
樹脂粒子のガラス転移温度の測定方法は前述したとおりである。
脂環式構造としては、炭素数5~10の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン環構造、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、又は、アダマンタン環構造が好ましい。
芳香環式構造としては、ナフタレン環又はベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
脂環式構造又は芳香環式構造の量としては、例えば、特定樹脂100gあたり0.01mol~1.5molであることが好ましく、0.1mol~1molであることがより好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基であってもカチオン性基であってもよいが、導入の容易性の観点から、アニオン性基が好ましい。
アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、又は、スルホ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
イオン性基の量としては、特に限定されず、特定樹脂を含む粒子が水分散性の樹脂粒子となる量であれば好ましく使用可能であるが、例えば特定樹脂を含む粒子に含まれる樹脂100gあたり0.001mol~1.0molであることが好ましく、0.01mol~0.5molであることがより好ましい。
本開示において、水分散性とは、20℃の水に撹拌後、20℃で60分間放置しても沈殿が確認されないことをいう。
樹脂粒子の水分散液の市販品としては、ペスレジンA124GP、ペスレジンA645GH、ペスレジンA615GE、ペスレジンA520(以上、高松油脂(株)製)、Eastek1100、Eastek1200(以上、Eastman Chemical社製)、プラスコートRZ570、プラスコートZ687、プラスコートZ565、プラスコートRZ570、プラスコートZ690(以上、互応化学工業(株)製)、バイロナールMD1200(東洋紡(株)製)、EM57DOC(ダイセルファインケム社製)等が挙げられる。
前処理液の全量に対する樹脂粒子の含有量は、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、1質量%~15質量%であることが特に好ましい。
前処理液は、水溶性溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
水溶性溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等)、ポリアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)などの多価アルコール;
ポリアルキレングリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル等)などの多価アルコールエーテル;
特開2011-42150号公報の段落0116に記載の、糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1~4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2-ピロリドン、及びN-メチル-2-ピロリドン;
等が挙げられる。
中でも、成分の転写の抑制の観点から、多価アルコール、又は、多価アルコールエーテルが好ましく、アルカンジオール、ポリアルキレングリコール、又は、ポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
前処理液は、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤又は消泡剤として用いることができる。表面張力調整剤又は消泡剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
前処理液は、必要に応じ、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
前処理液に含有され得るその他の成分としては、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤、水溶性カチオン性ポリマー以外の水溶性高分子化合物(例えば、特開2013-001854号公報の段落0026~0080に記載された水溶性高分子化合物)、等の公知の添加剤が挙げられる。
インクの凝集速度の観点から、前処理液の25℃におけるpHは0.1~3.5であることが好ましい。
前処理液のpHが0.1以上であると、基材のザラツキがより低減され、画像部の密着性がより向上する。
前処理液のpHが3.5以下であると、凝集速度がより向上し、基材の表面上におけるインクによるドット(インクドット)の合一がより抑制され、画像のザラツキがより低減される。
前処理液の25℃におけるpHは、0.2~2.0がより好ましい。ここでいう前処理液の25℃におけるpHの測定条件は、前述したインクの25℃におけるpHの測定条件と同様である。
ここでいう前処理液の粘度の測定条件は、前述したインクの粘度の測定条件と同様である。
ここでいう前処理液の表面張力の測定条件は、前述したインクの表面張力の測定条件と同様である。
本開示の画像記録方法は、本開示のインクセットが用いられ、
インクジェットヘッドのノズル面から、本開示のインクセットにおけるインクを吐出することにより、基材上に上記インクを付与して画像を記録する工程(以下、「画像記録工程」ともいう)と、
インクジェットヘッドに付着した、上記インク及び上記インクの乾燥物の少なくとも一方を、本開示のインクセットにおけるメンテナンス液を用いて除去する工程(以下、「除去工程」ともいう)と、
を含む。
本開示の画像記録方法は、必要に応じ、その他の工程を含んでもよい。
従って、本開示の画像記録方法は、乾燥性に優れるインクを用いるにもかかわらず、インクの除去性に優れ、しかも、インクの除去後吐出安定性にも優れる。
本開示の画像記録方法における基材としては特に限定されず、公知の基材を使用することができる。
基材としては、例えば、紙基材、樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙基材、樹脂基材、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙基材、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された樹脂基材、等が挙げられる。
非浸透性基材とは、ASTM試験法のASTM D570で吸水率(質量%、24hr.)が0.2未満である基材を指す。
樹脂基材としては、特に制限はなく、例えば熱可塑性樹脂の基材が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、熱可塑性樹脂を、シート状又はフィルム状に成形した基材が挙げられる。
樹脂基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、又はポリイミドを含む基材が好ましい。
ここで、透明とは、波長400nm~700nmの可視光の透過率が、80%以上(好ましくは90%以上)であることを意味する。
樹脂基材の厚さとしては、10μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
画像記録工程は、インクをインクジェットヘッドから吐出することにより、基材上に上記インクを付与して画像を記録する工程である。
インクジェットヘッドからのインクの吐出方式としては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等を適用できる。
また、インクジェットヘッドからのインクの吐出方式として、例えば、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させる方式も適用できる。
また、インクジェットヘッドからのインクの吐出方式として、特開2003-306623号公報の段落番号0093~0105に記載の方式も適用できる。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面に画像記録を行なうことができる。ライン方式では、シャトル方式における、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、ライン方式では、シャトル方式と比較して、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動する。このため、ライン方式によれば、シャトル方式と比較して、画像記録の高速化が実現される。
また、画像のムラ、連続階調のつながりを改良する観点から、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効である。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
インクの加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
基材のインクが付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
基材のインクが付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
基材のインクが付与された面又はインクが付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
インクの加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒~60秒が好ましく、5秒~60秒がより好ましく、10秒~45秒が特に好ましい。
加熱温度としては、適宜設定すればよいが、基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
インク除去工程は、インクジェットヘッドにおけるインクの吐出面(即ち、インクジェットヘッドのノズル面)に付着したインクを除去する工程である。
インク除去工程において、インクジェットヘッドのノズル面からインクを除去する方法としては、液体を用いて除去する方法、布、紙、ワイパーブレード等によって除去する方法、これらを組み合わせた方法、等が挙げられる。
ノズル面からインクを除去するための液体としては、水を含有する液体が挙げられ、より具体的には、水、水溶性有機溶剤、水と水溶性有機溶剤とを含む混合液、等が挙げられる。
水と水溶性有機溶剤とを含む混合液としては、水と水溶性有機溶剤と界面活性剤とを含むインクジェットヘッド用メンテナンス液(例えば、特許第5819206号公報に記載のインクジェット記録用メンテナンス液)が挙げられる。
ノズル面への液体の付与量は、例えば1g/m2~100g/m2である。
また、ノズル面への液体の付与の方法としては、例えば特開2011-73295号及び特開2011-73339号等の公報に記載の水頭差を利用した方法を適用してもよい。
ワイパーブレードを用いてノズル面を擦って(ワイピングして)インクを掻き落とす方法;
風圧又は液圧等によってインクを取り除く方法;
布又は紙によってインクを払拭する方法;
等が挙げられる。これらの方法は、ノズル面に液体を付与して行ってもよい。
中でも、布又は紙によってインクを払拭する方法が好ましい。
布又は紙によってインクを払拭する方法としては、例えば、特開2010-241127号公報により、払拭部材の交換頻度を低減し装置をコンパクトにする方法を適用してもよい。
具体的な材質としては、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。ワイパーブレードの撥インク性の観点から、フッ素樹脂等によりコーティングを施したワイパーブレードを用いてもよい。
本開示の画像記録方法は、上述した画像記録工程の前に、基材上に、インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する前処理液を付与する工程(以下、「前処理液付与工程」ともいう)を含んでいてもよい。
この場合、画像記録工程では、基材の前処理液が付与された面の少なくとも一部の上に、インクを付与して画像を記録する。
いずれの場合においても、前処理液の好ましい態様は、前述のインクセットの項に示したとおりである。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、上述した画像記録工程に適用され得るインクジェット法と同様である。
加熱温度としては、基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
前処理液の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
前処理液の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
基材の前処理液が付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
基材の前処理液が付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
基材の前処理液が付与された面又は前処理液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、100℃が好ましく、90℃がより好ましく、70℃が更に好ましい。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.5秒~60秒が好ましく、0.5秒~20秒がより好ましく、0.5秒~10秒が特に好ましい。
メンテナンス液、インク、及び前処理液をそれぞれ調製し、メンテナンス液、インク、及び前処理液を含むインクセットを準備した。
以下、詳細を示す。
下記組成中の各成分を混合し、下記組成を有するメンテナンス液を調製した。
・1-ヘキサノール(以下、「1-HexOH」ともいう)(溶剤MA)… 3質量%
・ジエチレングリコール(以下、「DEG」ともいう)(溶剤MB)… 40質量%
・イミダゾール(pKa=7.0、塩基性化合物)… 0.5質量%
・スノーテックスXS(日産化学(株)製、コロイダルシリカ)… 0.2質量%
・PEG(6)モノデシルエーテル(構造を以下に示す)… 3.0質量%
・イオン交換水… 全体で100質量%とした場合の残量
(樹脂分散剤D-1の合成)
以下に示すようにして樹脂分散剤D-1を合成した。
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここに、メチルエチルケトン50gにジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応させた後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’-
アゾビスイソブチレート0.42gを溶解させた溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液を大過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥した。このようにして、ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=60/30/10[質量比])である樹脂分散剤D-1を96g得た。
得られた共重合体の組成は、1H-NMRで確認し、GPCによりポリスチレン換算で求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
C.I.ピグメントレッド122(大日精化工業(株)製)(4部)と、上記のようにして得た樹脂分散剤D-1(3部)と、メチルエチルケトン(42部)と、1NのNaOH水溶液(5.5部)と、イオン交換水(87.2部)とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて、2500rpmで6時間分散した。得られた分散液をメチルエチルケトンが充分に留去できるまで、55℃で減圧濃縮し、更に一部の水を除去した後、高速遠心冷却機7550(久保田製作所社製)を用いて、8000rpmで30分間遠心処理(50mL遠心菅を使用)を行ない、沈殿物を除去し、上澄み液を回収した。
以上により、顔料分散液Mを得た。
顔料分散液Mの吸光度スペクトルを測定し、そこから顔料濃度を求めたところ、10.2質量%であった。また、顔料分散液M中に分散されている顔料粒子の平均粒径は、130nmであった。
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。次いで反応容器内の還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流状態を保った)、反応容器内のメチルエチルケトンに対し、メチルメタクリレート220.4g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V-601」(富士フイルム和光純薬(株)製の重合開始剤;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間撹拌した後に、この1時間撹拌後の溶液に対し、下記工程(1)の操作を行った。
工程(1) … 「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間撹拌を行った。
反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷することにより、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=38/52/10[質量比])共重合体を含む重合溶液(固形分濃度41.0%)を得た。
上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が63000であり、酸価が65.1(mgKOH/g)であった。
次に、70℃に昇温された溶液に対し、蒸留水380gを10ml/分の速度で滴下し、水分散化を行った(分散工程)。
その後、減圧下、反応容器内の液体の温度を70℃で1.5時間保つことにより、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)。得られた液体に対し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)を0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン-3-オンとして440ppm)添加した。
得られた液体を、1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収することにより、固形分濃度26.5質量%の樹脂粒子P1の水分散液を得た。
樹脂粒子P1のガラス転移温度Tg(℃)は120℃であり、体積平均粒径は10nmであった。
下記組成中の、マゼンタ顔料、樹脂分散剤D-1及び樹脂粒子P1以外の成分と、顔料分散液Mと、樹脂粒子P1の水性分散物と、を用い、下記組成を有するインク(詳細には、マゼンタインク)を調製した。
・C.I.ピグメントレッド122(マゼンタ顔料)… 3.6質量%
・樹脂分散剤D-1… 2.5質量%
・樹脂粒子P1… 5質量%
・プロピレングリコール(PG;沸点188℃)(富士フイルム和光純薬(株)製)… 20質量%
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM:沸点121℃)(富士フイルム和光純薬(株)製)… 5質量%
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製、界面活性剤)… 1質量%
・スノーテックスXS(日産化学(株)製、コロイダルシリカ)… 0.3質量%(固形分量として0.06質量%)
・イオン交換水… 全体で100質量%とした場合の残量
下記組成の前処理液を調製した。
・凝集剤(富士フイルム和光純薬(株)製のグルタル酸;有機酸)… 4質量%
・樹脂粒子(高松油脂(株)製の「ペスレジンA615GE」(アクリル樹脂とポリエステル樹脂とを含む複合粒子)… 樹脂粒子の固形分量として8質量%
・1,2-プロパンジオール(富士フイルム和光純薬(株)製)(水溶性溶剤)… 10質量%
・消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA-739(15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)… 消泡剤の固形分量として0.01質量%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製)(界面活性剤)… 0.1質量%
・水… 全体で100質量%となる残量
上述した、メンテナンス液、インク、及び前処理液からなるインクセットを用い、以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
以下のようにして、除去性(即ち、インクジェットヘッドのノズル面からのインクの除去性)を評価した。
まず、インクジェットヘッドのノズル面を模したシリコンプレートとして、シリコンウエハー(アズワン社製のシリコンウエハー「4-P-1」)を5cm角にカットしたシリコンプレートを準備した。
次に、このシリコンプレート上に、上記インクを10μL滴下し、インクが滴下されたシリコンプレートを、恒温チャンバー内において温度40℃の条件で1時間保管し、保管後、恒温チャンバーから取り出した。
次に、上記メンテナンス液1mLをしみ込ませたコットン織布(テックスワイプ社製のテックスワイプTX304)を用い、4Nの荷重を加えた状態で、シリコンプレート上のインクを拭き取る操作(以下、「拭き取り操作」とする)を繰り返し施した。
拭き取り操作を繰り返し施す間に、シリコンプレート上のインクの除去状態を目視で観察し、下記評価基準に従い、除去性を評価した。
下記評価基準において、除去性に最も優れるランクは「5」である。
5: 拭き取り操作3回以内に、プレート上のインクが全て除去された。
4: 拭き取り操作4回以上6回以内に、プレート上のインクが全て除去された。
3: 拭き取り操作7回以上9回以内に、プレート上のインクが全て除去された。
2: 拭き取り操作10回以上12回以内に、プレート上のインクが全て除去された。
1: 拭き取り操作13回以上でも、プレート上のインクの一部が残存していた。
(画像記録)
上述した、インクセットのうち、インク及び前処理液を用いて画像記録を行った。
長尺状の基材を連続搬送するための搬送系と、基材に前処理液を塗布するためのワイヤーバーコーターと、基材上の前処理液が付与された面にインクを付与するためのインクジェットヘッドと、を備えたインクジェット記録装置を準備した。
また、基材としては、非浸透性基材である、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(フタムラ化学社製「FE2001」(厚さ25μm、幅500mm、長さ2000m);以下、「非浸透性基材A」とする)を準備した。
非浸透性基材A上に上記前処理液を、ワイヤーバーコーターによって約1.7g/m2となるように塗布し、次いで50℃で2秒間乾燥させた。
次に、非浸透性基材Aの前処理液が塗布された面に、上記インクを以下の付与条件にてベタ画像状に付与し、付与されたインクを、80℃で30秒間乾燥させることにより、マゼンタ色のベタ画像を記録した。
前処理液の乾燥方法及びインクの乾燥方法は、いずれも温風乾燥とした。
インクジェットヘッド:1200dpi/20inch幅ピエゾフルラインヘッド(ここで、dpiは、dot per inchの略であり、1 inchは2.54cmである)
インクジェットヘッドからのインク吐出量:4.0pL
駆動周波数:30kHz(基材の搬送速度:635mm/秒)
非浸透性基材Aに記録された上記ベタ画像の上に、王子製紙(株)製の一般紙「OKトップコートマットN」(坪量127.9g/m2)を重ね、200gの加重をかけて10往復擦過した。
1往復終了ごとにベタ画像を目視で観察し、下記の評価基準に基づいて画像の耐擦性を評価した。
下記評価基準において、画像の耐擦性に最も優れるランクは「5」である。
5: 10回往復の擦過後において、画像に全く傷が発生しない。
4: 10回往復の擦過後において画像の若干の傷が確認されるが、画像全体の外観には影響しない程度である。
3: 8往復以上10往復以下の擦過により、画像全体の外観に影響する程度の傷が発生する。
2: 5往復以上7往復以下の擦過により、画像全体の外観に影響する程度の傷が発生する。
1: 1往復以上4往復以下の擦過により、画像全体の外観に影響する程度の傷が発生する。
上記画像の耐擦性の評価に用いた画像記録装置を用い、以下の評価(i)~(iii)を実施し、これらの評価の合否に基づき、除去後吐出安定性(即ち、ノズル面からインクを除去した後の吐出安定性)を評価した。
全ノズル数及びワイピング後の吐出ノズル数に基づき、下記式により、ワイピング後(即ち、インク除去後)のインク吐出率を求めた。
ワイピング後のインク吐出率(%)=(ワイピング後の吐出ノズル数)/(全ノズル数)×100
ワイピング後のインク吐出率が90%以上の場合を合格とした。
全ノズル数及びワイピング後の吐出ノズル数に基づき、上述した式により、ワイピング後のインク吐出率を求めた。
ワイピング後のインク吐出率が90%以上の場合を合格とした。
全ノズル数及びワイピング後の吐出ノズル数に基づき、上述した式により、ワイピング後のインク吐出率を求めた。
ワイピング後のインク吐出率が90%以上の場合を合格とした。
下記評価基準において、除去後吐出安定性に最も優れるランクは「5」である。
5:評価(i)~(iii)の3つとも合格であり、且つ、3つとも、インク吐出率95%以上である。
4:評価(i)~(iii)の3つとも合格である(但し、評点「5」に該当する場合を除く)。
3:評価(i)~(iii)の2つが合格である。
2:評価(i)~(iii)の1つのみが合格である。
1:評価(i)~(iii)の3つとも不合格である。
上記画像の耐擦性の評価に用いた画像記録装置を用い、インクをドット画像状に付与したこと以外は、耐擦性の評価におけるマゼンタベタ画像と同様にして、ドット画像を形成した。得られたドット画像の形状及び大きさを確認し、初期のドットの形状及び大きさとした。
その後、画像記録装置内の環境を、温度25℃、湿度30%に保ち、30分間画像記録を停止した。
停止後、再度画像記録を開始し、基材の搬送方向に10ピクセル置きにドット画像を記録し、何発目のドットで、初期のドットの形状及び大きさに戻るかを確認し、下記評価基準に従い、レイテンシーを評価した。ここで、1ピクセルは、21.2μmである。
下記評価基準において、レイテンシーに最も優れるランクは「5」である。
5:1発目のドットから、初期のドットの形状及び大きさと差がない。
4:2~4発目のドットで、初期のドットの形状及び大きさに戻る。
3:5~10発目のドットで、初期のドットの形状及び大きさに戻る。
2:11~30発目のドットで、初期のドットの形状及び大きさに戻る。
1:31発目のドットでも、初期のドットの形状及び大きさに戻らない。
メンテナンス液及びインク中の各成分の組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
・インク中の各成分の量は、インクの全量に対するその成分の含有量(質量%)を意味し、メンテナンス液中の各成分の量は、メンテナンス液の全量に対するその成分の含有量(質量%)を意味する。
・インク中の「その他の固形分」とは、マゼンタ顔料、界面活性剤、及びコロイダルシリカ(固形分)を意味する。その他の固形分の量を変更した実施例では、マゼンタ顔料、界面活性剤、及びコロイダルシリカ(固形分)の質量比を変えずに、これら全体の量(即ち、その他の固形分の量)を変化させた。
・インク中の「PG+PM」は、プロピレングリコール(PG;沸点188℃)(15質量%)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM:沸点121℃)(5質量%)の組み合わせを意味し、「PG+OM」は、プロピレングリコール(PG;沸点188℃)(15質量%)及びプロピレングリコールモノエチルエーテル(OM;沸点133℃)(5質量%)の組み合わせを意味する。
・樹脂分散剤D-2は、樹脂分散剤D-1の合成に対し、ベンジルアクリレートを同質量のフェノキシエチルアクリレートに変更した例である。
攪拌機及び冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(62質量%水溶液、東京化成工業社製)3.0g及び水376gを加え、窒素雰囲気下で90℃に加熱した。加熱された三口フラスコ中の混合溶液に、水20gに2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの50質量%水溶液(Aldrich社製)11.0gを溶解した溶液Aと、メタクリル酸nブチル(富士フイルム和光純薬工業社製)7.5g、メタクリル酸2-エチルヘキシル(富士フイルム和光純薬工業社製)27.5g、及びスチレン(富士フイルム和光純薬工業社製)9.5gを混合した溶液Bと、水40gに過硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬工業社製)6.0gを溶解した溶液Cと、を3時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応させることにより、樹脂粒子P2の粒子の水分散液(樹脂粒子P2の固形分量:10.1質量%)500gを合成した。
水分散液中の樹脂粒子P2の粒子の体積平均粒子径は45nmであり、ガラス転移温度は20℃であった。また、樹脂粒子P2の重量平均分子量は、32000であった。
1-HexOH: 1-ヘキサノール(沸点157℃)
1-PenOH: 1-ペンタノール(沸点138℃)
1-BuOH: 1-ブタノール(沸点118℃)
2Ethyl-1,3HexandiOH: 2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点244℃)
1,7-HepdiOH: 1,7-ヘプタンジオール(沸点259℃)
BzOH: ベンジルアルコール(沸点205℃)
BuOMe: メチルブチルエーテル(沸点70℃)
1,4-BudiOH: 1,4-ブタンジオール(沸点230℃)
S-BuOH: sec-ブチルアルコール(沸点99.5℃)
DEG: ジエチレングリコール(沸点245℃)
DPG: ジプロピレングリコール(沸点232℃)
DEGmBE: ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)
PG: プロピレングリコール(沸点188℃)
PM: プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)
OM: プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点133℃)
メンテナンス液が、溶剤MAの代わりに、MA値が5.8超である比較溶剤(1,4-BudiOH)を含有する比較例2では、インクの除去性が低下した。
溶剤MAの含有量が、メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%未満である比較例3では、インクの除去性が低下した。
メンテナンス液が溶剤MBを含有しない比較例4では、除去後吐出安定性が低下した。
溶剤MAの含有量が、メンテナンス液の全量に対し、10質量%超である比較例5では、除去後吐出安定性が低下した。
実施例1及び7の結果から、Xが80未満である場合(実施例1)、インクの除去性がより向上することがわかる。
実施例12及び13の結果から、Y/(Y+Z)が0.20以下である場合(実施例12)、除去後吐出安定性がより向上することがわかる。
実施例12及び13の結果から、X/(Y+Z)が3.5未満である場合(実施例12)、除去後吐出安定性がより向上することがわかる。
Claims (12)
- 顔料、樹脂分散剤、及び水を含有し、沸点210℃超の有機溶剤の含有量が1質量%未満であるインクジェットインクと、
溶剤MA、溶剤MB、及び水を含有するメンテナンス液と、
を備え、
前記溶剤MAは、-OH、-OCH2CH2OH、-OCH2CHCH3OH、-OCH2CH2-、-OCH2CHCH3-、-COOH、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-O-、-NH2、-NH-、-CN、及び-NO2からなる群から選択される少なくとも1種である親水性部分と、前記親水性部分以外の部分である疎水性部分と、からなり、下記式(MA)で表されるMA値が5.8以下である有機溶剤であり、
前記溶剤MBは、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記溶剤MAの含有量が、前記メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%であり、
前記溶剤MAは、前記親水性部分と前記疎水性部分とからなり前記MA値が5.0以下である有機溶剤を含み、
前記MA値が5.0以下である有機溶剤の含有量が、前記メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である、
インクセット。
MA値 = 7+4.02×log(分子量W/分子量O) … 式(MA)
式(MA)中、分子量Wは、前記親水性部分の分子量を表し、分子量Oは、前記疎水性部分の分子量を表す。 - 前記メンテナンス液の全量に対する前記溶剤MAの含有量をY質量%とし、
前記メンテナンス液の全量に対する前記溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合に、前記Y及び前記Zの合計が、20以上80以下である請求項1に記載のインクセット。 - 前記メンテナンス液の全量に対する前記溶剤MAの含有量をY質量%とし、
前記メンテナンス液の全量に対する前記溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合に、前記Y及び前記Zの合計に対する前記Yの比が、0.05以上0.20以下である請求項1又は請求項2に記載のインクセット。 - 前記インクジェットインクが、更に、樹脂粒子を含有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記インクジェットインクの全固形分量に対する、前記樹脂粒子と前記樹脂分散剤との合計含有量をX質量%とした場合に、前記Xが、40以上85以下である請求項4に記載のインクセット。
- 前記インクジェットインクの全固形分量に対する、前記樹脂粒子と前記樹脂分散剤との合計含有量をX質量%とし、
前記メンテナンス液の全量に対する前記溶剤MAの含有量をY質量%とし、
前記メンテナンス液の全量に対する前記溶剤MBの含有量をZ質量%とした場合に、
前記Y及び前記Zの合計に対する前記Xの比が、0.7以上3.5未満である請求項4又は請求項5に記載のインクセット。 - 前記疎水性部分が、炭化水素基である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記MA値が5.8以下である有機溶剤が、モノアルコール化合物及びジアルコール化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記MA値が5.8以下である有機溶剤が、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ペンタノール、ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、4-メチルベンジルアルコール、1,7-ヘプタンジオール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、ベンジルアルコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メトキシブタノール、及び1,5-ペンタンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記溶剤MAは、前記親水性部分と前記疎水性部分とからなり前記MA値が4.8以下である有機溶剤を含み、
前記MA値が4.8以下である有機溶剤の含有量が、前記メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のインクセット。 - 前記溶剤MAは、前記親水性部分と前記疎水性部分とからなり前記MA値が5.8以下であり沸点が100℃以上である有機溶剤を含み、
前記沸点が100℃以上である有機溶剤の含有量が、前記メンテナンス液の全量に対し、0.5質量%~10質量%である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のインクセット。 - 請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のインクセットが用いられ、
インクジェットヘッドから前記インクジェットインクを吐出することにより、基材上に前記インクジェットインクを付与して画像を記録する工程と、
前記インクジェットヘッドにおける前記インクジェットインクの吐出面に付着した、前記インクジェットインク及び前記インクジェットインクの乾燥物の少なくとも一方を、前記メンテナンス液を用いて除去する工程と、
を含む画像記録方法。
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