以下、本発明に係る加熱調理器を、誘導加熱する加熱口を左右手前に二口設けるとともにラジエントヒーターを用いた加熱口を中央奥側に一口設けた、ビルトイン型(組込み型)IHクッキングヒーターに適用した場合を例に説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。これらの方向を示す用語は、特に明示しない限り、加熱調理器を前面側からみた場合の方向を意味している。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器1の全体斜視図である。
図1において加熱調理器1の筐体2の上側には、筐体上枠3が着脱自在に配置されている。筐体上枠3の背面側には吸排気口カバー5、中央にはトッププレート4、前面側には操作部6が配置されている。また、筐体2の内部には、調理室30が設けられている。
吸排気口カバー5は、通気性を有するパンチングメタルや格子状の金属部材で構成されていて通気性があり、冷却風の吸気及び排気、調理室30からの排気の気流が通気抵抗少なくスムースに通過する。
操作部6は、加熱調理器1における加熱動作の設定を受け付けるための操作ボタンやスイッチ等で構成されている。本実施の形態1では、筐体2の前面にも操作部6が設けられている。操作部6の具体的構成を限定するものではなく、例えばタッチパネルにより構成された操作部6を設けてもよい。
トッププレート4には、鍋等の被加熱物(図示せず)が載置される載置部8が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート4の前面側右、背面側中央、及び前面側左、の3箇所に載置部8が設けられている。
また、トッププレート4には、液晶画面やLED等の視覚的な表示手段を備えた表示部9が設けられている。表示部9は、加熱調理器1の動作状態や操作部6からの入力、操作内容等を表示するとともに、ユーザーに対して加熱調理器1の状態等を報知する報知手段として機能する。なお、本実施の形態1及び後述の実施の形態2、3では、報知手段として表示部9を設けた例を示すが、表示部9に代えてあるいはこれに加えて、音声で報知を行うブザーやスピーカ等の報知手段を備えてもよい。
筐体2の前面の左側には、調理室扉7が設けられている。この調理室扉7は、筐体2内に設けられた調理室30内の前面開口部を開閉自在に覆う扉であり、調理室30内で調理される被加熱物を調理室30内に出し入れできるように、奥行き方向にスライド可能である。また、調理室扉7は、調理室30内や調理室扉7自身の清掃等のメンテナンスを容易にするため、調理室30に対して着脱可能に構成されている。
なお、本実施の形態1の調理室30、操作部6、及び表示部9の配置は一例であり、これに限るものではない。例えば、調理室30を筐体2の中央や右側に寄せて配置してもよい。また、操作部6を、トッププレート4と筐体2の前面の両方に設けるのではなく、いずれかにのみ設けてもよい。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器1のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態を示す斜視図である。
筐体上枠3の背面側の左側には筐体排気口20、右側には筐体吸気口21が形成されている。筐体排気口20には、筐体2内を冷却した冷却風の排気風路である冷却風排気ダクト22が接続されており、冷却風排気ダクト22を流れる冷却風は筐体排気口20を介して排気される。また、この冷却風排気ダクト22内には、調理室30からの排気を導く調理室排気ダクト26が配置されており、調理室30からの排気も筐体排気口20から排出される。筐体吸気口21は、筐体2内を冷却する冷却風を筐体2内に導入するための開口部である。なお、通常の使用状態においては、筐体排気口20及び筐体吸気口21は、図1で示した吸排気口カバー5で覆われている。
筐体2の内部には、トッププレート4の載置部8に対応して、トッププレート4に載置される被加熱物を加熱する加熱手段が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート4の前面側の左と右にそれぞれ誘導加熱コイルユニット11が設けられ、背面側中央にラジエントヒーター10が設けられている。なお、トッププレート4上の被加熱物を加熱するための加熱装置はこれらに限定されず、すべての加熱装置を誘導加熱コイルユニットで構成してもよいし、ラジエントヒーター等の電気ヒーターで構成してもよい。
なお、本実施の形態1では、トッププレート4上においても加熱調理を行う加熱調理器1を例に示しているが、トッププレート4上において加熱調理を行うための加熱手段は必要に応じて搭載すればよく、調理室30における加熱調理のみを行う加熱調理器1としてもよい。
誘導加熱コイルユニット11及びラジエントヒーター10の下方の左側には、板金等により構成され内部に収納空間を有する調理室収納部12が設けられている。この調理室収納部12の内部には、調理室30が配置されている。調理室収納部12と調理室30との間には、通風可能な隙間15(図14参照)が設けられており、この隙間15に形成される空気層により断熱が行われる。
調理室収納部12の右側には、内部に収容空間を有するコントロールユニット16が配置されている。コントロールユニット16には、冷却ファン25(図4参照)と、誘導加熱コイルユニット11に高周波電力を供給するインバータ回路や各種制御回路等の電子部品が実装された電子回路基板14(図4参照)等が収容されている。
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器1の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、誘導加熱コイルユニット11、及びラジエントヒーター10を取り外した状態の斜視図である。また、図4は、実施の形態1に係るコントロールユニット16の斜視図である。
図4に示すように、コントロールユニット16内には、電子回路基板14と冷却ファン25が収容されている。電子回路基板14には、誘導加熱コイルユニット11に高周波電力を供給するインバータ回路及び冷却ファン25を駆動制御する制御回路をはじめ、加熱調理器1の動作を制御するマイコンや制御回路等の電子部品が実装されている。本実施の形態1では、加熱調理器1の動作を制御する機能部品の集合体を、制御手段と称する。
コントロールユニット16の外殻において、冷却ファン25の吸引側にはユニット吸気口18が開口し、冷却ファン25の送出側には、複数のユニット排気口17が開口している。なお、コントロールユニット16の上面に設けられたものをユニット排気口171、側面に設けられたものをユニット排気口172と区別して称する場合がある。ユニット吸気口18は、筐体吸気口21の下方に配置され、筐体吸気口21と連通する。コントロールユニット16の内部は、ユニット吸気口18からユニット排気口17に至る一体的な風路として機能する。冷却ファン25は、吸い込んだ空気をユニット排気口17から送出可能な送風機であれば、任意の構成のものを採用することができ、また、その配置についても図示のものに限定されない。
図3に示すように、調理室収納部12の上側には、コントロールユニット16のユニット排気口17から吹き出される冷却風を導くための導風部材24が設けられている。導風部材24は、ユニット排気口17から吹き出される冷却風を、誘導加熱コイルユニット11に実装される加熱コイルやフェライト等に導くように通風路を備えている。導風部材24の上面は、誘導加熱コイルユニット11の下面に向けて開口しており、この開口から、ユニット排気口17より送られる冷却風が吹き出る。
図5は、実施の形態1に係るコントロールユニット16の側面断面図である。図5では、冷却風の流れを矢印で概念的に示している。この図5、及び前述の図3を参照して、コントロールユニット16内の冷却風の流れを説明する。
冷却ファン25が動作することによって筐体吸気口21から吸い込まれた外部の空気は、筐体吸気口21に接続されるユニット吸気口18からコントロールユニット16内に流入する。コントロールユニット16内に流入した空気は、冷却ファン25により吸引・送出され、冷却風として電子回路基板14に実装されたインバータ回路や放熱フィン等を冷却した後、複数のユニット排気口17から吹き出される。
コントロールユニット16の上面に設けられたユニット排気口171から送出された冷却風の多くは、コントロールユニット16の上方に配置された右側の誘導加熱コイルユニット11を冷却した後、調理室収納部12の上面に配置された導風部材24に導かれて左側の誘導加熱コイルユニット11を冷却する。誘導加熱コイルユニット11を冷却した後の冷却風は、調理室収納部12の上面に設けられた冷却風排気風路流入口23から冷却風排気ダクト22内に入り、筐体排気口20を経て加熱調理器1外へ排気される。
コントロールユニット16の側面のユニット排気口172から送出された冷却風は、調理室収納部12に設けられた収納部通風口13から調理室収納部12内に流入する。この冷却風の流れについては後述する。
図6は、実施の形態1に係る加熱調理器1の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、誘導加熱コイルユニット11、ラジエントヒーター10、コントロールユニット16、及び導風部材24を取り外した状態の背面側斜視図である。
調理室収納部12の側面には、収納部通風口13が開口している。この収納部通風口13は、コントロールユニット16の側面に設けられたユニット排気口172(図4参照)に通風可能に接続される。コントロールユニット16の側面に設けられたユニット排気口172から吹き出された冷却風は、収納部通風口13から調理室収納部12内に入り、調理室収納部12と調理室30との間に設けられた隙間15(図14参照)を流れる。
図7は、実施の形態1に係る調理室30全体を示す前面側斜視図である。
調理室30は、前面を開口した略直方体の外形を有し、この前面開口部は調理室扉7により開閉自在に覆われる。調理室30の外殻のうち、天井壁を構成する部分を上壁33と称する。調理室30の背面側には、加熱室50が設けられている。この加熱室50の背面側には、加熱室50内と連通する調理室排気ダクト26が接続されている。
調理室排気ダクト26は、加熱室50内の空気を排出するための風路を内部に有している。本実施の形態1の調理室排気ダクト26は、加熱室50と接続された部分から後方に向かって略水平に延び、この略水平に延びた部分の後端から上方に向かって略垂直に延びる形状である。なお、調理室排気ダクト26のうち、略水平に延びる部分を水平部261、略垂直に延びる部分を垂直部262と区別して称する場合がある。
調理室30には、調理室扉7の開閉を規制する図示しないロック機構が設けられている。このロック機構は、調理室30における加熱調理動作中、及び加熱調理終了後の所定条件下(例えば調理室30内の温度が高温の場合、後述するターボファン52の慣性による回転動作中等)では、ユーザーが開けることができないように調理室扉7をロックする。
また、加熱調理器1は、調理室扉7のスライドによる開閉を検知する手段(図示せず)を備えている。調理室扉7の開閉を検知する手段は、例えば、調理室扉7に内蔵された磁石と、加熱調理器1内に設けられた磁気検知手段とによって構成される。この構成の場合、調理室扉7がスライドして閉じられたときに、磁気検知手段が調理室扉7の磁気を検知して、調理室扉7が閉まっていることを検出することができる。なお、調理室扉7の開閉を検知する手段の具体的構成を限定するものではなく、光、超音波、電波等の反射や遮断を検知する非接触の検知手段や、メカニカルスイッチ等接触式・機械式の検知手段を用いてもよい。
制御手段は、調理室扉7が開いていることが検知されている状態では、操作部6による操作を受けた場合でも、調理室30内における調理動作を行わない。その場合、表示部9にて、調理室扉7が開いているため加熱調理を行わないこと、及び調理室扉7を閉めるように促す情報を表示する。また、調理室30内での加熱調理動作中に、例えばロック機構の損傷等によって誤って調理室扉7が開いてしまった場合には、制御手段は、調理室30内の加熱に関する動作を停止させ、調理室30の前面開口からの放射や熱風の漏れを抑制する。
図8は、実施の形態1に係る調理室30全体を示す背面側斜視図である。
調理室30の後壁34の背面側には、加熱室50が設けられている。加熱室50の背面には、電動機51が配置されている。この電動機51は、DCモーターや誘導モーターであり、その回転軸には、加熱室50内に設けられたターボファン52(図11参照)が取り付けられている。調理室30における加熱調理動作中は、コントロールユニット16内の制御手段により、電動機51の回転の有無や回転数等が制御される。なお、電動機51は、その仕様や動作環境、回転軸の軸受け寿命等のとの兼ね合い等に基づいて必要に応じて冷却される。例えば、電動機51の回転軸に、冷却用のファンを設けてもよい。
加熱室50の上方側面からは、加熱室50の内部に設けられた第二加熱手段53の端子部が露出している。第二加熱手段53の端子部は、コントロールユニット16内の電子回路基板14に配線接続され、第二加熱手段53の加熱の有無や加熱量は、制御手段によって制御される。
調理室30の後壁34の背面下部には、左右一対のスライドレールカバー353が取り付けられている。スライドレールカバー353は、調理室30の後壁34から突出するスライドレールユニット35(後述する)の端部を覆う部材である。加熱室50は、左右幅方向において、一対のスライドレールユニット35の間に配置されている。
図9は、実施の形態1に係る調理室30の上壁33と調理室扉7とを取り外した状態の斜視図である。
調理室30の上方には、調理室30内を上方から加熱する第一加熱手段40が配置されている。本実施の形態1では、第一加熱手段40として、抵抗発熱体であるシーズヒーターを用いている。この第一加熱手段40は、幅方向及び奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、調理室30内の幅方向及び奥行き方向にわたる広範囲を加熱可能である。第一加熱手段40の端子部は、調理室30の後壁34に設けられた開口部から外側へ突出している。第一加熱手段40の端子部は、コントロールユニット16内の電子回路基板14に配線接続され、制御手段により第一加熱手段40の加熱の有無や加熱量が制御される。
調理室30の両側面内側には、左右一対のスライドレールユニット35が配置されている。スライドレールユニット35は、調理室30の左右内面に奥行き方向に固定されたレール部351(図13参照)と、このレール部351に摺動可能に支持されるスライド部352とで構成される。調理室30の下方には、被加熱物を載置するための調理台41と、調理台41の下側に設けられ調理台41上の被加熱物から滴下する油や汁を受ける受皿42とが設けられている。
調理室30の背面を構成する後壁34には、第一吸込口32と、この第一吸込口32よりも低い位置に設けられた複数の吹出口31とが開口している。調理室30は、第一吸込口32及び吹出口31を介して加熱室50と連通している。詳細は後述するが、大まかには、調理室30内の空気が、第一吸込口32から加熱室50内へと吸引され、加熱室50内で加熱され、そして吹出口31から調理室30内へと吹き出される。
調理室30の内部には、調理室30内の温度を検出する調理室温度検知手段38が設けられている。調理室温度検知手段38としては、例えば白金測温抵抗体・サーミスタ・熱電対等が用いられる。なお、調理室温度検知手段38を必要に応じて複数設けてもよく、また、その配置も壁面に限らず、必要に応じて天面や底面、受皿42や調理台41に設けてもよい。また、被加熱物から放射される赤外線量を検知して被加熱物の表面温度を検知する非接触式の温度センサを、調理室温度検知手段38として設けてもよい。調理室温度検知手段38の出力は、コントロールユニット16内の電子回路基板14に実装される制御手段に伝達される。制御手段は、操作部6にて設定された調理メニューや加熱条件、制御シーケンス、及び調理室温度検知手段38により検知される被加熱物の温度に基づいて、第一加熱手段40、第二加熱手段53、及び電動機51等の出力や動作を制御する。
なお、本実施の形態1では、第一加熱手段40としてシーズヒーターを設ける例を示したが、第一加熱手段40として遠赤外線ヒーターや近赤外性ヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。また、調理室30内に第一加熱手段40を設けるのではなく、調理室30の上壁33の上側に第一加熱手段40としてフラットヒーターや誘導加熱コイルを設け、これらにより調理室30の上壁33を加熱してもよい。調理室30内の被加熱物を放射や空気による熱伝達で上方から加熱できる手段であれば、第一加熱手段40として任意の構成を採用することができる。
図10は、実施の形態1に係る調理室30の調理室排気ダクト26、加熱室50に付帯する部品、及びスライドレールカバー353を取り外した状態を背面下方側からみた斜視図である。なお、図10では、加熱室50内を透視した状態を示している。
調理室30の後壁34の背面(調理室30の外面)において、吹出口31の縁には、加熱室50の内方に向かって起立する立ち上がり部54が設けられている。立ち上がり部54は、吹出口31の周囲を略筒状に囲んでおり、その内部には吹出口31に至る風路が形成されている。立ち上がり部54は、例えばバーリング加工などのプレス加工により容易に形成可能である。
また、調理室30の後壁34の背面(調理室30の外面)において、吹出口31の上方には、庇部55が設けられている。庇部55は、調理室30の幅方向に延びる平板形状を有する。庇部55は、後壁34に対して略垂直に取り付けられていて加熱室50の内方に向かって突出し、複数の吹出口31の上方を庇状に覆う被覆部材である。調理室30を構成する壁は、高温(例えば250℃以上)に耐えうるように耐熱性のある金属・セラミックス等で形成され、庇部55も金属・セラミックス等で形成される。本実施の形態1では、庇部55は、後壁34に垂直な断面でみて略L字状の部材の略水平部分によって構成されている(図14参照)。庇部55を、角部を有する略L字状の断面形状の部材で構成することで、熱応力により庇部55に生じうる歪・変形を軽減している。また、庇部55を構成する素材として、調理室30壁面を構成する素材と線膨張係数が同一または近似する素材を用いることで、接合に伴う熱応力による歪を軽減している。調理室30の後壁34と庇部55との接合には、スポット溶接等の溶接やカシメ等、高温に耐える接合手段が用いられる。
また、調理室30の後壁34に設けられた開口部からは、スライドレールユニット35の背面端が突出している。
加熱室50は、調理室30の後壁34の背面側において、吹出口31及び第一吸込口32を内包する。したがって、加熱室50は、吹出口31及び第一吸込口32を介して、調理室30内と連通することとなる。
図11は、実施の形態1に係る加熱室50及び付帯部品を前面下方側からみた斜視図である。
加熱室50の内部にはターボファン52が配置されている。このターボファン52は、遠心ファンの一例であり、加熱室50の背面に配置された電動機51の回転軸と固定され、電動機51の動作により回転する。ターボファン52が回転すると、その中央部から空気が吸引され、吸引された空気は羽根の外周部より送出される。電動機51とターボファン52は、第一吸込口32から吸い込んだ調理室30内の空気を吹出口31へ送る送風手段として機能する。
加熱室50の後壁には、調理室排気ダクト26が接続される加熱室排気口57が開口している。調理室排気ダクト26内において、加熱室排気口57との接続側端部には、触媒体58が取り付けられている。触媒体58は、通風可能な小孔を有しており、加熱室50から調理室排気ダクト26を経て加熱調理器1外へ排気される空気に含まれる汚染物質の一部を吸着して酸化分解して排気の清浄度を高める機能を発揮する。
ターボファン52の概周囲には、第二加熱手段53が配置されている。第二加熱手段53は、本実施の形態1では、ターボファン52の概ね外周を矩形状に囲むシーズヒーターで構成されている。また、第二加熱手段53の一部は、加熱室排気口57に対向するように配置されている。より詳しくは、加熱室排気口57に接続された調理室排気ダクト26内の触媒体58と、第二加熱手段53の一部とは、高さ方向及び左右幅方向において、少なくとも一部が重なるように配置されている。このようにすることで、調理室排気ダクト26に取り付けられた触媒体58に第二加熱手段53からの放射熱が直接的に届きやすく、触媒体58が効率よく加熱される。なお、本実施の形態1では、第二加熱手段53としてシーズヒーターを用いる例を示すが、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。
触媒体58には、Pd(パラジウム)、Pt(プラチナ)、Mn(マンガン)のいずれかを含む酸化触媒が添着されており、通常は排気される高温空気の排熱により加熱されて触媒活性を得て、排気が通過するときに油煙や臭気成分等の物質を吸着して酸化分解を行って空気を浄化する。本実施の形態1では、第二加熱手段53によって排気される空気の温度が上昇するとともに、第二加熱手段53からの放射による加熱で触媒体58の温度をより高めることができるので、触媒体58での汚染物の分解に係る化学反応速度が速まり、より多くの汚染物質が除去され、排気の清浄度を高めることができる。
ターボファン52から送出された空気の一部は、加熱室排気口57から調理室排気ダクト26へ流入し、調理室排気ダクト26の垂直部262の上端開口より排気される。排気される風量は、触媒体58の圧力損失を含め調理室排気ダクト26の流路断面積を適宜設定することによって調整される。調理室30内での良好な調理効果・仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下することがないような適切な排気風量となるように、調理室排気ダクト26の流路断面積を設定する。
第二加熱手段53の端子部は、加熱室50の上方側面より外側に突出して配置されている。第二加熱手段53の端子部は、コントロールユニット16内の制御基板に配線接続されており、第二加熱手段53は制御手段によって加熱の有無や加熱量が制御される。
また、加熱室50には、加熱室温度検知手段56が設けられている。加熱室温度検知手段56としては、例えば、熱電対やサーミスタ等の耐熱性の温度検知素子を用いることができる。加熱室温度検知手段56により加熱室50内の温度検知が行われ、加熱室温度検知手段56からの出力は制御手段に伝達される。加熱室温度検知手段56が検知した温度は、調理室30における加熱制御に用いられる。例えば電動機51の故障等により送風が停止した場合には、加熱室50内が高温化しうるが、加熱室温度検知手段56により加熱室50内の高温化を検知すると、制御手段は、第一加熱手段40や第二加熱手段53への通電を停止し、安全性を高めている。
図12は、実施の形態1に係る調理室扉7と付帯部品を調理室30から引き出して取り外した状態の背面側斜視図である。
調理台41において被加熱物が載置される面である載置面411は、例えば左右方向に延びる棒状のステンレス鋼を複数並べて構成された、いわゆるストレートタイプの焼網で構成されている。調理台41の素材は、耐熱性のある素材で調理に適した毒性のない素材であればステンレス鋼以外でもよく、また、素材の表面に非粘着性や防汚性を備えた無機セラミックコーティング剤等を塗布してもよい。また、調理台41は、受皿42上に起立する脚部412を有する。脚部412は、載置面411と受皿42との間に所定高さの通風空間が形成されるように、所定の高さを有する。なお、調理台41の載置面411の形状は図示のものに限定されず、格子状の焼網や、前後方向に延びる棒状部材を備えた焼網、パンチングメタル等、任意のものを採用することができる。なお、調理台41の下側を流れる吹出口31からの噴流が被加熱物の下面と接触することができるようにするため、載置面411は、平板形状ではなく、空気の流通が可能な穴(開口)が形成されているのが好ましい。
受皿42は、調理台41の下方に載置され、被加熱物から滴下する水分や油分等を受ける。受皿42の外周部には所定高さの周壁が設けられており、調理台41に載置される被加熱物である食材等から滴下する汁気を溜めることができる。
調理室扉7の調理室30側の外周部には、シリコン等の耐熱性を有する弾性部材で構成された気密部材37が配置されている。調理室扉7が閉められた状態では、調理室30の前面開口部の外周に気密部材37が接触して、調理室扉7と調理室30の前面開口部との隙間からの空気の漏れを抑制する。
調理室扉7には、ガラス等で構成された透過部を設け、調理室30内を目視できるようにしてもよい。
調理室扉7の調理室30側の左右両側には、スライドレールユニット35の可動部を構成するスライド部352が取り付けられている。各スライド部352の長手方向の端部近傍には、一方のスライド部352から他方のスライド部352に保持部43が掛け渡されている。この保持部43の上には、受皿42が着脱自在に載置され、受皿42の上には調理台41が着脱自在に載置される。
スライド部352は、調理室30内に設けられたレール部351(図13参照)上を摺動する。調理室扉7が引き出されると、これに伴って、スライド部352、保持部43に支持された受皿42、及び受皿42に載置された調理台41が、一体的にスライドして調理室30の外部に露出する。このような構成により、調理室30内への被加熱物の載置や搬出、及び調理台41や受皿42の着脱を容易に行うことができ、調理の作業性、メンテナンス性、清掃性が高い。
また、スライド部352は、調理室30内に取り付けられたレール部351(図13参照)に対して着脱自在に係合されている。このため、図12に示すような状態で、調理室扉7及びその付帯部品を調理室30から取り外すことができ、洗浄等のメンテナンスが容易な構造である。
スライドレールユニット35の固定側であるレール部351と、可動側であるスライド部352の背面側端部には、それぞれ、磁石(図示せず)が取り付けられている。調理室扉7が閉状態に近づくと、磁石間の引力により調理室扉7を閉方向に付勢して調理室扉7を調理室30の前面開口に密着させ、これにより調理室30の気密性を高めている。
図13は、実施の形態1に係る調理室30の正面断面図である。
調理室30の後壁34の左右方向の略中央位置には、第一吸込口32が設けられている。第一吸込口32は、本実施の形態1では、ターボファン52の吸込み部位である回転中心と対向するように設けられた弧状の複数のスリットで構成されている。なお、第一吸込口32の具体的形状は、図示のものに限定されない。
吹出口31は、それぞれ、概ね円形の開口部であり、調理台41の載置面411の下側に形成される通風空間の吹出口31側の端部と重複する高さに形成されている。より詳しくは、吹出口31は、調理台41の載置面411の吹出口31側の端部高さと、受皿42の吹出口31側の端部高さ(受皿42の周壁の高さ)との間に、開口している。吹出口31と受皿42の周壁は対向しておらず、吹出口31からの噴流が受皿42の吹出口31側の周壁に妨げられることはない。
また、複数の吹出口31は、調理室30の高さ方向と交差する方向(本実施の形態1では調理室30の左右幅方向)に所定の間隔を開けて配置される。
ここで、吹出口31同士の間隔が狭すぎると、各吹出口31から吹き出される噴流が干渉し、被加熱物に対して噴流を安定的に供給しにくい。また、吹出口31同士の間隔が狭いほど、噴流の下側の負圧部へ上方から空気が流入しにくく、吹出口31からの噴流は、負圧により受皿42底面方向へ引き寄せられて下方に向かう流れとなる傾向が強くなる。そうなると、吹出口31からの噴流は主に受皿42の底面付近を通過し、調理台41上の被加熱物を適切に加熱できず、また、被加熱物から滴下した受皿42内の油分等の汁気を加熱して発煙を促進してしまう。
そこで、吹出口31相互の左右幅方向(水平方向)の間隔は、上記のような噴流の干渉抑制、及び噴流間の流路の確保、といった点を考慮して設定する。所定の間隔を開けて各吹出口31を設けることで、各吹出口31から吹き出される噴流の干渉が抑制され、調理台41に載置される被加熱物に各吹出口31からの噴流を安定的に供給することができるので、被加熱物に対して適切な加熱がなされる。また、所定の間隔を設けて各吹出口31を配置することで、各吹出口31からの噴流間の隙間に流路が確保され、噴流の下側の負圧部へ上方から空気が流入しやすくなり、噴流が受皿底面へ引き寄せられるのを抑制できる。
吹出口31相互の水平方向の間隔は、例えば、吹出口31の開口幅(円孔の場合は直径)の3倍以上が望ましい。
なお、図13では、同じ開口面積を有する吹出口31を同じ高さに配置した例を示しているが、吹出口31は調理台41の載置面411の下側に形成される通風空間の範囲内に開口していれば、開口面積や高さが必ずしも同じでなくてもよい。
また、加熱室50は、調理台41を支持する左右のスライドレールユニット35の間に配置されている。そして、複数の吹出口31は、調理台41の載置面411の左右幅方向の範囲内に配置されている。
また、加熱室50の下部は、高さ方向にみて、スライドレールユニット35の高さと重なっている。そして、吹出口31は、高さ方向にみて、受皿42の上面と調理台41の載置面411との間に配置されている。このように、調理台41の載置面411よりも低い位置に吹出口31を配置することで、吹出口31から吹き出る噴流を、被加熱物の底面に衝突させることができるので、効率的な加熱調理を行うことができる。
また、調理室30の下方には、電気ヒーター等の加熱装置を設けないため、受皿42と調理台41の載置面411との間に通風可能な空間を設ける限り、調理台41の高さを低くすることができる。このため、調理台41の載置面411と第一加熱手段40との間隔を広げることができ、高さ寸法の大きい(厚みのある)被加熱物を調理することができる。
調理室30の上面、底面、及び側面は、空隙39を介して二枚の壁が配置された二重壁構造により構成されている。この空隙39は、調理室30からの熱漏洩を抑制する断熱機能を発揮する。空隙39によって調理室30からの熱漏洩を抑制することで、調理室30内の加熱効率を高めるとともに、周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。本実施の形態1においては、空隙39による空気断熱を行っているが、必要に応じて空隙39内にグラスウールや真空断熱材等の断熱材を挿入してもよい。そのようにすることで、断熱性能を高めることができ、加熱効率や冷却効率を向上させることができる。
図14は、実施の形態1に係る加熱調理器1の側面断面図である。図14(A)は加熱調理器1の全体を示す図、図14(B)は吹出口31近傍を拡大して示す図である。
調理室30の外側と、筐体2の調理室収納部12との間には、隙間15が設けられており、隙間15には、調理室収納部12の収納部通風口13(図6参照)から流入した気流が流れるように構成されている。この隙間15を流れる気流により、調理室30から調理室収納部12内へ漏洩する熱を排気する。このようにすることで、調理室収納部12外への熱漏洩を抑制して、周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。また、吹出口31から吹き出される気流の圧力や加熱調理中の被加熱物からの水蒸気爆発や揮発により調理室30内の圧力が高まった場合に、調理室30の壁の接合部等から油煙や炭化物等が漏れ、調理室収納部12内に油分や汚れが付着しうる。調理室収納部12に付着した油分や汚れは、故障や発煙の要因となりえるが、収納部通風口13から流入する気流が隙間15を流れて調理室収納部12内の空気を換気することにより、油煙や炭化物等の汚染物が排気され、内部の汚れの堆積を抑制できる。
吹出口31の高さ位置は、受皿42の後壁34側における周壁の上端よりも高く、受皿42の周壁が、吹出口31からの噴流の流れを妨げないようになっている。また、吹出口31の高さ位置は、調理台41の載置面411よりも低く、調理台41の載置面411に載置される被加熱物の下側を、吹出口31からの噴流が流れるようになっている。
吹出口31の加熱室50内側における外周部には、吹出口31の周囲を囲む立ち上がり部54が設けられている。立ち上がり部54の上方には、立ち上がり部54の上方を覆うように庇部55が取り付けられている。庇部55の、調理室30の後壁34からの突出長さは、立ち上がり部54の突出長さよりも長い。庇部55は、加熱室50の底面501と略平行に延びている。庇部55は、その上方に設けられたターボファン52からの上方から下方に向かう流れにより、吹出口31から斜め下方に噴流が吹き出されるのを抑制する。また、庇部55と加熱室50の底面501との間を流れ吹出口31に向かう気流は、上下方向の乱れが軽減され、水平に近い流れに整流される。
吹出口31の開口下端は、加熱室50の底面501との間に段差を設けて配置されている。より詳しくは、加熱室50の底面501に対し、吹出口31の開口下端の方が、高い位置に配置されている。吹出口31の開口下端と底面501との高低差により、庇部55と加熱室50の底面501との間を流れる気流の上方に向かう成分が付勢され、吹出口31から斜め上方に気流が吹き出されて、調理台41に載置される被加熱物の底面に気流が衝突し、衝突噴流熱伝達を行う。図14(A)に、吹出口31の近傍を流れる気流を、矢印にて概念的に示す。
また、庇部55と調理室30の後壁34との接合部に、組立てや熱応力による変形で隙間が生じても、その隙間から流入する気流に対して、立ち上がり部54が風よけとして機能する。このため、隙間から気流が流入したとしてもその気流は直接的に吹出口31に到達せず、吹出口31から吹き出される噴流が斜め方向へ向かって流れるのを抑制することができる。
[加熱調理器の動作]
次に、実施の形態1に係る加熱調理器1の動作を説明する。
(トッププレート上での加熱調理)
ユーザーがトッププレート4上の載置部8に対応する操作部6を操作すると、コントロールユニット16内の電子回路基板14に実装された制御手段が、トッププレート4下方の誘導加熱コイルユニット11やラジエントヒーター10に電力を供給する。これにより、トッププレート4の上に載置された被加熱物の加熱調理が行われる。また、制御手段は、冷却ファン25を駆動し、冷却ファン25から供給される冷却風によって上記のような加熱調理器1内の各部の冷却が行われる。
(調理室での加熱調理)
表示部9には、調理室30での加熱調理のために設定可能な調理モード、調理メニュー、加熱条件等が表示される。ユーザーが、表示部9に表示される情報を確認しながら操作部6を操作して所望の設定を行うと、設定内容に対応する制御シーケンスが記憶手段(図示せず)から呼び出され、制御手段は、調理室温度検知手段38、加熱室温度検知手段56から得る温度情報や、内蔵する計時手段(図示せず)により計測した時間に基づき、制御シーケンスにしたがって第一加熱手段40、第二加熱手段53、及び電動機51の制御を行う。
図14を参照して、実施の形態1の調理室30の作用を説明する。
まず、制御手段が第一加熱手段40に通電すると、第一加熱手段40の放射により、調理台41に載置された被加熱物の主に上面が加熱される。
また、制御手段が第二加熱手段53に通電すると、第二加熱手段53の放射伝熱により、加熱室50内の空気が加熱される。
そして、制御手段が電動機51を駆動すると、電動機51に連結されたターボファン52が回転する。
電動機51の動作によりターボファン52が回転すると、ターボファン52に対向して開口している第一吸込口32に吸引力が生じる。そうすると、調理室30内の空気の一部は、第一吸込口32から加熱室50内へと吸い込まれる。加熱室50内に吸い込まれた空気は、ターボファン52の回転中心に吸い込まれ、羽根の外周へと送出される。ターボファン52の羽根から送出された気流は、ターボファン52の外周に配置された第二加熱手段53によって加熱され、庇部55と加熱室50の底面501との間に形成される空間を通り、立ち上がり部54の内部流路を通り、吹出口31から調理室30内へと吹き出される。前述のように、吹出口31の開口下端と底面501とに高低差があるため、庇部55と加熱室50の底面501との間を流れる気流の上方に向かう成分が付勢され、吹出口31から斜め上方に気流が吹き出される。吹出口31から吹き出された噴流は、調理台41の載置面411と受皿42との間の空間を調理室30の前方に向かって流れ、この過程において載置面411に載置された被加熱物の主に下面に衝突し、衝突流熱伝達を行う。このような気流の流れを、図14(A)に実線矢印で概念的に示す。
吹出口31から吹き出された噴流は、調理室30内を流れ、再び第一吸込口32に吸い込まれて加熱室50に流入する。
加熱室50内の空気の一部は、加熱室排気口57を通って調理室排気ダクト26に流入し、触媒体58で浄化され、調理室排気ダクト26内を流れて筐体排気口20から外部へと流出する。このような気流の流れを、図14(A)に破線矢印で概念的に示す。
このように、調理室30内の被加熱物は、その上面は主に第一加熱手段40によって加熱され、その下面は主に加熱室50内で高温化されて吹出口31から吹き出される噴流によって加熱される。そして、第一吸込口32から吸い込まれて吹出口31から吹き出されるという気流の動きに伴い、調理室30内の空気の一部が、加熱室50を介して排気される。なお、このようにして調理室30内の空気の一部が排気されるが、排気されたその分の空気は、調理室扉7と調理室30との隙間(図示せず)や、吸気のために別途設けられた開口部(図示せず)から吸引されて補われる。
次に、魚や肉等の食材を調理台41に直接載置して加熱する調理モードを例に、調理室30における加熱調理の調理工程の具体例を説明する。
(1)第一調理工程
魚や肉等の食材を調理台41に直接載置して加熱する調理モードの調理工程が開始されると、第一加熱手段40と第二加熱手段53は、ともに加熱量が最大となるように制御され、電動機51は停止するように制御される。調理工程の開始時において電動機51が停止していることにより、調理室排気ダクト26からの排気は自然排気のみとなり、排気量は最少となる。このため、排気に伴う排熱が抑制され、調理室30及び加熱室50内の昇温速度が速まるとともに、被加熱物の加熱にあまり寄与しない低温の気流が吹出口31から吹き出されて被加熱物に接触することによる被加熱物の乾燥を抑制することができる。
加熱室温度検知手段56により、加熱室50内の温度が所定の第一温度(例えば200℃)まで昇温したことが検知されると、次の調理工程に進む。
本実施の形態においては、加熱室温度検知手段56の検知温度により低温の気流の吹き出しを抑制しているが、計時手段を備え、加熱室50及び近傍における熱容量及び熱漏洩と第二加熱手段53の出力とにより算出される第一温度(例えば200℃)に到達するまでの所定時間を計時手段でカウントし、その後に次の調理工程に進むようにしても同様の効果が得られる。
(2)第二調理工程
制御手段は、電動機51を駆動してターボファン52を回転させる。ターボファン52が回転すると、ターボファン52に対向して開口する第一吸込口32に吸引力が生じ、調理室30内の空気の一部は、第一吸込口32から加熱室50内へと吸い込まれる。
加熱室50へ吸い込まれた空気は、第二加熱手段53により加熱されて昇温する。加熱室50内の高温空気は、庇部55と加熱室50の底面501との間に形成される流路を通って、吹出口31から調理室30内へ斜め上方に吹き出される。吹出口31から吹き出された高温の噴流は、主に調理台41と受皿42との間の空間を、調理室30の背面側から前面側に向かって流れる。調理台41上の被加熱物の上面は、主に第一加熱手段40からの放射と周囲の空気からの伝熱により加熱され、被加熱物の下面は、主に吹出口31からの噴流の衝突による伝熱により加熱される。
調理室温度検知手段38より、調理室30内の温度が所定の第二温度(例えば250℃)まで昇温したことが検知されるまでは、第一加熱手段40と第二加熱手段53ともに高い出力で通電される。このように、加熱初期には高出力で加熱することで、より短時間で被加熱物を70℃程度まで上昇させて被加熱物の表層部のタンパク質を凝固させ、内部の水分等の揮発を抑制して内部のジューシーさを保持することができる。
また、調理初期、例えば第一調理工程及び第二調理工程の初期(数十秒〜3分程度)において、制御手段は、それ以降の工程(第二調理工程〜第四調理工程)の時間や加熱手段の火力を含む制御シーケンスの設定を行う。具体的には、制御手段は、計時手段により計時された調理初期の加熱時間や調理室温度検知手段38により検出された調理室30内の温度の変化等に基づいて、被加熱物の量や初期の被加熱物の温度を算出し、その情報に基づいて第二調理工程〜第四調理工程における調理時間等の制御シーケンスを設定する。以降は、設定した制御シーケンスにしたがって各部を制御する。
調理室30内が所定の第二温度に達すると、その後は、次の調理工程に進む。
本実施の形態においては、第一調理工程後に第二調理工程が開始されるが、第一調理工程を省略して第二調理工程より調理工程を開始しても同様の効果が得られる。
(3)第三調理工程
第三調理工程では、被加熱物の上面・下面・内部の焼き加減が適切になるように、また気流の接触による乾燥を低減するように、制御手段が各部の動作を制御する。以下、具体例を説明する。
被加熱物の上面を主に加熱する第一加熱手段40の放射伝熱による加熱過程では、時間の経過に伴って被加熱物の昇温速度は徐々に小さくなるものの、被加熱物の表面温度は上昇し続ける。
また、被加熱物の下面を主に加熱する吹出口31からの噴流の対流熱伝達による加熱過程においては、噴流が直接衝突(接触)する領域では、噴流の温度よりやや遅れて被加熱物の表面温度が高くなり、被加熱物の表面温度は噴流の温度と風速に応じた所定温度となる傾向がある。また、被加熱物において噴流が直接衝突(接触)しない領域では、調理室30内の空気温度よりやや遅れて被加熱物の表面温度が高くなり、調理室30の空気温度に近づく傾向がある。
このように加熱過程に違いがあるため、第一加熱手段40と、第二加熱手段53及び電動機51は、それぞれ、以下のように制御される。
まず、第一加熱手段40での加熱を続けると、被加熱物上面の温度は高くなり過ぎて焦げてしまい食味を損なうことから、制御手段は、調理室30内の温度が所定値となったときに、第一加熱手段40の加熱を停止する。なお、第一加熱手段40の加熱を停止するのではなく、被加熱物の表面温度が焦げるほど上昇しない程度に、出力を低減させてもよい。
また、被加熱物の下面の噴流が直接衝突(接触)する領域に適度な焼き色が付くまでの所定の時間は、調理室温度検知手段38により検出される庫内温度が所定の温度を超えない範囲で、第二加熱手段53は高出力で、電動機51は吹出速度が速くなるように制御される。その後は、被加熱物の内部温度が所定の温度(例えば75℃)となるまでの所定時間は、吹出風速を低下させるように電動機51が制御され、庫内温度が所定の温度(例えば250℃)となるように第二加熱手段53の加熱量が制御される。
なお、被加熱物の内部温度は、赤外線センサ等の温度検出手段(図示せず)を設けて計測してもよいし、調理室温度検知手段38により出力される調理室30内の温度に基づいて推測してもよい。第三調理工程を実行する所定時間の長さ・加熱手段の火力は、調理初期の制御シーケンスの設定で規定されているものとする。
(4)第四調理工程
この調理モードの調理の終盤である第四調理工程では、所定時間、第一加熱手段40の出力を高める。このように調理室30内での加熱調理の終了前の所定時間、第一加熱手段40の加熱量を高めることで、食材の表面に適切な(美味しそうな)焼き色を付けるとともに、表面の水分を揮発させて食材表面をパリッとさせ、見た目も食味も良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
このとき、第二加熱手段53は、加熱量が低くなるようにあるいは加熱停止するように制御され、電動機51の出力は排気に必要な風量が確保できる程度に絞られる。このようにすることで、被加熱物の乾燥を抑制することができる。
なお、第四調理工程を実行する所定時間の長さは、調理初期の制御シーケンスの設定で規定されているものとする。すべての制御シーケンスが終了すると、調理室30における調理動作は停止する。そして、調理室扉7のロック解除条件が満たされると、表示部9にて調理完了を報知するとともにブザーや音声による報知を行い、制御手段は調理室扉7のロックを解除する。そうすると、ユーザーは、調理室扉7を開けて被加熱物を調理室30から取り出すことができる。
上記のような魚や肉等の食材を調理台41に直接載置して加熱する調理モードのほか、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室30内で調理する連携調理モードでの加熱調理も可能である。
具体的には、例えば、表示部9に表示される調理モードのうち『連携調理』モードが操作部6により選択され、さらに、表示部9に表示される調理メニューのうち『シチュー』や『ハンバーグ』等の調理メニューが操作部6に選択されると、設定された調理モードと調理メニューに対応する制御シーケンスが記憶手段より呼び出される。
ユーザーは、食材を調理容器に入れ、トッププレート4上の載置部8で下準備の加熱調理を行う。例えば、ハンバーグであれば、表面に焦げ目が付く程度に、トッププレート4上で加熱する。また、シチューであれば、トッププレート4上にて、食材を炒める。そのような下準備の加熱調理が終了すると、ユーザーは、食材を調理容器ごと調理室30の調理台41上に載置する。そして、操作部6にて調理室30内での加熱開始が指示されると、制御手段は、ハンバーグであれば表面の焦げ目以降のハンバーグ内部の加熱の自動調理を、シチューであれば煮込みの自動調理を行うように、第一加熱手段40、第二加熱手段53、及び電動機51を制御シーケンスにしたがって制御する。
調理台の下方に電気ヒーター等の加熱手段が配置された従来の調理室では、被加熱物を収容可能な調理室内の有効高さ寸法が低いため、フライパンや鍋等の調理容器の収納は難しかった。このため、調理室内でトッププレート上の加熱調理と連携した調理はできなかった。しかし、本実施の形態1によれば、調理台41の下方に電気ヒーター等の加熱手段を配置しないため、調理室30内の高さ寸法を確保することができ、比較的高さのある調理容器であっても調理室30内に収容することができる。また、吹出口31を、調理台41の載置面411の吹出口31側高さ位置と受皿42の吹出口31側高さ位置との間に配置したので、吹出口31から吹き出される噴流により、調理台41に載置された調理容器を下方から加熱することができる。このように、本実施の形態1に係る加熱調理器1によれば、トッププレート4上と調理室30内とで連携調理が可能であるので、多彩な調理を実現でき、ユーザーの調理作業を軽減する効果を得られる。
以上のように本実施の形態1では、加熱室50で加熱された噴流を吹き出す吹出口31を、調理台41の載置面411の吹出口31側の高さ位置と、受皿42の吹出口31側の高さ位置との間に配置した。そして、吹出口31からの噴流は、水平よりも上方に向けて吹き出されるようにした。このため、調理台41に載置される被加熱物の下方を、衝突噴流熱伝達により加熱調理することができる。したがって、調理室30内の被加熱物は、衝突噴流熱伝達及び強制対流熱伝達により効率よく加熱されるので、より短時間の調理ができ、エネルギーロスが低減でき消費電力量が少なく、省エネで環境負荷を低減できる効果がある。
また、被加熱物を載置する調理台41の下方に加熱手段を配置しないことから、被加熱物の下方のスペースを狭くでき、その狭くすることができた分のスペースを、調理台41の上方の被加熱物が載置される空間に使用することができる。このようにすることで、調理室30の有効調理高さ寸法が拡大され厚い被加熱物の加熱調理が行える。また、被加熱物から滴下する油脂分が、電気ヒーター等の加熱手段に接触することもないので、調理室30内での発煙・発火が抑制される。また、調理室内に被加熱物を下方から加熱する電気ヒーター等の加熱手段を設けないことから、調理室内のメンテンス性・清掃性を高める効果がある。
また、吹出口31からの噴流は、水平よりもやや上方に吹き出されるようにした。このため、受皿42の底面と吹き出された噴流下方の負圧による、受皿42側へ引き寄せられる流れが抑制される。したがって、噴流が専ら受皿42の底面付近を流れて被加熱物から受皿42に滴下した油分や汁気が加熱されることによる、煙や臭気の発生を抑制する効果がある。
また、複数の吹出口31を、略水平方向に所定の間隔を隔てて配置した。このため、噴流下方の負圧により誘引される、噴流上方から下方に向かう気流の通り道が確保され、噴流下方の負圧が軽減される。したがって、噴流が受皿42側へ引き寄せられる流れが抑制され、被加熱物から受皿42に滴下した油分や汁気が加熱されることによる煙や臭気の発生を抑制する効果がある。
また、複数の吹出口31を調理室30の一壁面(実施の形態1の例では後壁34)に配置することで、構造を容易として低コストで信頼性の高い加熱調理器とすることができる。
また、吹出口31の開口の最下部は、加熱室50の底面501と高低差を設けて底面501よりも高い位置に配置されるとともに、吹出口31の上方に庇部55を設けたので、吹出口31から上方へ向かう気流を形成することができる。このように、吹出口31と加熱室50の底面501の高さ関係、及び庇部55という比較的簡単な構成で、上記の気流を形成できるので、低コストで信頼性の高い加熱調理器を得ることができる。
また、吹出口31の周囲を囲む立ち上がり部54を設け、立ち上がり部54と庇部55が上方からみて重なるように配置した。このため、庇部55と調理室30の後壁34の背面との隙間が生じた場合でも、その隙間より侵入した気流で吹出口31からの噴流が下方に向かうことを抑制することができる。吹出口31からの噴流が下方に向かうのを抑制できるので、受皿42に滴下した油分や汁気が噴流で加熱されることによる煙や臭気の発生を抑制する効果がある。
また、加熱室50を構成する壁面のうち吹出口31が設けられた壁面(実施の形態1では調理室30の後壁34)とは異なる面に、通風可能な加熱室排気口57を設け、加熱室排気口57には触媒体58を内蔵した調理室排気ダクト26を接続した。
そして、第二加熱手段53の少なくとも一部からの熱放射が、触媒体58直線的に届くように、第二加熱手段53と触媒体58を配置した。このため、触媒体58を加熱する専用の加熱手段が不要となり低コストにできるとともに、触媒体58の温度を高めて調理室排気ダクト26からの排気の清浄度を増すことができるので、快適な調理空間・環境が得られる加熱調理器とすることができる。
また、加熱室50の高さ位置を、調理台41及び受皿42を支持するスライドレールユニット35と重なる位置に設けた。このため、調理台41の載置面よりも低い位置に吹出口31を形成することができ、そのようにすることで吹出口31からの噴流を調理台41の載置面に載置される被加熱物の底面に衝突させることができるため、加熱効率の高い加熱調理器を得ることができる。
また、調理室30を収容する調理室収納部12を加熱調理器1内に設け、調理室収納部12内に冷却ファン25から送られる気流が流入するようにした。このため、調理室30内での加熱によって生じる調理室収納部12内の熱気が冷却ファン25からの気流によって排気することができる。したがって、調理室収納部12の外側に配置されている部品の温度上昇が抑制されるとともに、調理室30から調理室収納部12内に放出された油分や炭化物等も排気されて汚れの堆積が抑制されるので、信頼性が高く耐久性の高い加熱調理器とすることができる。
また、調理室30内の被加熱物を主に上方から加熱する第一加熱手段40と、主に下方から加熱する噴流を昇温させる第二加熱手段53の加熱量を、個別に制御可能とした。このようにすることで、被加熱物の上面と下面の焼き加減を個別に調整することができる。また、加熱室50のターボファン52を停止して第一加熱手段40で加熱するといった制御も可能であり、所望の調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、加熱調理工程の初期段階(加熱開始段階)である第一調理工程では、第一加熱手段40と第二加熱手段53はともに加熱するように制御されるが、電動機51は停止するよう制御されるようにした。調理室30と加熱室50が比較的低温である加熱開始時期において、電動機51が停止状態であるため、調理室排気ダクト26からの排気は自然排気のみとなって排気量は最少となるので、排気に伴う排熱が抑制され、調理室30及び加熱室50内の昇温速度が速まる。また、被加熱物の加熱への寄与が低い比較的低温の気流が吹出口31から吹き出されて接触することによる、被加熱物の乾燥を抑制することができるので、良好な調理効果を得ることができる。
また、第一調理工程において調理室30内が所定温度まで昇温した後は、電動機51を駆動してターボファン52を動作させることにより、吹出口31から調理室30内へと吹き出される噴流を形成する。このため、調理台41の載置面に載置された被加熱物の下面側を、衝突噴流熱伝達によって加熱することができる。
また、その後の調理工程において、第一加熱手段40による加熱を停止または、被加熱物の表面温度は焦げが生じない出力に低減するように制御する第三調理工程を設けた。このため、第一加熱手段40の作用による被加熱物の焦げを抑制して、良好な調理効果を得ることができる。
また、この第三調理工程において、調理室温度検知手段38により検知される温度に基づいて調理室30内の温度が所定温度に保たれるように第二加熱手段53の加熱量を制御するとともに、電動機51の回転数を相対的に低下させるように制御する。このようにすることで、被加熱物の下面に良好な焼き色を付けて被加熱物の内部温度を適切に維持するとともに、被加熱物の乾燥が抑制され良好な調理効果・仕上がりが得られる。
また、加熱調理工程の最終段階である第四調理工程において、第一加熱手段40は高出力で加熱するように制御する。このため、第一加熱手段40の作用によって食材の上面に適切な焼き色を付けるとともに表面をパリッとさせることで、見た目も食味も良好な調理効果・仕上がりが得られる。また、この加熱調理工程の最終段階においては、第二加熱手段53の加熱量は最小または停止するとともに、電動機51の回転は低くなるように制御するようにした。このため、被加熱物の乾燥を抑制することができる。
また、調理室扉7の開閉を検知する開閉検知手段を備えた。そして、操作部6から調理動作指示が出力された場合に、調理室扉7が開状態であれば加熱調理を行わず調理室扉7を閉めるよう表示部9報知するようにした。また、加熱調理中に調理室扉7の開動作が検知された場合は、すべての加熱手段と送風手段である電動機51を停止して調理室扉7が開いたため加熱調理を停止したことを報知するようにした。このため、吹出口31からの熱風が加熱調理器1の外へ吹き出されるのが抑制され、ユーザーの火傷等のリスクを軽減できることから、安全性の高い加熱調理器を得ることができる。
また、加熱調理器1は、調理室30のほかに、トッププレート4と、トッププレート4に載置される被加熱物を加熱する加熱手段である誘導加熱コイルユニット11とラジエントヒーター10を備えた。このため、トッププレート4上では鍋やフライパン等の調理容器を用いた加熱調理ができ、調理室30ではグリル、ロースター、オーブン、スチーム調理等ができることから、一台の加熱調理機で同時に多様な調理が行え、省スペースで多機能な加熱調理器にできる効果がある。
また、制御手段によって実行される調理モードの一つとして、トッププレート4上で加熱調理を行う工程と、調理室30内で加熱調理を行う工程とを含み、両工程において共通の調理容器を使用可能な連携調理モードを備えた。このため、調理のレパートリーを広げることができ、ユーザーの調理作業を軽減する効果を得ることができる。
実施の形態2.
本実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。
実施の形態2に係る加熱調理器は、図1、図4〜図6、及び図12に示す構成は、実施の形態1と同様である。
図15は、実施の形態2に係る加熱調理器1から筐体上枠3、トッププレート4、及び吸排気口カバー5を取り外した状態の斜視図である。
実施の形態2の調理室排気ダクト26Aは、冷却風排気ダクト22の内側に配置されるという点では実施の形態1と同様である。しかし、実施の形態1で示した図2と図15とを対比して分かるように、本実施の形態2では、冷却風排気ダクト22の流路断面に占める調理室排気ダクト26Aの流路断面の比率が、実施の形態1で示したものよりも低減されている。また、冷却風排気風路流入口23の下方に占める調理室排気ダクト26Aの領域(上面からみた面積)も、実施の形態1で示したものよりも低減されているため、冷却風排気風路流入口23から筐体排気口20に至る冷却風の通過に伴う圧力損失が低減されている。このため、冷却ファン25の送風負荷が軽減されるので、冷却ファン25の騒音は低減されて、加熱調理器1の動作騒音も低減される。
図16は、実施の形態2に係る調理室30の上壁33を取り外した状態の斜視図である。図17は、図16の吸込口体60近傍の構成を説明する図である。なお、図17では、吸込口体60に設けられる触媒体62の記載を省略している。
第一加熱手段40の端子部は、調理室30の後壁34の右側に寄った位置を貫通して設置されている。
第一加熱手段40の一部は、調理室30の後壁34と略平行に、略水平に配置されている。当該部分を、加熱手段背面側401と称し、図16にて網掛け表示して示す。加熱手段背面側401は、調理室30の幅方向に分割されることなく延びる棒形状である。本実施の形態2では、第一加熱手段40の端子部を右側に寄せた例を示しているが、端子部を左側に寄せてもよい。すなわち、図16に示す第一加熱手段40を左右反転させて設けてもよい。いずれにしても、調理室30の幅方向に分割されずに後壁34と略平行に設けられた略水平の加熱手段背面側401を備えていればよい。
調理室30の後壁34には、第一吸込口32Aと相対する位置に、吸込口体60が取り付けられている。吸込口体60は、下方から上方に向かって調理室30の内部方向(前面方向)に突出するように傾斜した傾斜面を構成する吸込口体前壁601と、この吸込口体前壁601の側端部から後方に向かって延び後壁34に接続される吸込口体側壁602とを備えている。吸込口体60は、第一吸込口32Aの前方を、所定の隙間をおいて覆っており、後壁34と吸込口体60との間には、風路が形成されている。吸込口体60と後壁34との間に形成される風路の入口を、第二調理室吸込口61と称する。第二調理室吸込口61は、第一吸込口32Aよりも高い位置で、調理室30の高さ中央よりも高い位置に配置されている。調理室30内の空気は、吸込口体60により形成される第二調理室吸込口61を介して、後壁34に形成された第一吸込口32Aへ流入する。吸込口体60と後壁34との間に形成される風路は、この風路への空気の入口である第二調理室吸込口61と、この風路からの空気の出口である第一吸込口32Aを除き、概密閉されている。
第二調理室吸込口61の内部には、触媒体62が取り付けられている。触媒体62は、実施の形態1で示した触媒体58と同様に排気を清浄化するためのものであり、機能的には触媒体58と同様の構成である。触媒体62は、第一加熱手段40からの放射が直接的に届く位置・角度で取り付けられるのが好ましい。より具体的には、触媒体62は、第一加熱手段40の少なくとも一部と、高さ方向及び左右幅方向において重なる位置に取り付けられるのが好ましい。このようにすることで、第一加熱手段40の放射により触媒体62が加熱されて触媒活性が高まる。吸込口体60に吸い込まれる気流は、第一加熱手段40の近傍を通過してから吸込口体60に流入することで、加熱効率高く昇温されて触媒体62の近傍を通過するとともに、第一加熱手段40の放射により触媒体62はより高温に加熱される。これにより、触媒体62に添着される酸化触媒は触媒活性され、調理室30内の空気に含まれる油煙や臭気成分等の汚染物質の一部を吸着して酸化分解を行い浄化する。調理室30内の空気の一部は、調理室排気ダクト26Aから排気される一部の空気を除いて循環するため、調理室30内の空気は循環しながら何度も触媒体62を通過することで浄化率が高まる。このため、実施の形態1のように調理室排気ダクト26を通過する過程で排気が一度だけ触媒体58を通過する構成と比較して、本実施の形態2の調理室30内や調理室排気ダクト26Aからの排気の浄化率は高い傾向にある。
汚染物質が酸化分解する化学反応の過程において反応熱が発生するが、この熱は通過する気流をさらに加熱し、加熱された気流は高温の循環気流として吹出口31より調理室30内に吹き出される。このように、気流が触媒体62を通過することにより生じる反応熱は、被加熱物の加熱調理に利用される。
調理室30の両側面の空隙39には、例えばグラスウールや真空断熱材等の断熱材391が充填されている。断熱材391を設けることで、調理室30内からの熱漏洩を低減して加熱効率を高めるとともに、周囲の部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。
図18は、実施の形態2に係る調理室30の上壁33と加熱室50及び付帯する部品とを取り外した状態の背面側斜視図である。
調理室30の後壁34には、第一吸込口32Aが開口している。前述の実施の形態1では、弧状の複数のスリットで構成された第一吸込口32を例に示したが、本実施の形態2の第一吸込口32Aは、環状の1本のスリットで構成されている。なお、第一吸込口32Aの開口形状を特に限定するものではない。
調理室30の後壁34において、第一吸込口32Aの下側には、加熱室50の内部側に向かって突出する複数の管路部65が設けられている。管路部65は、空気の流路を内部に有する略筒状であり、後壁34に設けられた吹出口31と連通している。管路部65の中心軸は、後壁34に設けられた吹出口31に近づくほど上昇するように傾斜している(図21参照)。このため、管路部65を通る気流は斜め上方に向かって整流され、吹出口31からの噴流は斜め上方に向かって吹き出される。
また、ターボファン52から送出される気流は旋回成分をもち、吹出口31の配置される加熱室50の下方においては、ターボファン52の回転方向に応じて、左側面から右側面または右側面から左側面に向かう気流の成分を含む。このため、実施の形態1の吹出口31の構成においては、吹出口31の左右方向の位置によっては噴流の吹き出し方向が左または右方向に傾斜する傾向がみられうる。しかし、管路部65によっては気流は左右方向にも整流され、直進性の高い噴流が形成される。したがって、調理台41の載置面411の所定位置に噴流を到達させ、適切な焼き色を被加熱物に付けることを容易として良好な調理効果・仕上がりが得られる。
図19は、実施の形態2に係る加熱室50及び付帯部品の斜視図である。
加熱室50の内部には、ターボファン52が配置されている。ターボファン52は、加熱室50の背面に配置された電動機51の回転軸と固定され、電動機51の動作により回転して中央部から吸引した空気を外周部より送出する構成であり、実施の形態1と同様である。
加熱室50の背面には、調理室排気ダクト26Aが接続される加熱室排気口57Aが開口している。実施の形態2においては、実施の形態1とは異なり、調理室排気ダクト26Aの加熱室50との接続端には触媒体は取り付けられていない。このため、同じ排気風量を得る場合に、実施の形態1で示した調理室排気ダクト26と比較して、調理室排気ダクト26Aの風路断面を小さく形成でき、省スペース化することができる。
また、実施の形態2においては、第二加熱手段53Aは、略一直線状であり、長軸方向と加熱室50の幅方向とが略一致するようにして、加熱室50の下方に配置されている。第二加熱手段53Aとしては、シーズヒーターを用いるほか、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよく、同様に循環風を加熱でき同様の効果は得られる。
なお、加熱室50内に加熱室温度検知手段56が配置されるのは、実施の形態1と同様である。
ターボファン52により送出された空気の一部は、加熱室排気口57Aから調理室排気ダクト26Aへ流入する。そして、調理室排気ダクト26A内に流入した空気は、略L字状の風路を流れ、調理室排気ダクト26Aの背面側に設けられた略垂直部の上端開口より排気される。排気される風量は、調理室排気ダクト26Aの流路断面積によって、適切な排気風量となるように調整される。調理室排気ダクト26Aから適切な風量を排気することにより、調理室30内での良好な調理効果・仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下するのを抑制することができる。
第二加熱手段53Aの端子部は、加熱室50の背面より突出して配置される。第二加熱手段53Aの端子部とコントロールユニット16内の制御基板間に配線が行われ、第二加熱手段53Aは、制御手段によって加熱の有無や加熱量が制御される。
図20は、実施の形態2に係る調理室30の加熱室50における断面図であり、調理室30を背面側からみた状態を示している。
第二加熱手段53Aは、高さ方向にみて、ターボファン52の下端と吹出口31との間に配置されている。また、第二加熱手段53Aは、すべての吹出口31の上方近傍に、吹出口31からの高さ方向の距離がほぼ同等となるように、かつ吹出口31と左右方向において重なる位置に配置されている。このような構成により、ターボファン52から送出された空気は、第二加熱手段53Aで加熱された直後に吹出口31から吹き出される。このため、送風経路での熱ロスが少なく、第二加熱手段53Aで加熱された空気を吹出口31から高温で吹き出させることができ、被加熱物の加熱効率を高めることができる。また、各吹出口31から吹き出される気流の温度差を軽減することができるので、被加熱物の左右間の加熱ムラを抑制することができる。
図21は、実施の形態2に係る調理室30の側面断面図である。図21(A)は加熱調理器1の全体を示す図、図21(B)は吹出口31近傍を拡大して示す図である。
調理室30の上壁33と底面にそれぞれ設けられた空隙39には、例えばグラスウールや真空断熱材等の断熱材391が充填されており、調理室30内からの熱漏洩を低減して加熱効率を高めるとともに、周囲の部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。
吹出口31は、調理台41の載置面411の吹出口31側の高さ位置と、受皿42の吹出口31側の高さ位置との間に配置されている点は、実施の形態1と同様である。また、実施の形態2の吹出口31の加熱室50側には、調理室30に近づくほど上方に向かって傾斜する管路部65が設けられているため、実施の形態1と同様に、吹出口31からは、水平よりも上方に向けて噴流が吹き出される。
実施の形態2では、吸込口体60を設けて、第一吸込口32Aの前方を覆うとともに調理室30内の上方と第一吸込口32Aとを結ぶ流路を形成しており、第一吸込口32Aは第二調理室吸込口61を介して主に調理室30内の上方の空気を吸引する。このため、実施の形態1と比較して、吹出口31と、調理室30内の空気が吸い込まれる位置(第二調理室吸込口61)との距離が長い。したがって、第一吸込口32Aへの吸引に伴って生じる気流のよどみ点が、吹出口31から遠い位置になり、この気流のよどみが吹出口31から吹き出される噴流に与える影響を軽減することができる。このため、被加熱物の下面への衝突噴流熱伝達の領域を、吹出口31から遠い側まで広げることができ、加熱効率をより高めることができる。
このように構成された実施の形態2の調理室30の作用を説明する。
電動機51の動作によりターボファン52が回転すると、ターボファン52に対向して開口している第一吸込口32Aに、吸引力が生じる。そうすると、調理室30内の空気の一部は、第二調理室吸込口61から、吸込口体60と後壁34との間に形成された風路内に吸い込まれる。第二調理室吸込口61から吸い込まれた空気は、触媒体62を通過する際に煙・油煙が浄化されながら酸化分解の反応熱でさらに加熱され、第一吸込口32Aから加熱室50内に流入して、ターボファン52により送出される。
加熱室50内でターボファン52より送出された気流の一部は、調理室排気ダクト26Aを経て、排気される。
加熱室50内でターボファン52より送出された気流の多くは、第二加熱手段53Aにより加熱され、管路部65を通り、吹出口31から調理室30内の斜め上方に向けて吹き出される。吹出口31から吹き出された気流は、調理台41の載置面上の被加熱物の下方に衝突して被加熱物を加熱する。
吸込口体60を設け、調理室30の上方に形成した第二調理室吸込口61から調理室30内の空気を吸引することで、調理室30の背面側下方に設けられた吹出口31から調理室扉7の近傍(前方)に向かって進み、さらに調理室30の背面側に設けられた第二調理室吸込口61に至る大きな流れが形成される。この調理室30内における気流を、図21では矢印にて概念的に示している。このような調理室30の奥行き方向にわたって気流が流れることで、調理室30内の温度ムラが軽減されて被加熱物の加熱ムラが抑制される。
なお、実施の形態2の調理室30では、実施の形態1と同様に、制御手段が所定の制御シーケンスにしたがって第一加熱手段40、第二加熱手段53A、及び電動機51の動作を制御する。実施の形態1で示した調理室30内における加熱調理(例えば、魚や肉等の食材を調理台41に直接載置して加熱する調理モード、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室30内で調理する連携調理モード)については、本実施の形態2においても同様にして実施可能である。
以上のように本実施の形態2では、吹出口31の加熱室50内部側に連なる管路部65を設けた。そしてこの管路部65の中心軸は、後壁34に設けられた吹出口31に近づくほど上昇するように傾斜する構成とした。このため、加熱室50内の空気は、管路部65を通る過程において上下方向に整流され、吹出口31から噴流が斜め上方に吹き出る。また、ターボファン52の回転方向に由来して左右方向に傾斜する傾向を有する加熱室50内の空気は、管路部65により左右方向にも整流され、直進性の高い噴流が形成される。このため、調理台41の載置面411の所定位置に噴流を到達させ、被加熱物に適切な焼き色を付けることが容易となり、良好な調理効果・仕上がりが得られる。
また、後壁34に設けられた第一吸込口32Aに相対配置され、後壁34との間に概密閉の風路を形成する吸込口体60を設けた。そして、吸込口体60と後壁34との間に形成される第二調理室吸込口61を、調理室30の高さ中央よりも上方に配置した。このため、第一吸込口32Aへの吸引に伴って生じる気流のよどみ点は、吹出口31からより遠い位置に生じ、このよどみが吹出口31から吹き出される噴流に与える影響を軽減することが可能となる。したがって、吹出口31からの噴流による衝突噴流熱伝達の領域が、吹出口31から遠い側まで広げられ、加熱効率が高まるので、省エネルギーで短時間調理を実現することができる。また、調理室30の奥行き方向全体を対流する大きな流れが形成されるので、加熱ムラの少ない良好な調理効果、仕上がりを得ることができる。
また、吸込口体60に触媒体62を備えた。このため、調理室排気ダクト26Aから排気される調理室30内の排気の浄化率を高めることができる。また、調理室30内で触媒体62による浄化が行われるので、煙や油煙による被加熱物への着色や臭い移りが軽減される。また、触媒体62によって生じる反応熱により、調理室30と加熱室50とを流れる循環気流が加熱されるので、加熱効率が高まる。また、触媒体を調理室排気ダクト26Aに取り付ける必要がないため、触媒体を設置する場合と比べて調理室排気ダクト26Aの流路断面を小さくでき、冷却ファン25の騒音を低減する効果がある。
第二加熱手段53Aを、すべての吹出口31の上方近傍に配置したことで、熱ロスが少なく、高温状態のままの空気を吹出口31より吹き出すことができるので、加熱効率が高まる。また、左右の吹出口31の間の吹き出し温度差が低減され、調理室30内における左右方向の加熱ムラを抑制する効果がある。
また、第二加熱手段53Aを、吹出口31の上方近傍に配置したことで、吹出口31に連なる管路部65が加熱され、気流は管路部65を通過するときに管路部65からの伝熱によりさらに加熱される。このため、吹出口31からの噴流の吹き出し温度をさらに高めることができ、加熱効率を高める効果がある。
実施の形態3.
本実施の形態3では、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。
実施の形態3に係る加熱調理器は、図1〜図8に示す構成は、実施の形態1と同様である。
図22は、実施の形態3に係る調理室30の上壁33を取り外した状態の斜視図である。
図23は、図22の吸込口体70近傍の構成を説明する図である。なお、図23では、吸込口体70に設けられる触媒体62の記載を省略している。
実施の形態3の吸込口体70は、実施の形態2で示した吸込口体60と異なり、吸込口体60における吸込口体側壁602に相当する構成がなく、調理室30内の左右幅とほぼ同じ幅の吸込口体前壁701を有している。この吸込口体前壁701は、下方から上方に向かって調理室30の内部方向(前面方向)に突出するように傾斜しており、吸込口体前壁701と後壁34との間には風路が形成されている。吸込口体前壁701の上端部には、調理室30の上壁33と対向する略平板状の吸込口体上壁702が連なっている。吸込口体上壁702には、第一加熱手段40の形状に沿って第一加熱手段40の外形よりもやや大きい開口703が形成されており、この開口703内に、第一加熱手段40が配置される。また、本実施の形態3では、吸込口体上壁702には、第一加熱手段40が配置される開口703とは別に、複数の開口704が形成されている。本実施の形態3では、開口703と開口704とにより、第二調理室吸込口71が構成されている。
吸込口体70は全体として、調理室30の両側面間にわたって後壁34及び上壁33の一部を所定の空間をおいて覆っており、調理室30の後壁34及び上壁33と、吸込口体70との間には、第一吸込口32Bに至る風路が形成されている。そして、吸込口体上壁702に設けられた開口703と開口704は、調理室30内の空気を、吸込口体上壁702の上方へ流入させる入口として機能する。すなわち、本実施の形態3の調理室30においては、調理室30内の空気を、開口703、開口704により分散吸気し、調理室30内において下方から上方に向かう気流を形成している。開口703、開口704を通って吸込口体上壁702の上方へ流入した空気は、調理室30の後方に向かって流れ、吸込口体前壁701と後壁34との間に形成される風路を通って、第一吸込口32Bに吸い込まれる。
吸込口体70に設けられた複数の独立した開口704は、第一吸込口32Bに近いものほど開口面積が小さい。吸込口体70の開口703は、第一加熱手段40を平面視で投影した形状から所定の間隔の隙間をもって開口され、第一吸込口32B側ほど概ね間隔が狭く設けられている。このようにしているのは、吸込口体上壁702における単位面積当たりの第二調理室吸込口71(開口703と開口704の合計)の開口率が、第一吸込口32Bに近い領域ほど低くなるようにするためである。吸込口体上壁702において、第一吸込口32Bに近いほど単位面積当たりの第二調理室吸込口71の開口面積を小さくすることで、第一吸込口32B側の吸引風量の増加が抑制され、第一吸込口32Bから離れた調理室30の手前側(調理室扉7に近い側)における吸引風量を確保することができる。吹出口31Bからの気流は、吹出口31Bから距離が離れるほど温度が低下する傾向にあり、調理室30の後壁34側に対して調理室扉7側の気流は温度が低い。このため、吹出口31Bから離れた調理室扉7側においては、調理室30内の上下の温度差が比較的小さく、温度差によって形成される下方から上方に向かう流れは小さくなる傾向がある。しかし、本実施の形態3のように、吸込口体上壁702の開口面積を調整して、吹出口31Bから離れた領域における吸引風量を確保することで、吹出口31Bから離れた領域においても、調理室30の下方から上方に向かって風速が速くなる気流を適切に形成することができる。このように、調理室30の下方から上方に向かう気流を形成できるので、調理台41Bの載置面411Bに載置された被加熱物の底面及び側面への伝熱作用が得られ、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
吸込口体70と後壁34との間には、触媒体62が設けられている。触媒体62は、吸込口体70と略同じ幅に、すなわち、調理室30内の左右幅と略同じ幅にわたって設けられている。実施の形態3の触媒体62は、実施の形態2の触媒体62よりも流入方向の面積が拡大されているので、触媒体62の通過風速を低減でき、より高い浄化性能が得られ、調理室内・排気の清浄度が高まる。また、触媒体62での酸化分解による浄化の反応熱も増え、この反応熱の加熱調理への寄与も高まり、省エネルギーな加熱調理器とすることができる。また、触媒体62の流入方向の面積が拡大されることで、触媒体62を気流が通過する際の圧力損失も低減され、吹出口31Bからの吹き出し風速をさらに速くすることができ、加熱効率を高めることができる。
この触媒体62は、実施の形態2と同様に第一加熱手段40の放射が届く位置に配置されており、実施の形態2と同様の作用効果が得られる。また、第一加熱手段40の周囲ほぼ全体を囲むように設けられた開口703から調理室30内の空気が吸引されるので、開口703を通過する際に第一加熱手段40によって空気が加熱され、触媒体62へ流入する気流の温度も高くなる。このため、触媒体62での汚染物の分解に係る化学反応速度が速まり、より多くの汚染物質が除去され、空気の清浄度を高めることができる。
図24は、実施の形態3に係る調理室30の上壁33、調理室扉7、吸込口体60、第一加熱手段40、及び触媒体58を取り外した斜視図である。
調理室30の後壁34には、吸込口体70の内側に対応する位置に第一吸込口32Bが設けられている。第一吸込口32Bは、ターボファン52の吸引部に対向する位置に開口している。
図25は、実施の形態3に係る調理室30の上壁33、加熱室50と付帯部品を取り外した背面側斜視図である。
調理室30の後壁34に形成された吹出口31Bの外周には、加熱室50内側に突出する立ち上がり部54が設けられている。立ち上がり部54は、例えばバーリング加工などのプレス加工により容易に形成可能である。
図26は、実施の形態3に係る加熱室50と付帯する部品の斜視図である。
加熱室50の底面には、壁体75が設けられている。壁体75は、実施の形態1の庇部55と同様に加熱室50内において吹出口31Bの上方を覆うとともに、さらに吹出口31Bの左右を覆う被覆部材である。壁体75は、プレス加工等で波板状に成形された板金で構成されている。この壁体75は、スポット溶接やカシメ等で加熱室50の底面501に接合され、波板状に形成された壁体75の隆起した部分と加熱室50の底面501との間に、吹出口31Bの数と位置に対応した数の管路76を形成している。壁体75のうち、底面501との間に管路76を形成する部分を、管路形成部751と称する。壁体75によって形成する管路76は、実施の形態2で示した管路部65よりも、容易な加工かつ低コストで形成可能な、吹出口31Bに至る流路である。
加熱室50の底面501と管路形成部751とにより形成される管路76は、加熱室50の背面側が流入口となり、前面側が流出口となる。管路76の各流出口内には、吹出口31Bの立ち上がり部54が挿入される。管路形成部751の内面形状は、立ち上がり部54の外周形状に概ね沿い、立ち上がり部54の外周と管路76とが略密閉状態に接続されるのが好ましい。本実施の形態3では、管路形成部751内面形状は、管路76に垂直な断面でみると、立ち上がり部54の略上半分の外周に沿う略アーチ形である。管路76の流入口から流入した気流は、吹出口31Bから調理室30内へと吹き出される。
なお、本実施の形態3では、壁体75を加熱室50の底面501に取り付けた例を示したが、同様の構成の壁体75を調理室30の後壁34の背面側(加熱室50側)に取り付けてもよい。また、本実施の形態3では、一連の壁体75により、複数の吹出口31Bのそれぞれに対応する管路76を形成する簡易な構成としているが、壁体75を各吹出口31Bに対応して分割してもよい。
第二加熱手段53Bの一部は、ターボファン52の外周側下方において幅方向に延びており、当該部分を水平部531と称する。水平部531は、加熱室50の底面と壁体75との間に形成される管路76のすべての流入口の近傍に配置されている。このように管路76の近傍に第二加熱手段53Bを配置することで、複数の吹出口31Bから吹き出す気流の温度を高めるとともに、温度ムラを軽減する作用・効果が得られるのは、実施の形態2と同様である。
また、第二加熱手段53Bの一部は、ターボファン52の外周側の側方において高さ方向に延びており、当該部分を垂直部532と称する。垂直部532の少なくとも一部は、ターボファン52の回転中心よりも上側の領域に配置されており、また、垂直部532は、加熱室50の左右の壁面よりもターボファン52に近い位置に配置されている。本実施の形態3では、第二加熱手段53Bは、上記のような水平部531と左右両側の垂直部532とが連なった形状の、例えばシーズヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターである。
ターボファン52が回転することによってターボファン52の回転中心よりも概ね上方から送出された気流は、吹出口31Bに向かって流れる過程で、第二加熱手段53Bの垂直部532に接触し、さらに水平部531に接触する。このため、第二加熱手段53Bによるターボファン52から送出される気流の加熱効率が高まり、吹出口31Bからより高温の噴流を吹き出すことができるので、調理室30内における調理時間を短縮することができる。
図27は、実施の形態3に係る調理室30の正面断面図である。
調理室30の両側面及び天井面・底面には空隙39が設けられ、空気断熱されているのは実施の形態1と同様である。
調理室30の後壁34に形成された吹出口31Bは、左右方向の位置により異なる形状となっている。ここで、具体的に説明するため、図27に示す吹出口31Bのそれぞれを、紙面左側から順に、吹出口311、312、313、314、315、316、317と区別して称する場合がある。図27に示すように、吹出口311〜317は、いずれも略円形であるが、左右幅方向の位置によって開口面積が異なり、調理室30の幅方向中央から遠い側ほど開口面積が広い。すなわち、左右方向の略中心に配置された吹出口314に対し、その左側に配置された吹出口313の方が開口面積が広く、さらにその左側に配置された吹出口312、311の順に開口面積が大きい。また、左右方向の略中心に配置された吹出口314に対し、その右側に配置された吹出口315の方が開口面積が大きく、さらに右側に配置された吹出口316、317の順に開口面積が大きい。
複数の吹出口31Bを並べて配置した場合、噴流の周囲が負圧となって誘引作用が生じ、左右の噴流は引き寄せられる傾向にあるため、すべての吹出口31Bを同じ開口面積とした場合は、調理台41Bの載置面411B上の被加熱物の左右方向の中心付近がより加熱される傾向となる。本実施の形態3のように、左右方向の中心から遠い側の吹出口31Bの開口面積を広くして左右方向の中心に近い側の開口を狭くすることで、左右方向の加熱ムラを軽減することができる。
また、複数の吹出口31Bにおいて、ターボファン52からの距離が等しいもの同士の開口面積を対比すると、ターボファン52から送出される気流の旋回成分方向との一致度が高い吹出口31Bの開口面積は、旋回成分方向との一致度が低い吹出口31Bの開口面積と同じか小さくなるように構成している。なお、気流の旋回成分方向との一致度が高い吹出口31Bとは、旋回成分をより多く取り入れることのできる吹出口31Bをいう。具体的には、図27に示す例では、ターボファン52に対して等距離に吹出口313と吹出口315とが開口しているが、ターボファン52から送出される気流の旋回成分方向に位置する吹出口315は、吹出口313と同じ開口面積かそれよりも小さい開口面積である。同様の考え方により、ターボファン52に対して等距離に配置された吹出口312と吹出口316とにおいて、吹出口316の開口面積は、吹出口312の開口面積と同等以下である。このようにしているのは、同一の開口面積である場合、ターボファン52の回転中心よりも下側において旋回成分が向かう方向側の開口は、吹き出す風量が相対的に多くなる傾向があるためである。ターボファン52の旋回成分方向側に開口している吹出口31Bの開口面積を、その吹出口31Bと同じ距離だけターボファン52から離れている吹出口31Bと同一以下にすることで、旋回成分方向側に開口している吹出口31Bから吹き出される噴流を抑制し、加熱ムラを抑制することができる。
壁体75の管路形成部751は、左右位置により形状の異なる吹出口31Bに対応して、それぞれの吹出口31Bの外周に概ね沿うような形状に構成されている。
図28は、実施の形態3に係る調理室30の側面断面図である。図28(A)は加熱調理器1の全体を示す図、図28(B)は吹出口31B近傍を拡大して示す図である。
吹出口31Bは、調理台41Bの載置面411Bの吹出口31B側の高さ位置と、受皿42の吹出口31B側高さ位置の間とに配置されている。
また、吹出口31Bの開口下端は、加熱室50の底面501との間に段差を設けて配置されている。より詳しくは、加熱室50の底面501に対し、吹出口31Bの開口下端の方が、高い位置に配置されている。吹出口31Bの開口下端と底面501との高低差により、壁体75と加熱室50の底面501との間を流れる気流の上方に向かう成分が付勢され、吹出口31Bから斜め上方に気流が吹き出されて、調理台41Bに載置される被加熱物の底面に気流が衝突し、衝突噴流熱伝達を行う。
壁体75は、上方のターボファン52から送出される上方から下方に向かう流れや、ターボファン52の旋回成分による左右方向の流れが、吹出口31Bに直接流入して、吹出口31Bからの噴流が下方や左右方向に傾斜して吹き出されるのを抑制する。壁体75と加熱室50の底面501との間に形成される管路76を流れ吹出口31Bに向かう気流は、管路76内において上下左右方向の乱れが軽減され、直進に近い流れに整流される。
また、立ち上がり部54を設けたことで、壁体75と調理室30の後壁34との接合部に組立てや熱応力による変形で隙間が生じても、その隙間から流入する気流に対して立ち上がり部54が風よけとして機能する。このため、隙間から気流が流入したとしてもその気流は直接的に吹出口31Bに到達せず、吹出口31Bから吹き出される噴流が斜め方向へ向かって流れるのを抑制することができる。
調理室30の天井面と吸込口体70の吸込口体上壁702とで形成される風路は、第一吸込口32Bに近づくほど(後壁34に近づくほど)風路断面積が大きくなっている。本実施の形態3では、略水平に設けられた上壁33に対し、吸込口体上壁702は、第一吸込口32Bに近づくほど上壁33から離れるように傾斜している。このように、吸込口体70の吸込口体上壁702に設けられた開口703、開口704で分散吸気された気流が集積される第一吸込口32Bの吸込口側の風路断面を大きくすることで、圧力損失の増加を抑制して、吹出口31Bからの吹き出し風速を高めている。
調理台41Bの載置面411Bは、調理室30の奥行き方向において水平ではなく、吹出口31Bが形成された後壁34側に対し、吹出口31Bから遠い調理室扉7側(前面側)の方が、高さが低くなるように傾斜している。また、調理台41Bの載置面411Bに載置される被加熱物が高さの低い前面側から滑り落ちるのを抑制するため、調理台41Bの載置面411Bの前面側には、落下防止部72が設けられている。落下防止部72は、本実施の形態3では、調理台41Bの載置面411Bの前面側よりも高い位置にて幅方向に延びる棒状の部材で構成されているが(図24参照)、被加熱物が滑り落ちるのを抑制可能な構成であれば、落下防止部72の具体的構成は限定されない。
このように構成された実施の形態3の調理室30の作用を、主に図28を参照して説明する。
電動機51の動作によりターボファン52が回転すると、ターボファン52に対向して開口した調理室30の第一吸込口32Bに吸引力が生じる。そうすると、調理室30内の空気の一部は、吸込口体70に設けられた開口703から吸引される。開口703にて流路が収縮するために気流は増速する。開口703から吸引される空気は、第一加熱手段40の近傍を通過する過程において第一加熱手段40で加熱され、吸込口体上壁702と上壁33との間に形成される流路を、第一吸込口32B側に向かって進む。また、調理室30内の空気の一部は、吸込口体70に設けられた開口704からも吸引され、同じく吸込口体上壁702と上壁33との間に形成される流路を、第一吸込口32B側に向かって進む。このような空気の流れを、図28に破線矢印で概念的に示す。調理室30の上壁33と吸込口体上壁702とで形成される風路は、開口703、開口704で分散吸気された気流が集積される第一吸込口32Bの吸込口側ほど風路断面が大きいため、圧力損失の増加を抑制することができる。
そして、開口703、開口704から吸引された空気は、触媒体62を通過する際に煙・油煙が浄化されながら酸化分解の反応熱でさらに加熱され、第一吸込口32Bから加熱室50内に流入してターボファン52より送出される。
加熱室50内でターボファン52より送出された気流の一部は、調理室排気ダクト26へ流入して、調理室排気ダクト26に設けられた触媒体58でさらに浄化される。調理室排気ダクト26で浄化される点は前述の実施の形態1と同様であるが、流入する排気が既に吸込口体70に設けられた触媒体62で浄化されているため、加熱調理器1外へ排気される空気は実施の形態1に比べ清浄度は高くなる。なお、このようにして調理室30内の空気の一部は調理室排気ダクト26から排気されるが、排気されたその分の空気は、調理室扉7と調理室30との隙間(図示せず)や、吸気のために別途設けられた開口部(図示せず)から吸引されて補われる。
また、ターボファン52より送出された気流の多くは、吹出口31Bより調理室30内の斜め上方に向けて吹き出され、調理台41Bの載置面411B上の被加熱物の下方に衝突して被加熱物を加熱する。このような気流の流れを、図28に実線矢印で概念的に示す。調理台41Bの載置面は、前面側が低くなる傾斜となっており、水平な載置面に比べ、吹出口31Bからの気流が被加熱物の下方と衝突する角度は垂直に近くなる。衝突噴流熱伝達においては、垂直に近い角度で衝突するほど伝熱は良くなるため、調理台41Bの載置面411Bを傾斜させてこの載置面411Bに被加熱物を載置することで、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、吸込口体70設けられた開口703、開口704により、調理室30の上方において分散吸気を行うことにより、調理台41Bの載置面を通過して上方に向かう気流を形成することができる。このような調理室30内の下方から上方に向かう気流を形成することで、被加熱物の底面と側面の加熱効率を高めることができる。
なお、実施の形態3の調理室30では、実施の形態1と同様に、制御手段が所定の制御シーケンスにしたがって第一加熱手段40、第二加熱手段53B、及び電動機51の動作を制御する。実施の形態1で示した調理室30内における加熱調理(例えば、魚や肉等の食材を調理台41Bに直接載置して加熱する調理モード、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室30内で調理する連携調理モード)については、本実施の形態3においても同様にして実施可能である。
以上のように本実施の形態3では、吹出口31Bの開口の最下部を、加熱室50の底面501よりも高い位置に配置し、吹出口31Bの開口の最下端と加熱室50の底面501との間に高低差を設けた。そして、加熱室50内において、吹出口31Bの上方及び左右を囲む壁体75を設け、壁体75と加熱室50の底面501との間に、吹出口31Bを出口とする管路76を形成した。このような壁体75を設けたことにより、ターボファン52から送出される気流が直接吹出口31Bに流入するのを防止することができる。また、加熱室50の底面501と壁体75とで、吹出口31Bに至る管路76を形成した。壁体75という比較的製造が容易な形状と構造で、ノズル状の吹出口を安価に量産でき、このようにして形成した管路76を通過する過程において、直進性の高い噴流が形成される。
また、加熱室50の底面501と吹出口31Bの開口の最下部との段差により、上方へ向かう流れを生じさせ、吹出口31Bから調理台41Bの載置面に向かう斜め上方の気流を形成することができる。このため、衝突噴流熱熱伝達により被加熱物底面を加熱することで加熱効率を高め調理時間を短縮でき、低コストで加熱性能の高い加熱調理器を得られる効果がある。
また、吹出口31Bの周囲を囲む立ち上がり部54を設け、立ち上がり部54と壁体75が上方からみて重なるように配置した。このため、調理室30の後壁34の背面側と壁体75との気密性が高まるとともに、調理室30の後壁34の背面と壁体75とに隙間が生じた場合に侵入する気流の影響が立ち上がり部54によって緩和され、吹出口31Bから斜め上方に向かう噴流を安定的に形成することができる。したがって、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器を得ることができる。
また、複数の吹出口31Bのうち、調理室30の幅方向中央から遠いものほど、開口面積を大きくした。このため、調理室30の左右幅方向における加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器を得ることができる。なお、複数の吹出口31Bのうち調理室30の幅方向中央から遠いものほど開口面積を大きくするという構成は、実施の形態1及び実施の形態2にも適用可能であり、同様の効果を奏する。
また、複数の吹出口31Bのうち、ターボファン52からの距離が概ね等しいもの同士においては、ターボファン52から送出される気流の旋回成分方向との一致度が高い吹出口31Bほど、開口面積を小さくした。これにより、ターボファン52の回転中心の左右に生じる加熱ムラを軽減でき、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器を得ることができる。なお、この構成は、実施の形態1及び実施の形態2にも適用可能であり、同様の効果を奏する。
また、調理室30の天井面と吸込口体70の吸込口体上壁702との間に風路を形成し、調理室30の上方に位置する吸込口体上壁702に第二調理室吸込口71を形成した。このため、調理台41Bを下方から上方に流れる気流が形成され、載置される被加熱物の底面と側面の加熱効率が向上し、調理スピードの速い加熱調理器を得ることができる。
吸込口体70の吸込口体上壁702の単位面積当たりの第二調理室吸込口71の開口率は、第一吸込口32Bに近い側ほど小さくなるようにした。このため、調理室30の背面側(第一吸込口32Bに近い側)から前面側(第一吸込口32Bに遠い側)にわたり、調理台41Bの載置面を下方から上方に流れる気流が分布良く形成される。したがって、調理台41Bの載置面に載置される被加熱物の底面と側面の加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器を得ることができる。
吸込口体60の吸込口体上壁702に形成された開口703は、第一加熱手段40を平面視で投影した形状から所定の間隔の隙間をもって開口しており、第一吸込口32Bに近い側ほど概ね間隔が狭くした。このため、調理台41Bの載置面を下方から上方に流れる気流が分布良く形成され、載置される被加熱物の底面と側面の加熱ムラが軽減される。また、調理室30内の空気が、第一加熱手段40の近傍を通過して開口703から吸引されることで加熱され、吸込口体70に設けられた触媒体62への流入温度が高まり、排気及び庫内の空気の清浄度が高まる。また、第一加熱手段40と吸込口体70とを、高さ方向に重ねて配置することで、調理室30の上方に吸気が流れる風路を設けても、調理室30の有効庫内高さを大きく狭めることはない。
吸込口体70に触媒体62を備え、この触媒体62を、第一加熱手段40の放射が届く位置に配置した。このため、触媒体62が第一加熱手段40からの放射により加熱され、排気及び庫内の空気の清浄度が高まる。また、触媒体62を加熱するための加熱手段を別途設ける必要がなく、安価な加熱調理器とすることができる。
また、加熱室50を構成する壁面のうち吹出口31Bが設けられた壁面(実施の形態1では調理室30の後壁34)とは異なる面に、通風可能な加熱室排気口57を設け、加熱室排気口57には触媒体58を内蔵した調理室排気ダクト26を接続した。そして、第二加熱手段53Bの少なくとも一部からの熱放射が、触媒体58直線的に届くように、第二加熱手段53Bと触媒体58を配置した。吸込口体70に設けられた触媒体62で浄化された空気が、調理室排気ダクト26に設けられた触媒体58でさらに浄化されるので、排気の清浄度を増すことができ、快適な調理空間・環境が得られる加熱調理器とすることができる。
また、吹出口31Bの流入側である、加熱室50の底面501と壁体75とで形成される管路76の流入口のすべての近傍に、第二加熱手段53Bを配置した。このため、各吹出口31Bからは、第二加熱手段53Bにより加熱された気流が吹き出され、吹出口31Bからの気流の温度ムラが軽減されて、良好な調理効果・仕上がりが得られる加熱調理器を得ることができる。また、第二加熱手段53Bを壁体75の近傍に配置したことで、壁体75が加熱され、気流が壁体75を通過するときの壁体75から気流への伝熱作用により、気流はさらに加熱され、吹き出し温度をさらに高めることができるので、加熱効率を高める効果がある。
第二加熱手段53Bは、ターボファン52の回転中心より概ね上方に対応する位置に、垂直部532を備えている。この垂直部532は、加熱室50の左右壁面よりもターボファン52の外周側に近い側に配置されている。また、第二加熱手段53Bは、ターボファン52の回転中心よりも下方に配置された水平部531を有している。このため、ターボファン52から送出される気流の多くは、垂直部532に接触するとともに水平部531に接触するので、気流の加熱効率が向上し、吹出口31Bからの気流の温度を高温にすることができることから、調理スピードの速い加熱調理器を得ることができる。
調理台41Bの載置面411Bは、吹出口31Bから遠い側の方が近い側よりも低く構成されているので、吹出口31Bからの気流が被加熱物の下方と衝突する角度が垂直に近くなり加熱効率を高まる。また、調理台41Bの載置面を傾斜させたことにより、被加熱物からの油分や汁気が吹出口31Bから遠い側へ伝って受皿42に滴下するため、吹出口31Bからの気流による油分や汁気の加熱が軽減される。このため、発煙や被加熱物への着色や臭い移りが軽減され良好な調理の仕上がりが得られるとともに、排気の清浄度が向上する効果がある。また、調理台41Bの載置面411Bの低い側に落下防止部72を設けたので、傾斜した載置面上を被加熱物が滑って落下するのを抑制でき、調理作業が悪化するのを抑制し、また清掃性が良好となる。
実施の形態4.
本実施の形態4では、実施の形態1、2と異なる構成を中心に説明する。
実施の形態4に係る加熱調理器を、図1、図4〜図6、図15、図29〜図39に示す。図1、図4〜図6に係る構成は実施の形態1と同様で、図15に係る構成は実施の形態2と同様である。
図29は、実施の形態4に係る調理室30の前面側斜視図である。図30は、実施の形態4に係る調理室30の背面側斜視図である。
調理室30の後壁34に配置される加熱室50は、正面視において第一加熱手段40の端子部及び取付け部に対応する部分を切り欠いた形状であり、第一加熱手段40の組立性と端子部の温度上昇を抑制している。つまり、図30に示されるように、加熱室50の上壁は、第一加熱手段40の端子部及び取付け部を避けて階段状に形成されており、第一加熱手段40の端子部及び取付け部は加熱室50内に挿入されない。このため、第一加熱手段40の端子部が加熱室50に干渉せず、組立が容易であるとともに、加熱室50の熱が第一加熱手段40の端子部に伝わり難いので、端子部の温度上昇を抑制できる。
加熱室50の内部の背面に、第二加熱手段53Cが取り付けられており、第二加熱手段53Cの端子部は加熱室50の後壁を貫通して加熱室50の外に突出している。
図31は、実施の形態4に係る調理室30から上壁33の上壁上板331、スライドレールカバー353、及び加熱室50とその付帯部品を取り外した背面側斜視図である。
前述の実施の形態1で述べた通り、調理室30の上壁33は、空隙39を介して二枚の壁が配置された二重壁構造であるが、本実施の形態4及びこれ以降の実施の形態では、二重壁構造を成す上壁33の上側の壁を上壁上板331、下側の壁であって調理室30の天井面を構成する壁を上壁下板332と区別して称する。調理室30の上壁33の上壁上板331と上壁下板332との間には空隙39が形成され、空隙39が断熱空間を形成しているが(図36参照)、この断熱空間内であって上壁下板332の上に、風路上部部品80が配置されている。風路上部部品80と上壁下板332との間には、上部風路79が形成されている。
風路上部部品80は、下面を開放した中空の凸形状の部材である。風路上部部品80の下端の周縁部には、フランジ部が形成されており、風路上部部品80はこのフランジ部を介してネジ等の締結部材、カシメ、溶接のいずれかで上壁下板332に概気密に取り付けられている。
調理室30の後壁34には、集合ダクト77が設けられ、集合ダクト77内に複数の吹出口31C(図32参照)が配置されている。
図32は、実施の形態4に係る調理室30から上壁上板331、風路上部部品80、スライドレールカバー353、及び加熱室50とその付帯部品を取り外した状態の分解背面側斜視図である。
調理室30の後壁34には、複数の吹出口31Cが設けられている。各吹出口31Cの外周には、立ち上がり部54が加熱室50の内側に向けて突出して設けられている。立ち上がり部54及び吹出口31Cは、集合ダクト77に内包される。集合ダクト77は、加熱室50内の空気を吹出口31Cに導く風路を自身の内部に形成する。
集合ダクト77は、本実施の形態4では、調理室30とは独立した部品として設けられており、背面及び前面を開口した角枠状の部品である。集合ダクト77が調理室30の後壁34に取り付けられた状態では、集合ダクト77の背面側の一端に形成された開口部は加熱室50内に開口し、集合ダクト77の前面側の開口部は後壁34に接続されて複数の吹出口31Cの外周を囲んでそれらを内包する。
集合ダクト77のダクト部の調理室30側の外周縁にはフランジ部78が設けられ、フランジ部78を介して集合ダクト77が後壁34に取り付けられる。フランジ部78は後壁34と面接触し、集合ダクト77と後壁34との間の気密性を高めている。また、垂直方向に比べて寸法の大きい集合ダクト77の水平方向の上下の辺においては、ダクト部とフランジ部78との間に曲げ(角)を設けることで剛性を高め、高温となる加熱室50内での熱応力による集合ダクト77の変形を抑制して整流効果の低減を抑制している。このため、適切な気流形成がなされ、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
集合ダクト77はフランジ部78を介して後壁34と固定されるが、固定はネジ又はリベット等の締結部材、カシメ、溶接のいずれかで行われる。このため、高温となる加熱室50内でも十分な締結力が得られ、フランジ部78と後壁34との間に隙間が生じにくい。したがって、フランジ部78と後壁34との隙間から気流が流入して集合ダクト77の整流効果を阻害することなく、良好な整流効果が維持され、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
風路上部部品80の下方の上壁下板332には、第二調理室吸込口83と天井壁開口82が設けられている。上壁下板332の一部は、下方に向かって凹んでおり(この凹んだ部分を上壁凹部332aと称する)、上壁凹部332aに複数の第二調理室吸込口83が形成されている。上壁凹部332aの上、すなわち上壁下板332の凹みの中には、触媒体99が収納され、第二調理室吸込口83は触媒体99で上から覆われる。触媒体99は、実施の形態1で示した触媒体58あるいは実施の形態2で示した触媒体62と同様に空気を清浄化するためのものであり、機能的には触媒体58又は触媒体62と同様の構成である。
上壁凹部332aに触媒体99を収納することで、第二調理室吸込口83の下方に配置される第一加熱手段40との距離を縮めて触媒体99の加熱効率を高めている。触媒体99の加熱効率を高めることができるので、触媒体99の温度を効率よく高くすることができ、触媒体99の触媒活性を高め、触媒体99を通過する空気に含まれる汚染物質の酸化分解・浄化性能を高めることができる。また、触媒体99の上面と、この触媒体99の上に配置される風路上部部品80の下面との間の距離を離して通風空間を広くすることで、上壁下板332と風路上部部品80との間に形成される上部風路79の圧力損失を軽減することができ、送風手段である遠心ファン85の風量を増やして加熱効率を高めることができる。
天井壁開口82は、後壁34と近接して設けられる。天井壁開口82の下方であって調理室30の内部には、風路下部部品81が設けられる(図33参照)。
図33は、実施の形態4に係る調理室30の、上壁33とその付帯部品、及び調理室扉7とその付帯部品を取り外した前面側斜視図である。
後壁34の調理室30の内側には、第一吸込口32Cを前面側から覆う風路下部部品81が取り付けられている。風路下部部品81と後壁34との間には、通風可能な空間が設けられており、この空間を下部風路74と称する。風路下部部品81の上端を接続口84と称し、風路下部部品81は接続口84を介して上壁下板332と概気密に接触して、天井壁開口82と接続される。風路下部部品81の後壁34への接触面にはフランジ部が形成されており、風路下部部品81はそのフランジ部を介して後壁34にネジ等の締結部材、カシメ、溶接のいずれかで概気密に固定されている。したがって、天井壁開口82から第一吸込口32Cに至る概ね気密の下部風路74が形成される。
図34は、実施の形態4に係る加熱室50及びその付帯部品の斜視図である。
加熱室50の内部には、遠心ファン85が配置されている。上記のように加熱室50の上壁は第一加熱手段40の端子部及び取付け部を避けて一部(図34の紙面右側の一部)が凹んでいるところ、遠心ファン85は、その回転中心が加熱室50の左右中央よりも左側に位置するように配置されている。このため、加熱室50の右上部に切欠部を設けても、遠心ファン85のファン外径を大きくすることができ、ファン外径を大きくすることで送風性能を高めるとともに送風量を増やし、加熱効率を高めている。
遠心ファン85の下方には、U字状の第二加熱手段53Cが配置されている。第二加熱手段53Cは、遠心ファン85からみて吹出口31Cと同一方向である下方に配置されている。また、第二加熱手段53Cの長軸方向は、複数の吹出口31Cの配列方向と同じ方向である左右方向に延びている。このように第二加熱手段53Cを設けたことで、第二加熱手段53Cで加熱された空気が吹出口31Cから比較的効率的に送出され、加熱室50の遠心ファン85の回転中心よりも上方からの放熱が軽減されて加熱効率が高まるとともに、調理室30外への熱伝達が軽減されて冷却効率を高めることができる。
本実施の形態4では、第二加熱手段53Cとしてシーズヒーターを用いるが、シーズヒーターに代えてセラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよく、同様に循環風を加熱でき同様の効果が得られる。
加熱室50の上方には、調理室排気ダクト26Aに接続される加熱室排気口57Aが設けられ、この加熱室排気口57A及び調理室排気ダクト26Aを通って排気が加熱調理器1外へ排出されるのは、実施の形態2と同様である。
また、加熱室50の内側に加熱室温度検知手段56を備えて制御を行うことは、実施の形態1と同様である。
図35は、実施の形態4に係る調理室30の風路上部部品80部分における断面図である。
上壁下板332の上壁凹部332aには触媒体99が収納され、その下方に第二調理室吸込口83が開口している。第二調理室吸込口83は、調理室30の前後方向の室内寸法において、調理室30の前端から1/5〜4/5の範囲、すなわち、調理室30の前後方向寸法の前側1/5と背面側1/5を除く中間3/5の領域内に配置されている。
また、触媒体99の下方には第二調理室吸込口83が配置され、その下方には第一加熱手段40が配置されている。さらに、第一加熱手段40は、上面視において触媒体99と重なる部分を有する形状である。さらに本実施の形態4では、上面視において触媒体99と重なる領域において、第一加熱手段40は2箇所で曲げられている。このように、上面視において触媒体99と重なる部分に第一加熱手段40の複数の曲がり部を配置したことで、触媒体99と第一加熱手段40とが重なる領域を増やすことができ、触媒体99の加熱特性を高めるとともに加熱ムラを軽減して、触媒の酸化分解性能を高め、触媒体99を通過する空気の清浄度を高めている。なお、第一加熱手段40の曲げ形状及び曲げ回数は、図示のものに限定されない。
風路上部部品80の左右方向の幅は、第一加熱手段40の左右方向幅よりも広く、上面視において左右方向で第一加熱手段40を覆うように風路上部部品80が配置されている。つまり、上方から見ると、風路上部部品80の左右幅の範囲内に、第一加熱手段40が配置されている。このようにすることで、第一加熱手段40からの熱を、第二調理室吸込口83から第一吸込口32Cへ向かって上部風路79内を流れる循環風の加熱に用いることができ、循環風の温度を高め被加熱物の加熱効率を高めることができる。また、第一加熱手段40の上方を風路上部部品80が覆うため、第一加熱手段40で上壁33の上壁上板331が加熱され温度が上昇して調理室30外へ伝熱するのを軽減できることから、調理室30の上方に配置する部品の温度上昇を抑え、それらの部品の冷却効率を高めることができる。
本実施の形態4において風路上部部品80は、上面視において左右方向及び前後方向の背面側で第一加熱手段40を覆うように配置しているが、前後方向の前面側の上方も風路上部部品80で覆うようにしてもよい。このようにすることで、風路上部部品80と上壁下板332との間に形成される上部風路79を流れる循環風の温度が高まり、加熱効率を向上させるとともに、上壁上板331の加熱が軽減されて調理室30外の冷却効率を高めることができる。
図36は、実施の形態4に係る調理室30の第二調理室吸込口83位置の正面断面図である。図37は、図36の左側の吹出口31C近傍を中心に示す要部拡大図である。なお、図37では図36の左側の要部のみを図示しているが、右側についても同様の構成である。図36及び図37では、具体的に説明するため、複数の吹出口31Cのうち左端及び右端に配置されたものを吹出口31Ca、左右端以外のものを吹出口31Cbと区別して称する場合がある。
本実施の形態4では、10ヵ所の吹出口31Cが形成されており、これら吹出口31Cは左右方向において概ね等間隔に配置されている。
吹出口31Cは、載置面411の下方の通風空間内に配置されるという点は実施の形態1と同様である。しかし、本実施の形態4は、吹出口31Cに関連して次のような特徴を有する。
ここで、調理台41の載置面411の吹出口31C側の端部と、受皿42の吹出口31C側の上端である上端縁421との高さ方向の中間を、載置面・受皿中間線87と称する。また、吹出口31Cの高さ方向の中心を、吹出口中心86と称する。本実施の形態4の吹出口31Cは、吹出口中心86が、載置面・受皿中間線87よりも受皿42側(下側)に位置するように配置されている。吹出口中心86を受皿42側に配置したことで、被加熱物が載置面411の吹出口31C側(後壁34側)に載置された場合に、吹出口31C近傍の過加熱が抑制され、焦げすぎによる食味の悪化が抑制されて良好な調理効果・仕上がりが得られる。
左右方向に並べて配置された複数の吹出口31Cのうち、左右両端に配置される吹出口31Ca、つまり調理室30の側壁67の最も近くに配置される左右の吹出口31Caそれぞれの側壁67側の端部(壁面端という)と、集合ダクト77の側壁面(側壁面の内面をいう。以下、単に側壁面という場合も同様。)との距離である吹出口・側壁面間隔88は、吹出口31Caの幅以下の寸法としている。吹出口・側壁面間隔88を吹出口31Caの幅以下の寸法として、吹出口31Caを集合ダクト77の側壁面に近接させて配置することで、左端に配置される吹出口31Caから調理室30の左側の側壁67の方向に向かう流れが形成され、また、右端に配置される吹出口31Caから調理室30の右側の側壁67の方向に向かう流れが形成される。したがって、被加熱物を載置面411の左右両端付近に載置した場合でも、被加熱物の左右両端付近に吹出口31Cからの気流が届きやすくなるので、被加熱物の左右両端付近に気流が到達しにくく加熱量が少なくなることによる生焼けや焼き色がつかないといった加熱ムラが抑制され、良好な調理効果・仕上がりが得られる。
図38は、実施の形態4に係る調理室30の側面断面図であり、正面視にて左から3番目の吹出口31Cにおける断面を示している。図39は、図38の吹出口31C近傍における要部拡大図である。
風路上部部品80は、上壁上板331と上壁下板332とで形成される空隙39内に配置されており、風路上部部品80と上壁下板332との間に上部風路79が形成されている。風路上部部品80は空隙39内に配置されていて、風路上部部品80を設けても調理室30の高さ寸法が高くならないことから、筐体2内の実装効率を高めることができる。また、冷却風の風路幅も十分に確保できるので、圧力損失を低下させて冷却効率を高めることができる。また、調理室30の上壁下板332の高さ位置も低くなることはないため、調理室30内の有効調理高さを十分確保することができる。
風路上部部品80と上壁下板332との間に形成される上部風路79と、風路下部部品81と後壁34との間に形成される下部風路74とは、天井壁開口82を介して連通している。したがって、一連の上部風路79及び下部風路74により、第二調理室吸込口83から第一吸込口32Cに至る風路が形成される。
集合ダクト77の高さ寸法は、吹出口31Cの高さ寸法の1倍以上2倍以下である。このため、吹出口31Cでの高さ方向の流れの縮小を抑えて圧力損失を低減できるとともに、集合ダクト77の整流効果を妨げることなく吹出口31Cから気流を送出でき、適切な気流制御がなされ良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
集合ダクト77の流れ方向の寸法は、集合ダクト77の高さ寸法の0.5倍以上3倍以下である。このため、集合ダクト77の圧力損失の増大を抑えつつ、上下方向の十分な整流効果が得られ、吹出口31Cから適切な気流を送出することができる。したがって、被加熱物の良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
加熱室50の底面501は、吹出口31Cの下端から吹出口31Cの高さ寸法以上に離して配置される。つまり、吹出口31Cの下端と、加熱室50の底面501との間の距離は、吹出口31Cの高さ寸法以上の値である。底面501を吹出口31Cの下端から距離を離して配置することで、吹出口31Cの上流側には空間(チャンバー)が形成される。このため、遠心ファン85からの旋回成分を伴う気流は、吹出口31Cの下端と底面501の間の空間に流入し、旋回成分が緩和された状態で集合ダクト77へ流入する。そして、吹出口31Cの上流側に形成された加熱室50の底面501と吹出口31Cの下端との間の空間(チャンバー)において、遠心ファン85から送出される気流の旋回成分を緩和させることができる。したがって、吹出口31Cから送出される気流は、旋回成分の影響を受けにくくなり、調理室30の側壁67の壁面と比較的平行な流れを形成することができる。例えば左又は右方向に傾いた気流が調理室30内に吹き出された場合は、載置面411上の被加熱物の左前又は右前(調理室扉7側)の下方に気流が到達しにくく、加熱量が少なくなり生焼けや焼き色がつかないといった加熱ムラを生じることもある。しかし、本実施の形態4の構成によれば、吹出口31Cからの比較的平行な気流により加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
集合ダクト77の流れ方向の角度は、水平(0°)以上で30°以下の角度としている。より具体的には、集合ダクト77は、その内部を流れる空気の流れ方向において、流れの上流側から下流側(調理室30側)に向かって、水平(0°)、又は、水平(0°)に対して30°以下の範囲で上昇するように傾斜している。このようにすることで、集合ダクト77内で整流されて吹出口31Cから調理室30内に吹き出される気流は、載置面411上の被加熱物の下面にほどよく接触し、被加熱物の加熱ムラが低減されて良好な調理効果・仕上がりを得られる。また、吹出口31Cからの気流による受皿42の加熱が抑制され、受皿42に滴下した油分・汁気からの発煙が軽減され、被加熱物への着色や臭い移りを抑制して良好な調理の仕上がりを得ながら排気の汚れを軽減して快適な調理作業空間を保つことができる。なお、図38、図39の例では、集合ダクト77の傾きを10°としている。
このように構成された実施の形態4の調理室30の作用を説明する。
電動機51の動作により遠心ファン85が回転すると、遠心ファン85に対向して開口している第一吸込口32Cに吸引力が生じる。そうすると、調理室30内の空気は、第二調理室吸込口83から吸い込まれ、触媒体99を通過する際に煙や臭気成分が酸化分解されて浄化されるとともに酸化分解の反応熱で加熱され、上壁下板332と風路上部部品80で形成される上部風路79を背面側へ向かって流れていく。このときに、上部風路79の下方に配置された第一加熱手段40の熱は、上部風路79を流れる循環気流に上壁下板332を介して伝わり、循環気流はその熱でさらに加熱され、天井壁開口82を経て後壁34と風路下部部品81とで形成された下部風路74を通過して、第一吸込口32Cから加熱室50内に流入して、遠心ファン85から送出される。
加熱室50内で遠心ファン85から送出された気流の一部は、調理室排気ダクト26Aを経て、排気される。
加熱室50内で遠心ファン85から送出された気流の多くは、第二加熱手段53Cによって加熱され、集合ダクト77を通る過程で整流され、吹出口31Cから調理室30内に吹き出される。吹出口31Cの近傍は、吹き出される気流の流速が速いことから負圧となり、後壁34や風路下部部品81に沿った下降する気流が形成される。吹出口31Cから吹き出された気流は、その下降する気流と合流することで下方へ向かう速度成分が合成され、吹き出された角度よりも若干下方に向いた流れとなり、調理台41の載置面411上の被加熱物の下方に衝突して被加熱物を加熱する。調理室30内に吹き出された気流は、直接又は調理室30内を循環した後に第二調理室吸込口83に吸い込まれる。
第二調理室吸込口83は、調理室30の前後方向寸法の前側1/5と背面側1/5を除く中間3/5の領域内に配置されているため、調理室30内を奥行き方向にわたって流れながら循環する気流を良好に形成でき、温度ムラを軽減することができる。例えば調理室30の前後方向寸法の前側1/5の範囲に第二調理室吸込口83を配置した場合は、前方上部から背面上部へ流れる気流が形成されにくく、背面上部に温度の高い領域が形成され温度ムラとなる傾向がある。また、例えば調理室30の前後方向寸法の背面側1/5の範囲に第二調理室吸込口83を配置した場合は、吹出口31Cからの気流が前方下部へ到達しにくく、当該部分の温度が低くなり温度ムラになる傾向がある。しかし、本実施の形態4に示したように、調理室30の前後方向寸法の中間部に第二調理室吸込口83を配置することで、これらの温度ムラを軽減できる。
なお、実施の形態4の調理室30では、実施の形態1と同様に、制御手段が所定の制御シーケンスにしたがって第一加熱手段40、第二加熱手段53C、及び電動機51の動作を制御する。実施の形態1で示した調理室30内における加熱調理(例えば、魚や肉等の食材を調理台41に直接載置して加熱する調理モード、トッププレート4上の載置部8で調理されたものを、調理室30内で調理する連携調理モード)については、本実施の形態4においても同様にして実施可能である。
また、実施の形態4の調理室30では、制御手段は外部と通信を行う送受信手段を備えている。そして、送受信手段が外部から使用電力制限の指示を受信した場合、制御手段は、加熱調理器1の使用電力を制限するように各部を制御する。より具体的には、制御手段は第一加熱手段40の電力制限を優先し、第二加熱手段53C及び送風手段である電動機51の電力制限の優先順位を低くする。このようにすることで、使用電力を制限することによる調理効果・仕上がりへの影響を軽減している。なお、電力制限を実行した場合には、制御手段は、制限した電力及び制限した時間に応じて、目的の調理効果及び仕上がりが得られるように加熱時間・火力を算出し、調理制御の変更を行う。
以上のように本実施の形態4では、調理台41の載置面411と受皿42との間に形成される通風空間の高さの範囲内に複数の吹出口31Cを設け、複数の吹出口31Cを内包する集合ダクト77を加熱室50側に設けた。そして、集合ダクト77の、加熱室50内に開口した開口部から吹出口31に向かう角度は、0°以上30°以下とした。このため、加熱室50内の空気は、集合ダクト77を通過する過程において上下方向に整流され、吹出口31Cから斜め上方に向かって気流が吹き出される。このため、調理台41の載置面411上に載置される被加熱物の下面に、ムラが少なくなるように加熱された気流(熱風)を接触させることができるので、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。また、一つの集合ダクト77が複数の吹出口31Cを内包するので、実施の形態2のように各吹出口31Cに管路部65を設ける場合と比べ、構造的に単純化することができ、部品点数及び組み立て工数を少なくできるため、安価な加熱調理器を得ることができる。
集合ダクト77の流れ方向の長さ寸法は、集合ダクト77の高さ寸法の0.5倍以上3倍以下である。このため、圧力損失と整流効果のバランスが適切に保たれ、高い加熱効率が得られるとともに加熱ムラの少ない良好な調理効果・仕上がりが得られる。
集合ダクト77の高さ寸法は、吹出口31Cの高さ寸法の1倍以上2倍以下である。このため、圧力損失と整流効果のバランスが適切に保たれ、高い加熱効率を得られるとともに加熱ムラの少ない良好な調理効果・仕上がりが得られる。
調理室30の幅方向に並べられた複数の吹出口31Cのうち左右両端に配置される吹出口31Caの壁面端と、集合ダクト77の側壁面との距離である吹出口・側壁面間隔88を、吹出口31Cの幅以下の寸法としたことから、載置面411の左右両端付近に配置された被加熱物の左右両端部の加熱ムラが抑制され、良好な調理効果・仕上がりが得られる。
載置面411と受皿42それぞれの吹出口31C側の端部の中間である載置面・受皿中間線87よりも受皿42側(下側)に、吹出口31Cの中心の高さ位置である吹出口中心86を配置した。このため、載置面411の吹出口31C近傍に配置された被加熱物の加熱ムラが改善され、良好な調理効果・仕上がりが得られる。
加熱室50の底面501を、吹出口31Cの下端から吹出口31Cの高さ寸法以上に離して配置した。このため、遠心ファン85から送出される気流の旋回成分が緩和され、吹出口31Cから調理室30内に吹き出される気流と調理室30の側壁67とが平行に近づく。したがって、被加熱物の加熱ムラが軽減され、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
集合ダクト77の外周の上辺と下辺にフランジ部78を設け、フランジ部78は後壁34に面接触するとともに、フランジ部78を介してネジ・リベット等の締結部材、カシメ、及び溶接のいずれかで集合ダクト77と調理室30の後壁34とが係合されている。このため、集合ダクト77の変形、及びフランジ部78と後壁34との隙間から集合ダクト77内へ気流が流入することを抑制できる。したがって、集合ダクト77内で適切な整流及び気流の形成がなされ、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
吹出口31Cの外周には、立ち上がり部54が加熱室50内側に設けられている。立ち上がり部54は、集合ダクト77に内包され、集合ダクト77は、上方から見て立ち上がり部54と重なるように配置されている。このため、組み立て作業時には、集合ダクト77内に立ち上がり部54が適切に内包されると、フランジ部78の後壁34からの浮きがなくなることから、このことを以て集合ダクト77が吹出口31Cを適切に内包していることを判断でき、組み立て性が向上する。また、組み立て作業の際に、フランジ部78と吹出口31Cとが重なった状態で固定されることがなく、不良率が低減されて製品品質を向上させる効果が得られる。また、フランジ部78と後壁34との間に隙間が生じた場合にも、その隙間から集合ダクト77に流入する空気が直接的に吹出口31Cに到達するのを立ち上がり部54が抑制するため、集合ダクト77内で適切な整流・気流形成がなされ、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
第二調理室吸込口83は、調理室30の前後方向寸法の前側1/5と背面側1/5を除く中間3/5の領域内に配置した。このため、調理室30内を循環する気流を良好に形成することができ、調理室30内の温度ムラを軽減して良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
触媒体99の下方には第二調理室吸込口83、その下方には第一加熱手段40が配置され、上面視において触媒体99、第二調理室吸込口83、及び第一加熱手段40が重なるように配置される。このため、第一加熱手段40で加熱された空気が第二調理室吸込口83に流入することで、循環気流の温度及び吹出口31Cから吹き出される空気の温度が高まり、被加熱物の加熱効率が向上し、短時間調理及び省エネルギーな加熱調理器とすることができる。また、触媒体99は、触媒体99に流入する気流の熱に加えて第一加熱手段40からの放射により加熱されるので、触媒体99の温度を高めることができる。このため、触媒活性の向上により、触媒体99に流入する空気に含まれる汚染物の酸化分解が促進され、排気の清浄度を高くでき、良好な調理作業環境を保つことができる。また、酸化分解の反応熱で循環気流の温度及び吹出口31Cから吹き出される気流温度が高まり、被加熱物の加熱効率が向上し、さらに短時間調理ができて省エネルギーな加熱調理器とすることができる。
風路上部部品80の左右方向幅は、第一加熱手段40の幅より広く、上面視での左右方向において風路上部部品80が第一加熱手段40を覆う。このため、風路上部部品80と上壁下板332との間を流れる上部風路79を流れる循環気流の温度を高めることができ、被加熱物の加熱効率を向上させることができる。また、第一加熱手段40から上壁上板331を介して調理室30外へ伝熱が軽減されるので、調理室30の外に配置される他の部品の冷却効率を高めることができる。
制御手段に送受信手段を備え、送受信手段が外部から使用電力制限の指示を受信した場合には、制御手段は第一加熱手段40の電力制限を優先し、第二加熱手段53C及び送風手段である電動機51の電力制限の優先順位を低くする。このため、使用電力を制限することによる調理室30内における調理効果・仕上がりへの影響を軽減することができ、良好な調理効果・仕上がりを得られるとともに、使用電力制限の指示に基づいてピーク電力を低減することができる。
実施の形態5.
本実施の形態5では、実施の形態4と異なる構成を中心に説明する。
実施の形態5に係る加熱調理器を、図1、図4〜図6、図15、図29、図30、図40〜図47に示す。図1、図4〜図6、図15、図29、図30に係る構成は実施の形態4と同様である。
図40は、実施の形態5に係る調理室30から上壁上板331、スライドレールカバー353、及び加熱室50とその付帯部品を取り外した背面側斜視図である。
調理室30の後壁34には、集合ダクト77が設けられ、集合ダクト77内に複数の吹出口31Dが配置されているのは実施の形態4と同様であるが、集合ダクト77のダクト部の形状が異なる。集合ダクト77の形状の詳細は後述する。
図41は、実施の形態5に係る調理室30から上壁上板331、風路上部部品80、スライドレールカバー353、及び加熱室50とその付帯部品を取り外した状態の分解背面側斜視図である。
調理室30の後壁34に設けられた複数の吹出口31Dの外周には、立ち上がり部54が加熱室50の内側に向けて突出して設けられ、この立ち上がり部54が集合ダクト77に内包されるのは、実施の形態4と同様である。しかし、本実施の形態5は、後壁34に設けられた吹出口31Dの数及び配置が、実施の形態4と異なる。
図42は、実施の形態5に係る調理室30の、上壁33とその付帯部品、及び調理室扉7とその付帯部品を取り外した前面側斜視図である。図43は、実施の形態5に係る調理室30の第二調理室吸込口83位置の正面断面図である。図44は、図43の左側の吹出口31D近傍を中心に示す要部拡大図である。図43及び図44、並びにこれ以降の説明では、具体的に説明するため、複数の吹出口31Dのうち左端及び右端に配置されたものを吹出口31Da、左右端以外のものを吹出口31Dbと区別して称する場合がある。
実施の形態4と同様に、吹出口31Dの中心の高さ位置である吹出口中心86は、載置面411の吹出口31D側の端部と、受皿42の吹出口31D側の端部である上端縁421との高さ方向の中間である載置面・受皿中間線87よりも受皿42側(下側)に配置されている。
図43、図44に示すように、実施の形態5では、後壁34に9ヵ所の吹出口31Dが配置されている。調理室30の左右の側壁67間の中間よりも正面視において左側(図43の紙面左側)に4ヵ所の吹出口31D、中間よりも正面視において右側(図43の紙面右側)に5ヵ所の吹出口31Dが配置されている。加熱室50の左右で複数の吹出口31Dの開口面積の合計を比べると、正面から見て左側の4ヵ所の吹出口31Dの開口面積の合計の方が、正面から見て右側の5ヵ所の吹出口31Dの開口面積の合計よりも小さい。なお、本実施の形態5で例示する複数の吹出口31Dの配置は、実施の形態4の吹出口31Cの配置から中央左側の一ヵ所の吹出口31Cを除いたものと一致している。
また、左右にそれぞれ4ヵ所と5ヵ所に分けて配置された吹出口31Dは、調理室30の左右の側壁67間の中間を含む吹出口31Dの幅の3倍の範囲外に配置されている。この吹出口31Dの配置を具体的に説明する。図43、図44に示すように、調理室30の左右の側壁67間の中間をXとすると、このXを含む3ヵ所分の吹出口31Dの幅Wには、吹出口31Dが配置されておらず、幅Wの範囲外に吹出口31Dが配置されている。つまり、左側に寄せて配置された吹出口31D群の右端と、右側に寄せて配置された吹出口31D群の左端との間には、少なくとも3ヵ所の吹出口31D分の距離が設けられている。調理室30の左右の側壁67の中間部に吹出口31Dを配置しないため、この中間部には、吹出口31Dから吹き出され上方から下方に流れる気流の流路が確保される。したがって、吹出口31Dからの気流に比べ温度の低い気流が下方に流入することで受皿42の加熱が抑制されるとともに、吹出口31Dからの気流が下方の負圧により受皿42側へ引き寄せられるのを抑制して受皿42の加熱が抑制される。また、吹出口31Dから吹き出される気流を被加熱物の下面に接触させることができ、被加熱物の加熱効率を高めることができる。
また、実施の形態4と同様に、調理室30の左右両端に配置される吹出口31Daの壁面端と、集合ダクト77の側壁面との距離である吹出口・側壁面間隔88は、吹出口31Dの幅以下の寸法としている。
図45は、実施の形態5に係る調理室30及び加熱室50の背面一部断面図であり、加熱室50における断面を示している。
遠心ファン85の吸込面を正面から見て、遠心ファン85の回転方向は時計回り(図45に示す背面視においては紙面反時計回り)である。送風手段である遠心ファン85の回転中心は、遠心ファン85の吸込面を正面から見て加熱室50の左右中央よりも左側(図45に示す背面視においては紙面右側)にあり、そして、前述のとおり、遠心ファン85の吸込面を正面から見たときの加熱室50の右側(図45に示す背面視においては紙面左側)の吹出口31Dの開口面積の合計は、遠心ファン85の吸込面を正面から見たときの加熱室50の左側(図45に示す背面視においては紙面右側)よりも大きくなるように配置されている。つまり、遠心ファン85の下側に配置された吹出口31Dにおいて風の流れが向かう方向である正面視左側と同じ側に、遠心ファン85の回転中心を寄せ、かつ、正面視左側における吹出口31Dの開口面積の合計を、正面視での右側よりも小さくしている。
ここで、本実施の形態5の調理室30内に形成される気流を、比較例と対比して説明する。
図46は、実施の形態5に係る、吹出口31Dの左右の開口面積の違いによる調理室30内の気流の相違をシミュレーションした結果の概略を示す図である。図46の(a1)及び(a2)は、吹出口31Dの開口面積を正面から見て左の方が右よりも大きくした場合の比較例に係るシミュレーション結果、(b1)及び(b2)は、吹出口31Dの開口面積を左右等しくした場合の比較例に係るシミュレーション結果、(c1)及び(c2)は、吹出口31Dの開口面積を正面から見て右の方が左よりも大きくした場合の本実施の形態5に係るシミュレーション結果である。また、図46の(a1)、(b1)、(c1)は、調理室30の奥側に模擬負荷(被加熱物を模したもの。図中、網かけで示す)が載置された状態、(a2)、(b2)、(c2)は、調理室30の手前側に模擬負荷が載置された状態を示している。
図46(a1)、(a2)、(b1)、(b2)に示すように、吹出口31Dの右側の開口面積が左側よりも小さい場合又は左右の開口面積が等しい場合には、遠心ファン85からの距離及び旋回成分の影響により、調理室30の正面視左手前(調理室扉7方向)に向かう気流を形成する傾向や、調理室30内の圧力バランスによって左右の気流が中央から左右に分散する傾向がある。
しかし、図46(c1)、(c2)に示す本実施の形態5のように、正面視において右側の吹出口31Dの開口面積の合計を、正面視において左側の吹出口31Dの開口面積の合計よりも大きくすることで、集合ダクト77内での左右の吹出口31Dの圧力バランス及び左右の吹出口31Dに向かう気流の左右方向成分、並びに調理室30内の圧力バランスにより、気流は左右方向に整流され、吹出口31Dからの吹出方向は左右それぞれ適度に側面方向となるとともに、調理室30内の左右の圧力バランスが適切となり、調理室30に吹き出された気流は、比較的均一に分布した調理室30の側壁67に平行な流れを形成する。このように正面視において右側の吹出口31Dの開口面積の合計を、左側よりも大きくすることで、模擬負荷の下面には図46(a1)、(a2)、(b1)、(b2)に示す比較例と比べて均一に気流が分布する。
このシミュレーション結果から分かるように、遠心ファン85の回転方向を正面視において時計回りとしたときに、正面視において右側の吹出口31Dの開口面積の合計を、正面視において左側の吹出口31Dの開口面積の合計よりも大きくすることで、被加熱物の下方には比較的均一に気流が分布し、被加熱物の下面は加熱ムラ少なく加熱される。
第二加熱手段53Dは、上下に2本の平行な部位である平行部を有し、第二加熱手段53Dの上下方向の外幅よりも内側に集合ダクト77の開口部を設けている。より具体的には、上側に配置された一方の平行部の上端と、下側に配置された他方の平行部の下端との間に、集合ダクト77の一端側が開口している。このため、集合ダクト77の上方から流入する気流も下方から流入する気流も、ともに第二加熱手段53Dの近傍を通過して集合ダクト77に流入する。したがって、調理室30に吹き出される空気の加熱効率が高まり、調理時間を短縮でき省エネルギーな加熱調理器とすることができる。
図47は、実施の形態5に係る調理室30の側面断面図であり、正面視にて左から3番目の吹出口31Dにおける断面を示している。
実施の形態4では、集合ダクト77の流れ方向の傾きは、水平(0°)以上で30°以下の傾きであり、図38の例では10°の傾きであった。本実施の形態5でも、集合ダクト77の流れ方向の角度は、水平(0°)以上で30°以下であるが、図47では、集合ダクト77を水平(0°)とした場合の例を示している。集合ダクト77の傾きを0°としたことにより、集合ダクト77の製造において、集合ダクト77を構成する部材のすべての曲げを垂直とすることができ製造が容易となり、集合ダクト77の製造コストが低減できる。また、集合ダクト77を後壁34へ組み付ける作業においても、下側のフランジ部78とダクト部とが正面視で重なることがなく、集合ダクト77と後壁34とを固定する締結部材とダクト部とが干渉しにくく、組立作業性が改善されて組立コストが低減される。集合ダクト77の傾きを0°(水平)とした場合であっても、吹出口31Dからの気流は、集合ダクト77へ流入する角度や吹出口31Dからの噴流の広がりにより被加熱物の下面の適切に接触し、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
以上のように本実施の形態5では、調理室30の左右の側壁67の中間部を含む吹出口31Dの幅の3倍の範囲外に吹出口31Dを配置した。このため、調理室30の左右の側壁67の中間部に、上方から下方に流れる気流が形成され、受皿42の加熱が軽減されて煙及び臭気の発生が抑制され、良好な調理環境を得ることができるとともに、被加熱物の下面の加熱効率を高める効果が得られる。
遠心ファン85の吸込面を正面から見て、遠心ファン85の回転方向は時計回りであり、集合ダクト77に内包される複数の吹出口31Dの開口面積の合計は、加熱室50の右側の方が左側よりも大きい。つまり、遠心ファン85の下側に配置された吹出口31Dにおいて、遠心ファン85からの風の流れが向かう方向における吹出口31Dの開口面積の合計を、他方よりも小さくした。このため、複数の吹出口31Dからの気流の吹き出し方向は、左右それぞれ適度に側面方向となるとともに、調理室30内の左右の圧力バランスが適切となり、調理室30に吹き出された気流は、比較的均一に分布した調理室30の側壁67に平行な流れを形成し加熱ムラを軽減することができ、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
なお、本実施の形態5で示した左右の配置と対称の構成としてもよい。つまり、遠心ファン85の吸込面を正面から見て、遠心ファン85の回転方向を反時計回りとし、また集合ダクト77に内包される複数の吹出口31Dの開口面積の合計を、加熱室50の右側の方が左側よりも小さくなるように構成してもよい。このようにしても、実施の形態5と同様な動作及び効果を得ることができる。
第二加熱手段53Dは、上下に2本の平行な部位を有し、第二加熱手段53Dの上下の外幅よりも内側に集合ダクト77の開口端を設けた。このため、集合ダクト77へ上方から流入する気流も下方から流入する気流も、ともに第二加熱手段53Dの近傍を通過して集合ダクト77に流入する。したがって、調理室30に吹き出される空気の加熱効率が高まり、調理時間を短縮でき省エネルギーな加熱調理器とすることができる。
実施の形態6.
本実施の形態6では、実施の形態4、5と異なる構成を中心に説明する。
実施の形態6に係る加熱調理器を、図1、図4〜図6、図15、図29、図30、図48〜図54に示す。図1、図4〜図6、図15、図29、図30に係る構成は実施の形態4と同様である。
図48は、実施の形態6に係る調理室30から上壁上板331、スライドレールカバー353、及び加熱室50とその付帯部品を取り外した背面側斜視図である。
調理室30の後壁34には、集合ダクト77が左右に二つ並べて設けられている。集合ダクト77内に複数の吹出口31Eが配置されている点は、実施の形態4と同様である。なお、以降の説明において、左右それぞれの集合ダクト77を区別して集合ダクト77a、77bと称する場合がある。
図49は、実施の形態6に係る調理室30から上壁上板331、風路上部部品80、スライドレールカバー353、及び加熱室50とその付帯部品を取り外した状態の分解背面側斜視図である。
左右の二つの集合ダクト77a、77bは、下部がつながっていて一つの部品として構成されている。集合ダクト77を左右の二つに分けたことで、各集合ダクト77の横幅方向の寸法を短くでき、高温となる加熱室50内での熱応力によるダクト部の上壁と下壁の変形を軽減することができる。したがって、集合ダクト77のダクト部の変形による整流効果の低下を抑制することができ、加熱効率の向上と加熱ムラを軽減することができる。
また、集合ダクト77a、77bは、横幅が実施の形態4の集合ダクト77の半分以下となり、左右方向の整流特性が向上して、吹き出される気流制御が良好になされるとともに、左側の吹出口31E及び右側の吹出口31Eそれぞれに必要な気流制御を付与することができ、加熱ムラを軽減して適切な調理効果・仕上がりを得ることができる。
また、二つの集合ダクト77a、77bをダクト部の下壁でつなげて一つの部品として構成したことで、部品点数を減らして部品コストを低減するとともに、組み立てコストも低減することができる。本実施の形態6においては、二つの集合ダクト77a、77bを下部で一体化しているが、これらを上部で一体化しても同様の効果を得ることができる。また、左右に個別の集合ダクト77を設けてもよいし、三つ以上の集合ダクト77を設けてもよく、そのように構成した場合でもダクト部の変形及び整流効果の低下を抑制する効果を同様に得ることができる。
実施の形態4と同様に、調理室30の後壁34に設けられた複数の吹出口31Eの外周には、立ち上がり部54が加熱室50の内側に向けて突出して設けられ、立ち上がり部54は集合ダクト77に内包される。しかし、本実施の形態6は、後壁34に設けられた吹出口31Eの数及び配置が、実施の形態4と異なる。
図50は、実施の形態6に係る調理室30の上壁33とその付帯部品、及び調理室扉7とその付帯部品を取り外した前面側斜視図である。図51は、実施の形態6に係る調理室30の第二調理室吸込口83の位置における正面断面図である。図52は、図51の吹出口31E近傍を中心に示す要部拡大図である。図51及び図52では、具体的に説明するため、複数の吹出口31Eをそれぞれ紙面左側から順に、吹出口31Ea、31Eb、31Ec、31Ed、31Ee、31Ef、31Eg、31Eh、31Eiと区別して称する場合がある。
本実施の形態6では、後壁34に9ヵ所の吹出口31Eが配置されている。調理室30の左右の側壁67間の中間よりも正面視において左側(図51の紙面左側)に5ヵ所の吹出口31E、中間よりも正面視において右側(図51の紙面右側)に4ヵ所の吹出口31Eが配置されている。なお、本実施の形態6の複数の吹出口31Eの左右方向における配置は、実施の形態4の吹出口31Cの配置から中央右側の1ヵ所の吹出口31Cを除いたものと一致している。また、本実施の形態6の遠心ファン85は、実施の形態5と同様に、正面視において時計回りに回転するものであって、この遠心ファン85は正面視において左側に回転軸を寄せて配置されている。
加熱室50の左右の側壁の中間よりも左寄りの吹出口31Eの開口面積の合計が右寄り吹出口31Eの開口面積の合計よりも大きい点は、実施の形態5とは異なるが、本実施の形態6では、左右に分けて配置された集合ダクト77a、77bを設けることで、気流の整流特性を高めてより精度の高い気流制御を行い、これによって加熱ムラを軽減している。
また、調理室30の左右に分けてそれぞれ5ヵ所と4ヵ所の吹出口31Eを配置し、調理室30の左右の側壁67の中間を含む吹出口31Eの幅の3倍の範囲外にそれら吹出口31Eを配置したという構成、並びにその構成を採用したことによる動作及び効果も、実施の形態5と同様である。
次に、吹出口31Eの配置について詳細に説明する。本実施の形態6の吹出口31Eの上下方向の位置は、吹出口31Eが設けられた場所により異なる。
正面から見て左側の集合ダクト77aに内包される左二つの吹出口31Ea、31Ebの吹出口中心89は、集合ダクト77aの上壁と下壁の高さ方向中心よりも上方に配置されている。
正面から見て左側の集合ダクト77aに内包される右三つの吹出口31Ec、31Ed、31Eeの吹出口中心90は、集合ダクト77aの上壁と下壁の高さ方向中心と同じ位置に配置されている。
正面から見て右側の集合ダクト77bに内包される左二つの吹出口31Ef、31Egの吹出口中心91は、集合ダクト77bの上壁と下壁の高さ方向中心よりも下方に配置されている。
正面から見て右側の集合ダクト77bに内包される右二つの吹出口31Eh、31Eiの吹出口中心92は、集合ダクト77bの上壁と下壁の高さ方向中心と同じ位置に配置されている。
このように本実施の形態6では、同一の集合ダクト77a、77b内において、吹出口31Eの高さ方向の位置を異ならせることで、吹出口31Eから吹き出される気流の方向を調整及び設定している。以下、具体的に作用を説明する。
正面から見て左側の集合ダクト77aでは、左二つの吹出口31Ea、31Ebから吹き出される気流は、遠心ファン85からの気流に下方に向かう速度成分が比較的多く、集合ダクト77aで整流しても下方に向かう成分が残る場合がある。このため、集合ダクト77aの上壁と下壁との中心に、吹出口31Eの中心を合わせた場合には、幾分下方に向かって空気が吹き出される場合もある。しかし、本実施の形態6のように、吹出口31Ea、31Ebの吹出口中心89を、集合ダクト77aの上壁と下壁の中心よりも上方に配置することで、吹出口31Ea、31Ebと集合ダクト77の上壁及び下壁との距離のバランスが変わり、吹出口31Ea、31Ebとの距離が相対的に大きい下壁側から吹出口31Ea、31Ebへの上向きの速度成分が強くなる。したがって、左側の集合ダクト77a内の左二つの吹出口31Ea、31Ebから下方に向かう気流を吹き出すことを抑制できる。
同様に、正面から見て右側の集合ダクト77b内の左二つの吹出口31Ef、31Egは、吹き出す方向が過度に上向きになる場合がある。このため、右側の集合ダクト77b内の左二つの吹出口31Eの中心を、集合ダクト77bの上壁と下壁の中心よりも下方に配置することで、下方に向かう速度成分をこれらの吹出口31Ef、31Egから吹き出される気流に付与して、適切な角度で調理室30内に吹き出すように気流の確度を調整及び設定している。
なお、本実施の形態6においては、一部の吹出口31Eの高さ方向の中心を、集合ダクト77の上壁と下壁との間の高さ方向の中心からずらしているが、集合ダクト77a、77bがそれぞれ内包するすべての吹出口31Eの中心を、集合ダクト77a、77bの高さ方向の中心からずらしてもよい。このように、集合ダクト77の上壁と下壁との中心と、吹出口31Eの中心位置との位置関係を調整することで、集合ダクト77の流れ方向における角度が水平(0°)であっても、上向きあるいは下向きの気流を吹出口31Eから吹き出すことができ、集合ダクト77を傾斜させたのと同様な効果を得ることができる。例えば、集合ダクト77の流れ方向の角度が水平(0°)であっても、吹出口31Eの中心位置を集合ダクト77の上壁寄りに配置することで、吹出口31Eから上方に向けて気流を吹き出すことができる。
また、複数の吹出口31Eの一部又は全部の高さ方向の中心を、集合ダクト77の高さ方向の中心から外すという構成を、実施の形態4又は実施の形態5に適用してもよい。そのようにしても、実施の形態6で説明したように、吹出口31から吹き出される気流の上下方向の向きを調整することができる。
また、本実施の形態6においては、左右に並べて配置された集合ダクト77a、77bそれぞれの上壁と下壁との中心位置は同一であるが、集合ダクト77a、77bそれぞれで前記中心位置を異ならせてもよい。集合ダクト77の上壁と下壁との中心位置を上下に調整することで、その集合ダクト77に内包される吹出口31Eから吹き出される気流の向きを調整及び設定することができ、加熱効率を向上させ、加熱ムラを軽減させることのできる気流を吹き出すことが可能となる。上記のような吹出口31Eの上下方向の位置の調整を組み合わせることで、さらにきめ細かく気流の吹き出し方向を調整することができる。
すべての吹出口31Eの中心(吹出口中心89、90、91、92)は、調理台41の載置面411及び受皿42の吹出口31E側の端部の中間である載置面・受皿中間線87よりも、受皿42側(すなわち下側)に配置されている。このように配置したことにより、実施の形態4と同様の動作及び効果が得られる。
調理室30の左右両端に配置される吹出口31Ea及び吹出口31Ei、つまり調理室30の側壁67の最も近くに配置される吹出口31Ea及び吹出口31Eiそれぞれの壁面端と、集合ダクト77の側壁面のうち調理室30の左右の側壁67それぞれに最も近い側壁面との距離は、実施の形態4と同様に、吹出口31Eの幅以下の寸法である。ここで、集合ダクト77aの左右両側の側壁面のうち、調理室30の左側の側壁に最も近い側壁の内面を第一側壁面、第一側壁面771とは反対側の側壁の内面を第二側壁面772と称し、また集合ダクト77bの左右両側の側壁面のうち、調理室30の右側の側壁に最も近い側壁の内面を第一側壁面771、第一側壁面771とは反対側の側壁の内面を第二側壁面772と称して、以下、具体的に説明する。図51、図52に示すように、集合ダクト77aに内包される吹出口31Eのうち最も調理室30の側壁67に近い左端の吹出口31Eaと、集合ダクト77aの第一側壁面771との間の距離である、吹出口・側壁面間隔93は、吹出口31Eaの幅以下の寸法である。また、集合ダクト77bに内包される吹出口31Eのうち最も調理室30の側壁67に近い右端の吹出口31Eiと、集合ダクト77bの第一側壁面771との間の距離である、吹出口・側壁面間隔96は、吹出口31Eiの幅以下の寸法である。吹出口・側壁面間隔96を小さくするほど、側壁67に向かう気流成分を強めることができる。
このようにすることで、実施の形態4で述べたように、調理室30の左右それぞれの側壁67の方向に向かう速度成分を持つ吹き出し気流を形成することができる。したがって、調理台41の載置面411の左右端に配置される被加熱物の加熱ムラを軽減することができる。
集合ダクト77a、77bそれぞれに内包される吹出口31Eのうち、各集合ダクト77が近接する調理室30の側壁67から離れた方の端に位置する吹出口31Eと、その吹出口31Eに近接する集合ダクト77の側壁面との距離は、その吹出口31Eがそれぞれ隣接する吹出口31Eとの間の距離未満である。具体的には、正面から見て左側の集合ダクト77aに内包される吹出口31Eのうち、第二側壁面772に最も近い右端の吹出口31Eeの右端部と、集合ダクト77aの第二側壁面772との距離である吹出口・側壁面間隔94は、右端の吹出口31Eeとこれに隣接する吹出口31Edとの間の距離である吹出口間距離97未満の寸法である。また、正面から見て右側の集合ダクト77bに内包される吹出口31Eのうち左端の吹出口31Efの左端部と、集合ダクト77bの左側の側壁面との距離である吹出口・側壁面間隔95は、左端の吹出口31Efとこれに隣接する吹出口31Egとの間の距離である吹出口間距離98未満の寸法である。吹出口・側壁面間隔95を小さくするほど、中心Xに向かう気流成分を強めることができる。
このようにすることで、正面から見て左側の集合ダクト77aに内包される右端の吹出口31Eeからは、左方向に向かう速度成分を含んだ気流が吹き出される。また、正面から見て右側の集合ダクト77bに内包される右端の吹出口31Efからは、右方向に向かう速度成分を含んだ気流が吹き出される。したがって、正面から見て左側の集合ダクト77aの右端の吹出口31Eeから調理室30に吹き出された気流は、その吹出口31Eeよりも左側の吹出口31Ed等からの気流によって生じる周囲の負圧に引き寄せられる。また、正面から見て右側の集合ダクト77bの左端の吹出口31Efから調理室30に吹き出された気流は、その吹出口31Efよりも右側の吹出口31Eg等からの気流によって生じる周囲の負圧に引き寄せられる。このため、調理室30内に形成される気流は、全体として調理室30の側壁67に平行に近づき、左右の加熱ムラを軽減することができる。前述のように実施の形態5においても類似の効果を得ることはできるが、集合ダクト77の側壁面と吹出口31Eの端部との距離を適切に設定することで、より精度よく気流制御でき、加熱ムラをより軽減するとともに加熱効率を高めることができる良好な気流を形成することが可能となる。
図53は、実施の形態6に係る調理室30及び加熱室50の背面一部断面図であり、加熱室50における断面を示している。
遠心ファン85の吸込面を正面から見ると、送風手段である遠心ファン85の回転中心は、加熱室50の左右中央よりも左側(図53に示す背面視においては紙面右側)にあり、遠心ファン85の回転方向は時計回り(図53に示す背面視においては紙面反時計回り)である。また、各集合ダクト77に内包される複数の吹出口31Eの開口面積の合計は、加熱室50の正面視での左側(図53に示す背面視においては紙面右側)が正面視での右側(図53に示す背面視においては紙面左側)よりも大きくなるように配置されている。つまり、遠心ファン85の下側に配置された吹出口31Eにおける風の流れが向かう方向である正面視での左側と同じ側に、遠心ファン85の回転中心を寄せ、かつ、正面視での左側における吹出口31Eの開口面積の合計を、正面視での右側よりも大きくしている。
このような配置を採用することで、左右の吹出口31Eの圧力バランス及び左右の集合ダクト77に向かう気流の左右方向成分の作用が得られ、遠心ファン85からの距離及び旋回成分の影響で調理室30の左手前に向かおうとする気流の成分を緩和することができる。したがって、集合ダクト77に内包される左右端を除く中間の吹出口31Eから吹き出される、調理室30の側壁に平行な流れを形成することができ、左右方向における加熱ムラを軽減することができる。また、集合ダクト77に内包される左右端の吹出口31Eについては、前述の図51にて説明した通りである。
第二加熱手段53Eは、遠心ファン85の外側を囲むように配置されている。また、この第二加熱手段53Eは、その全体が集合ダクト77の下端よりも上方に配置されている。
図54は、実施の形態6に係る調理室30の側面断面図であり、正面視にて左から3番目の吹出口31Eにおける断面を示している。
集合ダクト77の下端と加熱室50の底面501との距離は、吹出口31Eの高さ以上の寸法である。遠心ファン85から送出される気流の一部は、加熱室50の底面501に到達した後に集合ダクト77に流入して吹出口31Eから調理室30内に吹き出される。加熱室50の底面501と集合ダクト77の下端との間に空間(チャンバー)を設けることで、集合ダクト77の上流側において遠心ファン85からの気流の旋回成分を緩和させるということは、実施の形態4においても示した通りである。
本実施の形態6では、上記構成に加え、第二加熱手段53Eを集合ダクト77の下端よりも上方に配置した。このため、集合ダクト77の下端から加熱室50の底面501の空間への気流の流入を第二加熱手段53Eが阻害することがなく、またチャンバーの容積が拡大されて気流の旋回成分を緩和させる効果をさらに高めることができる。したがって、加熱ムラをさらに軽減する効果がある。
本実施の形態6でも、集合ダクト77の流れ方向の傾きは、水平(0°)以上で30°以下であればよいが、図54では、実施の形態5と同様に集合ダクト77を水平(0°)とした場合の例を示している。集合ダクト77の傾きを0°としたことにより、集合ダクト77の製造において、集合ダクト77を構成する部材のすべての曲げを垂直とすることができ、集合ダクト77の製造コストが低減できる。また、集合ダクト77を後壁34へ組み付ける作業においても、下側のフランジ部78とダクト部とが正面視で重なることがなく、集合ダクト77と後壁34とを固定する締結部材とダクト部とが干渉しにくく、組立作業性が改善されて組立コストが低減される。集合ダクト77の傾きを0°(水平)とした場合であっても、吹出口31Eからの気流は、集合ダクト77へ流入する角度や吹出口31Eから吹き出される気流の広がりにより被加熱物の下面の適切に接触し、良好な調理効果・仕上がりを得ることができる。
以上のように本実施の形態6では、調理室30の幅方向に並べられた複数の吹出口31Eのうち左右両端に配置される吹出口31Ea、31Eiの壁面端と、集合ダクト77の第一側壁面771との距離である吹出口・側壁面間隔88を、吹出口31Eの幅以下の寸法とした。このため、載置面411の左右両端付近に配置された被加熱物の左右両端部の加熱ムラが抑制され、良好な調理効果・仕上がりが得られる。
また、集合ダクト77a、77b内にそれぞれ設けられた複数の吹出口31Eのうち、調理室30の最も中央側の吹出口31Ee、吹出口31Efの壁面端と、集合ダクト77a、77bの中央側の側壁である第二側壁面772との間の距離を、吹出口31Ee、31Efにそれぞれ隣接する吹出口31Ed、31Egとの間の距離以下とした。このため、集合ダクト77a、77bにそれぞれ内包される左右両端の吹出口31Eから吹き出される気流の左右方向における吹き出し方向を、調理室30の側壁67と平行に近づくように制御することができる。したがって、調理室30の左右方向における被加熱物の加熱ムラを軽減できるとともに、加熱効率を高めることができる。
集合ダクト77に内包される吹出口31Eの吹出口中心89及び吹出口中心91を、集合ダクト77の高さ方向中心とは異なる高さに配置することで、吹出口31Eから吹き出される気流の上下方向の角度を調整するようにした。このため、簡易な構成で、吹出口31Eから吹き出す気流の上下方向の角度を所望の角度に制御することができ、加熱ムラを軽減できるとともに加熱効率を高めることができる。
正面から見て左側の集合ダクト77aに内包される複数の吹出口31Eのうち一部の吹出口31Eと他の吹出口31Eとで、中心位置を異なる高さとした。また、正面から見て右側の集合ダクト77bについても同様に、内包される吹出口31Eのうち一部の吹出口31Eと他の吹出口31Eとで、中心位置を異なる高さとした。このため、集合ダクト77a、77bにそれぞれ内包される吹出口31Eから吹き出される気流の上下方向の角度を、簡易な構成で均一に近づけることができ、加熱ムラを軽減できるとともに加熱効率を高めることができる。
第二加熱手段53Eは、集合ダクト77の下端よりも上方に配置されているので、遠心ファン85からの気流の旋回成分を緩和させることができ、加熱ムラを軽減する効果がある。