以下、本発明に係る加熱調理器を、トッププレート上の左右手前及び中央奥に調理鍋載置部を三口備えたビルトイン型(組込み型)IHクッキングヒータに適用した場合を例に説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。また、各図では、同一の構成には同一の符号を付している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器全体の斜視図である。
図1において加熱調理器の本体1の筐体2の上側には、筐体上枠3が着脱自在に配置されている。筐体上枠3の背面側には吸排気口カバー5、中央にはトッププレート4、前面側には操作部6がそれぞれ配置されている。また、筐体2の内部には、調理室11が設けられている。
トッププレート4には、鍋やフライパン等の調理容器(図示せず)が載置される載置部8が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート4の前面側右、背面側中央、及び前面側左、の三箇所に載置部8が設けられている。
また、トッププレート4には、液晶画面やLED等の視覚的な表示手段を備えた表示部9が設けられている。表示部9は、加熱調理器の動作状態、操作部6からの入力及び操作内容等を表示するとともに、ユーザーに対して加熱調理器の状態等を報知する報知手段として機能する。なお、本実施の形態1及び後述の実施の形態2では、報知手段として表示部9を設けた例を示すが、表示部9に代えてあるいはこれに加えて、音声で報知を行うブザーやスピーカー等の報知手段を備えてもよい。
吸排気口カバー5は、通気性を有するパンチングメタルや格子状の金属部材で構成されていて通気性があり、通気抵抗が少ない。冷却風の吸気及び排気、調理室11からの排気の気流は、吸排気口カバー5をスムースに通過する。
操作部6は、加熱調理器における加熱動作の設定を受け付けるための操作ボタンやスイッチ等で構成されている。本実施の形態1では、筐体2の前面にも操作部6が設けられている。操作部6の具体的構成を限定するものではなく、例えばタッチパネルにより構成された操作部6を設けてもよい。
筐体2の前面の左側には、調理室扉7が設けられている。この調理室扉7は、筐体2内に設けられた調理室11内の前面開口部を開閉自在に覆う扉であり、調理室11内で調理される被加熱物を調理室11内に出し入れできるように、奥行き方向にスライド可能である。また、調理室扉7は、調理室11内や調理室扉7自身の清掃等のメンテナンスを容易にするため、調理室11に対して着脱可能に構成されている。
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器のトッププレート4と吸排気口カバー5を取り外した状態の本体1の斜視図である。
筐体上枠3の背面側の左側には筐体排気口13が形成され、右側には筐体吸気口14が形成されている。筐体排気口13には、筐体2内を冷却した冷却風の排気風路である冷却風排気ダクト15が接続されており、冷却風排気ダクト15を流れる冷却風は筐体排気口13を介して排気される。また、この冷却風排気ダクト15内には、調理室11からの排気を導く調理室排気ダクト10が配置されており、調理室11からの排気も筐体排気口13から排出される。筐体吸気口14は、筐体2内を冷却する冷却風を筐体2内に導入するための開口部である。なお、通常の使用状態においては、筐体排気口13及び筐体吸気口14は、図1で示した吸排気口カバー5で覆われている。
筐体2の内部のトッププレート4の下側には、トッププレート4の載置部8にそれぞれ対向して、トッププレート4に載置される調理容器を加熱する加熱手段が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート4の前面側の左と右にそれぞれ誘導加熱コイルユニット18が設けられ、背面側中央にラジエントヒーター17が設けられている。なお、トッププレート4上の調理容器を加熱するための加熱装置はこれらに限定されず、すべての加熱装置を誘導加熱コイルユニット18で構成してもよいし、ラジエントヒーター等の電気ヒーターで構成してもよい。
誘導加熱コイルユニット18及びラジエントヒーター17の下方の左側には、板金等により構成され内部に収納空間を有する調理室収納部19が設けられている。この調理室収納部19の内部には、調理室11が配置されている。調理室収納部19と調理室11との間には、通風可能な間隙38(図14参照)が設けられており、この間隙38に形成される空気層によって断熱が行われる。
調理室収納部19の右側には、内部に収容空間を有するコントロールユニット29が配置されている。コントロールユニット29には、冷却ファン37(図5参照)と、誘導加熱コイルユニット18に高周波電力を供給するインバータ回路や各種制御回路等の電子部品が実装された電子回路基板50(図5参照)等が収容されている。コントロールユニット29の内部は、コントロールユニット29内に収容される電子回路基板50等を冷却する冷却風の風路を兼ねており、コントロールユニット29への空気の吸込口であるユニット吸気口291は、筐体吸気口14の下側に配置され筐体吸気口14に接続される。
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、誘導加熱コイルユニット18、及びラジエントヒーター17を取り外した状態の本体1の斜視図である。
コントロールユニット29の上面には、複数のユニット排気口292が設けられている。また、加熱室20の上側であってコントロールユニット29の左側には、ユニット排気口292から出る冷却風を左側の誘導加熱コイルユニット18に導く導風部材31が設けられている。導風部材31は、コントロールユニット29と接合されている。導風部材31は、コントロールユニット29のユニット排気口292から出る冷却風を誘導加熱コイルユニット18に導く風路と、誘導加熱コイルユニット18の底面に対向する位置に形成された開口とを有する。
図4は、実施の形態1に係る加熱調理器の筐体上枠3、トッププレート4、吸排気口カバー5、誘導加熱コイルユニット18、ラジエントヒーター17、コントロールユニット29、及び導風部材31を取り外した状態の本体1の斜視図である。
調理室収納部19の側面には、収納部通風口36が開口している。この収納部通風口36は、コントロールユニット29の側面に設けられたユニット排気口292に通風可能に接続される。コントロールユニット29の側面に設けられたユニット排気口292から吹き出された冷却風は、収納部通風口36から調理室収納部19内に入り、調理室収納部19と調理室11との間に設けられた間隙38(図14参照)を流れる。
図5は、実施の形態1に係るコントロールユニット29の斜視図である。図5では、コントロールユニット29の一部を透視して示している。
コントロールユニット29内には、電子回路基板50と冷却ファン37が収容されている。電子回路基板50には、誘導加熱コイルユニット18に高周波電力を供給するインバータ回路及び冷却ファン37を駆動制御する制御回路をはじめ、加熱調理器の動作を制御するマイコンや制御回路等の電子部品が実装されている。本実施の形態1では、加熱調理器の動作を制御する機能部品の集合体を、制御手段と称する。
コントロールユニット29の外郭において、冷却ファン37の吸引側にはユニット吸気口291が開口し、冷却ファン37の送出側には、複数のユニット排気口292が開口している。本実施の形態1は、コントロールユニット29の上面及び側面に、それぞれユニット排気口292が設けられている。ユニット吸気口291は、筐体2への組み付け状態においては、筐体吸気口14の下方に配置され、筐体吸気口14と連通する。コントロールユニット29の内部は、ユニット吸気口291からユニット排気口292に至る一体的な風路として機能する。冷却ファン37から送出される冷却風は、上面のユニット排気口292と側面のユニット排気口292のそれぞれから外部へ流出する。
図6は、実施の形態1に係るコントロールユニット29の側面断面図である。図6では、冷却風の流れを矢印で概念的に示している。
冷却ファン37が動作すると、コントロールユニット29のユニット吸気口291に吸引力が生じ、ユニット吸気口291に接続された筐体吸気口14から外部の空気が吸い込まれ、吸い込まれた空気はユニット吸気口291からコントロールユニット29内に流入する。コントロールユニット29内に流入した冷却風は、冷却ファン37に吸引されて送出され、コントロールユニット29の内部に収納された電子回路基板50に実装される誘導加熱コイルの駆動回路等の回路部品や部品の冷却効率を高める放熱フィン等を冷却した後、コントロールユニット29に設けられた複数のユニット排気口292から送出される。
コントロールユニット29の上面に設けられたユニット排気口292から送出された冷却風は、コントロールユニット29の上方に配置された右側の誘導加熱コイルユニット18の下面に吹き付けられ、誘導加熱コイルユニット18に実装される加熱コイル及びフェライト等を冷却する(図3参照)。右側の誘導加熱コイルユニット18を冷却した後の冷却風は、導風部材31に導かれて左側の誘導加熱コイルユニット18に向かって流れてこれを冷却し、その後本体1の後方に向かって流れ、調理室収納部19の上面に設けられた冷却風排気ダクト流入口16から冷却風排気ダクト15内に入り、筐体排気口13(図2参照)を経て本体1外へ排気される。
コントロールユニット29の側面に設けられたユニット排気口292から送出された冷却風は、収納部通風口36(図4参照)から調理室収納部19内に流入し、調理室収納部19と調理室11との間に設けられた間隙38(図14参照)を流れ、調理室収納部19の上面に設けられた冷却風排気ダクト流入口16から冷却風排気ダクト15内に入り、筐体排気口13(図2参照)を経て本体1外へ排気される。
図7は、実施の形態1に係る調理室11全体を示す前面側斜視図である。
調理室11は、前面を開口した略直方体の外形を有し、この前面開口部は調理室扉7により開閉自在に覆われる。調理室11の外郭のうち、両側の側壁をそれぞれ側壁112と称し、天井壁を構成する部分を上壁113と称する。調理室11の背面側には、加熱室20が設けられている。この加熱室20の背面側には、加熱室20内と連通する調理室排気ダクト10が接続されている。
調理室11には、調理室扉7の開閉を規制する図示しないロック機構が設けられている。このロック機構は、調理室11における加熱調理動作中、及び加熱調理終了後の所定条件下(例えば調理室11内の温度が高温の場合、後述する送風ファン22の慣性による回転動作中等)では、ユーザーが開けることができないように調理室扉7をロックする。
また、加熱調理器は、調理室扉7のスライドによる開閉を検知する手段(図示せず)を備えている。調理室扉7の開閉を検知する手段は、例えば、調理室扉7に内蔵された磁石と、加熱調理器内に設けられた磁気検知手段とによって構成される。この構成の場合、調理室扉7がスライドして閉じられたときに、磁気検知手段が調理室扉7の磁気を検知して、調理室扉7が閉まっていることを検出することができる。なお、調理室扉7の開閉を検知する手段の具体的構成を限定するものではなく、光、超音波、電波等の反射や遮断を検知する非接触の検知手段や、メカニカルスイッチ等接触式・機械式の検知手段を用いてもよい。
制御手段は、調理室扉7が開いていることが検知されている状態では、ユーザーが操作部6を操作して操作部6から調理動作の指示が出力された場合でも、調理室11内における調理動作を行わない。その場合、表示部9は、調理室扉7が開いているため加熱調理を行わないこと、及び調理室扉7を閉めるようにユーザーに促す情報を表示する。また、調理室11内での加熱調理動作中に、例えばロック機構の損傷等により誤って調理室扉7が開いてしまった場合には、制御手段は、調理室11内の加熱に関する動作を停止させ、調理室11の前面開口からの放射や熱風の漏れを抑制する。
図8は、実施の形態1に係る調理室11全体を示す背面側斜視図である。
調理室11の後壁111の背面側には、加熱室20が設けられている。加熱室20は、調理室11とは別に区画形成された部屋である。加熱室20の背面には、電動機21が配置されている。この電動機21は、例えばDCモーター又は誘導モーターであり、その回転軸には、加熱室20内に設けられた送風ファン22(図11参照)が取り付けられている。調理室11における加熱調理動作中は、コントロールユニット29内の制御手段が、電動機21の回転の有無や回転数等を制御する。なお、電動機21は、その仕様や動作環境、回転軸の軸受け寿命等との兼ね合い等に基づいて必要に応じて冷却される。例えば、電動機21の回転軸に、冷却用のファンを設けてもよい。
また、加熱室20の背面には、調理室排気ダクト10が設けられている。調理室排気ダクト10は、加熱室20の内部と連通している。
加熱室20内には、循環風加熱手段24(図11参照)が設けられており、加熱室20の上部側面からは、循環風加熱手段24の端子部241が突出している。循環風加熱手段24の端子部241は、コントロールユニット29内の基板に配線され、制御手段が循環風加熱手段24の加熱の有無や加熱量を制御する。
調理室11の後壁111の背面下部には、左右一対のスライドレールカバー39が取り付けられている。スライドレールカバー39は、調理室11の後壁111から突出するスライドレールユニット30(図10参照)の端部を覆う部材である。
加熱室20は、左右一対のスライドレールカバー39(スライドレールユニット30)の間に配置されている。また、加熱室20の少なくとも一部は、高さ方向において、スライドレールカバー39(スライドレールユニット30)と重なるように配置されている。
図9は、実施の形態1に係る調理室11の上壁113及び調理室扉7を取り外した状態の斜視図である。
調理室11の上方には、調理室11内を上方から加熱する上方加熱手段23が配置されている。本実施の形態1では、上方加熱手段23として、抵抗発熱体であるシーズヒーターを用いている。この上方加熱手段23は、幅方向及び奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、調理室11内の幅方向及び奥行き方向にわたる広範囲を加熱可能である。上方加熱手段23の端子部231は、調理室11の後壁111に設けられた開口部から外側へ突出している。上方加熱手段23の端子部231は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に配線接続され、制御手段が上方加熱手段23の加熱の有無や加熱量を制御する。
なお、本実施の形態1では、上方加熱手段23としてシーズヒーターを設ける例を示したが、上方加熱手段23として遠赤外線ヒーター、近赤外性ヒーター、又はカーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。また、調理室11内に上方加熱手段23を設けるのではなく、調理室11の上壁113の上側に上方加熱手段23としてフラットヒーター又は誘導加熱コイルを設け、これらにより調理室11の上壁113を加熱してもよい。調理室11内の被加熱物を放射や空気による熱伝達で上方から加熱できる手段であれば、上方加熱手段23として任意の構成を採用することができる。
調理室11の両側の側壁112の内側には、調理室扉7及び調理皿26を前後方向に移動させるスライドレールユニット30が設けられている。スライドレールユニット30には、調理皿26をスライドレールユニット30上に位置決めして保持するための保持部41が設けられており、調理皿26は、スライドレールユニット30に着脱自在に載置される。
保持部41には、調理皿26の温度を検知する調理皿温度検知手段27が設けられている。調理皿温度検知手段27は、例えば白金測温抵抗体、サーミスタ、又は熱電対等が用いられる。必要に応じて複数の調理皿温度検知手段27を設けてもよい。また、調理皿温度検知手段27が配置される位置は保持部41に限定されず、調理皿26の温度を検知できる場所であれば、調理室11の壁面や背面に調理皿温度検知手段27を設けてもよい。また、調理皿26から放射される赤外線量を検知して被加熱物の表面温度を検知する被接触式の調理皿温度検知手段27を、調理室11内の上壁113、底板114、側壁112等に備えてもよい。
調理皿温度検知手段27の出力は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に実装される制御手段に入力される。制御手段は、操作部6で設定される調理メニュー及び加熱条件に応じた調理ソフトウェアに従い、調理皿26が被加熱物又は調理工程に対応した適切な調理温度になるように、上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21等の出力及び動作を制御する。その際、制御手段は、調理皿温度検知手段27の検知温度に基づいて、調理皿26の温度が360℃を超えないように、上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21等の出力及び動作を制御する。この360℃とは、被加熱物から滴下した油分が調理皿26によって加熱されて瞬間的に発火するおそれの生じる温度を示しており、調理皿26を360℃以下に保つことで、調理皿26における瞬間的な発火を抑制することができる。また、調理皿26の温度が240℃を超えないように、上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21等の出力及び動作を制御してもよい。この240℃とは、被加熱物から滴下した油分が調理皿26によって加熱されて生じる煙が増加する温度を示しており、調理皿26を240℃以下に保つことで、調理室11内における発煙の増加を抑制することができる。なお、ここで示した360℃、240℃という温度の数値は厳密なものではなく、上述した目的の範囲内で加減することができる。
また、調理室11の内部には、調理室11内の温度を検知する調理室温度検知手段32が設けられている。調理室温度検知手段32の出力は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に実装される制御手段に入力される。調理室温度検知手段32は、例えば白金測温抵抗体、サーミスタ、又は熱電対等が用いられる。必要に応じて調理室温度検知手段32を複数設けてもよい。また、調理室温度検知手段32が配置される位置は調理室11の壁面に限らず、必要に応じて調理室11の上壁113と底板114のいずれか又は両方に調理室温度検知手段32を設けてもよい。また、被加熱物から放射される赤外線量を検知して被加熱物の表面温度を検知する非接触式の調理室温度検知手段32を備えてもよい。
調理室温度検知手段32の出力は、コントロールユニット29内の電子回路基板50に実装される制御手段に入力される。制御手段は、操作部6で設定される調理メニュー及び加熱条件に応じた調理ソフトウェアに従い、上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21等の出力及び動作を制御する。その際、制御手段は、調理室温度検知手段32の検知温度に基づいて、調理室11内が調理工程に対応した温度となるように上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21等の出力及び動作をコントロールする。
なお、本実施の形態1においては、調理皿温度検知手段27と調理室温度検知手段32の両方を備えるが、いずれか一方のみを設けてもよい。一方の出力に基づいて他方の出力(温度)を制御手段が推測することで、調理皿温度検知手段27と調理室温度検知手段32の両方を設けた場合と類似の動作及び効果を得ることが可能である。調理室温度検知手段32のみを設け、調理室温度検知手段32の出力に基づいて調理皿26の温度を推測する構成とした場合には、調理室温度検知手段32及び制御手段が、本発明の調理皿温度検知手段として機能する。
調理室11の後壁111には、調理皿26の上方に、調理室吸込口12が形成されている。調理室吸込口12は、調理室11内の空気を加熱室20内に吸引するための開口部である。
図10は、実施の形態1に係る調理室11の調理室排気ダクト10、加熱室20に付帯する部品、スライドレールカバー39、上壁113、及び調理室扉7を取り外した状態の背面下方側から見た斜視図である。なお、図10では加熱室20を二点鎖線で示している。
調理室11の後壁111の背面(調理室11の外面)において、吹出口28の縁には、後壁111から加熱室20の内側に向かって突出する立ち上がり部42が設けられている。立ち上がり部42は、吹出口28の周囲を筒状に囲んでおり、その内部には吹出口28に至る風路が形成される。立ち上がり部42は、例えばバーリング加工などのプレス加工により形成可能である。
また、調理室11の後壁111の背面(調理室11の外面)において、吹出口28の上側には、略L字断面の庇部43が接合されている。庇部43は、その折れ曲がった角部が下側となり、略L字の一方の面が後壁111に当接し、他方の面が調理室11の後壁111から加熱室20の内部側に向かって突出しており、吹出口28の上方を庇状に覆っている。調理室11の壁面は高温(例えば250℃以上)となるため、調理室11の壁は耐熱性のある金属又はセラミックス等で形成され、庇部43も金属又はセラミックス等で形成される。庇部43は、略L字状の断面の部材で構成され角部を有するため、高温となっても熱応力による庇部43の歪及び変形を軽減することができる。また、調理室11の壁面を構成する素材と線膨張係数が同一又は近似する素材を庇部43の素材として用いることで、接合に伴う熱応力による歪を軽減している。調理室11壁面と庇部43との接合には、スポット溶接等の溶接やカシメ等、高温に耐える接合手段が用いられる。
また、調理室11の後壁111に設けられた開口部から、スライドレールユニット30の背面端が突出している。
図11は、実施の形態1に係る加熱室20及び付帯部品を前面下方側から見た斜視図である。
加熱室20の内部には、送風ファン22が配置されている。送風ファン22は、加熱室20の背面に配置された電動機21の回転軸と固定され、電動機21の動作により回転する。本実施の形態1では、送風ファン22は遠心ファンであり、送風ファン22が回転すると、送風ファン22の中央部から空気が吸引され、吸引された空気は送風ファン22の羽根の外周部から送出される。電動機21と送風ファン22は、調理室吸込口12から吸い込んだ調理室11内の空気を吹出口28へ送る送風手段として機能する。なお、本実施の形態1においては、遠心ファンとしてラジアルファンを用いているが、ターボファンやシロッコファンを用いてもよい。
送風ファン22の外周側には、循環風加熱手段24が配置されている。循環風加熱手段24は、送風ファン22から送出された空気を加熱する。循環風加熱手段24は、本実施の形態1ではシーズヒーターを用いるが、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、又はカーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよく、これらを用いた場合であっても循環風を加熱でき、同様の効果を得ることができる。
加熱室20の後壁201には、調理室排気ダクト10が接続される加熱室排気口53が開口している。調理室排気ダクト10内であって、加熱室排気口53との接続端部には、触媒体34が取り付けられている。触媒体34は、通風可能な小孔を有しており、加熱室20から調理室排気ダクト10を経て本体1の外部へ排気される空気に含まれる汚染物質の一部を吸着して酸化分解して、排気の清浄度を高める。
触媒体34には、Pd(パラジウム)、Pt(プラチナ)、Mn(マンガン)のいずれかを含む酸化触媒が添着されており、通常は排気される高温空気の排熱により加熱され触媒活性を得て排気が通過するときに油煙や臭気成分等の物質を吸着して酸化分解し、空気を浄化する。本実施の形態1では、排気される空気の温度は循環風加熱手段24で加熱されて上昇するとともに、循環風加熱手段24の放射による加熱で触媒体34の温度をより高めることができる。したがって、触媒体34での汚染物の分解に係る化学反応速度が速まり、より多くの汚染物質が除去され、排気の清浄度を高めることができる。
本実施の形態1では、循環風加熱手段24の一部が、調理室排気ダクト10と加熱室20の後壁201との接続口である加熱室排気口53の前面に配置されている。このため、調理室排気ダクト10内に取り付けられた触媒体34に循環風加熱手段24の放射が直接的に届き、触媒体34の加熱効率が高められる。
送風ファン22から送出された空気の一部は、加熱室排気口53から調理室排気ダクト10へ流入し、調理室排気ダクト10の背面側垂直部の上端開口より排気される。排気される風量は、触媒体34の圧力損失を含め調理室排気ダクト10の流路断面積により適切な排気風量となるように調整される。適切な風量を排気することで、調理室11内での良好な調理効果及び仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下することはない。
循環風加熱手段24の端子部241は、加熱室20の上方側面から外側に突出している。循環風加熱手段24の端子部241は、コントロールユニット29内の制御基板に配線接続されており、制御手段が循環風加熱手段24の加熱の有無及び加熱量を制御する。
また、加熱室20には、加熱室温度検知手段44が設けられている。加熱室温度検知手段44としては、熱電対やサーミスタ等の耐熱性の温度検知素子を用いることができる。加熱室温度検知手段44は加熱室20内の温度検知を行い、加熱室温度検知手段44の出力はコントロールユニット29内の制御基板に実装された制御手段に入力されて調理室11における加熱制御に用いられる。例えば電動機21の故障等により送風が停止して加熱室20内の温度が過度に高温となった場合には、制御手段は、上方加熱手段23及び循環風加熱手段24への通電を中止して調理動作を停止させる等の制御を行い、安全性を高めている。
図12は、実施の形態1に係る調理室扉7と付帯部品の背面側斜視図である。
スライドレールユニット30の一部を構成するスライド部302には、調理皿26をスライド部302に保持する保持部41が設けられている。本実施の形態1では、スライド部302の前側及び後側の両方に保持部41が設けられており、前側の保持部41は左右のスライド部302を連結する部材、後側の保持部41は調理皿26の縁を係止する爪状の部材で構成されている。前側の保持部41の上に調理皿26の前側の縁が引っ掛けられ、後側の保持部41に調理皿26の後側の端部である背面端部264が係止されて位置決めされる。なお、保持部41の具体的構成は一例であり、調理皿26の載置位置を位置決めして保持することのできる構成であれば任意のものを採用することができる。
調理皿26は、調理室扉7が閉じられた状態において、調理皿26の調理室扉7側(前側)の端部である前面端部261と調理室扉7との間に、空気が通過することのできる隙間を設けて、保持部41に保持される。調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間の隙間を、前方通風部60と称する。
また、調理皿26の両側壁の上端には、フランジ263が設けられている。フランジ263を含む調理皿26の左右の幅は、調理室11の左右の側壁112間の距離(調理室11の内幅)に等しく、フランジ263の端部は調理室11の側壁112に接しているか近接している。ここで、調理皿26の左右の幅と調理室11の側壁112間の距離が「等しい」とは、等しいこと(すなわちフランジ263の端部が側壁112に接していること)、又は、等しくない場合(すなわちフランジ263の端部と側壁112との間に隙間がある場合)であっても、調理皿26の左右端部と側壁112との隙間を通って調理皿26の下方から上方へ抜ける空気の量が、調理室扉7に向かう空気の量よりも少なくなるように調理皿26の左右端部と側壁112との隙間が設定されていること、をいうものとする。これにより、吹出口28から吹き出され調理皿26の下側を流れる熱風が、フランジ263の端部と側壁112との隙間を通過する量を軽減して、調理室扉7側に向かって流れる気流の流量を増やし、調理皿26の加熱効率を高めている。また、スライドレールユニット30の上が調理皿26のフランジ263で覆われることで、スライドレールユニット30及び調理室11の下方の汚れが低減されて清掃性を向上させることができる。また、調理室扉7の開閉に伴い調理皿26はスライドレールユニット30に支持され一体的に調理室11内を前後に移動するが、移動時における調理皿26の左右端部と側壁112との接触による摩擦を抑制して、スムースで軽い開閉動作を可能とし、調理の作業性を高めている。
また、調理皿26は、耐熱性のある金属素材をプレス加工やダイキャストで成形した部品を組み合せて構成される。調理皿26に金属素材を用いることで熱の拡散を図り、調理皿26の温度ムラを軽減している。調理皿26の表面には、シロキサン結合を持つ三次元架橋マトリックス構造のセラミックコーティング皮膜が形成されており、表面を非粘着性質とすることで清掃性を高めることができる。また、汎用的に用いられるフッ素樹脂コーティングでは、その耐熱性能によって調理温度が260℃以下に制約を受けるが、セラミックコーティングとすることで耐熱温度は450℃まで上がり、調理温度範囲の制約が縮小される。
この調理皿26の載置面265の上に被加熱物が載置され、調理室11内で加熱される。
また、本実施の形態1の調理皿26は、トッププレート4上での加熱調理に用いることができる材料で構成されている。より具体的には、誘導加熱コイルユニット18とラジエントヒーター17のいずれか又は両方を用いて加熱することのできる材料で構成されている。なお、トッププレート4上での加熱手段として誘導加熱コイルユニット18とラジエントヒーター17のいずれか一方のみを設けた場合には、その加熱手段で加熱可能な材料で調理皿26を構成すればよい。
また、調理皿26に、着脱自在な取手(図示せず)や蓋(図示せず)を設けてもよい。このようにすることで、トッププレート4上の載置部8において炒め調理や煮物調理等の加熱調理が行える共用の調理容器として調理皿26を機能させる際の使い勝手を向上させることができる。調理室11での加熱調理と載置部8での加熱調理を組み合わせることで、調理可能なメニューを増やすことができるとともに、ユーザーの調理作業を省力化することができる。また、トッププレート4上での調理と調理室11での調理とを連携して行う連携調理メニューを設けた場合には、ユーザーの調理作業をさらに省力化することができる。
調理室扉7の調理室11側の外周部には、シリコン等の耐熱性を有する弾性部材で構成された気密部材33が配置されている。調理室扉7が閉められた状態では、調理室11の前面開口部の外周に気密部材33が接触して、調理室11の前面開口部と調理室扉7との隙間からの空気の漏れを抑制する。
調理室扉7には、ガラス等で構成された透過部を設け、ユーザーが調理室11の外側から調理室11内を目視できるようにしてもよい。また、調理室扉7や透過部を断熱構造としてもよく、このようにすることで調理室11内における加熱効率を向上させることができ、また、熱に対するユーザーの安全性を高めることができる。
図13は、実施の形態1に係る調理室11の正面断面図である。
吹出口28は概ね円形の開口部で、調理皿26の底面262の背面側の端部と、調理室11の底板114とに挟まれた高さ位置に配置されている。また、吹出口28は、加熱室20の幅の範囲内に設けられている。本実施の形態1では、吹出口28を円形の開口部としているが、スリット状の吹出口28としてもよい。
加熱室20は、左右のスライドレールユニット30の間に配置されている。このようにすることで、より下方に吹出口28を設けることができる。このため、調理皿26をより下方に配置して、調理皿26の載置面265と上方加熱手段23との間隔を広げることで、高さ寸法の大きい被加熱物を調理室11内に収納して調理することができる。また、吹出口28から調理皿26の底面262への気流の向きを垂直に近づけることで、衝突噴流に近い効果を得ることができ、調理皿26の加熱効率を高めることができる。
ここで、図9、図12、及び図13を参照して、スライドレールユニット30について説明する。スライドレールユニット30は、調理室扉7を前後方向にスライドさせて調理室11の前面開口を開閉するための扉開閉手段であり、レール部301とスライド部302とを備える。レール部301は、調理室11の左右の側壁112の内壁面に奥行き方向にわたって固定されている。スライド部302は、レール部301に直線移動自在に支持され、前面側の端部は調理室扉7に着脱自在に取り付けられている。左右のスライド部302は、前側の保持部41によって互いに連結されており、この保持部41及びスライド部302の上に調理皿26が保持される。
調理室扉7が開方向に引き出されると、調理室扉7に取り付けられたスライド部302がレール部301上を摺動して調理室11から引き出される。スライド部302が引き出されると、保持部41を介してスライド部302に支持された調理皿26及び調理皿26に載置される被加熱物が一体的にスライドして調理室11の外部に露出する。調理室扉7が全開状態にされると、調理皿26の奥行き長さの半分以上が、調理室11の外部に露出する。このため、ユーザーは被加熱物の調理皿26への載置や搬出を容易に行うことができ、また、調理皿26の調理室11への着脱も容易に行うことができるので、調理の作業性及びメンテナンス性、並びに調理室11の清掃性が高められている。
また、調理室扉7はスライドレールユニット30のスライド部302と取り外し自在に係合されている(図9参照)。このような構造とすることで、ユーザーは調理室扉7をスライド部302から取り外して洗浄することができ、メンテナンスが容易である。
スライドレールユニット30の可動側であるスライド部302と固定側であるレール部301の背面側端には、それぞれ引き合う磁力を有する磁石が取り付けられている。調理室扉7が閉状態の近傍においては、これらの磁石間の引力が、スライド部302及びこれに取り付けられた調理室扉7を閉方向に付勢する。このため、調理室扉7を調理室11の前面開口に密着させて調理室11の気密性を高めることができる。また、調理皿26の背面端部264と調理室11の後壁111とを近接又は接触させることができるので、調理皿26の背面端部264と調理室11の後壁111との間の隙間の通風が軽減され、吹出口28から吹き出された熱風のより多くが調理皿26の下側の空間を流れる。したがって、調理皿26の加熱効率を高めることができる。
本実施の形態1においては、調理室扉7を閉方向に付勢する付勢手段として磁石を設けた例を示しているが、付勢手段はこれに限るものではない。例えば、調理室扉7の開動作時にはバネ等の弾性体を変形させ、調理室扉7の閉動作時にはその弾性体の反力で調理室扉7を閉方向に付勢するなどしてもよい。このほか、調理室扉7を閉方向に付勢することができる構成であれば他のものを採用してもよく、同様の動作・効果を得ることができる。
図14は、実施の形態1に係る本体1の側面断面図である。図14(a)は本体1の全体の図を示し、図14(b)は吹出口28近傍を拡大して示している。
調理室11の上壁113、底板114、及び側壁112は、間隙35を介して二枚の壁が配置された二重壁構造により構成されている。この間隙35は、調理室11からの熱漏洩を抑制する断熱機能を発揮する。間隙35によって調理室11からの熱漏洩を抑制することで、調理室11内の加熱効率を高めるとともに、周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。本実施の形態1においては、間隙35による空気断熱を行っているが、必要に応じて間隙35内にグラスウールや真空断熱材等の断熱材を挿入してもよい。そのようにすることで、断熱性能を高めることができ、加熱効率や冷却効率を向上させることができる。
また、調理室11と筐体2の調理室収納部19との間にも間隙38が設けられている。間隙38には、調理室収納部19の収納部通風口36(図4)から流入した空気が流れるように構成されている。間隙38内を流れる気流により、調理室11から調理室収納部19内へ漏洩する熱を排気する。このようにすることで、調理室収納部19外への熱漏洩を抑制して、周囲に配置される部品の温度上昇を抑制して冷却効率を高めている。また、吹出口28から吹き出される気流の圧力や加熱調理中の被加熱物からの水蒸気爆発や揮発により調理室11内の圧力が高まった場合に、調理室11の壁の接合部等から油煙や炭化物等が漏れ、調理室収納部19内に油分や汚れが付着しうる。調理室収納部19に付着した油分や汚れは、故障や発煙の要因となる可能性があるが、収納部通風口36から流入する気流が間隙38を流れて調理室収納部19内を換気することにより、油煙や炭化物等の汚染物が排気され、内部の汚れの堆積を抑制できる。
吹出口28の加熱室20内側における外周部には、立ち上がり部42が設けられている。立ち上がり部42の上方を覆うようにして庇部43が設けられている。
庇部43と加熱室20の底面202との間には、加熱室20内から吹出口28へ向かう風路が形成されている。庇部43は、その上方に設けられた送風ファン22から送られる上方から下方に向かう流れの作用によって、吹出口28から調理室11内へ吹き出される噴流が斜め下方に噴出されることを抑制する。また、庇部43と加熱室20の底面202との間に形成される風路によって、加熱室20内から吹出口28に向かう気流は、上下方向の乱れが軽減され水平に近い流れに整流される。
吹出口28の開口下端は、加熱室20の底面202との間に段差を設けて配置されている。庇部43と加熱室20の底面202との間を流れる気流は、この段差により上方に向かう成分が付勢され、吹出口28から調理室11内へ斜め上方に向けて噴き出され、調理皿26の底面262に衝突して熱伝達する。
立ち上がり部42が設けられたことで、庇部43と調理室11の後壁111背面との接合面に組み立て又は熱応力による変形で隙間が生じても、その隙間から流入する気流が直接吹出口28に到達しにくくなり、立ち上がり部42が風よけとして機能する。このため、吹出口28から斜め下方へ向かって空気が噴き出されるのを抑制することができる。
調理皿26の調理室扉7側の前面端部261と調理室扉7との間の前方通風部60の流路断面積は、調理皿26の底面262と調理室11の底板114との間の空間の断面(本実施の形態1では調理室扉7と平行な断面)と同等以上の面積となるように構成されており、不要な圧力損失を低減している。
調理皿26の奥側の端部である背面端部264は、調理室11の後壁111の近傍に配置されている。ここで、調理皿26の背面端部264が後壁111の「近傍」に配置されているとは、背面端部264と後壁111とが接していること、又は、背面端部264と後壁111とが接していなくても両者の隙間を通って調理皿26の下方から上方へ抜ける空気の量が調理室扉7に向かう空気の量よりも少なくなるように背面端部264と後壁111との隙間が設定されていること、をいうものとする。背面端部264と後壁111との隙間の流路断面積は、前方通風部60の流路断面積よりも小さい。なお、吹出口28から吹き出された空気のうちなるべく多くの量を調理室扉7側に向かう気流にしたいので、調理皿26の背面端部264と調理室11の後壁111との隙間はなるべく小さい方が好ましい。
[加熱調理器の動作]
次に、実施の形態1に係る加熱調理器の動作を説明する。
(トッププレート4上での加熱調理)
ユーザーがトッププレート4上の載置部8に対応する操作部6を操作すると、コントロールユニット29内の電子回路基板50に実装された制御手段が、トッププレート4の下方の誘導加熱コイルユニット18やラジエントヒーター17に電力を供給する。これにより、トッププレート4の上に載置された被加熱物の加熱調理が行われる。また、制御手段は、冷却ファン37を駆動し、冷却ファン37から供給される冷却風によって加熱調理器内の各部の冷却が行われる。
(調理室11での加熱調理)
表示部9には、調理室11での加熱調理のために設定可能な調理モード、調理メニュー、加熱条件等が表示される。ユーザーが、表示部9に表示される情報を確認しながら操作部6を操作して所望の設定を行うと、設定内容に対応する制御シーケンスが記憶手段(図示せず)から呼び出され、制御手段は、調理室温度検知手段32、加熱室温度検知手段44、及び調理皿温度検知手段27から得る温度情報、及び内蔵する計時手段(図示せず)が計測した時間に基づき、制御シーケンスにしたがって上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21の制御を行う。
図15は、実施の形態1に係る調理室11の空気の流れを説明する図である。図15に示す加熱調理器の側面断面図は図14(a)と同じであるが、空気の流れに関連する構成のみに符号を付すとともに、空気の流れを矢印で概念的に示している。
まず、制御手段が上方加熱手段23に通電すると、上方加熱手段23の放射により、調理皿26に載置された被加熱物の主に上面が加熱される。また、制御手段が循環風加熱手段24に通電すると、循環風加熱手段24の放射伝熱によって加熱室20内の空気が加熱される。
そして、制御手段が電動機21を駆動すると、電動機21の回転軸に連結された送風ファン22が回転する。
送風ファン22が回転すると、送風ファン22に対向して開口している調理室吸込口12に吸引力が生じる。そうすると、調理室11内の空気の一部は、調理室吸込口12から加熱室20内へと吸い込まれる。加熱室20内に吸い込まれた空気は、送風ファン22の回転中心に吸い込まれ、羽根の外周へと送出される。送風ファン22の羽根から送出された空気は、送風ファン22の外周に配置された循環風加熱手段24によって加熱され、庇部43と加熱室20の底面202との間に形成される空間を通り、立ち上がり部42内を通り、吹出口28から調理室11内へ吹き出される。
吹出口28の最下部は加熱室20の底面202よりも高い位置に設けられており、また、吹出口28の上流側に設けられた庇部43及び立ち上がり部42によって加熱室20内の空気を吹出口28に導く導風路が形成されているので、吹出口28から吹き出された空気は、調理室11内において斜め上方に向かう気流を形成する。この吹出口28から斜め上方に向かう気流は、調理皿26の底面262に接しつつ調理室11の前側(調理室扉7側)に向かって流れる。調理皿26の底面262の下側を流れる熱気は、調理皿26の前側の前面端部261と調理室扉7との間に設けられた前方通風部60を通って上方に向かい、調理室扉7及び調理室11の上壁113に誘導されて調理皿26の上側の空間を後壁111側に向かって流れ、調理室吸込口12に吸い込まれる。このように、調理室11内には、図15に実線矢印で示すような循環風路が形成される。
調理皿26の下側の空間を熱風が通過するときには、熱風が調理皿26に接して調理皿26を加熱し、調理皿26の上に載置されている被加熱物の主に下部は調理皿26を介して加熱される。また、調理皿26の上方の空間を熱風が通過するときには、熱風が調理皿26の上方の空気を攪拌し、上方加熱手段23から空気への伝熱を促進する。また、熱風が調理皿26の上方の空気を攪拌することで、調理皿26の上方の空間の温度ムラを抑制する。
調理室吸込口12から加熱室20内に流入した空気の一部は、加熱室排気口53を通って調理室排気ダクト10に流入し、触媒体34で浄化され、筐体排気口13を経て外部へと流出する。なお、このようにして調理室11内の空気の一部が排気されるが、排気された分の空気は、調理室扉7と調理室11との隙間(図示せず)や、吸気のために別途設けられた開口部(図示せず)から調理室11内に吸引されて補われる。
次に、魚や肉等の食材を調理皿26に直接載置して加熱する調理モードを例に、調理室11における加熱調理の動作を説明する。
調理工程が開始されると、上方加熱手段23と循環風加熱手段24ともに加熱量は最大で、電動機21は停止するように制御される。電動機21が停止しているため、調理室排気ダクト10からの排気は自然排気のみとなって排気量は最少となる。このため、排気に伴う排熱が抑制され、調理室11及び加熱室20内の昇温速度が速まるとともに、被加熱物の加熱にあまり寄与しない低温の気流が吹出口28から吹き出されて被加熱物に接触することによる被加熱物の乾燥を抑制することができる。
加熱室温度検知手段44の出力に基づいて、加熱室20内の温度が所定の温度(例えば100℃)に到達したことが検知されると、制御手段は、電動機21を動作させて送風ファン22を回転させる。送風ファン22が回転して送風が開始されると、吹出口28から調理室11内へ、高温の空気が斜め上方に向かって吹き出される。吹出口28から吹き出される空気によって調理皿26が加熱され、調理皿26からの熱伝達によって被加熱物の下部が加熱される。被加熱物の上部は、上方加熱手段23からの放射と被加熱物の周囲の気流からの伝熱により加熱される。
調理室温度検知手段32の出力に基づいて、調理室11内の温度が所定の温度(例えば250℃)に到達したと検知されるまでは、制御手段は、上方加熱手段23及び循環風加熱手段24を、最大出力又はそれに近い高出力に制御する。このように上方加熱手段23及び循環風加熱手段24で高出力の加熱を行うことで、被加熱物の表面を比較的短時間で70℃程度まで昇温させ、被加熱物の表層部のタンパク質を凝固させて被加熱物の内部の水分等の揮発を抑制し、被加熱物内部のジューシーさを保持することができる。
なお、調理皿温度検知手段27が検知する調理皿26の温度が、油分を瞬間的に発火させる所定の温度(例えば350℃)以上となった場合には、制御手段は、調理皿26の温度が油分を瞬間的に発火させない所定の温度以下となるように、循環風加熱手段24の出力を低下、停止、又は間欠的に通電する制御を行う。
調理室11内での加熱調理の初期において、制御手段は、調理室温度検知手段32の出力に基づいて調理室11内の温度の変化を検出する。そして、制御手段は、被加熱物の量や加熱調理の初期における温度に基づいて、調理時間(加熱時間)等を含む制御シーケンスを設定し、これ以降は設定した制御シーケンスに基づいて各部の制御を行う。
調理室11が所定の温度に達すると、制御手段は、被加熱物の上面、下面、及び内部の焼き加減が適切になるとともに、被加熱物の気流の接触による乾燥や調理皿26での発煙を低減するように、上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21を制御する。循環風加熱手段24の出力は、調理皿26が200℃程度の温度になるようにコントロールされる。電動機21は、調理室11内の空気が適切に排気され、被加熱物に不要な着色や臭いが付着して調理品質が低下しない程度の排気量となるように制御される。
調理工程の終盤においては、制御手段は、上方加熱手段23の出力を上昇させる。このようにすることで、食材の表面に適切な(美味しそうな)焼色をつけるとともに、被加熱物の表面の水分を揮発させてパリッとさせ、見た目も食味も良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
また、制御手段は、調理工程が終了するまでの間に被加熱物の内部が75℃以上の温度で1分以上経過するように、上方加熱手段23及び循環風加熱手段24を制御する。このため、被加熱物の加熱不足を抑制して安全性を高めることができる。また、制御手段は、調理工程が終了するまでの間に、被加熱物の表面の少なくとも一部は150℃〜200℃となるように、上方加熱手段23及び循環風加熱手段24を制御する。このようにすることで、良好な焼き色を被加熱物の表面に付けることができる。
制御シーケンスが完了すると、上方加熱手段23及び循環風加熱手段24の加熱動作は停止する。また、調理室扉7のロック解除条件が満たされると、表示部9にて調理完了を報知するとともにブザーや音声で報知し、調理室扉7のロックを解除する。調理室扉7のロックが解除されると、ユーザーは調理室扉7を開くことができる。
本実施の形態1の加熱調理器は、上記のような魚や肉等の食材を調理皿26に直接載置して加熱する調理モードのほか、トッププレート4上の載置部8での加熱調理と、調理室11内での加熱調理とを連携して行う連携調理モードでの加熱調理も可能である。
以下、トッププレート4上の載置部8での加熱調理と、調理室11内での連携調理を行う調理制御について説明する。
表示部9には、調理モードの一つとして『連携調理』モードが表示され、『連携調理』モードの中の調理メニューとして『シチュー』、『ハンバーグ』、『鶏肉の煮物』、『ピラフ』等が表示される。ユーザーが操作部6を操作して『連携調理』モード及び調理メニューを選択すると、選択された調理モード及び調理メニューに対応した制御シーケンスが図示しない記憶手段から呼び出され、制御手段は、その制御シーケンスに従った制御を開始する。連携調理の制御シーケンスは、トッププレート4上での加熱調理及び調理室11内での加熱調理が、一方に引き続いて他方が行われるように設定されている。
最初にトッププレート4上での加熱調理を行い、次に調理室11内での加熱調理を行う調理メニューにおいては、まずユーザーは、食材を調理皿26に入れ、トッププレート4上の載置部8で下準備の加熱調理を行う。下準備の加熱調理を終了すると、ユーザーは、調理室11内に調理皿26を移動させ、操作部6を操作して調理室11内での加熱調理を指示する。そうすると、制御手段は、制御シーケンスにしたがって上方加熱手段23、循環風加熱手段24、及び電動機21を制御する。例えば、シチューであれば、トッププレート4上での下準備としてユーザーが炒め調理を行い、続いて調理室11内において煮込み調理が自動調理にて行われる。また、ハンバーグであれば、トッププレート4上での下準備として表面に焦げ目が付く程度にユーザーがハンバーグを焼き、続いて調理室11内においてハンバーグ内部を加熱する調理が自動調理にて行われる。
また、最初に調理室11内での加熱調理を行い、次にトッププレート4上での加熱調理を行う調理メニューにおいては、まずユーザーは、食材を調理皿26に入れ、調理室11内で加熱調理を行う。調理室11内での加熱調理を終了すると、ユーザーは、調理皿26を調理室11から取り出してトッププレート4の載置部8に載せ、トッププレート4上での加熱調理を手動調理又は自動調理にて行う。例えば、鶏肉の煮物であれば、鶏肉を入れた調理皿26を調理室11に入れて自動調理にて照り焼きにした後、ユーザーは調理室11から鶏肉の入った調理皿26を取り出して載置部8に載せ、手動にて他の具材を加えて炒め、ブイヨンを加えて手動で煮たてる調理を行う。また、ピラフであれば、サラダ油をまぶした具材を調理皿26に並べて調理室11内で自動調理した後、ユーザーは調理室11から調理皿26を取り出して載置部8に載せ、米、水、及び調味料等を調理皿26に加えて自動炊飯調理により加熱調理する。
『連携調理』モードの実行中においては、制御手段は、ユーザーが次に行うべき作業を示す情報を、表示部9に表示させる。あるいは表示部9での表示に代えて、又は加えて、同様の情報をスピーカーから音声出力させる。このようにすることで、ユーザーは、調理作業を円滑に進めることができる。
調理皿26を調理室11と載置部8で共用して調理することにより、ユーザーの調理作業が省力化されるとともに、調理後の調理皿26等の調理容器の清掃の手間が軽減されより家事作業が省力化される。
なお、本実施の形態1においては専用の調理皿26を用いているが、専用の調理皿26の代わりに、調理室11に収納可能で載置部8で加熱調理可能な市販のフライパン等の調理容器を用いてもよく、このようにしても同様の調理動作及び効果を得ることができる。なお、市販のフライパン等の調理容器を用いる場合には、調理容器を保持部41に載置するための調理容器載置部材(図示せず)を別途設けるとよい。
以上のように本実施の形態1では、調理室扉7が閉じられた状態において、調理皿26の背面側の端部である背面端部264と調理室11の後壁111とを近接させるとともに、調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間には、空隙(前方通風部60)を形成した。このため、吹出口28を出て調理皿26の下側の空間を調理室扉7側に向かって流れ、調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間の空隙(前方通風部60)を通って上方に向かい、調理皿26の上側の空間を後壁111側に向かって流れ、調理室吸込口12に至る熱風の循環風路が形成される。したがって、調理皿26の下側の空間を通過するときに熱風は調理皿26を加熱し、調理皿26からの熱伝導で被加熱物の下部を加熱することができる。また、調理皿26の上方の空間を通過する熱風で生じる強制対流熱伝達によって被加熱物を加熱することができるとともに、上方加熱手段23からの放射で被加熱物を加熱することができる。このように、調理皿26からの熱伝導、調理皿26の上方を流れる気流で生じる強制対流熱伝達、及び上方加熱手段23からの放射という三種類の熱伝達を利用して被加熱物を加熱することができる。したがって、被加熱物を効率よく加熱することができるので、調理時間を短縮化することができ、省エネルギー効果を有ることができる。
また、調理皿26の上方の空間を通過する熱風が調理皿26の上方の空間の空気を攪拌し、上方加熱手段23から空気への伝熱を促進することができるとともに当該空間内の温度ムラを抑制して被加熱物の加熱ムラを抑制することができる。したがって、良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
また、被加熱物を載置する調理皿26の下方に加熱手段を配置しないことから、調理室11内の高さ方向のスペースを、上方加熱手段23と調理皿26の載置面265との間の空間として使用することができる。したがって、調理室11内の有効調理高さを高くすることができ、厚みのある被加熱物を加熱が可能となり、調理可能な食材の大きさの範囲を広げ調理能力を高めることができる。
また、調理皿26の下方に被加熱物を下方から加熱する電気ヒーター等の加熱手段を設けないことから、被加熱物からの油脂分が加熱手段に接触することがなく、発煙や瞬間的な発火を軽減することができる。したがって、調理室11内の安全性及び信頼性を高めることができ、適切な製品寿命を保持することができる。
また、調理皿26の下方に加熱手段を設けないことから、調理室11内のメンテンス性及び清掃性を高める効果がある。
また、調理室扉7を引き出して調理皿26の奥行き方向の半分以上を調理室11の外に取り出すことができるので、被加熱物である食材等を調理室11内に容易に出し入れすることができる。
調理室11の上方に上方加熱手段23を備え、加熱室20に循環風加熱手段24と送風手段を備え、上方加熱手段23と循環風加熱手段24及び送風手段とを個別に制御するようにした。このため、被加熱物の上部の焼き加減は上方加熱手段23の出力に応じて調整することができ、また、被加熱物の下部の焼き加減は循環風加熱手段24及び送風手段の一部をなす電動機21の動作に応じて調整することができる。したがって、ユーザーの嗜好に合わせて被加熱物の上部及び下部の焼き加減並びに調理の仕上がりを得ることができる。
また、電動機21を停止又は回転数を低下させても、調理皿26の余熱により被加熱物の下部の加熱を行うことができるので、食材の乾燥を抑制する調理効果を得ることができる。
また、吹出口28の最下部は加熱室20の底面202との間に段差を有するように配置され、吹出口28の上方には庇部43が配置されている。この吹出口28の最下部と加熱室20の底面202との間の段差及び庇部43は、吹出口28から吹き出される空気が斜め上方に向かうように空気を導く導風手段として機能する。このような導風手段を設けたので、調理皿26への熱風の接触量を高めることができ、また、熱風の調理室11内への流入角度を垂直に近づけることができるため調理皿26の底面262への衝突噴流熱伝達の効果を得ることができる。したがって、調理室11内における加熱効率を高めることができる。また、本実施の形態1では、吹出口28の最下部と加熱室20の底面202との間の段差及び庇部43という簡易な構成で導風手段を実現しているので、上述のような加熱効率のよい加熱調理器を低コストで構成することができる。
また、調理皿26の幅は、調理室11の両側の側壁112間の距離と等しくなるように構成されている。より詳しくは、本実施の形態1では、調理皿26の側面上部に、側方に向かって延びるフランジ263が設けられ、フランジ263の端部は側壁112に接触あるいは近接している。このため、調理皿26の側方の端部と調理室11の両側壁112間の空隙を小さくすることができ、この空隙を通る吹出口28からの熱風を少なくすることができる。したがって、調理皿26の下側を通って調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間の前方通風部60に向かって流れる熱風の量を相対的に多くすることができる。よって、調理皿26の加熱効率の向上、及び調理皿26の上方の空気の攪拌を促進することによる温度ムラ軽減の効果をより高めることができ、加熱効率が高く良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
また、付勢手段を備えたスライドレールユニット30が設けられ、調理室扉7は閉方向に付勢される。調理室扉7を閉方向に付勢することで、調理室扉7に保持部41を介して取り付けられた調理皿26を、調理室11の後壁111側に付勢するので、調理室11の後壁111と調理皿26の背面端部264との間の気密性が高まり、調理室11の後壁111と調理皿26の背面端部264との間を通過する熱風を少なくすることができる。したがって、調理皿26の下側を通って調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間の前方通風部60に向かって流れる熱風の量を相対的に多くすることができる。よって、調理皿26の加熱効率の向上、及び調理皿26の上方の空気の攪拌を促進することによる温度ムラ軽減の効果をより高めることができ、加熱効率が高く良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
また、調理皿26には、シロキサン結合を持つ三次元架橋マトリックス構造のセラミックコーティング皮膜が形成されている。このため、調理皿26に非粘着性が付与され、加熱調理後の清掃性が良好となる効果がある。
また、加熱調理器は、調理室11のほかに、トッププレート4と、トッププレート4に載置される被加熱物を加熱する加熱手段を備えた。このため、トッププレート4上では鍋やフライパン等の調理容器を用いた加熱調理ができ、調理室11ではグリル、ロースター、オーブン、スチーム調理等ができることから、一台の加熱調理機で同時に多様な調理が行え、省スペースで多機能な加熱調理器を得ることができる。
また、調理皿26は調理室11の加熱調理とトッププレート4上の加熱調理の両方で使用可能な材料で構成されている。このため、調理室11での加熱調理とトッププレート4上の加熱調理とを、異なる調理容器に被加熱物を移し替えることなく連続して行うことができる。したがって、ユーザーの調理の作業性が向上し、短時間調理が可能になるとともに、調理容器の清掃の手間も省力化される効果がある。
また、制御手段によって実行される調理モードの一つとして、トッププレート4上で加熱調理を行う工程と調理室11で加熱調理を行う工程とを含み、両工程において共通の調理容器(調理皿26)使用可能な連携調理モードを備えた。そして、トッププレート4と調理室11の少なくとも一方においては、予め設定された制御シーケンスにしたがって加熱制御を行う自動調理を行う。このため、ユーザーは加熱調理器を用いて多様な調理を簡易に行うことができる。また、加熱調理器で自動調理を行うことで、ユーザーの調理作業を省力化及び短時間化することができる。
また、調理室温度検知手段32又は調理皿温度検知手段27を備え、少なくともいずれかの出力に基づいて調理皿26の温度が検出される。そして、制御手段は、調理室11内での加熱調理中において、調理皿26の温度が360℃以下となるように加熱制御を行う。このため、何らかの条件で調理皿26の温度が上昇した場合でも、被加熱物から滴下した油分の瞬間的な発火が抑制され、安全性の高い加熱調理器とすることができる。
また、本体1には調理室11を収容する調理室収納部19と冷却ファン37とが設けられている。そして、調理室収納部19の前方側の側面には、収納部通風口36が設けられ、冷却ファン37からの気流が収納部通風口36から調理室収納部19内に流入するように構成されている。これにより、調理室11の隙間等から調理室収納部19内へ漏れた調理室11内の熱気及び油煙等を排気できる。したがって、調理室収納部19の外側の部品の温度上昇が抑制されるとともに、調理室収納部19内に放出された油分や炭化物等も排気されて汚れの堆積が抑制される。したがって、信頼性が高く耐久性の高い加熱調理器を得ることができる。
また、操作部6、表示部9、及び調理室扉7の開閉状態を検知する開閉検知手段を備えた。そして、操作部6から調理動作の指示が出力された場合には、調理室扉7の開閉状態を検知し、調理室扉7が開状態であれば加熱調理を行わず調理室扉7を閉めるよう表示部9を用いて報知するようにした。また、加熱調理中に調理室扉7が開状態であることが検知された場合には、上方加熱手段23及び循環風加熱手段24と送風手段である電動機21とを停止し、調理室扉7が開いたため加熱調理を停止したことを表示部9に報知させるようにした。このため、吹出口28から吹き出される熱風の調理室11外部への流出を抑制することができ、ユーザーが熱風で火傷する等のリスクが軽減できることから、安全性の高い加熱調理器を得ることができる。
実施の形態2.
図1〜図8、図11、図16〜図20を用いて、実施の形態2を説明する。本実施の形態2は、実施の形態1の調理室11の構成の一部を変更したものであり、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図1〜図8、及び図11に示す構成は、実施の形態1と同様である。
図16は、実施の形態2に係る調理室11の上壁113及び調理室扉7を取り外した状態の斜視図である。
調理室11の両側壁112の二重壁の間隙35には、例えばグラスウールや真空断熱材等の断熱材40が充填されている。断熱材40を設けることで、調理室11内からの熱漏洩を軽減して調理室11内における加熱効率を高めることができる。また、調理室11内からの熱漏洩を軽減することで、調理室11の周囲の部品の温度上昇を抑制して不要な冷却を軽減し、冷却ファン37の動作によって生じる騒音を軽減するとともにエネルギー消費量を低減することができる。
実施の形態1においては、調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間には、調理皿26の幅方向の全体にわたって通風可能な空間である前方通風部60が設けられていた。
一方、本実施の形態2では、実施の形態1における前方通風部60の一部が閉塞されている。より詳しくは、調理皿26の幅方向の中央部には、平板面が水平になるように配置され前面端部261と調理室扉7との間を塞ぐ遮蔽部45が設けられ、遮蔽部45の左右方向両側は上下方向に貫通している。この遮蔽部45の左右両側の貫通した部分を、前方通風部60Aと称する。
吹出口28から調理室11内に吹き出された熱風は、調理皿26の下方空間を通過した後、調理皿26の前部左右両側に設けられた前方通風部60Aを通過して、調理皿26の上方の空間へ流入する。この流れの形成により、温度が低くなりやすい調理皿26の右前部及び左前部への熱風の導風を図り、加熱度合いを高め、調理皿26の温度ムラを低減する。
図17は、実施の形態2に係る調理室11の上壁113、加熱室20及び付帯する部品を取り外した状態の背面側斜視図である。
吹出口28の外周部には、加熱室20の内部側に突出する管路部46が設けられている。管路部46は、内部に空気の流路を有する円筒状の部材である。管路部46の中心軸は、背面側から調理室11の後壁111に向かって水平よりも上方に傾斜している。すなわち、管路部46は、管路部46への空気の入口側の端部から出口側の端部である吹出口28に向かい、上に向かって傾斜している。このような管路部46を設けたことにより、斜め上方に向かって流れるように整流された熱気が吹出口28から吹き出される。
また、送風ファン22から送出される気流は旋回成分を持ち、吹出口28が配置される加熱室20の下方においては、送風ファン22の回転方向に応じて左側面から右側面、又は右側面から左側面に向かう気流の成分を含む。このため、吹出口28からの空気の吹き出し方向が、左又は右方向に傾斜する傾向がみられる。しかし、本実施の形態2では、吹出口28の外周の上流側に管路部46を設けたので、管路部46を通る過程において加熱室20内の空気は左右方向にも整流され、直進性の高い空気が吹出口28から吹き出される。このように調理皿26の下方空間には直進性の高い気流が形成されるので、調理皿26の底面262に熱気が到達しやすく、調理皿26の加熱効率を高めることができる。
図18は、実施の形態2に係る調理室扉7と付帯部品の背面側から見た分解斜視図である。
本実施の形態2の調理室扉7とスライドレールユニット30のスライド部302とは、実施の形態1と同様に着脱自在に固定される。図18では、調理室扉7とスライド部302の着脱構造の一例を示している。図18に示すように、左右一対のスライド部302の前端部は、板状あるいは棒状の連結部303で連結されており、この連結部303には上方に向かって突出する係止爪54が設けられている。また、調理室扉7には、係止爪54を係合する係合孔55が設けられている。係止爪54が係合孔55に係合されると、スライドレールユニット30のスライド部302と調理室扉7とが固定される。
なお、図18に示したスライド部302と調理室扉7との着脱構造は一例であり、両者を着脱自在に固定することのできるものであれば任意の構成を採用することができる。
遮蔽部45は、調理室扉7側(前側)の保持部41と連結部303との間を連結するようにして設けられている。また、前方通風部60Aは、遮蔽部45の左右両側にそれぞれ設けられている。
図19は、実施の形態2に係る調理室11の側面断面図である。
図18及び図19を参照して、調理皿26及び調理室11内の風路に関連する構成について説明する。
図18及び図19に示すように、調理皿26は、被加熱物が載置される面である載置面265に、幅方向に延びる複数の凸部266及び凹部267が形成されている。すなわち、調理皿26の載置面265は、凹凸形状である。凸部266及び凹部267は、調理皿26の奥行き方向に交互に配置されている。また、凸部266の左右両端と調理皿26の周壁との間には凹状の溝部268が設けられている。
凹部267は、左右方向における中央が高く、両端が低い。すなわち、凹部267は、左右方向の中央の凹みが浅く、両端にいくほど凹みが深くなっており、凹部267の上面は左右方向の中央から両端に向かって下降するように傾斜している。
また、凹部267の左右端部を前後方向に見ると、後部は高くて凹みが浅く、前部は低くて凹みが深くなるような傾斜面及び傾斜曲面で構成されている。
このような凹部267を設けたことにより、調理皿26に載置された被加熱物から滴下した汁気及び油分は、凹部267の左右中央から左右両端に向かって流れて左右両端部に集まる。そして、この凹部267の左右両端部においては、汁気及び油分は後方から前方へ向かって流れ、調理皿26の前側の凹部267の左右両端部に集まる。
このように、吹出口28から離れた位置である調理皿26の前側に汁気及び油分を集めることで、熱風によって汁気及び油分が加熱されるのを抑制することができる。汁気及び油分の加熱を抑制することで、発煙を少なくし、排気の清浄度を高め加熱調理器が設置される調理環境を良好に保つことができる。また、発煙を抑制できるので、調理室11内に収容された被加熱物に不要な着色や臭い移りが生じるのを抑制し、調理品質を向上させることができる。
また、調理皿26の底面262は、吹出口28側が高く調理室扉7側が低い形状である。すなわち、調理皿26の底面262は、吹出口28側(後側)から調理室扉7側(前側)に向かって下降している。
このようにすることで、調理皿26の底面262と調理室11の底板114との間の風路断面積は、後側に対して前側が小さくなる。調理皿26の下側の風路を、前側ほど狭くなるようにすることで、調理皿26の前部側における気流の風速を高め、熱風の温度が相対的に低くなる前部側における加熱効率を高めることができる。このため、調理皿26の前後方向における加熱ムラを軽減することができる。
また、調理皿26の底面262を、吹出口28側に対して調理室扉7側が低い傾斜面とすることで、吹出口28から吹き出される空気の調理皿26の底面262への衝突角度を垂直に近づけることができる。このため、熱風から調理皿26への熱伝達効率を向上させることができる。
また、調理皿26の底面262には、調理皿26の載置面の凸部266及び凹部267に対応した形状の凹凸が形成されている。調理皿26の底面262に凹凸を設けることで、調理皿26の下側を流れる熱風の乱流が促進され、熱風と調理皿26との衝突を促すことができる。したがって、熱風による調理皿26の加熱効率を高めることができるので、調理時間が短縮されて調理性能を高めることができるとともにエネルギー消費量を低減することができる。
図20は、実施の形態2に係る調理室11の正面断面図である。
調理皿26の底面262は、左右方向の中央に対して両端が低くなるように構成されている。すなわち、調理皿26の底面262は、左右中央から両端に向かって下降する傾斜面を有する。このようにすることで、調理皿26の底面262と調理室11の底板114との間の風路断面積は、左右中央に対して左右両側が小さくなる。調理皿26の下側の風路を、左右中央に対して両側が狭くなるようにすることで、調理皿26の左右両端部分における気流の風速を高め、調理皿26の左右両端部分における加熱効率を高めることができる。このため、調理皿26の中央と左右との間の加熱ムラを軽減することができる。
調理室11の上壁113及び底板114に形成された二重壁構造の内部には、側壁112と同様に断熱材40が充填されている。断熱材40を設けることで、調理室11内からの熱漏洩を軽減して調理室11内における加熱効率を高めることができる。また、調理室11内からの熱漏洩を軽減することで、調理室11の周囲の部品の温度上昇を抑制して不要な冷却を軽減し、冷却ファン37の動作によって生じる騒音を軽減するとともにエネルギー消費量を低減することができる。
次に、図19を参照し、本実施の形態2に係る加熱調理器の作用を説明する。本実施の形態2は、吹出口28、調理皿26の下方空間、調理室扉7と調理皿26の前面端部261との間の空間、及び調理皿26の上方空間を順次経て、調理室吸込口12に至る熱風循環風路を形成するのは実施の形態1と同様である。
しかし、本実施の形態2においては、調理室扉7と調理皿26の前面端部261との間の空間の一部は遮蔽部45によって塞がれ、残りの前方通風部60Aが開放されている。このため、調理皿26の下方空間を通って調理室扉7側に向かって進んできた気流は、前方通風部60Aに導かれ、前方通風部60Aを通って調理皿26の上方空間へ進む。このように、調理室扉7と調理皿26の前面端部261との間の一部に熱気を導くことで、調理皿26の部位別の加熱量を変化させ、調理皿26の温度ムラを抑制することができる。
また、本実施の形態2では、調理皿26の左右方向の中央に遮蔽部45を設け、遮蔽部45の左右両側に前方通風部60Aを設けている。このため、調理皿26の左右両側の前部の加熱量を相対的に増すことができる。さらに、本実施の形態2の調理皿26の底面262は、左右方向中央に対して左右が低い傾斜面である。調理皿26の下方の風路を、左右中央に対して両端部側が狭くなるようにすることで、調理皿26の左右両端部分における気流の風速を高め、調理皿26の左右両端部分における加熱効率を高めることができる。このように、前方通風部60A及び調理皿26の底面262の構成を組み合わせることで、調理皿26の左右両端部側の加熱量を高め、調理皿26の加熱ムラをさらに軽減することができる。
なお、本実施の形態2においては、遮蔽部45を左右方向の中央に設け、前方通風部60Aを遮蔽部45の両側に設ける構成としたが、遮蔽部45と前方通風部60Aの配置はこれに限定されず、調理皿26の加熱量を高めたい部位に合わせてこれらを配置することができる。送風手段及び吹出口28の配置に依存する調理皿26の加熱ムラを軽減することができる位置に遮蔽部45と前方通風部60Aを設けることで、同様の効果を得ることができる。
また、調理皿26の底面262は、吹出口28側が高く調理室扉7側が低い形状である。すなわち、調理皿26の底面262は、吹出口28側(後側)から調理室扉7側(前側)に向かって下降している。
このようにすることで、調理皿26の底面262と調理室11の底板114との間の風路断面積は、後側に対して前側が小さくなる。調理皿26の下側の風路を、前側ほど狭くなるようにすることで、調理皿26の前部側における気流の風速を高め、熱風の温度が相対的に低くなる前部側における加熱効率を高めることができる。このため、調理皿26の前後方向における加熱ムラを軽減することができる。
また、調理皿26の底面262を、吹出口28側に対して調理室扉7側が低い傾斜面とすることで、吹出口28から吹き出される空気の調理皿26の底面262への衝突角度を垂直に近づけることができる。このため、熱風から調理皿26への熱伝達効率を向上させることができる。
以上のように本実施の形態2では、調理室扉7が閉じられた状態において調理皿26の前面端部261と調理室扉7とが離れて配置されるように構成されている。そして、調理皿26の前面端部261と調理室扉7との間の一部を上下に塞ぐ遮蔽部45が設けられ、残りの部分は開放されて前方通風部60Aが形成されている。このため、吹出口28から吹き出される熱風を前方通風部60Aに導くことができるので、調理皿26の各部位における加熱量を可変することができる。したがって、調理皿26の温度分布の均一化を図ることができ、調理皿26の上に載置される被加熱物の加熱ムラを抑制して良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
また、吹出口28の上流側の外周には、導風手段としての管路部46が設けられている。そしてこの管路部46の中心軸を、吹出口28側に向かって上昇するように傾斜させた。このため、吹出口28から斜め上方に空気を吹き出すことができる。したがって、調理皿26の加熱効率を高めることができるので、調理時間を短縮できるとともに、調理室11の加熱に要する消費電力量を低減させることができる。
また、調理皿26の底面262は、吹出口28に近い側から遠い側(調理室扉7側)に向かって下方に傾斜しており、調理皿26の下側の風路の流路断面積が、吹出口28に近い側から遠い側(調理室扉7側)に向かって狭められている。このため、調理皿26の前部側における気流の風速を高め、調理皿26の前部側の加熱効率を高めることができる。また、調理皿26の底面262を上述のような傾斜面とすることで、吹出口28から吹き出される空気と調理皿26の底面262との衝突角度を垂直に近づけることができ、熱風から調理皿26への熱伝達効率を向上させることができる。このように調理皿26の加熱効率を向上させることができるので、調理時間を短縮できるとともに調理室11内の加熱に要する消費電力量を低減させることができる。
また、調理皿26の底面262は、左右方向の中央から両端部側に向かって下方に傾斜し、調理皿26の下側の風路の流路断面積が、調理皿26の左右方向の中央から両端部側に向かって狭められている。このため、調理皿26の左右方向の両端部側の下側を通る気流の風速が上昇して加熱量が高まり、調理皿26の温度分布の均一化を図ることができる。したがって、調理皿26の上に載置される被加熱物の加熱ムラを軽減することができ、良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
また、調理皿26の底面262には凹凸が設けられている。このため、調理皿26の下側を流れる熱気の乱流を促進することができ、熱風と調理皿26との衝突を促すことができる。したがって、調理皿26の加熱効率を高めることができ、調理時間を短縮することができるとともに調理室11の加熱に要する消費電力量を低減することができる。
また、調理皿26の載置面には凹凸が設けられている。そして、凹部267は、左右方向においては中央が高く左右の端部側が低くなるように構成され、前後方向においては吹出口28に近い側が高く遠い側が低くなるように構成されている。このため、被加熱物から滴下した油分及び汁気は、凹部267を通って吹出口28から離れた前側に保持される。したがって、油分及び汁気が被加熱物である食材にべたつくのを抑制することができる。また、油分及び汁気が調理皿26の前側、すなわち吹出口28から離れた位置に保持されるので、吹出口28から吹き出される熱気で油分及び汁気が加熱されることによる発煙を軽減することができる。したがって、被加熱物への不要な着色及び臭い移りを軽減することができ、良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。