JP6020503B2 - 積層セラミック電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、積層セラミック電子部品に関し、詳しくは、セラミック層を積層してなるセラミック積層体と、その内部に配設された内部電極とを備えるセラミック積層体の表面に、内部電極と導通するように外部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品に関する。
代表的な積層セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサの製造方法の1つとして、特許文献1には、以下に説明するような積層セラミックコンデンサの製造方法が記載されている。
この特許文献1に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法においては、まず、未焼成内部電極層が形成された第1および第2のグリーンシートを用意し、未焼成内部電極層の静電容量形成部が重なり合うように交互に積層して未焼成セラミック積層体を作製する。
それから、未焼成セラミック積層体を一チップ領域にカットして各未焼成内部電極層の引出部を未焼成セラミック積層体の端面に露出させ、未焼成セラミック積層体の未焼成内部電極層の引出部が露出する端面に、導電性ペーストを塗布して未焼成下地金属層を形成する。
そして、未焼成セラミック積層体を焼成して、グリーンシートと未焼成内部電極層と未焼成下地金属層とを同時焼成し、未焼成下地金属層を焼成してなる下地金属の表面にめっきを施す。
これにより、例えば、図2に示すように、セラミック積層体110の内部に、セラミック層101を介して内部電極102a,102bが互いに対向するように配設され、かつ、セラミック積層体110の互いに異なる端面103a,103bに引き出された内部電極102a,102bと導通するように、セラミック積層体110の端面103a,103bに外部電極104a,104bが配設された構造を有する積層セラミック電子部品が得られる。
しかしながら、この特許文献1の製造方法によれば、未焼成セラミック積層体の端面に導電性ペーストを塗布し、焼き付ける(未焼成セラミック積層体と同時焼成する)ことにより外部電極を形成するようにしているので、外部電極の厚みが厚くなり(通常は、10μm以上になる)、製品である積層セラミックコンデンサの寸法が大きくなるという問題がある。
特に、製品の厚み寸法(高さ寸法)をできるだけ小さくすることが望まれる、多層基板などへの内蔵型の積層セラミック電子部品の場合、外部電極の厚みが、製品の厚み寸法(高さ寸法)に無視できない影響を与える。
ここで、導電性ペーストの比重を下げて、導電性ペーストの塗布厚を薄くする(薄塗り化を進める)ことが考えられるが、その場合、セラミック積層体の稜線部(コーナー部)において電極の連続性が低下し、信頼性が不十分になるという問題点がある。
また、特許文献2には、以下に説明するようなセラミック電子部品(実施形態では積層セラミックコンデンサ)の製造方法が開示されている。
この特許文献2の方法では、まず、内部電極パターンが形成されていない外層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層する。そして、その上に、第1の内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートと第2の内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に所定枚数ずつ積層する。それから、さらにその上に、内部電極パターンが形成されていない外層用セラミックグリーンシートを再び所定枚数積層してマザー積層体を作製する。
次に、得られたマザー積層体の上下面に、スクリーン印刷などにより第1および第2の外部端子電極となるべき外部端子電極パターンを形成する。
それから、マザー積層体を所定の位置でカットし、個々のセラミック積層体(未焼成セラミック素体)に分割する。次に、セラミック積層体をバレル研磨した後、端面に導電性ペーストを塗布し、焼き付けて、外部端子電極を形成する。これにより、セラミック電子部品が得られる。
この特許文献2に記載されているセラミック電子部品(実施形態では積層セラミックコンデンサ)の製造方法によれば、スクリーン印刷などの方法により、第1および第2の外部端子電極の、端面から上下面(側面)に回り込んだ部分となるべき外部端子電極パターンを形成するようにしているので、セラミック積層体(セラミック積層体)の上下面(側面)における外部端子電極の厚みを、上記特許文献1の場合よりも薄くすることが可能になり、セラミック電子部品の厚み寸法(高さ寸法)を小さくすることができる。
しかしながら、特許文献2の方法の場合、上下面における外部端子電極の厚みを薄くすることはできるものの、その厚みは約5μm程度までであり、それ以上に薄層化を進めると、マザー積層体を分割して個片化した後の、稜線部に丸み(R)を付けるためのバレル研磨処理の際に、電極の削れが発生し、その後のめっき付き不良や、導通信頼性の低下などを招くという問題点がある。
特開2012−190874号公報 特許第5287658号公報
本発明は、上記課題を解決するものであり、外部電極の厚みを薄くすることが可能で、製品の小型化、薄型化への対応性に優れているとともに、外部電極のセラミック素体(セラミック積層体)への固着力や耐めっき性に優れた、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の積層セラミック電子部品は、
セラミック層を積層してなるセラミック積層体と、その内部に配設された内部電極とを備えるセラミック積層体の表面に、前記内部電極と導通するように外部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品であって、
(a)前記外部電極は、前記内部電極が引き出された前記セラミック積層体の端面に形成された端面外部電極と、前記セラミック積層体の前記端面と接する側面にスパッタリング法により形成され、前記端面外部電極と導通する側面外部電極とを備え、
(b)前記側面外部電極を構成する前記セラミック積層体に接するスパッタ電極層は、標準酸化還元電位が−2.36Vから−0.74Vの範囲の金属を3質量%以上含む材料であって、前記端面外部電極を構成する材料とは異なる材料で形成され、前記側面外部電極を構成する最外層であるスパッタ最外電極層は、SnおよびBiの少なくとも1種から形成されているか、または、SnおよびBiの少なくとも1種を5質量%以上含む合金から形成されていること
を特徴としている。
また、本発明においては、前記側面外部電極の前記セラミック積層体に接するスパッタ電極層に含まれる金属が、Mg、Al、Ti、W、Crからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
側面外部電極のセラミック積層体に接するスパッタ電極層が、上記の金属を含むことにより、外部電極のセラミック積層体に対する固着力を確保することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。すなわち、セラミック積層体に接する層に含まれる金属として、標準酸化還元電位が−2.36Vから−0.74Vの範囲にある、標準酸化還元電位が卑である金属(Mg、Al、Ti、W、Crの少なくとも1種)を用いることにより、積層層セラミック素子との固着性に優れ、かつ、厚みの薄い端面外部電極を備えた、全体的にも信頼性が高い外部電極を形成することが可能になる。
本発明においては、さらに、前記外部電極の表面にめっきにより形成された金属膜を備えていることが好ましい。
例えば、積層セラミック電子部品がセラミック基板に埋め込み実装されるものである場合に、外部電極の表面にCuめっき膜を設けることにより、レーザー加工によりビアホールを形成して、埋め込まれた積層セラミック電子部品との導通をとる場合の耐レーザ加工性を向上させて、ビア接続信頼性を高めたり、積層セラミック電子部品がはんだ付け実装されるものである場合に、外部電極の表面にNiめっき膜およびSnめっき膜を設けることにより、はんだ付け性を向上させたりすることが可能になる。
本発明の積層セラミック電子部品は、側面外部電極のセラミック積層体に接する層は、標準酸化還元電位が−2.36Vから−0.74Vの範囲の金属を3質量%以上含む材料であって、前記端面外部電極を構成する材料とは異なる材料で構成され、側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)は、SnおよびBiの少なくとも1種、または、SnおよびBiの少なくとも1種を含む合金から構成されているので、外部電極の厚みが薄く、小型化、薄型化への対応性に優れ、かつ、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することが可能になる。
すなわち、本発明の積層セラミック電子部品においては、側面外部電極のセラミック積層体に接する層(スパッタ電極層)を、標準酸化還元電位が−2.36Vから−0.74Vの範囲の金属(酸化還元電位が卑である金属)を3質量%以上含む材料から形成することにより、外部電極のセラミック積層体(セラミック積層体)との固着力が確保される。また、側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)を、SnおよびBiの少なくとも1種から形成されているか、または、SnおよびBiの少なくとも1種を5質量%以上含む合金から形成することにより、外部電極にめっきを施す際のめっき工程で発生する水素への耐性を向上させることが可能になり、耐めっき性に優れた信頼性の高い外部電極を形成することができる。
側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)は、その上から、めっき処理を行って、めっき膜を形成する場合を考えると、導電性を有する必要がある。さらに、めっき膜形成を行う場合、この最外層(スパッタ最外電極層)中に、めっき工程で発生する水素が取り込まれて内部電極中に拡散すると、内部電極(例えばNi)が膨張し、信頼性が低下する。そのため、最外層(スパッタ最外電極層)は水素を取り込みにくい(溶解しにくい)金属種である必要がある。そこで、本発明では、SnおよびBiの少なくとも1種、または、SnおよびBiの少なくとも1種を含む合金を用いるようにしている。
そして、SnおよびBiの少なくとも1種、または、SnおよびBiの少なくとも1種を含む合金を用いた最外層(スパッタ最外電極層)は、水素を取り込みにくい(溶解しにくい)ことから、外部電極へのめっき工程で発生する水素への耐性を向上させることができる。
なお、端面外部電極は、例えば、Ni粉末を導電成分とする導電性ペーストを、浸漬の方法で塗布して焼き付ける方法などの一般的な方法により形成することが可能である。そして、そのようにして形成された端面外部電極は、内部電極との間の導通信頼性に優れている。
したがって、上述のように構成された本発明によれば、セラミック積層体との固着力、耐めっき性、導通信頼性などに優れた、特性の良好な外部電極を備えた、信頼性の高い積層セラミック電子部品を提供することが可能になる。
また、本発明の積層セラミック電子部品は、上述のように構成された外部電極を備えていることから、外部電極を薄層化しつつ、厚みの厚い外部電極を備えた既存の積層セラミック電子部品と同等の品質を確保することができる。そして、このような効果を実現できるのは、外部電極を、端面外部電極と、この端面外部電極と導通する側面外部電極を備えた構成とし、かつ、側面外部電極の形成にスパッタ工法を採用して側面外部電極の薄層化を図るとともに、端面外部電極を2層以上の層を備えた構成として、セラミック積層体に接する層については、電解めっき工法では形成できない標準酸化還元電位の卑な金属膜を、スパッタ工法を採用することにより、薄膜で均一に形成できるようにしたこと、および最外層として、めっき工程で発生する水素への耐性に優れた、SnおよびBiの少なくとも1種、または、SnおよびBiの少なくとも1種を含む合金を用いるようにしたことが要因としてあげられる。
なお、上述の特許文献2では、マザー積層体(ブロック)の状態で、スクリーン印刷で電極形成を行うため、小片化した後、バレル研磨して面取りを行う工程で、外部電極の磨損(削れ)や剥がれなどが発生するが、本発明では、個片化し、バレル研磨により面取りを行った後に、外部電極を形成することができるため、バレル研磨による外部電極の磨損や剥がれなどを引き起こすことなく、厚みが薄くても信頼性の高い外部電極を形成することができる。
さらに、本発明によれば、側面外部電極をスパッタ膜としているので、側面外部電極の薄層化だけではなく、平坦化をも実現することができる。その結果、製品である積層セラミック電子部品の高さ寸法のばらつきを低減することが可能になるとともに、搭載時の姿勢安定性を向上させることができる。
その結果、例えば、積層セラミック電子部品をセラミック基板に埋め込み実装するにあたって、レーザー加工によりビアホールを形成して、埋め込まれた積層セラミック電子部品との導通をとる場合の、ビア接続信頼性を向上させることができる。
さらに、埋め込み実装用の薄型積層セラミックコンデンサのような、厚み寸法に対する制約が厳しい積層セラミック電子部品において、外部電極の薄層化により、製品全体の厚みを増大させることなく、ユニット厚(側面外部電極の厚みを除いた積層セラミック電子部品の厚み)を従来よりも厚く設計できるため、マウント強度の向上を実現することが可能になる。
本発明の実施形態にかかる積層セラミック電子部品(薄型の積層セラミックコンデンサ)の構成を示す正面断面図である。 従来の積層セラミック電子部品を示す正面断面図である。
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに具体的に説明する。
[実施形態]
図1は本発明の実施形態にかかる積層セラミック電子部品(この実施形態では、薄型の積層セラミックコンデンサ)の構成を示す正面断面図である。
この積層セラミックコンデンサは、図1に示すように、誘電体層であるセラミック層1を介して複数の内部電極2(2a,2b)が積層されたセラミック積層体(積層セラミックコンデンサ素子)10の両側の端面3(3a,3b)に、内部電極2(2a,2b)と導通するように外部電極4(4a,4b)が配設された構造を有する、セラミック基板の内部に埋め込み実装されて用いられる、薄型の積層セラミックコンデンサである。
なお、外部電極4(4a,4b)は、直方体形状のセラミック積層体10の両側の端面3(3a,3b)から、セラミック積層体の4つの側面13にまで回り込むように配設されている。
なお、この実施形態の積層セラミックコンデンサが備える外部電極4は、内部電極2が引き出されたセラミック積層体10の端面3に形成された端面外部電極14と、セラミック積層体10の端面3と接する側面13に形成され、端面外部電極と導通する側面外部電極24とを備えている。
そして、端面外部電極14は1層以上の電極層(Ni電極層)から構成されており、この実施形態では、Niペーストを焼き付けることにより形成されたNi電極とされている。
また、側面外部電極24は、スパッタ工法により形成された、セラミック積層体10に接するスパッタ電極層24aと、側面外部電極24を構成する最外層であるスパッタ最外電極層24bを備えている。
なお、本発明の積層セラミック電子部品において、セラミック積層体10に接するスパッタ電極層24aは、標準酸化還元電位が−2.36Vから−0.74Vの範囲の金属(例えば、Mg、Al、Ti、W、Crからなる群より選ばれる少なくとも1種)を3質量%以上含む材料から形成される。
また、最外層であるスパッタ最外電極層24bは、めっき工程で発生する水素への耐性に優れた、SnおよびBiの少なくとも1種、または、SnおよびBiの少なくとも1種を含む合金から形成される。
<積層セラミックコンデンサの作製>
この積層セラミックコンデンサを作製するにあたっては、まず、内部電極となる電極パターンが形成された複数のセラミックグリーンシートと、内部電極となる電極パターンを備えていない、上下両面側の外層部となる外層用セラミックグリーンシートとを用意した。そして、上述のセラミックグリーンシートを所定の順序で積層することによりマザー積層体を形成した。
それから、このマザー積層体をカットして、個片に分割することにより、個々の焼成前のセラミック積層体(積層セラミックコンデンサ素子)を得た。
なお、セラミック積層体を構成するセラミック材料(セラミックグリーンシートを構成するセラミック材料))としては、たとえば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3などを主成分とする誘電体セラミックを用いることができる。
また、これら主成分に、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類元素化合物などの副成分を添加したものを用いることも可能である。
また、容量形成用の内部電極となる導体パターンは、セラミックグリーンシートの表面に、Niを主たる導電成分とする導電性ペーストを、例えば、スクリーン印刷などの方法で印刷、塗布することにより形成される。
導電成分として他の金属材料を用いた導電性ペーストを使用することも可能であり、また、セラミックグリーンシートへの塗布方法も、スクリーン印刷以外の他の方法を用いることができる。
次に、端面外部電極と側面外部電極とを備えた外部電極の形成方法について説明する。
(1)端面外部電極の形成
焼成前のセラミック積層体(未焼成セラミック積層体)の端面に、Niコファイアペースト(セラミック積層体と同時に焼成を行うことが可能な、Ni粉末を導電成分とする導電性ペースト)を塗布した。
Niコファイアペーストとしては、Ni金属粉末と、上述のセラミック粉末(セラミックグリーンシートを構成するセラミック材料と同じ組成のセラミック粉末(共材))を含むペーストを用いた。
この実施形態では、Niコファイアペーストとして、Ni金属粉末と共材の比率(Ni/共材)が60/40vol%のものを用いた。また、Ni金属粉末としては粒径が0.5μmのものを用いた。
そして、Niコファイアペーストを、ステージ上に厚みが30μmとなるようにスキージ形成したペースト層に、上記の未焼成セラミック積層体の端面を浸漬塗布することにより、未焼成セラミック積層体の端面に導電性ペーストを付与した。
このとき、ステージ上に形成されたNiコファイアペーストの厚みが30μmと薄いことから、未焼成セラミック積層体のほぼ端面にのみNiコファイアペーストが塗布されるが、稜線部を超えて、未焼成セラミック積層体の側面にまで回り込むペーストもわずかではあるが存在する。ただし、製品である積層セラミックコンデンサの厚み方向の寸法に影響するほどに回り込むことはない。
その後、未焼成セラミック積層体とNiコファイアペーストを同時焼成することにより、端面外部電極(焼付電極)14(図1参照)を形成した。
なお、この端面外部電極は、端面中央における厚みが10μmの単層構造の電極(Ni焼き付け電極)である。
(2)側面外部電極の形成
上述のようにして端面外部電極(Ni焼き付け電極)が形成された、焼成済みのセラミック積層体を、専用のマスク冶具に振り込んだ。このマスク冶具は、側面外部電極(端面外部電極とともに外部電極を構成する電極)を形成したい領域のみを露出させることができるように構成された治具である。
そして、セラミック積層体の側面外部電極を形成したい領域のみを露出させた状態で、スパッタ設備に供給して、セラミック積層体の側面の所定の領域(セラミック積層体の上下面の狙いとする領域)に、スパッタ工法でTiスパッタ膜(セラミック積層体10に接するスパッタ電極層)24aを形成するとともに、Tiスパッタ膜24a上にSnスパッタ膜(スパッタ最外電極層)24bを形成した。このTiスパッタ膜24aと、Snスパッタ膜24bとにより、2層構造の側面外部電極24が形成される。
なお、この実施形態では、側面外部電極24のセラミック積層体10に接する層(スパッタ電極層)として、膜厚100nmのTiスパッタ膜を形成し、さらにその上に、側面外部電極24の最外層(スパッタ最外電極層)として、膜厚61000nm(1μm)のSnスパッタ膜を形成した。
ここで、Tiは標準酸化還元電位が−1.63Vの金属であり、Snは、めっき工程で発生する水素への耐性に優れた金属である。
なお、上記TiおよびSnのスパッタ条件は、表1に示す通りである。
Figure 0006020503
<特性の評価>
次に、上述のようにして作製した端面外部電極と側面外部電極からなる外部電極を備えた積層セラミックコンデンサについて、以下に説明する方法で、外部電極の固着力を確認するためのテープ剥離試験と、積層セラミックコンデンサの信頼性を調べるための高温高湿負荷試験を行った。
(1)テープ剥離試験
この実施形態では、側面外部電極のセラミック積層体に接する層として、上述のTi層を含めて、下記の表2の7種の金属種(Na、Mg、Al、Ti、W、Cr、NiおよびCu)と、下記の表3の2種の合金(NiCr合金およびNiTi合金)からなる厚み100nmの層(スパッタ電極層)を有する試料を作製し、テープ剥離試験に供した。なお、側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)は、いずれも、膜厚600nmのSnスパッタ膜である。
なお、このテープ剥離試験に供した試料は、いずれも、端面外部電極と側面外部電極を備えた外部電極の表面全体を覆うように、電解めっき(湿式めっき)によりCuめっき膜を形成した試料である。なお、図1は、めっき膜が形成されていない状態の積層セラミックコンデンサを示している。
(1−1)テープ剥離試験の試験方法
各試料(積層セラミックコンデンサ)の主面(図1におけるLW面)を導電性接着剤を用いてガラスエポキシ基板に接着した。
その後、試料(積層セラミックコンデンサ)のガラスエポキシ基板に接着した主面と対向する側(反対側)の主面に粘着テープ(積水化学社製セロテープ(登録商標)No.252)を貼り付け、試料の長さ方向(例えば、図1における矢印Aの方向)に沿って、一定の張力で引っ張ることにより、試料をガラスエポキシ基板から剥離させた(180°剥離試験)。
それから、20倍の光学顕微鏡を用いて、スパッタ膜(Tiスパッタ膜などのセラミック積層体に接する層、および、最外層であるSnスパッタ膜のいずれか)に剥がれが生じているか否かを観察した。
(1−2)評価
各試料(積層セラミックコンデンサ)について、それぞれ20サンプルずつ、上述の試験を実施し、1つのサンプルにでもスパッタ膜の剥がれが発生した試料は不良(×)と判定し、いずれのサンプルにもスパッタ膜の剥がれが発生しなかった試料を良(○)と判定した。
上記のテープ剥離試験の結果を表2および3に示す。
Figure 0006020503
Figure 0006020503
表2に示すように、Na、Mg、Al、Ti、W、Cr、NiおよびCuの、合計7種の金属のうち、標準酸化還元電位が−2.36V〜−0.74Vの範囲にあるMg、Al、Ti、W、Crのスパッタ膜をセラミック積層体に接する層として形成した試料は、いずれのサンプルにもスパッタ膜の剥がれが認められず、テープ剥離試験の結果が良好であることが確認された。
一方、セラミック積層体に接する層を構成する金属材料として、標準酸化還元電位が−2.71VのNaを用いた試料では、スパッタ膜を形成すること自体ができなかった。Naなどのように、標準酸化還元電位がMgよりももっと卑な金属は、酸化物として安定せず、イオン化しやすいため金属膜形成に適していない。
したがって、本発明において、セラミック積層体に接する層を構成する金属としては、酸化物として安定する、標準酸化還元電位がMgより貴な金属種を用いることが望ましい。
また、標準酸化還元電位が−0.26VのNi、および標準酸化還元電位が0.34VのCuを用いた試料の場合、スパッタ膜の剥離が発生し、好ましくないことが確認された。
これは、NiおよびCuは、いずれも標準酸化還元電位が本発明の範囲よりも貴であることから、セラミック積層体を構成するセラミックから、酸素を受け取って、酸素元素を共有する働きが不十分になり、大きな固着力が得られなかったことによるものと考えられる。
一方、酸化還元電位が卑な金属は、酸化物が安定であり、酸化しやすい特徴をもつことから、上で示した標準酸化還元電位が−2.36V〜−0.74Vの範囲にある金属種(Mg、Al、Ti、W、Cr)の場合、セラミック積層体を構成するセラミック(ここではBaTiO3)から、酸素を受け取り、酸素元素を共有することで、大きな固着力が得られるものと考えられる。
また、セラミック積層体に接する層として、NiCr合金およびNiTi合金のスパッタ膜を形成した試料の場合、表3に示すように、合金中のCrまたはTiの割合が3質量%以上の合金(すなわち、Ni97Cr3、Ni95Cr5、Ni90Cr10およびNi97Ti3、Ni95Ti5、Ni90Ti10)を用いたものについては、スパッタ膜の剥がれが認められず、テープ剥離試験の結果が良好であることが確認された。
なお、上記の合金組成の表示において、例えば、「Ni90Cr10」は、Niが90質量%、Crが10質量%含まれる合金を示す。他の合金についても同様である。
一方、合金中のCrまたはTiの割合が3質量%未満の合金(Ni99Cr1およびNi99Ti1)を用いた場合には、スパッタ膜の剥離が発生し、好ましくないことが確認された。
(2)高温高湿負荷試験(信頼性試験)
側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)として、上述のSnを含めて、下記の表4に示す4種の金属種(Pd、Ni、SnおよびBi)、下記の表5に示す組成の異なるNiSn合金(Ni98Sn2、Ni95Sn5、Ni90Sn10およびNi80Sn20)からなる金属層または合金層(スパッタ電極層)を有する試料を作製し、高温高湿負荷試験(信頼性試験)に供した。
また、この高温高湿負荷試験でも、試験に供した試料は、いずれも、端面外部電極と側面外部電極を備えた外部電極の表面全体を覆うように、電解めっき(湿式めっき)によりCuめっき膜を形成した試料である。
(2−1)高温高湿負荷試験の試験方法
各試料について、温度125℃、95%RH、電圧1/2WV(3.2V)、時間72hr、各試料のサンプル数(n)=10の条件で、高温高湿負荷試験を実施した。
そして、試験終了時のIR値が開始直後のIR値から2ケタ以上低下したものを、信頼性が不良(×)であると判定した。
その結果を表4および5に示す。
Figure 0006020503
Figure 0006020503
なお、表5には、スパッタ膜の形成に用いた合金Ni98Sn2、Ni95Sn5、Ni90Sn10およびNi80Sn20における、Snの割合をmol%に換算した値を併せて示す。
(2−2)評価
表4に示すように、Pd、Ni、SnおよびBiの、合計4種の金属のうち、Pdのスパッタ膜、Niのスパッタ膜を、それぞれ側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)として形成した試料は、高温高湿負荷試験において不良の発生が認められ、好ましくないことがわかった。
これに対し、SnおよびBiのスパッタ膜を側面外部電極の最外層(スパッタ最外電極層)として形成した試料は、高温高湿負荷試験において不良の発生が認められず、信頼性の高い試料であることが確認された。
また、表5に示すように、NiSn合金(Ni98Sn2、Ni95Sn5、Ni90Sn10およびNi80Sn20)のうち、Ni98Sn2のスパッタ膜を側面外部電極の最外層として形成した試料は、高温高湿負荷試験において不良の発生が認められ、好ましくないことがわかった。
これに対し、NiとSnの合金のうち、Ni95Sn5、Ni90Sn10およびNi80Sn20のスパッタ膜を側面外部電極の最外層として形成した試料は、高温高湿負荷試験において不良の発生が認められず、好ましいものであることが確認された。
なお、表5には、NiとSnの合金を用いて形成したスパッタ膜中のCuの割合(mol%)を、ULV−SEM/EDX分析により調べた値を併せて示す。
なお、ULV−SEM/EDX分析は、以下に説明する方法で行った。
まず、側面外部電極の最外層を構成する電極膜(スパッタ膜)の表面をFIBで5°加工した後、以下の条件で、ULV−SEM/EDXによるCuの測定(分析)を行った。
加速電圧 :4kV
傾斜角 :0°
測定点数 :60点
1点あたり測定時間 :20sec
ULV−SEM/EDXによる測定を行うにあたっては、側面外部電極の最外層を構成する電極膜(スパッタ膜)の中央領域を、約0.1μmの間隔をおいて60点、それぞれ5〜6μm幅でULV−SEM/EDXにより測定し、得られた値の平均値を定量値とした。
本発明においては、側面外部電極の最外層を構成する電極膜として、SnおよびBiの少なくとも1種、または、SnおよびBiの少なくとも1種を含む合金を用いるようにしているので、例えば、めっき工程で発生する水素への耐性を確保することが可能になる。さらに、Ag、Cu、Niのような酸化還元電位が貴な金属を合金として配合すると耐めっき液性(めっき液に対する耐溶解性)を確保することが可能になる。
最外層を構成する電極を構成する金属として、水素を溶解しやすい金属、たとえば、金属Ni単体を選定すると、Ni中を水素が拡散し、セラミック積層体の内部に水素が拡散して、内部電極にまで達する。そして、水素が内部電極にまで到達すると、水素の拡散により内部電極が膨張し、セラミックへのクラックの発生、IR劣化、信頼性試験での絶縁抵抗低下を招くことになるため、好ましくない。
なお、上記実施形態では、積層セラミック電子部品が、セラミック基板の内部に埋め込み実装されて用いられる薄型の積層セラミックコンデンサである場合を例にとって説明したが、本発明は、上述のような薄型の積層セラミックコンデンサに限られるものではなく、通常の表面実装型の積層セラミックコンデンサにも適用することが可能である。
また、本発明は積層セラミックコンデンサに限らず、他の積層セラミック電子部品にも適用することが可能であり、例えば、積層インダクタ、積層LC複合部品、セラミック多層基板などにも適用することが可能である。
本発明はさらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、外部電極を構成する端面外部電極および側面外部電極の厚みや構成材料、側面外部電極を構成するセラミック積層体と接する層および最外層の厚みや構成材料の組み合わせ、端面外部電極および側面外部電極を被覆するように形成されるめっき膜の有無や、めっき膜を設ける場合のめっき膜の構成材料などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
1 セラミック層
2(2a,2b) 内部電極
3(3a,3b) セラミック積層体の端面
4(4a,4b) 外部電極
10 セラミック積層体(積層セラミックコンデンサ素子)
13 セラミック積層体の4つの側面
14 端面外部電極
24 側面外部電極
24a セラミック積層体に接するスパッタ電極層
24b スパッタ最外電極層

Claims (3)

  1. セラミック層を積層してなるセラミック積層体と、その内部に配設された内部電極とを備えるセラミック積層体の表面に、前記内部電極と導通するように外部電極が配設された構造を有する積層セラミック電子部品であって、
    (a)前記外部電極は、前記内部電極が引き出された前記セラミック積層体の端面に形成された端面外部電極と、前記セラミック積層体の前記端面と接する側面にスパッタリング法により形成され、前記端面外部電極と導通する側面外部電極とを備え、
    (b)前記側面外部電極を構成する前記セラミック積層体に接するスパッタ電極層は、標準酸化還元電位が−2.36Vから−0.74Vの範囲の金属を3質量%以上含む材料であって、前記端面外部電極を構成する材料とは異なる材料で形成され、前記側面外部電極を構成する最外層であるスパッタ最外電極層は、SnおよびBiの少なくとも1種の金属から形成されているか、または、SnおよびBiの少なくとも1種を5質量%以上含む合金から形成されていること
    を特徴とする積層セラミック電子部品。
  2. 前記側面外部電極の前記セラミック積層体に接するスパッタ電極層に含まれる金属が、Mg、Al、Ti、W、Crからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の積層セラミック電子部品。
  3. 前記外部電極の表面にめっきにより形成された金属膜を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の積層セラミック電子部品。
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