JP6015160B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
近年、電子写真法を利用した画像形成装置に使用される電子写真感光体(以下、「感光体」と称す場合がある)に関し、該感光体の感光層表面に表面層(保護層)を設ける技術が検討されている。
請求項1に係る発明は、
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた有機感光層と、
前記有機感光層上に設けられた無機保護層であって、前記有機感光層側から、第1層、第2層、及び第3層をこの順で有し、前記第1層の厚さが0.1μmを超え1.0μm以下であり、且つ下記式(1)の関係を満たす無機保護層と、
を備えた電子写真感光体。
・式(1):ρ3≦ρ1<ρ2
(式(1)中、ρ1は前記第1層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ2は前記第2層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ3は前記第3層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。)
前記有機感光層がp型の電荷輸送性有機材料を含んで構成され、前記無機保護層がn型又はi型の電荷輸送性無機材料を含んで構成される請求項1に記載の電子写真感光体。
前記第1層の膜厚が、0.1μmを超え0.4μm以下である請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
前記無機保護層の膜厚が、0.4μm以上5.0μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
前記無機保護層が、金属酸化物を含んで構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
前記無機保護層が、少なくともガリウムと酸素とを含んで構成される請求項1〜4のいずいれか1項に記載の電子写真感光体。
前記無機保護層が、下記式(2)の関係を満たす請求項6に記載の電子写真感光体。
・式(2):C3≦C1<C2
(式(2)中、C1は前記第1層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。C2は前記第2層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。C3は前記第3層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。)
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に脱着するプロセスカートリッジ。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
請求項3に係る発明によれば、第1層の膜厚が上記範囲外の場合に比べ、画像ボケ及び残留電位の発生を抑制する電子写真感光体が提供される。
請求項4に係る発明によれば、無機保護層が式(1)を満たさない場合に比べ、画像ボケが発生し易い上記範囲の膜厚を持つ無機保護層を有していても、画像ボケの発生を抑制する電子写真感光体が提供される。
請求項5に係る発明によれば、無機保護層が金属酸化物以外の無機材料を含んで構成される場合に比べ、高い機械的強度を持つ無機保護層を有する電子写真感光体が提供される。
請求項6、7に係る発明によれば、無機保護層がガリウム及び酸素以外の元素で構成された無機材料を含んで構成された場合に比べ、高い機械的強度及び化学的安定性を持つ無機保護層を有する電子写真感光体が提供される。
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた有機感光層と、有機感光層上に設けられた無機保護層と、を備える。
そして、無機保護層は、有機感光層側から、第1層(以下、「界面層」と称する)、第2層(以下、「中間層」と称する)、及び第3層(以下、「最表層」と称する)をこの順で有し、且つ下記式(1)の関係を満たしている。
・式(1):ρ3≦ρ1<ρ2
(式(1)中、ρ1は界面層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ2は中間層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ3は最表層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。)
この理由は、定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
p型の有機感光層上にn型又はi型の無機保護層が形成された電子写真感光体は、負帯電型の電子写真感光体と呼ばれている。
つまり、上記2層構成の無機保護層において、有機感光層側に接する側の下層(有機感光層と界面を形成する層)を欠陥や不純物を抑制して高抵抗化すると、非露光部の負電荷(電子)が面内方向に流れ易くなり、潜像にズレや広がりが生じ、画像ボケが発生すると考えられる。
これにより、無機保護層全体としては、中間層によって負電荷が流れ易くなる一方で、界面層によって有機感光層と無機保護層の界面の近くにおいて負電荷が一時的に面内方向に流れ難くなると考えられる。このため、残留電位の発生を抑えつつ、画像ボケの発生も抑えられると考えられる。
また、画像ボケは、例えば、100lpi(lpi=lines/inch)から600lpiの網点スクリーン線数で出力する条件(例えば上記範囲のlpiのドットでの網点(クラスタードット)を出力する条件)で画像を形成するときに顕著に生じるが、本実施形態では、これが改善される。
図1は、本実施形態に係る電子写真用感光体の一例を示す模式断面図である。図2乃至図3はそれぞれ本実施形態に係る電子写真感光体の他の一例を示す模式断面図である。
そして、有機感光層(電荷輸送層3)側から、界面層5A、中間層5B、及び最表層5Cがこの順で積層されて無機保護層5が構成されている。
そして、有機感光層(電荷発生層2)側から、界面層5A、中間層5B、及び最表層5Cがこの順で積層されて無機保護層5が構成されている。
そして、有機感光層(単層型有機感光層6)側から、界面層5A、中間層5B、及び最表層5Cがこの順で積層されて無機保護層5が構成されている。
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
なお、導電性基体は、例えば体積抵抗率が107Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
下引層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から有機感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
下引層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。なお、電荷発生層は、例えば、電荷発生材料の蒸着膜で構成されていてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、例えば10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
電荷輸送層は、電荷輸送有機材料と、必要に応じて結着樹脂と、を含んで構成される。
これらの電荷輸送性有機材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用してもよい。
これらの電荷輸送性有機材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用してもよい。
なお、電荷輸送性有機材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、例えば10:1乃至1:5が望ましい。
無機保護層は、有機感光層側から、界面層、中間層、及び最表層をこの順で有し、且つ下記式(1)の関係(望ましくは下記式(1−2)の関係)を満たしている。
・式(1) :ρ3≦ρ1<ρ2
・式(1−2):ρ3<ρ1<ρ2
(式(1)、(1−2)中、ρ1は界面層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ2は中間層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ3は最表層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。)
界面層の体積抵抗率ρ1を上記範囲とすると、画像ボケの発生が抑制され易くなる。
中間層の体積抵抗率ρ2を上記範囲とすると、残留電位の発生が抑制され易くなる。
最表層の体積抵抗率ρ3を上記範囲とすると、無機保護層の電荷注入性が向上し、また残留電位の発生が抑制され易くなる。
この差(絶対値)を上記範囲とすると、画像ボケと残留電位が抑制され易くなる。
具体的には、nF社製LCRメーターZM2371から測定される交流抵抗値Rac[Ω]から、下記式に基づき、体積抵抗率ρv[Ωcm]を算出する。
・式:ρv=Rac×S/d
なお、測定試料は、測定対象となる無機保護層の各層の成膜時の同条件でアルミ基材上に成膜し、その成膜物上に真空蒸着により金電極を形成し得られた試料であってもよいし、又は作製後の電子写真感光体から無機保護層の各層を剥離し、一部エッチングして、これを一対の電極で挟み込んだ試料であってもよい。
無機保護層(界面層、中間層及び最表層)は、無機材料を含んで構成された層である。
ここで、界面層、中間層及び最表層は、体積抵抗率が異なれば、その組成には制限はなく、全ての層が組成比が異なる同じ無機材料で構成されていてもよく、少なくとも1層が異なる組成の無機材料で構成されていてもよい。
なお、無機材料の伝導型は、その結晶構造や、各伝導型のドーパントのドーピング等により制御される。
酸化物系の無機材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化ホウ素等の金属酸化物、又はこれらの混晶が挙げられる。
窒化物系の無機材料としては、例えば、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化亜鉛、窒化チタン、窒化インジウム、窒化錫、窒化ホウ素等の金属窒化物、又はこれらの混晶が挙げられる。
炭素系及び珪素系の無機材料としては、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アモルファスカーボン(a−C)、水素化アモルファスカーボン(a−C:H)、水素・フッ素化アモルファスカーボン(a−C:H)、アモルファスシリコンカーバイト(a−SiC)、水素化アモルファスシリコンカーバイト(a−SiC:H)等が挙げられる。
なお、無機材料は、酸化物系及び窒化物系の無機材料の混晶であってもよい。
つまり、無機保護層は、少なくとも第13族元素(特にガリウム)及び酸素を含んで構成されることがよく、必要応じて、水素を含んで構成されていてもよい。水素を含むことで、少なくとも第13族元素(特にガリウム)及び酸素を含んで構成された無機保護層の諸物性が容易に制御され易くなる。例えば、ガリウム、酸素、及び水素を含む無機保護層(水素を含む酸化ガリウムで構成された無機保護層)において、組成比[O]/[Ga]を1.0から1.5と変化させることで、109Ω・cm以上1014Ω・cmの範囲で体積抵抗率の制御が実現され易くなる。
・式(2) :C3≦C1<C2
・式(2−2):C3<C1<C2
(式(2)、(2−2)中、C1は界面層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。C2は中間層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。C3は最表層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。
界面層の水素の元素構成比率は、例えば、界面層の全構成元素に対して、1原子%以上30原子%以下であることがよく、望ましくは5原子%以上25原子%以下、より望ましくは10原子%以上20原子%以下である。
中間層の水素の元素構成比率は、例えば、中間層の全構成元素に対して、1原子%以上30原子%以下であることがよく、望ましくは5原子%以上25原子%以下、より望ましくは10原子%以上20原子%以下である。
最表層の水素の元素構成比率は、例えば、最表層の全構成元素に対して、1原子%以上30原子%以下であることがよく、望ましくは5原子%以上25原子%以下、より望ましくは10原子%以上20原子%以下である。
各層のガリウム、酸素、及び水素の合計の元素構成比率を上記範囲とした上で、各層のガリウム及び酸素の原子数比率を上記範囲にすると、抵抗制御が実現され易くなる。
1)界面層、中間層、及び最表層の全層が、少なくとも少なくともガリウムと酸素と必要に応じて水素とを含んで構成された態様
2)界面層及び中間層が少なくとも少なくともガリウムと酸素と必要に応じて水素とを含んで構成され、最表層がガリウムと亜鉛と酸素を含んで構成された態様
3)中間層及び最表層が少なくとも少なくともガリウムと酸素と必要に応じて水素とを含んで構成され、界面層がガリウムと亜鉛と酸素を含んで構成された態様
なお、RBSでは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400、システムとして3S−R10を用いる。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いる。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは約109°とする。
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定してもよい。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度が向上する。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素のみにより決まる。 測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて厚みを算出する。密度の誤差は20%以内である。
HFS測定では、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400を用い、システムとして3S−R10を用いる。解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いる。そして、HFSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle30°
白雲母は水素濃度が6.5原子%であることが知られている。
最表面に吸着しているHは、例えば、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって補正を行う。
無機保護層の各層は、微結晶膜、多結晶膜、非晶質膜などの非単結晶膜であることが望ましい。これらの中でも、非晶質は表面の平滑性で特に望ましいが、微結晶膜は硬度の点でより望ましい。
無機保護層の成長断面は、柱状構造をとっていてもよいが、滑り性の観点からは平坦性の高い構造が望ましく、非晶質が望ましい。
なお、結晶性、非晶質性は、RHEED(反射高速電子線回折)測定により得られた回折像の点や線の有無により判別される。
この弾性率を上記範囲とすると、無機保護層の凹部(打痕状の傷)の発生、剥れや割れが抑制され易くなる。
この弾性率は、MTSシステムズ社製 Nano Indenter SA2を用いて、連続剛性法(CSM)(米国特許4848141)により深さプロファイルを得て、その押込み深さ30nmから100nmの測定値から得た平均値を用いる。下記は測定条件である。
・測定環境:23℃、55%RH
・使用圧子:ダイヤモンド製正三角錐圧子(Berkovic圧子)三角錐圧子
・試験モード:CSMモード
なお、測定試料は、測定対象となる無機保護層の成膜時の同条件で基材上に成膜した試料であってもよいし、又は作製後の電子写真感光体から無機保護層の各層を剥離し、一部エッチングした試料であってもよい。
中間層の膜厚は、例えば、例えば、0.05μm以上4.5μm以下がよく、特に、像ボケ及び残留電位の発生が抑制され易くなる観点から、望ましくは0.1μm以上4.0μm以下である。
最表層の膜厚は、例えば、例えば、0.05μm以上2.0μm以下がよく、特に、摩耗による削り及び残留電位の発生が抑制の観点から、望ましくは0.2μm以上1.5μm以下、より望ましくは0.5μm以上1.0μm以下である。
無機保護層の各層の形成(以下、単に「無機保護層の形成」と称する)には、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、有機金属気相成長法、分子線エキタピシー法、蒸着、スパッタリング等の公知の気相成膜法が利用される。
このプラズマ発生装置は、高周波放電管部221と、高周波放電管部221内に配置され、放電面が排気口211側に設けられた平板電極219と、高周波放電管部221外に配置され、平板電極219の放電面と反対側の面に接続された高周波電力供給部218とから構成されたものである。なお、高周波放電管部221には、高周波放電管部221内にガスを供給するためのガス導入管220が接続されており、このガス導入管220のもう一方の端は、不図示の第1のガス供給源に接続されている。
また、成膜室210内には、基体回転部212が設けられており、円筒状の基体214が、シャワーノズル216の長手方向と基体214の軸方向とが沿って対面するように基体支持部材213を介して基体回転部212に取りつけられるようになっている。成膜に際しては、基体回転部212が回転することによって、基体214が周方向に回転する。なお、基体214としては、例えば、予め有機感光層まで積層された感光体等が用いられる。
まず、酸素ガス(又は、ヘリウム(He)希釈酸素ガス)、ヘリウム(He)ガス、及び必要に応じ水素(H2)ガスを、ガス導入管220から高周波放電管部221内に導入すると共に、高周波電力供給部218から平板電極219に、13.56MHzのラジオ波を供給する。この際、平板電極219の放電面側から排気口211側へと放射状に広がるようにプラズマ拡散部217が形成される。ここで、ガス導入管220から導入されたガスは成膜室210を平板電極219側から排気口211側へと流れる。平板電極219は電極の周りをアースシールドで囲んだものでもよい。
基体214としては、例えば、有機感光層が形成された基体を用いる。
基体214表面の温度が成膜開始当初は150℃以下であっても、プラズマの影響で150℃より高くなる場合には有機感光層が熱で損傷を受ける場合があるため、この影響を考慮して基体214の表面温度を制御することが望ましい。
基体214表面の温度は加熱及び/又は冷却手段(図中、不図示)によって制御してもよいし、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。基体214を加熱する場合にはヒータを基体214の外側や内側に設置してもよい。基体214を冷却する場合には基体214の内側に冷却用の気体又は液体を循環させてもよい。
放電による基体214表面の温度の上昇を避けたい場合には、基体214表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
例えば、無機保護層の形成の初期において、トリメチルインジウムをガス導入管215、シャワーノズル216を介して成膜室210内に導入することにより、基体214上に窒素とインジウムとを含む膜を成膜すれば、この膜が、継続して成膜する場合に発生し、有機感光層を劣化させる紫外線を吸収する。このため、成膜時の紫外線の発生による有機感光層へのダメージが抑制される。
具体的には、例えば、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管215、シャワーノズル216を介して成膜室210内に導入することによって、n型、p型等の導電型の無機保護層を得る。
このようにすることで、基体214表面上には、活性化された、炭素原子、ガリウム原子、窒素原子、水素原子、等が制御された状態で存在する。そして、活性化された水素原子が、有機金属化合物を構成するメチル基やエチル基等の炭化水素基の水素を分子として脱離させる効果を有する。
このため、三次元的な結合を構成する硬質膜(無機保護層)が形成される。
さらに、これらの装置を2種類以上組み合わせて用いてもよく、あるいは、同種の装置を2つ以上用いてもよい。プラズマの照射によって基体214表面の温度上昇を抑制するためには高周波発振装置が望ましいが、熱の照射を抑制する装置を設けてもよい。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質の制御に有効である。また、放電は大気圧近傍(70000Pa以上110000Pa以下)で行ってもよい。大気圧近傍で放電を行う場合にはキャリアガスとしてHeを使用することが望ましい。
図6は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、図6に示すように、例えば、矢印aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10(上記本実施形態に係る電子写真感光体)と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電させる帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、露光装置30により形成された静電潜像に現像剤に含まれるトナーを付着させて電子写真感光体10の表面にトナー像を形成する現像装置40(現像手段の一例)と、電子写真感光体10に接触しつつ矢印bで示す方向に走行するとともに、電子写真感光体10の表面に形成されたトナー像を転写するベルト状の中間転写体50と、電子写真感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70(クリーニング手段の一例)とを備える。
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触型帯電器がよい。
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
現像装置40は、例えば、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置されており、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する現像容器41(現像装置本体)と、補給用現像剤収納容器(トナーカートリッジ)47と、を有している。現像容器41は、現像容器本体41Aとその上端を塞ぐ現像容器カバー41Bとを有している。
一次転写装置51、及び二次転写装置52としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
クリーニング装置70は、筐体71と、筐体71から突出するように配設されるクリーニングブレード72と、クリーニングブレード72の電子写真感光体10回転方向下流側に配置される潤滑剤供給装置60と、を含んで構成されている。
なお、クリーニングブレード72は、筐体71の端部で支持された形態であってもよし、別途、支持部材(ホルダー)により支持される形態であってもよいが、本実施形態では、筐体71の端部で支持された形態を示している。
クリーニングブレード72(上記クリーニング層72A及び背面層72B)を構成する材料としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、プロピレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中で、ウレタンゴムがよい。
ウレタンゴム(ポリウレタン)は、例えば、通常ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されないが、例えばポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどのポリエステルポリオールなどのポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー及びたとえば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコールやこれらの混合物などの架橋剤を原料とするものよい。
潤滑剤供給装置60は、例えば、クリーニング装置70の内部であって、クリーニングブレード72よりも電子写真感光体10の回転方向上流側に設けられている。
次に、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置20により負に帯電する。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10を備えてえればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、一次転写装置51、潤滑剤供給装置60及びクリーング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
−下引層の形成−
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:KBM603、信越化学社製)1.5質量部を添加して2時間攪拌した。その後、減圧蒸留によりトルエンを留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
次に、下引層上に感光層を形成した。
まず、電荷発生物質として、CuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜の位置に回折ピークを有する塩化ガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を得た。得られた分散液を下引層上に浸漬塗布し、乾燥させて、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成させた。
・界面層の形成
ノンコート感光体(1)表面への第3の層の形成は、図4に示す構成を有する成膜装置を用いて行った。
まず、ノンコート感光体(1)を、成膜装置の成膜室210内の基体支持部材213に載せ、排気口211を介して成膜室210内を、圧力が0.1Paになるまで真空排気した。
次に、He希釈40%酸素ガス(3.5sccm)、及びH2ガス(100sccm)を、ガス導入管220から直径85mmの平板電極219が設けられた高周波放電管部221内に導入し、高周波電力供給部218及びマッチング回路(図4中不図示)により、13.56MHzのラジオ波を出力200Wにセットしチューナでマッチングを取り平板電極219から放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
次に、トリメチルガリウムガス(5sccm)を、ガス導入管215を介してシャワーノズル216から成膜室210内のプラズマ拡散部217に導入した。この時、バラトロン真空計で測定した成膜室210内の反応圧力は10Paであった。
この状態で、ノンコート感光体(1)を100rpmの速度で回転させながら15分間成膜し、ノンコート感光体(1)の電荷輸送層表面に膜厚0.21μmの界面層を形成した。
次に、高周波放電を停止し、He希釈40%酸素ガス(10sccm)に変更した後、再び高周波放電を開始した。
この状態で、界面層を形成したノンコート感光体(1)100rpmの速度で回転させながら60分間成膜し、界面層上に、膜厚1.0μmの中間層を形成した。
次に、高周波放電を停止し、成膜室210内の圧力(5Pa)、He希釈40%酸素ガス(2.2sccm)、H2ガス(300sccm)トリメチルガリウムガス(3.2sccm)に変更した後、再び高周波放電を開始した。
この状態で、界面層及び中間層を順次形成したノンコート感光体(1)を100rpmの速度で回転させながら55分間成膜し、中間層上に、膜厚0.52μmの最表面層を形成した。
表1〜表2に従って、He希釈40%酸素ガス(O2/Heと表記)、水素ガス(H2と表記)、トリメチルガリウムガス(TMGと表記)、ジメチル亜鉛(DMZnと表記)のガス供給量に加え、高周波電力(rf電力と表記)、成膜室210内の圧力(成膜圧力と表記)、成膜時間等の成膜条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、ノンコート感光体(1)上に、界面層、中間層、及び最表層を順次成膜し、無機保護層を形成して、電子写真感光体を得た。
(特性評価)
−無機保護層の各層の体積抵抗率の測定−
測定対象となる無機保護層の各層(界面層、中間層、及び最表面層)の体積抵抗率は、各層を各例の電子写真感光体の作製時と同じ条件でアルミ蒸着PETフィルム上に成膜し、真空蒸着により金電極を形成した測定試料を作製し、これを用いて既述の方法に従って測定した。
測定対象となる無機保護層の各層(界面層、中間層、及び最表面層)の組成をラザフォード・バック・スキャタリング(RBS)とハイドロジェン・フォワードスキャタリング(HFS)とEDS(エネルギー分散型X線分析法)とを用いて、ガリウムと酸素の原子数比〔O/Ga〕を測定した。
なお、組成の測定は、無機保護層のうち、最表面層については得られた電子写真感光体の外周面に対して測定を行い、界面層及び中間層については得られた電子写真感光体の外周面を切削し、露出した各層に対して測定を行った。
ここで、表3及び表4中、[Ga]+[O]+[H]欄は、各層中における、ガリウム(Ga)、酸素(O)、及び水素(H)の合計の元素構成比率(全構成元素に対する比率)を示す。そして、値「1」が100原子%に対応する。
また、[Ga]+[Zn]+[O]+[H]欄は、各層中における、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)、及び水素(H)の合計の元素構成比率(全構成元素に対する比率)を示す。そして、値「1」が100原子%に対応する。
-画像ボケ-
各例で得られた電子写真感光体を、DocuCenter Color a450に装着し、200lpiの網点スクリーン線数で、画像濃度Cin30%のハーフトーン画像をA3用紙に1000枚出力した。
得られた画像を、顕微鏡によりハーフトーンドットの観察をした。これを出力画像の1枚目と1000枚目で評価した。それぞれ結果を表2に示した。
評価基準を以下に示す。
A:ハーフトーンドットが確認され異常はみられない
B: ハーフトーンドットが確認されるが、一部ドットに欠け、太りなどの異常を含んでいる(実使用には問題ないレベル)
C: ハーフトーンドットが、確認される部分と消失している部分がある(実使用において問題があるレベル)
D:ハーフトーンドットが全く確認されない。
各例で得られた電子写真感光体の残留電位について、次のようにして評価した。
まず、電子写真感光体に対して、露光用の光(光源:半導体レーザー、波長:780nm、出力:5mW)を、スコロトロン帯電器により−700Vに帯電させた状態で40rpmで回転させている電子写真感光体の表面に走査しながら照射した。その後、電子写真感光体の電位を表面電位計(モデル344、トレックジャパン社製)により測定し、電子写真感光体における電位状態(残留電位)を調べた。これを100サイクル繰り返し、100回目の残留電位を測定した。
評価基準を以下に示す(但し、数値は絶対値を表す。)。
A:20V未満
B:20V以上60V未満
C:60V以上100V未満
D:100V以上
Claims (9)
- 導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた有機感光層と、
前記有機感光層上に設けられた無機保護層であって、前記有機感光層側から、第1層、第2層、及び第3層をこの順で有し、前記第1層の厚さが0.1μmを超え1.0μm以下であり、且つ下記式(1)の関係を満たす無機保護層と、
を備えた電子写真感光体。
・式(1):ρ3≦ρ1<ρ2
(式(1)中、ρ1は前記第1層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ2は前記第2層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。ρ3は前記第3層の体積抵抗率(Ωcm)を示す。) - 前記有機感光層がp型の電荷輸送性有機材料を含んで構成され、前記無機保護層がn型又はi型の電荷輸送性無機材料を含んで構成される請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記第1層の膜厚が、0.1μmを超え0.4μm以下である請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記無機保護層の膜厚が、0.4μm以上5.0μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記無機保護層が、金属酸化物を含んで構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記無機保護層が、少なくともガリウムと酸素とを含んで構成される請求項1〜4のいずいれか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記無機保護層が、下記式(2)の関係を満たす請求項6に記載の電子写真感光体。
・式(2):C3≦C1<C2
(式(2)中、C1は前記第1層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。C2は前記第2層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。C3は前記第3層のガリウム及び酸素の原子数比〔酸素/ガリウム〕を示す。) - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に脱着するプロセスカートリッジ。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
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