JP5748112B2 - 積層コイル部品、及び該積層コイル部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は積層コイル部品、及び該積層コイル部品の製造方法に関し、より詳しくは、フェライト材料からなる磁性体部に導体部が埋設された積層インダクタ等の積層コイル部品及びその製造方法に関する。
従来より、スピネル型結晶構造を有するNi−Zn等のフェライト系磁器を使用した積層コイル部品は広く使用されており、フェライト材料の開発も盛んに行なわれている。
この種の積層コイル部品は、コイル状に巻回された導体部が磁性体部中に埋設された構造を有しており、通常は導体部と磁性体部とは同時焼成により形成される。
ところで、上記積層コイル部品では、フェライト材料からなる磁性体部と導電性材料を主成分とする導体部とでは線膨張係数が異なることから、両者の線膨張係数の相違に起因し、焼成後の冷却過程で内部に応力歪みが生じる。そして、基板実装時のリフロー処理等で急激な温度変化や外部応力が負荷されると、上述した応力歪みが変化することから、インダクタンス等の磁気特性が変動する。
そこで、特許文献1には、積層されたセラミックシートによって積層チップの骨格を形成し、内部導体によって積層チップ内にコイル導体を形成し、その始端と終端とがそれぞれ別の外部電極端子に接続してなる積層チップインダクタであって、上記セラミックシートが磁性体シートであり、外部電極端子への引き出し部を除く上記内部導体が包含されるように、積層チップ内にドーナツ状の非磁性体の領域を形成した積層チップインダクタが提案されている。
この特許文献1では、磁性体シートを作製した後、該磁性体シート上に非磁性体ペーストを塗布して所定パターンの非磁性体膜を形成し、その後、磁性体ペースト、内部導体用ペースト、及び非磁性体ペーストを使用して順次印刷処理を複数回施し、これにより積層チップインダクタを得ている。
そして、この特許文献1では、コイル導体と接するセラミックを非磁性体とすることにより、同時焼成によって内部に応力歪みが生じ、その後に熱衝撃が負荷されたり外部からの応力が負荷された場合であっても、磁気特性が変動するのを抑制している。
一方、この種の積層コイル部品では、大電流が通電された場合であっても安定したインダクタンスが得られることが重要であり、そのためには大きな直流電流を通電してもインダクタンスの低下が抑制されるような直流重畳特性を有することが必要となる。
しかしながら、積層インダクタ等の積層コイル部品は、閉磁路を形成するため、大電流を通電すると磁気飽和が生じ易くなり、インダクタンスが低下して所望の直流重畳特性を得ることができなくなる。
そこで、特許文献2では、磁性体層間に端部が接続され、積層方向に重畳して周回する導体パターンを具えた積層コイル部品において、積層方向の両端の導体パターンに接し、当該導体パターンの内側に位置する、該磁性体層よりも透磁率の低い材料の層を具えた積層コイル部品が提案されている。
この特許文献2では、磁性体層よりも透磁率の低い材料(例えば、Ni−Fe系フェライト材料でNi含有量の少ないものや非磁性体材料等)からなる層を導体パターンの外側に設けることにより、端部の導体パターンの内側の角に磁束が集中するのを防止して磁束を主磁路の中央部分に分散させ、これにより磁気飽和の発生を防止し、インダクタンスの向上を図ろうとしている。
また、特許文献3には、磁性体層と導体パターンを積層し、素体内にインピーダンス素子が形成された積層型ビーズにおいて、磁性体層の焼結性を調整するための焼結調整剤を導体ペーストに混入した積層型ビーズが提案されている。
この特許文献3では、焼結調整剤が、銀粉末を被覆するSiOによって構成されると共に、SiOが銀の重量換算で0.05〜0.3wt%含有しており、該焼結調整剤が混入した導体ペーストを磁性体層に印刷して導体パターンを形成している。
そして、この特許文献3では、上述した焼結調整剤を導体ペーストに混入することにより、焼結調整剤が磁性体中に適度に拡散することから、導体パターンの近傍の磁性体の焼結状態をそれ以外の部分よりも遅らせることができ、これにより磁気的に不活性な層を傾斜的に形成している。すなわち、導体パターンの近傍の磁性体の焼結状態をそれ以外の部分よりも遅らせることにより、導体パターン間や導体パターンの近傍の磁性体の粒径がそれ以外の部分よりも小さくなって透磁率の低い層を形成することができ、磁気的に不活性な部分を形成している。そしてこれにより高周波帯域において大電流域まで直流重畳特性を向上させ、磁気特性が劣化するのを防止しようとしている。
実開平6−45307号公報(請求項2、段落番号〔0024〕、図2、図7) 特許第2694757号明細書(請求項1、図1等) 特開2006−237438号公報(請求項1、段落番号〔0007〕)
しかしながら、特許文献1は、内部導体用ペーストの他、磁性体ペーストや非磁性体ペースト等の複数のペーストを交互に使用して印刷処理を行わなければならず、製造工程が煩雑であり、実用性に欠ける。しかも、磁性体ペーストと非磁性体ペーストとで成分系が異なる場合は、収縮挙動の相違から同時焼成した場合に残留応力が発生し、クラック等の欠陥が生じるおそれがある。
また、特許文献2も、組成の異なる複数の磁性体ペースト、又は磁性体ペーストと非磁性体ペーストを用意して印刷処理を行わなければならず、特許文献1と同様、製造工程が煩雑であり、実用性に欠ける。
さらに、特許文献3の方法では、導体ペーストに焼結調整剤を混入させていることから、導体ペーストを焼結して得られる導体パターンの抵抗が必然的に高くなり、直流抵抗(Rdc)が大きくなるおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、煩雑な工程を要することなく、熱衝撃が負荷されたり外部からの応力が負荷されてもインダクタンスの変動が小さく良好な耐熱衝撃性を有し、かつ直流重畳特性が良好な積層コイル部品、及び該積層コイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、Ni−Zn系フェライト材料を使用して鋭意研究を行ったところ、焼成処理で導体部の近傍領域(第1の領域)と前記近傍領域以外の領域(第2の領域)とで焼結性に差異を生じさせ、第1の領域の焼結性を第2の領域の焼結性に対して低下させることにより、耐熱衝撃性や直流重畳特性を向上させることができるという知見を得た。
すなわち、耐熱衝撃性や直流重畳特性を向上させるためには、第1の領域と第2の領域との間で焼結性に差異を生じさせるのが有効である。そしてそのためには焼成時に第1の領域における結晶粒子の粒成長を抑制する必要がある。
そこで、本発明者らは、焼成時における第1の領域での結晶粒子の粒成長を抑制すべく、更に鋭意研究を進めたところ、Cu成分の含有量がCuOに換算して0.2〜4mol%となるようにフェライト材料中にCu成分を含有させ、低酸素濃度雰囲気で焼成することにより、第2の領域に対する第1の領域の平均結晶粒径を、粒径比で0.9以下に抑制することができ、これにより耐熱衝撃性や直流重畳特性を向上させることができることが分かった。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る積層コイル部品は、フェライト材料からなる磁性体部と、コイル状に巻回された導体部とを有し、該導体部が前記磁性体部に埋設されて部品素体を形成する積層コイル部品において、前記部品素体は、前記導体部近傍の第1の領域と、該第1の領域以外の第2の領域とに区分され、前記第1の領域における前記磁性体部の平均結晶粒径は、前記第2の領域における前記磁性体部の平均結晶粒径に対し、粒径比で0.9以下であり、かつ、前記フェライト材料は、少なくともCu成分を含有すると共に、Cu成分の含有量は、CuOに換算して0.2〜4mol%であることを特徴としている。
また、本発明の積層コイル部品は、前記粒径比が、0.8以下が好ましい。
また、本発明の積層コイル部品は、CuOの含有量は、0.4〜4mol%であるのがより好ましい。
また、導体部がAgを主成分とし、磁性体部となるべき磁性体シートにCu成分を含有している場合は、低酸素濃度下で導体部と磁性体部とを同時焼成させると、導体部近傍の第1の領域に含有されるCu成分がAgに吸収され、これにより第1の領域におけるCu成分の含有量が減少して該第1の領域の焼結性が第2の領域の焼結性に比べて低下し、これにより粒径比を容易に0.9以下にすることができる。
すなわち、本発明の積層コイル部品は、前記導体部が、Agを主成分としているのが好ましい。
また、フェライト材料中にSn成分を含有させることにより、直流重畳特性のより一層の向上が可能となる。
すなわち、本発明の積層コイル部品は、前記フェライト材料が、Sn成分を含有しているのが好ましい。
また、酸素濃度が0.001〜0.1体積%の焼成雰囲気で焼成することにより、CuOの含有量が4mol%以下に減少させても、Agと同時焼成できる程度にまで焼成温度を低下させることが可能となり、比抵抗を損なうこともなく、磁性体部に導体部が埋設された部品素体を得ることが可能となる。
すなわち、本発明の積層コイル部品は、前記部品素体は、酸素濃度が0.001〜0.1体積%の焼成雰囲気で焼結されてなるのが好ましい。
そして、酸素濃度が0.1体積%以下の焼成雰囲気で焼成した場合、結晶格子中に酸素欠陥が形成されてフェライト原料粉末中の各成分の相互拡散が促進されて低温焼結性を向上させることができ、これによりAgと同時焼成可能になる程度まで焼成温度の低下が可能となり、上記粒径比を0.9以下にできる。
すなわち、本発明に係る積層コイル部品の製造方法は、少なくともCu酸化物を含むフェライト原料粉末から磁性体シートを作製する磁性体シート作製工程と、Agを主成分とする導電性ペーストを作製するペースト作製工程と、前記導電性ペーストを前記磁性体シートに塗布して磁性体シートの表面にコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、前記コイルパターンの形成された磁性体シートを所定方向に積層し、積層成形体を形成する積層体形成工程と、該積層成形体を酸素濃度が0.1体積%以下の焼成雰囲気で焼成し、磁性体に内部導体が埋設された部品素体を作製する焼成工程とを含むことを特徴としている。
また、本発明の積層コイル部品の製造方法は、前記酸素濃度は、0.001体積%以上であるのが好ましい。
上記積層コイル部品によれば、フェライト材料からなる磁性体部と、コイル状に巻回された導体部とを有し、該導体部が前記磁性体部に埋設されて部品素体を形成する積層コイル部品において、前記部品素体は、前記導体部近傍の第1の領域と、該第1の領域以外の第2の領域とに区分され、前記第1の領域における前記磁性体部の平均結晶粒径は、前記第2の領域における前記磁性体部の平均結晶粒径に対し、粒径比で0.9以下(好ましくは、0.8以下)であり、かつ、前記フェライト材料は、少なくともCu成分を含有すると共に、Cu成分の含有量は、CuOに換算して0.2〜4mol%(好ましくは、0.4〜4mol%)であるので、第1の領域は第2の領域に比べて焼成時の粒成長が抑制されて焼結性が低下し、透磁率も第1の領域は第2の領域に比べて低下する。
すなわち、導体部近傍の第1の領域は、焼結性が低下して焼結密度が低くなることから、内部応力を緩和させることができ、基板実装時のリフロー処理等で熱衝撃や外部から応力が負荷されてもインダクタンス等の磁気特性の変動を抑制することができる。また、第1の領域では透磁率が低下することから、直流重畳特性が改善され、その結果、磁束の集中が大幅に緩和され、飽和磁束密度を向上させることが可能となる。
しかも、上述したようにCu成分の含有量をCuOに換算して、0.2〜4mol%(好ましくは、0.4〜4mol%)としているので、低酸素濃度の焼成雰囲気で焼成しても、第2の領域での粒成長を損なうこともなく、容易に粒径比を0.9以下とすることができ、良好な絶縁性を確保しつつ耐熱衝撃性及び直流重畳特性の良好な積層インダクタ等の積層コイル部品を得ることが可能となる。
また、本発明に係る積層コイル部品の製造方法によれば、少なくともCu酸化物を含むフェライト原料粉末から磁性体シートを作製する磁性体シート作製工程と、Agを主成分とする導電性ペーストを作製するペースト作製工程と、前記導電性ペーストを前記磁性体シートに塗布して磁性体シートの表面にコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、前記コイルパターンの形成された磁性体シートを所定方向に積層し、積層成形体を形成する積層体形成工程と、該積層成形体を酸素濃度が0.1体積%以下(好ましくは、0.001体積%以上)の焼成雰囲気で焼成し、磁性体に内部導体が埋設された部品素体を作製する焼成工程とを含むので、結晶格子中に酸素欠陥が形成されてフェライト原料粉末中の各成分の相互拡散が促進されて低温焼結性を向上させることができ、これによりAgと同時焼成可能になる程度まで焼成温度の低下が可能となり、前記粒径比を0.9以下にできる。そしてその結果、熱衝撃や外部からの応力負荷があってもインダクタンス等の磁気特性の変化が抑制された良好な耐熱衝撃性を有し、かつ良好な直流重畳特性を有する積層コイル部品を得ることができる。
本発明に係る積層コイル部品としての積層インダクタの一実施の形態(第1の実施の形態)を示す斜視図である。 図1のA−A断面図(横断面図)である。 上記積層インダクタの製造方法を説明するための分解斜視図である。 上記積層インダクタの第2の実施の形態を示す横断面図である。 実施例における結晶粒径及び組成の測定箇所を示す図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係る積層コイル部品としての積層インダクタの一実施の形態を示す斜視図であり、図2は図1のA−A断面図(横断面図)である。
本積層インダクタは、部品素体1が、磁性体部2とコイル導体(導体部)3とを有し、コイル導体3は磁性体部2に埋設されている。また、コイル導体3の両端には引出電極4a、4bが形成されると共に、部品素体1の両端にはAg等からなる外部電極5a、5bが形成され、該外部電極5a、5bと引出電極4a、4bとが電気的に接続されている。
本実施の形態では、磁性体部2は、Fe、Zn、Ni、及びCuの各成分を主成分として含有したフェライト材料で形成され、コイル導体3は、Agを主成分とした導電性材料で形成されている。
磁性体部2は、図2に示すように、コイル導体3の近傍域である第1の領域6と、該第1の領域6以外の第2の領域7とに区分され、数式(1)に示すように、第1の領域6の平均結晶粒径D1は、第2の領域7の平均結晶粒径D2に対し0.9以下とされている。
D1/D2≦0.9 …(1)
そして、これにより第2の領域7は、焼成時に粒成長が促進されて良好な焼結性を有し、焼結密度の高い高密度領域を形成する一方、第1の領域6は、第2の領域に比べて焼結性に劣り、結晶粒子の粒成長が抑制された焼結密度の低い低密度領域を形成する。
すなわち、第1の領域6は、第2の領域7に比べて平均結晶粒径が小さく、焼成時に粒成長が抑制され焼結性に劣り、焼結密度が低下する。したがって、これにより熱衝撃や外部からの応力が負荷されても内部応力を緩和することができ、インダクタンス等の磁気特性の変動を抑制することが可能となる。
また、第1の領域6は、上述したように焼結性に劣ることから、透磁率μも低下し、直流重畳特性が改善され、これにより磁束の集中が大幅に緩和され、磁気飽和し難くなる。
尚、第1の領域6の平均結晶粒径D1と第2の領域7の平均結晶粒径D2との粒径比D1/D2が0.9を超えると、粒径比D1/D2が1以下であっても第1の領域6と第2の領域7との間で焼結性に十分な差異が生じず、また粒径比D1/D2が1を超えると、第1の領域6が第2の領域7よりも粒成長が促進されて焼結性が上がることから好ましくない。
そして、磁性体部2中のCu成分の含有モル量をCuOに換算して0.2〜4mol%とし、酸素濃度が0.001〜0.1体積%となるように雰囲気調整して焼成することにより、粒径比D1/D2を容易に0.9以下に制御することが可能となる。
すなわち、良好な直流重畳特性を得るためには飽和磁束密度Bsを高くする必要があり、そのためにはCuOの含有モル量を低減するのが有効とされている。
一方、Ni−Zn−Cu系フェライト材料では、融点が1026℃と低いCuOの含有モル量を減少させると焼結性が低下する。このため、通常、CuOを8mol%以上含有させている。
しかるに、本発明者らの研究結果により、焼成雰囲気を酸素濃度が0.1体積%以下の低酸素濃度雰囲気とすることにより、低温焼結性が向上し、フェライト原料中のCuOの含有モル量を低減させても、焼成温度を低下させることが可能となることが分かった。
すなわち、焼成雰囲気の酸素濃度が0.1体積%を超えると、結晶構造中に酸素欠陥を十分に形成するのが困難であるが、焼成雰囲気の酸素濃度が0.1体積%以下の低酸素雰囲気になると、結晶構造中で酸素欠陥の形成が促進される。そしてこのように、結晶構造中に酸素欠陥が形成されると、結晶中に存在するフェライト成分(Fe、Ni、Cu、Zn)の相互拡散が促進され、これにより低温焼結性を向上させることができ、Agと同時焼成できる900〜930℃程度にまで焼成温度を低下させることが可能となる。しかも、上述したようにCuOの含有モル量を低減させることにより、直流重畳特性を向上させることも可能となる。
ここで、CuOの含有モル量を0.2〜4mol%としたのは以下の理由による。
酸素濃度を0.1体積%以下の低酸素雰囲気下で焼成処理を行った場合、大気雰囲気で焼成した場合に比べ、CuOが結晶粒子中に異相として析出しやすくなる。そして、CuOの含有モル量が4mol%を超えて多くなると、CuOが結晶粒子中に過剰に析出し、このCuOの析出により磁性体部2全体の焼結性が却って低下し、このため第2の領域7でも結晶粒子の粒成長が抑制され、粒径比D1/D2が0.9を超えてしまうおそれがある。
一方、CuOの含有モル量が0.2mol%未満になると、低融点のCuOの含有モル量が過度に少なくなり、低酸素濃度雰囲気で焼成しても、十分な焼結性を得ることができず、第2の領域7でも粒成長が抑制される。
したがって、粒径比D1/D2を0.9以下とするためには、フェライト原料中のCu成分の含有モル量は、CuOに換算して0.2〜4mol%とするのが好ましく、より好ましくは0.4〜4mol%である。
このようにフェライト原料中のCu成分の含有モル量をCuOに換算して0.2〜4mol%とし、酸素濃度が0.1体積%以下の焼成雰囲気で、Agを主成分とするコイル導体3と同時焼成すると、Agが、コイル導体3近傍の第1の領域6におけるCuOを吸収し、CuOがコイル導体3近傍に偏析する。そしてその結果、第1の領域6ではCuOの含有重量が減少し、これにより第1の領域6では焼結性が低下する。すなわち、第1の領域6では粒成長が抑制されて結晶粒子の平均粒径が小さくなり焼結密度が低下する。そしてこれにより、基板実装時のリフロー処理等で熱衝撃が負荷されたり外部から応力が負荷されても内部応力が緩和され、インダクタンス等の磁気特性の変動を抑制することが可能となる。また、焼結密度の低い第1の領域6は、透磁率も低下することから、直流重畳特性も改善され、その結果、磁束の集中が大幅に緩和され、磁気飽和し難くなる。
尚、焼成雰囲気の酸素濃度の下限値は、特に限定されるものではないが、酸素欠陥が必要以上に形成されて比抵抗が低下するのを回避する観点からは、酸素濃度は0.001体積%以上が好ましい。
また、フェライト組成中のCu成分以外の主成分を形成する各成分の含有量、すなわちFe、Zn、Niの各成分の含有量は特に限定されるものではないが、透磁率や焼結性、キュリー点等で良好な特性を得る観点からは、それぞれFe、ZnO、及びNiOに換算してFe:40〜49.5mol%、ZnO:5〜35mol%、及びNiO:残部となるように配合されるのが好ましい。
尚、上述した平均結晶粒径及びCu成分の含有重量は以下のようにして測定する。
すなわち、第1の領域6については、磁性体部2とコイル導体3との界面からの離間距離(図2中、Yで示す。)が1〜10μmの領域で代表し、平均結晶粒径及びCu成分の含有重量を測定する。
また、第2の領域7については、コイル導体3の内側であって、磁性体部2の幅方向の中心軸Cから±50μm以内の領域(図2中、Zで示す。)で代表し、平均結晶粒径及びCu成分の含有重量を測定する。
このようにして平均結晶粒径を測定することにより、上記粒径比D1/D2が0.9以下となり、また、第1の領域6のCu成分の含有重量が、第2の領域7のCu成分の含有重量に比べ、減少することが確認される。
次に、上記積層インダクタの製造方法を、図3を参照しながら詳述する。
まず、フェライト素原料として、Fe酸化物、Zn酸化物、Ni酸化物、及びCu酸化物を用意する。そしてこれら各フェライト素原料をFe、ZnO、NiO、CuOにそれぞれ換算し、例えば、Fe:40〜49.5mol%、ZnO:5〜35mol%、CuO:0.2〜4mol%、NiO:残部となるように秤量する。
次いで、これらの秤量物を純水及びPSZ(部分安定化ジルコニア)ボール等の玉石と共にポットミルに入れ、湿式で十分に混合粉砕し、蒸発乾燥させた後、700〜750℃の温度で所定時間仮焼する。
次いで、これらの仮焼物に、ポリビニルブチラール系等の有機バインダ、エタノール、トルエン等の有機溶剤、及びPSZボールと共に、再びポットミルに投入し、十分に混合粉砕し、フェライトスラリーを作製する。
次に、ドクターブレード法等を使用して前記フェライトスラリーをシート状に成形加工し、所定膜厚の磁性体シート8a〜8hを作製する。
次いで、磁性体シート8a〜8hのうち、磁性体シート8b〜8gが互いに電気的に接続可能となるようにレーザ加工機を使用して磁性体シート8b〜8gの所定箇所にビアホールを形成する。
次に、Agを主成分としたコイル導体用導電性ペーストを用意する。そして、この導電性ペーストを使用してスクリーン印刷し、磁性体シート8b〜8g上にコイルパターン9a〜9fを形成し、かつ、ビアホールを前記導電性ペーストで充填しビアホール導体10a〜10eを作製する。尚、磁性体シート8b及び磁性体シート8gに形成された各コイルパターン9a、9fには、外部電極と電気的接続が可能となるように引出部9a′、9f′が形成されている。
次いで、コイルパターン9a〜9fの形成された磁性体シート8b〜8gを積層し、これらをコイルパターンの形成されていない磁性体シート8a及び磁性体シート8hで挟持して圧着し、これによりコイルパターン9a〜9fがビアホール導体10a〜10eを介して接続された圧着ブロックを作製する。その後、この圧着ブロックを所定寸法に切断して積層成形体を作製する。
次に、この積層成形体を大気雰囲気下、所定温度で十分に脱脂した後、酸素濃度0.001〜0.1体積%に雰囲気調整された焼成炉に供給し、900〜930℃で所定時間焼成し、これにより磁性体部中2にコイル導体3が埋設された部品素体1を得る。
尚、この焼成処理で、磁性体シート8b〜8g中、コイルパターン9a〜9f近傍のCuOはコイルパターン9a〜9f中のAgに吸収され、焼成後にはコイル導体3の周囲にCuOが偏析し、これにより磁性体部は、焼結密度の低い第1の領域6と、第1の領域6以外の焼結性が良好で焼結密度の高い第2の領域7に区分される。
次に、部品素体1の両端部に、Ag粉等の導電性粉末、ガラスフリット、ワニス、及び有機溶剤を含有した外部電極用導電ペーストを塗布し、乾燥させた後、750℃で焼き付けて外部電極5a、5bを形成し、これにより積層インダクタが作製される。
このように本実施の形態では、部品素体1は、コイル導体3近傍の第1の領域6と、該第1の領域6以外の第2の領域7とに区分され、第1の領域6における磁性体部2の平均結晶粒径は、第2の領域7における磁性体部2の平均結晶粒径に対し、粒径比で0.9以下であるので、第1の領域6は第2の領域7に比べて焼成時の粒成長が抑制されて焼結性が低下し、その結果、第1の領域6は透磁率も低下する。そして、コイル導体3近傍の第1の領域6は、焼結性が低下して焼結密度が低くなることから、内部応力を緩和させることができ、基板実装時のリフロー処理等で熱衝撃や外部から応力が負荷されてもインダクタンス等の磁気特性の変動を抑制することができる。また、第1の領域6では透磁率が低下することから、直流重畳特性が改善され、その結果、磁束の集中が大幅に緩和され、飽和磁束密度を向上させることが可能となる。
しかも、Cu成分の含有量がCuOに換算して0.2〜4mol%(より好ましくは、0.4〜4mol%)であるので、0.001〜0.1体積%の低酸素濃度の焼成雰囲気で焼成しても、第2の領域7における粒成長を損なうこともなく第1の領域6における粒成長を抑制することができ、これにより容易に粒径比を0.9以下(好ましくは、0.8以下)とすることができ、耐熱衝撃性及び直流重畳特性の良好な積層インダクタ等の積層コイル部品を得ることが可能となる。
また、コイル導体3が、Agを主成分とすることにより、磁性体部2となるべき磁性体シート8a〜8hにCuOを含有している場合は、低酸素濃度下で導体部と磁性体部とを同時焼成させると、コイル導体3近傍の磁性体部2に含有されるCuOがAgに吸収され、これにより第1の領域6におけるCuO量が減少して第1の領域6の焼結性が第2の領域7の焼結性に比べて低下し、容易に粒径比を0.9以下にすることができる。
このように本実施の形態によれば、基板実装時のリフロー処理等で熱衝撃が負荷されたり外部からの応力負荷があっても、インダクタンス等の磁気特性の変化が抑制された良好な耐熱衝撃性を有し、かつ良好な直流重畳特性を有する積層コイル部品を得ることができる。
図4は本発明に係る積層コイル部品の第2の実施の形態を示す横断面図であって、この第2の実施の形態では、磁路を横切るよう非磁性体層11を設け、開磁路型とするのも好ましく、このように開磁路型とすることにより、より一層の直流重畳特性の向上を図ることができる。
ここで、非磁性層11としては、焼成時の収縮挙動が類似する材料、例えば、Ni−Zn−Cu系フェライトのNiをZnで全量置換したZn−Cu系フェライト又はZn系フェライトを使用することができる。
また、この第2の実施の形態のように非磁性層11が形成されている場合も、平均結晶粒径やCu成分の含有重量は、第1の実施の形態で述べた位置で測定されるが、非磁性体層11の近傍位置で測定するのは好ましくないことから、第1の領域6、第2の領域7とも非磁性層11から厚み方向に50μm以上離間した位置で測定するのが好ましい。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、磁性体部2がFe、Ni、Zn、及びCuの各成分を主成分として含有したフェライト材料で形成されているが、副成分としてSn成分をフェライト材料中に適量(例えば、主成分100重量部に対しSnOに換算して0.1〜3重量部)含有させるのも好ましく、これにより、より一層の直流重畳特性の向上を図ることができる。
また、上記実施の形態では、本発明の積層インダクタについて説明したが、積層LC部品のような積層複合部品に適用できるのはいうまでもない。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
(試料の作製)
〔磁性体シートの作製〕
フェライト素原料として、Fe、ZnO、NiO、及びCuOを用意し、表1のような組成となるように、これらフェライト素原料を秤量した。すなわち、Fe:49.0mol%、ZnO:30.0mol%とし、CuOを0.0〜7.0mol%の範囲で異ならせ、残部をNiOで調整した。
Figure 0005748112
次いで、これら秤量物を純水及びPSZボールと共に塩化ビニル製のポットミルに入れ、湿式で十分に混合粉砕し、蒸発乾燥させた後、750℃の温度で仮焼した。
次いで、これら仮焼物を、ポリビニルブチラール系バインダ(有機バインダ)、エタノール(有機溶剤)、及びPSZボールと共に、再び塩化ビニル製のポットミルに投入し、十分に混合粉砕し、スラリーを得た。
次に、ドクターブレード法を使用し、厚さが25μmとなるようにスラリーをシート状に成形し、これを縦50mm、横50mmの大きさに打ち抜き、磁性体シートを作製した。
次いで、レーザ加工機を使用し、磁性体シートの所定位置にビアホールを形成した後、Ag粉末、ワニス、及び有機溶剤を含有したAgペーストを磁性体シートの表面にスクリーン印刷し、かつ前記Agペーストをビアホールに充填し、これにより所定形状のコイルパターン及びビアホール導体を形成した。
〔非磁性体シートの作製〕
Fe:49.0mol%、ZnO:51.0mol%となるようにFe及びZnOを秤量し、上述と同様の方法・手順で仮焼した後、スラリー化し、その後ドクターブレード法を使用し、厚さが25μmとなるようにスラリーをシート状に成形し、これを縦50mm、横50mmの大きさに打ち抜き、非磁性体シートを作製した。
そして、レーザ加工機を使用し、磁性体シートの所定位置にビアホールを形成した後、Cu粉末、ワニス、及び有機溶剤を含有したCuペーストをビアホールに充填し、これによりビアホール導体を形成した。
〔焼結体の作製〕
非磁性体シートを略中央部に挟み込むような形態で、コイルパターンの形成された上記磁性体シート、上記非磁性体シート、及びコイルパターンの形成された上記磁性体シートを順次積層し、その後、これらをコイルパターンの形成されていない磁性体シートで挟持し、60℃の温度で100MPaの圧力で圧着し、圧着ブロックを作製した。そして、この圧着ブロックを所定のサイズに切断し、積層成形体を作製した。
次に、この積層成形体を、大気雰囲気中、400℃の温度で十分に脱脂した。その後、酸素濃度を0.1%に制御した焼成炉に積層成形体を投入し、900〜930℃の温度域で、1〜5時間保持して焼成し、これにより磁性体部にコイル導体が埋設された試料番号1〜12の部品素体を作製した。
次に、Ag粉、ガラスフリット、ワニス、及び有機溶剤を含有した外部電極用導電ペーストを用意した。そして、この外部電極用導電ペーストをフェライト素体の両端に塗布して乾燥した後、750℃で焼き付けて外部電極を形成し、試料番号1〜12の試料(積層インダクタ)を得た。
尚、試料の外形寸法は長さL:2.0mm、幅W:1.2mm、厚みT:1.0mmであり、コイルのターン数はインダクタンスが約1.0μとなるように調整した。
〔試料の評価〕
試料番号1〜12の各試料について、CuOの含有重量及び平均結晶粒径を測定した。
図5は、CuOの含有重量及び平均結晶粒径の測定箇所を示す断面図であって、各試料の部品素体21は、非磁性体層22が略中央部に形成されると共に、磁性体部23にコイル導体24が埋設されている。
そして、コイル導体24近傍の第1の領域25については、コイル導体24の中心線C上であって、各々コイル導体24からの離間距離T′が5μmの位置を測定位置とし、該測定位置でのCuOの含有重量及び平均結晶粒径を求めた。
また、第2の領域26については、幅W:1.2mmの磁性体部23の中央に相当するW′が0.6mmであって、かつ厚み方向の略中央部の非磁性体層22から約100μm離間した位置(図5中、Xで示す。)を測定位置とし、該測定位置でのCuOの含有重量及び平均結晶粒径を求めた。
具体的には、CuOの含有重量は、試料番号1〜12の各試料10個について外部電極を下にして樹脂固めを行い、試料の長手方向の約1/2まで研磨した。そして、その研磨断面について、WDX法(波長分散型X線分析法)を使用して各磁性体部23の組成を定量分析し、第1及び第2の領域25、26における磁性体部23中のCuOの含有重量(平均値)を求めた。
CuOの平均結晶粒径は、上述と同様、各試料10個を研磨した後、さらに化学エッチングを行い、エッチングした各試料について、上述した測定箇所におけるSEM写真を撮影し、このSEM写真から、第1及び第2の領域25、26における粒径を測定し、JIS規格(R1670)に準拠し、円相当径に換算して平均結晶粒径を算出し、10個の平均値を求めた。
そしてその後、熱衝撃試験及び直流重畳試験を行い、各々試験前後のインダクタンスを測定してその変化率を求め、耐熱衝撃性及び直流重畳特性を評価した。
具体的には、熱衝撃試験は、各試料50個について、−55℃〜+125℃の範囲で所定のヒートサイクルで2000サイクル繰り返し、試験前後のインダクタンスLを測定周波数1MHzで測定し、試験前後のインダクタンス変化率を求めた。
また、直流重畳試験は、各試料50個について、JIS規格(C2560−2)に準拠し、1Aの直流電流を試料に重畳した時のインダクタンスLを測定周波数1MHzで測定し、試験前後のインダクタンス変化率を求めた。
表2は、試料番号1〜12の各試料の測定結果を示している。
Figure 0005748112
試料番号1は、熱衝撃試験でインダクタンス変化率が+22.2%、直流重畳試験でインダクタンス変化率が−50.5%といずれも大きく、耐熱衝撃性及び直流重畳特性に劣ることが分かった。これはフェライト材料中にCuOを含んでおらず、このため粒径比D1/D2が1.00となって第1の領域25と第2の領域26とで平均結晶粒径に差異が生じず、磁性体部23の全体で焼結性が低いためと思われる。
また、試料番号10〜12も、熱衝撃試験でインダクタンス変化率が+22.5〜+25.1%、直流重畳試験でインダクタンス変化率が−51.1〜−52.8%といずれも大きく、耐熱衝撃性及び直流重畳特性に劣ることが分かった。これはCuOの含有モル量が5.0〜7.0mol%と多いため、結晶粒子中にCuOの異相が生じて却って焼結性が低下し、粒径比D1/D2が1.00〜1.01となり、0.9を超えたものと思われる。
これに対し試料番号2〜9は、CuOの含有モル量が0.2〜4.0mol%であり、粒径比D1/D2が0.9以下であるので、熱衝撃試験でインダクタンス変化率が+3.2〜+12.5%、直流重畳試験でインダクタンス変化率が−22.5〜−38.8%と小さくなり、改善されることが分かった。特に試料番号3〜9はCuOの含有モル量が0.4〜4.0mol%であるため、粒径比D1/D2が0.8以下となり、その結果、熱衝撃試験でインダクタンス変化率が絶対値で10%以下、直流重畳試験でインダクタンス変化率が絶対値で35%以下となり、より良好な結果が得られることが分かった。
また、第1の領域25のCuOの含有重量x1は、第2の領域26のCuOの含有重量x2に比べて減少した。これは焼成過程で、コイル導体24を構成するAgが第1の領域25中のCuOを吸収し、これにより第1の領域26のCuOの含有重量x1が減少したためと考えられる。そしてこのCuOの含有重量の相違により、第1の領域25と第2の領域26とで焼結性に差が生じ、その結果、両領域で平均粒径に粒径差が生じ、これにより耐熱衝撃性及び直流重畳特性が改善できたものと思われる。
フェライト材料の主成分を形成するFe、ZnO、NiO、及びCuOの他、副成分材料としてSnOを用意した。そして、Fe:49.0mol%、ZnO:30.0mol%、CuOを1.0mol%、及びNiO:20.0mol%となるように秤量し、さらに主成分100重量部に対し、0.0〜3.0重量部となるようにSnOを秤量した。
その他は、実施例1と同様の方法・手順で、試料番号21〜28の試料を作製した。
次いで、試料番号21〜28の各試料について、実施例1と同様の方法・手順で、CuOの含有重量及び平均結晶粒径を測定し、熱衝撃試験及び直流重畳試験を行なった。
表3は、試料番号21〜28の各試料の測定結果を示している。
Figure 0005748112
試料番号21〜28から明らかなように、熱衝撃試験でのインダクタンス変化率ΔLは殆ど差異がないが、試料番号22〜28と試料番号21との対比から明らかなように、フェライト材料中にSnOを含有させることにより直流重畳試験でのインダクタンス変化率ΔLが減少し、直流重畳特性が向上することが分かった。しかも、主成分100重量部に対しSnOの含有量が0.1〜3.0重量部の範囲では、SnOの含有量が増量するのに伴い、直流重畳特性がより一層向上することが分かった。
すなわち、主成分に適量のSnOを含有させることにより、直流重畳特性がより一層向上することが確認された。
Agを主成分とする材料をコイル導体に使用し、コイル導体と磁性体部とを同時焼成しても、煩雑な工程を要することなく耐熱衝撃性や直流重畳の良好な積層インダクタ等の積層コイル部品を実現できる。
1 部品素体
2 磁性体部
3 コイル導体(導体部)
6 第1の領域
7 第2の領域
21 部品素体
23 磁性体部
24 コイル導体(導体部)
25 第1の領域
26 第2の領域

Claims (8)

  1. フェライト材料からなる磁性体部と、コイル状に巻回された導体部とを有し、該導体部が前記磁性体部に埋設されて部品素体を形成する積層コイル部品において、
    前記部品素体は、前記導体部近傍の第1の領域と、該第1の領域以外の第2の領域とに区分され、
    前記第1の領域における前記磁性体部の平均結晶粒径は、前記第2の領域における前記磁性体部の平均結晶粒径に対し、粒径比で0.9以下であり、
    かつ、前記フェライト材料は、少なくともCu成分を含有すると共に、
    Cu成分の含有量は、CuOに換算して0.2〜4mol%であることを特徴とする積層コイル部品。
  2. 前記粒径比は、0.8以下であることを特徴とする請求項1記載の積層コイル部品。
  3. 前記Cu成分の含有量は、CuOに換算して0.4〜4mol%であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の積層コイル部品。
  4. 前記導体部は、Agを主成分としていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の積層コイル部品。
  5. 前記フェライト材料は、Sn成分を含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の積層コイル部品。
  6. 前記部品素体は、酸素濃度が0.001〜0.1体積%の焼成雰囲気で焼結されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の積層コイル部品。
  7. 少なくともCu酸化物を含むフェライト原料粉末から磁性体シートを作製する磁性体シート作製工程と、
    Agを主成分とする導電性ペーストを作製するペースト作製工程と、
    前記導電性ペーストを使用して前記磁性体シートの表面にコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、
    前記コイルパターンの形成された磁性体シートを所定方向に積層し、積層成形体を作製する積層成形体作製工程と、
    該積層成形体を酸素濃度が0.1体積%以下の焼成雰囲気で焼成し、磁性体に導体部が埋設された部品素体を作製する焼成工程とを含むことを特徴とする積層コイル部品の製造方法。
  8. 前記酸素濃度は、0.001体積%以上であることを特徴とする請求項7記載の積層コイル部品の製造方法。
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