次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係る電子部品としての多層基板の一実施の形態を模式的に示す断面図である。
この多層基板は、部品素体1の両主面に第1及び第2の絶縁体2a、2bが形成されている。そして、第1の絶縁体2aの表面には第1の外部電極3a、3bが形成され、第2の絶縁体2bの裏面には第2の外部電極4a、4bが形成されている。
また、部品素体1は、磁性体部5と、該磁性体部5の内部に該磁性体部5と接するように形成された非磁性体部6とを有し、さらに、コイル導体7が、少なくともコイルパターンの主面が非磁性体部6と接するように形成されている。この第1の実施の形態では、非磁性体部6は、コイル導体7の表面を覆うように形成されている。
また、コイル導体7の上端は第1の貫通導体8aを介して第1の外部電極3aに接続されている。すなわち、第1の貫通導体8aは、非磁性体部6、磁性体部5、及び第1の絶縁体2aを貫通して形成され、コイル導体7と第1の外部電極3aとが電気的に接続している。
また、コイル導体7の下端は第2の貫通導体8bを介して第2の外部電極4aに接続されている。すなわち、第2の貫通導体8bは、非磁性体部6、磁性体部5、及び第2の絶縁体2bを貫通して形成され、コイル導体7と第2の外部電極4aとを電気的に接続している。
さらに、第1の外部電極3bと第2の外部電極4bとは、第3の貫通導体8cを介して接続されている。すなわち、第3の貫通導体8cは、第1の絶縁体2a、磁性体部5、及び第2の絶縁体2bを貫通して形成され、第1の外部電極3bと第2の外部電極4bとを電気的に接続している。
そして、第1の外部電極3a、3b上には制御用ICやセラミックコンデンサ等のチップ部品9、10が実装されている。
磁性体部5は、金属磁性材料と第1のガラス成分とを含有し、金属磁性材料と第1のガラス成分との総計に対する第1のガラス成分の体積含有量が、45〜60体積%とされている。また、非磁性体部6は、セラミック材料と第2のガラス成分とを含有し、セラミック材料と第2のガラス成分との総計に対する第2のガラス成分の体積含有量が、69〜80体積%とされている。
これにより金属磁性粒子間にガラス相を形成することが可能となり、しかもコイル導体7の周囲が比誘電率の低いガラスセラミックからなる非磁性体部6で形成されることから、浮遊容量が増加するのを抑制することができる。そしてこのようにして絶縁性を損なうことなく、良好な高周波特性や磁気特性を得ることができ、かつ割れや剥離等の構造欠陥の発生を抑制できる高信頼性を有する多層基板を得ることができる。
次に、第1のガラス成分及び第2のガラス成分の体積含有量を上述の範囲にした理由を詳述する。
(1)第1のガラス成分
磁性体部5中に金属磁性材料に加えて第1のガラス成分を含有させることにより、焼成処理によって金属磁性粒子間には緻密なガラス相を形成することができると共に、見掛け比誘電率が上昇するのを避けることができる。そしてこれにより磁気特性を損なうこともなく、絶縁性が良好で耐吸湿性や耐めっき液性を確保でき、かつ良好な高周波特性の維持に寄与する。
しかしながら、金属磁性材料と第1のガラス成分との総計に対する第1のガラス成分の体積含有量が45体積%未満になると、第1のガラス成分の体積含有量が少なくなるため、金属磁性粒子間を十分に充填できるだけのガラス相を形成するのが困難となり、絶縁性が低下し、耐吸湿性や耐めっき液性が劣化するおそれがある。また、第1のガラス成分の体積含有量が少ないため、大気雰囲気等の酸性雰囲気で焼成すると見掛け比誘電率が上昇して高周波特性の劣化を招くおそれがある。
一方、金属磁性材料と第1のガラス成分との総計に対する第1のガラス成分の体積含有量が60体積%を超えると、金属磁性材料の体積含有量が過度に低下し、このため初透磁率等の磁気特性の劣化を招くおそれがある。
そこで、本実施の形態では、金属磁性材料と第1のガラス成分との総計に対する第1のガラス成分の体積含有量が45〜60体積%となるように、金属磁性材料と第1のガラス成分との配合量を調整している。
(2)第2のガラス成分
コイル導体7の主面を比誘電率の低いガラスセラミック(セラミック材料+ガラス成分)からなる非磁性体部6と接触させることにより、コイル導体7間で発生する浮遊容量を低減することができ、高周波特性を改善することが可能となる。
しかしながら、セラミック材料と第2のガラス成分の総計に対する第2のガラス成分の体積含有量が69体積%未満になると、第2のガラス成分が少なすぎるため、非磁性体部6の焼結性が低下し、このため磁性体部5と非磁性体部6との間で収縮挙動に大きな差が生じ、磁性体部5と非磁性体部6との界面で割れや剥離等の構造欠陥が生じるおそれがある。しかも、非磁性体部6が焼結性に劣るため緻密なガラス相を形成することができず、耐吸湿性や耐めっき液性の劣化を招くおそれがある。
一方、セラミック材料と第2のガラス成分の総計に対する第2のガラス成分の体積含有量が80体積%を超えると、非磁性体部6と磁性体部5との間の熱膨張率差が大きくなり、磁性体部5と非磁性体部6との界面で割れや剥離等の構造欠陥が生じるおそれがある。
そこで、本実施の形態では、セラミック材料と第2のガラス成分の総計に対する第2のガラス成分の体積含有量が69〜80体積%となるように、セラミック材料と第2のガラス成分との配合量を調整している。
このようなガラス成分としては、第1及び第2のガラス成分が上記体積含有量を満たすのであれば、特に限定されるものではないが、構造欠陥の抑制効果をより十分に確保するためには、第1のガラス成分と第2のガラス成分とは主成分が同一であるのが好ましい。すなわち、第1のガラス成分と第2のガラス成分とを主成分が同一のガラス材料で形成することにより、収縮挙動や熱膨張率差を相互に近付けることができ、割れや剥離等の構造欠陥をより一層効果的に抑制することができる。
さらに、これら第1及び第2のガラス成分の具体的な材料種としては、Si、B、及びアルカリ金属を含有したホウケイ酸アルカリ系ガラスを使用するのが好ましい。Li2O、K2O、或いはNa2O等のアルカリ金属酸化物は、めっき液に溶出し難く、網目状酸化物として作用するSiO2及びB2O3と共に含有させることにより、より一層の耐めっき液性に優れた緻密なガラス相を形成することが可能である。
また、これら第1及び第2のガラス成分の軟化点についても、特に限定されるものではないが、650〜800℃が好ましい。
すなわち、金属磁性材料と第1のガラス及びセラミック材料と第2のガラス成分との各混合物を熱処理することにより、緻密なガラス相を形成することができる。
しかしながら、ガラス成分の軟化点が650℃未満になると、ガラス成分中のSi成分の含有量が過度に少なくなり、このためめっき処理時にガラス成分がめっき液に溶出し易くなり、好ましくない。
一方、ガラス成分の軟化点が800℃を超えると、ガラス成分中のSi成分の含有量を過度に多くなってガラス成分の流動性が低下し、所望の緻密なガラス相を得ることができなくなるおそれがある。
また、磁性体部5に含有される金属磁性材料についても、特に限定されるものではないが、少なくともFe、Si、及びCrを含有したFe−Si−Cr系材料や、少なくともFe、Si、及びAlを含有したFe−Si−Al系材料を使用するのが好ましい。すなわち、Feよりも酸化しやすいCrやAlを含有したFe−Si−Cr系や、Fe−Si−Al系の金属磁性材料を使用することにより、大気雰囲気等の酸性雰囲気で焼成すると、CrやAlが酸化されてCr2O3やAl2O3の不働態皮膜を金属磁性粒子の表面に形成することができる。そしてこれにより防錆性が向上し、信頼性向上を図ることができる。
尚、非磁性体部6に含有されるセラミック材料は、特に限定されるものではないが、通常はAl2O3が好んで使用される。
また、コイル導体用材料についても、特に限定されるものではないが、大気雰囲気等の酸性雰囲気でも焼成可能な耐酸化性を有し、低抵抗かつ比較的安価なAgを主成分とした金属材料を好んで使用することができる。
また、第1及び第2の絶縁体2a、2bに使用される材料についても、絶縁体であれば特に限定されるものではないが、通常は生産性を考慮し、非磁性体部6と同一材料、すなわちセラミック材料に所定量のガラス成分を含有した非磁性体材料が好んで使用される。
このように本実施の形態によれば、部品素体1が、磁性体部5と、該磁性体部5の内部に形成された非磁性体部6とを有すると共に、Ag等のコイル導体7が、少なくともコイルパターンの主面が非磁性体部6と接するように形成され、磁性体部5が、金属磁性材料と第1のガラス成分とを含有すると共に、前記金属磁性材料と前記第1のガラス成分との総計に対する前記第1のガラス成分の含有量が、体積比率で45〜60体積%であり、非磁性体部6が、Al2O3等のセラミック材料と第2のガラス成分とを含有すると共に、前記セラミック材料と前記第2のガラス成分との総計に対する前記第2のガラス成分の含有量が、体積比率で69〜80体積%であるので、金属磁性粒子間にガラス相を形成することが可能となり、しかもコイル導体7の周囲が比誘電率の低いガラスセラミックからなる非磁性体部6で形成されることから、浮遊容量が大きくなるのを抑制することができる。そしてこれにより、この多層基板をDC−DCコンバータに使用した場合であっても、より高周波や大電流領域でも変換効率を高効率に保持することが可能となる。
また、非磁性体部6中に含有される第2のガラス成分を、セラミック材料と前第2のガラス成分との総計に対し69〜80体積%とすることにより、割れや剥離等の構造欠陥を抑制することが可能となる。特に、第1のガラス成分の主成分と第2のガラス成分の主成分が同一の場合は、焼成時に磁性体部5と非磁性体部6との間の収縮挙動や熱膨張率差を互いに近付けることができ、割れや剥離等の構造欠陥をより一層効果的に抑制することができ、信頼性向上を図ることができる。
また、第1及び第2のガラス成分が、ケイ素、ホウ素及びアルカリ金属元素を主成分としたホウケイ酸アルカリ系ガラスの場合は、より一層の耐めっき液性に優れた緻密なガラス相を形成することが可能である。
また、第1及び第2のガラス成分の軟化点が、650〜800℃の場合は、焼成処理によって第1及び第2のガラス成分からなる緻密なガラス相が金属磁性粒子間やセラミック粒子間に形成され、これら金属磁性粒子間やセラミック粒子間に隙間が生じるのを抑制できる。すなわち、耐湿性や耐めっき液性のより一層の向上を図ることができ、水分やめっき液の浸入を極力回避できると共に、後工程でめっき処理を行ってもガラス成分がめっき液に溶出するのを効果的に抑制できる。
さらに、金属磁性材料として、Feよりも酸化しやすいCrやAlを含有したFe−Si−Cr系や、Fe−Si−Al系の金属磁性材料を使用した場合は、大気雰囲気で焼成するとCrやAlが酸化されてCr2O3やAl2O3からなる不働態皮膜が粒子表面に形成され、防錆性が向上し、より良好な信頼性を確保することができる。
このように本多層基板によれば、各種特性や絶縁性、高周波特性が良好で、割れや剥離等の構造欠陥が生じるのを抑制できる信頼性に優れた多層基板を得ることができる。
特に、本多層基板をDC−DCコンバータに使用した場合は、該多層基板にコイル導体7が内蔵されていることから、コイル部品を外部に設ける必要もなく、小型低背で高性能・高信頼性を有するDC−DCコンバータを実現することが可能となる。
次に、この多層基板の製造方法を詳述する。
尚、以下の実施の形態では、第1及び第2の絶縁体2a、2b、非磁性体部6を同一の材料を使用して作製した場合について述べる。
(1)磁性体ペーストの作製
Fe−Si−Cr系材料やFe−Si−Al系材料等の金属磁性材料、及びホウケイ酸アルカリ系ガラス等の第1のガラス成分を用意する。
そして、金属磁性材料と第1のガラス成分との総計に対する第1のガラス成分の体積含有量が、焼成後に45〜60体積%となるように、これら金属磁性材料及び第1のガラス成分を秤量し、混合して磁性体原料を作製する。
次に、有機溶剤、有機バインダ、及び分散剤や可塑剤等の添加剤を適量秤量し、前記磁性体原料と共に混練し、ペースト化して磁性体ペーストを作製する。
(2)非磁性体ペーストの作製
Al2O3等のセラミック材料、及びホウケイ酸アルカリ系等の第2のガラス成分を用意する。
そして、セラミック材料と第2のガラス成分との総計に対する第2のガラス成分の体積含有量が、焼成後に69〜80体積%となるように、これらセラミック材料及び第2のガラス成分を秤量し、混合して非磁性体原料を作製する。
次に、有機溶剤、有機バインダ、及び分散剤や可塑剤等の添加剤を適量秤量し、前記非磁性体原料と共に混練し、ペースト化して非磁性体ペーストを作製する。
(3)コイル導体用導電性ペースト(以下、「コイル導体ペースト」という。)の作製
Ag粉末等の導電性材料にワニスや有機溶剤を加えて混練し、これにより導電性材料を主成分とするコイル導体ペーストを作製する。
(4)積層成形体の作製
図2〜図5は、積層成形体の作製工程を示す平面図である。尚、通常は、大判のベースフィルム上に多数の積層成形体を同時に作製する多数個取り方式が採用されるが、本実施の形態では、説明の都合上、1個の積層成形体を作製する場合について説明する。
まず、図2(a)に示すようにPET(ポリエチレンテレフタレート)等のベースフィルム上に非磁性体ペーストをスクリーン印刷法等で塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの第1の非磁性体層11aを作製する。次いで、第1の非磁性体層11aの所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第1及び第2の導通ビア12a、12bを作製する。
次に、図2(b)に示すように、第1の非磁性体層11aの表面に磁性体ペーストをスクリーン印刷法等で塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの第1の磁性体層13aを作製する。次いで、第1及び第2の導通ビア12a、12bと導通可能となるように所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第3及び第4の導通ビア12c、12dを作製する。
次に、図2(c)に示すように、第1の磁性体層13aの中央部及び外周部に磁性体ペーストを塗布し、第2及び第3の磁性体層13b、13cを形成する。次いで、第2及び第3の磁性体層13b、13cを形成しなかった箇所に非磁性体ペーストを塗布し、第2の非磁性体層11bを形成する。次いで、第3及び第4の導通ビア12c、12dと導通可能となるように第2の非磁性体層11b及び第3の磁性体層13cの所定箇所にビアホールを形成し、その後該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第5及び第6の導通ビア12e、12fを作製する。
次いで、図2(d)に示すように、第2の非磁性体層11bの内部にコイル導体ペーストを塗布し、コ字状の第1の導体部14aを形成する。
次いで、図3(e)に示すように、第2及び第3の磁性体層13b、13cの表面に磁性体ペーストを塗布し、第4及び第5の磁性体層13d、13eを形成する。次いで、第4及び第5の磁性体層13d、13eを形成しなかった箇所に非磁性体ペーストを塗布し、第3の非磁性体層11cを形成する。次いで、第1の導体部14a及び第5の導通ビア12eと導通可能となるように所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第7及び第8の導通ビア12g、12hを作製する。
次に、図3(f)に示すように、第7の導通ビア12gと電気的に接続されるように第3の非磁性体層11cの内部にコイル導体ペーストを塗布し、コ字状の第2の導体部14bを形成する。
以下、同様の工程を繰り返し、図3(g)〜図5(k)に示すように、第4〜第6の非磁性体層11d〜11f、第9〜第14の導通ビア12i〜12n、第6〜第11の磁性体層13f〜13k、及び第3〜第4の導体部14c〜14dを順次作製する。
そしてその後、図5(l)に示すように、第10の磁性体層13j、第11の磁性体層13k、及び第6の非磁性体層11fの表面全域に磁性体ペーストを塗布し、乾燥する工程を所定回数繰り返し、所定厚みの第12の磁性体層13lを作製する。そしてこの後、第13及び第14の導通ビア12m、12nと導通可能となるように所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第15及び第16の導通ビア12o、12pを作製する。
次いで、図5(m)に示すように、第12の磁性体層13l上に非磁性体ペーストを塗布して乾燥する工程を所定回数繰り返し、所定厚みの第7の非磁性体層11gを形成する。そしてこの後、第15及び第16の導通ビア12o、12pと導通可能となるように所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第17及び第18の導通ビア12q、12rを作製し、これにより積層成形体を得る。
(5)焼成処理
このようにして作製された積層成形体を熱処理炉に投入し、大気雰囲気下、300〜500℃で約2時間加熱し、脱バインダ処理を行った後、大気雰囲気下、850℃で1時間程度焼成する。そしてこれにより第1〜第12の磁性体層13a〜13l、第1〜第7の非磁性体層11a〜11g、第1〜第4の導体部14a〜14d、及び第1〜第18の導通ビア12a〜12rが共焼結され、部品素体1の両主面に絶縁体2a、2bが形成され、かつコイル導体7が非磁性体部6の内部に形成された焼結体が作製される。尚、この焼成処理で焼結された第1〜第18の導通ビア12a〜12rは、第1〜第3の貫通導体8a〜8cを形成する。
(6)外部電極の形成
Ag等の導電性材料を主成分とした外部電極用導電性ペーストを用意する。そして、第1及び第2の絶縁体2a、2bから表面露出している第1〜第3の貫通電極8a〜8cの表面に外部電極用導電性ペーストを塗布し、大気雰囲気下、乾燥後、750〜800℃の温度で所定時間焼成処理を行って第1の外部電極3a、3b、及び第2の外部電極4a、4bを形成し、これにより多層基板が作製される。
このように本多層基板では、焼成処理を大気雰囲気等の酸性雰囲気で焼成しても良好な絶縁性と高周波特性を確保できることから、焼成雰囲気の制御が容易となり、低コストで磁気特性や耐湿性・耐めっき液性が良好で高信頼性を有する電子部品を容易に得ることができる。
すなわち、従来では、大気雰囲気等の酸性雰囲気で焼成処理を行うと、磁性体部を形成する金属粒子の表面に酸化皮膜が形成されて磁性体部の見掛け比誘電率が上昇し、高周波特性の低下を招くおそれがあることから、非酸性雰囲気で焼成を行わざるを得なかった。
これに対し本実施の形態では、上述したように焼成後には金属磁性材料とガラス成分との総計に対し45〜60体積%となるようにガラス成分を含有させ、かつ所定量のガラス成分を含有した誘電率の低いガラスセラミックからなる非磁性体層6でコイル導体7の周囲を覆っているので、大気雰囲気等の酸性雰囲気で焼成しても良好な絶縁性と高周波特性を得ることができる。
図6は、本発明に係る電子部品としての多層基板の第2の実施の形態を模式的に示す断面図である。
この第2の実施の形態でも、部品素体21は、上記第1の実施の形態と同様、磁性体部22と、該磁性体部22と接するように該磁性体部22の内部に形成された非磁性体部23とを有し、また、コイル導体24が、コイルパターンの主面が非磁性体部23と接するように形成されている。すなわち、コイル導体24は、平面視で非磁性体部23と同一形状乃至略同一形状に形成されており、これら非磁性体部23とコイル導体24とが積層状に形成されている、そして、磁性体部22は非磁性体部23の表面を覆うように該非磁性体部23と接して形成されている。
このように本発明は、少なくともコイルパターンの主面が非磁性体部23と接するようにコイル導体24が形成されていればよく、第1の実施の形態のようにコイル導体7の周囲を非磁性体部6で覆う場合の他、この第2の実施の形態のように、コイルパターンの主面が非磁性体部23と接するようにコイル導体24を形成しても、浮遊容量の上昇を抑制することができ、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態と略同様の方法で作製することができる。
すなわち、まず、第1の実施の形態と同様の方法で、磁性体ペースト、非磁性体ペースト、及びコイル導体ペーストを作製し、次いで、積層成形体を作製する。
図7は、第2の実施の形態の積層成形体の要部製造工程図である。
まず、ベースフィルム上に磁性体ペーストをスクリーン印刷法等で塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの第1の非磁性体層、第1の磁性体層を順次作製し、さらに第1〜第4の導通ビアを作製する。
その後、図7(a)に示すように、第1の磁性体層31a上の導体部形成予定領域32aを除く領域に磁性体ペーストを塗布し、乾燥させ、第2の磁性体層31bを形成する。次いで、非磁性体ペーストを導体部形成予定領域32aに塗布して乾燥させ、第2の非磁性体層33aを形成する。また、第2の非磁性体層33a及び第2の磁性体層31b上の所定箇所にビアホールを形成し、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第5及び第6の導通ビア34a、34bを作製する。
次いで、図7(b)に示すように、第2の非磁性体層33a上の全域にコイル導体ペーストを塗布し、コ字状の第1の導体部35aを形成する。
次に、図7(c)に示すように、第2の磁性体層31b上の導体部形成予定領域32bを除く領域に磁性体ペーストを塗布し、乾燥させ、第3の磁性体層31cを形成する。次いで、導体部形成予定領域32bに非磁性体ペーストを塗布して乾燥させ、第3の非磁性体層33bを形成する。また、第3の非磁性体層33b及び第3の磁性体層31c上の所定箇所にビアホールを形成し、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第7及び第8の導通ビア34c、34dを作製する。
次いで、図7(d)に示すように、第3の非磁性体層33bの表面にコイル導体ペーストを塗布し、コ字状の第2の導体部35bを形成する。
以下、第1の実施の形態と略同様の方法・手順で積層成形体を形成し、その後、焼成処理を行ない、部品素体21の両主面に第1及び第2の絶縁体2a、2bが形成された焼結体を作製する。そしてこの後、第1及び第2の絶縁体2a、2b上に表面露出している第1〜第3の貫通導体8a〜8c上に第1の外部電極3a、3b、及び第2の外部電極4a、4bを付与し、これにより上記多層基板を作製することができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で更なる種々の変更が可能である。上記実施の形態では、生産性を考慮し、第1及び第2の絶縁体2a、2bを非磁性体部6、23と同一材料で形成しているが、必要に応じ異なる材料で形成してもよい。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
金属磁性材料に第1のガラス成分を含有させ、第1のガラス成分の体積含有量が異なる種々の磁性体試料を作製し、各種特性を評価した。
〔磁性体ペーストの作製〕
金属磁性材料としてFe:92.0重量%、Si:3.5重量%、Cr:4.5重量%を含有した平均粒径6μmのFe−Si−Cr系磁性合金粉末を用意した。
また、第1のガラス成分として、SiO2:79重量%、B2O3:19重量%、K2O:2重量%を含有した平均粒径が1μmで軟化点が760℃のガラス粉末を用意した。
次に、この磁性合金粉末とガラス粉末との配合比率が表1となるように秤量して混合し、磁性体原料を得た。
そして、この磁性体原料100重量部に対し有機溶剤としてのジヒドロタービニルアセテートを26重量部、バインダ樹脂としてのエチルセルロース樹脂を3重量部、及び可塑剤を1重量部添加し、これらを混錬してペースト化し、これにより試料番号A〜Gの磁性体ペーストを作製した。
〔磁性体試料の作製〕
これら試料番号A〜Gの磁性体ペーストをPETフィルム上に塗布し、乾燥する処理を繰り返し、厚みが0.5mmの磁性体シートを作製した。
次いで、この磁性体シートをPETフィルムから剥離し、プレス加工を行い、直径が10mmの円板状に打ち抜き、円板状の成形体を作製した。
同様に、前記磁性体シートをPETフィルムから剥離し、プレス加工を行い、外径が20mm、内径が12mmのリング状に打ち抜き、リング状の成形体を作製した。
次いで、これらの成形体を大気雰囲気下、350℃で脱バインダ処理を行い、その後850℃の温度で60分間、熱処理して焼成し、これにより試料番号A〜Gの円板状試料及びリング状試料をそれぞれ作製した。
次に、円板状試料各10個について、焼成後のガラスの体積含有量を求めた。
すなわち、各試料10個について、円板状試料を樹脂固めし、該円板状試料が、径方向に約1/2となるまで半月状に研磨した。次いで、その研磨面を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」という。)で撮影し、得られたSEM画像を画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング社製、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標))を用いて解析し、磁性合金が占める面積、及びガラスが占める面積をそれぞれ求めた。次いで、ガラス及び磁性合金が占める合計面積に対するガラスが占める面積の比率(面積比率)を算出した。そして、各試料10個についての前記面積比率の平均値を求め、これを焼成後のガラスの体積含有量とした。
〔磁性体試料の特性評価〕
次に、試料番号A〜Gの円板状試料について、重量を測定した後、水中に60分間浸漬し、その後、各試料を引き上げ、表面の水分をスポンジで吸い取って除去した後、水分除去後の重量を測定し、浸漬前後の増加重量に基づいて吸水率を算出した。
また、これら試料番号A〜Gの円板状試料の両主面にAgを主成分とする導電性ペーストを塗布し、700℃の温度で5分間焼き付けて電極を形成した。
そしてこれら各試料に50Vの直流電圧を印加し、1分後の抵抗値を測定し、この測定値と試料寸法とから比抵抗logρ(ρ:Ω・cm)を求めた。
また、これら各試料の静電容量をインピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、4192A)を使用し、測定周波数1MHz、電圧1Vで測定し、この測定値と試料寸法とから比誘電率εrを求めた。
さらに、試料番号A〜Gのリング状試料を透磁率測定冶具(アジレント・テクノロジー社製、16454A-s)に収容し、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、E4991A)を使用し、測定周波数1MHzで初透磁率μiを測定した。
表1は磁性合金粉末(金属磁性材料)とガラス粉末(第1のガラス成分)の各含有量(焼成前)、ガラスの体積含有量(焼成後)、及び測定結果を示している。
尚、吸水率、比抵抗、比誘電率、及び初透磁率は、各試料30個の測定値の平均値を示している。
試料番号A、Bは、初透磁率μiは8.6、7.2と大きいものの、吸水率が3.2%、2.5%%といずれも高く、また比誘電率εrも99、85といずれも大きくなった。また、比抵抗logρも7.2、7.8と小さかった。これはガラス粉末の体積含有量が28体積%、38体積%といずれも40体積%未満と少なく、このため磁性合金粉末間の隙間を十分に埋めるだけのガラス相を形成することができず、その結果、耐吸湿性が低下して十分な比抵抗logρを得ることができず、絶縁性に劣り、さらに磁性合金粉末表面に酸化層が形成され、その結果比誘電率の上昇を招いたものと思われる。
一方、試料番号F、Gは、吸水率は0.01、比誘電率εrは15、13といずれも低いものの、ガラス粉末の体積含有量が65〜70体積%と多く、磁性合金粉末の体積含有量が少ないことから、初透磁率μiが3.1、2.5といずれも5未満に低下した。
これに対し試料番号C〜Eは、ガラス粉末の体積含有量が45〜60体積%であり、本発明範囲内であるので、吸水率を0.1〜0.01%に抑制でき、比抵抗logρは8.1〜8.8となって8以上であり、初透磁率μiは5.4〜6.7を確保でき、比誘電率εrは17〜20に抑制できた。
したがって、耐吸湿性、耐めっき液性、絶縁性、磁気特性、及び高周波特性の全てを満足させるためには、磁性体部はガラス粉末の体積含有量は45〜60体積%とする必要があることが分かった。
セラミック材料に第2のガラス成分を含有させ、第2のガラス成分の体積含有量が異なる種々の非磁性体試料を作製し、各種特性を評価した。
〔非磁性体ペーストの作製〕
セラミック材料として平均粒径が1μmのAl2O3からなるセラミック粉末を用意した。
また、第2のガラス成分として、第1のガラス成分と同様、SiO2:79重量%、B2O3:19重量%、K2O:2重量%を含有した平均粒径が1μmで軟化点が760℃のガラス粉末を用意した。
次に、このセラミック粉末とガラス粉末との配合比率が表2となるように秤量して混合し、非磁性体原料を得た。
そして、この非磁性体原料100重量部に対し有機溶剤としてのジヒドロタービニルアセテートを26重量部、バインダ樹脂としてのエチルセルロース樹脂を3重量部、及び可塑剤を1重量部添加し、これらを混錬してペースト化し、これにより試料番号a〜gの非磁性体ペーストを作製した。
〔非磁性体試料の作製〕
試料番号a〜gの非磁性体ペーストを使用し、〔実施例1〕と同様の方法・手順で試料番号a〜gの円板状試料及びリング状試料をそれぞれ作製し、さらに前記円板状試料を使用し、〔実施例1〕と同様の方法・手順で焼成後のガラスの体積含有量を求めた。
〔非磁性体試料の特性評価〕
試料番号a〜gの円板状試料について、〔実施例1〕と同様の方法・手順で吸水率、比抵抗logρ、及び比誘電率εrを求めた。
また、試料番号a〜gのリング状試料について、〔実施例1〕と同様の方法・手順で初透磁率μiを測定した。
表2はセラミック粉末(セラミック材料)とガラス粉末(第2のガラス成分)の各含有量(焼成前)、ガラスの体積含有量(焼成後)、及び測定結果を示している。
試料番号a、bは、吸水率が1.2%、0.24%といずれも比較的高くなった。これはガラス粉末の体積含有量が60体積%、65体積%と少なく、このため850℃の温度では熱処理しても十分に緻密なガラス相を得ることができなかったためと思われる。
これに対し試料番号c〜gは、ガラス粉末の体積含有量が69体積%以上であるので、吸水率が0.01〜0.05%と低く、緻密なガラス相を得ることができ、比抵抗logρも12.2〜14.3と十分に大きな値を得ることができた。
ただし、試料番号f、gは、ガラス粉末の体積含有量が83〜87体積%であり、80%を超えているため、この試料番号f、gを使用して非磁性体部を形成すると、後述するように磁性体部と非磁性体部との界面で割れや剥離等の構造欠陥が生じるおそれがあり、不適当である。
実施例1で作製した磁性体ペースト中、吸水率及び比誘電率εrが低く、初透磁率μiが良好なC〜Eの磁性体ペーストを使用し、実施例2で作製された非磁性体ペーストと組み合わせて各種多層基板を作製し、特性を評価した。
〔多層基板の作製〕
〔発明を実施するための形態〕で述べた方法・手順に従い、積層成形体を作製した(図2〜図5参照)。
すなわち、まず、PETフィルム上に非磁性体ペーストをスクリーン印刷法を使用して塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの第1の非磁性体層を作製した。
そして、第1の非磁性体層の所定箇所にビアホールを形成した後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第1及び第2の導通ビアを作製した。
次に、第1の非磁性体層の表面に磁性体ペーストをスクリーン印刷法で塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの第1の磁性体層を作製した。次いで、第1及び第2の導通ビアと導通可能となるように所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第3及び第4の導通ビアを作製した。
次に、第1の磁性体層の中央部及び外周部に磁性体ペーストを塗布し、第2及び第3の磁性体層を形成した。次いで、第2及び第3の磁性体層を形成しなかった箇所に非磁性体ペーストをスクリーン印刷して塗布し、窓状の第2の非磁性体層を形成した。次いで、第3及び第4の導通ビアと導通可能となるように第2の非磁性体層及び第3の磁性体層の所定箇所にビアホールを形成し、その後該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第5及び第6の導通ビアを作製した。
次いで、第2の非磁性体層の表面にコイル導体ペーストを塗布し、コ字状の第1の導体部を形成した。
次いで、第2及び第3の磁性体層の表面に磁性体ペーストを塗布し、第4及び第5の磁性体層を形成し、さらに第4及び第5の磁性体層を形成しなかった箇所に非磁性体ペーストを塗布し、第3の非磁性体層を形成した。次いで、第1の導体部及び第6の導通ビアと導通可能となるように所定箇所にビアホールを形成し、その後、該ビアホールにコイル導体ペーストを充填し、第7及び第8の導通ビアを作製した。
次に、第7の導通ビアと電気的に接続されるように、第3の非磁性体層の表面にコイル導体ペーストを塗布し、コ字状の第2の導体部を形成した。
以下、同様の工程を繰り返し、最上層の導体部の平面上に磁性体ペーストを塗布し、乾燥する工程を所定回数繰り返して所定厚みの磁性体層を形成し、さらに所定箇所に導通ビアを形成した。その後、前記磁性体層上に非磁性体ペーストを塗布し、乾燥する工程を所定回数繰り返して所定厚みの非磁性体層を形成し、その後、所定箇所に導通ビアを形成し、これにより積層成形体を作製した。
このようにして作製された積層成形体を熱処理炉に投入し、大気雰囲気下、400℃で2時間加熱して脱バインダ処理を行った後、大気雰囲気下、850℃で1時間程度焼成し、これにより試料番号1〜9の焼結体を作製した。
次に、Agを主成分とし、ガラス粉末及びワニスを含有した外部電極用導電性ペーストを用意した。そして浸漬法を使用し、この焼結体の端部に外部電極用導電性ペーストを塗布し、大気雰囲気下、100℃で10分間乾燥した後、780℃の温度で15分間焼成処理を行い、これにより部品素体の両主面に第1及び第2の絶縁体が形成された試料番号1〜9の試料を作製した。
尚、試料番号1〜9の各試料の外形寸法は、長さ2.5mm、幅2.0mm、高さ1.2mmであり、コイルのターン数は1MHz(1V)でのインダクタンスLが約2.5μHになるように調整した。
〔多層基板の特性評価〕
試料番号1〜9の試料各50個について、外観を光学顕微鏡で観察した。
また、これら試料各50個を側面が立つように樹脂固めを行い、側面を試料の幅方向に沿って、幅方向の約1/2の箇所まで研磨し、研磨面を光学顕微鏡で観察した。
そして、外観及び研磨面の双方で、部品素体中、磁性体層と非磁性体層の接合部に割れや剥離が皆無の試料番号を良品(○)、割れや剥離が1個でも生じた試料番号を不良品(×)として構造欠陥を評価した。
表3は磁性体ペースト及び非磁性体ペーストの種類、構造欠陥の評価結果を示している。
試料番号1、2は、磁性体部と非磁性体部との接合部に割れや剥離が発生し、構造欠陥が生じた。これは非磁性体部が、ガラス粉末の体積含有量が60体積%、65体積%の非磁性体ペーストa、bを使用して形成されており、したがって非磁性体層中のガラス成分(第2のガラス粉末)の体積含有量が少なく、このため非磁性体層の焼結性が低下し、その結果、磁性体層と非磁性体層との間で収縮挙動の差が大きくなり、割れや剥離等の構造欠陥が発生したものと思われる。
一方、試料番号6、7も、磁性体部と非磁性体部との接合部に割れや剥離が発生し、構造欠陥が生じた。これは非磁性体部が、ガラス粉末の体積含有量が83体積%、87体積%の非磁性体ペーストf、gを使用して形成されており、したがって非磁性体層中のガラス成分(第2のガラス粉末)の体積含有量が過剰となり、このため磁性体層と非磁性体層との熱膨張率の差が大きくなり、その結果、割れや剥離等の構造欠陥が発生したものと思われる。
これに対し試料番号3〜5、8、及び9は非磁性体部中のガラス粉末の体積含有量が69〜80体積%であり、しかも磁性体部中のガラス粉末の体積含有量が45〜60体積%であり、いずれも本発明範囲内であるので、割れや剥離等の構造欠陥が生じないことが確認された。
部品素体内の磁性体部内に非磁性体部が形成されていない比較例試料を作製し、本発明試料と比較例試料のインダクタンスの周波数特性を測定し、両者の高周波特性を比較した。
〔比較例試料の作製〕
比較例試料として、〔実施例1〕で作製した磁性体ペーストDを使用し、図8に示すように、磁性体原料で形成された部品素体51にコイル導体52が埋設されると共に、該部品素体51の両主面に第1及び第2の絶縁体53a、53bを形成した多層基板を作製した。
この比較例試料は、具体的には以下のようにして作製した。
まず、上記本発明試料と同様、PETフィルム上に非磁性体ペーストをスクリーン印刷して塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの非磁性体層を作製すし、さらにコイル導体ペーストを使用して所定箇所に導通ビアを作製した。次いで、前記非磁性体層上に磁性体ペーストを塗布し、乾燥する処理を繰り返し、所定厚みの磁性体層を作製し、さらにコイル導体ペーストを使用して所定箇所に導通ビアを作製した。
次いで、コイル導体ペーストを磁性体層上にスクリーン印刷して塗布し、乾燥させてコ字状の導体部を形成した。
次に、前記磁性体層上に磁性体ペーストをスクリーン印刷して塗布し、乾燥させて新たな磁性体層を形成し、さらに所定箇所に導通ビアを形成した。
以下、同様の工程を繰り返し、最上層の磁性体層上に非磁性体ペーストを塗布し、乾燥を繰り返す処理を行って所定厚みの非磁性体層を形成し、さらにコイル導体ペーストを使用して所定箇所に導通ビアを作製し、これにより比較例試料の積層成形体を得た。
その後、試料番号1〜9と同様、積層成形体に脱バインダ処理を施し、焼成した後、第1の外部電極54a、54b、及び第2の外部電極55a、55bを付与し、比較例試料を作製した。
尚、比較例試料の外形寸法も、試料番号1〜9と同様、長さ2.5mm、幅2.0mm、高さ1.2mmであり、コイルのターン数は1MHz(1V)でのインダクタンスLが約2.5μHになるように調整した。
〔インダクタンスの周波数特性〕
本発明試料として試料番号4を使用した。そして、本発明試料及び比較例試料について、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー社製、E4991A)を使用し、0.1MHz〜100MHzの範囲でインダクタンスの周波数特性を測定し、共振周波数を求めた。
図9は、その測定結果を示している。図中、横軸は周波数(MHz)、縦軸はインダクタンスL(μH)である。また、横軸中、f0は本発明試料の共振周波数を示し、f0′は比較例試料の共振周波数を示している。
この図9から明らかなように、比較例試料の共振周波数f0′は約22MHzであったのに対し、本発明試料の共振周波数f0は約40MHzであった。すなわち、本発明試料は、比較例試料に比べ、高周波特性に優れており、より高周波帯域での使用が可能であることが分かった。