JP6453370B2 - 積層インダクタ - Google Patents

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Description

本発明は積層インダクタに関する。
従来より、積層インダクタの製造方法の一つとして、フェライト等を含有するセラミックグリーンシートに内部導体パターンを印刷し、これらのシートを積層し、焼成する方法が知られている。当該方法の典型的な製法によれば、フェライト粉を用いて得られたセラミックグリーンシートにおける所定の位置にスルーホールを形成する。次いで、スルーホールを形成したシートの一方の主面に、積層してスルーホール接続することによってらせん状のコイルが構成されるコイル導体パターン(内部導体パターン)を、導電ペーストにより印刷する。
次に、上記スルーホールおよびコイル導体パターンが形成されたシートを所定の構成で積層し、その上下にスルーホールおよびコイル導体パターンが形成されていないセラミックグリーンシート(ダミーシート)を積層する。次いで、得られた積層体を圧着した後焼成し、コイル末端が導出している端面に外部電極を形成することで積層インダクタが得られる。ここで、ダミーシートに透磁率の高い材料を用いることにより、高いL値を得ることができる。
近年、積層インダクタには大電流化(定格電流の高値化を意味する)が求められており、該要求を満足するために、磁性体の材質を従前のフェライトから軟磁性合金に切り替えることが検討されている。特許文献1には、低コスト、簡単な構造、高い特性を有する積層型圧粉磁芯の提供を目的として、Fe,Si,Alを主成分とする合金粉末と、ほう珪酸系ガラス又はシリカを含む耐熱性接着剤の複合体とからなる磁性体層、および導電性粉末による導電体層を積層することが開示されている。特許文献2には、金属磁性体粒子と熱硬化性樹脂を含有する金属磁性体ペーストを用いて形成された金属磁性体層と導体ペーストを用いて形成された導体パターンを積層して、これらの積層体内にコイルを形成させることが開示されている。
特開平9-148118号公報 特開2007-27353号公報
上記のように磁性体として合金粉を用いた積層インダクタにおいては、材料粉末の抵抗値が低くなり、めっき伸びが生じることがある。特に、積層方向に対して最も外側の面でめっき伸びが生じやすい。めっき伸びとは、めっきが外部電極以外の、磁性体の部分に伸びるように付いてしまうことを指す。製品としての積層インダクタの大きさに対してめっき伸びの長さ(伸び量)が短ければ具体的な問題にはなりにくい。しかし、めっき伸びの問題は、積層インダクタにおける製品の小型化の制約要因になり得る。
これらのことを考慮し、本発明は軟磁性合金を磁性材料として用い、めっき伸びが生じにくい積層インダクタの提供を課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の本発明を完成した。
本発明の積層インダクタは、複数の磁性材料層からなる積層体と、前記積層体の内部にスパイラル状に形成されたコイル導体と、を備える。磁性材料層は、軟磁性合金からなる複数の金属粒子と、金属粒子の表面に形成された前記軟磁性合金の酸化物からなる酸化被膜とを備える。磁性材料層には、隣接する金属粒子表面に形成された酸化被膜を介しての結合部が存在する。前記積層体の表面の少なくとも一部に絶縁性酸化物のコーティングが施されている。
コーティングの表面抵抗率は好ましくは1MΩ/sq以上である。
コーティングは積層体の積層方向の好ましくは上面及び下面に施されている。
積層体において、金属粒子の間に空隙がある場合に、コーティングの一部が上記上面及び下面から前記空隙の少なくとも一部に入り込んでいることが好ましい。
絶縁性酸化物は好ましくはガラスであり、より好ましくはその軟化点が500〜800℃である。ガラスは好ましくはB、Si、Ba、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Al、Cu、Zn、Zr又はBiを含有する。
本発明によれば、高透磁率化のために、磁性材料層における酸化の程度を小さくしても、積層体の表面抵抗を高めることができめっき伸びの不良モードを低減させることができる。これにより、高透磁率化と製品の小型化とをより高度なレベルで両立する可能性が見出された。また、コーティングをガラスにする場合は、積層時に最外層としてガラスシートを付加すればよいので、製造が容易である。
本発明の積層インダクタの模式断面図である。 磁性材料層の模式断面図である。 積層体の模式的な分解図である。
以下、図面を適宜参照しながら本発明を詳述する。但し、本発明は図示された態様に限定されるわけでなく、また、図面においては発明の特徴的な部分を強調して表現することがあるので、図面各部において縮尺の正確性は必ずしも担保されていない。
図1は積層インダクタの模式的な断面図である。本発明によれば、積層インダクタ1は積層体2とコイル導体20とを有する。コイル導体20は積層体2の内部に埋没している構造を有する。典型的には、コイル導体20は螺旋状に形成されたコイルであり、この場合は、ほぼ環状あるいは半環状などの導体パターンを、スクリーン印刷法などによってグリーンシート上に印刷し、スルーホールに導体を充填して、前記シートを積層することにより形成することができる。導体パターンが印刷されるグリーンシートは、後述する磁性材料を含有し、所定の位置にスルーホールが設けられている。なお、コイル導体20としては、図示された螺旋状のコイルの他、渦巻き状のコイル、ミアンダ(蛇行)状の導線、あるいは直線状の導線等が挙げられる。
積層体2は磁性材料層10が積み重なって構成されている。図1では紙面上下方向に磁性材料層10が積層しており、図面では層構造の描写を省略している。図2は、磁性材料層の一部分の模式断面図である。磁性材料層10では、軟磁性合金からなる金属粒子11が多数集積している。軟磁性合金としては、Fe−M−Si系合金(但し、Mは鉄より酸化し易い金属である。)やFe−M’系合金(但し、M’は鉄より酸化し易い金属である。)やFe−Si合金などが挙げられる。MやM’としては例えばNi、Co、Cr、Alなどが挙げられる。軟磁性合金として、Fe−Si−B−Cr系合金を採ることも可能である。軟磁性合金のより具体的な例としては、例えば、Fe−Si系合金、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Cr−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、Fe−Si−B−Cr系合金などが挙げられる。
軟磁性合金がFe−Cr−Si系合金である場合におけるクロムの含有率は、好ましくは2〜8wt%である。クロムの存在は、熱処理時に不動態を形成して過剰な酸化を抑制するとともに強度および絶縁抵抗を発現する点で好ましく、一方、磁気特性の向上の観点からはクロムが少ないことが好ましく、これらを勘案して上記好適範囲が提案される。
Fe−Cr−Si系軟磁性合金におけるSiの含有率は、好ましくは1.5〜7wt%である。Siの含有量が多ければ高抵抗・高透磁率という点で好ましく、Siの含有量が少なければ成形性が良好であり、これらを勘案して上記好適範囲が提案される。
Fe−Cr−Si系合金において、SiおよびCr以外の残部は不可避不純物を除いて、鉄であることが好ましい。Fe、SiおよびCr以外に含まれていてもよい金属としては、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などが挙げられ、非金属としてはリン、硫黄、カーボンなどが挙げられる。
個々の金属粒子11はその周囲の概ね全体にわたって酸化被膜12が形成されていて、この酸化被膜12により磁性材料層10の絶縁性が確保される。好ましくはこの酸化被膜12は金属粒子11を構成する軟磁性合金が酸化してなるものである。隣接する金属粒子11どうしは、概ね、それぞれの金属粒子11がもつ酸化被膜12どうしが結合することにより、磁性材料層10を構成している。このような酸化被膜を介しての結合部13に加えて、部分的には、隣接する金属粒子11の金属部分どうしの結合部14が存在してもよい。また、コイル導体20の近傍では、主に上記酸化被膜12を介して、金属粒子11とコイル導体20とが密着している(図示省略)。金属粒子11がFe−M−Si系合金(但し、Mは鉄より酸化し易い金属である。)からなる場合、酸化被膜12には、磁性体であるFe34と、非磁性体であるFe23及びMO(xは金属Mの酸化数に応じて決まる値である。)を少なくとも含むことが確認されている。
上述の酸化被膜12どうしの結合13の存在は、例えば、約3000倍に拡大したSEM観察像などにおいて、隣接する金属粒子11が有する酸化被膜12が同一相であることを視認することなどで、明確に判断することができる。酸化被膜12どうしの結合の存在により、積層インダクタ1における機械的強度と絶縁性の向上が図られる。積層インダクタ1のなるべく多くの領域において、隣接する金属粒子11が有する酸化被膜12どうしが結合していることが好ましいが、一部でも結合していれば、相応の機械的強度と絶縁性の向上が図られ、そのような形態も本発明の一態様であるといえる。
同様に、上述の金属粒子11の金属部分どうしの結合部14についても、例えば、約3000倍に拡大したSEM観察像などにおいて、隣接する金属粒子11どうしが同一相を保ちつつ結合点を有することを視認することなどにより、結合の存在を明確に判断することができる。金属粒子11どうしの結合の存在により透磁率のさらなる向上が図られる。
なお、隣接する軟磁性合金粒子が、酸化被膜12どうしの結合も、金属粒子11どうしの結合もいずれも存在せず単に物理的に接触又は接近するに過ぎない形態が部分的にあってもよい。
積層インダクタ1においては、磁性材料層10からなる積層体2と、磁性材料層10内に埋め込まれるように設けられた螺旋状のコイルなどの形態を有するコイル導体20とが存在する。コイル導体20を構成する導体は積層インダクタにおいて通常使用される金属を適宜用いることができ、銀や銀合金などを非限定的に例示することができる。コイル導体20の両端は、典型的には、それぞれ引出導体(図示せず)を介して積層インダクタ1の外表面の相対向する端面に引き出され、外部端子(図示せず)に接続される。
磁性材料層10で用いられる軟磁性合金粒子の平均粒子径は、SEM像を取得して画像解析に供して得られるd50値である。具体的には、上記磁性材料層10の断面のSEM像(約3000倍)を取得し、測定部分における平均的な大きさの粒子を300個以上選び出して、それらのSEM像における面積を測定し、粒子が球体であると仮定して平均粒子径を算出する。粒子を選び出す方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。前記のSEM像内に存在する粒子が300個未満の場合は、該SEM像内の粒子をすべてサンプリングし、これを複数個所行って300個以上選び出す。前記のSEM像内に300個以上粒子が存在する場合は、該SEM像内に所定間隔で直線を引いて、その直線上にかかった粒子を全部サンプリングして、300個以上選び出す。なお、軟磁性合金粒子を用いる積層インダクタにおいては、原料粒子の粒子径と、熱処理後の上記磁性材料層10を構成する軟磁性合金からなる金属粒子11の粒子径とはほぼ同じであることが知られている。このため、原料として用いる軟磁性合金粒子の平均粒子径を測定しておくことで、積層インダクタ1に含まれる金属粒子11の平均粒子径を想定することも可能である。
本発明によれば、積層体2の表面の少なくとも一部にコーティングが施される。このコーティングは絶縁性酸化物からなる。図1の形態では、積層体2の積層方向の上面および下面にコーティング30、40が設けられている。コーティング30、40を施したところは表面抵抗値が上昇し、めっき伸びが抑制される。
絶縁性酸化物として、典型的にガラスが挙げられる。ガラスとしては、シリカガラス、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。これらのガラスには金属元素が含まれていてもよい。ガラスに含まれていてもよい金属元素としては、Ba、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Al、Cu、Zn、Zr、Biなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上が含まれていてもよい。好適なガラスのより具体的な例として、SiO-B-NaO、SiO-B-ZrO-NaO、SiO-B-MgOなどが挙げられる。ガラスの軟化点は好ましくは500〜800℃であり、前記温度範囲は積層インダクタ製造時の熱処理温度と同程度である。
コーティングは積層体2の積層方向の上面及び下面に施されることが好ましい。本発明者らの知見によれば、前記上面及び下面において特にめっき伸びが生じやすいからである。ここで、積層体2の積層方向の上下面に、金属粒子11の間に空隙15がある場合、この空隙15にコーティング30、40が入り込むことが好ましい。空隙15に入り込んだコーティングの存在により、積層体2の積層方向の上下面に設けられたコーティング30、40が剥離しにくくなる。これは、化学的な接着効果が存在することに加えて、物理的にコーティング30、40の保持が達成されているためである。
ガラス以外の絶縁性酸化物として、Ni−Znフェライトなどが例示される。また、ガラスへの混合物として、Al、SiC、AlN等が含まれていてもよい。
これら、ガラスを含めた、絶縁性酸化物からなるコーティングを施した箇所においては表面抵抗率が好ましくは1MΩ/sq以上であり、より好ましくは5〜50MΩ/sqである。前記範囲の表面抵抗率が発現することで、めっき伸び不良をより効率的に抑制できる。
以下、本発明に係る積層インダクタ1の典型的な製造方法を説明する。積層インダクタ1の製造にあたっては、まず、ドクターブレードやダイコータ等の塗工機を用いて、予め用意した磁性体ペースト(スラリー)を、樹脂等からなるベースフィルムの表面に塗工する。これを熱風乾燥機等の乾燥機で乾燥してグリーンシートを得る。上記磁性体ペーストは、上述した軟磁性合金からなる金属粒子と、典型的には、バインダとしての高分子樹脂と、溶剤とを含む。
積層インダクタ1における各々の軟磁性合金粒子を構成する合金については、例えば、積層インダクタ1の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影して、その後、エネルギー分散型X線分析(EDS)によるZAF法で化学組成を算出することができる。
磁性材料層10のための原料として用いる軟磁性合金からなる金属粒子の粒子径は、体積基準において、d50が好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは3〜10μmである。軟磁性合金粒子のd50は、レーザ回折散乱法を利用した粒子径・粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製のマイクロトラック)を用いて測定される。軟磁性合金粒子を用いる積層インダクタ1においては、原料粒子としての軟磁性合金粒子の粒子サイズは、積層インダクタ1の磁性体部12を構成する金属粒子の粒子サイズと概ね等しいことが分かっている。
上述の磁性体ペーストには、好適にはバインダとしての高分子樹脂が含まれる。高分子樹脂の種類は特に限定はなく、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。磁性体ペーストの溶剤の種類は特に限定はなく、例えば、ブチルカルビトール等のグリコールエーテルなどを用いることができる。磁性体ペーストにおける金属粒子、高分子樹脂、溶剤などの配合比率などは適宜調節することができ、それによって、磁性体ペーストの粘度などを設定することも可能である。
磁性体ペーストを塗工および乾燥してグリーンシートを得るための具体的な方法は従来技術を適宜援用することができる。
次いで、打ち抜き加工機やレーザ加工機等の穿孔機を用いて、グリーンシートに穿孔を行ってスルーホール(貫通孔)を所定配列で形成する。スルーホールの配列については、各シートを積層したときに、導体を充填したスルーホールと導体パターンとでコイル導体20が形成されるように設定される。内部導線を形成するためのスルーホールの配列および導体パターンの形状については、従来技術を適宜援用することができ、また、後述の実施例において図面を参照しながら具体例が説明される。
スルーホールに充填するため、および、導体パターンの印刷のために、好ましくは導体ペーストが使用される。導体ペーストには導体粒子と、典型的にはバインダとしての高分子樹脂と溶剤とが含まれる。
導体粒子としては、銀粒子などを用いることができる。導体粒子の粒子径は、体積基準において、d50が好ましくは1〜10μmである。導体粒子のd50は、レーザ回折散乱法を利用した粒子径・粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製のマイクロトラック)を用いて測定される。
導体ペーストには、好適にはバインダとしての高分子樹脂が含まれる。高分子樹脂の種類は特に限定はなく、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。導体ペーストの溶剤の種類は特に限定はなく、例えば、ブチルカルビトール等のグリコールエーテルなどを用いることができる。導体ペーストにおける導体粒子、高分子樹脂、溶剤などの配合比率などは適宜調節することができ、それによって、導体ペーストの粘度などを設定することも可能である。
次いで、スクリーン印刷機やグラビア印刷機等の印刷機を用いて、導体ペーストをグリーンシートの表面に印刷し、これを熱風乾燥機等の乾燥機で乾燥して、内部導線に対応する導体パターンを形成する。印刷の際に、上述のスルーホールにも導体ペーストの一部が充填される。その結果、スルーホールに充填された導体ペーストと、印刷された導体パターンとが内部導線の形状を構成することになる。
好適には、上記とは別に、絶縁性酸化物粒子、好ましくはガラス粒子を含むスラリー(ペースト)を作製し、このスラリー(ペースト)からシートを得る。このシートの厚さは、好適には10〜50μmである。
印刷後のグリーンシートを、吸着搬送機とプレス機を用いて、所定の順序で積み重ねて熱圧着して積層体を作製する。このとき、好適には、上述の絶縁性酸化物粒子を含むスラリー(ペースト)から得たシートを積層体の最上層および最下層として重ねる。続いて、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて、積層体を部品本体サイズに切断して、熱処理前の磁性体部及び内部導線を含む、熱処理前チップを作製する。
焼成炉等の加熱装置を用いて、大気等の酸化性雰囲気中で、熱処理前チップを熱処理する。この熱処理は、通常は、脱バインダプロセスと酸化被膜形成プロセスとを含み、脱バインダプロセスは、バインダとして用いた高分子樹脂が消失する程度の温度、例えば、約300℃、約1hrの条件が挙げられ、酸化物膜形成プロセスは、例えば、約750℃、約2hrの条件が挙げられる。
熱処理前チップにあっては、個々の軟磁性合金粒子どうしの間に、多数の微細間隙が存在し、通常、該微細間隙は溶剤とバインダとの混合物で満たされている。これらは脱バインダプロセスにおいて消失し、脱バインダプロセスが完了した後は、該微細間隙はポアに変わる。また、熱処理前チップにおいて、導体粒子どうしの間にも多数の微細隙間が存在する。この微細間隙は溶剤とバインダとの混合物で満たされている。これらも脱バインダプロセスにおいて消失する。
脱バインダプロセスに続く酸化被膜形成プロセスでは、金属粒子が密集して磁性材料層10ができ、典型的には、その際に、金属粒子11それぞれの表面とその近傍が酸化されて該粒子11の表面に酸化被膜12が形成される。このとき、導体粒子が焼結してコイル導体20が形成される。これにより積層体2が得られる。好ましくは、酸化被膜12は前記熱処理により金属粒子11が酸化してなるものである。また、好ましくは、酸化被膜12を介した結合13は、前記熱処理において金属粒子11の金属部分が酸化して結合してできたものである。
通常は、熱処理の後に外部端子を形成する。ディップ塗布機やローラ塗布機等の塗布機を用いて、予め用意した導体ペーストを積層インダクタ1の長さ方向両端部に塗布し、これを焼成炉等の加熱装置を用いて、例えば、約600℃、約10minの条件で焼付け処理を行うことにより、外部端子が形成される。外部端子用の導体ペーストは、上述した導体パターンの印刷用のペーストや、それに類似したペーストを適宜用いることができる。
上記例では、絶縁性酸化物のコーティングは、シートを積層してから熱処理している。この方法以外であっても、例えば、絶縁性酸化物をペースト化し、上下面に印刷した後ガラスの軟化点以上で熱処理することによってコーティングを施すことも可能である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に記載された態様に限定されるわけではない。
[積層インダクタの具体構造]
本実施例で製造した積層インダクタは長さが約3.2mmで、幅が約1.6mmで、高さが約1.0mmで、全体が直方体形状を成している。
図3は積層インダクタの積層体2の模式的な分解図である。磁性材料層10は、磁性体層ML1〜ML6が一体化した構造を有する。積層インダクタ1の長さは約3.2mm、幅は約1.6mm、高さは約1.0mmである。各磁性体層ML1〜ML6の長さは約3.2mmで、幅は約1.6mmで、厚さは約30μmである。各磁性体層ML1〜ML6は、軟磁性合金粒子であるFe−Cr−Si系合金(Cr:4.5wt%、Si:3.5wt%、残部Fe)又はNi−Znフェライト(Fe:49mol%、NiO:15mol%、ZnO:25mol%、CuO:11mol)からなる、平均粒子径(d50)が10μmの粒子を主体として成形されてなり、ガラス成分を含んでいない。
コイル導体20は、計5個のコイルセグメントCS1〜CS5と、該コイルセグメントCS1〜CS5を接続する計4個の中継セグメントIS1〜IS4とが、螺旋状に一体化したコイルの構造を有し、その巻き数は約3.5である。このコイル導体20は、主として銀粒子を熱処理して得られ、原料として用いた銀粒子の体積基準のd50は5μmである。
4個のコイルセグメントCS1〜CS4はコ字状を成し、1個のコイルセグメントCS5は帯状を成しており、各コイルセグメントCS1〜CS5の厚さは約20μmで、幅は約0.2mmである。最上位のコイルセグメントCS1は、外部端子との接続に利用されるL字状の引出部分LS1を連続して有し、最下位のコイルセグメントCS5は、外部端子との接続に利用されるL字状の引出部分LS2を連続して有している。各中継セグメントIS1〜IS4は磁性体層ML1〜ML4を貫通した柱状を成しており、各々の口径は約15μmである。
各外部端子(図示せず)は、積層インダクタ1の長さ方向の各端面と該端面近傍の4側面に及んでおり、その厚さは約20μmである。一方の外部端子は最上位のコイルセグメントCS1の引出部分LS1の端縁と接続し、他方の外部端子は最下位のコイルセグメントCS5の引出部分LS2の端縁と接続している。これら外部端子は、主として体積基準のd50が5μmである銀粒子を熱処理して得た。
上記積層体2の積層方向の上面および下面に厚さ約10μmのガラス層を表1の条件で設けた。
[積層インダクタの製造]
表1記載の金属粒子(又はフェライト粒子)85wt%、ブチルカルビトール(溶剤)が13wt%、ポリビニルブチラール(バインダ)2wt%からなる磁性体ペーストを調製した。ドクターブレードを用いて、この磁性体ペーストをプラスチック製のベースフィルムの表面に塗工し、これを熱風乾燥機で、約80℃、約5minの条件で乾燥した。このようにしてベースフィルム上にグリーンシートを得た。その後、グリーンシートをカットして、磁性体層ML1〜ML6(図3を参照)に対応し、且つ、多数個取りに適合したサイズの第1〜第6シートをそれぞれ得た。
組成がSiO-B-NaOであり、粒子径がd50で5μmであるガラス(軟化点:600℃)を70wt%、ブチルカルビトール(溶剤)が15wt%、ポリビニルブチラール(バインダ)3wt%からなるガラスペーストを調製した。ドクターブレードを用いて、このガラスペーストをプラスチック製のベースフィルムの表面に塗工し、これを熱風乾燥機で、約80℃、約5minの条件で乾燥した。このようにしてベースフィルム上にガラスシート(図示せず)を得た。ガラスシートの厚さとして表1記載のものを調製した。
続いて、穿孔機を用いて、磁性体層ML1に対応する第1シートに穿孔を行い、中継セグメントIS1に対応する貫通孔を所定配列で形成した。同様に、磁性体層ML2〜ML4に対応する第2〜第4シートそれぞれに、中継セグメントIS2〜IS4に対応する貫通孔を所定配列で形成した。
続いて、印刷機を用いて、上記Ag粒子が85wt%で、ブチルカルビトール(溶剤)が13wt%で、ポリビニルブチラール(バインダ)が2wt%からなる導体ペーストを上記第1シートの表面に印刷し、これを熱風乾燥機で、約80℃、約5minの条件で乾燥して、コイルセグメントCS1に対応する第1印刷層を所定配列で作製した。同様に、上記第2〜第5シートそれぞれの表面に、コイルセグメントCS2〜CS5に対応する第2〜第5印刷層を所定配列で作製した。
第1〜第4シートそれぞれに形成した貫通孔は、第1〜第4印刷層それぞれの端部に重なる位置に存するため、第1〜第4印刷層を印刷する際に導体ペーストの一部が各貫通孔に充填されて、中継セグメントIS1〜IS4に対応する第1〜第4充填部が形成される。
続いて、吸着搬送機とプレス機を用いて、印刷層及び充填部が設けられた第1〜第4シートと、印刷層のみが設けられた第5シートと、印刷層及び充填部が設けられていない第6シートとを、図3に示した順序で積み重ね、さらに最上面と最下面に上述のガラスシートを積み重ねて熱圧着した。その後、圧着物を切断機で部品本体サイズに切断して、熱処理前チップを得た。
続いて、焼成炉を用いて、大気中雰囲気で、熱処理前チップを多数個一括で熱処理した。まず、脱バインダプロセスとして約300℃、約1hrの条件で加熱し、次いで、酸化被膜12形成プロセスとして約750℃、約2hrの条件で加熱した。この熱処理によって、軟磁性合金粒子(又はフェライト粒子)が密集して磁性材料層10が形成し、また、銀粒子が焼結してコイル導体20が形成され、これにより部品本体を得た。このとき、熱によってガラスシートからガラス層が生成した。
続いて、外部端子を形成した。上記銀粒子を85wt%、ブチルカルビトール(溶剤)を13wt%で、ポリビニルブチラール(バインダ)を2wt%含有する導体ペーストを塗布機で、部品本体の長さ方向両端部に塗布し、これを焼成炉で、約600℃、約10minの条件で焼付け処理を行った。その結果、溶剤及びバインダが消失し、銀粒子が焼結して、外部端子が形成され、積層インダクタ1を得た。
得られた積層インダクタについて、表面抵抗率はガラス層が存在する場合は、ガラス層の部分を、ガラス層が存在しない場合には、積層体の上面部を、それぞれ四端子法にて測定した。
得られた積層インダクタの磁性材料層10の断面について、約3000倍に拡大したSEM観察を行い、隣接する軟磁性合金からなる金属粒子11が有する酸化被膜12を介した結合部13の有無と、金属粒子11の酸化被膜12が存在しない金属部分どうしの結合部14の有無を調べた。なお、前記酸化被膜12を介した結合部13が有る場合には、SEM観察像において、隣接する金属粒子11が有する酸化被膜12はその大部分が同一相を呈していた。金属部分どうしの結合部14が存在する場合には、SEM観察像において隣接する金属粒子11どうしが同一相を保ちつつ結合点を有することを視認した。その結果、実施例1、2及び比較例1では、酸化被膜12を介した結合部13および金属部分どうしの結合部14が両方とも存在した。比較例2では、材料自体が金属ではないので金属どうしの結合は無く、SEM観察の結果、フェライトの結晶粒とその粒界が観測された。
同様のSEM観察をガラス層と積層体との界面において実施した。その結果、実施例1、実施例2、比較例2では、ガラス層の一部が積層体を構成する粒子(実施例1、2では金属粒子、比較例2ではフェライト粒子)の隙間にまで入り込んでいるのを確認した。
積層インダクタの製造条件は表1のとおりである。
Figure 0006453370
[接合部評価]
ガラスからなるコーティング(表1では「ガラス層」と表記した。)と、積層体2との界面の接合部を目視にて調査したところ、実施例1、2では「割れ」は無く、比較例2では、割れていた。
[インダクタンス測定]
得られた積層インダクタにおける、インダクタンスをAgilent Technologies社インピーダンスアナライザ4294Aにて1MHzの値を測定した。
[めっき伸び評価]
得られた積層インダクタの上下面それぞれを測長顕微鏡で観察した。磁性体面上の両側外部電極の端の位置を始点として、めっきが最も伸びた位置までの距離を測定した。上下面の左右側について上記測定を行うので、積層インダクタ一つにつき、測定は4箇所である。これら4つの測定のうち一つでもめっき伸びの長さが3μm以上であれば、「めっき伸び不良」であると判断した。この測定を50個の積層インダクタに対して行い、不良率を算出した。
上記測定結果を表2にまとめる
Figure 0006453370
上記のように、絶縁性酸化物のコーティング(ガラス層)を設けることにより、めっき伸びという不良モードを顕著に低減させることができた。
1 積層インダクタ、10 磁性材料層、11 金属粒子、12 酸化被膜、13 酸化被膜を介しての結合部、14 金属部分どうしの結合部、20 コイル導体、30・40 コーティング。

Claims (9)

  1. 複数の磁性材料層からなる積層体と、
    前記積層体の内部に形成されたコイル導体と、を備え、
    前記磁性材料層は、軟磁性合金からなる複数の金属粒子と、前記金属粒子の表面に形成された前記軟磁性合金の酸化物からなる酸化被膜とを備え、隣接する金属粒子表面に形成された酸化被膜を介しての結合部と、空隙となる前記金属粒子に囲まれた非結合部を同時に有し、
    前記積層体の積層方向の上面及び下面に表面抵抗率が1MΩ/sq以上のコーティングが施されている、
    積層インダクタ。
  2. 前記金属粒子はFe−M−Si系合金(但し、Mは鉄より酸化し易い金属である。)からなり、前記酸化被膜には、磁性体を含む請求項1記載の積層インダクタ
  3. 前記磁性体にはフェライト成分を含む請求項2記載の積層インダクタ
  4. 前記フェライト成分中には鉄フェライト(Fe 3 4 )を含む請求項3記載の積層インダクタ
  5. 前記積層体の積層方向の上面及び下面に前記コーティングが施されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
  6. 記コーティングの一部が上記上面及び下面から前記空隙の少なくとも一部に入り込んでいる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
  7. 前記コーティングがガラスからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層インダクタ。
  8. 前記ガラスの軟化点が500〜800℃である請求項記載の積層インダクタ。
  9. 前記ガラスがB、Si、Ba、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Al、Cu、Zn、Zr又はBiを含有する請求項7又は8記載の積層インダクタ。
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