JP5667744B2 - モノマーでありフェノラートであるポリエーテルケトンの製造方法 - Google Patents

モノマーでありフェノラートであるポリエーテルケトンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、モノマーでありフェノラートであるポリエーテルケトンの製造方法に関するものである。
ポリエーテルケトン(PEK)とポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、結晶性芳香族の高耐熱性樹脂である。PEKやPEEKは、従前の耐熱性樹脂をはるかに超える特性を持つ高機能エンジニアリングプラスチックであり、優れた加工性とユニ−クな特性を合わせ持っている。これらポリマーは、非常に高い温度に達したり非常に高い温度で連続稼動させたりする自動車や航空機などの工業部品に使用される。これらポリマーは、自動車ボンネット下の部品、ヘッドランプ反射器、航空機のエクステリア、航空機部品、絶縁ワイヤ−、絶縁ケ−ブル、工業ライニング、熱交換器等に用いられている。
PEKとPEEKとはその構造や特性が類似している。しかし、PEKはPEEKに比べて高い機械特性を有するだけでなく、優れた耐熱性や耐薬品性を有する。
PEKはその優れた特性にもかかわらず、高価であることから工業用のPEKはPEEKに比べて生産が限定される。それ故、経済的にPEKを得ることが市場から要求されており、研究課題となっている。
多くの文献にPEKの合成方法が掲載されているが、我々の調査によれば、従前の方法は経済的に実行可能な製造方法ではなかった。PEKの製造方法としては、大別すると求電子置換反応法によるものと求核置換反応法によるものとがある。求電子置換反応法では高腐食性のプロトン酸又はルイス酸を用いており、その反応選択性のために満足なパラ置換が得られず、オルト置換物質の生成により熱安定性が低くなるという問題点を有する。
いっぽう求核置換反応法によれば、高重合度のポリマーを得ることができる。例えば、Polymer 1981,vol.22,1096頁(非特許文献1)には、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンと、温度が335℃でのジフェニルスルホン溶媒(DPSO2)中にある4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトンのカリウム塩との反応によるPEK調合の記述がある。この求核置換反応法では、高価なジヒドロキシ化合物に加えて高価なジフルオロ化合物を使用する。そして、ジフェニルスルホン溶媒中の4,4−ジフルオロジフェニルケトンのジカリウム塩の溶解度が低いため反応速度が限られてしまう。さらにカルボニル基では、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンのジカリウム塩の求核置換反応が減じてしまう。
上記引用文献(非特許文献1)は、シングルモノマー、すなわち4−フルオロ−4’ −ヒドロキシジフェニルケトンを用いたポリマーの重合を説明している。しかしながら本発明者らは、芳香族フッ素のオルト陽子を分離し、カルボアニオン生成によって、求核置換反応法によるポリマーの分岐を見出したのである。
Macromolecules,1991,vol.24,3838頁(非特許文献2)には、4,4’−ジクロロベンゾフェノンと煙霧シリカ中の炭酸ナトリウムと銅触媒からPEKを調合するとの記述がある。この方法は、廉価な材料を使用しているが、余剰な非反応性触媒をその後の生成物から分離することが困難であり、工業上の実施可能性がないものである。
ジフルオロベンゾフェノンとジヒドロキシベンゾフェノンの反応によるPEKの製造に関するコスト上の問題点を克服するものとして、US4,711,945(特許文献1)では、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを使用するとの記述がある。しかしながら、このモノマーを使用すると満足なポリマーが依然として得られないという問題点が経験上知られている。それ故、上記特許文献1では、銅化合物を反応促進のために使用して高い高分子量のポリマーを得る方法を示唆している。しかしながら、最終ポリマー中の微量な銅が高温での製造工程のポリマーの促進を低下させることが知られており(Journal of Polymer Science,PartC;Polymer Letters,vol.24,64−644(1986))、前記ポリマーからの完全な分離が困難である。
日本国の特開平5−178983号公報(特許文献2)には、重合反応塊(ポリマー)の特有粘度(inherent viscosity)を0.92 dl/gとするために、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの重合反応の間、重合反応塊に対する重量比で15 wt/%の硫酸ナトリウムを使用することが記述されている。しかしながら、この方法では、製造工程の期間中ずっと取り除かれなければならない余計な反応物質がある。
日本国の特開平5−178984号公報(特許文献3)には、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの重合での最小分岐のため、モル比で1から3モル%のリン酸カリウムを使用することが記述されている。しかしながら、この方法で彼らが得たポリマーは、特有粘度が0.74 dl/gに過ぎない。
欧州特許344688号公報(特許文献4)には、いかなる触媒/非反応性物質も使用しない4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの重合の説明があり、好ましい塩基は水酸化カリウムとされている。しかしながらこの方法は、温度が320℃における反応時間が12から14時間と長い上に、この方法で彼らが得たポリマーは、その特有粘度が0.88dl/gしかない。そして、重合反応の温度が300℃を超える条件での長時間の加熱が、副次的な反応物質を伴うことが知られている。
Polymer 1981,vol.22,1096頁 Macromolecules,1991,vol.24,3838頁 米国特許4,711,945号公報 特開平5−178983号公報 特開平5−178984号公報 欧州特許344688号公報
そこで本発明の目的は、高い特有粘度を有し優れた力学特性と熱安定性を有するポリエーテルケトン(PEK)の改良された工業的な製造方法を提供することにある。
明細書記載の発明の4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物の製造方法は、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンとジフェニルスルホンとを含む液体を減圧下で蒸留することで4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを精製するステップ(a)と、次に、精製した4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンと化学量論的に余剰な少なくとも1種のアルカリ金属塩基との反応によって4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物を製造するステップ(b)、を有し、前記少なくとも1種のアルカリ金属塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムであることを特徴とする。
本発明のポリエーテルケトンの製造方法は、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンとジフェニルスルホンとを含む液体を減圧下で蒸留することで4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを精製するステップ(a)と、次に、精製した4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンと化学量論的に余剰な少なくとも1種のアルカリ金属塩基との反応によって4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物を製造するステップ(b)と、次に、製造した前記4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物を、真空処理、スプレ−ドライ又は芳香族塩素系溶媒を用いた共沸蒸留によって脱水するステップ(c)と、次に、脱水した前記4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物からポリエーテルケトンを重合するステップ(d)、を有し、前記少なくとも1種のアルカリ金属塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムであることを特徴とする。
本発明は、前記少なくとも1種のアルカリ金属塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムであることを特徴とする。
本発明は、前記重合を、重合反応塊の特有粘度が0.9dl/gより大きくなるまで継続して行うことを特徴とする。
本発明は、前記重合を、温度が305から320℃の条件にて遂行することを特徴とする。
本発明は、前記重合を、少なくとも1つの反応容器によるバッチ処理、又は少なくとも2つの反応容器を連結した連続的処理により行うことを特徴とする。
本発明の狙いは、短時間でのモノマーの製造を達成することである。本発明者らの研究の結果、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの遅い重合の原因が、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン中の不純物の析出にあることが判明した。すなわち、多量の結晶性物質を用いない限りにおいては、従来の結晶性物質を用いた溶媒では、早い重合の反応を得ることは難しいことが判明した。このため、従来は経済的ではない製法となっていた。そして、この課題を解決する方法としてジフェニルスルホン用いた共蒸留による、より手際のよいモノマーの精製方法が見出されたのである。そして本発明者らは、モノマーの純度を高くするための試作を行い、さらに高い重合濃度の精製されたモノマーを得たのである。本発明者らの研究の結果、温度が300から320℃の範囲にて効果的な重合ができ、重合反応時間が1から3時間で完全な重合ができ、重合反応塊の特有粘度が0.9 dl/gより大きく、早期に重合反応塊の特有粘度が1.0 dl/gより大きいものが得られるという全ての要求仕様を満たすポリエーテルケトンの製造方法が見出されたのである。
本発明は、前記蒸留圧力を5mmHgよりも低くすることが好ましい。本発明は、前記4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンとジフェニルスルホンとを含む液体から蒸留する4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンとジフェニルスルホンとの重量比を1:2から1:5の間とすることが好ましく、また、当該重量比を1:2.6とすることがより好ましい。本発明は、前記精製した4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンと反応させる化学量論的に余剰な少なくとも1種のアルカリ金属塩基が、精製した4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンと同じアルカリ金属原子を有する塩基であるか、又は精製した4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンと異なるアルカリ金属原子を有する2種の塩基の組み合わせによるものであることが好ましい。本発明は、前記アルカリ金属塩基を、水酸化ナトリウム炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムからなる群から選択することが好ましい。本発明は、前記水酸化ナトリウムが4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを精製するときに化学量論的な平衡を図る反応をさせるものであり、前記炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムが化学量論的な不足分を調整する余剰の塩基として供されるものであることが好ましい。本発明は、前記共沸蒸留による脱水を、圧力が25から400トルの減圧下で温度が150℃を超えた条件にて行うことが好ましい
本発明者らの研究の結果ジフェニルスルホン用いた共蒸留による、より手際のよいモノマーの精製方法が見出された。本発明者らの研究の結果、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの重合反応速度やポリマーの諸特性が、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物強く依存することが見出された。本発明者らの研究の結果、前記重合反応塊のpHを9から11の範囲に保つと、重合がスムーズとなり、その後のエンドキャッピングも有用なものとなることが判明した。
以下に詳細を説明する本発明の製造方法によって、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの継続的な重合を達成することが可能である。この継続的な重合によって、これまで量が不足しているため高価であったポリマーを多量に製造すること、つまり実用的に作り出すことが可能となり、実質的な製造コストの低減と工業利用のため多量に製造することが可能となる。したがって、これら本発明により、高い特有粘度を有し優れた力学特性と熱安定性を有するポリエーテルケトン(PEK)の改良された工業的な製造方法が実現する。
以下、本発明の製造方法の詳細を説明する。
(化合物の構造式)
4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンは、単にCHBPと表示されることがある。4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(CHBP)の構造式を(化I)に示す。
Figure 0005667744
本発明では、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(CHBP)のフェノラート金属を調合する製造方法を提供する。CHBPのフェノラート金属の構造式を(化II)に示す。
Figure 0005667744
本発明では、高重合度で優れた耐熱性と力学的性質を有する芳香族ポリエーテルケトン(PEK)の製造方法を提供する。芳香族ポリエーテルケトン(PEK)の構造式を(化III)に示す。
Figure 0005667744
(モノマーの精製工程)
アルカリ金属化合物(化II)の重合が不活発であることが上述の刊行物に記載されているが、本発明者らの研究によって、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(化II)のアルカリ金属化合物の遅い重合の原因が、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(化I)中の不純物の析出にあることが判明した。すなわち、多量の結晶性物質を用いない限りにおいては、従来の結晶性物質を用いた溶媒では、早い重合の反応を得ることは難しい。このため、従来は経済的ではない製法となっていた。そして、この課題を解決する方法として、モノマーの直接的な蒸留か、又はジフェニルスルホンのような相溶性溶媒を用いた共蒸留による、より手際のよいモノマーの精製方法が見出されたのである。そして本発明者らは、モノマーの純度を高くするための試作を行い、さらに高い重合濃度の精製されたモノマーを得たのである。
本発明者らの研究の結果、真空下での蒸留によってモノマー精製の良策が示されているが、それは、これまで報告されていないものである。従来の4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノン(CHBP)の製造においては、高分子量の不純物やアルミニウム塩等を有し、モノマーから分離することが困難である。いくつかの関連する化合物とそれらの混合物の物理的特性を第1表に示す。
第1表
Figure 0005667744
第1表によれば、熱に対する不安定性、高融点と高沸点がCHBPの蒸留工程での問題点であるかのようである。
しかしながら、本発明者らは、短時間接触蒸留法と特別な擦り取りをする表面凝縮機を用いることで、その蒸留工程を成功に導いた。熟練した操作方法で蒸留することによって精製されたCHBPの沸点と融点との温度差は僅差である。従来の結晶化の方法を経たモノマーの構成と比較すると、本実施例で蒸留された物質は重合工程で調和のとれた優れた挙動を示し、より良いポリマー特性が得られた。
熟練した操作方法で蒸留するという困難性を克服するため、CHBPとそれと近い沸点化合物を共蒸留する試みがなされた。減圧蒸留が試されて、CHBPよりも低沸点でありその低沸点で熱安定性がある有効な相溶性溶媒が見出された。CHBPとそれと近い沸点化合物との共蒸留は、好ましくは圧力を5mmHgよりも減圧して行い、さらに好ましくは圧力を3から1mmHgで行い、工業的には圧力を約2.5mmHgで行う。ジフェニルスルホン(DPSO2)が重合のための溶媒として好適である理由は、DPSO2がCHBPとの共蒸留のための十分好ましい化合物であることが実験によって、判明しているからである。さらに、ジフェニルスルホン(DPSO2)は非常に熱安定性があるため、モノマー重合のためには非常に好ましい溶媒である。
共蒸留の溶媒としては、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの沸点に近い沸点であり、かつ、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの融点よりも低い融点で非常に熱安定性がある化合物が選択される。共蒸留のために選択される溶媒としては、溶媒からモノマーを分離するためにだけ用いられるものではなく、直接的に重合反応に供するものであることが好ましい。これは、共蒸留の溶媒が後工程の重合のための溶媒と互換性があることで、所望の特性を有するポリマーを製造することを意味する。4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのモノマーの蒸留に有効な量、かつ、後工程の重合に有効な量の、溶媒が添加される。溶媒の量は、蒸留や後工程の重合において、製法の経済性に悪影響を与えないような量とすべきである。これらすべての制約にかなう好ましい溶媒としては、僅かな数の溶媒だけが合致する。商業上入手できて使用できる溶媒としては、ジフェニレンスルホン(DPSO2)、ベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノンが挙げられる。しかしながら、ベンゾフェノンとジクロロベンゾフェノンは、共蒸留の工程や重合のための工程において、ジフェニレンスルホン(DPSO2)ほどには良好なものではなかった。
CHBPと DPSO2を重量比で1:2.6の割合で混合した混合物は、その融点が115℃に下がり、重合に最適な化合物となる。この結果は、CHBP単独での蒸留の高融点という技術課題の解決となる。本発明者らの実験では、CHBPとDPSO2の混合物の蒸留温度がそれぞれの成分毎の温度よりも低い温度であることを示しており(上記第1表を参照)、蒸留工程がスムーズに行われることを示している。これは、CHBPとDPSO2の共沸混合物の構成に起因するものであると考えられる。CHBPとDPSO2との重量比は、1:2から1:5の割合である。
そして本発明者らは、モノマーの純度を高くするための試作を行い、さらに高い重合濃度の精製されたモノマーを得たのである。本発明者らの研究の結果、温度が300から320℃の範囲にて効果的な重合ができ、重合反応時間が1から3時間で完全な重合ができ、重合反応塊の特有粘度が0.9 dl/gより大きく、早期に重合反応塊の特有粘度が1.0 dl/gより大きいものが得られるという全ての要求仕様を満たすポリエーテルケトンの製造方法が見出された。
そして本発明者らは、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの重合反応速度が、ポリマーである4−クロロ−4’−ヒドロキシ−ベンゾフェノンのアルカリ金属化合物の調合に強く依存することを見出し、ポリマーの諸特性が上記アルカリ金属化合物の調合に強く依存することを見出した。
(フェノラートの製造工程)
フェノラートの構造式を(化II)に示す。
Figure 0005667744
フェノラート(化II)の符号Mは、CHBP(化I)と同じアルカリ金属原子か、又はCHBP(化I)と異なるアルカリ金属原子からなる2種の塩基の組み合わせによる反応よって準備されるものであり、化学量論的な余剰として反応する。前記少なくとも1つのアルカリ金属塩基を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムからなる群から選択する。
さらに限定的には前記少なくとも1つのアルカリ金属塩基を、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムからなる群から選択する。これらの塩基は、フェノール基よりも大きな塩基として、化学量論的な平衡のため使用される。そしてこれらの塩基は、CHBP(化I)と化学量論的な平衡になるように前段階の反応が行われ、及び/又は、CHBP(化I)との化学量論的な不足分を調整するときに、余剰の塩基として供される。
上述の刊行物(上記特許文献4、3、2)では、カリウム水酸化物が重合にとって好ましい塩基であるとの記述があるが、本発明者らの研究結果は上述の刊行物(上記特許文献4、3、2)の記述に反している。本発明者らの研究結果では、水酸化ナトリウム単体、炭酸ナトリウム単体、又は、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの2種混合が重合にとって好ましい塩基である。つまり水酸化ナトリウムがCHBP(化I)と化学量論的な平衡を図る反応をさせるときに、炭酸ナトリウムが余剰の塩基として供することができるという結果を一貫して得ている。したがって、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムの2種混合の使用が最も好ましい。
本発明者らの研究の結果、温度が300から320℃の範囲にて効果的な重合ができ、重合反応時間が1から3時間で完全な重合ができ、重合反応塊の特有粘度が0.9 dl/gより大きく、早期に重合反応塊の特有粘度が1.0 dl/gより大きいものが得られるという全ての要求仕様を満たすポリエーテルケトンの製造方法が見出されたのである。本発明によれば、アルカリ金属化合物によって、優れた耐熱性、流動性、及び力学的特性等を有するポリマーPEKが製造できる。
アルカリ金属化合物は、水溶液のようなメタノール溶液のような形態となることが容易である。しかしながらポリマーの重合後は、重合前の結晶化水溶液としての様々な水溶液をも含むため、化合物から取り除かれるべき水分やアルコールのようなOH基を含む化合物の影響を受ける。したがって、フェノラート(化II)から水分を完全に取り除くことが、高温での反応上昇速度を高め、フェノラートと高分子量形成の妨げとなる物質との化学量論的な反応による塩素の加水分解を防止するために重要である。水分のほとんどはアルカリ金属化合物から蒸留され取り除かれる。最終トレースを分離するには、重合段階の期間中ずっと、真空とすることがしばしば必要となる。
CHBPのアルカリ金属化合物は、適切な溶媒にアルカリ金属水酸化物を入れた溶液に、CHBPを入れて溶解させることよって容易に作製できる。適切な溶媒としては、水、メタノール、又はメタノールと水とを重量比で90:10にて混合した混合液が挙げられる。CHBPの量とアルカリ金属水酸化物の量は、1モルのCHBPに対して、最大1モルの水酸化物、より好ましくは最大0.99モルの水酸化物となるように注意深く調合される。余剰の塩基としては、炭酸塩又は重炭酸塩が添加される。余剰の塩基は、好ましくはCHBPのアルカリ金属化合物に対するモル比で1から7%の範囲とし、さらに好ましくはモル比で1から5%の範囲とし、とりわけ好ましくはモル比で2から3%の範囲とする。CHBPのアルカリ金属化合物は、アルカリ金属水酸化物と炭酸塩とCHBPとを溶媒に入れた混合物を、CHBPが溶解されるまで攪拌し、その後、蒸留等によって溶媒を蒸発させて製造する。
溶媒を分離してCHBPのアルカリ金属化合物を得る他の方法としては、スプレードライ、薄膜ドライヤー等の方法が挙げられる。得られたCHBPのアルカリ金属化合物(化II)は、水和構成となると推察する。水和化合物は、真空下でのアルカリ金属化合物の加熱により脱水可能であり、又、CHBPのアルカリ金属化合物とジフェニルスルホンとのスラリーを加熱することにより脱水可能であり、温度が150℃を超える温度、好ましくは200℃を超える温度であり、好ましくは弱い真空下、すなわち25から400トルの真空下で脱水可能である。脱水によって、すべての水分が取り除かれた後、CHBPのアルカリ金属化合物は、その温度を重合温度に上昇させることができる。
CHBPのアルカリ金属化合物の水溶液から水分を分離する他の方法としては、水と共沸混合の構成を採り得る有機溶媒との共沸蒸留がある。水と共沸混合の構成を採り得る有機溶媒によって、後工程の重合に影響を及ぼさないように水分を取り去ることができる。本発明者らの研究によれば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンやトリクロロベンゼンといった非活性化高分子の芳香族溶媒塩素が最適溶媒であり、水分を取り去ることができるが後工程の重合に影響を及ぼすトルエン、キシレン、トリメチルベンゼンその他芳香族アルカリに代表される活性芳香族溶媒よりも効果的な溶媒であることが判明した。
(ポリエーテルケトンとなる重合工程)
重合反応は、以下に詳細を説明するが、適切な溶媒と高められた温度とによって達成されたものである。ジフェニルスルホンは、熱安定性があるだけでなく、高められた温度でのポリマーであるPEKの溶解度も良好であり、好ましい溶媒である。好ましくは1モルのCHBPのアルカリ金属化合物に対して質量が400gから2000gの範囲でジフェニルスルホンが添加され、より好ましくは1モルのCHBPのアルカリ金属化合物に対して質量が500gから1000gの範囲でジフェニルスルホンが添加される。
重合反応は、温度が250から350℃に高められた温度、より好ましくは280から330℃に高められた温度にて達成する。反応温度を高めれば、反応時間が短縮されるが製造物の分解のリスクや副次反応物生成のリスクを伴う。一方で、反応温度を低下させれば、反応時間が長くなるが製造物の分解のリスクが少なくなる。したがって、できるだけ低い反応温度を保つことが望まれる。他方、溶液中の重合物質の温度の取り扱いが重要となり、ジフェニルスルホン中で溶解されたPEKでは、温度が300℃を超える温度を保つことが要求される。ジフェニルスルホン中のPEKの溶解度は、温度と共に上昇する。したがって好ましくは温度が300から330℃の範囲で重合反応を達成し、より好ましくは温度が305から320℃で重合反応を達成する。
重合反応は、水分やアルコールのようなOH基を含む化合物が本質的にない状態での重合の達成が非常に望ましい。これは、高温での反応上昇速度及び塩素やフェノラート基や高分子量形成の妨げとなる物質と重合反応塊との化学量論的な反応による塩素の加水分解を防止する。準備段階で、CHBPのアルカリ金属化合物から大半の水分が蒸発されるが、一般に、最終トレースの分離には、重合段階の期間中ずっと、真空とすることが必要となる。水和化合物は、真空下でのCHBPのアルカリ金属化合物の加熱により脱水可能であり、又、CHBPのアルカリ金属化合物とジフェニルスルホンとのスラリーを加熱することにより脱水可能であり、それは、温度が150℃を超える温度、好ましくは200℃を超える温度であって、好ましくは弱い真空下、すなわち圧力が25から40トルの減圧下で脱水可能である。すべての水分が取り除かれた脱水後のCHBPのアルカリ金属化合物は、その温度を重合温度に上昇させることができる。
本発明者らの研究の結果、CHBPのアルカリ金属化合物を用いた重合速度は、ジフルオロベンゾフェノンとジヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物から得られた重合速度よりも十分速いことが判明した。この結果は、アリールフッ化物の反応速度が、芳香族の求核置換におけるアリール塩化物の反応速度よりも非常に速いことからは総じて予期しないものであった。CHBPのアルカリ金属化合物を用いた重合反応物とクロロフェノキシドとの高い反応速度の理由は、温度が300℃を超える温度でのジフェニルスルホン中のクロロフェノキシドの完全な溶解度によるものである。反応速度は、反応度だけでなく反応種の選択に依存する。ビスフェノキシド(非特許文献1)の希薄な溶解度(0.1%)と比較すると、CHBPのアルカリ金属化合物を用いた重合反応物とジフルオロベンゾフェノンとの反応は、ジフルオロベンゾフェノンとビスフェノキシドとを比較する場合のようにCHPBのアルカリ金属化合物を用いた重合反応物とクロロフェノキシドとのすべての上昇速度に導く反応度の低下を補うことよりもクロロフェノキシドの溶解度が完全であるためである。
フルオロフェノキシドは、ジフェニルスルホン中で完全に溶けるが、この方法によって作製されるポリマー中の分岐は、芳香族フッ素のオルト陽子を分離し、カルボアニオン生成によって得られたものである。クロロフェノキシドの場合は塩素の電気陰性度が非常に低いため、同じことは起こらない。
CHBPのアルカリ金属化合物を用いた重合は、不活性雰囲気中、すなわち、アルゴン又は窒素中にて達成されることが好ましい。
本発明は、前記重合を、反応容器によるバッチ処理、又は少なくとも反応容器を連結させた連続的処理により行う。いずれか一方の反応容器は、ナトリウム塩化物のようなアルカリ金属ハロゲン化合物中の反応温度にて、腐食の傾向がないステンレスからなるか、又は、チタニウムで作製されるか裏打ちされたもの、ニッケルかニッケル合金、ハステロイC(登録商標)、ハステロイB(登録商標)、モネル(登録商標)又はインコネル(登録商標)からなることが好ましい。SS,SS304,SS316,SS316Lなどの標準ステンレスは、アルカリ金属ハロゲン化合物による激しい腐食を受けるため好ましくない。実際、SS304やSS316容器中の重合反応物質は、金属触媒による副次反応物によって架橋結合とゲル化を導く。異なる材料構成(“MOC”)での腐食速度を第2表に示す。
第2表
Figure 0005667744
第2表によれば、反応容器として好ましい材料構成は、番号5のハステロイC(登録商標)である。
最終重合反応にて反応性フェノキシドエンドグループを中和するために、少なくとも1つのメチル塩化物のような反応性単機能ハロゲン化合物か、又は4−フルオロベンゾフェノンのような反応性芳香族ハロゲン化合物がエンドキャッピング反応物質へと導かれる。
本発明者らの研究の結果、重合反応塊の水素イオン指数をアルカリ性であるpH9から11の範囲に保つことがより好ましいことが判明した。重合反応塊の水素イオン指数がアルカリ性であるpH9から11の範囲に保たれると、重合がスムーズとなり、その後のエンドキャッピングも有用なものとなる。しかしながら、重合反応塊のpHが9を下回ると、重合が不活発となって、ポリマーのエンドキャッピングが有用なものとはならず、ポリマー結果物の耐熱性が乏しいものとなる。重合反応塊のpHを9から11の間に保つために、少なくとも1つの適切な緩衝剤が添加される。前記緩衝剤は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウム、アルカリ金属アルミノ珪酸塩、ゼオライト、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムからなる群から選択する。これら緩衝剤の混合物も使用できる。前記緩衝剤としては、アルカリ金属アルミノ珪酸塩、カリウムリン酸塩、ナトリウムリン酸塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムの単体又は組み合わせが好ましい。
前記緩衝剤の総量は、重合反応塊に対する重量%比で0.5から5モルに調節し、さらに好ましくは、重量%比で1から3モルに調節する。
以下に説明する本発明の方法によって、4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンの継続的な重合を遂行することが可能である。既に実践使用されている2つのモノマーであるPEEKやPEKを作製するための求核置換反応法としては、PEKではジフルオロベンゾフェノンとジヒドロキシ−ベンゾフェノンとの間のAA型とBB型との重合反応と呼ばれるものがあり、PEEKではジフルオロベンゾフェノンとヒドロキノンとの間のAA型とBB型との重合反応と呼ばれるものがある。それら既存の反応物質は、2つのモノマーの組み合わせであり、2つのモノマーの化学量論的な反応に高分子量が依存することがよく知られている。しかし実際のところ、2つのモノマーの正確な化学量を保ち続けることは不可能である。そこで、ジハロベンゼノイド化合物が少し余剰に添加される。ジヒドロベンゾノイド化合物をジハロベンゼノイド化合物の代用で少し余剰に添加した結果物は、結果物としてのポリマーの熱安定性が乏しいものとなる。AA型とBB型との重合反応の組み合わせにて、1つの反応物質が両方の重合反応物質の反応速度に影響する他の影響物質よりも余剰が多いと、重合度が成就する。この制約のために、AA型とBB型との重合反応による継続的な重合の実践は非常に困難となっている。
しかしながら、モノマーのAB型と呼ばれる4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを用いた重合方法では、1つのハロゲンと半分のフェノールとの化学量論的な反応が正確に等価である。したがって、理論上も実際上も、安定した反応を保つだけでなく、非常に大きな高分子量を形成することが可能である。そして、重合システムの設計や重合システムを継続的に運用することが実際上、実行可能である。

本発明の詳細な実施例とその特性について、以下に説明する。ここで、本発明が以下の実施例に限定されるものではないことは、言うまでもない。
実施例1)
質量が100gの精製していないCHBPを使用し、不揮発性物質から分離してさらに真空蒸留して精製するために、フラスコを加熱するヒートオイルのサーミノール(登録商標)、外部の電気式加熱蒸気ライン、固形物掻き取り凝結器(擦り取りをする表面凝縮機)、固形物受容器によって装置が構成される。交互に配された蒸気ラインが、冷却された受容ポットに直接導かれ、製造物が溶けて分離されトレイに注型される。精製していない製造物は、少なくとも温度が200℃で、フラスコの中の真空度が1から2mmHgに減圧されたフラスコの中で溶けた。蒸気温度が210から225℃の範囲で、蒸留がなされた。蒸留は、約1時間かかった。蒸留物の質量が86gであり、すなわち、86%が回収され、その純度は、気−液クロマトグラフィーにて99.5%であった。それは、高純度の白色物質であった。この製造物は、直接、重合に使用された。
実施例2)
実施例1と同じ方法で得られた質量100gの精製されたCHBPが、容積1000mlの蒸留フラスコの中で、質量260gの純粋なジフェニルスルホンと混合された。混合物質は、蒸気温度が192から205℃で、圧力が2mmHgにて、溶かされて蒸留された。製造物は、CHBP自体よりも低い融点であり、CHBP自体よりも低い沸点であった。蒸留された製造物は、気−液クロマトグラフィーにて分析された。分析結果、質量96gのCHBPがDPSO溶媒と一緒に蒸留されていた。蒸留残留物の質量が、蒸留の過程で質量3.5gまで低下した。蒸留された製造物と一緒に共蒸留されたDSPOは、重合に使用された。
実施例3)
実施例2と同じ方法で得られた質量116.3gの蒸留された製造物が、ハステロイC(登録商標)で作製された重合反応容器の中で質量300gのジフェニルスルホンと混合された。反応容器は、3インチの円筒容器にオイルヒーティングジャケットを取り付けた構成である。攪拌器はゲート型である。攪拌モータは、重合反応が形成される間のトルクを計測するためのセンサが取り付けられたものであり、混合反応物質の粘度レベルが示されるものである。熱電対は、反応容器の中の混合反応物質の現在の温度を計測するものである。そして、反応容器の窒素ガスパージング供給手段も作製された。
混合反応物である物質量が0.2625モルのK2CO3 (質量が36.30gのK2CO3)は、温度が135℃に加熱された200メッシュのふるいを通過する。混合物質は、温度が200℃に加熱され、窒素雰囲気中にて1時間保持され、脱水が促進される。そして温度が250℃まで上昇してから、その温度で1時間保持される。そして1.5時間以上かけて温度が300℃まで上昇してから2時間保持される。そして1時間以上かけてさらに温度が330℃まで上昇してから、その温度で3時間保持され、混合反応物に要求される粘度が達成された。反応物質が分析され、pHが6.7であった。ポリマーは、混合反応物に対して1モル%の4−フルオロベンゾフェノンを添加することでエンドキャッピングされ、0.5時間保持された。
そして、混合反応物が温度300℃に冷却され、容量2リットルのクロロベンゼン溶媒が温度130℃にて攪拌されている別の容器に移し替えられた。混合物質塊はクロロベンゼンで還流され温度130℃にて濾過された。すべてのDPSO2溶媒が濾過されるまで、上記の濾過工程が4、5回繰り返された。濾過された混合物質塊は、鉱物塩を取り除くために水で還流され、質量が93gの固形物、つまり収率が95%のPEKポリマーを得るため乾燥された。純度98%の硫酸(H2SO2)中に入れた含有量0.25%の固形物は、その特有粘度が0.92dl/gであった。しかしながら、実施例3で得られたポリマーを温度400℃にて押し出したストランド状態は、黒っぽい色で、熱安定性に乏しく、強度も低かった。
実施例4)
実施例4は、実施例3から得られたPEKポリマーを分析した後、DPSOに混ぜて、例外的にそれらの蒸留混合を繰り返した実験であった。実施例4では、バッチサイズは、物質量が0.5モル(質量が116.3g)にCHBPが調製され、実施例3と同様のステップが継続された。
得られた製造物の質量は94g、すなわち収率が96%である。純度98%の硫酸(H2SO2)中に入れた含有率0.20%の固形物は、その特有粘度が0.93dl/gであった。
実施例5)
質量119gの水が、質量244.2g(物質量1.05モル)のCHBPに加えられ、塊を攪拌している期間中ずっと、反応の最終形態となるまでCHBPが化学量論的な余剰を保つように、アボガドロ数が5NのNaOHが容量200ml(物質量1.0モル)で合計10回、5時間以上に亘って入れられた。そして乾燥固形物の総量が8.9gとなるように、その反応生成物が濾過された。濾過された反応生成物を分析したところ、Na−CHBP(物質量0.975モル)と、CHBP(物質量0.042モル)が示された。そこで、上記濾過された反応生成物に、物質量0.0328モルのNaOHを追加して、得られた液状結果物を再度分析したところ、それは遊離アルカリや遊離CHBPがないものであり、Na−CHBPの物質量が0.966モルであった。
上記の液状結果物が容積2リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に移された。この結果物に、緩衝剤として物質量1モル%のNaCOと物質量1モル%のNaPOが加えられた。最初、上記結果物から水が大気圧にて蒸留されて取り除かれ、その後、モノクロロベンゼン(MCB)を添加して共沸とし、最終の水分を取り除くためにディーン・スターク装置が使用された。すべての水分が取り除かれた後、モノクロロベンゼン(MCB)が窒素雰囲気下にて蒸留されて取り除かれ、その間中ずっと、モル質量800g/モルのDPSO2が入れられて温度が200℃まで上昇した。そして、反応塊が温度250℃で0.5時間加熱され、45分かけて圧力が100 mmHgに減じられ、1時間経過した後、窒素雰囲気下で真空が解除された。そして、反応塊が2時間以上かけて温度302℃まで加熱され、温度300℃で2時間保たれて、温度が315℃に上昇して3.0時間保たれた。これは、重合反応塊の特有粘度を0.94dl/gとするためである。反応塊は、メチル塩化物を添加することでエンドキャッピングされた。そのポリマーの特性を第3表に示す。
第3表
Figure 0005667744
第3表に示すポリマーを温度400℃で押し出したストランド状態は、明るい色で、優れた熱安定性を持ち、強度も高かった。
実施例6)
容量500mlのメタノールにアボガドロ数が0.94Nの水酸化ナトリウム(NaOH)を入れた含有量が0.98m/mのメタノール−水酸化ナトリウム溶液と、物質量1モルのCHBPとが、窒素雰囲気下で加えられた。その後、等量0.04eq.の炭酸ナトリウム(NaCO)固形物と物質量0.01モルのKPO(緩衝剤)が加えられ、その反応混合物が室温で30分間攪拌された。そして単離Na−CHBPとするために、窒素雰囲気下でメタノールが蒸留され取り除かれた。
窒素雰囲気下で流速5リットル/時間の流れで、物質量0.48モルのNa−CHBPとモル質量1000g/モルのDPSO2が、容積1リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に入れられ、温度が250℃に達してから3時間以上加熱し、そして、その温度が2時間保たれた。温度が250℃に達してから1時間保持するために圧力が100 mmHgに減じられた。窒素雰囲気下で真空が解除され、反応塊は1.5時間かけて温度320℃に加熱された。所望の粘度に達した後、反応塊がメチル塩化物との反応によってエンドキャッピングされた。そのポリマーの特性を第4表に示す。
第4表
Figure 0005667744
第4表に示すポリマーを温度400℃で押し出したストランド状態は、明るい色で、優れた熱安定性を持ち、強度も高かった。
実施例7)
容量500mlのメタノールにアボガドロ数が1.0036Nの水酸化カリウム(KOH)を入れた含有量が0.95m/mのメタノール−水酸化カリウム溶液と、物質量1モルのCHBPとが、窒素雰囲気下で加えられた。その後、等量0.07eq.の炭酸カリウム(KCO)固形物と質量2.4gのゼオライトMS4A(緩衝剤の商品名)が加えられ、その反応混合物が室温で30分間攪拌された。そして、単離K−CHBPとするため、窒素雰囲気下でメタノールが蒸留され取り除かれた。
窒素雰囲気下で流速5リットル/時間の流れで、物質量0.35モルのK−CHBPとモル質量1000g/モルのDPSO2が、容積1リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に入れられ、温度が250℃に達してから3時間以上加熱し、そして、その温度が2時間保たれた。温度が250℃に達してから1時間保持するために圧力が100mmHgに減じられた。窒素雰囲気下で真空が解除され、反応塊は1時間かけて温度305℃に加熱された。所望の粘度に達した後、反応塊は、メチル塩化物との反応によってエンドキャッピングされた。そのポリマーの特性を第5表に示す。
第5表
Figure 0005667744
しかしながら、第5表に示すポリマーを温度400℃にて押し出したストランド状態は、黒っぽい色で、熱安定性に乏しく、強度も良くなかった。
実施例8)
質量540g(2.3217モル)のCHBPが容量500mlのメタノールに入れてスラリーとされた。このスラリーが、容量1500mlのメタノールにアボガドロ数が1.4704Nの水酸化ナトリウム(NaOH)を入れた含有量が0.95m/mのメタノール−水酸化ナトリウム溶液に加えられ、室温で30分以上攪拌された。そしてこのスラリーが容量200mlのメタノールで洗浄され、室温で15分間攪拌された。そして、モル等量が0.0.9eq./モルに対応する質量9.5gの炭酸ナトリウム(NaCO)が、3モル%に対応する緩衝剤である質量4.9gのリン酸ナトリウム(NaPO)と一緒に加えられた。そして、単離Na−CHBPとするため、窒素雰囲気下でメタノールが蒸留され取り除かれた。質量1000gのDPSO2が、2モルに対応する質量50.9.2gのNa−CHBPと共に、容積5リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に充填された。質量1000gのDPSOが加えられて、反応物質が1.75時間で温度150℃に加熱され、さらに1.25時間で温度250℃まで加熱され、温度250℃で2時間保持された。その後1時間保持するために圧力が100mmHgに減じられた。窒素を伴った真空が解除され、反応塊は1時間で温度305℃に加熱され、2.25時間で温度が315から320℃に加熱され、温度が315から320℃に保持された。所望の粘度に達した後、反応塊がメチル塩化物との反応によってエンドキャッピングされた。そのポリマーの特性を第6表に示す。
第6表
Figure 0005667744
第6表に示すポリマーを温度400℃で押し出したストランド状態は、明るい色で、優れた熱安定性を持ち、強度も高かった。
実施例9)
質量1000gのDPSOと、質量465gの蒸留されたCHBPと、緩衝剤として質量106gの炭酸ナトリウム(NaCO)と、緩衝剤として質量2.76gの炭酸カリウム(KCO)が、窒素雰囲気下で、容積5リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に充填された。すべての塊は、できるだけ攪拌され、ゆっくりと温度100℃に加熱された。その後、4時間以上かけて温度150℃に昇温された。その後、2時間以上かけて温度が250℃に昇温され、2時間保持された。その後1時間保持するために圧力が100mmHgに減じられた。窒素を伴った真空が解除され、反応塊が1時間で温度305℃に加熱され、2時間で温度300℃に加熱され、2時間以上かけて温度が320℃に昇温された。そのポリマーの特性を第7表に示す。
第7表
Figure 0005667744
第7表に示すポリマーを温度400℃で押し出したストランド状態は、明るい色で、優れた熱安定性を持ち、強度も高かった。
実施例10)
溶けたDPSO(400g)とNaCO(108.12g)とNaPO(3.28g)が、窒素雰囲気下で、容積5リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に充填され、DPSO(700g)と、温度160℃で1時間以上攪拌された5リットルのSS316供給反応容器から取り出され蒸留されたCHBP(465.2g)の混合物がゆっくりと加えられた。質量100gのDPSOが、供給反応容器内で洗浄された。
反応塊は温度160℃で2時間保持され、1時間で温度200℃に加熱され、温度が200℃で1時間保持され、さらに1.5時間で温度250℃に加熱された。その後1時間保持するために圧力が100mmHgに減じられた。窒素を伴った真空が解除され、反応塊は2時間で温度315℃に加熱された。そのポリマーの特性を第8表に示す。
第8表
Figure 0005667744
第8表に示すポリマーを温度400℃で押し出したストランド状態は、明るい色で、優れた熱安定性を持ち、強度も高かった。
実施例11)
容量500mlのメタノールにアボガドロ数が0.94Nの水酸化ナトリウム(NaOH)を入れた含有量が0.98m/mのメタノール−水酸化ナトリウム溶液と、物質量1モルのCHBPとが、窒素雰囲気下で加えられた。その後、等量0.04eq.の炭酸ナトリウム(NaCO)固形物が加えられ、その反応塊が室温で30分間攪拌された。
そして、単離Na−CHBPとするために、窒素雰囲気下でメタノールが蒸留され取り除かれた。
質量210gのDPSO2が、容積1リットルのハステロイC(登録商標)反応容器に充填され、反応容器中の酸素(O2)含有量が、窒素パージによって0%に減じた。反応塊が、攪拌しながら温度150℃に加熱され、1時間で温度315℃に加熱された。質量0.483gの炭酸カリウム(K2CO3)と質量89.1g(0.35モル)の乾燥Na−CHBPの混合物が同時に加えられ、反応塊が1時間保持された。その後、試料が取り出されて、特有粘度が分析された。そのポリマーの特性を第9表に示す。
第9表
Figure 0005667744
第9表に示すポリマーを温度400℃で押し出したストランド状態は、明るい色で、優れた熱安定性を持ち、強度も高かった。
(継続的な重合システム)
継続的な重合システムについて、以下に説明する。
本発明の継続的な重合システムは、容積5リットルで連続攪拌するための管状のハステロイC(登録商標)反応容器を2つ連結し、続いて200メッシュのニッケルフィルタからなる濾過機、続いて押し出し機、からなる。
実施例12)
窒素雰囲気下で温度が310℃に保たれ、圧力が5kg/cmで攪拌される1番目のハステロイC(登録商標)反応容器に、単位時間当たりの輸送質量891g/時間で乾燥Na−CHBPが固体加熱スクリューミキサーを通って供給され、同時に単位時間当たりの輸送質量9g/時間でゼオライトMS4A(緩衝剤の商品名)が固体加熱スクリューミキサーを通って供給され、同時に単位時間当たりの輸送質量2100g/時間で温度330℃に固体加熱したDPSOが供給された。
1番目の反応容器内での重合の後、温度315℃で単位時間当たりの輸送質量3000g/時間で、重合反応塊が、圧力4kg/cm2の塩化メチルガスを保持する2番目の反応容器に供給された。それと同時に、単位時間当たりの輸送質量1400g/時間で温度315℃に加熱され溶けたDPSOが2番目の反応容器に供給された。
2番目の反応容器から、単位時間当たりの輸送質量4400g/時間で、エンドキャッピングした反応塊が塩化ナトリウム(NaCl)を取り除くために濾過機を通過した。そして、濾過した反応塊は、温度が400℃にてジフェニルスルホン溶媒が真空下で蒸留され取り除かれるように特別に設計された押し出し機を通過して、ポリマーPEKのペレットが単位時間当たりの輸送質量680g/時間で、押し出し機から押し出された。この押し出し機から得られたPEKは、高い高分子量であり、優れた熱安定性を持つだけでなく、非常に強い機械特性を有していた。

Claims (4)

  1. 4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンとジフェニルスルホンとを含む液体を減圧下で蒸留することで4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンを精製するステップ(a)と、次に、精製した4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンと化学量論的に余剰な少なくとも1種のアルカリ金属塩基との反応によって4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物を製造するステップ(b)と、次に、製造した前記4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物を、真空処理、スプレ−ドライ又は芳香族塩素系溶媒を用いた共沸蒸留によって脱水するステップ(c)と、次に、脱水した前記4−クロロ−4’−ヒドロキシベンゾフェノンのアルカリ金属化合物からポリエーテルケトンを重合するステップ(d)、を有し、前記少なくとも1種のアルカリ金属塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムであることを特徴とするポリエーテルケトンの製造方法。
  2. 前記重合を、重合反応塊の特有粘度が0.9dl/gより大きくなるまで継続して行うことを特徴とする請求項記載のポリエーテルケトンの製造方法。
  3. 前記重合を、温度が305から320℃の条件にて遂行することを特徴とする請求項または記載のポリエーテルケトンの製造方法。
  4. 前記重合を、少なくとも1つの反応容器によるバッチ処理、又は少なくとも2つの反応容器を連結した連続的処理により行うことを特徴とする請求項記載のポリエーテルケトンの製造方法。
JP2008286967A 2008-03-24 2008-11-07 モノマーでありフェノラートであるポリエーテルケトンの製造方法 Active JP5667744B2 (ja)

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