以下に、本発明実施の形態を説明する。
本発明における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとは、パラフェニレンケトン、およびパラフェニレンエーテルを繰り返し構造単位に持つ、下記一般式(I)で表される環式化合物である。
式(I)における繰り返し数mの範囲は2〜40であり、2〜20がより好ましく、2〜15がさらに好ましく、2〜10が特に好ましい範囲として例示できる。繰り返し数mが大きくなると環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの融点が高くなる傾向にあるため、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを低温で溶融解させるとの観点から、繰り返し数mを前記範囲にすることが好ましい。
また、式(I)で表される環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは異なる繰り返し数mからなる混合物であることが好ましく、少なくとも異なる3つ以上の繰り返し数mからなる環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物であることがさらに好ましく、4つ以上の繰り返し数mからなる混合物であることがより好ましく、5つ以上の繰り返し数mからなる混合物であることが特に好ましい。さらに、これら繰り返し数mが連続するものであることが特に好ましい。単一の繰り返し数mを有する単独化合物と比較して異なる繰り返し数mからなる混合物の融点は低くなる傾向にあり、さらに2種類の異なる繰り返し数mからなる環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物と比較して、3種類以上の繰り返し数mからなる混合物の融点はさらに低くなる傾向にあり、さらに不連続の繰り返し数mからなる混合物よりも連続する繰り返し数mからなる混合物の方がさらに融点が低くなる傾向にある。なおここで、各繰り返し数mを有する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは高速液体クロマトグラフィーによる成分分割により分析が可能であり、さらに環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの組成、すなわち環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに含まれる各繰り返し数mを有する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率は、高速液体クロマトグラフフィーにおける各環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンのピーク面積比率より算出することが可能である。なお、本発明において純度が高いとは、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン重量分率が高いことを意味し、純度が低いとは、環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン重量分率が低いことを意味する。また、混合物(ア)中の環状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成量を高速液体クロマトグラフィーの面積比率より算出し、仕込みヒドロキノン量に対する割合から収率を求めることができる。
さらに、本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は融点が270℃以下であり、対応する線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと比較して大幅に融点が低いという特徴を有する。その融点としては250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく例示できる。環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点が低いほど加工温度を下げることが可能であり、さらには環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンをポリフェニレンエーテルエーテルケトンプレポリマーとして用いて高重合度体を得る際のプロセス温度を低く設定可能となるため加工に要するエネルギーを低減し得るとの観点で有利となる。なおここで、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点は示差走査型熱量測定装置を用いて吸熱ピーク温度を観測することにより測定することが可能である。
また、本発明における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含む環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物であり、65重量%以上含む組成物であることがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましく、75重量%以上含む組成物であることがよりいっそう好ましい。環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における不純物成分、即ち環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分としては線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを主に挙げることができる。この線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは融点が高いため、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が高くなると環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点が高くなる傾向にある。従って、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が上記範囲にあることで、融点の低い環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物となる傾向にあり、さらに環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物をポリフェニレンエーテルエーテルケトンプレポリマーとして用いた際に、十分に高重合度化が進行したポリフェニレンエーテルエーテルケトンが得られるという観点からも環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの重量分率が上記範囲にあることが好ましい。
次に、本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を得るための製造方法で用いる原料について説明する。
本発明で用いられるジハロゲン化芳香族ケトン化合物は一般式(II)で表される芳香族ケトン化合物である。
ここで、一般式(II)におけるXとはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンなどから選ばれるハロゲノ基であり、さらに一般式(II)に含まれる2つのハロゲノ基は同一であっても異なるハロゲノ基であっても問題ない。これらジハロゲン化芳香族ケトン化合物の具体例としては、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノン、4,4’−ジヨウ化ベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−クロロベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−フルオロ−4’−ヨウ化ベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ヨウ化ベンゾフェノン、4−ブロモ−4’−ヨウ化ベンゾフェノンなどが挙げられる。これらの中でも反応性の観点から4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、また経済性の観点から4,4’−ジクロロベンゾフェノンが好ましい具体例として挙げることができ、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンが特に好ましい具体例として挙げることができる。
本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造において、これらジハロゲン化芳香族ケトン化合物におけるハロゲノ基は脱離基として作用する。従って、これらハロゲンと同等の脱離基能を有する置換基を持つ芳香族ケトン化合物を用いることも可能であり、このような脱離基能を有する置換基としてはニトロ基が挙げられ、4,4’−ジニトロベンゾフェノンを具体例として挙げることができる。
また、本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造においては、上記したジハロゲン化芳香族ケトン化合物またはジニトロ化芳香族ケトン化合物を単独で用いても良いし、2種類以上の混合物として用いても問題ない。
本発明で用いられるジヒドロキシ芳香族化合物は、一般式(III)で表される芳香族化合物である。
ここで一般式(III)における繰り返し数qに特に制限はないが、q=0であるヒドロキノンを好ましい具体例として挙げることができる。また、一般式(III)における繰り返し数qの上限についても特に制限はないが、q=2以下であるジヒドロキシ芳香族化合物を好ましいジヒドロキシ芳香族化合物として挙げることができる。これらジヒドロキシ芳香族化合物は単独で用いても良いし、2種類以上の混合物として用いても良い。
本発明における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造するに際し、(a)ジハロゲン化芳香族ケトン化合物の使用量は、(b)ジヒドロキシ芳香族化合物1.0モルに対し、1.00〜1.10モルの範囲である必要があり、1.00〜1.07モルの範囲にあることが好ましく、1.01〜1.05モルの範囲であるとき更に好ましく、1.01〜1.03モルの範囲であるとき最も好ましい。線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンのヒドロキシ末端基は環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの環式構造を開環する要因となると考えられるが、(a)ジハロゲン化芳香族ケトン化合物および(b)ジヒドロキシ芳香族化合物の使用量を上記範囲にすることにより、ヒドロキシ末端基濃度の制御を行い、生成した環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの開環反応等の副反応が抑制可能である。さらに環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの分離が困難な線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーの生成も抑制できるため、高収率かつ高純度で環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得られる。
本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造において用いる塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウムなどのアルカリ土類金属の重炭酸塩、または水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物を挙げることができ、なかでも取り扱いの容易さ・反応性の観点から炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、および炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの重炭酸塩が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムがさらに好ましく、炭酸カリウムがよりいっそう好ましく用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても問題ない。また、これら塩基は無水物の形で用いることが好ましいが、水和物または水性混合物として用いることも可能である。なお、ここでの水性混合物とは水溶液、もしくは水溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固体成分の混合物のことを指す。
本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造において用いる有機極性溶媒としては、反応の阻害や生成した環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解などの好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はない。このような有機極性溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ジフェニルエーテルなどのジアリールエーテル類、ベンゾフェノン、アセトフェノンなどのケトン類、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらはいずれも反応の安定性が高いため好ましく使用されるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましく用いられる。これら有機極性溶媒は高温領域での安定性に優れ、さらに入手性の観点からも好ましい有機極性溶媒であると言える。
本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際の混合物中の有機極性溶媒の量は、混合物(ア)中のベンゼン環成分1.0モルに対して1.2リットル以上が好ましく、より好ましくは1.3リットル以上、さらに好ましくは1.5リットル以上、特に好ましくは2.0リットル以上含むものが望まれる。また、混合物中の有機極性溶媒量の上限に特に制限はないが、混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対して10.0リットル以下であることが好ましく、8.0リットル以下がより好ましく、5.0リットル以下が特に好ましい。有機極性溶媒の使用量を多くすると、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン生成の選択率が向上する傾向となるが、多すぎる場合、反応容器の単位体積当たりの環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成量が低下する傾向にあり、さらに反応に要する時間が長時間化する傾向にある。従って、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成選択率と生産性を両立するとの観点から、前記した有機極性溶媒の使用範囲とすることが好ましい。なお、ここでの有機極性溶媒の量は、常温常圧下での溶媒の体積を基準とし、反応混合物における有機極性溶媒の使用量とは、反応系内に導入した有機極性溶媒量から脱水操作などにより反応系外に除外された有機極性溶媒量を差し引いた量である。また、ここでの混合物中のベンゼン環成分とは、反応により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン構成成分となり得る原料に含まれるベンゼン環成分であり、これら原料におけるベンゼン環成分の「モル数」とは「化合物を構成するベンゼン環の数」を表す。例えば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1モルはベンゼン環成分2モル、ヒドロキノン1モルはベンゼン環成分1モル、さらに4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1モルとヒドロキノン1モルを含む混合物はベンゼン環成分3モルを含む混合物と計算する。
本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法においては、ジヒドロキシ芳香族化合物および塩基を用いて反応させる方法、またジヒドロキシ芳香族化合物と塩基から別途調製したジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を用いて反応させる方法を好ましい方法として挙げることができる。
ジヒドロキシ芳香族化合物および塩基を用いて反応させる方法における塩基の使用量は、ジヒドロキシ芳香族化合物に対して化学量論的比率として当量以上が望ましく、塩基の具体的な使用量は、例えば炭酸ナトリウムや炭酸カリウムのような2価の塩基の使用量をYモル、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムのような1価の塩基の使用量をZモルとした場合、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際に用いたジヒドロキシ芳香族化合物1.0モルに対して(Y+2Z)が1.00から1.10モルの範囲にあることが好ましく、1.00モルから1.05モルの範囲にあることがより好ましく、1.00モルから1.03モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の製造方法において環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する際の塩基の使用量がこれら好適な範囲にあることにより、ジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を十分に生成させることが可能であり、さらに大過剰の塩基による生成した環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解反応といった好ましくない反応の進行を抑制することもできるため好ましい。
また、本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造するに際し、ジヒドロキシ芳香族化合物と塩基から別途調製したジヒドロキシ芳香族化合物の金属塩を用いる場合には、上記した好ましい塩基を追加して、過剰量の塩基を供給することができる。この供給する塩基の過剰量は、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造するために用いたジヒドロキシ芳香族化合物1.0モルに対して(Y+2Z)が0〜0.10モルの範囲にあることが好ましく、0〜0.05モルの範囲にあることが好ましく、0〜0.03モルの範囲にあることがさらに好ましく例示できる。塩基の過剰量を好適な範囲にすることにより、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの分解反応といった好ましくない反応の進行を抑制することもできるため好ましい。
本発明における混合物(ア)の反応温度は、反応に用いるジハロゲン化芳香族ケトン化合物、ジヒドロキシ芳香族化合物、塩基、有機極性溶媒の種類、量によって多様化するため一意的に決めることはできないが、通常120〜350℃、好ましくは130〜320℃、より好ましくは140〜300℃の範囲が例示できる。この好ましい温度範囲ではより高い反応速度が得られる傾向にある。また、反応は一定の温度で行う1段階反応、段階的に温度を上げていく多段反応、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応のいずれでも構わない。
反応時間は、使用した原料の種類や量、あるいは反応温度に依存するので一概に規定することはできないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。この好ましい時間以上とすることで、未反応の原料成分を十分に減少できる傾向にある。一方、反応時間に特に上限はないが、40時間以内でも十分に反応が進行し、好ましくは10時間以内、より好ましくは6時間以内も採用できる。
本発明において、混合物(ア)には前記必須成分以外に実質的に反応を阻害しない成分や、反応を加速する効果を有する成分を加えることも可能である。また、反応を行う方法に特に制限はないが、撹拌条件下に行うことが好ましい。さらに、本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物を製造する方法においては、バッチ式および連続式などの公知の各種重合方式、反応方式を採用することができる。また、製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が望ましく、窒素、ヘリウム、およびアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましく、経済性および取り扱いの容易さから窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、上記製造方法により得られた反応混合物から分離回収することにより得ることが可能である。上記製造方法により得られた反応混合物には少なくとも環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び有機極性溶媒が含まれ、その他成分として未反応原料や副生塩、水、共沸溶媒などが含まれる場合もある。この様な反応混合物から環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを回収する方法に特に制限はなく、例えば必要に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留などの操作により除去した後に、ポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、副生塩に対して溶解性を有する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させて、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体として回収する方法が例示できる。このような特性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い溶剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の種類により好ましい溶剤は異なるので限定はできないが、例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノールに代表されるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンに代表されるケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類が例示でき、入手性、経済性の観点から水、メタノール及びアセトンが好ましく、水が特に好ましい。
このような溶剤による処理を行うことにより、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量を低減することが可能である。この処理により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは共に固体成分として析出するので、公知の固液分離法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物を回収することが可能であり、これにより環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体に含有される有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低減される傾向にある。
また、上記の溶剤による処理方法としては、溶剤と反応混合物を混合する方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。溶剤による処理を行う際の温度に特に制限はないが、20〜220℃の範囲が好ましく、50〜200℃の範囲がさらに好ましい。このような範囲では例えば副生塩の除去が容易となり、また比較的低圧の状態で処理を行うことが可能であるため好ましい。ここで、溶剤として水を用いる場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましいが、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性化合物及びそのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、また、硫酸やリン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物およびアンモニウムイオンなどを含む水溶液を用いることも可能である。この処理後に得られた環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合固体が、処理に用いた溶剤を含有する場合には必要に応じて乾燥などを行い、溶剤を除去することも可能である。
上記した回収方法では、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物として回収され、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物が得られる。この組成物の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの含有量をさらに上げるために、この混合物から環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを分離回収する方法としては、例えば環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶解性の差を利用した分離方法、より具体的には、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに対する溶解性が高く、且つ線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに対する溶解性に乏しい溶剤を、必要に応じて加熱下で上記環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物と接触させて、溶剤可溶成分として環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得る方法が例示できる。一般に線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは結晶性が高く、溶剤への溶解性が非常に低いという特徴を有することが知られており、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解性の違いが大きいため、上記の溶解性の差を利用した分離方法により効率よく環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることが可能である。
ここで用いる溶剤としては環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶解可能な溶剤であれば特に制限はないが、溶解を行う環境において環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解するが、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解しにくい溶剤が好ましく、線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンは溶解しない溶剤がより好ましい。環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンとの混合物を前記溶剤と接触させる際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく、特に常圧が好ましく、このような圧力の反応系はそれを構築する反応器の部材が安価であるという利点がある。このような観点から反応系圧力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条件は避けることが望ましい。用いる溶剤としてはポリフェニレンエーテルエーテルケトン成分の分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものが好ましく、上記混合物を溶剤と接触させる操作を、例えば常圧還流条件下で行う場合に好ましい溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの極性溶媒を例示できるが、なかでもベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6−ジクロロトルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン酸、N,N−ジメチルイミダゾリジノンが好ましく、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフランがより好ましく例示できる。
環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気に特に制限はないが、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましく、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましく、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの観点から窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
上記、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる温度に特に制限はないが、一般に温度が高いほど環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解は促進される傾向にある。前記した通り、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物の溶剤との接触は常圧下で行うことが好適であるため、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での還流温度にすることが好ましく、前記した好ましい溶剤を用いる場合には例えば20〜150℃を具体的な温度範囲として例示できる。
環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物を溶剤と接触させる時間は、用いる溶剤の種類や温度などによって異なるため一意的には限定できないが、例えば1分〜50時間が例示でき、このような範囲では環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解が十分になる傾向にある。
上記混合物を溶剤と接触させる方法は、公知の一般的な手法を用いれば良く、特に限定はないが、例えば環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物と溶剤を混合し、必要に応じて撹拌した後に溶液部分を回収する方法、各種フィルター上の上記混合物に溶剤をシャワーすると同時に環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶剤に溶解させる方法、ソックスレー抽出法原理による方法などいかなる方法も用いることができる。環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン及び線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンからなる混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使用量に特に制限はないが、例えば混合物重量に対する浴比で0.5〜100の範囲が例示できる。浴比がこの様な範囲の場合、上記混合物と溶剤を均一に混合し易く、また環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンが溶剤に十分に溶解し易くなる傾向にある。一般に浴比が大きい方が環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの溶剤への溶解には有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済的不益が生じることがある。なお、混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さい浴比でも十分な効果が得られる場合が多く、ソックスレー抽出法は、その原理上、類似の効果が得られるのでこの場合も小さい浴比で十分な効果が得られる場合が多い。
環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンと線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの混合物を溶剤と接触させた後に、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを溶解した溶液が固形状の線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む固液スラリー状で得られた場合、公知の固液分離法を用いて溶液部を回収することが好ましい。固液分離方法としては、例えば濾過による分離、遠心分離、デカンテーションなどを例示できる。このようにして分離した溶液から溶剤の除去を行うことにより環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの回収が可能となる。一方、固体成分については環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンがまだ残存している場合、再度溶剤との接触及び溶液の回収を繰り返し行うことでより収率よく環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得ることも可能である。
前述のようにして得られた環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む溶液から溶剤の除去を行い、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを固形成分として得ることが可能である。ここで溶剤の除去は、例えば加熱し、常圧下で処理する方法や、膜を利用した溶剤除去を例示できるが、より収率良く、また効率よく環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得るとの観点では常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が好ましい。なお、前述のようにして得られた環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを含む溶液は温度によっては固形物を含む場合もあるが、この場合の固形物も環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンに属するものであるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成分とともに回収することが好ましく、これにより収率よく環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを得られるようになる。ここで溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上の溶剤を除去することが好ましい。加熱による溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の種類に依存するため一意的には限定できないが、通常、20〜150℃、好ましくは40〜120℃の範囲が選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力は常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除去をより低温で行うことが可能となる。
本発明の方法で得られる環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物は、通常環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを60重量%以上含む純度の高いものであり、一般的に得られる線状のポリフェニレンエーテルエーテルケトンとは異なる特性を有する工業的にも利用価値の高いものである。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
また、各種物性は高速液体クロマトグラフィー、示差走査型熱量測定装置(DSC)、赤外分光分析装置(IR)、オストワルド型粘度計を用いて測定、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの定量分析は高速液体クロマトグラフィーにて行った。詳細な分析条件は以下の通りである。
(高速液体クロマトグラフィー)
装置 :株式会社島津製作所製 LC−10Avpシリーズ
カラム :Mightysil RP−18GP150−4.6
検出器 :フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nmを使用)
カラム温度 :40℃
サンプル :0.1重量%THF溶液
移動相 :THF/0.1w%トリフルオロ酢酸水溶液。
(示差走査型熱量測定装置)
装置 :セイコーインスツル株式会社製 ロボットDSC。
(赤外分光分析装置)
装置 :Perkin Elmer System 2000 FT−IR
サンプル調製:KBr法。
[実施例1]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン10.91g(50mmol)、ヒドロキノン5.51g(50mmol)、炭酸カリウム6.91g(50mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物(ア)中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.3リットルである。缶内を窒素置換した後、密閉したまま200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却することにより反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は11.4%であった。
このようにして得られた反応混合物50gを分取し、1重量%酢酸水溶液150gを加えた。撹拌してスラリー状にした後、70℃に加熱して30分間撹拌を継続した。スラリーをガラスフィルター(平均孔径10〜16μm)で濾過して固形分を得た。得られた固形分を脱イオン水50gに分散させ70℃で30分間保持して濾過して固形分を得る操作を3回繰り返した。得られた固形分を70℃で一晩真空乾燥に処し、乾燥固体約14.4gを得た。
さらに、上記で得られた乾燥固体1.0gをクロロホルム100gを用いて、浴温80℃で5時間ソックスレー抽出を行った。得られた抽出液からエバポレーターを用いてクロロホルムを除去して固形分を得た。この固形分にクロロホルム2gを加えた後、超音波洗浄器を用いて分散液として、メタノール30gに滴下した。これにより生じた析出成分を平均ポアサイズ1μmの濾紙を用いて濾別後、70℃で3時間真空乾燥に処し、白色固体約0.13gを得た。
この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンエーテルケトン単位からなる化合物であることを確認、また高速液体クロマトグラフィーにより成分分割したマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、さらにMALDI−TOF−MS(装置;島津製作所製AXIMA−TOF2)による分子量情報により、この白色粉末は繰り返し数mが2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物を主要成分とする環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物であることが分かった。また、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は83.0%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
このような環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、160℃の融点を有することが分かった。
[実施例2]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン11.02g(50.5mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物(ア)中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.3リットルである。缶内を窒素置換した後、密閉したまま200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は13.5%であった。
このようにして得られた上記反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は80.3%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、162℃の融点を有することが分かった。
[実施例3]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン11.13g(51.0mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物(ア)中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.3リットルである。缶内を窒素置換した後、密閉したまま200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は16.0%であった。
このようにして得られた上記反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は83.0%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、160℃の融点を有することが分かった。
[実施例4]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン11.46g(52.5mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.2リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は13.8%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は72.1%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、161℃の融点を有することが分かった。
[実施例5]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン11.67g(51.0mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.3リットルである。缶内を窒素置換した後、密閉したまま200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は12.8%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は68.1%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、168℃の融点を有することが分かった。
[実施例6]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン12.00g(55.0mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.1リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は11.6%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は65.2%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、169℃の融点を有することが分かった。
[実施例7]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン11.13g(51.0mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン200mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は1.3リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で5時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は8.3%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は70.5%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、165℃の融点を有することが分かった。
[実施例8]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン5.56g(25.5mmol)、ヒドロキノン2.75g(25.0mmol)、炭酸カリウム3.46g(25.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン375mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は5.0リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で4時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は15.9%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は80.7%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、160℃の融点を有することが分かった。
[実施例9]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン3.71g(17.0mmol)、ヒドロキノン1.84g(16.7mmol)、炭酸カリウム2.31g(16.7mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は9.9リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で6時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は18.8%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は72.3%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、165℃の融点を有することが分かった。
[比較例1]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン10.36g(47.5mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.4リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は5.1%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は58.8%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
このような環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、175℃の融点を有することが分かった。
[比較例2]
攪拌翼を備えた1Lの反応容器に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン12.22g(56.0mmol)、ヒドロキノン5.51g(50.0mmol)、炭酸カリウム6.91g(50.0mmol)、N−メチル−2−ピロリドン500mLを仕込んだ。混合物中のベンゼン環成分1.0モルに対するN−メチル−2−ピロリドンの量は3.1リットルである。窒素を通じながら200℃まで昇温し、200℃で5分保持、その後250℃にまで昇温し250℃で2時間保持して反応を行った。反応終了後、室温にまで冷却して反応混合物を調製した。
得られた反応混合物を約0.2g秤取り、THF約3.5gで希釈、濾過によりTHF不溶成分を分離除去することにより高速液体クロマトグラフィー分析サンプルを調製、反応混合物の分析を行った。結果、繰り返し数m=2〜6の連続する5種類の環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンの生成を確認、ヒドロキノンに対する環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の収率は6.2%であった。
このようにして得られた反応混合物(ア)から、実施例1記載の方法により環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の回収を行った結果、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物中における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン混合物の重量分率は52.7%であった。なお、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物における環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン以外の成分は線状ポリフェニレンエーテルエーテルケトンオリゴマーであった。
この環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトン組成物の融点を測定した結果、173℃の融点を有することが分かった。
実施例1〜6と比較例1、2との比較より、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを製造するに際し、混合物(ア)中の(a)と(b)を本発明のモル比率範囲で用いることにより、環式ポリフェニレンエーテルエーテルケトンを高純度に、かつ高収率に得ることが可能であることが明らかである。