JP5447505B2 - アルミニウム電解コンデンサ用電解液及びアルミニウム電解コンデンサ - Google Patents

アルミニウム電解コンデンサ用電解液及びアルミニウム電解コンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサを与えることが可能なアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関する。本発明はまた、この電解液及び/又は劣化を起こしにくい電極を用いた、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサに関する。
アルミニウム電解コンデンサは、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、アルミニウム箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとが密封ケース内に収容された構造を有しており、巻回型、積層型等の形状のものが広く使用されている。
そして、小型、低圧用のアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液として、エチレングリコールを主溶媒とし、アジピン酸、安息香酸などのカルボン酸又はそのアンモニウム塩などを電解質とした電解液と、γ−ブチロラクトンを主溶媒とし、フタル酸、マレイン酸などのカルボン酸の四級化環状アミジニウム塩などを電解質とした電解液とが従来から知られている。
このようなアルミニウム電解コンデンサには、近年の電子機器の小型化に伴い、低インピーダンス特性が要求されている。また、高周波数条件下でのコンデンサの使用においても低インピーダンス特性が要求される。この要求に対応するには、比抵抗の低い高電導度の電解液の使用が望ましいため、エチレングリコールを主溶媒とし、カルボン酸及び/又はカルボン酸塩を電解質とした電解液を基礎として、電解液の水含有量を増加させることにより比抵抗を低下させる検討がなされてきた。
しかし、電解液中の水や電解質のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩は、アルミニウム箔からなる陽極及び陰極にとっては化学的に活性な物質である。電極表面の酸化アルミニウム皮膜がカルボン酸アニオンとの反応により溶解し、アルミニウムのカルボン酸錯体が生成する。また、水が電極の酸化アルミニウム皮膜を通してアルミニウムに達すると、アルミニウムが溶解して水酸化物が生成し、この反応と同時に水素ガスが発生する。そのため、電解液の水含有量を増加させると、電極箔が劣化し、漏れ電流が増加し、コンデンサの短寿命化を招くという問題があった。特に105℃以上の高温寿命試験においては、溶媒の水含有量が15質量%を超えると、急激な上記反応により水素ガスが大量に発生し、コンデンサ内の圧力が増加し、安全弁の開弁に至り、使用に耐えなくなるという問題があった。
このような電極箔の劣化の防止のために、リン酸を電解液に添加する方法が従来から知られている。リン酸イオンが電解液中に適量存在すると、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、アルミニウムの水酸化物等の生成が抑制され、水素ガスの発生も抑制される。
しかしながら、電解液にリン酸を添加しても、リン酸イオンが電解液に溶解したアルミニウムイオンと結合して電解液に不溶な化合物を形成し、この不溶性化合物が電極箔に付着し、リン酸イオンが電解液中から消失してしまうため、リン酸イオンによる電極箔の劣化防止効果は十分なものとはいえなかった。また、電解液に対するリン酸の添加量が多すぎても、電極表面の酸化アルミニウム皮膜がリン酸イオンとの反応により溶解し、アルミニウム電解コンデンサの漏れ電流が増大するという問題が発生する。このような問題に対し、出願人は、リン酸イオンが電解液中に適量存在する間はコンデンサ特性が良好に保たれることに着目し、特許文献1(WO00/55876号パンフレット)において、水を含む電解液に水溶液中でリン酸イオンを生成する化合物とアルミニウムに配位して水溶性アルミニウムキレート錯体を形成するキレート化剤とを添加し、電極箔から溶出したアルミニウムイオンと上記キレート化剤とリン酸イオンとの反応により水溶性アルミニウムキレート錯体とリン酸イオンとの結合体を電解液中で形成させる方法を開示している。この水溶性アルミニウムキレート錯体とリン酸イオンとの結合体は、電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリン酸イオンと化学平衡を保つため、電解液中にリン酸イオンを適量で存在させる時間を長期化させることができ、陽極及び陰極の劣化を長期間防止することができる。
WO00/55876号パンフレット
特許文献1(WO00/55876号パンフレット)に開示された方法によると、電解液の水含有量を増加させても電極箔のアルミニウムの溶解とアルミニウムの水酸化物等の生成及び水素ガスの発生を抑制することができるため、アルミニウム電解コンデンサの低インピーダンス化及び長寿命化を達成することができる。しかしながら、アルミニウム電解コンデンサに対するさらなる低インピーダンス化及び長寿命化の要請は常に存在する。
このさらなる要請に応えるべく、発明者らが検討したところ、電解液の水含有量を増加させた上に、電解質としてギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から選択されたカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を使用すると、電解液の比抵抗を良好に低下させることができるものの、カルボン酸アニオンと酸化アルミニウム皮膜との反応及び水とアルミニウムとの反応が顕著になり、電極箔からのアルミニウムの溶出を十分に抑制することができなくなるため、リン酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を電解液中に存在させても、コンデンサの寿命が十分に満足のいくものにならないことがわかった。特に、電解質としてギ酸及び/又はギ酸塩を使用した場合には、電解液の比抵抗が顕著に低下するものの、コンデンサの寿命も顕著に短縮する。したがって、上述の要請に応えるためには、電極箔からのアルミニウムの溶出を抑制する化合物を電解液に含有させるのが望ましい。また、アルミニウム電解コンデンサの長寿命化のためには、電解液中の水及びカルボン酸アニオンとの反応が起こりにくく、アルミニウムの溶出が生じにくい電極箔も望まれる。
そこで、本発明の目的は、比抵抗が低く且つ電極箔からのアルミニウムの溶出を抑制可能なアルミニウム電解コンデンサ用電解液を提供することである。本発明のさらなる目的は、このような好適な電解液及び/又はアルミニウムの溶出が生じにくい電極箔を用いた、低インピーダンス特性を有する上に長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサ、特に高温寿命試験においても長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサを提供することである。
発明者らは、鋭意検討した結果、水を含む溶媒を用いたアルミニウム電解コンデンサ用電解液において、電解液の水含有量を増加させ、電解液の比抵抗を効果的に低下させるギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を電解質として使用しても、同様に電解質として作用するアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された化合物を上記溶媒1kg当たり0.03モル以上電解液中に共存させることにより、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生を抑制することができ、さらにリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を電解液中に共存させることにより、この結合体が電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリンオキソ酸イオンと化学平衡を保ち、電解液中にリンオキソ酸イオンを適量で存在させる時間を長期化させることができるため、このリンオキソ酸イオンによっても陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生を抑制することができ、そして上記結合体とアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制されることを発見した。現時点では明確でないが、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩は、単に電解質として作用しているだけでなく、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極の表面に付着して保護層を形成していると考えられる。
従って、本発明の第1のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、上記電解液が、上記電解質として、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物とを含有し、上記アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量が、少なくとも上記溶媒1kg当たり0.03モルであり、多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量であることを特徴とする。
また、本発明の第2のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、上記電解液が、上記電解質として、上記溶媒1kg当たり0.03〜0.5モルのアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物とを含有することを特徴とする。
「リンオキソ酸イオン」には、リン酸イオンの他、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、これらの異性体であるホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオンが含まれ、「リンオキソ酸イオン生成性化合物」には、この化合物を上記溶媒に溶解した段階でリンオキソ酸イオンを生成する化合物のほか、電解液をアルミニウム電解コンデンサに導入した後の陽極での酸化を介してリンオキソ酸イオンを生成する化合物も含まれる。また、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、比抵抗を低下させるために水を多く含有するため、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成する化合物は上記電解液中でもリンオキソ酸イオンを生成し、アルミニウムに配位して水溶性アルミニウムキレート錯体を形成するキレート化剤は上記電解液に溶解するアルミニウムキレート錯体を形成する。
本発明の第1の電解液及び第2の電解液において、電解液中にアルミニウムイオンが共存すれば、アルミニウムイオンと、上記キレート化剤と、上記リンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が電解液中に形成される。アルミニウム塩などを電解液に添加することにより電解液中に予めアルミニウムイオンを含有させても良いが、上記キレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物を含有しているがアルミニウムイオンを含有していない電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入しても、アルミニウムイオンが電極箔から溶出するため、アルミニウム電解コンデンサ内の電解液にはリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が含まれることになる。そして、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩とこの結合体との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生が抑制されるため、電解液の水含有量を増加させ、電解液の比抵抗を効果的に低下させるギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を電解質として使用しても、長寿命なアルミニウム電解コンデンサを得ることができる。
本発明の第1の電解液において、アルミニウム電解コンデンサ用電解液におけるアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量は、少なくとも上記溶媒1kg当たり0.03モルであり、多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量である。通常のアルミニウム電解コンデンサの使用条件下ではコンデンサ内の電解液の温度が50℃以上であるので、通常のコンデンサの使用条件下ではアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩は電解液に完全に溶解して電解質として作用する。なお、本発明の第1の電解液において、水を含む溶媒にアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩以外の成分を溶解した液を調製し、この液を70℃に加温した状態で所望量のアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩を添加して溶解させた後、液の温度を50℃に低下させ、50℃で1時間放置後にも沈殿物が認められなかった場合に、添加したアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩は上記電解液における50℃での飽和溶解量以下の量であるとした。
アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が上記溶媒1kg当たり0.03モルより少ないと、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生を抑制する本発明の効果が十分でなく、上記電解液における50℃での飽和溶解量より多いと、低温でのアゼライン酸又はアゼライン酸塩の電解液からの析出が顕著になるため好ましくない。
本発明の第2の電解液において、アルミニウム電解コンデンサ用電解液におけるアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量は、上記溶媒1kg当たり0.03〜0.5モル、好ましくは0.03〜0.3モルの範囲である。アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が上記溶媒1kg当たり0.03モルより少ないと、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生を抑制する本発明の効果が十分でなく、0.5モルより多いと、アゼライン酸又はアゼライン酸塩が低温で電解液から析出することがある。また、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が高濃度になるに連れ、本発明の効果が添加量に比例しなくなり、電解液におけるアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の含有量が上記溶媒1kg当たり0.3モルを超えると、コンデンサの寿命はほぼ同等になる。
本発明の第1の電解液及び第2の電解液において、電解液中の水及びギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物の含有量を電解液の30℃における比抵抗が30Ωcm以下になるまで増加させても、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体とアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が好適に抑制される。そのため、低インピーダンス特性を有する長寿命なアルミニウム電解コンデンサを好適に得ることができ、これらのアルミニウム電解コンデンサは105℃での無負荷寿命試験においても長寿命を示す。
水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤を含有し、さらに適量のアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入することにより、低インピーダンス特性を有しかつ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサが得られる。したがって、本発明はまた、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、アルミニウム箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサであって、上記電解液として本発明の第1の電解液又は第2の電解液が使用されており、従ってコンデンサ内の電解液中に水溶性アルミニウムキレート錯体とリンオキソ酸イオンとの結合体と適量のアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩とが含まれていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサを提供する。
アルミニウム電解コンデンサの寿命は、電解液ばかりでなく電極箔によっても影響を受ける。電解液と電極箔との密接な相互作用により、コンデンサの寿命が決定されるからである。発明者らは、電極箔についても鋭意検討した結果、陽極の酸化アルミニウム皮膜にリンを含有させることにより、酸化アルミニウム皮膜が電解質のカルボン酸アニオンによって溶解されにくくなることを発見した。したがって、上述の本発明の第1の電解液又は第2の電解液が使用されているアルミニウム電解コンデンサにおいても、陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しているのが好ましい。
水を含む溶媒を用いた電解液中にリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が存在し、この結合体が電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリンオキソ酸イオンと化学平衡を保ち、電解液中にリンオキソ酸イオンが適量で存在している間は、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、アルミニウムの水酸化物等の生成が抑制され、水素ガスの発生も抑制される。しかし、陽極の酸化アルミニウム皮膜が電解質のカルボン酸アニオンによって溶解すると、アルミニウムの電解液中への溶出が加速し、この電解液中に溶出したアルミニウムイオンによりリンオキソ酸イオンが急速に消費されるため、電解液中のリンオキソ酸イオン量が適量以下になり、陽極及び陰極の劣化が生じるようになる。特に、陰極の表面には極めて薄い酸化アルミニウム皮膜しか存在しないため、陽極の劣化より陰極の劣化が深刻である。しかしながら、陽極の酸化アルミニウム皮膜が電解質のカルボン酸アニオンによって溶解されにくくなると、電解液中のリンオキソ酸イオンの消費速度が遅くなるため、電解液中のリンオキソ酸イオン量が適量で存在する時間が長期化する。その結果、陽極ばかりでなく陰極の劣化も抑制され、コンデンサの長寿命化につながる。
特に、陽極のアルミニウム皮膜にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg以上含有させ、さらに電解液中に水溶性アルミニウムキレート錯体とリンオキソ酸イオンとの結合体を存在させると、電解液における水分含有量を増加させ、電解質のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩の使用量を増加させることにより電解液の比抵抗を低下させても、上記結合体と上述の好ましい陽極との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制される。その結果、低インピーダンス特性を有する上に長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサ、特に高温寿命試験においても長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサを得ることができる。
したがって、本発明はまた、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、アルミニウム箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサであって、上記陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg〜150mg含有し、上記電解液が、水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体とを含有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサを提供する。リンオキソ酸イオンは、上述した水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物から生成させることができ、水溶性アルミニウムキレート錯体は、上述したアルミニウムに配位して水溶性アルミニウムキレート錯体を形成するキレート化剤とアルミニウムイオン、好適にはアルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極から溶出したアルミニウムイオンとの反応により形成させることができる。
本発明において、「CV積」の用語の「C」は陽極の酸化アルミニウム誘電体の静電容量を意味し、「V」は陽極の皮膜耐圧を意味する。酸化アルミニウム皮膜中のリンの含有量がリン酸換算で単位CV積当たり30mgより少ないと、酸化アルミニウム皮膜の溶解の抑制効果が十分でなく、単位CV積当たり150mgより多いと、本発明の効果が飽和するため経済的に不利であり、またアルミニウム電解コンデンサの静電容量が低下するという不利益が生じる。
現時点では明確ではないが、リンは酸化アルミニウム中にリン酸の形態で存在しているわけではなく、酸化アルミニウムの結晶格子内にリンとして侵入していると考えられる。しかし、本発明では、リン量の測定を、陽極箔を塩酸で完全に溶解し、溶解液中のリン酸イオン量をモリブデンブルー法により定量することにより行っているため、リン量はリン酸量として規定される。そして、単位CV積当たりのリン酸量を測定する際には、まず陽極の酸化アルミニウム誘電体の静電容量Cを測定し、さらに電圧−時間曲線により皮膜耐圧Vを測定し、次いで上述の方法によりリン酸量を測定し、得られたリン酸量の値を得られた静電容量Cと皮膜耐圧Vとの積の値で割って、単位CV積当たりのリン酸量を算出する。
アルミニウム電解コンデンサにおいて、陽極の酸化アルミニウム誘電体の静電容量は、
Figure 0005447505
で表わされる。ここで、εは真空の誘電率を、εは誘電体の比誘電率を、Sは誘電体の表面積(m)を、dは誘電体の厚さ(m)を表す。そして、一般に
Figure 0005447505
の関係にあるため、
Figure 0005447505
の関係が得られる。したがって、単位CV積当たりのリン量は、単位表面積当たりのリン量と比例することになる。
陽極の酸化アルミニウム皮膜中へのリンの導入は、リン酸及びリン酸塩から選択された少なくとも1種の化合物を含有する水溶液中での陽極の化成処理により行うと、酸化アルミニウム皮膜の表面近傍に均一かつ安定にリンを導入できるため好ましい。化成処理においても、リンは酸化アルミニウム皮膜の表面近傍に濃い濃度で存在することが分かっている。このため、本発明では、酸化アルミニウム皮膜におけるリン量の範囲を、単位表面積当たりのリン量と比例する単位CV積当たりのリン量により規定している。
酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で30〜150mg/CV含有する陽極を用い、水溶性アルミニウムキレート錯体とリンオキソ酸イオンとの結合体を含有する電解液を用いた本発明のアルミニウム電解コンデンサにおいて、電解液中の水及びカルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質を電解液の30℃における比抵抗が30Ωcm以下になるまで増加させても、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体と適量のリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を有する陽極との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が好適に抑制される。そのため、低インピーダンス特性を有する長寿命なアルミニウム電解コンデンサを好適に得ることができ、これらのアルミニウム電解コンデンサは105℃での無負荷寿命試験においても長寿命を示す。また、水の含有量が電解液全体の20〜80質量%である電解液を使用するのが好ましい。水が20質量%より少ないと、低温での電解液の比抵抗が大きくなり、80質量%より多いと電解液の凝固点が高くなり、コンデンサの保証範囲が狭くなる。
酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で30〜150mg/CV含有する陽極を用い、水溶性アルミニウムキレート錯体とリンオキソ酸イオンとの結合体を含有する電解液を用いた本発明のアルミニウム電解コンデンサにおいて、電解液中にギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を電解質として存在させるのが好ましい。これらの電解質は電解液の比抵抗を効果的に低下させ、特にギ酸及び/又はギ酸塩は顕著に比抵抗を低下させるが、電解液中にこれらの電解質が存在しても、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体と適量のリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を有する陽極との相乗効果により、長寿命なコンデンサが得られる。また、電解液中にアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を電解質として存在させると、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の保護効果によりアルミニウム電解コンデンサがさらに長寿命化するため好ましい。
本発明の酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で30〜150mg/CV含有する陽極を用いたアルミニウム電解コンデンサに使用される電解液として、水を含む溶媒に適量のアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体とを含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液を使用することにより、低インピーダンス特性を有する上に、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体、及びアルミニウムの溶出が起こりにくい陽極の複合的な効果により、特に高温寿命試験において長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサを得ることができる。
水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤を含有し、さらに適量のアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物とを電解質として含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液によると、アルミニウム電解コンデンサ内に導入された電解液中にリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が形成され、この結合体とアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩との相乗効果により、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制される。従って、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液の使用により、低インピーダンス特性を有する長寿命なアルミニウム電解コンデンサが得られる。
また、リンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg〜150mg含有する酸化アルミニウム皮膜を有する陽極と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を含有する電解液とを使用した本発明のアルミニウム電解コンデンサは、上記結合体と上記陽極との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制されるため、低インピーダンス特性を有する上に長寿命である。
電極からのアルミニウムの溶解に対するアゼライン酸の抑制効果を調査した結果を示す図である。 酸化アルミニウム皮膜のリン含有量を変更した電極からのアルミニウムの溶解を調査した結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、上記電解質として、少なくとも上記溶媒1kg当たり0.03モルのアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物とを含有する。本発明の電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入すると、陽極及び陰極から電解液中に溶出したアルミニウムイオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が電解液中に形成される。電解液の比抵抗を効果的に低下させるギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物が存在しても、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体との相乗効果により、長寿命を有するアルミニウム電解コンデンサが得られる。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液では、水を含む溶媒を使用する。溶媒は水のみであっても良いが、水と有機溶媒との混合溶媒を使用するのが好ましい。使用可能な有機溶媒としては、プロトン性極性溶媒である一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,3−ブタンジオール、メトキシプロピレングリコール等)、非プロトン性溶媒であるアミド類(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類、環状アミド類、カーボネート類(γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ニトリル類(アセトニトリル)、オキシド類(ジメチルスルホキシド等)などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上の有機溶媒を使用しても良い。特に、水とエチレングリコールとを混合した溶媒は、各種溶質の溶解度が高く、温度特性に優れる電解液を与えるため好ましい。
本発明の電解液における水の含有量は、電解液全体の20〜80質量%であるのが好ましく、より好ましくは35〜70質量%、特に好ましくは45〜65質量%である。水が20質量%より少ないと、低温での電解液の比抵抗が大きくなり、80質量%より多いと電解液の凝固点が高くなり、コンデンサの保証範囲が狭くなる。電解液における溶媒の含有量は、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の溶解度の観点から、電解液全体の60〜90質量%であるのが好ましい。
本発明の電解液は、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質として、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を必須成分として含む。アゼライン酸塩としては、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ジメチルジエチルアンモニウム塩等)、ピリジウム塩(1−メチルピリジウム塩、1−エチルピリジウム塩、1,3−ジエチルピリジウム塩等)、アミン塩、例えば、一級アミン塩(メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩等)、二級アミン塩(ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジプロピルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、ジエタノールアミン塩等)、三級アミン塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7塩、トリエタノールアミン塩等)を例示することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
本発明の電解液は、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質として、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の他に、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を必須成分として含む。これらの化合物、特にギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された化合物は、電解液の比抵抗を効果的に低下させる。ギ酸塩、アジピン酸塩、グルタル酸塩としては、これらのアンモニウム塩、4級アンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ジメチルジエチルアンモニウム塩等)、ピリジウム塩(1−メチルピリジウム塩、1−エチルピリジウム塩、1,3−ジエチルピリジウム塩等)、アミン塩、例えば、一級アミン塩(メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩等)、二級アミン塩(ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジプロピルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、ジエタノールアミン塩等)、三級アミン塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7塩、トリエタノールアミン塩等)を例示することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
図1は、水60重量部、エチレングリコール30重量部、ギ酸6重量部及びアゼライン酸3重量部を含み、アンモニア水で中和した溶液、及び、水60重量部、エチレングリコール30重量部、ギ酸6重量部及びアジピン酸3重量部を含み、アンモニア水で中和した溶液に、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる電極をそれぞれ浸漬し、電極から溶解したアルミニウムイオン量をICP発光分析法により測定した結果を示している。図1中、1はアジピン酸とギ酸を含有する液を使用した場合の結果を示しており、2はアゼライン酸とギ酸を含有する液を使用した場合の結果を示している。図1より、アゼライン酸が溶液中に存在すると、ギ酸が共存していても、溶液中にアルミニウムイオンがほとんど認められないことがわかる。現時点では明確ではないが、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩は、単に電解質として作用しているだけでなく、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極の表面に付着して保護層を形成していると考えられる。
本発明の電解液におけるアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の含有量は、少なくとも上記溶媒1kg当たり0.03モルである。2種以上の化合物を使用する場合には、総量が少なくとも上記溶媒1kg当たり0.03モルである。アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が上記溶媒1kg当たり0.03モルより少ないと、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生を抑制する本発明の効果が十分でない。
本発明の電解液において、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の最大含有量を、上記電解液における50℃での飽和溶解量とすることができる。2種以上の化合物を使用する場合には、総量が多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量である。
アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩は、水のみからなる溶媒に対しても、50℃で0.03モル/kgより多く溶解し、上記電解液におけるアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の50℃での飽和溶解量は、電解液の水含有量が少なくなるほど多くなり、共存するギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された選択された化合物の含有量が多くなるほど少なくなる。
アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が、上記電解液における50℃での飽和溶解量より多いと、低温でのアゼライン酸又はアゼライン酸塩の電解液からの析出が顕著になるため好ましくない。アルミニウム電解コンデンサ内の電解液からアゼライン酸又はアゼライン酸塩が析出すると、電解液のpHが大きくなり、電極箔のアルミニウムの溶解が進行する場合がある。アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の含有量が50℃での飽和溶解量以下であれば、低温でアゼライン酸又はアゼライン酸塩が析出しても、電解液のpHが電極箔のアルミニウムの溶解を進行させるほどには変化しない。
本発明の電解液において、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の最大含有量を、上記溶媒1kg当たり0.5モル、好ましくは上記溶媒1kg当たり0.3モルとすることができる。2種以上の化合物を使用する場合には、総量が多くとも上記溶媒1kg当たり0.5モル、好ましくは上記溶媒1kg当たり0.3モルである。上記溶媒1kg当たり0.5モルより多いと、特に電解液中の水の含有量が多く且つギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物の含有量が多い電解液において、アゼライン酸又はアゼライン酸塩が低温で電解液から析出する場合がある。また、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が上記溶媒1kg当たり0.3モルを超えると、本発明の効果がもはや添加量に比例しなくなり、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩が上記溶媒1kg当たり0.3モルを超える範囲では、アルミニウム電解コンデンサの寿命がほぼ同等である。
アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩は、電解液の比抵抗を低下させる点では、ギ酸及びギ酸塩に及ばないが、アジピン酸アニオン、グルタル酸アニオンによる酸化アルミニウム皮膜の溶解が、ギ酸アニオンによる酸化アルミニウム皮膜の溶解に比較して緩やかであるため、アルミニウム電解コンデンサのさらなる長寿命化の点で好ましい。グルタル酸及び/又はグルタル酸塩を使用した電解液は、同濃度のアジピン酸及び/又はアジピン酸塩を使用した電解液よりも、低い比抵抗を有する。一方、ギ酸及び/又はギ酸塩は、少量使用するだけで、電解液の比抵抗を顕著に低下させる。
そのため、本発明では、長寿命な上に極めて低いインピーダンス特性を有するアルミニウム電解コンデンサを得るための電解液には、ギ酸及びその塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物が主に使用され、低いインピーダンス特性を有する上に極めて長寿命なアルミニウム電解コンデンサを得るための電解液には、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から選択された少なくとも1種の化合物が主に使用される。
電解液の水含有量が少なくなるほど、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量を増加させることができるが、これらの化合物の濃度が高濃度になるにつれ、電解液の比抵抗を低下させる効果が添加量に比例しなくなる。また、アルミニウム電解コンデンサ内の電解液からギ酸、アジピン酸、或いはグルタル酸又はこれらの塩が析出すると、電解液のpHが大きくなり、電極箔のアルミニウムの溶解とアルミニウムの水酸化物等の生成及び水素ガスの発生が進行する場合がある。
そのため、長寿命な上に極めて低いインピーダンス特性を有するアルミニウム電解コンデンサを得るためには、上記電解液に、ギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を上記溶媒1kg当たり0.5〜3.0モルの量で含有させ、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を上記溶媒1kg当たり0〜1.5モルの量で含有させるのが好ましい。このときの電解液の水含有量は、電解液に対して50質量%以上であるのが好ましく、電解液に対して50〜65質量%であるのが特に好ましい。この範囲内では、30℃での比抵抗が約10〜約30Ωcmである電解液が得られ、この電解液が極めて低いインピーダンスを有するアルミニウム電解コンデンサへと導く。その上、この範囲内の電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサは、105℃での高温無負荷寿命試験において、4000時間後であっても安全弁の開弁に至らない。極めて低いインピーダンス特性を有するアルミニウム電解コンデンサには、105℃での高温無負荷寿命試験において4000時間後であっても開弁しない寿命が要請されている。従来の検討では、極めて低いインピーダンスを有する上にこの要請に応えることができるコンデンサは存在しなかった。
上記電解液において、ギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された化合物の含有量が上記溶媒1kg当たり0.5モルよリ少ないと、比抵抗が特に低い電解液が得られず、3.0モルより多いと、電極のアルミニウムの溶解が進行し、コンデンサの寿命が短縮する。また、ギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された化合物と共にアジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を使用する場合には、上記溶媒1kg当たり1.5モルより多いと、電極のアルミニウムの溶解が進行し、コンデンサの寿命が短縮する。
また、低いインピーダンス特性を有する上に極めて長寿命なアルミニウム電解コンデンサを得るためには、上記電解液に、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を、ギ酸及び/又はギ酸塩の不存在下で、上記溶媒1kg当たり0.45〜2.0モルの量で含有させるのが好ましい。この範囲内では、水含有量が電解液に対して50質量%以上であると、30℃での比抵抗が約20〜約40Ωcmである電解液が得られ、水含有量が電解液に対して30質量%であると、30℃での比抵抗が約40〜約70Ωcmである電解液が得られる。これらの比抵抗値は、従来のエチレングリコールを主溶媒とし、水が電解液全体の約10質量%である電解液の比抵抗値の約150Ωcmより著しく低く、また、従来のγ−ブチロラクトンを主溶媒とした電解液の比抵抗値の約80Ωcmよりも低い。また、この範囲内の電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサは、105℃での高温無負荷寿命試験において、極めて良好な寿命特性を示す。
上記電解液において、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物の含有量が上記溶媒1kg当たり0.45モルよリ少ないと、比抵抗が従来の電解液より低下した電解液が得られず、2.0モルより多いと、電極のアルミニウムの溶解が進行し、コンデンサの寿命が短縮し、極めて長寿命なアルミニウム電解コンデンサが得られない。
本発明の電解液は、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された化合物及びギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を必須成分として含むが、これらの化合物以外のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を電解質として含むことができる。使用可能なカルボン酸としては、酢酸、ブタン酸、コハク酸、ピメリン酸、マロン酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、セバシン酸等を例示することができる。
また、カルボン酸塩としては、上記カルボン酸のアンモニウム塩、4級アンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ジメチルジエチルアンモニウム塩等)、ピリジウム塩(1−メチルピリジウム塩、1−エチルピリジウム塩、1,3−ジエチルピリジウム塩等)、アミン塩、例えば、一級アミン塩(メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩等)、二級アミン塩(ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジプロピルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、ジエタノールアミン塩等)、三級アミン塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7塩、トリエタノールアミン塩等)を例示することができる。
さらに、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸等のアニオンと、四級化環状アミジニウムイオンとの塩を使用することもできる。カチオン成分となる四級化環状アミジニウムイオンは、N,N,N’−置換アミジン基をもつ環状化合物を四級化したカチオンであり、N,N,N’−置換アミジン基をもつ環状化合物としては、イミダゾール単環化合物(1−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のオキシアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール等のニトロ誘導体、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール等のアミノ誘導体等)、ベンゾイミダゾール化合物(1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンゾイミダゾール、1−メチル−5(6)−ニトロベンゾイミダゾール等)、2−イミダゾリン環を有する化合物(1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン、1−エチル−2−メチル−イミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン等)、テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノネン−5等)等を挙げることができる。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、さらに、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物を含有する。
リンオキソ酸イオン生成性化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、及びこれらの塩;リン酸及びアルキルリン酸のエステル、ホスホン酸及びジホスホン酸のエステル及び誘導体、ホスフィン酸エステル、及びこれらの塩;並びにこれらの縮合体及びこれらの縮合体の塩から選択して使用することができる。
まず、リンオキソ酸イオン生成性化合物として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びこれらの塩を用いることができる。リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などを挙げることができる。リン酸及びこの塩は、水溶液中で分解してリン酸イオンを生じる。また、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩は、水溶液中で、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、これらの異性体であるホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオンを生じ、さらにアルミニウム電解コンデンサの陽極での酸化を介してリン酸イオンを生ずる。
また、リンオキソ酸イオン生成性化合物として、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル等のリン酸及びアルキルリン酸のエステル;ホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸及びジホスホン酸、ホスホン酸及びジホスホン酸のエステル及び誘導体;メチルホスフィン酸等のホスフィン酸、ホスフィン酸ブチル等のホスフィン酸エステル;及び、これらのアンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の塩を使用することができる。これらのうちで好ましいのは、リン酸ジブチル、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、又はこれらの塩である。
また、リンオキソ酸イオン生成性化合物として、リン酸の縮合体である縮合リン酸及びこれらの塩が用いられる。この縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等の環状の縮合リン酸、及びこのような鎖状、環状の縮合リン酸が結合したものを用いることができる。そして、これらの縮合リン酸の塩として、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を用いることができる。これらのうちで好ましいのは、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸及びこれらの塩であり、さらに好ましいのは、ピロリン酸、トリポリリン酸及びこれらの塩であり、最も好ましいのは、トリポリリン酸である。これらの縮合体の塩として、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等を用いることができる。
さらに、上述のリンオキソ酸イオン生成性化合物の縮合体又はその塩を使用することもできる。縮合体の塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等を用いることができる。
上述のリンオキソ酸イオン生成性化合物は、水溶液中でリン酸イオンを生ずるか、若しくは、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、これらの異性体であるホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオンを生じ、さらにアルミニウム電解コンデンサの陽極での酸化を介してリン酸イオンを生ずる。
これらの中でも、容易にリン酸イオンを生ずるリン酸及びその塩、縮合リン酸、及びリン酸の誘導体、例えばリン酸及びアルキルリン酸のエステル、が好ましい。さらに、添加量に対して比較的速やかに多くのリン酸イオンを生じるリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸及びその塩も好ましい。なお、これらのリンオキソ酸イオン生成性化合物以外でも、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生ずる物質であれば、本発明の効果を得ることができる。
リンオキソ酸イオン生成性化合物も、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。リンオキソ酸イオン生成性化合物の量は、電解液全体の0.01〜5.0質量%、好ましくは0.2〜3.0質量%である。この範囲外では効果が低減する。
アルミニウム電解コンデンサ用電解液は、さらに、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤を含有する。
上記キレート化剤としては、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシマロン酸、α−メチルリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸等のα−ヒドロキシカルボン酸類、γ−レゾルシル酸、β−レゾルシル酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフタル酸、フェノールトリカルボン酸、アルミノン、エリオクロムシアニンR等の芳香族ヒドロキシカルボン酸類、スルホサリチル酸等のスルホカルボン酸類、タンニン酸等のタンニン類、ジシアンジアミド等のグアニジン類、ガラクトース、グルコース等の糖類、リグノスルホン酸塩等のリグニン類、そして、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)等のアミノポリカルボン酸類、及びこれらの塩を挙げることができる。これらの塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を用いることができる。
これらのうちで好ましいのは、アルミニウムとのキレート錯体を形成しやすい、タンニン酸、トリヒドロキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、アウリントリカルボン酸、γ−レゾルシル酸、DTPA、EDTA、GEDTA、HEDTA、TTHA又はこれらの塩であり、さらに好ましいのは、タンニン酸、トリヒドロキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、γ−レゾルシル酸及びアウリントリカルボン酸、DTPA、GEDTA、HEDTA、TTHA、及びこれらの塩である。
これらのキレート化剤も、単一の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。そして、これらのキレート化剤の添加量は、電解液全体の0.01〜3.0質量%、好ましくは0.1〜2.0質量%である。この範囲外では効果が低減する。
電解液作成時に添加するキレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物は、電解液中のキレート化剤とリンオキソ酸イオンが、モル比にしてキレート化剤:リンオキソ酸イオン=1:20〜3:1、好ましくは、1:10〜1:1になるように添加される。キレート化剤がこの比率より少ないとアルミニウム電解コンデンサの漏れ電流特性が低下する。また、キレート化剤がこの比率より多いと、理由は定かではないがアルミニウム電解コンデンサの高温寿命特性が劣化する。
電解液にアルミニウムイオンが共存すれば、上記キレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとアルミニウムイオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が電解液中に形成される。アルミニウム塩などの添加により電解液に予めアルミニウムイオンを含有させることにより、電解液中にリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を形成させ、この電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入することができる。しかしながら、キレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物を含有しているがアルミニウムイオンを含有していない電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入しても、アルミニウムイオンが電極箔から溶出するため、アルミニウム電解コンデンサ内の電解液にはリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が含まれることになる。そして、この結合体が電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリンオキソ酸イオンと化学平衡を保ち、電解液中のリンオキソ酸イオンを適量に保つ。その結果、電解液中のリンオキソ酸イオンと結合体中のリンオキソ酸イオンが、コンデンサの放置後長期間にわたって検出される。この電解液中に適量存在するリンオキソ酸イオンが、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、アルミニウムの水酸化物等の生成を抑制し、水素の発生を抑制するので、アルミニウム電解コンデンサの放置特性が向上する。そして、本発明の電解液では、この結合体とアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生が驚くほど抑制される。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、上述の各成分に加えて、他の成分を含んでいても良い。
例えば、カルボン酸及びその塩以外の電解質として、ホウ酸、ホウ酸と多価アルコールより得られるホウ酸の多価アルコール錯化合物、炭酸、ケイ酸等の無機酸を含んでいても良く、耐電圧の向上を図る目的で、マンニット、ノニオン性界面活性剤、コロイダルシリカ等を電解液に添加しても良い。
さらに、特に高温下で急激に発生する水素を吸収する目的で、p−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロアニソール、m−ニトロアニソール、o−ニトロアニソールなどのニトロ化合物を含んでいても良い。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、水を含む溶媒に、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物と、リンオキソ酸イオン生成性化合物と、キレート化剤とを、必要に応じて他の添加物と共に溶解することによって得ることができる。電解質として、アゼライン酸と、ギ酸、アジピン酸及びグルタル酸の少なくともいずれかを使用し、アンモニアガス又はジメチルアミン、ジエチルアミン等のアミンで中和することによりpHを調整しても良い。pHは5.7〜6.3の範囲に調整するのが好ましい。pHが5.7より低く、或いはpHが6.3より高いと、陽極及び陰極の劣化が進行する場合がある。
上述の本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサにおいて好適に使用される。
陽極及び陰極を構成する高純度アルミニウム箔には、その表面積を増大させるため、化学的或いは電気化学的なエッチング処理が施され、次いで、陽極を構成するアルミニウム箔に対して化成処理が施され、表面に酸化アルミニウム皮膜が形成される。化成処理は、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等の化成液を使用して行われる。
このようにして得られた陽極及び陰極間に、マニラ麻、クラフト紙等のセパレータを介在させてコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液を含浸させ、さらに密封ケース内に収容してアルミニウム電解コンデンサを構成する。
陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンが含まれていると、電極のアルミニウムの溶解が抑制されることがわかっている。陽極の酸化アルミニウム皮膜中へのリンの導入は、リンの導入が可能な方法であればいずれの方法により行っても良いが、リン酸或いはリン酸塩、例えばアンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩を含有する水溶液中での陽極の化成処理により行うのが好ましい。この化成処理に使用する水溶液には、リン酸及びリン酸塩から選択された1種の化合物が含まれていても良く、2種以上の化合物が含まれていても良い。リン酸−リン酸アンモニウム水溶液を好適に使用することができる。また、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液等のリンを含んでいない水溶液中での化成処理に続いて、上述のリン酸及びリン酸塩から選択された1種又は2種以上の化合物を含有する水溶液中での陽極の化成処理により、酸化アルミニウム皮膜中にリンを導入することもできる。これらの化成処理において、リンは酸化アルミニウム皮膜の表面近傍に濃い濃度で存在する。さらに、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液等のリンを含んでいない水溶液での化成処理により形成された酸化アルミニウム皮膜を有する陽極を、上述のリン酸及びリン酸塩から成る群から選択された1種又は2種以上の化合物を含有する水溶液に浸漬し、次いでこの溶液から陽極を引き出し、自然乾燥するか或いは加熱酸化処理を行う方法により、酸化アルミニウム皮膜中にリンを導入することもできる。
特に、アルミニウム電解コンデンサの陽極として、酸化アルミニウム皮膜にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg以上含有した陽極を使用し、さらに電解液に上記水溶性アルミニウムキレート錯体とリンオキソ酸イオンとの結合体を存在させると、この結合体と上記陽極との相乗効果により、電解液に電解質としてのアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩を含有しているか否かに関わらず、電解液の水分含有量を増加させ、電解質としてのカルボン酸及び/又はカルボン酸塩の使用量を増加させても、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制され、その結果、低インピーダンス特性を有する上に長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサ、特に高温寿命試験においても長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサが得られる。
したがって、本発明はまた、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、アルミニウム箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサであって、上記陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg〜150mg含有し、上記電解液が、水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体とを含有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサを提供する。
図2は、酸化アルミニウム皮膜のリン含有量を変更した電極を、ギ酸6gを水100gに溶解した後にアンモニア水で中和した液に浸漬し、電極から溶解したアルミニウム量をICP発光分析法により測定した結果を示している。図2中、3は酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しない電極を使用した結果を、4は酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVの電極を使用した結果を、5は酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で60mg/CVの電極を使用した結果を、6は酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で100mg/CVの電極を使用した結果を、それぞれ示している。図2より、酸化アルミニウム皮膜のリン含有量が増加するにつれ、溶液中にギ酸が存在していても、アルミニウム溶解量が大幅に減少し、リンを含有する酸化アルミニウム層が保護層としての役割を果たしていることがわかる。
酸化アルミニウム皮膜中のリンの含有量は、リン酸換算で単位CV積当たり30mg〜150mg、好ましくは50〜120mg、特に好ましくは80〜120mgである。単位CV積当たり30mgより少ないと、酸化アルミニウム皮膜の保護層としての効果が十分でなく、単位CV積当たり150mgより多いと、本発明の効果が飽和するため経済的に不利であり、またアルミニウム電解コンデンサの静電容量が低下するという不利益が生じる。酸化アルミニウム皮膜の保護層としての効果が十分であり且つアルミニウム電解コンデンサの静電容量が低下しない好適な酸化アルミニウム皮膜中のリン含有量は、リン酸換算で単位CV積当たり50mg〜70mgである。
本発明の酸化アルミニウム皮膜にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg以上含有した陽極を使用したアルミニウム電解コンデンサにおいて、使用される電解液における溶媒は、水のみであっても良いが、水と有機溶媒との混合溶媒であるのが好ましい。有機溶媒としては、上述の本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関して示した有機溶媒の全てを使用することができ、単独の化合物を使用することもでき、2種以上の化合物を使用することもできる。特にエチレングリコールを使用するのが好ましい。電解液における水の含有量は、電解液全体の20〜80質量%であるのが好ましく、より好ましくは35〜70質量%、特に好ましくは45〜65質量%である。水が20質量%より少ないと、低温での電解液の比抵抗が大きくなり、80質量%より多いと電解液の凝固点が高くなり、コンデンサの保証範囲が狭くなる。
本発明の酸化アルミニウム皮膜にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg以上含有した陽極を使用したアルミニウム電解コンデンサにおいて、使用される電解液は、電解質として、カルボン酸及びその塩から選択された少なくとも1種の化合物を含む。カルボン酸及び/又はカルボン酸塩としては、上述の本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関して示したカルボン酸及び/又はカルボン酸塩の全てを使用することができ、単独の化合物を使用することもでき、2種以上の化合物を使用することもできる。カルボン酸及び/又はカルボン酸塩の総量は、通常は電解液全体の5〜25質量%、好ましくは9〜20質量%である。5質量%未満であると、電解液の比抵抗が十分に低下せず、25質量%を超えると、カルボン酸又はその塩が低温で析出することがある。
特に、ギ酸、アジピン酸、グルタル酸、及びこれらの塩、例えばアンモニウム塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩が、電解液の比抵抗を効率的に低下させるため好ましい。これらの電解質の使用、特にギ酸及び/又はギ酸塩の使用により、30℃における比抵抗が30Ωcm以下の電解液を得ることができるが、これらの比抵抗の低い電解液を使用しても、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体と、適量のリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を有する陽極との相乗効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が抑制され、低インピーダンス特性を有する長寿命なアルミニウム電解コンデンサを好適に得ることができる。また、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩は、上述したように陽極及び陰極からのアルミニウムの溶解を抑制するため、好適な電解質である。
本発明の酸化アルミニウム皮膜にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg以上含有した陽極を使用したアルミニウム電解コンデンサにおいて、使用される電解液は、さらにリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を含有する。この結合体は、電解液に、アルミニウムイオンと、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを添加することにより電解液中に形成させることができる。アルミニウムイオンは予め電解液に添加しておいても良いが、陽極及び陰極から溶出したアルミニウムイオンを使用するのが好ましい。
リンオキソ酸イオン生成性化合物及びキレート化剤もまた、上述の本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関して示したリンオキソ酸イオン生成性化合物及びキレート化剤の全てを使用することができ、上述の本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関して示した好ましいリンオキソ酸イオン生成性化合物及びキレート化剤は、この場合にも好ましい。リンオキソ酸イオン生成性化合物及びキレート化剤は、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。リンオキソ酸イオン生成性化合物の添加量は、電解液全体の0.01〜5.0質量%、好ましくは0.2〜3.0質量%であり、キレート化剤の添加量は、電解液全体の0.01〜3.0質量%、好ましくは0.1〜2.0質量%であり、モル比にしてキレート化剤:リンオキソ酸イオン=1:20〜3:1、好ましくは1:10〜1:1になるように添加される。
本発明の酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30〜150mg含有する陽極を用いたアルミニウム電解コンデンサに使用される電解液として、水を含む溶媒に適量のアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液を使用すると、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物の作用により、電解液の比抵抗を効果的に低下させることができ、例えばギ酸及び/又はギ酸塩を上記溶媒1kg当たり0.5〜3.0モル、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から選択された化合物を上記溶媒1kg当たり0〜1.5モルの量で使用すると、電解液の30℃での比抵抗を約10〜約30Ωcmに低下させることができる。また、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体、及びアルミニウムの溶出が起こりにくい陽極の複合的な効果により、アルミニウム電解コンデンサの寿命、特に高温寿命試験における寿命が著しく長期化し、105℃での無負荷寿命試験において6000時間経過後でも開弁しない好適なアルミニウム電解コンデンサを得ることができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
1:陽極の作成
陽極A
純度99.9%の帯状のアルミニウム箔にエッチング処理を施して拡面処理した後、アルミニウム箔を、リン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:2.8g/L、pH4.5〜7.0)中で化成電圧13Vの条件で30分間化成処理し、その表面にリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を形成した。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、陽極箔の酸化アルミニウム誘電体の静電容量Cを測定し、次いで電圧−時間曲線により皮膜耐圧Vを測定し、次いで陽極箔を塩酸で完全に溶解し、溶解液中のリン酸量をモリブデンブルー法により定量した。得られたリン酸量の値を得られた静電容量Cと皮膜電圧Vの積の値で割って、単位CV積当たりのリン酸量を測定した。単位CV積当たりのリン量は、リン酸換算で150mgであった。
陽極B
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、リン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)中で化成電圧13Vの条件で30分間化成処理し、その表面にリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を形成した。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、上述した方法で酸化アルミニウム皮膜中の単位CV積当たりのリン量を測定したところ、リン酸換算で120mgの値が得られた。
陽極C
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.5〜7.0)で化成電圧3Vの条件で30分間一段目化成処理し、次いでリン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)中で化成電圧13Vの条件で30分間二段目化成処理し、その表面にリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を形成した。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、上述した方法で酸化アルミニウム皮膜中の単位CV積当たりのリン量を測定したところ、リン酸換算で100mgの値が得られた。
陽極D
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.5〜7.0)で化成電圧10Vの条件で30分間一段目化成処理し、次いでリン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)中で化成電圧13Vの条件で化成電流を調整し、30分間二段目化成処理し、その表面にリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を形成した。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、上述した方法で酸化アルミニウム皮膜中の単位CV積当たりのリン量を測定したところ、リン酸換算で70mgの値が得られた。
陽極E
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.5〜7.0)で化成電圧10Vの条件で30分間一段目化成処理し、次いでリン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)中で化成電圧13Vの条件で化成電流を調整し、30分間二段目化成処理し、その表面にリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を形成した。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、上述した方法で酸化アルミニウム皮膜中の単位CV積当たりのリン量を測定したところ、リン酸換算で60mgの値が得られた。
陽極F
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.5〜7.0)で化成電圧10Vの条件で30分間一段目化成処理し、次いでリン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)中で化成電圧13Vの条件で化成電流を調整し、30分間二段目化成処理し、その表面にリンを含有する酸化アルミニウム皮膜を形成した。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、上述した方法で酸化アルミニウム皮膜中の単位CV積当たりのリン量を測定したところ、リン酸換算で50mgの値が得られた。
陽極G
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.7〜7.0)で化成電圧13Vの条件で30分間一段目化成処理し、次いでリン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)に浸漬し、13Vで修復化成をした後、引き上げて空気中で電気炉により500℃で1分間熱処理を行った。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、上述した方法で酸化アルミニウム皮膜中の単位CV積当たりのリン量を測定したところ、リン酸換算で30mgの値が得られた。
陽極H
陽極Aと同様に拡面処理した後のアルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.5〜7.0)で化成電圧13Vの条件で30分間化成処理し、その表面にリンを含有しない酸化アルミニウム皮膜を形成した。
アルミニウム電解コンデンサの作成
上記陽極A〜Hのいずれかの陽極と、純度99.9%の帯状のアルミニウム箔にエッチング処理を施して拡面処理した陰極とを、マニラ麻のセパレータを介して巻回し、以下の表1〜7に示す電解液を含浸させ、有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部に、ブチルゴム製の封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を絞り加工して電解コンデンサの封口を行い、径10mm、高さ20mm、定格6.3V、2200μFのアルミニウム電解コンデンサを作成した。電解液は、アンモニアガスにより、又はアミン添加により中和し、pHを5.7〜6.3の範囲に調整した。電解液がアンモニア又はアミンで中和されているため、カルボン酸塩が溶媒に溶解しているのと同じであるが、以下の表には塩ではなく酸の形態で表しており、溶媒1kg当たりのモル量についても、溶媒1kg当たりのギ酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸又はグルタル酸のモル量、溶媒1kg当たりのアゼライン酸のモル量として表している。なお、表1〜7に示す電解液におけるアゼライン酸量は、いずれも、それぞれの電解液における50℃での飽和溶解量以下であった。
アルミニウム電解コンデンサの特性評価
得られたアルミニウム電解コンデンサについて、初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失と、105℃無負荷試験4000時間経過後又は6000時間経過後の誘電損失を評価した。また、105℃無負荷試験4000時間前に開弁に至ったコンデンサについては、開弁に至った時間を寿命として記録した。105℃無負荷試験前後の誘電損失の変化率が大きいほどコンデンサの寿命が短くなる傾向にある。また、誘電損失の変化率が200%を超えると、その後早期に開弁に至ることもわかっている。
(1)電解液中のアゼライン酸濃度の影響
陽極G、Hを使用し、アゼライン酸の含有量が異なる電解液を使用してアルミニウム電解コンデンサを作成し、特性評価を行った。以下の表1に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、溶媒1kg当たりのアゼライン酸のモル量、溶媒1kg当たりのギ酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸のモル量、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失(tanδ)、105℃無負荷試験4000時間経過後の誘電損失、4000時間経過前後の誘電損失の変化率及びコンデンサが開弁した場合には開弁に至った時間をまとめて示す。
Figure 0005447505
Figure 0005447505
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実施例1〜6、比較例1において使用した水を電解液に対して約60質量%含有し、ギ酸を溶媒1kg当たり約1.6モル、アジピン酸を溶媒1kg当たり約0.4モル含む電解液は、30℃において13Ωcmと極めて低い比抵抗を示した。実施例7において使用した水を電解液に対して約50質量%含有し、ギ酸を溶媒1kg当たり約0.5モル含有する電解液、及び実施例8、比較例2、3において使用した水を電解液に対して約50質量%含有し、アジピン酸を溶媒1kg当たり約1.0モル含有するがギ酸を含有しない電解液も、30℃において30Ωcm以下の低い比抵抗を示した。したがって、30℃での比抵抗が30Ωcm以下である電解液を得るためには、水を電解液に対して50質量%以上含有させ、ギ酸を溶媒1kg当たり0.5モル以上或いはギ酸不存在下でアジピン酸を溶媒1kg当たり1.0モル以上電解液に含有させれば良いことがわかる。また、表1に示した全ての実施例及び比較例において、得られたアルミニウム電解コンデンサの静電容量及び漏れ電流の値は良好であった。
電解液中のアゼライン酸の濃度が溶媒1kg当たり0.03モル未満の電解液を使用した比較例1、2のコンデンサは、105℃無負荷試験4000時間経過前に安全弁の開弁に至ったが、実施例1〜6から把握されるように、電解液中のアゼライン酸が高濃度になるにつれ、105℃無負荷試験4000時間経過前後の誘電損失の変化率が小さくなり、コンデンサが長寿命化した。しかしながら、実施例1〜3の比較から把握されるように、アゼライン酸が高濃度になると、誘電損失の変化を抑制する効果がアゼライン酸の濃度に比例しなくなり、アゼライン酸の含有量が溶媒1kg当たり約0.3モル以上の範囲では、誘電損失の変化がほぼ同等であった。
実施例7は、実施例1〜6に比較して、ギ酸及び水の含有量が少なく且つp−ニトロ安息香酸を含有しない電解液を使用し、酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しない陽極を使用した例である。電解液のギ酸及び水の含有量が少ないため、電解液の30℃で比抵抗は29Ωcmであったが、アゼライン酸が溶媒1kg当たり約0.03モルと極めて少量であっても、105℃無負荷試験4000時間経過後も開弁に至らず、長寿命なコンデンサが得られた。
また、電解液中にアゼライン酸を溶媒1kg当たり約0.45モル含有し且つリン酸イオンを含有するものの、リン酸イオンとアルミニウムキレート錯体との結合体(以下、「結合体」と表す)が存在しない比較例3では、わずか105℃無負荷試験100時間経過後に開弁に至っており、電解液中に結合体が存在していてもアゼライン酸が存在していない比較例2では、わずか105℃無負荷試験2500時間経過後に開弁に至っているのに対し、電解液中にアゼライン酸を溶媒1kg当たり約0.45モル含有しかつ結合体をも含有する実施例8では、105℃無負荷試験4000時間経過後でも開弁に至らず、誘電損失の変化率が190%(4500時間後に開弁)であった。この実施例8のアルミニウム電解コンデンサの寿命は、比較例2と比較例3の組み合わせにより予測される寿命を超えており、電解液中の結合体とアゼライン酸との相乗効果により、アルミニウム電解コンデンサの寿命が著しく長期化することがわかった。また、表1から、比抵抗を30℃で30Ωcm以下に低下させた本発明の電解液を使用することにより、105℃無負荷試験4000時間経過後でも開弁しないアルミニウム電解コンデンサが得られることがわかった。
(2)陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン濃度の影響
陽極A〜Hを使用し、アゼライン酸を含有しない電解液を使用してアルミニウム電解コンデンサを作成し、特性評価を行った。以下の表2に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失(tanδ)、105℃無負荷試験4000時間経過後の誘電損失、4000時間経過前後の誘電損失の変化率及びコンデンサが開弁した場合には開弁に至った時間をまとめて示す。
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実施例9〜15、比較例4において使用された水を電解液に対して約60質量%含有し、ギ酸を溶媒1kg当たり約1.6モル、アジピン酸を溶媒1kg当たり約0.7モル含有する電解液は、30℃において約10Ωcmと極めて低い比抵抗を示した。実施例16において使用された水を電解液に対して約60質量%含有し、ギ酸を溶媒1kg当たり約1.1モル、アジピン酸を溶媒1kg当たり約0.7モル含有する電解液も、30℃において11Ωcmの極めて低い比抵抗を示し、実施例17、18、比較例5〜7において使用された水を電解液に対して約50質量%含有し、アジピン酸を溶媒1kg当たり約1.0モル含有する電解液は、30℃において30Ωcmの低い比抵抗を示した。得られた全てのアルミニウム電解コンデンサの漏れ電流は良好な値であった。また、実施例9〜15から把握されるように、アルミニウム電解コンデンサの静電容量は、陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン量が増加するほど減少する傾向にあった。
陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しない比較例4のアルミニウム電解コンデンサは、105℃無負荷試験1500時間後に開弁した。酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVである陽極を使用した実施例15のコンデンサは、比較例4に比較して2倍もの寿命を有していたが、105℃無負荷試験4000時間経過前に開弁した。しかし、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で50mg/CV以上の陽極を試用したコンデンサは105℃無負荷試験4000時間経過前には開弁せず、酸化アルミニウム皮膜中のリン量の増加に連れて105℃無負荷試験4000時間経過前後の誘電損失の変化率が小さくなる傾向にあった。また、実施例9〜11の比較から把握されるように、酸化アルミニウム皮膜中のリン量が100mg/CVを超えると、誘電損失の変化を抑制する効果がリンの濃度に比例しなくなることがわかった。
従って、アゼライン酸を含有しておらず、ギ酸を溶媒1kg当たり1.63モル含有し、30℃で約10Ωcmと著しく低い比抵抗を有する電解液を使用しても、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30〜150mg/CVである陽極を使用することにより、105℃無負荷試験3000時間経過後でも開弁しないアルミニウム電解コンデンサが得られることがわかった。実施例16は、実施例9〜15の電解液に比較してギ酸の含有量が少なく且つp−ニトロ安息香酸を含有しない電解液を使用し、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVの陽極を使用した例である。実施例16で使用した電解液の30℃での比抵抗は11Ωcmであり、ギ酸を溶媒1kg当たり1.09モル含有していれば、ギ酸を溶媒1kg当たり1.63モル含有している実施例9〜15で使用した電解液と同等の比抵抗値まで低下させることができることがわかった。そして、実施例16では、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVと少量であっても、105無負荷試験4000時間経過後も開弁に至らず、長寿命なコンデンサが得られた。
また、陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で120mg/CVであり、リン酸イオンを含有するものの結合体が存在しない比較例6では、わずか105℃無負荷試験100時間経過後に開弁に至っており、電解液中に結合体が存在していても陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しない比較例5では、わずか105℃無負荷試験2500時間経過後に開弁に至っているのに対し、陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンがリン酸換算で120mg/CV存在し且つ電解液中に結合体が存在している実施例17では、105℃無負荷試験4000時間後でも開弁に至らず、誘電損失の変化率が110%(10000時間経過後も開弁せず)であった。また、陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVであり、リン酸イオンを含有するものの結合体が存在しない比較例7では、わずか105℃無負荷試験100時間経過後に開弁に至っており、電解液中に結合体が存在していても陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しない比較例5では、わずか105℃無負荷試験2500時間経過後に開弁に至っているのに対し、陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンがリン酸換算で30mg/CV存在し且つ電解液中に結合体が存在している実施例18では、105℃無負荷試験4000時間後でも開弁に至らず、誘電損失の変化率が130%(8000時間経過後も開弁せず)であった。この実施例17のアルミニウム電解コンデンサの寿命は、比較例5と比較例6の組み合わせにより予測される寿命を超えており、また、実施例18のアルミニウム電解コンデンサの寿命は、比較例5と比較例7の組み合わせにより予測される寿命を超えている。以上のように、電解液中の結合体と適量のリンを含む酸化アルミニウム皮膜を有する陽極との相乗効果により、アルミニウム電解コンデンサの寿命が著しく長期化することがわかった。
(3)電解液中の電解質及び水の濃度の影響
陽極B、E、G、Hを使用し、アゼライン酸、ギ酸、アジピン酸及び水の含有量が異なる電解液を使用してアルミニウム電解コンデンサを作成し、特性評価を行った。以下の表3、4に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、溶媒1kg当たりのアゼライン酸のモル量、溶媒1kg当たりのギ酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸のモル量、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失(tanδ)、105℃無負荷試験4000時間経過後の誘電損失、4000時間経過前後の誘電損失の変化率及びコンデンサが開弁した場合には開弁時間をまとめて示す。表3は、アゼライン酸を含有しない電解液を使用した例であり、表4は、アゼライン酸を含有する電解液を使用した例である。
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例えば実施例23と実施例24との比較からわかるように、電解質としてのギ酸は、電解液の比抵抗を顕著に低下させるものの、105℃無負荷試験4000時間経過前後の誘電損失の変化率の値が大きくなり、コンデンサの寿命を短縮させた。しかしながら、実施例19〜23、25、27、28、比較例8、9から把握されるように、陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン量が多くなるにつれ、ギ酸の存在の有無に関わらず、長寿命なコンデンサが得られ、また表4から把握されるように、電解液にギ酸を多く含有させて30℃での比抵抗を約15Ωcmにしても、アゼライン酸を共存させることにより、長寿命なコンデンサが得られた。
陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVである例において、実施例39と実施例40の比較から、ギ酸は溶媒1kg当たり0.5モル存在すれば、電解液の比抵抗を顕著に低下させる効果を有することがわかる。しかしながら、実施例32、35からわかるように、電解液のギ酸含有量が溶媒1kg当たり3モルを超えると、105℃無負荷試験4000時間経過前にコンデンサが開弁した。したがって、ギ酸含有量は溶媒1kg当たり0.5〜3モルの範囲にするのが良いことがわかる。
また、実施例41〜47の比較から、電解液の水含有量が多いほど、電解液の比抵抗が低くなり、コンデンサの寿命が短縮する傾向にあることがわかる。電解液中の水含有量が約40%以上の電解液は、ギ酸を含有する場合には30℃で30Ωcm以下、ギ酸を含有しない場合には30℃で約40Ωcmの低い比抵抗を示したが、実施例44、46における水を電解液に対して約30質量%含有し且つギ酸を含有しない電解液の比抵抗は、30℃で50Ωcm以上であった。しかしながら、この比抵抗値は、従来のエチレングリコールを主溶媒とし、水が電解液全体の約10質量%である電解液の比抵抗値の約150Ωcmより著しく低く、また、従来のγ−ブチロラクトンを主溶媒とした電解液の比抵抗値の約80Ωcmよりも低い。その上、実施例44では、電解液にわずかに溶媒1kg当たり約0.03モルのアゼライン酸を共存させただけであるが、105℃無負荷試験4000時間経過前後の誘電損失がほとんど変化しないコンデンサが得られた。この実施例44のアルミニウム電解コンデンサは、105℃無負荷試験10000時間経過後でも開弁に至っていない。
(4)陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリン濃度と電解液中のアゼライン酸濃度の影響
陽極Eと陽極Gを使用し、アゼライン酸の含有量が異なる電解液を使用してアルミニウム電解コンデンサを作成し、特性評価を行った。以下の表5に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、溶媒1kg当たりのアゼライン酸のモル量、溶媒1kg当たりのギ酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸のモル量、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失(tanδ)、105℃無負荷試験4000時間及び6000時間経過後の誘電損失、4000時間及び6000時間経過前後の誘電損失の変化率、及び4000時間経過前にコンデンサが開弁した場合には開弁時間をまとめて示す。
Figure 0005447505
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表5から把握されるように、酸化アルミニウム皮膜中のリン量が増加するほど、また電解液のアゼライン酸含有量が増加するほど、105℃無負荷試験4000時間及び6000時間経過前後の誘電損失の変化率は小さくなる傾向にあった。酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で60mg/CVの陽極を使用したコンデンサは、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVの陽極を使用したコンデンサに比較して、105℃無負荷試験の経験による誘電損失の変化が小さく、試験時間が長期化するに連れて両者の誘電損失の変化率の差は大きくなった。
また、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で60mg/CVの陽極を使用したコンデンサは、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVの陽極を使用したコンデンサに比較して、電解液におけるアゼライン酸の濃度の影響が小さく、特に、実施例48〜51のアゼライン酸含有量が溶媒1kg当たり0.13モル以上である電解液を使用したコンデンサにおける105℃無負荷試験6000時間経過前後の誘電損失の変化率は130%以下でありほぼ同等であり、極めて長寿命なコンデンサが得られた。特に、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で60mg/CVの陽極を使用し、アゼライン酸を溶媒1kg当たり0.064モル以上含有する電解液を使用した実施例48〜53のコンデンサは、105℃無負荷試験6000時間経過後でも開弁せず、酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVの陽極を使用し、アゼライン酸を溶媒1kg当たり0.130モル以上含有する電解液を使用した実施例58〜60のコンデンサは、105℃無負荷試験6000時間経過後でも開弁せず、極めて長寿命であった。
(5)電解液中のアジピン酸とグルタル酸の比較
陽極Gを使用し、アジピン酸及びグルタル酸の一方を含む電解液を使用してアルミニウム電解コンデンサを作成し、特性評価を行った。以下の表6に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、溶媒1kg当たりのアゼライン酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸又はグルタル酸のモル量、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失(tanδ)、105℃無負荷試験4000時間経過後の誘電損失、4000時間経過前後の誘電損失の変化率及びコンデンサが開弁した場合には開弁時間をまとめて示す。
Figure 0005447505
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表6の実施例65と実施例実施例68から把握されるように、グルタル酸は同量のアジピン酸よりも電解液の比抵抗を良好に低下させた。
アジピン酸を含有する電解液から得られたアルミニウム電解コンデンサとグルタル酸を含有する電解液から得られたアルミニウム電解コンデンサの105℃無負荷試験4000時間経過前後の誘電損失の変化率は同等であった。また、実施例66において、ギ酸共存下では、グルタル酸の含有量が溶媒1kg当たり1.5モルを超えると、アゼライン酸共存下においてもコンデンサが開弁していることから、ギ酸共存下では、グルタル酸の含有量を溶媒1kg当たり1.5モル以下の範囲にするのが良いことがわかる。
(6)アンモニアによる中和とアミンによる中和の比較
陽極Bと陽極Gを使用し、中和をアンモニアガス、ジメチルアミン、ジエチルアミンで行った電解液を使用してアルミニウム電解コンデンサを作成し、特性評価を行った。電解液は、全てpH5.7〜6.3に調整した。以下の表7に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失(tanδ)、105℃無負荷試験4000時間経過後の誘電損失、及び4000時間経過前後の誘電損失の変化率をまとめて示す。
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表7の実施例71〜73、及び、74〜76の比較から明らかなように、アンモニアによる中和に比較して、アミンによる中和は、高い比抵抗の電解液を与えたが、これらの電解液を使用したアルミニウム電解コンデンサにおける105℃無負荷試験4000時間経過前後の誘電損失の変化率は、同等であるか、或いはアミン中和電解液を使用したコンデンサの方が小さく、アミン中和によっても長寿命なアルミニウム電解コンデンサが得られた。
本発明により、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサ及びこのようなアルミニウム電解コンデンサを与えることが可能なアルミニウム電解コンデンサ用電解液を提供することができる。
1 アジピン酸とギ酸を含有する液を使用
2 アゼライン酸とギ酸を含有する液を使用
3 酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しない電極を使用
4 酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で30mg/CVの電極を使用
5 酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で60mg/CVの電極を使用
6 酸化アルミニウム皮膜中のリン量がリン酸換算で100mg/CVの電極を使用

Claims (20)

  1. 水を含む溶媒と、
    カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、
    水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、
    アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤と
    を含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、
    前記電解液が、前記電解質として、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物とを含有し、
    前記アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量が、少なくとも前記溶媒1kg当たり0.03モルであり、多くとも前記電解液における50℃での飽和溶解量である
    ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  2. 30℃における比抵抗が30Ωcm以下である、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  3. 前記電解液がアルミニウムイオンを含有し、
    該アルミニウムイオンと、前記キレート化剤と、前記リンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が前記電解液中に形成されている、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  4. 前記電解液がアルミニウム電解コンデンサ内に導入された電解液であり、
    前記アルミニウムイオンが前記アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極から溶出したイオンである、請求項3に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  5. 水を含む溶媒と、
    カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、
    水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、
    アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤と
    を含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、
    前記電解液が、前記電解質として、
    前記溶媒1kg当たり0.03〜0.5モルのアゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、
    ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と
    を含有することを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  6. 30℃における比抵抗が30Ωcm以下である、請求項5に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  7. 前記電解液がアルミニウムイオンを含有し、
    該アルミニウムイオンと、前記キレート化剤と、前記リンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が前記電解液中に形成されている、請求項5に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  8. 前記電解液がアルミニウム電解コンデンサ内に導入された電解液であり、
    前記アルミニウムイオンが前記アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極から溶出したイオンである、請求項7に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  9. 表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、
    アルミニウム箔からなる陰極と、
    陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータと
    を備えたアルミニウム電解コンデンサであって、
    前記電解液が請求項4に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
  10. 前記陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有している、請求項9に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  11. 表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、
    アルミニウム箔からなる陰極と、
    陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータと
    を備えたアルミニウム電解コンデンサであって、
    前記電解液が請求項8に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
  12. 前記陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有している、請求項11に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  13. 表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、
    アルミニウム箔からなる陰極と、
    陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサであって、
    前記陽極が、酸化アルミニウム皮膜中にリンをリン酸換算で単位CV積当たり30mg〜150mg含有し、
    前記電解液が、水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体とを含有する
    ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
  14. 前記陽極の酸化アルミニウム皮膜中のリンが、リン酸及びリン酸塩から選択された少なくとも1種の化合物を含有する水溶液中での陽極の化成処理により酸化アルミニウム皮膜中に導入された、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  15. 前記電解液の30℃における比抵抗が30Ωcm以下である、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  16. 前記電解液が、前記電解質として、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を含有する、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  17. 前記電解液における水の含有量が電解液全体の20〜80質量%である、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  18. 前記電解液が、前記電解質として、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を含有する、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  19. 前記電解液が請求項4に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液である、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
  20. 前記電解液が請求項8に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液である、請求項13に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
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