JP4737354B2 - 電解コンデンサ用電解液およびそれを用いた電解コンデンサ。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は電解コンデンサ用電解液およびそれを用いた電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサは一般的には以下のような構成を取っている。すなわち、帯状に形成された高純度のアルミニウム箔を化学的あるいは電気化学的にエッチングを行って拡面処理するとともに、拡面処理したアルミニウム箔をホウ酸アンモニウム水溶液等の化成液中にて化成処理することによりアルミニウム箔の表面に酸化皮膜層を形成させた陽極箔と、同じく高純度のアルミニウム箔を拡面処理した陰極箔をセパレータを介して巻回してコンデンサ素子が形成される。そしてこのコンデンサ素子には駆動用の電解液が含浸され、金属製の有底筒状の外装ケースに収納される。さらに外装ケースの開口端部は弾性ゴムよりなる封口体が収納され、さらに外装ケースの開口端部を絞り加工により封口を行い、電解コンデンサを構成する。
【0003】
そして、この電解コンデンサの、コンデンサ素子に含浸される電解液としては、従来より、エチレングリコールを主溶媒とし、アジピン酸、安息香酸などのアンモニウム塩を溶質とするもの、または、γ−ブチロラクトンを主溶媒とし、フタル酸、マレイン酸などの四級化環状アミジニウム塩を溶質とするもの等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような電解コンデンサを放置すると、静電容量が減少し、漏れ電流特性が劣化し、さらには、安全弁の開弁にいたることがあるという問題点があり、このような負荷もしくは無負荷での長時間経過後の特性である放置特性は、電解コンデンサの信頼性に大きな影響を与えている。
【0005】
そこで、放置特性の良好な電解コンデンサ用電解液およびそれを用いた電解コンデンサを提供することをその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、鉄、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉛、チタン、ニオブ、タンタルから選ばれる金属の錯体にリン酸が結合した結合体からなるリン酸化合物を含み、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持したことを特徴とする。
【0007】
さらに、前記電解コンデンサ用電解液において、リン酸イオン濃度が1ppm以上であることを特徴とする。
【0010】
また、鉄、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉛、チタン、ニオブ、タンタルから選ばれる金属のリン酸金属錯体からなるリン酸化合物を含み、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持したことを特徴とする。
【0011】
そして、本発明の電解コンデンサは、前記の電解コンデンサ用電解液を用いたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、リン酸化合物を含み、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持している。すなわち、電解コンデンサは製造後、ある程度の期間常温で保管され、その後電子機器に搭載されて使用されることになるが、本発明の電解コンデンサは、この製造直後から使用の期間、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持している。この電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサの放置特性は良好である。リン酸イオン濃度をこれらの値以上に維持することによって、60℃以上の温度条件下で放置しても、アルミニウム電極箔と電解液中の水分との反応が抑制され、電極箔の劣化やガス発生による電解コンデンサの開弁が防止される。さらに、リン酸イオン濃度を0.1ppm以上に維持していると105℃以上の高温下における放置特性も良好であり、1ppm以上に維持していると125℃以上の高温下における放置特性も良好である。
【0013】
このリン酸化合物としては水溶性の金属錯体にリン酸が結合した結合体(以下、水溶性結合体)を用いることができる。この水溶性結合体は、電解液中のリン酸イオン濃度が低下するとリン酸を放出して、電解液中のリン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持する。さらに、125℃以上の高温下ではリン酸イオン濃度を1ppm以上に維持する。このことによって、放置特性は良好である。
【0014】
前記の水溶性結合体は、キレート化剤と金属または金属化合物と溶媒中でリン酸イオンを生成する化合物(以下、リン酸イオン生成性化合物)とを溶媒に溶解することによって得ることができる。この溶液中では、キレート化剤と溶媒中に溶解した金属イオンとが錯体を形成し、この錯体にリン酸イオンが結合して水溶性結合体が形成される。そして、この結合体を電解液に添加して本発明の電解コンデンサ用電解液を得ることができる。また、ここで用いる溶媒は、キレート化剤、金属または金属化合物、溶媒中でリン酸イオンを生成する化合物を溶解する溶媒であればよく、なかでも水、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0015】
前記のキレート化剤としては、以下のものが挙げられる。すなわち、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシマロン酸、α−メチルリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸等のα−ヒドロキシカルボン酸類、γ−レゾルシル酸、β−レゾルシル酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフタル酸、フェノールトリカルボン酸、アウリントリカルボン酸、エリオクロムシアニンR等の芳香族ヒドロキシカルボン酸類、スルホサリチル酸等のスルホカルボン酸類、タンニン酸等の加水分解性タンニンや縮合型タンニンを含むタンニン類、ジシアンジアミド等のグアニジン類、ガラクトース、グルコース等の糖類、リグノスルホン酸塩等のリグニン類、そして、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)等のアミノポリカルボン酸類またはこれらの塩である。これらの中では、タンニン酸、グルコン酸、DTPA、GEDTA、TTHAが好適である。そして、これらの塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を用いることができる。なお、これらのキレート化剤を二以上用いてもよい。
【0016】
金属としては、鉄、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉛、チタン、ニオブ、タンタル等、キレート化剤と錯体を形成する金属を用いることができる。また、金属化合物としては、酸化物、水酸化物、塩化物、また硫酸塩、炭酸塩等の金属塩など、溶媒中で金属イオンを生成する化合物を用いることができる。
【0017】
さらに、リン酸金属錯体を用いても、水溶性結合体と同様に、リン酸イオン濃度を維持することができる。
【0018】
そして、前記のリン酸金属錯体は、金属または金属化合物と溶媒中でリン酸イオン生成性化合物とを溶媒に溶解することによって得ることができる。この溶液中では、リン酸イオンと溶媒中に溶解した金属イオンとが錯体を形成する。そして、同様にこのリン酸金属錯体を電解液に添加して本発明の電解コンデンサ用電解液を得ることができる。また、ここで用いる溶媒は、金属または金属化合物、溶媒中でリン酸イオンを生成する化合物を溶解する溶媒であればよく、なかでも水、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0019】
金属としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉛、チタン、ニオブ、タンタル等、キレート化剤と錯体を形成する金属を用いることができる。また、金属化合物としては、酸化物、水酸化物、塩化物、また硫酸塩、炭酸塩等の金属塩など、溶媒中で金属イオンを生成する化合物を用いることができる。
【0020】
そして、前記のリン酸生成性化合物として、一般式(化1)で示されるリン化合物又はこれらの塩もしくはこれらの縮合体又はこれらの縮合体の塩を挙げることができる。
【化1】
【0021】
これらのリン酸生成性化合物としては、以下のものを挙げることができる。正リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩、これらの塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩である。正リン酸及びこの塩は、水溶液中で分解してリン酸イオンを生じる。また、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩は、水溶液中で分解して、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオンを生じ、その後に酸化してリン酸イオンとなる。
【0022】
また、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル等のリン酸化合物、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸化合物等が挙げられる。また、メチルホスフィン酸、ホスフィン酸ブチル等のホスフィン酸化合物が挙げられる。
【0023】
さらに、以下のような、縮合リン酸又はこれらの塩をあげることができる。ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等の環状の縮合リン酸、又はこのような鎖状、環状の縮合リン酸が結合したものである。そして、これらの縮合リン酸の塩として、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等を用いることができる。
【0024】
これらも、水溶液中でリン酸イオンを生ずるか、もしくは、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオンを生じ、その後に酸化してリン酸イオンとなる、リン酸生成性化合物である。
【0025】
なお、これらの中でも、容易にリン酸イオンを生ずる正リン酸またはその塩、縮合リン酸、またはリン酸化合物が好ましい。さらに、添加量に対して、比較的速やかに、多くのリン酸イオンを生ずる正リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、またはその塩が好ましい。なお、これらの化合物以外でも、水溶液中でリン酸イオンを生ずる物質であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0026】
また、電解液に含まれる溶質としては、通常電解コンデンサ用電解液に用いられる、酸の共役塩基をアニオン成分とする、アンモニウム塩、アミン塩、四級アンモニウム塩および環状アミジン化合物の四級塩が挙げられる。アミン塩を構成するアミンとしては一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8─ジアザビシクロ(5,4,0)─ウンデセン─7等)が挙げられる。第四級アンモニウム塩を構成する第四級アンモニウムとしてはテトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)、ピリジウム(1─メチルピリジウム、1─エチルピリジウム、1,3─ジエチルピリジウム等)が挙げられる。また、環状アミジン化合物の四級塩を構成するカチオンとしては、以下の化合物を四級化したカチオンが挙げられる。すなわち、イミダゾール単環化合物(1─メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4─ジメチル─2─エチルイミダゾール、1─フェニルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のオキシアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール等のニトロおよびアミノ誘導体)、ベンゾイミダゾール(1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール等)、2−イミダゾリン環を有する化合物(1─メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン等)、テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5等)等である。
【0027】
アニオン成分としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸、あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物、リン酸、炭酸、けい酸等の無機酸の共役塩基を挙げることができる。これらの中で好ましいのは、デカンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、蟻酸等の有機カルボン酸、または、硼酸、硼酸の多価アルコール錯化合物である。
【0028】
そして、溶媒としては、プロトン性極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、水、及びこれらの混合物を用いることができる。プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、等)、多価アルコール及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,3−ブタンジオール、メトキシプロピレングリコール等)などがあげられる。非プロトン性極性溶媒としては、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類(γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等)、環状アミド類(N−メチル−2−ピロリドン等)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、オキシド類(ジメチルスルホキシド等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等)〕などが代表としてあげられる。
【0029】
ここで、通常、電解コンデンサ用電解液の溶媒が水を含んでいると電極箔の劣化は顕著になるが、この場合にも本発明においては、リン酸イオンが0.01ppm以上に維持されるので、本発明の電解コンデンサの放置特性は良好である。さらに、水を主成分とした溶媒を用いた場合にも放置特性が劣化することはなく、このような溶媒を用いることによって、電解コンデンサ用電解液の比抵抗が低減でき、そのことによって電解コンデンサの低インピーダンス化を図ることができる。ここで、溶媒中の水の含有率は、35〜100wt%、好ましくは、35〜65wt%である。この範囲以上であるとインピーダンス特性が良好であり、この範囲以下では低温特性が良好である。また、水を主成分とした溶媒を用いた場合、高電圧使用などの規格外の使用によってコンデンサが故障した際にも、発火が生じるなどの問題点がなく、耐環境性も良好である。
【0030】
また、電解コンデンサの寿命特性を安定化する目的で、ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン、ニトロベンジルアルコール、2−(ニトロフェノキシ)エタノール、ニトロアニソール、ニトロフェネトール、ニトロトルエン、ジニトロベンゼン等の芳香族ニトロ化合物を添加することができる。
【0031】
また、電解コンデンサの安全性向上を目的として、電解液の耐電圧向上を図ることができる非イオン性界面活性剤、多価アルコールと酸化エチレン及び/または酸化プロピレンを付加重合して得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル化合物、ポリビニルアルコールを添加することもできる。
【0032】
また、本発明の電解コンデンサ用電解液に、硼酸、多糖類(マンニット、ソルビット、ペンタエリスリトールなど)、硼酸と多糖類との錯化合物、コロイダルシリカ等を添加することによって、さらに耐電圧の向上をはかることができる。
【0033】
また、漏れ電流の低減の目的で、オキシカルボン酸化合物等を添加することができる。
【0034】
そして、本発明の電解液はpHが上昇せず、5〜7(水溶液として50倍に希釈して測定)に維持されていることが判明した。これは、電解液中に保持されたリン酸イオンによって、電極箔の溶解が抑制され、したがって、電解質のアニオン成分が電極箔と反応することが抑制されて、pHの上昇が抑制されているものと思われる。
【0035】
以上の本発明の電解液を含有した電解コンデンサは、放置特性、すなわち、長期間にわたる負荷、無負荷試験後の特性が良好である。
【0036】
【実施例】
以下実施例を挙げて詳細に説明する。コンデンサ素子は陽極箔と、陰極箔をセパレータを介して巻回して形成する。陽極電極箔は、純度99.9%のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的あるいは電気化学的にエッチングして拡面処理した後、アジピン酸アンモニウムの水溶液中で化成処理を行い、その表面に陽極酸化皮膜層を形成したものを用いる。陰極箔として、純度99.9%のアルミニウム箔をエッチングして拡面処理した箔を用いた。
【0037】
上記のように構成したコンデンサ素子に、アルミ電解コンデンサの駆動用の電解液を含浸する。この電解液を含浸したコンデンサ素子を、有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部に、ブチルゴム製の封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を絞り加工することによりアルミ電解コンデンサの封口を行う。ここで用いる電解液は以下のように作成した。
【0038】
(実施例1)水10部に(表1)に示すキレート化剤、金属化合物、リン酸二水素アンモニウムを添加し、キレート化反応及びリン酸イオン結合反応を完結させ、水溶性結合体を作成した。次いで、この水溶性結合体の水溶液を、(表2)に示す、水、エチレングリコール、アジピン酸アンモニウムからなる電解液に添加して、本発明の電解液を作成した。なお、組成は部で示した。その比抵抗を(表2)に示す。
【0039】
以上のように構成したアルミ電解コンデンサの高温寿命試験を行った。アルミ電解コンデンサの定格は、6.3WV−5600μFである。試験条件は、105°C、定格電圧負荷、無負荷、1000時間である。そして、試験後のコンデンサを分解し、電解液のリン酸イオン濃度を測定した。それぞれの結果を(表3)〜(表4)に示す。
【0040】
(実施例2)水10部に水酸化アルミニウム0.2部、リン酸二水素アンモニウム1部を添加し、リン酸とアルミニウムの錯体反応を完結させ、リン酸アルミニウム錯体を作成した。次いで、このリン酸アルミニウム錯体の水溶液を、(表5)に示す、水、エチレングリコール、安息香酸トリエチルアミン塩からなる電解液に添加して、本発明の電解液を作成した。なお、組成は部で示した。その比抵抗を(表5)に示す。また、比較例5として水25部、エチレングリコール65部、安息香酸アンモニウム10部の電解コンデンサ用電解液を用いた。比抵抗は106Ωcmであった。
【0041】
以上のように構成したアルミ電解コンデンサの高温寿命試験を行った。アルミ電解コンデンサの定格は、50WV−820μFである。試験条件は、105°C、無負荷、3000時間である。そして、試験後のコンデンサを分解し、電解液のリン酸イオン濃度、及びpHを測定した。それぞれの結果を(表6)に示す。
【0042】
【表1】
(注)TaA :タンニン酸〔CAS:1401−55−4〕
GluA:グルコン酸
DTPA:ジエチレントリアミン六酢酸
FeSO:硫酸第二鉄
NiSO:硫酸ニッケル
CaCO:炭酸カルシウム
2PA :リン酸二水素アンモニウム
【0043】
【表2】
(注)EG :エチレングリコール
AAd :アジピン酸アンモニウム
【0044】
【表3】
(注)Cap:静電容量(μF)、tanδ:誘電損失の正接、
LC:漏れ電流(μA)、ΔCap:静電容量変化率(%)
リン酸:リン酸イオン濃度(ppm)
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
(表3)、(表4)から明らかなように、比較例は試験中に開弁しリン酸イオン濃度は0.1ppm未満となっているが、水溶性接合体を用いた実施例においては105℃、1000時間の試験でリン酸イオン濃度が0.1ppm以上に維持され良好な特性を保っている。なお、リン酸二水素アンモニウムを添加した比較例2、3においては試験後にリン酸イオン濃度が0.1ppm未満となり、リン酸イオン濃度が維持されていないことがわかる。
【0049】
また、(表6)においても、比較例は試験中に開弁しリン酸イオン濃度は0.1ppm未満となっているが、リン酸金属錯体を用いた実施例においては105℃、3000時においてもリン酸イオン濃度が0.1ppm以上に維持され良好な特性を保っている。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、電解コンデンサ用電解液にリン酸化合物を含み、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持しているので、放置後の電極箔の劣化を抑制することによって、良好な放置特性有する電解コンデンサ用電解液およびそれを用いた電解コンデンサを提供することができる。
Claims (4)
- 鉄、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉛、チタン、ニオブ、タンタルから選ばれる金属の錯体にリン酸が結合した結合体からなるリン酸化合物を含み、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持したことを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
- リン酸イオン濃度が1ppm以上である請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。
- 鉄、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、鉛、チタン、ニオブ、タンタルから選ばれる金属のリン酸金属錯体からなるリン酸化合物を含み、リン酸イオン濃度を0.01ppm以上に維持したことを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
- 請求項1記載の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサ。
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