JP6504099B2 - 活物質被覆用溶液 - Google Patents

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Description

本発明は、活物質被覆用溶液に関する。
全固体電池の分野において、従来から、固体電解質と電極活物質の界面に着目し、電極活物質の表面に固体電解質を被覆することにより、界面抵抗を低減し、電池の性能の向上を図る試みがある。
例えば、特許文献1には、正極活物質であるコバルト酸リチウムの表面をニオブ酸リチウムによって被覆することにより界面抵抗を低減し、電池の性能の向上を図るための、リチウムと、ニオブ酸のペルオキソ錯体と、クエン酸を含有する活物質被覆用溶液が開示されている。
特開2015−103321号公報
しかし、特許文献1に開示されているような活物質被覆用溶液では、ニオブ酸のペルオキソ錯体は不安定で沈殿しやすいため、ニオブ酸のペルオキソ錯体の安定性を確保し、生産効率を向上させるために、安定化剤として多量のクエン酸を添加する必要がある。そのため、活物質の熱処理後に、炭化したクエン酸によるLiイオン移動阻害が生じ、ニオブ酸リチウム被覆処理後の活物質のLiイオン伝導率が不十分であるという問題がある。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、クエン酸を少量添加するよりも保存安定性に優れる活物質被覆用溶液を提供することである。
本発明の活物質被覆用溶液は、リチウムと、ニオブ酸のペルオキソ錯体と、リン酸系イオンと、を含む、活物質被覆用溶液であって、
前記リン酸系イオンは、(PO3−、(HPO、(HPO2−、(P4−であり、
前記活物質被覆用溶液に含まれるリン酸系イオン濃度は、ニオブに対するモル比で0.02以上3.01以下であることを特徴とする。
本発明によれば、クエン酸を少量添加するよりも保存安定性に優れる活物質被覆用溶液を提供することができる。
本発明の活物質被覆用溶液は、リチウムと、ニオブ酸のペルオキソ錯体と、リン酸系イオンと、を含む、活物質被覆用溶液であって、
前記リン酸系イオンは、(PO3−、(HPO、(HPO2−、(P4−であり、
前記活物質被覆用溶液に含まれるリン酸系イオン濃度は、ニオブに対するモル比で0.02以上3.01以下であることを特徴とする。
本発明者は、活物質被覆用溶液に、安定化剤として、リン酸系イオンを添加することによって、クエン酸を少量添加するよりも保存安定性に優れることを見出した。
なお、本発明において「クエン酸を少量添加する」とは、活物質被覆用溶液に含まれるクエン酸濃度がニオブに対するモル比で0.79以下となるように、後述する錯体溶液にクエン酸を添加することをいう(比較例2〜4参照)。
ニオブ酸のペルオキソ錯体([Nb(O3−)は、特許文献1に記載されているような従来公知の方法で得ることができ、例えば、過酸化水素水へ、ニオブ酸(Nb・nH2O)を添加して混合し、得られた懸濁液へ、アンモニア水等のアルカリを添加し、混合することにより透明なニオブ酸のペルオキソ錯体を得ることができる。
ここで、当該混合の際、ニオブ酸1モルに対して、過酸化水素が8モル以上となるようにすることが好ましく、過酸化水素が反応中に分解する可能性があることを考慮すると、ニオブ酸1モルに対して、過酸化水素が10モル以上となるようにすることが更に好ましい。
また、当該懸濁液へ、アルカリとしてアンモニア水を添加する場合、ニオブ酸1モルに対して、アンモニアが1モル以上となるように添加することが好ましく、アンモニアが反応中に揮発することを考慮すると、ニオブ酸1モルに対して、アンモニアが2モル以上となるように添加することが、さらに好ましい。
さらに、当該アンモニア水に代えて、アルカリ性溶液を添加することもできる。この場合、アルカリ性溶液の添加量は、添加後の溶液のpH値が10以上、好ましくは、11以上となる量とする。当該アルカリ性溶液として、水酸化リチウム溶液を添加することもできる。
そして、得られたニオブ酸のペルオキソ錯体を含有する水溶液に、リチウム化合物を添加することにより、リチウムとニオブ酸のペルオキソ錯体とを含有する溶液を得ることができる。添加するリチウム化合物のリチウムのモル数は、前記水溶液中に含まれるニオブ酸のペルオキソ錯体のニオブのモル数に対して、任意に設定することが出来る。添加するリチウム化合物のリチウムのモル数は、前記水溶液中に含まれるニオブ錯体のニオブのモル数に対して、任意に設定することができ、ニオブ1モルに対してリチウムが1以上、1.3モル以下であることが好ましい。
リチウム化合物としては、水酸化リチウム(LiOH)、硝酸リチウム(LiNO)、硫酸リチウム(LiSO)等が挙げられる。
活物質被覆用溶液に、含まれるリン酸系イオンは、(PO3−、(HPO、(HPO2−、(P4−である。
上記リチウムとニオブ酸のペルオキソ錯体とを含有する溶液に安定化剤として添加するリン酸系化合物としては、例えば、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ピロリン酸四ナトリウム等が挙げられる。
活物質被覆用溶液に含まれるリン酸系イオン濃度は、下限値は、ニオブに対するモル比で0.02以上であり、上限値は、ニオブに対するモル比で3.01以下であり、1.00以下が好ましく、0.71以下がより好ましい。
(実施例1)
[ペルオキソ錯体溶液の調製]
濃度30質量%の過酸化水素水43.5gへ、イオン交換水49.5g、ニオブ酸(Nb・nHO(Nb含有率77%))2.08gを添加した。
次に、濃度28質量%のアンモニア水4.4gを添加し、十分に攪拌して透明溶液を得た。
得られた透明溶液に水酸化リチウム・1水和物(LiOH・HO)0.5gを加えて、リチウムとニオブ錯体とを含有する水溶液を得た。
得られた錯体溶液のLi、Nbのモル濃度は各0.12mol/kgであった。
[安定化剤の添加]
上記錯体溶液に安定化剤としてリン酸を添加し混合し、活物質被覆用溶液を得た。
リン酸の添加量はニオブに対するモル比で0.02とした。
[吸光度、pHの測定]
得られた活物質被覆用溶液を室温にて静置した。
そして、吸光度、及び、pHの変化を記録した。結果を表1に示す。
吸光度、及び、pHは以下の装置を用いて測定した。
吸光度:分光光度計(UV−3600、島津製作所社製)。420〜780nmにおける最大吸光度を吸光度とした。
pH:pHメーター(D−72、堀場製作所社製)。
[Liイオン伝導率測定]
上記活物質被覆用溶液をホットプレート上で乾燥後(120℃)、熱処理(大気雰囲気、200℃、5h)を加えることでLiNbO粉体を得た。
内径断面積1cmの筒状セラミックスに、得られたLiNbO粉体100mgを入れ、平滑にし、4.3tonで1分プレスし、ペレット化した後、ステンレス棒を両極に入れ、1tonで拘束して、Liイオン伝導率測定セルとした。
ナイキストプロットにより得られた円弧をイオン移動抵抗とし、ペレット厚みよりLiNbOのLiイオン伝導率を計算した。結果を表1に示す。
(実施例2〜9、参考例10、実施例11〜25)
上記錯体溶液に、安定化剤として、リン酸(実施例2〜9、参考例10)、リン酸二水素アンモニウム(実施例11〜16)、リン酸水素二アンモニウム(実施例17〜21)、ピロリン酸四ナトリウム(実施例22〜26)を、表1〜4に示すニオブに対するモル比になる量を添加し、混合したこと以外は、実施例1と同様に活物質被覆用溶液を得た。
そして、実施例1と同様に吸光度、pH、Liイオン伝導率を測定した。結果を表1(実施例2〜9、参考例10)、表2(実施例11〜16)、表3(実施例17〜21)、表4(実施例22〜26)に示す。
(比較例1)
上記錯体溶液に、安定化剤として、リン酸を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に活物質被覆用溶液を得た。
そして、実施例1と同様に吸光度、pH、Liイオン伝導率を測定した。結果を表5に示す。
(比較例2〜47)
上記錯体溶液に、安定化剤として、クエン酸(比較例2〜6)、アセトアニリド(比較例7〜11)、尿酸(比較例12〜16)、塩酸(比較例17〜22)、ホウ酸(比較例23〜27)、硫酸(比較例28〜32)、硝酸(比較例33〜37)、ホスホン酸(比較例38〜42)、ホスフィン酸(比較例43〜47)を、表6〜14に示すニオブに対するモル比になる量を添加し、混合したこと以外は、実施例1と同様に活物質被覆用溶液を得た。
そして、実施例1と同様に吸光度、pH、Liイオン伝導率を測定した。結果を表6(比較例2〜6)、表7(比較例7〜11)、表8(比較例12〜16)、表9(比較例17〜22)、表10(比較例23〜27)、表11(比較例28〜32)、表12(比較例33〜37)、表13(比較例38〜42)、表14(比較例43〜47)に示す。
表1〜4の実施例で示すようにリン酸系イオンを添加することで、表6に示すクエン酸を少量添加した比較例2〜4に対して沈殿までの時間が大幅に延長されることがわかった。すなわち、少量のクエン酸(比較例2〜4)では、14時間以上の保存安定性効果は得られないが、実施例1〜9、11〜26では、14時間以上の保存安定性効果が得られ、さらに、実施例1〜9、11〜20、22〜26では、77時間以上の保存安定性効果が得られることがわかる。
一方、表1〜4で示すようにリン酸系イオンの添加量の増加に伴いLiイオン伝導率は低下することがわかる。しかし、実施例1〜7、11〜13、15、17〜21では、比較例2よりもLiイオン伝導率が高いことがわかる。
表7〜8で示すようにアセトアニリド(比較例7〜11)、尿酸(12〜16)の結果より、アセトアニリドでは77時間以上の保存安定性効果は得られず、尿酸では保存安定性効果は得られないことがわかる。したがって、過酸化水素安定剤の全てに優れた保存安定性効果があるわけではないことがわかる。
表9〜12で示すように塩酸(比較例17〜22)、ホウ酸(比較例23〜27)、硫酸(比較例28〜32)、硝酸(比較例33〜37)の結果より、塩酸では75時間以上の保存安定性効果は得られず、ホウ酸、硫酸、及び、硝酸では69時間以上の保存安定性効果は得られないことがわかる。したがって、無機酸の全てに優れた保存安定性効果があるわけではないことがわかる。
表13〜14で示すようにホスホン酸(比較例38〜42)、ホスフィン酸(比較例43〜47)の結果より、ホスホン酸、及び、ホスフィン酸では69時間以上の保存安定性効果は得られないことがわかる。したがって、リン化合物の全てに優れた保存安定性効果があるわけではないことがわかる。
以上の結果から、詳細メカニズムは不明だが、リン酸(イオン)が部分配位等、ニオブ酸のペルオキソ錯体に対して何らかの安定化効果をもつため、少量添加で溶液の保存安定性が向上したと推定される。

Claims (1)

  1. リチウムと、ニオブ酸のペルオキソ錯体と、リン酸系イオンと、を含む、活物質被覆用溶液であって、
    前記リン酸系イオンは、(PO3−、(HPO、(HPO2−、(P4−であり、
    前記活物質被覆用溶液に含まれるリン酸系イオン濃度は、ニオブに対するモル比で0.02以上3.01以下であることを特徴とする活物質被覆用溶液。
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