JP2011216744A - アルミニウム電解コンデンサ用電解液及びアルミニウム電解コンデンサ - Google Patents

アルミニウム電解コンデンサ用電解液及びアルミニウム電解コンデンサ Download PDF

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淳一 川上
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Shingo Takeuchi
慎吾 竹内
Tadashi Ozawa
正 小澤
Atsushi Kiyoi
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Abstract

【課題】低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長い電解コンデンサを与える電解液を提供する。
【解決手段】電解液は、水と有機溶媒とから成る溶媒と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤と、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から選択された化合物とを含む。ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から選択された化合物は、多くとも50℃での飽和溶解量で含まれる。
【選択図】図1

Description

本発明は、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサを与えることが可能なアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関する。本発明はまた、この電解液を用いた、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサに関する。
アルミニウム電解コンデンサは、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、アルミニウム箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとが密封ケース内に収容された構造を有しており、巻回型、積層型等の形状のものが広く使用されている。
そして、小型、低圧用のアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液として、エチレングリコールを主溶媒とし、アジピン酸、安息香酸などのカルボン酸又はそのアンモニウム塩などを電解質とした電解液と、γ−ブチロラクトンを主溶媒とし、フタル酸、マレイン酸などのカルボン酸の四級化環状アミジニウム塩などを電解質とした電解液とが従来から知られている。
このようなアルミニウム電解コンデンサには、近年の電子機器の小型化に伴い、低インピーダンス特性が要求されている。また、高周波数条件下でのコンデンサの使用においても低インピーダンス特性が要求される。この要求に対応するには、比抵抗の低い高電導度の電解液の使用が望ましいため、エチレングリコールを主溶媒とし、カルボン酸及び/又はカルボン酸塩を電解質とした電解液を基礎として、電解液の水含有量を増加させることにより比抵抗を低下させる検討がなされてきた。
しかし、電解液中の水や電解質のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩は、アルミニウム箔からなる陽極及び陰極にとっては化学的に活性な物質である。電極表面の酸化アルミニウム皮膜がカルボン酸アニオンとの反応により溶解し、アルミニウムのカルボン酸錯体が生成する。また、水が電極の酸化アルミニウム皮膜を通してアルミニウムに達すると、アルミニウムが溶解して水酸化物が生成し、この反応と同時に水素ガスが発生する。そのため、電解液の水含有量を増加させると、電極箔が劣化し、漏れ電流が増加し、コンデンサの短寿命化を招くという問題があった。特に105℃以上の高温寿命試験においては、溶媒の水含有量が15質量%を超えると、急激な上記反応により水素ガスが大量に発生し、コンデンサ内の圧力が増加し、安全弁の開弁に至り、使用に耐えなくなるという問題があった。
このような電極箔の劣化の防止のために、リン酸を電解液に添加する方法が従来から知られている。リン酸イオンが電解液中に適量存在すると、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、アルミニウムの水酸化物等の生成が抑制され、水素ガスの発生も抑制される。
しかしながら、電解液にリン酸を添加しても、リン酸イオンが電解液に溶解したアルミニウムイオンと結合して電解液に不溶な化合物を形成し、この不溶性化合物が電極箔に付着し、リン酸イオンが電解液中から消失してしまうため、リン酸イオンによる電極箔の劣化防止効果は十分なものとはいえなかった。また、電解液に対するリン酸の添加量が多すぎても、電極表面の酸化アルミニウム皮膜がリン酸イオンとの反応により溶解し、アルミニウム電解コンデンサの漏れ電流が増大するという問題が発生する。このような問題に対し、出願人は、リン酸イオンが電解液中に適量存在する間はコンデンサ特性が良好に保たれることに着目し、特許文献1(WO00/55876号パンフレット)において、水を含む電解液に水溶液中でリン酸イオンを生成する化合物とアルミニウムに配位して水溶性アルミニウムキレート錯体を形成するキレート化剤とを添加し、電極箔から溶出したアルミニウムイオンと上記キレート化剤とリン酸イオンとの反応により水溶性アルミニウムキレート錯体とリン酸イオンとの結合体を電解液中で形成させる方法を開示している。この水溶性アルミニウムキレート錯体とリン酸イオンとの結合体は、電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリン酸イオンと化学平衡を保つため、電解液中にリン酸イオンを適量で存在させる時間を長期化させることができ、陽極及び陰極の劣化を長期間防止することができる。
出願人はまた、本出願時には未だ公開されていない国際出願番号PCT/JP2009/003262において、水を含む溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、上記電解液が、上記電解質として、アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物とを含有し、上記アゼライン酸及びアゼライン酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量が、少なくとも上記溶媒1kg当たり0.03モルであり、多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電解液を開示している。
WO00/55876号パンフレット
特許文献1(WO00/55876号パンフレット)に開示された方法によると、電解液の水含有量を増加させても電極箔のアルミニウムの溶解とアルミニウムの水酸化物等の生成及び水素ガスの発生を抑制することができるため、アルミニウム電解コンデンサの低インピーダンス化及び長寿命化を達成することができる。しかしながら、アルミニウム電解コンデンサに対するさらなる低インピーダンス化及び長寿命化の要請は常に存在する。
このさらなる要請に応えるべく、電解液の水含有量を増加させた上に、電解質としてギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から選択されたカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を使用すると、電解液の比抵抗を良好に低下させることができるものの、カルボン酸アニオンと酸化アルミニウム皮膜との反応及び水とアルミニウムとの反応が顕著になり、電極箔からのアルミニウムの溶出を十分に抑制することができなくなるため、リン酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を電解液中に存在させても、コンデンサの寿命が十分に満足のいくものにならないことがわかった。特に、電解質としてギ酸及び/又はギ酸塩を使用した場合には、電解液の比抵抗が顕著に低下するものの、コンデンサの寿命も顕著に短縮した。
そこで、発明者らは、上述の要請に応えるべく鋭意検討し、国際出願番号PCT/JP2009/003262において、低インピーダンス特性を有する上に長寿命なアルミニウム電解コンデンサを与える上述の電解液を提案している。この電解液によると、電解液の30℃における比抵抗を10〜30Ωcmに低下させても、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制され、その結果、105℃無負荷試験4000時間経過後でも安全弁が開弁しない長寿命な電解コンデンサが得られている。
本発明の目的は、アゼライン酸及びアゼライン酸塩とは異なる化合物を使用することにより、同等以上の長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサ、特に高温寿命試験においても長寿命を示すアルミニウム電解コンデンサを提供することである。
発明者らは、鋭意検討した結果、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を極めて少量電解液中に存在させることにより、上述の目的が達成されることを発見した。ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物は、アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩のモル量の約1/10だけ電解液中に添加しただけでも、アルミニウム電解コンデンサを長寿命へと導く。現時点では明確でないが、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩は、単に電解質として作用しているだけでなく、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極の表面に付着して保護層を形成していると考えられる。
従って、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、水と有機溶媒とから成る溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、上記電解液が、上記電解質として、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物とを含有し、上記ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量が多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量であることを特徴とする。
本発明において、「リンオキソ酸イオン」には、リン酸イオンの他、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、これらの異性体であるホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオンが含まれ、「リンオキソ酸イオン生成性化合物」には、この化合物を上記溶媒に溶解した段階でリンオキソ酸イオンを生成する化合物のほか、電解液をアルミニウム電解コンデンサに導入した後の陽極での酸化を介してリンオキソ酸イオンを生成する化合物も含まれる。また、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、水を多く含有するため、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成する化合物は上記電解液中でもリンオキソ酸イオンを生成し、アルミニウムに配位して水溶性アルミニウムキレート錯体を形成するキレート化剤は上記電解液に溶解するアルミニウムキレート錯体を形成する。
本発明の電解液において、電解液中にアルミニウムイオンが共存すれば、アルミニウムイオンと、上記キレート化剤と、上記リンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が電解液中に形成される。アルミニウム塩などを電解液に添加することにより電解液中に予めアルミニウムイオンを含有させても良いが、上記キレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物を含有しているがアルミニウムイオンを含有していない電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入しても、アルミニウムイオンが電極箔から溶出するため、アルミニウム電解コンデンサ内の電解液にはリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が含まれることになる。
本発明の電解液では、電解液中の水含有量を増加させ、電解液の比抵抗を良好に低下させるギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を電解質として使用し、さらにウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物を極めて少量共存させることにより、30℃における比抵抗が約70Ωcm以下である電解液を得ることができる上に、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の作用により、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生を抑制することができる。さらに、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を電解液中に共存させることにより、この結合体が電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリンオキソ酸イオンと化学平衡を保ち、電解液中にリンオキソ酸イオンを適量で存在させる時間を長期化させることができるため、このリンオキソ酸イオンによっても、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生を抑制することができる。そして、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から選択された化合物と上記結合体との複合効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生が驚くほど抑制される。その結果、電解液の低比抵抗化のために、電解液の水含有量を増加させ、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を電解質として使用しても、長寿命なアルミニウム電解コンデンサを得ることができる。
本発明の電解液において、アルミニウム電解コンデンサ用電解液におけるウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量は、多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量である。通常のアルミニウム電解コンデンサの使用条件下ではコンデンサ内の電解液の温度が50℃以上であるので、通常のコンデンサの使用条件下ではウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物は電解液に完全に溶解して電解質として作用する。ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸、及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物が上記電解液における50℃での飽和溶解量より多いと、低温でのウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の電解液からの析出が顕著になるため好ましくない。
なお、本発明では、水と有機溶媒とから成る溶媒に、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物以外の成分を溶解した液を調製し、この液を70℃に加温した状態で所望量のウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸、及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物を添加して溶解させた後、液の温度を50℃に低下させ、50℃で1時間放置後にも沈殿物が認められなかった場合に、添加したウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物は上記電解液における50℃での飽和溶解量以下の量であるとした。
ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物は、国際出願番号PCT/JP2009/003262に開示された電解液において使用されているアゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩に比較して、水と有機溶媒とから成る溶媒に溶解しにくいため、電解液の低比抵抗化の点では不利であるが、極めて少量(アゼライン酸及び/又はアゼライン酸塩の約1/10)で電解液の長寿命化を達成することができるため、経済的に有利である。
本発明において、上記リンオキソ酸イオン生成性化合物は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、及びこれらの塩;リン酸及びアルキルリン酸のエステル、ホスホン酸及びジホスホン酸のエステル及び誘導体、ホスフィン酸エステル、及びこれらの塩;並びにこれらの縮合体及びこれらの縮合体の塩から成る群から好適に選択することができ、上記キレート化剤は、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシマロン酸、α−メチルリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸、γ−レゾルシル酸、β−レゾルシル酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフタル酸、フェノールトリカルボン酸、アルミノン、エリオクロムシアニンR、スルホサリチル酸、タンニン酸、ジシアンジアミド、ガラクトース、グルコース、リグノスルホン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)及びこれらの塩から成る群から好適に選択することができる。
水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤を含有し、さらに極めて少量のウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物とを含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入することにより、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサが得られる。したがって、本発明はまた、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、アルミニウム箔からなる陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサであって、電解液として上述した本発明の電解液が使用されており、従ってコンデンサ内の電解液中に水溶性アルミニウムキレート錯体とリンオキソ酸イオンとの結合体と極めて少量のウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から選択された化合物とが含まれていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサを提供する。
アルミニウム電解コンデンサの寿命は、電解液ばかりでなく電極箔によっても影響を受ける。電解液と電極箔との密接な相互作用により、コンデンサの寿命が決定されるからである。発明者らは、電極箔についても鋭意検討した結果、陽極の酸化アルミニウム皮膜にリンを含有させることにより、酸化アルミニウム皮膜が電解質のカルボン酸アニオンによって溶解されにくくなることを発見した。したがって、上述の本発明の電解液が使用されているアルミニウム電解コンデンサにおいても、陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有しているのが好ましい。
水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤を含有し、さらに極めて少量のウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物とを電解質として含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液によると、アルミニウム電解コンデンサ内に導入された電解液中にリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が形成され、この結合体と極めて少量のウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物との複合効果により、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成とこれに伴う水素ガスの発生が驚くほど抑制される。従って、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液の使用により、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサが得られる。
電極からのアルミニウムの溶解に対する直鎖状ジカルボン酸の抑制効果を調査した結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
水と有機溶媒とから成る溶媒と、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤とを含有する本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、上記電解質として、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物とを含有する。ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の含有量は、多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量である。本発明の電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入すると、陽極及び陰極から電解液中に溶出したアルミニウムイオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が電解液中に形成される。電解液の比抵抗を効果的に低下させるギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物が存在しても、極めて少量のウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物と、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体との複合効果により、長寿命を有するアルミニウム電解コンデンサが得られる。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液では、水と有機溶媒とから成る混合溶媒を使用する。使用可能な有機溶媒としては、プロトン性極性溶媒である一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,3−ブタンジオール、メトキシプロピレングリコール等)、非プロトン性溶媒であるアミド類(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、ラクトン類、環状アミド類、カーボネート類(γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ニトリル類(アセトニトリル)、オキシド類(ジメチルスルホキシド等)などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上の有機溶媒を使用しても良い。特に、水とエチレングリコールとを混合した溶媒は、各種溶質の溶解度が高く、温度特性に優れる電解液を与えるため好ましい。
本発明の電解液における水の含有量は、好ましくは電解液全体の20〜65質量%、より好ましくは25〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。水が20質量%より少ないと、低温での電解液の比抵抗が大きくなり、65質量%より多いと、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の溶解量が低下し、本発明の十分な効果が得られにくくなる。電解液における溶媒の含有量は、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の溶解度の観点から、電解液全体の70〜90質量%であるのが好ましい。
本発明の電解液は、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質として、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物を必須成分として含む。ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸塩としては、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ジメチルジエチルアンモニウム塩等)、ピリジウム塩(1−メチルピリジウム塩、1−エチルピリジウム塩、1,3−ジエチルピリジウム塩等)、アミン塩、例えば、一級アミン塩(メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩等)、二級アミン塩(ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジプロピルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、ジエタノールアミン塩等)、三級アミン塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7塩、トリエタノールアミン塩等)を例示することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
本発明の電解液は、カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質として、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の他に、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を必須成分として含む。これらの化合物は、電解液の比抵抗を効果的に低下させる。ギ酸塩、アジピン酸塩、グルタル酸塩としては、これらのアンモニウム塩、4級アンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ジメチルジエチルアンモニウム塩等)、ピリジウム塩(1−メチルピリジウム塩、1−エチルピリジウム塩、1,3−ジエチルピリジウム塩等)、アミン塩、例えば、一級アミン塩(メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩等)、二級アミン塩(ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジプロピルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、ジエタノールアミン塩等)、三級アミン塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7塩、トリエタノールアミン塩等)を例示することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。
図1は、水45重量部、エチレングリコール45重量部、ギ酸8重量部及びアジピン酸4重量部を含み、アンモニア水で中和した溶液に、アジピン酸0.78重量部(溶媒1kg当たり0.059モル)、セバシン酸1.07重量部(溶媒1kg当たり0.059モル)、ウンデカン二酸0.57重量部(溶媒1kg当たり0.029モル)、ドデカン二酸0.31重量部(溶媒1kg当たり0.015モル)、トリデカン二酸0.32重量部(溶媒1kg当たり0.015モル)、テトラデカン二酸0.34重量部(溶媒1kg当たり0.015モル)のいずれかを溶解させた浸漬液6種類を用意し、表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる電極をこれらの浸漬液に浸漬し、電極から溶解したアルミニウムイオン量をICP発光分析法により測定した結果を示している。図1より、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸が溶液中に極めて少量存在するだけで、ギ酸及びアジピン酸が共存していても、溶液中にアルミニウムイオンがほとんど認められないことがわかる。また、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸は、約2倍モル量のセバシン酸或いは等モル量のテトラデカン二酸よりも優れた電極溶解抑制効果を示すことがわかる。現時点では明確ではないが、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩は、単に電解質として作用しているだけでなく、アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極の表面に付着して保護層を形成していると考えられる。
本発明の電解液において、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びはトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の最大含有量を、上記電解液における50℃での飽和溶解量とすることができる。2種以上の化合物を使用する場合には、総量が多くとも上記電解液における50℃での飽和溶解量である。
ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物が、上記電解液における50℃での飽和溶解量より多いと、低温でのこれらの化合物の電解液からの析出が顕著になるため好ましくない。アルミニウム電解コンデンサ内の電解液からこれらの化合物が析出すると、電解液のpHが大きくなり、電極箔のアルミニウムの溶解が進行する場合がある。これらの化合物の含有量が50℃での飽和溶解量以下であれば、低温でこれらの化合物が析出しても、電解液のpHが電極箔のアルミニウムの溶解を進行させるほどには変化しない。
ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の50℃での飽和溶解量は、電解液の水含有量及び共存するギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物の含有量によって左右される。ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物の50℃での飽和溶解量は、電解液の水含有量が少なくなるほど多くなり、共存するギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物の含有量が多くなるほど少なくなる。大まかな目安としては、電解液の水含有量が電解液全体の30質量%のときは、上記溶媒1kg当たり約0.05モルであり、電解液の水含有量が電解液全体の50質量%のときは、上記溶媒1kg当たり約0.03モルである。
ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物は、極めて少量であっても優れた電極溶解抑制効果を示すが、少なくとも上記溶媒1kg当たり0.003モルの量で使用するのが好ましい。2種以上の化合物を使用する場合には、総量が少なくとも上記溶媒1kg当たり0.003モルである。
アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩は、電解液の比抵抗を低下させる点では、ギ酸及びギ酸塩に及ばないが、アジピン酸アニオン、グルタル酸アニオンによる酸化アルミニウム皮膜の溶解が、ギ酸アニオンによる酸化アルミニウム皮膜の溶解に比較して緩やかであるため、アルミニウム電解コンデンサのさらなる長寿命化の点で好ましい。一方、ギ酸及び/又はギ酸塩は、少量使用するだけで、電解液の比抵抗を顕著に低下させる。
そのため、本発明では、長寿命な上に特に低いインピーダンス特性を有するアルミニウム電解コンデンサを得るための電解液には、ギ酸及びその塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物が主に使用され、低いインピーダンス特性を有する上に極めて長寿命なアルミニウム電解コンデンサを得るための電解液には、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から選択された少なくとも1種の化合物が主に使用される。
電解液の水含有量が少なくなるほど、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量を増加させることができるが、これらの化合物の濃度が高濃度になるにつれ、電解液の比抵抗を低下させる効果が添加量に比例しなくなる。また、アルミニウム電解コンデンサ内の電解液からギ酸、アジピン酸、或いはグルタル酸又はこれらの塩が析出すると、電解液のpHが大きくなり、電極箔のアルミニウムの溶解とアルミニウムの水酸化物等の生成及び水素ガスの発生が進行する場合がある。
そのため、長寿命な上に特に低いインピーダンス特性を有するアルミニウム電解コンデンサを得るためには、上記電解液に、ギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を上記溶媒1kg当たり0.5〜3.0モルの量で含有させ、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を上記溶媒1kg当たり0〜1.5モルの量で含有させるのが好ましい。
上記電解液において、ギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された化合物の含有量が上記溶媒1kg当たり0.5モルより少ないと、比抵抗が特に低い電解液が得られず、3.0モルより多いと、電極のアルミニウムの溶解が進行し、コンデンサの寿命が短縮する。また、ギ酸及びギ酸塩から成る群から選択された化合物と共にアジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物を使用する場合には、上記溶媒1kg当たり1.5モルより多いと、電極のアルミニウムの溶解が進行し、コンデンサの寿命が短縮する。
また、低いインピーダンス特性を有する上に極めて長寿命なアルミニウム電解コンデンサを得るためには、上記電解液に、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物を、ギ酸及び/又はギ酸塩の不存在下で、上記溶媒1kg当たり0.45〜2.0モルの量で含有させるのが好ましい。
本発明の電解液は、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物とを必須成分として含むが、これらの化合物以外のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を電解質として含むことができる。使用可能なカルボン酸としては、酢酸、ブタン酸、コハク酸、ピメリン酸、マロン酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等の分枝状デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等の分枝状オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を例示することができる。
また、カルボン酸塩としては、上記カルボン酸のアンモニウム塩、4級アンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、メチルトリエチルアンモニウム塩、ジメチルジエチルアンモニウム塩等)、ピリジウム塩(1−メチルピリジウム塩、1−エチルピリジウム塩、1,3−ジエチルピリジウム塩等)、アミン塩、例えば、一級アミン塩(メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩等)、二級アミン塩(ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジプロピルアミン塩、エチルメチルアミン塩、ジフェニルアミン塩、ジエタノールアミン塩等)、三級アミン塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7塩、トリエタノールアミン塩等)を例示することができる。
さらに、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸等のアニオンと、四級化環状アミジニウムイオンとの塩を使用することもできる。カチオン成分となる四級化環状アミジニウムイオンは、N,N,N’−置換アミジン基をもつ環状化合物を四級化したカチオンであり、N,N,N’−置換アミジン基をもつ環状化合物としては、イミダゾール単環化合物(1−メチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール等のイミダゾール同族体、1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール等のオキシアルキル誘導体、1−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール等のニトロ誘導体、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール等のアミノ誘導体等)、ベンゾイミダゾール化合物(1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンゾイミダゾール、1−メチル−5(6)−ニトロベンゾイミダゾール等)、2−イミダゾリン環を有する化合物(1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン、1−エチル−2−メチル−イミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン等)、テトラヒドロピリミジン環を有する化合物(1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノネン−5等)等を挙げることができる。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、さらに、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物を含有する。
リンオキソ酸イオン生成性化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、及びこれらの塩;リン酸及びアルキルリン酸のエステル、ホスホン酸及びジホスホン酸のエステル及び誘導体、ホスフィン酸エステル、及びこれらの塩;並びにこれらの縮合体及びこれらの縮合体の塩から選択して使用することができる。
まず、リンオキソ酸イオン生成性化合物として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びこれらの塩を用いることができる。リン酸、亜リン酸、次亜リン酸の塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などを挙げることができる。リン酸及びこの塩は、水溶液中で分解してリン酸イオンを生じる。また、亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらの塩は、水溶液中で、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、これらの異性体であるホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオンを生じ、さらにアルミニウム電解コンデンサの陽極での酸化を介してリン酸イオンを生ずる。
また、リンオキソ酸イオン生成性化合物として、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル等のリン酸及びアルキルリン酸のエステル;ホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸及びジホスホン酸、ホスホン酸及びジホスホン酸のエステル及び誘導体;メチルホスフィン酸等のホスフィン酸、ホスフィン酸ブチル等のホスフィン酸エステル;及び、これらのアンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の塩を使用することができる。これらのうちで好ましいのは、リン酸ジブチル、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、又はこれらの塩である。
また、リンオキソ酸イオン生成性化合物として、リン酸の縮合体である縮合リン酸及びこれらの塩が用いられる。この縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等の環状の縮合リン酸、及びこのような鎖状、環状の縮合リン酸が結合したものを用いることができる。そして、これらの縮合リン酸の塩として、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等を用いることができる。これらのうちで好ましいのは、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸及びこれらの塩であり、さらに好ましいのは、ピロリン酸、トリポリリン酸及びこれらの塩であり、最も好ましいのは、トリポリリン酸及びその塩とである。
さらに、上述のリンオキソ酸イオン生成性化合物の縮合体又はその塩を使用することもできる。縮合体の塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等を用いることができる。
上述のリンオキソ酸イオン生成性化合物は、水溶液中でリン酸イオンを生ずるか、若しくは、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、これらの異性体であるホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオンを生じ、さらにアルミニウム電解コンデンサの陽極での酸化を介してリン酸イオンを生ずる。
これらの中でも、容易にリン酸イオンを生ずるリン酸及びその塩、縮合リン酸、及びリン酸の誘導体、例えばリン酸及びアルキルリン酸のエステル、が好ましい。さらに、添加量に対して比較的速やかに多くのリン酸イオンを生じるリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等の直鎖状の縮合リン酸及びその塩も好ましい。なお、これらのリンオキソ酸イオン生成性化合物以外でも、水溶液中でリンオキソ酸イオンを生ずる物質であれば、本発明の効果を得ることができる。
リンオキソ酸イオン生成性化合物も、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。リンオキソ酸イオン生成性化合物の量は、電解液全体の0.01〜5.0質量%、好ましくは0.2〜3.0質量%である。この範囲外では効果が低減する。
アルミニウム電解コンデンサ用電解液は、さらに、アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤を含有する。
上記キレート化剤としては、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシマロン酸、α−メチルリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸等のα−ヒドロキシカルボン酸類、γ−レゾルシル酸、β−レゾルシル酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフタル酸、フェノールトリカルボン酸、アルミノン、エリオクロムシアニンR等の芳香族ヒドロキシカルボン酸類、スルホサリチル酸等のスルホカルボン酸類、タンニン酸等のタンニン類、ジシアンジアミド等のグアニジン類、ガラクトース、グルコース等の糖類、リグノスルホン酸塩等のリグニン類、そして、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)等のアミノポリカルボン酸類、及びこれらの塩を挙げることができる。これらの塩としては、アンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を用いることができる。
これらのうちで好ましいのは、アルミニウムとのキレート錯体を形成しやすい、タンニン酸、トリヒドロキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、アウリントリカルボン酸、γ−レゾルシル酸、DTPA、EDTA、GEDTA、HEDTA、TTHA又はこれらの塩であり、さらに好ましいのは、タンニン酸、トリヒドロキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、γ−レゾルシル酸及びアウリントリカルボン酸、DTPA、GEDTA、HEDTA、TTHA、及びこれらの塩である。
これらのキレート化剤も、単一の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良い。そして、これらのキレート化剤の添加量は、電解液全体の0.01〜3.0質量%、好ましくは0.1〜2.0質量%である。この範囲外では効果が低減する。
電解液作成時に添加するキレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物は、電解液中のキレート化剤とリンオキソ酸イオンが、モル比にしてキレート化剤:リンオキソ酸イオン=1:20〜3:1、好ましくは、1:10〜1:1になるように添加される。キレート化剤がこの比率より少ないとアルミニウム電解コンデンサの漏れ電流特性が低下する。また、キレート化剤がこの比率より多いと、理由は定かではないがアルミニウム電解コンデンサの高温寿命特性が劣化する。
電解液にアルミニウムイオンが共存すれば、上記キレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとアルミニウムイオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が電解液中に形成される。アルミニウム塩などの添加により電解液に予めアルミニウムイオンを含有させることにより、電解液中にリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体を形成させ、この電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入することができる。しかしながら、キレート化剤とリンオキソ酸イオン生成性化合物を含有しているがアルミニウムイオンを含有していない電解液をアルミニウム電解コンデンサ内に導入しても、アルミニウムイオンが電極箔から溶出するため、アルミニウム電解コンデンサ内の電解液にはリンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が含まれることになる。そして、この結合体が電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリンオキソ酸イオンと化学平衡を保ち、電解液中のリンオキソ酸イオンを適量に保つ。その結果、電解液中のリンオキソ酸イオンと結合体中のリンオキソ酸イオンが、コンデンサの放置後長期間にわたって検出される。この電解液中に適量存在するリンオキソ酸イオンが、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、アルミニウムの水酸化物等の生成を抑制し、水素の発生を抑制するので、アルミニウム電解コンデンサの放置特性が向上する。そして、本発明の電解液では、この結合体とウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物との複合効果により、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、水酸化物等の生成及び水素ガスの発生が驚くほど抑制される。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、上述の各成分に加えて、他の成分を含んでいても良い。
例えば、カルボン酸及びその塩以外の電解質として、ホウ酸、ホウ酸と多価アルコールより得られるホウ酸の多価アルコール錯化合物、炭酸、ケイ酸等の無機酸を含んでいても良く、耐電圧の向上を図る目的で、マンニット、ノニオン性界面活性剤、コロイダルシリカ等を電解液に添加しても良い。
さらに、特に高温下で急激に発生する水素を吸収する目的で、p−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロアニソール、m−ニトロアニソール、o−ニトロアニソールなどのニトロ化合物を含んでいても良い。
本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、水と有機溶媒とから成る溶媒に、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された化合物と、リンオキソ酸イオン生成性化合物と、キレート化剤とを、必要に応じて他の添加物と共に溶解することによって得ることができる。電解質として、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸の少なくともいずれかと、ギ酸、アジピン酸及びグルタル酸の少なくともいずれかを使用し、アンモニアガス又はジメチルアミン、ジエチルアミン等のアミンで中和することによりpHを調整しても良い。pHは5.5〜6.2の範囲に調整するのが好ましい。pHが5.5より低く、或いはpHが6.2より高いと、陽極及び陰極の劣化が進行する場合がある。
上述の本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータとを備えたアルミニウム電解コンデンサにおいて好適に使用される。
陽極及び陰極を構成する高純度アルミニウム箔には、その表面積を増大させるため、化学的或いは電気化学的なエッチング処理が施され、次いで、陽極を構成するアルミニウム箔に対して化成処理が施され、表面に酸化アルミニウム皮膜が形成される。化成処理は、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等の化成液を使用して行われる。
このようにして得られた陽極及び陰極間に、マニラ麻、クラフト紙等のセパレータを介在させてコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に本発明のアルミニウム電解コンデンサ用電解液を含浸させ、さらに密封ケース内に収容してアルミニウム電解コンデンサを構成する。
陽極の酸化アルミニウム皮膜中にリンが含まれていると、陽極のアルミニウムの溶解が抑制されることがわかっている。
水と有機溶媒とから成る溶媒を用いた電解液中に、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が存在し、この結合体が電解液に溶解した状態或いは電極箔に付着した状態で電解液中のリンオキソ酸イオンと化学平衡を保ち、電解液中にリンオキソ酸イオンが適量で存在している間は、陽極及び陰極のアルミニウムの溶解、アルミニウムの水酸化物等の生成が抑制され、水素ガスの発生も抑制される。しかし、陽極の酸化アルミニウム皮膜が電解質のカルボン酸アニオンによって溶解すると、アルミニウムの電解液中への溶出が加速し、この電解液中に溶出したアルミニウムイオンによりリンオキソ酸イオンが急速に消費されるため、電解液中のリンオキソ酸イオン量が適量以下になり、陽極及び陰極の劣化が生じるようになる。特に、陰極の表面には極めて薄い酸化アルミニウム皮膜しか存在しないため、陽極の劣化より陰極の劣化が深刻である。しかしながら、陽極の酸化アルミニウム皮膜が電解質のカルボン酸アニオンによって溶解されにくくなると、電解液中のリンオキソ酸イオンの消費速度が遅くなるため、電解液中のリンオキソ酸イオン量が適量で存在する時間が長期化する。その結果、陽極ばかりでなく陰極の劣化も抑制され、コンデンサの長寿命化へとつながる。
陽極の酸化アルミニウム皮膜中へのリンの導入は、リンの導入が可能な方法であればいずれの方法により行っても良いが、リン酸或いはリン酸塩、例えばアンモニウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩を含有する水溶液中での陽極の化成処理により行うのが好ましい。この化成処理に使用する水溶液には、リン酸及びリン酸塩から選択された1種の化合物が含まれていても良く、2種以上の化合物が含まれていても良い。リン酸−リン酸アンモニウム水溶液を好適に使用することができる。また、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液等のリンを含んでいない水溶液中での化成処理に続いて、上述のリン酸及びリン酸塩から選択された1種又は2種以上の化合物を含有する水溶液中での陽極の化成処理により、酸化アルミニウム皮膜中にリンを導入することもできる。これらの化成処理において、リンは酸化アルミニウム皮膜の表面近傍に濃い濃度で存在する。さらに、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液等のリンを含んでいない水溶液での化成処理により形成された酸化アルミニウム皮膜を有する陽極を、上述のリン酸及びリン酸塩から成る群から選択された1種又は2種以上の化合物を含有する水溶液に浸漬し、次いでこの溶液から陽極を引き出し、自然乾燥するか或いは加熱酸化処理を行う方法により、酸化アルミニウム皮膜中にリンを導入することもできる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
陽極の作成
純度99.9%の帯状のアルミニウム箔にエッチング処理を施して拡面処理した後、アルミニウム箔を、アジピン酸アンモニウム溶液(濃度:150g/L、pH4.7〜7.0)で化成電圧13Vの条件で30分間一段目化成処理し、次いでリン酸二水素一アンモニウム水溶液(濃度:1.4g/L、pH4.5〜7.0)に浸漬し、13Vで修復化成をした後、引き上げて空気中で電気炉により500℃で1分間熱処理を行った。得られた酸化アルミニウム皮膜を有する陽極について、陽極箔の酸化アルミニウム誘電体の静電容量Cを測定し、次いで電圧−時間曲線により皮膜耐圧Vを測定した後、陽極箔を塩酸で完全に溶解し、溶解液中のリン酸イオン量をモリブデンブルー法により定量した。得られたリン酸量の値を静電容量Cと皮膜耐圧Vの積で割って、単位CV積当たりリン酸量を測定した。単位CV積当たりのリン量は、リン酸換算で30mgであった。
アルミニウム電解コンデンサの作成
上記陽極と、純度99.9%の帯状のアルミニウム箔にエッチング処理を施して拡面処理した陰極とを、マニラ麻のセパレータを介して巻回し、以下の表1に示す電解液を含浸させ、有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部に、ブチルゴム製の封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を絞り加工して電解コンデンサの封口を行い、径10mm、高さ20mm、定格6.3V、2200μFのアルミニウム電解コンデンサを作成した。電解液は、アンモニアガスにより中和し、pHを5.5〜6.2の範囲に調整した。電解液がアンモニアで中和されているため、カルボン酸塩が溶媒に溶解しているのと同じであるが、以下の表には塩ではなく酸の形態で表しており、溶媒1kg当たりのモル量についても、溶媒1kg当たりのギ酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸のモル量、溶媒1kg当たりのウンデカン二酸、ドデカン二酸又はトリウンデカン二酸のモル量として表している。なお、表1に示す電解液におけるウンデカン二酸、ドデカン二酸又はトリウンデカン二酸の量は、いずれも、それぞれの電解液における50℃での飽和溶解量以下であった。
アルミニウム電解コンデンサの特性評価
得られたアルミニウム電解コンデンサについて、初期の120Hsにおける静電容量及び誘電損失(tanδ)、2分後における漏れ電流と、105℃無負荷試験8000時間経過後の誘電損失とを評価した。また、105℃無負荷試験8000時間前に開弁に至ったコンデンサについては、開弁に至った時間を寿命として記録した。105℃無負荷試験前後の誘電損失の変化率が大きいほどコンデンサの寿命が短くなる傾向にある。また、誘電損失の変化率が200%を超えると、その後早期に開弁に至ることもわかっている。
以下の表1に、各アルミニウム電解コンデンサに使用した電解液の組成、溶媒1kg当たりのウンデカン二酸、ドデカン二酸又はトリウンデカン二酸のモル量、溶媒1kg当たりのギ酸のモル量、溶媒1kg当たりのアジピン酸のモル量、電解液の30℃での比抵抗、アルミニウム電解コンデンサの初期の静電容量、漏れ電流及び誘電損失、105℃無負荷試験8000時間経過後の誘電損失、及び8000時間経過後の誘電損失の変化率をまとめて示す。
Figure 2011216744
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表1に示した全ての実施例及び比較例において、得られたアルミニウム電解コンデンサの静電容量及び漏れ電流の値は良好であった。実施例1〜9及び比較例1,2において、電解液における水の含有量が増加するにつれて電解液の比抵抗が増加するが、水が電解液全体の30質量%しか含まれていなくても、アジピン酸又はアジピン酸とギ酸を電解質として共存させることにより、70Ωcm以下の比抵抗が得られた。これらの比抵抗値は、従来のエチレングリコールを主溶媒とし、水が電解液全体の約10質量%である電解液の比抵抗値の約150Ωcmより著しく低く、また、従来のγ−ブチロラクトンを主溶媒とした電解液の比抵抗値の約80Ωcmよりも低い。
実施例1〜9の電解質としてのウンデカン二酸、ドデカン二酸又はトリウンデカン二酸と上記結合体とを含有する電解液を使用したコンデンサは、105℃無負荷試験8000時間経験前後の誘電損失の変化が小さく、極めて安定であった。これに対し、比較例1,2の電解質としてのアジピン酸又はアジピン酸及びギ酸と上記結合体とを含有する電解液を使用した電解コンデンサは、105℃無負荷試験8000時間経過前に開弁に至っており、短寿命であった。したがって、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びトリウンデカン二酸は、極めて少量であっても、コンデンサの寿命を著しく長期化させる優れた効果を有していることが分る。
本発明により、低インピーダンス特性を有し且つ寿命の長いアルミニウム電解コンデンサ及びこのようなアルミニウム電解コンデンサを与えることが可能なアルミニウム電解コンデンサ用電解液を提供することができる。

Claims (7)

  1. 水と有機溶媒とから成る溶媒と、
    カルボン酸及びその塩から成る群から選択された電解質と、
    水溶液中でリンオキソ酸イオンを生成可能なリンオキソ酸イオン生成性化合物と、
    アルミニウムに配位することにより水溶性アルミニウムキレート錯体を形成可能なキレート化剤と
    を含有するアルミニウム電解コンデンサ用電解液であって、
    前記電解液が、前記電解質として、ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物と、ギ酸、ギ酸塩、アジピン酸、アジピン酸塩、グルタル酸及びグルタル酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物とを含有し、
    前記ウンデカン二酸、ウンデカン二酸塩、ドデカン二酸、ドデカン二酸塩、トリデカン二酸及びトリデカン二酸塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物の含有量が、多くとも前記電解液における50℃での飽和溶解量である
    ことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  2. 前記リンオキソ酸イオン生成性化合物が、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、及びこれらの塩;リン酸及びアルキルリン酸のエステル、ホスホン酸及びジホスホン酸のエステル及び誘導体、ホスフィン酸エステル、及びこれらの塩;並びにこれらの縮合体及びこれらの縮合体の塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  3. 前記キレート化剤が、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシマロン酸、α−メチルリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸、γ−レゾルシル酸、β−レゾルシル酸、トリヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、ジヒドロキシフタル酸、フェノールトリカルボン酸、アルミノン、エリオクロムシアニンR、スルホサリチル酸、タンニン酸、ジシアンジアミド、ガラクトース、グルコース、リグノスルホン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)及びこれらの塩から成る群から選択された少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  4. 前記電解液がアルミニウムイオンを含有し、
    該アルミニウムイオンと、前記キレート化剤と、前記リンオキソ酸イオン生成性化合物から生成したリンオキソ酸イオンとの反応により、リンオキソ酸イオンと水溶性アルミニウムキレート錯体との結合体が前記電解液中に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  5. 前記電解液がアルミニウム電解コンデンサ内に導入された電解液であり、
    前記アルミニウムイオンが前記アルミニウム電解コンデンサの陽極及び陰極から溶出したイオンである、請求項4に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液。
  6. 表面に酸化アルミニウム皮膜を有するアルミニウム箔からなる陽極と、
    アルミニウム箔からなる陰極と、
    陽極と陰極との間に配置された電解液を保持したセパレータと
    を備えたアルミニウム電解コンデンサであって、
    前記電解液が請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用電解液であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
  7. 前記陽極が酸化アルミニウム皮膜中にリンを含有している、請求項6に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015204396A (ja) * 2014-04-15 2015-11-16 日本ケミコン株式会社 電解コンデンサ用電解液、これを用いた電解コンデンサ及びその製造方法
JP2015204395A (ja) * 2014-04-15 2015-11-16 日本ケミコン株式会社 電解コンデンサ用電解液、これを用いた電解コンデンサ及びその製造方法
CN113161152A (zh) * 2021-04-13 2021-07-23 新疆众和股份有限公司 一种铝电解电容器阳极箔中磷酸根的浸取和检测方法

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