JP5435310B2 - 回転電機制御装置、および、これを用いた操舵制御システム - Google Patents

回転電機制御装置、および、これを用いた操舵制御システム Download PDF

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Description

本発明は、回転電機制御装置、および、これを用いた操舵制御システムに関する。
従来、車両のパワーステアリング装置の駆動源として回転電機を用いた操舵制御システムが知られている。例えば特許文献1には、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御により駆動される回転電機を駆動源として用いた電動パワーステアリング装置が開示されている。ここで用いられる回転電機は、3相の巻線を有するブラシレスモータであり、スイッチング素子等を備える回転電機制御装置により駆動が制御される。
特開2009−1217号公報 特開平11−29054号公報
ところで、PWM制御を行う回転電機制御装置では、複数相の巻線を有するブラシレスの回転電機の駆動を停止させる場合、各相の巻線に印加する電圧のデューティー比が50%となるよう、かつ、各相の巻線に対し同じタイミングで電圧を印加することにより、回転電機に流す電流をゼロにする制御が一般的である。ここで、回転電機に流す電流がゼロとなるよう制御しても、回転電機の寄生容量により、電圧を印加するタイミングおよび電圧の印加を解除するタイミングでコモンモードの電流(以下、「コモンモード電流」という。)がスパイク状に流れることがある。特に、各相の巻線に対し同一のタイミングで電圧を印加した場合、コモンモード電流が1つに重なり、スパイク状の大きな電流が流れるおそれがある。これにより、大きな電気的ノイズがラジオノイズとして放射され、他の機器に影響を与えるおそれがある。
そこで、特許文献1の電動パワーステアリング装置では、回転電機を駆動する回転電機制御装置にフィルタ回路を設けることにより、上述のラジオノイズを低減しようとしている。また、ラジオノイズ対策としては、スナバ回路を追加する方法、シールド線を追加する方法、および、特許文献2に開示されるように同軸ケーブルを用いる方法等が提案されている。しかしながら、これらの方法による対策の場合、部材点数が多く構成が複雑になるため、対策にかかるコストが増大するという問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、回転電機の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減可能な回転電機制御装置、および、これを用いた操舵制御システムを提供することにある。
請求項1に記載の発明は、複数相の巻線からなる巻線組を有する回転電機を制御する回転電機制御装置であって、目標電流値算出手段とPWM信号生成手段と電圧印加手段と制御手段とを備えている。目標電流値算出手段は、各相の巻線に流す目標電流値を算出する。PWM信号生成手段は、目標電流値算出手段により算出した目標電流値に基づき、各相の巻線毎にパルス状のPWM信号を生成する。電圧印加手段は、PWM信号生成手段により生成されたPWM信号に基づき、各相の巻線に電圧を印加する。制御手段は、目標電流値算出手段、PWM信号生成手段および電圧印加手段を制御することにより、回転電機の駆動を制御する。
本発明では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、少なくとも1つの相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の相のPWM信号のパルス変化のタイミングとが異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を制御する。これにより、少なくとも1つの相のPWM信号の立ち上がりのタイミングまたは立ち下がりのタイミングと、他の相のPWM信号の立ち上がりのタイミングまたは立ち下がりのタイミングとが重なることを回避できる。そのため、電圧印加手段により各相の巻線に印加される電圧の印加タイミングが全て1つに重なることを回避できる。その結果、回転電機に流れるコモンモード電流が1つに重なることを回避できる。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズを低減することができる。
このように、本発明では、制御によってラジオノイズを低減することができる。つまり、本発明の回転電機制御装置では、フィルタ回路、スナバ回路、シールド線および同軸ケーブル等のラジオノイズ対策用の部材を用いることなく、簡単な構成でラジオノイズを低減することができる。
また、請求項1に記載の発明では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、少なくとも1つの相の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値に算出されるよう目標電流値算出手段を制御することによって、少なくとも1つの相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の相のPWM信号のパルス変化のタイミングとが異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を制御する。ここで、非ゼロの所定の値とは、ゼロではない所定の値であって、回転電機の駆動に影響を与えない程度の小さな値である。
本発明は、PWM信号生成手段によってパルス変化のタイミングの異なるPWM信号を生成するにあたり、目標電流値算出手段の具体的な制御の仕方を例示するものである。少なくとも1つの相の巻線に、回転電機の駆動に影響を与えない程度の小さな電流を流すことにより、PWM信号生成手段により生成されるPWM信号のパルス変化のタイミングをずらすことができ、電圧印加手段により巻線に印加される電圧の印加タイミングをずらすことができる。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズを低減することができる。
請求項2に記載の発明では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相のPWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を制御する。これにより、全ての各相のPWM信号の立ち上がりのタイミングまたは立ち下がりのタイミングと、他の各相のPWM信号の立ち上がりのタイミングまたは立ち下がりのタイミングとをいずれもずらす(異なるようにする)ことができる。そのため、電圧印加手段により各相の巻線に印加される電圧の印加タイミングが重なることを確実に回避できる。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズをより低減することができる。
請求項3に記載の発明では、前記パルス変化のタイミングは、PWM信号の立ち上がりのタイミング、および、PWM信号の立ち下がりのタイミングの少なくとも一方である。前記パルス変化のタイミングを、PWM信号の立ち上がりのタイミング、および、PWM信号の立ち下がりのタイミングの両方とした場合、電圧印加手段により各相の巻線に印加される電圧の立ち上がりのタイミング同士の重なり、および、立ち下がりのタイミング同士の重なりの両方を回避することができる。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズをさらに低減することができる。
請求項に記載の発明では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値に算出されるよう目標電流値算出手段を制御することによって、全ての各相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相のPWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を制御する。
本発明は、請求項に記載の発明と同様、目標電流値算出手段の具体的な制御の仕方を例示するものである。全ての各相の巻線に、回転電機の駆動に影響を与えない程度の小さな電流を流すことにより、PWM信号生成手段により生成されるPWM信号のパルス変化のタイミングを確実にずらすことができ、電圧印加手段により巻線に印加される電圧の印加タイミングを確実にずらすことができる。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズをより低減することができる。
請求項に記載の発明では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、少なくとも1つの相の巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の相の巻線に印加する電圧の印加タイミングとが異なるように電圧を印加するよう電圧印加手段を制御する。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズを低減することができる。
請求項に記載の発明では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相の巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の各相の巻線に印加する電圧の印加タイミングとがいずれも異なるように電圧を印加するよう前記電圧印加手段を制御する。したがって、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズをより低減することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置と、車両の操舵輪を転舵させる部材に取り付けられる前記回転電機と、を備えた操舵制御システムである。すなわち、本発明では、回転電機制御装置と回転電機とは、例えば操舵制御システムとしての電動パワーステアリング装置を構成している。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置と、車両の操舵輪とは異なる車輪を転舵させる部材に取り付けられる前記回転電機と、を備えた操舵制御システムである。通常、車両の操舵輪は前輪に対応する。よって、本発明では、回転電機を、後輪を転舵させる部材に取り付ける構成を考えることができる。すなわち、本発明では、回転電機制御装置と回転電機とは、例えば4輪転舵車両における操舵制御システムとしての後輪転舵装置を構成するものである。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置と、車両の操舵輪を転舵させる部材に取り付けられる第1の前記回転電機と、操舵輪とは異なる車輪を転舵させる部材に取り付けられる第2の前記回転電機と、を備えた操舵制御システムである。すなわち、本発明では、回転電機制御装置と第1の回転電機とは例えば電動パワーステアリング装置を構成し、回転電機制御装置と第2の回転電機とは例えば後輪転舵装置を構成するものである。
請求項に記載の発明では、回転電機の駆動停止時に回転電機制御装置または回転電機から発生するラジオノイズを低減できるため、ラジオノイズに起因する雑音が車両のラジオから出力されるのを抑制することができる。
本発明の第1実施形態による回転電機制御装置を示す模式図。 本発明の第1実施形態による回転電機制御装置を適用した電動パワーステアリング装置を示す模式図。 (A)は本発明の第1実施形態による回転電機制御装置が回転電機の駆動を停止するとき生成するPWM信号を示す図、(B)は(A)の一部を示す図、(C)は回転電機に流れるコモンモード電流を相毎に示す図、(D)は回転電機に流れるコモンモード電流を示す図。 (A)は比較例による回転電機制御装置が回転電機の駆動を停止するとき生成するPWM信号を示す図、(B)は(A)の一部を示す図、(C)は回転電機に流れるコモンモード電流を相毎に示す図、(D)は回転電機に流れるコモンモード電流を示す図。 本発明の第2実施形態による回転電機制御装置を示す模式図。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の部材または部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転電機制御装置を図1に示す。回転電機制御装置21は、回転電機としてのモータ10の駆動を制御するのに用いられる。図2に示すように、モータ10は、車両に搭載される電動パワーステアリング装置1の駆動源として用いられる。すなわち、回転電機制御装置21およびモータ10は、電動パワーステアリング装置1の構成要素の一部である。
コラム軸2には、ギア3が設けられている。また、コラム軸2の一方の端部には、操舵部材としてのステアリング4が取り付けられている。また、コラム軸2のギア3とステアリング4との間にはトルクセンサ5が設けられている。コラム軸2のステアリング4とは反対側の端部にはピニオンギアが設けられ、当該ピニオンギアは、ラック6に形成されたギアに噛み合っている。ラック6の両端は、車両の操舵輪としての前輪7に接続されている。これにより、車両の搭乗者がステアリング4を回転させると、操舵トルクがコラム軸2に伝達し、ラック6が長手方向に移動することで前輪7が転舵する。つまり、コラム軸2は、前輪7を転舵させる部材の1つである。
モータ10は、モータ軸17の端部が、コラム軸2に設けられたギア3に噛み合うようにして取り付けられる。回転電機制御装置21は、ステアリング4の操舵トルクを検出するトルクセンサ5から出力されるトルク信号、および、図示しないCAN(Controller Area Network)から取得する車速信号等に基づきモータ10を正逆回転させることにより、操舵に関するアシスト力を発生する。
図1に示すように、モータ10は、巻線11、12、13等を有している。本実施形態では、モータ10は、一般的な3相ブラシレスモータである。巻線11、12、13は、モータケース14に収容および固定された図示しないステータに巻回され、1つの巻線組(101)を構成している。ステータの内側には、図示しないロータがステータに対し相対回転可能に設けられている。ロータの回転中心には、モータ軸17が設けられている。モータ軸17は、モータケース14によって回転可能に支持されている。つまり、ロータは、モータ軸17を経由してモータケース14に回転可能に支持されている。
巻線11、12、13は、Y結線されている。巻線11、12、13は、それぞれ、モータ10におけるU相、V相、W相に対応している。巻線11、12、13の結線箇所は、中性点p1となる。モータ10は、巻線11、12、13に供給される電力を回転電機制御装置21によって制御されることで回転駆動する。また、本実施形態では、モータ10は、ロータのステータに対する回転角を検出する回転角センサ15を有している。
回転電機制御装置21は、インバータ30および制御IC40等を備えている。
インバータ30は、スイッチング素子31〜36等を有している。本実施形態では、スイッチング素子31〜36は、電界効果トランジスタの一種であるMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。スイッチング素子31〜36は、ゲート電圧により、ソース−ドレイン間がオンオフ制御される。
上アーム側のスイッチング素子31〜33は、ドレインが電源8側に接続され、ソースが対応する下アーム側のスイッチング素子34〜36のドレインに接続されている。下アーム側のスイッチング素子34〜36のソースは、グランド側に接続されている。上アーム側のスイッチング素子31〜33と対応する下アーム側のスイッチング素子34〜36との接続点は、モータ線111、121、131により、それぞれ、モータ10の巻線11、12、13に電気的に接続される。ここで、スイッチング素子31とスイッチング素子34とからなるスイッチング素子対は、U相に対応している。また、スイッチング素子32とスイッチング素子35とからなるスイッチング素子対は、V相に対応している。スイッチング素子33とスイッチング素子36とからなるスイッチング素子対は、W相に対応している。
スイッチング素子34〜36とグランドとの間には、シャント抵抗37が設けられている。シャント抵抗37の両端に印加される電圧を検出することにより、モータ10の各相に流れる電流を検出可能である。
制御IC40は、マイコン41およびプリドライバ42等を含む半導体集積回路である。マイコン41は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROMおよびRAM等を有する小型のコンピュータである。マイコン41は、ROMに格納された各種プログラムに従い、CPUによって種々の処理が実行される。マイコン41は、特許請求の範囲における「制御手段」に対応する。
マイコン41には、回転角センサ15からモータ10の回転角度に関する信号、シャント抵抗37の両端電圧に関する情報、トルクセンサ5から操舵トルク信号、および、CANから車速情報等が入力される。マイコン41は、これらの信号が入力されると、モータ10の回転角度に基づきプリドライバ42を介してスイッチング素子31〜36を制御する。より具体的には、マイコン41は、プリドライバ42によりスイッチング素子31〜36のゲート電圧を変化させることで、スイッチング素子31〜36のオンオフを切り替える制御を行う。また、マイコン41は、入力されるシャント抵抗37の両端電圧に基づき、モータ10へ供給する電流を正弦波に近づけるようスイッチング素子31〜36を制御する。
次に、本実施形態の回転電機制御装置21の作動について、より具体的に説明する。
マイコン41は、回転角センサ15、トルクセンサ5、シャント抵抗37、CANからの車速情報等に基づき、モータ10が車速に応じてステアリング4の操舵をアシストするトルクを出力するよう、モータ10の巻線11、12、13に流すq軸電流に関し目標電流値を算出する。ここで、マイコン41は、特許請求の範囲における「目標電流値算出手段」として機能する。
マイコン41は、算出した目標電流値に基づき、各相(巻線11、12、13)毎にパルス状のPWM信号を生成し、プリドライバ42に出力する。ここで、マイコン41は、特許請求の範囲における「PWM信号生成手段」として機能する。
プリドライバ42は、マイコン41から入力されたPWM信号に基づき、パルス信号を生成する。このパルス信号は、スイッチング素子31〜36を有するインバータ30に出力され、スイッチング素子31〜36のオンオフの切り替え動作を制御する。スイッチング素子31〜36のオンオフの切り替え動作により、電源8の電圧が、巻線11、12、13のそれぞれに印加される。ここで、プリドライバ42およびインバータ30は、特許請求の範囲における「電圧印加手段」として機能する。
電源8の電圧が巻線11、12、13のそれぞれに印加されると、モータ10の巻線11、12、13(各相)には、位相の異なる正弦波電流が流れ、回転磁界が生じる。この回転磁界を受けてロータおよびモータ軸17が一体となって回転する。そして、モータ軸17の回転により、コラム軸2のギア3に駆動力が出力され、運転者のステアリング4による操舵がアシストされる。
次に、本実施形態の回転電機制御装置21によるモータ10の駆動を停止する制御の仕方について、図3に基づき説明する。
本実施形態では、マイコン41は、モータ10の駆動を停止させる制御をするとき、まず、目標電流値算出手段として機能することで、全ての各相の巻線(11、12、13)に流す目標電流値が非ゼロの所定の値となるよう算出する。ここで、非ゼロの所定の値とは、ゼロではない所定の値であって、モータ10の駆動に影響を与えない程度の小さな値である。すなわち、当該所定の値の電流は、モータ10の出力トルクに寄与しない程度の小さな電流である。
そして、マイコン41は、PWM信号生成手段として機能することで、算出した各相毎の目標電流値に基づき、各相毎にPWM信号を生成する。ここで、各相の目標電流値が非ゼロの値のため、マイコン41が生成するパルス状のPWM信号は、図3(A)に示すとおりとなる。図3(B)に示すように、各相のPWM信号は、それぞれ、立ち上がりのタイミング、および、立ち下がりのタイミングが異なるように生成される。なお、PWM信号のデューティー比は約50%である。
図3(B)に示すPWM信号がマイコン41からプリドライバ42に出力されると、インバータ30のスイッチング素子31〜36がオンオフ動作する。これにより、前記PWM信号の立ち上がりのタイミングで、各相の巻線(11、12、13)に電圧が印加される。各相の巻線(11、12、13)に対し略同時期に電圧を印加もしくは印加を解除した場合、モータ10の有するコイル成分および抵抗成分等の寄生容量により、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、各相の巻線(11、12、13)には同時にコモンモード電流が流れる(図1参照)。当該コモンモード電流は、スパイク状に流れる。
図3(C)に示すように、各相の巻線(11、12、13)には、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)で、スパイク状のコモンモード電流が流れる。本実施形態ではPWM信号の立ち上がりのタイミングが各相間で全てずれているため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に全てずれることとなる。その結果、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は、図3(D)に示すように、比較的小さなものとなる。したがって、発生するラジオノイズも比較的小さなものとなる。
なお、上述のように、各相の巻線(11、12、13)には、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)においても、スパイク状のコモンモード電流が流れる。本実施形態では、PWM信号の立ち下がりのタイミングが各相間で全てずれているため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に全てずれることとなる。その結果、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は、比較的小さなものとなる。
このように、本実施形態では、モータ10の駆動を停止するとき、全ての各相の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値となるよう算出することで、全ての各相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相のPWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるようにPWM信号を生成する。これにより、インバータ30は、全ての各相の巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の各相の巻線に印加する電圧の印加タイミングとがいずれも異なるように電圧を印加する。その結果、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に全てずれることとなり、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は比較的小さなものとなる。よって、モータ10の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
次に、比較例の回転電機制御装置によるモータ10の駆動を停止する制御の仕方について説明することで、比較例に対する本実施形態の有利な効果を明らかにする。
比較例の回転電機制御装置は、物理的な構成は、本実施形態と同様である。比較例では、マイコン41は、モータ10の駆動を停止させる制御をするとき、各相の巻線(11、12、13)に流す目標電流値がゼロとなるよう算出する。
そして、マイコン41は、算出した各相毎の目標電流値に基づき、各相毎にPWM信号を生成する。ここで、各相の目標電流値がゼロのため、マイコン41が生成するパルス状のPWM信号は、図4(A)に示すとおりとなる。図4(B)に示すように、各相のPWM信号は、それぞれ、立ち上がりのタイミング、および、立ち下がりのタイミングが全て1つに重なるように生成される。なお、PWM信号のデューティー比は50%である。すなわち、比較例による制御は、従来、3相ブラシレスモータの駆動を停止するときの一般的な制御方法と同様である。
図4(B)に示すPWM信号がマイコン41からプリドライバ42に出力されると、インバータ30のスイッチング素子31〜36がオンオフ動作する。これにより、前記PWM信号の立ち上がりのタイミングで、各相の巻線(11、12、13)に電圧が印加される。このとき、モータ10の寄生容量により、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、各相の巻線(11、12、13)にはスパイク状のコモンモード電流が流れる。
図4(C)に示すように、各相の巻線(11、12、13)には、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)で、スパイク状のコモンモード電流が流れる。比較例ではPWM信号の立ち上がりのタイミングが各相間で全て1つに重なるため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に一致することとなる。その結果、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は、図4(D)に示すように、比較的大きなものとなる。したがって、発生するラジオノイズも比較的大きなものとなる。
なお、上述のように、各相の巻線(11、12、13)には、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)においても、スパイク状のコモンモード電流が流れる。比較例では、PWM信号の立ち下がりのタイミングが各相間で全て1つに重なるため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に一致することとなる。その結果、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は、比較的大きなものとなる。
上述のように、本実施形態では、モータ10の駆動を停止するとき、巻線に印加する電圧の印加タイミングを各相間で全て異なるように制御することで、比較例(従来例)と比べ、発生するラジオノイズを大幅に低減することができる。
次に、本実施形態の回転電機制御装置21およびモータ10の1相に断線等の異常が生じた場合の制御、すなわち、異常時制御の仕方を説明する。
例えば、U相に対応するインバータ30のスイッチング素子31またはスイッチング素子34にオフ故障等の異常が生じた場合、あるいは、モータ10のU相に対応する巻線11に断線等の異常が生じた場合、回転電機制御装置21は、他の2相(V相、W相)によりモータ10の駆動を継続する。すなわち、このとき、モータ10は2相駆動となる。
上述のようにモータ10を2相駆動(異常時制御)しているときに、モータ10の駆動を停止する場合、本実施形態では、駆動相(V相、W相)の巻線(12、13)に流す目標電流値が非ゼロの所定の値となるよう算出する。
そして、マイコン41は、PWM信号生成手段として機能することで、算出した各相毎の目標電流値に基づき、各相毎にPWM信号を生成する。ここで、各相の目標電流値が非ゼロの値のため、マイコン41が生成するパルス状のPWM信号(V相、W相)は、それぞれ、立ち上がりのタイミング、および、立ち下がりのタイミングが異なるように生成される。なお、PWM信号のデューティー比は約50%である。
PWM信号がマイコン41からプリドライバ42に出力されると、インバータ30のスイッチング素子32、33、35、36がオンオフ動作する。これにより、前記PWM信号の立ち上がりのタイミングで、各相の巻線(12、13)に電圧が印加される。各相の巻線(12、13)に対し略同時期に電圧を印加もしくは印加を解除した場合、モータ10の有するコイル成分および抵抗成分等の寄生容量により、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、各相の巻線(12、13)には同時にコモンモード電流が流れる。当該コモンモード電流は、スパイク状に流れる。
各相の巻線(12、13)には、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、スパイク状のコモンモード電流が流れる。本実施形態ではPWM信号の立ち上がりのタイミングおよび立ち下がりのタイミングが各相間でずれているため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的にずれることとなる。その結果、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は、比較的小さなものとなる。したがって、発生するラジオノイズも比較的小さなものとなる。
このように、本実施形態では、例えばU相に対応する箇所に異常が生じた場合、他の2相(V相、W相)を駆動相としてモータ10の駆動を継続し、モータ10の駆動を停止するとき、駆動相以外の全ての各相(V相、W相)の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値となるよう算出することで、各相(V相、W相の一方)のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相(V相、W相の他方)のPWM信号のパルス変化のタイミングとが異なるようにPWM信号を生成する。これにより、インバータ30は、各相(V相、W相の一方)の巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の各相(V相、W相の他方)の巻線に印加する電圧の印加タイミングとがいずれも異なるように電圧を印加する。その結果、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的にずれることとなり、モータ10に流れるコモンモード電流の合計は比較的小さなものとなる。よって、異常時制御を行っているときでも、モータ10の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
以上説明したように、本実施形態では、マイコン41は、モータ10の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相のPWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるようにPWM信号を生成する。これにより、全ての各相のPWM信号の立ち上がりのタイミングおよび立ち下がりのタイミングと、他の各相のPWM信号の立ち上がりのタイミングおよび立ち下がりのタイミングとをいずれもずらす(異なるようにする)ことができる。そのため、プリドライバ42およびインバータ30により各相の巻線11、12、13に印加される電圧の印加タイミングが重なることを確実に回避できる。したがって、モータ10の駆動停止時に回転電機制御装置21またはモータ10から発生するラジオノイズを確実に低減することができる。
また、本実施形態では、回転電機制御装置21およびモータ10は、車両に搭載される操舵制御システムとしての電動パワーステアリング装置1の一部を構成している。本実施形態では、モータ10の駆動停止時に回転電機制御装置21またはモータ10から発生するラジオノイズを低減できるため、ラジオノイズに起因する雑音が車両のラジオから出力されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、ある1つの相に異常が生じた場合、他の相(駆動相)でモータ10の駆動を継続する異常時制御を行う。異常時制御を行っているとき、モータ10を停止させる場合は、駆動相の各相に流す目標電流値を非ゼロの所定の値となるよう算出する。これにより、駆動相の巻線に印加される電圧の印加タイミングが重なることを回避することができる。したがって、異常時制御を行っているときでも、モータ10の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による回転電機制御装置について、図5に基づいて説明する。第2実施形態は、2つの系統の巻線組を有するモータを制御対象とする点で、第1実施形態と異なる。
本実施形態の回転電機制御装置22が制御対象とするモータ50は、巻線11、12、13からなる第1巻線組101に加え、巻線51、52、53からなる第2巻線組102を備えている。巻線51、52、53は、第1巻線組101と同様、モータケース14に収容および固定された図示しないステータに巻回されている。巻線51、52、53は、Y結線されている。巻線51、52、53は、それぞれ、モータ50におけるU相、V相、W相に対応している。巻線51、52、53の結線箇所は、中性点p2となる。
モータ50は、第1巻線組101(巻線11、12、13)および第2巻線組102(巻線51、52、53)に供給される電力を回転電機制御装置22によって制御されることで回転駆動する。図5では、便宜上、第1巻線組101と第2巻線組102とを分離して図示しているが、実際は、第1巻線組101および第2巻線組102は、同一の1つのステータに巻回されている。すなわち、モータ50は、巻線に関し2つの系統を備えることで冗長系を構成している。
回転電機制御装置22は、インバータ30およびプリドライバ42に加え、インバータ60およびプリドライバ43を備えている。インバータ60は、スイッチング素子61〜66等を有している。本実施形態では、スイッチング素子61〜66は、スイッチング素子31〜36と同様、電界効果トランジスタの一種であるMOSFETである。
スイッチング素子61〜66の接続形態は、スイッチング素子31〜36と同様である。上アーム側のスイッチング素子61〜63と対応する下アーム側のスイッチング素子64〜66との接続点は、モータ線511、521、531により、それぞれ、モータ50の巻線51、52、53に電気的に接続される。ここで、スイッチング素子61とスイッチング素子64とからなるスイッチング素子対は、U相に対応している。また、スイッチング素子62とスイッチング素子65とからなるスイッチング素子対は、V相に対応している。スイッチング素子63とスイッチング素子66とからなるスイッチング素子対は、W相に対応している。
スイッチング素子64〜66とグランドとの間には、シャント抵抗67が設けられている。シャント抵抗67の両端に印加される電圧を検出することにより、モータ50の第2巻線組の各相に流れる電流を検出可能である。
マイコン41には、回転角センサ15からモータ50の回転角度に関する信号、シャント抵抗37および67の両端電圧に関する情報、トルクセンサ5から操舵トルク信号、および、CANから車速情報等が入力される。マイコン41は、これらの信号が入力されると、モータ50の回転角度に基づき、プリドライバ42を介してスイッチング素子31〜36を制御するとともに、プリドライバ43を介してスイッチング素子61〜66を制御する。
このように、本実施形態では、巻線11、12、13、インバータ30、プリドライバ42により第1系統が構成され、巻線51、52、53、インバータ60、プリドライバ43により第2系統が構成されている。第1系統と第2系統とは、電気的に独立している。そのため、一方の系統に電気的な異常が生じても、他方の系統によりモータ50の駆動を継続することができる。
次に、本実施形態の回転電機制御装置22の作動について、より具体的に説明する。
マイコン41は、回転角センサ15、トルクセンサ5、シャント抵抗37、67、CANからの車速情報等に基づき、モータ50が車速に応じてステアリング4の操舵をアシストするトルクを出力するよう、モータ50の巻線11、12、13、51、52、53に流すq軸電流に関し目標電流値を算出する。ここで、マイコン41は、特許請求の範囲における「目標電流値算出手段」として機能する。
マイコン41は、算出した目標電流値に基づき、各相(巻線11、12、13、51、52、53)毎にパルス状のPWM信号を生成し、プリドライバ42、43に出力する。ここで、マイコン41は、特許請求の範囲における「PWM信号生成手段」として機能する。
プリドライバ42、43は、マイコン41から入力されたPWM信号に基づき、パルス信号を生成する。このパルス信号は、スイッチング素子31〜36を有するインバータ30、および、スイッチング素子61〜66を有するインバータ60に出力され、スイッチング素子31〜36、および、スイッチング素子61〜66のオンオフの切り替え動作を制御する。スイッチング素子31〜36、および、スイッチング素子61〜66のオンオフの切り替え動作により、電源8の電圧が、巻線11、12、13、51、52、53のそれぞれに印加される。ここで、プリドライバ42、43、インバータ30、60は、特許請求の範囲における「電圧印加手段」として機能する。
電源8の電圧が巻線11、12、13のそれぞれに印加されると、モータ50の巻線11、12、13、51、52、53(各相)には、位相の異なる正弦波電流が流れ、回転磁界が生じる。この回転磁界を受けてロータおよびモータ軸17が一体となって回転する。そして、モータ軸17の回転により、コラム軸2のギア3に駆動力が出力され、運転者のステアリング4による操舵がアシストされる。
次に、本実施形態の回転電機制御装置22によるモータ50の駆動を停止する制御の仕方について説明する。
本実施形態では、マイコン41は、モータ50の駆動を停止させる制御をするとき、まず、目標電流値算出手段として機能することで、全ての各相の巻線(11、12、13、51、52、53)に流す目標電流値が非ゼロの所定の値となるよう算出する。ここで、非ゼロの所定の値とは、ゼロではない所定の値であって、モータ50の駆動に影響を与えない程度の小さな値である。すなわち、当該所定の値の電流は、モータ50の出力トルクに寄与しない程度の小さな電流である。
そして、マイコン41は、PWM信号生成手段として機能することで、算出した各相毎の目標電流値に基づき、各相毎にPWM信号を生成する。ここで、各相の目標電流値が非ゼロの値のため、マイコン41が生成するパルス状のPWM信号は、それぞれ、立ち上がりのタイミング、および、立ち下がりのタイミングが異なるように生成される。なお、PWM信号のデューティー比は約50%である。
PWM信号がマイコン41からプリドライバ42、43に出力されると、インバータ30、60のスイッチング素子31〜36、61〜66がオンオフ動作する。これにより、前記PWM信号の立ち上がりのタイミングで、各相の巻線(11、12、13、51、52、53)に電圧が印加される。各相の巻線(11、12、13、51、52、53)に対し略同時期に電圧を印加した場合、モータ50の有するコイル成分および抵抗成分等の寄生容量により、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、各相の巻線(11、12、13、51、52、53)には同時にコモンモード電流が流れる(図5参照)。当該コモンモード電流は、スパイク状に流れる。
各相の巻線(11、12、13、51、52、53)には、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、スパイク状のコモンモード電流が流れる。本実施形態ではPWM信号の立ち上がりのタイミングおよび立ち下がりのタイミングが各系統の各相間で全てずれているため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に全てずれることとなる。その結果、モータ50に流れるコモンモード電流の合計は、比較的小さなものとなる。したがって、発生するラジオノイズも比較的小さなものとなる。
このように、本実施形態では、モータ50の駆動を停止するとき、各系統の全ての各相の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値となるよう算出することで、全ての各相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相のPWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるようにPWM信号を生成する。これにより、インバータ30、60は、全ての各相の巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の各相の巻線に印加する電圧の印加タイミングとがいずれも異なるように電圧を印加する。その結果、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に全てずれることとなり、モータ50に流れるコモンモード電流の合計は比較的小さなものとなる。よって、モータ50の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による回転電機制御装置について説明する。第3実施形態は、物理的な構成は第2実施形態と同様であるものの、モータ50の駆動を停止させるときの制御の仕方が第2実施形態と異なる。
本実施形態の回転電機制御装置が駆動対象とするモータ50は、例えば第1巻線組101および第2巻線組102の物理定数が等しいとし、機械的損失等により、2系統の合計でq軸電流として5A(アンペア)以上の電流が流されると、発生したトルクにより、停止していたモータ50が駆動し始めるものとする。ただし、ここで2つの巻線組の物理定数を等しいとしたのは説明を簡単にするためであって、実際は異なってもよい。
本実施形態では、マイコン41は、モータ50の駆動を停止させる制御をするとき、まず、目標電流値算出手段として機能することで、第1巻線組101(巻線11、12、13)に流す目標電流値が例えばq軸電流として6Aとなるよう、第2巻線組102(巻線51、52、53)に流す目標電流値が例えばq軸電流として−3Aとなるよう算出する。このように、第1巻線組101に流す目標電流値と第2巻線組102に流す目標電流値とは絶対値が異なる。
そして、マイコン41は、PWM信号生成手段として機能することで、算出した各相毎の目標電流値に基づき、各相毎にPWM信号を生成する。ここで、各相の目標電流値が非ゼロの比較的大きな値のため、マイコン41が生成するパルス状のPWM信号は、それぞれ、立ち上がりのタイミング、および、立ち下がりのタイミングが大きく異なるように生成される。なお、PWM信号のデューティー比は、50%から大きく乖離した値である。
PWM信号がマイコン41からプリドライバ42、43に出力されると、インバータ30、60のスイッチング素子31〜36、61〜66がオンオフ動作する。これにより、前記PWM信号の立ち上がりのタイミングで、各相の巻線(11、12、13、51、52、53)に電圧が印加される。
上述のように、第1巻線組101(巻線11、12、13)に流す目標電流値はq軸電流として6Aと算出されているため、第1巻線組101には、q軸電流として6Aの電流が流れる。一方、第2巻線組102(巻線51、52、53)に流す目標電流値はq軸電流として−3Aと算出されているため、第2巻線組102には、第1巻線組101とは反対の向きにトルクを生じさせるようにq軸電流として3Aの電流が流れる。そのため、モータ50には、実質的には3Aの電流が流れることとなり、トルクを生じることが可能な電流値の下限を越えないため、トルクを生じない。これにより、モータ50の回転は停止する。
各相の巻線(11、12、13、51、52、53)には、電圧を印加するタイミング(PWM信号の立ち上がりのタイミング)、および、電圧の印加を解除するタイミング(PWM信号の立ち下がりのタイミング)で、スパイク状のコモンモード電流が流れる。本実施形態ではPWM信号の立ち上がりのタイミングおよび立ち下がりのタイミングが各系統の各相間で全て大きくずれているため、各相のコモンモード電流の流れるタイミングは時間的に全て大きくずれることとなる。その結果、モータ50に流れるコモンモード電流の合計は小さなものとなる。したがって、発生するラジオノイズを小さくすることができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、1つの巻線組を構成する3つ(3相)の巻線がY結線により接続された回転電機を制御対象とする例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、3つの巻線がデルタ結線により接続された回転電機を制御対象としてもよい。また、1つの巻線組が、2つ(2相)または4つ(4相)以上の巻線により構成された回転電機を制御対象としてもよい。
上述の第1実施形態では、巻線組を1つ(1系統)有する回転電機を制御対象とする例を示した。また、第2実施形態および第3実施形態では、巻線組を2つ(2系統)有する回転電機を制御対象とする例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、巻線組を3つ(3系統)以上有する回転電機を制御対象としてもよい。この場合、回転電機制御装置は、回転電機の系統数に合わせ、プリドライバとインバータとの組を3つ以上備える構成を考えることができる。
また、上述の実施形態では、制御手段(マイコン)が、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値に算出されるよう目標電流値算出手段を制御することによって、全ての各相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相のPWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を制御する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、制御手段は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、少なくとも1つの相の巻線に流す目標電流値が非ゼロの所定の値に算出されるよう目標電流値算出手段を制御することによって、少なくとも1つの相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の相のPWM信号のパルス変化のタイミングとが異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を制御することとしてもよい。
また、上述の実施形態では、制御手段(マイコン)が回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、PWM信号生成手段が、PWM信号の立ち上がりのタイミング、および、PWM信号の立ち下がりのタイミングの両方が異なるようPWM信号を生成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、PWM信号生成手段は、PWM信号の立ち上がりのタイミング、および、PWM信号の立ち下がりのタイミングのどちらか一方が異なるようPWM信号を生成することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、制御手段(マイコン)は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、目標電流値算出手段により目標電流値がゼロとなるよう算出しつつ、少なくとも1つの相のPWM信号のパルス変化のタイミングと、他の相のPWM信号のパルス変化のタイミングとが異なるようにPWM信号が生成されるようPWM信号生成手段を直接制御することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、制御手段(マイコン)は、回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、目標電流値算出手段により目標電流値がゼロとなるよう算出しつつ、少なくとも1つの相の巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の相の巻線に印加する電圧の印加タイミングとが異なるように電圧を印加するよう電圧印加手段(プリドライバおよびインバータ)を直接制御することとしてもよい。
上述の実施形態では、車両の操舵輪を転舵させる部材に回転電機を取り付け、当該回転電機を回転電機制御装置により制御する例、すなわち、本発明を操舵制御システムとしての電動パワーステアリング装置に適用する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、車両の操舵輪とは異なる車輪を転舵させる部材に回転電機を取り付け、当該回転電機を回転電機制御装置により制御することとしてもよい。通常、車両の操舵輪は前輪に対応する。よって、当該他の実施形態では、回転電機を、後輪を転舵させる部材に取り付ける構成を考えることができる。すなわち、当該他の実施形態では、回転電機制御装置と回転電機とは、例えば4輪転舵車両における操舵制御システム(アクティブ制御システム)としての後輪転舵装置を構成するものである。当該他の実施形態においても、回転電機制御装置により、回転電機の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
また、本発明の他の実施形態では、車両の操舵輪を転舵させる部材に第1の回転電機を取り付け、車両の操舵輪とは異なる車輪を転舵させる部材に第2の回転電機を取り付け、第1の回転電機および第2の回転電機を回転電機制御装置により制御することとしてもよい。すなわち、当該他の実施形態では、回転電機制御装置と第1の回転電機とは例えば電動パワーステアリング装置を構成し、回転電機制御装置と第2の回転電機とは例えば後輪転舵装置を構成するものである。当該他の実施形態においても、回転電機制御装置により、第1の回転電機および第2の回転電機の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
また、本発明の他の実施形態では、電動パワーステアリング装置および後輪転舵装置の駆動源として用いられる回転電機に限らず、例えばハイブリッド車両の駆動輪を駆動するための回転電機や、車両以外に搭載されるその他機器類の駆動源として用いられる回転電機を制御の対象としてもよい。このように、本発明は、PWM制御により駆動されるブラシレスモータ(回転電機)を制御するのに用いることで、回転電機の駆動停止時に発生するラジオノイズを低減することができる。
このように、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で他の種々の実施形態に適用可能である。
21、22 ・・・回転電機制御装置
11、12、13、51、52、53 ・・・巻線
101 ・・・・・第1巻線組(巻線組)
102 ・・・・・第2巻線組(巻線組)
10、50 ・・・モータ(回転電機)
41 ・・・・・・マイコン(目標電流値算出手段、PWM信号生成手段、制御手段)
42、43 ・・・プリドライバ(電圧印加手段)
30、60 ・・・インバータ(電圧印加手段)

Claims (9)

  1. 複数相の巻線からなる巻線組を有する回転電機を制御する回転電機制御装置であって、
    前記巻線に流す目標電流値を算出する目標電流値算出手段と、
    前記目標電流値算出手段により算出した前記目標電流値に基づき、前記巻線毎にパルス状のPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
    前記PWM信号生成手段により生成された前記PWM信号に基づき、前記巻線に電圧を印加する電圧印加手段と、
    前記目標電流値算出手段、前記PWM信号生成手段および前記電圧印加手段を制御することにより、前記回転電機の駆動を制御する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、少なくとも1つの相の前記巻線に流す前記目標電流値が非ゼロの所定の値に算出されるよう前記目標電流値算出手段を制御することによって、少なくとも1つの相の前記PWM信号のパルス変化のタイミングと、他の相の前記PWM信号のパルス変化のタイミングとが異なるように前記PWM信号が生成されるよう前記PWM信号生成手段を制御することを特徴とする回転電機制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相の前記PWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相の前記PWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるように前記PWM信号が生成されるよう前記PWM信号生成手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の回転電機制御装置。
  3. 前記パルス変化のタイミングは、前記PWM信号の立ち上がりのタイミング、および、前記PWM信号の立ち下がりのタイミングの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1または2に記載の回転電機制御装置。
  4. 前記制御手段は、前記回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相の前記巻線に流す前記目標電流値が非ゼロの所定の値に算出されるよう前記目標電流値算出手段を制御することによって、全ての各相の前記PWM信号のパルス変化のタイミングと、他の各相の前記PWM信号のパルス変化のタイミングとがいずれも異なるように前記PWM信号が生成されるよう前記PWM信号生成手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機制御装置。
  5. 前記制御手段は、前記回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、少なくとも1つの相の前記巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の相の前記巻線に印加する電圧の印加タイミングとが異なるように電圧を印加するよう前記電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置。
  6. 前記制御手段は、前記回転電機の駆動を停止させる制御をするとき、全ての各相の前記巻線に印加する電圧の印加タイミングと、他の各相の前記巻線に印加する電圧の印加タイミングとがいずれも異なるように電圧を印加するよう前記電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項に記載の回転電機制御装置。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置と、
    車両の操舵輪を転舵させる部材に取り付けられる前記回転電機と、
    を備えた操舵制御システム。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置と、
    車両の操舵輪とは異なる車輪を転舵させる部材に取り付けられる前記回転電機と、
    を備えた操舵制御システム。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の回転電機制御装置と、
    車両の操舵輪を転舵させる部材に取り付けられる第1の前記回転電機と、
    前記操舵輪とは異なる車輪を転舵させる部材に取り付けられる第2の前記回転電機と、
    を備えた操舵制御システム。
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