JP5430774B2 - スチーム延伸装置 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、糸条に加圧スチーム延伸を施す際、糸条とスチーム延伸装置のラビリンスシール部分との接触を防止することにより、毛羽の発生や断糸トラブルを大幅に改善し高品位の炭素繊維用前駆体繊維の製造を可能にしたスチーム延伸装置を提供することにある。
前記各糸条位置規制バーを非回転バーとすることができ、前記各糸条位置規制バーの表面粗度Raが、0.4a以下の値であるとよい。
前記各糸条位置規制バーが、セラミックコーティングされたステンレス製やチタン製、或いは硬質クロムメッキされた鉄又は硬質クロムメッキされたステンレス製であることが好ましい。
図1は、本発明に係る走行する糸条を加圧スチームの雰囲気中で延伸するためのスチーム延伸装置1の概略構成を示す縦断面図である。本発明の加圧スチーム延伸装置1が適用できる範囲は、繊維の種類、工程等によって特に限定されないが、特に、高い紡糸速度を要求される場合に有効であり、更にはアクリル繊維に代表される炭素繊維前駆体繊維などの糸条やその他の合成繊維糸条の細繊度化、高倍率での延伸、高速化などに特に適する。
延伸雰囲気のスチーム圧は、加圧状態すなわち大気圧より高い圧力に適宜設定でき、目的に沿うものであればよく、特に限定されない。すなわち、延伸する繊維の種類、スチーム延伸工程での処理状態、或いは目的とする繊維特性等により適宜設定できる。
第1及び第2シール室2,3の各糸条走行路13,14には、図1〜8に示すように、各シール室2,3の内壁面21,31の上下から、一方向に走行する糸条Zに向けて多数の板片9,21a,21b;31a,31bが直角に延びており、それぞれが第1及び第2シール室2,3内のラビリンスシール部22,32を構成する。これらの板片9,21a,21b;31a,31bのうち、板片9以外は同じ高さを有しているが、例えば図2、図4、図6及び図8に示すように、各ラビリンスシール部22,32の各糸条入口及び糸条出口にそれぞれ最も近い部位に配された板片9を他の板片に比べて高さを高く設定することがある。しかも、この背の高い板片9の先端には、糸条走行方向にR加工がなされて、糸条Zとの摩擦を極力防いでいる。ここで、後述する第1〜第4糸条位置規制バー8,7,5,6に代えて上記背の高い板片9を糸条位置規制バーとして使用することも可能である。
そうすることで、糸条の単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルが回避できるだけでなく、得られる糸条の品位低下をも防ぐことができる。
第1糸条位置規制バー8は、スチーム導入部4に対して前記糸条Zを挟んで反対側に設置されている。
スチーム導入部4から、スチームが導入されるため、走行する糸条Zが、スチーム導入部4の反対側に糸条Zが揺動しやすく、第2シール室3内の最も蒸気室10に近い前記板片31a,31bに接触することが多いため、スチーム導入部4に対して前記糸条Zを挟んだ反対側に設置することが必要である。更に前記スチーム導入口11と同じ上側又は下側に設置してもかまわない。
前記距離h3は、より前記板片31aと接触を防止する観点から0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。
また、前記距離h3の上限値は、特に制限されないが、シール効果の観点から0.5mm以下が好ましい。
前記糸条Zに近い部分とは、糸条Zがバタついたときに、第1糸条位置規制バー8に接触する部分である。接触部分をR加工することで、糸条Zの単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルの発生を防止ができ易くなる。
スチーム導入部4は、通常、蒸気室10の中央に配されるため、前記距離が1/4以下とすることで、スチームの影響を抑えることができ、第2シール室3のラビリンスシール部32の板片31a,31bへの接触を防止しやすくなる。
具体的には、前記蒸気室10の糸条出口平面から、第1糸条位置規制バー8の糸条Zに最も近い点との距離が70mm以下とすることが、第2シール室3のラビリンスシール部32の板片31a,31bへの糸条Zの接触を防止しやすくなる点で好ましい。前記距離は、前記接触を防止する観点から50mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。
この場合、第1糸条位置規制バー8は、第2シール室3内に配置されることになり、第1糸条位置規制バー8の糸条に最も近い点と、第1糸条位置規制バー8に最も近いラビリンスシール部の板片の側面との距離は、70mm以下が好ましく、30mm以下が更に好ましい。
また、第2糸条位置規制バー7の形状も、第1糸条位置規制バー8の形状と同様が好ましい。
前記距離d1が100mm以下であれば、第1シール室2のラビリンスシール部22の板片21a,21bに接触することを防止しやすく、単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルが回避できるようになり、得られる糸条の品位低下を効果的に防止できる。
前記接触を防止する観点から、前記距離は70mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましい。
その他の配置、糸条位置規制バーの形状は、第2糸条位置規制バー7と同様であればよい。
前記距離d4が100mm以下であれば、第2シール室3のラビリンスシール部32の板片31a,31bに接触することを防止しやすく、単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルが回避できるようになり、得られる糸条の品位低下を効果的に防止できる。
前記接触を防止する観点から、前記距離d4は70mm以下がより好ましく、30mm以下がさらに好ましい。
その他の配置、糸条位置規制バーの形状は、第1糸条位置規制バー8と同様であれば良い。
板片9を第1及び第2シール室2,3内に配置する場合は、配置の容易さ、スチームをシールする観点から、ラビリンスシール部22,32の板片9の糸条に近い部分をR加工することが好ましく、それ以外の配置にする場合は、配置の容易さ、巻付きによるトラブルを防止する観点から、円形断面の固定バーとすることが好ましい。
表面粗度Raが0.4a以下の値であれば、糸条Zと各位置規制バー5〜8とが接触したとしても、糸条Zに与えるダメージは小さく、単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルが発生することはない。
蒸気室10についてはチューブ型もしくはボックス型のいずれであってもよい。
本発明は、単錘処理に適したチューブ型、多錘処理に適したボックス型のいずれにも採用できる。
また、糸条位置規制バーの摩擦による糸条Zの擦過を抑制するには、上述のように、その表面を平滑加工して粗度を極力小さくすることが望ましいことから、前述のとおり、各位置規制バー5〜9としてセラミックコーティングされたステンレス製が好ましいが、その他にも、硬質クロムメッキされた鉄又はステンレス製、もしくはチタン製を挙げることができる。
本発明に係る加圧スチーム延伸装置1では、走行する糸条Zを加圧スチームで延伸するための蒸気室10の糸条走行方向の前後に第1シール室2と第2シール室3を設置し、この第1及び第2シール室2,3の好適な実施形態としては、そのシール構造をラビリンスシールにより構成することが望ましい。このラビリンスシールは、各シール室2,3の内壁面21,31からそれぞれ糸条に向かって直角に延びる多数の板片21a,31aから構成されるラビリンスシール部22,32からなる。ここで、R加工がなされた板片21a,31aに、第1シール室2の糸条入口2aから第2シール室3の糸条出口3aに到る間に糸条Zが接触しないことが肝要である。この接触を防ぐことが、単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルの発生がなくなり、得られる糸条Zの品位低下も防ぐことにつながる。
更に、前記第1シール室2の最も糸条入口2a側に位置するR加工されたラビリンスシール部22の板片を第3糸条位置規制バーとする場合、第3糸条位置規制バーの糸条Zに最も近い点を通る水平面と、前記第1シール室の板片21aの内で糸条Zに最も近い点を通る水平面との間の距離h1が0.1mm以上0.5mm以下の範囲で糸条に近い位置の配置に規定している。この距離を0.1mm以上0.5mm以下にすることで、ラビリンスシール部22,32の各板片21a,31aとの接触を防ぎ、なお且つ第1及び第2糸条位置規制バー8,7との接触も必要最小限に抑えることができるため、単繊維の切断、毛羽の発生、糸条全体の切断といったトラブルの発生を防止することができる。
なお、本実施例中、延伸糸条の毛羽の発生状況の評価は、スチーム延伸後の走行状態にある糸条を肉眼で3分間観察し、糸条表面の毛羽の数を計測することにより行った。
アクリロニトリル98%、メタクリル酸2%からなるアクリル系共重合体を、ジメチルホルムアミドに溶解して重合体濃度23%の紡糸原液を調整した。この紡糸原液を、紡糸ノズルを用いて、温度10℃、濃度80%からなる凝固浴中に吐出し凝固糸を得た。この凝固糸を、洗浄、冷延伸及び熱水中延伸を実施し、油剤付着及び乾燥緻密化処理を行って、アクリル系糸条を得た。
得られた前駆体糸条の毛羽の発生状況を評価した結果を表1に示した。
位置規制バーの設置位置を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維用前駆体糸条を得た。得られた前駆体糸条の毛羽の発生状況を評価した結果を表1に示した。
第1シール室における板片のうち糸条入口に最も近い板片を、R加工して第3糸条位置規制バーとし、第2シール室における板片のうち糸条出口に最も近い板片を、R加工して第4糸条位置規制バーとし、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維用前駆体糸条を得た。得られた前駆体糸条の毛羽の発生状況を評価した結果を表1に示した。
第3糸条位置規制バーは第1シール室内、第4糸条位置規制バーは第2シール室内に配置されている。
第2シール室における板片の内の蒸気室に最も近い板片を、R加工して第1糸条位置規制バーとし、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維用前駆体糸条を得た。得られた前駆体糸条の毛羽の発生状況を評価した結果を表1に示した。
第1糸条位置規制バーは第2シール室内に配置されている。
位置規制バーを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維用前駆体糸条を得た。得られた前駆体糸条の毛羽の発生状況を評価した結果を表1に示した。
位置規制バー設置位置を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維用前駆体糸条を得た。得られた前駆体糸条の毛羽の発生状況を評価した結果を表1に示した。
これより、少なくとも、蒸気室出側に第1糸条位置規制バーを設けることによって、糸条の毛羽の発生を防止し易くなることが分かる。
比較例3のように、蒸気室入側だけに糸条位置規制バーを設けた場合は、蒸気室出側だけに糸条位置規制バーを設けた実施例14に比較して、毛羽立ち数が多くなった。
10 蒸気室
10a (蒸気室の)糸条入口
10b (蒸気室の)糸条出口
11 スチーム導入口
12 スチーム配管
13 (第1シール室の)糸条走行路
14 (第2シール室の)糸条走行路
2 第1シール室
2a 糸条入口
21 内壁面
21a,21b (上下)板片
22 ラビリンスシール部
3 第2シール室
3a 糸条出口
31 内壁面
31a,31b (上下)板片
32 ラビリンスシール部
4 スチーム導入部
5 第3糸条位置規制バー
5a,5b (上下)第3糸条位置規制バー
6 第4糸条位置規制バー
6a,6b (上下)第4糸条位置規制バー
7 (蒸気室内の)第2糸条位置規制バー
8 (蒸気室内の)第1糸条位置規制バー
9 R加工されたラビリンスシール部の板片(糸条位置規制バー)
Z 糸条
Claims (17)
- 加圧スチームが導入される蒸気室と、前記蒸気室の糸条入口に隣接する第1シール室及び前記蒸気室の糸条出口に隣接する第2シール室とを備え、走行する糸条に加圧スチームの付与と延伸を行うスチーム延伸装置であって、
前記蒸気室は、スチームを導入するスチーム導入部を有し、
前記第1シール室及び前記第2シール室は、内壁面上下からそれぞれ前記糸条に向かって延設する複数の板片を有するラビリンスシール部を備え、
前記スチーム延伸装置は、走行する糸条が前記板片に接触することを防止する第1糸条位置規制バーを有し、
当該第1糸条位置規制バーは、
前記糸条の走行方向に対して直交する方向で且つ水平な方向に延び、前記糸条に対して前記スチーム導入部と反対側にあって、前記糸条に対して前記スチーム導入部と同じ上側又は下側に位置して前記蒸気室に最も近くにある前記第2シール室の板片と前記スチーム導入部との間に配置され、
前記第1糸条位置規制バーの糸条に最も近い点を通る水平面が、前記糸条に対して前記第1糸条位置規制バーと同じ上側又は下側にある前記第2シール室の前記複数の板片のうち、その先端が前記糸条に最も近い点を通る水平面に対して、0.1mm以上糸条に近い位置に配置された、スチーム延伸装置。 - 前記第1糸条位置規制バーが棒状又は板状であって、その糸条に近い部分が糸条走行方向にR加工されている、請求項1に記載されたスチーム延伸装置。
- 前記第1糸条位置規制バーは、蒸気室における前記第1糸条位置規制バーの糸条に最も近い点と前記蒸気室の糸条出口平面との間の距離が、前記蒸気室の糸条走行方向の長さに対して1/4以下の距離に配置される請求項1又は2に記載されたスチーム延伸装置。
- 前記板片の糸条に近い部分が、糸条走行方向にR加工されている、請求項1に記載されたスチーム延伸装置。
- 前記スチーム延伸装置は、走行する糸条が前記板片に接触することを防止する第2糸条位置規制バーを更に有し、
前記第2糸条位置規制バーは、
前記糸条の走行方向に対して直交する方向で且つ水平な方向に延び、前記糸条に対して前記スチーム導入部と反対側にあって、前記糸条に対して前記第2糸条位置規制バーと同じ上側又は下側に位置し前記蒸気室の最も近くにある前記第1シール室の板片と前記スチーム導入部との間に配置され、
前記第2糸条位置規制バーの糸条に最も近い点を通る水平面が、前記糸条に対して前記第2糸条位置規制バーと同じ上側又は下側にある前記第1シール室の前記複数の板片のうち、その先端が前記糸条に最も近い点を通る水平面に対して、0.1mm以上糸条に近い位置に配置された、請求項1〜4のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。 - 前記第2糸条位置規制バーが棒状又は板状であり、その糸条に近い部分が糸条走行方向にR加工されている、請求項5に記載されたスチーム延伸装置。
- 前記第2糸条位置規制バーは、蒸気室における前記第2糸条位置規制バーの糸条に最も近い点と前記蒸気室の糸条出口平面との間の距離が、前記蒸気室の糸条走行方向の長さに対して1/4以下の距離に配置される請求項5又は6に記載のスチーム延伸装置。
- 前記板片の糸条に近い部分が、糸条走行方向にR加工されている、請求項5に記載のスチーム延伸装置。
- 更に、第3糸条位置規制バーが、前記糸条の走行方向に対して直交する方向で且つ水平な方向に延び、糸条を挟んだ上側及び/又は下側に位置し前記第1シール室における板片のうち、装置の糸条入口に最も近い板片より糸条走行方向上流側の近接位置に配置され、
前記第3糸条位置規制バーの糸条に最も近い点を通る水平面が、前記糸条に対して前記第3糸条位置規制バーと同じ上側又は下側にある前記第1シール室の前記複数の板片のうち、前記糸条に最も近い点を通る水平面に対して、0.1mm以上糸条に近い位置であって、第3糸条位置規制バーの糸条に最も近い点と、第一シール室入口との距離が100mm以下の位置に配置され、及び又は
更に、第4糸条位置規制バーが、前記糸条の走行方向に対して直交する方向で且つ水平な方向に延び、糸条を挟んだ上側及び/又は下側に位置し前記第2シール室における板片のうち、装置の糸条出口に最も近い板片より糸条走行方向下流側の近接位置に配置され、
前記第4糸条位置規制バーの糸条に最も近い点を通る水平面が、前記糸条に対して前記第4糸条位置規制バーと同じ上側又は下側にある前記第2シール室の前記複数の板片のうち、前記糸条に最も近い点を通る水平面に対して、0.1mm以上糸条に近い位置に配置され、第4糸条位置規制バーの糸条に最も近い点と、第2シール室出口との距離が100mm以下の位置に配置される、請求項1〜4のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。 - 前記第3糸条位置規制バー及び/又は前記第4糸条位置規制バーが棒状又は板状であり、その糸条に近い部分が、糸条走行方向にR加工されている、請求項9に記載されたスチーム延伸装置。
- 前記板片の糸条に近い部分が、糸条走行方向にR加工された板片である、請求項9に記載されたスチーム延伸装置。
- 前記各糸条位置規制バーが非回転バーである、請求項1〜11のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。
- 前記各糸条位置規制バーの表面粗度Raが、0.4a以下の値である、請求項1〜11のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。
- 蒸気室がチューブ型蒸気室である、請求項1〜13のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。
- 蒸気室がボックス型蒸気室である、請求項1〜13のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。
- 前記各糸条位置規制バーが、セラミックコーティングされたステンレス製である、請求項1〜15のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。
- 前記各糸条位置規制バーが、チタン製、硬質クロムメッキされた鉄又は硬質クロムメッキされたステンレス製である、請求項1〜15のいずれかに記載されたスチーム延伸装置。
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