JP3192689B2 - アクリル系重合体糸条の加圧スチーム延伸装置 - Google Patents

アクリル系重合体糸条の加圧スチーム延伸装置

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栄一 濱田
通介 枝松
弘明 米山
俊裕 槙島
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アクリル系重合体糸条
を加圧スチーム延伸するに際し、毛羽の発生を抑えて、
高倍率延伸を実施するための加圧スチーム延伸装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来から、アクリル系重合体糸条の加圧
スチーム延伸を行う方法としては、アクリル系重合体糸
条を紡糸し、浴中延伸した後に加圧スチーム延伸するに
あたって、走行中の糸条を出来るだけスチームのリーク
が少ない雰囲気下で延伸しなければならないため、通常
この種の延伸にはラビリンスシールと称する矩形もしく
は環状の小口径を有するシールノズルを加圧スチームの
供給部前後に何本か継ぎ合わせてなる加圧スチーム延伸
機が使用される。そして、糸条は入口のラビリンスノズ
ル部から入り延伸機内で所定の倍率まで延伸され、出口
のラビリンスノズル部から出て行く。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような
従来技術を利用した方法で加圧スチーム延伸を行った場
合には、延伸室内に供給される加圧スチームはこのラビ
リンスノズルで一部が凝縮し吹き出すため、この際噴出
する蒸気、特にドレンが糸条を振動させ、ラビリンスノ
ズルとの接触を助長して、糸条の損傷を増幅させる結果
となっており、また、ラビリンスシール内を糸条が片寄
って走行するため、ラビリンスシール部での糸条損傷あ
るいは糸条に対する延伸張力斑、使用蒸気の湿り度等に
起因する毛羽が多発することが多かった。
【0004】従って、本発明の課題は、このような問題
点を解決する新たな加圧スチーム延伸装置を提供するこ
とである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
本発明は、アクリル系重合体溶液を紡糸、浴中延伸した
後、加圧スチームでスチーム延伸してアクリル系重合体
糸条を得るための加圧スチーム延伸装置であって、スチ
ーム延伸室の長さがラビリンスシール径の10〜100
倍であり、且つラビリンスシールの糸条入口付近に可動
の糸条姿勢維持部材、出口付近に固定の糸条姿勢維持部
材が設けられてなることを特徴とするアクリル系重合体
糸条の加圧スチーム延伸装置を主要な構成としている。
特に、上記アクリル系重合体糸条が炭素繊維用前駆体糸
条であるときに本発明は威力を発揮する。
【0006】以下、本発明の更に詳しい説明と好ましい
実施態様について説明する。
【0007】本発明に使用するアクリル系重合体はアク
リロニトリルのホモポリマー、或いはコモノマーを少量
共重合した二元系あるいは三元系共重合体であり、例え
ばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸
メチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の一成分
乃至二成分以上を0.1〜5%程度共重合した重合体が
好ましく用いられる。アクリル系重合体の溶媒は有機、
無機の公知の溶媒を使用することができる。
【0008】本発明においては、このアクリル系重合体
溶液を少なくとも紡糸し、浴中延伸する必要がある。紡
糸は直接凝固浴中に紡出してもよいし、一旦空気中に紡
出した後に浴中凝固させてもよい。浴中延伸は紡出糸を
直接行ってもよいし、また一旦水洗して溶媒を除去した
後に行ってもよい。浴中延伸は通常60〜100℃の延
伸浴中で約2〜6倍に延伸されるが本発明はこれに限定
されない。
【0009】この後、アクリル系重合体糸条が炭素繊維
用前駆体糸条である場合には、ホットロール等で乾燥し
更には緻密化を行った後、本発明の装置を用いて加圧ス
チーム延伸を実施しても良い。
【0010】
【作用】本発明において最も特徴的な点は、アクリル系
重合体溶液を紡糸、浴中延伸した後、加圧スチームでス
チーム延伸してアクリル系重合体糸条を得る加圧スチー
ム延伸装置において、スチーム延伸室の長さをラビリン
スシール径の10から100倍とし、且つ糸条入口付近
に可動の糸条姿勢維持部材、出口付近に固定の糸条姿勢
維持部材を設けた点にある。ここで、スチーム延伸室の
長さとは図1に示すスチーム延伸室3の糸条方向の実質
的な長さのことであり、スチーム延伸室3の長さが図2
に示すラビリンスシール径12の10倍よりも小さい場
合には糸条全体の延伸条件が均一となりにくく、変形速
度も大きくとらなければならないため、部分的な糸切れ
が発生し毛羽の発生原因となる。また、100倍を越え
る延伸室長とした場合には、延伸点が定まらず軽微な繊
度斑や張力斑によって糸条10の部分切れが発生しこの
場合も毛羽の発生につながってしまう。更にこの場合に
は、理由は不明であるが最大延伸倍率(全体が切断して
切れるまでの延伸倍率)も低下してしまう。
【0011】本発明装置によりスチーム延伸を行う場
合、図1に示すように糸条10は入口のラビリンスシー
ル2から導入され、出口のラビリンスシール4から出て
行く。ラビリンスシール2,4の構造としては通常使用
されている構造のものが使用できる。ところで走行糸条
10がラビリンスシール2,4に接触すると表面を損傷
しやすくなるが、通常ラビリンスシール内を糸条10が
片寄って走行すると、漏れ出してくる蒸気やドレンの流
れに片寄りが生じて走行糸条10に不規則な振動が発生
し、ラビリンスシール2又は4に糸条10が激しく接触
して損傷するようになり、これが毛羽の大きな発生原因
となる。
【0012】このためラビリンスシール2,4と糸条1
0の位置関係が非常に重要な意義をもつことになるが、
加圧スチーム延伸室3の前後に連設されるラビリンスシ
ール2,4の糸条入口及び出口の近傍に糸条10の中心
とラビリンスシール2,4、スチーム延伸室3の中心が
実質的に一致するようにする糸条姿勢維持部材6,7を
設けることが望ましい。特にスチーム延伸前の糸条は柔
らかく接触による損傷を受け易いので入口側の糸条姿勢
維持部材6の機能については注意を要する。このため本
発明では入口側の糸条姿勢維持部材6として、例えば自
由に回転するフリーローラのような可動部材を採用する
ことが好ましい。一方、延伸後の糸条は配向が増して表
面が強くなり少々の接触では損傷を受けて毛羽が発生す
るようなことはなくなるが、延伸時において糸条全体に
均等な張力がかからないと、張力の集中した糸が単糸切
れを起こし毛羽の発生につながってしまう。このため、
出口側ラビリンスノズル4の出口近傍に設置される糸条
姿勢維持部材7は、例えば固定ガイドのような固定部材
を用いて糸条を拡げ、糸条に均等に張力をかけることが
好ましい。
【0013】かかる本発明装置を用いることで従来発生
していた毛羽の発生を防止すると共に延伸倍率も大きく
とることが可能となった。スチーム延伸室3の構造とし
ては、図3に示すように室内に回りに多くの孔が開けら
れた多孔体を配設して、そこから加圧蒸気が吹き出して
来るような従来から良く知られている構造のものが使用
できる。ただし、その長さはラビリンスシール部が円形
である場合にはその口径の、その他の場合には断面積が
同じ円に換算した場合の直径の10〜100倍の長さで
あることが望ましい。
【0014】
【実施例】以下、本発明装置を使用して加圧スチーム延
伸を行った具体例を比較例と共に説明する。
【0015】実施例1〜5、比較例1〜2 アクリロニトリル(AN)、メチルアクリレート(M
A)、メタクリル酸(MAA)の共重合モル比、AN/
MA/MAA=96/2/2であるアクリル系重合体の
ジメチルアセトアミド(DMAc)溶液(ポリマー濃度
20重量%、粘度500ポイズ、温度60℃)を直径
0.075mmφ、ホール数3000の紡糸口金を通して
濃度が70重量%、浴温35℃のDMAc水溶液中に吐
出して水洗後、熱水浴中約3倍に延伸し、135℃で乾
燥、緻密化した糸条を得た。この糸条10を、図1に示
す加圧スチーム延伸機1を用いて加圧スチーム延伸す
る。
【0016】糸条10は走行速度が23(m/min )で巻
出しロール8から送り出され、可動の糸条姿勢維持部材
6としてのフリーロール6で集束された後、加圧スチー
ム延伸機1の前部に設けられた入口側ラビリンスノズル
2に導かれる。このラビリンスノズル2は図2に示すよ
うに多数の環状又は枠状のラビリンス11が所定の間隔
をおいて同心上に並設されてなる構造をもち、このラビ
リンスノズル部を通過する間に漏出してくる蒸気と走行
糸条10が熱交換することにより次第に余熱され、スチ
ーム延伸室3に導かれる。
【0017】スチーム延伸室3の構造は図3に示すとお
りであって、室内には調圧バルブ5で調整された加圧ス
チームが圧力:3(Kg/cm2G )で連続的に供給され、多
孔体13に開けられた多数の孔から吹き出す蒸気が走行
している糸条10にあたり、延伸に必要な熱と水分を付
与し、出口側ラビリンスノズル4を通過して外部の糸条
姿勢維持部材7である固定ガイドを介して巻取りロール
9に巻き取られる。出口側ラビリンスノズル4の構造は
上記入口側のラビリンスノズル2のそれと同様である。
【0018】上記条件下でスチーム延伸室3の長さ及び
延伸倍率を変化させ、処理した糸条の毛羽に付いてその
発生状況を観察したところ表1に示す結果を得た。ここ
で延伸室3の長さは、延伸室長さをラビリンスノズル
2,4の口径12で除した値(延伸室倍率)で示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】表1から明らかな如く本発明装置による
加圧スチーム延伸では、かなりな高倍率の延伸に対して
も毛羽の発生が少ない実用に十分に耐え得るアクリル系
重合体糸条が簡便に得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加圧スチーム延伸装置の全体構成を示
す概略側面図である。
【図2】同装置のラビリンスノズル構造を示す部分断面
図である。
【図3】同装置のスチーム延伸室構造を示す部分断面図
である。
【符号の説明】
1 加圧スチーム延伸機 2,4 ラビリンスノズル 3 加圧延伸室 5 スチーム調圧バルブ 6 可動糸条姿勢維持部材(フリーロール) 7 固定糸条姿勢維持部材(固定ガイド) 8 巻出しロール 9 巻取りロール 10 糸条 11 ラビリンス 12 ノズル口径 13 多孔体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米山 弘明 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社中央研究所内 (72)発明者 槙島 俊裕 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社大竹事業所内 (56)参考文献 特公 昭46−19729(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02J 1/22 301 D01D 10/00 D01F 6/18 D02J 13/00 D01F 9/22

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アクリル系重合体溶液を紡糸、浴中延伸
    した後、加圧スチームでスチーム延伸してアクリル系重
    合体糸条を得るための加圧スチーム延伸装置であって、 スチーム延伸室の長さがラビリンスシール径の10〜1
    00倍とし、且つラビリンスシールの糸条入口近傍に可
    動の糸条姿勢維持部材、出口近傍に固定の糸条姿勢維持
    部材が設けられてなることを特徴とするアクリル系重合
    体糸条の加圧スチーム延伸装置。
  2. 【請求項2】 上記アクリル系重合体糸条が炭素繊維用
    前駆体糸条であることを特徴とする請求項1記載の加圧
    スチーム延伸装置。
JP19322491A 1991-08-01 1991-08-01 アクリル系重合体糸条の加圧スチーム延伸装置 Expired - Lifetime JP3192689B2 (ja)

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