JP4983641B2 - 炭素繊維前駆体糸条の製造方法 - Google Patents

炭素繊維前駆体糸条の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維前駆体糸条の製造方法であり、加圧スチームによる二次延伸処理に関するものである。より詳しくは、ポリアクリロニトリル系フィラメントからなる品位が良好な炭素繊維前駆体糸条を安定して延伸できる製造方法に関するものである。
ポリアクリロニトリル系炭素繊維はアクリロニトリル系重合体を有機または無機溶媒溶液の凝固浴中に紡糸しポリアクリロニトリル系フィラメントからなる炭素繊維前駆体糸条とした後、これを耐炎化および炭化処理して製造される。
ポリアクリロニトリル系炭素繊維に用いられる炭素繊維前駆体糸条に関しては、優れた品位のものを得ようとする方法及び安定延伸を達成しようとする方法が、数多く提案されている。
通常、ポリアクリロニトリル系フィラメントからなる炭素繊維前駆体糸条は、アクリロニトリル系重合体を有機または無機溶媒に溶解した溶液を用いて製糸される。かかる製糸方法においては、アクリロニトリル系重合体の溶液を凝固浴中に紡出し得られたアクリロニトリル系フィラメントは、水中で脱溶媒された後、熱水中での延伸工程を経て処理剤を付与し乾燥緻密化工程に導かれる。乾燥緻密化工程を経ると、一応炭素繊維前駆体糸条として用いることのできるものが得られるが、熱水中での延伸だけではフィラメント中のアクリロニトリル系重合体の配向は、それほど高くならないため、通常乾燥緻密化工程の後にさらに、加圧スチームによる高温高湿雰囲気下での延伸処理が行われる。乾燥緻密化工程の後に、高温高湿雰囲気下で行うこのような延伸処理を二次延伸とよび、かかる工程を二次延伸工程という。二次延伸工程では、吸水によりアクリロニトリル系重合体を可塑化した状態で加熱延伸することにより、フィラメント内のアクリロニトリル系重合体を配向させ高強度化がなされる。その結果、乾熱延伸に比べ高倍率延伸が達成でき、また、品質・品位に優れた炭素繊維前駆体糸条が得られる。
二次延伸工程ではシール機能を有する、ボックス内又はチューブ内を加圧スチームを用い高温湿熱雰囲気とし、その中をポリアクリロニトリル系フィラメントからなる糸条を走行させ、かかる高温湿熱雰囲気下での延伸を行うが、該糸条の導入部と導出部のシール性が十分でない場合、高温高湿雰囲気を造り出すのは容易ではないので、該糸条の導入部と導出部のシール性について様々な検討がなされている。これは、シール性が安定な高温高湿雰囲気を造り出すための重要な要素であり、安定な高温高湿雰囲気が得られる炭素繊維前駆体糸条の品位と二次延伸工程での安定延伸の支配要因となるためである。そのため、二次延伸工程での安定延伸を目的に様々な提案がなされている。なお、二次延伸工程で使用するかかるシール機能を有する、ボックスを延伸ボックス、チューブを延伸チューブと呼ぶ。
例えば特許文献1には加圧スチームを用いる延伸装置を用いて、両端にラビリンスを配して糸条密度と延伸張力を規定することで良好な延伸性を達成する技術が開示されている。本特許文献に開示されている技術を用いることである程度の延伸性を達成することは可能であるが、限界があり、特に高糸条密度条件下で高速度で延伸することは困難であった。
また、特許文献2では、延伸チューブに用いられるスチーム蒸気と糸条の関係を規定し延伸性の向上を図る技術が開示されている。本特許文献に開示されている技術を用いることである程度の延伸性の向上は期待できるが、限界があり、さらなる改良が必要とされるものであった。
特許文献3にはラビリンス形状と段数を規定し、糸条密度10〜60%にする事で延伸性の向上を達成することが開示されているが、高糸条密度条件下で高速度で高倍率延伸するには不十分なものであった。
特許第1317413号公報 特許第3044896号公報 特許第3269855号公報
本発明の目的は、上述した従来技術における問題点の解決し、ポリアクリロニトリル系フィラメントからなる糸条を安定に延伸でき、品位が良好な炭素繊維前駆体糸条を得ることが可能な製造法を提供することにある。
本発明者らは、従来法による2次延伸処理では、高糸条密度条件下で高速度で延伸することは困難であった原因について検討したところ、延伸チューブ内での糸条の変形により導入部と導出部では糸速度、糸条形態(糸条の断面積・糸条配向度)等が異なるためシール性・プロセス性が影響を受けるためではないかとの考えの下、糸条の変形を考慮して導入部と導出部の充填率を種々設定してみたところ、従来法と比較して安定して延伸でき、品位が良好な炭素繊維前駆体糸条を得られることを見出した。
すなわち、本発明は、アクリロニトリル系重合体溶液を紡糸、浴中延伸、乾燥緻密化した糸条を、スチーム延伸機にて二次延伸する炭素繊維前駆体糸条の製造方法であって、糸条充填率が8.0〜25.0%となる径のラビリンスノズルを導入部に、糸条充填率が4.9〜8.1%となる径のラビリンスノズルを導出部に、その糸条導入部と糸条導出部の糸条充填率の比が1.5〜4.0であり、かつ糸条導入部のラビリンスノズル径が糸条導出部のラビリンスノズル径よりも大きくなるように配したスチーム延伸機により、スチーム延伸機の導入部の糸条速度が30〜150m/minであり、スチーム延伸機の導入部での総繊度が10,000〜100,000dtexの糸条を、延伸倍率3〜8倍で二次延伸することを特徴とする炭素繊維前駆体糸条の製造方法である。
また、本発明では、アクリロニトリル系重合体溶液の紡糸を、乾湿式紡糸法により行うこと、アクリロニトリル系重合体溶液を紡糸して得られた凝固糸を浴中延伸する前に、合糸する工程を有することも好ましい態様である。
本発明によれば、ポリアクリロニトリル系フィラメントからなる糸条を安定に延伸でき、品位が良好な炭素繊維前駆体糸条を得ることが可能となる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明はアクリロニトリル系重合体を紡糸し、水洗、浴中延伸し(浴中延伸を一次延伸と呼ぶこともある)、加熱ローラーにて乾燥緻密化し、さらに加圧スチームを使用した高温高湿雰囲気下において二次延伸することによりポリアクリロニトリル系フィラメントからなる炭素繊維前駆体糸条を製造する方法に関するものであり、特に、加圧スチームを使用した二次延伸の工程を特徴とするものである。
本発明に用いるアクリロニトリル系重合体は特に限定される物ではないが、炭素繊維前体糸条として用いる必要からアクリロニトリル90重量%以上のものが好適に用いられる。
また、アクリロニトリル系重合体には共重合成分を含むことも好ましく、この場合、共重合成分としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸もしくはこれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩等を一種または二種以上を適時用いることができる。
アクリル系重合体の溶媒としては、有機及び無機の公知の溶媒を使用することができ、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、硝酸、ロダン水溶液等が好適に用いられる。
尚、アクリル系重合体の製法としては、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の公知の重合法用いる事ができ、特に限定されるものではない。
本発明においてアクリル系重合体溶液は紡糸、浴中延伸、乾燥緻密化をする必要がある。紡糸は凝固浴中に直接紡出する湿式紡糸法、または一度空気中に紡出した後に浴中で凝固させる乾湿式紡糸法等があるが、これらを適時用いて紡糸することができる。
浴中延伸は紡出糸に対して直接行っても良いし、水洗工程にて溶媒除去した後に行ってもよい。通常、浴中延伸は50℃〜98℃の浴液中で約1.5〜6.0倍に延伸されるが、特にこれらに限定されるものではない。
乾燥緻密化は浴中延伸後の糸条をホットローラ等で乾燥することにより行われるが、乾燥温度、乾燥時間等は適時用いればよく、特にこれらに限定されるものではない。本発明の特徴は、乾燥緻密化後の糸条を二次延伸する際に、糸条充填率が8.0〜25.0%となる径のラビリンスノズルを導入部に、糸条充填率が4.9〜8.1%となる径のラビリンスノズル導出部に配したスチーム延伸機により二次延伸することである。
本発明に用いるラビリンスノズルとはスチームの漏れを抑制するシール機能を有し、小孔径の形状を有するものである。かかるラビリンスノズルは、導入部および導出部にそれぞれ複数個設置して使用される。導入部及び導出部に複数個のラビリンスノズルを設置することで、より効果的にシール性を得ることが出来る。なお、ラビリンスを設置する個数が3個未満ではシール効果が不十分な場合があり、設置する個数を増やすと、シール効果は向上するものの、糸条とラビリンス内壁との接触する確率が増加する方向となるため糸切れや毛羽の原因に成る場合がある。かかる理由から、通常、導入部及び導出部に各3〜20個設置することが好ましい。このように複数のラビリンスノズルを使用する場合には、前記糸条充填率は、スチーム延伸機の導入部および導出部の最も外側のラビリンスノズルにおける値とする。
ここで言う、糸条充填率とはラビリンスの開口部の最小径となった部分における下記式で定義される比率である。
糸条充填率=糸条総断面積/ラビリンスの流路面積×100
ここで、糸条総断面積とは、ラビリンスの開口部の最小径となった部分を通過する時の糸条面積の総和であり、ラビリンスの流路面積とはラビリンスの開口部が最小径となった部分の開口部面積を言う(ここで、ラビリンスの開口部の最小径を、ラビリンスノズル径と呼び、また特に断らない限り、径は直径を示すものとする)。糸条総断面積は次の方法によって求めることが出来る。
延伸チューブに入る直前(導入部)及び出た直後(導出部)で糸条を切断して採取する。このとき上述の定義では、糸条総断面積は、ラビリンスの開口部の最小径となった部分を通過する時のものであるが、最小系となった部分でのサンプリングは不可能であるため、延伸チューブに入る直前および、出た直後の糸条総断面積をラビリンスの開口部の最小径となった部分での糸条総断面積としてするものと定義する。
導入部及び導出部で採取した糸条を糸条の走行方向と直交する断面方向に切断した後、光学顕微鏡にて観察し、総フィラメント数の1%の個数を無作為に抽出し単糸直径を測定しその平均値を求め、総フィラメント数と平均単糸直径より糸条総断面積を算出する。
ラビリンスの流路面積は次の方法によって求めることが出来る。
ラビリンスの流路面積(mm )=(ラビリンスノズル径(mm))×π/4
スチーム延伸機導入部のラビリンスノズル径として、糸条充填率が8.0%となる径未満のものを用いた場合は、ラビリンスの開口部が最小径となった部分においてもラビリンス内壁と糸条間の空隙が多いため糸条が持ち込む随伴流により熱交換効率が低下するとともにスチーム延伸機内の内圧により乱流が発生するため糸条がラビリンス内壁に接触し、糸条にキズが発生し、さらには糸条切れを誘発する。
スチーム延伸機導入部のラビリンスノズル径として、糸条充填率が25.0%となる径を越えるものを用いた場合は、ラビリンスの開口部が最小径となった部分においてもラビリンス内壁と糸条間の空隙が小さく糸条が持ち込む随伴流が減少し熱交換器内のシール性は向上するものの、ラビリンス内壁への糸条の接触が顕在化し糸切れを誘発する。
スチーム延伸機導出部のラビリンスノズル径として、糸条充填率が4.9%となる未満のものを用いた場合は、ラビリンスの開口部が最小径となった部分においてもラビリンス内壁と糸条間の空隙率多く糸条が持ち出す随伴流によりシール性の確保が困難となり熱交換効率が著しく低下する。
スチーム延伸機導出部のラビリンスノズル径として、糸条充填率が8.1%となる径を越えるものを用いた場合は、ラビリンスの開口部が最小径となった部分においてもラビリンス内壁と糸条間の空隙が小さく糸条が持ち出す随伴流が減少し熱交換器内のシール性は向上するものの、ラビリンス内壁への糸条の接触が増大し糸痛みの原因となるばかりか、延伸が進んだ糸条では表層部のキズが原糸物性に顕著に寄与し物性の低下が避けられない。
すなわち、スチーム延伸機での導入部と導出部で糸条充填率が異なるのは、導入部では糸速が遅く、また延伸が進んでいないために擦過に強く、一方、導出部では糸速が速く、また延伸が進んでいるため擦過に弱いというようにそれぞれの位置での速度や、糸条の特性が異なるため、シール性と糸形態を勘案し、充填率をそれぞれ設定することで優れた延伸性が得られると考えられることによる。
糸条充填率の確認方法は上述の通りであるが、以下の手順にてラビリンス径を選定することにより調整し、適時上述の方法により確認することにより設定する。すなわち、スチーム延伸機導入部での糸条充填率は、最終巻き上げ部での炭素繊維前駆体糸条の繊度と速度、スチーム延伸機に導入する際のフィードローラ速度(スチーム延伸機への導入速度)、および、ポリアクリロニトリル糸条の密度の代表値(ρ=1.14×10−3g/mm)から下記式により糸条総断面積を求め、それを用いて糸条充填率が規定の範囲となるようにラビリンス径を選定する。ここで、ポリアクリロニトリル糸条の密度として代表値を用いるのは、ポリマー組成(共重合成分の比率など)及び緻密性(配向度・結晶化度など)により異なる値を取る可能性があるからである、従って文献等に記載されている一般的なPAN原糸の密度を代表値として用い、上述の確認方法により正確な値を得るようにするのである。もちろん、適用する系が固定されていれば、その製造工程中の測定部位での密度を得、それを用いることは好ましい方法である。また、
導入部の繊度(dtex)=巻き上げ後の繊度(dtex)×巻き上げ速度(m/min)/フィードローラ速度(m/min)
糸条総断面積(mm )=導入部の繊度(dtex)ρ
ラビリンスの流路面積(mm )=糸条総断面積(mm )/糸条充填率(−)
ラビリンス内径(mm)=(ラビリンス流路面積(mm )×4/π) (1/2)
また、スチーム延伸機導出部ではスチーム延伸機から導出する際のドローローラ速度(スチーム延伸機からの導出速度)を用いることで規定が可能となる。スチーム延伸機導出部での糸条充填率は、スチーム延伸機導入部で示したのと同様の方法により、最終巻き上げ部での炭素繊維前駆体糸条の繊度と速度、スチーム延伸機から導出する際のドローローラ速度、および、ポリアクリロニトリル糸条の密度の代表値(ρ=1.14×10−3g/mm)から下記式により糸条総断面積を求め、それを用いて糸条充填率が規定の範囲となるようにラビリンス径を選定する。なお、ポリアクリロニトリル糸条の密度として代表値を用いる意味、等は上記と同様である。
導出部の繊度(dtex)=巻き上げ後の繊度(dtex)×巻き上げ速度(m/min)/ドローローラ速度(m/min)
糸条総断面積(mm )=導出部の繊度(dtex)ρ
ラビリンスの流路面積(mm )=糸条総断面積(mm )/糸条充填率(−)
ラビリンス内径(mm)=(ラビリンス流路面積(mm )×4/π) (1/2)
チーム延伸機に供給されるスチームは、一般的に湿り度を制御した加圧スチームが好適に用いられる。例えば加圧スチームの余分なドレンを分離した後、除熱を行い飽和スチームを得て所定の圧力に設定する。ついで、再びドレンの分離を行い、温度及び流量をコントロールした冷却水にて除熱することで加湿を行い、湿り度を制御した加圧スチームを用いるが、特に該手法に限定されるものではない。なお、糸条の総繊度が大きい、単糸繊度が大きい、製糸速度が速い、延伸倍率が高いといった条件についてはその値が大きいほど延伸に要する熱量が大きくなる。加圧スチーム流量及び圧力は、大きいほど糸条に付与できる熱量が大きくなることから、前記条件に応じ、適宜設定すればよい。
本発明では、スチーム延伸機の糸条導入部の充填率と糸条導出部の充填率の比が1.5〜4.0の範囲とすることでより優れた効果を発揮する。
ここで言う、糸条充填率の比とは下記式で定義される。

糸条充填率の比=導入部の糸条充填率/導出部の糸条充填率

糸条充填率の比は小さいほど、糸条の持ち込む随伴流と糸条の持ち出す随伴流のバランスにより持ち込み過多に傾くため、スチーム延伸機内の導入部り口部に乱流が発生することがある。
糸条充填率の比は大きいほど、糸条の持ち込む随伴流と糸条の持ち出す随伴流のバランスにより持ち出し過多に傾くため、スチーム延伸機内の熱交換効率を下げることになり好ましくない。
本発明では、スチーム延伸機導入部での総繊度が10000100000dtexの糸条を延伸倍率3〜8倍で延伸する際に特に優れた効果を発揮するので、これを必須としている
ここでいう、スチーム延伸機導入部での総繊度は、上述したように最終巻き上げ部での炭素繊維前駆体糸条の繊度と速度、及び、スチーム延伸機に導入する際のフィードローラの速度から下記式で求められる。
スチーム延伸機導入部での総繊度=巻き上げ部での繊度×巻き上げ部での速度/フィードローラの速度
また、延伸倍率とはスチーム延伸機から導出する際のドローローラ速度とスチーム延伸機に導入する際のフィードローラの速度から下記式で求められる。
延伸倍率=ドローローラ速度/フィードローラ速度
本技術は、特にスチーム延伸機導入部での繊度が10000dtex以上で、かつ延伸倍率が3以上の場合に、好適に適用できる。
スチーム延伸機導入部での繊度が100000dtex以下で、かつ延伸倍率が8以下の場合、本発明の効果がより安定して得られ、単糸切れや毛羽発生等が殆ど発生しないことから好ましい。
本発明では、スチーム延伸機導入部入り時の糸条速度が30150m/minの場合に特に優れた効果を発揮するので、これを必須としている。ここでいうスチーム延伸機導入部入り時の糸条速度とはスチーム延伸機の導入側に配したフィードローラの速度のことである
スチーム延伸機導入部の糸条速度が30m/min以上において、特に効果が大きいことから好ましく適用できる。
スチーム延伸機導入部の糸条速度が150m/min以下の場合には、単糸切れや毛羽等をがなく好ましい。
かくして、アクリル系フィラメント糸の加圧スチーム延伸法において、高密度糸条を高速度且つ高倍率延伸するに際し安定して延伸できると共に、品位の優れた糸条を得ることが可能となる
以下、実施例を挙げて発明を詳細に説明する。なお、実施例3、4、7、8、15、16、25は比較例に相当する例である。
[繊度]
JIS L1013(1999)に記載の8.3.1B法に従い測定した。
[糸条充填率]
糸条総断面積を次の方法によって求めた。
延伸チューブに入る直前(導入部)及び出た直後(導出部)で糸条を切断して採取し、糸条の走行方向と直交する断面方向に切断した後光学顕微鏡にて観察し、総フィラメント数の1%の個数を無作為に抽出し単糸直径を測定しその平均値を求め、総フィラメント数と平均単糸直径より糸条総断面積を算出した。
このようにして得た糸条総断面積とラビリンスの流路面積より、下記式により求めた。
糸条充填率=糸条総断面積/ラビリンスの流路面積×100
[導入部の繊度]巻き上げ後の繊度と巻き上げ速度とフィードローラ速度を測定し、下記式でにより求めた。
導入部の繊度(dtex)=巻き上げ後の繊度(dtex)×巻き上げ速度(m/min)/フィードローラ速度(m/min)
[導出部の繊度
巻き上げ後の繊度と巻き上げ速度とドローローラ速度を測定し、下記式より求めた。
導出部の繊度(dtex)=巻き上げ後の繊度(dtex)×巻き上げ速度(m/min)/ドローローラ速度(m/min)
[糸条充填率の比
糸条充填率導入部と糸条充填率導出部を測定し、下記式より求めた。
糸条充填率の比=糸条充填率導入部/糸条充填率導出部
[毛羽発生数]スチーム延伸機導出部側の走行糸条に発生する毛羽を目視で10min間観察した。
○ :0〜1回/10min 極めて良好
△ :2〜5回/10min 概ね良好
× :6〜10回以上/10min 不良
××:11回以上/10min 極めて不良
[実施例1]
アクリロニトリル99モル%、イタコン酸1モルを含むモノマーを重合して得たアクリル系重合体を20%含むDMSO溶液を紡糸原液として、孔径0.12mm4000ホールの口金を用いてDMSO30%、水70%からなる凝固液中にエアーギャップを介して吐出する乾湿式紡糸法により凝固糸を得た。ついで、水洗工程の後に熱水中で浴中延伸(1次延伸)し、シリコーン系油剤を付与した後、多段熱ローラーにて熱乾緻密化を行った。
その後、スチーム延伸機に導き2次延伸を実施した。その際、スチーム延伸機の導入部に直径が4mmの、導出部に直径が2.5mmのラビリンスノズルをそれぞれ設置した。該スチーム延伸機を用いて、5倍に延伸した。(導入速度:50m/min、導出速度:250m/min)
その後、ワインダーにてパッケージに巻き上げ、単糸繊度1.1dtexのアクリル系繊維糸条を得た。
その際の、スチーム延伸機導出部側の走行糸条に発生する毛羽発生回数は0回/10minであり、極めて良好であった。
[実施例2]
アクリロニトリル99モル%、イタコン酸1モルを含むモノマーを重合して得たアクリル系重合体を20%含むDMSO溶液を紡糸原液として、孔径0.12mm4000ホールの口金を用いてDMSO30%、水70%からなる凝固液中にエアーギャップを介して吐出する乾湿式紡糸法により凝固糸を得た。ついで、凝固糸を2本合糸して、8000フィラメントの繊維糸条とした後、水洗工程を介して熱水中で浴中延伸(1次延伸)を行いシリコーン系油剤を付与した。その後、多段熱ローラーにて熱乾緻密化を行った。
その後、スチーム延伸機に導き2次延伸を実施した。その際、スチーム延伸機の導入部に直径が5mmの、導出部に3.5mmのラビリンスノズルをそれぞれ配した。該スチーム延伸機を用いて、延伸前の糸条速度を50m/minを5倍に延伸した。
その後、ワインダーにてパッケージに巻き上げ、単糸繊度1.1dtexのアクリル系繊維糸条を得た。
その際の、スチーム延伸機導出部側の走行糸条に発生する毛羽発生回数は、1回/10minであり、極めて良好であった。
[実施例3〜15及び比較例1〜12]
実施例1及び2と同一の方法にて、合糸本数・スチーム延伸機導入部り及び導出部のラビリンス径を変化させて、得られた結果を表に示す。
Figure 0004983641
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Claims (3)

  1. アクリロニトリル系重合体溶液を紡糸、浴中延伸、乾燥緻密化した糸条を、スチーム延伸機にて二次延伸する炭素繊維前駆体糸条の製造方法であって、糸条充填率が8.0〜25.0%となる径のラビリンスノズルを導入部に、糸条充填率が4.9〜8.1%となる径のラビリンスノズルを導出部に、その糸条導入部と糸条導出部の糸条充填率の比が1.5〜4.0であり、かつ糸条導入部のラビリンスノズル径が糸条導出部のラビリンスノズル径よりも大きくなるように配したスチーム延伸機により、スチーム延伸機の導入部の糸条速度が30〜150m/minであり、スチーム延伸機の導入部での総繊度が10,000〜100,000dtexの糸条を、延伸倍率3〜8倍で二次延伸することを特徴とする炭素繊維前駆体糸条の製造方法。
  2. アクリロニトリル系重合体溶液の紡糸を、乾湿式紡糸法により行う、請求項1に記載の炭素繊維前駆体糸条の製造方法。
  3. アクリロニトリル系重合体溶液を紡糸して得られた凝固糸を浴中延伸する前に、合糸する工程を有する、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体糸条の製造方法。
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