JP6520787B2 - アクリル系前駆体繊維束の製造方法および炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル系前駆体繊維束の製造方法、及び炭素繊維の製造方法に関するものであり、主としてアクリル系前駆体繊維束の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、製造工程内でアクリル系前駆体繊維束が走行している雰囲気中の絶対湿度を制御することで、高い操業性を保ちつつ収束性の低下や毛羽の発生を防止し、糸弛みや毛羽といった巻取り後パッケージの品位不良を抑制できるアクリル系前駆体繊維束の製造方法に関するものである。
炭素繊維用前駆体繊維束に用いられるアクリル繊維束は、アクリロニトリル系重合体を有機または無機溶媒に溶解させた紡糸原液を、湿式紡糸または乾湿式紡糸により凝固浴中で紡糸させることで製造される。紡糸した繊維束は、一般に、溶媒を除去するための水洗工程、配向を促進させるための延伸工程、工程通過性向上や物性向上を目的に油剤を付与する油剤付与工程、糸条中の水分を乾燥し、緻密化させる乾燥工程などに通される。乾燥工程を出た繊維束は、最終的な炭素繊維の品質の合わせ込みのため、後延伸や熱セットなどの処理を経たのち、パッケージされ、焼成工程へと送られる。焼成工程では、パッケージから解舒されたアクリル系前駆体繊維束を酸化制雰囲気中で加熱して酸化繊維に転換する耐炎化工程、酸化繊維を窒素・アルゴン・ヘリウム等の不活性雰囲気中でさらに加熱する炭化工程を経ることで最終的な炭素繊維が得られる。
近年、炭素繊維は複合材料の強化繊維としてスポーツ用途や一般産業用途、航空宇宙用途での需要が拡大している。これに伴い、炭素繊維の生産量増加やコストダウンが求められており、設備あたりの生産性を向上させる目的でアクリル繊維束の生産速度の増加が取り組まれている。しかしながら、生産速度を大きくしていくと、乾燥工程以降で、繊維束の走行する幅が広がったり、繊維束の一部がさばけて走行したりというような収束性の低下が起こりやすくなる。また、ローラーと糸条の摩擦による毛羽の発生が顕著となる。これらのトラブルが起こると、巻取装置で巻取った際に糸弛みや毛羽といった繊維束の品位不良の原因となる。さらに、これらの不良部分の量が甚だしい場合は、ローラーやガイドに巻付いて工程トラブルの原因になるほか、繊維束を焼成して得られる炭素繊維の強度低下を引き起こす原因となっている。
収束性を付与する技術として、工程中に除電装置を設置し糸条の帯電圧を一定以下にする方法が開示されている(特許文献1)。除電装置により、設置位置付近での帯電量を一時的に減衰し糸さばけを防止することができるが、摩擦による毛羽発生についての記載はない。また、生産性を向上させ繊維束が帯電しやすくなるにつれ、帯電圧を低く抑えるために狭い間隔で除電装置を設置しなければならず、設備コストがかかる。また、一般的に除電装置は空気中のほこりを吸い寄せやすく、ほこりの付着により除電能力が徐々に低下していくため、長期間安定して除電能力を維持することが難しい。
一方、巻取装置付近の雰囲気領域の絶対湿度を制御する方法が開示されている(特許文献2)。これにより、巻取装置付近での収束性の向上や毛羽の発生防止は可能となるが、生産速度を上げていった場合、その効果は十分なレベルではなかった。
特開2010−13777号公報 特開2011−208314号公報
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するものであり、アクリル系前駆体繊維束を高速で製造するにあたり、収束性の低下や毛羽の発生が起こりやすい乾燥工程以降のエリアにおいて、高い操業性を保ちつつ収束性の低下や毛羽の発生を防止し、糸弛みや毛羽といった巻取り後パッケージの品位不良を抑制できるアクリル系前駆体繊維束の製造方法および炭素繊維の製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するための本発明のアクリル系前駆体繊維束の製造方法は、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸後、水洗工程、乾燥工程を経て、巻取装置でアクリル系前駆体繊維束を巻き取るに際し、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までのアクリル系前駆体繊維束が走行するエリアを、絶対湿度12g/m以上に調湿することを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維の製造方法は、前記アクリル系前駆体繊維束の製造方法でアクリル系前駆体繊維束を製造した後、酸化性雰囲気中200〜300℃で耐炎化し、その後不活性雰囲気中1000℃以上で炭化する、炭素繊維の製造方法である。
本発明では、アクリル系前駆体繊維束を高速で製造するにあたり、収束性の低下や毛羽の発生が起こりやすい乾燥工程以降について、繊維束の走行エリアで空気中の水分量を一定範囲に維持する絶対湿度の管理を行うことで、収束性の低下や毛羽の発生を一貫して防止し、高い操業性を保ちつつ糸弛みや毛羽の少ない良好なアクリル系前駆体繊維束パッケージを得ることができるアクリル系前駆体繊維束の製造方法および炭素繊維の製造方法を提供できる。
本発明に係るアクリル系前駆体繊維束の製造方法の一例を示した概略図である。
本発明者らは、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸するアクリル系前駆体繊維束の製造方法において、巻取りパッケージ中の糸弛みや毛羽といった品位不良が乾燥工程以降での収束性の低下や毛羽の発生によるものであり、その頻度が乾燥工程直後に設置したローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアの絶対湿度と相関があることを突き止めた。一度収束性が低下すると、以降の工程で収束性を付与させても単糸のさばけが完全には解消されず、さばけた単糸がたるんだ状態でパッケージとして巻取られてしまう。また、アクリル系前駆体繊維束の単糸が切れて毛羽となってしまうと元には戻らない。そのため、乾燥工程以降でアクリル系前駆体繊維束が走行する全てのエリアの絶対湿度を調整することが有効である。
本発明のアクリル系前駆体繊維束の製造方法では、湿式紡糸または乾湿式紡糸により紡糸後、水洗工程、乾燥工程を経て、巻取装置でアクリル系前駆体繊維束を巻き取るに際し、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までのアクリル系前駆体繊維束が走行するエリアの工程雰囲気を一定以上の絶対湿度に保つことにより、アクリル系前駆体繊維束が乾燥してから巻き取られるまで、一貫してアクリル系前駆体繊維束の収束性の担保や毛羽の抑制が可能となり、工程トラブルを防止し良好なパッケージを得ることが可能となる。
以下、本発明のアクリル系前駆体繊維束の製造方法の好適な実施の形態について具体的に説明する。
本発明におけるアクリル系前駆体繊維束を構成する重合体の種類は特に限定されないが、アクリロニトリル90質量%以上とアクリロニトリルと共重合可能なモノマー10質量%以下からなる共重合体であることが好ましい。共重合可能なモノマーとしてはアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸又はこれらのメチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アンモニウム塩、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
これらのポリマーからアクリル系前駆体繊維束を製造するため、ポリマーを有機または無機溶媒に溶解させた紡糸原液を、湿式または乾湿式紡糸により凝固浴中で紡糸する。紡出糸は、溶媒を除去する水洗工程、水分を蒸発させる乾燥工程を経て巻き取られる。通常、水洗工程の前後どちらかで、浴中延伸して繊維の配向度を高める処理を行う。浴中延伸は50〜98℃の熱水中で1.2〜6.0倍に延伸されることが望ましい。
また、乾燥工程の手前で、以降の工程での通過性向上や最終製品である炭素繊維の物性向上のため、油剤を付与することが望ましい。付与する油剤としては、炭素繊維の高強度化の観点からシリコーン系油剤やその混合物が好適に使用される。
乾燥工程は、直前に油剤を付与した繊維束を加熱することによって行われる。乾燥方式としては、加熱ローラーとの接触によって行われるのが一般的であるが、サクションドラム方式として効率を高めても良い。また、乾燥温度、乾燥時間等は適宜選択することができる。
乾燥工程の後には、繊維束を再度2.0〜9.0倍に延伸する後延伸工程を設置することが望ましい。後延伸は高温ローラーを用いた乾熱延伸や加圧蒸気を用いたスチーム延伸などの方式があり、その方式は特に限定されないが、繊維束の可塑性を高め延伸倍率を高く設定できる点からスチーム延伸が好ましい。
後延伸工程以外にも、乾燥工程から巻取装置までの間に、最終的な炭素繊維の品質の合わせ込みのため、交絡、熱セット、合糸といった処理を実施することがあるが、その方式や条件については特に限定されない。
本発明では、乾燥工程以降で繊維束の走行するエリアの絶対湿度を制御する。
図1は、本発明に係るアクリル系前駆体繊維束の製造方法の一例を示した模式図である。
図1において、紡糸、水洗、浴中延伸、油剤付与工程を経たアクリル系前駆体繊維束1は、乾燥処理装置2、後延伸処理装置4、熱セット処理装置5を通過した後、複数設置された速度制御駆動ローラー6からなるドライブステーションから巻取装置入りローラー7を介して巻取装置8にて巻取られる。本発明は、乾燥工程以降の繊維束の通過するエリアを、乾燥工程直後に設置されたローラー3aから巻取装置直前に設置された駆動ローラー6aに入るまでに繊維束が走行するエリア9aと、巻取装置直前に設置された駆動ローラー6aから巻取装置8までに繊維束が走行するエリア9bに分類し、両方のエリアの絶対湿度を12g/m以上に調湿するものである。
本発明では、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までのアクリル系前駆体繊維束が走行するエリアを、絶対湿度12g/m以上に調湿するために、繊維束のごく近傍の領域の雰囲気を、乾燥工程以降に繊維束の走行する経路全体にわたって調湿することが必要になる。この繊維束の走行する経路全体の絶対湿度を全て測定し制御することは難しいが、エリア9aについては、乾燥処理装置直後の駆動ローラー3aから巻取装置直前の駆動ローラー6aに入るまで、繊維束の進行方向に2mおきに、繊維束よりその走行方向に垂直に10cm離れた点を測定し、その最低値が12g/m以上となるよう調湿されていれば十分である。また、エリア9bについては、巻取装置直前の駆動ローラー6aから巻取装置8まで、繊維束の進行方向に均等に3点、繊維束よりその走行方向に垂直に10cm離れた点を測定し、その最低値が12g/m以上、好ましくは12〜25g/mとなるよう調湿されていれば十分である。絶対湿度を12g/m以上とするために、繊維束の製造装置が設置されたエリア全体を他の空間から隔離して均一に調湿しても良いし、エリア9aとエリア9bの間に仕切を設けて分割し、それぞれを調湿しても良い。また、繊維束の走行経路付近に調湿機構を設けたり、絶対湿度の低い地点にのみ調湿機構を設けたりして効率的に調湿を行っても良い。
エリア9aおよびエリア9b、すなわち乾燥工程直後に設置されたローラー3aから巻取装置8までに繊維束が走行するエリアの絶対湿度が12g/m未満であれば、繊維束の走行中に収束性の低下や毛羽の発生が起こりやすくなる。絶対湿度の低下によりこれらの頻度が増加するメカニズムは明確ではないが、乾燥工程以降においては、繊維束表面に吸着する水分量とその付近の雰囲気の絶対湿度に正の相関があると考えられることから、繊維束表面の吸着水分量が低下した場合、ローラーやガイドとの接触・剥離や単糸同士の擦れによる帯電が促進されることや、雰囲気中の水分が少ないため電荷が雰囲気中に排出されず繊維束に残ることが原因であると考えられる。また、単糸切れが発生しやすくなるのは、絶対湿度の低く繊維束表面の吸着水分量が少ない状態では、ローラーやガイドとの擦れによって繊維束が痛みやすいためと考えられる。
絶対湿度を上げるためには、蒸気やミスト状の水粒子を導入する方法や、加湿空気を導入する方法がある。
エリア9a、すなわち乾燥工程直後に設置されたローラー3aから巻取装置直前に設置された駆動ローラー6aに入るまでに繊維束が走行するエリアについては、一般的に並行する多数の繊維束が平面状に走行していることから、繊維束の走行経路付近の領域全体の絶対湿度を一定以上に上げるには、水平方向に均一な加湿を行う必要があり、ノズル方向の調整により水平方向への拡散性を大きくできることからミスト状の水粒子導入する方法が好ましい。また、加湿をした際に設備表面への結露が発生した場合、結露が繊維束に落下付着すると繊維束の内部まで水が染みこみ後延伸や交絡などの処理を行う際に糸切れの原因となってしまう点から、粒子径の小さいミストであることが好ましい。具体的には、ミストの噴出地点から15cm離れた点にレーザー光を照射してドップラー法により各水ミスト粒子の径を測定した際の最大粒子径が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。蒸気を導入する方法や加湿空気を導入する方法は、水平方向の均一加湿性が低い。さらに、蒸気を導入する方法については、加湿能力を確保するために蒸気導入量を上げた場合、蒸気が近傍の装置や設備表面に付着して結露が発生しやすい。エリア9b、すなわち巻取装置直前に設置された駆動ローラー6aから巻取装置8までに繊維束が走行するエリアに関しては、絶対湿度を上げる方法は特に限定されない。
尚、本発明のアクリル系前駆体繊維束の製造方法は、図1に示した装置には限定されない。乾燥工程以降で、後延伸処理や熱セット処理を実施しなくても良いし、開繊処理や合糸処理などの処理を行っても良い。また、収束性を更に高めるために、除電装置を乾燥工程以降に設置して繊維束の帯電圧を下げても良い。
前述の処理がなされた後、繊維束は巻取装置によりボビンに巻き取られる。巻取速度は、単位時間あたりの生産量を高めるために高速であることが望ましいが、巻取速度が150m/分以上である場合、収束性の低下や毛羽の発生が顕著になることから、本発明のアクリル系前駆体繊維束の製造方法は特に有効である。
巻取装置を有せず、缶に振込んで収納する場合もあるが、この場合は振込みのための糸送り装置を巻取装置と読み替えて本発明を実施することができる。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記したアクリル系前駆体繊維束の製造方法によりアクリル系前駆体繊維束を製造した後、200〜300℃の空気などの酸化性雰囲気中において耐炎化処理する。処理温度は低温から高温に向けて複数段階に昇温するのが耐炎化繊維束を得る上で好ましく、さらに毛羽の発生を伴わない範囲で高い延伸比で繊維束を延伸するのが炭素繊維の性能を十分に発現させる上で好ましい。次いで得られた耐炎化繊維束を窒素などの不活性雰囲気中で1000℃以上で炭化処理することにより、炭素繊維を製造する。その後、電解質水溶液中で陽極酸化をおこなうことにより、炭素繊維表面に官能基を付与し樹脂との接着性を高めることが可能となる。また、エポキシ樹脂等のサイジング剤を付与し、耐擦過性に優れた炭素繊維を得ることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ここで、実施例1、2が本発明の実施例であり、実施例3、4は参考実施例である。実施例及び比較例で用いた測定方法を次に説明する。
<温度、相対湿度、絶対湿度>
温度および相対湿度を神栄テクノロジー株式会社製 ハンディ温湿度計HP−21により測定した。その温度での飽和水蒸気圧をTetensの式により求め、理想気体の状態方程式により飽和水蒸気量に換算した。飽和水蒸気量に相対湿度を乗じて絶対湿度を導出した。
Tetensの式:
E=6.11×10^(7.5t/237.3+t)
ここで、E:飽和水蒸気圧(hPa)、 t:温度(℃)
理想気体の状態方程式による飽和水蒸気圧の換算式:
a=(217×E)/(t+273.15)
ここで、a:飽和水蒸気量(g/m)。
エリア9aの絶対湿度は、乾燥処理装置直後のローラーから巻取装置直前の駆動ローラーに入るまで、繊維束の進行方向に2mおきに、繊維束よりその走行方向に垂直に10cm離れた点を測定し、その最低値とした。なお、スチーム延伸工程で繊維束が半径10cm以下のチューブ中を走行している場合は、チューブ内の圧力条件での飽和水蒸気量を求め絶対湿度とした。
また、エリア9bの絶対湿度は、巻取装置直前の駆動ローラーから巻取装置まで、繊維束の進行方向に均等に3点、繊維束よりその走行方向に垂直に10cm離れた点を測定し、その最低値とした。
<水ミスト粒子の最大粒子径>
ミスト噴出ノズルから15cm離れた点にレーザー光を照射してドップラー法により各粒子の径を測定し、そのうちの最大のものを水ミスト粒子の最大粒子径とした。
<帯電圧>
帯電圧は、紡糸工程の最終ロール、すなわち繊維束をボビンに巻き取る直前のロールにさしかかる空走中の繊維束に対して測定した。測定には静電気測定機(シシド静電気(株)製、STATIRON−M)を用いた。
<弛み個数>
ボビンにアクリル系前駆体繊維束をボビン外層部からパッケージ外層部までの巻高さ10cmになるまで巻取る。その後、パッケージの両端面の単糸浮遊の本数を目視により測定し、10ボビンあたりの平均値を算出した。
<走行毛羽個数>
巻取装置に入る直前を走行している糸条を肉眼で10分間観察し、毛羽の個数をカウントした。5糸条に対して測定を行い、1糸条、100m当たりの個数に換算した。
<糸切れ回数>
乾燥工程以降での糸切れ回数を正味の原糸生産量あたりで求めた。
(実施例1)
アクリロニトリル99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からなる固有粘度[η]が1.80のアクリル系重合体の22質量%含むジメチルスルホキシド溶液を紡糸原液として、孔径が0.07mmφの6000ホールの口金を用いて60℃に温調されたジメチルスルホキシド55%、水45%からなる凝固浴中に吐出し凝固糸を得た。該凝固糸を65℃で水洗後90℃の熱水中で5倍に延伸しアミノ変性シリコーンを付与した後、150℃の加熱ローラーで乾燥緻密化を行ってアクリル系前駆体繊維束を得た。得られたアクリル系前駆体繊維束を、スチーム延伸装置を用いて、スチーム延伸機内のスチーム圧力を3.0kg/cmの加圧スチームとして、3倍に延伸を行った。その後熱セットし、巻取装置にて150m/分の速度でボビンに巻取ることで、単繊維繊度が0.8dtexで、総繊度が4800dtexのアクリル系前駆体繊維束を得た。
このとき、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアに最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入してエリア内の絶対湿度を変化させた。
(実施例2)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアのうち、巻取装置直前に設置された駆動ローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアにおいて、水ミスト粒子を導入せず、蒸気を導入してエリア内の絶対湿度を変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(実施例3)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアのうち、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置直前に設置された駆動ローラーに入るまでに繊維束が走行するエリアにおいて、最大粒子径200μm以下の水ミスト粒子を導入してエリア内の絶対湿度を変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(実施例4)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアのうち、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置直前に設置された駆動ローラーに入るまでに繊維束が走行するエリアにおいて、水ミスト粒子を導入せず、蒸気を導入してエリア内の絶対湿度を変化させたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(比較例1)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアのうち、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置直前に設置された駆動ローラーに入るまでに繊維束が走行するエリアにおいて、最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(比較例2)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアのうち、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置直前に設置された駆動ローラーに入るまでに繊維束が走行するエリアにおいて、最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入しなかったこと以外は、実施例2と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(比較例3)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアのうち、巻取装置直前に設置された駆動ローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアにおいて、最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(比較例4)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアにおいて冷風を導入して温度を下げたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(比較例5)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアにおいて最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入しなかったことに加え、乾燥処理装置を出た後、後延伸処理装置を出た場所、巻取装置に入る前にコロナ放電式除電装置を追加したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
(比較例6)
乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリアにおいて最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系前駆体繊維束を得た。
実施例および比較例における各測定結果を表1に示す。
Figure 0006520787
表1に示すように、エリア9aおよびエリア9bの絶対湿度を12g/m以上に調整したとき、エリア9aおよびエリア9bの絶対湿度が12g/m未満である場合、あるいは、どちらかのエリアのみの絶対湿度を12g/m以上に調整した場合と比較し、巻取ったパッケージの弛みや、パッケージに入る毛羽を少なくすることができた。また、除電装置の設置により収束性を付与した場合と比較し、パッケージに入る毛羽を少なくすることができた。
1:アクリル系前駆体繊維束
2:乾燥処理装置
3:乾燥処理装置後の駆動ローラー
3a:乾燥処理装置直後の駆動ローラー
4:後延伸処理装置
5:熱セット処理装置
6:巻取装置前の駆動ローラー
6a:巻取装置直前の駆動ローラー
7:巻取装置入りローラー
8:巻取装置
9a:乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置直前に設置された駆動ローラーに入るまでに繊維束が走行するエリア
9b:巻取装置直前に設置された駆動ローラーから巻取装置までに繊維束が走行するエリア

Claims (3)

  1. 湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸後、水洗工程、乾燥工程を経て、巻取装置でアクリル系前駆体繊維束を巻き取るに際し、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までのアクリル系前駆体繊維束が走行するエリアを、絶対湿度12g/m以上に調湿するとともに、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取装置までにアクリル系前駆体繊維束が走行するエリアのうち、乾燥工程直後に設置されたローラーから巻取り装置直前に設置された駆動ローラーに入るまでにアクリル系前駆体繊維束が走行するエリアにおいて、アクリル系前駆体繊維束に最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子が直接付着するように最大粒子径100μm以下の水ミスト粒子を導入して絶対湿度12g/m 以上に調湿するアクリル系前駆体繊維束の製造方法。
  2. 巻取り速度を150m/分以上とする請求項1に記載のアクリル系前駆体繊維束の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のアクリル系前駆体繊維束の製造方法でアクリル系前駆体繊維束を製造した後、酸化性雰囲気中200〜300℃で耐炎化し、その後不活性雰囲気中1000℃以上で炭化する、炭素繊維の製造方法。
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