JP2017137602A - ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法 - Google Patents

ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、繊維束のばらけや単糸切れを抑制し、収束性に優れ、工程通過性に優れた炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束を得ることを目的とする。【解決手段】本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法は、被処理繊維束に流体を吹き付け、被処理繊維束に交絡を付与する交絡工程を有する炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法であって、前記交絡工程において被処理繊維束の含水率を1〜20%に保つポリアクリロニトリル繊維束の製造方法である。本発明において、交絡工程で吹き付ける流体の圧力は0.1〜1.0MPaであることが好ましく、また、吹き付ける流体が1〜5%の水分を含有していることも好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維前駆繊維用ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法に関する。
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱硬化性及び熱可塑性樹脂の強化繊維として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用されている。
近年、炭素繊維複合材料の優位性はますます高まり、特に自動車、航空・宇宙用途において、炭素繊維複合材料の性能および生産性の向上に対する要求が高い。複合材料としての特性は炭素繊維そのものの特性に起因するところが大きく、炭素繊維自身への強度向上に対する要求もますます強まっている。
中でも、ポリアクリロニトリル繊維を前駆体繊維として得られる炭素繊維は、他の繊維を前駆体繊維とする炭素繊維に比べて高い引張強度を有するため、特に高い性能が必要とされる複合材料に使用される。高性能かつ高品位の炭素繊維を得るため、その前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維束には糸切れや毛羽などのない高品位な繊維束が必要とされる。さらに、炭素繊維の製造工程において、繊維束のロールへの巻付きや隣接する繊維束同士の干渉を防止するため、繊維束には十分な収束性も必要とされる。そのため、収束性に優れ、糸切れや毛羽などのない高品位なポリアクリロニトリル繊維束を得るため様々な検討がなされている。
特許文献1では、ポリアクリロニトリル繊維束の収束性を高めるため、流体交絡による交絡処理が開示され、エアノズルの形状や段数で均一に交絡を付与することが試みられている。しかし、このような交絡処理では、繊維束が乾燥し、毛羽立ちやすくなるため、繊維束のばらけや単糸切れをなくすことが困難である。
また、特許文献2では、ポリアクリロニトリル繊維束の収束性を改善するために含水率と油分率を調整することが示されているが、水、油剤のみによる収束性の付与では、十分な収束性は得られず、且つ炭素繊維の製造工程で加熱された際に、繊維束が乾燥し収束性が失われるため、繊維束のばらけは大きくなってしまう。
そのため、繊維束のばらけや単糸切れが少なく、かつ収束性の良い、工程通過性に優れた炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束が求められている。
特開2002−294517号公報 特開2004−123296号公報
本発明は、繊維束のばらけや単糸切れを抑制し、収束性に優れ、工程通過性に優れた炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束を得ることを目的とする。
本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法は、被処理繊維束に流体を吹き付け、被処理繊維束に交絡を付与する交絡工程を有する炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法であって、前記交絡工程において被処理繊維束の含水率を1〜20%に保つポリアクリロニトリル繊維束の製造方法である。
本発明において、交絡工程で吹き付ける流体の圧力は0.1〜1.0MPaであることが好ましく、また、吹き付ける流体が1〜5%の水分を含有していることも好ましい。
本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法によれば、繊維束のばらけや単糸切れを抑制し、収束性に優れ、工程通過性に優れた炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束を得ることができる。本発明の製造方法により得られるポリアクリロニトリル繊維束を炭素繊維の前駆体繊維として用いると、炭素繊維の製造工程における工程通過性及び生産性を向上させることができる。
本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法は、被処理繊維束に流体を吹き付け、交絡を付与する交絡工程を有する炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法であって、前記交絡工程において被処理繊維束の含水率を1〜20%に保つポリアクリロニトリル繊維束の製造方法である。交絡工程における被処理繊維束の含水率が1〜20%であると、ポリアクリロニトリル繊維束の毛羽立ちを抑制でき、かつ、効果的に繊維束に交絡を付与することができる。交絡工程における被処理繊維束の含水率は1〜10%であることがより好ましく、2〜5%であることがさらに好ましい。
交絡工程でのポリアクリロニトリル繊維束の含水率を調整する方法としては、交絡処理前の被処理繊維束に対して、所定の水分率となるように水を噴霧させた後に交絡処理を行う方法が挙げられる。また、交絡工程において吹き付ける流体の水分率を1〜5%とすることで、被処理繊維束の水分率を調節することも好ましい。
また、交絡工程で吹き付ける流体の圧力は0.1〜1.0MPaであることが好ましく、0.2〜0.7MPaであることがより好ましい。流体の圧力がこの範囲内にあると、繊維束の毛羽立ちを抑制しやすい。交絡工程で吹き付ける流体の圧力が低すぎると、交絡がかかりにくくなる傾向がある。交絡工程で吹き付ける流体の圧力が高すぎると、繊維束の毛羽立ちが発生しやすくなる傾向がある。
本発明では、交絡工程において吹き付ける流体が1〜5%の水分を含有していることが好ましく、2〜4%の水分を含有していることがより好ましい。流体が1〜5%の水分を含有していると、交絡処理中のポリアクリロニトリル繊維束の乾燥を防ぎ、毛羽立ちを抑制しやすい。流体に含まれる水分率が多すぎると、繊維表面に水滴が生じ、交絡がかかりにくくなる傾向がある。流体に含まれる水分率が少なすぎると、交絡処理中のポリアクリロニトリル繊維束が乾燥しやすくなり、繊維束が毛羽立ちやすくなる傾向がある。
上記のような本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法によれば、繊維束のばらけや単糸切れを抑制し、収束性に優れ、工程通過性に優れた炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束を得ることができる。このようにして得られたポリアクリロニトリル繊維束を炭素繊維の前駆体繊維として用いると、炭素繊維の製造工程における工程通過性及び生産性を向上させることができる。
以下、本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法をより詳細に説明する。
(重合工程)
ポリアクリロニトリル繊維束の原料に用いるポリアクリロニトリル重合体は、従来公知のものが何ら制限なく使用できる。ポリアクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上、より好ましくは95〜99質量%含有する単量体を単独又は共重合した重合体である。ポリアクリロニトリル系重合体の組成としては、アクリロニトリル単量体90〜99質量%、及びビニル骨格を有するアクリロニトリルと共重合可能なコモノマー1〜10質量%含有する共重合体であることが好ましい。
アクリロニトリルと共重合可能なコモノマーとしては、例えばアクリル酸、イタコン酸等の酸類及びその塩類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルといったエステル類、アクリルアミドといったアミド類等が挙げられ、目的とする繊維特性に応じて1つまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアクリロニトリル系重合体の重合方法は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等公知の方法の何れも採用することができる。重合反応に用いる重合触媒としては、重合方法に応じて、適宜公知の触媒を用いることができ、たとえば、アゾ化合物や過酸化物などのラジカル重合触媒やレドックス触媒などを用いることができる。レドックス触媒を用いる場合は、例えば還元剤としては亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、アルキルメルカプタン類、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、アスコルビン酸を、酸化剤としては過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素を挙げることができる。
(紡糸原液調製工程)
本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法では前記ポリアクリロニトリル重合体を溶剤に溶解した紡糸原液を紡糸することが好ましい。紡糸溶液に用いる溶剤としては、公知の溶剤を用いることができ、例えば塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液や、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤が挙げられる。
紡糸溶液を調整する際は、重合体濃度は特に限定されるものではないが、5〜40質量%と成るように溶剤の量を調節することが好ましく、6〜30質量%とすることがより好ましく、7〜25質量%とすることが特に好ましい。重合体の濃度をこの範囲にすることで、紡糸しやすく、繊維内部が緻密な凝固糸を得やすい紡糸原液とすることができる。重合体濃度が高いほど、紡糸工程で得られる凝固糸の繊維内部の緻密性が向上するため、高強度の炭素繊維を与える前駆体繊維を得やすい。重合体濃度が高くなりすぎると、紡糸原液の粘度が高くなり紡糸安定性が低下しやすい傾向がある。
(紡糸工程)
上記で得られた紡糸原液を、公知の紡糸方法を用いて、紡糸口金から紡出し凝固させることで凝固糸を得ることができる。紡糸方法としては、特に制限は無く、用いた溶剤の種類などに応じて、気相中で紡糸原液を凝固させる乾式紡糸法、凝固液中で紡糸原液を凝固させる湿式紡糸法などを用いて行うことができる。本発明においては、湿式紡糸法を用いることが好ましい。湿式紡糸法としては、紡糸口金を凝固浴中へ浸漬して、吐出される原液を凝固する湿式紡糸法と、紡糸口金を凝固浴液面から上方に設置して、吐出された原液を一旦紡糸口金と凝固液液面の間にある気相中を通過させてから凝固液の中に導入し凝固を進める乾湿式紡糸法があり、いずれの方法にも適用可能であるが、紡糸口金を凝固浴中へ浸漬して、吐出される原液を凝固する湿式紡糸法がより好ましい。
湿式紡糸法を用いる場合、凝固液としては、水にポリアクリロニトリル系重合体を溶解できる溶剤が溶解した水溶液を用いることが好ましい。凝固液中に含まれる溶剤としては、先述の紡糸溶剤に用いる溶剤として挙げられた溶剤を用いることができるが、使用する紡糸溶液の溶媒として用いた溶剤と同じであることが好ましい。凝固浴の溶剤濃度及び温度は特に限定されるものではないが、凝固性や紡糸安定性の点から濃度は10〜90質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、温度は20〜60℃であることが好ましい。凝固浴の濃度または温度が高い方が、高温破断強度が低く、溶解度の低い前駆体繊維を得やすくなる傾向がある。一方、凝固浴の濃度または温度が低い方が、工程が安定しやすくなる傾向がある。
紡糸原液を押し出すための紡糸口金は、100〜100000の吐出孔を備えることが好ましく、1000〜80000の吐出孔を備えることがより好ましく、3000〜50000の吐出孔を備えることが特に好ましい。吐出孔の孔径は0.02〜0.5mmであることが好ましい。孔径が0.02mm以上であれば、吐出された糸同士の接着が起こりにくいので、均質性に優れた前駆体繊維を得やすい。孔径が0.5mm以下であれば、紡糸糸切れの発生を抑制し、紡糸安定性を維持しやすい。
上記方法で得られた凝固糸は、水洗すると共に、水又は溶媒を含む液中で延伸する湿潤延伸工程により延伸することが好ましい。工程通過性、生産性の観点から湿潤延伸工程での延伸倍率は3〜15倍が好ましい。
上記方法で得られた延伸糸は、次いで、油剤付与工程で油剤が付与される事が好ましい。油剤を付与する方法は特に限定はされないが、油剤を含有する水溶液中に繊維束を浸漬させて、繊維表面と油剤とを接触させる。油剤の種類は、単繊維間の接着、耐熱性、離形性、工程通過性の点からシリコーン系油剤を主成分とすることが好ましい。
シリコーン系油剤としてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、エーテル変性シリコーンが好ましく、これらのうち2種以上を混合しても良い。
油剤の付着量は0.01〜10wt%であることが好ましく、0.1〜5wt%であることがより好ましく、0.2〜1wt%であることが特に好ましい。油剤付着量をこの範囲に制御することで、紡糸工程及びその後の耐炎化工程での糸切れ、毛羽の発生を抑制し、高品質のポリアクリロニトリル繊維束および炭素繊維束を得ることができる。油剤の付着量が少ないと、繊維表面に十分に油剤が付着しないため、紡糸工程及びその後の耐炎化工程での糸切れ、毛羽の発生が多くなりやすい傾向があり、一方、油剤の付着量が多すぎると、紡糸工程や耐炎化工程の繊維搬送ローラーやガイドなどの表面に堆積して、繊維が巻付いて断糸の要因になるといった問題が発生しやすくなる傾向がある。
油剤付与工程において、油剤が付与された延伸糸は、100〜200℃で乾燥・緻密化処理を行うことが好ましい。乾燥・緻密化処理においては、繊維束を表面温度100〜200℃の熱ローラーを使用して加熱することが好ましい。乾燥時間については、1〜10分間が好ましい。
油剤が付与された延伸糸に対して、もしくは、乾燥緻密化後の延伸糸に対して、さらなる延伸処理(後延伸処理)を行ってもよい。後延伸工程の延伸方法は特に制限されないが、スチーム延伸であることが好ましい。スチーム延伸処理を行う場合、飽和スチーム圧力は、0.01〜0.8MPa(絶対圧)とすることが好ましく、0.05〜0.5MPaとすることがより好ましい。
スチーム延伸処理での延伸倍率は1.2〜10倍であることが好ましく、より好ましくは、1.8〜5倍、更に好ましくは、2〜4倍である。スチーム延伸処理の温度は、105〜180℃が好ましく、110〜160℃がより好ましい。
また、延伸倍率は、湿潤延伸・乾燥・後延伸処理を通してのトータル延伸倍率で5〜20倍とすることが好ましく、10〜17倍とすることがより好ましい。スチーム延伸処理後の繊度は0.5〜2dtexとすることが好ましい。
また、スチーム延伸処理後のポリアクリロニトリル繊維束を、表面温度100〜200℃の加熱ローラーを使用して熱処理を行うことも好ましい。
本発明においてはこのようにして得られたポリアクリロニトリル繊維束に対して、上述の方法により交絡処理を行う。本発明において、交絡処理は、エアー噴出孔を有する交絡付与装置を用いて行うことが好ましく、0.1〜1.0MPaの圧空により交絡を付与させることが好ましい。
本発明の製造方法では、交絡工程において被処理繊維束(ポリアクリロニトリル繊維束)の含水率を1〜20%に保つことが必要である。交絡工程でのポリアクリロニトリル繊維束の含水率を調整する方法としては、交絡処理前の被処理繊維束に対して、所定の水分率となるように水を噴霧させた後に交絡処理を行う方法が挙げられる。また、交絡工程において吹き付ける流体の水分率を1〜5%とすることで、被処理繊維束の水分率を調節することも好ましい。
上記の交絡処理は、凝固工程以降、紡糸工程中の各工程の中間体繊維束に対して行うことができるが、特に熱処理後の繊維束に対して行うことが好ましい。
上記のような本発明のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法によれば、繊維束のばらけや単糸切れを抑制し、収束性に優れ、工程通過性に優れた炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束を得ることができる。
炭素繊維の前駆体繊維として用いるポリアクリロニトリル繊維束のフィラメント数は、製造効率の面では100〜100000本が好ましく、1000〜80000本がより好ましく、3000〜50000本が特に好ましい。
また、単繊維繊度は、得られる炭素繊維の強度の観点から、0.5〜2dtexであることが好ましく、1〜1.5dtexであることがよりに好ましい。ポリアクリロニトリル繊維の単繊維直径は8〜20μmであることが好ましく、10〜15μmであることがより好ましい。
このようにして得られたポリアクリロニトリル繊維束を炭素繊維の前駆体繊維として用いると、炭素繊維の製造工程における工程通過性及び生産性を向上させることができる。
ポリアクリロニトリル繊維束を前駆体繊維として用いる炭素繊維は、例えば以下の方法により製造することができる。
炭素繊維の前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維束は、加熱空気中200〜300℃で10〜100分間耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.15の範囲で処理されるが、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95以上がより好ましい。
耐炎化繊維は、従来の公知の方法を採用して炭素化することができる。例えば、窒素雰囲気下300〜800℃で第一炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の第一炭素化をする。より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下800〜1600℃で第二炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、第一炭素化繊維の張力を制御して焼成する。より高い弾性率が求められる場合は、さらに2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
このようにして得られた炭素繊維束には、必要に応じ、樹脂との接着性を高めるための表面処理やサイジング処理を施しても良い。
上記の交絡処理は、炭素繊維製造工程において、耐炎化処理、炭素化処理に供される中間体繊維束に対して行ってもよい。このような炭素繊維の製造方法によれば、炭素繊維の製造工程における工程通過性及び生産性を向上させることができる。
以下、実施例等をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって何等限定されるものではない。また、各実施例及び比較例における各種評価は以下の方法により実施した。
[繊維束のばらけ]
巻取直前のローラー上での繊維束の幅を連続的に測定し、測定された繊維幅の最大値と最小値の差が10%以上あるものをばらけ有りと評価した。
[単糸切れ]
ポリアクリロニトリル繊維束の1mあたりの単糸切れ数を10回測定し、平均した。
(実施例1)
単量体としてアクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%の割合で含む混合液を、ジメチルアセトアミドを溶媒とし溶液重合し、分子量42万のポリアクリロニトリル共重合体を20質量%含む紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を濃度65質量%のジメチルアセトアミド水溶液を満たした30℃の凝固浴中に孔数6000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。
凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに7.5倍に延伸し、シリコーン系油剤浴中に浸漬して油剤を付与した後、加熱ローラーにより乾燥し、圧力0.3MPaの水蒸気中で2.0倍に延伸し、次いで表面温度170℃のホットローラーにより熱処理を行い、総繊度14700dtex、含水率0.5%のポリアクリロニトリル繊維束を得た。次いで、得られたポリアクリロニトリル繊維束に水を噴射させ、含水率6%のポリアクリロニトリル繊維束とし、円形の糸道に3個のエアー噴出孔を有する交絡付与装置にて含水率0.1%のエアーを0.3MPaの圧力で噴射した後、130m/minの速度でボビンに巻き取り、ポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は4.7%であり、エアーによりやや含水率が減少したものの、交絡工程を通して十分な含水率を保っていた。得られたポリアクリロニトリル繊維束の交絡度は18.5個/mであり、繊維束のばらけ及び単糸切れが無く、24時間巻取後の巻形状も良好であった。
(実施例2)
交絡工程前で噴射する水の量を調整し、交絡付与前のポリアクリロニトリル繊維束の含水率を2.2%とした以外は実施例1と同様の方法でポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は1.9%で交絡度21.5個/m、繊維束のばらけ及び単糸切れが無く、24時間巻取後の巻形状も良好であった。
(実施例3)
交絡工程前で噴射する水の量を調整し、交絡付与前のポリアクリロニトリル繊維束の含水率を18.3%とした以外は実施例1と同様の方法でポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は16.6%であった。交絡度は13.5個/mと実施例1に比べやや交絡がかかりにくい傾向は見られたものの、繊維束のばらけ及び単糸切れが無く、24時間巻取後の巻形状も良好であった。
(実施例4)
交絡工程前で水を噴射せず、含水率を0.5%のままとしたポリアクリロニトリル繊維束に対して、流体として圧力0.5MPa、含水率4.5%のエアーを用いた以外は実施例1と同様にしてポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は5.3%であり、含水率4.5%のエアーを用いることで、交絡工程中、十分な含水率で処理を行うことができた。得られたポリアクリロニトリル繊維束の交絡度は22.8個/mであり、繊維束のばらけ及び単糸切れが無く、24時間巻取後の巻形状も良好な品質の良い繊維束が得られた。
(実施例5)
含水率1.4%のエアーを0.3MPaの圧力で噴射した以外は実施例4と同様の方法でポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は1.2%で交絡度18.3個/m、繊維束のばらけ及び単糸切れが無く、24時間巻取後の巻形状も良好であった。
(比較例1)
交絡付与前のポリアクリロニトリル繊維束に水を噴射せず、含水率を0.5%のままとした以外は実施例1と同様の方法でポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は0.5%で交絡度28.5個/m、ボビンへの巻取直前のローラーにて繊維束のばらけが見られており、巻取り開始から10時間後にパッケージ表面での糸のすべりにより端面への糸外れにより巻取り不可となった。得られたポリアクリロニトリル繊維束には単糸切れは2個/m発生していた。
(比較例2)
含水率0.1%のエアーを0.3MPaの圧力で噴射した以外は実施例4と同様の方法で、ポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は0.05%で交絡度10.3個/m、ボビンへの巻取直前のローラーにて繊維束のばらけが見られており、巻取り開始から8時間後にパッケージ表面での糸のすべりにより端面への糸外れにより巻取り不可となった。得られたポリアクリロニトリル繊維束には単糸切れは2個/m発生していた。
(比較例3)
エアーによる交絡付与を行わない以外は実施例1と同様の方法で、ポリアクリロニトリル繊維束を得た。このとき得られたポリアクリロニトリル繊維束の含水率は6.2%で交絡度3.3個/m、ボビンへの巻取直前のローラーにて繊維束のばらけが見られており、巻取り開始から10時間後にパッケージ端面での糸の膨らみにより巻取り不可となった。

Claims (4)

  1. 被処理繊維束に流体を吹き付け、被処理繊維束に交絡を付与する交絡工程を有する炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル繊維束の製造方法であって、
    前記交絡工程において被処理繊維束の含水率を1〜20%に保つことを特徴とするポリアクリロニトリル繊維束の製造方法。
  2. 前記交絡工程において、吹き付ける流体の圧力を0.1〜1.0MPaとする請求項1記載のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法。
  3. 前記交絡工程において、吹き付ける流体が1〜5%の水分を含有する空気である請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル繊維束の製造方法。
  4. 被処理繊維束に流体を吹き付け、被処理繊維束に交絡を付与する交絡工程を有する炭素繊維束の製造方法であって、
    前記交絡工程において被処理繊維束の含水率を1〜20%とすることを特徴とする炭素繊維束の製造方法。
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