JP2011017100A - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011017100A
JP2011017100A JP2009162429A JP2009162429A JP2011017100A JP 2011017100 A JP2011017100 A JP 2011017100A JP 2009162429 A JP2009162429 A JP 2009162429A JP 2009162429 A JP2009162429 A JP 2009162429A JP 2011017100 A JP2011017100 A JP 2011017100A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
spinning
fiber
polyacrylonitrile
yarn
carbon fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009162429A
Other languages
English (en)
Inventor
Tomoko Ichikawa
智子 市川
Yuhei Maeda
裕平 前田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2009162429A priority Critical patent/JP2011017100A/ja
Publication of JP2011017100A publication Critical patent/JP2011017100A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)
  • Inorganic Fibers (AREA)

Abstract

【課題】 炭素繊維を製造する際のプロセス性を損なうことなく、生産性の向上に寄与する炭素繊維の製造方法を提供すること。
【解決手段】 極限粘度が6以上であるポリアクリロニトリル系重合体からなる紡糸原液を口金から吐出し、乾式紡糸によって繊維化し、全延伸倍率が20〜120倍の範囲で延伸を行ったポリアクリロニトリル系繊維を空気中で200〜300℃の温度範囲で耐炎化した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、引き続き不活性雰囲気中で800〜2000℃の範囲の温度で炭化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子量のポリアクリルニトリル系重合度からなり、延伸倍率が高いポリアクリロニトリル系繊維を焼成する、生産性の高い炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、その優れた力学的、化学的諸特性および軽量性などによりさまざまな用途に利用されている。近年では、従来のゴルフクラブや釣竿などのスポーツ用途、航空機用途に加え、自動車部材、CNGタンク、建造物の耐震補強、船舶部材などいわゆる一般産業用途への展開が進んでいる。このように適用範囲が広がる反面、炭素繊維については生産性の向上への要求が求められている。
炭素繊維の生産性を向上させる手段として、前駆体であるポリアクリロニトリル系繊維の製造工程、耐炎化、炭化工程において、毛羽や糸切れを抑制し、工程通過性を向上させることが挙げられる。
また、炭素繊維の生産性を向上させる別の手段として、前駆体であるポリアクリロニトリル系繊維を製造する際に、口金から吐出する紡糸原液量を増加させ、高速化により太糸条化および高密度化することなく工程の速度を高める方法が提案されている。
高速化としては、まず口金から吐出されたアクリル系繊維を引き取る速度を高める方法があるが、可紡性の限界を超えての操業はできないため、速度を大きく高めることは困難である。
そこで、高速で操業性良く紡糸する方法として、アクリル系繊維の一般的な紡糸方法である湿式、乾湿式、乾式紡糸ではなく、アクリル系重合体に非溶媒を加えることで、自己凝固温度を持たせる方法が提案されている(特許文献1参照)。該組成物の自己凝固温度以上の温度で紡糸し、50℃以下の冷却雰囲気を通過させることを要件としており、冷却することで凝固させる点が、紡糸原液を口金孔から高温の気体雰囲気中に吐出して溶媒を蒸発させて濃縮、固化させる方法である乾式紡糸と異なる。
また、湿式、乾湿式紡糸では、吐出糸条を引き取る速度は変えずに、浴中延伸あるいは加圧スチーム延伸により徐々に速度を高め、最終の巻き取り速度を高める方法が主に採用されており、その延伸工程を改良することによりさらに延伸性を高め、製造コストを低減する方法が提案されている。乾式紡糸においても、高強力アクリル繊維の製造の中で、分子量50万以上のポリアクリロニトリル系重合体を用い、延伸倍率を10倍以上に延伸したものが知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この特許文献2の実施例等で用いられている分子量は53万程度で、延伸倍率は14倍程度であり、延伸倍率の向上による生産性の向上に関する記載はない。他にも高分子量アクリル二トリル系重合体を用いた例として、分子量100万以上のポリアクリロニトリル系重合体を用いたものが提案されている(特許文献3参照)。しかし、この特許文献3においても実施例で用いられている分子量は113万以下で、延伸倍率は18倍程度であり、延伸倍率の向上に関する記載はない。
上述の高重合度ポリアクリロニトリル系重合体より、高い分子量のポリマーを繊維化し高倍率延伸した例が知られている。1wt%の低濃度溶液から、乾湿式紡糸法により繊維状にした糸を高倍率で延伸することで、高配向のポリアクリロニトリル系繊維を得る技術である(非特許文献1参照)。この非特許文献1には炭素繊維に関する記載がなく、溶液濃度が1wt%と低いため生産性の向上は難しい。また、乾式紡糸法に関する記載もない。
したがって、高分子量ポリアクリロニトリルを用いて乾式紡糸かつ、超延伸により炭素繊維の生産性の向上を目的とした例は知られていないのが現状である。
特開平7−292520号公報 特開平5−247718号公報 特開平3−210309号公報
「Polymer」,2006年,第47巻,p.4445
本発明の課題は、かかる現状に鑑み、炭素繊維を製造するにあたり生産性の向上に寄与する炭素繊維の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために、次の構成を有するものである。
(1)極限粘度が6以上であるポリアクリロニトリル系重合体からなる紡糸原液を口金から吐出し、乾式紡糸によって繊維化し、全延伸倍率が20〜120倍の範囲で延伸を行ったポリアクリロニトリル系繊維を空気中で200〜300℃の温度範囲で耐炎化した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、引き続き不活性雰囲気中で800〜2000℃の範囲の温度で炭化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
(2)紡糸原液中のポリアクリロニトリル系重合体濃度が1.5〜15重量%であることを特徴とする前記(1)記載の炭素繊維の製造方法。
(3)紡糸原液中のポリアクリロニトリル系重合体濃度が2〜9重量%であることを特徴とする前記(2)記載の炭素繊維の製造方法。
(4)スクリュー押出機型紡糸機を用いることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれか1項記載の炭素繊維の製造方法。
(5)耐炎化処理での張力が、0.2〜1.0cN/dtexであることを特徴とする前記(1)から(4)のいずれか1項記載の炭素繊維の製造方法。
(6)炭化処理での張力が、0.5〜3.0cN/dtexであることを特徴とする前記(1)から(5)のいずれか1項記載の炭素繊維の製造方法。
本発明によれば、従来より採用されている炭素繊維製造の設備条件、収率などのプロセス性を損なうことなく、炭素繊維前駆体であるポリアクリロニトリル系繊維の最終巻き取り速度を向上し、耐炎化、炭化処理においても高張力延伸処理で安定して工程を通過することができ、高い生産性で炭素繊維を得ることができる。
以下、本発明の炭素繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明におけるポリアクリロニトリル系繊維用ポリアクリロニトリル系重合体の極限粘度は、6以上の範囲とする。6以上にすることで、ポリアクリロニトリル系繊維の高倍率延伸が可能となり、最終巻き取り速度が上がるため生産性が向上する。また、ポリアクリロニトリル系繊維を高倍率で延伸できることで高配向化するため、その後の耐炎化・炭化工程においても高い張力で延伸しても糸切れを抑制でき、工程通過性が上がることから生産性が向上できるため好ましい。
極限粘度は8以上が好ましく、9以上がより好ましい。また、極限粘度はポリアクリロニトリル系重合体の安定した重合及び紡糸原液の均一性の点から、12以下であることが好ましい。極限粘度は、重合時のモノマー濃度、開始剤や連鎖移動剤の量などにより制御することができる。
本発明において、極限粘度とはジメチルホルムアミドを溶媒とし、オストワルド粘度計を用い、ポリマーを25℃の状態に保持して測定した比粘度をもとに算出した極限粘度のことをいう。具体的には、以下のような手順で測定する。
予め120℃で2時間熱処理し絶乾したポリアクリロニトリル系重合体150mgを、25℃に保持して50mlのチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加N,N−ジメチルホルムアミド(いずれも和光純薬社製特級)に溶解させる。得られた溶液を、25℃の温水槽中で温調し、予め25℃に温調してあるオストワルド粘度計を用いて標線間の落下時間を1/100秒の精度で測定し、その時間をt(秒)とする。同様に、ポリアクリロニトリル系重合体を溶解していないチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加ジメチルホルムアミドについても測定し、その落下時間をt0(秒)とする。次式を用いて極限粘度[η]を算出する。
[η]={(1+1.32×ηsp)1/2―1}/0.198
ηsp=(t/t0)−1
本発明において、ポリアクリロニトリル系繊維に用いられるポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル100%を重合しても良いが、耐炎化効率向上、紡糸原液作成時の溶媒への溶解性、および製糸性の観点から共重合体が好ましく用いられる。他の共重合成分としては、いわゆる耐炎化促進成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸等が好ましく挙げられ、より好ましくは、これらの一部または全量をアンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体が挙げられる。また、製糸性向上の観点からは、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アリルスルホン酸金属塩およびメタリルスルホン酸金属塩などが好ましく共重合できる。
上述した共重合体中の共重合成分の量は、合計で0〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.1〜6モル%であり、さらに好ましくは0.2〜2モル%である。共重合成分の量が少なすぎると製糸性が低下し、共重合体の量が多いと耐熱性が低下し、続く耐炎化工程で糸同士の融着が発生しやすくなるため、両者のバランスを考慮して設定することがよい。
かかるポリアクリロニトリル系重合体を重合する方法としては、公知の方法が採用でき、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重合法等を適用することができる。その中でも懸濁重合法が、重合時に発生する反応熱を効果的に除熱することができるため、生産性が向上し好ましい。
ポリアクリロニトリル系重合体を紡糸することで炭素繊維前駆体であるポリアクリロニトリル系繊維が得られる。紡糸に際し、該ポリアクリロニトリル系重合体が可溶な沸点が250℃以下の従来公知の溶媒に溶解し、紡糸原液とする。沸点は200℃以下が好ましい。具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドが使用される。
本発明において用いられる紡糸原液の製造方法は紡糸原液を均一に作成することができれば種々の方法を採用できる。例えば、固体状ポリアクリロニトリル系重合体を溶媒中に懸濁させ、攪拌翼を用いて分散させる方法、ロールミル、ニーダー、スクリュー押出機を用いる方法が挙げられる。スクリュー押出機は1軸、2軸の両方を用いることができるが、混練性の観点から2軸スクリュー押出機が好ましい。回転数、温度は分子鎖の切断が少ない範囲で任意に選択することができる。
本発明においては、ポリアクリロニトリル系繊維を、ポリアクリロニトリル系重合体が1.5〜15重量%の濃度で溶媒に溶解した紡糸原液を繊維化させて得ることが好ましい。紡糸原液におけるポリアクリロニトリル系重合体の濃度が1.5重量%以上になると、紡糸筒中での溶媒除去が容易になり、製糸速度を上げることができるため好ましい。15重量%以下にすることで、ポリアクリロニトリル系繊維を製造する際の延伸工程において高倍率延伸が可能となり生産性が向上する。また。高倍率延伸をした時にも糸切れが発生しにくくなることに加えて、その後の耐炎化工程および炭化工程においても耐炎化張力および炭化張力を高く保っても糸切れが発生しにくくなることから、生産性が向上し好ましい。紡糸原液中のポリアクリロニトリル系重合体濃度は、2重量%以上10重量%以下、2重量%以上9重量%以下、あるいは2.5重量%以上10重量%以下、さらには2.5重量%以上9重量%以下であることがより好ましい。
かかる紡糸原液を紡糸する前に、紡糸原液を目開き10μm以下のフィルターに通し、ポリマー原料および各工程において混入した不純物を除去することが好ましい。これにより、製造工程において、不純物に起因した糸切れが減少し、生産性が向上する。目開きとは、フィルターの網の目の寸法を表す。網目の形状が長方形の場合には、両方が10μm以下であることが好ましい。目開きは1μm以下であることがより好ましい。また、目開きは紡糸原液がフィルターを通過する速度が速くなることから、0.05μm以上であることがより好ましい。
紡糸方法としては、乾式紡糸を採用する。乾式紡糸とはポリアクリロニトリル系重合体を熱で気化する溶剤に溶かした状態で、熱雰囲気中で口金から押し出して溶剤を蒸発させて固化させることで、繊維状にする方法を言う。乾式紡糸と同様にポリアクリロニトリル系重合体を溶剤に溶かした溶液を紡糸原液に用いる方法として、湿式紡糸、乾湿式紡糸が挙げられる。湿式紡糸、乾湿式紡糸は、口金から吐出した糸条を凝固浴中に導入することで固化し繊維化する方法である点が乾式紡糸と異なる。乾式紡糸は紡糸速度を高くすることができる点が湿式紡糸および乾湿式紡糸に比べて有利な点であるといえる。また、スクリュー押出機を通過した後、連続して口金孔から紡糸原液を押し出すことができる、スクリュー押出機型紡糸機が好ましく用いられる。攪拌効率が高く、均一な溶液を作成できるため、製糸時に糸切れが少ない、均一性の高い紡糸原液を作り、繊維化することができる。ポリアクリロニトリル系重合体と溶媒をスクリュー押出機型紡糸機で連続して溶解、繊維化することで生産性高くポリアクリロニトリル系繊維を得ることができる。
本発明で用いられる口金吐出孔の形状は、孔径Dが0.05〜5.0mmの範囲であることが好ましい。0.05mmより大きいことで、製糸性が向上し、5.0mmより小さいことで、糸切れが少なくなる。より好ましくは孔径Dが0.08〜1.0mmの範囲であり、0.2〜0.8mmである。孔深度Lが0.1〜5mmの範囲であり、孔深度Lが0.16〜3mmの範囲であることがより好ましい。孔深度Lが0.1mm以上であることで製糸性が向上し、5mm以下であることで、吐出時の圧力が減少するため好ましい。L/Dが1.5〜4の範囲であることが好ましい。L/Dが2〜3の範囲である。口金吐出孔の形状は、紡糸における可紡性および吐出時の安定性の観点から、上記範囲となる形状が好ましい。
口金孔から吐出された糸条は、紡糸筒内で加熱されたガスにより、溶媒が除去される。
ガスの種類は限定されないが、空気あるいは窒素に代表される不活性ガスを用いることができる。空気を用いるのが好ましい。
紡糸筒内を通過したポリアクリロニトリル系繊維中のポリアクリロニトリル系重合体濃度は、20〜80重量%であることが好ましい。20重量%以上であることで、繊維としての形状を保つことが可能となり、80重量%以下であることで、延伸性が向上し、糸切れが低減するため好ましい。30重量%以上が好ましく、60重量%以下であることが好ましい。紡糸筒内を通過したポリアクリロニトリル系繊維中のポリアクリロニトリル系重合体濃度は、吐出原液温度、紡糸速度、単孔あたりの紡糸原液の吐出量、紡糸筒内のガス温度、ガス流量、単繊維繊度、全繊度、ガス中の溶液濃度、ガスの流れ方向によって変動するため、条件を適宜選択することで、繊維中のポリアクリロニトリル系重合体の濃度を制御することができる。
加熱ガスは、紡糸筒内を巻取方向から口金方向に向けて流しても良いし、紡糸線と並行に一面から、あるいは環状に流しても良い。加熱ガスの温度は、ポリアクリロニトリル系重合体の化学構造を変化せずに、緻密な繊維構造を得るために、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。また、溶媒除去効率の観点から、50℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましい。本発明において、溶媒の留去に伴い、口金から吐出された紡糸原液は固化し、繊維状となる。加熱ガスを紡糸筒内で紡糸線と並行に流す場合には、同一温度でも良いし、温度勾配を付けても良い。
紡糸筒内で糸条より除去された溶媒は、加熱ガスの循環により、紡糸筒外に取り除くことができる。また、加熱ガスに含まれる溶媒は、加熱ガスの冷却法等の既知の方法を用いることで加熱ガスから分離することができる。
口金孔から吐出され、紡糸筒内で固化した糸条は、筒底部のローラーにより速度制御される。ローラー速度は、50m/min以上であることが生産性の点から好ましく、100m/min以上であることが好ましい。糸切れ防止の観点から、4000m/min以下が好ましく、2000m/min以下が好ましい。
本発明において、延伸に加えて洗浄工程、油剤付与工程および乾燥熱処理工程を適宜組み込むことができる。紡糸、延伸、洗浄、油剤付与、乾燥熱処理工程は、連続でも良いし、巻き取ったのち行っても構わない。
洗浄工程は、紡糸筒を通過して固化した糸条中に含まれる紡糸原液から残存する溶媒を糸条から取り除く工程である。水あるいは、メタノール、エタノールなどの有機化合物を含むポリアクリロニトリル系重合体が溶解しない溶液中に糸条を通過させることで洗浄することができる。洗浄は、後述する浴延伸と同時に行っても良い。
油剤付与工程は、工程通過性およびハンドリング性を向上させる上で好適である。耐炎化処理および炭化処理の初期において単繊維同士が接着することがあり、その接着を防止する目的から、シリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。かかるシリコーンとしては、変性されたシリコーンを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを用いることが好ましい。油剤付与工程は、油剤の脱落を防ぐため、溶液中に糸条を通過させる洗浄工程、浴延伸工程の後に行うことが好ましい。また、油剤を熱により硬化させ、糸条内部まで均一に油剤を付着させる観点から乾燥熱処理工程の前に行うことが好ましい。
乾燥熱処理工程は、洗浄工程または浴中延伸工程等により付着した水、有機化合物等を乾燥し、併せて繊維の緻密化を行う工程であり、短時間で効率よく乾燥できれば接触方式と非接触方式のどちらの方式でも良い。また、単繊維同士が接着しない、かつ乾燥効率の観点から120〜190℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
本発明では、口金から吐出された糸条物を紡糸筒内を通過させて固化させた後、耐炎化までのいずれかの工程において、延伸を行う。
本発明におけるポリアクリロニトリル系繊維の全延伸倍率は20〜120倍である。全延伸倍率が20倍未満であると、ポリアクリロニトリル系繊維の強度が低下し、続く耐炎化工程において、高張力での処理で糸切れがみられ、工程通過性が低下する。また、ポリアクリロニトリル系繊維の最終巻取り速度が下がるため、生産性が低下する。また、全延伸倍率を120倍より大きくなると、残留伸度が低くなり毛羽等の発生が多く、耐炎化、炭化での工程通過性が低下する。全延伸倍率は30倍以上が好ましく、100倍以下が好ましい。また、全延伸倍率は40倍以上がより好ましく、50倍以上がさらに好ましい。
1段の延伸で20〜120倍の延伸を行っても良いし、多段で延伸しても良い。糸切れなく高倍率で延伸するために多段で延伸することが好ましい。延伸の均一性の点から、1段あたりの延伸倍率は1.01〜50倍が好ましく、3〜30倍がより好ましい。
多段で延伸する場合には、複数の延伸方法を1種以上組み合わせて実施することができる。
洗浄前の繊維中に溶媒を含んだ状態、洗浄後かつ乾燥熱処理工程前の洗浄液で繊維が膨潤した状態では溶媒の過疎化効果により、張力が上昇することなく延伸することができるため糸切れが少なくなり好ましい。
延伸時においては、糸の表面温度が20℃以上250℃以下となるように加熱することが好ましい。延伸時の糸の表面温度が20℃以上の場合、供給糸の予熱が十分であり、延伸時の均一な熱変形を可能とし繊度斑が低減する。さらには延伸張力を下げることができ、糸切れが少ないスムーズな延伸が可能となる。250℃以下にすることで、ポリアクリロニトリル系重合体の化学構造の変化による延伸性不良が生じないため好ましい。供給糸の軟化を良好にすることにより延伸張力を低下させ、よりスムーズな延伸を行うためには、延伸時の糸の表面温度が30℃以上200℃以下となるように加熱することがより好ましい。
ここで、延伸を容易にさせうるための延伸時の糸の加熱手法は、供給ローラーと延伸ローラー間で実施されるものであって、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱させうる装置であれば特に限定はされない。具体的な加熱手法としては、加熱ローラー、熱ピン、熱板、水あるいは有機化合物などの液体浴、空気あるいは蒸気などの気体浴、レーザーなどが挙げられる。加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から加熱ローラー、水あるいは有機化合物などの液体浴、空気あるいは蒸気などの気体浴を加熱手法として用いることが好ましい。
水あるいは有機化合物などの液体浴加熱手法として用いる方法として、浴中延伸を採用できる。水、有機溶剤などで繊維を膨潤させることで比較的に低い温度でも安定した延伸を行うことができて好ましい。好ましくは20〜98℃の範囲の温度に温調された水あるいはメタノール、エタノールなど凝固剤となる有機化合物、紡糸原液に用いたジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどに代表される有機化合物を単独あるいは混合物中に糸条を通過させ延伸することができる。この工程では単一または複数の延伸浴を用いることができ、この工程は前述した洗浄工程前の繊維に溶媒を含んだ状態、洗浄後かつ乾燥熱処理前の洗浄液で繊維が膨潤した状態であれば、延伸性が向上するため好ましい。また、洗浄と同時に行ってもよい。
蒸気などの気体浴を加熱手法として用いる方法として、加圧スチーム延伸を採用できる。既存の方法を採用することができるが、単繊維同士が接着しない、かつ延伸性の観点から120〜190℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
また、空気などの気体浴を加熱手法として用いる方法として、ホットチューブを用いた延伸を採用できる。延伸性の観点から130〜200℃の温度で行うことが好ましい。
加熱ローラーを用いる場合には、加熱ローラーが供給ローラーを兼ねることが最も効果的であり、加熱ローラーの温度は130℃〜200℃の温度が好ましい。
紡糸後の延伸、洗浄、油剤付与、乾燥熱処理の工程の順番は種々組み合わせることができるが、たとえば、紡糸筒を通過した糸条を洗浄液で洗浄することで、紡糸時に用いた溶媒を除去した後に、水中で浴延伸を行い、油剤付与、乾燥熱処理、加熱ローラーを用いた延伸を行うことが好ましく用いられる手法である。また、紡糸筒を通過した糸条を洗浄液で洗浄することで紡糸時に用いた溶媒を除去した後に、ホットチューブを用いて乾燥熱処理と延伸を同時に行い、油剤を付与する手法も好ましく用いられる。
ポリアクリロニトリル系繊維の単繊維繊度は0.3〜1.3dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.3dtexより大きいと孔径の小さい口金から紡糸原液を吐出させる必要がなく、小異物などによる口金孔詰まりを回避でき、前駆体繊維の品位の低下、洗浄、延伸といった製糸工程におけるローラーへの巻き付きの発生が少なくなるため好ましい。一方、単繊維繊度が1.3dtexより小さくすることで、単繊維内部まで耐炎化処理が十分となり、炭化工程で糸切れを引き起こしにくく生産性が向上する。単繊維繊度は、さらに好ましくは0.6〜0.9dtexである。
本発明において、前駆体繊維束の全フィラメント数は100〜100000の範囲であることが好ましい。また、全フィラメント数は5000〜10000の範囲であることがより好ましい。フィラメント数が100以上であることで一度に大量のポリマーを繊維化できるため生産性が向上し、100000以下であることで耐炎化や炭化処理において均一な処理ができるため生産性が向上する。
本発明において、上記の方法により得られるポリアクリルニトリル系繊維を、空気中で200〜300℃の範囲の温度で耐炎化した後、300〜800℃の不活性雰囲気下において予備炭化処理し、引き続き不活性雰囲気中で800〜2000℃の範囲の温度で炭化処理する。いずれの温度も糸近傍の雰囲気温度を測定することにより求められる。
耐炎化温度は200〜300℃であり、240℃〜270℃が好ましい。300℃を超えると前駆体繊維に付与された油剤の分解消失が始まるため、耐炎化処理時に単繊維同士が融着しやすくなると共に、糸束内で耐炎化のムラが生じやすくなり、耐炎化度のムラの指標である蟻酸溶解度が高くなる。200℃より低くなると耐炎化終了まで要する時間が延びるため生産性の観点から好ましくない。耐炎化は多段で行うことができる。たとえば、1回目に200〜270℃で耐炎化を行い、2回目に220〜300℃で耐炎化を行うことができる。
得られる耐炎糸の比重が好ましくは1.3〜1.5の範囲となるように設定することが、続く炭化処理での工程通過性を向上する目的から好ましい態様である。比重が1.3より低いと単繊維内部の耐炎化処理が不十分であるために予備炭化処理での糸切れが発生しやすい問題がある。1.5より高いと単繊維表面の酸化が進みすぎるため、予備炭化糸強度が低下しやすい問題がある。比重のより好ましい範囲は1.37〜1.40である。
耐炎糸の比重はJIS R7601(1986)記載の方法に従って求めることができる。測定方法として液置換法を用い、浸せき液としてエタノールを精製せずに用いた。1.0〜1.5gの繊維を採取し、120℃で2時間絶乾する。絶乾質量A(g)を測定した後、比重既知(比重ρ)のエタノールに含浸し、エタノール中の繊維質量B(g)を測定し、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重を求めることができる。
耐炎化の時間は、処理温度に応じて適宜選択することができるが、耐炎化処理時間は1〜500分が望ましい。生産性の面からは耐炎化処理時間は短い方がよいが1分を下回ると、各単繊維についての前記した二重構造が全体的に顕著となり、本発明の効果が得られにくくなることがある。また耐炎化処理時間が500分を超えると単繊維の表層の酸化が進行しすぎるため、炭素繊維の引張強度が著しく低下する問題がある。さらに好ましくは50〜150分、より好ましくは80〜120分である。この耐炎化処理時間とは、糸条が耐炎化炉内に滞留している全時間をいう。
耐炎化工程における張力は0.2〜1.0cN/dtexであることが好ましい。0.2cN/dtex以上であることで、耐炎糸の物性が向上し、続く炭化処理での工程通過性が向上するため好ましい。1.0cN/dtex以下であることで、耐炎化での毛羽の発生および糸切れが発生しにくくなり、安定して工程を通過することができるため生産性が向上するため好ましい。より好ましくは0.3〜0.6cN/dtex、さらに好ましくは0.3〜0.35cN/dtexである。ここで耐炎化工程における張力とは耐炎化炉出側のロールで測定した張力(cN)をポリアクリロニトリル系繊維の繊維束の絶乾時の繊度(dtex)で割った値を示す。
耐炎化工程における糸条の延伸比は0.85〜1.20が良く、0.85〜1.10がより好ましく、0.88〜1.06がさらに好ましく、0.92〜1.02がさらに好ましい。
耐炎化処理に引き続き、不活性雰囲気中で予備炭化処理、炭化処理することにより炭素繊維が得られる。不活性雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴンおよびキセノンなどが好ましく例示でき、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。
炭化処理は、300〜800℃の範囲の温度と800〜2000℃の範囲の温度領域で異なる反応が起こっているために、予備炭化処理、炭化処理と分けて行う。
予備炭化処理の温度は300〜800℃である。300℃以上とすることで、炭素結晶成長が十分となり、引き続いて行われる炭化処理後に十分な強力を有する炭素繊維を得られる。また、最高温度が800℃以下では炭素構造変化に伴う炭素繊維からの窒素ガスの排出が開始されないため、炉の排気系統が複雑とならないため好ましい。予備炭化処理の最高温度は、より好ましくは600〜750℃である。また300℃〜400℃領域の滞留時間は1〜3分であることが好ましく、400〜500℃の昇温速度は10〜500℃/分、より好ましくは20〜150℃/分とする。予備炭化処理の工程において、処理時間は2分以上30分以内が好ましく、15分以内がより好ましい。
予備炭化処理後の繊維の比重を好ましくは1.5〜1.7とするように温度と時間を設定することが、続く炭化工程通過性から好ましい態様である。予備炭化処理後の繊維の比重は、浸せき液としてo−ジクロロベンゼンを用いる他は、耐炎糸の比重と同様に求めることができる。
炭化処理は800〜2000℃の温度範囲で行われる。800℃以上であることで、炭化処理が繊維内部まで進み、2000℃以下であることで引張強度が高く、工程通過性が高い炭素繊維が得られる。炭化処理の最高温度は1200〜1600℃が好ましく、所望する炭素繊維の力学物性に応じて適宜設定するのがよい。一般に炭化処理の最高温度が高いほど、得られる炭素繊維の引張弾性率が高くなるものの、引張強度は1500℃付近で極大となる。炭化処理の工程において、処理時間は1分以上30分以内が好ましく、2分以上15分以内がより好ましい。
また、本発明において、炭化工程における張力は0.5〜3.0cN/dtexであることが好ましい。0.5cN/dtex以上であることで引張弾性率の向上があり、炭化時の糸切れが少なく生産性が向上する。逆に張力が3.0cN/dtex以下であることで毛羽や糸切れが発生しにくくなり、安定して工程を通過することができる。かかる張力は、下限として、より好ましくは0.6cN/dtex以上であるのが良く、上限として、より好ましくは1.6cN/dtex以下、さらに好ましくは1.5cN/dtex以下、最も好ましくは1.1cN/dtex以下であるのが良い。ここで炭化工程における張力とは炭化炉出側のロールで測定した張力(cN)を予備炭化繊維束の絶乾時の繊度(dtex)で割った値を示す。
高温領域での炭化処理の処理時間は、処理温度に応じて適宜選択することができるが、得られる炭素繊維の比重が好ましくは1.76〜1.87の範囲となるように、より好ましくは1.77〜1.86となるように設定する。かかる比重が小さすぎる場合には、炭化処理が不十分なために、得られる炭素繊維において発現する物性が低くなることがあり、逆に比重が大きすぎる場合には、脆性が顕著となるために擦過に弱くなり、品位および工程通過性が低下することがある。炭素繊維の比重は、浸せき液としてo−ジクロロベンゼンを用いる他は、耐炎糸の比重と同様に求めることができる。
得られた炭素繊維は、その表面改質のため、電解処理することができる。電解処理に用いられる電解液には、例えば、硫酸、硝酸および塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムのようなアルカリまたはそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維の炭化度に応じて適宜選択することができる。かかる電解処理により、炭素繊維を用いて得られる複合材料において、炭素繊維とマトリックスとの接着性を適正化することができ、接着が強すぎることによる複合材料のブリトルな破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの、樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないという問題が解消され、得られる複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
また、本発明の炭素繊維は、かかる電解処理の後、集束性を付与するため、サイジング処理を施されていても良い。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
本発明により得られる炭素繊維、プリプレグとしてオートクレーブ成形したり、織物などのプリフォームとしてレジントランスファーモールディングで成形したり、フィラメントワインディングで成形したりして、航空機部材、圧力容器部材、自動車部材、釣り竿、ゴルフシャフトなどのスポーツ部材として、好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例中の各特性値は、次の方法で求めたものである。
A.極限粘度
紡糸原液を攪拌した水に添加することで、ポリアクリロニトリルを析出させ、水で洗浄を行った。
続いて、予め120℃で2時間熱処理し絶乾したポリアクリロニトリル系重合体150mgを、25℃において50mlのチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加N,N−ジメチルホルムアミド(いずれも和光純薬社製特級)に溶解した。得られた溶液を、25℃の温水槽中で温調し、予め25℃に温調してあるオストワルド粘度計を用いて標線間の落下時間を1/100秒の精度で測定し、その時間をt(秒)とした。同様に、炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体を溶解していないチオシアン酸ナトリウム0.1mol/リットル添加N,N−ジメチルホルムアミドについても測定し、その落下時間をt0(秒)とした。次式を用いて極限粘度[η]を算出した。
[η]={(1+1.32×ηsp)1/2―1}/0.198
ηsp=(t/t0)−1
B.紡糸原液中の重合体溶液の重合体濃度
紡糸原液10gを200mlの水中に細く垂らすことにより、直径1mm以下の線状組織を得る。その後、90℃の温度の熱水中で2時間脱溶媒して、120℃の温度で2時間乾燥させた後、線状組織を計量した。次式を用いて、紡糸溶液の重合体濃度(重量%)を求めた。
重合体濃度={(乾燥後の線状組織重量)/(脱溶媒前の重合体溶液重量)}×100
C.繊度
JIS L1017(2002)8.3の方法で繊度を測定した。
D.生産性の向上
ポリアクリロニトリル系繊維の製造工程、耐炎化、炭化工程における工程通過性およびポリアクリロニトリル系繊維の全延伸倍率の4つを用いて判断を行った。
工程通過性は、問題のないものを○、多少の糸切れがあるが問題のないレベルを△、顕著な糸切れのためサンプルが得られない場合を×とした。
なお、ポリアクリロニトリル系繊維の工程通過性は、紡糸速度50m/min以上で判断し、糸切れ等により50m/minで紡糸できない水準は、工程通過性を×とした。
ポリアクリロニトリル系繊維の全延伸倍率は20倍以上延伸ができるものを生産性向上につながるとして○、20倍未満しか延伸しないものを×とした。
いずれも良好の場合には生産性の向上◎、一つでも△があるものは○、一つでも×があるものは△、一つ以上の×および△があるものを×とした。◎○を生産性の向上につながる技術とした。
[実施例1]
アクリロニトリル99.8モル%、イタコン酸0.2モル%を水中でアゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤、ポリビニルアルコールを安定剤として加え重合しポリアクリロニトリル系重合体を得た。
ジメチルホルムアミド溶媒を攪拌しながら、得られたポリアクリロニトリル系重合体を混合し、目開き10μmのフィルター通過することで、原液中のポリアクリロニトリル系重合体濃度が表1の濃度、極限粘度の紡糸原液を得た。その紡糸原液を表1の紡糸温度で口金吐出孔径D1.2mm、孔深度L2.5mmの口金から、単孔吐出あたりの吐出量が17.28ml/minになるように押出した。口金下に長さ3mの紡糸筒を設置し、紡糸筒内には、紡糸線方向と垂直に全方向より表1のガス温度に加熱した空気を0.5m/secで吹きかけ、固化させて糸条とし、60m/minローラーで紡糸速度を制御した。この糸条をエタノール中で洗浄を行い、残存しているジメチルホルムアミドを除去した。続いて、表1の方法で延伸を行いながら、乾燥熱処理を行った。工程通過性は良好で、全延伸倍率も高いものであった。
続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、油剤付与後、表1の条件で80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れなく耐炎糸が得られた、耐炎化処理での工程通過性は良好であった。
得られた耐炎糸を、300℃から400℃に2分で昇温し、400〜500℃を40秒で昇温し、最高温度700℃で2分、延伸比1.10で延伸しながら予備炭化処理して予備炭化糸を得た。
この予備炭化糸を表1の条件で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理においても糸切れなく工程通過性が良好であった。
[実施例2]
紡糸機として、スクリュー押出機型紡糸機を用いた以外は実施例1と同様に表1の条件で、紡糸を行った。続いて、エタノール中で洗浄を行い、浴延伸を行い、油剤付与後、ホットチューブを用いて乾燥熱処理と延伸を行った。工程通過性は良好で、延伸性も良好で、全延伸倍率も高いものであった。
続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、表1の条件で80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れなく耐炎糸が得られた、耐炎化処理での工程通過性は良好であった。
得られた耐炎糸を、実施例1と同様に予備炭化処理して予備炭化糸を得た。
この予備炭化糸を表1の条件で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理においても糸切れなく工程通過性が良好であった。
[実施例3]
紡糸機として、スクリュー押出機型紡糸機を用いた以外は実施例2と同様に表1の条件で、紡糸・延伸を行った。工程通過性は良好で、延伸性も良好で、全延伸倍率も高いものであった。
続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、表1の条件で80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れなく耐炎糸が得られた、耐炎化処理での工程通過性は良好であった。
得られた耐炎糸を、実施例1と同様に予備炭化処理して予備炭化糸を得た。この予備炭化糸を表1の条件で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理においても糸切れなく工程通過性が良好であった。
[実施例4]
実施例2と同様に表1の条件で、紡糸・延伸を行った。紡糸原液の粘度が高く、溶解性が低かったが、問題のないレベルであった。延伸性も良好で、全延伸倍率も高いものであった。
続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、表1の条件で80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れなく耐炎糸が得られた、耐炎化処理での工程通過性は良好であった。
得られた耐炎糸を、実施例1と同様に予備炭化処理して予備炭化糸を得た。この予備炭化糸を表1の条件で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理においても糸切れなく工程通過性が良好であった。
[実施例5]
表1の条件で炭化処理する以外は実施例1と同様に紡糸・延伸・耐炎化・前炭化・炭化を行った。炭化処理において糸切れが見られ工程通過性がやや劣るが、問題のないレベルであった。
[実施例6]
表1の条件で耐炎化する以外は実施例1と同様に紡糸・延伸・耐炎化を行った。耐炎化処理での工程通過性は良好であった。実施例1と同様に前炭化処理した後、表1の条件で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理において糸切れが見られたが、工程通過性がやや劣るが、問題のないレベルであった。
[比較例1]
アクリロニトリル100モル%をジメチルスルホキシドに溶解し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いる溶液重合法により重合し、表1の紡糸原液を得た。実施例2と同様に紡糸・延伸を行ったが、最大延伸倍率は表1の通り、低いものだった。
続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、表1の条件で80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れなく耐炎糸が得られた、耐炎化処理での工程通過性は良好であった。
得られた耐炎糸を、実施例1と同様に予備炭化処理して予備炭化糸を得た。この予備炭化糸を表1の条件で炭化処理することにより炭化糸を得た。炭化処理において若干糸切れがあったが問題のないレベルであった。
[比較例2]
実施例1と同様に固化した糸条を得た。この糸条を表1の条件で延伸を行った。全延伸倍率は低いものだった。続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、表1の条件で80分耐炎化処理を行ったところ、糸切れし、耐炎糸を得ることができなかった。工程通過性は問題があった。
[比較例3]
実施例1と同様に得られたポリアクリロニトリル系繊維を得た。
続いて、得られたポリアクリロニトリル系繊維を、表1の条件で耐炎化を行ったところ、若干糸切れがあったが問題のないレベルであった。
得られた耐炎糸を、実施例1と同様に予備炭化処理して予備炭化糸を得た。この予備炭化糸を表1の条件で炭化処理したが、炭化処理において糸切れが見られサンプルを得ることができなかった。
[比較例4]
実施例1と同様に表2のポリアクリロニトリル系重合体を溶解した紡糸原液を得た。その紡糸原液を表2の紡糸温度で口金吐出孔径D1.2mm、孔深度L2mmの口金から、単孔吐出あたりの吐出量が17.28ml/minになるように凝固浴中に押出す、湿式紡糸法によって繊維化を行った。
ローラー速度を上げていくことで、紡糸速度を調整したが、ローラー速度50m/min以下で糸切れし、繊維化することができなかった。工程通過性に問題があることが分かった。
Figure 2011017100

Claims (6)

  1. 極限粘度が6以上であるポリアクリロニトリル系重合体からなる紡糸原液を口金から吐出し、乾式紡糸によって繊維化し、全延伸倍率が20〜120倍の範囲で延伸を行ったポリアクリロニトリル系繊維を空気中で200〜300℃の温度範囲で耐炎化した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、引き続き不活性雰囲気中で800〜2000℃の範囲の温度で炭化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  2. 紡糸原液中のポリアクリロニトリル系重合体濃度が1.5〜15重量%であることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維の製造方法。
  3. 紡糸原液中のポリアクリロニトリル系重合体濃度が2〜9重量%であることを特徴とする請求項2記載の炭素繊維の製造方法。
  4. スクリュー押出機型紡糸機を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の炭素繊維の製造方法。
  5. 耐炎化処理での張力が、0.2〜1.0cN/dtexであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の炭素繊維の製造方法。
  6. 炭化処理での張力が、0.5〜3.0cN/dtexであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の炭素繊維の製造方法。
JP2009162429A 2009-07-09 2009-07-09 炭素繊維の製造方法 Pending JP2011017100A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009162429A JP2011017100A (ja) 2009-07-09 2009-07-09 炭素繊維の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009162429A JP2011017100A (ja) 2009-07-09 2009-07-09 炭素繊維の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011017100A true JP2011017100A (ja) 2011-01-27

Family

ID=43595072

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009162429A Pending JP2011017100A (ja) 2009-07-09 2009-07-09 炭素繊維の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011017100A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018538459A (ja) * 2015-12-22 2018-12-27 サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド 気相表面処理のための方法
JP2021046631A (ja) * 2019-09-19 2021-03-25 株式会社豊田中央研究所 耐炎化繊維、その製造方法、及び炭素繊維の製造方法
JP2021046629A (ja) * 2019-09-19 2021-03-25 株式会社豊田中央研究所 耐炎化繊維、その製造方法、及び炭素繊維の製造方法
CN113388921A (zh) * 2021-07-01 2021-09-14 北京化工大学常州先进材料研究院 一种干法碳纤维原丝及其制备方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018538459A (ja) * 2015-12-22 2018-12-27 サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド 気相表面処理のための方法
JP2021046631A (ja) * 2019-09-19 2021-03-25 株式会社豊田中央研究所 耐炎化繊維、その製造方法、及び炭素繊維の製造方法
JP2021046629A (ja) * 2019-09-19 2021-03-25 株式会社豊田中央研究所 耐炎化繊維、その製造方法、及び炭素繊維の製造方法
JP6998923B2 (ja) 2019-09-19 2022-01-18 株式会社豊田中央研究所 耐炎化繊維、その製造方法、及び炭素繊維の製造方法
JP7166233B2 (ja) 2019-09-19 2022-11-07 株式会社豊田中央研究所 耐炎化繊維、その製造方法、及び炭素繊維の製造方法
CN113388921A (zh) * 2021-07-01 2021-09-14 北京化工大学常州先进材料研究院 一种干法碳纤维原丝及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN107313126B (zh) 一种通过高速纺丝生产石墨烯改性锦纶6纤维的方法
JP5691366B2 (ja) 炭素繊維の製造方法
JP5722991B2 (ja) 炭素繊維の製造方法及び炭素繊維用前駆体繊維
JP6119168B2 (ja) 耐炎化繊維束の製造方法、及び、炭素繊維束の製造方法
JP4617940B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体および炭素繊維前駆体繊維、炭素繊維の製造方法
JP2008308776A (ja) ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法、および炭素繊維
JP4924469B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の製造方法
JP2010100970A (ja) 炭素繊維の製造方法
JP2007162144A (ja) 炭素繊維束の製造方法
JP2011042893A (ja) ポリアクリロニトリル系繊維の製造方法、および炭素繊維の製造方法
JP2011017100A (ja) 炭素繊維の製造方法
JP5151809B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維の製造方法
JP5504678B2 (ja) ポリアクリロニトリル系重合体溶液と炭素繊維前駆体繊維と炭素繊維の製造方法
JP4983709B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の製造方法
JP2008308777A (ja) 炭素繊維、炭素繊維製造用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法
JP2007321267A (ja) ポリアクリロニトリル系繊維および炭素繊維の製造方法
JP2008280632A (ja) 炭素繊維前駆体繊維束の製造方法
JP2010031418A (ja) 炭素繊維前駆体繊維の製造方法
JP2007182645A (ja) アクリル系繊維の製造方法
JP2011231412A (ja) ポリアクリロニトリル系繊維およびそれからなる炭素繊維
JP2011213774A (ja) 炭素繊維製造用ポリアクリロニトリルおよびポリアクリロニトリル系前駆体繊維および炭素繊維の製造方法。
JP2015183166A (ja) アクリロニトリル系共重合体およびポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維、炭素繊維の製造方法
JP6359860B2 (ja) 炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維前駆体繊維の製造方法
JP2004060126A (ja) 炭素繊維及びその製造方法
JP2012219382A (ja) ポリアクリロニトリル系炭素繊維の前駆体繊維束の製造方法及びそれによって得られるポリアクロロニトリル系炭素繊維の前駆体繊維束