JP6562187B1 - アクリロニトリル系繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

アクリロニトリル系繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造方法 Download PDF

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Abstract

アクリロニトリル系繊維束に加圧スチーム延伸を施す際、特に高倍率や、高速で処理を行う場合に工程通過性の優れた延伸方法を提供することを課題とするものであり、アクリロニトリル系共重合体を含む紡糸溶液から紡糸された糸よりなる繊維束を、繊維束導入側に設けられた予熱域(1)と繊維束取り出し側に設けられた加熱延伸域(2)の2領域を少なくとも有し、当該2領域がシール部材を具備したシール領域(3B)により隔てられている加圧スチーム延伸装置Aを用いて加圧スチーム雰囲気下で加圧スチーム延伸するアクリロニトリル系繊維束の製造方法であって、予熱域(1)の圧力をP1(MPa)、加熱延伸域(2)の圧力をP2(MPa)としたとき、P2とP1の差ΔP=P2−P1と、シール領域(3B)の繊維束の滞留時間t(秒)が1.0≦ΔP/t≦10の関係式を満たし、加圧スチーム延伸装置(1)導入前の繊維束(7)の荷重極小温度T1(℃)、予熱域(1)の温度T2(℃)がT1−20≦T2<T1の関係式を満たすアクリロニトリル系繊維束の製造方法であることを本旨とする。

Description

本発明は、アクリロニトリル系繊維束を製造する方法に関する。
炭素繊維束の前駆体繊維などとして用いられるアクリロニトリル系繊維束の製造においては、加圧スチームにより延伸することが従来から知られている。大気圧下の熱水より高温が得られるとともに、水分の存在がアクリロニトリル系繊維束の可塑化効果を生み、高倍率の延伸が可能となるためである。しかしながら、アクリロニトリル系繊維束の加圧スチーム延伸において、高倍率に延伸する場合、単繊維の切断、毛羽の発生、繊維束全体の切断といった欠陥が発生する場合があった。細繊度の繊維束を得る場合、または、より高速で処理しようとする場合でも同様である。
特許文献1には、スチームボックスとスチーム延伸機間のシール性を向上させることで、スチームボックスへの蒸気供給をスチーム延伸機からの蒸気のみとすることに加えて、さらに一方向からの蒸気供給となるため蒸気の流れを糸の進入と逆の向きに安定させることが可能となる。その結果、繊維束へのダメージが軽減され、品位向上に繋がるという技術が開示されている。
また、特許文献2には、延伸工程を予熱域と加熱延伸域に分割し、それぞれに異なった圧力の加圧スチームを供給する延伸方法において、延伸点が予熱域にずれて低い温度で無理に延ばされることを防止する観点から、予熱域に吹き込むスチームの湿り度よりも高い湿り度の、湿りスチームを加熱延伸域に吹き込むという技術が開示されている。
また、特許文献3には、予熱に用いる加圧スチーム圧力とその滞留時間、および延伸に用いる加圧スチーム圧力とその滞留時間をそれぞれある条件範囲内にすることにより、高品位な炭素繊維束を安定して製造するのに適し、繊度変動率を抑制する技術が開示されている。
また、特許文献4には、加圧スチームが供給される蒸気室と、スチーム延伸装置入口側シール室と、スチーム延伸装置入口外側の温度を制御するために、該スチームの温度と圧力を検出しながら該温度に応じた水分をアトマイザーで蒸気室に供給する加圧スチームに供給し、飽和蒸気温度との温度差を2℃以下にするという技術が開示されている。
特開2013−159874号公報 特開平5−263313号公報 特開2008−214795号公報 特開2015−30923号公報
しかし、特許文献1の方法ではより高速、または、より高倍率延伸で処理しようとした場合、アクリロニトリル系繊維束の一部はスチームボックスで十分な可塑化効果を得られないままスチーム延伸機に導入され、意図しない領域での延伸が発生することがあり、品質のバラツキや繊維束の破断に繋がることがあった。
また、特許文献2の方法では、高い湿り度の湿りスチームを加熱延伸域に吹き込むと、供給時にスチーム延伸装置の壁面に衝突した際にドレン化が発生し、ドレンが繊維束に付着することで、ドレンが付着した部分と付着していない部分が発生し、ドレンが付着していない部分で繊維束の可塑化効果を効率的に得ることが出来ず、単糸切れやアクリロニトリル系繊維束の破断に繋がることがあった。
また、特許文献3の方法では、大型な設備投資を伴わずに生産能力を向上させるためには生産速度の向上が必須となり、予熱域および加熱域の滞留時間は短くなることで、予熱および延伸に必要な熱量を得ることが出来ず、単糸切れやアクリロニトリル系繊維束の破断に繋がることがあった。
また、特許文献4の方法では、蒸気室からスチーム延伸装置入口へ供給されるスチームは、スチーム延伸装置入口側シール室およびスチーム延伸装置入口外側の温度と飽和蒸気温度との温度差を2℃以下にするためには、蒸気室に供給する加圧スチームに過剰な水分を供給する必要があり、アトマイザーで水分の噴霧径を小さくし、さらには蒸気と水分を均一に混合しても、蒸気を供給する過程で噴霧径の大きな水滴になり、大きな水滴がアクリロニトリル系繊維束に衝突することで単糸切れやアクリロニトリル系繊維束の破断に繋がることがあった。
本発明の課題は、従来技術の欠点を改善し、炭素繊維束の前駆体繊維として使用されるアクリロニトリル系繊維束に加圧スチーム延伸を施す際、特に高倍率、高速で処理を行う場合、または細繊度のアクリロニトリル系繊維束を得る場合に工程通過性の優れた延伸方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、繊維束導入側に設けられた予熱域とアクリロニトリル系繊維束取り出し側に設けられた加熱延伸域の2領域を有し、当該2領域がシール部材を具備したシール領域により隔てられている加圧スチーム延伸装置による延伸方法であって、前記予熱域と前記加熱延伸域の圧力差、および予熱域と加熱延伸域の間のシール領域に繊維束が滞留する時間を制御することにより、より均一な延伸処理を施すことが出来、工程通過性に優れたアクリロニトリル系繊維束が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明のアクリロニトリル系繊維束の製造方法は、アクリロニトリル系共重合体を含む紡糸溶液から紡糸された糸よりなる繊維束を、繊維束導入側に設けられた予熱域と繊維束取り出し側に設けられた加熱延伸域の2領域を少なくとも有し、当該2領域がシール部材を具備したシール領域により隔てられている加圧スチーム延伸装置を用いて加圧スチーム雰囲気下で加圧スチーム延伸するアクリロニトリル系繊維束の製造方法であって、前記予熱域の圧力をP1(MPa)、前記加熱延伸域の圧力をP2(MPa)としたとき、P2とP1の差ΔP=P2−P1と、シール領域の繊維束の滞留時間t(秒)が1.0≦ΔP/t≦10の関係式を満たし、加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束の荷重極小温度T1(℃)、前記予熱域の温度T2(℃)がT1−20≦T2<T1の関係式を満たすことを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維束の製造方法は、上記のアクリロニトリル系繊維束の製造方法によってアクリロニトリル系繊維束を製造した後、200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化処理し、次いで1000℃以上の不活性雰囲気中で加熱する炭素繊維束の製造方法、である。
本発明により、アクリロニトリル系繊維束の加圧スチーム延伸を繊維束全体の破断といったトラブルを抑制して行うことができる。さらに、単繊維の切断や毛羽の発生を防止することができ、高品質のアクリロニトリル系繊維束を安定的に得ることができる。
本発明に係る加圧スチーム延伸の処理を行う装置の一例を示す概略側面図である。
以下、図1も参照しながら、本発明を詳細に説明する。
本発明のアクリロニトリル系繊維束の製造方法では、アクリロニトリル系共重合体を含む紡糸溶液を紡糸した後、加圧スチーム延伸装置を用いて紡糸した糸よりなる繊維束に加圧スチーム延伸を施す。ここで、加圧スチーム延伸装置を用いた加圧スチーム延伸の前後に、繊維製造の分野で公知の工程を適宜行うことができる。例えば、アクリロニトリル系繊維束を溶液紡糸する場合は、原料重合体としてアクリロニトリルのホモポリマー、あるいはコモノマーを含んだアクリロニトリル系共重合体を、公知の有機または無機溶剤に溶解した溶液を紡糸した後、延伸する際に本発明に係る加圧スチーム延伸を行うことができる。この場合、紡糸方法はいわゆる湿式、乾湿式、乾式のいずれでも良く、その後の工程で脱溶剤、浴中延伸、油剤付着処理、乾燥等を施すことができる。加圧スチーム延伸は繊維製造工程の中のいかなる段階で実施しても良いが、繊維束中の溶剤をある程度除去した後、すなわち洗浄後または浴中延伸後、あるいは乾燥後が好ましく、高配向の繊維束を得る観点から乾燥後がより好ましい。
以下図面を参照して本発明を例をあげて説明する。しかし本発明は例に限定して解釈されるものではない。本発明に用いる加圧スチーム延伸装置Aは、繊維束に加圧スチーム延伸を施す際に、繊維束導入側に設けられた予熱域1とアクリロニトリル系繊維束取り出し側に設けられた加熱延伸域2の2領域を少なくとも有する。ここで、予熱域とは続く加熱延伸域での延伸をより均一に行うために事前に繊維束を予め加熱する領域であり、加熱延伸域とは繊維束を加熱し延伸する領域である。本発明では、当該2領域がシール部材(3b1、3b2)からなるシール領域3Bにより隔てられている加圧スチーム延伸装置を用いて、予熱域の圧力P1(MPa)と加熱延伸域の圧力P2(MPa)の圧力差P2−P1をΔPとしたときに、予熱域と加熱延伸域の間のシール領域3Bの滞留時間t(秒)との関係が1.0≦ΔP/t≦10にすることが重要である。上記の範囲内である場合、予熱域1と加熱延伸域2の圧力勾配は急峻化されるため、加熱延伸域において繊維束全体が一度にかつ均一に延伸が行われる。その結果、単糸間の延伸斑が抑制され、繊維束の破断や単糸切れといったトラブルを防止できる。さらに、より生産性を高めるためには、加圧スチーム延伸装置をより小さくすることが好ましく、また繊維束をより均一に延伸するためには、2≦ΔP/t≦5であることが好ましい。
予熱域1の圧力P1は0.05MPa以上0.35MPa未満、それに続く加熱延伸域2の圧力P2が0.35MPa以上0.7MPa以下であることが、予熱および加熱延伸が効果的に行われるためには好ましい。ここで、予熱域および加熱延伸域の圧力は、一般的な装置で測定すればよく、例えば、ブルドン管圧力計などにより測定することができる。予熱域の圧力P1が0.05MPa以上0.35MPa未満の範囲である場合、予熱域にて繊維束全体に対して均一な予熱ができ、続く加熱延伸域での均一な延伸が可能となり、アクリロニトリル系繊維束の毛羽発生を抑制できる場合がある。また、加熱延伸域の圧力P2が0.35MPa以上0.7MPa以下の場合、繊維束が延伸に必要な熱量を十分に得られ、均一な延伸が可能となり、アクリロニトリル系繊維束の毛羽発生を抑制できる場合がある。
予熱域及び加熱延伸域とも複数設けることが出来る。その場合、予熱域の圧力P1(MPa)は最も加熱延伸域に近い予熱域の圧力を指し、加熱延伸域の圧力P2(MPa)は最も予熱域に近い加熱延伸域の圧力を指す。
シール領域に設置するシール部材としては、ラビリンスノズルと称する加圧スチーム延伸装置内壁上面と底面から走行糸条を挟んで互いに接近する方向に垂直に延びる板片を複数個有してなるものや、小口径のパイプを複数個連ねて用いることができるが、予熱域と加熱延伸域の圧力差を作り出す、または維持することが出来れば、特にこれに限定されるものではない。なおラビリンスノズルは丸形、矩形、楕円形等いずれの形状にも適用可能であり、一体型、分割型を問わない。また、ラビリンスノズルの内径や段数、絞り辺の形状の制約を受けるものではない。さらにスチームの漏れを防ぐためのシールを行うに十分な機械強度を有する材質を適用することが好ましい。例えば、処理装置の繊維束に接する可能性のある部分の材質としては特に、耐腐食性を有しておりかつ繊維束が接触した場合の繊維束へのダメージを抑制するために、ステンレス製あるいは鉄鋼材料にクロムメッキ処理を施した材質とする事が好ましいが、これに限定されるものではない。
予熱域1および加熱延伸域2の圧力を調整する方法としては、加圧スチーム延伸装置へ供給するスチームの圧力を調整する方法や、予熱域外側シール領域3A、または加熱延伸域外側シール領域3Cのシール部材の個数や形状を変更することで調整する方法が適用出来る。例えば、予熱域外側シール領域3Aまたは加熱延伸域外側シール領域3Cのシール部材の個数を減らしたり形状を変更することでシール領域での圧損を減らせば予熱域または加熱延伸域の圧力を減らすことが出来、予熱域外側シール領域3Aまたは加熱延伸域外側シール領域3Cのシール部材の個数を増やしたり形状を変更することでシール領域での圧損を増やせば予熱域または加熱延伸域の圧力を増やすことが出来る。また予熱域と加熱延伸域の間のシール領域3Bのシール部材の個数や形状を変更することで予熱域と加熱延伸域の圧力差を調整出来る。例えば、シール領域3Bのシール部材の個数を減らしたり形状を変更することでシール領域での圧損を減らせば予熱域と加熱延伸域の圧力差を小さく出来、シール領域3Bのシール部材の個数を増やしたり形状を変更することでシール領域での圧損を増やせば予熱域と加熱延伸域の圧力差を大きく出来る。
予熱域と加熱延伸域の間のシール領域3Bの滞留時間tは繊維束が加圧スチーム延伸装置へ供給される速度により変更できるし、また該滞留時間tを調整する方法としては、予熱域と加熱延伸域の間のシール領域3Bのシール部材(3b1、3b2)の個数の増減や長さを変更することによりシール領域3Bの長さを調整する方法が適用出来る。
本発明では加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束の荷重極小温度T1(℃)、予熱域の温度T2(℃)がT1−20≦T2<T1を満たすことが重要である。
ここで、荷重極小温度T1(℃)は以下の方法により求められる。加圧スチーム延伸装置に入る前の繊維束をサンプリングし、繊維束から単繊維1本を採取する。該単繊維をブルカー・エイエックスエス社製TMA4010SAの引っ張りプローブ(試料長10mm)にセットし、試料のたるみをなくすため、0.3gの引っ張り荷重を与えて、荷重モードを定長に設定する。空気中において昇温速度20℃/minで室温から200℃まで昇温しながら、荷重を0.5secごとに測定する。50℃から200℃の範囲で、荷重が極小値となる温度を荷重極小温度T1とする。また、予熱域の温度T2(℃)は、一般的な装置で測定すればよく、例えば、熱電対などにより測定することができる。
予熱域を複数設けた場合、予熱域の温度T2(℃)は加熱延伸域に最も近い予熱域の温度を指す。
T1−20≦T2<T1の場合、予熱域で意図しない延伸が部分的に開始されることを抑制でき、その結果、毛羽による品位低下を防ぐことができる。予熱域で十分かつ安定した予熱を行うためにはT1−15≦T2≦T1−5がより好ましい。
加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束の荷重極小温度T1はアクリロニトリル系重合体に含まれる共重合成分の含有量や組成を変更すること、または紡糸での延伸条件や乾燥条件を変更することにより変更できるが、特にこれに限定されるものではない。予熱域の温度T2は、加圧スチーム延伸装置へ供給される加圧スチームの圧力、または予熱域の両端のシール部材による調整、すなわち、シール部材の個数や形状により調整できる。さらには、予熱域を装置外側から水などにより冷却、または電気ヒーターなどによる加温することにより予熱域の温度T2を調整できる。
また、本発明のアクリロニトリル系繊維束の製造方法は、加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束の単糸の真円度が0.9以上の場合に特に好適に用いることができる。ここで、かかる単糸の真円度は、次の方法で求められる。加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束をサンプリングし、カミソリで繊維軸に垂直に切断し、光学顕微鏡を用いて単繊維の断面形状を観察する。測定倍率は、最も細い単繊維が1mm程度に観察されるような倍率とし、使用する機器の画素数は200万画素とする。得られた画像を画像解析することにより繊維束を構成する単糸の断面積と周長を求め、その断面積から真円と仮定した時の単糸の断面の直径(繊維径)を0.1μm単位で計算して求め、真円度=4πS/Lの式を用いて、繊維束を構成する単糸の真円度を求めることができる(式中、Sは単糸の断面積を表し、Lは単糸の周長を表す)。かかる単糸の真円度が0.9以上の場合、繊維束が密な状態で形成されており、加圧スチーム延伸装置において、より均一に延伸処理を施すことが可能となるため本発明の効果が発現しやすい。繊維束の単糸の真円度は、紡糸の凝固条件や延伸条件を変更することで調整することが出来る。
次に、本発明のアクリロニトリル系繊維束の製造方法によって得られたアクリロニトリル系繊維束から炭素繊維束を製造する方法について説明する。
前記したアクリロニトリル系繊維束の製造方法により製造されたアクリロニトリル系繊維束を、200〜300℃の空気などの酸化性雰囲気中において耐炎化処理する。処理温度は低温から高温に向けて複数段階に昇温するのが耐炎化繊維束を得る上で好ましく、さらに毛羽の発生を伴わない範囲で高い延伸比で繊維束を延伸するのが炭素繊維束の性能を十分に発現させる上で好ましい。次いで得られた耐炎化繊維束を窒素などの不活性雰囲気中で1000℃以上に加熱することにより、炭素繊維束を製造する。その後、電解質水溶液中で陽極酸化をおこなうことにより、炭素繊維束表面に官能基を付与し樹脂との接着性を高めることが可能となる。また、エポキシ樹脂等のサイジング剤を付与し、耐擦過性に優れた炭素繊維束を得ることが好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。
(ΔP測定)
予熱域と加熱延伸域それぞれの、繊維束進行方向における中央部の圧力をブルトン管圧力計で測定した。
測定した予熱域の圧力P1(MPa)および加熱延伸域の圧力P2(MPa)から、以下の式によりΔP(MPa)を算出した。
ΔP=P2−P1。
(加圧スチーム延伸装置の予熱域と加熱延伸域の間のシール領域の滞留時間t(秒))
繊維束を加圧スチーム延伸装置に供給するフィードロールの速度を表面速度計により測定し、以下の式でtを算出した。
予熱域と加熱延伸域間のシール部材の長さ(m)/フィードロール速度(m/秒)
=予熱域と加熱延伸域の間のシール領域の滞留時間t(秒)。
(予熱域の温度T2)
予熱域のうち、繊維束進行方向における中央部にて、垂直な位置かつ走行する繊維束から1mm離れた位置を熱電対で測定し、予熱域の温度T2とした。測定するに当たっては、サイトグラスを設置した延伸装置を用いて、熱電対と走行する繊維束が接触していないことを確認しながら行った。
(荷重極小温度T1)
加圧スチーム延伸装置に入る前の繊維束をサンプリングし、繊維束から単繊維1本を採取した。該単繊維をブルカー・エイエックスエス社製TMA4010SAの引っ張りプローブ(試料長10mm)にセットし、試料のたるみをなくすため、0.3gの引っ張り荷重を与えて、荷重モードを定長に設定した。空気中において昇温速度20℃/minで室温から200℃まで昇温しながら、荷重を0.5secごとに測定した。50℃から200℃の範囲で、荷重が極小値となる温度を読み取った。本測定を10回繰り返し、その平均値をT1とした。
(ラビリンス個数)
加圧スチーム延伸装置の予熱域と加熱延伸域の間のシール領域内のシール部材(ラビリンスノズル)の個数をカウントした。
(真円度)
加圧スチーム延伸装置から10cm離れた位置で、加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束をサンプリングし、カミソリで繊維軸に垂直に切断し、光学顕微鏡を用いて単繊維の断面形状を観察した。測定倍率は、最も細い単繊維が1mm程度に観察されるような倍率とし、使用する機器の画素数は200万画素とした。得られた画像を画像解析することにより繊維束を構成する単糸の断面積と周長を求め、その断面積から真円と仮定した時の単糸の断面の直径(繊維径)を0.1μm単位で計算して求め、下記式を用いて繊維束を構成する単糸の真円度を求めた。無作為に選んだ単糸10本あたりの平均値を真円度とした。真円度=4πS/L
(式中、Sは単糸の断面積を表し、Lは単糸の周長を表す)。
(アクリロニトリル系繊維束の品位)
加圧スチーム延伸装置での加圧スチーム延伸後、アクリロニトリル系繊維束を巻き取る手前で1000m当たりのアクリロニトリル系繊維束の0.3mm以上となる毛羽の数を数え、品位を評価した。評価基準は以下の通りである。
1:0≦毛羽の数≦1
2:1<毛羽の数≦2
3:2<毛羽の数≦5
4:5<毛羽の数<60
5:毛羽の数≧60。
(アクリロニトリル系繊維束の工程通過性)
アクリロニトリル系繊維束製造量10tあたりの糸切れ回数から評価した。評価基準は以下の通りである。
1:0≦糸切れ回数≦1
2:1<糸切れ回数≦2
3:2<糸切れ回数≦3
4:3<糸切れ回数<5
5:糸切れ回数≧5。
[実施例1]
アクリロニトリル99モル%、イタコン酸1モル%を含むアクリロニトリル系共重合体のジメチルスルホキシド溶液を4000ホールの口金を用いて乾湿式紡糸し、ただちに3本を合糸し、12000フィラメントとした。40℃の温水中で2倍延伸および水洗し、70℃の温水中でさらに2倍延伸を実施した後に乾燥して、12000フィラメントからなる総デシテックスが66000の繊維束を得た。この繊維束を図1に示した加圧スチーム延伸装置A(シール領域3Bにラビリンスノズルを30個備える)へ供し、表1に示す条件で延伸し、12000フィラメント、単繊維繊度1.1デシテックスのアクリロニトリル系繊維束を得た。なお、単繊維の真円度の評価を、加圧スチーム延伸装置前の繊維束をサンプリングして行った。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[実施例2、4および5]
表1に示すように加圧スチーム延伸装置の予熱域と加熱延伸域の間のシール領域のシール部材の個数を変更してシール領域の滞留時間tを変更するとともに形状を変更して圧力差ΔPを変更することによりΔP/tを変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[実施例3]
紡糸の凝固条件を変更して、加圧スチーム延伸装置導入前のアクリロニトリル系繊維束の真円度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[実施例6]
アクリロニトリル98.5モル%、イタコン酸1モル%、アクリル酸メチル0.5モル%を含むアクリロニトリル系共重合体のジメチルスルホキシド溶液を用いて紡糸し、荷重極小温度を変更した以外は実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[実施例7]
表1に示すように加圧スチーム延伸装置の予熱域と加熱延伸域の間のシール領域のシール部材の個数・形状を変更し、且つ予熱域外側シール領域3Aのシール部材形状を変更して予熱域温度を変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[比較例1〜2]
表1に示すように加圧スチーム延伸装置の予熱域と加熱延伸域の間のシール領域のシール部材の個数・形状を変更してΔP/tを変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[比較例3]
アクリロニトリル98モル%、イタコン酸1モル%、アクリル酸メチル1モル%を含むアクリロニトリル系共重合体のジメチルスルホキシド溶液を用いて紡糸し、荷重極小温度を変更した以外は実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
[比較例4]
予熱域外側シール領域3Aのシール部材形状を変更して、表1に示すように予熱域の温度を変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリロニトリル系繊維束を得た。得られたアクリロニトリル系繊維束の品位、工程通過性を評価した結果と、加圧スチーム延伸装置内の温度を測定した結果を表1に示した。
Figure 0006562187
A 加圧スチーム延伸装置
B 繊維束の進行方向
1 予熱域
2 加熱延伸域
3A 予熱域外側シール領域
3a1 シール部材
3a2 シール部材
3B 予熱域と加熱延伸域の間のシール領域
3b1 シール部材
3b2 シール部材
3C 加熱延伸域外側シール領域
3c1 シール部材
3c2 シール部材
4 スチーム圧力制御装置
5 温度計(TI)
6 圧力計(PI)
7 繊維束
8 フィードロール

Claims (3)

  1. アクリロニトリル系共重合体を含む紡糸溶液から紡糸された糸よりなる繊維束を、繊維束導入側に設けられた予熱域と繊維束取り出し側に設けられた加熱延伸域の2領域を少なくとも有し、当該2領域がシール部材を具備したシール領域により隔てられている加圧スチーム延伸装置を用いて加圧スチーム雰囲気下で加圧スチーム延伸するアクリロニトリル系繊維束の製造方法であって、前記予熱域の圧力をP1(MPa)、前記加熱延伸域の圧力をP2(MPa)としたとき、P2とP1の差ΔP=P2−P1と、シール領域の繊維束の滞留時間t(秒)が1.0≦ΔP/t≦10の関係式を満たし、加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束の荷重極小温度T1(℃)、前記予熱域の温度T2(℃)がT1−20≦T2<T1の関係式を満たすアクリロニトリル系繊維束の製造方法。
  2. 加圧スチーム延伸装置導入前の繊維束の単糸の真円度が0.9以上である請求項1に記載のアクリロニトリル系繊維束の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のアクリロニトリル系繊維束の製造方法によってアクリロニトリル系繊維束を製造する工程、200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化処理する工程、その後1000℃以上の不活性雰囲気中で加熱する工程を有する炭素繊維束の製造方法。
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