JP5138938B2 - Ret調節剤の開発のための化合物および方法 - Google Patents

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    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07DHETEROCYCLIC COMPOUNDS
    • C07D471/00Heterocyclic compounds containing nitrogen atoms as the only ring hetero atoms in the condensed system, at least one ring being a six-membered ring with one nitrogen atom, not provided for by groups C07D451/00 - C07D463/00
    • C07D471/02Heterocyclic compounds containing nitrogen atoms as the only ring hetero atoms in the condensed system, at least one ring being a six-membered ring with one nitrogen atom, not provided for by groups C07D451/00 - C07D463/00 in which the condensed system contains two hetero rings
    • C07D471/04Ortho-condensed systems
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    • A61P35/00Antineoplastic agents

Description

(関連特許出願の相互参照)
本願は,2003年12月19日に出願された米国仮出願第60/531,281号および2004年3月31日に出願された米国仮出願第60/558,581号に基づく優先権の利益を主張し,それらは参照により図面を含むその全文が本明細書に組み込まれる。
本発明は,Retのリガンド開発の分野および結晶構造から導いたRet結合部位モデルの使用に関する。提供する情報は単に読者の理解を助けることを意図するものである。提供する情報または引用した参照文献のうち,本発明の先行技術であると認められるものは1つもない。引用した各参照文献は,その全文が本明細書に組み込まれる。
本発明はRetタンパク質およびRet活性の調節剤の開発に関する。
Ret(Rearranged during Transformation)は,古典的なNIH3T3形質転換アッセイにおいて,再編成されるヒト癌遺伝子として同定され(タカハシら,1985,セル(Cell)42(2):581〜8頁),その後,受容体チロシンキナーゼとして特性決定された(タカハシら,1988,オンコジーン(Oncogene)3(5):571〜8頁)。
RetおよびNTRK1は,神経系の特定の構成要素の発達および成熟において役割を果たす,受容体チロシンキナーゼ(RTK)タンパク質である。それらの変化は,いくつかの形態の癌および発達異常をはじめ,いくつかのヒト疾病と関連している。こういった特徴が,1種の遺伝子が2種以上の疾病の原因であり得るという概念の一因となっている。さらに,2種のRTKをコードする両遺伝子とも,「機能の獲得」か「機能の喪失」のいずれかの種類の突然変異に属する遺伝子変化を示す。実際,受容体再編成または点突然変異は,RetおよびNTRK1を,優勢に作用する形質転換遺伝子に変換し,その結果甲状腺腫瘍をもたらす一方で,ヒルシュスプルング病(HSCR)および全身無汗無痛症(CIPA)に関連する突然変異の不活化によってRetおよびNTRK1機能をそれぞれ低下させる。
ヒト腫瘍形成におけるRetの関わりは,甲状腺乳頭癌DNAから単離されたDNAにおいて,NIH3T3細胞を形質転換する,再編成されたRet配列がしばしば同定されることによって示された。ボンガルゾン(Bongarzone)ら,1989,オンコジーン4(12):1457〜62頁)。これらの場合には,Ret遺伝子は,正常親DNAではなく腫瘍DNA中の今のところ未知のPTC DNA配列と融合していた(グリエコ(Grieco)ら,1990,セル60(4):557〜63頁)。さらに,染色体10q11.2に対するRetの染色体マッピングが,MEN2A(多発性内分泌腺腫症2A)を患う患者に関係している遺伝子と関連があるとされる遺伝子マッピングデータと同じ場所に局在した(イシザカら,1989 オンコジーン4(12):1519〜21頁)。いくつかのヒト腫瘍におけるRET癌遺伝子の発現解析によって,家族型および散発型双方の,ヒト褐色細胞腫において,およびヒト甲状腺髄様癌(MTC)においてRETプロトオンコジーンの正常な大きさのトランスクリプトの発現が一貫して検出された(サントロ(Santoro)ら,1990,オンコジーン5(10):1595〜8頁)。
多発性内分泌腺種症2A型(MEN2A)の患者および家族性甲状腺髄様癌(FMTC)の患者の腫瘍DNAのさらなる解析によって,コードされるRetタンパク質のアミノ
酸変化をもたらすRET配列中の突然変異が同定された(ドニス−ケラー(Donis-Keller)1993,ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス(Human Molecular Genetics)2(7)851〜6頁)。同様に,RET遺伝子中の突然変異は,ヒルシュスプルング病,RET遺伝子の染色体位置における遺伝子欠失および突然変異を伴う発達障害と関連があった(ルオ(Luo)ら,1993,ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス2(11):1803〜8頁)。
1994年前半までに,複数の研究論文が,ヒルシュスプルング病の患者およびノックアウトマウスの同様の表現型におけるRET遺伝子の不活化を記載している。さらに,MEN2A,MEN2BおよびFMTCの患者においてRetにおける突然変異の活性化が現在では同定されている(ヴァン・ヘイニンゲン(van Heyningen)V,1994,ネイチャー(Nature)367(6461):319〜20頁によって概説されている)。
c−Retが細胞の生存を調節することが解明された。ホスホリル部分の結果としてc−Retと複合体を形成するシグナル伝達分子,例えば,GRB2,SOS,rasおよびrafは,神経生存を促進する細胞においてシグナルを伝播する。したがって,c−Retの刺激分子の相互作用を促進する化合物は,c−Retの活性を増強する。あるいは,タンパク質ホスファターゼは,GDNFに応じてc−Retの細胞内領域に位置するホスホリル部分を除去でき,ひいてはシグナル伝達能c−Retを阻害できる。したがって,c−Retのホスファターゼを阻害する化合物は,おそらくc−Retのシグナル伝達能を増強する。
c−Retは,GDNFによる刺激時の,腸溶性のニューロン,シナプスニューロンおよび感覚ニューロンおよび腎臓系のニューロンの発達および生存に関与している(ジン(Jing)ら,1996,セル85:1113〜1124;トルップ(Trupp)ら,1996,ネイチャー381:785〜789頁;ダルベック(Durbec)ら,1996,ネイチャー381:789〜793頁)。c−Ret中の機能突然変異が欠けていることは,ヒルシュスプルング病を引き起こすことがあり,これは例えば哺乳類において腸管神経分布の減少として現れる。したがって,c−Retを活性化する化合物は,それだけには限らないが,ヒルシュスプルング病,パーキンソン病,アルツハイマー病および筋萎縮性側索硬化症をはじめとする神経変性障害の治療のための治療薬の可能性がある。細胞におけるc−Retの過剰発現は癌,例えば,甲状腺の癌に関与しているので,c−Ret機能を阻害する化合物はまた,抗癌剤でもあり得る。
c−Ret活性の調節はまた,神経組織の癌,例えば神経芽細胞腫の治療において,たとえシグナル伝達経路に異常がみられなくとも有用であり得る。
前述のように,RET遺伝子はMEN2症候群の原因となっており,これは高浸透度および多様な臨床症状で常染色体の優先遺伝様式で遺伝される。優勢なRET突然変異は,9個のコドン(コドン609,611,618,620,630,634,768,804および918)に限定される,ミスセンス突然変異である。MEN2症候群には3つのサブタイプがある:多発性内分泌腺腫症2A型(MEN2A),MEN2Bおよび家族性甲状腺髄様癌(FMTC)。エクソン10(コドン609,611,618および620)およびエクソン11(コドン630および634)のミスセンス突然変異はMEN2A家系の98%およびFMTC家系の85%で同定されている。コドン768および804のミスセンス突然変異は5〜10%のFMTCの症例の原因であることがわかっている。さらに,エクソン16(コドン918)のミスセンス突然変異はMEN2B症例の95%で見られている。
本発明はRetに対して活性な化合物に関し,およびさらなるRet調節剤を導くためのRetに関する構造情報の使用に関する。詳しくは,本発明は,以下に記載される式Iの化合物に関する。したがって,本発明はRetの調節を含む治療法に使用できる新規化合物,ならびにRetのさらなる調節剤を開発するための分子スキャフォールドを提供する新規化合物を提供する。
式Iの化合物は以下の構造を有する:
ここで,式Iに関して,
1およびR5は独立に,水素,ハロ,ヒドロキシ,場合によって置換されていてもよいアルコキシル,場合によって置換されていてもよいチオアルコキシ,場合によって置換されていてもよい低級アルキル(例えば,トリフルオロメチル),場合によって置換されていてもよい低級アルケニル,場合によって置換されていてもよい低級アルキニル,場合によって置換されていてもよいシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリール,場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキル,−C(X)NR1617,−C(X)R20または−NR2223であり,
2,R3およびR4は独立に,水素,ハロ,ヒドロキシ,場合によって置換されていてもよいアルコキシル,場合によって置換されていてもよいチオアルコキシ,場合によって置換されていてもよい低級アルキル(例えば,トリフルオロメチル),場合によって置換されていてもよい低級アルケニル,場合によって置換されていてもよい低級アルキニル,場合によって置換されていてもよいシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリール,または場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキル,−C(X)R20,C(X)NR1617,S(O)2NR1617,−NR2223または−S(O)n21であり,
16およびR17は独立に,水素,場合によって置換されていてもよい低級アルキル,場合によって置換されていてもよい低級アルケニル,場合によって置換されていてもよい低級アルキニル,場合によって置換されていてもよいシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリール,場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか,またはR16およびR17は5〜7員の炭素環式環もしくは複素環式環を一緒になって形成し,
20はヒドロキシ,場合によって置換されていてもよい低級アルコキシ,場合によって置換されていてもよいアミン,場合によって置換されていてもよい低級アルキル,場合によって置換されていてもよい低級アルケニル,場合によって置換されていてもよい低級アルキニル,場合によって置換されていてもよいシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリ
ールまたは場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキルであり,
21は水素,場合によって置換されていてもよい低級アルキル,場合によって置換されていてもよいアミン,場合によって置換されていてもよい低級アルケニル,場合によって置換されていてもよい低級アルキニル,場合によって置換されていてもよいシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリール,場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキルであり,
22およびR23は独立に,水素,場合によって置換されていてもよい低級アルキル,場合によって置換されていてもよい低級アルケニル,場合によって置換されていてもよい低級アルキニル,場合によって置換されていてもよいシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリール,場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキル,−C(X)R20,C(X)NR1617または−S(O)221であり,
24は場合によって置換されていてもよい低級アルキル,場合によって置換されていてもよいアリール,場合によって置換されていてもよいアラルキル,場合によって置換されていてもよいヘテロアリールまたは場合によって置換されていてもよいヘテロアラルキルであり,
w,yおよびzは独立に,O,S,NまたはCR2であり,
qはNまたはCであり,
X=OまたはSであり,
N=0,1または2である。
式Iの化合物に関連して,以下の定義が適用される。
「ハロ」または「ハロゲン」とは単独または組合せて,すべてのハロゲン,すなわち,クロロ(Cl),フルオロ(F),ブロモ(Br),ヨード(I)を意味する。
「ヒドロキシ」とは基−OHを指す。
「チオール」または「メルカプト」とは,基−SHを指す。
「アルキル」とは単独または組合せて,1〜20個,好ましくは1〜15個の炭素原子を含むアルカン由来ラジカルを意味する(特に定義しない限りは)。直鎖アルキル,分岐アルキルまたはシクロアルキルである。1〜15個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基が好ましく,1〜8個がより好ましく,1〜6個がさらにより好ましく,1〜4個がいっそうより好ましく,1〜2個,例えば,メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,t−ブチルなどが最も好ましい。用語「低級アルキル」は,本明細書では直前に記載の直鎖アルキル基を記載するために用いる。シクロアルキル基は,環あたり3〜8員の単環式,二環式または三環式環系であることが好ましく,3〜6員,例えばシクロプロピル,シクロペンチル,シクロヘキシル,アダマンチルなどがより好ましい。アルキルは,直鎖またはシクロアルキル部分を含むか,シクロアルキル部分によって割り込まれている分岐アルキル基も含む。直鎖または分岐アルキル基は利用可能ないずれかの点で結合されて安定な化合物を生じる。この例としては,それだけには限らないが,4−(イソプロピル)−シクロヘキシルエチルまたは2−メチル−シクロプロピルペンチルが挙げられる。置換アルキルは,1〜3個の,ハロ,ヒドロキシ,アルコキシ,アルキルチオ,アルキルスルフィニル,アルキルスルホニル,アシルオキシ,アリールオキシ,ヘテロアリールオキシ,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によって一もしくは二置換されていてもよいアミノ,アミジノ,アルキル,アリール,ヘテロアリールもしくはヘ
テロシクリル基で場合によって置換されていてもよい尿素,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によってN−一もしくはN,N−二置換されていてもよいアミノスルホニル,アルキルスルホニルアミノ,アリールスルホニルアミノ,ヘテロアリールスルホニルアミノ,アルキルカルボニルアミノ,アリールカルボニルアミノ,ヘテロアリールカルボニルアミノなどという基または置換基で独立に置換されている,先に定義した直鎖アルキル,分岐アルキルまたはシクロアルキル基である。
「アルケニル」は単独または組合せて,2〜20個の炭素原子,好ましくは2〜17個,より好ましくは2〜10個,いっそうより好ましくは2〜8個,最も好ましくは2〜4個を含み,少なくとも1個,好ましくは1〜3個,より好ましくは1〜2個,最も好ましくは1個の炭素対炭素二重結合を含む,直鎖,分岐または環状炭化水素を意味する。シクロアルキル基の場合には,2個以上の炭素対炭素二重結合の結合は,環に芳香属性を与えないようなものである。炭素対炭素二重結合は,シクロプロピルを例外としてシクロアルキル部分内か,直鎖または分岐部分内のいずれかに含まれ得る。アルケニル基の例としては,エテニル,プロペニル,イソプロペニル,ブテニル,シクロヘキセニル,シクロヘキセニルアルキルなどが挙げられる。置換アルケニルとは,いずれかの利用可能な点で結合されて安定な化合物を生じる,1〜3個の,ハロ,ヒドロキシ,アルコキシ,アルキルチオ,アルキルスルフィニル,アルキルスルホニル,アシルオキシ,アリールオキシ,ヘテロアリールオキシ,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によって一もしくは二置換されていてもよいアミノ,アミジノ,アルキル,アリール,ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル基で場合によって置換されていてもよい尿素,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によってN−一もしくはN,N−二置換されていてもよいアミノスルホニル,アルキルスルホニルアミノ,アリールスルホニルアミノ,ヘテロアリールスルホニルアミノ,アルキルカルボニルアミノ,アリールカルボニルアミノ,ヘテロアリールカルボニルアミノ,カルボキシ,アルコキシカルボニル,アリールオキシカルボニル,ヘテロアリールオキシカルボニルなどという基または置換基で独立に置換された,先に定義した直鎖アルケニル,分岐アルケニルまたはシクロアルケニル基である。
「アルキニル」は単独または組合せて,2〜20個,好ましくは2〜17個,より好ましくは2〜10個,いっそうより好ましくは2〜8個,最も好ましくは2〜4個の炭素原子を含み,少なくとも1個,好ましくは1個の炭素対炭素三重結合を含む直鎖または分岐炭化水素を意味する。アルキニル基の例としては,エチニル,プロピニル,ブチニルなどが挙げられる。置換アルキニルとは,いずれかの利用可能な点で結合されて安定な化合物を生じる,1〜3個の,ハロ,ヒドロキシ,アルコキシ,アルキルチオ,アルキルスルフィニル,アルキルスルホニル,アシルオキシ,アリールオキシ,ヘテロアリールオキシ,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によって一もしくは二置換されていてもよいアミノ,アミジノ,アルキル,アリール,ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル基で場合によって置換されていてもよい尿素,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によってN−一もしくはN,N−二置換されていてもよいアミノスルホニル,アルキルスルホニルアミノ,アリールスルホニルアミノ,ヘテロアリールスルホニルアミノ,アルキルカルボニルアミノ,アリールカルボニルアミノ,ヘテロアリールカルボニルアミノなどという基または置換基で独立に置換されている,先に定義した直鎖アルキニルまたは分岐アルケニルを指す。
「アルキルアルケニル」とは,基−R−CR’=CR’’’R’’’’(ここで,Rは,以下に定義されるような,低級アルキルまたは置換低級アルキルであり,R’,R’’’,R’’’’は独立に,水素,ハロゲン,低級アルキル,置換低級アルキル,アシル,アリール,置換アリール,ヘタリールまたは置換ヘタリールである)を指す。
「アルキルアルキニル」とは,基−RCCR’(ここで,Rは,以下に定義されるよう
な,低級アルキルまたは置換低級アルキルであり,R’は水素,低級アルキル,置換低級アルキル,アシル,アリール,置換アリール,ヘタリールまたは置換ヘタリールである)を指す。
「アルコキシ」とは,基−OR(ここで,Rは,定義されるような,低級アルキル,置換低級アルキル,アシル,アリール,置換アリール,アラルキル,置換アラルキル,ヘテロアルキル,ヘテロアリールアルキル,シクロアルキル,置換シクロアルキル,シクロへテロアルキルまたは置換シクロへテロアルキルである)を表す。
「アルキルチオ」または「チオアルコキシ」とは,基−SR,−S(O)n=12−R(ここで,Rは,本明細書に定義されるような,低級アルキル,置換低級アルキル,アリール,置換アリール,アラルキルまたは置換アラルキルである)を表す。
「アシル」とは,基−C(O)R(ここで,Rは,本明細書に定義されるような,水素,低級アルキル,置換低級アルキル,アリール,置換アリールなどである)を表す。
「アリールオキシ」とは,−OAr(ここで,Arは,本明細書に定義されるような,アリール,置換アリール,ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリール基である)を表す。
「アミノ」または置換アミンとは,基NRR’(ここで,RおよびR’は独立に,本明細書に定義されるような,水素,低級アルキル,置換低級アルキル,アリール,置換アリール,ヘタリールまたは置換ヘテロアリール,アシルまたはスルホニルであり得る)を表す。
「アミド」とは,基−C(O)NRR’(ここで,RおよびR’は独立に,本明細書に定義されるような,水素,低級アルキル,置換低級アルキル,アリール,置換アリール,ヘタリール,置換ヘタリールであり得る)を表す。
「カルボキシル」とは,基−C(O)OR(ここで,Rは,本明細書に定義されるような,水素,低級アルキル,置換低級アルキル,アリール,置換アリール,ヘタリールおよび置換ヘタリールである)を表す。
「アリール」とは単独または組合せて,好ましくは5〜7員の,より好ましくは5〜6員のシクロアルキルと場合によって炭素環式融合していてもよく,および/または1〜3個の,ハロ,ヒドロキシ,アルコキシ,アルキルチオ,アルキルスルフィニル,アルキルスルホニル,アシルオキシ,アリールオキシ,ヘテロアリールオキシ,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によって一もしくは二置換されていてもよいアミノ,アミジノ,アルキル,アリール,ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル基で場合によって置換されていてもよい尿素,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によってN−一もしくはN,N−二置換されていてもよいアミノスルホニル,アルキルスルホニルアミノ,アリールスルホニルアミノ,ヘテロアリールスルホニルアミノ,アルキルカルボニルアミノ,アリールカルボニルアミノ,ヘテロアリールカルボニルアミノなどという基または置換基で場合によって置換されていてもよいフェニルまたはナフチルを意味する。
「置換アリール」とは,1個以上の官能基,例えばハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,ヘテロアリール,置換ヘテロアリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで場合によって置換されていてもよいアリールを指す。
「複素環」とは,単環を有し(例えば,モルホリノ,ピリジルまたはフリル)または複数の縮合環を有し(例えば,ナフトピリジル,キノキサリル,キノリニル,インドリジニルまたはベンゾ[b]チエニル),環内に,場合によって非置換であってもよいし,例えば,ハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで置換されていてもよい,少なくとも1個のヘテロ原子,例えば,N,OまたはSを有する飽和,不飽和または芳香族炭素環式基を指す。
「ヘテロアリール」とは単独または組合せて,1個以上,好ましくは1〜4個,より好ましくは1〜3個,いっそうより好ましくは1〜2個の,群O,SおよびNから独立に選択され,1〜3個の,ハロ,ヒドロキシ,アルコキシ,アルキルチオ,アルキルスルフィニル,アルキルスルホニル,アシルオキシ,アリールオキシ,ヘテロアリールオキシ,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によって一もしくは二置換されていてもよいアミノ,アミジノ,アルキル,アリール,ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル基で場合によって置換されていてもよい尿素,アルキル,アリールもしくはヘテロアリール基で場合によってN−一もしくはN,N−二置換されていてもよいアミノスルホニル,アルキルスルホニルアミノ,アリールスルホニルアミノ,ヘテロアリールスルホニルアミノ,アルキルカルボニルアミノ,アリールカルボニルアミノ,ヘテロアリールカルボニルアミノなどという基または置換基で場合によって置換されていてもよいヘテロ原子を含む,5または6個の環原子を含む単環式芳香族環構造,または8〜10個の原子を有する二環式芳香族基を意味する。ヘテロアリールとはまた,酸化SまたはN,例えばスルフィニル,スルホニルおよび第三環窒素のN−オキシドを含むよう意図される。炭素または窒素原子は,安定な芳香環が維持されるようなヘテロアリール環構造の結合点である。ヘテロアリール基の例としては,ピリジニル,ピリダジニル,ピラジニル,キナゾリニル,プリニル,ヨードリル,キノリニル,ピリミジニル,ピロリル,オキサゾリル,チアゾリル,チエニル,イソキサゾリル,オキサチアジアゾリル,イソチアゾリル,テトラゾリル,イミダゾリル,トリアジニル,フラニル,ベンゾフリル,インドリルなどがある。置換ヘテロアリールは,利用可能な炭素または窒素で結合されて安定な化合物を生じる置換基を含む。
「ヘテロシクリル」とは単独または組合せて,環の1〜3個の炭素原子がO,SまたはNというヘテロ原子で置換されており,場合によってベンゾ融合しているか,5〜6員の融合ヘテロアリールであってもよく,かつ/または場合によってシクロアルキルの場合のように置換されていてもよい,5〜10個の原子を有する,非芳香族シクロアルキル基を意味する。ヘテロシクリルはまた,酸化SまたはN,例えばスルフィニル,スルホニルおよび第三環窒素のN−オキシドを含むよう意図される。結合点は炭素または窒素原子においてである。ヘテロシクリル基の例としては,テトラヒドロフラニル,ジヒドロピリジニル,ピペリジニル,ピロリジニル,ピペラジニル,ジヒドロベンゾフリル,ジヒドロインドリルなどがある。置換ヘテロシクリルは,利用可能な炭素または窒素で結合されて安定な化合物を生じている置換窒素を含む。
「置換ヘテロアリール」とは,1種以上の官能基,例えば,ハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで場合によって一または多置換されていてもよい複素環を指す。
「アラルキル」とは,基−R−Ar−(ここで,Arはアリール基であり,Rは低級アルキルまたは置換低級アルキル基である)を指す。アリール基は場合によって非置換であ
ってもよいし,例えば,ハロゲン,低級アルキル,アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで置換されていてもよい。
「ヘテロアルキル」とは,基−R−Het(ここで,Hetは複素環基であり,Rは低級アルキル基である)を指す。ヘテロアルキル基は場合によって非置換であってもよいし,例えば,ハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで置換されていてもよい。
「ヘテロアリールアルキル」とは,基−R−HetAr−(ここで,HetArはヘテロアリール基であり,Rは低級アルキルまたは置換低級アルキルである)を指す。ヘテロアリールアルキル基は場合によって非置換であってもよいし,例えば,ハロゲン,低級アルキル,置換低級アルキル,アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで置換されていてもよい。
「シクロアルキル」とは,3〜15個の炭素原子を含む,二価の環式または多環式アルキル基を指す。
「置換シクロアルキル」とは,例えば,ハロゲン,低級アルキル,置換低級アルキル,アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどを含む1種以上の置換基を含むシクロアルキル基を指す。
「シクロへテロアルキル」とは,環炭素原子の1個以上がヘテロ原子(例えば,N,O,SまたはP)で置換されているシクロアルキル基を指す。
「置換シクロへテロアルキル」とは,1以上の置換基,例えば,ハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどを含む,本明細書に定義されるようなシクロへテロアルキル基を指す。
「アルキルシクロアルキル」とは,基−R−シクロアルキル(ここで,シクロアルキルはシクロアルキル基であり,Rは低級アルキルまたは置換低級アルキルである)を意味する。シクロアルキル基は場合によって非置換であってもよいし,例えば,ハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アセチレン,アミノ,アミド,カルボキシル,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘタリール,置換ヘタリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで置換されていてもよい。
「アルキルシクロヘテロアルキル」とは,基−R−シクロヘテロアルキル(ここで,Rは低級アルキルまたは置換低級アルキルである)を意味する。シクロヘテロアルキル基は場合によって,非置換であってもよいし,例えば,ハロゲン,低級アルキル,低級アルコキシ,アルキルチオ,アミノ,アミド,カルボキシル,アセチレン,ヒドロキシル,アリール,アリールオキシ,複素環,置換複素環,ヘテロアリール,置換ヘテロアリール,ニトロ,シアノ,チオール,スルファミドなどで置換されていてもよい。
式I中の置換基についての先の記載は,指定の置換基,R1,R2,R3,R4およびR5の各組合せについての記載を含む。
式Iの化合物が関係する特定の実施形態では,R1およびR5は水素である。特定の実施形態では,式Iの化合物はR2に水素でない置換,R3に水素でない置換,R4に水素でない置換,R2とR3で水素でない置換,R2とR4で水素でない置換を有する。ある種の実施形態では,列挙した置換は置換のみであり;列挙した置換はHとしてのR1とR5と組合されており;列挙した置換は式I中に示されるもう1つの置換位置での置換と組合されている。
特定の実施形態では,式Iの化合物は以下の準一般構造のうちの1つによる構造を有する。
前記の化合物では,R2およびR4のアルキル,ヘテロアリールおよびアリール基は独立に非置換であってもよいし,置換されていてもよい。R2およびR4に置換を含む前記化合物のさらなる実施形態では,R4のアルキル,アリールまたはヘテロアリール基は窒素を介して結合しているか,例えば,−NH−アリール,−NH−ヘテロアリールもしくは−NH−アルキル,または酸素を介して結合している,例えば,−O−アリール,−O−ヘテロアリールもしくは−O−アルキル。
さらに,R2およびR4置換基を含む化合物のある種の実施形態では,R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換アリールまたはヘテロアリールであってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって,二環式構造に直接結合しているか,二環式構造に窒素または酸素によって結合している,置換アリールまたはヘテロアリールであってもよく;さらなる実施形態では,R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換6員炭素環式または複素環式基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換6員炭素環式または複素環式基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換6員炭素環式ま
たは複素環式基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換5員炭素環式または複素環式基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換5員炭素環式または複素環式基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換6員炭素環式または複素環式基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換5員炭素環式または複素環式基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換5員炭素環式または複素環式基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換フェニル基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換6員炭素環式または複素環式基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換フェニル基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換5員炭素環式または複素環式基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換5員炭素環式または複素環式基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換フェニル基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換6員炭素環式または複素環式基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換フェニル基であってもよく;R2のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換フェニル基であってもよく,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は場合によって置換フェニル基であってもよい。さらなる実施形態では,R2のアリールまたはヘテロアリール基は,オルトおよび/またはメタ位で置換されている(二置換されている場合は置換は互いにパラであることが好ましい)6員炭素環式または複素環式基であり,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位で置換されている6員炭素環式または複素環式基であり;R2のアリールまたはヘテロアリール基は,一または二置換5員炭素環式または複素環式基であり,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位で置換されている6員炭素環式または複素環式基であり;R2のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位でヒドロキシルまたは−NH−SO2−アルキル(例えば,−NH−SO2−メチル)で置換されている6員炭素環式または複素環式基であり,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位で置換されている6員炭素環式または複素環式基であり;R2のアリールまたはヘテロアリール基は,オルト位でハロ(すなわち,F,Cl,Br,I)で,およびメタ位でヒドロキシルまたは−NH−SO2−アルキル(例えば,−NH−SO2−メチル)で置換されており,置換が互いにパラである6員炭素環式または複素環式基であり,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位で置換されている6員炭素環式または複素環式基であり;R2のアリールまたはヘテロアリール基は,オルトおよびメタ位で置換されている一または二置換(二置換である場合は,置換は互いにパラであることが好ましい)6員炭素環式または複素環式基であり,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位で−N−C(O)−アルキルで置換されている6員炭素環式または複素環式基であり;R2のアリールまたはヘテロアリール基は,オルトおよびメタ位で置換されている一または二置換(二置換である場合は,置換は互いにパラであることが好ましい)6員炭素環式または複素環式基であり,かつ,R4のアリールまたはヘテロアリール基は,メタ位で−N−C(O)−アルキル,−C=C−カルボキシルまたは−C−C−カルボキシルで置換されている6員炭素環式または複素環式基である。さらなる実施形態では,この段落に記載したR4の選択の各々に対し,R2は−C(O)−(6員炭素環式または複素環式基)(ここで,炭素環式または複素環式基はオルトおよびメタ位で置換されており,これらの置換は互いにパラである)であり;R2は−C(O)−フェニル(ここで,フェニルはオルトおよびメタ位で置換されており,これらの置換は互いにパラである)であり;R2は−C(O)−フェニル(ここで,フェニルはオルト位でハロ(好ましくはF)で,およびメタ位でヒドロキシルまたは−NH−SO2−アルキル(例えば,−NH−SO2−メチル)で置換されており,これらの置換は互いにパラである)であり;R2は−C(O)−フェニル(ここで,フェニルはメタ位で置換されている)であり;R2は−C(O)−フェニル(ここで,フェニルはメタ位でヒドロキシルまたは−NH−SO2−アルキ
ル(例えば,−NH−SO2−メチル)で置換されている)である。さらなる特定の実施形態では,この段落に記載したR4のアリールまたはヘテロアリール基の選択の各々は,この段落に記載したR2の選択の各々に対し,窒素によって二環式構造に結合しており;この段落に記載したR4のアリールまたはヘテロアリール基の選択の各々は,この段落に記載したR2の選択の各々に対し,酸素によって二環式構造に結合しており;R4は−NH−フェニルであり;R4は−NH−(メタ置換フェニル)である。
さらなる実施形態では,R4は−C(O)−NR1617であり,かつ,R2は前の段落に記載した選択の各々であり;R4は−SO2−NR1617であり,かつ,R2は前の段落に記載した選択の各々である。
前記の化合物では,R2およびR3のアルキル,ヘテロアリールおよびアリール基は独立に非置換であってもよいし,置換されていてもよい。R2およびR3に置換を有する前記化合物のさらなる実施形態では,R3のアルキル,アリールまたはヘテロアリール基は窒素によって結合している,例えば−NH−アリール,−NH−ヘテロアリールまたは−NH−アルキル。
2およびR3置換基について記載した前記で示した化合物中のR2の選択の各々に対し,R2は,R2およびR4置換基を有する化合物の前記のR2の選択の各々であり,R3は場合によって置換されていてもよいアリール,ヘテロアリール,−NH−アリールまたは−NH−ヘテロアリールであり;アリールまたはヘテロアリールは一置換されており;アリールまたはヘテロアリールは二置換されており;アリールまたはヘテロアリールはハロで置換されており;アリールは場合によって置換フェニルであってもよく;フェニルはハロで置換されており;フェニルは双方ともメタ位で二置換されており;ハロはフルオロである。
これらに加え,R4がCN,CO2R,アリールおよびヘテロアリールである化合物がある。
3=アリール,ヘテロアリール,NHR,エーテル,カルボキサミド,エステル
2=ベンジル,ベンゾイル,チオエーテル,スルホン,スルホキシド,アミン,カルボキサミド,エステル,エーテル
本発明のさらなる態様は,治療上有効量の式Iの化合物(または一般式のいずれか内の化合物の下位群内の化合物)と,少なくとも1種の製薬上許容される担体または賦形剤とを含む薬剤製剤に関する。本組成物は複数の異なる製薬上活性な化合物を含み得る。
本発明のさらなる態様は,治療上有効量の式Iの化合物(または一般式のいずれか内の化合物の下位群内の化合物)と,少なくとも1種の製薬上許容される担体または賦形剤とを含む薬剤製剤に関する。
特定の実施形態では,本組成物は,複数の式Iの化合物であり得る複数の異なる製薬上活性な化合物を含み,また1種以上の式Iの化合物と組合せてその他の化合物も含み得る。
したがって,第1の態様では,本発明は本明細書に記載されるような式Iの新規化合物に関する。
式Iの化合物に関する特定の実施形態では,化合物は1以上の(参照文献のすべておよび参照文献のうち2以上の各組合せを含む)WO03028724,WO9822457,EP00465970,WO00162255,WO09504742,WO00124236,WO00029411,WO09504742,WO09414808,WO09507910,WO00160822,WO00200657,WO00129036,WO09951231,WO09951232,WO09951233,WO09951595,WO09951596,WO09951234,GB02299581,US5,712,285,GB02292145,WO09420497,GB02292143,GB02298198,WO09420459,US5,576,319,WO09605200,WO09528387,WO09806433,JP15073357,JP10130269,WO09847899,EP00870768,WO00798399,WO09600226,WO09900386,WO09746558,WO00009162,WO02083175,WO03028724,WO09611929,WO02085896およびWO00064898に記載されている化合物とは異なる。
本発明の関連態様は,式Iの化合物と少なくとも1種の製薬上許容される担体,賦形剤または希釈剤とを含む薬剤組成物に関する。本組成物は,複数の異なる製薬上活性な化合物を含み得る。
もう1つの関連態様では,式Iの化合物は,Ret媒介性疾病または状態,例えば癌を治療するための医薬の調製に使用できる。
もう1つの態様では,本発明は,哺乳類に治療上有効量の式Iの化合物,このような化合物のプロドラッグまたはこのような化合物もしくはプロドラッグの製薬上許容される塩を投与することによって,哺乳類において疾病または状態を治療または予防する方法に関する。本化合物は単独であってもよく,薬剤組成物の一部であってもよい。
疾病または状態の治療または予防に関する態様および実施形態では,疾病または状態は,多発性内分泌腺種症IIA型(MEN2A),多発性内分泌腺種症,IIB型(MEN2B),ヒルシュスプルング病(HSCR:先天性巨大結腸),または甲状腺髄様癌(MTC),家族性甲状腺髄様癌(FMTC)および甲状腺乳頭癌(PTC)である。
Retに対して活性な式Iの化合物を同定することによって,Retに対して活性な複数の式Iの試験化合物のいずれかが,Retに対して活性な参照化合物と比較して1以上の所望の薬理学的特性の改善を提供するかどうかを調べ,あれば所望の薬理学的特性の改善を有する化合物を選択し,それによって改良調節剤を提供することによって,Retに対して活性なさらなる化合物,例えば,改良調節剤を同定または開発する方法も提供する。
調節剤開発という態様の特定の実施形態では,所望の薬理学的特性は2時間より長いか4時間より長いか8時間より長い血清半減期,水溶性,10%より高い経口生物学的利用能,20%より高い経口生物学的利用能である。
調節剤開発という態様の特定の実施形態ではまた,参照化合物は式Iの化合物である。このプロセスは複数回,すなわち,複数ラウンドの誘導体の調製および/またはさらなる関連化合物の選択およびこのような関連化合物のさらなる誘導体の評価を,例えば,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10回またはそれよい多くのラウンドで反復してもよい。
さらなる態様では,Retに関する構造情報を,例えば,式Iの化合物または式Iの分子スキャフォールドもしくはスキャフォールドコアと組合せて利用する。さらに,1種以上のRet代替物,例えば本明細書に記載される代替物に関する構造情報を使用できる。
本発明はまた,Retに結合するリガンドを開発する方法を提供し,本方法は分子スキャフォールドとして,キナーゼの結合部位と結合する1種以上の化合物を同定すること,キナーゼまたは代替物との共結晶中での少なくとも1種の分子スキャフォールドの配向を決定すること,修飾されている場合には,分子スキャフォールドとキナーゼ間の結合親和性または結合特異性またはその双方を変更する,1種以上の分子スキャフォールドの化学構造を同定すること,および分子スキャフォールドの1種以上の化学構造が,変更された結合親和性または結合特異性またはその双方でキナーゼと結合するリガンドを提供するよう修飾されているリガンドを合成することを含む。このようなスキャフォールドは例えば式Iの化合物であり得るか,式Iのコアを含み得る。
用語「Ret」および「c−Ret」とは,同じ長さのセグメントにわたる最大アラインメントについて,ATP結合部位を含むアミノ酸残基と90%より高いアミノ酸配列同一性を有する部分を含むか,天然Retリガンドに対する結合を保持する天然Retの少なくとも200個の連続するアミノ酸と90%より高いアミノ酸配列同一性を有する部分を含む,酵素的に活性なキナーゼを意味する。配列同一性は少なくとも95,97,98,99またはさらに100%であることが好ましい。配列同一性の指定のレベルは,少なくとも300個の連続するアミノ酸残基の長さの配列にわたってであることが好ましい。
用語「Retキナーゼドメイン」とは,Ret中のキナーゼ触媒領域を含む,長さの短いRet(すなわち,全長Retよりも少なくとも100アミノ酸短い)を指す。本発明において使用するには,キナーゼドメインがキナーゼ活性を保持していることが極めて好ましく,天然Retと比較して少なくとも50%レベルのキナーゼ活性が好ましく,天然活性の少なくとも60,70,80,90または100%がより好ましい。
本明細書において,用語「リガンド」および「調節剤」とは,同等に用いられて,標的生体分子,例えばキナーゼまたはキナーゼなどの酵素の活性を調節する化合物を指す。一般に,リガンドまたは調節剤は小分子であり,「小分子」とは,分子量1500ダルトン以下,好ましくは1000ダルトン以下,800ダルトン以下,または600ダルトン以下の化合物を指す。したがって,「改良されたリガンド」とは,参照化合物より良好な薬理学的および/または薬物動態学的特性を有するものであり,「良好な」とは特定の生物系または治療的使用に関する人物によって定義され得る。スキャフォールドからのリガンドの開発という点では,リガンドはスキャフォールドの誘導体である。
結合化合物,分子スキャフォールドおよびリガンドの関連では,用語「誘導体」または「誘導化合物」とは,親または参照化合物と共通のコア化学構造を含むが,少なくとも1つの構造上の相違を有することによって,例えば1個以上の置換基が付加されている,かつ/または除去されている,かつ/または置換されていることで,ならびに/あるいは1個以上の原子が異なる原子で置換されていることで異なる化学構造を有する化合物を指す。明確に別に指示しない限りは,用語「誘導体」は,親化合物を出発物質として,または中間体として用いて合成された誘導体を意味しないが,誘導体が親から合成され得る場合もある。
したがって,用語「親化合物」とは,誘導化合物に継続される構造上の特徴を有する,別の化合物にとっての参照化合物を指す。必ずしもそうではないが,親化合物が誘導体よりも単純な化学構造を有することが多い。
「化学構造」または「化学基礎構造」とは,分子の一部を構成する,いずれかの定義可能な原子または原子の群を意味する。通常,スキャフォールドまたはリガンドの化学基礎構造は,スキャフォールドまたはリガンドの標的分子との結合において役割を有し得るか,スキャフォールドまたはリガンドの三次元形状,帯電および/または配座特性に影響を及ぼし得る。
標的と,可能性ある結合化合物間の相互作用に関連して,用語「結合する」とは,可能性ある結合化合物が,標的と,一般的なタンパク質との会合(すなわち,非特異的結合)と比較して統計上有意な程度に会合することを示す。したがって,用語「結合化合物」とは,標的分子と統計上有意な会合を有する化合物を指す。結合化合物は指定の標的と1mM以下の解離定数(kd)で相互作用することが好ましい。結合化合物は,本明細書に記載されるような「低い親和性」,「極めて低い親和性」,「極端に低い親和性」,「中程度の親和性」,「中程度に高い親和性」または「高い親和性」で結合し得る。
標的と結合する化合物に関連して,用語「より高い親和性」とは,化合物が参照化合物よりも,または参照条件における,すなわち,より低い解離定数での同一化合物よりも強固に結合することを示す。特定の実施形態では,より高い親和性とは,少なくとも2,3,4,5,8,10,50,100,200,400,500,1000または10,000倍高い親和性である。
また,生体分子標的と結合する化合物に関連して,用語「より高い特異性」とは,化合物が,関連結合条件下で存在し得る別の生体分子または複数の生体分子とよりも,このようなその他の生体分子との結合によって指定の標的との結合とは異なる生物活性が生じる場合に,指定の標的とより高い程度で結合することを示す。通常,特異性はその他の生体分子の限定されたセット,例えば,Retの場合には,その他のチロシンキナーゼまたはその他の種類の酵素でさえも参照する。特定の実施形態では,より高い特異性とは,少なくとも2,3,4,5,8,10,50,100,200,400,500または1000倍高い特異性である。
化合物の標的との結合に関連して,用語「相互作用する」とは,結合している化合物から特定のアミノ酸残基までの距離が5.0オングストローム以下となることを示す。特定の実施形態では,化合物から特定のアミノ酸残基までの距離は4.5オングストローム以下,4.0オングストローム以下,または3.5オングストローム以下である。このような距離は,例えば,共結晶学を用いて求めることができ,または活性部位における化合物のコンピュータフィッティングを用いて推定することができる。
Retポリペプチド中の特定のアミノ酸残基を参照し,NCBI NP_065681.1(NM_0020630.2としてcDNA配列)に提供される番号付けによって残基数を定める。
FGFR1中の特定のアミノ酸残基はNCBI NP_000595.1(NM_000604.2としてcDNA配列)を参照する。
「Ret代替物1」とは,2つの表面に曝露されるシステイン残基を突然変異させ(C488およびC584),配列アラインメントに基づくRet対応物の活性部位残基を改変する6個の置換を含むFGFR断片A458〜E765を指す。置換はP483T,C488E,N568S,E571G,C584SおよびA640Sである。「Ret代替物2」は,さらなる置換M535Lを有する以外はRet代替物1と同様である。
関連態様では,本発明はRetに特異的なリガンドを開発する方法を提供し,この方法は複数のキナーゼと結合する化合物の誘導体が,その特定のキナーゼに対してその他のキナーゼに関する親化合物よりも高い特異性を有するかどうかを調べることを含む。
本明細書において,結合化合物またはリガンドに関連して使用されるとき,用語「Retキナーゼに特異的」,「Retに特異的」および同様の意味の用語は,特定の化合物がRetと,特定の生物中に存在し得るその他のキナーゼとよりも統計上より高い程度に結合することを意味する。また,結合以外の生物活性が示される場合には,用語「Retに特異的」とは,特定の化合物が他のチロシンキナーゼとよりもRetと結合することと関連して,高い生物活性を有することを示す。特異性はまた,生物に由来して存在し得るその他の生体分子(チロシンキナーゼに限定しない)に関しても同様であることが好ましい。
もう1つの態様では,本発明は,Retと結合する,改良リガンドを得る方法を提供し,この方法はその特定のキナーゼと結合する化合物を同定すること,その化合物が1個以上の保存された活性部位残基と相互作用するかどうかを調べること,およびその化合物の誘導体がそのキナーゼと,親の結合化合物よりも高い親和性でまたはより高い特異性でまたはその双方で結合するかどうかを調べることを含む。親化合物よりも高い親和性または高い特異性または双方での結合は,誘導体が改良リガンドであることを示す。また,このプロセスを,選択および誘導体化という連続ラウンドで,かつ/または複数の親化合物を用いて実施し,リガンド特性の改良された化合物または複数の化合物を提供することができる。同様に,誘導化合物を調べ,そのキナーゼに対して高選択性を示すよう,または標的の特定のセットに対して,例えばRetを含むキナーゼのサブセットに対して交差反応性を示すよう選択することができる。特定の実施形態では,既知のRet阻害剤を使用でき,より高い親和性および/またはより高い特異性を有する誘導体を開発することができ,RetまたはRet代替物構造情報を用いて,その他のチロシンキナーゼと比べ,Retに対してより高い特異性が開発されることが好ましい。
「分子スキャフォールド」または「スキャフォールド」とは,共通構造要素を含む複数の分子を形成するよう,1以上のさらなる化学部分を共有結合,修飾,排除させることができる,簡単な標的結合分子を意味する。このような部分としては,それだけには限らないが,ハロゲン原子,ヒドロキシル基,メチル基,ニトロ基,カルボキシル基またはそれだけには限らないが,本願に列挙されたものを含むいずれかのその他の種類の分子基が挙げられる。分子スキャフォールドは少なくとも1種の標的分子と,好ましくはタンパク質ファミリー中の複数の分子と結合し,標的分子は酵素,受容体またはその他のタンパク質であることが好ましい。スキャフォールドの好ましい特性としては,スキャフォールド上の1以上の置換基が標的分子結合部位中の結合ポケット中に位置するような標的分子結合部位での結合;特に合成反応によって化学修飾でき,その結果コンビナトリアルライブラリーを容易に構築できる,化学的に扱いやすい構造を有すること;スキャフォールドとタンパク質結合部位との結合を干渉しない部分を結合でき,その結果スキャフォールドまたはライブラリーメンバーを,リガンドを形成し,さらなる所望の特性を達成するよう修飾できる,例えばリガンドが細胞および/または指定の器官に活性に輸送されるようにできる,またはさらなる分析のためにリガンドがクロマトグラフィーカラムに結合されるようにできる,化学位置を有することを挙げることができる。したがって,分子スキャフォールドは,結合親和性および/または特異性,またはその他の薬理学的特性を改良するための修飾に先立って同定された標的結合分子である。
用語「スキャフォールドコア」とは,種々の置換基を結合できる,分子スキャフォールドのコア構造を指す。したがって,特定の化学的分類のいくつかのスキャフォールド分子については,スキャフォールドコアはすべてのスキャフォールド分子に共通している。多
くの場合,スキャフォールドコアは1以上の環構造からなるか,1以上の環構造を含む。
「結合部位」とは,リガンドが非共有結合できる,標的分子の領域を意味する。結合部位は特定の形を具現しており,結合部位内に存在する複数の結合ポケットを含むことが多い。特定の形は分子の分類,例えば分子ファミリー内で保存されていることが多い。ある分類内の結合部位はまた,保存された構造,例えば,化学部分,結合ポケットの存在および/または結合部位または結合部位のある部分での帯電などを含む場合があり,そのすべてが結合部位の形に影響を及ぼし得る。
「結合ポケット」とは,結合部位内の具体的な容積を意味する。結合ポケットは,しばしば結合部位中の特定の形,窪み,または空洞であり得る。結合ポケットは,別の分子の非共有結合において重要である,特定の化学基または構造,例えば分子間のイオン性,水素結合またはファンデルワールス相互作用に寄与する基などを含み得る。
標的分子に結合している結合化合物に関連して「配向」とは,結合ポケットおよび/または少なくとも部分的に結合ポケットを決定づける標的分子の原子に対する,結合化合物(少なくともその構成原子のいくつかを参照して定義できる)の空間的関係を意味する。
本発明における標的分子の関連では,用語「結晶」とは,X線結晶学にとって適した種類の標的分子の規則正しい集合を指す。すなわち,X線のビームで照射されると,集合からX線回析パターンが生じる。したがって,結晶は,回析パターンを生じない標的分子の集塊またはその他の複合体とは区別される。
「共結晶」とは,標的分子と非共有結合しており,X線またはタンパク質結晶学による解析にとって適当な結晶形で存在している,化合物,分子スキャフォールドまたはリガンドの複合体を意味する。好ましい実施形態では,標的分子−リガンド複合体はタンパク質−リガンド複合体であり得る。
語句「結合親和性または結合特異性を変更する」とはそれぞれ,第1の化合物のもう1つのものに対する結合定数を変化させること,または第1の化合物の第2の化合物に対する結合レベルを,第1の化合物の第3の化合物に対する結合レベルと比較して変化させることを指す。例えば,特定のタンパク質に対する化合物の結合特異性は,その特定のタンパク質との結合の相対レベルが,化合物の無関係のタンパク質との結合と比較して増加する場合に増加する。
本明細書において試験化合物,結合化合物および調節剤(リガンド)に関連して,用語「合成すること」および同様の用語は,1種以上の前駆体物質からの化学合成を意味する。
語句「分子スキャフォールドの化学構造が修飾される」とは,誘導分子が,分子スキャフォールドのものとは異なるが依然として共通コア化学構造上の特徴を含む化学構造を有することを意味する。この語句は,誘導体の合成の前駆体として分子スキャフォールドが用いられることを必ずしも意味するわけではない。
「アッセイすること」とは,実験条件の作製および実験条件の特定の結果に関するデータの収集を意味する。例えば,酵素は,検出可能な基質に対して作用するその能力に基づいてアッセイできる。化合物またはリガンドは,特定の標的分子または複数の分子と結合するその能力に基づいてアッセイできる。
化合物の「セット」とは,化合物を集めたもの意味する。化合物は構造上関連があるも
のでも,ないものでもあり得る。
本明細書において,用語「アザインドールスキャフォールド」または「アザインドールスキャフォールド構造」とは,式Iの化合物または2つの置換基しか有さないこのような化合物の構造を指す。同様に,用語「アザインドールコア」とは,R基を除いて式Iとして先に示した構造を指す。
もう1つの態様では,RetまたはRet代替物に関する構造情報も,RetまたはRet代替物構造の電子表示から相同モデルを作製することによって,もう1つのチロシンキナーゼの構造の決定を補助するために使用できる。
通常,このような相同モデルの作製は,既知構造を有する既知チロシンキナーゼ,例えばRetと,注目する他のチロシンキナーゼ間で保存されたアミノ酸残基を同定すること,既知構造中の複数の保存されたアミノ酸の原子座標を,その他のチロシンキナーゼの対応するアミノ酸に移してそのチロシンキナーゼの概構造を提供すること,およびその他のキナーゼ中の残りのアミノ酸残基の構造の電子表示を用いてその他のチロシンキナーゼの残り部分を表す構造を構築することを含む。詳しくは,Ret座標については表2から使用でき,Ret代替物,座標については,表3,4または5から使用できる。結合部位中の保存された残基を使用できる。
キナーゼ構造のその他のタンパク質の開発を補助するために,相同モデルも利用できる,すなわち,保存された残基の結合を補助するために,および/またはポリペプチドの末端部分の座標をより良好に特定するために,1種以上のキナーゼの結晶から得た低分解能X線回析データとフィティングすることができる。
用いるRetまたはRet代替物構造情報は,全長野生型,天然変異体(例えば,対立遺伝子多型およびスプライスバリアント),野生型または天然変異体の末端切断型変異体および全長もしくは末端切断型野生型もしくは天然変異体の突然変異体(1以上の部位で突然変異している場合もある)をはじめとする種々の異なる変異体のためのものであり得る。例えば,Ret構造により近い代替物構造を提供するには,対応する部位,例えば結合部位残基について,FGFR1中の残基をRet中の残基に変更するよう複数の突然変異を含む突然変異FGFR1を使用できる。
もう1つの態様では,本発明はRet(例えば,Retキナーゼドメイン)または例えばFGFR1から作製された長さの短い代替物,例えばキナーゼドメイン,例えば表3,4または5に記載される原子座標を有するものであり得る,Ret代替物の結晶形を提供する。結晶形は1個以上の重金属原子,例えばX線結晶学に有用な原子を含み得る。結晶形はまた,共結晶中の結合化合物,例えばキナーゼ中の1以上の保存された活性部位残基と,またはそのような残基のいずれか2つ,いずれか3つ,いずれか4つ,いずれか5つ,いずれか6つと相互作用し,例えば,既知Retまたはその他のキナーゼ阻害剤であり得る結合化合物を含み得る。このようなRetまたはRet代替物結晶は種々の環境中,例えばX線結晶学のためにマウントされた結晶学プレート中,および/またはX線ビーム中にあり得る。Ret代替物は種々の形のもの,例えば,本明細書に記載されるような,野生型,変異体,末端切断型および/または突然変異型であり得る。
本発明はさらに,Retならびに長さの短いタンパク質,例えばキナーゼドメイン,およびRet結合化合物であり得るRet代替物の共結晶に関する。このような共結晶は少なくとも3オングストローム,2.5オングストローム,2.0オングストローム,1.8オングストローム,1.7オングストローム,1.5オングストローム,1.4オングストローム,1.3オングストロームまたは1.2オングストロームの構造決定を可能に
するほど十分な大きさおよび質であることが有利である。共結晶は,例えばX線結晶学のためにマウントされた結晶学プレート中,および/またはX線ビーム中にあり得る。このような共結晶は,例えばRetまたはRet代替物と結合化合物間の相互作用に関する構造情報を得るために有益である。
特定の実施形態では,結合化合物は式Iのコア構造を含む。
Ret結合化合物は,保存された活性部位残基の少なくとも1つと,またはそのような残基のいずれか2つ,3つ,4つ,5つまたは6つと相互作用する化合物を含み得る。Retと結合する例示的化合物としては,本明細書に引用した参照文献中に記載された化合物が挙げられる。
同様に,さらなる態様では,RetおよびRet代替物結晶および共結晶を得る方法を提供する。一態様では,5〜20mg/ml,例えば8〜15,10〜14または12mg/mlのRetポリペプチドタンパク質を,通常4℃で実施される,結合化合物,例えば0.5〜5mg/ml,1〜3mg/ml,1〜2mg/mlまたは1mg/mlの結合化合物の存在下であってもよい,30%PEG2000MME,0.15M KBrおよび1mM DTTと実質的に同等の結晶化条件に付すことによってRet結晶を得る。
もう1つの態様では,5〜20mg/ml,例えば8〜12mg/mlのRet代替物タンパク質を,10〜20%PEG3350(例えば,10〜12,12〜14,14〜16,16〜18,18〜20),0.1M Hepes pH6.5,0.2M(NH42SO4,10%エチレングリコール,4℃と実質的に同等の結晶化条件に付すことによって,FGFR1をベースとするRet代替物の結晶を得る方法を提供する。
結晶化条件はまず,スクリーニングキット,例えばハンプトン・リサーチ(Hampton Research)(カリフォルニア州,リバーサイド)スクリーニングキット1を用いて同定できる。結晶をもたらす条件を選択し,結晶化条件を,実証された結晶化条件に基づいて最適化できる。その後の結晶学を補助するために,タンパク質をセレノ−メチオニン標識できる。また,前記で示したように,タンパク質は種々の型のいずれであってもよく,例えば触媒ドメインを提供する末端切断型であってよく,これは種々の長さであるよう選択できる。
もう1つの態様では,Retに対して活性な化合物(例えば,本明細書に記載される,および/または本明細書に記載される方法を用いて開発される化合物)の提供がまた,Retを,Retと結合してもう1つの保存された活性部位残基と相互作用する化合物と接触させることによって,Ret活性を調節する方法を提供する。化合物は,Retの活性を少なくとも10%,より好ましくは少なくとも20%,30%,40%または50%調節するのに十分なレベルで提供されることが好ましい。多くの実施形態では,化合物は約1μM,100μMまたは1mM,または1〜100nM,100〜500nM,500〜1000nM,1〜100μM,100〜500μMまたは500〜1000μMという範囲の濃度である。
本明細書において,用語「調節すること」または「調節する」とは,生物活性,特に,特定の生体分子,例えばRetと関連している生物活性を変更する作用を指す。例えば,特定の生体分子のアゴニストまたはアンタゴニストは,その生体分子,例えば酵素の活性を調節する。
用語「Ret活性」とは,Retの,特にキナーゼ活性をはじめとする生物活性を指す。
調節剤であるか調節剤であり得る化合物の使用,試験またはスクリーニングに関連して,用語「接触させること」とは,化合物が特定の分子,複合体,細胞,組織,生物,または化合物とその他の指定の物質間に可能性ある結合相互作用および/または化学反応が生じ得るその他の指定の物質に対して十分に近接しているようにさせることを意味する。
関連態様では,本発明は異常なRet活性(例えばキナーゼ活性)を特徴とする疾病または状態を患う患者を治療する方法を提供し,この方法では本明細書に記載されるか,本明細書に記載の方法によって同定される化合物を患者に投与することを含む。
治療または予防され得る具体的の疾病または疾患としては,本明細書の詳細な説明に,および本明細書に引用した参照文献に記載されるものが挙げられる。
RetおよびRet代替物の結晶を開発し,分析し,結合様式を調べたので,もう1つの態様は,このようなRetポリペプチドおよびRet代替物(長さの短いFGFR−1をベースとするRet代替物であり得る)の電子表示,例えば,表2中のRetについて,または表3,4または5中のRet代替物について列挙された座標に対応するRetまたはRet代替物の原子座標表示を含む電子表示,あるいは二次構造および/または鎖の折畳みを示し,また保存された活性部位残基も示し得るものなどの略図に関する。
電子表示はまた,特定の残基の電子表示をその他の残基の電子表示と置き換えることによって修飾できる。したがって,例えば,表2,3,4または5に列挙されるRetまたはRet代替物の座標に対応する原子座標表示を含む電子表示は,結合部位中の特定の保存された残基の座標を異なるアミノ酸と置き換えることによって修飾できる。修飾または複数の修飾の後,修飾または複数の修飾によって影響を受ける既知の相互作用を可能にするよう構造全体の表示を調節できる。ほとんどの場合,2以上の残基が関する修飾は反復法で実施される。
さらに,結合部位におけるRet結合化合物または試験化合物の電子表示を,例えば式Iの化合物に含めることができる。
同様に,関連態様では,本発明はRetまたは結合部位(活性部位であり得る)または触媒ドメイン,例えば本明細書に記載されるドメインであり得るRet代替物の一部分の電子表示に関する。結合部位または触媒ドメインは,種々の方法で,例えば結合部位周辺の残基の原子座標の表示としておよび/または結合部位表面のでこぼことして表示でき,結合部位での特定の残基,例えば保存された残基の結合特性の表示を含み得る。結合部位は重金属原子を1個だけ含み,式Iのコア構造を含む化合物などの結合化合物または試験化合物は結合部位に存在し得,結合部位は野生型,変異体,突然変異型または代替物のものであり得,電子表示は表2,3,4または5中にあるような保存された残基の表示座標を含むことが好ましい。
さらにもう1つの態様では,RetまたはRet代替物の構造および配列情報は,別のチロシンキナーゼの相同モデルで使用できる。RetまたはRet代替物の高分解能,例えば少なくとも1.7,1.5,1.4,1.3または1.2オングストローム分解能構造情報をこのようなモデルに使用する場合には役立つ。
さらにもう1つの態様では,本発明は,表2,3,4または5の原子座標に基づく修飾されたRetの原子座標の電子表示を含む,修飾されたRetまたはRet代替物結晶構造の電子表示を提供する。例示的実施形態では,保存された残基の原子座標を異なるアミノ酸の原子座標で置き換えることによって列挙された表の1つの原子座標を修飾できる。
修飾としては,置換,欠失(例えば,C末端および/またはN末端欠失),挿入(内部,C末端および/またはN末端)および/または側鎖修飾が挙げられる。
もう1つの態様では,RetまたはRet代替物構造情報により,RetまたはRet代替物構造を解析し,生物因子を形成する少なくとも1つの基礎構造を同定することによって,Retに基づいて有用な生物因子を開発する方法を提供する。このような基礎構造としては,抗体形成のためのエピトープが挙げられ,方法としては,例えば,エピトープ提示組成物を哺乳類,例えば,ウサギ,モルモット,ギニアブタ,ブタ,ヤギまたはウマに注入することによるエピトープに対する抗体の開発が挙げられる。基礎構造としてはまた,Retの活性を変更する突然変異が予想されるか,知られている突然変異部位が挙げられ,方法としては,その部位に突然変異を作製することが挙げられる。いっそうさらには,基礎構造としては,分離部分,例えばペプチド,ポリペプチド,固相物質(例えば,ビーズ,ゲル,クロマトグラフィー媒体,スライド,チップ,プレートおよびウェル表面),リンカーおよび標識(例えば,フルオロフォアなどの直接標識またはビオチンなどの間接標識またはその他の特異的結合対のメンバー)を付着するための付着点が挙げられる。方法としては,分離部分の付着が挙げられる。
もう1つの態様では,本発明は,化合物の少なくとも1つの電子表示を,RetまたはRet代替物結合部位の電子表示にフィッティングすることによる,可能性あるRet結合化合物を同定する方法を提供する。結合部位の表示は,大きな部分の電子表示の一部またはRetもしくはRet代替物分子のすべてであってもよく,触媒ドメインのみの表示もしくは結合部位もしくは活性部位の表示であってもよい。電子表示は前記の通りであってもよく,別に本明細書に記載される通りであってもよい。RetおよびRet代替物について,電子表示は表2,3,4または5の座標の表示を含む。
特定の実施形態では,本方法はコンピュータデータベースから得た化合物のコンピュータ表示を,キナーゼの活性部位のコンピュータ表示とフィッティングすることを含み,キナーゼ分子と複合体を形成している化合物のコンピュータ表示を回収すること,および可能性ある結合化合物として好都合な幾何学的適合性およびエネルギー的に好都合な相補的相互作用に基づいて活性部位と最良にフィッティングする化合物を同定することを含む。特定の実施形態では,化合物は既知のRet阻害剤,例えば本明細書に引用された参照文献に記載されるものまたはその誘導体である。
その他の実施形態では,本方法は,1個以上の化学基の欠失または付加またはその双方によって,キナーゼ分子と複合体を形成している化合物のコンピュータ表示を修飾すること,コンピュータデータベースから得た化合物のコンピュータ表示を,キナーゼ分子の活性部位のコンピュータ表示とフィッティングすること,および可能性ある結合化合物として好都合な幾何学的適合性およびエネルギー的に好都合な相補的相互作用に基づいて活性部位と最良にフィッティングする化合物を同定することを含む。
さらにその他の実施形態では,本方法は,キナーゼと複合体を形成している化合物のコンピュータ表示を回収することおよび化合物検索コンピュータプログラムを用いてデータベースを複合化合物と構造類似性を有する化合物について検索すること,または化合物構造コンピュータプログラムを用いて複合体を形成している化合物の部分を同様の化学構造で置き換えることを含む。
化合物をフィッティングすることは,化合物がキナーゼの1個以上の保存された活性部位残基と相互作用するかどうかを調べること含み得る。フィッティングのために選択された化合物またはキナーゼと複合体を形成している化合物は,例えば,既知のRet阻害剤化合物,またはこのような化合物のコア構造を含む化合物であり得る。
もう1つの態様では,本発明は,Ret結合化合物を付着成分と付着する方法ならびにRet結合化合物上の付着部位を同定する方法に関する。本方法は,Retの結合部位に結合している結合化合物の付着成分の付着についてエネルギー的に許容される部位を同定すること,およびエネルギー的に許容される部位で化合物またはその誘導体を付着成分と付着させることを含む。
付着成分としては,例えば,固相または別の分子またはその他の部分との付着のためのリンカー(トレースレスリンカーを含む)が挙げられる。このような付着は,例えば,複数の化合物におけるコンビナトリアル合成において固相媒体に付着しているリンカー上に化合物または誘導体を合成することによって形成できる。同様に,固相媒体との付着によってアフィニティー媒体(例えば,アフィニティークロマトグラフィー用の)が提供され得る。
付着成分としてはまた,フルオロフォアなどの直接検出可能な標識,または特異的結合対のメンバー,例えばビオチンなどの間接的に検出可能なものであり得る標識が挙げられる。
関連態様では,Ret結合化合物上のエネルギー的に許容される部位を同定する能力によっても,好ましくは,修飾された化合物とRetとの結合についてエネルギー的に許容される部位で,リンカーが付着されている修飾された結合化合物が提供される。リンカーは前記の付着成分と付着できる。
もう1つの態様は,修飾されたRetを別のチロシンキナーゼに対して天然Retよりも類似性にする修飾を含む,またその他の突然変異またはその他の修飾も含み得る修飾されたRetポリペプチドに関する。種々の実施形態では,ポリペプチドは全長Retポリペプチドを含み,修飾されたRet結合部位を含み,保存された部位を含む,Retに由来する少なくとも20,30,40,50,60,70または80個の連続するアミノ酸残基を含む。
本発明のさらにもう1つの態様は,それぞれ保存されたRet活性部位残基のいずれか1個,2個,3個,4個,5個または6個とマッチする保存された残基を含むRetのリガンドを,表2,3,4または5におけるような座標を有する,RetまたはRet代替物結晶またはRet結合モデルにおいて,化合物がRetと結合し,このような活性部位残基と相互作用するかどうかを調べることによって開発する方法に関する。本方法はまた,化合物がキナーゼの活性を調節するかどうかを調べることを含み得る。キナーゼは,同じ長さのキナーゼドメインセグメントにわたって少なくとも50,55,60または70%の同一性を有することが好ましい。
特定の実施形態では,調べることは,キナーゼの結合部位において化合物をコンピュータフィッティングすることを含み,かつ/またはこの方法はキナーゼと化合物の共結晶を形成することを含む。このような共結晶は,化合物とキナーゼとの結合配向を調べるために使用でき,および/またはキナーゼに関する,例えば,結合部位および相互作用するアミノ酸残基に関する構造情報を提供できる。このような結合配向および/またはその他の構造情報は,X線結晶学を用いて達成できる。
本発明はまた,Ret活性と結合し,および/または調節する(例えば,阻害する)化合物,例えば,本明細書に記載される方法によって同定される化合物を提供する。したがって,Ret結合化合物,分子スキャフォールドおよびリガンドまたは調節剤に関する態様および実施形態では,化合物は弱い結合化合物,中程度の結合化合物,強い結合化合物
であり,化合物はキナーゼ中の1以上の保存された活性部位残基と相互作用し,化合物は小分子であり,化合物は複数の異なるキナーゼ(例えば,少なくとも2,3,4,5,7,10またはそれより多くの異なるキナーゼ)と結合する。特に,本発明は,本明細書に記載される方法を用いて同定または選択される化合物,すなわち式Iの化合物に関する。
Ret結合部位またはRet代替物の原子座標に関する前記の種々の態様では,結合化合物に関連して,表2,3,4または5に提供される座標を使用できる。次いで,本明細書で同定された化合物とは異なる構造を有する化合物をフィッティングするために従来のモデリング法を用いてそれらの座標を調節することができ,したがって現在記載されているRet調節剤とは異なるRet調節剤の開発に使用できる。
もう1つの態様は,FGFRをベースとするRetの相同モデルに関し,これとしてはFGFRアミノ酸を対応するRet残基で置き換えることによって導いた原子座標セットが挙げられる。例としては,本明細書に記載されるRet代替物1および2が挙げられる。さらなる実施形態は,その他のおよび/またはさらなる残基を置き換えること,例えばRet結合部位配列を置換することによって構成され得る。
さらにもう1つの態様は,Retキナーゼ結合部位における化合物の結合をモデリングする方法に関し,これは,例えば本明細書に記載されるような,RetまたはRet代替物の結合部位においてこのような化合物の結合をモデリングすることによる。このような化合物は式Iの化合物であり得る。
もう1つの態様は,少なくとも4個の結合部位アミノ酸残基の,Ret中の対応する部位に存在するアミノ酸への置換によって修飾されたFGFRキナーゼドメイン配列を含むRet代替物タンパク質に関する。特定の実施形態では,Ret代替物タンパク質はRet代替物1または2であるか,Ret結合部位配列を含む。関連態様は,Ret代替物タンパク質をコードする配列を含む単離または精製された核酸配列に関する。
本明細書において,アミノ酸または核酸配列に関連して,用語「単離する」とは,配列が,通常結合されているアミノ酸および/または核酸配列の少なくとも一部から分離されることを示す。
アミノ酸または核酸配列に関連して,用語「精製された」とは,特定の分子が,従前の組成物中においてよりも組成物中において,例えば細胞培養において生体分子の有意により大きな割合を構成することを示す。より大きな割合は2倍,5倍,10倍またはそれより大きいものであり得る。
さらなる態様および実施形態は,以下の詳細な説明からおよび特許請求の範囲から明らかとなる。
まず,表を簡単に説明する。
表1は,Retに対して活性であり,IC50が10以下である式Iの例示的化合物のセットの構造,分子量および名称を示す。
表2は式Iの例示的化合物と共結晶化させたRetキナーゼドメインの原子座標を示す。例示的結合化合物は以下の構造を有する:
この表では,種々の列は,最も左側の列からはじまって以下の内容を含む:
原子:表の行の関連部分を指す。
原子数:座標表内の任意の原子数指定を指す。
原子名:特定の座標に存在する原子の識別子。
鎖ID:鎖IDは,結晶中のタンパク質の1つの単量体,例えば鎖「A」または結晶中に存在するその他の化合物,例えば水のHOH,およびリガンドまたは結合化合物のLを指す。タンパク質単量体の多重コピーは異なる鎖IDを有する。
残基数:鎖中のアミノ酸残基数。
X,Y,Z:それぞれX,YおよびZ座標値である。
占有率:結晶中で原子が観察される時間の画分を記載する。例えば,占有率=1は,原子がすべての時間に存在することを意味し;占有率=0.5は原子が時間の部位50%に存在することを示す。
B−因子:原子の熱運動の尺度。
要素:要素の識別子。
表3は式Iの例示的化合物(化合物68:5−チオフェン−3−イル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン)と共結晶化させたRet代替物2の原子座標を示す。
表4は式Iの例示的化合物(化合物14:3−(3−メトキシ−ベンジル)−5−チオフェン−3−イル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン)と一緒になったRet代替物2ホスホジエステラーゼドメインの原子座標データを示す。入力は表2についてと同様である。
表5は式Iの例示的化合物(化合物28:(3−メトキシ−フェニル)−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−メタノン)と一緒になったRet代替物2ホスホジエステラーゼドメインの原子座標データを示す。入力は表2についてと同様である。
I.一般
本発明は,Retの阻害剤である式Iの化合物,ならびにRetの結合部位のモデル,構造情報および関連組成物の,Ret活性を調節する構造を有する改良化合物を開発するための使用に関する。
いくつかの記事により,種々のRet阻害剤が同定されているということが示されている。例えば,Retの阻害は,トランスフェクトされたNIH3T3およびTPC−1甲状腺乳頭癌細胞の形質転換された表現型を戻すために研究された。Ret形質転換NIH3T3のチロシンキナーゼ阻害剤ハービマイシンAでの処理によって細胞の表現型が,より形質転換されていない平坦な形態に戻った。また,阻害剤とともにインキュベートすることによって細胞内Retキナーゼ活性が低下した(タニグチM.ら,1993)。
同様に,チロシンキナーゼ阻害剤K−252bは,ドーパミン作動性ニューロン培養物におけるCDNF誘導性分化におけるRetの正常な機能を阻害した(ポング(Pong)K.ら,1997)。
MEN2Aにおける一般的な突然変異の,ハンマーヘッドリボザイム媒介性特効薬は,リボザイムが発現されていた,Retが形質転換されたNIH3T3の形質転換体表現型を戻した(パルタサラティ(Parthasarathy)R.ら,1999)。
2−インドリノン誘導体による,ret/ptc1癌タンパク質の形質転換活性の阻害が記載されている。ランツィ(Lanzi)C.ら,2000。
RPMI培地で培養したMTC細胞株(RetC634突然変異体を含むTT細胞)を,細胞増殖を阻害する,種々の濃度のSTI571,ゲニステインまたはアリル−ゲルダナマイシンに曝露した。コーエン(Cohen)MS,フセインHB,モーリーJF。
METHODS OF PREVENTING AND TREATING NEUROLOGICAL DISORDERS WITH COMPOUNDS THAT MODULATE THE FUNCTION OF THE C−RET RECEPTOR PROTEIN TYROSINE KINASEと題された,クラリー,米国特許第6,235,769号には,c−Ret阻害剤としてインドリノン化合物の群が記載されており,これは参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
アストラ・ゼネカ(Astra Zeneca)製ZD6474,VEGF阻害剤は,細胞においておよびin vitroでRetを阻害すると記載された。カルロマグノ(Carlomagno)F.ら2002。
さらに,Retキナーゼは,触媒ドメインにおいて50%を上回る同一性を有するFGFR TK受容体のファミリーと密接に関連している(FGFR群とRetの関係を示す部分キナーゼファミリーツリーについては図1参照)。
したがって,FDFR,PDGF,FLTおよびKDRのようなRetに関連するキナーゼの阻害剤を利用できることは,参照化合物として,および特異的阻害剤の設計において有用であり得る。さらに,FGFR1キナーゼドメインは,オキソインドールVEGF阻害剤化合物とともに共結晶化されている。この情報とFGFR由来Ret代替物構造に基づくRet相同性モデルとを,強力なRet阻害剤の設計に,例えば本明細書に記載される方法に使用できる。
Retと関係がある例示的疾病
正常なret機能:c−Ret受容体は,シグナル伝達経路において機能し,神経堤組織に由来する細胞の分化および形態形成を制御する。これらのプロセスを制御するリガンドは,GDNF(グリア細胞由来神経栄養因子)ファミリーのメンバーであり,GFR□1と呼ばれる,GPIでアンカーされたコレセプターサブユニットを介してRet受容体によって作用する。Retは,Ras/RafおよびPI3K経路をはじめとする,その他の受容体チロシンキナーゼによって活性化される,多数の同様のシグナル伝達経路を開始する。
RET遺伝子中の突然変異は,疾患多発性内分泌腺種症,IIA型(MEN2A),多発性内分泌腺種症,IIB型(MEN2B),ヒルシュスプルング病(HSCR;先天性巨大結腸)および甲状腺髄様癌(MTC)と関係している。c−Retキナーゼ中に種々の点突然変異および染色体再構成が同定されており,主として2つの表現型をもたらしている(遺伝変種を含むOMIMデータベース)。
ヒトではc−Retにおける機能突然変異の喪失が,腸ニューロンの発育不全を引き起こす(ヒルシュスプルング病HSCR)。この症候群は,常染色体優勢の複雑な発達障害
であり,個体には機能性のヌル突然変異が存在し,精神遅滞,運動発達遅延,癲癇および頭部,心臓および迷走神経レベルでのニューロクリストパシー(neurocristopathies)を示唆する広範囲な臨床上不均一な特徴を伴う(ヒルシュスプルングOMIMレコード)。ヒルシュスプルング病または先天性巨大結腸は,長さの変動する腸に沿って腸神経節が無いことを特徴とする先天性疾患である。
Retキナーゼを活性化する遺伝性で,自発的な突然変異が,多発性内分泌腺腫症2A型および2B型(MEN2AおよびMEN2B),家族性甲状腺髄様癌(FMTC)および甲状腺乳頭癌(PTC)をはじめとするいくつかの種類の癌を導く。突然変異のサブセットがこれらの癌の種類の各々と関連している。MEN2AおよびFMTCのほぼすべての場合で,Ret細胞外ドメインの5個のシステインの1つにミスセンス突然変異が存在し,おそらくは,細胞外ドメインとのリガンド結合の作用を模倣することによってRetのチロシンキナーゼ活性を構成的に活性化する。MEN2Bのほとんどの患者は,細胞内チロシンキナーゼドメインのATP結合ポケット中のコドン918に突然変異(Met→Thr)を持っている。この突然変異はおそらくは,キナーゼを活性化し,その基質特異性を変更する。
PTCは最も一般的な悪性腫瘍であり,電離放射線に対する曝露と関連していることが多い。PTCでは,染色体逆位または転座が,Retの細胞内チロシンキナーゼをコードするドメインの,異種遺伝子の5’末端との組換えを引き起こす。得られたキメラ配列は「RET/PTC」と呼ばれ,発癌活性を発揮する。RET/PTC1(H4−RET融合物)およびRET/PTC3(RFG−RET融合物)が最も一般的な変異体である。チェルノブイリ事故後に生じたPTCではRET/PTC3が特に多かったが,これは高悪性度のPTC変異体と関連している。
したがって,Ret機能の調節剤を前記のものなどの疾病に対して使用できる。
II.RetポリペプチドおよびRet代替物構造
可溶性の,結晶化可能Retキナーゼドメインを構築できるということを発見した。このようなポリペプチドをコードする核酸配列を構築し,実施例に記載のように発現させた。
さらに,Ret調節剤の開発を補助するために,野生型タンパク質よりも構造的にRetとより同様にするために突然変異されている関連タンパク質(代替物の親)であるタンパク質代替物を作製し,使用することが有用であり得る。こうすることで,代替物の親の有利な操作特性,例えば結晶化特性を有するが,結合部位でRetに対して密接な構造類似性を有する代替物タンパク質を作製できる。代替物の親は,構造が入手できるおよび/または容易に結晶化され得るということで選択する。突然変異部位は,Retと代替物の親との配列アラインメントに基づいて選択でき,この選択によって代替物の親構造を,Retに対して構造的により類似した代替物を作製するための重要な残基に関するさらなる指針として有益に利用できる。有用な突然変異としては,特定のアミノ酸残基の置換(例えば,代替物の親残基を対応するRet残基と置き換えること)ならびにRet配列の代替物の親配列への置換が挙げられる。
この場合には,Retキナーゼは,FGFR TK受容体のファミリーと密接に関連しており,触媒ドメインには50%を上回る同一性がある(FGFR群とRetの関係を示す,部分キナーゼファミリーツリーについては図1参照)。したがって,FGFR1をRet代替物の作製に使用するために選択した。
それぞれ5および6残基置換を有する,2種のRet代替物(Ret代替物1および2
)を構築した。これらのRet代替物は容易に結晶化し(アポタンパク質としておよび結合化合物との共結晶としての双方で),高品質な原子座標データが得られる。
Ret代替物1および2におけるアミノ酸置換
FGFR1中の5個のアミノ酸を置換してRet代替物1を作製した。PRO483をTHRで,ALA488をCLUで,ASN568をSERで,GLU571をGLYで,ALA640をSERで置換した。これらの5個の残基は,それらがATP結合部位中にあることがFGFR1 X線結晶構造において示されたために置換した。PRO483およびALA488は,FGFR1構造では結合部位の頂部となるPループに位置している。ASN568およびGLU571は,線状配列ではヒンジ領域の直後にあり,結合部位の始まりに位置する。ALA640は線状配列では保存されたDFGモチーフの直前に位置し,結合部位の底部となる。
FGFR1中のさらなるアミノ酸,MET535をLEUで置換してRet代替物2を作製した。MET535は,小さなローブ中の保存されたCα−ヘリックス中にある。FGFR1の三次元構造では,この残基の側鎖が結合部位の空洞に面している。
Ret代替物構造
Ret代替物1の構造は,FGFR1のものと極めて類似している。C−α原子の,1FGI(タンパク質データバンク,PDBにおけるFGFR1構造の1つのPDBコード)とのその二乗平均平方根距離(RMSD)は0.98Åである。Ret代替物1の構造では,Pループは順序正しく,結合部位の頂部にある傾向があった。これは,Pループが不規則,すなわち結合部位の空洞に向けて曲がっているかもしくは伸びた直線であり得るFGFR1構造とは対照的である。
結晶性Ret代替物
結晶性Ret代替物としては,アポタンパク質結晶,誘導体結晶および共結晶が挙げられる。天然結晶は通常,結晶型のRet代替物に相当する実質的に純粋なポリペプチドを含む。Ret代替物キナーゼドメイン結晶は,通常,結晶型の実質的に純粋なキナーゼドメインを含む。Retキナーゼ機能の阻害剤の開発に関連して,RetまたはRet代替物キナーゼドメインをそれぞれ構造決定に使用することが有利であるが,これは短い配列を使用することで構造決定が単純になるからである。この目的のために有用であるには,キナーゼドメインは活性でなくてはならず,かつ/または天然型結合を保持していなくてはならず,したがって,このことはキナーゼドメインが実質的に正常な3D構造をとるということを示す。
本発明の結晶性キナーゼおよびキナーゼドメインは天然に存在するキナーゼまたは天然キナーゼに限定されるものではないということは理解されなくてはならない。実際,本発明の結晶は,天然キナーゼの突然変異体の結晶を含む。天然キナーゼの突然変異体は,天然キナーゼ中の少なくとも1個のアミノ酸残基を,異なるアミノ酸残基で置き換えることによって,または天然ポリペプチド内のもしくは天然ポリペプチドのNもしくはC末端でアミノ酸残基を付加もしくは欠失することによって得られ,突然変異体が由来する天然キナーゼと実質的に同じ三次元構造を有する。
実質的に同じ三次元構造を有することとは,天然キナーゼドメインの少なくとも約50%〜100%のCα原子がスーパーポジション中に含まれる場合に,突然変異体が由来する天然キナーゼの原子構造座標とスーパーインポーズすると,約2Å以下である二乗平均平方根偏差を有する原子構造座標のセットを有することを意味する。
キナーゼの三次元構造を大きくは干渉しないアミノ酸置換,欠失および付加は,幾分か
は置換,付加または欠失が生じるキナーゼの領域に応じて変わる。分子の高度に可変性の領域では,分子の三次元構造を大きく破壊することなく非保存的置換ならびに保存的置換が許容され得る。高度に保存された領域または重大な二次構造を含む領域では,保存的アミノ酸置換が好ましい。このような保存された領域および可変領域は,Retと,その他のキナーゼ,例えばFGFRキナーゼ群中のキナーゼとの配列アラインメントによって同定できる。
保存的アミノ酸置換は当分野ではよく知られており,関連するアミノ酸残基の極性,電荷,可溶性,疎水性,親水性および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行われる置換が挙げられる。例えば,負に帯電したアミノ酸としては,アスパラギン酸とグルタミン酸が挙げられ,正に帯電したアミノ酸としては,リシンとアルギニンが挙げられ,同様の親水性値を有する帯電していない極性頭部を含むアミノ酸としては,以下のものが挙げられる:ロイシン,イソロイシン,バリン;グリシン,アラニン;アスパラギン,グルタミン;セリン,トレオニン;フェニルアラニン,チロシン。その他の保存的アミノ酸置換は当分野ではよく知られている。
化学合成によって全体でまたは一部分で得られるRetまたはRet代替物については,置換または付加に利用できるアミノ酸の選択は,遺伝的にコードされるアミノ酸に限定されない。実際,本明細書に記載される突然変異体は,遺伝的にコードされないアミノ酸を含んでいてもよい。一般的に知られている遺伝的にコードされないアミノ酸の多数の保存的アミノ酸置換は,当技術分野ではよく知られている。その他のアミノ酸の保存的置換は,遺伝的にコードされるアミノ酸の特性と比較した,それらの物理的特性に基づいて決定できる。
いくつかの例では,cDNAをコードするポリペプチド中に好都合なクローニング部位を提供するために,ポリペプチドの精製を補助するために,およびポリペプチドの結晶化のために,天然キナーゼのアミノ酸残基を置換,欠失および/または付加することが特に有利または好都合であり得る。天然キナーゼドメインの三次元構造を実質的に変更しないこのような置換,欠失および/または付加は,当業者には明らかであろう。
本明細書において考慮される突然変異体はすべてキナーゼ活性を示す必要はないということは注目すべきである。実際,キナーゼ活性を干渉するが,ドメインの三次元構造を大きくは変更しないアミノ酸置換,付加または欠失が本発明によって特に考慮される。このような結晶ポリペプチドまたはそれから得られる原子構造座標を,天然ドメインと結合する化合物を同定するために使用できる。これらの化合物は,天然ドメインの活性に影響を及ぼし得る。
本発明の誘導体結晶は,1個以上の重金属原子と共有結合している結晶キナーゼポリペプチドを含み得る。このポリペプチドは天然または突然変異キナーゼに相当し得る。誘導体結晶を提供するのに有用な重金属原子としては,それだけには限らないが例として,金,水銀,セレンなどが挙げられる。
本発明の共結晶は通常,1種以上の化合物と結合している結晶キナーゼドメインポリペプチドを含む。結合は共有結合であってもよく,非共有結合であってもよい。このような化合物としては,それだけには限らないが,補因子,基質,基質類似体,阻害剤,アロステリックエフェクターなどが挙げられる。
III.X線結晶学を用いる三次元構造決定
X線結晶学は,分子の三次元構造を解き明かす方法である。分子の構造は,回析格子として結晶を用いてX線回析パターンから算出する。タンパク質分子の三次元構造は,その
タンパク質の濃縮した水溶液から成長した結晶から生じる。X線結晶学のプロセスは以下のステップを含み得る:
(a)ポリペプチドを合成および単離すること(あるいは得ること),
(b)調節剤を伴ってか伴わずに,ポリペプチドを含む水溶液から結晶を成長させること,
(c)結晶からX線回析パターンを集めること,単位セル面積および対称性を決定すること,電子密度を決定すること,ポリペプチドのアミノ酸配列を電子密度に対してフィッティングすることおよび構造を精密化すること。
ポリペプチドの製造
本明細書に記載される天然および突然変異型キナーゼポリペプチドは,当技術分野で周知の技術を用いて,全体または一部で化学合成できる(例えば,クレートン(Creighton)(1983)バイオポリマーズ(Biopolymers)22(1):49〜58頁参照)。
あるいは,当業者に周知の方法を使用して,天然または突然変異型キナーゼポリペプチドコード配列と適当な転写/翻訳制御シグナルとを含む発現ベクターを構築してもよい。これらの方法としては,in vitro組換えDNA技術,合成技術およびin vivo組換え/遺伝子組換えが挙げられる。例えば,マニアティス(Maniatis),T(1989)モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular cloning :
A laboratory Manual.)。コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring
Harbor Laboratory),ニューヨーク。コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press);およびオーズベル(Ausubel),F.M.ら(1994)カレント・プロトコール・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current
Protocols in Molecular Biology.),ジョン・ウィレー・アンド・サンズ(John Wiley &
Sons),ニュージャージー州,セコーカス(Secaucus)に記載される技術を参照。
種々の宿主発現ベクター系を利用してキナーゼコード配列を発現できる。これらとしては,それだけには限らないが,キナーゼドメインコード配列を含む,組換えバクテリオファージDNA,プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;キナーゼドメインコード配列を含む,組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;キナーゼドメインコード配列を含む,組換えウイルス発現ベクター(例えば,バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系,キナーゼドメインコード配列を含む,組換えウイルス発現ベクター(例えば,カリフラワーモザイクウイルス,CaMV,タバコモザイクウイルス,TMV)に感染したか,組換えプラスミド発現ベクター(例えば,Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系などの微生物が挙げられる。これらの系の発現エレメントはその強度および特異性の点で異なる。
用いる宿主/ベクター系に応じて,構築プロモーターおよび誘導プロモーターをはじめとするいくつかの適した転写および翻訳エレメントのいずれかを発現ベクターに使用できる。例えば,細菌系におけるクローニングの際には,誘導プロモーター,例えばバクテリオファージλのpL,plac,ptrp,ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などを使用でき,昆虫細胞系におけるクローニングの際には,バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターなどのプロモーターを使用でき,植物細胞系におけるクローニングの際には,植物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば,熱ショックプロモーター,RUBISCOの小サブユニットのプロモーター),クロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(例えば,CaMVの35S RNAプロモーター,TMVのコートタンパク質プロモーター)を使用でき,哺乳類細胞系におけるクローニングの際には,哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば,メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えば,アデノウイルス後期プロモーター,ワクシニアウイルス7.5Kプロモー
ター)を使用でき,キナーゼドメインDNAの多重コピーを含む細胞株の作製の際には,SV40,BPVおよびEBVベースのベクターを適当な選択マーカーとともに使用できる。
用いるDNA操作,ベクター,種々の種類の細胞についての方法,ベクターを細胞に組み込む方法,発現技術,タンパク質精製および単離法,およびタンパク質濃縮法を説明する例示的方法は,PCT公開WO96/18738に詳細に開示されている。この公開は参照により,図面を含むその全文が本明細書に組み込まれる。当業者には,このような記載を本発明に適用でき,それに容易に適応させることができることは当然であろう。
結晶成長
結晶は,種々の技術によって精製および濃縮されたポリペプチドを含有する水溶液から成長させる。これらの技術としては,バッチ,液体,ブリッジ,透析,蒸気拡散および水滴法が挙げられる。参照により,すべての図,表および図面を含むその全文が本明細書に組み込まれる,マクファーソン(McPherson)(1982)ジョン・ウィレー,ニューヨーク,マクファーソン(1990)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry)189:1〜23頁,ウェバー(Webber)(1991)アドバンセズ・イン・プロテイン・ケミストリー(Advances in Protein Chemistry)41:1〜36頁。
本発明の天然結晶は,概して,沈殿物をポリペプチドの濃縮溶液に添加することによって成長させる。沈殿物はタンパク質を沈殿させるのに必要な濃度のすぐ下の濃度で添加する。制御蒸発によって水を除去し,沈殿条件を生じさせ,これを結晶成長が終わるまで維持する。
本発明の結晶のための,例示的結晶化条件を実施例に記載する。当業者ならば,例示的結晶化条件を変更できることは認識するであろう。このような変化量は,単独または組合せて使用できる。さらに,その他の結晶化条件は,例えば,このようなその他の条件を同定するための結晶化スクリーニングプレートを用いることによって見出すことができる。次いで,それらの代替条件を,必要に応じて最適化し,より大きなまたはより良質な結晶を提供することができる。
本発明の誘導体結晶は,天然結晶を,重金属原子の塩を含有する母液に浸すことによって得ることができる。天然結晶を,約0.1mM〜約5mMのチメロサル,4−クロロメルリ安息香酸(chloromeruribenzoic acid)またはKAu(CN)2を含有する溶液に約2時間〜約72時間浸すことによって,X線結晶構造の決定における同形置換として使用するのに適した誘導体結晶が得られることがわかっている。
本発明の共結晶は,天然結晶を,キナーゼと結合する化合物を含有する母液に浸すことによって得ることができ,または結合化合物の存在下でキナーゼポリペプチドを共結晶化することによって得ることができる。
一般に,キナーゼと結合化合物の共結晶化は,対応するキナーゼを結合化合物を含まずに結晶化するために同定した条件を用いて達成できる。キナーゼに対して複数の異なる結晶化条件が同定されている場合には,どの条件が最良の共結晶をもたらすかを決定するためにこれらを試験することができることが有利である。共結晶化のための条件を最適化することも有益であり得る。
あるいは,例えば,結晶化についてスクリーニングし,次いでそれらの条件を最適化することによって,共結晶を得るための新規結晶化条件を決定することができる。例示的共
結晶化条件を実施例に示す。
ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の単位セル面積および三次元構造の決定
結晶が成長すると,ガラスキャピラリーチューブまたはその他の封入装置に入れ,X線発生器およびX線検出装置と連結している保持装置上にマウントすることができる。X線回析パターンの収集は,当業者によって十分に立証されている。例えば,デュクルー(Ducruix)およびゲイジ(Geige),(1992),IRLプレス,英国,オックスフォードおよび本明細書に引用される参照文献参照。X線のビームは結晶に入り,次いで結晶から回析する。X線検出装置を利用して結晶から広がる回析パターンを記録できる。こういった機器の古いモデルのX線検出装置は,1つのフィルムであるが,最新機器はX線回析散乱をデジタル記録する。X線供給源は種々の型のものであり得るが,高輝度供給源,例えばシンクロトロンビーム供給源を用いることが有利である。
ペプチド分子または分子複合体の結晶型の三次元構造を得る方法は,当技術分野では周知である。例えば,デュクルーおよびゲイジ(1992)IRLプレス,英国,オックスフォードおよび本明細書に引用される参照文献を参照。以下は,X線回析データから分子または複合体の三次元構造を決定するプロセス中のステップである。
結晶からX線回析パターンを収集した後,結晶中の単位セル面積および配向を決定できる。それらは回析放射ならびにこういった放射から作られるパターン間の間隔から決定できる。単位セル面積はオングストローム(1Å=10-10メートル)単位で三次元で,および各頂点の角度によって特徴づけられる。結晶中の単位セルの対称性もこの段階で特徴づけられる。結晶中の単位セルの対称性によって,反復パターンを同定することによって収集したデータの複雑性が単純化される。単位セルの対称性および面積の適用を以下に説明する。
各回析パターン放射は,ベクトルとして特徴づけられ,方法のこの段階で収集したデータにより各ベクトルの振幅が決まる。ベクトルの位相は複数の技術を用いて決定できる。一方法では,同形置換と呼ばれる方法であるが,重原子を結晶にソークすることができ,これらの重原子をX線回析における参照点として用いることによってベクトルの位相を調べることができる(オトウィノウスキ(Otwinowski),(1991),英国,ダーズベリー,80〜86)。同形置換法は通常2種以上の重原子誘導体を利用する。
もう1つの方法では,すでに構造の決定されている結晶性ポリペプチドからのベクトルの振幅および位相を,構造未知の結晶性ポリペプチドからのベクトルの振幅に適用し,続いてこれらのベクトルの位相を決定することができる。この第2の方法は分子置換として知られており,参照として用いられるタンパク質構造は,注目するタンパク質と密接に関連した構造を有していなくてはならない。(ナラザ(Naraza)(1994)プロテインズ(Proteins)11:281〜296頁)。したがって,構造既知のキナーゼからのベクトル情報,例えば本明細書に報告されているものは,構造未知の別のキナーゼの分子置換解析にとって有用である。
結晶の単位セルを表すベクトルの位相を決定すると,ベクトル振幅および位相,単位セル面積および単位セル対称性をフーリエ変換関数中の項として使用できる。フーリエ変換関数によって,これらの測定値から単位セル中の電子密度を算出する。単位セル中の分子の1つまたは分子複合体の1つを表す電子密度は,電子密度マップと呼ぶことができる。次いで,種々のコンピュータプログラムを用いて,配列のアミノ酸構造または結晶性ポリペプチドと複合体を形成している化合物の分子構造を,電子密度とフィッティングすることができる。プロセスのこのステップはモデルビルディングと呼ばれることがあり,Turbo/FRODOまたは「O」などのコンピュータプログラムを用いることによって達
成できる。(ジョーンズ(Jones)(1985)メソッヅ・イン・エンジモロジー(Methods in Enzymology)115:157〜171頁)。
次いで,実験的に求めた電子密度にフィッティングしたアミノ酸構造から理論上の電子密度マップを算出できる。理論上の電子密度マップおよび実験的電子密度マップを互いに比較することができ,これら2つのマップ間の一致はR因子と呼ばれるパラメーターによって表すことができる。低い値のR因子は,理論上の電子密度マップと実験的電子密度マップの間の高度にオーバーラップする電子密度を表す。
次いで,理論上の電子密度マップを精密化するコンピュータプログラムを用いてR因子を最小化する。当業者によって,X−PLORなどのコンピュータプログラムをモデル精密化のために使用できる。(ブルンガー(Brunger)(1992)ネイチャー(Nature)355,472〜475頁)。精密化は反復プロセスで達成できる。第1のステップは,電子密度マップにおいて規定される原子の構造の変化を引き起こし得る。原子の構造は温度の上昇をシミュレートすることによって変更でき,これにより結合の振動周波数が増加し,構造中の原子の位置が改変される。原子撹乱プロセスにおける特定の点では,通常,原子間の相互作用を許容結合角および結合の長さ,ファンデルワールス相互作用,水素結合,イオン性相互作用および疎水性相互作用という点で規定する力場を,原子の系に適用できる。好都合な相互作用は自由エネルギーという言葉で表すことができ,原子は,自由エネルギー最小が達成されるまで多数の反復の間を動かされ得る。精密化プロセスは,R因子が最小値に達するまで反復され得る。
分子または分子複合体の三次元構造は,最小R値を特徴とする理論上の電子密度にフィッティングする原子によって表される。次いで,各原子を座標によって三次元に規定する三次元構造のファイルを作製することができる。このような構造座標ファイルの例を表2に示す。
IV.Ret結合部位およびRet代替物の構造
例示的結合化合物と共に複合体形成している,結晶性RetキナーゼドメインおよびRet代替物キナーゼドメインの高解像度三次元構造および原子構造座標を説明する。構造座標を得るために用いた方法は実施例に示す。結合化合物と共結晶化させた結晶性Ret代替物キナーゼドメインの原子構造座標を表2〜5に列挙する。共結晶座標は,例えば,本明細書に記載される種々の態様において,単独でタンパク質の座標と同様に使用できるが,このような共結晶は結合化合物の結合モードを示すか裏付けるものであるので有利であり得,また結合化合物の存在に応じたタンパク質原子のシフトを含み得る。
当業者ならば,X線結晶学によって決定される原子構造座標には誤差を伴うということは認識するであろう。したがって,一般に,天然結晶,キナーゼドメイン結晶,誘導体結晶または共結晶であろうとなかろうと,本明細書の座標表に列挙される構造座標に,主鎖原子(N,Ca,CおよびO)を用いてスーパーインポーズすると,約1.5Å以下の二乗平均平方根偏差(「r.m.s.d.」)を有する,キナーゼの結晶について得られた構造座標のいずれかのセットは,結晶化しているタンパク質の少なくとも約50%〜100%の主鎖原子がスーパーポジションに含まれる場合には,表に列挙される構造座標と同一であると考えられるということは理解されなくてはならない。
V.結晶および原子構造座標の使用
本発明の結晶,特にそれから得られた原子構造座標は多種多様な用途を有する。例えば,本明細書に記載される結晶は,当技術分野で公知のまたは後に開発されるキナーゼの使用法のいずれかにおいて出発点として使用できる。このような使用法としては,例えば,キナーゼの天然または突然変異型触媒ドメインと結合する分子を同定することが挙げられ
る。結晶および構造座標は,新規治療薬を開発することに向けたアプローチとして,キナーゼ活性を調節するリガンドを同定するためには特に有用である。詳しくは,結晶および構造情報は,分子スキャフォールドを利用してリガンドを開発する方法において有用である。
本明細書に記載される構造座標は,さらなるキナーゼの結晶構造,ならびに阻害剤,アゴニスト,アンタゴニストおよびその他の分子などのリガンドとこのようなキナーゼとの共結晶との構造を決定するための位相合わせモデルとして使用できる。構造座標,ならびにそれから得られた三次元構造のモデルもまた,天然または突然変異型キナーゼの溶液ベースの構造,例えばNMRによって得られたものの解明を補助するために使用できる。
VI.RetおよびRet代替物構造の電子表示
キナーゼまたはキナーゼの一部(例えば,キナーゼ活性部位)の構造情報は,多数の異なる方法で表すことができる。特に有用なものは,表示により迅速かつ好都合なデータ操作および構造修飾が可能となるものとして電子表示である。電子表示は多数の種々のストレージ媒体または記憶媒体,しばしばコンピュータにより読み取り可能な媒体に埋め込むことができる。それだけには限らないが例としては,コンピュータランダムアクセスメモリー(RAM),フローピーディスク,磁気ハードドライブ,磁気テープ(アナログまたはデジタル),コンパクトディスク(CD),光学ディスク,CD−ROM,メモリーカード,デジタルビデオディスク(DVD)などが挙げられる。ストレージ媒体は分離できるか,コンピュータシステムの一部であり得る。このようなコンピュータシステムは,専用の,特殊用途の,または内蔵されたシステム,例えばX線結晶学システムの一部を形成するコンピュータシステムであってもよく,汎用コンピュータであってもよい(X線結晶学システム中のセンサー装置などのその他の設備とデータ接続を有することができる)。多くの場合,このような電子表示によって示される情報はまた,例えば,紙に,画像表示として(例えば,2次元としてまたは疑似三次元画像としてコンピュータモニター上に)または三次元物理的モデルとして,物理的にまたは視覚的に二次元または三次元で表すことができる。このような物理的表示はまた,単独または電子表示と関連して使用できる。例示的な有用な表示としては,それだけには限らないが,以下のものが挙げられる:
原子座標表示
表示の1つの型として,分子構造,構造の一部または複合体(例えば,共結晶)中の特定の原子の位置を表す原子座標の羅列または表がある。このような表示はまた,さらなる情報,例えば特定の座標の占有率に関する情報を含み得る。1つのこのような原子座標表示は,表5の座標情報を電子形式で含む。
エネルギー表面または相互作用表面表示
別の表示としては,例えば,活性部位またはその他の結合部位のエネルギー表面表示があり,これは電子および立体相互作用のエネルギー表面を表す。このような表示もまたその他の特徴を含み得る。例としては,特定のアミノ酸残基または特定のアミノ酸残基上の基,例えば,H結合もしくはイオン性相互作用に参加し得る残基または基の表示を含むことがある。このようなエネルギー表面表示は種々の利用可能なコンピュータプログラムのいずれかを用いて原子座標表示から容易に作製することができる。
構造表示
さらにもう1つの表示として構造表示,すなわち,物理的表示またはこのような物理的表示の電子表示がある。このような構造表示としては,分子または複合体の特定の特徴の関連位置の表示が挙げられるが,これは構造的特徴間の結合に関することが多い。例えば,中でも,すべての原子が結合している;水素以外の原子が結合している;重大な電子相互作用に参加し得る側鎖原子の表示は含むか含まない,主鎖原子が結合している構造を表
すことができる。しかし,すべての特徴が結合している必要はない。例えば,分子または複合体の一部の構造表示については,特徴を表すことができるために構造的特徴(例えば,結合部位でリガンドとの有意な結合相互作用を有し得るアミノ酸残基の原子)は重大である。そのようなアミノ酸残基は互いに結合していない場合もある。
構造表示はまた,図式表示でもあり得る。例えば,図式表示は図式的に二次および/または三次構造を表すことができる。このようなポリペプチドの図式表示内に,特定のアミノ酸残基もしくは残基上の基,例えば,結合部位中の保存された残基,および/または結合化合物と相互作用し得る残基もしくは基を含めることができる。電子構造表示は,例えば,その機能のために設計されたコンピュータプログラムを用いて原子座標情報から,および/または別の形の構造情報の解釈に基づいて手動入力で電子表示を構築することによって作製できる。物理的表示は,例えば,コンピュータ生成画像の画像を印刷することによって,または3Dモデルを構築することによって作製できる。このような印刷された表示の例としては,図2に示されるリボンダイアグラムがある。
VII.構造座標を用いる,構造未知のキナーゼの構造決定
構造座標,例えば表2に示されるものを用いて,構造未知のキナーゼの三次元構造を決定することができる。以下に記載した方法は,構造既知のポリペプチドの構造座標を,別のデータセット,例えばアミノ酸配列,X線結晶学回析データまたは核磁気共鳴(NMR)データに適用することができる。本発明の好ましい実施形態は,修飾されたキナーゼ,その他の天然キナーゼおよび関連ポリペプチドの三次元構造を決定することに関する。
アミノ酸相同性を用いる構造
ホモロジーモデリングは,構造既知のポリペプチドの構造座標を,構造未知のポリペプチドのアミノ酸配列に適用する方法である。この方法は,ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の三次元構造のコンピュータ表示,構造既知および未知のポリペプチドのアミノ酸配列のコンピュータ表示,およびアミノ酸の構造の標準コンピュータ表示を用いて達成する。ホモロジーモデリングは一般に,(a)既知構造を有する,および有さないポリペプチドのアミノ酸配列をアラインすることと,(b)既知構造中の保存されたアミノ酸の座標を,構造未知のポリペプチドの対応するアミノ酸に移すこと,その結果生じる三次元構造を精密化することと,(d)残りのポリペプチドの構造を構築することとを含む。当業者ならば,ステップ(a)における配列アラインメントステップから,2つのタンパク質間で保存されたアミノ酸を決定できることは承知している。
前記の方法は当業者にはよく知られている(グリア(Greer)(1985)サイエンス(Science)228:1055頁);ブランデル(Blundell)ら.A(1988)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry)172:513頁。当業者によってホモロジーモデリングに利用できる例示的コンピュータプログラムとしては,アクセレリス社(Accelerys Inc.)によって流通されているインサイト(Insight)IIモデリングパッケージ中のホモロジーモジュールがある。
アミノ酸配列のアラインメントは,まず構造既知のポリペプチドのアミノ酸配列のコンピュータ表示を,構造未知のポリペプチドのアミノ酸配列の上に置くことによって達成する。次いで,配列中のアミノ酸を比較し,相同であるアミノ酸の群(例えば,化学的性質−脂肪族,芳香族,極性または帯電において同様であるアミノ酸側鎖)を一緒にしてグループ化する。この方法によって,ポリペプチドの保存された領域が検出され,アミノ酸挿入または欠失が明らかとなる。このようなアラインメントおよび/または,配列アラインメントおよび解析ソフトウェアを用いて完全に電子的に実施できる。
構造既知および未知のポリペプチドのアミノ酸配列をアラインすると,構造既知のポリ
ペプチドのコンピュータ表示中の保存されたアミノ酸の構造を,構造が未知であるポリペプチドの対応するアミノ酸に移す。例えば,既知構造のアミノ酸配列中のチロシンをフェニルアラニン,未知構造のアミノ酸配列中の対応する相同アミノ酸で置き換えることができる。
非保存領域中に位置するアミノ酸の構造は,標準ペプチド幾何学または分子シミュレーション技術,例えば分子ダイナミクスのいずれかを用いて手作業で割り当てるべきものである。プロセスの最終ステップは,分子ダイナミクスおよび/またはエネルギー最小化を用いて全構造を精密化することによって達成する。ホモロジーモデリング法は当業者にはよく知られており,種々のタンパク質分子を用いて実施されている。例えば,セリン/トレオニンタンパク質キナーゼ,ミオシン軽鎖タンパク質キナーゼの触媒ドメインに相当するポリペプチドの三次元構造が,c−AMP依存性タンパク質キナーゼ触媒サブユニットからホモロジーモデリングされた。(ナイトン(Knighton)ら(1992)サイエンス258:130〜135頁)。
分子置換を用いる構造
分子置換は,構造既知のポリペプチドのX線回析データを,配列未知のポリペプチドのX線回析データに適用する方法である。この方法を利用して,振幅が既知である場合にのみ構造未知のポリペプチドのX線回析データを表す位相を規定することができる。X−PLORは,分子置換のために用いられる,広く用いられているコンピュータソフトウェアパッケージである。ブルンガー(Brunger)(1992)ネイチャー355:472〜475頁。AMOREは,分子置換に用いられるもう1つのプログラムである。ナバザ(Navaza)(1994)アクタ・クリスタログラフィカ(Acta Crystallographica)A50:157〜163頁。得られた構造は3Åより大きい二乗平均平方根偏差を示さないことが好ましい。
分子置換の目標は,2種の結晶から得た電子回析データをマッチさせることによって単位セル中の原子の位置をアラインすることである。X−PLORなどのプログラムは4つのステップを含み得る。第1のステップは,単位セル中の分子数を決定することおよびそれらの間の角度を規定することであり得る。第2のステップは,単位セル中の分子の配向を規定するために回析データを回転させることを含み得る。第3のステップは,単位セル中の分子を正しく位置づけるために三次元の電子密度を翻訳することであり得る。X回析データの振幅および位相が決定されると,参照データセットから実験によって算出された電子回析マップと新規データセットから算出された電子回析マップとを比較することによってR因子を算出することができる。30〜50%の間のR因子は,この方法によって単位セル中の原子の配向が合理的に決定されていることを示す。プロセスの第4のステップは,本明細書に記載される,および当業者に公知の反復精密化技術を用いて新規電子密度マップを精密化することによってR因子を約20%に低下させることであり得る。
NMRデータを用いる構造
X線結晶学技術から得られたポリペプチドまたはポリペプチド複合体の構造座標を,核磁気共鳴(NMR)データからのポリペプチドの三次元構造の解明に向けて適用することができる。この方法は当業者には用いられている。(ビュートリッヒ(Wuthrich)(1986),ジョン・ウィレー・アンド・サンズ,ニューヨーク:176〜199頁;プフルグラス(Pflugrath)ら(1986)ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)189:383〜386頁;クライン(Kline)ら(1986)ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー189:377〜382頁)。ポリペプチドの二次構造は二次元NNRデータを用いることによって容易に決定されることが多いが,二次構造の個々の要素間の空間的関係は同じようには容易に決定できない。X線結晶学技術から得られたポリペプチドの三次元構造を規定する座標は,NMR分光学者を,関連
構造のポリペプチド中の二次構造要素間のこういった空間的相互関係の理解へ導き得る。
二次構造要素間の空間的相関関係についての知識によって,二次元NMR実験から得られる核オーバーハウザー効果(NOE)データが大幅に単純化され得る。さらに,NMR技術によって二次構造を決定した後に結晶学座標を適用することは,ポリペプチド配列中の特定のアミノ酸に関連するNOEの割り当てが単純化されるだけで,ポリペプチド構造のNMR解析に大きくバイアスをかけるものではない。逆に言えば,ポリペプチドの二次構造を決定しながらNOEデータを単純化するために結晶学座標を用いることは,タンパク質構造のNMR解析にバイアスをかける。
VIII.構造座標を用いるRet機能の調節剤の構造ベースの設計
構造ベースの調節剤設計および同定法は強力な技術であり,これは多種多様な可能性ある調節剤および化学官能基を含むコンピュータデータベースの検索を含み得る。調節剤のコンピュータ化した設計および同定は,コンピュータデータベースが,化学ライブラリーよりも,しばしば1桁規模で多くの化合物を含むので有用である。構造ベースの薬物設計および同定の概説については,カンツ(kuntz)ら(1994),アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ(Accounts of Chemical Research)27:117頁,ガイダ(Guida)(1994)カレント・オピニオン・イン・ストラクチャラル・バイオロジー(Current Opinion
in Structural Biology)4:777頁,コールマン(Colman)(1994)カレント・オピニオン・イン・ストラクチュラル・バイオロジー4:868頁参照。
構造座標によって規定されるポリペプチドの三次元構造を,これらの設計法,例えば,表2の構造座標によって利用できる。さらに,本明細書に記載される,ホモロジー,分子置換およびNMR技術によって決定されるキナーゼの三次元構造もまた調節剤設計および同定法に適用できる。
調節剤を同定するために,天然キナーゼの構造情報,特に,キナーゼの活性部位の構造情報を使用できる。しかし,キナーゼと1種以上の結合化合物との1種以上の共結晶から得られる構造情報を利用することは有利であり得る。また,結合化合物が試験化合物に共通する構造コアを有する場合にも有利であり得る。
分子データベースの検索による設計
合理的設計の一方法では,分子のデータベースから得た化合物のコンピュータ表示をドッキングすることによって調節剤を検索する。公的に入手可能なデータベースとしては,例えば以下のものがある:
a)モレキュラー・デザインズ・リミテッド(Molecular Designs Limited)製のACD
b)国立癌研究所製のNCI
c)ケンブリッジ結晶データセンター製のCCDC
d)ケミカル・アブストラクト・サービス(Chemical Abstract Service)製のCAST
e)ダーウェント・インフォメーション・リミテッド(Derwent Information Limited)製のダーウェント(Derwent)
f)メイブリッジ・ケミカル・カンパニー(Maybridge Chemical Company)LTD製のメイブリッジ(Maybridge)
g)アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)製のアルドリッチ(Aldrich)
h)チャップマン&ホール(Chapman & Hall)製の天然物のディレクトリ。
このようなデータベースの1つ(モレキュラー・デザインズ・リミテッド・インホメーション・システムズ(Molecular Designs Limited Information Systems)によって流通されているACD)には,合成によって誘導されたか,天然物である化合物が含まれている
。当業者に利用できる方法によって,二次元で表されるデータセットを,三次元で表されるものへ変換することができる。これらの方法は,トライポス・アソシエイテス(Tripos Associates)製のCONCORDまたはモレキュラー・シミュレーションズ・リミテッド(Molecular Simulations Limited)製のDE−コンバーター(Converter)のようなコンピュータプログラムによって可能である。
当業者には,構造ベースの調節剤設計の複数の方法が知られている。(カンツ(Kuntz)ら,(1982),ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)162:269頁,カンツら,(1994),アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ(Accounts of Chemical Research)27:117頁;メン(Meng)ら,(1992),ジャーナル・オブ・コンピュータ・ケミストリー(Journal of Computer Chemistry)13:505頁;ボーム(Bohm),(1994),ジャーナル・オブ・コンピュータ−エイデド・モレキュラー・デザイン(Journal of Computer-Aided Molecular Design)8:623頁)。
合理的調節剤設計の当業者に広く用いられているコンピュータプログラムとして,カリフォルニア大学サンフランシスコ校製のDOCKがある。このコンピュータプログラムおよびそのようなプログラムによって利用される一般的な方法を,以下の3つの適用で説明する。これらの技術のいくつかに関するより詳細な情報は,アクセレリス・ユーザー・ガイド1995に見出すことができる。この目的に用いられる通常のコンピュータプログラムは,以下のステップまたは機能を含むプロセスを実施できる:
(a)タンパク質から既存の化合物を除去すること,
(b)コンピュータプログラム(DOCKなど)を用いて,または化合物を活性部位にインタラクティブに移動させることによって,別の化合物の構造を活性部位にドッキングすること,
(c)化合物と活性部位原子間の空間を特性決定すること,
(d)(i)化合物と活性部位の間の空の空間にフィッティングでき,(ii)化合物と結合できる分子断片のライブラリーを検索すること,
(f)前記で見出した断片を化合物に結合させ,新規の修飾された化合物を評価すること。
パート(c)は,活性部位の原子と化合物の間に形成される幾何学および相補的相互関係を特性決定することを指す。好都合な幾何学的適合性は,化合物と活性部位原子間に,都合の悪い立体的相互作用を形成せずに相当な表面積が共有される場合に得られる。当業者ならば,本方法はパート(d)および(e)を省略し,多数の化合物のデータベースをスクリーニングすることによって実施できるということは気付くであろう。
キナーゼ機能の調節剤の構造ベースの設計および同定はアッセイスクリーニングとともに使用できる。化合物のより大きなコンピュータデータベース(約10,000種の化合物)を,ほんの数時間またはさらに短い間で検索できるので,コンピュータベースの方法によって,キナーゼ機能の可能性ある調節剤として生化学または細胞アッセイにおいて試験される化合物を縮小できる。
構造ベースの調節剤設計についての前記の説明は,すべてを包含しているわけではなく,文献にはその他の方法も報告されており,使用することができる。例えば:
(1)CAVEAT:ケミカル・アンド・バイオロジカル・プロブレムズ・イン・モレキュラー・レコグニション(Chemical and Biological Problems in Molecular Recognition),中のバートレット(Bartlett)ら,(1989),ロバート(Roberts) ,S.M.,レイ(Ley) ,S.V.,キャンベル(Campbell),M.M.編,ロイヤル・ソサイエティー・オブ・ケミストリー(Royal Society of Chemistry,ケンブリッジ182〜196頁。
(2)FLOG:ミラー(Miller)ら,(1994),ジャーナル・オブ・コンピュータ−エイデド・モレキュラー・デザイン(Journal of Computer-Aided Molecular Design)8:153頁。
(3)PRO 調節剤:クラーク(Clark)ら,(1995),ジャーナル・オブ・コンピュータ−エイデド・モレキュラー・デザイン9:13頁。
(4)MCSS:ミランカー(Miranker)およびカープラス(karplus),(1991),プロテインズ(Proteins):ストラクチャー,ファンクション,アンド・ジェネティクス(Structure, Function, and Genetics)11:29頁。
(5)AUTODOCK:グッドセル(Goodsell)およびオルソン(Olson),(1990),プロテインズ:ストラクチャー,ファンクション,アンド・ジェネティクス8:195頁。
(6)GRID:グッドフォード(Goodford),(1985),ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)28:849頁。
RetまたはRet代替物との複合体中の化合物を修飾することによる設計
可能性ある調節剤として化合物を同定するもう1つの方法は,ポリペプチド活性部位に既存の調節剤を修飾することである。例えば,調節剤のコンピュータ表示を,RetまたはRet代替物活性部位のコンピュータ表示内で修飾することができる。この技術のための詳細な指示は,例えば,LUDI中,アクセレリス・ユーザー・マニュアル(Accelerys
User Manual),1995に見出すことができる。調節剤のコンピュータ表示は,通常,化学基または複数の化学基を欠失させることまたは化学基または複数の化学基を付加することによって修飾する。
化合物への各修飾の際に,修飾される化合物および活性部位の原子は,立体構造中でシフトされることがあり,2つの分子間に形成される何らかの相補的相互作用とともに調節剤と活性部位原子間の距離のスコアをつけることができる。スコアリングは,好都合な幾何学的適合性および好都合な相補的相互作用が得られた時に完了できる。好都合なスコアを有する化合物が可能性ある調節剤である。
RetまたはRet代替物と結合する化合物の構造を修飾することによる設計
構造ベースの調節剤設計の第3の方法は,調節剤構築または調節剤検索コンピュータプログラムによって設計された化合物をスクリーニングすることである。こういった種類のプログラムの例は,モレキュラー・シミュレーションズ・パッケージ,カタリスト(Molecular Simulations Package,Catalyst)に見出すことができる。このプログラムを用いるための説明はモレキュラー・シミュレーションズ・ユーザー・ガイド(1995)に記録されている。この適用に用いられるその他のコンピュータプログラムとしては,モレキュラー・デザインズ・リミテッド(Molecular Designs Limited)製のISIS/HOST,ISIS/BASE,ISIS/DRAWおよびトライポス・アソシエーテス(Tripos Associates)製のUNITYがある。
これらのプログラムは,化合物−キナーゼ複合体の三次元構造の活性部位から除去された化合物の構造で動作させることができる。このような化合物でプログラムを動作させることは,それが生物学的に活性な立体構造にあるために好ましい。
調節剤構築コンピュータプログラムとは,キナーゼまたはその他の生体分子と複合体を形成している化合物中の複数の化学基のコンピュータ表示を,コンピュータデータベースから得た複数の基で置き換えるために使用できるコンピュータプログラムである。調節剤検索コンピュータプログラムとは,コンピュータデータベースから,特定の生体分子と結合している化合物と同様の三次元構造および同様の化学基を有する化合物のコンピュータ表示を検索するために使用できるコンピュータプログラムである。
通常のプログラムは,以下の一般的なステップを用いることによって動作し得る:
(a)化合物を,水素結合ドナーまたはアクセプター,疎水性/親油性部位,正にイオン化可能な部位または負にイオン化可能な部位などの化学的特徴によってマッピングすること;
(b)マッピングされた特徴に幾何学的制約を加えること;および
(c)(b)で作製したモデルでデータベースを検索すること。
当業者ならば,(b)のモデルには化合物のすべての可能性ある化学的特徴が存在する必要はないということも認識している。モデルのいずれかのサブセットを使用して,データベース検索のための種々のモデルを作製することができる。
分子スキャフォールドを用いる調節剤設計
本発明はまた,分子ファミリーに広くわたって作用できる分子スキャフォールドと称される化合物を設計する方法,および/または分子スキャフォールドを使用して,そのようなファミリーの個々のメンバーまたは複数のメンバーを標的とするリガンドを設計する方法を利用できることが有利である。このような分子スキャフォールドを用いる設計は,参照によりその全文が本明細書に組み込まれる,ヒルト(Hirth)およびミルバーン(Milburn),米国特許出願10/377,268に記載されている。このような分子スキャフォールドを用いる設計および開発を,一部,以下に記載する。
好ましい実施形態では,分子はタンパク質であり得,1)特定のタンパク質ファミリーに作用するよう化学的に設計されており,かつ/または2)むしろ分子スキャフォールドのような挙動をする特性を有する,つまり,それらが,それらを注目するファミリー中の1種以上のタンパク質との結合に対して特異的にする化学的部分構造を有することを意味する化学化合物のセットを集めることができる。あるいは,個々の標的分子に対して選択的に活性である分子スキャフォールドを設計できる。
分子スキャフォールドの有用な化学的特性は,以下の特徴のうちの1以上を含み得るがそれに限定されるものではない:約350ダルトンより小さい,または約150〜約350ダルトンの間,または約150〜約300ダルトンの間の平均分子量;clogPが3より低いこと;回転可能な結合数が4未満である;水素結合ドナーおよびアクセプターの数が5より少ないか,または4より少ないこと;極性表面積が50Å2未満であること;スキャフォールドと結合しているコンビナトリアルライブラリーから得た化学置換基がタンパク質結合部位中のポケット中に突き出ることができるような配向でのタンパク質結合部位での結合;および置換基結合点に化学的に扱いやすい構造を有し,それを修飾でき,それによって迅速にライブラリー構築が可能となること。
「clogP」とは,化合物の算出されたlogPを意味し,「P」はオクタノールと水の間の分配計数を指す。
用語「分子の極性表面積(PSA)」とは,分子中の極性原子(通常,酸素,窒素および結合されている水素)の表面寄与の合計を指す。極性表面積は薬物輸送特性,例えば腸内吸収または血液脳関門透過と十分に相関があることがわかっている。
コンビナトリアルライブラリーに含めるための,別個の化合物のさらなる有用な化学的特性としては,化合物の,少なくとも1種の注目するタンパク質との結合を干渉せず,ライブラリーメンバーに所望の特性を付与する化学部分を化合物に結合させる,例えば,ライブラリーメンバーを,注目する細胞および/または器官に活発に輸送されるようにする能力,または組織などの用途のため,およびプロテオミクスプロファイリング目的のクロ
マトグラフィーカラム(例えば,ビオチンなどの分子を介するストレプトアビジンカラム)などの装置を結合させる能力が挙げられる。
当業者ならば,使用するための特定の必要条件に応じて有することがスキャフォールドまたはライブラリーメンバーにとって望ましいものであり得るその他の特性,およびこういった特性を有する化合物も,同様に探し,同定することができるということを認識するであろう。アッセイのために化合物を選択する方法は,当業者には知られており,例えば,米国特許題6,288,234号,同6,090,912号,同5,840,485号に記載された方法および化合物があり,これらの各々は参照により,すべての図表および図面を含むその全文が本明細書に組み込まれる。
種々の実施形態では,本発明は,分子ファミリーの複数のメンバーと結合し,共通の分子スキャフォールドを含むリガンドを設計する方法を提供する。したがって,化合物セットは,分子ファミリー,例えば,タンパク質ファミリーの複数のメンバーとの結合についてアッセイすればよい。複数のファミリーメンバーと結合する1種以上の化合物を,分子スキャフォールドとして同定できる。標的分子の結合部位でのスキャフォールドの配向が決定されており,化学的に扱いやすい構造が同定されている場合は,各リガンドが,スキャフォールドに対して変更された,または変化した結合親和性または結合特異性を有する分子ファミリーの別個の標的分子と結合する複数のリガンドに到達するために,1種または数種の分子スキャフォールドを用いて開始してリガンドのセットを合成できる。したがって,同一の分子スキャフォールドに基づいて分子ファミリーの個々のメンバーを選択的に標的とし,それらに対して特異的に作用する複数の薬物リード分子が設計できる。
IX.結合アッセイ
本発明の方法は,化合物と標的分子との結合を検出できるアッセイを含み得る。統計的に有意水準でのこのような結合は,アッセイシグナルが標的分子との結合を表す,すなわちバックグラウンドとは区別されるという,少なくとも90%の信頼水準を有することが好ましく,少なくとも95,97,98,99%またはより大きな信頼水準を有することがより好ましい。対照を用いて標的結合を非特異的結合と区別することが好ましい。本発明のアッセイはまた,標的分子との低親和性結合について化合物をアッセイすることを含み得る。種々の標的型について,結合を示す多種多様なアッセイが知られており,本発明に使用できる。タンパク質ファミリーにわたって広く作用する化合物は,その結合性が広いことから個々の標的に対して高親和性を有する可能性は低い。したがって,本明細書に記載されるアッセイは,低親和性,極めて低い親和性,および極度に低い親和性で結合する化合物の同定を考慮する。したがって,作用強度(すなわち結合親和性)は,有用である可能性のある結合化合物の第一義的なものでもなく,さらに最も重要なものでもない,同定のしるしである。むしろ,低親和性,極めて低い親和性または極度に低い親和性で結合する化合物でさえ,リガンド設計プロセスの次のフェーズに続けることができる分子スキャフォールドとして考えることができる。
「低親和性」での結合とは,標準条件下での解離定数(kd)が1μMより大きい標的分子との結合を意味する。「極めて低い親和性」での結合とは,標準条件下での前記のkdが約100μMである結合を意味する。「極めて低い親和性」での結合とは,標準条件下での前記のkdが約1mMである結合を意味する。「中程度の親和性」とは,標準条件下でのkdが約200nM〜約1μMである結合を意味する。「中程度に高い親和性」とは,kdが約1nM〜約200nMの結合を意味する。「高親和性」での結合とは,標準条件下でのkdが約1nMより低い結合を意味する。例えば,低親和性結合は,標的分子の結合部位への低い適合のために,またはスキャフォールドもしくはリガンドの標的分子の結合部位との結合を引き起こすよう存在する,より高い親和性結合が生じる場合と比較して少数の非共有結合,もしくは弱い共有結合のために生じ得る。結合の標準条件とは,
pH7.2,37℃で1時間である。例えば,HEPES 50mMバッファー,pH7.2,NaCl 15mM,ATP 2μMおよびウシ血清アルブミン1μg/ウェルの100μl/ウェルを37℃で1時間使用できる。
結合化合物はまた,標的分子の活性に対するその作用によって特性決定できる。したがって「低活性」化合物は,標準条件下で1μMより高い阻害濃度(IC50)または励起濃度(EC50)を有する。「極めて低い活性」とは,標準条件下で約100μMというIC50またはEC50を意味する。「極度に低い活性」とは,標準条件下で約1mMというIC50またはEC50を意味する。「中程度の活性」とは,標準条件下で200nM〜1μMというIC50またはEC50を意味する。「中程度に高い活性」とは,1nM〜200nMというIC50またはEC50を意味する。「高い活性」とは,標準条件下で1nMより低いIC50またはEC50を意味する。IC50(またはEC50)は,化合物が存在しない場合の活性と比較して,測定されている標的分子(例えば,酵素またはその他のタンパク質)活性の50%の活性が失われる(または獲得される)化合物の濃度として規定される。活性は当業者に公知の方法を用いて,例えば,酵素反応の出現によって生じたいずれかの検出可能な産物またはシグナル,または測定されているタンパク質によるその他の活性を測定することによって測定できる。
結合アッセイに関連して,「バックグラウンドシグナル」とは,標的分子と結合する,試験化合物,分子スキャフォールド,またはリガンドの不在下において特定のアッセイの標準条件下で記録されるシグナルを意味する。当業者ならば,バックグラウンドシグナルを決定するための認められた方法が存在し,広く利用可能であるということは理解されよう。
「標準偏差」とは,分散の平方根を意味する。分散は分布がどのように広がっているかという尺度である。その平均から各数の平均偏差平方としてコンピュータによって計算される。例えば,数1,2および3については,平均は2であり,分散は以下である:
σ2(1−2) 2 +(2−2) 2 +(3−2) 2 =0.667
タンパク質ファミリーにわたって広く作用するスキャフォールドを設計または発見するためには,注目するタンパク質を,化合物収集物またはセットに対してアッセイできる。アッセイは酵素アッセイまたは結合アッセイであり得ることが好ましい。いくつかの実施形態では,スクリーニングされている化合物の可溶性を高め,次いで,低親和性で結合するものまたはバックグラウンドシグナルの標準偏差の約3倍大きなシグナルを生じるものを含む,アッセイにおいて活性を示すすべての化合物を解析することが望ましい場合がある。アッセイは適したアッセイであればいずれであってもよく,例えば,2種の結合パートナー間の結合親和性を測定する結合アッセイなどがある。本発明の実施において有用であり得る各種スクリーニングアッセイは当技術分野では公知であり,例えば米国特許第5,763,198号,同5,747,276号,同5,877,007号,同6,243,980号,同6,294,330号および同6,294,330号に記載されたものがあり,これらの各々は参照により,すべての図表および図面を含むその全文が本明細書に組み込まれる。
アッセイの種々の実施形態では,少なくとも1種の化合物,少なくとも約5%,少なくとも約10%,少なくとも約15%,少なくとも約20%または少なくとも約25%の化合物が低親和性で結合し得る。一般に,化合物の約20%までが,スクリーニングアッセイにおいて活性を示し得,次いで,これらの化合物をハイスループット共結晶学,化合物を共通の構造特性(例えば,構造コアおよび/または形および極性特性)を有するクラスに分類するコンピュータによる解析,および活性を示す化合物間の共通化学構造の同定を
用いて直接解析できる。
当業者ならば,決定は特定の状況の必要性にとって適切である基準に基づいたものであり得るということ,および決定はコンピュータソフトウェアプログラムによってなすことができるということは理解されよう。ほとんどどんな数のスキャフォールドも含んでクラスを作製でき,選択される基準は,任意の数のスキャフォールドが,有利であると思われる各クラスに到達するまで,徐々に厳しい基準に基づくものであり得る。
表面プラスモン共鳴
結合パラメーターは表面プラスモン共鳴を用いて,例えば,固定化された結合成分でコーティングされたビアコア(BIAcore)(登録商標)チップ(ビアコア,ジャパン(Biacore, Japan))を用いて測定できる。表面プラスモン共鳴を用いて,sFvまたは標的分子に対するその他のリガンド間の反応の微視的結合定数および解離定数を特性決定する。このような方法は,参照により本明細書に組み込まれる以下の参照文献に概説されている。ベリー(Vely)Fら,(2000)ホスホペプチド−SH2ドメイン相互作用を調べるためのビアコア(登録商標)解析(BIAcore(R) analysis to test phosphopeptide-SH2 domain
interactions),メソッズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods in Molecular Biology)121:313〜21頁,リパロト(Liparoto)ら,(1999)インターロイキン−2受容体複合体のバイオセンサー解析(Biosensor analysis of the interleukin-2 receptor complex),ジャーナル・オブ・モレキュラー・レコグニッション(Journal of Molecular Recognition)12:316〜21頁,リップシュルツ(lipschultz)ら,(2000)表面プラスモン共鳴を用いる複合体動力学の解析のための実験設計(Experimental design for analysis of complex kinetics using surface plasmon resonance),メソッヅ(Methods)20(3):310〜8頁,マルムクヴィスト(Malmqvist),(1999)ビアコア:生体分子の相互作用を特性決定するための親和性バイオセンサーシステム(BIACORE: an affinity biosensor system for characterization of biomolecular interactions),バイオケミカル・ソサイエティー・トランサクションズ27:335〜40頁,アルサン(Alfthan),(1998)抗体工学におけるツールとしての表面プラスモン共鳴バイオセンサー(Surface plasmon resonance biosensors as a tool in antibody engineering),バイオセンサーズ&バイオエレクトロニクス(Biosensors & Bioelectronics)13:653〜63頁,フィバッシュ(Fivash)ら,(1998)高分子相互作用のためのビアコア(BIAcore for macromolecular interaction),カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology)9,97〜101頁,プライス(Price)ら,(1998)ISOBM TD−4ワークショップでの概略報告:MUC1ムチンに対する56種のモノクローナル抗体の解析(Summary report on the ISOBM TD-4 Workshop: analysis of 56 monoclonal antibodies against the MUC1 mucin.)チューモア・バイオロジー(Tumour Biology)19付録1:1〜20頁,マルムクヴィスト(Marmqvist)ら,(1997)生体分子相互作用解析:タンパク質の機能解析のための親和性バイオセンサー技術(Biomolecular interaction analysis: affinity biosensor technologies for functional analysis of proteins),カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー(Current Opinion in Chemical Biology)1:378〜83頁,オーシャネシー(O'Shannessy)ら,(1996),バイオセンサー技術によるリガンド結合の特性決定における偽一次速度式挙動から得た偏差の解釈(Interpretation of deviations from pseudo-first-order kinetic behavior in the characterization of ligand binding by biosensor technology),アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)236:275〜83頁,マルムボリ(Malmborg)ら,(1995)抗体工学におけるツールとしてのビアコア(BIAcore as a tool in antibody engineering),ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッヅ(Journal of lmmunological Methods.)183:7〜13頁,ヴァン・レゲンモルテル(Van Regenmortel),(1994)組換えタンパク質を特性決定するためのバイオセンサーの使用(Use of biosensors to characterize recombinant proteins),
デベロップメンツ・イン・バイオロジカル・スタンダーダイゼーション(Developments in
Biological Standardization)83:143〜51頁およびオーシャネシー(O'Shannessy),(1994)高分子相互作用の運動速度定数および平衡結合定数の決定:表面プラスモン共鳴文献の批評(Determination of kinetic rate and equilibrium binding constants for macromolecular interactions: a critique of the surface plasmon resonance literature),カレント・オピニオンズ・イン・バイオテクノロジー(Current Opinions in Biotechnology)5:65〜71頁。
ビアコア(登録商標)は表面プラスモン共鳴(SPR)の光学特性を使用して,金/ガラスセンサーチップインターフェース,デキストランバイオセンサーマトリックスの表面に位置するデキストランマトリックスに結合しているタンパク質濃度の変化を検出する。簡潔には,タンパク質は既知の濃度でデキストランマトリックスと共有結合しており,タンパク質のリガンドをデキストランマトリックスを通して注入する。センサーチップ表面の反対側に向けられた近赤外線が反射され,また,金フィルム中にエバネセント波を誘導し,これが順に,共鳴角として知られる特定の角度での反射光の強度低下を引き起こす。センサーチップ表面の屈折率が変更されれば(例えば,リガンドの,結合されるタンパク質への結合によって),共鳴角のシフトが生じる。この角度シフトを測定でき,1000RUが1ng/mm2という表面タンパク質濃度の変化に相当するような共鳴単位(RU)として表す。これらの変化は,センサーグラム(sensorgram)のy軸に沿って時間に関して表示され,これはいずれかの生物反応の会合および解離を表す。
ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイ
HTSは通常自動化アッセイを用いて,所望の活性について多数の化合物を検索する。通常,HTSアッセイは,特定の酵素または分子に対して作用する化学物質についてスクリーニングすることによって新規薬物を見出すために用いる。例えば,ある化学物質が酵素を不活化する場合に,疾病を引き起こす細胞内プロセスの阻止において有効であるとわかる場合がある。ハイスループット法によって研究者が,ロボットハンドリングシステムおよび結果の自動解析を用いて各標的分子に対して何千もの種々の化学物質を極めて迅速にアッセイするのが可能になる。
本明細書において,「ハイスループットスクリーニング」または「HTS」とは,ロボットスクリーニングアッセイを用いる,多数の化合物(ライブラリー),通常,数十〜数十万の化合物の迅速なin vitroスクリーニングを指す。ウルトラハイスループットスクリーニング(uHTS)は通常,1日当たり100,000より多くの試験に加速されたハイスループットスクリーニングを指す。
ハイスループットスクリーニングを達成するためには,サンプルをマルチコンテナ担体またはプラットフォームに保管することが有利である。マルチコンテナ担体によって,複数の候補化合物の同時測定反応が容易になる。マルチウェルマイクロプレートも担体として使用できる。このようなマルチウェルマイクロプレートおよび多数のアッセイにおけるその使用方法は当技術分野では公知であるだけでなく,市販もされている。
スクリーニングアッセイには,校正目的およびアッセイの要素の適切な操作を確認する目的で対照を含めることができる。反応物のすべてを含むが化学ライブラリーのメンバーは含まないブランクウェルを通常含める。もう1つの例として,調節剤が探索されている酵素の既知の阻害剤(またはアクチベーター)を,アッセイの一サンプルと共にインキュベートしてもよく,得られた酵素活性の低下(または増加)をコンパレータまたは対照として用いる。当然のことながら,また,調節剤を酵素アクチベーターまたは阻害剤と組合せ,そうでなければ既知の酵素調節剤の存在によって引き起こされる酵素活性化または抑圧を阻害する調節剤を見出すことができる。同様に,スフィンゴ脂質標的に対するリガン
ドを探索する場合には,標的の既知のリガンドを対照/校正アッセイウェル中に存在させることができる。
スクリーニングアッセイの際の酵素反応および結合反応の測定
例えば,マルチコンテナ担体中で酵素反応および結合反応の進行を測定する技術は当技術分野では公知であり,それだけには限らないが,以下のものが挙げられる。
分光光度アッセイおよび分光蛍光アッセイは当技術分野では周知である。このようなアッセイの例としては,ゴードン(Gordon),A.J.およびフォード(Ford),R.A.(1972)ザ・ケミスツ・コンパニオン:ア・ハンドブック・オブ・プラティカル・データ,テクニーク・アンド・リファレンシズ(The Chemist's Companion: A Handbook Of Practical Data, Techniques, And References)ジョン・ウィレー・アンド・サンズ,ニューヨーク,437頁に記載されるような過酸化物の検出のための比色アッセイの使用が挙げられる。
蛍光分光分析法を使用して反応生成物の生成をモニターできる。蛍光法は,一般に,吸収法よりも感度が高い。蛍光プローブの使用は当業者にはよく知られている。概説については,バッシュフォード(Bashford)ら,(1987)スペクトロフォトメトリー・アンド・スペクトロフルオロメトリー:ア・プラクティカル・アプローチ(Spectrophotometry and Spectrofluorometry : A Practical Approach),91〜114頁,IRLプレス社(IRL Press Ltd.)およびベル(Bell),(1981)スペクトロスコーピー・イン・バイオケミストリー(Spectroscopy In Biochemistry),第1巻,115〜194頁,CRCプレス(CRC Press)。
分光蛍光法では,酵素を,標的酵素によって処理されるとその内部蛍光が変化する基質に曝露する。通常,基質は非蛍光であり,1以上の反応によってフルオロフォアに変換される。それだけには限らない例として,アンプレックス(Amplex)(登録商標)レッド試薬(モレキュラー・プローブス,オレゴン州,ユージーン)を用いてSMアーゼ活性を検出できる。アンプレックス(登録商標)レッドを用いてスフィンゴミエリナーゼ活性を測定するために,以下の反応が生じる。まず,SMアーゼがスフィンゴミエリンを加水分解してセラミドとホスホリルコリンが生じる。第2に,アルカリホスファターゼがホスホリルコリンを加水分解してコリンが生じる。第3に,コリンがコリンオキシダーゼによって酸化されてベタインとなる。最後に,H22が,ホースラディッシュぺルオキシダーゼの存在下で,アンプレックス(登録商標)レッドと反応して蛍光生成物,レゾルフィンを生じ,それからのシグナルは蛍光分光分析を用いて検出する。
蛍光偏光法(FP)は,大きな分子,例えば受容体タンパク質との結合の際に生じる,フルオロフォアの分子回転速度の低下と,それによって結合しているリガンドによる偏光蛍光発光が可能になることに基づいている。FPは,平面偏光光での励起後にフルオロフォア発光の垂直および水平成分を測定することによって実験的に定まる。偏光発光は,フルオロフォアの分子回転が低下する場合に増加する。フルオロフォアは,大きな分子(すなわち,受容体)と結合し,フルオロフォアの分子回転を低下させる場合に大きな偏光シグナルを生じる。偏光シグナルの規模は,蛍光リガンド結合の程度と定量的に関連している。したがって,「結合している」シグナルの偏光は,高親和性結合の維持に応じて変わる。
FPは均質な技術であり,反応は極めて迅速であり,平衡に到達するのに数秒〜数分かかる。試薬は安定であり,大きなバッチを調製でき,その結果高い再現性が得られる。これらの特性のために,FPは高度に自動化可能であるとわかっており,単一の,予混,トレーサー−受容体試薬を用いて単一のインキュベーションで実施されることが多い。概説
については,オーウィック(Owicki)ら,(1997),ハイスループットスクリーニングにおける蛍光偏光アッセイの適用(Application of Fluorescence Polarization Assays in High-Throughput Screening),ジェネティック・エンジニアリング・ニュウス(Genetic
Engineering News)17:27頁参照。
FPは,その読み出した情報が発光光度と独立しているので特に望ましく(チェコビッチ(Checovich),W.J.ら,(1995)ネイチャー375: 254〜256頁,ダンドリカー(Dandliker),W.B.ら,(1981)メソッヅ・イン・エンジモロジー(Methods in Enzymology)74:3〜28頁)したがって,蛍光発光をクエンチする着色化合物の存在には非感受性である。FRおよびFRET(以下参照)は,スフィンゴ脂質受容体とそのリガンド間の相互作用をブロックする化合物を同定するのに適している。例えば,パーカー(Parker)ら,(2000)蛍光偏光を用いるハイスループットスクリーニングアッセイの開発:核受容体−リガンド結合およびキナーゼ/ホスフェートアッセイ(Development of high throughput screening assays using fluorescence polarization: nuclear receptor-ligand-binding and kinase/phosphatase assay),ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・スクリーニング(Journal of Biomolecular Screening)5:77〜88頁参照。
FPアッセイに使用できるスフィンゴ脂質に由来するフルオロフォアは市販されている。例えば,モレキュラープローブス(Molecular Probes)(オレゴン州,ユージーン)は,現在,スフィンゴミエリンおよび1種のセラミドフルオロフォアを販売している。これらは,それぞれN−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ペンタノイル)スフィンゴシルホスホコリン(ボディピー(BODIPY)(登録商標)FL C5−スフィンゴミエリン),N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノイル)スフィンゴシルホスホコリン(ボディピー(BODIPY)(登録商標)FL C12−スフィンゴミエリン)およびN−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ペンタノイル)スフィンゴシン(ボディピー(BODIPY)(登録商標)FLC5−セラミド)。米国特許第4,150,949号,(ゲンタマイシンのイムノアッセイ)には,フルオレセインチオカルバニルゲンタマイシンをはじめとするフルオレセイン標識したゲンタマイシンが開示されている。当業者に周知の方法を用いてさらなるフルオロフォアを調製できる。
例示的正常および偏光蛍光リーダーとしては,ポラリオン(POLARION)(登録商標)蛍光偏光システム(テカン(Tecan) AG,スイス,ホンブレッヒティコン(Hombrechtikon))が挙げられる。その他のアッセイ用の一般的なマルチウェルプレートリーダー,例えばヴェルサマックス(VERSAMAX)(登録商標)リーダーおよびスペクトラマックス(SPECTRAMAX)(登録商標)マルチウェルプレートスペクトロフォトメーター(双方ともモレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices))も利用できる。
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は,相互作用を検出するためのもう1つの有用なアッセイであり,これは記載されている。例えば,ハイム(Heim)ら,(1996)カレント・バイオロジー(Current Biology)6:178〜182頁,ミトラ(Mitra)ら,(1996)ジーン(Gene)173:13〜17頁およびセルビン(Selvin)ら,(1995)メソッヅ・イン・エンジモロジー(Methods in Enzymology)246:300〜345頁参照。FRETは,既知の励起および発光波長を有する,近接近している2種の蛍光物質間のエネルギーの移動を検出する。例としては,タンパク質を緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質として発現できる。2種の蛍光タンパク質が近接している場合,例えばタンパク質が標的分子と特異的に相互作用する場合に,共鳴エネルギーが,励起された分子から別のものへ移動し得る。結果として,サンプルの発光スペクトラムがシフトし,これ
を蛍光光度計,例えばfMAXマルチウェル蛍光光度計(モレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices),カリフォルニア州,サニーベール)によって測定することができる。
シンチレーション近接アッセイ(SPA)は,標的分子との相互作用を検出するために特に有用なアッセイである。SPAは製薬産業において広く用いられており,記載されている(ハンゼルマン(Hanselman)ら,(1997)ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ(Journal of Lipid Research)38:2365〜2373頁,カール(kahl)ら,(1996)アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)243:282〜283頁,アンデンフレンド(Undenfriend)ら,(1987)アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)161:494〜500頁)。米国特許第4,626,513号および同4,568,649号および欧州特許第0,154,734号も参照。ある市販のシステムは,フラッシュプレート(FLASHPLATE)(登録商標)シンチラントコートされたプレート(NENライフ・サイエンス・プロダクツ(NEN Life Science Products),マサチューセッツ州,ボストン)を用いている。
標的分子は,種々の周知の手段によってシンチレータープレートと結合できる。融合タンパク質,例えば,GST,His6またはFlag融合タンパク質と結合するよう誘導体化されているシンチラントプレートを利用できる。標的分子がタンパク質複合体または多量体である場合には,まず一方のタンパク質またはサブユニットをプレートに結合することができ,次いで,結合条件下で複合体のもう一方の成分を後で加えることができ,その結合している複合体が得られる。
通常のSPAアッセイでは,発現プール中の遺伝子産物を放射標識しておき,これをウェルに加え,固定化された標的分子である固相およびウェル中のシンチラントコーティングとの相互作用を可能にする。アッセイを直ちに測定してもよいし,平衡に到達させることもできる。どちらにしても,放射標識がシンチラントコーティングと十分に近接する場合に,トップカウントNXT(TOPCOUNT NXT)(登録商標)マイクロプレートシンチレーションカウンター(パッカード・バイオサイエンス社(Packard BioScience Co.),コネチカット州,メリデン)などの装置によって検出可能なシグナルが生じる。放射標識された発現産物が標的分子と結合する場合には,放射標識は,検出可能なシグナルを生じるのに十分なほど長くシンチラントと近接しているままである。
対照的に,標的分子と結合しないか,短時間しか結合しない,標識されたタンパク質は,バックグラウンドを上回るシグナルを生じるのに十分なほど長い間シンチラントと近いままではない。ランダムなブラウン運動によって引き起こされるシンチラントの近くで過ごす時間もいずれも,有意な量のシグナルをもたらさない。同様に,発現ステップの際に用いられる,残存する組み込まれていない放射標識も存在し得るが,標的分子と相互作用しているというよりもむしろ溶液中にあるため,有意なシグナルは生成しない。これらの非結合相互作用は,それゆえ,あるレベルのバックグラウンドシグナルを引き起こすが,これは数学的に除去できる。多すぎるシグナルが得られる場合には,塩またはその他の修飾因子を,所望の特異性が得られるまでアッセイプレートに直接加えることができる(ニコールズ(Nichols)ら,(1998)アナリティカル・バイオケミストリー,257:112〜119頁)。
化合物および分子スキャフォールドをアッセイする
スキャフォールドの好ましい特徴としては,低分子量(例えば,350Da未満,または約100〜約350ダルトン,または約150〜約300ダルトン)であることが挙げられる。スキャフォールドのclogPは−1〜8であることが好ましく,6,5または4未満がより好ましく,3未満が最も好ましい。特定の実施形態では,clogPは,−1〜上限2,3,4,5,6または8の範囲であるか,0〜上限2,3,4,5,6また
は8の範囲である。回転可能な結合の好ましい数は,5未満であり,4未満がより好ましい。水素結合ドナーおよびアクセプターの数は6より小さいことが好ましく,5より小さいことがより好ましい。有用であり得るさらなる基準は,極性表面積が5未満である。特定の適用についての基準を同定するのに有用であり得る手引きは,リピンスキ(Lipinski)ら,(1997)アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビュー23,3〜25頁に見出すことができ,これは参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
スキャフォールドは,スキャフォールドの置換部分をタンパク質結合部位のポケット中に位置させる立体配置で,所定のタンパク質結合部位と結合できることが好ましい。また,特に合成反応によって,化学的に修飾し,コンビナトリアルライブラリーを容易に作製できる,化学的に扱いやすい群を有することが,スキャフォールドの好ましい特徴であり得る。また,スキャフォールド上にその他の部分を結合でき,スキャフォールドと注目するタンパク質との結合を干渉しないが,スキャフォールドを所望の特性,例えば,スキャフォールドの細胞および/または器官への活発な輸送,解析を容易にするためにスキャフォールドをクロマトグラフィーカラムに結合されることを可能にすること,または別の所望の特性を達成させる位置を有することも好ましいことであり得る。分子スキャフォールドは標的分子と何らかの親和性で結合できる,例えば高親和性,中程度の親和性,低親和性,極めて低い親和性または極端に低い親和性での結合。
したがって,前記の基準を利用して,所望の特質を有する,試験するための多数の化合物を選択することができる。記載した基準を有する多数の化合物は,市場で入手でき,方法が適用される個々の必要性に応じてアッセイのために選択できる。
「化合物ライブラリー」または「ライブラリー」とは,種々の化学構造を有する種々の化合物の収集物である。化合物ライブラリーはスクリーニング可能である。すなわち,その中の化合物ライブラリーメンバーをスクリーニングアッセイに付すことができる。好ましい実施形態では,ライブラリーメンバーは,約100〜約350ダルトン,または約150〜約350ダルトンという分子量を有し得る。ライブラリーの例は前記で示されている。
本発明のライブラリーは,標的分子と低親和性で結合する少なくとも1種の化合物を含み得る。候補化合物のライブラリーは,多数の異なるアッセイ,例えば前記のもの,例えば蛍光偏光アッセイによってアッセイできる。ライブラリーは,化学合成されたペプチド,ペプチドミメティックス,または大きいものであるか小さいものであり,焦点が絞られたものであるか焦点が絞られたものでない,コンビナトリアルケミカルのアレイからなっていてもよい。「焦点が絞られた」とは,化合物の収集物が,従前に特性決定された化合物および/またはファルマコフォア構造を用いて調製されていることを意味する。
化合物ライブラリーは,自然源から単離された分子,人工的に合成された分子,または1種以上の部分,例えば独立に単離されるか無作為に合成された部分を有するような方法で合成され,単離され,そうでなければ調製された分子を含み得る。化合物ライブラリー中の分子の種類としては,それだけには限らないが,有機化合物,ポリペプチドおよび核酸(それらの用語は本明細書に用いられる通りである),ならびにそれらの誘導体,コンジュゲートおよび混合物が挙げられる。
本発明の化合物ライブラリーは市場で購入でき,または調製でき,またはそれだけには限らないが,コンビナトリアルケミストリー技術,発酵法,植物および細胞抽出物手順などをはじめとするいずれかの手段によって獲得できる(例えば,クウィルラ(Cwirla)ら,(1990)バイオケミストリー(Biochemistry),87,6378〜6382頁,ホーテン(Houghten)ら,(1991)ネイチャー(Nature),354,84〜86頁,ラム(Lam)
ら,(1991)ネイチャー,354,82〜84頁,ブレナー(Brenner)ら,(1992),プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America),89,5381〜5383頁,R.A.ホーテン(Houghten),(1993)トレンヅ・イン・ジェネティクス(Trends in
Genetics),9,235〜239頁,E.R.フェルダー(Felder),(1994),チミア(Chimia),48,512〜541頁,ギャロップ(Gallop)ら,(1994)ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry),37,1233〜1251頁,ゴードン(Gordon)ら,(1994)ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー,37,1385〜1401,カレル(Carell)ら,(1995),ケミストリー・アンド・バイオロジー(Chemistry and Biology),3,171〜183頁,マッデン(Madden)ら,パースペクティブス・イン・ドラッグ・ディスカベリー・アンド・デザイン(Perspectives in Drug Discovery and Design)2,269〜282頁,エレブル(Lebl)ら,(1995)バイオポリマーズ(Biopolymers),37,177〜198頁参照);共有分子構造の周りに集められた小分子,種々の市販のおよび市販されていない群,天然物によって集められた化学物質の収集物,海洋生物,真菌,細菌および植物の抽出物。
好ましいライブラリーは,均一な反応混合物中に調製でき,ライブラリーのメンバーからの反応していない試薬の分離はスクリーニングに先立って必要ではない。多数のコンビナトリアルケミストリーアプローチが固体化学に基づいたものであるが,液相コンビナトリアルケミストリーはライブラリーを作製可能である(サン(Sun)CM.(1999)液相コンビナトリアルケミストリーにおける最近の進歩(Recent advances in liquid-phase combinatorial chemistry),コンビナトリアル・ケミストリー&ハイスループットスクリーニング(Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening)2:229〜318頁。
種々の種類の分子のライブラリーを,それから1以上の事前に選択した特質を有するメンバーを獲得するために調製するが,これは,それだけには限らないが,パラレルアレイ合成(ホートン(Houghton),(2000)アニュアル・レビュー・オブ・ファーマコロジー・アンド・トキシコロジー(Annual Reviews of Pharmacology and Toxicology)40:273〜82頁),パラレルアレイおよび混合物ベースの合成コンビナトリアルケミストリー,液相コンビナトリアルケミストリー(メリット(Merritt),(1998)コンビナトリアル・ケミストリー・アンド・ハイスループット・スクリーニング(Combinatorial Chemistry and High Throughput Screening)1(2):57〜72頁,液相コンビナトリアルケミストリー,コー(Coe)ら,(1998〜99)モレキュラー・ディバーシティー(Molecular Diversity)4(1):31〜8頁,液相コンビナトリアルケミストリー,サン(Sun)(1999)コンビナトリアル・ケミストリー・アンド・ハイスループット・スクリーニング2(6),299〜318頁,液相コンビナトリアル・ケミストリーにおける最近の進歩(Recent advances in liquid-phase combinatorial chemistry);可溶性ポリマーでの合成(synthesis on soluble polymer)(グラバート(Gravert)ら,(1997)カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー(Current Opinion in Chemical Biology)1(1):107〜13頁),可溶性ポリマーでの合成:新規反応および小分子の構築(Synthesis on soluble polymers: new reactions and the construction of small molecules)などを含む種々の技術によって調製できる。例えば,ドーレ(Dolle)ら,(1999)ジャーナル・オブ・コンビナトリアル・ケミストリー(Journal of Combinatorial Chemistry)1(4):235〜82頁,コンビナトリアルライブラリー合成の広範囲にわたる調査(Comprehensive survey of cominatorial library synthesis):1998,フレイジンガー(Freidinger)RM.,(1999)ペプチドおよびタンパク質受容体の非ぺプチド性リガンド(Nonpeptidic ligands for peptide and protein receptors),カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー(Current Opinion in Chemical Biology)
およびクンヅ(Kundu)ら,プログレス・イン・ドラッグ・リサーチ(Progress in Drug Research),53:89〜156頁,コンビナトリアルケミストリー:ペプチドおよび非ペプチドライブラリーの,ポリマーによって支持される合成(Combinatorial chemistry: polymer supported synthesis of peptide and non-peptide libraries)参照。化合物には,同定を容易にするために臨床的にタグをつけることができる(チャバラ(Chabala)(1995)カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー6(6):633〜9頁,固相コンビナトリアルケミストリーおよびリードを同定するための新規タギング法(Solid-phase combinatorial chemistry and novel tagging methods for identifying leads))。
炭水化物のコンビナトリアル合成およびオリゴサッカライドを含むライブラリーは記載されている(シュバイツァー(Schweizer)ら,(1999)カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー3(3):291〜8頁,炭水化物のコンビナトリアル合成(Combinatorial synthesis of carbohydrate))。天然物ベースの化合物ライブラリーの合成も記載されている(ウェスヨハン(Wessjohann),(2000)カレント・オピニオン・イン・ケミカル・バイオロジー4(3):303〜9頁,天然物ベースの化合物ライブラリーの合成(Synthesis of natural-product based compound libraries))。
核酸のライブラリーは,それだけには限らない例として,アプタマーの単離のために,本明細書に記載されたものをはじめとする種々の技術によって調製される。ストレプトアビジン磁性ビーズ上に提示されたオリゴヌクレオチドおよびポリアミノオリゴヌクレオチドを含むライブラリーが知られている(マルキエヴィッツ(Markiewicz)ら,(2000)合成オリゴヌクレオチドコンビナトリアルライブラリーおよびその適用(Synthetic oligonucleotide combinatorial libraries and their applications),ファルマコ(Farmaco)55:174〜7頁)。核酸ライブラリーは,パラレルサンプリングと合わせることができ,自動質量分析(エンジャルバル(Enjalbal)C.マルチネス(Martinez)J.オーバグナック(Aubagnac)JL,(2000)コンビナトリアルケミストリーにおける質量分析(Mass
spectrometry in combinatorial chemistry),マス・スペクトロメトリー・レビューズ(Mass Spectrometry Reviews)19:139〜61頁)およびパラレルタギング(ペリン(Perrin)DM,認識および触媒のための核酸:特色,制限および将来の展望(Nucleic acids
for recognition and catalysis: landmarks, limitations, and looking to the future),コンビナトリアル・ケミストリー・アンド・ハイスループット・スクリーニング3:243〜69頁)などの複雑な手順をともなわず複雑度を低下できることが知られている。
ペプチドミメティックスは,コンビナトリアルケミストリーおよび固相合成を用いて同定されている(キム(Kim)HO.カーン(kahn)M.(2000)合理的薬物設計とコンビナトリアルケミストリーの融合:ぺプチド二次構造ミメティックスの開発および適用(A merger of rational drug design and combinatorial chemistry : development and application of peptide secondary structure mimetics),コンビナトリアル・ケミストリー・アンド・ハイスループット・スクリーニング3:167〜83頁,アルオベイディ(al-obeidi),(1998)モレキュラー・バイオテクノロジー(Molecular Biotechnology)9(3):205〜23頁,ペプチドおよびぺプチドミメリックライブラリー(Peptide and
peptidomimetric libraries)。分子多様性および薬物設計(Molecular diversity and drug design))。合成は完全に無作為であってもよく,一部既知ポリペプチドに基づいたものであってもよい。
ポリペプチドライブラリーは,種々の技術にしたがって調製できる。簡潔には,ファージディスプレイ技術を用いてポリペプチドリガンドを製造でき(グラム(Gram)H.,(1999)タンパク質分解およびシグナル伝達におけるファージディスプレイ(Phage display in proteolysis and signal transduction),コンビナトリアル・ケミストリー・アン
ド・ハイスループット・スクリーニング2:19〜28頁),これをペプチドミメティックスの合成の基礎として使用できる。ポリペプチド,制約されたペプチド,タンパク質,タンパク質ドメイン,抗体,一本鎖抗体断片,抗体断片および抗体混合領域が,選択のために繊維状ファージ上にディスプレイされる。
ヒト一本鎖Fv抗体の個々の変異体の大きなライブラリーが製造されている。例えば,シーゲル(Siegel)RW.アレン(Allen)B,パブリック(Pavlik)P.マークス(Marks)JD.ブラッドブリー(Bradbury)A.,(2000)ペプチド標的上で選択された一本鎖抗体を用いるタンパク質複合体のマススペクトル解析:機能ゲノム学への適用(Mass spectral
analysis of a protein complex using single-chain antibodies selected on a peptide target: applications to functional genomics),ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)302:285〜93頁,ポール(Poul)MA.ベセリル(Becerril)B.ニールセン(Nielsen)UB.モリソン(Morisson)P.マークス(Marks)JD.,(2000)ファージライブラリーからの腫瘍特異的インターナライジングヒト抗体の選択(Selection of tumor-specific internalizing human antibodies from phage libraries.)出典ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal
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anti-mouse Fc gamma RII single-chain Fv fragments derived from human phage display libraries),イムノテクノロジー(Immunotechnology)4:71〜87頁,シーツ(Sheets)MD.アメルスドーファー(Amersdorfer)P.フィナーン(Finnern)R.サージェント(Sargent)P.リンドクイスト(Lindquist)E.シーア(Schier)R.ヘミングセン(Hemingsen)G.ウォン(Wong)C.ゲルハルト(Gerhart)JC.マークス(Marks)JD.リンドクイスト(Lindquist)E.,(1998)大きな非免疫ファージ抗体ライブラリーの効率的な構築:タンパク質抗原に対する高親和性ヒト一本鎖抗体の作製(プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ1999 96:795で現れる印刷された誤植)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ95:6157〜62頁参照。
計算機化学(例えば,クンヅ(Kundu)B.カーレ(khare)SK.ラストギ(Rastogi)SK.,(1999)コンビナトリアルケミストリー:ペプチドおよび非ペプチドライブラリーのポリマーによって支持された合成(Combinatorial chemistry:polymer supported synthesis of peptide and non-peptide libraries),プログレス・イン・ドラッグ・リサーチ(Progress in Drug research)53:89〜156頁)およびデータベース検索およびドッキング,de novo薬物設計およびリガンド結合親和性の推定を用いる構造ベースのリガンドの使用(ジョセフ−マッカーシーD.,(1999)構造ベースのリガンド設計に対する計算論的アプローチ(Computational approaches to structure-based ligand design),ファーマコロジ・アンド・セラピューティクス(Pharmacology & Therapeutics)84:179〜91頁,カークパトリック(Kirkpatrick)DL.ワトソン(Watson)S.
ウルハク(Ulhaq)S.,(1999)構造ベースの薬物設計:コンビナトリアルケミストリーおよび分子モデリング(Stracture-based drug design: combinatorial chemistry and molecular modeling),コンビナトリアル・ケミストリー・アンド・ハイスループット・スクリーニング2:211〜21頁,エリゼーエフ(Eliseev)AV.レーン(lehn)JM.,(1999)ダイナミックコンビナトリアルケミストリー:分子ライブラリーの進化的形成およびスクリーニング(Dynamic combinatorial chemistry: evolutionary formation and screening of molecular libraries),カレント・トピックス・イン・マイクロバイオロジー・アンド・イムノロジー(Current Topics in Microbiology & Immunology)243:159〜72頁,ボルガー(bolger)ら,(1991)メソッヅ・イン・エンジモロジー(Methods in Enzymology)203:21〜45頁,マーチン(Martin),(1991)メソッヅ・イン・エンジモロジー203:587〜613頁,ニードル(Niedle)ら,(1991)メソッヅ・イン・エンジモロジー203:433〜458頁,米国特許第6,178,384号)を含む精巧な戦略の助けを借りて,焦点が絞られた化学物質またはスマートケミカルおよびファルマコフォアライブラリーを設計することができる。
X.結晶学
結合化合物を決定した後,標的に結合している化合物の配向を決定する。この決定には,分子スキャフォールド化合物と標的との共結晶についての結晶学が含まれることが好ましい。大部分のタンパク質の結晶学的プラットフォームは,機器の物理的パラメーターと操作上の都合により最大約500の,タンパク質標的に結合している化合物,リガンドまたは分子スキャフォールドの共複合体を解析するように,設計することができることが好ましい。結合活性を有するスキャフォールドの数が結晶学法の適用に都合のよい数を超える場合には,少なくとも1つの共通の化学構造を有していることまたは他の所望の特徴を有していることに基づいて,スキャフォールドを群別してもよいし,1以上のクラスから代表的な化合物を選択してもよい。所望の数のクラス(例えば,500)が得られるまで,一層厳しい判定基準によってクラスを作成することができる。クラスは,例えば,全てがピロール環,ベンゼン環,または他の化学的特徴を有するクラスでは,分子スキャフォールド間の化学構造類似性に基づいたものであり得る。同様に,クラスが形態特徴,例えば,空間充填特徴に基づいたものであってよい。
共結晶学解析は,各スキャフォールドを,スクリーニングアッセイにおいて活性を示したスキャフォールドの濃度においてその標的と共複合体化することにより実施することができる。この共複合体化は,標的分子とともに低濃度の有機溶媒を使用し,その後,各スキャフォールドを有する標的を濃縮することにより達成することができる。好ましい実施形態では,これらの溶媒は5%未満の有機溶媒,例えば,水または別の水性溶媒中のジメチルスルホキシド(DMSO),エタノール,メタノールまたはエチレングリコールなどである。標的分子と複合体化した各スキャフォールドを,次いで,適した数(4および20程度)の結晶化スクリーニング条件を用いてスクリーニングすることができる。好ましい実施形態では,約96の結晶化スクリーニング条件を実施して,共複合体化および結晶化条件,ならびに標的分子の結合部位におけるスキャフォールドの配向についての十分な情報を得ることができる。さらに,結晶構造を解析して,結合しているスキャフォールドが,物理的に,分子ファミリーメンバーの結合部位内または1以上の結合ポケット内でどのように配向しているかを決定することができる。
タンパク質ファミリーに対してどれが最も適したスキャフォールドであるかを決定するためには,標的タンパク質に結合した化合物の原子座標を決定することが望ましい。そのため,原子座標を決定するにはX線結晶学的解析が最も好ましい。選択された化合物は,医薬品化学の適用についてさらに試験することができる。化合物は,医薬品化学用に選択することができ,標的分子におけるそれらの結合位置に基づいて試験される。例えば,化合物が結合部位に結合する場合には,標的分子の結合部位におけるその化合物の結合位置
を,化合物の化学的に扱いやすい構造または部分構造において行われ得る化学に関して,さらに化合物のそのような修飾が標的の結合部位の構造または部分構造とどのように相互作用するのかについて検討することができる。従って,標的の結合部位およびスキャフォールドの化学を調査することで,より高い有効性および/または選択性でリガンドに到達するためのスキャフォールドの改変方法について決定することができる。このプロセスによって,共複合体から直接得られた構造および化学情報を利用することにより,有益な薬物製品をもたらすであろうリード化合物をより効率的かつ迅速に設計することが可能であり,結果,より直接的なリガンドの設計を可能にする。種々の実施形態では,結合する全てのスキャフォールドについて,または特定の親和性で結合するものだけ,例えば,高親和性,中程度の親和性,低親和性,極めて低い親和性または極端に低い親和性で結合するものだけについて共結晶学を実施することが望ましい。また,親和性の任意の組合せで結合するスキャフォールドの選択について,共結晶学を実施することも有利であろう。
標準的なX線タンパク質回折研究,例えば,X線イメージプレート検出器またはシンクロトロンビームラインを用いるRigaku RU−200(登録商標)(リガク(Rigaku),日本,東京)を使用することによるなどを共結晶で実施し,標準的なX線検出器,例えばCCD検出器またはX線イメージプレート検出器などで回折データを測定することができる。
約200の共結晶にX線結晶学を実施すると,通常,約50の共結晶の構造がもたらされ,それによって化学における検証に約10のスキャフォールドが提供され,最終的には標的分子に対して約5の選択的リードがもたらされる。
仮想アッセイ
提供する一セットの座標から複合体化された標的と化合物の三次元グラフを作成する市販のソフトウェアを使用して,化合物が標的に結合した場合にどのように配向されているかを図で示し,研究することができる(例えば,QUANTA(登録商標),アクセレリス(Accelerys),カリフォルニア州,サンディエゴ)。従って,標的の結合部位における結合ポケットの存在は,本発明において特に有用であり得る。これらの結合ポケットは,結晶学的構造決定によって示され,標的の結合部位への化合物の結合に関与する正確な化学的相互作用を示す。当業者ならば,その図を用いて,複合体において非占有スペースがどこに存在し,どの化学的部分構造がそのスペースを埋めるのに適したサイズおよび/または電荷特性を有しているのかを検討することにより,結合または別の所望の効果を強化するために,化学基を付加し,置換し,修飾し,または除去するスキャフォールドの場所を決定できることが分かるであろう。また,当業者ならば,結合部位内の領域がフレキシブルであり得,スキャフォールドの結合の結果としてその特性が変化することがあり,所望の効果を達成するために,化学基をそういった領域に特異的にターゲッティングできることも分かるであろう。分子スキャフォールド上の特定の位置を,適した化学的部分構造が結合できる場所および立体構造,ならびにどの部位が最も有利な化学を利用可能にするのかについて検討することができる。
標的タンパク質への化合物の結合力を理解することにより,どの化合物をスキャフォールドとして使用するのが最も有利なのか,そしてリガンドの設計においてどの特性を操作するのが最も効果的なのかが明らかになる。当業者ならば,立体結合,イオン結合,水素結合,および他の影響力が標的−化合物複合体の維持または強化の一因として考えられるということが分かるであろう。脱溶媒和ペナルティーのような他のエネルギー効果を明らかにするために,自動計算法,例えばドッキングおよび/または自由エネルギー摂動(FEP)でさらなるデータを得てもよい。選択された化合物は,標的との化学的相互作用についての情報を得るために,または化合物の結合の選択性を高め得る化学修飾を解明する目的で使用することができる。
共結晶構造のデータを用いて,コンピュータモデル,例えば,相同性モデル(すなわち,既知の,実験的に得られた構造に基づくもの)を構築することができる。標的分子がタンパク質または酵素である場合には,相同性モデルの作成に好ましい共結晶構造が,モデリングされるタンパク質配列の結合部位において高い配列同一性を有し,それらのタンパク質は選択的に同じクラスおよび/またはフォールドファミリー内のものとなる。タンパク質クラスの活性部位において保存される残基の知識を用いて,結合部位を厳密に表す相同性モデルを選択することができる。さらに,相同性モデルを使用して,標的タンパク質に対するアポまたは共結晶構造が存在する代替物タンパク質の構造情報をマッピングすることができる。
仮想スクリーニング法,例えば,ドッキングはまた,スキャフォールド,化合物および/またはコンビナトリアルライブラリーメンバーの,相同性モデルとの結合形態ならびに親和性の予測にも使用できる。このデータを用い,コンピュータソフトウェアを使って「仮想実験」を実施することにより,多大な資源をセーブすることができ,当業者ならば,実際にリガンドを合成し,共結晶化を行う必要なく,どの化合物が適したスキャフォールドまたはリガンドであるのかを決定することが可能になる。このようにして,どの化合物が実際の合成および共結晶化に値するかを決定することができる。このような化学的相互作用を理解することは,標的タンパク質とより有利に相互作用し,および/または他のものよりも一タンパク質ファミリーメンバーに対して選択性の高い薬物の発見および設計に役立つ。従って,これらの原理を適用することにより,優れた特性を有する化合物を発見することができる。
もちろん,共結晶の形成を促すために,標的分子製剤に共結晶化を促進する添加剤を含めることができる。タンパク質または酵素の場合では,調べるスキャフォールドをタンパク質製剤に添加し,それが濃度約1mg/mlで存在することが好ましい。また,製剤が0%〜10%(v/v)間の有機溶媒,例えば,DMSO,メタノール,エタノール,プロパンジオールもしくは1,3 ジメチルプロパンジオール(MPD)またはそれらの有機溶媒のいくつかの組合せを含んでいてもよい。化合物を,好ましくは有機溶媒に濃度約10mMに溶かし,それをタンパク質サンプルに濃度約100mMに添加する。次いで,タンパク質−化合物複合体をタンパク質の終濃度,約5〜約20mg/mlまで濃縮する。複合体化および濃縮ステップは,96-ウェルフォーマットの濃縮装置(例えば,アミコン社(Amicon Inc.),ニュージャージー州,ピスカタウェイ)を用いて実施できることが好都合である。結晶化している製剤中に存在するバッファーおよび他の試薬は,結晶化を促進するかまたは結晶化条件に適合する他の成分,例えばDTT,プロパンジオール,グリセロールを含み得る。
結晶化実験は,濃縮したタンパク質−化合物複合体の少分量(1μl)を96ウェルフォーマットに入れ,96結晶化条件下でサンプリングすることにより準備できる(他のスクリーニングフォーマット,例えば,96ウェルより大型のプレートも使用できる)。結晶は,一般に96ウェル結晶化プレートを異なる温度に置くことを含み得る標準的な結晶化プロトコールを用いて得ることができる。必要に応じて,各タンパク質−化合物複合体について温度以外の因子を変えた共結晶化も検討することができる。例えば,大気圧,光または酸素の有無,重量の変化および多くの他の変数は全て調べることができる。当業者ならば,変化させ,検討することが有利であり得る他の変数が分かるであろう。
リガンドの設計および調製
リガンドの設計および調製は,活性なスキャフォールドセット間で共通する化学構造を検討することにより,構造および/または共結晶化データがあってもなくても実施することができる。このプロセスでは,構造−活性仮説を立てることができ,相当な数のスキャ
フォールド(低親和性で結合するものを含む)に存在することが分かった化学構造が,スキャフォールドの結合にいくらかの影響を及ぼしていると仮定することができる。この結合が生物系(例えば,治療される哺乳類)において起こる場合には,それが所望の生化学的効果を誘導すると推測することができる。最大結合数および/または構造−活性仮説の誤りを立証するために,新規または改変スキャフォールドまたはスキャフォールドから得られたコンビナトリアルライブラリーを調べることができる。次いで,残った仮説を用いて,所望の結合および生化学的効果を達成するリガンドを設計できる。
しかし,多くの場合では,所望の結合効果(例えば,より高い親和性でのまたはより高い選択性での結合)を達成するためのスキャフォールド改変法の検討には,共結晶学データを有していることが好ましい。タンパク質および酵素の場合では,共結晶学データにより,分子スキャフォールドが結合部位に結合しているタンパク質の結合ポケットが示され,スキャフォールド上の化学的に扱いやすい基に修飾を加えることができることは明らかである。例えば,タンパク質結合部位またはポケットにある小容量のスペースが,スキャフォールドをその容量を埋める小さな化学基を含むように修飾することによって埋めることができる。空隙容量が埋まることによって,より強い結合親和性が生じ,またはタンパク質ファミリーの別のメンバーとの望ましくない結合がなくなると考えられる。同様に,共結晶学データにより,スキャフォールド上の化学基を欠失させることで結合の障害が少なくなり,その結果としてより強い結合親和性または特異性が生じ得ることも示すことができる。
タンパク質の結合部位またはポケットに位置する帯電した化学基の存在をうまく利用することが望ましい。例えば,正電荷を有する基に,分子スキャフォールド上に導入した負に帯電した基を補ってもよい。こうすることによって結合親和性または結合特異性が高まり,その結果,より所望のリガンドが得られると考えられる。多くの場合では,タンパク質結合部位またはポケットの領域は,それらの領域におけるアミノ酸の違いに基づいて,あるファミリーメンバーが別のものに変わることが知られている。このような領域が化学的付加を受けると,化合物を,あるタンパク質標的に対して他のものよりも特異的であることを可能にし,またはより強い親和性で結合することを可能にする特定の相互作用(例えば,疎水性相互作用,静電相互作用またはエントロピー相互作用)が生じるか,または消失する場合があり,そうすることによって,特定のファミリーメンバーに対してより強い選択性または親和性を有する化合物を合成することが可能になる。加えて,特定の領域に,他の領域よりもフレキシブルであることが知られているアミノ酸が含まれることがある。これは,タンパク質の二次構造,例えばαヘリックスまたはβ鎖の要素を結ぶループに含まれるアミノ酸に見られることが多い。これらのフレキシブルな領域を化学的部分の付加の対象として,注目するタンパク質標的と化合物との間で生じる特定の相互作用の可能性を高めることもできる。また,in silicoで仮想スクリーニング法を行って,タンパク質ファミリーまたはクラスのメンバーに関する化学的付加,除去,修飾および/または置換の化合物への影響を評価することもできる。
スキャフォールドへの化学構造または部分構造の付加,除去または修飾は,任意の適した化学的部分を用いて実施することができる。例えば,以下の部分(一例として挙げており,限定を意図したものではない)を利用することができる:水素,アルキル,アルコキシ,フェノキシ,アルケニル,アルキニル,フェニルアルキル,ヒドロキシアルキル,ハロアルキル,アリール,アリールアルキル,アルキルオキシ,アルキルチオ,アルケニルチオ,フェニル,フェニルアルキル,フェニルアルキルチオ,ヒドロキシアルキル−チオ,アルキルチオカルバミルチオ(alkylthiocarbbamylthio),シクロヘキシル,ピリジル,ピペリジニル,アルキルアミノ,アミノ,ニトロ,メルカプト,シアノ,ヒドロキシル,ハロゲン原子,ハロメチル,酸素原子(例えば,ケトンまたはN−オキシドを形成する)または硫黄原子(例えば,チオール,チオン,ジアルキルスルホキシドまたはスルホンを
形成する)が利用できる部分の例の全てである。
利用できる構造または部分構造のさらなる例として,アルキル,アルコキシ,ハロゲン,トリハロメチル,カルボン酸,カルボキサミド,ニトロおよびエステル部分からなる群から独立に選択される1つ,2つまたは3つの置換基で場合によって置換されていてもよいアリール;式−NX23のアミン(式中,X2およびX3は,水素,飽和または不飽和アルキルおよび単素環または複素環部分からなる群から独立に選択される);ハロゲンまたはトリハロメチル;式−COX4のケトン(式中,X4はアルキルおよび単素環または複素環部分からなる群から選択される);式−(X5nCOOHのカルボン酸または式(X6nCOOX7のエステル(式中,X5,X6およびX7はアルキルおよび単素環または複素環部分からなる群から独立に選択され,nは0または1である);式(X8nOHのアルコールまたは式−(X8nOX9のアルコキシ部分(式中,X8およびX9は飽和または不飽和アルキルおよび単素環または複素環部分からなる群から独立に選択され,前記環はアルキル,アルコキシ,ハロゲン,トリハロメチル,カルボン酸,ニトロおよびエステルからなる群から独立に選択される1つ以上の置換基で場合によって置換されていてもよく,nは0または1である);式NHCOX10のアミド(式中,X10はアルキル,ヒドロキシルおよび単素環または複素環部分からなる群から選択され,前記環はアルキル,アルコキシ,ハロゲン,トリハロメチル,カルボン酸,ニトロおよびエステルからなる群から独立に選択される1つ以上の置換基で場合によって置換されていてもよい);SO2,NX1112(式中,X11およびX12は水素,アルキルおよび単素環または複素環部分からなる群から選択される);アルキル,アルコキシ,ハロゲン,トリハロメチル,カルボン酸,カルボキサミド,ニトロおよびエステル部分からなる群から独立に選択される1つ,2つまたは3つの置換基で場合によって置換されていてもよい,単素環または複素環部分;式−CHOのアルデヒド;式−SO213のスルホン(式中,X13は飽和または不飽和アルキルおよび単素環または複素環部分からなる群から選択される);ならびに式−NO2のニトロである。
分子スキャフォールドおよびリガンド上の結合部位の同定
キナーゼおよびその他の酵素のリガンドの同定および開発に加えて,結合部位における分子スキャフォールドまたは他の結合化合物の配向を決定することにより,結合分子の別の成分への結合についてエネルギー的に許容される部位の同定が可能になる。このような部位では,結合される成分の存在に伴ういかなる自由エネルギーの変化も,化合物とキナーゼとの結合を,結合が壊れる程度に不安定化することはないはずである。好ましくは,結合に伴う結合エネルギーが少なくとも4kcal/molであるべきであり,より好ましくは少なくとも6kcal/mol,8kcal/mol,10kcal/mol,12kcal/mol,15kcal/molまたは20kcal/molであるべきである。特定の部位に結合が存在することによって結合エネルギーが3kcal/mol以下,4kcal/mol,5kcal/mol,8kcal/mol,10kcal/mol,12kcal/molまたは15kcal/molしか低下しないことが好ましい。
多くの場合では,適した結合部位が,結合化合物が結合部位に結合される際に溶媒に露出される部位である。いくつかの場合では,過剰のエネルギーコストを負担することなく酵素の一部に微小変位を起こす結合部位を使用できる。露出部位は種々の方法によって同定することができる。例えば,図形表示または三次元モデルを利用して露出部位を同定できる。図形表示(コンピュータディスプレーなど)では,結合部位に結合されている化合物のイメージを視覚的に検証して,この原子または基が,溶媒に露出し,こうした原子または基での結合が酵素と結合化合物の結合を妨げないように配向されている,化合物の原子または基を明示することができる。結合のエネルギーコストは,結合とエントロピー変化によってもたらされるであろう変化または変形に基づいて算出することができる。
数多くの異なる種類の成分を結合することができる。熟練者ならば,種々の結合に用いられる化学を熟知している。結合することができる成分の例としては,それだけには限らないが,中でも,固相成分,例えばビーズ,プレート,チップおよびウェル;直接または間接標識;リンカー(トレースレスリンカーであってよい)が挙げられる。このようなリンカーは,それら自身が他の成分,例えば,固相媒体,標識および/または結合部分と結合していてもよい。
化合物の結合エネルギーと分子を別の成分と結合するための結合エネルギーへの影響は,種々の入手可能なソフトウェアのいずれかを使用するかまたは手動計算により概算することができる。一例が以下のとおりである。
2種類のキナーゼ:PIM−1およびCDK2に対する異なる有機分子の結合エネルギーを評価するために計算を行った。検討する有機分子に,スタウロスポリン,PDE5Aと結合すると確認されている化合物,そしていくつかのリンカーを含めた。
タンパク質−リガンド複合体間の結合エネルギー計算値は,トライポス(Tripos)製ソフトウェアスイートのFlexX score(Bohmスコアリング関数の実行)を使用して得た。その方程式の形を以下の式で示す:
ΔGbind=ΔGtr+ΔGhb+ΔGion+ΔGlipo+ΔGarom+ΔGrot
(式中,ΔGtrはリガンドの回転および並進エントロピーの総合損失である定数項であり,ΔGhbはリガンドとタンパク質間で形成される水素結合であり,ΔGionはリガンドとタンパク質間のイオン相互作用であり,ΔGlipoはタンパク質−リガンド接触面に相当する親油性相互作用であり,ΔGaromはタンパク質の芳香環とリガンド間の相互作用であり,そしてΔGrotは結合時にリガンドにおける回転可能な結合を制限するエントロピーペナルティーである)。
この方法により,結晶構造が存在する標的タンパク質に対してリード化合物が有するべき自由エネルギーが評価される(その自由エネルギーがフレキシブルリンカーのエントロピーペナルティーである)。従って,それを用いて,リンカーがスクリーニングされた分子と結合することによって生じた自由エネルギーペナルティー,およびリンカーの自由エネルギーペナルティーを克服するためにリード化合物が有するべき結合エネルギーを評価することができる。この方法では溶媒和を計上していないため,リンカーを別の結合複合体,例えばビオチン:ストレプトアビジン複合体などを介して固相に結合する場合ではエントロピーペナルティーを過大評価する可能性がある。
共結晶は,PIM−1の残基とCDK2の対応する残基とをスーパーインポーズすることによりアラインした。これらの算出に使用したPIM−1構造はPIM−1と結合化合物との共結晶であった。使用したCDK2:スタウロスポリン共結晶は,ブルックヘブン(Brookhaven)データベースファイル laqlのものであった。タンパク質に水素原子を添加し,Sybyl内のアンバー(AMBER)95パラメーターを用いて原子電荷を得た。トライポス製Sybylモデルリングスイートで,記載した化合物の修飾を行った。
これらの計算により,所与の標的(スタウロスポリン:CDK2など)と強く結合する化合物の結合エネルギー計算値が−25kcal/molより低く,一方,優れたスキャフォールドまたは最適化されていない結合化合物の結合親和性計算値が−15〜−20の範囲であり得ることが示される。リンカー,例えばエチレングリコールまたはヘキサトリエンとの結合に対する自由エネルギーペナルティーは,一般に+5〜+15kcal/molの範囲であると推定される。
リンカー
本発明において使用するのに適したリンカーには多くの異なる種類のものが有り得る。リンカーは,結合化合物や特定用途に利用する別の成分との結合に適合するリンカー化学などの因子に基づき,特定用途に向けて選択することができる。さらなる因子としては,それだけには限らないが,リンカー長,リンカーの安定性およびリンカーを適切な時期に除去する能力が挙げられる。例示的リンカーとしては,それだけには限らないが,ヘキシル,ヘキサトリエニル,エチレングリコールおよびペプチドリンカーが挙げられる。また,例えば,プラケット(Plunkett),M.J.およびエルマン(Ellman),J.A.,(1995),ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)60:6006頁に記載されているように,トレースレスリンカーを使用することもできる。
結合化合物との結合に利用される典型的な官能基としては,それだけには限らないが,カルボン酸,アミン,ヒドロキシルおよびチオールが挙げられる(それらの例は,「低分子量化合物ライブラリーの固体支持体上でのコンビナトリアルおよびパラレル合成(Solid-supported combinatorial and parallel synthesis of small molecular weight compound libraries)」;(1998)テトラヘドロン・オーガニック・ケミストリー・シリーズ第17巻;ペルガモン(Tetrahedron organic chemistry series Vol. 17; Pergamon);85頁;に見出すことができる)。
標識
前記のとおり,結合化合物または結合化合物と結合しているリンカーに,標識を結合することもできる。このような結合は,直接的(結合化合物に直接結合される)でもよいし,または間接的(結合化合物と直接または間接的に結合している成分に結合される)でもよい。このように標識することによって化合物の検出が直接あるいは間接的に可能になる。標識の結合は,従来の化学を用いて実施することができる。標識としては,例えば,蛍光標識,放射性同位元素,光散乱粒子,吸光性粒子,磁性粒子,酵素および特異的結合剤(例えば,ビオチンまたは抗体標的部分)が挙げられる。
固相媒体
結合化合物と直接または間接的に結合できる成分のさらなる例として,種々の固相媒体が挙げられる。リンカーと標識の結合と同様に,固相媒体との結合も従来の化学を用いて実施できる。このような固相媒体としては,例えば,ビーズ,ナノ粒子および繊維などの小型成分(例えば,懸濁液中またはゲルもしくはクロマトグラフィーマトリックス中のもの)が挙げられる。同様に,固相媒体として,プレート,チップ,スライドおよびチューブなどのより大きなものも挙げられる。多くの場合では,このようなものの一部分にのみ(例えば,一般に平面上の一スポットもしくは他の局所要素にまたは一ウェルもしくはウェルの一部に)結合化合物が結合される。
生物剤の同定
タンパク質についての構造情報を入手することによってまた,有用な生物剤,例えば抗体開発のためのエピトープの同定,活性に影響を及ぼすと思われる突然変異部位の同定,標識,リンカー,ペプチドおよび固相媒体などの物質とタンパク質の結合を可能にする結合部位の同定もなされる。
抗体(Abs)には,バイオテクノロジー,医薬および診断法をはじめとする種々の分野で多様な用途があり,実際に,生命科学研究では抗体は最も有効なツールの1つである。タンパク質抗原に対して向けられたAbsは,線状または天然の三次元(3D)エピトープのいずれかを認識することができる。3Dエピトープを認識するAbsの獲得には,免疫原として天然タンパク質全体(または未変性のコンホーメーションをとる一部分)を
使用する必要があるが,残念ながら,これは様々な技術的な理由(例えば,天然タンパク質があまり入手できず,タンパク質が毒性を有し,または高密度抗原提示を利用することが望ましい)から必ずしも選択されない。このような場合には,ペプチドを用いた免疫を代替法とする。もちろん,この方法によって生じたAbsは,線状エピトープを認識するが,起源の天然タンパク質については認識する場合も認識しない場合もある。それでもやはり,それらのAbsは標準的な実験室応用(ウエスタンブロットなど)にとって有用である。免疫原として使用するペプチドの選択は,特定の選抜ルールに従い,および/またはエピトープ予測ソフトウェアを使用することにより成し遂げることができる。
抗原ペプチドの予測法は絶対確実というものではないが,タンパク質由来のどのペプチド断片に抗原性がある可能性が高いかを判定するのに従うことができるいくつかのルールがある。これらのルールもまた,特定のペプチドに対するAbが天然タンパク質を認識する可能性を高めることに基づく。
1.抗原ペプチドは,溶媒露出領域に位置し,疎水性および親水性残基の両方を含まなければならない。
既知3D構造のタンパク質の場合,種々のプログラム(とりわけ,DSSP,NACESSまたはWHATIFなど)を使用して溶媒露出度を決定できる。
3D構造が分かっていない場合は,以下のウェブサーバーのいずれかを用いて,露出度を予測する:PHD,JPRED,PredAcc(c) ACCpro
2.ヘリックス領域に位置するペプチドを避け,二次構造(SS)モチーフを結ぶ長いループに存在するペプチドを選択することが好ましい。これにより,Abが天然タンパク質を認識する可能性が高まる。このようなペプチドは,例えば,結晶構造または結晶構造をベースとする相同性モデルから同定できる。
既知3D座標を有するタンパク質の場合,ブルックヘブンデータバンクにある関連エントリーの配列関連性からSSを得ることができる。PDBsumサーバーでは,pdbレコードのSS解析も提供している。
二次構造が全く得られない場合には,以下のサーバーのいずれかから予測を得る:PHD,JPRED,PSI−PRED,NNSPなど
3.可能ならば,タンパク質のNおよびC末端領域にあるペプチドを選択する。タンパク質のNおよびC末端領域は,通常溶媒露出し,構造化されていないため,それらの領域に対するAbsも天然タンパク質を認識する可能性が高い。
4.細胞表面糖タンパク質の場合,最初のペプチドからN−グリコシル化に関するコンセンサス部位を含むものを排除する。
N−グリコシル化部位は,ScanprositeまたはNetNGlycを使用して,検出することができる。
さらに,抗原決定基の予測を目的とする,実験により決定したエピトープの種々の生理化学的性質(フレキシビリティ,親水性度,露出度)に基づくいくつかの方法が公開されており,それらの方法を使用することができる。The antigenic indexおよびPreditopがその例である。
抗原決定基の予測を目的とする最も簡単な方法は,恐らく,実験により決定したエピトープのアミノ酸残基の頻度に基づくコラスカー(Kolaskar)およびトンガオンカー(Tongaonkar)の方法であろう(コラスカーおよびトンガオンカー(1990)タンパク質抗原の抗原決定基の予測のための半経験的方法(A semi-empirical method for prediction of antigenic determinants on protein antigens.)。FEBBSレター(Letter) 276(1〜2):172〜174頁)。予測アルゴリズムは以下のとおり動作する:
1.各オーバーラッピング7量体の平均的な傾向を算出し,その結果を7量体の中央の残基(i+3)に割り当てる。
2.タンパク質全体の平均を算出する。
3.(a)タンパク質全体の平均が1.0より大きい場合には,平均的な傾向が1.0より大きい全ての残基が抗原性を有する可能性がある。
3.(b)タンパク質全体の平均が1.0より小さい場合には,タンパク質全体の平均より大きい全ての残基が抗原性を有する可能性がある。
4.全ての残基が上記ステップ3により選択される8量体(原本書類では6量体)を見つけ出す。
コラスカーおよびトンガオンカーの方法は,GCGパッケージからでも入手することが可能であり,その方法はコマンドegcgで動作する。
また,結晶構造により,その残基での突然変異によってタンパク質の活性が変更する可能性がある残基の同定も可能になる。このような残基としては,例えば,基質と相互作用する残基,保存された活性部位の残基,および三次の相互作用に関わる秩序二次構造の領域内にある残基が挙げられる。活性に作用する可能性が高い突然変異は,異なる分子関係によって異なる。活性に作用する活性部位での突然変異は,通常,電荷−電荷または水素結合相互作用を排除し,または立体的干渉をもたらす置換または欠失である。活性に作用する可能性が高い二次構造領域または分子相互作用領域での突然変異としては,例えば,領域の疎水性/親水性を変更するか,または活性部位付近もしくはその部位を含む領域に,活性部位の重要な残基が置き換わるのに十分な変形を導入する置換が挙げられる。このような置換および/もしくは欠失ならびに/または挿入は認識されるため,突然変異の予測される構造および/またはエネルギー効果は,従来のソフトウェアを使用して算出できる。
IX.キナーゼ活性アッセイ
活性調節剤についてアッセイしおよび/または特定のキナーゼもしくは群またはキナーゼ群の調節剤の特異性を決定するために,キナーゼ活性についてのいくつかの異なるアッセイを利用できる。以下の実施例に記載されているアッセイの他,当業者ならば,利用できる他のアッセイを知っており,特定の用途に向けてアッセイを改変できる。例えば,使用できるアッセイはキナーゼに関する多数の研究論文に記載されている。
RetまたはRet代替物に使用できるキナーゼ活性についてのアッセイは,実施例に記載した手順を用い,精製されたRetまたはRet代替物を用いる以下の手順に従って実施できる。
さらなる代替アッセイでは結合測定を使用できる。例えば,この種のアッセイは,蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)フォーマット,またはストレプトアビジンまたはリン特異的抗体と結合しているドナーおよびアクセプター試薬を変更することによるアルファスクリーン(ΑlphaScreen)(増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ法(amplified luminescent proximity homogeneous assay))フォーマットの使用のいずれかにフォーマットできる。
X.有機合成技術
コンピュータベースの調節剤設計および同定の汎用性は,コンピュータプログラムによってスクリーニングされる構造の多様性にある。コンピュータプログラムにより,極めて多数の分子を含むデータベースを検索することができ,酵素とすでに複合体を形成している調節剤を多種多様な化学的官能基で修飾することができる。この化学的多様性の結果として,キナーゼ機能調節剤候補が予測できない化学形態をとり得る。これらの調節剤候補を構築するという課題に対応する技術分野では,多様な有機合成技術が存在する。これらの有機合成法の多くは当業者が利用する標準的な参照文献情報源に詳述されている。このような参照文献の一例に,1994年3月,Advanced Organic Che
mistry: Reactions, Mechanisms and Structure, New York, McGraw Hillがある。従って,有機化学合成の当業者ならば,コンピュータベースの方法で同定されたキナーゼ機能の調節剤候補を合成するのに有用な技術を容易に利用することができる。
XI.投与
本方法および化合物は,一般にヒト患者に対する治療に使用することができるが,同様に,他の脊椎動物,例えば,他の霊長類,スポーツ用動物およびペット,例えば,ウマ,イヌおよびネコにおける類似または同一疾病を治療する目的でも使用することができる。
適した投与形は,一部,使用または投与経路,例えば,経口経路,経皮経路,経粘膜経路または注射(非経口)による経路に応じて変わる。このような投与形によって化合物を標的細胞に到達させることが可能にならなくてはならない。他の因子については,当技術分野では周知であり,それらには,毒性や化合物または組成物の作用を遅延させる投与形などの考慮が含まれる。技術および製剤については,一般にレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington's Pharmaceutical Sciences),第18版,マックパブリッシング社(Mack Publishing Co.),ペンシルバニア州,イーストン,1990(参照により本明細書の一部とされる)に見られる。
化合物は,製薬上許容される塩として製剤できる。製薬上許容される塩は,それらの投与量および投与濃度において無毒の塩である。このような塩を調製することで,化合物の生理学的作用を妨げることなく,その物理的特徴が変わり,薬理学的使用が容易になり得る。物理的性質の有用な変化としては,経粘膜投与を容易にするための融点の低下および,より高濃度の薬物の投与を容易にするための溶解度の上昇が挙げられる。
製薬上許容される塩としては,酸付加塩(硫酸塩,塩化物,塩酸塩,フマル酸塩,マレイン酸塩,リン酸塩,スルファミン酸塩,酢酸塩,クエン塩,乳酸塩,酒石酸塩,メタンスルホン酸塩,エタンスルホン酸塩,ベンゼンスルホン酸塩,p−トルエンスルホン酸塩,シクロヘキシルスルファミン酸塩およびキナ酸塩を含むものなど)が挙げられる。製薬上許容される塩は,酸(塩酸,マレイン酸,硫酸,リン酸,スルファミン酸,酢酸,クエン酸,乳酸,酒石酸,マロン酸,メタンスルホン酸,エタンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,p−トルエンスルホン酸,シクロヘキシルスルファミン酸,フマル酸およびキナ酸など)から得ることができる。
また,製薬上許容される塩として,塩基性付加塩(酸性官能基(カルボン酸またはフェノールなど)が存在している場合にベンザチン,クロロプロカイン,コリン,ジエタノールアミン,エチレンジアミン,メグルミン,プロカイン,アルミニウム,カルシウム,リチウム,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,アンモニウム,アルキルアミンおよび亜鉛を含むものなど)も含まれる。例えば,レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンシズ(Remington's Pharmaceutical Sciences),第19版,マックパブリッシング社(Mack Publishing Co.),ペンシルバニア州,イーストン第2巻,1457頁,1995参照。このような塩は,適した対応塩基を用いて調製することができる。
製薬上許容される塩は,標準的な技術により調製することができる。例えば,遊離塩基形態の化合物を適した溶媒(適した酸を含む水溶液またはアルコール水溶液など)に溶かし,その後,溶液を蒸発させることにより単離する。もう1つの例では,遊離塩基と酸を有機溶媒中で反応させることにより塩を調製する。
異なる化合物の製薬上許容される塩が複合体として存在していてもよい。複合体の例としては,8−クロロテオフィリン複合体(例えば,ジメンヒドリナート:ジフェンヒドラ
ミン 8−クロロテオフィリン(1:1)複合体;ドラマミン(Dramamine)に類似)および種々のシクロデキストリン包接化合物が挙げられる。
医薬組成物を製造するために担体または賦形剤を使用することができる。担体または賦形剤は,化合物の投与を容易にするように選択する。担体の例としては炭酸カルシウム,リン酸カルシウム,種々の糖(ラクトース,グルコースまたはスクロースなど)またはデンプンタイプ,セルロース誘導体,ゼラチン,植物油,ポリエチレングリコールおよび生理的に適合する溶媒が挙げられる。生理的に適合する溶媒の例としては,注射用蒸留水(WFI)の滅菌溶液,生理食塩水およびデキストロースが挙げられる。
化合物は,静脈内,腹腔内,皮下,筋肉内,経口,経粘膜,直腸または経皮をはじめ,種々の経路によって投与することができる。経口投与が好ましい。経口投与用には,例えば,化合物をカプセル剤,錠剤および液体製剤(シロップ剤,エリキシル剤および濃縮ドロップ剤など)のような従来の経口投与形に製剤することができる。
経口用医薬製剤は,例えば,活性化合物を固体賦形剤と合わせ,得られた混合物を場合によって粉砕し,必要に応じて,錠剤または糖衣錠コアを得るために適した補助剤を加えた後,その顆粒混合物を加工することにより得ることができる。適した賦形剤としては,特に,糖類(ラクトース,スクロース,マンニトールまたはソルビトールを含む);セルロース調製物(例えば,トウモロコシデンプン,コムギデンプン,コメデンプン,ジャガイモデンプン,ゼラチン,トラガカントガム,メチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)),および/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)のような増量剤がある。必要に応じて,架橋ポリビニルピロリドン,寒天またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)のような崩壊剤を添加してよい。
糖衣錠コアには適したコーティングを施す。このために,濃縮糖溶液を使用でき,濃縮糖溶液には,例えば,アラビアガム,タルク,ポリ−ビニルピロリドン,カルボポール(carbopol)ゲル,ポリエチレングリコール(PEG)および/または二酸化チタン,ラッカー溶液,ならびに適した有機溶媒または溶媒混合物を場合によって含めてもよい。確認用または活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために,錠剤または糖衣錠コーティング剤に染料または色素を添加してよい。
経口使用可能な医薬製剤としては,ゼラチンからできた押し込み型カプセル剤(「ゲルキャップ」),ならびにゼラチンと可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)からできた密閉ソフトカプセル剤が挙げられる。押し込み型カプセル剤には,有効成分が,増量剤(ラクトースなど),結合剤(デンプンなど)および/または滑沢剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど),さらに,場合によって安定剤と混合した状態で含まれる。ソフトカプセル剤では,活性化合物が適した液体(脂肪油,流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール(PEG)など)に溶解または懸濁してもよい。さらに,安定剤を添加してもよい。
また,注射(非経口投与)(例えば,筋肉内,静脈内,腹腔内および/または皮下)を用いてもよい。注射用には,本発明の化合物を滅菌溶液,好ましくは生理的に適合するバッファーまたは溶液(生理食塩水,ハンクス溶液またはリンガー溶液など)中に製剤する。さらに,化合物を固体形態に製剤し,それを使用直前に再溶解しまたは懸濁してもよい。凍結乾燥形態もまた製造することができる。
経粘膜または経皮手段による投与もまたあり得る。経粘膜または経皮投与用には,バリアに浸透させるのに適した浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は,当技術分野で
は一般に知られており,それらとしては,例えば,経粘膜投与には,胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに,浸透しやすくするために界面活性剤を使用してよい。経粘膜投与は,例えば,鼻腔用スプレーまたは坐剤(直腸または膣)によって行ってよい。
投与すべき種々の化合物の量は,標準的な手順により化合物IC50,化合物の生物学的半減期,患者の年齢,背格好および体重,ならびに患者の関連疾患などの因子を考慮して決定することができる。これらの重要性およびその他の因子については,当業者には周知である。一般に,用量は治療される患者のkg当たり約0.01〜50mg間,好ましくは0.1〜20mg間である。複数回投与を用いてよい。
Retの操作
ヒトをはじめとする種々の哺乳類由来のRet(ならびにFGFR)の全長コード配列およびアミノ酸配列が分かっているため,組換えRetおよびRet代替物のクローニング,構築,組換えタンパク質の生産および精製,RetまたはRet代替物の他の生物への導入,ならびにRetまたはRet代替物のその他の分子生物学的操作は容易に行われる。
核酸操作,例えば,サブクローニング,プローブ標識(例えば,クレノウポリメラーゼ,ニックトランスレーション,増幅を用いるランダム−プライマー標識),配列決定,ハイブリダイゼーションなどのための技術については,科学文献や特許文献(例えば,サムブロック(Sambrook)編,モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(第2版)第1〜3巻,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning: a Laboratory Manual (2nd ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory),(1989);カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー,オーズベル編,ジョン・ウィレー・アンド・サンズ,ニューヨーク(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York)(1997);ラボラトリー・テクニークス・イン・バイオケミストリー・アンド・モレキュラー・バイオロジー:ハイブリダイゼーション・ウィズ・ヌクレイック・アシッド・プローブズ,パートI。セオリー・アンド・ヌクレイック・アシッド・プレパレーション,ティーセン編,エルゼビア,ニューヨーク(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation, Tijssen, ed. Elsevier, N. Y.)(1993)参照)において詳細に開示されている。
核酸配列は,PCR,等温法,ローリングサークル法などのような増幅法を用いて,さらなる使用のために必要に応じて増幅することができ,それらの方法は当業者ならば周知である。例えば,サイキ,PCRプロトコール中の「ゲノムDNAの増幅」,イニス編,アカデミック・プレス,カリフォルニア州,サンディエゴ(Saiki, "Amplification of Genomic DNA" in PCR Protocols, Innis et al., Eds., Academic Press, San Diego, CA)1990,13〜20頁;ワラム(Wharam)ら,ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research)。2001年6月1日,29(11):E54−E54;ハフナー(Hafner)ら,バイオテクニークス(Biotechniques)2001年4月;30(4):852〜6頁,858頁,860頁各所;チョン(Zhong)ら,バイオテクニークス2001年4月;30(4):852〜6頁,858頁,860頁各所参照。
核酸,ベクター,キャプシッド,ポリペプチドなどは,当業者ならば周知の,多数ある一般的手段のいずれかによって解析し,定量することができる。これらの手段としては,例えば,分析生化学的方法(NMR,分光測光法,X線撮影法,電気泳動,キャピラリー電気泳動,高速液体クロマトグラフィー(HPLC),薄層クロマトグラフィー(TLC
)およびハイパーディフュージョンクロマトグラフィー(hyperdiffusion chromatography)など),種々の免疫学的方法(例えば,液体またはゲル沈降反応,免疫拡散法,免疫電気泳動,放射性免疫測定法(RIA),酵素結合免疫吸着測定法(ELISA),免疫蛍光測定法),サザン解析,ノーザン解析,ドットブロット解析,ゲル電気泳動(例えば,SDS−PAGE),核酸もしくは標的またはシグナル増幅法,放射性標識法,シンチレーション計測およびアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。
本発明の方法の実施に使用される核酸の準備および操作は,ゲノムサンプルからクローニングし,必要に応じて,例えば,ゲノムクローンまたはcDNAクローンから単離または増幅したインサートをスクリーニングし,再クローニングすることにより行うことができる。本発明の方法に使用される核酸の供給源としては,例えば,哺乳類人工染色体(MAC),例えば,米国特許第5,721,118号;同6,025,155号参照;ヒト人工染色体,例えば,ローゼンフェルド(Rosenfeld)(1997)ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)15:333〜335頁参照;酵母人工染色体(YAC);細菌人工染色体(BAC);P1人工染色体,例えば,ウーン(Woon)(1998)ゲノミクス(Genomics)50:306〜316頁参照;P1由来ベクター(PAC),例えば,カーン(Kern)(1997)バイオテクニークス23:120〜124頁参照;コスミド,組換えウイルス,ファージまたはプラスミドに含まれるゲノムまたはcDNAライブラリーが挙げられる。
本発明の核酸は,プロモーターに機能しうる形で連結され得る。プロモーターは,核酸の転写を命令する核酸制御配列の一モチーフまたはアレイであり得る。プロモーターは,転写開始部位付近に必須核酸配列(例えば,ポリメラーゼII系プロモーターの場合には,TATAエレメント)を含む。プロモーターはまた,場合によって,転写開始部位から数千塩基対ほどのところに存在し得る遠位エンハンサーまたはレプレッサーエレメントも含む。「構成的」プロモーターとは,大抵の環境および発生条件下で機能するプロモーターである。「誘導」プロモーターとは,環境または発生調節下にあるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターとは,ある生物の特定の組織タイプでは機能するが,同じ生物のそれ以外の組織タイプでは機能しないプロモーターである。「機能しうる形で連結される」とは,核酸発現制御配列(プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイなど)と第2核酸配列との機能的連結(この連結により,発現制御配列が第2配列に対応する核酸の転写を命令する)を意味する用語である。
本発明の核酸はまた,発現ベクターおよびクローニング媒体(例えば,本発明のポリペプチドをコードする配列)にも提供され得る。本発明の発現ベクターおよびクローニング媒体には,ウイルス粒子,バキュロウイルス,ファージ,プラスミド,ファージミド,コスミド,フォスミド,細菌人工染色体,ウイルスDNA(例えば,ワクシニア,アデノウイルス,ファウルポックスウイルス(foul pox virus),仮性狂犬病およびSV40誘導体),P1由来人工染色体,酵母プラスミド,酵母人工染色体および特定の目的宿主に特異的な他のベクター(バチルス属(Bacillus),アスペルギルス属(Aspergillus)および酵母など)が含まれる。本発明のベクターには,染色体,非染色体および合成DNA配列が含まれる。数多くの適したベクターが,当業者には公知であり,市販されている。
本発明の核酸を,必要に応じて,通常の分子生物学的方法を用いて種々のベクターのいずれかにクローニングすることができる;増幅した核酸をin vitroでクローニングする方法については,例えば,米国特許第5,426,039号に開示されている。増幅した配列のクローニングを容易にするために,制限酵素部位をPCRプライマー対に「組み込む」ことができる。科学文献や特許文献において詳細に記載されている種々の従来の技術によって,ベクターをゲノムに導入するかまたは細胞の細胞質または核に導入し,発現させてもよい。例えば,ロバーツ(Roberts)(1987)ネイチャー(Nature)328
:731頁;シュネイダー(Schneider)(1995)プロテイン・エクスプレッション・アンド・プリフィケーション(Protein Expression and Purification)6435:10;サムブロック(Sambrook),ティーセンまたはオーズベル参照。ベクターは自然源から単離することができるし,ATCCもしくはGenBankライブラリーのような供給元から入手することができるし,または合成または組換え法により調製することもできる。例えば,本発明の核酸は,細胞で安定してまたは一時的に発現される発現カセット,ベクターまたはウイルス(例えば,エピソーム発現系)で発現させることができる。発現カセットおよびベクターに選択マーカーを組み込んで,形質転換細胞および配列に選択可能な表現型を与えることができる。例えば,宿主ゲノムへ組み込む必要がないように,選択マーカーがエピソームでの保持および複製のためにコードするものであってよい。
一態様では,本発明のペプチドまたはポリペプチドのin situ発現のために,本発明の核酸をin vivoで投与する。核酸は,「裸のDNA」として(例えば,米国特許第5,580,859号参照)投与することができるし,または発現ベクター(例えば,組換えウイルス)の形で投与することもできる。核酸は下記のように,腫瘍周辺または腫瘍内を含む任意の経路によって投与することができる。in vivoで投与されるベクターは,組換えにより改変したエンベロープまたは非エンベロープDNAおよびRNAウイルス(好ましくはバキュロウイルス科(baculoviridiae),パルボウイルス科(parvoviridiae),ピコルノウイルス科(picornoviridiae),ヘルペスウイルス科(herpesveridiae),ポックスウイルス科(poxviridae),アデノウイルス科(adenoviridiae),またはピコルナウイルス科(picornnaviridiae)から選択される)を含むウイルスゲノム由来のものであってよい。親ベクターの性質それぞれの有利な長所を生かしたキメラベクターもまた使用してよい(例えば,フェン(Feng)(1997)ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)15:866〜870頁参照)。このようなウイルスゲノムは,組換えDNA技術により,本発明の核酸を含むように改変することができ,複製欠損性であるか,条件付きで複製するかまたは複製能を有するようにさらに操作することができる。別の態様では,ベクターがアデノウイルスゲノム(例えば,ヒトアデノウイルスゲノム由来の複製能のないベクター,例えば,米国特許第6,096,718号;同6,110,458号;同6,113,913号;同5,631,236号参照);アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスゲノム由来のものである。レトロウイルスベクターとしては,ネズミ白血病ウイルス(MuLV),ギボンザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GaLV),サル免疫不全ウイルス(SIV),ヒト免疫不全ウイルス(HIV),およびそれらの組合せに基づくものが挙げられる。例えば,米国特許第6,117,681号;同6,107,478号;同5,658,775号;同5,449,614号;ブッシュシェール(Buchscher)(1992)ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(Journal of Virology)66:2731〜2739頁;ヨハン(Johann)(1992)ジャーナル・オブ・ヴィロロジー66:1635〜1640頁)参照。例えば,核酸およびペプチドのin vitro生産において,ならびにin vivoおよびex vivo遺伝子療法において,標的核酸を細胞に形質導入するために,アデノ随伴ウイルス(AAV)系ベクターを使用することができる,例えば,米国特許第6,110,456号;同5,474,935号;オカダ(Okada)(1996)ジーン・セラピー(Gene Therapy)3:957〜964頁参照。
本発明はまた,融合タンパク質,ならびにそれらをコードする核酸にも関する。本発明のポリペプチドは,異種ペプチドまたはポリペプチド(安定性の上昇または精製の簡易化などの所望の特徴を与えるN末端同定ペプチドなど)と融合することができる。本発明のペプチドおよびポリペプチドを合成し,例えば,より免疫原性の高いペプチドを生産する目的で,組換えにより合成されたペプチドをより容易に単離するために,抗体および抗体を発現しているB細胞を同定および単離するために,など,それに連結される1以上のさらなるドメインとの融合タンパク質として発現させることもできる。検出および精製を容易にするドメインとしては,例えば,固定化金属上での精製を可能にするポリヒスチジン
トラクトおよびヒスチジン−トリプトファンモジュールのような金属キレートペプチド,固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン,ならびにFLAGS エクステンション/アフィニティー精製システム(イムネックス社(Immunex Corp),ワシントン州,シアトル)で利用されるドメインが挙げられる。精製ドメインとモチーフを含むペプチドまたはポリペプチドとの間に,切断可能なリンカー配列(第Xa因子またはエンテロキナーゼ(インビトロゲン(Invitrogen),カリフォルニア州,サンディエゴ)など)を含めることにより精製が容易になる。例えば,発現ベクターには,6個のヒスチジン残基と連結されたエピトープをコードする核酸配列,それに続いてチオレドキシンとエンテロキナーゼ切断部位が含まれる(例えば,ウィリアムス(Williams)(1995)バイオケミストリー34:1787〜1797頁;ドベリ(Dobeli)(1998)プロテイン・エクスプレッション・アンド・プリフィケーション(Protein Expression and Purification)12:404〜414頁参照)。ヒスチジン残基により検出および精製を容易にする一方で,エンテロキナーゼ切断部位により融合タンパク質の残留物からエピトープを精製するための手段を提供する。一態様では,本発明のポリペプチドをコードする核酸が,翻訳されたポリペプチドまたはその断片の分泌を命令することが可能なリーダー配列により適切な段階で構成される。融合タンパク質をコードするベクターおよび融合タンパク質の適用に関する技術については,科学文献や特許文献(例えば,クロール(Kroll)(1993) DNA・アンド・セル・バイオロジー(DNA and Cell Biology)12:441〜53頁参照)において詳細に開示されている。
本発明の核酸およびポリペプチドは,例えば,スクリーニングおよび診断法に用いるために固相支持体に結合することができる。固相支持体としては,例えば,メンブレン(例えば,ニトロセルロースまたはナイロン),マイクロタイターディッシュ(例えば,PVC,ポリプロピレンまたはポリスチレン),試験管(ガラスまたはプラスチック),ディップスティック(例えば,ガラス,PVC,ポリプロピレン,ポリスチレン,ラテックスなど),微量遠心管,またはガラス,シリカ,プラスチック,金属もしくはポリマービーズ,あるいは他の支持体(紙など)が挙げられる。一固相支持体には,ペプチドに対して操作したヒスチジンタグに対する特異性によって結合する金属(例えば,コバルトまたはニッケル)含有カラムを使用する。
固相支持体への分子の結合は,直接(すなわち,分子が固相支持体と接する)でもよいし,または間接(「リンカー」が支持体に結合されており,このリンカーと目的の分子が結合する)的でもよい。分子は,共有結合により(例えば,システイン残基の単一反応性チオール基を利用(例えば,コリウオド(Colliuod)(1993)バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate Chemistry)4:528〜536頁参照))または非共有結合により,具体的に言えば,例えば,固定化抗体(例えば,シューマン(Schuhmann)(1991) Adv. Mater. 3: 388〜391頁;ルー(Lu)(1995)アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)67:83〜87頁参照;ビオチン/ストレプトアビジン系(例えば,イワネ(Iwane)(1997)バイオフィジオロジー・アンド・バイオケミストリー・リサーチ・コミュニケーションズ(Biophysiology . Biochemistry Research Communications)230:76〜80頁を参照);金属キレート化,例えば,Langmuir−Blodgettフィルム(例えば,Ng (1995)ラングミュア(Langmuir)11:4048〜55頁を参照);ポリヒスチジン融合物の結合用,金属キレート化自己組織化単分子膜(例えば,シーガル(Sigal)(1996)アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)68:490〜497頁参照)を介して,固定化することができる。
間接結合は,市販されている種々のリンカーを用いて得ることができる。反応性末端は,種々の官能基のいずれかであり,それらとしては,それだけには限らないが:アミノ反応末端(N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステル,イミドエステル,アル
デヒド,エポキシド,ハロゲン化スルホニル,イソシアネート,イソチオシアネートおよびハロゲン化ニトロアリールなど);およびチオール反応末端(二硫化ピリジル,マレイミド,チオフタルイミドおよび活性ハロゲンなど)が挙げられる。ヘテロ二官能性架橋剤は,2つの異なる反応性末端(例えば,アミノ反応性末端とチオール反応性末端)を有するものであり,一方,ホモ二官能性試薬は,2つの同じ反応性末端(例えば,スルフヒドリル含有化合物の架橋を可能にするビスマレイミドヘキサン(BMH))を有するものである。スペーサーは,さまざまな長さであってよく,脂肪族でも芳香族でもよい。市販のホモ二官能性架橋剤の例としては,それだけには限らないが,ジメチルアジポイミデート二塩酸塩(DMA);ジメチルピメリミデート二塩酸塩(DMP);およびジメチルスベリミデート二塩酸塩(DMS)などのイミドエステルが挙げられる。ヘテロ二官能性試薬としては,市販の活性ハロゲン−NHS活性エステルカップリング剤(N−スクシンイミジルブロモアセテートおよびN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SLAB)など)およびスルホスクシンイミジル誘導体(スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ−SIAB)(ピアス(Pierce))など)が挙げられる。別のカップリング剤がN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(ピアス・ケミカルズ(Pierce Chemicals),イリノイ州,ロックフォード)のようなチオール開裂可能なヘテロ二官能性薬剤である。
また,本発明のポリペプチドおよびペプチドを固相支持体に結合するために抗体を使用することもできる。これはペプチド特異的抗体をカラムに結合することによって直接行われるか,または例えば,既知エピトープ(例えば,タグ(例えば,FLAG,myc)または適した免疫グロブリン定常領域配列(「イムノアドヘシン」,例えば,カポン(Capon)(1989)ネイチャー377:525〜531頁(1989)参照)に結合された,モチーフを有するペプチドを含むように融合タンパク質キメラを作製することによっても行われる。
本発明の核酸またはポリペプチドをアレイに固定化するか,または塗布してもよい。組成物(例えば,小分子,抗体,核酸など)のライブラリーを本発明の核酸またはポリペプチドの活性と結合し,またはそれを調整するそれらの能力についてスクリーニングし,またはモニタリングするために,アレイを使用することができる。例えば,本発明の一態様では,モニタリングパラメーターが本発明の核酸を含む遺伝子の転写物発現である。アレイまたは「バイオチップ」上に固定化された核酸とのハイブリダイゼーションによる,細胞の転写物,または細胞の転写物を代表するか,もしくは細胞の転写物と相補的である核酸を含むサンプルのハイブリダイゼーションにより,細胞の1以上または全ての転写物を測定することができる。マイクロチップ上の核酸の「アレイ」を用いることによって,細胞の転写物の一部または全てを同時に定量することができる。また,ゲノム核酸を含むアレイを用いて,本発明の方法によって作製した新たな操作株の遺伝子型を決定することもできる。また,ポリペプチドアレイを用いて,複数のタンパク質を同時に定量することもできる。
本明細書において「アレイ」または「マイクロアレイ」または「バイオチップ」または「チップ」とは,複数の標的エレメントであり,各標的エレメントが,支持体表面の規定範囲に固定化された,規定量の1以上のポリペプチド(抗体を含む)または核酸を含んでいる。本発明の方法の実施において,既知アレイならびに/またはアレイの作製および使用の方法全て,またはそれらの変形を,例えば,米国特許第6,277,628号;同6,277,489号;同6,261,776号;同6,258,606号;同6,054,270号;同6,048,695号;同6,045,996号;同6,022,963号;同6,013,440号;同5,965,452号;同5,959,098号;同5,856,174号;同5,830,645号;同5,770,456号;同5,632,957号;同5,556,752号;同5,143,854号;同5,807,522
号;同5,800,992号;同5,744,305号;同5,700,637号;同5,556,752号;同5,434,049号に開示されているように,全部または一部において組み込むことができる;例えば,WO99/51773;WO99/09217;WO97/46313;WO96/17958も参照;例えば,ジョンストン(Johnston)(1998)カレント・バイオロジー(Current Biology)8:R171〜R174頁;シューマー(Schummer)(1997)バイオテクニークス23:1087〜1092頁;カーン(Kern)(1997)バイオテクニークス23:120〜124頁;ソリナス−トルド(Solinas-Toldo)(1997)ジーンズ・クロモソームス・アンド・キャンサー(Genes,Chromosomes & Cancer)20:399〜407頁;ボウテル(Bowtell)(1999)ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)付録21:25〜32頁も参照。公開されている米国特許出願番号20010018642;同20010019827;同20010016322;同20010014449;同20010014448;同20010012537;同20010008765も参照。
宿主細胞および形質転換細胞
本発明はまた,本発明の核酸配列,例えば,本発明のポリペプチドをコードする配列または本発明のベクターを含む形質転換細胞も提供する。宿主細胞は,当業者ならばよく知っている,原核細胞,真核細胞(細菌細胞,真菌細胞,酵母細胞,哺乳類細胞,昆虫細胞または植物細胞など)を含む宿主細胞のいずれかであり得る。典型的な細菌細胞としては,大腸菌(E. coli),放線菌(Streptomyces),枯草菌(Bacillus subtilis),ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)ならびにシュードモナス属(Pseudomonas),ストレプトミセス属(Streptomyces)およびブドウ球菌属(Staphylococcus)の属内のさまざまな種が挙げられる。典型的な昆虫細胞としては,ショウジョウバエ(Drosophila) S2およびSpodoptera Sf9が挙げられる。典型的な動物細胞としては,CHO,COSもしくはボーズ(Bowes)黒色腫またはマウスもしくはヒト細胞系が挙げられる。適切な宿主の選択は,当業者の能力の範囲内である。
ベクターは,種々の技術のいずれかを用いて宿主細胞に導入でき,それらの技術には,形質転換,トランスフェクション,形質導入,ウイルス感染,遺伝子銃またはTi媒介性遺伝子導入が含まれる。具体的な方法として,リン酸カルシウムトランスフェクション,DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション,リポフェクションまたはエレクトロポレーションが挙げられる。
操作した宿主細胞は,プロモーターを活性化し,形質転換体を選択し,または本発明の遺伝子を増幅する必要に応じて改変した従来の培養液で培養することができる。適した宿主株を形質転換し,宿主株を適当な細胞密度まで増殖させた後,適切な手段(例えば,温度シフトまたは化学的誘導)によって選択したプロモーターを誘導でき,細胞に所望のポリペプチドまたはその断片を生産させるために,それらをさらなる期間培養できる。
細胞は,遠心分離により回収し,物理的または化学的手段により破砕することができ,得られた未精製の抽出物をさらなる精製用に確保しておく。タンパク質の発現に使用した微生物細胞は,任意の便宜な方法によって破砕することができ,その方法としては,凍結融解サイクリング,音波処理,機械的破砕または細胞溶解剤の使用が挙げられる。このような方法については,当業者ならば周知である。発現したポリペプチドまたは断片は,回収し,組換え細胞培養物から,硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿,酸抽出,陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー,ホスホセルロースクロマトグラフィー,疎水性相互作用クロマトグラフィー,アフィニティークロマトグラフィー,ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーをはじめとする方法によって精製することができる。必要に応じて,ポリペプチド構造を完成させる際に,タンパク
質リフォールディング段階を用いることができる。必要に応じて,最終精製段階で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することができる。
組換えタンパク質を発現させるために,種々の哺乳類細胞培養系も使用することができる。哺乳類発現系の例としては,サル腎臓繊維芽細胞COS−7系および適合ベクター由来のタンパク質を発現することが可能な他の細胞系(C127,3T3,CHO,HeLaおよびBHK細胞系など)が挙げられる。
宿主細胞による構築物を従来どおりに使用して,組換え配列によりコードされる遺伝子産物を生産することができる。組換え生産方法において使用する宿主によって,ベクターを含む宿主細胞によって生産されるポリペプチドは,グリコシル化されていてもよく,グリコシル化されていなくてもよい。本発明のポリペプチドはまた,開始メチオニンアミノ酸残基を含んでいても含まなくてもよい。
また,本発明のポリペプチドを生産するために,無細胞翻訳系を使用することもできる。無細胞翻訳系は,ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸に機能しうる形で連結されたプロモーターを含むDNA構築物から転写されたmRNAを使用する。いくつかの態様では,in vitro転写反応を行う前にDNA構築物を線状化する。次いで,転写されたmRNAを適した無細胞翻訳抽出物(ウサギ網状赤血球抽出物など)とともにインキュベートして,所望のポリペプチドまたはその断片を生産する。
発現ベクターには,形質転換宿主細胞選択用の表現型形質を提供するために1以上の選択マーカー遺伝子を含めることができる。(真核細胞培養物にはジヒドロ葉酸レダクターゼもしくはネオマイシン耐性など,または大腸菌においてはテトラサイクリンもしくはアンピシリン耐性など)。
哺乳類細胞における一時的発現では,目的のポリペプチドをコードするcDNAを,哺乳類発現ベクター,例えば,インビトロゲン社(Invitrogen Corporation)(米国,カリフォルニア州,サンディエゴ;カタログ番号V490−20)から市販されているpcDNA1に組み込むことができる。このベクターは,真核細胞系でのcDNA発現用および原核生物におけるcDNA解析用に設計された4.2kbの多機能プラスミドベクターであり,ベクターには,CMVプロモーターおよびエンハンサー,スプライスセグメントおよびポリアデニル化シグナル,SV40およびポリオーマウイルス複製起点,ならびに配列決定および突然変異誘発のために一本鎖DNAをレスキューするM13複製起点,センスおよびアンチセンスRNA転写物の生産のためのSp6およびT7 RNAプロモーターおよびCol E1様高コピープラスミド複製起点が組み込まれている。ポリリンカーは,CMVプロモーターの下流(およびT7プロモーターの3')に適切に配置されている。
まず,pcDNAIポリリンカーの適切な制限部位に組み込まれた上記ファージミドからcDNAインサートを外す。ジャンクションから配列決定を実施して,pcDNAIにおける正確な挿入方向を確認する。次いで,得られたプラスミドを,一時的発現のために,選択した哺乳類細胞宿主,例えば,サル由来の,繊維芽細胞様COS−1系統細胞(American Type Culture Collection,メリーランド州,ロックビルよりATCC CRL 1650として入手可能)に導入する。
タンパク質をコードするDNAの一時的発現では,例えば,サムブロックら,モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル1989,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス,コールド・スプリング・ハーバー・ニューヨーク16.30〜16.37によって記載されている手法に従って,DEAE媒介性DNAトラン
スフェクションによりCOS−1細胞を106 COS細胞当たり約8μg DNAでトランスフェクトし,クロロキンで処理する。典型的な方法は以下のとおりである。簡潔には,COS−1細胞を密度5×106細胞/ディッシュにてプレーティングし,その後,FBS補給DMEM/F12培地で24時間増殖させる。次いで,培地を除去し,細胞をPBS,続いて,培地で洗浄する。DMEM/F12培地中にDEAEデキストラン(0.4mg/ml),100μMクロロキン,10%NuSerum,DNA(0.4mg/ml)を含むトランスフェクション溶液を細胞に10ml量適用する。37℃にて3時間のインキュベーション後,上記のように細胞をPBSと培地で洗浄し,その後,10%DMSOのDMEM/F12培地で1分間ショックを与える。細胞を10%FBS補給培地で2〜3日間増殖させ,インキュベーション終了時にディッシュを氷上に置き,氷冷PBSで洗浄した後,細胞を掻きとって取り出す。次いで,細胞を1000rpmにて10分間の遠心分離により回収し,タンパク質発現にその後使用するために細胞ペレットを液体窒素で凍結する。凍結細胞の一定分量の融解物のノーザンブロット解析により,保存下の細胞における受容体コードcDNAの発現を確認する。
同様に,安定したトランスフェクト細胞系も,例えば,宿主として2つの異なる細胞種:CHO K1およびCHO Pro5を使用して調製することができる。これらの細胞系を構築するために,関連タンパク質についてコードするcDNAを,安定した発現が可能な哺乳類発現ベクターpRC/CMV(インビトロゲン(Invitrogen))に組み込むことができる。この部位への挿入ではcDNAがサイトメガロウイルスプロモーターの発現制御下,ウシ成長ホルモン遺伝子のポリアデニル化部位とターミネーターの上流,選択マーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子(SV40初期プロモーターにより制御される)を含むベクターバックグラウンド内に置かれる。
上記のように構築したプラスミドを導入するための典型的なプロトコールは,以下のとおりである。まず,宿主CHO細胞を10%FBS補給MEM培地に密度5×105にて播種する。24時間増殖させた後,プレートに新鮮培地を追加し,3時間後,リン酸カルシウム−DNA共沈法(サムブロックら,前掲)により細胞をトランスフェクトする。簡潔には,DNA 3μgを混合し,カルシウム緩衝液とともに室温にて10分間インキュベートする。同量のリン酸緩衝液を加え,懸濁液を室温にて15分間インキュベートする。次ぎに,インキュベートした懸濁液を細胞に4時間適用し,除去し,15%グリセロール含有培地で細胞にショックを与える。3分後,細胞を培地で洗浄し,通常の増殖条件において24時間インキュベートする。G418(1mg/ml)含有10%FBS補給α−MEM培地でネオマイシンに耐性を示す細胞を選択する。約2〜3週間後,G418耐性細胞のコロニーをそれぞれ単離し,クローン選抜した後,アッセイ用に増殖させる。
本発明に含まれる多くの実施例について以下に記載する。殆どの場合において,別法も使用することができよう。本実施例は,説明のためのものであり,本発明の範囲を限定するものではない。
A. 重要な中間体の合成:
スキーム1及び2は,化合物1及び6の合成についてそれぞれ記載する。これらの化合物は,以下に記載の多くの例示的な合成スキーム及び実施例で使用される。
5-ブロモ-7-アザインドール,化合物の合成1:
スキーム1
化合物1は,Viaudら(Heterocycles,1999年,50巻,1065-1080頁)の文献の手順に従って4段階でスキーム1に示されているように合成した。
4-クロロ-7-アザインドールの合成,化合物6の合成:
スキーム2
段階1:化合物7の合成
化合物7は,Schneller,S.W.,Luo,Jiann-Kuan(J.Org.Chem.1980年,45巻,4045-4048頁)に記載の如く,不活性溶媒(たとえばDME)中,市販の化合物2と酸化剤(たとえばm-CPBA)とを反応させて合成した。生成物は,5℃で通常1〜3時間静置して形成した得られた固体を濾過して単離した。
段階2:化合物6の合成
式6の化合物は,Schneller,S.W.,Luo,Jiann-Kuan(J.Org.Chem.1980年,45巻,4045-4048頁)に記載の如く化合物7とニートの塩素化剤(たとえばPOCl3)とを反応させて合成した。高温(100〜150℃)で3〜5時間加熱した後の溶液を,固体が沈殿するまで塩基(たとえばNH4OH)で中和した。固体は濾過により単離した。
B.式Iaの化合物の合成(式中,R1,R2,R3及びR5は水素である)
式Ia及の化合物は,式Iの化合物(式中,R4はコア構造上の単一置換基である)である。式Iaの化合物の群の代表的な合成スキームは,R4の種々の選択に関してスキーム3a,3b,4,5,6,7,8及び9に示されている。
式Ia
スキーム3a−式Ia(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールである)
化合物Ia(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,触媒(たとえば(PPh3)4)の存在下,アリールまたはヘテロアリールボロン酸(heteroaryl bornonic acid)(たとえばフェニルボロン酸,3-チエニルボロン酸)を使用してSuzuki反応条件下で化合物1から合成した。
スキーム3b−式Ia(式中,R4はアルキルまたはシクロアルキルである)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はアルキルまたはシクロアルキルである)
段階1−式IIの化合物の合成
式II(式中,Pは保護基である)の化合物は,不活性溶媒(たとえばTHF)中,化合物1と塩基(たとえば水素化ナトリウム)と,続いて保護基を導入するために好適な試薬(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)と反応させて合成した。この反応は,通常室温で8〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手順(たとえば抽出)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階2−式Ia(式中,R4はアルキル及びシクロアルキルである)の化合物の中間体の合成
式Ia(式中,R4はアルキル及びシクロアルキルである)の化合物の中間体は,低温(たとえば−78℃)で,不活性溶媒(たとえばトルエン)中,触媒(たとえば[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II))の存在下,式IIの化合物と,アルキルまたはシクロアルキルグリニヤール試薬(たとえば臭化エチルマグネシウム)と反応させて合成した。生成物は,記載(T.Hayashi,M.Konishi,Y.Kobori,M.Kumada,T.Higuchi,K.Hirotsu;J.Am.Chem.Soc.,1984年,106巻,158-163頁)の通り,標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した。
段階3−式Ia(式中,R4はアルキル及びシクロアルキルである)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はアルキルまたはシクロアルキルである)の化合物は,段階2からの式Iaの化合物の中間体と好適な試薬とを反応させて好適な溶媒(たとえばメタノール)中で保護基(たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を除去することにより合成することができる。この生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した。
スキーム4−式Ia(式中,R4はNR16R17である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はNR22R23である)
段階1−式IIの化合物の合成
式II(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物1と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて,保護基の導入のために好適な試薬(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)との反応により合成した。この反応は,通常,室温で88〜12時間進行させ,所望の生成物は,標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective
Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階2−式III(式中,R4はNR16R17である)の化合物の中間体の合成
式III(式中,R4はNR16R17である)の化合物の中間体は,N-置換-3,6-ジブロモカルバゾールを式IIの化合物に置き換えて,記載の如く(Thomasら,J.Am.Chem.Soc.,2001年,123巻,9404頁),通常95℃に8〜12時間加熱して,金属(たとえばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))とリガンド(たとえばトリ-tert-ブチルホスフィン)とから構成される触媒と塩基(たとえばナトリウムtert-ブトキシド)との存在下,溶媒(たとえばトルエン)中,式NHR16R17(たとえばアニリン)と式IIの化合物とを反応させて合成した。所望の化合物はシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製した。この中間体を段階4で直接使用して,式Ia(式中,R4はNR22R23であり,R22及びR23は-C(X)R20でも,-C(X)NR16R17でも,-S(O)2R21でもない)の化合物を提供するか,あるいは段階3に記載の如くさらに置換することができる。
段階3−式III(式中,R4はNR22R23である)の化合物の合成
段階2からの中間体は,R16またはR17が水素であるとき,さらに変形することができる。この場合,段階2からの中間体は,溶媒(たとえば,N,N-ジメチルホルムアミド)中,塩基(たとえば水素化ナトリウム)と反応させ,続いてアルキル化試薬(たとえば臭化ベンジル)またはアシル化試薬(たとえば塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネート,フェニルイソチオシアネート,フェニルスルホニルクロリド)と,通常室温で,または80℃に1〜12時間加熱して反応させることができる。所望の生成物は慣用手段(たとえばシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により精製することができる。参考文献。
段階4−式Ia(式中,R4はNR22R23である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はNR22R23である)の化合物は,式IIIの化合物と好適な試薬とを反応させて,好適な溶媒(たとえばメタノール)中で保護基(たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を除去することにより合成した。最終生成物は,標準的な手順(たとえば抽出)により単離することができる。
スキーム5−式Ia(式中,R4はC(O)NR16R17である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はC(O)NR16R17である)
段階1−式IIの化合物の合成
式II(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中で化合物1と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて保護基を導入するために好適な試薬(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド,塩化ベンゼンスルホニル)と反応させることにより合成した。この反応は,通常室温で8〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階2−式IVの化合物の合成
式IV(式中,R4はCNである)の化合物は,5-ブロモ-インドールを5-ブロモ-7-アザインドールで置き換えて,Buchwaldら(J.Am.Chem.Soc.,2003年,125巻,2890-2891頁)に記載の手順に従って,触媒(たとえばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))及びヨウ化銅)の存在下,不活性雰囲気中,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,式IIの化合物とシアン化ナトリウムとを反応させることにより合成した。
段階3−式Vの化合物の合成
化合物V(式中,R4はCOOHである)の化合物は,Org.Syn.Collective Volume2巻,292(1943年)に記載の如く,アルコール(たとえばエタノール)の存在下,高温(たとえば90℃)で必要な時間,通常24時間,式IVの化合物と水性塩基(たとえばKOH水溶液)とを加熱することによって合成した。
段階4−式VIの化合物の合成
式VI(式中,R4はC(O)NR16R17である)の化合物は,Costeら(J.Org.Chem.,1994年,59巻,2437頁)に記載の手順に従って,PyBroP(ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)の存在下,不活性雰囲気中,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中で式Vの化合物とアミン(たとえばベンジルアミン)とを反応させて合成した。
段階5−式Iaの化合物の合成
式Ia(式中,R4はC(O)NR16R17である)の化合物は,式VIの化合物の保護基(たとえばTIPS)を好適な試薬(たとえばTBAF)で開裂し,生成物を単離する(仕上げて,シリカゲルのカラムクロマトグラフィー)ことにより合成した。
スキーム6−式Ia(式中,R4はC(O)NR16R17である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はC(O)NR16R17である)
段階1−式IIの化合物の合成
式II(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物1と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて保護基を導入するために好適な試薬(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)とを反応させることにより合成した。この反応は,通常室温で8〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階2−式Vの化合物の合成
式V(式中,R4はCOOHである)の化合物は,不活性溶媒(たとえばTHF)中,式IIの化合物と強塩基(たとえばn-ブチルリチウム)とベンジルクロロホーメートとを反応させ,さらに室温で触媒(たとえば20%Pd(OH)2/C)の存在下,得られたベンジルエステルを水素で水素化することによってさらに脱ベンジル化することにより合成した。生成物は濾過及び蒸発により単離した。
段階3−式VIの化合物の合成
式VI(式中,R4はC(O)NR16R17である)の化合物は,Costeら(J.Org.Chem.,1994年,59巻,2437頁)に従って,縮合剤(PyBrop,ブロモトリ(ピロリジノ)ホスフィニウムヘキサフルオロホスフェート)の存在下,不活性雰囲気中,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中で式Vの化合物とアミン(たとえばベンジルアミン)とを反応させて合成した。
段階4−式Iaの化合物の合成
式Ia(式中,R4はC(O)NR16R17である)の化合物は,式VIの化合物の保護基(たとえばTIPS)を好適な試薬(たとえばTBAF)で開裂させて合成した。生成物は,標準的な手順(仕上げ及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した。
スキーム7−式Ia(式中,R4はCH2NHR16R17である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はCH2NHR22R23である)
段階1−式IIの化合物の合成
式II(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物1と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて保護基の導入のために好適な試薬(たとえばP-X,トリイソプロピルシリルクロリド)と反応させて合成した。この反応は,通常室温で8〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective Groups
in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階2−式IVの化合物の合成
式IV(式中,R4はCNである)の化合物は,Buchwaldら(J.Am.Chem.Soc.,2003年,125巻,2890-2891頁)に従って,5-ブロモ-インドールの代わりに5-ブロモ-7-アザインドールを使用して,触媒(たとえばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)及びヨウ化銅)の存在下,不活性雰囲気中,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,式IIの化合物とシアン化ナトリウムとを反応させて合成した。
段階3−式VIIの化合物の合成
式VII(式中,R4はCH2NH2である)の化合物は,Secrist IIIら(J.Org.Chem.,1972年,37巻,335-336頁)に記載の如く,H2雰囲気中,触媒(たとえばPtO2)を使用して水素化条件下で式IVの化合物から合成することができる。
段階4−式VIIIの化合物の合成
式VIII(式中,R4はCH2NHR16である)の化合物は,不活性雰囲気中,塩基(たとえばK2CO3,Et3N)の存在下,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中で,式VIIの化合物と求電子試薬(たとえば臭化ベンジル,塩化ベンゼンスルホニル,塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネート,フェニルイソチオシアネート)とから合成することができる。生成物は標準的な方法(水性仕上げ及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した。
段階5−式Iaの化合物の合成
式VIIIa(式中,R4はCH2NHR16R17である)の化合物は,不活性雰囲気中,塩基(たとえばK2CO3,Et3N)の存在下,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,式VIIIの化合物と求電子試薬(たとえば臭化ベンジル,塩化ベンゼンスルホニル,塩化ベンゾイル,フェニルイソチオシアネート,フェニルイソチオシアネート)で,続いて好適な条件で保護基を脱保護することにより合成することができる。
スキーム8−式Ia(式中,R4はOR22である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はOR22である)
段階1−式IIの化合物の合成
式II(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物1と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて保護基の導入のために好適な試薬(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)と反応させることにより合成した。この反応は,通常,室温で8〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階2−式IX(式中,R4はOR16である)の化合物の中間体の合成
式IX(式中,R4はOR16である)の化合物の中間体は,Mazeasら(Heterocycles,1999年,50巻,1065頁)に記載の如く,塩基(たとえばナトリウムメトキシドまたは水酸化ナトリウム)と臭化銅(I)の存在下,溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミド)中,式IIの化合物と式R16OH(たとえばメタノールまたは水)とを,通常2〜8時間還流させ加熱して反応させることにより合成することができる。所望の中間体は,慣用手段(たとえばシリカゲルのクロマトグラフィー)により精製することができる。R16が水素であるとき,この中間体は,段階3でさらに置換することができるか,または段階4で直接使用して式Ia(式中,R4はOR22であり,R22は−C(X)R20でも,-C(X)NR16R17でも,-S(O)2R21でもない)の化合物を提供することができる。
段階3−式IX(式中,R4はOR22である)の化合物の合成
R16が水素であるとき,段階2からの中間体はさらに変形することができる。この場合,段階2からの中間体は,溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミド)中,塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いてアルキル化試薬(たとえば臭化ベンジル)またはアシル化剤(たとえば塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネート)と,通常,室温でまたは80℃以下に1〜12時間加熱して反応させることができる。所望の生成物は慣用手段(たとえばシリカゲルのクロマトグラフィー)により精製することができる。
段階4−式Ia(式中,R4はOR22である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はOR22である)の化合物は,好適な溶媒(たとえばメタノール)中,式IXの化合物と好適な試薬とを反応させて,保護基P(たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を除去することにより合成することができる。最終生成物は標準的な手段(たとえば抽出)により単離することができる。
スキーム9−式Ia(式中,R4はSR16である)の化合物の合成
式Ia(式中,R4はSR16である)
式Ia(式中,R4はSR16である)の化合物は,Yangら(Heterocycles,1992年,34巻,1169頁)に記載の手順に従って,5-ブロモ-インドールを5-ブロモ-7-アザインドールに代えて,不活性雰囲気中,極性非プロトン性溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミド)中,化合物1と強塩基(たとえば水素化カリウムまたはt-ブチルリチウム)とジアルキルジスルフィド類(たとえばジメチルジスルファン)またはチオフェノール類(たとえば4-メトキシチオフェノール)と反応させることにより製造することができる。
スキーム−9a
式Ia(式中,R4はSR16である)
式Ia(式中,R4はS(O)R16である)
式Ia(式中,R4はS(O)2R16である)
式Ia(式中,R4はS(O)R16またはS(O)2R16である)の化合物は,標準的な手順を使用して,極性溶媒中,化合物1a(式中,R4はR16である)の化合物とそれぞれ1または2当量のオキソンとを反応させることにより製造することができる。
C.式Ib(式中,R1,R2,R4及びR5は水素である)の化合物の合成
式Ib
式Ibの化合物は,式I(式中,R3はコア構造上の単一の置換基である)である。式Ibの化合物群の例示的な合成スキームは,R3の様々な選択に関してスキーム10,11,12,13,14及び15に示す。
スキーム10−式Ib(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)
式Ib(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,アリールまたはヘテロアリールボロン酸(borononic acid)(たとえばフェニルボロン酸,3-チエニルボロン酸)(M.Allegretti,Synlett,2001年,5巻,609頁)を使用してSuzuki反応条件下,化合物6から合成した。
スキーム11−式Ib(式中,R3はOR22である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はOR22である)
式Ib(式中,R3はOR22である)の化合物は,Girgisら(J.Heterocyclic Chemistry,1989年,26巻,317頁)に記載の如く,アルコール(たとえばメタノール,ベンジルアルコール)の存在下,高温(たとえば150℃)で必要な時間,たとえば12時間,化合物6と水性塩基(たとえばNaOH水溶液)とを加熱することによって合成することができる。生成物は,標準的な仕上げ手順に従って単離することができる。
スキーム12−式Ib(式中,R3はNR16R17である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はNR16R17である)
式Ib(式中,R3はNR16R17である)の化合物は,アミン(たとえばジメチルアミン,N-メチルアニリン)と共に化合物6を,油浴中,通常180℃に1〜5時間加熱することにより合成した。生成物は,標準的な手順に従ってまたは,シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製することによって単離することができる(Nabihら,J.Heterocyclic Chemistry,1989年,26巻,317頁)。
スキーム13−式Ib(式中,R3はCONR16R17である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はCONR16R17である)
段階1−式Xの化合物の合成
式Xの化合物は,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.ら(Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)に記載の如く,塩基(たとえばNaH)の存在下,不活性溶媒(たとえばTHF)中,化合物6と塩化シリル(たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)とを反応させることにより合成することができる。生成物は,標準的なクロマトグラフィー手段により精製することができる。
段階2−式XIの化合物の合成
式XIの化合物は,Andersonら(J.Org.Chem.,1998年,63巻,8224頁)に記載の如く,触媒(たとえばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム)の存在下,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,シアン化物供給源(たとえばZn(CN)2)と化合物Xとを反応させることにより合成した。標準的な仕上げを実施し,式XIの化合物は,標準的な結晶化またはクロマトグラフィー法により精製することができる。
段階3−式XIIの化合物の合成
式XIIの化合物は,Larock,R.C.(Comprehensive Organic Transformations,VCH:NY,1989年,993頁)に記載の如く,不活性溶媒(たとえばEtOH)中,化合物XIと塩基(たとえばNaOH)とを反応させることにより製造することができる。標準的な手順及び精製法を実施した。
段階4−式XIIIの化合物の合成
式XIIIの化合物は,Coste,J.ら(J.Org.Chem.,1994年;158巻,2437頁)に記載の如く,カップリング試薬(たとえばブロモトリ(ピロリジノ)ホスフィニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop))の存在下,及び塩基(たとえばジイソプロピルエチルアミン)の存在下,不活性溶媒(たとえばDMF)中,化合物XIIとアミン(たとえばベンジルアミン)とを反応させることにより製造することができる。通常の仕上げを実施し,精製は標準的なクロマトグラフィー法により実施する。
段階5−式Ib(式中,R3はCONR16R17である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はCONR16R17である)の化合物は,Tetrahedron Lett.2001年,42(44)巻;7759頁に記載の如く,不活性溶媒(たとえばTHF)中,化合物XIIIとフッ化物供給源(たとえばNH4F)とを反応させることにより製造することができる。精製は,標準的なクロマトグラフィー法で実施する。
スキーム14−式Ib(式中,R3はCH2NR22R23である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はCH2NR22R23である)
段階1−式Xの化合物の合成
式Xの化合物は,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.(Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)に記載の如く,塩基(たとえば水酸化ナトリウム)の存在下,不活性溶媒(たとえばジクロロメタン)中,化合物6と塩化スルホニル(たとえば塩化ベンゼンスルホニル)とを反応させることにより合成した。得られたスラリーをセライトで濾過することにより生成物を単離することができる。
段階2−式XIの化合物の合成
式XIの化合物は,Andersonら(J.Org.Chem.,1998年;63巻,8224頁)に記載の如く,触媒(たとえばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム)の存在下,不活性溶媒(たとえばジクロロメタン)中で化合物Xとシアン化物供給源(たとえばZn(CN)2)とを反応させることにより合成した。標準的な仕上げを実施し,標準的な結晶化またはクロマトグラフィー法により精製する。
段階3−式XIVの化合物の合成
式XIVの化合物は,Stavenger,R.A.ら(PCT国際公開第WO03/028724A1号,2003年4月10日)に記載の如く,不活性溶媒(たとえばMeOH)中,触媒(たとえば炭素上パラジウム)を使用して化合物XIと還元剤(たとえばH2)とを反応させることにより製造した。精製は標準的なクロマトグラフィー法により実施することができる。
段階4−式XVの化合物の合成
式XVの化合物は,塩基(たとえばジイソプロピルエチルアミン)の存在下,不活性溶媒(たとえばDMF)中,化合物XIVとアルキル化剤(たとえば臭化ベンジル)とを反応させることにより製造した。標準的な仕上げを実施し,標準的な結晶化またはクロマトグラフィー法により精製する。
段階5−式XVIの化合物の合成
式XVIの化合物は,塩基(たとえばジイソプロピルエチルアミン)の存在下,不活性溶媒(たとえばDMF)中,化合物XVとアルキル化剤(たとえば臭化ベンジル)とを反応させることにより製造することができる。標準的な仕上げを実施し,標準的な結晶化またはクロマトグラフィー法により精製する。
段階6−式1b(式中,R3はCH2NR22R23である)の化合物の合成
式1b(式中,R3はCH2NR22R23である)の化合物は,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M(Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)に記載の如く,通常1〜3時間,60〜80℃に加熱しながら,極性非プロトン性溶
媒(たとえばEtOH)中で式XVIの化合物と塩基(たとえばKOH)とを反応させることにより合成した。標準的な仕上げを実施し,標準的なクロマトグラフィー法により精製する。
スキーム15−式Ib(式中,R3はNR22R23である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はNR22R23である)
段階1−化合物7の合成
化合物7は,記載(Schneller及びLuo,J.Org.Chem.,1980年,45巻,4045頁)のごとく,溶媒(たとえば1,2-ジメトキシエタン)中で化合物2と85%メタ-クロロペルオキシ安息香酸とを通常,室温で1〜4時間反応させることにより合成した。得られた固体を濾過により集め,エチルエーテルにより洗浄した。固体は水中に懸濁させて,塩基性水溶液(たとえば炭酸カリウム)で塩基性化することができる。冷却後,沈殿物は濾過により集め,慣用手段(たとえば再結晶化)により精製すると,化合物7が得られた。
段階2−化合物8の合成
化合物8は,記載(Schneller及びLuo,J.Org.Chem.,1980年,45巻,4045頁)の如く,通常0℃で,トリフルオロ酢酸溶液中,化合物7と発煙硝酸とを反応させることにより合成した。この反応混合物を直ちに氷上に注ぎ,水酸化ナトリウムで塩基性化すると,濾過により集められる沈殿が得られた。標準的な手順(たとえば再結晶化)による精製により,化合物8を提供することができる。
段階3−化合物9の合成
化合物9は,記載(Schneller及びLuo,J.Org.Chem.,1980年,45巻,4045頁)の如く,溶媒(たとえば酢酸エチル)中,通常80℃に数分加熱しながら化合物8と三塩化リンとを反応させることにより合成した。この反応混合物を冷却し,塩基性水溶液(たとえば炭酸ナトリウム)で中和し,有機溶媒(たとえば酢酸エチル)により抽出する。化合物9は,有機部分から単離し,慣用手段(たとえば再結晶化)により精製することができる。
段階4−式XVIIの化合物の合成
式XVII(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物9と塩基(たとえば水素化ナトリウム),保護基の導入のために続いて好適な試薬(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)と反応させることにより合成することができる。この反応は通常,室温で8〜12時間進行させることができ,所望の生成物は,標準的な手段(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離することができ
る。
段階5−式XVIIIの化合物の合成
式XVIIIの化合物は,記載(Antoniniら,J.Med.Chem.,1982年,25巻,1258頁)の如く,好適な溶媒(たとえばメタノール)中,触媒(たとえばRaneyニッケル)の存在下,通常室温で2〜4時間,式XVIIの化合物と還元剤(たとえば水素ガス)とを反応させることにより合成することができる。式XVIIIの化合物は,標準的な手段(たとえば濾過及び蒸発)により単離することができる。
段階6−式XIX化合物の合成
式XIXの化合物は,式XVIIの化合物と,多くの利用可能なアルキル化剤またはアシル化剤の一つ(たとえば臭化イソブチル,,塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネートまたは塩化フェニルスルホニル)とを反応させることにより合成することができる。式XIXの化合物は,慣用手段(たとえばシリカゲルクロマトグラフィー)により精製することができる。
段階7−式Ib(式中,R3はNR22R23である)の化合物の合成
式Ib(式中,R3はNR22R23である)の化合物は,好適な溶媒(たとえばメタノール)中,式XIXの化合物と好適な試薬とを反応させて,保護基P(たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を除去することにより合成することができる。最終生成物は,標準的な手段(たとえば抽出)により単離することができる。
D.式Ic(式中,R1,R3,R4及びR5は水素である)の化合物の合成
式Ic
式Icの化合物は,式I(式中,R2はコア構造体の単一置換基である)の化合物である。式Icの化合物群の代表的な合成スキームは,R2の様々選択に関して,スキーム16〜32に示される。
スキーム16−式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−化合物10の合成
化合物10は,文献の手順(Robinson,J.Am.Chem.Soc.,1955年,77巻,457頁)に従って,市販の7-アザインドールから合成した。
段階2−式XXの化合物の合成
式XXの化合物は,THFまたはエーテルのような非プロトン性溶媒中で塩基(たとえばBuLi,NaH)を使用して脱プロトン化し,このアニオンを塩化シリル(たとえばTIPS)または無水物(たとえばBoc無水物)と反応させることにより合成した。生成物は,標準的な手順(氷冷塩水でクエンチし,仕上げし,フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製)に従って単離した。
段階3−式1cの化合物の合成
式Icの化合物は,室温で,トルエン中,式XXの化合物とイソプロピルクロロホーメート(またはエチルクロロホーメート)との反応により合成し,3-クロロメチル中間体を得た。この中間体を−78℃に冷却し,直ちにこれをグリニヤール試薬(または有機リチウム試薬)とシアン化銅とLiClとの溶液との間の反応から発生させた有機銅試薬と反応させた。この混合物を−78℃で1時間撹拌して,次いで室温に温めた。反応は,4:1の塩化アンモニウム:水酸化アンモニウムの溶液でクエンチした。この反応は通常方法により仕上げ,シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,窒素-保護化生成物が得られた。最終生成物は,室温で標準条件(たとえばTFAまたはNH4F)を使用して保護基(Boc,TIPS)の脱保護により達成することができる。
スキーム17−式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の別の合成
式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−化合物11の合成
化合物11は,市販の7-アザインドール,化合物2を,水中でヘキサメチルテトラミンと酢酸と,2時間還流まで加熱して反応させることにより合成した。冷却後,所望の生成物は沈殿し,これを濾過により集めた。
段階2−式XXIの化合物の合成
式XXI(式中,Pは保護基である)の化合物は,通常室温で,12から18時間,溶媒(たとえばTHF)中,化合物11と保護基(たとえばtert-ブチルオキシカルボニル二無水物)を導入するための好適な試薬と塩基(たとえば水素化ナトリウム)とを反応させることにより合成した。生成物は慣用手段(たとえば抽出)により単離することができる。
段階3−式XXIIの化合物の合成
式XXIIの化合物は,通常−10℃に冷却した不活性雰囲気下,溶媒(たとえばTHF)中,式:R24MgCl(たとえば臭化フェニルマグネシウム)のグリニヤール試薬または当量の求核試薬と,溶媒(たとえば1,2-ジメトキシエタン)中の式XXIの化合物とを反応させることにより合成した。この反応は通常,室温に温め,12から18時間撹拌した。所望の生成物は逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
段階4−式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の中間体の合成
式Icの化合物の中間体は,通常,80℃に1〜4時間加熱しながら,式XXIIの化合物と還元剤(たとえば水素化ホウ素ナトリウム)とを溶媒(たとえばエタノール)中で反応させることにより合成した。この反応はメタノールを添加してクエンチし,濃縮し,逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製した。
段階5−式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,好適な溶媒(たとえばジオキサン)中,保護基,Pを除去するための好適な試薬(たとえば塩酸)と段階4からの中間体とを反応させることにより合成した。最終生成物は標準的な手順(たとえば逆相の分取高速液体クロマトグラフィー)により単離した。
スキーム18−式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の別の合成
式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はアラルキルまたはヘテロアラルキルであり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,18から24時間,室温または還流以下に加熱しながら,不活性雰囲気(たとえばアルゴン)下,不活性溶媒(たとえば塩化メチレン)中,化合物2と,活性化試薬(たとえば臭化メチルマグネシウム及び二塩化亜鉛または無水塩化アルミニウム)と臭化アラルキル(たとえば臭化ベンジル)または臭化ヘテロアラルキル(ピリジン臭化ベンジル)とを反応させることにより合成した。この生成物は,標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルクロマトグラフィー)により単離した。
スキーム19−式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)
段階1:式XXの化合物の合成
式XXの化合物は,非プロトン性溶媒(THF)中,0℃で強塩基(たとえばNaH,BuLi)による脱プロトン化,続いてP-X(たとえばTIPS-Cl,Boc無水物)を付加して製造した。生成物は,標準的な仕上げ手順により単離した。
段階2−式XXIIIの化合物の合成
式XXIIIの化合物は,非プロトン性溶媒(トルエン)中,25℃でクロロホーメート(たとえばエチルホーメート,イソプロピルホーメート)を添加することにより式XXの化合物から製造した。生成物は標準的な仕上げ及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより単離した。
段階3−式XXIIIaの化合物の合成
式XXIIIaの化合物は,アセトン中,60℃でヨウ化ナトリウムを添加して式XXIIIの化合物から製造した。数時間後,通常4時間後,濃縮して乾涸させ,残渣をDMFに溶解し,アジ化ナトリウムを添加した。この反応物を通常,室温で短時間,1時間撹拌した。生成物は標準的な仕上げ手順に従って単離し,シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによりアジ化中間体が生成した。参考文献。
段階4:式XXIVの化合物の合成
式XXIVの化合物は,触媒(たとえばPd/C)の存在下,触媒量の酸(たとえばHCl,酢酸)と,不活性溶媒(たとえばTHF)中での水素化により,式XXIIIaのアジドから製造した。生成物は,標準的な仕上げ手順に従って単離した。参考文献。
段階5:式XXVの化合物の合成
式XXVの化合物は,不活性溶媒(THF)中,強塩基(たとえばNaH,BuLi,TEA)の存在下,種々の求電子試薬(イソシアネート,塩化スルホニル)を使用して,式XXIVの化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィーに従って単離した。参考文献。
段階6:式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物は,室温で,ジクロロメタン中,酸(たとえばHCl,TFA)を添加することにより,式XXVの化合物から製造した。生成物は標準的な手段に従って単離した。
スキーム20−式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物の別の合成
式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)
式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物は,不活性溶媒(たとえばTHF)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド中,スルホンアミド,アミドまたは尿素(たとえばベンゼンスルホンアミド,ベンズアミド,フェニル尿素)との還元性アミン化,及び得られた生成物の脱保護により式XXIの化合物から合成した。最終生成物は,シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより単離した(Dube及びScholte;Tetrahedron Lett.1999年,40巻,2295頁)。
スキーム21−式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物の別の合成
式Ic(式中,R2はCH2NR22R23である)
段階1−化合物12の合成
化合物12は,Synthesis 1999年,4巻;615-620頁に記載の如く,化合物2と臭素化剤(たとえば臭素)と,補助溶媒(たとえば四塩化炭素:クロロホルム)中で反応させることにより合成した。通常の相抽出を実施し,得られた水性層を塩基(たとえばNaOH)で処理する。得られた固体は標準的な濾過方法により単離する。
段階2−式XXVIの化合物の合成
式XXVIの化合物は,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.(Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)に記載の如く,塩基(たとえば水酸化ナトリウム)の存在下,不活性溶媒(たとえばジクロロメタン)中,化合物12と塩化スルホニル(たとえば塩化ベンゼンスルホニル)とを反応させることにより合成した。得られたスラリーをセライトで濾過することによって生成物を単離することができる。
段階3−式XXVIIの化合物の合成
式XXVIIの化合物は,Andersonら(J.Org.Chem.,1998年;63巻,8224頁)に記載の如く,触媒(たとえばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム)の存在下,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,化合物XXVIとシアン化物供給源(たとえばZn(CN)2)とを反応させることにより合成した。標準的な仕上げを使用し,標準的な結晶化またはクロマトグラフィー法により精製する。
段階4−式XXVIIaの化合物の合成
式XXVIIaの化合物は,Stavenger,R.A.らのPCT国際公開第WO03/028724号に記載の如く,不活性溶媒(たとえばMeOH)中で触媒(たとえば炭素上パラジウム)を添加して,還元剤(たとえばH2)で式XXVIIの化合物から製造した。標準的なクロマトグラフィー法により精製した。
段階5−式XXVIIbの化合物の合成
式XXVIIbの化合物は,塩基(たとえばジイソプロピルエチルアミン:DMAP)の存在下,不活性溶媒(たとえばDMF)中,アルキル化剤,スルホニル化剤,またはイソシアネート及びイソチオシアネート(たとえば,臭化ベンジル,塩化ベンゼンスルホニル,フェニルイソシアネート)で処理することにより式XXVIIaの化合物から製造した。標準的な仕上げを使用し,標準的な結晶化またはクロマトグラフィー法により精製する。
段階6−式1c(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCH2NR22R23である)の化合物は,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M(,Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)に記載の如く,通常,60〜80℃に1〜3時間加熱しつつ,極性非プロトン性溶媒(たとえばEtOH)中,式XXVIIbの化合物を塩基(たとえばKOH)で処理することにより生成することができる。標準的な仕上げをし,標準的なクロマトグラフィー法により精製する。
スキーム22−式Ic(式中,R2はCONR16R17である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はCONR16R17である)
段階1−式XXVIIIの化合物の合成
式XXVIIIの化合物は,Larock,R.C.(Comprehensive Organic Transformations;VCH:NY,1989年,993頁)に記載の如く,不活性溶媒(たとえばEtOH)中,化合物XXVIIと塩基(たとえばNaOH)とを反応させることにより製造することができる。標準的な仕上げ手順及び精製法を実施する。
段階2−式XXIXの合成
式XXIXの化合物は,Coste,J.ら(J.Org.Chem.1994年;I58巻,2437頁)に記載の如く,カップリング剤(たとえばブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート:PyBrop)の存在下,及び塩基(たとえばジイソプロピルエチルアミン)の存在下,不活性溶媒(たとえばDMF)中で化合物XXVIIIとアミン(たとえばベンジルアミン)とを反応させることにより製造することができる。通常の仕上げ手順を利用し,精製は,標準的なクロマトグラフィー手順により実施する。
段階3−式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物は,Tetrahedron Lett.2001年,42(44)巻;7759頁に記載の如く,不活性溶媒(たとえばTHF)中,化合物XIIIとフッ化物供給源(たとえばNH4F)とを反応させることにより製造することができる。精製は標準的なクロマトグラフィー法により実施する。
スキーム23−式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCONR16R17である)
段階1−式XXIの化合物の合成
式XXI(R2はCHOである)の化合物は,化合物12と好適な保護基(たとえばBoc,TIPS)とを反応させることにより合成した。
段階2−式XXVIIIの合成
式XXVIII(式中,R2はCO2Hである)の化合物は,Merourら(Synthesis,2000年,549-556頁)に記載の如く,好適な溶媒(たとえばTHFとH2Oとの混合物)中,式XXIの化合物と酸化剤(たとえばNaClO2及びNH2SO3H)を反応させることにより合成した。
段階3及び4−式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物は,PyBrop(ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)の存在下,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,式XXVIIIの化合物とアミン(たとえばアニリン,ジメチルアミン)とを反応させ,この保護基を好適な試薬で脱保護することにより合成した。
スキーム24−式1c(式中,R2はCONR16R17である)化合物の別法
式1c(式中,R2はCONR16R17である)
段階1−式XXVIIIの化合物の合成
式XXVIIIの化合物は,不活性溶媒(たとえばTHF)中,低温,−78℃で式XXVIの化合物とリチウム試薬(たとえばt-ブチルリチウム)とを反応させ,短時間,1時間撹拌し,続いてCO2と反応させ,通常法により仕上げることによって製造することができる。生成物はフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することができる。
段階3及び4−式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCONR16R17である)の化合物は,PyBrop(ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)の存在下,極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中,式XXVIIIの化合物とアミン(たとえばアニリン,ジメチルアミン)とを反応させ,この保護基を好適な試薬で脱保護することにより合成した。
スキーム25−式1c(式中,R2はCSNR16R17である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCSNR16R17である)
段階1―式XXXの化合物の合成
式XXXの化合物は,文献(Bull. Soc. Chim. Belg.,1978年,87巻,223頁)に記載の如く,式XXIXの化合物とLawesson試薬(またはP4S10)とを反応させることにより,この化
合物から製造することができる。
段階2−式1c(式中,R2はCSNR16R17である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はCSNR16R17である)の化合物は,式XXXの化合物を酸(たとえばHCl;TFA)で脱保護し,生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製することによって製造することができる。
スキーム26−式1c(式中,R2はNR22R23である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はNR22R23である)
段階1−式XXXIの合成
式XXXIの合成は,Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.(Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)に記載の如く,不活性溶媒(たとえばジクロロメタン)中,塩基(たとえば水酸化ナトリウム)の存在下,化合物2と塩化スルホニル(たとえば塩化ベンゼンスルホニル)とを反応させることにより合成した。生成物は,得られたスラリーをセライトで濾過することにより単離できる。
段階2−式XXXIIの化合物の合成
式XXXIIの化合物は,Robinson,B.L.ら(J. Am. Chem. Soc.,1959年,81巻;743頁)に記載の如く,0〜25℃の温度で1〜3時間撹拌しながら,化合物XXXIとニートの硝酸化試薬(nitrating agent)(たとえば発煙HNO3)とを反応させることにより製造した。この混合物を氷上に注ぎ,塩基(たとえばNH4OH)で中和し,得られた沈殿を濾過し,真空乾燥した。標準的なクロマトグラフィー法により精製することができる。
段階3−式XXXIIIの化合物の合成
式XXXIIIの化合物は,Stavenger,R.A.ら(PCT国際公開WO03/028724号)に記載の如く,触媒(たとえば炭素上パラジウム)を添加した極性溶媒(たとえばMeOH)中,化合物XXXIIと還元剤(たとえばH2)と反応させることにより製造した。標準的なクロマトグラフィー法により精製を実施することができる。
段階4及び5−式1c(式中,R2はNR22R23である)の化合物の合成
式1c(式中,R2はNR22R23である)の化合物は,不活性溶媒(たとえばDMF)中,塩基(たとえばジイソプロピルエチルアミン;DMAP)の存在下,化合物XXXIIIとアルキル化試薬,スルホニル化試薬,酸クロリド,またはイソシアネートとイソチオシアネート(たとえば臭化ベンジル,塩化ベンゼンスルホニル,フェニルイソシアネート)とを反応させ,続いて脱保護することにより製造することができる。標準的な仕上げを利用し,標準的なクロマトグラフィー法により精製する。
スキーム27−式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)
段階1−式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物は,不活性溶媒(たとえば塩化メチレン)中,ルイス酸(たとえば三塩化アルミニウム)の存在下,及び不活性雰囲気(たとえばアルゴン)下,室温または還流まで1〜18時間加熱することにより,化合物2と酸クロリド(たとえば塩化ベンゾイル)とを反応させることにより合成した。生成物は,抽出及びシリカゲルのクロマトグラフィーにより単離した。
スキーム28−式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)
段階1−式XXIXの合成
式XXIXの化合物は,カップリング試薬(BOPまたは2-クロロ-1-メチルピリジンヨーダイド)の存在下,式XXVIIIの化合物とN,N-ジメチルアミン・HClとを反応させることにより,式XXVIIIの化合物から製造することができる(J.Org.Chem.,1996年;61巻,4999頁;またはSynth.Commun.,1995年,25巻,1277年)。
段階2−式XXXの化合物の合成
式XXXの化合物は,グリニヤール試薬(たとえば臭化フェニルマグネシウム)またはリチウム試薬(たとえばフェニルリチウム)とを不活性溶媒(たとえばジエチルーテルまたはTHF)中,低温,通常0℃で反応させ,室温に温め,短時間,通常1時間撹拌することにより,式XXIXの化合物から製造することができる。この反応は,希塩酸(3N HCl)を添加してクエンチし,標準的な仕上げ条件にかけ,カラムクロマトグラフィーにより精製することができる(Olahら,Synthesis,1984年,3巻,228頁)。
段階3−式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物は,好適な脱保護試薬(たとえばTBAFまたはNaOH水溶液)で化合物XXXを脱保護し,標準条件により生成物を精製することにより製造することができる。
スキーム29−式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はC(X)R20であり,Xは'O'である)
段階1−式XXXIの化合物の合成
式XXXIの化合物は,カップリング試薬(BOP試薬または2-クロロ-1-メチルピリジンヨーダイド)の存在下,式XXVIIIの化合物とN,O-ジメチルヒドロキシルアミン・HClとを反応させることにより,式XXVIIIの化合物から製造することができる(J.Org.Chem.,1996年,61巻,4999頁;またはSynth.Commun.,1995年,25巻,1277頁)。
段階2−式XXXの化合物の合成
式XXXの化合物は,文献(Tetrahedron Letters,1981年,22巻,3815頁)に従って,グリニヤール試薬と反応させることにより,式XXXIの化合物から製造することができる。
段階3−式1cの化合物の合成
式Icの化合物は,スキーム24に示されているのと同一方法で,式XXXの化合物から製造することができる。
スキーム30−式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=0である)
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=1である)
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)
段階1−式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=0である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=0である)の化合物は,不活性溶媒(たとえばDMF)中,強塩基(たとえばNaH)で脱プロトン化,続いて二硫化ジアリル(たとえばPhSSPh)を添加することにより,市販の化合物2から製造した。この反応は通常,室温で一晩実施し,生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーに従って単離した(Atkinsら,1988年,480頁)。
段階2−式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=1である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=1である)の化合物は,ジクロロメタン中,酸化剤(m-CPBA,オキソン,0.5当量)を添加して,式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=0である)の化合物から製造した。この生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
段階3−式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)の化合物は,ジクロロメタン中
,酸化剤(m-CPBA,オキソン,2.0当量)を添加することにより,式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=1である)の化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
スキーム31−式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)
式Ic(式中,R2はS(O)nR21であり,ここでn=2である)の化合物は,Ottoniら(Tetrahedron,1998年,54巻,13915頁)に記載の如く,極性溶媒(たとえばエタノール,アセトン)中,室温で,塩化スルホニル(たとえば塩化ベンゼンスルホニル)との反応により,化合物2から製造することができる。生成物は標準的な仕上げ手順により単離することができる。
スキーム32−式Ic(式中,R2はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式XXXIの化合物の合成
式XXXI(式中,Pは保護基である;たとえばフェニルスルホニル)の化合物は,塩基(たとえば炭酸ナトリウム)及び金属(たとえばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))とリガンド(トリ-tert-ブチルホスフィン)とから構成される触媒の存在下,式XXXVIの化合物とアリールまたはヘテロアリールボロン酸(たとえばフェニルボロン酸)とを,通常75℃に8〜12時間加熱して反応させることにより合成した。
段階2−式Ic(式中,R2はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ic(式中,R2はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,好適な溶媒(たとえばエタノール)中,式XXXIの化合物を,保護基Pを除去するための好適な試薬(たとえばNaOH)と反応させることにより合成した。最終生成物は,標準的な手順(たとえば逆相の分取高速液体クロマトグラフィー)により単離した。
E.式Id(式中,R1,R3及びR5は水素である)の化合物の合成
式Id
式Idの化合物は,式I(式中,R2及びR4はコア構造上の単一の置換基である)の化合物である。式Idの化合物群の代表的なスキームを種々のR2及びR4に関してスキーム33〜38に示す。
スキーム33−式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2は(CH2)nR24であり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はCH2R24であり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−化合物13の合成
化合物13(式中,R2は,CH2NMe2である)の化合物は,Robinson(J.Am.Chem.Soc.,1955年,77巻,457頁)に記載の如く,アルカノール溶媒(たとえばイソプロパノール)中,パラホルムアルデヒド及びジメチルアミン塩酸塩を使用して,Mannich反応条件下で合成した。
段階2−式XXXIIの化合物の合成
式XXXII(式中,R2はCH2NMe2である)の化合物は,化合物12と好適な保護基(たとえばBoc,TIPS)とを反応させることによって合成した。
段階3−式XXIIIの化合物の合成
式XXIII(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,触媒(たとえばPd(PPh3)4)の存在下,アリールまたはヘテロアリールボロン酸(たとえばフェニルボロン酸,3-チエニルボロン酸)を使用するSuzuki反応条件下,式XXXIIの化合物から合成した。
段階4−式XXIVの化合物の合成
式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,不活性溶媒(たとえばトルエン)中,式XXIIIの化合物と,エチルクロロホーメートまたはイソプロピルクロロホーメートと反応させることにより合成することができる。
段階5−式Id(式中,R2は(CH2)nR24であり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Id(式中,R2は(CH2)nR24であり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,触媒(たとえばCuCl.2LiCl)の存在下,不活性溶媒(たとえばTHF)中,式XXIVの化合物とグリニヤール試薬(たとえば臭化フェニルマグネシウム,臭化ベンジルマグネシウム)とを反応させることにより合成した。保護基(たとえばTIPS)は,好適な試薬(たとえばTBAF)により開裂することができるか,反応(たとえばBoc)の間に開裂することができる。
スキーム34−式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はCH2R24であり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はCH2R24であり,R24はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1:
式XXXVの化合物は,ジクロロメタン中,ルイス酸(たとえば塩化アルミニウム)の存在下,室温で,求電子試薬(たとえばハロゲン化アリール,ハロゲン化ヘテロアリール)を使用するフリーデル-クラフツアルキル化条件下で,式1の化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ手順に従って単離した。
段階2:
式XXXVIの化合物は,非プロトン性溶媒(たとえばTHF)中,0℃で強塩基(たとえばNaH,BuLi)による脱プロトン化,続いて保護基(TIPS-Cl,Boc無水物)により,式XXXVの化合物から製造した。生成物は標準的な仕上げ手順に従って単離した。
段階3:
式XXXVIIの化合物は,水性/THF溶媒系中,ボロン酸(たとえばアリールまたはヘテロアリール),塩基(たとえば炭酸カリウム,トリエチルアミン,水酸化ナトリウム)及び触媒(たとえばPd(Ph3P)4)を使用するSuzuki反応下,式XXXVIの化合物から製造した。12時間後,生成物を標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーに従って単離した。
段階4:
式Idの化合物は,ジクロロメタン中,酸(たとえばHCl,TFA)を使用して,保護基の脱保護により,式XXXVIIの化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーに従って単離した。
スキーム35−式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1:
式XXXVIIIの化合物は,ジクロロメタン中,室温で,ルイス酸(たとえば塩化アルミニウム)の存在下,フリーデル-クラフツアルキル化条件下,酸クロリド(たとえばアリール,ヘテロアリール)と式1の化合物とから製造した。生成物は標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
段階2:
式XXXIXの化合物は,0℃で非プロトン性溶媒(THF)中,強塩基(たとえばNaH,BuLi)による脱プロトン化,続いて保護基(TIPS-Cl,Boc無水物)の付加により,式XXXVIIIの化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ手順に従って単離した。
段階3:
式XLの化合物は,水性/THF溶媒系中,ボロン酸(たとえばアリールまたはヘテロアリール),塩基(たとえば炭酸カリウム,トリエチルアミン,水酸化ナトリウム)と触媒(たとえばPd(Ph3P)4)を使用して,Suzuki反応下で式XXXIXの化合物から製造した。12時間後,生成物は標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
段階4:
式Idの化合物は,ジクロロメタン中の酸(たとえばHCl,TFA)を使用する保護基の脱保護により,式XLの化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
スキーム36−式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はSO2R21であり,ここでR21はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Id(式中,R4はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はSO2R21であり,ここでR21はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1:
式XLIの化合物は,ジクロロメタン中,強塩基(たとえばNaH)を添加し,続いてジスルフィド分子(たとえばPhSSPh)を添加することによって,式1の化合物から製造した。反応は室温で一晩実施した。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
段階2:
式XLIIの化合物は,ジクロロメタン中,酸化剤(たとえばMCPBA,オキソン,2.0当量)を添加して一晩実施して,式XLIの化合物から製造した。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
段階3:
式XLIIIの化合物の合成は,強塩基(BuLi,NaH)を使用する脱プロトン化,続いて不活性溶媒(THF)中,保護基(たとえばTIPS-Cl,Boc無水物)を付加して,式XLIIの化合物から式XLIIIの化合物を製造することができる。
段階4:
式XLIIIの化合物は,水/THF溶媒系中,ボロン酸(たとえばアリールまたはヘテロアリール),塩基(たとえば炭酸カリウム,トリエチルアミン,水酸化ナトリウム)及び触媒(たとえばPd(Ph3P)4)を使用するSuzuki反応下,式XLIIの化合物から製造することができる。12時間後,生成物は標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
段階5:
式Idの化合物は,ジクロロメタン中,酸(たとえばHCl,TFA)を使用する保護基の脱保護によって,式XLIIIの化合物から製造することができる。この生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離した。
スキーム37−式Id(式中,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR22R23である)の化合物の合成
式Id(式中,R4はNR22R23であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式XXXVIII(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式XXXVIIIの化合物は,不活性雰囲気下,通常室温で1〜2時間,溶媒(たとえばジク
ロロメタン)中,ルイス酸(たとえば三塩化アルミニウム)と化合物1とを反応させ,続いて酸クロリド(たとえば塩化ベンゾイルまたは塩化ニコチノイル)を添加し,2〜12時間反応させることによって合成した。反応はメタノールでクエンチし,濃縮し,シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。
段階2−式XXXIX(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式XXXIX(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物XXXVIIIと塩基(たとえば水素化ナトリウム)とを反応させ,続いて保護基(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)を導入するための好適な試薬と反応させることにより合成した。反応は通常,室温で8〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手段(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した。
段階3−式XLIV(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR16R17である)の化合物の合成
式XLIV(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR16R17である)の化合物の中間体は,N-置換-3,6-ジブロモカルバゾールを式IIの化合物に置き換えて,Thomasら(J.Am.Chem.Soc.,2001年,123巻,9404頁)に記載の如く,溶媒(たとえばトルエン)中,塩基(たとえばナトリウムtert-ブトキシド)及び金属(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0))及びリガンド(たとえばトリ-tert-ブチルホスフィン)の存在下,通常95℃に8〜12時間加熱しながら,式XXXIX(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物と式NHR16R17のアミン(たとえばアニリン)とを反応させることにより合成した。所望の化合物は,シリカゲルのクロマトグラフィーにより精製した。この中間体を段階5で直接使用して,式1d(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR22R23であり,R22及びR23は-C(X)R20でも,-C(X)NR16R17でも,-S(O)2R21でもない)を提供することができるか,あるいは段階4でさらに置換することができる。
段階4−式XLIV(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR22R23である)の化合物の合成
段階3からの中間体は,少なくともR16またはR17が水素であるときにはさらに変形することができる。段階3からの中間体は,溶媒(たとえばN,N-ジメチルホルムアミド)中,塩基(たとえば水素化ナトリウム)と反応させ,続いてアルキル化試薬(たとえば臭化ベンジル)またはアシル化剤(たとえば塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネートまたは塩化フェニルスルホニル)と,通常,室温または80℃に1〜12時間加熱して反応させることができる。式XLIV(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR22R23である)の化合物は,慣用手段(たとえばシリカゲルのクロマトグラフィー)により精製することができる。
段階5−式Id(式中,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR22R23である)の化合物の合成
式Id(式中,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はNR22R23である)の化合物は,好適な溶媒(たとえばメタノール)中,式XLIVの化合物と好適な試薬とを反応させて,保護基P(たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を除去することにより合成した。最終生成物は,標準的な手順(たとえば抽出)により単離することができる。
スキーム38−式Id(式中,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールであり,R4はC(O)NR16R17である)の化合物の合成
式Id(R4はC(O)NR16R17であり,式中,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式IIの化合物の合成
化合物II(式中,R4はBrである)の化合物は,化合物1を好適な保護基(たとえばTIPS)で保護することにより合成した。
段階2−式XLVの化合物の合成
式XLV(式中,R4はCO2R24である)の化合物は,不活性溶媒(たとえばTHF)中,式IIの化合物と強塩基(たとえばn-ブチルリチウム)とベンジルクロロホーメートまたはメチルクロロホーメートとを反応させることにより合成した。
段階3−式XLVIの化合物の合成
式XLVI(式中,R2はC(O)R20である)の化合物は,塩化メチレン中,ルイス酸(たとえばAlCl3)の存在下,塩化アシル(たとえば塩化ベンゾイル)を使用して,フリーデル-クラフツ条件下で化合物XLVから合成することができる。
段階4−式XLVIIの化合物の合成
式XLVII(式中,R4はCOOHであり,R2はC(O)R20である)の化合物は,式XLVIの化合物と水性塩基(たとえばNaOH)とを反応させるか,または触媒(たとえば5%Pd/C)の存在下,アルコール(たとえばMeOH)溶媒中,水素下で式XLVII(式中,R4はCOOBnである)の化合物の水素化により合成することができる。
段階3−式XLVIIIの化合物の合成
式XLVIII(式中,R2はC(O)R20であり,R4はC(O)NR16R17である)の化合物は,Costeら(Journal of Organic Chemistry,1994年,59巻,2437頁)に記載の手順に従って,PyBrop(ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)の存在下,不活性雰囲気中,非極性非プロトン性溶媒(たとえばDMF)中で式XLVIIの化合物とアミン(たとえばベンジルアミン,ジメチルアミン)とを反応させることにより合成することができる。
段階4−式Idの化合物の合成
式Id(式中,R2はC(O)R20であり,R4はC(O)NR16R17である)の化合物は,好適な条件(たとえばTBAF)のもと,式XLVIIIの化合物の保護基(たとえばTIPS)を開裂することにより合成することができる。
F.式Ig(式中,R1,R4及びR5は水素である)の化合物の合成
式Igの化合物は,式I(式中,R2及びR3はコア構造上の単一の置換基である)の化合物
である。式Igの化合物の化合物の群の例示的な合成スキームは,R2及びR3の種々の選択に関してスキーム39〜43に示す。
スキーム39−式Ig(式中,R3はNH2であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ig(式中,R3はNH2であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式XLIX(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式XLIX(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,溶媒(ジクロロメタン)中,化合物10とルイス酸(たとえば三塩化アルミニウム)と,通常,室温で1〜2時間反応させて,続いて酸クロリド(たとえば塩化ベンゾイルまたは塩化ニコチノイル)を添加し,2〜12時間反応させることにより合成することができる。反応はメタノールでクエンチし,濃縮し,シリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
段階2−式Ig(式中,R3はNH2であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ig(式中,R3はNH2であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,Antoniniら(J.Med.Chem.1982年,25巻,1258頁)に記載の如く,好適な溶媒(メタノール)中,触媒(たとえばRaneyニッケル)の存在下,還元剤(たとえば水素ガス)と,室温で2〜4時間,反応させることにより合成した。生成物は,濾過及び蒸発により単離した。
スキーム40−式Ig(式中,R3はNR22R23であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ig(式中,R3はNR22R23であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式XLX(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の中間体の合成
式XLX(式中,Pは保護基である)の化合物は,溶媒(たとえばTHF)中,式XLIXの化合物と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて保護基(P-X,たとえばトリイソプロピルシリルクロリド)を導入するための好適な試薬と反応させることにより合成することができる。反応は通常,室温で2〜6時間進行させ,生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのクロマトグラフィー)により単離した。
段階2−式XLX(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式XLXの化合物は,Antoniniら(J.Med.Chem.1982年,25巻,1258頁)に記載の如く,溶媒(たとえばメタノール)中,触媒(たとえばRaneyニッケル)の存在下,段階1からの中間体と還元剤(たとえば水素ガス)とを通常,室温で2〜4時間の反応により合成することができる。生成物は標準的な手段(たとえば濾過及び蒸発)により単離することができる。
段階3−式XLXI(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式XLXI(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,溶媒(たとえばジメチルホルムアミド)中,式XLXの化合物と塩基(たとえば水素化ナトリウム)との反応,続いてアルキル化試薬(たとえば臭化ベンジル)またはアシル化剤(たとえば塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネート,塩化フェニルスルホニル)と,通常,室温で,または80℃に1〜12時間加熱することによって合成することができる。所望の生成物は,慣用の手段(たとえばシリカゲルのクロマトグラフィー)により精製することができる。
段階4−式XLXII(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式XLXII(式中,R20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,溶媒(たとえばジメチルホルムアミド)中,式XLXIの化合物と塩基(たとえば水素化ナトリウム)との反応,続いてアルキル化試薬(たとえば臭化ベンジル)またはアシル化剤(たとえば塩化ベンゾイル,フェニルイソシアネート,塩化フェニルスルホニル)と,通常室温で,または80℃に1〜12時間加熱することによって合成することができる。所望の生成物は,慣用の手段(たとえばシリカゲルのクロマトグラフィー)により精製することができる。
段階5−式Ig(式中,R3はNR22R23であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ig(式中,R3はNR22R23であり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,好適な溶媒(たとえばメタノール)中,式XLXIIの化合物と好適な試薬とを反応させて,保護基P(たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリド)を除去することにより合成することができる。最終生成物は,標準的な手段(たとえば抽出)により単離することができる。
スキーム41−式Ig(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20アリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)
式Ig(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20アリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式1b(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式1b(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,触媒(たとえばPd2(dba)3CHCl3)の存在下,塩(たとえばKF)の存在下,不活性溶媒(たとえばジオキサン)中,化合物6とボロン酸(たとえば3-メトキシフェニルボロン酸)とを反応させることにより合成することができる。反応は,Allegretti,M.ら(Synlett 2001年;5巻,609頁)に記載の如く,不活性溶媒中,通常,4〜12時間,加熱(100℃)して実施する。精製は,標準的なクロマトグラフィー法により実施する。
段階2−式1g(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式1g(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,Katritzky,A.R.ら(J.Org.Chem.2003年,68巻,5720頁)に記載の如く,酸クロリド(たとえば塩化ベンゾイル)の存在下,不活性溶媒(たとえばCH2Cl2)中,式1b(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)とルイス酸(たとえばAlCl3)とを反応させることにより合成することができる。精製は標準的なクロマトグラフィー法により実施する。
スキーム42−式1g(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式1g(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−化合物XLXIIIの合成
式XLXIIIの化合物は,Katritzky,A.R.ら(J.Org.Chem.2003年,68巻,5720頁)に記載の如く,酸クロリド(たとえば塩化ベンゾイル)の存在下,不活性溶媒(たとえばCH2Cl2)中,式6の化合物とルイス酸(たとえばAlCl3)とを反応させることにより製造することができる。標準的なクロマトグラフィー法により精製を実施する。
段階2−式1g(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式1g(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,不活性溶媒(たとえばジオキサン)中,塩(たとえばKF)の存在下,触媒(たとえばPd2(dba)3CHCl3)の存在下,式XLXIIIの化合物と,ボロン酸(たとえば3-メトキシフェニルボロン酸)とを反応させることにより合成することができる。反応は不活性溶媒中で実施し,Allegretti,M.ら(Synlett 2001年;5巻,609頁)に記載の如く通常,4〜12時間加熱(100℃)する。標準的なクロマトグラフィー法により精製を実施する。
スキーム43−式Ig(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はCH2R24であり,ここでR24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ig(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はCH2R24であり,ここでR24はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−式XXの化合物の合成
式XXの化合物は,スキーム16に概説された手順に従って製造した。
段階2−式XLIXの化合物の合成
式XLIXの化合物は,非プロトン性溶媒(Et2O,THF)中,−78℃で,塩基(n-BuL t-BuLiなど)を使用して脱プロトン化を実施することにより式XXの化合物から製造した。次いでこのアニオン中間体を臭化物供給源(NBSまたはジブロモエタン)と反応させ,室温に温めた。反応物は通常方法で仕上げた。化合物はシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。
段階3−式Lの化合物の合成
式L(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物は,スキーム10に示されているように,アリールまたはヘテロアリールボロン酸(たとえばフェニルボロン酸,3-チエニルボロン酸)を使用するSuzuki反応条件下,式XLIXの化合物から合成した(M.Allegretti,Synlett,2001年,5巻,609頁)。
段階4−式Igの化合物の合成
式Igの化合物は,室温で,トルエン中,式XXの化合物とイソプロピルクロロホーメート(またはエチルクロロホーメート)とを反応させて3-クロロメチル中間体を与えることによって合成することができる。この中間体を−78℃に冷却し,直ちにグリニヤール試薬(または有機リチウム試薬)と,シアン化銅とLiClとの溶液との間の反応から生成させた有機銅試薬と反応させた。この中間体を−78℃で1時間撹拌して,室温に温めた。この反応物を4:1の塩化アンモニウム:水酸化アンモニウム溶液でクエンチした。反応物を通常方
法により仕上げて,シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,窒素保護化生成物が得られた。最終生成物は,室温で,標準条件(TFAまたはNH4F)を使用する保護基(Boc,TIPS)の脱保護によって実施することができる。
スキーム54−式Ig(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はCH2R24であり,ここでR24はアリールまたはヘテロアリールである)の化合物の合成
式Ig(式中,R3はアリールまたはヘテロアリールであり,R2はC(O)R20であり,ここでR20はアリールまたはヘテロアリールである)
段階1−化合物7の合成
化合物7は,Schneller及びLuo(J.Org.Chem.,1980年,45巻,4045頁)に記載の如く,室温で,溶媒(たとえば,1,2-ジクロロエタン)中,通常1〜4時間,化合物2と85%メタ-クロロペルオキシ安息香酸とを反応させることにより合成した。得られた固体を濾過により集め,エチルエーテルで洗浄した。この固体を水に懸濁させ,水性塩基(たとえば炭酸カリウム)で塩基性化した。冷却して,沈殿を濾過により集め,慣用手段(たとえば再結晶)により精製すると,化合物7が得られた。
段階2−化合物6aの合成
化合物6aは,不活性溶媒(たとえばDMF)中,化合物7と,臭素化剤(たとえばテトラメチルアンモニウムブロミド)とを反応させることにより合成した。混合物を0℃に冷却し,メタンスルホン酸無水物を滴下添加した。この反応混合物を,Thibault,Cら(Organic Letters,2003年,5巻,5023頁)に記載の如く,25℃で通常4〜6時間撹拌する。この反応混合物を直ちに氷上に注ぎ,水酸化ナトリウムで塩基性化すると,濾過により集められる沈殿が得られた。標準方法(たとえば再結晶化)による精製により,化合物6aが得ることができる。
段階3−化合物XLXIIIaの合成
化合物XLXIIIaは,不活性溶媒(たとえば塩化メチレン)中,ルイス酸(たとえば三塩化アルミニウム)の存在下,及び室温で不活性雰囲気(たとえばアルゴン)下,または還流まで1〜18時間加熱して,化合物6aと酸クロリド(たとえば塩化ベンゾイル)とを反応させることにより合成した。生成物は,Katritzky,A.Rら(J.Org.Chem.,2003年,68巻,5720頁)により記載の如く,抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより単離した。
段階4−化合物Igの合成
化合物Igは,触媒(たとえばPd(PPh3)4)の存在下,アリールまたはヘテロアリールボロ
ン酸(たとえば3-メトキシフェニルボロン酸,フェニルボロン酸)を使用してSuzuki反応条件下,式XLXIIIaの化合物から合成した。生成物は,Allegretti,M.ら(Synlett 2001年;5巻,609頁)に記載の如く標準的な手順(氷冷塩水でクエンチし,仕上げし,シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー)に従って単離した。
スキーム55
段階1:
式XLXVの化合物は,周囲温度で,AcOH中に一級アミンとDCCのようなカップリング剤とを添加することにより,式XLXIVの化合物から製造することができる。生成物は,標準的な仕上げ及びシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより単離することができる。参考文献:Hyde,Carolyn B.,JCS,Perkins Trans 2,1989年,2011〜2016頁。
スキーム56
段階1:
式XLXVIの化合物は,CHCl3中,−78℃で,スルフィドXLXIVと,ジトリフルオロメチルベンジルアルコールとスルフィドとのカルシウム塩とを反応させることにより製造することができる。得られる生成物は,定量的収率で濾別することができる。参考文献:Martin,JC,JACS,1971年,93巻,2341頁。
段階2:
式XLXVIIの化合物は,極性非プロトン性溶媒(DMFなど)中,41℃で,ジアルコキシジアリルスルフランと一級アミンとを反応させることにより製造することができる。生成物は,再結晶またはシリカゲルのクロマトグラフィーにより単離することができる。参考文献:Franz JA,JACS,1973年,95巻,6,2017頁。
実施例1:5-シアノ-7-アザインドール14及び7-アザインドール-5-カルボン酸15
スキーム44
段階1−5-シアノ-7-アザインドール14の製造
DMF(10ml)中の5-ブロモ-7-アザインドールXXX(300mg,1.52mmol)の溶液に,シアン化ナトリウム(150mg,3.06mmol),ヨウ化銅(45mg,0.24mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(100mg,0087mmol)を添加した。反応物をアルゴン下に設置し,125℃で48時間加熱し,その後,反応物を周囲温度に放冷してから,酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウム溶液で希釈した。層を分離し,水性層を酢酸エチル(2×,150ml)で抽出した。次いで有機相を混合し,飽和重炭酸塩溶液で洗浄(3×,100ml)してから,硫酸ナトリウムで乾燥し,減圧下で蒸発させた。粗な物質を,添加剤としてトリエチルアミンを添加した70%ヘキサン,30%酢酸エチルの溶液で溶離する分取PLCで精製すると,オフホワイト固体の表記化合物が得られた(150mg,M−1=142.0)。
段階2−7-アザインドール-5-カルボン酸15の製造
エタノール(10ml)中の5-シアノ-7-アザインドールXXX(50mg,0.35mmol)の溶液に,10%水酸化カリウム水溶液(15ml)を添加した。反応物を90℃に2日間加熱し,その後,反応物を室温に温めた。pHは,10%HClで6に調節し,酢酸エチル(100ml)で希釈した。層を分離し,水性層を酢酸エチル(4×,75ml)で洗浄した。有機層を混合し,塩水(100ml)で1度洗浄してから,硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機層を減圧下で蒸発させると,オフホワイト固体の表記生成物が得られた(52mg,M−1,161.2)。
実施例2:3-(3-メトキシ-ベンジル)-5-チオフェン-3-イル-ピロロ[2,3-b]ピリジン14及び3-(5-チオフェン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-フェノール15の合成
スキーム45
段階1−5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ジメチル-アミン13の合成
丸底フラスコに,5-ブロモ-7-アザインドール(540.0mg,0.002741mol),ジメチルアミン塩酸塩(0.24g,0.0030mol)及びパラホルムアルデヒド(0.090g,0.0030mol)及びイソプロピルアルコール(40.0mL,0.522mol)を添加した。反応混合物を還流下,17時間加熱した
。この反応混合物を水に注ぎ,続いてpH=9になるまでK2CO3を添加した。次いで,水性層をEtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,出発物質180.0mgと共に生成物13が得られた(380.0mg)。
段階2−5-ブロモ-3-ジメチルアミノメチル-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル16の合成
丸底フラスコに,化合物13(380.0mg,0.001495mol)と,N,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL,0.129mol)と水素化ナトリウム(66mg,0.0016mol)を添加した。10分後,ジ-tert-ブチルジカーボネート(650mg,0.0030mol)を添加した。反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。TLCは出発物質がないことを示した。この反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,オイルポンプで乾燥すると,生成物16が得られた(540mg)。
段階3−3-ジメチルアミノメチル-5-チオフェン-3-イル-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル17の合成
丸底フラスコに,化合物16(628.0mg,0.001773mol)と,3-チオフェンボロン酸(390.0mg,0.003048mol)と炭酸カリウム(800.0mg,0.005788mol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(40.0mg,0.0000346mol)とテトラヒドロフラン(16.0mL,0.197mol)と水(4.0mL,0.22mol)を窒素雰囲気下で添加した。反応物を一晩還流下加熱した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物17が得られた(600.0mg)。
段階4−3-クロロメチル-5-チオフェン-3-イル-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル18の合成
丸底フラスコに,化合物17(120.0mg,0.000034mol)とトルエン(4.0mL,0.038mol)を窒素下で添加した。この反応混合物に,エチルクロロホーメート(40.0mg,0.000037mol)を添加した。この反応混合物を室温で1時間撹拌すると,TLCにより所望の塩化物が得られた。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物18が得られた(74.5mg)。
段階5−3-(3-メトキシ-ベンジル)-5-チオフェン-3-イル-ピロロ[2,3-b]ピリジン14.の合成
丸底フラスコに,窒素雰囲気下,テトラヒドロフラン(1.0mL)中の3-メトキシルフェニルマグネシウムブロミド1.0Mと,テトラヒドロフラン(5.0mL,0.062mol)を添加した。この反応混合物を−20℃に冷却し,続いてテトラヒドロフラン(1mL)中の0.7MのCuCN・2LiClを添加した。10分後,トリメチルホスフィン(120mg,0.0010mol)を反応混合物に添加した。この反応混合物に,化合物18(60.0mg,0.000172mol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物6(M25mg)が得られた。
段階6−3-(5-チオフェン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-フェノール15の合成
丸底フラスコに,化合物14(20.0mg,0.0000624mol)と塩化メチレン(4.0mL,0.062mol)を室温で添加した。この反応混合物に,BBr30.1mL(1.0M)を添加した。反応混合物を室温に5時間温めた。TLCは反応が完了したことを示した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,分取TLCで精製すると,生成物15(5mg)が得られた。
実施例3−1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸ベンジルアミド19の合成
スキーム46
段階1−5-ブロモ-1-トリイソプロピルシラニル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン20の合成
丸底フラスコに,5-ブロモ-7-アザインドール1(900.0mg,0.004568mol)とN,N-ジメチルホルムアミド(25.0mL,0.323mol)と,水素化ナトリウム(0.20g,0.0050mol)を室温で添加した。10分後,塩化トリイソプロピルシリル(1.1mL,0.0050mol)を反応混合物に添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物20(1.2g)が得られた。
段階2−1-トリイソプロピルシラニル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸ベンジルエステル21の合成
丸底フラスコに,化合物20(425.0mg,0.001203mol)とエーテル(8.0mL,0.076mol)を−78℃,窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物にヘプタン(1.5mL)中の1.7Mのtert-ブチルリチウムをゆっくりと添加した。反応混合物を−78℃で90分間撹拌し,続いてベンジルクロロホーメート(0.20mL,0.0014mol)を添加した。−78℃で2時間後,反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物21(250mg)が得られた。
段階3−1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸ベンジルエステル22の合成
丸底フラスコに化合物21(250.0mg,0.0006118mol)とテトラヒドロフラン(5.0mL,0.062mol)とテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(190mg,0.00073mol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物22(55mg)が得られた。
段階4−1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸15の合成
丸底フラスコに化合物22(55.0mg,0.000218mol)と炭素上水酸化パラジウム20重量%Pd,wet(20.0mg,0.000142mol)とメタノール(5.0mL,0.12mol)を水素雰囲気下で添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。濾過及び濃縮により生成物15(35mg)が得られた。
段階5−1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-カルボン酸ベンジルアミド19の合成
丸底フラスコに化合物15(35.0mg,0.000216mol)とベンジルアミン(0.05mL,0.0004mol)とPyBroP(ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート,200.0mg,0.0004318mol)とトリエチルアミン(0.093mL,0.00067mol)とテトラヒドロフラン(5.0mL,0.062mol)とN,N-ジメチルホルムアミド(10.0mL,0.129mol)と塩化メチレン(5.0mL,0.078mol)を窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バ
イオタージで精製すると,生成物19(15mg)が得られた。
実施例4−(3-ヒドロキシ-フェニル)-(5-チオフェン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-メタノン23の合成
スキーム47
段階1−5-ブロモ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-)-3-メタノン25の合成
5-ブロモ-7-アザインドール1(417mg,0.00212mol)を,CH2Cl2(20mL)中,窒素雰囲気下で保持した丸底フラスコに添加した。塩化アルミニウム(1400mg,0.010mol,5当量)を添加した。反応混合物を25℃で1時間撹拌し,このとき3-メトキシ塩化ベンゾイル24(740mg,0.0053mol,2.5当量)を添加した。反応混合物をさらに1時間撹拌し続けた。溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣をEtOAcに溶解し,塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。70:30のヘキサン/EtOAc溶媒系を使用する所望の生成物をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,化合物25が得られた。生成物25は,LC/MSとH1-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)253。
段階2−5-ブロモ-3-(3-メトキシ-ベンゾイル)-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル26の合成
化合物25(150mg,0.00045mol)を窒素雰囲気下に保持した乾燥丸底フラスコのTHF(15mL)に添加した。THF(15mL)中の水素化ナトリウム(35mg,0.0014mol,3.2当量)を添加した。25℃で20分間,窒素雰囲気下で撹拌した後,ジ-tert-ブチルジカーボネート(148mg,0.000678mol,1.5当量)をフラスコに導入した。この反応混合物を18時間撹拌し,続いて減圧下で溶媒を除去した。得られた残渣をEtOAcに溶解し,塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥すると,生成物26が得られた。所望の生成物をさらに精製することなく実施した。生成物は,H1-NMRにより同定した。
段階3−3-(3-メトキシ-ベンゾイル)-5-チオフェン-3-イル-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル27の合成
アザインドール26(33mg,0.00076mol),炭酸カリウム(44mg,0.00032mol),3-チオフェンボロン酸(20mg,0.0002mol),THF(7mL),水(1.5mL)とテトラキス(トリフェニルホスフ
ィン)パラジウム(0)(5mg,0.000004mol)を丸底フラスコに添加した。反応混合物を70℃で窒素雰囲気下,一晩撹拌した。溶媒を除去し,得られた残渣をEtOAcに溶解し,塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物は,90:10のヘキサン/ETOAc溶媒系を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物27は,LC/MSとH1-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)+436.5。
段階4−(3-ヒドロキシ-フェニル)-(5-チオフェン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-メタノン23の合成
アザインドール27(14mg,0.000032mol)を,窒素雰囲気下,乾燥丸底フラスコ中のCH2Cl2(5mL)に添加した。ヘプタン中の三臭化ホウ素(boron tribromide)(0.06387mL)を滴下添加した。反応混合物を25℃で4時間撹拌した。溶媒を除去し,得られた残渣をEtOAcに添加し,塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物は,98:2のCH2Cl2/MeOH溶媒系を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物23は,LC/MSとH1-NMRにより精製した。LRMS(ESI+):(M+H+)+321。
実施例5−1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-3-メタノン28の合成
スキーム48
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,塩化アルミニウム(1.4g,10mmol)を塩化メチレン(20mL,0.3mol)中の溶液として添加し,続いて7-アザインドール(1)(0.250g,2.12mmol)を添加した。室温で1時間撹拌した後,3-メトキシ-塩化ベンゾイル(2)(0.74mL,5.3mmol)を滴下添加した。混合物を室温でさらに2時間撹拌した。反応物を0℃でメタノールでクエンチし,蒸発乾涸させた。残渣を酢酸エチルに溶解し,水,0.1NのHCl,重炭酸ナトリウム(s.s.)及び塩水で洗浄した。有機部分を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し,減圧下で蒸発させた。30%酢酸エチル/ヘキサンを使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,白色固体の化合物28が得られた(205mg;M+H=253.2;M-H=251.2)。
実施例6−(3,5-ジメトキシ-ベンジル)-ピロロ[2,3-b]ピリジン29の合成
スキーム49
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,臭化メチルマグネシウム(0.16mL,1.4mmol)を,無
水塩化メチレン(12mL,0.19nol)中の7-アザインドール(1)(0.150g,1.27mmol)の溶液に室温で添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌してから,二塩化亜鉛(0.21g,1.5mmol)を添加した。さらに1時間撹拌した後,3,5-ジメトキシ臭化ベンジル(4)(0.35g,1.5mmol)を反応混合物に添加した。この反応物を室温で一晩撹拌してから,メタノールでクエンチした。混合物を蒸発乾涸させ,酢酸エチルに溶解し,水洗した。この水性部分を重炭酸ナトリウム(s.s.)で中性化し,酢酸エチル(3×)で抽出した。有機部分を混合し,0.1N HClで洗浄し,無水硫酸ナトリウム上で乾燥し,減圧下で蒸発させた。50%酢酸エチル/ヘキサンを使用する分取TLCで精製すると,黄色粉末の化合物29が得られた(15mg;M+H=269.2,M-H=267.2)。
実施例7−(3-ヒドロキシ-フェニル)-(4-(3,5-ジフルオロフェニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-メタノン31の合成
スキーム50
段階1−化合物32の製造
4-クロロ-アザインドール6,炭酸カリウム,3,5-ジフルオロボロン酸(20mg,0.0002mol),THF(7mL),水(1.5mL)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を丸底フラスコに添加した。この反応混合物を,窒素下,70℃で一晩撹拌した。溶媒を除去し,得られた残渣をEtOAcに溶解し,塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物は,90:10のヘキサン/ETOAc溶媒系を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,化合物32が得られた。
段階2−(3-メトキシ-フェニル)-(4-(3,5-ジフルオロフェニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-メタノン33の合成
乾燥塩化メチレン(DCM,2mL)中の7-アザインドール32(100mg,0.43mmol,1当量)の撹拌溶液に,AlCl3(405mg,3.04mmol,7当量)を添加した。反応混合物を25℃で1時間撹拌し,3-メトキシ塩化ベンゾイル(185mg,1.08mmol,2.5当量)を添加した。混合物を25℃で18時間撹拌し,メタノール(MeOH,2mL)を導入して反応物をクエンチした。溶媒を減圧下で除去し,残存固体は,ヘキサン:酢酸エチル溶媒系(1:1)を使用する分取TLCで精製すると,白色固体の化合物33が得られた。(M+H+)+:365.3。
段階3−(3-ヒドロキシ-フェニル)-(4-(3,5-ジフルオロフェニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-メタノン31の製造
乾燥テトラヒドロフラン(THF,1mL)中のアザインドール(3)(25mg,0.69mmol)の撹拌溶液に,N2雰囲気下で,BBR3(170μL,ヘプタン中1M,2.4当量)を滴下添加し,25℃で一晩撹拌した。反応混合物に水を添加してクエンチし,酢酸エチルで生成物を抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し,濾過し,減圧下で濃縮した。得られた残渣は,ヘキサン:酢酸エチル(1:1)溶媒系を使用する分取TLCで精製すると,白色固体の化合物31が得られた。(M+H+)+:351.3。
実施例8−3-(6-メトキシ-ピリジン-2-イルメチル)-4-チオフェン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン35
スキーム51
段階1及び段階2−アザグラミン(azagramine)36の合成
Robinsonの手順(J.Am.Chem.Soc.,1955年,77巻,457頁)に従って7-アザインドールから製造した7-アザグラミン(5.0g,28.53mmol)をTHF(90mL)に溶解し,氷浴で0℃に冷却した。この溶液にNaH(1.26g,31.5mmol,鉱油中60%)を数回に分けて添加した。添加後,混合物を室温に温め,1時間撹拌した。この溶液を再び0℃に冷却し,塩化トリイソプロピルシリル(6.25mL,29.5mmol)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。この混合物を氷冷水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,MgSO4で乾燥し,濾過し蒸発させると残渣が得られた。この残渣を5%EtOAc/ヘキサンを使用するシリカのクロマトグラフィーにより精製すると,油状の化合物36(9.5g)が得られた(97%収率;MS:M+1=332.5)。
段階3−化合物37の合成
化合物36(5.0g,15.08mmol)をEt2O(100mL)に溶解し,−78℃に冷却した。この混合物に,t-BuLi(10.0mL,16.9mmol,ヘキサン中1.7M)を10分で滴下添加した。この混合物を−78℃で1時間保持し,次いで一晩,室温に温めた。混合物を−78℃に冷却し,1,2-ジブロモエタン(1.5mL,17mmol)を滴下添加した。この混合物を室温に温め,2〜3時間撹拌した。この混合物を氷冷水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濾過し,蒸発させた。残渣は,20%EtOAc/ヘキサンを使用するシリカのクロマトグラフィーにより精製すると,油状の化合物37(4.64g)が得られた(75%収率;MS:M+1=411)。
段階4−化合物38の合成
化合物37(1.0g,2.43mmol)を1,4-ジオキサン(20mL)に溶解し,続いて,3-チオフェンボ
ロン酸(625mg,4.88mmol),KF(850mg,8.11mmol),Pd2(dba)3-CHCl3(39mg,0.034mmol)及びトリ-t-ブチルホスフィン(58mg,0.29mmol)を溶解した。得られた混合物を90℃に一晩加熱した。混合物を室温に温め,溶媒を蒸発させた。残渣は,シリカのクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサン)により精製すると,油状の化合物38が得られた(452mg)(45%収率;MS:M+1=414)。
段階5−化合物39の合成
化合物38をトルエン(5.0mL)に溶解し,イソプロピルクロロホーメート(0.36mL,0.364mmol)の溶液を添加した。TLCが反応の完了を示すまで,混合物を室温で撹拌した(溶液A)。別のフラスコに,2-ブロモ-6-メトキシピリジン(169mg,0.91mmol)をTHFに溶解し,−78℃に冷却した。この混合物に,n-BuLi(0.58mL,0.93mmol)を添加し,混合物を−87℃で1時間撹拌しておいた。この溶液に−78℃で,CuCN-2LiCl(0.62mL,0.364mmol,THF中0.59M)を添加した。混合物をさらに1時間−78℃で撹拌した(溶液B)。銅酸化物(cuprate)混合物(溶液B)を−78℃で保持しながら,塩化物混合物(溶液A)を添加した。混合物をゆっくりと室温に温め,一晩撹拌した。混合物を塩化アンモニウムと水酸化アンモニウム(4:1)の溶液に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濾過し,蒸発させると残渣が得られた。残渣は,シリカゲルのクロマトグラフィー(5%EtOAc/ヘキサン)で精製すると,固体の化合物39が得られた(25%収率。MS:M+1=478)。
段階6−3-(6-メトキシ-ピリジン-2-イルメチル)-4-チオフェン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン35の合成
化合物39(75mg,0.16mmol)をTHF(5.0mL)とフッ化アンモニウムの溶液(5.0mL,MeOH中0.5M,2.5mmol)に溶解した。混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させると残渣が得られた。残渣をEtOAcに溶解し,H2O,塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥した。有機層を濾別し蒸発させた。トルエン(10mL)を添加し,混合物を蒸発乾涸させた。生成物を真空下で乾燥すると,化合物35(30mg)が得られた(59.5%収率。MS:M+1=322.3)。
実施例9−(4-アミノ-1-H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-フェニル-メタノン40の合成
スキーム52
段階1−3-ベンゾイル-7-アザインドール41の製造
化合物41は,m-メトキシ-ベンゾイルクロリドを塩化ベンゾイルに置き換えて,化合物25に関して既に記載したように塩化アルミニウムを使用して,7-アザインドール2から製造した。
段階2−化合物42の製造
m-クロロ過安息香酸(chloroperbenzoic acid)(1.45g,8.40mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(20.0mL)に溶解した。THF(40.0mL)中の3-ベンゾイル-7-アザインドール41(1.00g,4.50mmol)の溶液を反応物に滴下添加した。数分後,白色沈殿が形成した。反応混合物を2時間撹拌した。この反応混合物を濾過した。沈殿物をTHFで洗浄し,乾燥すると,白色粉末の化合物42が得られた(870mg;M+H=239.2)。
段階3−化合物43の製造
化合物42(600.0mg,2.518mmol)を硝酸(12.00mL)に添加し,反応物を0℃でに冷却した。硫酸(1.00mL)を反応物にゆっくりと添加した。この反応物を70℃で1時間加熱し,室温に冷却した。反応物を氷水に注ぐと,黄色沈殿が形成した。沈殿物を濾過により集め,水洗すると,黄色粉末の化合物43が得られた(536mg;M-H=282.1)。
段階4−化合物40の製造
化合物43(200mg,0.706mmol)をメタノール(40.0mL)に溶解し,Raneyニッケル(1g)を添加した。反応混合物をParr装置上,水素雰囲気20psiで1.5時間振盪した。酢酸(0.500mL)をこの反応混合物に添加した。反応物を同一条件下でさらに30分間水素化した。反応混合物をセライトを通して濾過した。濾液を濃縮乾涸させた。水を残渣に添加し,続いて2Nの水酸化ナトリウムを添加した。反応物を酢酸エチルで抽出した。有機部分を混合し,シリカに吸着させた。この混合物は,4%メタノール:ジクロロメタンのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。好適な画分を混合すると,茶色固体の化合物43が得られた(29mg;M+H=238.3)。
実施例10:フェニル-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)アミン44の製造
スキーム53
段階1−化合物45の製造
化合物1(500.0mg,2.537mmol)を火炎乾燥させたフラスコ中のTHF(15.0mL)に溶解した。この反応混合物を0℃に冷却した。鉱油中,60%懸濁液の水素化ナトリウム(0.102g,0.00254mol)を添加した。反応物を0℃で20分間撹拌した。反応物を室温に20分間温めた。反応物を0℃に冷却した。塩化トリイソプロピルシリル(0.591mL,2.79mmol)を反応混合物に添加した。反応物を0℃で1時間撹拌した。反応物を室温に温め,一晩撹拌した。こ
の反応混合物を水に注ぎ,酢酸エチルで抽出した。有機部分を混合し,無水硫酸ナトリウム上で乾燥し,減圧下で濃縮乾涸させると油状物となった。この油状物を100%ヘキサンのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,白色結晶状固体の化合物45が得られた(486mg)。
段階2−化合物46の製造
化合物45(200.6mg,0.5676mmol)をアルゴン雰囲気下,火炎乾燥させたフラスコ中のトルエン(11.0mL)に溶解した。アニリン(0.200mL,2.19mmol)をこの反応混合物に添加した。トリ-t-ブチルホスフィン(5mg,0.02mmol),トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5mg,0.006mmol),ナトリウムt-ブトキシド(78.3mg,0.815mmol)を反応物に添加した。この反応物を85℃で24時間加熱した。TLCにより,反応は不完全であったことが判明した。アニリン(400.0μL,4.390mmol),トリ-t-ブチルホスフィン(10mg,0.05mol),ナトリウムtert-ブトキシド(170.0mg,1.769mmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(10.0mg,0.011mmol)。反応物を95℃で18時間加熱した。反応物を水に添加し,酢酸エチルで抽出した。有機部分を混合し,無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,次いで減圧下で濃縮乾涸させた。残渣を酢酸エチルに再溶解させ,シリカに吸着させ,0%酢酸エチル:ヘキサン〜2%酢酸エチル:ヘキサンのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。好適な画分を混合し,濃縮乾涸させると,茶色油状の化合物46(45.7mg)が得られた。
段階3−化合物44の製造
化合物46(45.7mg,0.125mol)をTHF(5.0mL)に溶解した。メタノール(5.0mL)中0.5Mフッ化アンモニウムを反応物に添加した。この反応物を室温で週末にかけて撹拌した。この反応物を減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウムとの間で分配した。有機層を飽和重炭酸ナトリウムで2回抽出した。有機部分を混合し,無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,減圧下で濃縮乾涸させると,茶色油状の化合物44が得られた(16.7mg;M+H=210.3)。
実施例11:(3-ヒドロキシ-フェニル)-(5-アミノフェニル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メタノン294の製造
スキーム57
段階1−(3-メトキシ-フェニル)-(5-ブロモ-1-トリイソプロピルシリル-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メタノン292の製造
化合物25(130mg,0.39mmol)をTHF(10mL)に溶解した。この反応物を0℃に冷却した。反応物に,水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液,157mg,0.39mmol)を添加した。反応物を0℃で20分間撹拌した。反応物を20分間室温に温め,0℃に冷却した。この反応物に,塩化トリイソプロピルシリル(0.091mL,0.43mmol)を添加した。反応物を0℃で1時間,次いで室温で1時間撹拌した。反応はTLCにより不完全であることが判明した。反応物を0℃に冷却した。この反応物に水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液,157mg,0.39mmol)を添加した。反応物を0℃で20分間撹拌した。反応物を室温に20分間温めた。反応物を0℃に冷却した。この反応物に塩化トリイソプロピルシリル(0.091mL,0.43mmol)を添加した。反応物を0℃で1時間撹拌し,濃縮乾涸した。反応物を酢酸エチルと重炭酸ナトリウムとの間で分配し,飽和重炭酸ナトリウムで2回洗浄した。有機部分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,濃縮すると黄色油状物となった。所望の生成物292は,1H-NMRにより同定した。
段階2−(3-メトキシ-フェニル)-(5-フェニルアミノ-1-H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メタノン293の製造
化合物292(135mg,0.2769mmol)を,アルゴン雰囲気下でトルエン(4.2mL)に溶解した。アニリン(0.154mL,1.69mmol)とナトリウムtert-ブトキシド(57.7mg,0.60mmol)を反応物に添加した。この反応物に,トリ-tert-ブチル-ホスフィン(9.0mg,0.040mmol)とトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(5.0mg,0.005mmol)を添加した。反応物を95℃で18時間加熱した。溶液を減圧下で濃縮した。残存油状物を酢酸エチルと塩水との間で分配した。水性部分を酢酸エチルで2回抽出した。有機部分を混合し,無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,濃縮乾涸させた。残渣を酢酸エチルに再溶解させ,シリカに吸着させ,50%〜60%酢酸エチル:アセトンの段階的勾配液を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。好適な画分を混合し,濃縮乾涸させると,薄緑色固体が
得られた。この固体をヘキサン洗浄し,濾過により集めると,薄緑色固体の化合物293が得られた(26.6mg,LRMS(ESI)[M+H+]+=344.1)。
段階3−(3-ヒドロキシ-フェニル)-(5-フェニルアミノ-1-H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メタノン294の製造
化合物293(26.6mg,0.079mmol)を窒素雰囲気下で塩化メチレン(10mL)に溶解した。この反応混合物に塩化メチレン(0.3mL)中1.0Mの三臭化ホウ素を添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。溶媒を長時間蒸発させ,塩化メチレン(10mL)を添加し,続いて塩化メチレン(0.6mL)中の1.0M三臭化ホウ素を添加した。反応物を一晩撹拌した。この反応物をメタノール(10mL)でクエンチし,減圧下で濃縮し,塩水と酢酸エチルとで抽出した。有機部分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,濃縮乾涸させると,黄色固体となった。この物質をプレップTLC(5%メタノール:塩化メチレン)で精製した。好適なバンドをすくい取り,化合物を酢酸エチルでシリカから溶出した。混合物を濾過し,濾液を濃縮すると,黄色固体の化合物294が得られ,これを1H-NMRとMSから同定した(1.2mg,LRMS(ESI)[M+H+]+=330.1)。
実施例12:N-[4-フルオロ-3-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-フェニル]-メタンスルホンアミド297の製造
スキーム−XXXX
段階1−(2-フルオロ-5-ニトロ-フェニル)-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メタノン295の製造
3-フルオロ-5-ニトロ安息香酸(2.00g,10.8mmol)を塩化チオニル(20.0mL)に溶解し,反応物を加熱して,一晩還流させた。反応物を冷却し,濃縮すると,白色固体が得られ,これを真空下で一晩乾燥した。化合物2(512mg,4.33mmol)を,アルゴン雰囲気下,塩化メチレン(10.0mL)に溶解し,三塩化アルミニウム(2.85g,21.4mmol)を添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。上記で形成した3-フルオロ-5-ニトロ塩化ベンゾイルを塩化メチレン(10.0mL)に溶解し,反応物に添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。この反応物をメタノールでクエンチし,減圧下で濃縮した。得られた固体を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウムで抽出した。有機部分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,シリカに吸着させ,40%〜50%酢酸エチル:ヘキサンを使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。好適な画分を混合し,濃縮すると,白色固体の化合物295が得られた。これをMSと1H-NMRで同定した(139mg,LRMS(ESI)[M+H+]+=286.1)。
段階2−(2-フルオロ-5-アミノ-フェニル)-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メタノン296の製造
化合物295(130mg,0.46mmol)を6M塩酸(10.0mL)とエタノール(5.0mL)に窒素雰囲気下で溶解した。テトラヒドロフラン(5.0mL)を添加して,化合物を完全に溶解させた。鉄(229mg)を混合物に添加し,反応物を加熱して2.5時間還流させた。反応物を冷却し,減圧下で濃縮した。固体を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウムに溶解した。有機部分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,シリカに吸着させ,3%メタノール:ジクロロメタンを使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。好適な画分を混合し,濃縮
すると純粋な白色固体の化合物296が得られ,これをMSと1H-NMRによりキャラクタリゼーションした(33.9mg,LRMS(ESI)[M+H+]+=256.1,[M-H+]=254.1)。
段階3−N-[4-フルオロ-3-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-カルボニル)-フェニル]-メタンスルホンアミド297の製造
化合物296(33.9mg,0.133mmol)をアルゴン雰囲気下,N,N-ジメチルホルムアミド(2.00mL)に溶解した。炭酸カリウム(22.9mg,0.166mmol)及び塩化メタンスルホニル(0.0113mL,0.146mmol)を反応物に添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。この反応物を減圧下で濃縮した。反応物を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウムで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し,濾過し,濾液を5%塩化メチレンを使用するプレップTLCで精製した。好適なバンドのシリカゲルをすくい取り,酢酸エチルで抽出した。溶液を濾過し,減圧下で濃縮すると,化合物297が得られ,これをMSと1H-NMRで同定した。d6-DMSO中の1H-NMRから,この生成物はピロロ窒素ではなくフェニルアミノ上で明白にスルホン化されていることが識別された(1.0mg,LRMS(ESI)[M+H+]+=334.0,[M-H+]=332.1)。
実施例13−(5-エチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-(3-メトキシ-フェニル)-メタノン298の製造
スキームXX
段階1−式298の化合物の合成
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,PdCl2(dppf)(0.04g, 0.05mmol)をトルエン(10mL)に,続いてトルエン(1mL)中の化合物45(0.3g,0.8mmol)の溶液に添加した。室温で10分間撹拌した後,THF中1M臭化エチルマグネシウムの溶液(3.4mL,3.0mmol)を滴下添加した。この混合物を60℃で1時間,90℃で30分間撹拌した。室温に冷却した後,氷水と0.1N硝酸を添加し,混合物を酢酸エチルで抽出した。有機部分を塩水で洗浄し,活性炭で脱色し,セライトで濾過し,無水硫酸ナトリウム上で乾燥し,減圧下で濃縮した。所望の生成物298は,1H-NMRにより同定し,さらに精製することなく使用した(218mg,0.72mmol)。
段階2−式299の化合物の製造
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,化合物298(218mg,0.72mmol)をTHF(10mL)に溶解し,続いてフッ化テトラブチルアンモニウム(226mg,0.86mmol)を添加した。室温で30分間撹拌した後,この混合物を水に注ぎ,酢酸エチル抽出した。有機部分を塩水で洗浄し,無水硫酸ナトリウム上で乾燥し,減圧下で濃縮した。所望の生成物を90:10のヘキサン:酢酸エチルを使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成29
9(86mg,0.59mmol)はMSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)+=147.2。
段階3−式300の化合物の合成
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,化合物299(86mg,0.59mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解し,続いて塩化アルミニウム(0.4g,3mmol)を添加した。室温で10分間撹拌した後,3-メトキシ-塩化ベンゾイル(0.21mL,1.5mmol)を滴下添加した。この混合物を室温でさらに1時間撹拌した。反応物を0℃でメタノールでクエンチし,蒸発乾涸させた。この残渣を酢酸エチルに溶解し,水,0.1NのHCl及び塩水で洗浄した。有機部分を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物は,40〜70%酢酸エチル:ヘキサンを使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物300(72.4mg,0.24mmol)は,MS及び1H-NMRにより同定した。(ESI+):(M+H+)+=281.1。
実施例14−N-[6-(3-メトキシ-フェニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル]-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド310の合成
段階1−化合物7の合成
化合物7は,Schneller及びLuo(J.Org.Chem.,1980年,45巻,4045頁)に記載の如く,溶媒(たとえば1,2-ジメトキシエタン)中,7-アザインドールと85%メタ-クロロ過安息香酸とを,通常,室温で1〜4時間反応させることにより合成した。得られた固体は濾過により集め,ジエチルエーテル洗浄できる。この固体を水に懸濁させ,水性塩基(たとえば炭酸カリウム)で塩基性化することができる。冷却し,沈殿物を濾過により集め,慣用手段(たとえば再結晶化)により精製すると,化合物7が得られた。
段階2−化合物301の合成
化合物301は,文献手順(Minakata,S.;Komatsu,M.;Ohshiro,Y.;SYNTBF;Synthesis;EN;7巻;1992年;661-663頁)に従って,化合物7から合成した。
段階3−化合物302の合成
化合物302は,文献手順(Minakata,S.;Komatsu,M.;Ohshiro,Y.;SYNTBF;Synthesis;EN;7巻;1992年;661-663頁)に従って,化合物2から合成した。
段階4−化合物303の合成
化合物303は,文献手順(Robinson,J.Am.Chem.Soc.,1955年,77巻,457頁)に従って,化合物302から合成した。
段階5−化合物304の合成
化合物304(式中,Pは保護基である)は,溶媒(たとえばTHF)中,化合物303と塩基(たとえば水素化ナトリウム),続いて保護基の導入のために好適な試薬(P-X,たとえば塩化トリイソプロピルシリル)と反応させることにより合成した。この反応は,通常室温で8
〜12時間進行させ,所望の生成物は標準的な手順(たとえば抽出及びシリカゲルのカラムクロマトグラフィー)により単離した(Greene,T.W.;Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis I,第3版,John Wiley & Sons:New York,1981年)。
段階6−化合物305の合成
化合物305は,化合物5とイソプロピルクロロホーメート(またはエチルクロロホーメート)とをトルエン中,室温で反応させて合成すると,3-クロロメチル中間体が得られた。この生成物は,標準的な手段(氷冷塩水でクエンチ,仕上げ,シリカゲルのクロマトグラフィーによる精製)に従って単離した。
段階7−化合物306の合成
化合物306は,アセトン中,60℃でヨウ化ナトリウムを添加することにより化合物305から製造した。数時間,通常4時間後,混合物を濃縮乾涸させた。得られた生成物は,さらに精製することなく次段階で使用した。
段階8−化合物307の合成
化合物307は,DMF中,強塩基(たとえばNaH,BuLi)を使用するboc保護化スルホンアミドの脱プロトン化により化合物306から製造した。生成物は標準的な手段(氷冷塩水でクエンチ,仕上げ,シリカゲルのクロマトグラフィーによる精製)に従って単離した。
段階9−化合物308の合成
化合物308は,触媒(たとえばPd(PPh3)4)の存在下,アリールまたはヘテロアリールボロン酸(たとえば3-メトキシフェニルボロン酸,フェニルボロン酸)を使用するSuzuki反応条件下で化合物307から合成した。生成物は,Allegretti,M.ら(Synlett 2001;5巻,609頁)に記載の如く,標準的な手段(氷冷塩水でクエンチ,仕上げ,シリカゲルのクロマトグラフィーによる精製)に従って単離した。
段階10−化合物309の合成
化合物309は,室温で,通常3〜4時間,ジクロロメタン中に酸(たとえばHCl,TFA)を添加して,化合物308から製造した。この酸は真空下で除去した。
実施例15−(2-フルオロ-5-ヒドロキシ-フェニル)-(5-ピリジン-3-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メトン(methone)314の合成
段階1−311の製造
丸底フラスコに窒素雰囲気下で,塩化アルミニウム(11.0g,0.0825mol)とCH2Cl2(100.0mL)を充填した。この反応混合物に,CH2Cl2(20mL)中の5-ブロモ-7-アザインドール1(2.4g,0.12mol)を添加した。反応混合物を25℃で1時間撹拌し,このとき2-フルオロ-5-メトキシ塩化ベンゾイル310(3.6g,0.019mol,2.5当量)を添加した。この反応物をさらに3時間撹拌し続けた。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物は,70:30のヘキサン/EtOAcを使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,化合物311が得られた。生成物311は,LC/MS及びH1-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)349。
段階2−312の製造
高圧試験管に,化合物311(300.0mg,0.67mmol)と3-ピリジルボロン酸(400mg,3.25mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(100.0mg,0.087mmol)と,炭酸カリウム(1.92g,13.9mmol)とアセトニトリル(60.0mL)と水(28.0mL)とを窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物を170℃に一晩加熱した。反応混合物を水で希釈し,EtOAcで抽出した。有機層を乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物312が得られた。
段階3−313の製造
丸底フラスコに,化合物312(250mg,0.72mmol)とTHF(10.0mL)を窒素下で,続いて水素化ナトリウム(43.0mg,1.1mmol)を添加した。25℃で15分間撹拌したあと,ジ-tert-ブチルジカーボネート(310mg,1.4mol)をこの反応混合物に添加した。30分後,反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで洗浄した。有機層を乾燥し,濃縮すると,生成物313が得られた。所望の生成物はさらに精製することなく使用した。生成物313は,H1-NMRにより同定した。
段階4−314の製造
丸底フラスコに,化合物313(470.0mg,1.05mmol)とCH2Cl2(40.0mL)を窒素雰囲気下で添加した。ヘプタン中,三臭化ホウ素(1.0M,3.0mL)を添加した。この反応混合物を25℃で一晩撹拌した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。次いで有機層を塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物314(210mg)は,シリカのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。(M+H+)334.2。
実施例16−(2-クロロ-5-ヒドロキシ-フェニル)-(5-チオフェン-2-イル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル)-メトン319の合成
段階1−316の製造
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で塩化アルミニウム(2.8mg,21mmol)とCH2Cl2(25.0mL)を添加した。この反応混合物に,CH2Cl2(20mL)中の5-ブロモ-7-アザインドール1(0.59g,3.0mmol)を添加した。反応混合物を25℃で1時間撹拌し,このとき,CH2Cl2(10mL)中の2-クロロ-5-メトキシ塩化ベンゾイル315(0.63g,3.1mmol)を添加した。反応混合物を一晩,撹拌し続けた。この反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物は,70:30のヘキサン/ETOAc溶媒系を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると,化合物316(400.0mg)が得られた。生成物316は,LC/MS及びH1-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)367。
段階2−317の製造
丸底フラスコに,化合物316(300.0mg,0.82mmol)とTHF(10.0mL)を窒素下で,続いて水素化ナトリウム(60.0mg,1.5mmol)を添加した。25℃で15分間撹拌した後,ジ-tert-ブチルジカーボネート(240.0mg,1.1mol)を反応混合物に添加した。30分後,反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を乾燥し,濃縮すると,生成物317が得られた。所望の生成物はさらに精製することなく使用した。生成物317は,H1-NMRにより同定した。
段階3−318の製造
丸底フラスコに,化合物317(70.0mg,0.15mmol)と,2-チオフェンボロン酸(24.0mg,0.19mmol)と,テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(10.0mg,0.0087mmol)と,炭酸カリウム(138.0mg,1.0mmol)と,THF(15.0mL)と水(5.0mL)を窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物を80℃で一晩加熱した。反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物318が得られた。
段階4−319の製造
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,化合物318(25.0mg,0.068mmol)とCH2Cl2(5.0mL)を添加した。次いで,ヘプタン中の三臭化ホウ素(1.0M,3.5mL)を添加した。反応混合物を25℃で一晩撹拌した。この反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,MgSO4上で乾燥し,濃縮した。所望の生成物319(5.0mg)は,シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物319は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)355。
実施例17−3-メトキシメチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン322の合成
段階1−321の製造
丸底フラスコに,塩基性条件下で化合物10と塩化トリ-イソプロピルシリルとの反応から製造した化合物320(1.2g,3.5mmol)と,トルエン(10.0mL)とイソプロピルクロロホーメート(トルエン中1.0M,3.6mL)を添加した。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。濃縮,及びCH2Cl2/MeOH(100:1)を使用して精製すると,化合物321が得られた。生成物321は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)319。
段階2−322の製造
丸底フラスコに化合物321(20.0mg,0.063mmol)とテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(18.0mg,0.069)とTHF(4.0mL)を添加した。この反応混合物を室温で30分間撹拌した。濃縮し,分取TLCプレートで精製すると,生成物322が得られた。生成物322は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)163。
実施例18−3-[(Z)-2-6-クロロ-ピリジン-3-イル)-ビニル]-1Hピロロ[2,3-b]ピリジン327の製造
段階1−325の製造
丸底フラスコに塩324(650.0mg,1.5mmol)とTHF(30.0mL)とカリウムt-ブトキシド(180.0mg,1.6mmol)を窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌して得られた。得られた溶液に,化合物323(256.0mg,0.85mmol)を添加した。60℃で3時間撹拌した後,反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,硫酸ナトリウム上で乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,化合物325と326の混合物(290mg)が得られた。この混合物を分取TLCプレートで分離した。
段階2−327の製造
丸底フラスコに,化合物325(28.0mg,0.0068mmol)とTHF(2.0mL)とテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(21.0mg,0.082mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し,濃縮し,バイオタージで精製すると,化合物327が得られた。この生成物327は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)256。
実施例19−イソブチル[5-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-アミン333の合成
段階1−329の製造
丸底フラスコに,窒素雰囲気下で,塩化アルミニウム(30.0g,0.225mol)と塩化メチレン(350.0mL)とを添加した。この反応混合物に,塩化メチレン(20.0mL)中の7-アザインドール2(5.0g,0.042mol)を添加した。反応混合物を室温で70.0分撹拌し,続いて化合物328(9.9g,0.056mol)を添加した。この反応混合物を室温でさらに3時間撹拌した。この反応混合物を希HCl溶液に添加し,EtOAcで抽出した。水性層の固体を濾過し,乾燥すると,殆どの生成物329(8g)が得られた。有機層を乾燥し,濃縮すると,さらに生成物329(2g)が得られた。この生成物329は,LC/MSと1H-NMRで同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)258。
段階2−330の製造
丸底フラスコに化合物329(128.0mg,0.50mmol)とイソブチルアミン(3.0g,0.041mol)を添加した。この反応混合物を180℃に一晩加熱した。濃縮とバイオタージによる精製により,化合物330(60mg)が得られた。この生成物330は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)350。
段階3−331の製造
丸底フラスコに化合物330(50.0mg,0.14mmol)と酢酸(3.0mL)と水(2.0mL)を添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を水に注ぎ,炭酸カリウムでpH=9に塩基性化し,次いでEtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し,乾燥し,バイオタージで精製すると,生成物331が得られた。生成物331は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)295。
段階4−332の製造
丸底フラスコに化合物331(100.0mg,0.34mmol)とリチウムテトラヒドロアルミネート(39mg,1.0mmol)とTHF(10.0mL)を添加した。この反応混合物を50℃に3時間加熱した。この
反応混合物に,Na2SO4・10H2Oを添加した。30分後,反応混合物を濾過し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物332が得られた。生成物332は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)297。
段階5−333の製造
丸底フラスコに化合物332(13.0mg,0.044mmol)とトリフルオロ酢酸(1.5mL)とトリエチルシラン(1.0mL)と塩化メチレン(1.0mL)を添加した。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。濃縮及び精製により,生成物333が得られた。この生成物333は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)281。
実施例20−ベンゾ[b]チオフェン-3-カルボン酸(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-アミド335の製造
段階1−335の製造
丸底フラスコにアザインドール-3-カルボキシアルデヒド(106.0mg,0.73mmol)とアミド334(300.0mg,1.7mmol)とトリエチルシラン(0.12mL,0.75mmol)とトリフルオロ酢酸(0.06mL,0.8mmol)とトルエン(5.0mL)を添加した。この反応混合物を一晩還流した。次いで反応混合物を水に注ぎ,EtOAcで抽出した。有機層を乾燥し,濃縮し,バイオタージで精製すると,生成物335が得られた。この生成物335は,LC/MSと1H-NMRにより同定した。LRMS(ESI+):(M+H+)281。
実施例21−[5-(3-アミノ-フェニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]-(2-フルオロ-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトン336
化合物336は,3-ピリジン-ボロン酸を3-アミノフェニルボロン酸に置き換えて,実施例15に記載の如く製造した。MS(M+1)=348.3。
実施例22−[5-(3-チエニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]-(2-フルオロ-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトン337
化合物337は,3-ピリジン-ボロン酸を3-チエニルボロン酸に置き換えて,実施例15に記載の如く製造した。MS(M+1)=339.4。
実施例23−5-(3-アセトアミドフェニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]-(2-フルオロ-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトン338
化合物338は,3-ピリジン-ボロン酸を3-アセトアミドフェニルボロン酸に置き換えて,実施例15に記載の如く製造した。MS(M+1)=390.4。
実施例24−[5-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]-(2-フルオロ-5-ヒドロキシ-フェニル)-メトン338
化合物338は,3-ピリジン-ボロン酸をフェニルボロン酸に置き換えて,実施例15に記載の如く製造した。MS(M+1)=333.3。
表1 IC5010μMでRetにおいて活性な典型的化合物
実施例25:可溶性Retキナーゼドメインのクローニング
RETD2およびRETD3をコードするベクターの構築
RETD2およびRETD3は,RETキナーゼ触媒ドメインの2つの長さである。RETD2は残基S969からR1012にわたり,RETD3は残基S705−R1012にわたる(番号付けはNCBIfile,NM_000323にしたがう)。重複するオリゴヌクレオチドプライマーのセットを用いて,最適E.coliコドン使用でRETをコードするDNAを作製し,組立て,PCRを用いて増幅し,そのBamHIおよびEcoRI制限部位でプラスミドpBSKS(Stratagene)にライゲーションした。合成に用いたオリゴヌクレオチドプライマーは以下のとおりである。
RETD2およびRETD3については,RETをコードするDNA中に6種類の変異を導入した。これらには,5つの点突然変異(K722D,P766Q,R770S,K989H,K994E)および1つの欠失変異(delR820−M848)が含まれる
。PCRに基づくQuikChange変異導入プロトコル(Stratagene)を用いて変異を導入した。変異誘発に用いたオリゴヌクレオチドプライマーの対は合成し(Invitrogen),以下に示す。
変異を導入した後,RETキナーゼドメインをコードするDNAを,残基S696(RETD2用)または残基S705(RETD3用)のいずれかで始まる配列の前にNdeI制限部位を付加し,残基R1012で終了する配列の後にSalI制限部位を付加するよう設計された2つのプライマーを用いて,PCRにより増幅した。これらのオリゴヌクレオチドプライマーは合成し(Invitrogen),以下に示される。
変異したRET配列をコードするPCR生成物をNdeIおよびSalI制限酵素で消化した。プラスミドベクターであるpET−SFBI−PTPもNdeIおよびSalI制限酵素で消化した。RETを含有するPCR生成物をベクターDNAとともにT4DNAリガーゼ(Invitrogen)を用いてライゲーションした。得られたプラスミドのコーディング領域の重要な部分を配列決定した(DavisSequencing)。pET−SFBI−PTPベクターは,pET−24ベクター(Novagen)の誘導体であって,このポリメラーゼを産生するよう加工されたE.coliの株でmRNAを生成するためにT7RNAポリメラーゼを利用するよう設計されたものである。pET−SFBI−PTPベクターは,上述したように,RETキナーゼドメインがSalI部位を用いて導入されたときに,RET蛋白質のC末端の残渣R1012で融合される,配列VDHHHHHHを有する短いアミノ酸タグをコードするポリリンカーを含む。pET−SFBI−PTPベクターはまた,PTP1b(蛋白質チロシンホスファターゼ)の触媒ドメインをコードする。
RETD2蛋白質配列は次のとおりである:
RETD3蛋白質配列は次のとおりである:
実施例26:可溶性Retキナーゼドメイン(可溶性デザインRet(D2およびD3),E.coli由来)の発現および精製
蛋白質発現のためには,Ret(S705−R1012(D3)またはS696−R1012(D2),いずれもY826−P841を欠失)でE.coliBL21株(DE3)CodonPlusを形質転換し,カナマイシンおよびクロラムフェニコールを含むLBプレートで形質転換体を選択した。単一コロニーを2x200mlのLB培地で37℃で4時間成長させた。30Lの新鮮なTB培地をBioFlow5000ファーメンターで滅菌し,400mlの種培養物を植菌した。培養物は,37℃で約4.5時間培養を続けた。培養物の600nmの光学密度が2.0−3.0に達したときに,培養物を12℃に冷却し,0.1mM IPTGを加え,培養物を12℃でさらに18時間培養した。15,000xgで遠心分離して細胞を回収し,ペレットを−80℃で凍結し,溶解の準備ができるまで保存した。
細胞ペレットを0.1Mリン酸カリウムバッファ(pH8.00),250mM NaCl,5%グリセロール,0.1% NP−40,25mMイミダゾール,2mM PMSFを含む溶解バッファに懸濁した。細胞をマイクロフルイダイザー・プロセッサ(Microfuidics Corporation)を用いて溶解し,30,000xgで遠心分離して,不溶性の細胞断片を除いた。
透明にした上清を,予め平衡化したNi2+キレーティングカラム(Amersham)に20ml/分の流速で通した。負荷したカラムを5カラム容量の溶解バッファ+30mMおよび60mMのイミダゾールで洗浄して,非特異的結合物質を除去した。
20mM Tris−HCl(pH8.0),250mM NaClを用いてカラムを再平衡化した。20mM Tris−HCl(pH8.0),100mM NaCl中,イミダゾールの30,60および250mMの段階を用いてRetを溶出した。画分をSDS−PAGEでアッセイし,Retを含む画分をプールし,約50mM NaClが得られるまでTrisバッファ(pH8.0)中で希釈した。
希釈した蛋白質を陰イオン交換クロマトグラフィーを用いてさらに精製した。この工程のためには,16/10カラムにSource30Q媒体を充填し,20mM Tris(pH8.0)バッファで平衡化した。蛋白質を結合させた後,Tris(pH8.0)バッファ中NaCl(50−500mM)の直線勾配を用いて,Retを溶出した。画分
を回収し,プールし,最終的な精製工程用に濃縮した。Retを,予め20mM Tris(pH8.0),100mM NaClで平衡化したPharmacia HiLoad16/60 Superdex200サイジングカラム(Pharmacia)に通した。画分を回収し,プールし,濃縮して16mg/mlとした。
実施例27−Retキナーゼドメインの結晶化および結晶分析
実験の設計および方法
RetD3との共結晶学:RetD3結晶は,通常の操作により,2−3日の結晶化設定中で,使用可能なサイズ(200x200x700ミクロン)まで成長させた。結晶化条件は一般に以下のとおりであった。
蛋白質:12mg/ml
化合物:1mg/ml
結晶化バッファ:30% PEG2000 MME,0.15M KBrおよび1mM DTT
RetD3共結晶からの回折データはALS Beamline831で収集した。少なくとも2.8Åまたはそれ以上で回折した結晶についてのみデータセットを収集した。
RetD3:構造決定および精密化
RetD3の種々の化合物との共結晶構造は,分子置換法により解釈されている。データの収集,加工および精密化統計学は以下の表に示される。すべてのデータはALS BeamLine831で収集し,CCP4パッケージ中のMosflmおよびScalaで加工し,補正した。RetD3についての初期段階は,分子置換法により,FGFR1モデルを用いてEPMRまたはMolrepプログラムのいずれかにより得た。モデルの精密化は,CNXおよびRefmac5の両方を用いて行った。モデルの構築/編集は,プログラムOを用いて行った。
構造の説明:
RetD3の構造は,他のキナーゼ構造との類似性を有する。全長キナーゼドメイン蛋白質の図を図2に示し,スタウロスポリンおよび式Iの例示的化合物(表2に示される化合物)との共結晶複合体中の活性部位の概観をそれぞれ図3Aおよび3Bに示す。蛋白質のATP結合部位は,2つのドメインの間に形成される裂け目である。
図3Aおよび3Bは,RetD3と結合化合物との共結晶構造のそれぞれにおけるATP結合部位を示す。それぞれの場合において,結合部位は,蛋白質と相互作用する対応する化合物により占められている。水分子は,存在する場合には,球体で示される。化合物と何らかの相互作用を行う蛋白質残基は棒で示される。化合物と蛋白質との間の極性および水素結合相互作用,および疎水的相互作用は点線で示される。各共結晶構造においては,その化合物に対する蛋白質の結合親和性の原因となる,化合物と蛋白質との間の多くの相互作用が存在する。それぞれの場合において,化合物は,他の極性および非極性相互作用に加えて,蛋白質残基E805およびA807と標準的な水素結合相互作用を形成する。
実施例28:RetキナーゼドメインおよびRet代替物配列の構築
RetのcDNA配列はNCBIから,例えば,NM_020630.2として入手可能である。この配列を用いて,慣用の方法により市販のライブラリからRetDNA配列をクローニングすることができる。
RET代替物IおよびRET代替物をコードするベクターの構築
RET代替物Iについては,FGFR1チロシンキナーゼ由来の触媒ドメインをコードするDNA中に6個の変異を導入した。6個の変異は以下のとおりである:P483T,
C488E,C584S,N568S,E571G,およびA640S。RET代替物IIについては,第7の変異(M535L)を導入した。PCRに基づくQuikChange変異誘発プロトコル(Stratagene)を用いて変異を導入した。C584S,A640S,およびM535L変異のそれぞれについて,目的とする変異配列を含む相補的オリゴヌクレオチドの対を用いて別々の反応を行った。P483TおよびC488E変異は,これらの目的とする変異配列の両方を含む1組の相補的プライマーを用いて単一の反応で導入した。同様にして,N568SおよびE571G変異を単一の反応で導入した。個々の変異誘発プロトコルを順番に行うことにより,6個すべての変異を1つに組み合わせた。第7の変異(RET代替物IIに独特のM535L)については,変異誘発PCR反応においてRET代替物Iを出発テンプレートとして用いた。用いた5組のオリゴヌクレオチドプライマーは合成し(Invitrogen),以下に示す。
変異を導入した後,FGFR1キナーゼドメインをコードするDNAを,残基A458で始まる配列の前にNdeI制限部位を付加し,残基E765で終わる配列の後に停止コドンおよびSalI制限部位を付加するよう設計した2つのプライマーを用いて,PCR反応において増幅した。これらのオリゴヌクレオチドプライマーは合成し(Invitrogen),以下に示される。
残基A458からE765にわたる変異FGFR1配列をコードするPCR生成物をNdeIおよびSalI制限酵素で消化した。プラスミドベクターpET−N6BI−PTPもまたNdeIおよびSalI制限酵素で消化した。FGFR1を含有するPCR生成物をベクターDNAとともにT4DNAリガーゼ(Invitrogen)を用いてライゲーションした。得られたプラスミドのコーディング領域の重要な部分を配列決定した(
Davis Sequencing)。pET−N6BI−PTPベクターは,pET−24ベクター(Novagen)の誘導体であり,このポリメラーゼを産生するよう加工されたE.coliの株でmRNAを生成するためにT7RNAポリメラーゼを利用するよう設計されている。pET−N6BI−PTPベクターは,上述したようにNdeI部位を用いてFGFR1キナーゼドメインを導入したときに,FGFR1蛋白質のN末端の残基A458で融合される,配列MGHHHHHHMを有する短いアミノ酸のタグをコードするポリリンカーを含む。pET−N6BI−PTPベクターはまた,蛋白質チロシンホスファターゼであるPTP1bの触媒ドメインをコードする。
RET代替物Iの配列は次のとおりである:
RET代替物II蛋白質の配列は次のとおりである:
実施例29:RetおよびRet代替物の精製
RetおよびRet代替物は以下のようにして精製する。
Ret代替物のE.coliからの発現および精製
蛋白質発現のためには,Ret代替物(IおよびII)のキナーゼドメイン(p1361およびp1362)でE.coliBL21株(DE3)CodonPlusを形質転換し,カナマイシンおよびクロラムフェニコールを含有するLBプレートで形質転換体を選択した。単一コロニーを2x200mlLB培地中で37℃で4時間増殖させた。30Lの新鮮なTB培地に400mlの種培養物を植菌し,Bioflow500045Lファーメンターを用いて37℃で増殖させた。培養物の600nmの光学密度が1.0−2.0に達したときに,0.5mM IPTGを加え,培養物を20℃でさらに18時間増殖させた。15000xgで遠心分離して細胞を回収し,E.coliのペーストを−80℃で凍結した。
500gのE.coliペーストを0.1Mリン酸カリウム(pH8.00),250mM NaCl,5%グリセロール,0.1%NP−40,25mMイミダゾール,2mM PMSFおよびEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche)を含む溶解バッファ中に懸濁した。マイクロフルイダイザー・プロセッサ(Microfuidics Corporation)を用いて細胞を溶解し,30,000xgで遠心することにより不溶性細胞断片を除去した。
透明にした上清を予め平衡化した50mlNi2+キレートカラムに30ml/分の流速で通した。負荷したカラムを20カラム容量の溶解バッファ+30mMイミダゾールで洗浄して,非特異的に結合した物質を除去した。
次に,洗浄したカラムをAKTAfplcに接続し,150mlの20mM HEPES(pH7.5),200mM NaCl,5mMメルカプトエタノール,25mMイミダゾールで再び平衡化し,さらに60mMまで増加する濃度のイミダゾールで洗浄した。Ret代替物は,20mM HEPES(pH7.5),200mM NaCl,5mMメルカプトエタノール中のイミダゾールの直線勾配(80−500mM)を用いて溶出した。勾配は20カラム容量にわたって適用し,10mlずつ画分を回収した。画分をSDS−PAGEでアッセイし,Ret代替物を含む画分をプールし,濃縮し,20mM Tris(pH7.5),100mM NaCl,14mMメルカプトエタノールで予め平衡化したPharmacia HiLoad50/60 Superdex200サイジングカラム(Pharmacia)に負荷した。ピーク画分を回収し,SDS−PAGEでアッセイした。Ret代替物を含む画分をプールし,Trisバッファ(pH7.5)で30mM NaClとなるまで希釈した。希釈した蛋白質をさらに,20mM Tris(pH7.5),14mMメルカプトエタノールで平衡化したSource30Qセファロース(Pharmacia)を充填したHR16/10カラムを用いるアニオン交換クロマトグラフィーに供した。溶出は,20カラム容量の塩化ナトリウム(0−500mM)の直線勾配を用いて行い,5mlずつの画分を回収した。精製した蛋白質を約50mg/mlに濃縮し,−80℃で保存した。
E.coliからの可溶性Retの発現および精製
蛋白質発現のためには,Ret(D874N,aa705−1060)でE.coli
BL21株CodonPlusを形質転換し,カナマイシンおよびクロラムフェニコールを含有するLBプレートで形質転換体を選択した。単一コロニーを2x200mlLB培地中で37℃で約4時間成長させた。BioFlow5000ファーメンター中で30Lの新鮮なTB培地を滅菌し,400mlの種培養物を植菌した。培養物は37℃で約4.5時間成長させた。600nmの光学密度が1.0−2.0に達したときに,培養物を12℃に冷却し,0.5mM IPTGを加え,培養物を12℃でさらに18時間インキュベートした。細胞を15,000xgで遠心分離して細胞を回収し,ペレットを−80℃で凍結し,溶解の準備ができるまで保存した。
細胞ペレットを0.1Mリン酸カリウムバッファ(pH8.00),250mM NaCl,5%グリセロール,0.1%NP−40,25mMイミダゾール,2mM PMSFおよびEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche)を含有する溶解バッファ中に懸濁した。マイクロフルイダイザー・プロセッサ(Microfluidics Corporation)を用いて細胞を溶解し,30,000xgで遠心分離して不溶性の細胞断片を除去した。
透明にした上清は,予め平衡化したNi2+キレートカラム(Amersham)に流速20ml/分で通した。負荷したカラムは,20カラム容量の溶解バッファ+30mMおよび60mMのイミダゾールで洗浄して非特異的に結合した物質を除去した。カラムを20mM HEPES(pH8.0),250mM NaClで再平衡化した。Retは20mM HEPESpH8.0,250mM NaCl中,30,60および250mMの段階的濃度のイミダゾールを用いて溶出した。画分をSDS−PAGEでアッセイし,Retを含む画分をプールし,Trisバッファ(pH8.5)で約50mM NaClとなるまで希釈した。
希釈した蛋白質は,アニオン交換クロマトグラフィーを用いてさらに精製した。この工程のためには,16/10カラムにSource30Q媒体を充填し,20mM Tris(pH8.5)バッファで平衡化した。蛋白質を結合させた後,Tris(pH8.5)バッファ中NaClの直線勾配(50−500mM)を用いてRetを溶出させた。画分を回収し,プールし,最終精製工程用に濃縮した。Retは,20mM Tris(pH8.0),100mM NaClで予め平衡化したPharmacia HiLoad16/60 Superdex200サイジングカラム(Pharmacia)を通した。画分を回収し,プールし,16mg/mlに濃縮した。
実施例30:Ret代替物の結晶化
Ret代替物1の結晶は,18% PEG3350,0.1M Hepes(pH6.5),0.2M (NH42SO4,10%エチレングリコール中で成長させた。
Ret代替物2の結晶は,14% PEG3350,0.1M Hepes(pH6.5),0.2M (NH42SO4,10%エチレングリコール中で成長させた。
両方のRet代替物の結晶は,慣用の操作により2−3日の結晶化設定中で使用可能なサイズ(約200x200x700ミクロン)まで成長させた。
実施例31:Ret代替物の構造決定
Ret代替物(RetS)との共結晶学:RetS結晶は慣用の操作により2−3日の結晶化設定中で使用可能なサイズ(200x200x700ミクロン)まで成長させた。RetS共結晶の回折データは,ALS Beamline831で収集した。少なくとも2.8Åまたはそれ以上で回折した結晶についてのみデータセットを収集した。
RetS:構造決定および精密化
RetSと種々の化合物との共結晶構造は,分子置換法により解釈されている。データの収集,加工,および精密化の統計学は以下に示される。すべてのデータはALS BeamLine831で収集し,CCP4パッケージ中のMosflmおよびScalaにより加工し補正した。RetSについての初期フェーズは,プログラムEPMRまたはMolrepを用いて,FGFR1モデルを用いる分子置換により得た。モデルの精密化は,CNXおよびRefmac5の両方を用いて行った。モデルの結合/編集は,プログラムOを用いて行った。
構造の説明:
RetSの構造は他のキナーゼ構造と非常に類似している。全長ドメイン構造(化合物68との共結晶)の図は図4に示される。
図5は,RetSと,例示的結合化合物である化合物68(図5A),14(図5B),および28(図5C)とのそれぞれの共結晶構造におけるATP結合部位の概略図を示す。それぞれの場合において,結合部位は蛋白質と相互作用する対応する結合化合物により占められている。水分子は,存在する場合には,球体で示される。化合物と相互作用する蛋白質残基は棒で示される。化合物と蛋白質との間の極性相互作用および水素結合相互作用,および疎水的相互作用は点線で示される。各共結晶構造において,化合物と蛋白質との間には,蛋白質のその化合物に対する結合親和性の原因となる多数の相互作用が存在
する。それぞれの場合において,化合物は,他の極性および非極性の相互作用に加えて,蛋白質残基E562およびA564と標準的水素結合相互作用を形成する。
実施例32:結合アッセイ
結合アッセイは種々の方法,例えば,当該技術分野において知られる種々の方法により実施することができる。例えば,上述するように,結合アッセイは,蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)フォーマットを用いて,またはAlphaScreenを用いて実施することができる。
あるいは,リガンドのATP−結合部位への結合を測定しうる任意の方法を用いることができる。例えば,蛍光リガンドを用いることができる。Retに結合すると,放出される蛍光は偏光される。阻害剤結合により一旦置き換えられれば,極性は増大する。
競合結合アッセイによる化合物のIC50の測定(ただし,KIは阻害剤結合の解離定数であり;KDは,基質結合の解離定数である)
この系についてIC50,すなわち阻害剤結合定数および基質結合定数は,以下の式にしたがって相互に関係づけることができる。
放射性標識した基質を用いた場合:
標識基質の量が少ない場合:
IC50 〜 KI
実施例33:Ret活性のアッセイ
例示的Retアッセイとして,Retおよび他のキナーゼのキナーゼ活性の潜在的調節剤の効果を,当該技術分野において知られる種々のアッセイにおいて測定することができる。例示的アッセイにおいては,Retキナーゼ活性は,以下のアッセイフォーマットにおいて測定することができる。
例示的キナーゼアッセイとして,RetまたはRet代替物のキナーゼ活性はAlphaScreening(Packard BioScience)で測定する。キナーゼバッファ(HMNB)は,HEPES 50mM(pH7.2),Mg/Mn各5mM,NP−40 0.1%,およびBSAを最終濃度50ug/mlで含む。AlphaScreeningは,製造元により記載されるようにして行う。簡単には,キナーゼ反応は,384ウエルプレート中で25ul容量で行う。基質は最終濃度1nMのビオチン−(E4Y)3である。ATPの最終濃度は10uMである。化合物の試験については,DMSOの最終濃度は1%である。反応液を31℃で1時間インキュベートする。
RetまたはRet代替物(またはそのキナーゼドメイン)はAlphaScreenにおいて活性なキナーゼである。RetおよびATPを10uMで用いて,式Iの化合物による例示的化合物の阻害を試験した。
実施例34:Retおよび他のキナーゼの部位特異的変異誘発
Retおよび他のキナーゼ(ならびに興味ある他の配列)の変異誘発は,以下の方法にしたがって行うことができ,Molecular Biology:Current Innovations and Future Trends.Eds.A.M.Gri
ffin and H.G.Griffin.(1995)ISBN1−898486−01−8,Horizon Scientific Press,PO Box1,Wymondham,Norfolk,U.K.,などの文献に記載されている。
インビトロ部位特異的変異誘発は,蛋白質構造−機能相関,遺伝子発現およびベクターの改変を研究するために非常に貴重な手法である。文献にはいくつかの方法がみられるが,これらの方法の多くはテンプレートとして一本鎖DNAを必要とする。この理由は,歴史的に,相補鎖を分離して再アニーリングを防止する必要があるためである。部位特異的変異誘発においてPCRを用いることにより,変性工程を用いて鎖分離を行って相補鎖を分離し,PCRプライマーの効率的な重合を行うことが可能となる。したがって,PCR部位選択的方法は,事実上すべての二本鎖プラスミド中に部位特異的変異を取り込ませることを可能とし,M13に基づくベクターまたは一本鎖のレスキューを必要としない。
PCRに基づく部位特異的変異誘発を行うときに,PCRの間のサイクル数を減らして,任意の(望ましくない)第2部位の変異のクローン性拡大を防止することがしばしば望ましい。サイクル数の制限により生成物収率が低下することは,出発テンプレート濃度を高くすることにより相殺する。選択を用いて反応からもたらされる親分子の数を減少させる。また,単一のPCRプライマーセットを用いるためには,ロングPCR法を最適化することが望ましい。さらに,ある種の熱安定性ポリメラーゼのエクステンダーゼ活性のため,一方または両方のPCRプライマー中に組み込まれた変異を有するPCR生成物の末端−末端ライゲーションの前に,末端の仕上げをする工程を組み込むことがしばしば必要である。
以下のプロトコルは,部位特異的変異誘発の容易な方法を提供し,以下の工程を組み込むことにより上述の望ましい特徴を達成する:(i)慣用のPCR条件よりテンプレート濃度を約1000倍に高める;(ii)サイクルの数を25−30から5−10に減らす;(iii)制限エンドヌクレアーゼDpnI(認識標的配列:5−Gm6ATC−3(ここで,A残基はメチル化されている))を付加して,親DNAから選択する(注:E.coliのほぼすべての一般的株から単離されるDNAは配列5−GATC−3でDam−メチル化されている);(iv)PCRミックス中でTaqExtenderを用いてPCRの信頼性を10kbまで高める;(v)PfuDNAポリメラーゼを用いてPCR生成物の末端の仕上げをする,および(vi)T4DNAリガーゼの存在下で効率的な分子内ライゲーションを行う。
プラスミドテンプレートDNA(約0.5pmole)を,25ulの1x変異誘発バッファ(20mM TrisHCl,pH7.5;8mM MgCl2;40ug/ml
BSA)中に,12−20pmoleの各プライマー(そのうちの1つは5−プライムリン酸を含まなければならない),各250uMのdNTP,2.5UのTaqDNAポリメラーゼ,2.5UのTaqExtender(Stratagene)を含むPCRカクテルに加える。
PCRサイクルのパラメータは,以下のとおりである:94℃で4分間,50℃で2分間および72℃で2分間を1サイクル;次に94℃で1分間,54℃で2分間および72℃で1分間を5−10サイクル(工程1)。
親テンプレートDNAおよび新たに合成したDNAを組み込んだ直線状の変異誘発プライマーをDpnI(10U)およびPfuDNAポリメラーゼ(2.5U)で処理する。これにより,インビトロメチル化親テンプレートおよびハイブリッドDNAをDpnI消化し,TaqDNAポリメラーゼで伸長された直線状PCR生成物上の塩基をPfuDNAポリメラーゼにより除去する。
反応液を37℃で30分間インキュベートし,次に72℃に移してさらに30分間インキュベートする(工程2)。
DpnIで消化しPfuDNAポリメラーゼで仕上げをしたPCR生成物に変異誘発バッファ(1x,115μl,0.5mMATPを含む)を加える。
溶液を混合し,10μlを取り出して新たなマイクロ遠心管に入れ,T4DNAリガーゼ(2−4U)を加える。
ライゲーションは37℃で60分間以上インキュベートする(工程3)。
処理した溶液をコンピテントE.coliにトランスフォーメーションする(工程4)。
上述したPCRに基づく部位特異的変異誘発に加えて,他の方法も利用可能である。例としては,Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:488−492;Eckstein et al.(1985)Nucl.Acids Res.13:8764−8785に記載される方法,およびGeneEditor(商標)Site−Directed Mutageneis Sytem(Promega社製)を使用する方法が挙げられる。
本明細書において引用されるすべての特許および他の参考文献は,本発明の属する技術分野の技術者のレベルを示しており,表および図面を含めその全体を,それぞれの参考文献の全体が個々に本明細書の一部としてここに引用されることと同じ程度に,本明細書の一部として引用される。
当業者は,本発明は,記載される結果および利点,ならびに本明細書に固有のものを得るのによく適合していることを容易に理解するであろう。本明細書に好ましい態様の代表的なものとして記載される方法,変種および組成物は,例示的なものであって,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は,その改変および他の用途をなすであろう。これらの改変は本発明の精神の中に包含され,特許請求の範囲により定義される。
当業者は,本発明の範囲および精神から逸脱することなく,本明細書に開示される本発明に対して種々の置換および改変をなすことができることを容易に理解するであろう。例えば,RetおよびRet代替物蛋白質についての結晶化または共結晶化条件および/または種々のキナーゼドメイン配列についての変形物を用いることができる。すなわち,そのような追加の態様も本発明および特許請求の範囲の範囲内である。
本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。すなわち,例えば,本明細書における各例において,"・・・を含む","・・・から本質的になる"および"・・・からなる"との用語は,他の2つのいずれかと置き換えることができる。本明細書において用いた用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではなく,そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の同等物を排除することを意図するものではなく,特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に記載される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も特許請求の範囲に定義される本発明の
範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
さらに,発明の特徴および局面がマーカッシュグループの用語または他の代替物のグループの用語で記載されている場合,当業者は,本発明が,マーカッシュグループまたは他のグループのすべての個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
また,特に断らない限り,ある態様について種々の数値が与えられている場合,追加の態様は,任意の2つの異なる数値を範囲の終点としてとることにより記述される。そのような範囲もまた本明細書に記載される発明の範囲内である。
すなわち,追加の態様も本発明の範囲内であり,特許請求の範囲の範囲内である。
図1は,FGFR群およびRetの関係を示す,部分キナーゼファミリーツリーを示す図である。 図2は,全長キナーゼドメイン蛋白質のリボンダイアグラム表示を示す。 図3は,スタウロスポリンおよび式Iの例示的化合物(表2に示される化合物)との共結晶複合体中の活性部位の概観を示す。 図4は,RetSの全長ドメイン構造(化合物68との共結晶)を示す。 図5は,RetSと,例示的結合化合物である化合物68(図5A),14(図5B),および28(図5C)とのそれぞれの共結晶構造におけるATP結合部位の概略図を示す。

Claims (4)

  1. 以下の化学構造:
    [式中,
    2は,−CH2−任意に置換されていてもよいアリール,−CH2−任意に置換されていてもよいヘテロアリール,−C(O)−任意に置換されていてもよいアリール,−C(O)−任意に置換されていてもよいヘテロアリール,−S−任意に置換されていてもよいアリール,−S−任意に置換されていてもよいヘテロアリール,−S(O)2−任意に置換されていてもよいアリール,および−S(O)2−任意に置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択され;および
    4は,任意に置換されていてもよいアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,−O−任意に置換されていてもよいアルキル,−O−任意に置換されていてもよいアリール,−O−任意に置換されていてもよいヘテロアリール,−NH−任意に置換されていてもよいアルキル,−NH−任意に置換されていてもよいアリール,および−NH−任意に置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される]
    を有する化合物。
  2. 4が,任意に置換されていてもよいアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,および任意に置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される,請求項1記載の化合物。
  3. 前記化合物が下記のいずれかの構造:
    を有する化合物から選択される,請求項1記載の化合物。
  4. Ret代替物とRet結合化合物との共結晶であって,前記Ret代替物はP483T,C488E,N568S,E571G,C584S,A640SまたはM535Lから選ばれる置換を有するFGER断片A458〜E765であり,前記結合化合物が以下の構造を有する式Iの化合物
    [式中,
    1およびR5は,独立して,水素,ハロ,ヒドロキシ,任意に置換されていてもよいアルコキシル,任意に置換されていてもよいチオアルコキシ,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよい低級アルケニル,任意に置換されていてもよい低級アルキニル,任意に置換されていてもよいシクロアルキル,任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル,−C(X)NR1617,−C(X)R20,または−NR2223であり;
    2,R3,およびR4は,独立して,水素,ハロ,ヒドロキシ,任意に置換されていてもよいアルコキシル,任意に置換されていてもよいチオアルコキシ,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよい低級アルケニル,任意に置換されていてもよい低級アルキニル,任意に置換されていてもよいシクロアルキル,任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,または任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル,−C(X)R20,−C(X)NR1617,−S(O)2NR1617,−NR2223,または−S(O)n21であり;
    16およびR17は,独立して,水素,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよい低級アルケニル,任意に置換されていてもよい低級アルキニル,任意に置換されていてもよいシクロアルキル,任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,任意に置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか,またはR16およびR17は,一緒になって,5−7員の炭素環または複素環を形成し;
    20は,ヒドロキシル,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよい低級アルケニル,任意に置換されていてもよい低級アルキニル,任意に置換されていてもよいシクロアルキル,任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,または任意に置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;
    21は,水素,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよいアミン,任意に置換されていてもよい低級アルケニル,任意に置換されていてもよい低級アルキニル,任意に置換されていてもよいシクロアルキル,任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,任意に置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;
    22およびR23は,独立して,水素,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよい低級アルケニル,任意に置換されていてもよい低級アルキニル,任意に置換されていてもよいシクロアルキル,任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル,−C(X)R20,−C(X)NR1617,または−S(O)221であり;
    24は,任意に置換されていてもよい低級アルキル,任意に置換されていてもよいアリール,任意に置換されていてもよいアラルキル,任意に置換されていてもよいヘテロアリール,または任意に置換されていてもよいヘテロアラルキルであり;および
    n=0,1,または2である]
    である,共結晶。
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