JP2007524374A - Pyk2結晶構造および使用 - Google Patents

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Abstract

X線結晶学により決定されたPYK2の結晶構造について記載する。PYK2結晶および構造の情報の使用は、例えば、分子骨格を同定するため、およびPYK2に結合して調節するリガンドを開発するために利用される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ2(PYK2)のリガンド開発の分野およびPYK2の結晶構造の利用に関する。提供される情報は、読み手の理解を助けるためのみを意図する。提供される情報および引用される参照文献のいずれも、本発明の先行技術と認めるものではない。
細胞シグナル伝達は、これにより広範囲の細胞プロセスを制御する外的刺激が細胞内に伝えられる基本的なメカニズムである。シグナル伝達の鍵となる生化学メカニズムの1つは、タンパク質上のチロシン残基の可逆的リン酸化に関係する。タンパク質のリン酸化状態は、チロシンホスファターゼ(TPs)とチロシンキナーゼ(TKs)の相互作用を通じて修飾され、これらにはレセプターチロシンキナーゼと非レセプターチロシンキナーゼがある。
レセプターチロシンキナーゼ(RTKs)は、膜透過タンパク質のファミリーに属し、細胞シグナル経路に関与してきた。いくつかのRTKsの優勢な生物学的活性は、細胞成長と増殖の刺激である一方、他のRTKsは成長を抑制し、分化を促進することに関与する。いくつかの例において、単一のチロシンキナーゼは、発現する細胞の環境に依存して、細胞増殖を阻害、若しくは刺激することができる。
RTKsは、少なくとも3つのドメインから構成される:細胞外リガンド結合ドメイン、膜透過ドメインおよびチロシン残基をリン酸化できる細胞質触媒ドメインである。リガンド結合から膜結合レセプターは、細胞内キナーゼドメインを活性化するアロステリック変化とレセプターダイマーの形成を誘発し、チロシン残基上のレセプターの自己リン酸化(自動リン酸化および/またはリン酸転移反応)を引き起こす。レセプターの細胞質ドメインの個々のリン酸チロシン残基は、細胞質シグナル分子のホストと相互作用する特定の結合部位として機能し、それにより種々のシグナル伝達経路を活性化しうる。
細胞内、細胞質、非レセプタータンパク質チロシンキナーゼは、疎水性膜透過ドメインまたは細胞外ドメインを含まず、その触媒キナーゼドメインを共有することに加えて、非触媒ドメインを共有する。このような非触媒ドメインは、SH2ドメインとSH3ドメインを含む。非触媒ドメインは、シグナル伝達の間のタンパク質−タンパク質相互作用の制御に重要であると考えられている。
シグナル伝達の中心的特徴は、特定のタンパク質の可逆的リン酸化である。レセプターのリン酸化は、活性化されたレセプターの標的分子との物理的会合を刺激し、それらの両方がリン酸化されているか、またはされていない。
ホスホリパーゼCγのような標的分子のいくつかは、順にリン酸化され活性化される。このようなリン酸化は、シグナルを細胞質に伝える。他の標的分子は、リン酸化されないが、第2のシグナル伝達タンパク質のアダプター分子として作用することによりシグナル伝達を助ける。例えば、レセプターにおけるレセプターリン酸化とそれに続くアロステリック変化は、Grb−2/SOS複合体をレセプターの触媒ドメインにリクルートし、その膜への近接によりrasを活性することができる。
活性化されたレセプターによって生じた第2のシグナル伝達分子は、細胞分裂や分化のような細胞機能を制御するシグナルカスケードをもたらす。細胞内シグナル伝達について記載した総説には、Aaronson, Science 254:1146-1153, 1991; Schlessinger, Trends Biochem. Sci., 13:443-47, 1988; および UllrichとSchlessinger, Cell, 61:203-212, 1990がある。
イオンチャンネル(例えば、カリウムチャンネルとカルシウムチャンネル)を制御するシグナル伝達経路は、レセプターとエフェクターとの間の媒介として機能するGタンパク質に関係する。Gilman, Ann. Rev. Biochem., 56:615-649 (1987); BrownおよびBirnbaumer, Ann. Rev. Physiol., 52: 197-213 (1990)。G−結合タンパク質レセプターは、神経伝達のレセプター、神経細胞においてシグナル生成の原因となるリガンドおよび神経と他の細胞種の増殖と分化の制御のレセプターである。神経伝達レセプターは、種々の組織において別個に発現する異なる鎖プラスミドタイプとして存在し、アセチルコリンのような神経伝達物質は、中枢及び末梢神経系全体に渡って反応を引き起こす。
ムスカリン様アセチルコリンレセプターは、学習、記憶、覚醒と運動、および知覚調節のような種々の複合的な神経活動に、重要な役割を果たしている。これらのレセプターは、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病および精神分裂症のようないくつかの中枢神経障害に関与もしている。
例えばカリウムチャンネルのような1つのイオンチャンネルを制御するシグナル伝達経路に関与するいくつかの物質は、例えばカルシウムチャンネルのような1またはそれ以上の他のイオンチャンネルを制御する1またはそれ以上の他の経路にも関与しうる。Dolphin, Ann. Rev. Physiol., 52:243-55 (1990); Wilk-Blaszczak et al., Neuron, 12: 109-116 (1994)。イオンチャンネルは、サイトゾルの第2メッセンジャーによるか、またはこれによらないかのいずれかで制御されうる。Hille, Neuron, 9:187-195 (1992)。1つの可能性のあるサイトゾル第2メッセンジャーは、チロシンキナーゼである。Huang et al., Cell, 75:1145-1156 (1993)は、すべての図面を含めて、参照することによりその全体を本明細書に取り込むものとする。
イオンチャンネルを制御するシグナル伝達経路に関与するレセプターは、種々の媒介事象及び物質により最終的にはイオンチャンネルに結合する。例えば、このような事象には、細胞内のカルシウムとイノシトール3リン酸の増加およびエンドセリンの産生が含まれる。Frucht, et al., Cancer Research, 52:1114-1122 (1992); Schrey, et al., Cancer Research, 52:1786-1790 (1992)。媒介物質にはボンベシンがあり、これはDNA合成と特定のタンパク質キナーゼC基質のリン酸化を刺激する。Rodriguez-Pena, et al., Biochemical and Biophysical Research Communication, 140(1):379-385 (1986); Fisher and Schonbrunn, J. Biol. Chem., 263(6):2208-2816 (1988)。
接着斑キナーゼ(FAK)は、2つのSrcファミリーキナーゼに関係することが知られる接着斑に局在化する細胞質タンパク質チロシンキナーゼである。Schaller, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:5192-5196 (1992)は、参照することによりすべての図面を含めてその全体を本明細書に取り込むものとする。Cobb et al., Mol. Cell. Biol., 14(1):147-155 (1994)。接着分子の細胞質表面に関係するタンパク質については、Gumbiner, Neuron, 11:551-564 (1993)に総説がかかれている。
FAKは、インテグリン、アゴニストレセプター、および/または張線維の相互作用を制御しうる。Shattil et al., J. Biol. Chem., 269(20):14738-14745 (1994); Ridley and Hall, The EMBO Journal, 13(11):2600-2610 (1994)。FAKは、SH2またはSH3ドメインを含まず、FAKのアミノ酸配列は、鳥類、齧歯類および人類で高度に保存されている。
いくつかの細胞においては、FAKのC−末端ドメインは、FRNKと呼ばれる41kDaのタンパク質として自律的に発現し、FAKの140C−末端残基は、接着斑標的(FAT)ドメインを含む。FRNKをコードするcDNAは、Schaller et al., Mol. Cell. Biol., 13(2) :785-791 (1993)に記載されており、参照することによりすべての図面を含めてその全体を本明細書に取り込むものとする。FATドメインは同定され、細胞の接着斑へのFAKの局在化に必要であると、Hilderbrand et al., J. Cell Biol., 123(4):993-1005 (1993)に述べられている。
非レセプターチロシンキナーゼPYK2は、ブラジキニンやアセチルコリンのようなG結合タンパク質レセプターへのリガンドの結合により活性化する。PYK2は、111kDの予想分子量を有し、5つのドメインを含む:(1)相対的に長いN−末端ドメイン;(2)キナーゼ触媒ドメイン;(3)プロリンリッチドメイン;(4)他のプロリンリッチドメイン;(5)C−末端接着斑標的(FAT)ドメイン。PYK2は、SH2またはSH3ドメインを含まない。
PYK2のFATドメインは、他の非レセプターチロシンキナーゼFAKのFATドメインと62%の類似性を有しており、FAKもG結合タンパク質により活性化される。PYK2とFAKの総合的な類似性は、52%である。PYK2の発現は、発達の初期段階において造血細胞やいくつかの腫瘍細胞系においても検出されうるが、PYK2は基本的には神経組織で発現する。PYK2の発現は、FAKの発現と対応しない。
PYK2は、細胞接着キナーゼβ(CAKβ)および関連接着斑チロシンキナーゼ(RAFTK)としても知られている。PYK2の核酸及びアミノ酸配列は、米国特許8,837,815;5,837,524および米国公開特許2002/0048782を含む、関連する一組の特許に記載されており、これらはPYK2と関連するタンパク質FAKについての、以下に示すいくつかの情報を含むさらなる情報をも提供する。これらの文献のおのおのは、PYK2の核酸及びアミノ酸配列を記載する。米国特許5,837,524は、「PYK2ポリペプチドと天然結合パートナー(NBP)」との間の「相互作用を促進または妨害することのできる」物質のスクリーニング方法を記載する。(8欄、60−67行)。米国公開特許2002/0048782は、PYK2の特定のタンパク質のクローニングと試験を記載した例を提供する。これらの特許及び公開特許のおのおのは、参照することにより、図面を含めその全体を本明細書に取り込むものとする。
PYK2は、神経伝達シグナルに対応してカリウムチャンネルの活性を制御すると考えられている。PYK2の酵素的活性化は、チロシンのリン酸化により正に制御され、ブラジキニン、TPA,カルシウムイオノフア、カルバコール、TPA+フォルスコリンの結合および膜の脱分極に対応することとなる。G結合レセプターシグナルを正に制御することが知られている毒(百日咳毒、コレラ毒、TPAおよびブラジキニンのような)の組み合わせは、PYK2のリン酸化を増加する。活性化したPYK2は、RAK、遅延矯正型カリウムチャンネルをリン酸化し、従ってRAK活性を抑制する。同様の系において、FAKはRAKをリン酸化しない。
さらに、インテグリン結合シグナルは、細胞の接着および運動性の制御に重要である。(Hynes, R. (2002) Integrins: bidirectional, allosteric signaling machines. Cell, 110, 673-687)。FAKおよびPYK2チロシンキナーゼは、インテグリン依存性シグナルの鍵となる媒介物である。(Hauck et al. (2000) Focal adhesion kinase functions as a receptor-proximal signaling component required for directed cell migration. Immunol Res, 21, 293-303)。FAKとPYK2の両方とも、インテグリンの結紮の結果として細胞骨格の再配列を媒介する。FAKは、接着斑に局在化するものであり、細胞外マトリックスへの細胞表面インテグリンの結合により活性化される。外的刺激に対応して、成長因子はインテグリンに会合し、FAKも成長因子に対応してリン酸化される。(Sieg, et al. (2000) FAK integrates growth-factor and integrin signals to promote cell migration. Nat Cell Biol, 2, 249-256)。細胞骨格と細胞の運動性の制御におけるその役割に加え、FAKはまた、成長シグナルとともにこれらの構成を調整し、細胞の生存を助ける。
対照的に、PYK2は、細胞−細胞接触部位に局在化し、カルシウム動員に対応して活性化される。(Lev, et al. (1995) Protein tyrosine kinase PYK2 involved in Ca(2+)-induced regulation of ion channel and MAP kinase functions. Nature, 376, 737-745)。実際、FAKが細胞生存を媒介するように見えるところでは、PYK2の活性化は、繊維芽細胞におけるアポトーシスをもたらす。(Xiong, W. and Parsons, J.T. (1997) Induction of apoptosis after expression of PYK2, a tyrosine kinase structurally related to focal adhesion kinase. J Cell Biol, 139, 529-539)。単球及び葉骨細胞においては、PYK2は、コレラの細胞型において細胞外マトリックスに接触し接着と運動性を媒介する細胞突起である、ポドソームに局在化する。(Duong et al. (1998) PYK2 in osteoclasts is an adhesion kinase, localized in the sealing zone, activated by ligation of alpha(v)beta3 integrin, and phosphorylated by src kinase. J Clin Invest, 102, 881-892; Lakkakorpi et al. (1999) Stable association of PYK2 and p130(Cas) in osteoclasts and their co-localization in the sealing zone. J Biol Chem, 274, 4900-4907.)
異なる生物学的機能にも拘わらず、FAKとPYK2は、チロシンキナーゼのFAKファミリーの唯一の構成員であり、これらは総合的に45%の配列同一性を有しており、キナーゼ触媒ドメインにおいては高い相同性を有している(60%)。(Lev et al. (1995) Nature, 376, 737-745; Sasaki et al. (1995) Cloning and characterization of cell adhesion kinase beta, a novel protein-tyrosine kinase of the focal adhesion kinase subfamily. J Biol Chem, 270, 21206-21219)。さらに、重要な制御部位のほとんどは、高度に保存されている。N−末端には、大きなインテグリン結合ドメインがある。C−末端には、細胞骨格関連タンパク質パキシリンおよびタリンの結合部位を介して非細胞局在化を媒介するいわゆるFAT(接着斑標的)ドメインがある。キナーゼ触媒ドメインは、タンパク質の中心部にある。さらに、C−末端のプロリンリッチ領域は、アダプタータンパク質CASおよびGRAFのSH3ドメインに結合する役割を果たす。(Hildebrand et al. (1996) An SH3 domain-containing GTPase-activating protein for Rho and Cdc42 associates with focal adhesion kinase. Mol Cell Biol, 16, 3169-3178; Polte, T.R. and Hanks, S.K. (1995) Interaction between focal adhesion kinase and Crk-associated tyrosine kinase substrate p130Cas. Proc Natl Acad Sci U S A, 92, 10678-10682)。
第1の自動リン酸化部位(FAKのY397、PYK2のY402、触媒ドメインのちょうど上流)は、SrcファミリーチロシンキナーゼのSH2ドメインの結合部位として機能する。(Dikic et al. (1996) A role for Pyk2 and Src in linking G-protein-coupled receptors with MAP kinase activation. Nature, 383, 547-550)。この部位は、Srcキナーゼの基質でもある。さらなるチロシンリン酸化事象が、機能が不明な触媒ドメイン(FAKのY576、Y577、PYK2のY579,Y580)内の残基、およびGRB2のSH2ドメインの結合部位として機能するC−末端部位(FAKのY925、PYK2のY881)で、起こる。(Schlaepfer et al. (1999) Signaling through focal adhesion kinase. Prog Biophys Mol Biol, 71, 435-478)。種々のタンパク質の組立に加えて、FAKとPYK2はまた、パキシリンおよびCASのような鍵となる基質のリン酸化による重要な役割を果たす。(Bellis et al. (1995) Characterization of tyrosine phosphorylation of paxillin in vitro by focal adhesion kinase. J Biol Chem, 270, 17437-17441; Li, X. and Earp, H.S. (1997) Paxillin is tyrosine-phosphorylated by and preferentially associates with the calcium-dependent tyrosine kinase in rat liver epithelial cells. J Biol Chem, 272, 14341-14348)。パキシリンおよびCASのチロシンリン酸化は、SH2アダプタータンパク質の新しい結合部位を作る。例えば、パキシリンは、造血細胞においてPYK2に結合して、それによりリン酸化される。(McShan et al. (2002) Csk homologous kinase associates with RAFTK/Pyk2 in breast cancer cells and negatively regulates its activation and breast cancer cell migration. Internat. J. Oncology 21:197-205)。
さらに、PYK2とFAKの発現は、乳癌細胞で観察され、PYK2がヘレグリン(HRG)刺激の細胞内シグナルに関与し、乳癌種の侵襲を促進すると報告された。CHKは、PYK2の負のレギュレーターとして作用し、乳癌細胞を発現したPYK2の転移を顕著に抑制した。(McShan et al. (2002) Internat. J. Oncology 21:197-205)。
PYK2に結合し、および/またはPYK2活性を制御する化合物の同定方法は、Duong et al., PCT/US98/02797,WO98/35056に記載され、その方法は、化合物とPYK2とを接触させ、結合が起こった場合はそれを同定することが含まれる。結合か起こった場合、結合したPYK2の活性は、化合物が結合していないPYK2の活性と比較して、化合物がPYK2活性を制御するかどうかを測定することができる(2ページ、9−15行)。同定された化合物は、骨粗鬆症、炎症、および単球転移と侵襲活性に依存した他の症状の予防や処置に有用であると示される(3ページ、1−5行)。この出願は、参照することによりその全体を本明細書に取り込むものとする。
本発明は、PYK2キナーゼに関する構造情報、結合化合物のある、またはなしのPYK2キナーゼの結晶、およびPYK2キナーゼ結晶およびPYK2キナーゼに関する構造情報の、PYK2キナーゼリガンド、たとえば阻害剤の開発のための用途に関する。
したがって、第一の観点において、本発明はPYK2に結合する化合物の方位を測定するため、および/または、結合している化合物と共結晶しているPYK2に結合した少なくとも一つの化合物の方位を測定することによって結合性化合物を同定するための方法に関する。方法はまた、PYK2に結合したPYK2結合性化合物の結合を特徴づける。特定の態様においては、方法はまた:PYK2キナーゼの結合部位へ弱く(低いかまたは非常に低い親和性をもって)結合し、かつ350ダルトン未満の分子量を有する一以上の化合物を分子スカフォード(足場)として同定すること;PYK2に対する化合物または分子スカフォードの活性を測定すること(活性はまた1、2、3、またはそれより多い付加的なキナーゼに対しても測定可能である;スカフォードは好ましくは低い活性を有する);PYK2キナーゼとの共結晶における少なくとも一つの分子スカフォードの方位を測定すること;修飾された場合に、分子スカフォードとPYK2キナーゼとの間の結合親和性か、または結合特異性、あるいは双方を変える、一以上の分子スカフォードの化学構造を同定すること;分子スカフォードの一以上の化学構造が修飾されて、変えられた結合親和性または結合特異性あるいは双方をもつPYK2キナーゼに結合するリガンドを提供する、リガンドを合成するかまたは他の方法で取得すること、の一以上を含むことができる。したがって、本発明は、たとえば、分子スカフォードであってもよいPYK2結合性化合物の誘導体を同定することにより、親化合物よりも大きい親和性および/または特異性をPYK2に対して有しているPYK2リガンドを同定または開発するための方法を提供する。たとえば、方法は、結合方位を測定すること、修飾された場合、結合親和性および/または特異性を変える、一以上の化合物の一以上の化学構造を同定すること;および、変えられた結合親和性または結合特異性あるいは双方をもつPYK2キナーゼに結合するリガンドを提供するべく、これらの一以上の化学構造が修飾されるリガンドを合成するかまたは他の方法で取得することを含むことが可能である。方法はまた、PYK2に結合する分子スカフォードを同定することを含むことも可能である。非常に好ましくは、修飾された化合物(リガンド)もまた、変えられた活性(すなわち、PYK2キナーゼの活性に対して変えられた作用)をもつ。
用語「PYK2キナーゼ」および「PYK2」は、長さの等しいセグメントにわたる最大のアラインメントに関して、PYK2キナーゼドメイン(配列番号1)の少なくとも一部分に対し90%を超えるアミノ酸配列の同一性をもつ、少なくとも50アミノ酸残基長の部分を含むか;またはATPに対する結合性を保持している、配列番号1に対して90%を超えるアミノ酸配列の同一性をもつ部分を含む、酵素活性のあるキナーゼを意味する。好ましくは、配列同一性は、配列番号1と少なくとも95、97、98、99、またはさらに100%である。好ましくは、同一性は、少なくとも100、150、200、250、または272アミノ酸長の、配列番号1の部分に及ぶ。
用語「PYK2キナーゼドメイン」は、完全長分子の中央付近に局在する、PYK2のキナーゼ触媒領域を含む、長さの短縮されたPYK2(すなわち、N−末端およびC−末端の各々において少なくとも100アミノ酸まで完全長のPYK2よりも短い)を指す。本発明における使用に関して非常に好ましくは、キナーゼドメインはキナーゼ活性、好ましくは天然のPYK2に比較して少なくとも50%のキナーゼ活性レベル、さらに好ましくは、ATPを基質として、またATPγSを拮抗阻害剤とした競合キナーゼアッセイにおいて、天然の活性の少なくとも60、70、80、90、または100%を保持している。一つの実例は、配列番号1のPYK2キナーゼドメインである。
本文において用いられるように、用語「リガンド」および「モジュレーター」は、標的生体分子、たとえばキナーゼのような酵素、の活性を調整する化合物を指すべく、同様な意味合いで用いられる。一般に、リガンドまたはモジュレーターは低分子であろうが、この場合「低分子は、分子量1500ダルトン以下、または好ましくは1000ダルトン以下、800ダルトン以下、または600ダルトン以下の分子量をもつ化合物を指す。したがって、「改良されたリガンド」は、参考化合物よりもより優れた薬理学的および/また薬物動態学的性質をもつものであり、「より優れた」は、特定の生物系または治療的使用に関して人為的に定義されることが可能である。スカフォードからのリガンド開発の観点からいえば、リガンドはスカフォードの誘導体である。
結合性化合物、分子スカフォード、およびリガンドに関連して、「誘導体」または「誘導体化合物」は、親または参考の化合物と共通したコアの化学構造を有するが、たとえば、一以上の付加および/または除去および/または置換された置換基をもつことによるか、異なる原子で置換された一以上の原子をもつことにより、少なくとも一つの構造上の差異をもつことによって異なる化合物を指す。反対に、明記されない限り、用語「誘導体」は、誘導体が親化合物を出発物質としてまたは中間体として用いて合成されることを意味するものではないが、いくつかの場合には、誘導体は親から合成されてもよい。
したがって、用語「親化合物」は、誘導体化合物の中に連続した構造上の特性を有している、別の化合物についての参考化合物を指す。常にではないがしばしば、親化合物は誘導体よりも単純な化学構造を有する。
「化学構造」または「化学部分構造」により、分子の一部を構成する、任意の定義可能な原子または原子団が意味される。通常、スカフォードまたはリガンドの化学構造は、標的分子へのスカフォードまたはリガンドの結合において役割をもつことが可能であるか、またはスカフォードまたはリガンドの三次元構造、静電荷、および/または構造特性に影響を及ぼすことが可能である。
用語「結合(binds)」は、標的と潜在的結合性化合物との間の相互作用に関連して、潜在的結合性化合物が、一般にタンパク質との会合(association)(すなわち、非特異的結合)に比較して、統計学上有意な程度に、優先的に標的と会合することを示す。したがって、用語「結合性化合物」は、標的分子と統計上有意な会合を有する化合物を指す。好ましくは、結合性化合物は1mM以下の解離定数(kd)をもって特定の標的と相互作用する。結合性化合物は、本文において記述されたように、「低い親和性」、「非常に低い親和性」、「極めて低い親和性」、「中程度の親和性」、「中程度に高い親和性」、「高い親和性」をもって結合することが可能である。
標的に結合する化合物に関連して、用語「より大きい親和性」は、化合物が参考化合物よりも、あるいは参考条件にある、すなわち、低い解離定数をもつ同じ化合物よりも、しっかりと結合することを示す。特定の態様においては、より大きい親和性は、少なくとも2、3、4、5、8、10、50、100、200、400、500、1000、または10,000倍大きい親和性である。
また生体分子標的へ結合する化合物に関連して、用語「より大きい特異性」は、化合物が特定の標的に対し、関連した結合条件下に存在してもよい他の生体分子に対するよりも強度に結合し、かかる他の生体分子への結合が、特定の標的への結合とは異なる生物活性を生み出すことを示す。典型的には、特異性は、他の生体分子、たとえば、PYK2の場合には他のキナーゼまたは、さらに別のタイプの酵素の、限られたセットに関してのものである。特定の態様においては、より大きい特異性は、少なくとも2、3、4、5、8、10、50、100、200、400、500、または1,000倍大きい特異性である。
化合物の、PYK2との結合に関連して使用されるように、用語「相互作用する」は、結合した化合物から特定のアミノ酸残基までの距離が5.0オングストローム以下、または該化合物と該残基との間に配位された水分子との6オングストローム以下の、あるいは該化合物と該残基との間に配位された二つの水分子との9オングストローム以下となることを示す。特定の態様においては、化合物から特定のアミノ酸残基までの距離は4.5オングストローム以下、4.0オングストローム以下または3.5オングストローム以下である。かかる距離は、たとえば、コクリスタログラフィー(共結晶学)を用いるか、またはPYK2活性部位において化合物のコンピュータフィッティングを使用して推定されることが可能である。
PYK2ポリペプチド残基番号中の特定のアミノ酸残基のへの参照は、Lev et al. (1995) "Protein tyrosine kinase PYK2 involved in Ca(2+)- induced regulation of ion channel and MAP kinase functions(「イオンチャンネルのCa(2+)誘導性の調節およびMAPキナーゼ機能に関与するタンパク質チロシンキナーゼPYK2」)"Nature 376 : 737 - 745に提供された番号づけにより定義される。
関連する観点においては、本発明は、PYK2キナーゼに特異的なリガンドを開発するための方法であって、多数のキナーゼに結合するある化合物の誘導体が、他のキナーゼに比較してPYK2に対してより大きい特異性を、親化合物よりも有するかどうかを測定することを含む方法を提供する。特定の態様においては、方法はまた、多数のキナーゼに結合するかかる化合物を同定することも含む。
結合性化合物またはリガンドに関連して本文において用いられるように、用語「PYK2キナーゼに特異的」、「PYK2に特異的」、および同様の趣旨の用語は、特定の化合物が、特定の生体に存在してよい他のキナーゼに対するよりも、統計的により大きい程度に、特定のPYK2キナーゼに対して結合することを意味する。また、結合以外の生物活性が示される場合には、用語「PYK2キナーゼに特異的」は、特定の化合物が、PYK2を結合することに関連して、他のキナーゼに対するよりも大きい生物活性を有することを示す。好ましくは、特異性はまた、生体から与えられてよい他の生体分子(キナーゼに限定されない)も基準にしている。
もう一つの観点においては、本発明は、PYK2に結合する改良されたリガンドを得るための方法であって、PYK2に結合する化合物を同定することと、該化合物がPYK2残基503、505、457、488、567、および554の一以上と相互作用するかどうかを測定すること、および該化合物の誘導体が、親の結合性化合物よりも、より大きい親和性か、またはより大きい特異性、または双方をもってPYK2に結合するかどうかを測定することを含む方法を提供する。親化合物よりも大きい親和性または特異性または双方をもつ結合は、誘導体が改良されたリガンドであることを示す。このプロセスはまた、選択および誘導体化の連続した循環において、および/または多数の親化合物を用いて、改良されたリガンド特性をもつ化合物または複数の化合物を提供することが可能である。同様に、誘導体化合物は、PYK2キナーゼに対する高い選択性をもたらすべく、または特定の標的セット、たとえばPYK2を含むキナーゼのサブセット、に対して交差反応性をもたらすべく、検査および選択されることが可能である。ある化合物は、503、505(直接の相互作用)、457、488、567(水1個を介した相互作用)、および554(水2個を介した相互作用)のような、特定の残基と相互作用する。特定の態様においては、分子スカフォード、結合性化合物、またはリガンドは、少なくとも残基503および505;残基503および505および、残基457,488、および567の少なくとも一つ;少なくとも残基503,505,457,488、および567と相互作用する。
「分子スカフォード」または「スカフォード」により、それに対し一以上の付加的な化学的成分が共有結合的に結合されるか、修飾されるか、共通した構造要素をもつ複数の分子を形成するべく除去されることが可能な、単一の標的結合性分子が意味される。該成分は、これに限定されないが、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メチル基、ニトロ基、カルボキシル基、または、本出願において列挙されているがそれに限定されない任意の他のタイプの分子群、を含むことが可能である。分子スカフォードは、少なくとも一つの標的分子に、好ましくは標的ファミリー、たとえば、タンパク質ファミリー中の複数の分子に結合する。好ましい標的分子は、酵素および受容体、ならびに他のタンパク質を含む。スカフォードの好ましい特徴は、標的分子結合部位において、スカフォード上の一以上の置換基が標的分子結合部位の結合ポケット内に位置されるように結合すること;特に合成反応により化学的に修飾されることが可能な、たとえば、コンビナトリアル・ライブラリが容易に構築され得るような、化学的に扱いやすい構造を有すること;タンパク質結合部位へのスカフォードの結合を妨害しない成分が、結合されることが可能な化学的位置を有することであって、スカフォードまたはライブラリメンバーがリガンドを形成するべく修飾され、所望の付加的な特徴を実現すること、たとえば、リガンドが細胞内および/または特定の臓器へ活発に輸送されることを可能にするか、またはリガンドがさらなる分析に向けてクロマトグラフィーカラムへ結合されることを可能にすること、を含む。したがって、分子スカフォードは、結合親和性および/または特異性、あるいは他の薬理学的特性を改良するための修飾前の、同定された標的結合性分子である。
用語「スカフォードコア」は、種々の置換基がその上へ結合されることが可能な、分子スカフォードのコア構造を指す。したがって、一つの特定の化学種の多数のスカフォード分子については、スカフォードコアはすべてのスカフォード分子に共通である。多くの場合、スカフォードコアは一以上の環構造からなるか、または含むであろう。
「結合部位」により、非共有結合によってリガンドがそこへ結合することが可能な、標的分子の領域が意味される。結合部位は、特定の形状を具現化しており、結合部位内に存在する多数の結合ポケットをしばしば含有する。特定の形状はしばしば、タンパク質ファミリーのようなあるクラスの分子の中に保存されている。クラス内の結合部位もまた、たとえば、化学的成分、結合ポケットの存在、および/または結合部位または結合部位のいくらかの部分の静電荷といった、保存された構造を含むことも可能であり、それらすべてが結合部位の形状に影響を及ぼすことが可能である。
「結合ポケット」により、結合部位内の特定の体積が意味される。結合ポケットはしばしば、結合部位中の特定の形状、くぼみ、または腔であることが可能である。結合ポケットは、イオン−、水素結合、または分子間のファンデルワールス相互作用に貢献する基のような、別の分子の非共有結合において重要な、特定の化学基または構造を含有することが可能である。
「方位」により、標的分子に結合した結合性化合物に関連して、結合部位および/または、結合部位を少なくとも部分的に定義している標的分子の原子、典型的には一以上の結合ポケットおよび/または一以上の結合ポケットを定義している原子、に対する結合性化合物(その構成原子の少なくともいくつかに関連して定義されることが可能な)の空間的関係が意味される。
本発明の標的分子の状況においては、用語「結晶」は、X線結晶学に適したタイプの標的分子の規則的な集合体を指す。すなわち、X線のビームを当てた場合、集合体はX線回折パターンを生じる。したがって、結晶はアグロメレーションまたは、回折パターンを生じない他の標的分子複合体から区別される。
「共結晶」により、標的分子へ非共有結合により結合され、X線またはタンパク質結晶学による分析に適した結晶形で存在する、化合物、分子スカフォード、またはリガンドの複合体が意味される。好ましい態様においては、標的分子−リガンド複合体は、タンパク質−リガンド複合体であることが可能である。
句「結合親和性または結合特異性を変える」は、第一の化合物の、別のものに関する結合定数を変えること、および/または、第一の化合物の第二の化合物に関する結合レベルを、第一の化合物の第三の化合物に関する結合レベルに比較して変えること、を各々指す。たとえば、特定のタンパク質に関する化合物の結合特異性は、該特定のタンパク質に対する結合の相対レベルが、無関係のタンパク質に対する化合物の結合に比較して増大された場合に増大される。
試験化合物、結合性化合物、およびモジュレーター(リガンド)に関連して本文において用いられるように、用語「合成する」および同様の用語は、一以上の前駆物質からの化学的合成を意味する。
「分子スカフォードの化学構造が修飾される」というフレーズは、誘導体分子が、分子スカフォードのそれとは異なる化学構造を有するが、共通したコアの化学構造特性をなお含んでいることを意味する。このフレーズは、必ずしも分子スカフォードが該誘導体の前駆物質として使用されることを意味しない。
「アッセイすること」により、実験条件の作成および、該実験条件の特定の結果に関してデータを収集することが意味される。たとえば酵素は、検出可能な基質に対して作用するその能力に基づいてアッセイされることが可能である。化合物またはリガンドは、たとえば、特定の標的分子または複数の分子へ結合するその能力に基づきアッセイされることが可能である。
いくつかの化合物が、PYK2の分子スカフォードおよび結合性化合物として同定されている。したがって、もう一つの観点においては、本発明はPYK2に結合するリガンドを同定する方法であって、本文において記述された式Iのコア構造を含む誘導体化合物が、親化合物に比較して変えられた結合親和性または特異性または双方をもつPYK2に、結合するかどうかを測定することを含む方法を提供する。
式Iの化合物について、用語「コア構造」は、式Iの化合物の記述の一部として略図的に示された環構造を指すが、置換基は除外する。より一般的には、「コア構造」は化合物のセットに共通した特徴的な化学構造、特に、そのセットの化合物において可変の置換基をもつもの以外の化学構造を指す。
化合物の「セット」により、化合物の集まりが意味される。化合物は構造的に関係があってもなくてもよい。
もう一つの観点においては、PYK2についての構造情報はまた、PYK2構造の電子表現からホモロジーモデルを製することにより、別のキナーゼ、たとえばFAKの構造測定を支援するべく用いられることが可能である。
典型的には、かかるホモロジーモデルの作成は、PYK2と他の興味のキナーゼとの間で保存アミノ酸残基を同定すること;PYK2構造内の多数の保存アミノ酸の原子座標を、他のキナーゼの対応するアミノ酸へ転移して、そのキナーゼの粗構造を提供すること;および他のキナーゼ中の残りのアミノ酸の構造の電子表現を用いて、他のキナーゼの残りを表す構造を構築すること、を含む。特に、保存残基に関する表1および表2からの座標が使用されることが可能である。結合部位における保存残基、たとえば、PYK2残基503、505、457、488、567、および554が使用可能である。
キナーゼ構造の他の部分の開発を支援するべく、ホモロジーモデルもまた利用されるか、または、キナーゼの一以上の結晶からの低解像度X線回折データにフィットされ、たとえば保存領域の結合を支援し、および/またはポリペプチドの末端部分に関してより良く座標を規定することが可能である。
使用されるPYK2構造情報は、完全長の野生型、天然に生じる変異体(たとえば、アレル変異体およびスプライス変異体)、野生型または天然に生じる変異体のトランケートされた変異体、および完全長またはトランケートされた野生型または天然に生じる変異体の突然変異体(一以上の部位において突然変異されることが可能)を含めた種々多様なPYK2変異体に関して、であることが可能である。たとえば、種々の他のキナーゼ構造により近いPYK2構造を提供するためには、結合部位中の保存残基に対する突然変異を含有する突然変異したPYK2(または複数のかかる突然変異)が使用されることが可能である。
もう一つの態様においては、本発明は、たとえば表1または表2に記述されたような原子座標を有している、PYK2キナーゼドメインのような長さの減じられたPYK2であってもよい、PYK2の結晶形を提供する。結晶形は、一以上の重金属原子、たとえばX線結晶学に有用な原子、を含有することが可能である。結晶形はまた、共結晶中の結合性化合物、たとえば、一以上のPYK2残基、残基503、505、457、488、567、および554か、またはこれら残基の任意の2個、任意の3個、任意の4個、任意の5個、または6個すべてと相互作用する結合性化合物も含むことが可能であり、またたとえば式Iの化合物であることが可能である。PYK2結晶は、種々の環境中、たとえば、結晶学プレート中、X線結晶学用にマウントされ、および/またはX線ビーム中にあることが可能である。PYK2は種々の形状、たとえば本文において記述された、野生型、変異体、トランケートされた、および/またはマウントされた形状のものでよい。
本発明はさらに、長さの減じられたPYK2、たとえばPYK2キナーゼドメイン、およびPYK2結合性化合物でもよい、PYK2の共結晶に関係する。有利なことに、かかる共結晶は、少なくとも3オングストローム、2.5オングストローム、2.0オングストローム、または1.8オングストロームまでのPYK2の構造測定を可能にするべく充分なサイズおよび品質のものである。共結晶は、たとえば、結晶学プレート中、X線結晶学用にマウントされ、および/またはX線ビーム中にあることが可能である。かかる共結晶は、たとえば、PYK2と結合性化合物との間の相互作用に関する構造情報の取得に有利である。
PYK2結合性化合物は、少なくとも一つのPYK2残基503、505、457、488、567、および554か、またはこれら残基の任意の2、3、4、5、または全6個と相互作用する化合物を含むことが可能である。PYK2に結合する代表的な化合物は、式Iの化合物を含む。
同様に、さらなる観点において、PYK2結晶および共結晶を得るための方法が提供される。一つの観点においては、PYK2キナーゼドメインの結晶を得るための方法であって、PYK2キナーゼドメインタンパク質を、5〜20mg/ml、好ましくは8〜12mg/mlにおいて、以下に記述される結晶化条件か、または実質的に:
2〜10%(たとえば、8%)ポリエチレングリコール(PEG)8000、0.2
M酢酸ナトリウム、0.1%カコジル酸ナトリウムpH6.5、20%グルセロール、
に等しい条件下に置くことによる方法が提供される。
一般に、PYK2はタンパク質および適当な緩衝液を含有する溶液中にあるであろう。たとえば、溶液は20mMTris−HClph8.0、150mMNaCl、14mMβ−メルカプトエタノール(BME)、および1mMジチオスレイトール(DTT)を含有することが可能である。
結晶化条件は、ハンプトン・リサーチ(Hampton Research)(カリフォルニア州、リバーサイド)スクリーニングキット1および/または2のような、スクリーニングキットを用いて、最初に同定されることが可能である。結果として結晶を生じる条件が選択され、証明された結晶化条件にもとづき結晶化条件が最適化されることが可能である。続く結晶学を支援するため、PYK2はセレノメチオニン標識されることが可能である。また、前文に示されたように、PYK2は任意の多様な形状、たとえば、トランケートされてPYK2キナーゼドメインを生じてよく、それは種々の長さのものであるべく選択されることが可能である。
化学的濃度に関連して、用語「ほぼ(approximately)」および「約(about)」は、示された値の±20%を意味する。
結晶化条件に関連して、用語「実質的に等しい」は、同定された結晶化条件の、およその範囲の条件を意味しており、溶液成分の濃度は、定められた値の±10%以内であり、pHは、±1pH単位、好ましくは±0.5pH単位であり、ポリマー、塩、および緩衝液置換物は、タンパク質結晶化の当業者が、置換された成分をもつ溶液もまた結果として結晶化を生じる見込みがあると認識する限り作成されてよいものとする(再最適化が有用であってもよいが)。かかる置換の実例は、特定のサイズのPEGがやや小さいかより大きいPEG製品によるか、またはより大きいおよびより小さいPEG製品双方の混合物による置換であることが可能である。
関連する観点は、長さの減じられたPYK2と、結合性化合物とのPYK2の共結晶を得るための方法であって、PYK2タンパク質を5〜20mg/mlにおいて、結合性化合物の存在下に、結晶発生に充分な時間をかけて、上述の条件と実質的に等しい結晶化条件に置くことによる方法を提供する。結合性化合物は、化合物の性質に依存して種々の濃度、たとえば、0.5〜1.0mMの最終濃度で添加されてよい。多くの場合、結合性化合物はジメチルスルホキシド(DMSO)のような有機溶媒中にあるであろう。好ましくはないが、結合性化合物はまた、たとえば通常の技術を用いて、PYK2結晶内へ浸漬されることが可能である。
もう一つの観点においては、PYK2に対して活性のある化合物を用意することはまた、PYK2活性を調整するための方法であって、PYK2を、PYK2に結合しかつ残基503、505、457、488、567、および554の一以上の残基と相互作用する化合物、たとえば式Iの化合物と接触させることによる方法も提供する。化合物は、好ましくは、PYK2の活性を少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、30%、40%、または50%まで調整するべく充分なレベルで提供される。多くの態様において、化合物は約1μM、100μM、または1mMの濃度か、あるいは1〜100nM、100〜500nM、500〜1000nM、1〜100μM、100〜500μM、または500〜1000μMの範囲内であろう。
本文において用いられるように、用語「調整すること」または「調整する」は、生物活性、特にPYK2のような特定の生体分子に関連した生物活性を変える作用を指す。たとえば、特定の生体分子のアゴニストまたはアンタゴニストは、その生体分子、たとえば、酵素の活性を調整する。
用語「PYK2活性」は、特にキナーゼ活性を含めたPYK2の生物活性を指す。
モジュレーターであるかまたはそうであってもよい化合物の、使用、試験、またはスクリーニングに関連して、用語「接触させること」は、化合物が、特定の分子、複合体、細胞、組織、臓器、または他の特定の物質に対して充分に近づけられ、化合物と他の特定の物質との間の潜在的な結合性相互作用および/または化学反応が起こり得るようにすることを意味する。
関連する観点において、本発明は、PYK2活性の調整がそれに対して治療または予防効果を提供する疾病または症状、たとえば異常なPYK2キナーゼ活性によって特徴づけられる疾病または症状、を患っているかまたはそのリスクにある患者を治療するための方法であって、少なくとも2、または3以上のPYK2残基、残基503、505、457、488、567、および554と相互作用する化合物(たとえば、式Iの化合物)を患者へ投与することを含む方法を提供する。
治療されてもよいか、または細胞を予防した特定の疾病または障害は:重症筋無力症、神経芽細胞腫、コレラ毒、百日咳毒素、またはヘビ毒といった神経毒によって引き起こされる障害;急性巨核球性骨髄症;血小板減少症;発作、卒中、頭部外傷、脊髄損傷といった中枢神経性のもの、心停止または新生児困難症のような低酸素誘導性の神経細胞損傷、てんかん、アルツハイマー病や、ハンチントン病、およびパーキンソン病といった神経変性性疾患、痴呆、筋緊張症、抑うつ、不安、パニック障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス性障害、統合失調症、悪性症候群、および トゥレット症候群を含む。PYK2阻害剤によって治療されてもよい症状は、てんかん、統合失調症、小児における極度の多動、慢性疼痛、および急性疼痛を含む。PYK2エンハンサー(たとえばホスファターゼ阻害剤)によって治療されてよい症状の実例は、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、他の神経変性性疾患、および片頭痛を含む。
好ましい障害は、てんかん、卒中、統合失調症、およびパーキンソン病を含むが、その理由は、これらの障害とカリウムチャンネルの機能との間に、充分に確立された関係があるからである。
さらに、PYK2は細胞増殖性疾患を治療するための治療法の標的として作用することが可能である。したがって、いくつかの態様においては、疾病または症状は、良性または悪性の腫瘍、乾癬、白血病(骨髄芽球性白血病)、リンパ腫、前立腺癌、肝臓癌、乳癌、肉腫、ニューロブラスティマ(neuroblastima)、ウィルムス腫瘍、膀胱癌、甲状腺癌、乳癌(mammacarcinoma)のような上皮性起源の新生物、造血細胞の癌、または、たとえば持続感染(たとえば、結核、梅毒、真菌症)、内因性(たとえば、血漿脂質の上昇)または外因性(たとえば、シリカ、アスベスト、タバコタール、縫合糸)毒素への長期間の暴露、および自己免疫反応(たとえば、リューマチ性関節炎、全身性狼瘡エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬)からの結果として生じる慢性炎症性疾患または症状である。したがって、慢性炎症性疾患は、リューマチ性関節炎、再狭窄、乾癬、多発性硬化症、外科的癒着、結核、および、喘息pheumoconiosis、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープ、および肺線維症のような、慢性炎症性の肺および気道疾患といった、多くの一般的な医学的症状を含む。PYK2モジュレーターもまた、血腫性のプラークおよび最狭窄の発生の阻害において、最狭窄の制御において、抗転移薬として、糖尿病合併症の治療において、免疫抑制剤として、また血管形成において、PYK2キナーゼが特定の疾病または症状に関与する範囲内で有用であってよい。
PYK2の結晶は開発および分析されているため、もう一つの観点は、PYK2(長さの減じられたPYK2であってもよい)の、たとえば表1または表2においてPYK2についてリストされた座標に対応する原子座標表現を含んでいる電子表現か、または二次構造および/または鎖のフォールディングを示しているものであって、保存された活性部位の残基も示してよいもの、といった図式表現に関する。PYK2は、野生型、アレル変異体、突然変異型、または、たとえば本文に記述されたような修飾された形状でよい。
電子表現はまた、特定の残基の電子表現を他の残基の電子表現で置き換えることにより、修飾されることが可能である。したがって、たとえば表1または表2においてPYK2についてリストされた座標に対応する原子座標表現を含んでいる電子表現は、異なるアミノ酸により、結合部位中の特定の保存残基に関する座標の置換によって修飾されることが可能である。同様にPYK2表現は、FAKキナーゼに関する構造の表現を提供するべく、アミノ酸残基の各々の置換、挿入、および/または欠失によって修飾されることが可能である。修飾または複数の修飾の後、全体構造の表現は、修飾または複数の修飾によって影響されるかもしれない既知の相互作用を可能にするべく調整されることが可能である。ほとんどの場合、一残基より多くを含む修飾は、反復方式において実施されるであろう。
さらに、結合部位内のPYK2結合性化合物または試験化合物、たとえば式Iの化合物の電子表現が含まれることが可能である。
同様に、関連する観点において、本発明はPYK2キナーゼ、結合部位(活性部位であることが可能)、またはキナーゼドメインの一部分、たとえば、残基419−691の電子表現に関係する。結合部位またはキナーゼドメインは、種々の方法で、たとえば、結合部位周辺の残基の原子座標の表現として、および/または結合部位表面輪郭として、表現されることが可能であり、結合部位における特定の残基、たとえば、保存残基の結合特性の表現を含むことが可能である。PYK2の電子表現に関しては、結合性化合物または試験化合物は、結合部位内に存在してよく;結合部位はPYK2の野生型、変異体、突然変異型、または修飾された形状のものでよい。
さらにもう一つの観点においては、PYK2の構造情報はもう一つのキナーゼ(FAKのような)のためのホモロジーモデル(PYK2に基づく)において使用可能であり、したがってあるキナーゼについて、PYK2をベースとするホモロジーモデルの電子表現を提供する。たとえば、ホモロジーモデルは、保存アミノ酸残基について、表1からの原子座標を利用することが可能である。特定の態様においては;PYK2の野生型、変異体、修飾された形状、または突然変異型の原子座標は、たとえば、本文に記述された野生型、変異体、修飾された形状、または突然変異型を含めて使用可能である。特に、PYK2構造は、FAKキナーゼに関し、非常に類似したホモロジーモデルを提供する。したがって、特定に態様においては、本発明はPYK2をベースとするFAKのモデルを提供する。
なおもう一つの観点においては、本発明は修飾されたPYK2の原子座標の電子表現を含む、修飾されたPYK2結晶構造の電子表現を提供する。一つの代表的な態様においては、表1または表2の原子座標は、特定のアミノ酸についての原子座標を、異なるアミノ酸についての原子座標で置き換えることにより、修飾されることが可能である。修飾は、置換、欠失(たとえば、C−末端および/またはN−末端欠失)、挿入(中間、C−末端、および/またはN−末端)、および/または鎖修飾を含むことができる。
もう一つの観点においては、PYK2構造情報は、PYK2構造を分析して、生物学的薬剤を形成するための少なくとも一つのサブ構造を同定することにより、PYK2をベースとする有用な生物学的薬剤を開発するための方法を提供する。かかるサブ構造は、抗体形成のためのエピトープを含むことが可能であり、方法は、たとえば、ウサギ、モルモット、ブタ、ヤギ、またはウマといった哺乳類において、エピトープ提示組成物を注射することにより、エピトープに対する抗体を生じることを含む。サブ構造はまた、そこでの突然変異がPYK2の活性を変えることが期待されるかまたは知られている突然変異部位を含むことも可能であり、方法はその部位において突然変異を引き起こすことを含む。さらになお、サブ構造はまた、離れた成分、たとえば、ペプチド、ポリペプチド、固形相物質(たとえば、ビーズ、ゲル、クロマトグラフィの媒体、スライド、チップ、プレート、およびウエル表面)、リンカー、および標識(たとえば、蛍光体のような直接標識か、またはビオチンまたは他の特異結合対の構成員のような間接標識)に付着するための付着点を含むことができる。方法は、離れた成分を付着することを含むことが可能である。
もう一つの観点においては、本発明は、PYK2結合部位の電子表現において、ある化合物の少なくとも一つの電子表現をフィットさせることにより、潜在的なPYK2、結合性化合物を同定するための方法を提供する。結合部位の表現は、より大きい部分かまたはPYK2分子全体の電子表現の一部であってよく、あるいは結合部位または活性部位のみの表現であってもよい。電子表現は上記のように、または他に本文において記述されたように記述されてよい。
特定の態様においては、方法は、化合物のコンピュータデータベースからのコンピュータ表現を、PYK2キナーゼの活性部位のコンピュータ表現とフィッティングすることを含んでおり、PYK2分子と複合した化合物のコンピュータ表現を移すこと、および好適な幾何学的フィットおよびエネルギー的に好適な相補性相互作用に基づき、活性部位に最もフィットする化合物を潜在的な結合性化合物として同定することを含む。
他の態様においては、方法は、一以上の化学基の欠失または付加または双方により、PYK2分子と複合した化合物のコンピュータ表現を修飾すること;化合物のコンピュータデータベースからのコンピュータ表現を、PYK2分子の活性部位のコンピュータ表現とフィッティングすること;および好適な幾何学的フィットおよびエネルギー的に好適な相補性相互作用に基づき、活性部位に最もフィットする化合物を潜在的な結合性化合物として同定することを含む。
さらに別の態様においては、方法は、PYK2と複合した化合物のコンピュータ表現を移すこと、および、化合物検索コンピュータプログラムを用いて、複合した化合物に対する構造上の類似性をもつ化合物についてデータベースを検索すること、または化合物構築コンピュータプログラムを用いて、類似した化学構造をもつ複合化合物の部分を置き換えることを含む。
化合物のフィッティングは、化合物が一以上のPYK2残基、残基503、505、457、488、567、および554と相互作用するかどうかを測定することを含むことができる。フィッティング用に選ばれた化合物か、またはPYK2と複合しているものは、たとえば式Iの化合物であることが可能である。
もう一つの観点においては、本発明は、PYK2キナーゼ結合性化合物を付着成分へ付着させるための方法、ならびにPYK2キナーゼ結合性化合物上の付着部位を同定するための方法に関する。方法は、PYK2の結合部位へ結合した結合性化合物について、付着成分の付着のためのエネルギー的に可能な部位を同定すること、および該化合物またはその誘導体を、エネルギー的に可能な部位において付着成分へ付着させることを含む。
結合性化合物と関連して用いられるように、「付着成分」は、標的分子との結合以外に機能性を付加するため、結合性化合物へ付着される成分であって、かかる結合を妨害しないものを指す。実例は、直接および間接標識、リンカー、およびハプテンならびに他の特異的な認識成分を含む。リンカー(トレースレスリンカーを含めて)は、たとえば、固形相への、またはもう一つの分子または他の成分への付着のため、取入れられることが可能である。かかる付着は、たとえば、複数の化合物の中でのコンビナトリアル合成において、固相媒体へ付着されたリンカー上で化合物または誘導体を合成することにより、形成されることが可能である。同様に、固相媒体への付着は、親和性媒体(たとえば、アフィニティクロマトグラフィー用の)を提供することが可能である。標識は蛍光体のような直接的に検出可能な標識か、または特異的な結合対の構成員、たとえばビオチンのような、間接的に検出可能なものであることが可能である。
PYK2キナーゼ結合性化合物上のエネルギー的に可能な部位を同定する能力はまた、関連する観点において、好ましくは、修飾された化合物のPYK2への結合に関してエネルギー的に可能な部位において付着されたリンカーをもつ、修飾された結合性化合物、たとえば式Iの化合物を提供する。リンカーは、上記の付着成分に対して付着されることが可能である。
もう一つの観点は、修飾されたPYK2を、天然のPYK2よりも、もう一つのキナーゼに類似させる修飾を含んでおり、かつ他の突然変異または他の修飾も含むことができる、修飾されたPYK2ポリペプチドに関係する。種々の態様において、ポリペプチドは、完全長のPYK2ポリペプチドを含み、修飾されたPYK2結合部位を含み、保存領域を含めてPYK2に由来する少なくとも20、30、40、50、60、70、または80個の近接したアミノ酸残基を含む。
本発明のなおもう一つの観点は、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の任意の1、2、3、4、5、または6個にマッチする保存残基を含むキナーゼ用のリガンドを開発するための、式Iの化合物が該キナーゼに結合するかどうかを測定することによる方法に関する。方法は、化合物がキナーゼの活性を調整するかどうかを測定することも含むことができる。好ましくは、キナーゼは、同じ長さのキナーゼドメインセグメントにわたり、少なくとも50、55、60、または70%の同一性を有する。
特定の態様においては、測定は、キナーゼの結合部位における化合物のコンピュータフィッティングを含み、および/または、方法はキナーゼと化合物との共結晶を形成することを含む。かかる共結晶は、化合物のキナーゼとの結合方位を測定するために使用され、および/または、キナーゼについての、たとえば、結合部位および相互作用性アミノ酸残基について構造情報を提供することが可能である。かかる結合方位、および/または他の構造情報は、X線結晶学を用いて完成されることが可能である。
あるキナーゼドメイン中の特定の保存されたアミノ酸残基の「マッチング」への言及は、そのキナーゼドメインのアミノ酸配列の最大アラインメントにおいて、別のキナーゼドメインに対し、同じアミノ酸であるかまたは同類置換を表す特定の残基をもって配列された、一つのアミノ酸残基があることを意味している。好ましくは、アミノ酸残基のマッチングは、バックボーン原子に関する結晶構造原子座標のオーバーレイにおいて、5オングストロームrms以内である。
本発明はまた、PYK2、たとえば、PYK2キナーゼ活性に、結合および/または調整する(たとえば、阻害する)化合物を提供する。したがって、PYK2結合性化合物、分子スカフォード、およびリガンドまたはモジュレーターを含む観点および態様において、化合物は弱い結合性化合物;中程度の結合性化合物;強い結合性化合物であり;化合物はPYK2残基503、505、457、488、567、および544の一以上と相互作用し;化合物は低分子であり;化合物は複数の異なるキナーゼ(たとえば、少なくとも3、5、10、15、20の異なるキナーゼ)に結合する。特定の態様においては、本発明は、以下に記述される式Iの化合物に関する。
したがって、いくつかの態様においては、本発明は式Iの化合物に関する:
Figure 2007524374
[式中、
1は水素、トリフルオロメチル、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルケニル、任意に置換された低級アルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアラルキル、またはNR1617であり;
2は水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルケニル、任意に置換された低級アルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアラルキル、−C(X)R20、C(X)NR1617、または−S(O2)R21であり;
3は水素、トリフルオロメチル、任意に置換されたアルコキシル、任意に置換されたチオアルコキシ、任意に置換されたアミン、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルケニル、任意に置換された低級アルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアラルキルであり;
16およびR17は、独立して水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルケニル、任意に置換された低級アルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロアラルキルであり;
20はヒドロキシル、任意に置換された低級アルコキシ、任意に置換されたアミン、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルケニル、任意に置換された低級アルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、または任意に置換されたヘテロアラルキルであり;
21は任意に置換された低級アルコキシ、任意に置換されたアミン、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルケニル、任意に置換された低級アルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたアラルキル、任意に置換されたヘテロアリール、または任意に置換されたヘテロアラルキルであり;
X=O、またはSである。]
Y=S、O、NR1617、−C(X)R20、または任意に置換されたアルキルである。
式Iおよび置換基の記述において、下つき文字および上つき文字は同等としてみなされるべきである。
式Iの化合物に関係するいくつかの態様においては、XおよびYはOであり;XはOでありかつYはSであり;XはOでありかつYはNR1617であり;XはOでありかつYは−C(X)R20であり;XはSでありかつYはOであり;XはSでありかつYはSであり;XはSでありかつYは(Yは)NR1617であり;XはSでありかつYは−C(X)R20である。
いくつかの態様においては、X=O、Y=O、かつR1は水素であり;X=O、Y=O、かつR2は水素であり;X=O、Y=S、かつR1は水素であり;X=O、Y=S、かつR2は水素であり;X=O、Y=NR1617、かつR1は水素であり;X=O、Y=S、かつR2は水素であり;X=O、Y=NR1617、かつR2は水素であり;X=O、Y=−C(X)R20、かつR1は水素であり;X=O、Y=−C(X)R20、かつR2は水素であり;X=O、Y=任意に置換されたアルキル、かつR1は水素であり;X=O、Y=任意に置換されたアルキル、かつR2は水素である。
いくつかの態様においては、X=S、Y=O、かつR1は水素であり;X=S、Y=O、かつR2は水素であり;X=S、Y=S、かつR1は水素であり;X=S、Y=S、かつR2は水素であり;X=S、Y=NR1617、かつR1は水素であり;X=S、Y=S、かつR2は水素であり;X=S、Y=NR1617、かつR2は水素であり;X=S、Y=−C(X)R20、かつR1は水素であり;X=S、Y=−C(X)R20、かつR2は水素であり;X=S、Y=任意に置換されたアルキル、かつR1は水素であり;X=S、Y=任意に置換されたアルキル、かつR2は水素である。
いくつかの態様においては、R1は水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換されたシクロアルキル、またはNR1617である。
いくつかの態様においては、R2は水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換されたシクロアルキル、C(X)NR1617、または−S(O2)R21である。
本発明の付加的な観点は、治療上有効な量の式Iの化合物、および少なくとも一つの製薬上許容される担体または賦形剤を含む薬物製剤に関する。組成物は、複数の異なる薬理学的に活性のある化合物を含むことができる。
「ハロ」または「ハロゲン」は、単独でまたは組み合せにおいて、すべてのハロゲン、すなわち、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)、ヨード(I)を意味する。
「ヒドロキシル」は、−OH基を指す。
「チオール」または「メルカプト」は、−SH基を指す。
「アルキル」は、単独でまたは組み合せにおいて、1から20個まで、好ましくは1〜15個の炭素原子を含有するアルカンから誘導されるラジカルを意味する(特に定義されない限り)。それは直鎖アルキル、分枝アルキル、またはシクロアルキルである。好ましくは、直鎖または分枝アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチルなどといった、1〜15個の、好ましくは1〜8個、さらに好ましくは1〜6個、なおさらに好ましくは1〜4個、および最も好ましくは1〜2個の炭素原子を含有する。用語「低級アルキル」は、本文において、直前に記述された直鎖アルキル基を記述するべく用いられる。好ましくは、シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどといった、環あたり3〜8、さらに好ましくは3〜6環員の単環、二環、または三環系である。アルキルはまた、シクロアルキル部分を含むかまたは割り込まれた、直鎖または分枝アルキル基も包含する。直鎖または分枝アルキル基は、安定な化合物を生じるべく、任意の有効な場所に付着される。この実例は、4−(イソプロピル)−シクロヘキシルエチルか、または2−メチル−シクロプロピルペンチルを含むが、それに制限されない。置換アルキルは、1〜3個の基か、または、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基により一または二置換されたアミノ、アミジノ、任意にアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル基により置換された尿素、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基によりN−一またはN,N−二置換されたアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの置換基により、独立して置換された、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、またはシクロアルキル基(先に定義された)である。
「アルケニル」は、単独でまたは組み合せにおいて、2〜20個、好ましくは2〜17個、さらに好ましくは2〜10個、さらになお好ましくは2〜8個、最も好ましくは2〜4個の炭素原子と、少なくとも一つの、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、最も好ましくは1個の、炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖、分枝鎖、または環状の炭化水素を意味する。シクロアルキル基の場合、一より多い炭素−炭素二重結合の縮合は、環に芳香族性を与えないようにする。炭素−炭素二重結合は、シクロプロピルを除いて、シクロアルキル部分か、または直鎖または分枝鎖の部分に含まれてよい。アルケニル基の実例は、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルアルキルなどを含む。置換アルケニルは、安定な化合物を生じるべく任意の有効な場所に付着された、1〜3個の基か、または、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基により一または二置換されたアミノ、アミジノ、任意にアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル基により置換された尿素、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基によりN−一またはN,N−二置換されたアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニルなどの置換基により、独立して置換された、直鎖アルケニル、分枝アルケニル、またはシクロアルケニル基(先に定義された)である。
「アルキニル」は、単独でまたは組み合せにおいて、2〜20個、好ましくは2〜17個、さらに好ましくは2〜10個、さらになお好ましくは2〜8個、最も好ましくは2〜4個の炭素原子と、少なくとも一つの、好ましくは1個の、炭素−炭素三重結合を含有する、直鎖、分枝鎖の炭化水素を意味する。アルキニル基の実例は、エチニル、プロピニル、ブチニルなどを含む。置換アルキニルは、安定な化合物を生じるべく任意の有効な場所に付着された、1〜3個の基か、または、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基により一または二置換されたアミノ、アミジノ、任意にアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル基により置換された尿素、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基によりN−一またはN,N−二置換されたアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの置換基により、独立して置換された、直鎖アルキニルまたは分枝鎖アルケニル(先に定義された)である。
「アルキルアルケニル」は、基−R−CR'=CR'''R''''を指し、Rは低級アルキルか、または置換低級アルキルであり、R'、R'''、R''''は、独立して水素、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、アシル、アリール、置換アリール、ヘタリル、または置換ヘタリル(下文に定義された)でよい。
「アルキルアルキニル」は、基−RCCR'を指し、Rは低級アルキルか、または置換低級アルキルであり、R'は、水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アシル、アリール、置換アリール、ヘタリル、または置換ヘタリル(下文に定義された)である。
「アルコキシ」は、基−ORを意味し、Rは低級アルキル、置換低級アルキル、アシル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、または置換シクロヘテロアルキル(定義された)である。
「アルキルチオ」または「チオアルコキシ」は、基−SR、−S(O)n=12−Rを意味し、Rは、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、または置換アラルキル(本文において定義された)である。
「アシル」は、基−C(O)Rを意味し、Rは水素、低級アルキル 置換低級アルキル、アリール、置換アリール(本文において定義された)などである。
「アリールオキシ」は、基−OArを意味し、Arはアリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリール基(本文において定義された)である。
「アミノ」または置換アミンは、基NRR'を意味し、RおよびR'は、独立して水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、ヘタリル、または置換ヘテロアリール(本文において定義された)、アシル、またはスルホニルでよい。
「アミド」は、基−C(O)NRR'を意味し、RおよびR'は、独立して水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、ヘタリル、置換ヘタリル(本文において定義された)でよい。
「カルボキシル」は、基−C(O)ORを意味し、Rは水素、低級アルキル、置換低級アルキル、アリール、置換アリール、ヘタリル、および置換ヘタリル(本文において定義された)である。
「アリール」は、単独でまたは組み合せにおいて、任意に、好ましくは5〜7、さらに好ましくは5〜6環員のシクロアルキルとカルボサイクリックに融合され、および/または、任意に、1〜3個の基か、または、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基により一または二置換されたアミノ、アミジノ、任意にアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル基により置換された尿素、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基によりN−一またはN,N−二置換されたアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの置換基により置換された、フェニルまたはナフチルを意味する。
「置換アリール」は、一以上の官能基、たとえば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、ヘテロアリール、置換へテロアリール、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで任意に置換されたアリールを指す。
「ヘテロ環」は、単環(たとえば、モルフォリノ、ピリジル、またはフリル)または多数の縮合環(たとえば、ナフトピリジル(naphthpyridyl)、キノキサリル、キノリニル、インドリジニル、またはベンゾ[b]チエニル)を有しており、かつ環内にN、O、またはSといった少なくとも一つのヘテロ原子を有しており、任意に未置換か、または、たとえばハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどにより置換されることが可能な、飽和、未飽和、または芳香族炭素環基を指す。
「ヘテロアリール」は、独立してO、S、およびNからなる群より選ばれた、一以上の、好ましくは1〜4個の、さらに好ましくは1〜3個、さらになお好ましくは1〜2個のヘテロ原子を含有しており、かつ1〜3個の基か、または、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アシルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基により一または二置換されたアミノ、アミジノ、任意にアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル基により置換された尿素、任意にアルキル、アリール、またはヘテロアリール基によりN−一またはN,N−二置換されたアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノなどの置換基により任意に置換された、5または6環原子を含有する単環芳香環構造か、または8〜10原子を有する二環芳香族基を意味する。ヘテロアリールはスルフィニル、スルホニル、および第三級環窒素のN−酸化物といった、酸化されたSまたはNを含むことも意図される。ヘテロアリール環の付着の場所は、安定した芳香環が保持されるよう、炭素または窒素原子である。ヘテロアリール基の実例は、ピリジニル、ピリダジニル、プラジニル、キナゾリニル、プリニル、インドリル、キノリニル、ピリミジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサチアジアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、トリアジニル、フラニル、ベンゾフリル、インドリルなどである。置換ヘテロアリールは、安定な化合物を生じるべく、有効な炭素または窒素において付着された置換基を含有する。
「ヘテロシクリル」は、単独でまたは組み合せにおいて、5から10個までの原子を有しており、環内の1から3個までの炭素原子がヘテロ原子O、S、またはNで置換されており、任意にベンゾ融合されるかまたは5〜6環員の融合ヘテロアリールであり、および/または、シクロアルキルの場合のように任意に置換されている、非芳香族シクロアルキル基を意味する。ヘテロシクリルはまた、スルフィニル、スルホニル、および第三級環窒素のN−酸化物といった、酸化されたSまたはNを含むことが意図される。付着の場所は、炭素または窒素原子である。ヘテロシクリル基の実例は、テトラヒドロフラニル、ジヒドロピリジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ジヒドロベンゾフリル、ジヒドロインドリルなどである。置換ヘテロシクリルは、安定な化合物を生じるべく、有効な炭素または窒素において付着された置換基窒素を含有する。
「置換ヘテロアリール」は、一以上の官能基、たとえば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで任意に一または多置換されたヘテロ環を指す。
「アラルキル」は、基−R−Arを指し、Arはアリール基であり、Rは低級アルキルまたは置換低級アルキル基である。アリール基は任意に未置換か、または、たとえば、ハロゲン、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどにより置換されることが可能である。
「ヘテロアルキル」は、基−R−Hetを指し、Hetはヘテロ環基であり、Rは低級アルキル基である。ヘテロアルキル基は、任意に未置換か、またはたとえば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されることが可能である。
「ヘテロアリールアルキル」は、基−RHetArを指し、HetArはヘテロアリール基であり、Rは低級アルキルまたは置換低級アルキルである。ヘテロアリールアルキル基は、任意に未置換か、または、たとえば、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどにより置換されることが可能である。
「シクロアルキル」は、3〜15個の炭素原子を含有する二価の環状または多環アルキル基を指す。
「置換シクロアルキル」は、たとえば、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどをもつ一以上の置換基を含むシクロアルキル基を指す。
「シクロヘテロアルキル」は、環の一以上の炭素原子がヘテロ原子(たとえば、N、O、S、またはP)で置換されたシクロアルキル基を指す。
「置換シクロへテロアルキル」は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどといった一以上の置換基を含有する、本文に定義されたシクロへテロアルキル基を指す。
「アルキル・シクロアルキル」は、基−R−シクロアルキルを意味し、シクロアルキルはシクロアルキル基であり、Rは低級アルキルまたは置換低級アルキルである。シクロアルキル基は任意に未置換か、または、たとえばハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アセチレン、アミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されることが可能である。
「アリール・シクロヘテロアルキル」は、基−R−シクロヘテロアルキルを意味し、Rは低級アルキルまたは置換低級アルキルである。シクロヘテロアルキル基は任意に未置換か、または、たとえばハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、アミド、カルボキシル、アセチレン、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシ、ヘテロ環、置換へテロ環、ヘタリル、置換ヘタリル、ニトロ、シアノ、チオール、スルファミドなどで置換されることが可能である。
本文に記述された式Iの化合物(分子スカフォードを含めて)に加えて、付加的なタイプの化合物が、PYK2のモジュレーター(たとえば、阻害剤)として、およびさらなるPYK2リガンド開発のため、使用されることが可能である。特に、2003年9月16日出願の、Bremerらの米国出願10/664,421、および2003年9月15日出願のBremerらの米国出願60/503,277(双方とも、図面を含めてその記載全体が、本明細書に含まれ得るものとする)に記述されたタイプの化合物。
本発明の付加的な観点は、治療上有効な量の式Iの化合物と、少なくとも一つの製薬上許容される担体または賦形剤を含有する薬物製剤に関する。組成物は、複数の異なる薬理学的活性化合物を含むことができる。
さらなる観点および態様は、以下の詳細な説明およびクレイムから明らかであろう。
図1は、PYK2活性部位のリボン図の概略説明図を示す。
表が、最初に簡単に記述される。
表1は、ヒトPYK2キナーゼドメインの原子座標を提供する。本表および表2において、「ATOM」で始まる行の種々のカラムは、一番左のカラムで始まる以下の内容を有する:
ATOM:表の列に関係する成分。
Atom number:座標表内の任意の原子数の指定を指す。
Atom Name:特定の座標に存在する原子についての識別子。
Chain ID:Chain IDは、結晶中のタンパク質の一つのモノマー、たとえば鎖「A」か、または結晶中に存在する他の成分、たとえば、水についてはHOH、リガンドまたは結合性成分についてはLを指す。タンパク質モノマーの多数のコピーは、異なるチェインIdをもつであろう。
Residue Number:鎖中のアミノ酸残基数。
X、Y、Z:各々が、X、Y、およびZ座標値である。
Occupancy:原子が結晶中に観察される時間の割合を表す。たとえば、オキュパンシー=1は、原子が常に存在することを意味し;オキュパンシー=0.5は、原子がその時間の50%はその位置に存在していることを示す。
B−factor:原子の熱運動の測定値。
Element:元素の識別子。
さらに、「ANISOU」で始まる行は、異方性温度因子を提示する。異方性温度因子は、表中の「ATOM」行中の対応する等方性温度因子(B−因子)に関連する。「ANISOU」に続き、次の4つの入力は、「Atom number」、「Atom name」、「Residue name」、および「Residue number」であり、各々対応する「ATOM」行の入力と同様である。次の6つの入力は、順に異方性温度因子、U(1,1)、U(2,2)、U(3,3)、U1,2)、U(1,3)、およびU(2,3)である(104分の1にスケールされ(オングストローム2)かつ整数として提示される)。
表2は、結合部位に(5'−アデニリルイミドジホスフェート)AMPPNPのあるPYK2について原子座標を提供する。
表3は、一組の種々のメンバーの間で保存された残基の同定を提供している、ヒトPYK2を含めたいくつかのキナーゼのキナーゼドメインのアラインメントを提供する。残基番号はPYK2に関するものである。
表4は、ヒトPYK2キナーゼドメインの、核酸およびアミノ酸配列を提供する。
表5は、ATPの存在下およびいくつかのATP類似体の存在下での、PYK2キナーゼドメインのキナーゼ活性に関するアッセイ結果を提供する。
I.序
本発明は、PYK2キナーゼ構造、構造情報、および、PYK2キナーゼ活性を調整する化合物を同定するため、および他のキナーゼの構造を測定するための、関連する組成物の用途に関する。
PYK2キナーゼは、多くの疾病症状に関与している。たとえば、上記の背景において示されたように、PYK2は神経伝達物質のレギュレーターとして機能し、したがって、PYK2の調整は、かかるシグナリングを促進または阻害することが可能である。さらに、MAPキナーゼシグナル伝達活性化のための、Gタンパク質共役経路とsos/grb経路との連結におけるPYK2の関与のため。これはsrcの結合を含んでもよい。したがって、PYK2もまた細胞増殖に影響を及ぼすことが可能である。
(PYK2に関連した代表的な疾病)
前文に示されたように、PYK2活性の調整は、シグナル伝達におけるその役割に関連したもののような、種々の疾病および症状の治療および予防に有利である。結果として、PYK2阻害剤は、種々の癌、骨粗鬆症、および炎症、ならびに上記の要約において参照されたもの、および本文において他に示されたもののような他の疾病状態の治療において、治療上の適用性がある。PYK2、PYK2モジュレーターのスクリーニング、およびPYK2モジュレーターを使用するための方法は、関連するアッセイ、技術、およびデータとともに、たとえば、Duong et al.、PCT出願番号PCT/US98/02792、PCT公開番号WO/98/35056;Schlessinger et al.、PCT出願番号PCT/US98/27871、PCT公開番号WO00/40971; Lev, et al.、PCT出願番号PCT/US97/22565、PCT公開番号WO98/26054;Lev, et al.、PCT出願番号PCT/US95/15846、PCT公開番号WO96/18738に記述されており、それらはそのすべてが本文に含まれる。
(骨粗鬆症)
骨粗鬆症の活性化は、骨表面への破骨細胞の接着によって開始される。細胞骨格の再配列は、結果として明帯および分極した波状膜の形成を生じる。PYK2は、破骨細胞において高度に発現されることが見出されている(Duong et al. (1998)"Pyk2 in osteoclasts is an adhesion kinase, localized in the sealing zone, activated by ligation of alpha(v)beta3 integrin, and phosphorylated by Src kinase.(「破骨細胞におけるPyk2は、明帯に局在し、α(v)β3インテグリンの連結により活性化され、かつSrcキナーゼによりリン酸化される接着キナーゼである」)"J. Clin. Invest. 102:881-892.)。研究は、Pyk2が接着に誘導される明帯の形成に関与しており、かつ骨芽細胞の骨吸収に必要であることを示している(Duong and Rodan (1998) Integrin-mediated signaling in the regulation of osteoclast adhesion and activation.「破骨細胞の接着および活性化の調節におけるインテグリン介在性のシグナリング」"Front. Biosci. 3:757-768)。
(増殖性疾患)
もう一つの実例においては、PYK2の調整は、癌のような増殖性疾患の治療用に、たとえば、中でも造血細胞の癌のために指摘されている(Avraham et al.、PCT公開番号98/07870、これはそのすべてが参考文献として本文に取込まれている)。
(炎症)
PYK2の調整はまた、炎症反応関連性の疾患の治療に結びつけられてきたが、一般にそれらは異所性の炎症反応、たとえば、潰瘍性大腸炎および、クローン病といった炎症性腸疾患、およびリウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合型結合組織病、およびシェーグレン症候群といった結合組織疾患を有するものである(Schlessinger et al.、PCT公開番号WO 00/40971、これはそのすべてが本文に取込まれている)。病的炎症性反応は、急性炎症反応の継続か、または、持続性の軽度の炎症反応でよく、典型的には組織損傷という結果に終わる。マクロファージおよびT細胞の動員、およびサイトカイン産生といったプロセスは、直接的に炎症性病理発生の一因となることが可能である。
II.結晶性PYK2キナーゼ
結晶PYK2キナーゼ(たとえば、ヒトPYK2)は、天然の結晶、キナーゼドメイン結晶、誘導体結晶、および共結晶を含む。結晶は一般に、PYK2キナーゼ(polyeptide)に相当する実質的に純粋なポリペプチドを、結晶の形状で含む。PYK2キナーゼ機能の阻害剤の開発と関連して、PYK2キナーゼドメインを構造決定に用いることは、減少した配列の使用が構造決定を単純化することから、有利である。この目的に有用であるためには、キナーゼドメインは活性があり、および/または、天然型の結合性を保持するべきであり、したがってキナーゼドメインが実質的に正常な3D構造を呈している必要がある。
本発明において有用な結晶性キナーゼおよびキナーゼドメインが、天然に産出するかまたは天然のキナーゼに限定されないことが理解されるべきである。実際、結晶は天然のキナーゼの突然変異体の結晶を含む。天然のキナーゼの突然変異体は、天然のキナーゼ内の少なくとも一つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することか、または天然のポリペプチド内か、または天然のポリペプチドのN−またはC−末端において、アミノ酸残基を付加することまたは欠失することによって得られ、かつ、突然変異体が由来した天然のキナーゼと実施的に同じ三次元構造を有する。
実施的に同じ三次元構造を有する、により、突然変異体がそれに由来した天然のキナーゼの原子構造座標と重ね合わせた場合、天然のキナーゼまたはキナーゼドメインのCα原子の少なくとも約50%〜100%が重ね合わせに含まれる時、約2Å以下の二乗平均平方根偏差をもつ原子構造座標のセットを有することが意味される。
キナーゼの三次元構造を有意に妨害しない、アミノ酸の置換、欠失、および付加は、一部は、置換、欠失、および付加が起きるキナーゼの領域に依存する。分子の高度に可変性の領域では、非保存性の置換ならびに保存性の置換は、分子の三次元構造を有意に妨害することなく許容されてよい。高度に保存性の領域か、または有意な二次構造を含有する領域では、保存性のアミノ酸置換が好ましい。かかる保存性および可変性の領域は、他のキナーゼとのPYK2の配列アラインメントにより同定されることが可能である。いくつかの他のキナーゼドメインとともに、PYK2キナーゼドメインのかかるアラインメントは表3に提供されている。
保存性のアミノ酸置換は、この技術において周知であり、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質に基づく置換を含む。たとえば、負に帯電したアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含み;正に帯電したアミノ酸は、リジンおよびアルギニンを含み;類似した親水性の値を有する非荷電極性頭部群は以下を含む:ロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;フェニルアラニン、チロシン。他の保存性のアミノ酸置換は、この技術において周知である。
化学合成により全体または部分的に得られたキナーゼに関しては、置換または付加に利用可能なアミノ酸の選択は、遺伝的にコードされたアミノ酸に限定されない。実際、本文に記述された突然変異体は、非遺伝的にコードされたアミノ酸を含有してよい。一般的に既知の多くの非遺伝的にコードされたアミノ酸への保存性アミノ酸置換は、当該技術でよく知られている。他のアミノ酸への保存性のアミノ酸置換は、遺伝的にコードされたアミノ酸の特性に比較したその物理的特性に基づき決定されることが可能である。
いくつかの例においては、ポリペプチドをコードしているcDNA中に便利なクローニング部位を提供する目的で、天然のキナーゼに対し、アミノ酸残基を置換、欠失、および/または付加して、ポリペプチドの精製において、かつポリペプチドの結晶化のための、助けとなるようにすることが、特に有利または便利であってよい。天然のキナーゼドメインの三次元構造を実質的に変えない、かかる置換、欠失、および/または付加は、当業者には明らかであろう。
本文において検討された突然変異体がすべてキナーゼ活性を示す必要のないことが注意されるべきである。実際、キナーゼ活性を妨害するが、ドメインの三次元構造を有意に変えないアミノ酸置換、付加、または欠失は、本発明により具体的に検討される。かかる結晶性ポリペプチドか、またはそれらから得られる原子構造座標は、天然のドメインへ結合する化合物を同定するべく使用されることが可能である。このような化合物は、天然のドメインの活性に影響を及ぼすことが可能である。
本発明の誘導体結晶は、一以上の重金属原子と共有結合した結晶キナーゼポリペプチドを含むことができる。ポリペプチドは、天然または突然変異したキナーゼに相当してよい。誘導体結晶を供給するために有用な重金属原子は、単なる例であってこれに限定されないが、金、水銀、セレンなどを含む。
本発明の共結晶は、一般に、一以上の化合物と結合した結晶性キナーゼドメインポリペプチドを含む。結合は共有または非共有性でよい。かかる化合物は、コファクター、基質、基質類似体、阻害剤、アロステリックエフェクターを含むが、これに限定されない。
PYK2ファミリーキナーゼの代表的な突然変異は、PYK2残基482と483の間に、図3のアラインメントに示されたFAK配列を有する配列の挿入を含む。かかる挿入は、たとえば、FAKキナーゼをモデルするためのPYK2の使用を支援するために有用である。他の部位における突然変異が同様に行なわれ、たとえば、突然変異したPYK2キナーゼを、構造のモデリングおよび/または化合物のフィッティングを目的として、表3のキナーゼドメインアラインメントの中のキナーゼのような、別のキナーゼにさらに類似させることが可能である。
III.X線結晶学を用いた三次元構造の測定
X線結晶学は、分子の三次元構造の解明法である。分子の構造は、結晶を回折格子として用いたX線回折パターンから計算される。タンパク質分子の三次元構造は、そのタンパク質の濃縮水溶液から成長した結晶から生じる。X線結晶学のプロセスは、以下の段階:
(a)ポリペプチドを合成することおよび単離すること(または他の方法で取得すること);
(b)ポリペプチドを含んでいる水溶液から、モジュレーターを用いて、または用いずに、結晶を成長させること;および
(c)結晶からX線回折パターンを収集すること、単位胞の大きさおよび対称性を測定すること、電子密度を測定すること、ポリペプチドのアミノ酸配列を電子密度にフィッティングすること、および構造をリファイニングすること、
を含むことができる。
(ポリペプチドの産生)
本文に記述された天然および突然変異したキナーゼポリペプチドは、この技術において周知の技法を用いて、全体または部分的に、化学合成されてよい(たとえば、Creighton (1983) Biopolymers 22(1):49-58を参照)。
別法として、天然または突然変異したキナーゼポリペプチドをコードしている配列および適当な転写/翻訳調節シグナルを含有している発現ベクターを構築するべく、当業者に周知の方法が使用されることが可能である。これらの方法は、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの組換え/遺伝的組換えを含む。たとえば、Maniatis, T (1989) Molecular cloning : A laboratory Manual(分子クローニング;実験マニュアル). Cold Spring Harbor Laboratory, New York. Cold Spring Harbor Laboratory Press ; および Ausubel, F. M. et al., (1994) Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における最新プロトコール). John Wiley & Sons, Secaucus, N.J. に記述された技術を参照のこと。
種々の宿主発現ベクター系が、キナーゼコーティング配列を発現するべく利用されることが可能である。これらは、キナーゼドメインコーティング配列を含有する、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミド発現ベクターで形質転換された細菌のような微生物;キナーゼドメインコーティング配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;キナーゼドメインコーティング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(たとえば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(たとえば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されたか、またはキナーゼドメインコーティング配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(たとえば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系を含むが、これに限定されない。これらの系の発現要素は、その強さおよび特異性が異なっている。
利用される宿主/ベクター系に依存して、構成的および誘導性のプロモーターを含めた、任意のいくつかの適当な転写および翻訳要素が、発現ベクターにおいて使用されてよい。たとえば、細菌系においてクローニングする場合には、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)などといった誘導性プロモーターが使用されてよく;昆虫細胞系でクローニングする場合には、バキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターのようなプロモーターが使用されてよく;植物細胞内でクローニングする場合には、植物細胞のゲノム由来(たとえば、熱ショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニット用のプロモーター;クロロフィルa/b結合性タンパク質用のプロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(たとえば、CaMVの35S RNAプロモーター;TMVのコートタンパク質プロモーター)が使用されてよく;哺乳類細胞系におけるクローニングの場合には、哺乳類細胞のゲノム由来の(たとえば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウイルスからのプロモーター(たとえば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)が使用されてよく;キナーゼドメインDNAの多くのコピーを含有する細胞系を発生させる場合には、SV40−、BPV−、およびEBV−ベースのベクターが、適当な選択可能なマーカーとともに使用されてよい。
DNA操作法、ベクター、使用される種々の細胞型、ベクターを細胞内へ取込む方法、発現技術、タンパク質精製および単離法、およびタンパク質濃縮法を記述している代表的な方法は、PCT公開WO96/18738に詳細に開示されている。この公開は、任意の図面を含め、そのすべてが参考文献として本文に含まれている。当業者は、かかる記述が本発明に適用可能であり、容易に適合可能であることを認識するであろう。
(結晶成長)
結晶は、精製および濃縮されたポリペプチドを含有する水溶液から、種々の技術により成長される。これらの技術は、バッチ、液体、ブリッジ、透析、蒸気拡散、およびハンギングおよびシッティングドロップ法を含む。McPherson (1982) John Wiley, New York ; McPherson (1990) Eur. J. Biochem. 189:1-23 ; Webber (1991) Adv. Protein Chem. 41:1-36、すべての図、表、および図面を含め、そのすべてが参考文献として本文に含まれる。
本発明の天然の結晶は、一般に、ポリペプチドの濃縮溶液へ沈殿剤を添加することにより成長される。沈殿剤は、タンパク質を沈殿するために必要な濃度よりもわずかに低い濃度で添加される。水は制御された蒸発により除去されて沈殿状態をもたらし、それは結晶成長が止まるまで維持される。
本発明の結晶について、代表的な結晶化条件が実施例に記述されている。当業者は、代表的な結晶化条件が変更可能であることを認識するであろう。かかる変更は、単独または組合せて使用されてよい。さらに、他の結晶化条件が見出されてよく、たとえば、結晶化スクリーニングプレートを用いることにより、かかる他の条件を同定する。そのような変更された条件は、次に、必要であればより大きいか、またはよりよい品質の結晶を提供するべく、最適化されることが可能である。
本発明の誘導体結晶は、重金属の塩を含有している母液中に天然結晶を浸すことにより、取得可能である。天然結晶のかかる浸漬のための代表的な条件は、約0.1mM〜約5mMのチメロサール、4−クロロメルクリ安息香酸、またはKAu(CN)2を含有する溶液を、約2時間〜約72時間使用して、X線結晶構造の測定における同型置換体としての使用に的した誘導体結晶を提供する。
本発明の共結晶は、キナーゼに結合する化合物を含有する母液中に天然結晶を浸すことによって得られるか、または結合性化合物の存在下にキナーゼポリペプチドを共結晶することにより、取得可能である。
多くの場合、キナーゼおよび結合性化合物の共結晶化は、結合性化合物なしの、対応するキナーゼの結晶化用に同定された条件を用いて成し遂げられることが可能である。もし複数の異なる結晶化条件がキナーゼについて同定されていれば有利であり、これらはどの条件が最良の共結晶を生じるかを決定するべく検査されることが可能である。共結晶化のために条件を最適化することも有利であってよい。別法として、新規な結晶化条件は、共結晶の取得に関して、たとえば結晶化についてスクリーニングすること、および次に、それらの条件を最適化することにより、決定されることが可能である。代表的な共結晶条件は、実施例において提供される。
(ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の単位胞ディメンションおよび三次元構造の測定)
ひとたび結晶が成長すれば、それはガラス毛細管か、または他の封入装置内に置かれ、X線発生およびX線検出装置へ連結された保持装置上へマウントされることが可能である。X線回折パターンの収集は、この技術において充分に記録されている、たとえば、Ducruix and Geige, (1992), IRL Press, Oxford, Englandおよび、それに引用された参考文献を参照のこと。X線ビームは結晶に入り、次いで結晶から回折される。X線検出装置は、結晶から発せられる回折パターンを記録するべく利用されることが可能である。このような装置の、古いモデル上のX線検出装置はフィルムの一片であるが、今日の機器はX線回折をディジタル記録する。X線源は種々のタイプが可能であるが、高輝度の線源、たとえばシンクロトロン線源の使用が有利である。
ポリペプチド分子または分子複合体の結晶形状の三次元構造を得る方法は、この技術において周知であり、Ducruix and Geige, (1992), IRL Press, Oxford, Englandおよび、それに引用された参考文献を参照のこと。以下は、X線回折データから分子または複合体の三次元構造を測定するプロセスにおける段階である。
結晶からX線回折パターンが収集された後、単位胞ディメンションおよび結晶の測定が可能である。それらは回折放射ならびにこれらの放射から作成されたパターンの間のスペーシングから測定されることが可能である。単位胞ディメンションは、オングストローム(1Å=10-10メートル)の単位で三次元において、かつ各頂点における角度によって、特徴づけられる。結晶内の単位胞の対称性は、この段階でも特徴づけられる。結晶内の単位胞の対称性は、反復パターンを同定することにより、収集されたデータの複雑さを単純化する。単位胞の対称性およびディメンションの適用は、以下に記述される。
各々の回折パターン放射は、ベクトルとして特徴づけられ、方法のこの段階で収集されたデータは、各ベクトルの振幅を決定する。ベクトルの位相は、多くの技術を用いて測定可能である。一つの方法においては、重原子が結晶内へ浸漬されることが可能であり、方法は同型置換法と呼ばれ、これらの重原子をX線分析における基点として使用することにより、ベクトルの位相が測定可能である(Otwinowski, (1991), Daresbury, United Kingdom, 80-86)。同型置換法は、通常一以上の重原子誘導体を利用する。
もう一つの方法においては、すでに構造の決定された結晶ポリペプチドからの、ベクトルの振幅および位相が、未知の構造の結晶ポリペプチドからのベクターの振幅に適用され、結果として、これらのベクターの位相が測定可能である。この第二の方法は、分子置換法として知られており、参考として使用されるタンパク質構造は、興味のタンパク質と密接に関連した構造をもつべきである(Naraza (1994) Proteins 11:281-296)。したがって、本文に報告されたもののような、既知の構造のキナーゼからのベクトル情報は、未知の構造をもつ他のキナーゼの分子置換分析に有用である。
結晶の単位胞を表しているベクトルの位相がひとたび測定されれば、ベクトル振幅および位相、単位胞ディメンション、および単位胞対称性が、フーリエ変換関数の項として使用可能である。フーリエ変換関数は、これらの測定値から単位胞における電子密度を計算する。単位胞内の分子の一つまたは分子複合体の一つを表す電子密度は、電子密度マップと呼ばれる。配列中のアミノ酸構造または、結晶ポリペプチドと複合した化合物の分子構造は、次に、種々のコンピュータプログラムを用いて電子密度へフィットされる。プロセスのこの段階は、時としてモデルビルディング(モデル構築)と呼ばれ、Turbo/FRODOまたは“O”といったコンピュータプログラムを使用することにより、達成されることが可能である(Jones (1985) Methods in Enzymology 115:157-171)。
理論的電子密度マップは、次に、実験的に測定された電子密度へフィットされたアミノ酸構造から計算されることが可能である。理論的および実験的電子密度マップは、互いに比較され、これら二つのマップ間の一致は、Rファクターと呼ばれるパラメータにより記述可能である。低いRファクター値は、理論的および実験的電子密度マップ間の、電子密度の高度の重複を表す。
Rファクターは、次に、理論的な電子密度マップをリファインするコンピュータプログラムを用いることにより最小化される。X−PLORのようなコンピュータプログラムは、当業者により、モデルリファインメントに使用されることが可能である(Brunger (1992) Nature 355;472-475)。リファインメントは、反復性のプロセスで成し遂げられてもよい。第一の段階は、電子密度マップにおいて規定された原子のコンフォメーションを変えることを必然的に伴うことが可能である。原子のコンフォメーションは、結合の振動周波数を大きくし、かつ構造内の原子の位置を修正することができる、温度の上昇をシミュレートすることによって変えられることが可能である。原子の摂動プロセスにおける特定の点おいて、典型的には原子間の相互作用を、許容される結合角および結合長、ファンデルワールス相互作用、水素結合、イオン相互作用、および疎水性相互作用の観点から規定する力場が、原子の系へ適用されることが可能である。有利な相互作用は、自由エネルギーという観点から記述されてよく、原子は自由エネルギーの最小値が達成されるまで、何度も反復して移動されてよい。リファインメントプロセスは、Rファクターが最小値に達するまで反復可能である。
分子または分子複合体の三次元構造は、最小のR値によって特徴づけられる、理論的電子密度にフィットする原子により記述される。三次元の座標によって各原子を規定する三次元構造について、ファイルが作成されることが可能である。かかる構造座標ファイルの実例は、表1に示されている。
IV.PYK2の構造
本発明は、X線結晶学により測定される、結晶性のPYK2キナーゼドメインおよび代表的な結合性化合物と共複合したPYK2キナーゼドメインの、高解像度の三次元構造および原子構造座標を提供する。構造座標を得るべく使用された方法は、実施例に提供されている。結晶PYK2の原子構造座標は、表1にリストされており、AMPPNPと共結晶化されたPYK2の原子座標は、表2に提供されている。共結晶座標は、たとえば本文において記述された種々の面において単独のタンパク質についての座標と同様に、使用されることが可能である。
当業者は、X線結晶学によって測定される原子構造座標が、エラーなしではないことを認識するであろう。したがって、表1(または表2)にリストされた構造座標上で、バックボーン原子(N、Cα、C、および0)を用いて重ね合わされた場合に、約1.5Å以下の二乗平均平方根偏差(“r.m.s.d”)を有するPYK2の結晶について得られた構造座標の任意のセットは、天然の結晶であろうと、キナーゼドメイン結晶であろうと、誘導体結晶であろうと、または共結晶であろうと、PYK2またはPYK2キナーゼドメインのバックボーン原子の少なくとも約50%〜100%が重ね合わせに含まれる場合に、表1(または表2)にリストされた構造座標と同等であると見なされることが理解されるべきである。
V.結晶および原子構造座標の用途
本発明の結晶、および特にそれから得られる原子構造座標は、広く多様な用途をもつ。たとえば、本文に記述された結晶は、この技術において周知の、または後に開発されるキナーゼの任意の使用法における出発点として使用されることが可能である。かかる使用法は、たとえば、キナーゼの天然または突然変異した触媒ドメインへ結合する分子を同定することを含む。結晶および構造座標は、新規の治療薬の開発に向けたアプローチとして、キナーゼ活性を調整するリガンドを同定するために特に有用である。特に、結晶および構造情報は、分子スカフォードを利用したリガンド開発のための方法において有用である。
本文に記述された構造座標は、付加的なキナーゼの結晶構造、ならびに、かかるキナーゼの、阻害剤、アゴニスト、アンタゴニスト、および他の分子といったリガンドとの共結晶の構造を測定するための、フェージングモデルまたはホモロジーモデルとして使用されることが可能である。構造座標、ならびにそれから得られる三次元構造のモデルはまた、NMRによって得られるもののような、天然または突然変異したキナーゼの、溶液をベースとする構造の解明を助けるべく使用されることが可能である。
VI.キナーゼ構造の電子表現
キナーゼまたはキナーゼの部分(たとえば、キナーゼ活性部位)の構造情報は、多くの異なる方法で表現されることが可能である。特に有用であるのは、迅速かつ便利なデータ操作および構造修正を可能にする表現のような、電子表現である。電子表現は、多くの異なる記憶またはメモリ媒体、しばしばコンピュータリーダブルな媒体中に埋込まれることが可能である。実例は、これに制限されることなく、コンピュータランダムアクセスメモリ(RAM)、フロッピーディスク、磁気ハードドライブ、磁気テープ(アナログまたはディジタル)、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、CD−ROM、メモリカード、ディジタルビデオディスク(DVD)などを含む。記憶媒体は、セパレート式か、またはコンピュータシステムの一部であることが可能である。かかるコンピュータシステムは、X線結晶学システムの一部を形成するコンピュータシステムのような、専用の、特殊目的の、または組込まれたシステムであってよく、あるいは、汎用性のコンピュータでよい(X線結晶学システムのセンサー装置のような他の設備とのデータコネクションを有してもよい。多くの場合、かかる電子表現によって提供される情報はまた、二または三次元において物理的または画像的に、たとえば紙に、ビジュアルディスプレイとして(たとえば、コンピュータモニタ上での二次元または擬似三次元の画像として)、または三次元のフィジカルモデルとして、表現されることが可能である。かかる物理表現はまた、単独で、または電子表現に関連して使用されることが可能である。代表的な有用な表現は、これに限定されないが、以下のものを含む:
(原子座標表現)
一つタイプの表現は、分子構造、構造の部分、または複合体(たとえば、共結晶)中の、一つの特定の原子の位置を表する原子座標のリストまたは表である。かかる表現はまた、付加的な情報、たとえば、特定の座標のオキュパンシーについての情報を含んでもよい。かかる原子座標表現の一つは、表1の座標情報を電子フォームで含む。
(エネルギー表面または相互作用の表面の表現)
もう一つの表現は、たとえば活性部位または他の結合部位の、電子的および立体的相互作用についてエネルギー表面を表現するエネルギー表面表現である。かかる表現はまた、他の特性を含んでもよい。一つの実例は、特定のアミノ酸残基、または特定のアミノ酸残基上の基、たとえばH−結合またはイオン性相互作用に関与することができる残基または基の表現を含む。かかるエネルギー表面表現は、任意の種々の利用可能なコンピュータプログラムを用いた原子座標表現から容易に生成可能である。
(構造表現)
なおもう一つの表現は、構造表現、すなわち、物理表現か、またはかかる物理表現の電子表現である。かかる構造表現は、分子または複合体の独特の特性についての相対的な位置の表現を、しばしば構造特性間の連結とともに含む。たとえば、構造は、中でも、全ての原子が連結している;水素以外の原子は連結している;有意な電子的相互作用に関与し得る側鎖原子の表現があるか、またはないバックボーン原子が連結している、と表現されることが可能である。しかしながら、すべての特性が必ずしも連結されている必要はない。たとえば、分子または複合体の部分の構造表現については、その特性にとって有意な構造特性が表現されてよい(たとえば、結合部位においてリガンドと有意な結合性相互作用をもつことのできるアミノ酸残基の原子。そのようなアミノ酸残基は、互いに結合されていなくてもよい。
構造表現はまた、図式表現であってもよい。たとえば、図式表現は、二次および/または三次構造を図式化された方法で表現することができる。ポリペプチドのかかる図式表現内には、特定のアミノ酸残基または残基上の基、たとえば結合部位内の保存残基、および/または、結合性化合物と相互作用してもよい残基または基が含まれることが可能である。電子構造表現は、たとえば、その機能のためにデザインされたコンピュータプログラムを用いた原子座標情報から、および/または、別の形状の構造情報の解釈に基づくマニュアル入力を用いて電子表現を構築することにより、生成されることが可能である。物理表現は、たとえば、3Dモデルを構築することにより、コンピュータ生成画像の画像をプリントすることにより、作成されることが可能である。
VII.構造座標を用いた未知の構造をもつキナーゼの構造測定
表1に示されたもののような構造座標は、未知の構造をもつキナーゼの三次元構造を測定するべく使用されることが可能である。以下に記述された方法は、既知の構造をもつポリペプチドの構造座標を、たとえば、アミノ酸配列、X線結晶学回折データ、または核磁気共鳴(NMR)データのような、別のデータセットへ適用されることが可能である。本発明の好ましい態様は、他のセリン/スレオニンキナーゼ、および関連ポリペプチドの三次元構造を測定することに関する。
(アミノ酸ホモロジーを用いた構造)
ホモロジーモデリングは、既知の構造のポリペプチドの構造座標を、未知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列へ適用する方法である。この方法は、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の三次元構造のコンピュータ表現、既知または未知の構造をもつポリペプチドのアミノ酸配列のコンピュータ表現、およびアミノ酸構造の標準的なコンピュータ表現を用いて成し遂げられる。ホモロジーモデリングは、一般に、(a)既知の構造をもつかもたないポリペプチドのアミノ酸配列をアラインメントすること;(b)既知の構造中の保存アミノ酸の座標を、未知の構造のポリペプチドの対応するアミノ酸へ転移すること;続く三次元構造をリファイニングすること;および(d)ポリペプチドの残りの構造を構築すること、を含む。当業者は、二つのタンパク質の間に保存されたアミノ酸が、段階(a)における配列アラインメントの段階から測定可能であることがわかる。
上記の方法は、当業者には周知である(Greer (1985) Science 228:1055 ; Blundell et al. A (1988) Eur. J. Biochem. 172:513)。当業者によりホモロジーモデリングに利用可能な代表的なコンピュータプログラムは、アクセラリーズ.インク(Accelerys Inc.)により供給されるインサイト(Insight)IIモデリングパッケージ中のホモロジーモジュール(Homology module)である。
アミノ酸配列のアラインメントは、まず、未知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列の上に、既知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列のコンピュータ表現を置くことによって達成される。配列中のアミノ酸は、次に比較され、相同である(たとえば、化学的性質、−脂肪族、芳香族、極性、または荷電が類似したアミノ酸側鎖)アミノ酸の群は、一緒にグループ化される。この方法は、ポリペプチドの保存領域を検出し、かつアミノ酸の挿入または欠失を説明するであろう。かかるアラインメントおよび/または比較もまた、配列アラインメントおよび分析ソフトウエアを用いて完全にエレクトロニカルに行なわれることが可能である。
ひとたび既知および未知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列がアラインメントされれば、既知の構造をもつポリペプチドのコンピュータ表現における保存アミノ酸の構造が、その構造が未知であるポリペプチドの対応するアミノ酸へ転移される。たとえば、既知の構造のアミノ酸配列中のチロシンは、未知の構造のアミノ酸配列中の対応する相同アミノ酸、フェニルアラニンで置換されてよい。
非保存領域に局在するアミノ酸の構造は、標準的なペプチド幾何学または、分子動力学のような分子シミュレーションを用いることにより手動的に指定されることになる。プロセスの最終段階は、分子動力学および/またはエネルギー最小化を用いて、全体構造をリファイニングすることによって達成される。ホモロジーモデリング法は当業者に周知であり、様々なタンパク質分子を用いて実行されてきた。たとえば、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼの触媒ドメイン、ミオシン軽鎖タンパク質キナーゼ、に対応するポリペプチドの三次元構造は、cAMP依存性タンパク質キナーゼサブユニットからホモロジーモデルされた(Knighton et al. (1992) Science 258:130-135)。
(分子置換を用いた構造)
分子置換は、既知の構造のポリペプチドのX線回折データを、未知の構造のポリペプチドのX線回折データへ適用する方法である。この方法は、振幅のみが既知である場合に、未知の構造のポリペプチドのX線回折データを記述する位相を規定するべく利用されることが可能である。X−PLORは、分子置換に使用された一般的に利用されるコンピュータソフトウエアパッケージである(Brunger (1992) Nature 355:472-475)。AMOREは、分子置換に使用されるもう一つのプログラムである(Navaza (1994) Acta Crystallogr. A50:157-163)。好ましくは、結果として得られる構造は、3Åを超える二乗平均平方根偏差を示さない。
分子置換のゴールは、二つの結晶からの電子回折データを整合することにより、単位胞中の原子の位置をアラインメントすることである。X−PLORのようなプログラムは、4つの段階を含むことができる。最初の段階は、単位胞内の分子の数を測定すること、およびそれらの間の角度を規定することであってよい。第2の段階は、回折データを回転して、単位胞内の分子の方位を規定することであってよい。第3の段階は、三次元における電子密度を、単位胞内の分子の適正な位置に変換されることであってよい。X線回折データの振幅および位相がひとたび測定されれば、参考のデータセットから実験的に計算された、および新規のデータセットから計算された電子回折マップを比較することにより、Rファクターが計算されることが可能である。30〜50%の間のRファクターは、単位胞内の原子の方位がこの方法によって合理的に測定されることを示している。プロセスの第4の段階は、本文に記述され、かつ当業者には周知の、反復性のリファインメント技術を用いて、新規の電子密度マップをリファインすることにより、Rファクターをほぼ20%へ減少させることであってよい。
(NMRデータを用いた構造)
X線結晶学技術に由来するポリペプチドまたはポリペプチド複合体の構造座標は、核磁気共鳴(NMR)データからのポリペプチドの三次元構造の解明に向けて、適用されることが可能である。この方法は、当業者によって使用されている(Wuthrich, (1986), John Wiley and Sons, New York :176-199 ; Pflugrath et al. (1986) J. Mol. Biol.189;383-386 ; Kline et al. (1986) J. Mol. Biol. 189:377-382)。ポリペプチドの二次構造は、二次元のNMRデータを利用することにより、しばしば容易に測定されるが、二次構造の個々の断片の間の空間的な関係は、容易には決定できない。X線結晶学技術に由来するポリペプチドの三次元構造を規定する座標は、NMRの分光学者を、関連した構造のポリペプチド中の二次構造要素の間のこのような空間的関係の理解へ導くことができる。
二次構造要素の間の空間的関係についての知識は、二次元のNMR実験からの核オーバーハウザー効果(Nuclear Overhauser Effect (NOE))を大いに単純化することができる。さらに、NMR技術による二次構造の測定の後に結晶学座標を適用することは、ポリペプチド配列内の特定のアミノ酸に関するNOEのアサインメントを単純化するのみであって、ポリペプチド構造のNMR分析を大きく偏らせることはない。反対に、ポリペプチドの二次構造を測定している間に、結晶学座標を使用してNOEデータを単純化することは、タンパク質構造のNMR分析を偏らせることになるであろう。
VIII.構造座標を用いたキナーゼ機能モジュレーターの構造に基づく設計
構造に基づくモジュレーターの設計および同定法は、広く多様な潜在性のモジュレーターおよび化学官能基を含有するコンピュータデータベースの検索を含むことができる強力な技術である。モジュレーターのコンピュータ設計および同定は、コンピュータデータベースがケミカルライブラリよりも、しばしば一桁上までの、より多くの化合物を含んでいるため有用である。構造に基づく薬物設計および同定の総説には(Kuntz et al. (1994), Acc. Chem. Res. 27:117 ; Guida (1994) Current Opinion in Struc. Biol. 4;777 ; Colman (1994) Current Opinion in Struc. Biol. 4:868参照のこと)。
構造座標によって規定されるポリペプチドの三次元構造は、このような設計法、たとえば表1の構造座標に利用されることが可能である。さらに、ホモロジー、分子置換、およびNMR技術(本文において記述された)により測定される、キナーゼの三次元構造はまた、モジュレーターの設計および同定法にも適用されることが可能である。
モジュレーターを同定するためには、天然のキナーゼの構造情報、特に、キナーゼの活性部位についての構造情報が使用可能である。しかしながら、一以上の結合性化合物をもつキナーゼの一以上の共結晶からの構造情報を利用することが、有利であってもよい。それはまた、結合性化合物が試験化合物と共通した構造のコアを有していれば、有利であることが可能である。
(分子データベースを検索することによる設計)
一つの合理的な設計法は、分子のデータベースからの、化合物のコンピュータ表現のドッキングにより、モジュレーターを検索する。市販のデータベースは、たとえば:
a)モレキュラー・デザインズ・リミティッド(Molecular Designs Limited)からのACD
b)ナショナル・キャンサー・インスチチュート(National Cancer Institute)からのNCI
c)ケンブリッジ・クリスタログラフィック・データ・センター(Cambridge Crystallographic Data Center)からのCCDC
d)ケミカル・アブストラクト・サービス(Chemical Abstract Service)からのCAST
e)ダーウェント・インフォメーション・リミティッド(Derwent Information Limited)からのDerwent
f)メイブリッジ・ケミカル・カンパニー(Maybridge Chemical Company LTD)からのMaybridge
g)アルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)からのAldrich
h)チャップマン&ホール(Chapman & Hall)からのディレクトリ・オブ・ナチュラル・プロダクツ(Direcory of Natural Products)、
を含む。
かかるデータベースの一つ(モレキュラー・デザインズ・リミティッド・インフォメーション・システムズ(Molecular Designs Limited Information Systems)から供給されるACD)は、合成により誘導されるか、または天然の産物である化合物を含む。当業者に利用可能な方法は、二次元で表現されたデータを三次元で表現されたものへ変換することができる。このような方法は、トリポス・アソシエイツ(Tripos Associates)からのCONCORDまたはモレキュラー・シミュレーションズ・リミティッド(Molecular Simulations Limited)からのDE−Converterのようなコンピュータプログラムによって可能となる。
構造に基づくモジュレーター設計の多くの方法は、当業者に周知である(Kuntz et al., (1982), J. Mol. Biol. 162:269 ; Kuntz et aZ., (1994), Acc. Chern. Res. 27:117 ; Meng et al., (1992), J. Compt. Chem. 13:505 ; Bohm, (1994), J. Comp. Aided Molec. Design 8:623)。
合理的なモジュレーター設計の当業者によって広く利用されるコンピュータプログラムは、サンフランシスコのカリフォルニア大学からのDOCKである。このコンピュータプログラムおよび同様のプログラムによって使用される一般的な方法は、下文の3つの出願に記述されている。これらの技術のいくつかに関するさらに詳細な情報は、アクセラリーズ・ユーザー・ガイド(Accelerys User Guide)1995において見出されることが可能である。この目的のために使用される典型的なコンピュータプログラムは、以下の段階または作用:
(a)既存の化合物をタンパク質から除去し;
(b)コンピュータプログラム(DOCKのような)を用いて、またはインタラクティブに化合物を活性部位内へ動かすことにより、もう一つの化合物の構造を活性部位内へドッキングし;
(c)化合物と活性部位の原子との間の空間を特徴づけし;
(d)(i)化合物と活性部位との間の空の空間にフィットすることでき、かつ(ii)該化合物に連結することができる、分子フラグメントについてライブラリを検索し;かつ
(e)見出された上記のフラグメントを該化合物へ連結し、かつ新規の修正された化合物を評価すること、
を含むプロセスを実行することができる。
(c)の部分は、幾何学および活性部位の原子と化合物との間に形成された相補性相互作用の特徴づけを指す。好適な幾何学的フィットは、化合物と活性部位の原子との間に、不都合な立体化学的相互作用を形成することなく、有意な表面積が共有される場合に達成される。当業者は、この方法が、(d)および(e)の部分を飛ばして、多くの化合物のデータベースをスクリーニングすることにより実行可能であることに気付くであろう。
キナーゼ機能のモジュレーターの構造に基づく設計および同定は、アッセイスクリーニングとともに使用されることが可能である。化合物の大きいコンピュータデータベース(約10,000化合物)は数時間以内に検索可能であるため、コンピュータベースの方法は、生化学的または細胞のアッセイにおいて、キナーゼ機能の潜在性モジュレーターとして検査される化合物を絞り込むことが可能である。
構造に基づくモジュレーター設計についての上記の記述は、すべてを包括しているのではなく、他の方法が文献に報告され、かつ使用可能である。たとえば:
(1)CAVEAT:Bartlett et al., (1989), Chemical and Biological Problems in Molecular Recognition(分子認識における化学的および生物学的問題点), Roberts, S.M.; Ley, S.V.; Campbell, M.M. eds, ; Royal Society of Chemistry: Cambridge, pp. 182-196.
(2)FLOG:Miller et al., (1994), J. Comp. Aided Molec. Design 8:153.
(3)PRO Modulator:Clark et al., (1995), J. Comp. Aided Molec. Design 9:13.
(4)MCSS:Miranker and Karplus, (1991), Proteins: Structure, Function, and Genetics(タンパク質:構造、機能、および遺伝学),11:29.
(5)AUTODOCK:Goodsell and Olson, (1990), Proteins: Structure, Function, and Genetics(タンパク質:構造、機能、および遺伝学),8:195.
(6)GRID:Goodford, (1985), J. Med. Chem. 28:849.
(PYK2キナーゼとの複合体中の化合物を修飾することによる設計)
潜在的なモジュレーターとして化合物を同定するもう一つの方法は、ポリペプチドの活性部位中の既存のモジュレーターを修飾することである。たとえば、モジュレーターのコンピュータ表現は、PYK2活性部位のコンピュータ表現内で修飾されることが可能である。この技術の詳細な説明は、たとえば、LUDI、アクセラリーズ・ユーザー・マニュアル(Accelerys User Manual)1995に見出すことができる。モジュレーターのコンピュータ表現は、典型的には化学基または複数の化学基の欠失によるか、あるいは、化学基または複数の化学基の付加によって修飾される。
化合物に対する各々の修飾に際し、修飾された化合物および活性部位の原子はコンフォメーションにおいてシフトされることが可能であり、モジュレーターと活性部位原子との間の距離は、二つの分子の間に形成された任意の相補性相互作用とともにスコアされてよい。スコアリングは、好適な幾何学的フィットおよび好適な相補性相互作用が得られた場合に完了されてよい。好適なスコアをもつ化合物は、潜在的なモジュレーターである。
(PYK2キナーゼに結合する化合物の構造を修飾することによる設計)
構造に基づくモジュレーター設計の第3の方法は、モジュレーター構築またはモジュレー検索コンピュータプログラムによって設計された化合物を、スクリーンすることである。このようなタイプのプログラムの実例は、モレキュラー・シミュレーションズ・パッケージ、カタリスト(Molecular Simulations Package, Catalyst)に見出すことが可能である。このプログラムの使用のための説明は、モレキュラー・シミュレーションズ・ユーザー・ガイド(Molecular Simulations User Guide)(1995)に記録されている。本出願において使用された他のコンピュータプログラムは、モレキュラー・デザインズ・リミティッド(Molecular Designs Limited)からのISIS/HOST、ISIS/BASE、ISIS/DRAW)、およびトリポス・アソシエイツ(Tripos Associates)からのUNITYである。
これらのプログラムは、化合物−キナーゼ複合体の三次元構造の活性部位から移された化合物の構造について操作されることが可能である。かかる化合物に対してプログラムを操作することは、それが生物学的に活性のあるコンフォメーションにあることから好ましい。
モジュレーター構築コンピュータプログラムは、キナーゼまたは他の生体分子と複合した化合物の化学基のコンピュータ表現を、コンピュータデータベースからの基によって置換するべく用いられてよいコンピュータプログラムである。モジュレーター検索コンピュータプログラムは、コンピュータデータベースから、特定の生体分子に結合した化合物と同様の三次元構造および同様の化学基をもつ化合物のコンピュータ表現を検索するべく用いられてよいコンピュータプログラムである。
典型的なプログラムは、以下の一般的な段階:
(a)水素結合供与体または受容体、疎水性/親油性の部位、正にイオン化した部位、または負にイオン化した部位による、というように化学的特性によって化合物をマップし;
(b)マップされた特性に幾何学的拘束を加え;さらに
(c)(b)で生成されたモデルでデータベースを検索すること、
の使用により、操作されることが可能である。
当業者はまた、化合物の可能な化学的特性のすべてが(b)のモデル中に必ずしも存在する必要のないことを認識する。このモデルの任意のサブユニットを用いて、データベース検索のための種々のモデルを生成することが可能である。
(分子スカフォードを用いたモジュレーター設計)
本発明はまた、広く分子ファミリーにわたって作用することが可能な、分子スカフォードと呼ばれる化合物を設計するための、および/または、そのようなファミリーの個々の、または多数のメンバーを標的とするリガンドをデザインするべく、分子スカフォードを使用するための方法を、便利に利用することができる。好ましい態様においては、分子はタンパク質でよく、化学化合物のセットは、それらが1)あるタンパク質ファミリーに対して作用するべく化学的に設計されている、および/または、2)興味のファミリー中の一以上のタンパク質への結合用に、それらを特殊化する化学的な部分構造をもつことを示すことによって、より分子スカフォードらしく行動するといった特性をもつように組立てられることが可能である。別法として、分子スカフォードは、個々の標的分子に対し、選択的に活性をもつべく設計されることが可能である。
分子スカフォードの有用な化学的性質は、一以上の以下の特徴を含むことが可能であるが、それに限定されない:平均分子量は約350ダルトンより小さいか、または約150から約350ダルトンまでの間であるか、または約150から約300ダルトンまでであり;3未満のclogPを有しており;回転可能な結合数は4より小さく;水素結合供与体および受容体の数は5より小さいか、または4より小さく;極性表面積は50Å2より小さく;タンパク質結合部位において、コンビナトリアルライブラリからの、スカフォードに付着された化学置換基が、タンパク質結合部位のポケット内へ突き出されることを可能にする方位に結合すること;および、その置換基付着点に、修飾されることの可能な化学的に扱いやすい構造を有しており、それによって迅速なライブラリ構築を可能にする。
「clogP」により、化合物の計算されたlogPが意味され、「P」はオクタノールと水の間の分配係数を指す。
用語「分子の極性表面積(PSA)」は、分子における極性原子(通常は酸素、窒素、および付着した水素)の表面寄与率を指す。極性表面積は、腸管吸収、または血液脳関門といった薬物輸送特性と良好な相関関係にあることが示されている。
コンビナトリアルライブラリに包含するための、別の化合物の付加的な有用な化学的性質は、組織およびプロテオミクスをプロファイリングする目的のための使用にむけ、化学的部分を、少なくとも一つの興味のタンパク質への化合物の結合を妨害せず、かつライブラリメンバーに所望の性質を与えることのできる化合物へ付着させる能力を含んでおり、たとえばライブラリメンバーが興味の細胞および/または臓器へ活発に輸送されるようにすること、またはクロマトグラフィーカラム(たとえば、ビオチンのような分子を介するストレプトアビジンカラム)のような装置へ付着するようにする。
当業者は、用途の特定の要求に依存して、スカフォードまたはライブラリメンバーについて他の性質が所望され得ること、およびそのような性質を持つ化合物もまた、同様の方法で検索および同定されてよいことを認識するであろう。アッセイ用の化合物の選択法は当業者に周知であり、たとえば、すべての図表および図面を含め、その記載全体が参考文献として各々本文に含まれる、米国特許第6,288,234、6,090,912、5,840,485号に記述された方法および化合物である。
種々の態様において、本発明は、分子ファミリーの複数のメンバーと結合するリガンドを設計する方法であって、リガンドが共通の分子スカフォードを含有する方法を提供する。したがって、一つの化合物のセットは、分子ファミリー、たとえばタンパク質ファミリー、の複数のメンバーに対する結合性についてアッセイされてよい。複数のファミリーメンバーと結合する一以上の化合物が、分子スカフォードとして同定されてよい。標的分子の結合部位におけるスカフォードの方位が測定され、かつ化学的に扱いやすい構造が同定された場合、一または数個の分子スカフォードで出発し、複数のリガンドに達するまでリガンドのセットが合成されてよく、各リガンドは、分子ファミリーの個別の標的分子と、スカフォードに比較して変えられたか、または変化した結合親和性または結合特異性をもって結合する。したがって、複数の薬物リード分子は、同じ分子スカフォードに基づく分子ファミリーの個々のメンバーを選択的に標的とし、かつ特異的な方法でそれらに作用するべく、設計されることが可能である。
(IX.結合アッセイ)
本発明の方法は、標的分子に対する化合物の結合を検出することが可能なアッセイを含むことができる。かかる結合は、統計学的に有意なレベルにあり、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95、97、98、99%以上の信頼係数で、標的への結合を表すアッセイシグナルが、すなわち、バックグラウンドから区別される。好ましい対照は、標的の結合を非特異的な結合から区別するべく使用される。本発明のアッセイはまた、化合物を標的分子への低親和性結合に関してアッセイすることも含む。結合を表示する多種多様なアッセイが種々の標的タイプについて知られており、本発明のために使用されることが可能である。タンパク質ファミリーにわたって広く作用する化合物は、広範なその結合の性質のため、個々の標的に対し高い親和性をもつことはなさそうである。したがって、本文に記述されたアッセイは、低い親和性、非常に低い親和性、および極めて低い親和性をもって結合する化合物の同定を考慮している。それゆえ、効力(または結合親和性)は主ではなく、また最重要でもなく、潜在的に有用な結合性化合物の同定のための兆候である。むしろ、低い親和性、非常に低い親和性、または極めて低い親和性をもって結合するこのような化合物は、リガンド設計プロセスの次の段階へ続くことが可能な分子スカフォードであると見なされることが可能である。
「低い親和性」をもって結合することにより、標準的な条件下に1μMより大きい解離定数(Kd)をもって標的分子へ結合することが意味される。「非常に低い親和性」をもって結合することにより、標準的な条件下に約100μMより大きい解離定数(Kd)をもって標的分子へ結合することが意味される。「極めて低い親和性」をもって結合することにより、標準的な条件下に約1mMより大きいKdにおける結合が意味される。「中程度の親和性」により、標準的な条件下に、約200nMから約1μMまでのKdでの結合が意味される。「中程度に高い親和性」により、約1nMから約200nMまでのKdにおける結合が意味される。「高い親和性」での結合により、標準的な条件下に約1nMより低いKdにおける結合が意味される。たとえば、低い親和性の結合は、標的分子の結合部位への、より不良な適合のためか、非共有結合の数がより少ないか、または高い親和性の結合が起きる事例に比較して、標的分子の結合部位へのスカフォードまたリガンドの結合を引き起こす共有結合が弱いために起こることが可能である。結合のための標準的な条件は、pH7.2において、37℃で1時間である。たとえば、100μl/ウエルは、pH7.2の50mM HEPES緩衝液、15mMNaCl、2μMATP、および1ug/ウエルのウシ血清アルブミン中で、37℃において1時間使用されることが可能である。
結合性化合物はまた、標的分子の活性に対するその影響によって特徴づけられる。したがって、「低い活性」の化合物は、標準的な条件下に、1μMより大きい阻害濃度(IC50)または励起濃度(EC50)を有する。「非常に低い活性」により、標準的な条件下に、100μMより大きいIC50またはEC50が意味される。「極めて低い活性」により、標準的な条件下に、1mMより大きいIC50またはEC50が意味される。「中程度の活性」により、標準的な条件下に、200nM〜1μMのIC50またはEC50が意味される。「中程度に高い活性」により、1nM〜200nMのIC50またはEC50が意味される。「高い活性」により、標準的な条件下に、1nMより低いIC50またはEC50が意味される。IC50(またはEC50)は、化合物が存在しない時の活性に比較して、測定された標的分子(たとえば、酵素または他のタンパク質)の活性の50%の活性が失われた(または得られた)化合物の濃度として定義される。活性は、当業者に周知の方法、たとえば酵素的反応の発生か、または測定されるタンパク質による別の活性によって産生された、任意の検出可能な生成物またはシグナルを計測することにより、測定されることが可能である。
「バックグラウンドシグナル」により、結合アッセイに関連して、標的分子へ結合する試験化合物、分子スカフォード、またはリガンドの不在下に、特定のアッセイ用の標準的な条件下に記録されたシグナルが意味される。当業者は、一般に受入れられた方法が存在し、バックグラウンドシグナルの測定用に広く利用可能であることを認識するであろう。
「標準偏差」により、分散の平方根が意味される。分散は、分布がどれだけ広がっているかの測定値である。それは、その平均値からの各数値の平均平方偏差としてコンピュータ計算される。たとえば、数値1、2、および3に関しては、平均値は2であり、分散は:
σ2=((1−2)2+(2−2)2+(3−2)2)/3=0.667
である。
タンパク質ファミリーにわたって広く作用するスカフォードを設計または発見するため、興味のタンパク質は、化合物のコレクションまたはセットに対してアッセイされることが可能である。アッセイは、好ましくは酵素または結合アッセイであることが可能である。いくつかの態様においては、スクリーンされる化合物の溶解度を高めることが望ましく、低い親和性を持って結合するか、またはバックグラウンドシグナルの標準偏差の約3倍よりも大きいシグナルを発生するものを含めて、アッセイにおいて活性を示す全ての化合物を分析する。アッセイは、たとえば、二つの結合パートナーの間の結合親和性を測定する結合アッセイのような、任意の適当なアッセイであることが可能である。本発明の実行において有用であることが可能な種々のタイプのスクリーニングアッセイは、米国特許第5,763,198、5,747,276、5,877,007、6,243,980、6,294,330、および6,294,330号(すべての図表および図面を含め、その記載全体が参考文献として各々本文に含まれる)に記述されたもののように、この技術において周知である。
アッセイの種々の態様において、少なくとも一つの化合物、化合物の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%は低い親和性を持って結合することができる。一般に、化合物の約20%までは、スクリーニングアッセイにおいて活性を示すことができ、それらの化合物は次に、ハイスループット共結晶学、化合物を共通の構造特性(たとえば、構造コアおよび/または形状および極性特性)をもつクラスに分類するためのコンピュータによる分析、および活性を示す化合物間に共通した化学構造の同定により、直接的に分析されることが可能である。
当業者は、決定が、特定の状況のニーズに適した基準に基づくことが可能であること、および、決定がコンピュータソフトウエアプログラムによってなされることが可能であることを認識するであろう。クラスは、ほとんど任意の数のスカフォードを含んで作成されることができ、選ばれる基準は、任意の数のスカフォードが、各クラスについて有利であると考えられるものに達するまで、厳しくなって行く基準に基づくことが可能である。
(表面プラズモン共鳴)
結合パラメータは、表面プラズモン共鳴、たとえば、固定された結合性化合物でコートされた、BIAcore(登録商標)チップ(ビアコア(Biacore)、日本)を用いて、測定されることが可能である。表面プラズモン共鳴は、sFvまたは標的分子に対して向けられた他のリガンドの間の反応の顕微鏡的結合および解離定数を特徴づけするべく用いられる。かかる方法は一般に、参考文献として本文に含まれる以下の参考文献に記述されている。Vely, F. et al., (2000) BIAcore(登録商標) analysis to test phosphopeptide-SH2 domain interactions(ホスホペプチド−SH2ドメイン相互作用を検査するためのBIAcore(登録商標)分析), Methods in Molecular Biology. 121:313-21 ; Liparoto et al., (1999) Biosensor analysis of the interleukin-2 receptor complex(インターロイキン−2受容体複合体のバイオセンサー分析), Journal of Molecular Recognition. 12:316-21 ; Lipschultz et al., (2000) Experimental design for analysis of complex kinetics using surface plasmon resonance(表面プラズモン共鳴を用いた複合体カイネティクス分析のための実験デザイン), Methods. 20(3):310-8 ; Malmqvist, (1999) BIACORE: an affinity biosensor system for characterization of biomolecular interactions(BIACORE:生体分子相互作用の特徴づけのためのアフィニティバイオセンサーシステム), Biochemical Society Transactions 27:335-40 ; Alfthan, (1998) Surface plasmon resonance biosensors as a tool in antibody engineering(抗体エンジニアリングにおけるツールとしての表面プラズモン共鳴バイオセンサー), Biosensors & Bioelecronics. 13:653-53 ; Fivash et al., (1998) BIAcore for macromolecular interaction(高分子相互作用のためのBIAcore), Current Opinion in Biotechnology. 9:97-101 ; Price et al.; (1998) Summary report on the ISOBM TD-4 Workshop: analysis of 56 monoclonal antibodies against the MUCI mucin(ISOBM TD−4ワークショップの要約報告書:MUCIムチンに対する56のモノクローナル抗体の分析). Tumour Biology 19 Suppl 1:1-20 ; Malmqvist et al, (1997) Biomolecular interaction analysis: affinity biosensor technologies for functional analysis of proteins(生体分子相互作用分析:タンパク質の機能分析のためのアフィニティバイオセンサー技術), Current Opinion in Chemical Biology. 1:378-83 ; O'Shannessy et al., (1996) Interpretation of deviations from pseudo-first-order kinetic behavior in the characterization of ligand binding by biosensor technology(バイオセンサー技術によるリガンド結合の特徴づけにおける擬一次動的挙動からの偏差の解釈), Analytical Biochemistry. 236:275-83 ; Malmborg et al., (1995) BIAcore as a tool in antibody engineering(抗体エンジニアリングにおけるツールとしてのBIAcore), Journal of Immnological Methods. 183:7-13 ; Van Regenmortel, (1994) Use of biosensors to characterize recombinant proteins(組換えタンパク質を特徴づけるためのバイオセンサーの用途), Developments in Biological Standardization. 83:143-51 ; O'Shannessy, (1994) Determination of Kinetic rate and equilibrium binding constants for macromolecular interactions: a critique of the surface plasmon resonance literature(高分子相互作用に関する動的速度および平衡結合定数の測定:表面プラズモン共鳴文献の批評), Curernt Opinions in Biotechnology. 5:65-71。
BIAcore(登録商標)は、表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的性質を使用して、金/ガラスセンサーチップインターフェース、デキストランバイオセンサマトリックスの、表面上に位置するデキストランマトリックスへ結合されたタンパク質の濃度における変化を検出する。手短に言えば、タンパク質は既知の濃度でデキストランマトリックスへ共有結合され、タンパク質用のリガンドが、デキストランマトリックスを通して注入される。センサーチップ表面の反対側に向けられた近赤外線は反射され、また金薄膜中に一過性の波を誘起し、その結果として共鳴角として知られる特定の角度において、反射光の一時的な強度低下を引き起こす。もしセンサーチップ表面の屈折率が(たとえば、結合されたタンパク質へのリガンド結合によって)変えられた場合には、共鳴角にシフトが起こる。この角シフトは測定可能であり、共鳴単位(RUs)として表され、1000RUsが1ng/mm2の表面タンパク質濃度における変化に相当するようにする。このような変化は、任意の生物反応の結合および解離を表すセンサーグラムのy軸に沿って経時的に表示される。
(ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイ)
HTSは、典型的には、多数の化合物を通して所望の活性について化合物を検索するべく、自動化されたアッセイを使用する。典型的には、HTSアッセイは、特定の酵素または分子上で作用する化学物質をスクリーニングすることにより、新規な薬物を見出すべく使用される。たとえば、化学物質が酵素を不活性化すれば、それは病気を引き起こす細胞におけるプロセスの阻害に有効であることを証明するものであるかもしれない。ハイスループット法は、研究者に、かかる標的分子に対して何千もの異なる化学物質を、ロボット操縦システムおよび自動化された結果分析を用いて、非常に迅速にアッセイすることができるようにする。
本文において使用されるように、「ハイスループットスクリーニング」または「HTS」は、多数の化合物(ライブラリ);一般的には何万〜何十万もの化合物の、ロボットスクリーニングアッセイを用いた迅速なインビトロのスクリーニングを指す。ウルトラハイスループットスクリーニング(uHTS)は、一般に、一日あたり100,000検査を超えるまで加速されたハイスループットスクリーニングを指す。
ハイスループットスクリーニングを実現するためには、試料をマルチコンテナキャリアまたはプラットフォーム上に収容することが有利である。マルチコンテナキャリアは、複数の候補化合物の反応を同時に測定することを促進する。マルチウェルマイクロプレートは、キャリアとして使用されてよい。かかるマルチウェルマイクロレート、および非常に多くのアッセイにおけるそれらの用途は、ともにこの技術において周知であり、市販されている。
スクリーニングアッセイは、キャリブレーションおよびアッセイの成分の適正な操作の確認を目的とした、コントロールを含んでよい。すべての反応物を含むが、ケミカルライブラリのメンバーを含まないブランクウエルが、通常含められる。もう一つの実例として、そのモジュレーター用の酵素の既知の阻害剤(または活性化剤)が探し求められ、アッセイの一つの試料とともにインキュベートされ、結果として酵素活性に生じる増加(または減少)が、コンパレータまたは対照として使用されることが可能である。モジュレーターもまた、酵素の活性化剤または阻害剤と組合わされ、既知の酵素モジュレーターの存在によって別の状態で引き起こされる酵素の活性化または抑制を、阻害するモジュレーターを発見することが可能であることを認識するであろう。同様に、スフィンゴ脂質標的に対するリガンドが探し求められる場合、標的についての既知のリガンドが、対照/キャリブレーションアッセイウエル中に存在することが可能である。
(スクリーニングアッセイ中の酵素性および結合性反応の測定)
酵素性および結合性反応の進行を、たとえばマルチコンテナキャリアにおいて、測定するための技術は、この技術において周知であり、以下のものを含むが、それに限定されない。
分光光度測定および分光蛍光測定アッセイは、この技術において周知である。かかるアッセイの実例は、実施例1(b)およびGordon, A. J. and Ford, R. A., (1972) The Chemist's Companion: A Handbook Of Practical Data, Techniques, And References(化学者の手引き;データ、技術、およびリファレンスの実用ハンドブック), John Wiley and Sons, N. Y., Page 437に記述されたような、過酸化物の検出のための比色アッセイの使用を含む。
蛍光分光測定は、反応産物の生成をモニターするべく使用されてよい。蛍光方法論は一般に、吸収方法論よりも感度がよい。蛍光プローブの使用は、当業者に周知である。総説には、Bashford et al., (1978) Spectrophotometry and Spectrofluorometry: A Practical Approach(分光光度測定法および分光蛍光測定法:実用的アプローチ). pp.91-114, IRL Press Ltd;およびBell, (1981) Spectroscopy In Biochemistry(生化学における分光法), Vol. I, pp.155-194, CRC Pressを参照のこと。
分光蛍光測定法においては、標的酵素によってプロセスされた場合、その固有の蛍光を変える基質に対し、酵素が暴露される。典型的には、基質は非蛍光性であり、一以上の反応を通して蛍光体に転換される。制限するものではない実例として、SMアーゼ活性は、Amplex(登録商標)Red試薬(モレキュラー・プローブズ、オレゴン州、ユージーン(Eugene))を用いて検出されることが可能である。Amplex(登録商標)Redを用いてスフィンゴミエリナーゼ活性を測定するためには、以下の反応が行なわれる。最初に、SMアーゼはスフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホリルコリンを生じる。第二に、アルカリホスファターセがホスホリルコリンを加水分解してコリンを生じる。第三に、コリンはコリンオキシダーゼにより酸化され、ベタインを生じる。最後に、H22が、西洋ワサビペルオキシダーゼの存在下に、Amplex(登録商標)Redと反応し、蛍光性産物、レゾルフィン(Resorufin)を産生し、そこからのシグナルが分光蛍光測定法を用いて検出される。
蛍光偏光法(FP)は、受容体タンパク質のような大きい分子への結合に際して生じる、蛍光体の分子回転速度の減少に基づいており、結合したリガンドによる偏光した蛍光発行を考慮している。FPは、平面偏光による励起に続く、蛍光体発光の垂直および水平成分を測定することにより、実験的に測定される。偏光発光は、蛍光体の分子回転が減少した場合に増加する。蛍光体は、大きい分子(すなわち、受容体)へ結合した場合、蛍光体の分子回転を減速することにより、より大きい偏光シグナルを生じる。偏光シグナルの大きさは、蛍光性リガンドの結合の程度と定量的な関係がある。したがって、「結合した」シグナルの偏光は、高い親和性の結合の維持に依存している。
FPは、斉一の技術であり、かつ反応は非常に迅速であり、平衡に達するのに数秒〜数分を要する。試薬は安定であり、多数のバッチが調製されてよく、結果として高い再現性をもたらす。このような性質のため、FPは高度に自動化されることが証明されており、しばしば、単一の、予混合された、トレーサー受容体試薬を用いた単回のインキュベーションで行なわれる。総説については、Owickiet al., (1997), Application of Fluorescence Polarization Assays in High-Throughput Screenig(ハイスループットスクリーニングにおける蛍光偏光アッセイの適用), Genetic Engineering News, 17:27参照のこと。
FPは、その読み出しが発光強度とは無関係であり(Checovich, W. J. et al., (1995) Nature 375:254-256 ; Dandliker, W. B., et al., (1981) Methods in Enzymology 74:3-28)、したがって、蛍光発光を消滅させる着色化合物の存在の影響を受けないことから、特に望ましい。FPおよびFRET(下文を参照)は、スフィンゴ脂質受容体とそのリガンドとの間の相互作用を阻止する化合物の同定用に、充分に適している。たとえば、Parker et al., (2000) Development of high throughput screening assays using fluorescence polarization: nuclear receptor-ligand-binding and kinase/phosphatse assays(蛍光偏光法を用いたハイスループットスクリーニングアッセイの開発:核受容体−リガンド−結合および、キナーゼ/ホスファターゼアッセイ), J Biomol Screen 5: 77-88参照のこと。
FPアッセイに使用されてよいスフィンゴ脂質に由来する蛍光体は、市販されている。たとえば、モレキュラー・プローブズ(オレゴン州、ユージーン)は、現在スフィンゴミエリンおよびひとつのセラミド蛍光体を販売している。これらは、各々、N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ペンタノイル)スフィンゴシルホスホコリン(BODIPY(登録商標)FL C5−スフィンゴミエリン);N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノイル)スフィンゴシルホスホコリン(BODIPY(登録商標)FL C12−スフィンゴミエリン);およびN−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ペンタノイル)スフィンゴシン(BODIPY(登録商標)FL C5−セラミド)である。米国特許第4,150,949号(ゲンタマイシンに関するイムノアッセイ)は、フルオレセイン・チオカルバニル・ゲンタマイシンを含め、フルオレセイン標識されたゲンタマイシンを開示している。さらなる蛍光体は、当業者に周知の方法を用いて調製されてよい。
代表的な、標準および偏光蛍光リーダ装置は、POLARION(登録商標)蛍光偏光システム(テカン(Tecan)AG、スイス、ホムブレクチコン(Hombrechtikon))を含む。VERSAMAX(登録商標)リーダおよびSPECTRAMAX(登録商標)マルチウェルプレート分光光度計(双方ともモレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices)から)のような、他のアッセイ用の一般的なマルチウェルプレートリーダが利用可能である。
蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)は、相互作用の検出に有用なもう一つのアッセイであり、かつ記述されている。Heim et al., (1996) Curr. Biol. 6:178-182 ; Mita et al., (1996) Gene 173:13-17 ; およびSelvin et al., (1995) Meth. Enzymol. 246:300-345を参照のこと。FRETは、既知の励起および発光波長を有する、二つの近接した蛍光性物質間のエネルギー転移を検出する。実例として、タンパク質はグリーン蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質として発現されることが可能である。タンパク質が特異的に標的分子と相互作用する場合のように、二つの蛍光性タンパク質が近接している時、共鳴エネルギーは一方の励起した分子から、他方へ転移されることが可能である。結果として、試料の発光スペクトルがシフトし、それは、fMAXマルチウエル・フルオロメータ(モレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices)、カリフォルニア州、サニーベイル(Sunnyvale))のような蛍光光度計により測定されることが可能である。
シンチレーション・プロキシミティ・アッセイ(SPA)は、標的分子との相互作用の検出に特に有用なアッセイである。SPAは製薬産業において広く使用されており、かつ記述されている(Hanselman et al., (1997) J. Lipid Res. 38:2365-2373 ; Kahl et al., (1996) Anal. Biochem. 243:282-283 ; Underfriend et al., (1987) Anal. Biochem. 161:494-500)。また、米国特許第4,626,513および4,568,649号、および欧州特許第0,154,734号も参照のこと。一つの市販のシステムは、FLASHPLATE(登録商標)シンチラント・コートプレート(NENライフ・サイエンス・プロダクツ(Life Science Products)、マサチューセッツ州、ボストン)を使用している。
標的分子は、多様な周知の手段により、シンチレータプレートへ結合されることか可能である。シンチラントプレートは、GST、His6、またはFlag融合タンパク質といった融合タンパク質と結合するべく誘導体化されているものが利用可能である。標的分子がタンパク質複合体または多量体である場合、一つのタンパク質またはサブユニットがまずプレートに接着され、次いで複合体の他の成分が、後に結合条件下に添加され、結果として結合複合体を生じることが可能である。
典型的なSPAアッセイにおいては、発現プール中の遺伝子産物は放射能標識されており、ウエルに添加され、固定された標的分子である固相、およびウエル内のシンチラントコーティングと反応することができるようにする。アッセイは直ちに測定されるか、または平衡に達するようにすることが可能である。いずれの方法でも、放射能標識がシンチラントコーティングに充分近づいた時、それは、TOPCOUNT NXT(登録商標)マイクロプレートシンチレーションカウンタ(パッカード.バイオサイエンス社(Packard BioScience Co., コネチカット州、メリデン)のような装置により検出可能なシグナルを発生する。もし、放射能標識された発現産物が標的分子に結合すれば、放射能標識は検出可能なシグナルを発生するべく充分に長く、シンチラントの近傍に残留する。
対照的に、標的分子に結合しない、または一時的に結合しただけの標識タンパク質は、バックグラウンドより多くシグナルを発生するべく充分に長く、シンチラントの近傍に留まることはないであろう。ランダムなブラウン運動によって引き起こされる、シンチラント近傍での任意の時間消費もまた、結果として有意な量のシグナルを生じることはないであろう。同様に、発現段階を通じて使用された、取込まれていない残留性の放射能標識が存在してもよいが、それは標的分子と相互作用しているよりもむしろ溶液中にあることから、有意なシグナルを発生することはないであろう。このような非結合性相互作用は、それゆえ、数学的に除去されることが可能なバックグラウンドシグナルの一定レベルの原因となるであろう。もし、多すぎるシグナルが得られた場合には、所望の特異性が得られるまで、塩または他のモディファイヤーがアッセイプレートに直接添加されることが可能である(Nichols et al., (1998) Anal. Biochem. 257:112-119)。
(アッセイ化合物および分子スカフォード)
スカフォードの好ましい特徴は、低い分子量(たとえば、350Da未満、または約100から約350ダルトンまで、または約150から約300ダルトンまで)であることを含む。好ましくは、スカフォードのclogPは−1から8まで、さらに好ましくは6、5、または4未満、最も好ましくは3未満である。特定の態様においては、clogPは−1から上限2、3、4、5、6、または8までの範囲内であり;あるいは、0〜上限2、3、4、5、6、または8の範囲内である。好ましくは、回転可能な結合数は5未満、さらに好ましくは4未満である。好ましくは、水素結合供与体および受容体の数は6未満、さらに好ましくは5未満である。有用であることが可能な付加的な基準は、5未満の極性表面積である。個々の適用のための基準の同定において有用であることが可能なガイダンスは、そのすべてが参考文献として本文に含まれる、Lipinski et al., (1997) Advanced Drug Delivery Reviews 23 3-25に見出されることが可能である。
スカフォードは、好ましくは、スカフォードの置換成分が、タンパク質結合部位のポケット内に位置するようにするコンフィギュレーションにある、所与のタンパク質の結合部位へ結合する。また、コンビナトリアルライブラリを容易に作成するべく、特に合成反応を介して、化学的に修飾されることが可能な、化学的に扱いやすい基を有することは、スカフォードの好ましい特徴であってよい。また、興味のタンパク質へのスカフォードの結合を妨害しないが、スカフォードに所望の特性、たとえば、細胞および/または臓器への活発な輸送、スカフォードがクロマトグラフィーカラムへ付着されるようにして、分析を促進すること、または他の所望の特性、を達成させるようにする他の成分が、そこへ付着される場所をスカフォード上に有することも好ましくてよい。分子スカフォードは、高い親和性、中程度の親和性、低い親和性、非常に低い親和性、または極めて低い親和性での結合といった、任意の親和性をもって標的分子へ結合することができる。
したがって、上記の基準は、所望の属性をもつ、多くの化合物を試験用に選択するべく利用されることが可能である。記述された基準を有する多くの化合物が市販されており、方法が適用されるべき特別のニーズに依存して、アッセイ用に選択されてよい。
「化合物ライブラリ」または「ライブラリ」は、異なる化学構造をもつ異なる化合物のコレクションである。化合物ライブラリはスクリーン可能であり、すなわち、その化合物ライブラリの中のメンバーは、スクリーンアッセイを受けてよい。好ましい態様においては、ライブラリメンバーは、約100から約350ダルトンまでの、または約150から約350ダルトンまでの分子量を有することが可能である。ライブラリの実例は、前文に提供されている。
本発明のライブラリは、標的分子と低い親和性で結合する、少なくとも一つの化合物を含むことができる。候補化合物のライブラリは、前文に記述されたものたとえば、蛍光偏光アッセイのような、多くの異なるアッセイによってアッセイされることが可能である。ライブラリは、化学的に合成されたペプチド、ペプチドミメティクス、または、大きいか小さく、フォーカストまたはアンフォーカストであるコンビナトリアルケミカルのアレイから構成されてよい。「フォーカスト」により、化合物のコレクションが、あらかじめ特徴づけられた化合物、および/またはファルマコフォアの構造を用いて調製されることが意味される。
化合物ライブラリは、天然の供給源、人工的に合成された分子、または、合成され、単離され、または、他の、一以上の可変の成分、たとえば無関係に単離されるかまたはランダムに合成される成分、をもつようにする方法で調製された分子を含んでもよい。化合物ライブラリの分子のタイプは、本文においてその用語が使用されているような、有機化合物、ポリペプチド、および核酸、ならびにそれらの誘導体、結合体、および混合物を含むが、それに限定されない。
本発明の化合物ライブラリは、市販されているか、またはコンビナトリアルケミストリー技術、発酵技術、植物および細胞抽出法など(たとえば、Cwirla et al., (1990) Biochemistry, 87, 6378-6382 ; Houghten et al., (1991) Nature, 354,84-86 ; Lam et al., (1991) Nature, 354, 82-84 ; Brenner et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 5381-5383 ; R. A. Houghten, (1993) Trends Genet., 9,235-239 ; E. R. Felder, (1994) Chimia, 48, 512-541 ; Gallop et al., (1994) J. Med. Chem., 37, 1233-1251 ; Gordon et al., (1994) J. Med. Chem., 37, 1385-1401 ; Carell et al., (1995) Chem. Biol,. 3, 171-183 ; Madden et al., Perspectives in Drug Discovery and Design 2, 269-282 ; Lebl et al., (1995) Biopolymers, 37 177-198を参照);共有の分子構造の周りに集められた低分子;種々の市販または非市販の基によって集合された化学物質、天然産物;海洋生物、菌類、細菌、および植物の抽出物、を含むがそれに制限されない任意の方法によって、調製または取得されてよい。
好ましいライブラリは、同質の反応混合物中で調製されることが可能であり、ライブラリメンバーからの未反応試薬の分子の分離は、スクリーニングに先立って必要とされることはない。多くのコンビナトリアルケミストリーアプローチは固体の化学に基づいているが、液相のコンビナトリアルケミストリーがライブラリを作成することは可能である(Sun C. M., (1999) Recent advances in liquid-phase combinatorial chemistry(液相コンビナトリアルケミストリーにおける最近の進歩), Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening. 2:299-318)。
多様な分子タイプのライブラリが、そこから一以上のあらかじめ選ばれた属性をもつメンバーを得る目的で調製されており、それは、パラレルアレイ合成(Houghton, (2000) Annu Rev Pharmacol Toxicol 40:273-82, Parallel array and mixture −based synthetic combinatorial chemisry(パラレルアレイおよび混合ベースの合成コンビナトリアルケミストリー); 溶液相コンビナトリアルケミストリー(Merritt,(1998) Comb Chem High Throughput Screen 1(2):57-72、Solution phase combinatorial chemistry(溶液相コンビナトリアルケミストリー)、Coe et al., (1998-99) Mol Divers; 4(1):31-8, Solution-phase combinatorial chemistry(溶液相コンビナトリアルケミストリー)、Sun, (1999) Comb Chem High Throughput Screen 2(6):299-318, Recent advances in liquid-phase combinatorial chemistry(液相コンビナトリアルケミストリーにおける最近の進歩));可溶性ポリマー上の合成(Gravert et al., (1997) Curr Opin Chem Biol 1(1):107-13, Synthesis on soluble polymers: new reactions and the construction of small molecules(可溶性ポリマー上の合成:新規な反応および低分子の構築));などを含むが、これに制限されない多様な技術によって調製されることが可能である。たとえば、Dolle et al., (1999) J Comb Chem 1(4):235-82, Comprehensive survey of cominatorial library synthesis(コンミナトリアルライブラリ合成の広範囲の調査): 1998. Freidinger RM., (1999) Nonpeptidic ligands for peptide and protein receptors(ペプチドおよびタンパク質受容体のための非ペプチドリガンド), Current Opinion in Chemical Biology; and Kundu et al., Prog Drug Res;53:89-156, Combinatorial chemistry: polymer supported synthesis of peptide and non-peptide libraries(コンビナトリアルケミストリー:ポリマーに支持されたペプチドおよび非ペプチドの合成)参照のこと。化合物は、同定を容易にするため臨床的にタグされてよい。(Chabala, (1995) Curr Opin Biotechnol 6(6):633-9, Solid-phase combinatorial chemistry and novel tagging methods for identifying lead(固相コンビナトリアルケミストリーおよびリードを同定するための新規なタグづけ法))。
炭水化物のコンビナトリアル合成およびオリゴ糖を含むライブラリが記述されている(Schweizer et al., (1999) Curr Opin Chem Biol 3(3):291-8, Combinatorial synthesis of carbohydrates(炭水化物のコンビナトリアル合成))。天然の産物をベースとする化合物ライブラリの合成が記述されている (Wessjohann, (2000) Curr Opin Chem Biol 4(3):303-9, Synthesis of natural-product based compound libraries(天然の産物をベースとする化合物ライブラリの合成))。
核酸のライブラリは、制限しない実例として、アプタマーの単離に関して、本文に記述されたものを含め、種々の技術により調製される。ストレプトアビジン磁気ビーズ上にディスプレイされた、オリゴヌクレオチドおよびポリアミノオリゴヌクレオチドを含むライブラリ(Markiewicz et al., (2000) Synthetic oligonucleotide combinatorial libraries and their applications(合成オリゴヌクレオチドコンビナトリアルライブラリおよびそれらの適用), Farmaco. 55:174-7)が周知である。核酸ライブラリは周知であり、パラレルサンプリングと組合わされ、自動化された質量分析法(Enjalbal C. Martinez J. Aubagnac JL, (2000) Mass spectrometry in combinatorial chemistry(コンビナトリアルケミストリーにおける質量分析法), Mass Spectrometry Reviews. 19:139-61)およびパラレルタギング(Perrin DM., Nucleic acids for recognition and catalysis: landmarks, limitations, and looking to the future(認識および触媒のための核酸:目標物、限界、未来の展望), Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening 3:243-69)のように、複雑な手法なしにデコンボリュートされることが可能である。
ペプチドミメティクスは、コンビナトリアルケミストリーおよび固相合成を用いて同定される(Kim HO. Kahn M., (2000) A merger of rational drug design and combinatorial chemistry: development and application of peptide secondary structure mimetics(合理的なドラッグデザインおよびコンビナトリアルケミストリーの統合:ペプチド二次構造ミメティクスの開発および適用), Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening 3:167-83; al-Obeidi, (1998) Mol Biotechnol 9(3):205-23, Peptide and peptidomimetric libraries. Molecular diversity and drug design(ペプチドおよびベプチドミメティクスライブラリ。分子デリバリーおよびドラッグデザイン))。合成は、完全にランダムであるか、または一部は既知のポリペプチドをベースとしてもよい。
ポリペプチドライブラリは、種々の技術により調製されることが可能である。手短にいえば、ファージディスプレイ技術が、ポリペプチドリガンドを生成するべく用いられてよく(Gram H., (1999) Phage display in proteolysis and signal transduction(タンパク質分解およびシグナル伝達におけるファージディスプレイ), Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening. 2:19-28)、それはペプチドミメティクスの合成のベースとして使用されてよい。ポリペプチド、拘束されたポリペプチド、タンパク質、タンパク質ドメイン、抗体、単鎖抗体フラグメント、抗体フラグメント、および抗体結合部位は、選択のため線状ファージの上にディスプレイされる。
ヒト単鎖Fv抗体の個々の変異体の大きいライブラリが作成されている。たとえば、Siegel RW. Allen B. Pavlik P. Marks JD. Bradbury A., (2000) Mass spectral analysis of a protein complex using single-chain antibodies selected on a peptide target: applications to functional genomics(ペプチド標的に対して選択された単鎖抗体を用いたタンパク質複合体の質量スペクトル分析:機能ゲノミクスへの適用), Journal of Molecular Biology 302:285-93; Poul MA. Becerril B. Nielsen UB. Morisson P. Marks JD.,(2000) Selection of tumor-specific internalizing human antibodies from phage libraries(ファージライブラリからの腫瘍特異的内部化ヒト抗体の選択). Source Journal of Molecular Biology. 301:1149-61; Amersdorfer P. Marks JD., (2001) Phage libraries for generation of anti-botulinum scFv antibodies(抗ボツリヌスscFv抗体の生成のためのファージライブラリ), Methods in Molecular Biology. 145:219-40; Hughes-Jones NC. Bye JM. Gorick BD. Marks JD. Ouwehand WH., (1999) Synthesis of Rh Fv phage-antibodies using VH and VL germline genes(VHおよびVL生殖系列遺伝子を用いたRhFvファージ抗体の合成), British Journal of Haematology. 105:811-6; McCall AM. Amoroso AR. Sautes C. Marks JD. Weiner LM., (1998) Characterization of anti-mouse Fc gamma RII single-chain Fv fragments derived from human phage display libraries(ヒトファージディスプレイライブラリに由来する抗マウスFcガンマRII単鎖Fvフラグメントの特徴づけ), Immunotechnology. 4:71-87; Sheets MD. Amersdorfer P. Finnern R. Sargent P. Lindquist E. Schier R. Hemingsen G. Wong C. Gerhart JC. Marks JD. Lindquist E., (1998) Efficient construction of a large nonimmune phage antibody library: the production of high-affinity human single-chain antibodies to protein antigens(大きい非免疫ファージ抗体ライブラリの効率的な構築:タンパク質抗原に対する高親和性ヒト単鎖抗体の産生) (published erratum appears in Proc Natl Acad Sci USA 1999 96:795), Proc Natl Acad Sci USA 95:6157-62)参照のこと。
フォーカスト、またはスマートケミカルライブラリ、およびファーマコフォアライブラリは、コンピュータ化学(e.g., Kundu B. Khare SK. Rastogi SK., (1999) Combinatorial chemistry: polymer supported synthesis of peptide and non-peptide libraries(コンビナトリアルケミストリー:ポリマーに支持されるペプチドおよび非ペプチドライブラリの合成), Progress in Drug Research 53:89-156)、および、データベース検索およびドッキング、ドゥノボドラッグデザイン、およびリガンド結合親和性の推定を用いた、構造に基づくリガンドの使用(Joseph-McCarthy D., (1999) Computational approaches to structure-based ligand design(構造に基づくリガンド設計のためのコンピュータアプローチ), Pharmacology & Therapeutics 84:179-91; Kirkpatrick DL. Watson S. Ulhaq S., (1999) Structure-based drug design: combinatorial chemistry and molecular modeling(構造に基づくドラッグデザイン:コンビナトリアルケミストリーおよび分子モデリング), Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening. 2:211-21; Eliseev AV. Lehn JM., (1999) Dynamic combinatorial chemistry: evolutionary formation and screening of molecular libraries(動的コンビナトリアル化学:分子ライブラリーの進化的形成およびスクリーニング), Current Topics in Microbiology & Immunology 243:159-72; Bolger et al., (1991) Methods Enz. 203:21-45; Martin, (1991) Methods Enz. 203:587-613; Neidle et al., (1991) Methods Enz. 203:433-458;米国特許第6,178,384号)、を含む洗練された戦略の助けを借りて設計されることが可能である。
X.結晶学
結合性化合物が測定された後、標的へ結合した化合物の方位が測定される。好ましくは、この測定は、分子スカフォード化合物の、標的との共結晶についての結晶学を含む。ほとんどのタンパク質結晶学プラットフォームは、装置の物理的パラメータおよび操作の便利さのため、タンパク質標的に結合する化合物、リガンド、または分子スカフォードの、好ましくは約500までの共複合体を分析するべく設計されることが可能である。もし、結合活性をもつスカフォードの数が、結晶学的方法の適用に便利な数を超えた場合には、スカフォードは、少なくとも一つの共通な化学構造または他の望ましい特徴を有することに基づき、群を成して置かれ、代表的な化合物が一以上のクラスから選ばれてよい。クラスは、厳しい基準を増やすことにより、所望の数のクラス(たとえば、500)が得られるまで作成されてよい。クラスは、クラス内の分子スカフォードの間の化学構造の類似性に基づくことが可能であり、たとえば、すべてがピロール環、ベンゼン環、または他の特徴をもつ。同様に、クラスは形状特性、たとえば空間充填特性に基づくことが可能である。
共結晶学的分析は、スカフォードがスクリーニングアッセイにおいて活性を示したスカ濃度において、各スカフォードをその標的と共複合することにより実行されてよい。この共複合は、標的分子とともに、低いパーセントの有機溶媒を使用し、各スカフォードを用いて標的を濃縮することによって達成されてよい。好ましい態様においては、これらの溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、メタノール、またはエチレングリコールといった、水または他の水性溶媒中の5%未満の有機溶媒である。標的分子へ結合した各スカフォードは、次に、適当な数の結晶化スクリーニング条件を用いて、4および20度の双方においてスクリーニングされてよい。好ましい態様においては、共複合および共結晶条件、および標的分子の結合部位におけるスカフォードの方位について充分な情報を得るため、約96の結晶化スクリーニング条件が実施されてよい。次に、分子ファミリーメンバーの結合部位内または一以上の結合ポケット内において、結合したスカフォードが物理的にどの方位にあるかを測定するべく、結晶構造が分析されてよい。
タンパク質ファミリーについて、どれが最も適したスカフォードであるかを測定するため、標的タンパク質へ結合した化合物の原子座標を測定することが望ましい。X線結晶学分析は、原子座標の測定にそれゆえ最も好ましい。選ばれた化合物は、医薬品化学の適用についてさらに検査されてよい。化合物は、標的分子中の結合位置に基づき、医薬品化学試験について選択されることが可能である。たとえば、化合物が結合部位に結合する場合、標的分子中の結合部位における化合物の結合位置は、化合物の化学的に扱いやすい構造または部分構造に対して行なわれることが可能な化学に関連して、かつ化合物に対するかかる修飾がどのようにして標的の結合部位上の構造または部分構造と相互に影響し合うかが、考慮されることが可能である。したがって、高い効力および/または選択性をもってリガンドに到達するべくスカフォードをいかに修飾するかについて決定するため、標的の結合部位およびスカフォードの化学を探ることが可能である。このプロセスは、共複合体から直接得られる構造および化学的情報を利用することにより、さらに直接的なリガンドの設計を可能にし、それにより有利な薬物製品に導く見込みのあるリード化合物を、さらに効率的かつ迅速に設計することができるようにする。種々の態様において、結合するすべてのスカフォードについて、あるいは、特定の親和性を持って結合するもの、たとえば、高い親和性、中程度の親和性、低い親和性、非常に低い親和性、または極めて低い親和性をもって結合するもののみについて、共結晶学を実施することが望ましくてよい。また、任意の親和性の組み合せをもって結合するスカフォードの選択に対し、共結晶学を実施することも有利であってよい。
X線イメージングプレート検出器またはシンクロトロンビームラインとともに、RigakuRU−200(登録商標)(Rigaku、東京)を使用することによるといった、標準的なX線タンパク質回折研究が、共結晶に対して行なわれることが可能であり、回折データは、CCD検出器またはX線イメージングプレート検出器といった、標準的なX線検出器で測定される。
約200個の共結晶に対してX線結晶学を実施することは、一般に約50個の共結晶構造をもたらすこととなり、それは約10個のスカフォードを化学における確証のために与えることとなり、それは最終的に、標的分子について約5個の選択的なリードを生じる結果となる。
(バーチャルアッセイ)
標的と、与えられた座標のセットからの化合物との複合体についての、三次元のグラフィカル表現を生じる市販のソフトウエアは、化合物が標的へ結合する際、どのように方位するかを例示および研究するべく使用されることが可能である(たとえば、QUANTA(登録商標)、アクセラリーズ、カリフォルニア州、サンディェゴ)。したがって、標的の結合部位の結合ポケットの存在は、本発明において特に有用であってよい。このような結合ポケットは、結晶学的構造決定によって明らかにされ、標的の結合部位に対する化合物の結合に関与する詳細な化学的相互作用を示す。当業者は、イラストレーションがまた、複合体のどこに空いているスペースが局在するか、および、そこへフィットするためにどのような化学構造物が、適したサイズおよび/または電荷特性をもつかを検討することにより、結合性または他の所望の効果を増強するべく、化学基がどこに付加され、置換され、修飾されるか、またはスカフォードから欠失されてよいかを決定するべく用いられることも可能であることを認識するであろう。当業者は、結合部位内の領域がフレキシブルであって、その特性が、スカフォード結合の結果として変化することが可能であること、および、このような領域に対して化学基が特異的にターゲットされ、所望の効果を達成することが可能であることも認識するであろう。分子スカフォード上の特定の場所は、適当な化学的部分構造がどこへ付着され得るか、どのコンフォメーションにおいてか、またどの部位が最も有利な利用可能な化学をもつかについて、検討されることが可能である。
化合物を標的タンパク質へ結合する力の理解は、どの化合物がスカフォードとして最も有利に使用されるか、またどの特性が最も効果的に操作されることが可能であるかを、リガンドの設計において明示する。当業者は、位置的、イオン的、水素結合、および他の力が、標的−化合物複合体の維持または増強へのそれらの寄与について考慮されることが可能であることを認識するであろう。自動化されたコンピュータ法を用いて、脱溶媒ペナルティのような他の強力な影響の原因となる、ドッキングおよび/または自由エネルギー振動(FEP)といった付加的なデータが得られることが可能である。選ばれた化合物は、標的との化学的相互作用について情報を生み出すべく、あるいは化合物の結合の選択性を増強する化学的修飾の解明ため、使用されることが可能である。
ホモロジーモデル(すなわち、既知の、実験的に導き出された構造に基づく)のようなコンピュータモデルは、共結晶構造からのデータを用いて構築されることが可能である。標的分子がタンパク質または酵素である場合、ホモロジーモデルを作成するために好ましい共結晶構造は、モデル化されるタンパク質配列の結合部位において高い配列同一性を含んでおり、タンパク質はまた、好ましくは選択的に同じクラスおよび/またはフォールドファミリーに入るであろう。タンパク質の活性部位における保存残基についての知識は、結合部位を正確に表すホモロジーモデルを選択するべく使用されることが可能である。ホモロジーモデルはまた、アポまたは共結晶構造が標的タンパク質に対して存在する、代用タンパク質からの構造情報をマップするべく使用されることが可能である。
ドッキングのようなバーチャルスクリーニング法はまた、結合のスカフォードのコンフィギュレーションおよび、ホモロジーモデルに対するスカフォード、化合物、および/またはコンビナトリアルライブラリメンバーの親和性を予想するべく使用されることが可能である。このデータを用いること、およびコンピュータソフトウエアを用いて「バーチャル実験」を行なうことは、相当な物質を節約することができ、当業者に、実際にリガンドを合成しかつ共結晶化を行なうことなしに、どれが好適なスカフォードまたはリガンドであり得るかを決定できるようにする。したがって決定は、どの化合物が実際の合成および共結晶化に値するかについて行なわれることが可能である。かかる化学的相互作用について理解することは、さらに有利に標的タンパク質と相互作用し、および/または、一つのタンパク質ファミリーメンバーに対し、他を超えてより選択的である薬物の発見および設計の助けとなる。したがって、これらの原理を適用することにより、優れた特性をもつ化合物が発見されることが可能である。
共結晶化を促進する添加剤はもちろん、共結晶の形成を増強する目的で、標的分子に含められてよい。タンパク質または酵素の場合には、検査されるスカフォードがタンパク質配合物へ添加されてよく、それは好ましくは約1mg/mlの濃度で存在する。配合物はまた、0%〜10%(v/v)の間の有機溶媒、たとえば、DMSO、メタノール、エタノール、プロパンジオール、または1,3ジメチルプロパンジオール(MPD)か、またはこれらの有機溶媒のいくつかの組み合せを含むことができる。化合物は、好ましくは約10mMの濃度で有機溶媒中に溶解され、約100mMの濃度のタンパク質試料へ添加される。タンパク質−化合物複合体は次に、約5から約20mg/mlまでのタンパク質の最終濃度に濃縮される。複合体化および濃縮の段階は、96ウエルフォーマットの濃縮装置を用いて便利に行なわれることが可能である(たとえば、アミコン・インク(Amicon Inc.)、ニュージャージー州、ピスカタウェイ)。結晶化される配合物中に存在する緩衝液および他の試薬は、結晶化を促進するか、または結晶化の条件に適合する、DTT、プロパンジオール、グリセロールといった、他の成分を含むことが可能である。
結晶化実験は、濃縮されたタンパク質−化合物複合体の少量のアリコート(1μl)を、96ウエルフォーマットにおくこと、および96の結晶化条件下にサンプリングすることによって組立てられてよい。(他のスクリーニングフォーマット、たとえば96より多いウエルをもつプレートが使用されてよい。)結晶は、典型的には、異なる温度に置かれた96ウエルの結晶化プレートを含むことができる、標準的な結晶化プロトコールを用いて取得されることが可能である。所望であれば、温度以外の共結晶化を変える因子もまた、各タンパク質−化合物複合体について検討されてよい。たとえば、大気圧、光または酸素の有無、重力の変化、および多くの他の変数がすべて検査されてよい。当業者は、他の変数が有利に変えられ、かつ検討されてよいことを理解するであろう。
(リガンド設計および調製)
リガンドの設計および調製は、活性のあるセットのスカフォードの間で共通の化学構造を検討することにより、構造および/または共結晶化データを用いて、または用いずにおこなわれることが可能である。このプロセスにおいて、構造−活性仮説が形成され、スカフォードのかなりの数に存在することが見出された化学構造が、低い親和性をもって結合するものを含めて、スカフォードの結合に何らかの影響を及ぼすものと推定される。この結合は、それが生物学的系(たとえば、処置された哺乳類)において生じた場合、所望の生化学的効果を誘導することが推定されてよい。新規な、または修飾されたスカフォード、あるいはスカフォードに由来するコンビナトリアルライブラリは、最大数の結合および/または構造−活性仮説に対して反証を挙げるべく検査されてよい。残った仮説は、所望の結合および生化学的効果を達成するリガンドを設計するべく使用されてよい。
しかし多くの場合には、所望の結合作用(たとえば、高い親和性での、または高い選択性をもった結合)を達成するべくスカフォードをいかに修飾すべきかを検討するために、共結晶学データをもつことが好ましい。タンパク質および酵素の事例を用いれば、共結晶学データは、タンパク質の結合ポケットを、結合部位へ結合した分子スカフォードとともに示し、スカフォード上の化学的に扱いやすい基に対し、修飾が行なわれ得ることが明らかとなるであろう。たとえば、タンパク質結合部位またはポケットにおける小さい体積の空間は、その体積を埋める小さい化学基を含むべくスカフォードを修飾することにより、充満されてよい。空隙容積を埋めることにより、結果として、より大きい結合親和性を生じるか、または望ましくない別のタンパク質ファミリーのメンバーに対する結合を失うことが期待されてよい。同様に、共結晶学データは、スカフォード上の化学基の欠失が、結合に対する障害を減少させ、結果としてより大きい結合親和性または特異性を生じる結果となってよいことを示してもよい。
タンパク質の結合部位またはポケットに局在する帯電した化学基の存在を利用することが望ましくてよい。たとえば、正に帯電した基は、分子スカフォードへ導入された負に帯電した基によって補足されることが可能である。このことは、結合親和性または結合特異性を増大し、それによってより望ましいリガンドを生じる結果となることが期待されてよい。多くの場合、タンパク質結合部位またはポケットの領域は、その領域のアミノ酸の差異に基づき、一つのファミリーメンバーから別のものへ変わることが知られている。このような領域における化学物質の添加は、結果としてある相互作用(たとえば、疎水性、静電的、またはエントロピックな)を生じるかまたは除去することが可能であり、そのことが、化合物を一つのタンパク質標的に対して、他よりもさらに特異的にするか、またはより大きい親和性をもって結合できるようにし、それにより、特定のファミリーメンバーに対してさらに大きい選択性または親和性をもつ化合物を合成することが可能となる。さらに、ある領域は、他よりもフレキシブルであることが知られているアミノ酸を含むことが可能である。このことは、しばしば、アルファへリックスまたはベータ鎖のような、タンパク質の二次構造の要素を連接するループ中に含まれるアミノ酸において起こる。化学的成分の付加はまた、興味のタンパク質標的と化合物との間に生じる特異的相互作用の可能性を高める目的で、こうしたフレキシブルな領域へ向けられることが可能である。バーチャルスクリーニング法はまた、化合物の化学的付加、削減、修飾、および/または置換を、タンパク質ファミリーまたはクラスのメンバーについて査定するべく、インシリコにおいて行なわれることが可能である。
スカフォードに対する化学構造または部分構造の付加、削減、または修飾は、任意の化学的成分を用いて行なわれてよい。たとえば以下の成分は、単なる例として提供されかつ何ら制限することを意図したものではないが、利用可能であり:水素、アルキル、アルコキシ、フェノキシ、アルケニル、アルキニル、フェニルアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルケニルチオ、フェニル、フェニルアルキル、フェニルアルキルチオ、ヒドロキシアルキル−チオ、アルキルチオカルバミルチオ、シクロヘキシル、ピリジル、ピペリジニル、アルキルアミノ、アミノ、ニトロ、メルカプト、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン原子、ハロメチル、酸素原子(たとえば、ケトンまたはN−オキシドの形成)、または硫黄原子(たとえば、チオール、チオン、ジ−アルキルスルホキシド、またはスルホンの形成)は、すべて利用可能な成分の実例である。
利用可能な構造または部分構造の付加的な実例は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボキシレート、カルボキサミド、ニトロ、およびエステル成分からなる群より独立して選ばれる、1、2、または3個の置換基により任意に置換されたアリール;式−NX23のアミンであって、X2およびX3は独立して、水素、飽和または不飽和のアルキル、およびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ;ハロゲンまたはトリハロメチル;式−COX4のケトンであって、X4は、アルキルおよびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ;式−(X5nCOOHのカルボン酸か、または式(X6nCOOHのエステルであって、X5、X6、およびX7は、独立して、アルキルおよびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ、かつnは0または1であり;式(X8nOHのアルコール、または式−(X8nOX9のアルコキシ成分であって、X8およびX9は、独立して、飽和または不飽和のアルキルおよびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ、前記環は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボキシレート、ニトロ、およびエステルからなる群より独立して選ばれる一以上の置換基で任意に置換されており、かつnは0または1であり;式NHCOX10のアミドであって、X10は、アルキル、ヒドロキシ、およびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ、前記環は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボキシレート、ニトロ、およびエステルからなる群より独立して選ばれる一以上の置換基で任意に置換されており;SO2、NX1112であって、X11およびX12は、水素、アルキル、およびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ;アルキル、アルコキシ、ハロゲン、トリハロメチル、カルボキシレート、カルボキサミド、ニトロ、およびエステル成分からなる群より独立して選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換された、ホモ環式またはヘテロ環式成分;式−CHOのアルデヒド;式−SO213のスルホンであって、X13は、飽和または不飽和のアルキルおよびホモ環式またはヘテロ環式成分からなる群より選ばれ;および、式−NO2のニトロである。
(分子スカフォードおよびリガンド上の付着部位の同定)
キナーゼおよび他の酵素のためのリガンドの同定ならびに開発に加えて、結合部位における分子スカフォードまたは他の結合性化合物の方位の測定は、結合性分子の、別の化合物に対する付着のための、エネルギー的に許容される部位の同定を可能にする。かかる部位にとり、付着した化合物の存在に関連した自由エネルギー変化が、キナーゼに対する化合物の結合を、結合を乱す程度にまで不安定化させるべきではない。好ましくは、付着のある結合エネルギーは、少なくとも4kcal/mol、さらに好ましくは、少なくとも6、8、10、12、15、または20kcal/molであるべきである。好ましくは、特定の場所における付着物の存在は、3、4、5、8、10、12、または15kcal/mol以下まで、結合エネルギーを減少させる。
多くの場合、好適な付着部位は、結合性化合物が結合部位へ結合されるとき、溶媒に対して暴露されている部位であろう。いくつかの場合には、過剰なエネルギーコストなしに、結果として酵素の一部分の小さい置き換えを生じることとなる付着部位が、使用されることが可能である。暴露された部位は、種々の方法で同定されてよい。たとえば、暴露された部位は、グラフィックディスプレイまたは3次元モデルを用いて同定されてよい。コンピュータディスプレイのようなグラフィックディスプレイにおいては、結合部位へ結合された化合物のイメージは、視覚的に詳細に検査され、化合物上の原子または基が、溶媒に対して暴露され、かつ、かかる原子または基における付着が、酵素の結合および化合物の結合を排除しないよう方位されていることを明らかにすることができる。付着のエネルギーコストは、付着によって生じる変化または変形、ならびにエントロピー変化に基づき計算されることが可能である。
多くの異なるタイプの成分が付着されてよい。当業者は、種々の付着のための化学の使用に精通しているであろう。付着されてよい成分の実例は、これに限定されないが、中でも:ビーズ、プレート、チップ、およびウエルのような固相成分;直接的または間接的な標識トレースレスリンカーであってもよいリンカー;を含む。かかるリンカーは、それ自身が他の成分、たとえば、固相媒体、標識、および/または結合性成分へ付着されることが可能である。
化合物の結合エネルギーおよび、分子を別の成分へ付着することに関する結合エネルギーへの影響は、任意の多様な利用可能なソフトウエアを用いるか、または手動計算により概算されることが可能である。実例は以下の通りである:
計算は、二つのキナーゼ;PIM−1およびCDK2に対する種々の有機分子の結合エネルギーを推定するべく行なわれた。検討された有機分子は、PIM−1およびいくつかのリンカーに結合する同定された化合物、スタウロスポリンを含んでいた。
タンパク質−リガンド複合体の間の計算された結合エネルギーは、トリポス・ソフトウェア・スーツのFlexXスコア(ボーム(Bohm)スコアリング関数のインプレメンテーション)を用いて得られた。方程式の形は下記のEqn.1に示されている:
ΔGbind=ΔGtr+ΔGhb+ΔGion+ΔGlipo+ΔGarom+ΔGrot
式中、ΔGtrは、リガンドの回転および並進エントロピーの損失全体を説明する定数項であり、ΔGhbは、リガンドとタンパク質との間に形成された水素結合を説明するものであり、ΔGionは、リガンドとタンパク質との間のイオン性相互作用を説明するものであり、ΔGlipoは、タンパク質−リガンド接触表面に対応する親油性相互作用を説明するものであり、ΔGaromは、タンパク質の芳香環とリガンドとの間の相互作用を説明するものであり、かつΔGrotは、結合時のリガンド中の回転可能な結合の制限についてのエントロピーのペナルティを説明するものである。
この方法は、それについて結晶構造が存在する標的タンパク質に対し、リード化合物がもつべき自由エネルギーを推定し、かつフレキシブルなリンカーについてのエントロピーのペナルティを説明するものである。それゆえ、それはスクリーンされる分子へのリンカーの付着によって受けた自由エネルギーペナルティ、および、リンカーの自由エネルギーペナルティに打ち勝つためにリード化合物がもつべき結合エネルギーを推定するべく使用されることが可能である。この方法は溶媒和を考慮に入れておらず、エントロピーのペナルティは、リンカーが、ビオチン:ストレプトアビジン複合体のような、もう一つの結合複合体を介して固相へ結合される場合には、高く見積もられるようである。
共結晶は、PIM−1の残基を、CDK2中の対応する残基と重ね合わせることによりアラインされた。これらの計算に使用されたPIM−1構造は、PYK2と結合性化合物との共結晶である。使用されたCDK2:スタウロスポリン共結晶は、Brookhavenデータベースファイル1aq1からであった。水素原子がタンパク質へ添加され、原子の電荷はSybyl内のAMBER95パラメータを用いてアサインされた。記述された化合物への修飾は、トリポスからのSybylモデリングスーツを用いて得られた。
このような計算は、所与の標的へ強く結合する化合物(スタウロスポリン:CDK2のような)について計算された結合エネルギーが、−25kcal/molより低くてよく、一方良好なスカフォードまたは最適化されていない結合性化合物について計算された結合親和性は、−15〜−20の範囲内でよいことを示している。エチレングリコールやヘキサトリエンといったリンカーへの付着に関する自由エネルギーペナルティは、典型的には+5〜+15kcal/molの範囲内にあると推定される。
(リンカー)
本発明における使用に適したリンカーは、多くの異なるタイプのものであってよい。リンカーは、結合性化合物への、および他の特定の適用において利用される成分への、付着に適合したリンカー化学のような因子に基づき、特定の適用のために選択されることが可能である。付加的な因子は、これに限定されないが、リンカーの長さ、リンカーの安定性、および適当な時間にリンカーを除去する能力を含むことができる。代表的なリンカーは、これに限定されないが、ヘキシル、ヘキサトリエニル、エチレングリコール、およびペプチドリンカーを含む。たとえば、Plunkett, M. J., and Ellman, J. A., (1995), J. Org. Chem., 60:6006に記述されたようなトレースレスリンカーもまた使用可能である。
典型的な官能基は、結合性化合物をリンクするべく利用され、これに限定されないが、カルボン酸、アミン、ヒドロキシル、およびチオールを含む(実例は、Solid-supported combinatorial and parallel synthesis of small molecular weight compound libraries(低分子化合物ライブラリの固体支持コンビナトリアルおよびパラレル合成); (1998) Tetrahedron organic chemistry series Vol.17; Pergamon; p85に見出すことができる)。
(標識)
前文に示したように、標識もまた結合性化合物か、または結合性化合物へ付着したリンカーへ付着されてよい。かかる付着は直接的(結合性化合物へ直接に付着した)であるか、または間接的(結合性化合物へ直接または間接的に付着した成分へ付着した)でよい。かかる標識は、直接または間接的に、化合物を検出できるようにする。標識の付着は、通常の化学を用いて行なわれてよい。標識は、たとえば、蛍光標識、放射標識、光散乱粒子、光吸収粒子、磁気粒子、酵素、および特異的な結合剤(たとえば、ビオチンまたは抗体標的成分)を含んでよい。
(固相媒体)
結合性化合物へ直接または間接的に付着されることが可能な化合物の付加的な実例は、種々の固相媒体を含む。リンカーおよび標識の付着と同様に、固相媒体への付着は通常の化学を用いて行なわれてよい。かかる固相媒体は、たとえば、ビーズ、ナノ粒子、およびファイバーといった小さい成分を含んでよい(たとえば、懸濁液中か、またはゲルまたはクロマトグラフィーマトリックス中)。同様に固相媒体は、たとえば、プレート、チップ、スライド、およびチューブといった、大きい物体を含むことが可能である。多くの場合、結合性化合物は、かかる物体の一部分でのみ、たとえば、一般には平面上の、またはウエルまたはウエルの一部における、スポットまたは他の局所的な要素、において付着される。
(生物製剤の同定)
タンパク質についての構造情報を所有することはまた、抗体の開発のためのエピトープのような有用な生物薬剤の同定、活性に影響を及ぼすことが期待される突然変異部位の同定、および、標識、リンカー、ペプチド、および固相媒体といった物質へのタンパク質の付着を可能にする付着部位の同定を提供する。
抗体(Abs)は、バイオテクノロジー、薬物および診断を含め、多様な領域において多くの適用を見出しており、実際それらはライフサイエンス研究のための最も強力な道具の一つである。タンパク質抗原に対して向けられたAbsは、線状または天然の三次元(3D)のエピトープを認識することができる。3Dエピトープを認識するAbsの獲得は、免疫原として天然タンパク質全体(または天然のコンフォメーションを呈する一部分)の使用を必要とする。残念なことに、この常に選択肢というわけではないことは、種々の技術的理由による:たとえば、天然のタンパク質は実に入手し難く、タンパク質が毒性であるか、または高密度の抗原の提示を利用することが望ましいことである。かかる場合に、ペプチドで免疫化することは、別法である。もちろん、この方法で生成されたAbsは、線状エピトープを認識することができ、またそれらは供給源の天然タンパク質を認識するかもしれないし、しないかもしれないが、しかしなお、ウェスタンブロットのような標準的な研究室での適用には有用であろう。免疫原としての使用のためのペプチドの選択は、以下の特定の選択規則に従うこと、および/またはエピトープ予測ソフトウエアの使用により成し遂げられることが可能である。
抗原性ペプチドを予測する方法は、絶対確実ではないが、タンパク質からのどのペプチドフラグメントが抗原性の見込みがあるかを決定するべく従われることが可能ないくつかの規則がある。これらの規則はまた、特定のペプチドに対するAbが天然のタンパク質を認識する可能性を高めるべく指図される。
・1.抗原性ペプチドは、溶媒アクセシブルな領域に局在するはずであり、疎水性および親水性残基の双方を含む。
○既知の3D構造のタンパク質については、溶媒アクセシビリティは、中でも、DSSP、NACESS、またはWHATIFといった種々のプログラムを用いて測定されてよい。
○もし3D構造が既知でなければ、アクセシビリティを予測する任意の以下のウエブサービスを使用する:PHD、JPRED、PredAcc(c) ACCpro。
・2.好ましくは、らせん領域に局在するペプチドを避け、二次構造(SS)モチーフをつないでいる長いループ中にあるペプチドを選択する。このことは、Abが天然のタンパク質を認識する可能性を増大するであろう。かかるペプチドは、たとえば、結晶構造か、または構造に基づくホモロジーモデルから同定される。
○既知の3D座標をもつタンパク質については、SSは、Brookhavenデータバンクにおける関連したエントリーのシーケンスリンクから取得可能である。PDBsumサーバーもまた、pdb recordsのSS分析を提供している。
○何ら構造が利用できない場合、二次構造予測は任意の以下のサーバーから取得可能である:PHD、JPRED、PSI−PRED、NNSPなど。
・3.可能であれば、タンパク質のN−およびC−末端領域にあるペプチドを選択する。タンパク質のN−およびC−末端領域破、通常、溶媒近接性でありかつ構造がないことから、こうした領域に対するAbsもまた、天然のタンパク質を認識しやすい。
・4.細胞表面糖タンパク質については、N−グリコシル化のためのコンセサス部位を含有するものは、最初のペプチドから除外する。
○N−グリコシル化部位は、Scanprosite、またはNetNGlycを使用して検出されることが可能である。
さらに、実験的に測定されたエピトープの種々の物理化学的特性に(フレキシビリティ、ハイドロフィビリティ、アクセシビリティ)に基づく、いくつかの方法が抗原決定基の予測用に公表されており、使用可能である。The antigenic indexおよびPreditopが実例である。
抗原決定基の予測のための最も単純な方法は、おそらくKolskarおよびTongaonkarのものであり、それは実験的に測定されたエピトープ内のアミノ酸残基の出現率に基づいている(Kolaskar and Tongaonkar (1990) A semi-empirical method for prediction of antigenic determinants on protein antigens(タンパク質抗原上の抗原決定基の半経験的予測法). FEBBS Lett. 276(1-2):172-174)。予測アルゴリズムは、以下のように作業する:
・1.各々重なり合う7量体について平均的傾向を計算し、結果を7量体の中央残基(i+3)へ割当てる。
・2.タンパク質全体について平均を計算する。
・3.(a)もしタンパク質全体の平均が1.0より大きければ、1.0より大きい平均傾向をもつ全ての残基は潜在的に抗原性である。
・3.(b)もしタンパク質全体の平均が1.0より小さければ、タンパク質全体の平均より上であるすべての残基は潜在的に抗原性である。
・4.すべての残基が上記の段階3によって選ばれる8量体(元の論文では6量体)を見つける。
KolskarおよびTongaonkarの方法はまた、GCGパッケージからも入手可能であり、その処理はコマンドegcgを用いる。
結晶構造もまた、そこでの突然変異がタンパク質の活性を変えそうな残基の同定を可能にする。かかる残基は、たとえば、基質と相互作用する残基、保存された活性部位残基、および三次元相互作用に関与する二次規則構造の領域にある残基を含む。活性に影響を及ぼしそうな突然変異は、様々な分子の状況について変えるであろう。活性に影響を及ぼしそうな活性部位における突然変異は、典型的には置換または欠失であって、電荷または水素結合性相互作用を除去するか、または立体障害を導入する。二次構造領域または分子相互作用領域における突然変異は、たとえば、領域の疎水性/親水性を変えるか、または活性部位の近傍または含む領域に、充分なひずみを導入して、活性部位内の重要な残基が置き換えられるようにする置換を含む。かかる置換および/または欠失および/または挿入が認められており、突然変異の予想される構造および/またはエネルギー効果は、通常のソフトウエアを用いて計算されることが可能である。
IX.キナーゼ活性のアッセイ
キナーゼ活性のための多くの異なるアッセイが、特定のキナーゼまたはキナーゼの群について、活性モジュレーターをアッセイするため、および/またはモジュレーターの特異性を測定するために利用されてよい。下文に述べられるアッセイに加えて、当業者は、他利用可能であり、かつ特定の適用のためにアッセイを修正することができる他のアッセイを理解するであろう。
PYK2のために使用可能なキナーゼ活性の代表的なアッセイは、精製されたキナーゼを用いた以下の方法により、基質としてミエリン塩基性タンパク質(MBP)を用いて行なわれることが可能である。代表的なアッセイは、以下の物質を使用することができる:MBP(M−1891,シグマ(Sigma));キナーゼ緩衝液(KB=HEPES 50mM、pH7.2、MgCl2:MnCl2(200μM:200μM);ATP(γ−33P):NEG602H(10mCi/mL)(パーキン・エルマー(Perkin-Elmer));ATP、キナーゼ緩衝液中100mMのストックとして;EDTA、100mMのストック溶液として。
放射能カウンティングに適したシンチレーションプレート(たとえば、パーキン・エルマーからの、SMP200(basic)のようなFlashPlate)を、キナーゼ+MBPミックス(終濃度100ng+300ng/ウエル)により、キナーゼ緩衝液中90μL/ウエルにてコートする。化合物を、DMSO中10mMのストックから、1μL/ウエルにて添加する。陽性対照ウエルは、1μLのDMSOが添加される。陰性対照ウエルは、2μLのEDTAストック溶液が添加される。ATP溶液(10μL)が各ウエルに添加され、コールドATPが2μM、かつ50nCi ATPγ[33P]の終濃度を与える。プレートは一時振盪され、選ばれたプレートを用いカウンティングに適した装置、たとえば、Perkin−Elmer Triluxを用いて、開始カウント(IC)のためのカウントがとられる。プレートを37℃において4時間保存し、ついで再度カウントして最終カウント(FC)とする。
正味の33P取込み(NI)は、NI=FC−ICとして計算される。
試験化合物の存在の影響は、次いで:%PC=[(NI−NC)/(PC−NC)]x100、のように陽性対照のパーセントとして計算され、式中、NCは陰性対照についての正味の取込みであり、PCは陽性対照についての正味の取込みである。
前文に示したように、他のアッセイもまた容易に利用されることが可能である。たとえば、キナーゼ活性は、標準的なポリスチレンプレート上で、ビオチニル化されたMBPおよびATPγ[33P]を用いて、シグナルを与えるストレプトアビジン−コートされたSPA(シンチレーション・プロキシミティ)ビーズにより測定されてよい。
さらに別のアッセイは、キナーゼの基質としてのビオチニル化されたペプチドとともに、検出試薬としてホスホスペシフィック(phospho-specific)抗体を用いることができる。この種のアッセイは、ストレプトアビジンまたはホスホスペシフィック抗体に付着された、供与体および受容体試薬を変えることにより、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)フォーマットで、またはAlphaScreen(増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ)を用いてフォーマットされることが可能である。
X.有機合成技術
コンピュータに基づくモジュレーターの設計および同定の多用性は、コンピュータプログラムによってスクリーンされる構造物の多様性にある。コンピュータプログラムは非常に多数の分子を含むデータベースを検索することが可能であり、かつ、すでに酵素と複合したモジュレーターを、広く多様な化学官能基により修飾することが可能である。この化学的多様性の結果は、キナーゼ機能の潜在的モジュレーターは予測がつかない化学的形状をとってもよいということである。この技術には、このような潜在的モジュレーターの構築という挑戦に合致する、幅広い有機合成技術のアレイが存在する。これらの有機合成法の多くは、当業者に利用される標準的なリファレンスソースに詳細に記述されている。そのようなリファレンスの一つの実例は、March, 1994, Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure(有機化学特論:反応、機構および構造), New York, McGraw Hillである。したがって、コンピュータに基づく方法により同定されたキナーゼ機能の潜在的なモジュレーターを合成するために有用な技術は、有機化学合成の当業者に容易に利用可能である。
XI.投与
本方法および化合物は、典型的にはヒトの患者への治療において使用されるであろう。しかしながら、それらはまた、他の霊長類、スポーツ用動物、ウマ、イヌ、またはネコのようなペットといった他の脊椎動物における、類似のまたは同一の疾病を治療するべく用いられてよい。
好適な剤形は、一部は、使用または投与の経路、たとえば、経口、経皮、経粘膜、または注射(非経口)に依存する。かかる剤形は、化合物を標的細胞へ到達させるである。他の因子もまたこの技術において周知であり、毒性のような問題および、化合物または組成物がその作用を及ぼすのを遅らせるような剤形を含む。技術および製剤は、一般に、Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの薬学), 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990(参考文献として本文に含まれる)に見出される。
化合物は、製薬上許容される塩として製剤されることが可能である。製薬上許容される塩は、それらが投与される量および濃度において非毒性である。かかる塩の調製は、化合物の物理的性質を、それが生理的作用を及ぼすことを妨げることなく変えることにより、薬理学的使用を促進することが可能である。有用な物理的性質の変化は、融点を変えて経粘膜投与を促進すること、および溶解度を高めてより高濃度の薬物の投与を容易にすることを含む。
製薬上許容される塩は、硫酸塩、塩化物、塩酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルフォネート、エタンスルフォネート、ベンゼンスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、シクロヘキシルスルファメート、およびキナ酸塩を含有するもののような、酸付加塩を含む。製薬上許容される塩は、塩酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、フマル酸、およびキナ酸のような酸から取得可能である。
製薬上許容される塩はまた、カルボン酸またはフェノールといった酸性の官能基が存在する場合、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、アルキルアミン、および亜鉛を含有するもののような、塩基付加塩を含む。たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, Vol. 2, p. 1457, 1995を参照のこと。かかる塩は、適当な対応する塩基を用いて調製されることが可能である。
製薬上許容される塩は、標準的な技術を用いて調製されることが可能である。たとえば、遊離塩基の形状の化合物は、適当な酸を含有する水性また水性−アルコール溶液のような、適当な溶媒中に溶解され、次いで溶液を蒸発することによって単離される。もう一つの実例においては、塩は、遊離塩基および酸を、有機溶媒中で反応させることにより調製される。
種々の化合物の製薬上許容される塩は、複合体として存在してもよい。複合体の実例は、8−クロロテオフィリン複合体(たとえば、ジメンヒドリネート:ジフェンヒドラミン8−クロロテオフィリン(1:1)複合体;ドラマミン(Dramamine))、および種々のシクロデキストリン包接化合物を含む。
担体または賦形剤は、製薬組成物を産生するべく使用されることが可能である。担体または賦形剤は、化合物の投与を容易にするべく、選択されることが可能である。担体の実例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、グルコース、スクロース、またはデンプンのタイプ、といった種々の糖、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、および生理学的に適合する溶媒を含む。生理学的に適合する溶媒は、注射用滅菌水(WFI)、食塩水、およびデキストロースを含む。
化合物は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、経粘膜、直腸内、または経皮を含めた種々の経路によって投与されることが可能である。経口投与が好ましい。経口投与用には、たとえば、化合物は、カプセル、錠剤、およびシロップ、エリキシル、および濃縮ドロップといった液体製剤のような、通常の経口用剤形に製剤されることが可能である。
経口使用のため薬物製剤は、たとえば、活性化合物を固形の賦形剤と組み合せ、結果として得られる混合物を任意に粉砕し、所望であれば適当な添加物を添加した後、混合物を粒子に加工して、錠剤または糖衣剤のコアを得ることにより、取得されることが可能である。適当な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含めた糖;セルロース製品、たとえば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、および/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)のような充填剤である。所望であれば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩といった、崩壊剤が添加されてもよい。
糖衣剤コアは、適当なコーティングが与えられる。この目的のため、濃縮された糖溶液が使用されてよく、それは任意に、たとえばアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または有機溶媒混合物を含有してもよい。確認のため、または活性化合物の用量の異なる組み合せを特徴づけるため、染料または色素が、錠剤または糖衣剤のコーティングに添加されてもよい。
経口的に使用可能な薬物製剤は、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル(「gelcaps」)、ならびにソフト、ゼラチンからなるシールドカプセル、および、グリセロールまたはソルビトールのような可塑剤を含む。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトースのような充填剤、デンプンのような結合剤、および/または、タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意に安定剤と混合して含むことが可能である。ソフトカプセルにおいては、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール(PEG)のような適当な液体中に、溶解されるかまたは懸濁されてよい。さらに、安定剤が添加されてもよい。
別法として、注射(非経口投与)、たとえば筋肉内、静脈内、腹腔内、および/または皮下、が用いられてよい。注射用には、本発明の化合物は無菌溶液中に、好ましくは、食塩水、ハンクス溶液、またはリンガー溶液のような、生理学的に適合性の緩衝液または溶液中に製剤される。さらに、化合物は固体の形状に製剤され、使用の直前に再溶解または懸濁されてもよい。親油性の形状もまた産生されてよい。
投与はまた、経粘膜または経皮手段によってもよい。経粘膜または経皮投与用には、透過されるべきバリアに適した浸透剤が、製剤に用いられる。かかる浸透剤は、一般にこの技術において周知であり、たとえば、経粘膜投与用には、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。さらに、界面活性剤が、透過を促進するべく使用されてよい。経粘膜投与は、たとえば、鼻スプレーまたは坐剤(直腸または膣)を介してよい。
投与されるべき種々の化合物の量は、化合物のIC50、化合物の生物学的半減期、患者の年齢、サイズ、および体重、および患者に関連した疾病、といった因子を考慮に入れた、標準的な方法により決定されてよい。これらおよび他の因子の重要性は当業者には周知である。一般に用量は、治療される患者について約0.01と50mg/kgの間、好ましくは0.1〜20mg/kgであろう。複数回投与量が使用されてよい。
(PYK2の操作)
PYK2の完全長のコード配列およびアミノ酸配列が知られていることから、組換えhPIM−3の構築、組換えタンパク質の産生および精製、他の生物へのPYK2の導入、および、PYK2についての他の分子生物学的操作は容易に行なわれる。
たとえば、サブクローニング、プローブのラベリング(たとえば、クレノウポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅、を用いたランダムプライマーラベリング)、シーケンシング、ハイブリダイゼーションなどといった、核酸の操作のための技術は、科学および特許文献において充分に開示されている、たとえば、Sambrook, ed., Molecular Cloning: a Laboratory Manual (分子クローニング:実験室マニュアル)(2nd ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989); Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における最新プロトコール), Ausubel, ed. John Wiley & Sons, Inc., New York (1997); Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation(生化学および分子生物学における実験室技術:核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション、第1部、理論および核酸調製), Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)を参照のこと。
[0100]
核酸配列は、PCR、等温法、ローリングサークル法などといった増幅法を用いて、必要に応じて増幅されることが可能であり、当業者には周知である。たとえば、Saiki, "Amplification of Genomic DNA" in PCR Protocols(PCRプロトコールにおける「ゲノムDNAの増幅」), Innis et al., Eds., Academic Press, San Diego, CA 1990, pp 13-20; Wharam et al., Nucleic Acids Res. 2001 Jun 1;29(11):E54-E54; Hafner et al., Biotechniques 2001 Apr;30(4):852-6, 858, 860 passim; Zhong et al., Biotechniques 2001 Apr;30(4):852-6, 858, 860 passim.を参照のこと。
核酸、ベクター、カプシド、ポリペプチドなどは、当業者に周知の多くの任意の一般的な手段により分析され、かつ定量されることが可能である。これらは、たとえば、NMR、分光光度法、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、および、ハイパーディフュージョンクロマトグラフィーのような分析生化学的方法、種々の免疫学的方法、たとえば、液体またはゲル内沈降反応、免疫拡散法、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、サザン分析、ノーザン分析、ドットブロット分析、ゲル電気泳動(たとえば、SDS−PAGE)、核酸または標的またはシグナル増幅法、放射標識、シンチレーションカウンティング、およびアフィニティクロマトグラフィーを含む。
本発明の方法を実施するべく使用される核酸の取得および操作は、ゲノムサンプルからのクローニング、および、所望であれば、たとえばゲノムクローンまたはcDNAクローンから単離または増幅されたインサートをスクリーニングおよび再クローニングすることにより行なわれることが可能である。本発明の方法において使用される核酸の供給源は、たとえば、哺乳類人工染色体(MACs)、たとえば、米国特許第5,721,118; 6,025,155号参照;ヒト人工染色体、たとえば、Rosenfeld (1997) Nat. Genet. 15:333-335参照;酵母人工染色体 (YAC);細菌人工染色体 (BAC);P1人工染色体、たとえば、Woon (1998) Genomics 50:306-316参照;P1誘導ベクター (PACs)、たとえば、Kern (1997) Biotechniques 23:120-124参照;コスミド、組換えウイルス、ファージ、またはプラスミドに含まれる、ゲノムDNAまたはcDNAライブラリを含む。典型的には、興味の配列を有する核酸分子は、市販の供給源から、および/または、配列レポジトリーから入手可能であり、あるいは、PCRを用いて適当なcDNA、または、ゲノムライブラリ、たとえば、適当な組織からのライブラリから取得されることが可能である。多数の異なるかかるライブラリが市販され、あるいは公的に入手可能である。
核酸は、操作によりプロモーターへ連結されることが可能である。プロモーターは、核酸調節配列の一つのモチーフまたはアレイであり、核酸の転写を指示する。プロモーターは、ポリメラーゼIIタイプのプロモーターの場合にはTATAエレメントのような、転写開始部位の付近に不可欠の核酸配列を含むことができる。プロモーターはまた任意に、末端のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含むことができ、それは、転写開始部位から何千塩基対もの位置にある。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境および発生条件下に活性のあるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境および発生の調節下にあるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、生物のある組織タイプにおいて活性があるが、同じ生物からの他の組織においては活性がない。用語「作動可能な状態に連結された」は、核酸発現調節配列(プロモーター、または転写因子結合部位のアレイのような)と、第二の核酸配列との間の機能的な連結を指し、発現調節配列は、第二の配列に相当する核酸の転写を指示する。
本発明の核酸はまた、発現ベクターおよびクローニングビヒクル、たとえば本発明のポリペプチドをコードしている配列、において提供されることが可能である。本発明の発現ベクターおよびクローニングビヒクルは、ウイルス粒子、バキュロウイルス、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、細菌人工染色体、ウイルスDNA(たとえば、ワクシニア、アデノウイルス、ファウル(家禽)ポックスウイルス、擬似狂犬病およびSV40誘導体)、P1ベ−スの人工染色体、酵母プラスミド、酵母人工染色体、および、興味の特定の宿主に特異的な任意の他のベクター(バチルス、アスペルギルス、および酵母のような)を含むことが可能である。本発明のベクターは、染色体の、非染色体の、および合成DNA配列を含むことができる。多数の適当なベクターが当業者には周知であり、市販されている。
本発明の核酸は、所望であれば、慣例的な分子生物学的方法を用いて、任意の種々のベクターへクローニングされることが可能である;増幅された核酸のインビトロのクローニングのための方法は、たとえば、米国特許第5,426,039号に開示されている。増幅された配列のクローニングを促進するため、制限酵素部位がPCRプライマーぺアに「組込まれる」ことが可能である。ベクターは、ゲノム内か、細胞質内か、または細胞の核へ導入されてよく、科学および特許文献に充分に記述された種々の通常の技術により、発現される。たとえば、Roberts (1987) Nature 328:731; Schneider (1995) Protein Expr. Purif. 6435:10; Sambrook, Tijssen or Ausubelを参照のこと。ベクターは、天然の供給源から単離されるか、ACTTまたはGenBankライブラリのような供給源から入手されるか、または合成または組み替え法によって調製されることが可能である。たとえば、本発明の核酸は、発現カセット、ベクター、または、ウイルスにおいて発現されることが可能であり、それらは細胞内で安定に、または一過性に発現される(たとえば、エピゾーム発現系)。選択可能な表現型を、形質転換した細胞および配列上に与えるべく、選択マーカーが発現カセットおよびベクターへ取込まれることが可能である。たとえば、選択マーカーは、エピゾームの維持および複製をコードすることが可能であり、宿主ゲノムへの組込みが必要とされないようにする。
核酸は、本発明のペプチドまたはポリペプチドのインシトゥの発現のため、インビボにおいて投与されることが可能である。核酸は「むき出しのDNA」(たとえば、米国特許第5,580,859号参照)として、または発現ベクター、たとえば組換えウイルスの形状において投与さえることが可能である。核酸は、下文に記述されるように、腫瘍周辺および腫瘍内を含め、任意の経路によって投与されることが可能である。インビボで投与されるベクターは、組換えにより修飾された、エンベロープをもつか、またはもたないDNA、および、好ましくは、バキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、アデノウイルス科、または、ピコルナウイルス科から選ばれるRNAウイルスを含めた、ウイルスゲノムに由来することが可能である。キメラベクターもまた用いられてよく、それは、各々の親ベクターの特性の有利な利点を活用する(たとえば、Feng (1997) Nature Biotechnology 15:866870参照)。かかるウイルスゲノムは、本発明の核酸を含むべく、組換えDNA技術によって修飾されてよく; 複製欠損、条件複製性、または複製コンピテントとなるべく、さらにエンジニアリングされてよい。別の観点においては、ベクターは、アデノウイルスに由来する(たとえば、ヒトアデノウイルスゲノム由来の複製インコンピテントベクター、たとえば、米国特許第6,096,718; 6,110,458; 6,113,913; 5,631,236号参照);アデノ−関連ウイルスおよびレトロウイルスゲノム。レトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組み合せを含むことが可能である;たとえば、米国特許第6,117,681; 6,107,478; 5,658,775; 5,449,614号; Buchscher (1992) J. Virol. 66:2731-2739; Johann (1992) J. Virol. 66:1635-1640参照のこと。アデノ関連ウイルス(AAV)をベースとするベクターは、たとえば、インビトロにおける核酸およびペプチドの製造において、およびインビボおよびエクスビボの遺伝子治療法において、標的核酸をもつ細胞を形質導入するべく使用されることが可能である;たとえば、米国特許第6,110,456; 5,474,935号; Okada (1996) Gene Ther. 3:957964参照。
本発明はまた、融合タンパク質およびそれらをコードしている核酸にも関係する。本発明のポリペプチドは、安定性の増加や精製の単純化といった、所望の特徴を与えるN−末端同定ペプチドのような、異種のペプチドまたはポリペプチドに対して融合されることが可能である。本発明のペプチドおよびポリペプチドはまた、たとえば、より免疫原性のあるペプチドを産生するため、組換えにより合成されたペプチドをさらに容易に単離するため、抗体および抗体を発現するB細胞を同定および単離することなどのため、一以上の、それに連結された付加的なドメインをもつ融合タンパク質として合成および発現されることが可能である。検出および精製を容易にするドメインは、たとえば、固定された金属上での精製を可能にする、ポリヒスチジン領域およびヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGSエクステンション/アフィニティ精製システム(イムネックス・コープ(Immunes Corp,)、ワシントン州、シアトル)において使用されるドメインを含む。精製ドメインとモチーフを含んでいるペプチドまたはポリペプチドとの間に、ファクターXaまたはエンテロキナーゼ(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州、サンディエゴ)のような切断可能なリンカー配列を含むことは精製を促進する。たとえば、発現ベクターは、チオレドキシンおよびエンテロキナーゼ切断部位がそれに続く6個のヒスチジン残基に連結された、エピトープをコードする核酸配列を含むことが可能である(たとえば、Williams (1995) Biochemistry 34:1787-1797; Dobeli (1998) Protein Expr. Purif. 12:404-414参照)。ヒスチジン残基は検出および精製を促進するが、一方エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質の残りの部分から、エピトープを精製するための手段を提供する。一つの観点においては、本発明のポリペプチドをコードしている核酸は、翻訳されたポリペプチドまたはそのフラグメントの分泌を指示することが可能なリーダー配列を用いて、適当な相において集められる。融合タンパク質をコードしているベクターおよび融合タンパク質の適用に関係する技術は、科学および特許文献に充分に開示されており、たとえば、Kroll (1993) DNA Cell. Biol. 12:441-53を参照のこと。
本発明の核酸およびポリペプチドは、たとえば、スクリーニングおよび診断法における使用のため、固形支持体へ結合されることが可能である。固形支持体は、たとえば、膜(たとえば、ニトロセルロースまたはナイロン)、マイクロタイターディッシュ(たとえば、PVC、ポリプロピレン、またはポリスチレン)、試験管(ガラスまたはプラスチック)、ディップスティック(たとえば、ガラス、PVC、ポリプロピレン、ポリスチレン、ラテックスなど)、マイクロフュージチューブ、またはガラス、シリカ、プラスチック、金属またはポリマービーズ、または、紙のような他の基質を含むことが可能である。一つの固形支持体は、金属(たとえば、コバルトまたはニッケル)を含むカラムを用いており、それはペプチドにエンジニアリングされたヒスチジンタグに対し、特異性をもって結合する。
固形支持体への分子の接着は、直接的(すなわち、分子が固形支持体と接触する)または間接的(「リンカー」が支持体上に結合され、興味の分子はこのリンカーに結合する)であることが可能である。分子は、共有結合により(たとえば、システイン残基の一つの反応性のチオール基を用いて(たとえば、Colliuod (1993) Bioconjugate Chem. 4:528-536参照)、または非共有結合的であるがしかし特異的に(たとえば、固定された抗体を介して(たとえば、Schuhmann (1991) Adv. Mater. 3:388-391; Lu (1995) Anal. Chem. 67:83-87;ビオチン/ストレパビジンシステム(たとえば、Iwane (1997) Biophys. Biochem. Res. Comm. 230:76-80参照);金属キレーティング、たとえば、ラングミュア・ブロージェット膜(Langmuir-Blodgett films)(たとえば、Ng (1995) Langmuir 11:4048-55参照);ポリヒスチジン融合体の結合用の、金属キレーティング自己集合単分子膜(たとえば、Sigal (1996) Anal. Chem. 68:490-497参照)により、固定されることが可能である。
間接的な結合は、市販されている様々なリンカーを用いて成し遂げられることが可能である。反応性末端は、これに制限されないが:N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステル、イミドエステル、アルデヒド、エポキシド、スルホニルハリド、イソシアネート、イソチオシアネート、およびニトロアリールハリドのようなアミノ反応性末端;ピリジルジスルフィド、マレイミド、チオフタールイミド、および活性ハロゲンのようなチオール反応性末端を含む、任意の種々の機能性のものであることが可能である。ヘテロバイファンクショナルな架橋試薬は、二つの異なる反応性末端、たとえば、アミノ反応性末端およびチオール反応性末端を有しており、一方ホモバイファンクショナルな架橋試薬は、二つの同型の反応性末端、たとえば、ビスマレイミドデヘキサン(BMH)を有しており、それはスルフヒドリル含有化合物の架橋を可能にする。スペーサーは、多様な長さのものでよく、脂肪族または芳香族である。代表的な市販のホモバイファンクショナルな架橋試薬は、これに制限されないが、ジメチルアジピミデートジヒドロクロライド(DMA);ジメチルピメリミデートジヒドロクロライド(DMP);およびジメチルスベリミデートジヒドロクロライド(DMS)のようなイミドエステルを含む。ヘテロバイファンクショナルな試薬は、市販の、N−スクシンイミドブロモアセテート、およびN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)のような、活性ハロゲン−NHS活性エステルカップリング剤、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホSIAB)(ピアース(Pierce))のようなスルホスクシンイミジル誘導体を含む。もう一つのグループのカップリング剤は、N−スクシンイミジル3−(2−pyridyidithio)プロピオネート(SPDP)(ピアースケミカルズ、イリノイ州、ロックフォード)のような、ヘテロバイファンクショナルかつチオール切断可能な薬剤である。
抗体もまた、本発明のポリペプチドおよびペプチドを固形支持体へ結合するために使用されることが可能である。このことは、ペプチド特異抗体をカラムへ結合することにより、直接行なわれてよく、あるいは、たとえば既知のエピトープ(たとえば、タグ(たとえば、FLAG、myc)または適当な免疫グロブリン定常部ドメイン配列へ連結された、モチーフ含有ペプチドを含む融合タンパク質キメラを作成することにより、行なわれてよい(「免疫接着」、たとえば、Capon (1989) Nature 377:525-531 (1989)参照)。
本発明の核酸またはポリペプチドは、アレイへ固定されるかまたは適用されることが可能である。アレイは、本発明の核酸またはポリペプチドに結合するか、または活性を調整する能力について、化合物のライブラリ(たとえば、低分子、抗体、核酸など)をスクリーンするかまたはモニターするべく用いられてよい。たとえば、本発明の一つの観点においては、モニターされたパラメータは、本発明の核酸を含んでなる遺伝子の転写物発現である。細胞の一以上、または全ての転写物は、細胞の転写物か、または細胞の転写物の代表的な、または相補的な核酸を含む試料の、アレイまたは「バイオチップ」上に固定された核酸に対してハイブリダズすることにより、ハイブリダイゼーションによって測定されることが可能である。マイクロチップ上の核酸の「アレイ」を用いることにより、細胞の転写物のいくらか、またはすべてが同時に定量化されることが可能である。別法として、ゲノム核酸に相当するアレイはまた、本発明の方法によって製された新規にエンジニアリングされた系統の遺伝子型を測定するべく用いられることが可能である。ポリペプチドアレイ」もまた、多数のタンパク質を同時に定量化するべく使用されることが可能である。
本文において用いられた用語「アレイ」または「マイクロアレイ」または「バイオアレイ」または「チップ」は、多数の標的エレメントであって、各標的エレメントは、規定された量の一以上のポリペプチド(抗体を含めて)または核酸(規定された基質表面へ固定された)を含んでいる。本発明の方法の実施においては、たとえば、米国特許第6,277,628; 6,277,489; 6,261,776; 6,258,606; 6,054,270; 6,048,695; 6,045,996; 6,022,963; 6,013,440; 5,965,452; 5,959,098; 5,856,174; 5,830,645; 5,770,456; 5,632,957; 5,556,752; 5,143,854; 5,807,522; 5,800,992; 5,744,305; 5,700,637; 5,556,752; 5,434,049号に開示されたように、任意の既知のアレイおよび/または、アレイの作成および使用法が、全体的に、または部分的に、またはその変形が取入れられることが可能である。また、たとえば WO 99/51773; WO 99/09217; WO 97/46313; WO 96/17958;また、たとえば、Johnston (1998) Curr. Biol. 8:R171-R174; Schummer (1997) Biotechniques 23:1087-1092; Kern (1997) Biotechniques 23:120-124; Solinas-Toldo (1997) Genes, Chromosomes & Cancer 20:399-407; Bowtell (1999) Nature Genetics Supp. 21:25-32.を参照のこと。米国出願20010018642; 20010019827; 20010016322; 20010014449; 20010014448; 20010012537; 20010008765も参照のこと。
(宿主細胞および形質転換細胞)
本発明はまた、本発明の核酸配列、たとえば本発明のポリペプチドをコードしている配列か、または本発明のベクターを含んでいる形質転換された細胞を提供する。宿主細胞は細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、または植物細胞といった、原核細胞、真核細胞を含め、当業者に周知の任意の宿主細胞でよい。代表的な細菌細胞は、大腸菌、放線菌、枯草菌、ネズミチフス菌、および、シュードモナス、ストレプトマイセス、およびスタフィロコッカス属内の様々な種を含む。代表的な昆虫細胞は、ドロソフィラ(Drosophila(ショウジョウバエ))S2およびスポドプテラ(Spodoptera(ヨトウムシ)Sf9を含む。代表的な動物細胞は、CHO、COS、Bowesメラノーマ、または任意のマウスまたはヒトの細胞系を含む。好適な宿主の選択は、当業者の能力の範囲内にある。
ベクターは、トランスフォーメイション(形質転換)、トランスフェクション(形質移入)、トランスダクション(形質導入)、ウイルス感染、遺伝子銃、またはTi媒介性の遺伝子転移(トランスファー)を含めた任意の種々の技術を用いて導入されてよい。特定の方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションを含む。
エンジニアリングされた宿主細胞は、プロモーターの活性化のため、形質転換体の選択のため、または本発明の遺伝子の増幅のために適するように修正された通常の栄養培地において培養されることが可能である。適当な宿主系統の形質転換、および好適な細胞濃度までの宿主系統の増殖に続き、選択されたプロモーターが適当な手段(たとえば、温度シフトまたは化学的誘導)により誘導されてよく、細胞は、所望のポリペプチドまたはそのフラグメントをそれらに産生させるべく、さらなる期間培養されてよい。
細胞は、遠心分離によって収穫され、物理的または化学的手段により破壊され、結果得られた粗抽出物は、さらなる精製に向けて保持される。タンパク質の発現用に使用された微生物細胞は、凍結−融解サイクリング、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含めた、任意の便利な方法で破壊されてよい。かかる方法は当業者に周知である。発現されたポリペプチドまたはそのフラグメントは回収され、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含めた方法により、組換え細胞培養物から回収および精製されることが可能である。ポリペプチドのコンフィギュレーションを完了する上で、タンパク質リフォールディングの段階が、必要に応じて使用されてよい。所望であれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が最終的な精製段階に使用されてよい。
組換えタンパク質を発現するためには、多様な哺乳類細胞培養系もまた使用可能である。哺乳類発現系の実例は、サル腎臓線維芽細胞のCOS−7系、および、適合性ベクターからタンパク質を発現することが可能なC127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞といった他の細胞系を含む。
宿主細胞内の構築物は、組換え配列によってコードされた遺伝子産物を産生するべく、便利な方法で使用されてよい。組換え産生法に使用された宿主に依存して、ベクターを含有する宿主細胞によって産生されたポリペプチドは、グリコシル化されるか、またはグリコシル化されなくてよい。本発明のポリペプチドは、最初のメチオニンアミノ酸残基を含んでも含まなくても良い。
無細胞翻訳系もまた、本発明のポリペプチドを産生するべく用いられてよい。無細胞翻訳系は、ポリペプチドまたはそのフラグメントをコードしている核酸に作動可能な状態に連結されたプロモーターを含む、DNA構築物から転写されたmRNA構築物を使用することが可能である。ある観点においては、DNA構築物は、インビトロの転写反応を誘導するに先立ち、直鎖化されてもよい。転写されたmRNAは、次いで、ウサギ網状赤血球抽出物のような、適当な無細胞翻訳抽出物とともにインキュベートされ、所望のポリペプチドまたはそのフラグメントを産生する。
発現ベクターは、真核細胞培養物にはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン抵抗性のような、または、大腸菌ではテトラサイクリンまたはアンピシリンといった、宿主細胞の選択のための、一以上の選択可能なマーカー遺伝子を含むことができる。
哺乳類細胞における一過性の発現については、興味のポリペプチドをコードしているcDNAが、哺乳類の発現ベクター、たとえば、インビトロジェン・コーポレーション(Invtrogen Corporation)(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ;カタログ番号V490−20)から市販されている、pcDNA1に取込まれてよい。これは、真核細胞系におけるcDNAの発現用に設計された、多機能の4.2kbプラスミドベクターであり、原核細胞におけるcDNA分析では、ベクターに取込まれるものはCMVプロモーターおよびエンハンサー、スプライスセグメントおよびポリアデニル化シグナル、SV40およびポリオーマウイルス複製起点、および、シーケンシングおよび突然変異誘発のための単鎖DNAレスキューのためのM13起点、センスおよびアンチセンスRNA転写物の産生のためのSp6およびT7RNAプロモーター、およびColE1様の高コピープラスミド起点である。ポリリンカーは、CMVプロモーターの下流(およびT7プロモーターの3')に好適に局在される。
cDNAインサートは、pcDNAIポリリンカーにおける適当な制限部位に取込まれた上記のファージミドから、まず放出されてよい。pcDNAI中の正しいインサートの方向を確認するべく、ジャンクションにわたるシーケンシングが行なわれてよい。結果として得られたプラスミドは、次に、一過性の発現に向け、選択された哺乳類細胞宿主、たとえば、サル由来の、COS−1系列の線維芽細胞様細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、メリーランド州、ロックビル、ATCC CRL1650として市販される)へ導入されてよい。
タンパク質をコードしているDNAの一過性の発現のため、たとえば、COS−1細胞は、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor N.Y, pp. 16.30-16.37.によって記述された方法に従って、DEAE媒介DNAトランスフェクションによりトランスフェクトされ、クロロキンで処理された。代表的な方法は、以下の通りである。手短に言えば、COS−1細胞は、5×106細胞/皿の濃度でプレートされ、次いでFBSが補足されたDMEM/F12培地中で24時間増殖される。培地は除去され、細胞はPBSで洗浄され、次いで培地が入れられる。DEAEデキストラン(0.4mg/ml)、100μMクロロキン、10%NuSerum、DNA(0.4mg/ml)をDMEM/F12培地中に含有するトランスフェクション溶液が、細胞上へ10mlの体積で適用される。37℃における3時間のインキュベーションの後、細胞はPBSで洗浄され、培地は直前に記述された通りであり、次に、DMEM/F12中10%のDMSOを用いて1分間にわたり、ショックが加えられる。細胞は、10%FBSが補足されたDMEM/F12培地中で2〜3日増殖され、インキュベーションの終わりに、皿は氷上におかれ、氷冷PBSで洗浄され、次いでスクレイピングにより細胞が除去される。細胞は次に1000rpmにて10分間の遠心分離により集められ、細胞のペレットは、次のタンパク質発現における使用にむけ、液体窒素中で凍結される。凍結された細胞の融解されたアリコートについてのノーザンブロット分析は、貯蔵下にある細胞中の、受容体をコードしているcDNAの発現を確証するべく使用されてよい。
同様の方法で、安定にトランスフェクトされた細胞系もまた、たとえば、二つの異なる細胞型:CHO K1およびCHO Pro5を宿主として用いて、調製されることが可能である。このような細胞系を構築するためには、関連するタンパク質をコードしているcDNAが哺乳類の発現ベクターpRC/CMV(インビトロジェン)へ取込まれてよく、このことが安定な発現を可能にする。この部位へのインサーションは、cDNAをサイトメガロウイルスプロモーターの発現調節下におき、ボリアデニル化部位およびウシ成長ホルモン遺伝子のターミネーターの上流におき、かつベクター内に、選択可能なマーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子(SV40初期プロモーター由来)を含むバックグラウンドをおく。
前文に記述されたようなプラスミド構築物を導入するための代表的なプロトコールは以下の通りである。宿主CHO細胞は、まず10%FBSを補足されたMEM培地中で、5×105の密度で播種される。24時間の増殖の後、新鮮な培地がプレートに添加され、3時間後、細胞はリン酸カルシウム−DNA共沈殿生成物を用いてトランスフェクトされる(Sambrook et al., 上記)。手短にいえば、3μgのDNAが混合され、緩衝化されたカルシウム溶液とともに、室温で10分間インキュベートされる。同体積の緩衝化されたリン酸溶液が添加され、懸濁液は室温で15分間インキュベートされる。次いで、インキュベーションされた懸濁液は細胞に4時間適用され、除去され、さらに細胞は15%グリセロールを含有する培地でショックが与えられる。3分後、細胞は培地で洗浄され、正常な増殖条件下に24時間インキュベートされる。G418(1mg/ml)を含有する10%FBSを補足されたアルファ−MEM培地中で、ネオマイシン耐性細胞が選択される。G418−耐性細胞からなる個々のクローンは、約2〜3週間後に単離され、クローン選択され、次いでアッセイの目的に向けて増殖される。
本発明に関連する多くの例が、以下に記載される。ほとんどの場合、代替の技術を用いることができる。例えば、米国特許5,837,815;米国特許5,837,524;米国公開特許2002/0048782;PCT/US98/02797,WO98/35056;およびMcShan et al., Internat. J. Oncology 21:197−205 (2002)に記載された技術、方法および他の情報は、本発明に用いることができる。このような技術及び情報には、限定しないが、クローニング、培養、精製、アッセイ、スクリーニング、モジュレーターの使用、配列情報、およびPYK2の生物学的役割に関する情報が含まれる。これらの参照文献のおのおのは、図面を含め、参照することによりその全体を本明細書に取り込むものとする。
実施例1
PYK2キナーゼドメインのクローニング
PYK2のキナーゼドメイン(420−691アミノ酸)は、特定のプライマー5’−TCCACAGCATATGATTGCCCGTGAAGA TGTGGT−3’(配列番号5)および5’−CTCTCGTCGACCTACATGGCAATGTCCTTCTCCA−3’(配列番号6)を用いたポリメレース連鎖反応(PCR)により増幅した。得られたPCR断片は、NdeIおよびSalIを用いて消化し、解裂性N−末端ヘキサヒスチジンタグを有する修飾されたpET15bベクター(Novagen)にライゲートした(pET1Sと称する)。PYK2をコードする配列は、アクセッションナンバーU33284にてGenBankに寄託された。望ましいPYK2配列は、上記のプライマーを用いたPCTにより得られるキナーゼドメインのような、脳(例えばヒトの脳)のcDNAライブラリのPCRにより得ることができる。pET15Sのマルチクローニング部位は、N−末端ヘキサヒスチジンタグをコードする配列を含む、以下の配列(配列番号7)に示される。
Figure 2007524374
pET15Sベクターは、細菌による発現のためのN−末端His6を有するタンパク質を産生するpET15b(Novagen)に由来する。このベクターは、NdeI−BamHI断片の他のものへの置換により修飾し、SalI部位およびストップコドン(TAG)を作成した。ベクターの大きさは、5814bpである。NdeI−SalI部位を用いて挿入物を入れることができる。
用いたPYK2キナーゼドメインのアミノ酸配列および核酸配列を、表4に示す(それぞれ配列番号1および3)。
実施例2
PYK2キナーゼドメインの発現及び精製
タンパク質発現のため、Pyk2キナーゼドメインは、E.coli株BL21(DE3)pLysSに形質転換され、形質転換体は、カナマイシンを含むLB培地で選択された。200mlTB(テリフィックブロス)培地中37℃で、単一コロニーを一晩成長させた。2.8Lのフラスコ中16x1LのフレッシュTB培地を、一晩培養した培地に10mlに接種し、一定の振盪下で37℃で成長させた。600nmにおける培地の吸光度が1.0に達した後、1mMイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を加え、培地をさらに12時間、22℃の一定振盪下で成長させた。細胞を7000xgの遠心分離により回収し、ペレットを液体窒素で凍結させ、溶解に用いるまで−80℃で保存した。
細胞ペレットを0.1Mリン酸カリウムバッファーpH8.0、200mM NaCl、10%グリセロール、2mmPMSFおよびEDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤カクテル錠(Roche)を含む溶解バッファーに懸濁した。細胞は、マイクロフイタイザープロセッサー(Microfuidics Corporation)を用いて溶解し、不溶性細胞断片を30,000xgの遠心分離により除去した。透明な上清をTalon樹脂(Clonetech)に添加し、一定の揺れの下、4℃で4時間インキュベートした。懸濁液をカラムに投入し、10mMイミダゾールを加えた溶解バッファーの20カラム容量で洗浄した。タンパク質を200mMイミダゾールpH7.5を加えた溶解バッファーの添加により段階的に溶出させ、1mlの分画を集めた。PYK2を含む分画を貯めて濃縮し、20mM Tris pH7.5,150mM NaClにより予め平衡化させたPharmacia HiLoad 26/60 Superdex 200サイジングカラム(Pharmacia)に投入した。
ピーク分画を集め、SDS−PAGEによりアッセイした。PYK2を含む分画を貯め、30mM NaClとなるまで、TrisバッファーpH7.5で希釈した。希釈したタンパク質を、20mM Tris pH7.5で平衡化したSource15Q(Pharmacia)セファロースカラムを用いてさらにアニオン交換クロマトグラフィーに供した。塩化ナトリウムのリニアグラジエント(0−500mM)を用いて、溶出を行った。溶出したタンパク質を、タンパク質1mg当たり2Uのトロンビンで処理し、N−末端ヒスチジンタグを除去した。解裂後に、20mM Tris pH7.5で平衡化したSource15Q(Pharmacia)セファロースカラムにPyk2を再び適用し、塩化ナトリウムのリニアグラジエントを用いて溶出した。精製したタンパク質を100mg/mlに濃縮し、結晶化スクリーニングに用いるまで、−80℃で保存した。
実施例3
PYK2キナーゼドメインの結晶化
結晶化条件は、最初にHampton Research(Riverside,CA)スクリーニングキット(1)により同定した。最適化した結晶を、20mM Tris−HCl pH8.0,150mM NaCl,14mM BME,1mM DTTを含む10mg/mlのタンパク質溶液および8%ポリエチレングリコール(PEG)8000、0.2M酢酸ナトリウム、0.1MカコジレートpH6.5,20%グリセロールを含むリサーバ溶液の同一容量を用いた静置ドロッププレートによる蒸気分散により成長させた。結晶ブレードを4℃で一晩成長させた。マイクロシーディングを用いて大きな単一結晶を製造し、最大の結晶は、0.3mmX0.05mmX0.02mmであった。
実施例4
PYK2の回折分析
Quantum 210チャージカップルドデバイス検出器(λ=1.10Å)上のAdvanced Light Source (ALS, Lawrence Berkeley National Laboratory, Berkeley)のビームライン8.3.1において、Pyk2のシンクロトロンX線データを採取した。リザーバからの母液は、結晶の凍結防止剤として用いた。検出器の距離は110mmであり、曝露時間は1フレーム当たり10秒とした。200フレームについて、100°のウエッジで0.5°のオシレーションで採取した。回折パターンの品質と解像度の限界は、結晶のアニーリングにより相当改善した。結晶は、窒素凍結流を10秒間遮断することにより短時間暖め、凍結流による冷却を再開することにより再び凍結させた。PYK2の結晶は、a=37A,b=47A,c=81A,(=90°,(=92°,γ=90°のセル寸法により、1.45Åの解像度限界まで回折した。データは、Mosflm()を用いて処理し、スペースグループP2のCCCP4()のScala()によりスケールし、還元した。データ処理プロセスは、ELVESオートメーションスクリプツ(J.M.Holton、未公開データ)により行った。0K0ゾーンの検査により、すべての奇数(2n+1)反射が、偶数反射に比べて非常に弱いことが示され、スペースグループがP21であることが示唆された。
PYK2構造の決定と精密化
データセットの初期相は、分子置換により得た。タンパク質Pyk2のホモロジーモデルは、テンプレートとしてLCKキナーゼ構造(PDBID:1qpc)を用いて作成した。このモデルは、分子置換プログラムEPMR()を用いる前にすべてのループを削除することにより調整し、CC=0.372の解を得た。分子置換解相は、Arp−Warp()プログラムにより改善した。得られたモデルは、マニュアルモデル構築およびO()の拡張、CNX()およびCCP4のRefmac5()による精密化によりさらに改善させた。モデル構築と細密化のサイクルは、モデルが完全になり、精密化が20.83/26.94%のR/Rfeeに収束するまで続けた。モデルの形態解析は、PROCHECK()により行い、構造が優れた形態を有することを示した。
PYK2キナーゼドメイン結晶およびPYK2キナーゼドメイン/結合化合物共結晶のデータ収集および精密化の統計値を、以下の表に要約する。
Figure 2007524374
Pyk2のモデルは、273のアミノ酸(クローニングベクターからの1残基を有するPYK2配列420−691の範囲)と180の水分子を含む。Pyk2構造は、5残基のリンカーにより結合されたN−末端βシートドメインとC−末端αヘリックスドメインからなる標準的なキナーゼの折りたたみを適用した。リンカー部分は、通常ATPのアデノシン環と相互作用する規範的水素結合アクセプター/ドナー残基E503およびY505を含む。apo構造において、これらの残基は、水分子と水素結合を形成する。
PYK2活性部位のリボン図を図1に示す。apoタンパク質の原子座標は、表1に示し、結合化合物(AMPPNP)と共結晶化したPYK2の原子座標を表2に示す。
活性ループコンフォメーション
多くのタンパク質キナーゼにおいて、活性化ループ、即ちA−ループは、キナーゼ活性を制御する重要な役割を果たしている。活性キナーゼにおいて、A−ループは、3つの小さなβシート部位の形成により特徴づけられる非常に類似したコンフォメーションが適用され、2つはタンパク質の主要な部分を有し(それぞれ、触媒的、即ちC−ループおよびαEF/αFループの始めの部分)、1つは基質ペプチドを有する。対照的に、A−ループの不活性コンフォメーションは、ATP結合、基質結合またはその両方を阻害する同様の作用を有しているにも拘わらず、タンパク質毎に大きく異なる。活性インスリンレセプター(INSR)およびIGFR1キナーゼドメイン構造と比較すると、溶解したPyk2構造のA−ループは、明らかに不活性コンフォメーションである。このループは、すべての既知のA−ループ構造から区別されるループ内およびループ間相互作用の固有の組み合わせにより安定化される。
我々のPyk2構造のA−ループは、DFGモチーフにおける標準的な活性コンフォメーションから逸脱しなじめる(比較のために、我々は、IGFR1構造に基づくPyk2の活性A−ループコンフォメーションをモデル化した)。DFGモチーフの最初の2残基(D567およびF568)は、活性A−ループ形態におけるその対応部分と同様の方位を有し、D567はK457(β3)と相互作用し、F568はαCからの2つの残基(I477およびM478)にはさまれた疎水ポケットに固定されている。しかし、モチーフの第3の残基G569は、完全に異なるコンフォメーションを有し、G567:NHおよびH547:COの間で水素結合を形成することとなる。この水素結合は、C−ループを有するβシートの形成を排除する異なるパスとするように、A−ループを強いる。同様の水素結合は、2つの他のチロシンキナーゼ:HCK(1qcf)およびSRC(1fmk)にも観察される。
A−ループをその観察されるコンフォメーションで安定化する多重の相互作用がある。それらのほとんどは、Pyk2の固有の配列部位を伴う。既知の構造のチロシンキナーゼの中で、Pyk2はA−ループにおいて固有のED繰り返し(E575−D578)を含む。Pyk2構造において、E575は溶媒に曝露され、D576はきついβターンを開始する。D576:CO−Y579:NH間の規範的βターン骨格の水素結合の提供に加え、D576の側鎖は、D578:NHとも相互作用する。A−ループのβターン領域は、2つの側鎖骨格の水素結合(1つはE577:CO−R600:Ne間、もう1つはK581:NZ−N598:CO間)により、αEF/αFループに保持される。E577の側鎖は、2つの水素結合(1つはT585(OG)との、もう1つはR586(NH)との)を介して活性化ループの末端と相互作用する。Pyk2のA−ループの最も興味深い特徴は、C−ループからのD588およびR547間に形成される塩橋である(2つのODおよび2つのNH原子間の距離は、2.9Aである)。2つのチロシンY579およびY580のいずれも、我々の構造ではリン酸化されていない。Y579は、溶媒に曝露され、Y580はE575およびE577の側鎖の疎水部分に結合する。
FAKは第2のEDを有しないので、不活性FAKのA−ループは、異なると予期される。
基質結合と自動リン酸化の関係
FAK/Pyk2の酵素活性化における重要な事象は、触媒ドメイン(Y402)前のチロシン残基の自動リン酸化である。リン酸化されたY402は、Srcと他の関連キナーゼに結合部位を提供し、Y579やY580などのPyk2上の他のチロシン残基のSrc−依存性リン酸化を促進する。Y579およびY580がリン酸化される前に、どのように自動リン酸化が起こるかは、不明である。
Y402が基質結合部位に到達するかどうかをテストするために、我々は、Y402を含む7残基ペプチドD400IYAEIPD407を、IGFR1キナーゼドメインとその基質ペプチドの共結晶構造に基づく基質結合部位にモデル化した。我々のタンパク質構築において、Pyk2挿入は、I420から始めた。用いたHisタグにより残されたI420に対する4つの残基(GSHM)のN−末端があり、その中でM419だけが、認識できる。そこで、我々は、D419からM407に結合する11残基をモデル化した。基質結合部位に到達するために、N−末端領域はαCの背部に沿って横切る必要があることを、このモデルは示した。この結合は、また、A−ループを活性コンフォメーションに固定するであろう。これは、タンパク質がY402を自動リン酸化するために用いられるメカニズムを提供するかもしれない。Y402が一旦リン酸化されると、N−末端は放出され、SH2結合に供される。A−ループもフレキシブルとなり、Srcに接触可能となる。
チロシンキナーゼにおいてP+1およびP+3結合ポケットを囲む残基は、ほとんどが疎水性なので、基質のP+1およびP+3部位は、ほとんどが疎水性残基である。P+2と相互作用しうる残基は、変化する。R586残基のそばのため、酸性および多の極性部位鎖が好ましいであろう。P−1部位は、INSRおよびIGFR1において酸性残基である。P−1と相互作用する残基はArgであり、この残基はPyk2においてGlyに変化し、空間を大きく疎水税にしたままである。Pyk2、IYAEIPDおよびいくつかの他の既知のPyk2リン酸化部位における自動リン酸化部位配列は、Pyk2の基質選択性プロフィールによく適合する。
実施例5
PYK2結合アッセイ
結合アッセイは、この分野で既知の種々の方法を含む、いろいろな方法により実行することができる。例えば、PYK2に対する競合結合は、Hisタグ化されたPYK2(〜100ng)およびATPγ[35S](〜10nCi)を用いたニッケルフラッシュプレート上で測定できる。化合物が添加されると、フラッシュプレートのシンチラントに近接するPYK2に、少ないATPγ[35S]しか結合しないので、シグナルが減少する。結合アッセイは、PYK2タンパク質またはキナーゼドメイン(90 10μl)に化合物(10μl;20mM)を添加した後、ATPγ[35S]を添加して37℃で1時間インキュベートすることにより、実行することができる。放射能は、Trilus(perkin−Elmer)のシンチレーションカウントにより測定する。
あるいは、ATP結合サイトに対するリガンドの結合を測定できるいずれの方法も、用いることができる。例えば、蛍光リガンドを用いることができる。PYK2に結合すると、放出する蛍光が偏光する。阻害剤結合に一旦置換すると、偏光が減少する。
競合結合アッセイによる化合物についてのIC50の測定。(KIは阻害剤結合に対する解離定数、KDは基質結合に対する解離定数であることに留意)。この系では、IC50、阻害剤結合定数および基質結合定数は、以下の式によって相互に関連しうる。
放射性ラベル化基質を用いた場合、KI=IC50/(1+[L*]/KD
ラベル化基質が少量の場合、IC50〜KI
実施例6
PYK2活性アッセイ
例示的なキナーゼアッセイとして、PYK2のキナーゼ活性は、アルファスクリーニング(Packard BioScience)により測定された。キナーゼバッファー(HMNB)は、pH7.2においてHEPES50mM、Mg/Mn各5mM、NP−40を0.1%、最終的に50ug/mlのBSAを含む。アルファスクリーニングは、製造者の指示にしたがって行う。要約すると、キナーゼ反応を25ul容量の384ウェルプレートにて行う。基質は、最終濃度1nMでビオチン−(E4Y)3である。ATPの最終濃度は、10uMである。化合物のテストには、DMSOの最終濃度は、1%である。反応は、31℃で1時間インキュベートする。
Pyk2キナーゼドメイン残基419から691は、アルファスクリーニングにおいて活性キナーゼである。384ウェルプレートで8ng/ウェルの濃度で、PYK2は7.34uMのKdを示し、これは一般的にほとんどのタンパク質キナーゼと一致する(表5)。ATPアナログによる阻害は、8ng/ウェルのPyk2および10uMのATPによりテストした。データを、表5に示す。Pyk2に対するATP−g−SおよびADPの親和性は、14uMにおけるものである。アデノシンおよびAMP−PCPは、テストした濃度においてPYK2に対する作用をほとんど有しなかった。
実施例9
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式Iの化合物の合成
式Iで示されるチアゾール誘導体は、模式図−1に示されるように製造される。
ステップ−1 式(3)の製造
式(3)の化合物は、式(1)の化合物と式(2)のイソチオシアネートとの反応により定法により製造される。R1=アルキル、アリール、ヘテロアリール(例えば、m−トルイル酸ヒドラジド)であり、塩基性溶媒(例えばピリジン)中で、一般的には、65℃付近に過熱し、2−6時間反応させる。
ステップ−2 式(5)の製造
式(5)の化合物は、不活性溶媒中(例えばTHF)、室温、24−48時間で、式(3)の化合物と式(4)のアルキル化剤(例えばヨウ化メチル)との反応により定法により製造される。
ステップ−3 式Iの製造
式Iの化合物は、POCl3中に式(5)の化合物を溶解させ、8−12時間、80℃付近に加熱することにより製造される。反応が実質的に完了すると、式Iの製造物は、定法(例えば逆相HPLC)により単離される。Smith, et. al., J. Comb. Chem., 1999, 1, 368-370およびその参照文献。
実施例10
PYK2キナーゼの部位指向性突然変異誘発
PYK2キナーゼの突然変異誘発は、とりわけ、Molecular Biology: Current Innovations and Future Trends(分子生物学:現在の革新と将来の傾向). Eds. A.M. Griffin and H.G.Griffin. (1995) ISBN 1-898486-01-8, Horizon Scientific Press, PO Box 1, Wymondham, Norfolk, U.K.に記載された次の工程に従って実行できる。
in vitroでの部位指向性突然変異誘発は、タンパク質の構造−機能相関、遺伝子発現およびベクター修飾の研究に欠かせない技術である。いくつかの方法が文献に記載されているが、これらの方法の多くは、テンプレートとして短鎖DNAを必要とする。その理由は、歴史的に、最アニーリングを防ぐために相補鎖を分離する必要があったためである。部位指向性突然変異誘発にPCRを用いることにより、変性工程を用いて相補鎖を分離することにより鎖の分離を可能にし、PCRプライマーの効果的な増幅ができるようになった。したがって、PCR部位指向性方法は、事実上取り込むべきどの2本鎖プラスミドにも部位特異的突然変異が可能となり、M13に基づくベクターや短鎖源を必要としなくなった。
(望ましくない)いずれの第2の部位突然変異のクローンの拡張も防止するために、PCRに基づく部位指向性突然変異誘発を行う時は、PCRの間のサイクル数を削減することが、しばしば望ましい。生産物の収率を減らすこととなる限定されたサイクルは、出発テンプレート濃度を増すことにより相殺される。セレクションを用いて、反応から来る親分子の数を削減する。また、短鎖PCRプライマーを用いるために、ロングPCR法を最適化することが望ましい。さらに、いくつかの熱安定性ポリメラーゼの伸長酵素活性のために、1つまたは両方のPCRプライマーに取り込まれた変異を含むPCR産物の末端−末端結紮の前に、末端ポリッシング工程をしばしば組み込む必要がある。
以下のプロトコールにより、部位指向性突然変異誘発の容易な方法が提供され、以下の工程を組み込むことにより上記の望ましい特徴が達成される:(i)通常のPCR条件の約1000倍のテンプレート濃度に増やす;(ii)25−30から5−10にサイクル数を減らす;(iii)制限エンドヌクレアーゼDpnI(認識標的配列:5−Gm6ATC−3、ここでA残基はメチル化されている)を加え、親DNA(注:E.coliのほとんどすべての共通株から単離されたDNAは、配列5−GATC−3においてDam−メチル化されている)に対して選択する;(iv)PCR混合物にTaqエクステンダーを用いてPCRの信頼性を10kbに増加させる;(v)PfuDNAポリメラーゼを用いて、PCR産物の末端をポリッシュする;(vi)T4DNAリガーゼの存在下で十分な分子内結紮を行う。
プラスミドテンプレートDNA(約0.5pmole)を、25ulの1x突然変異誘発バッファー中:(20mMTrisHCl,pH7.5;8mMMgCl2;40ug/ml BSA);12−20pmoleのそれぞれのプライマー(そのうちの1つは5−第1リン酸を含む必要がある)、250uMのそれぞれのdNTP,2.5UTaqNDAポリメラーゼ、2.5UのTaqエクステンダー(Stratagene)を含む、PCRカクテルに添加する。
PCRサイクルパラメータは、94Cで4分、50Cで2分、72Cで2分を1サイクル;その後94Cで1分、54Cで2分、72Cで1分を5−10サイクル(ステップ1)である。
親テンプレートDNAおよび新たに合成したDNAを取り込んだ線形突然変異プライマーは、DpnI(10U)およびPfuDNAポリメラーゼ(2.5U)で処理する。これにより、in vivoでメチル化した親テンプレートとハイブリッドDNAのDpnI消化と、PfuDNAポリメラーゼにより、線形DNA産物上のTaqADNAポリメラーゼ伸長塩基の除去をもたらす。
反応は、37Cで30分インキュベートした後、72Cに移し、さらに30分追加する(ステップ2)。
突然変異バッファー(1x、115ul、0.5mMATPを含む)をDpnI消化PfuDNAポリメラーゼ−ポリッシュPCR産物に加える。
溶液を混合し、10ulを新しい遠心分離管に移し、T4DNAリガーゼ(2−4U)を添加する。
結紮は、37Cで60分以上インキュベートする(ステップ3)。
処理溶液をコンピテントE.coliに形質転換する(ステップ4)。
上述のPCRに基づく部位指向性突然変異誘発に加え、他の方法が利用できる。例としては、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. 82:488-492; Eckstein et al. (1985) Nucl. Acids Res. 13:8764-8785に記載されたもの、およびPromegaによるGeneEditor( Site-Directed Mutageneis Sytemの使用がある。
本明細書に引用されているすべての特許および他の参照文献は、本発明の属する分野における通常の知識を有する者のレベルの指標であり、その表および図を含めてその全体を、おのおのの参照文献について、その全体が個々に参照されることにより取り込まれているのと同様に、その全体が参照することにより本明細書に取り込まれる。
当業者は、その中に本来有しているのと同様に、既述した目的および有利な点を得るために、本発明をよく適用することができることを、容易に認識するであろう。好ましい態様として明示的に例示されここに記載された方法、その変形方法および組成物は、例示であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。それらの変形および他の使用は当業者が考えるものであり、それらは本発明の精神に包含され、特許請求の範囲により規定されるものである。
変形した置き換えや修飾が本発明の範囲及び精神から離れることなくここに記載された発明に適用できることは、当業者にとって非常に明白である。例えば、PYK2タンパク質の結晶化や共結晶化条件に変形があり、および/または種々のキナーゼドメイン配列を用いることができる。したがって、このような追加の態様は、本発明および前述の特許請求の範囲内にある。
ここに例示的に記載された本発明は、ここに特に記載されていない要素や限定の不存在下でも適式に実施できうる。従って、例えば、本明細書のおのおのの例において、「含む」、「本質的に〜からなる」、「からなる」の語は、他の2つの語と相互に置換できる。用いられる語および表現は、既述の語として用いられ、限定のためではない。このような語や表現の使用において、示され、記載された特徴またはその部分のいかなる等価物をも排除する意図はなく、種々の修飾が請求項に記載された発明の範囲内で可能である。したがって、本発明が好ましい態様および最適な形態で特に記載されていたとしても、ここで記載された修飾や変形が当業者によって行うことができ、このような修飾や変形が添付の請求項に規定された本発明の範囲内であるとみなされることを、理解すべきである。
さらに、本発明の特徴や見地がマーカッシュ群や他の代替の群の形で記載されている箇所において、当業者は、本発明がマーカッシュ群または他の群のどの個々の構成員または構成員のサブグループの形でも記載されていることを認識するであろう。
また、反対のことが示されていない限り、種々の数値が態様に提供されている箇所においては、範囲の端点としていずれもの2つの異なる値を取ることにより追加の態様が記載されているものである。このような範囲も、記載された発明の範囲内である。
したがって、追加の態様は、本発明の範囲および上述の特許請求の範囲内にある。
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図1は、PYK2活性部位のリボン図の概略説明図を示す。

Claims (98)

  1. PYK2に結合する化合物を同定する方法であって、PYK2と化合物との共結晶においてPYK2と結合する少なくとも1つの化合物の方位を測定することを含む、方法。
  2. 前記化合物が、PYK2に弱く結合し、かつ350ダルトン未満の分子量を有する場合に、分子骨格として同定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法が、前記分子骨格の化学構造を同定することをさらに含み、前記分子骨格が修飾される場合、分子骨格とPYK2との結合親和性または結合特異性またはその両方が変化する、請求項2に記載の方法。
  4. リガンドを合成することをさらに含む請求項3に記載の方法であって、分子骨格の1またはそれ以上の化学構造が修飾されて、変化した結合親和性または結合特異性またはその両方によってPYK2に結合するリガンドを提供する、方法。
  5. 前記分子骨格が複数のキナーゼに結合する、請求項2に記載の方法。
  6. 前記分子骨格がPYK2残基503、505、457、488、567、および554の1またはそれ以上と相互作用する、請求項2に記載の方法。
  7. 前記リガンドが式Iの化学構造を有する、請求項4に記載の方法。
  8. PYK2に結合する改良されたリガンドを得る方法であって、
    PYK2に結合する化合物を同定すること、および前記化合物がPYK2残基503、505、457、488、567、および554の1またはそれ以上と相互作用するか否かを測定すること;
    前記化合物の誘導体が、前記化合物よりも高い親和性または高い特異性またはその両方でPYK2と結合するか否かを測定すること、を含み、
    ここで、高い親和性または高い特異性またはその両方が、前記誘導体が改良されたリガンドであることを示す、方法。
  9. 前記誘導体が、前記化合物より少なくとも10倍高い親和性または特異性またはその両方を有する、請求項8に記載の方法。
  10. 前記誘導体が、少なくとも100倍高い親和性または特異性またはその両方を有する、請求項8に記載の方法。
  11. 前記化合物が式Iの化学構造を有する、請求項8に記載の方法。
  12. PYK2に特異的なリガンドを開発するための方法であって、
    複数のキナーゼに結合する化合物を同定すること、および
    前記化合物の誘導体が、前記化合物よりPYK2に対して高い特異性を有するか否かを測定すること、
    を含む、方法。
  13. 前記化合物が、前記複数のキナーゼのいずれかに結合するよりも少なくとも10倍高い親和性でPYK2と結合する、請求項12に記載の方法。
  14. 前記化合物が、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の少なくとも1つと相互作用する、請求項12に記載の方法。
  15. 前記化合物が、式Iの化合物である、請求項12に記載の方法。
  16. 前記化合物が、前記複数のキナーゼに弱く結合する、請求項12に記載の方法。
  17. PYK2キナーゼドメインの結晶形。
  18. 表1に示す座標を有する、請求項17に記載の結晶形。
  19. 1またはそれ以上の重金属原子を含む、請求項17に記載の結晶形。
  20. 前記結晶形が、PYK2と結合化合物との共結晶を含む、請求項17に記載の結晶形。
  21. 前記結合化合物が、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の1またはそれ以上と相互作用する、請求項20に記載の結晶形。
  22. 前記結晶形が、X線ビーム中にある、請求項17に記載の結晶形。
  23. 前記PYK2が変異している、請求項17に記載の結晶形。
  24. PYK2の結晶を得る方法であって、PYK2タンパク質を5−20mg/mlで、2−10%ポリエチレングリコール(PEG)8000、0.2M酢酸ナトリウム、0.1%カコジル酸ナトリウムpH6.5、20%グリセリンと実質的に等価な結晶化条件に、結晶が成長するのに充分な時間置くことを含む、方法。
  25. 前記結晶化条件を最適化することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記結晶化条件が、約8%ポリエチレングリコール(PEG)8000を含む、請求項24に記載の方法。
  27. 前記PYK2が、セレノメチオニンラベル化PYK2である、請求項24に記載の方法。
  28. PYK2とPYK2結合化合物の共結晶。
  29. 前記結合化合物が、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の少なくとも1つと相互作用する、請求項28に記載の共結晶。
  30. 前記結合化合物が、式Iの化学構造を有する、請求項28に記載の共結晶。
  31. 前記共結晶が、X線ビーム中にある、請求項28に記載の共結晶。
  32. PYK2と結合化合物との共結晶を得る方法であって、PYK2タンパク質を5−20mg/mlで、2−10%ポリエチレングリコール(PEG)8000、0.2M酢酸ナトリウム、0.1%カコジル酸ナトリウムpH6.5、20%グリセリンの結晶化条件に、結合化合物の存在下に、結晶が成長するのに充分な時間置くことを含む、方法。
  33. 前記結合化合物が、0.5から1.0mMの最終濃度となるように前記タンパク質に添加される、請求項32に記載の方法。
  34. 前記結合化合物が、ジメチルスルフォキサイド溶液中にある、請求項32に記載の方法。
  35. 前記結晶化条件が、約8%ポリエチレングリコール(PEG)8000を含む、請求項32に記載の方法。
  36. キナーゼの構造を測定する方法であって、PYK2構造の電子表現からのホモロジーモデルを作成することを含む、方法。
  37. 前記作成が、
    PYK2と前記キナーゼとの保存されたアミノ酸残基を同定すること;
    前記PYK2構造の保存された複数のアミノ酸の原子座標を、前記キナーゼの対応するアミノ酸に移し、前記キナーゼのおおよその構造を提供すること;および
    前記キナーゼにおける残ったアミノ酸残基の構造の電子表現を用いて前記キナーゼの残余を表す構造を構築すること、
    を含む、請求項36に記載の方法。
  38. 前記キナーゼの1またはそれ以上の結晶からの低解像度X線回折データに、前記ホモロジーモデルを適合させることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
  39. 表3の保存された残基の座標が利用される、請求項37に記載の方法。
  40. 変異したPYK2からの保存された残基の座標が利用される、請求項37に記載の方法。
  41. PYK2の結晶構造の電子表現。
  42. 表1または表2に示された座標に対応する原子座標表示を含む、請求項41に記載の電子表現。
  43. 概略的表示を含む、請求項41に記載の電子表現。
  44. 変異したPYK2に対する原子座標が利用される、請求項41に記載の電子表現。
  45. 前記PYK2が、本質的にPYK2キナーゼドメインからなる、請求項44に記載の電子表現。
  46. PYK2の結合部位の電子表現。
  47. PYK2残基503、505、457、488、567、および554の表示を含む、請求項46に記載の電子表現。
  48. 結合部意表面輪郭を含む、請求項46に記載の電子表現。
  49. 複数の保存されたアミノ酸残基の結合特性の表示を含む、請求項46に記載の電子表現。
  50. PYK2の結合部位の結合化合物の電子表現をさらに含む、請求項46に記載の電子表現。
  51. 前記PYK2が変異したPYK2である、請求項46に記載の電子表現。
  52. PYK2をベースとしたPYK2のホモロジーモデルの電子表現。
  53. 前記ホモロジーモデルが表1または表2の保存された残基原子座標を利用する、請求項52に記載の電子表現。
  54. 変位したPYK2のための原子座標が利用される、請求項52に記載の電子表現。
  55. PYK2に結合するリガンドを同定する方法であって、式Iのコア構造を含む誘導体化合物が、変化した結合親和性または特異性またはその両方によりPYK2と結合するか否かを、親化合物との比較において測定することを含む、方法。
  56. PYK2活性を調節する方法であって、PYK2に結合し、かつ残基503、505、457、488、567、および554の3つまたはそれ以上と相互作用する化合物と、PYK2を接触させることを含む、方法。
  57. 前記化合物が、式Iの化合物である、請求項56に記載の方法。
  58. 前記化合物が、200μMまたはそれ以下の濃度である、請求項56に記載の方法。
  59. 異常PYK2活性を示す疾患または状態にある患者を治療する方法であって、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の3つまたはそれ以上と相互作用する化合物を前記患者に投与することを含む、方法。
  60. 前記化合物が式Iの化合物である、請求項59に記載の方法。
  61. 前記疾患または状態が癌である、請求項59に記載の方法。
  62. 前記疾患または状態が炎症性疾患または状態である、請求項59に記載の方法。
  63. 前記化合物が残基503および505と相互作用する、請求項59に記載の方法。
  64. 修飾されたPYK2の原子座標の電子表現を含む、変異したPYK2結晶構造の電子表現。
  65. 前記修飾されたPYK2が、C−末端欠損、N−末端欠損またはその両方を含む、請求項64に記載の電子表現。
  66. 生物学的薬剤を開発する方法であって、PYK2結晶構造を解析すること、および前記生物学的薬剤を形成するための少なくとも1つのサブ構造を同定することを、を含む、方法。
  67. 前記サブ構造がエピトープを含み、前記方法が前記エピトープに対する抗体を開発することをさらに含む、請求項66に記載の方法。
  68. 前記サブ構造が変化した活性を提供すると予期される変異部位を含み、前記方法が前記部位に変異を生成して、それによって修飾されたPYK2を提供することを含む、請求項66に記載の方法。
  69. 前記サブ構造が、別個の部分を結合するための結合点を含む、請求項66に記載の方法。
  70. 前記別個の部分が、ペプチド、ポリペプチド、固相物質、リンカー、およびラベルからなる群より選択される、請求項69に記載の方法。
  71. 残基別個の部分を結合させることをさらに含む、請求項69に記載の方法。
  72. 潜在的なPYK2結合化合物を同定する方法であって、PYK2結合部位の電子表現中の化合物の少なくとも1つの電子表現を適合させることを含む、方法。
  73. 前記PYK2結合部位の電子表現が、表1または表2に示される原子構造座標によって定義される、請求項72に記載の方法。
  74. PYK2と複合化した化合物のコンピュータ表示を取り出し、コンピュータデータベースからの化合物のコンピュータ表示を、PYK2の活性部位のコンピュータ表示と適合させること;および
    潜在的な結合化合物として、好ましい幾何学的適合およびエネルギー的に好ましい相補的相互作用に基づいて、前記活性部位に最も適合する化合物を同定すること、
    を含む、請求項73に記載の方法。
  75. 1またはそれ以上の化学基の欠失または付加またはその両方によりPYK2と複合化した化合物のコンピュータ表示を修飾すること;
    コンピュータデータベースからの化合物のコンピュータ表示を、PYK2の活性部位のコンピュータ表示と適合させること;および
    潜在的な結合化合物として、好ましい幾何学的適合およびエネルギー的に好ましい相補的相互作用に基づいて、前記活性部位に最も適合する化合物を同定すること、
    を含む、請求項73に記載の方法。
  76. PYK2と複合化した化合物のコンピュータ表示を取り出すこと;および
    化合物検索コンピュータプログラムを用いて前記化合物と構造的な類似性を有する化合物についてデータベースを検索すること、または、化合物構築コンピュータプログラムを用いて前記化合物の部分を類似する化学構造と置き換えること、
    を含む、請求項73に記載の方法。
  77. 前記化合物が式Iの化合物である、請求項73に記載の方法。
  78. 前記適合が、前記化合物がPYK2残基503、505、457、488、567、および554の1またはそれ以上と相互作用するか否かを測定することを含む、請求項82に記載の方法。
  79. PYK2結合化合物を結合コンポーネントに結合させる方法であって、
    キナーゼ結合化合物の前記結合コンポーネントのエネルギー的に許容される結合部位を同定すること;および
    前記化合物またはその誘導体を、前記エネルギー的に許容される部位において前記結合コンポーネントに結合させること、
    を含む方法。
  80. 前記結合コンポーネントが固相媒体への結合のためのリンカーであり、前記方法が前記化合物または誘導体を、前記エネルギー的に許容される部位において結合したリンカーを介して固相媒体に結合させることをさらに含む、請求項79に記載の方法。
  81. 前記キナーゼが、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の少なくとも1つとマッチングする保存された残基を含む、請求項79に記載の方法。
  82. 前記リンカーがトレースレスリンカーである、請求項80に記載の方法。
  83. 前記キナーゼ結合化合物またはその誘導体が、前記固相媒体に結合した前記リンカー上で合成される、請求項80に記載の方法。
  84. 複数の前記化合物または誘導体が、コンビナトリアル合成により合成される、請求項83に記載の方法。
  85. 前記化合物の前記固相媒体への結合が、親和性媒体を提供する、請求項80に記載の方法。
  86. 前記結合コンポーネントがラベルを含む、請求項79に記載の方法。
  87. 前記ラベルが、フルオロフォアを含む、請求項86に記載の方法。
  88. 修飾された化合物であって、前記修飾された化合物のPYK2への結合のためのエネルギー的に許容される部位において、式Iの化合物に結合したリンカー部分を有する式Iの化合物を含む、修飾された化合物。
  89. 前記リンカーが固相に結合している、請求項88に記載の化合物。
  90. 前記リンカーがラベルを含むか、またはラベルに結合している、請求項88に記載の化合物。
  91. 前記リンカーがトレースレスリンカーである、請求項88に記載の化合物。
  92. PYK2残基503、505、457、488、567、および554の1またはそれ以上とマッチングする保存された残基を含むキナーゼに対するリガンドを開発する方法であって、式Iの化合物が前記キナーゼに結合し、前記残基と相互作用するか否かを測定すること、を含む方法。
  93. 前記キナーゼが、PYK2残基503、505、457、488、567、および554の少なくとも2つとマッチングする保存された残基を含む、請求項92に記載の方法。
  94. 前記キナーゼが、PYK2残基503、505、457、488、567、および554とマッチングする保存された残基を含む、請求項92に記載の方法。
  95. 前記化合物が前記キナーゼを調節するか否かを測定することをさらに含む、請求項92に記載の方法。
  96. 前記測定が、前記キナーゼの結合部位に置いて前記化合物をコンピュータ適合させることを含む、請求項92に記載の方法。
  97. 前記キナーゼと前記化合物との共結晶を形成することをさらに含む、請求項92に記載の方法。
  98. 前記化合物の前記キナーゼとの結合方位を測定することをさらに含む、請求項97に記載の方法。
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