JP2001514484A - タンパク質チロシンキナーゼの結晶構造 - Google Patents

タンパク質チロシンキナーゼの結晶構造

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、任意に1つまたはそれ以上の化合物と錯化していてもよい蛋白質チロシンキナーゼの三次元構造に関する。蛋白質チロシンキナーゼおよびそれに結合している化合物のいずれの構造も規定する原子配位は、未知の構造の蛋白質チロシンキナーゼの三次元構造を決定するための方法および蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定する方法に適切である。

Description

【発明の詳細な説明】 タンパク質チロシンキナーゼの結晶構造 関連出願 本発明は、1996年8月21日出願の、Mohammadi等の「非インシュリン受 容体チロシンキナーゼのチロシンキナーゼドメインの結晶(Crystals of the Tyr osine Kinase Domain of Non-Insulin Receptor Tyrosine Kinases)」という名 称の米国特許出願第80/701,191号(LyonおよびLyon Docket第227/ 088号)、および1996年12月19日出願の、McMahon等の「オキシインド リノン/チオールインドリノン族化合物と複合体形成したタンパク質チロシンキ ナーゼの結晶構造(Crystal Structure of a Protein Tyrosine Kinase Complexe d with Compouds of the Oxindolinone/Thiolindolinone Family)」という名称 の米国特許出願第60/034,168号(LyonおよびLyon Docket第221/2 82号)に関連したものであり、それらの図面、表、および図を含むすべてを本 文中に参考文献として取り入れた。 序 本発明は、プロテインキナーゼの三次元構造に関する。 背景技術 本発明の背景についての以下の説明は、単に本発明の理解の助けとして提供さ れているものであって、本発明に対し先行技術を記述または構成するために付け 加えられたものではない。 タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は、多くの異なる種類の酵素を含む( 総説としてSchlessingerおよびUllrich、1992、Neuron、9:383-391参照のこと) 。PTKファミリーは、多数のサブファミリーを含んでおり、そのうちの一つが 繊維芽細胞増殖因子受容体(FGF−R)のサブファミリーである(総説としてGiv olおよびYayon、1992、FASEB J.、(15):3362-3369参照のこと)。 全てのPTKは、高エネルギーホスフェートをアデノシン三リン酸から標的タ ンパク質のチロシン残基へ酵素的に転移させる。これらのリン酸化反応の結果は 、シグナルトランスダクションの過程における細胞現象を調節する。細胞のシグ ナ ルトランスダクションの過程は、細胞外のシグナルを細胞内シグナルに変換する 多くの段階を含む。細胞内シグナルは、次いで細胞の応答に変換される。PTK は多くのシグナルトランスダクションの過程の構成要素である。PTKは、この 過程の特定の段階において、下流の分子をリン酸化することによりシグナルの流 れを調節する。ホスフェートの添加は、下流の分子を「オン」または「オフ」す ることによりその活性を調整することができる。従って、特定のPTK活性の異 常は、そのシグナルのオーバーフローまたはアンダーフローのいずれかを引き起 こすことが可能である。シグナルのオーバーフローは、制御されていない細胞増 殖のような異常に導く可能性があり、それは癌および脈管形成のような疾患を代 表するものである。 生物医学界の科学者達は、シグナルトランスダクション経路のオーバーフロー をダウンレギュレートするPTK阻害剤を捜している。特に、細胞膜を横切るこ とができ、かつ酸性の環境において加水分解されない低分子のPTK阻害剤が捜 し求められている。これらの低分子のPTK阻害剤は、生物的利用能が高い可能 性があり、さらに、経口的に患者に投与することができる。 いくつかの低分子のPTK阻害剤がすでに発見されている。例えば、ビス(単 環式)、二環式または複素環式アリール化合物(PCT WO 92/20642 )、ビニレンアザインドール誘導体(PCT WO 94/14808)、1−シ クロプロピル−4−ピリジル−キノロン(米国特許第5,330,992号)、ス チリル化合物(米国特許第5,217,999号)、スチリル置換ピリジル化合物 (米国特許第5,302,606号)、ある種のキナゾリン誘導体(欧州特許出願 第0556 266A1)、セレオインドールおよびセレニド(PCT WO 9 4/03427)、三環の多価アルコール化合物(PCT WO 92/2166 0)、およびベンジルホスホン酸化合物(PCT WO 91/15495)が PTK阻害剤として記載されている。 数多くのPTK阻害剤が知られているが、これらの多くはPTKサブファミリ ーに特異的ではなく、従って治療法としては、さまざまな副作用を引き起こすだ ろう。しかしながら、インドリノンファミリーの化合物はFGFRサブファミリ ーに特異的であり、かつ加水分解されない。1996年12月19日に公開され た、Tang等の「疾患の治療のためのインドリノン化合物(Indolinone Compounds for the Treatment of Disease)」という名称のWO 96/40116。X線 結 晶学の使用により他のPTKの三次元構造が提供されたが、それらはPTKサブ ファミリーに特異的な加水分解抵抗性の低分子と複合体を形成しない。 最近の進歩にもかかわらず、この技術においては、改良された治療用分子が設 計され合成されるような、プロテインキナーゼの結晶学的解析の必要性が残され ている。 発明の概要 本発明はタンパク質チロシンキナーゼの三次元構造に関する。X線結晶学の使 用により、タンパク質チロシンキナーゼの三次元構造を原子の解像力で明示する ことができる。 本文中に記載した三次元構造は、タンパク質チロシンキナーゼとそれらに結合 する化合物との間の特異的な相互作用を明らかにする。タンパク質チロシンキナ ーゼの三次元構造を明示する座標は、未知の構造をもつPTKの三次元構造の決 定に有用である。さらに、当該座標は、タンパク質チロシンキナーゼ機能のモジ ュレーターの設計および同定に有用である。これらのモジュレータは、癌、脈管 形成、アテローム硬化症、および関節炎のような細胞増殖性の疾患を含めた(し かしこれらに限定されない)疾患に対する治療法として、潜在的に有用である。 従って、第一の態様において、本発明はタンパク質チロシンキナーゼの触媒ド メインに相当するポリペプチドの結晶形を特色とする。 本発明の情況においては、「結晶形」という用語は、PTKの触媒ドメインに 相当する精製されたポリペプチドを含んでいる水溶液から形成された結晶をいう 。タンパク質チロシンキナーゼの結晶形は、Blundel等、1976年、タンパク質結 晶学 (Protein Crystallography)、アカデミックプレス、に描かれた結晶形の一 つによって定義されるパターンでX線を回折することができるものとして特徴づ けられる。プロテインキナーゼの結晶形は、例えば、主として塩または主として 化合物から成る結晶形に類似のパターンでX線回折することができるものとして は特徴づけられない。 「タンパク質チロシンキナーゼ」または「PTK]という用語は、アデノシン 三リン酸の高エネルギーホスフェートを標的タンパク質のチロシン残基へ転移す る酵素をさす。 本発明のタンパク質チロシンキナーゼの触媒ドメインは、繊維芽細胞成長因子 (FGF)と結合する、受容体タンパク質チロシンキナーゼから生じることが可 能である。これらのタンパク質チロシンキナーゼは本文においては「FGFR」 として識別されており、FGFR1のようにFGFRファミリーの一員をさすこ とができる。 「触媒ドメイン」という用語は、タンパク質から切り離れて存在することが可 能なタンパク質の部位をさす。タンパク質チロシンキナーゼの触媒ドメインは、 他のタンパク質チロシンキナーゼの触媒ドメインに対し、かなりのアミノ酸の同 一性を有するものとして特徴づけられる。かなりのアミノ酸の同一性とは、好ま しくは少なくとも30%の同一性を、さらに好ましくは少なくとも35%の同一 性を、さらに、最も好ましくは40%の同一性をさす。これらのアミノ酸の同一 性の度合は、異なるタンパク質チロシンキナーゼファミリー間の同一性に関連す る。所与のタンパク質チロシンキナーゼファミリーの構成員についてのアミノ酸 の同一性は、55から90%に及ぶ。触媒ドメインは切り離された存在として機 能的であってもよい。タンパク質チロシンキナーゼの触媒ドメインはまた、溶液 中において可溶性であるポリペプチドとしても特徴づけられる。 本文において用いた「同一性」という用語は、それらの類似性または関連性を 測る配列の特性をさす。同一性は、二つの配列において同一な残基の数を全残基 数で割り、その商を100倍することによって測定される。従って、2コピーの 全く同じ配列は100%の同一性を有するか、高度には保存されていない、欠損 、付加、または置換を有する配列は低い度合の同一性を有する。当業者には、配 列の同一性の測定のためにいくつかのコンピュータープログラムが利用できるこ とが認識されるであろう。 「機能性の」という用語は、触媒ドメインが基質をリン酸化することにより、 基質を産物に変える能力をさす。「機能性の」という用語はまた、触媒ドメイン が天然の結合相手と結合する能力をさす。触媒領域は、N末端尾部、触媒中心、 およびC末端尾部を含んでもよい。触媒中心は、触媒作用に関して機能性である ことが可能なポリペプチドである。NおよびC末端尾部は、触媒作用の面では明 らかな機能性を与えなくてよいが、モジュレーター特異性の面では機能性を与え てもよい。 ポリペプチドは、もしそれが機能性でなくとも、触媒ドメインとして存在する ことが可能である。例えば、触媒ドメインに相当するポリペプチドは、もし鍵領 域にホスフェートを収容しないなら、機能性でないといってよい。リン酸化の状 態に依存した機能の数多くの例がこの技術においてよく記録されている。従って 、触媒ドメインは、機能性であることをぬきにしても存在することが可能である 。プロテインキナーゼの触媒ドメインの物差しは、他のプロテインキナーゼ触媒 ドメインと相同なポリペプチドであるということである。 「ポリペプチド」という用語は、タンパク質を含む、アミノ酸配列の一部また は全部に相当するアミノ酸の鎖をさす。 本発明の好ましい態様は、受容体PTKであるPTKの結晶形を含む。受容体 は、細胞膜の内側および外側にまたがるタンパク質である。受容体PTKは、細 胞外領域、膜を横切る領域、および触媒ドメインを含んでいる細胞内領域を含む 。 本発明のもう一つの好ましい態様は、FGF−R、PDGF−R、FLK、C CK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS 、RET、LTK、ROR1、およびMUSKから成る群より選択した受容体P TKの結晶形である。 本発明のさらにもう一つの好ましい態様は、非受容体PTKであるPTKの結 晶形である。非受容体PTKは細胞の内側に局在し、触媒ドメインに相当するポ リペプチドに結合している細胞外の、または膜にかかっているポリペプチドを収 容しない。非受容体PTKは、脂肪酸または脂質を収容してもよく、それらはP TKに膜と結合する性質を与えることができる。本発明の好ましい態様において は、非受容体PTKの結晶形は、SRC、BRK、BTK、CSK、ABL、Z AP70、FES、FAK、JAK、およびACKから成る群より選択される。 さらにもう一つの好ましい態様においては、本発明は重金属原子を含んでいる PTKの結晶形を特色とする。これらのタイプの結晶を誘導体結晶(derivative crystals)と呼ぶことができる。 「誘導体結晶」という用語は、ポリペプチドが1以上の重金属原子と結合して いる結晶をさす。 「結合」という用語は、化学的実体または化合物か、あるいはそれらの部分ま たはフラグメントと、チロシンキナーゼドメインタンパク質か、あるいはそれら の部分またはフラグメントとの間の近接した状態をさす。結合は、非共有性でも よく(すなわち、例えば水素結合、ファンデルワールス、静電、または疎水性相 互作用により、エネルギー的に並置が好ましい場合)、あるいは共有性であって も よい。 「重金属原子」という用語は、遷移元素、ランタニド金属、またはアクチニド 金属である原子をさす。ランタニド金属は、(57と71も含めて)57と71 の間の原子番号を有する元素を含む。アクチニド金属は、(89と103も含め て)89と103の間の原子番号を有する元素を含む。 好ましい態様においては、本発明はFGF受容体チロシンキナーゼドメインタ ンパク質の結晶を特色とする。FGF受容体チロシンキナーゼドメインタンパク 質は、FGFR1をさすことができる。 「FGFR1」という用語は、互いに相同でありかつFGFと結合する数多く の受容体PTKの一員をさす。このような状況においては、「相同」という用語 は、FGFRファミリーの二つの構成員間の、少なくとも70%のアミノ酸の同 一性をさす。 「FGFR1」という用語はまたSEQ TD NO;2のアミノ酸配列によ って特徴づけられる、ヒトFGFR1の突然変異体をさすことができる。ヒトF GFR1と比較して、FGFR1は以下のアミノ酸の置換:Cys−488→A la、Cys−584→Ser、Leu−457→Val、を含み、さらにN末 端に付加的な5個のアミノ酸残基(Ser−Ala−Ala−Gly−Thr)、 を有する。 「ヒトFGFR1」という用語は、SEQ ID NO;1のアミノ酸配列を 有する、ヒト繊維芽細胞成長因子受容体1(「FGFR1」)の、チロシンキナー ゼドメインをさす。一般的に、ヒトFGFR1はヒトFGFR1の310アミノ 酸残基フラグメント(残基457ないし765)を含む。 「突然変異体」という用語は、天然のチロシンキナーゼドメインにおける少な くとも1個のアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基で置換することにより得られ るポリペプチドをさす。突然変異は、天然のポリペプチド内か、または天然のチ ロシンキナーゼドメインに相当し、それが由来した天然のチロシンキナーゼドメ インと実質的に同じ三次元構造を有しているポリペプチドの、Nおよび/または C末端における、アミノ酸残基の付加および/または欠失によって達成される。 実質的に同じ三次元構造を有するということは、天然のチロシンキナーゼのCα 原子の少なくとも約50%ないし100%が重ね合せに含まれる場合に、突然変 異体が由来した天然のチロシンキナーゼドメインの原子構造座標を重ね合せると 、 約2Å以下の根平均二乗速度(r.m.s.d.)を有する一組の原子構造座標 を有することを意味する。突然変異体はPTK活性を有してもよいが、有する必 要はない。 もう一つの好ましい態様においては、本発明は表1に説明した構造座標により 定義される結晶形に関する。 本文に用いた「原子構造座標」という用語は、分子または複数の分子の三次元 構造を定める一組のデータをさす。構造座標はわずかに変更することができ、さ らに、ほぼ同等な三次元構造を与えることができる。独特な一組の構造座標の物 差は、結果として得られた構造の根平均二乗速度である。1.5より小さい根平 均二乗速度によって互いに逸脱する三次元構造を与える構造座標は、普通の技術 の熟練を有する人により同等と判断されてよい。従って、表1、表2、表3、お よび表4に説明した構造座標は、そこに定めた値に限定されるものではない。 もう一つの好ましい態様においては、本発明は化合物と結合しているポリペプ チドの結晶形を特色とする。これらのタイプの結晶形をコクリスタル(co-crysta l)と呼ぶことができる。この化合物は補因子、基質、基質類似体、阻害剤、また はアロステリックエフェクターでよい。 「化合物」という用語は有機分子をさす。「有機分子」という用語、はその構造 内に少なくとも一つの炭素原子を有する分子をさす。当該化合物は6kDaより 小さい分子量を有することができる。当該化合物の配置および、当該化合物とポ リペプチドとの間に形成された相互作用の両者は、好ましくは当該二つの分子間 の高親和性結合を決定する。高親和性結合は、好ましくは10-6M以下程度の解 離平衡定数によって決定される。当該化合物は、好ましくはPTKの機能を変え るモジュレーターである。 「機能」という用語は、PTK機能についてのモジュレーターの影響に関して は、PTKの触媒活性を促進または阻害するモジュレーターの能力をさす。 「触媒活性」という用語は、本発明の情況においては、基質ポリペプチドをリ ン酸化するPTKの能力をさす。触媒活性は、例えば、生成物に変えられた基質 の量を、時間の関数として測定することによって測ることができる。生成物への 基質の転換は、PTKの活性部位で起こる。 「活性部位」という用語は、PTK分子に局在するくぼみをさし、そこに1以 上の基質分子が結合してもよい。PTKを発現している細胞へのモジュレーター の添加は、PTKの触媒活性を高める(活性化)か、または低め(阻害)てもよ い。 少数のPTKの触媒活性阻害剤がこの技術においては周知である。低分子阻害 剤は、基質の結合を妨げることによってPTKの機能を調節してもよい。例えば 、インドリノン化合物はPTKの触媒ドメインの活性部位に結合してよく、10-6 Mまたはそれより小さい程度の阻害定数によって測定されるように、効果的に それらを阻害する。 PTKの細胞内領域の活性剤は、PTK触媒ドメインおよび基質の両者と相互 作用することによりPTKの機能を高めることができる。活性剤はまたPTKの 二量化を促進してよく、従ってそれらを互いにきわめて接近するようにしむける ことによりそれらを活性化させる。さらに活性剤は、PTKの細胞内領域におい て、触媒部位が活性剤の存在下に、より速い速度で基質を修飾するよう、立体配 座の変化を促進することにより作用してもよい。 「機能」という用語はまた、PTKと天然の結合相手との間の結合を促進また は阻害するためのモジュレーターの能力をさす。 「天然の結合相手」という用語は、細胞においてPTKに普通に結合するポリ ペプチドをさす。これらの天然の結合相手は、PTKのシグナルトランスダクシ ョンの過程における信号の伝播に、役割を果たすことができる。天然の結合相手 は、高い親和性を以ってPTKに結合することができる。高い親和性は、10-6 Mまたはそれより小さい程度の平衡結合定数を示す。しかしながら、天然の結合 相手はまたPTKと一時的に結合し、それを化学的に修飾することができる。天 然の結合相手は、srcホモロジー(homology)2(SH2)または3(SH3) ドメイン、他のホスホリルチロシン結合(PTB)ドメイン、ヌクレオチド交換 因子、および他のプロテインキナーゼまたはプロテインホスファターゼから成る 群より選ばれるがこれに限定されない。 「相互作用」という用語は、モジュレーターおよび酵素の活性部位における原 子の間に形成される疎水性、芳香性、およびイオン性の力と、水素結合とをさす 。 「補因子」という用語は、基質に加えて、タンパク質に結合し化学反応を受け てもよい化合物をさす。多様な補因子は、アデノシンのホスフェートおよびニコ チンアミド誘導体のような、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体である。 「基質」という用語は、酵素と反応する化合物をさす。酵素は、特異的な基質 上で特異的な反応を触媒することかできる。例えば、PTKはチロシン部分の上 で特異的なタンパク質ならびにペプチドの基質をリン酸化することができる。さ らに、ヌクレオチドはプロテインキナーゼの基質として作用することができる。 「基質類似体」という用語は、構造上基質に類似しているが、同等ではない化 合物をさす。基質類似体はヌクレオチド類似体であってもよい。ヌクレオチド類 似体の例は、以下に記述されている。 「阻害剤」という用語は、プロテインキナーゼの細胞性の機能を減少させる化 合物をさす。プロテインキナーゼ機能は、好ましくは天然の結合相手との相互作 用であり、さらに好ましくは触媒活性である。 「アロステリックエフェクター」という用語は、タンパク質においてアロステ リック相互作用を引き起こす化合物をさす。「アロステリック相互作用」という用 語は、タンパク質上の離れた部位の間の相互作用をさす。当該部位は活性部位と 異なってもよい。アロステリックエフェクターは、活性部位と異なってもよい部 位へ結合することにより、触媒活性を高めるかまたは阻害することができる。 「コクリスタル」という用語は、ポリペプチドが1以上の化合物と結合してい る結晶をさす。 好ましい態様においては、本発明のコクリスタルは重金属原子と結合している ことが可能である。重金属原子の例は前文に記述した。 もう一つの好ましい態様においては、本発明は、ATPの加水分解不能の類似 体である化合物と結合している、結晶形のポリペプチドを含んでいるコクリスタ ルを特色とする。これらの類似体をヌクレオチド類似体と呼ぶことができる。 「ATP」という用語は、化合物アデノシン三リン酸をさす。 「加水分解不能」という用語は、水と容易に反応しない共有結合を有する化合 物をさす。加水分解不能のATP類似体の例は、AMP−PNPおよびAMP− PCPであり、それらの構造は当業者には周知である。 「AMP−PNP」という用語は、加水分解不能のATP類似体である、アデ ニリルイミド二リン酸をさす。 「AMP−PCP」という用語は、加水分解不能のATP類似体である、アデ ニリル二リン酸をさす。 もう一つの好ましい態様においては、本発明は、表2に明らかにした構造座標 によって定義される結晶形に関する。 好ましい態様においては、本発明は、ポリペプチドと結合している化合物がイ ンドリノンである結晶形に関する。 あるインドリノン類はPTK機能の特異的なモジュレーターである。本発明の 好ましい態様は、式IまたはII:のインドリノンと複合体を形成しているPR Kの結晶形であるか: のインドリノンと複合体を形成しているPRKの結晶形であるか、 または製薬上許容される塩、異性体、代謝産物、エステル、アミド、またはそれ らのプロドラッグであって: (a)A1、A2、A3、およびA4は独立して炭素または窒素であり; (b)R1は水素またはアルキルであり; (c)R2はオキシインドリノンの場合には酸素であるか、またはチオールイン ドリノンの場合には硫黄であり; (d)R3は水素であり; (e)R4、R5、R6、およびR7は任意に存在しており、さらにそれらは(i) アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリル、アルカリルオ キシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、SO2NRR’、SO3R、S R、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、OC(O)R、NHC(O) R、(CH2n、CO2RおよびCONRR’から成る群より独立して選択され るか、また は(ii)隣接する二つのR4、R5、R6、およびR7が共同してインドリノンの インドールが基底を成す部位のアリール部位と共に融合した環を形成し; (f)R2’、R3’、R4’、R5’、およびR6’は、水素、アルキル、アルコ キシ、アリール、アリールオキシ、アルカリル、アルカリルオキシ、ハロゲン、 トリハロメチル、S(O)R、SO2NRR’、SO3R、SR、NO2、NRR ’、OH、CN、C(O)R、OC(O)R、NHC(O)R、(CH2nCO2 RおよびCONRR'から成る群よりそれそれ独立して選択され; (g)nは0、1、2、または3であり; (h)Rは水素、アルキル、またはアリールであり; (i)R‘は水素、アルキル、またはアリールであり;さらに (j)Aはチオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−ト リアゾール、1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チ アゾール、イソチアゾール、フラン、1,2,3−オキサジアゾール、1,2, 4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジ アゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリ アゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2 ,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3,4−チアト リアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、およびテトラゾールから成る 群より選ばれ、1以上の位置がアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキ シ、アルカリル、アルカリルオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、 SO2NRR’、SO3R、SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、 OC(O)R、NHC(O)R、(CH2nCO2RまたはCONRR’により 任意に置換されている五員環ヘテロアリールリングである、 インドリノンと複合体を形成したPTKの結晶形である。 「製薬上許容される塩」という用語は、生物学的活性ならびに遊離塩基の性質 を保持している塩類をさす。製薬上許容される塩類は、塩酸、臭化水素酸、硫酸 、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン 酸、サリチル酸、その他のような無機酸との反応によって取得できる。 「プロドラッグ」という用語は、インヴィヴォにおいて元の薬剤に変化する薬 剤をさす。プロドラッグは、ある条件では元の薬剤よりも投与しやすといっても よい。例えば、プロドラッグは経口投与により生物学的利用が可能であってもよ いが元のものはそうではないか、またはプロドラッグは静脈内投与ができるよう 溶解度を改善してもよい。 「アルキル」は、直鎖、分枝、または環状の飽和脂肪族炭化水素をさす。好ま しくは、アルキル基は1ないし12個の炭素を有する。さらに好ましくは、それ は1ないし7個の炭素の、さらに好ましくは1ないし4個の炭素の低級アルキル である。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブ チル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、その他を含む。アルキ ル基は、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、 N(CH32アミノ、およびSHから成る群より選ばれる1以上の置換基によっ て任意に置換されていてもよい。 「アルケニル」は、少なくとも一つの炭素一炭素二重結合を含んでいる直鎖、 分枝、または環状の飽和脂肪族炭化水素をさす。好ましくはアルケニル基は2な いし12個の炭素を有する。さらに好ましくは、それは、2ないし7個の炭素の 、さらに好ましくは2ないし4個の炭素の、より低級のアルケニルである。アル ケニル基は、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲ ン、N(CH32アミノ、およびSHから成る群より選ばれる1以上の置換基に よって任意に置換されていてもよい。 「アルキニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を含んでいる直鎖、 分枝、または環状の飽和脂肪族炭化水素をさす。好ましくはアルキニル基は2な いし12個の炭素を有する。さらに好ましくは、それは、2ないし7個の炭素の 、さらに好ましくは2ないし4個の炭素の、より低級のアルキニルである。アル キニル基は、ヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲ ン、N(CH32アミノ、およびSHから成る群より選ばれる1以上の置換基に よって任意に置換されていてもよい。 「アルコキシ」は、「O−アルキル」基をさす。 「アリール」は、共役π電子系を有している少なくとも一つの環をもつ芳香族 基をさし、炭素環アリール、複素環式アリール、およびビアリール基を含む。ア リール基は、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、OH、NO2、 アミン、チオエーテル、シアノ、アルコキシ、アルキル、およびアミノから成る 群より選ばれる1以上の置換基によって任意に置換されていてもよい。 「アルカリル」は、アリール基に共有結合により結合しているアルキルをさす 。 好ましくは、アルキルは低級アルキルである。 「炭素環アリール」は、環原子が炭素であるアリール基をさす。 「複素環アリール」は、環原子として1ないし3個の異種原子を有し、残りの 環原子が炭素であるアリール基をさす。異種原子は、酸素、硫黄、および窒素を 含む。従って、複素環式アリール基は、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリ ル、N−低級アルキルピロロ、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾールその他を 含む。 「アミド」は、Rがアルキル、アリール、アルキルアリール、または水素であ る−C(O)−NH−Rをさす。 「チオアミド」は、Rがアルキル、アリール、アルキルアリール、または水素 である−C(S)−NH−Rをさす。 「アミン」は、R’およびR”がアルキル、アリール、およびアルキルアリー ルから成る群より独立して選ばれる−N(R’)R”基をさす。 「チオエーテル」は、Rがアルキル、アリール、またはアルキルアリールであ る−S−Rをさす。 「スルホニル」は、Rがアリール、C(CN)=C−アリール、CH2CN、 アルキアリール、スルホンアミド、NH−アルキル、NH−アルキルアリール 、またはNH−アリールである−S(O)2−Rをさす。 「アシル」という用語は、Rがホルミル、アセチル、プロピオニル、または、 ブチリルのような、前文に定義したアルキルである、−C(O)R基を意味する 。 当業者には、A1、A2、A3、およびA4が窒素または硫黄である場合には、R4 、R5、R6、およびR7は対応する結合と同様に存在しないことが理解されるで あろう。 前文の(e)(ii)に説明したような融合した環を有するインドール類は以下の ものを含む: 上記の六員環は、化合物IIにおいて可能なA環を例示している。 本発明の他の好ましい態様は、3−[(3−(2−カルボキシエチル)−4− メチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン、ならびに3−[4 −(4−フォルミルピペラジン−1−イル−)ベンジリデニル]−2−インドリ ノンを含む結晶形である。これらの結晶形のポリペプチドは、FGFRおよび特 にFGFR1であることが可能である。 好ましい態様においては、本発明の結晶形は、表3または表4に明らかにした 構造座標によって定義することができる。 X線結晶学の使用は、本発明の結晶形の三次元構造の解明を可能にする。結晶 形のX線結晶学による最初のキャラクタリゼーションで、単位格子形および結晶 におけるその方向性を測定することができる。 他の好ましい態様において、本発明は、単斜晶形の単位格子を有することによ って特徴づけられる、FGF受容体チロシンキナーゼドメインタンパク質の結晶 を特筆する。当該結晶はまた、空間群対称C2を有することによっても特性が規 定される。 「単位格子」という用語は、結晶の最も小さく最も単純な体積要素(すなわち 平行六面体ブロック)をさし、それは結晶パターンの単位を完全に代表する。単 位格子のディメンションは6個の数値により定義される;ディメンションa、b 、およびcと、角度α、β、およびγ。結晶は、数多くの単位格子が能率よく詰 まった配列として見ることができる。結晶学用語の詳しい説明は、本文中に参考 文献として取り入れた、図面、表、および図を含むすべてに記載されている。 「単斜晶形の単位格子」という用語は、a≠b≠c;α=γ=90°;β>9 0°である単位格子をさす。 「空間群」という用語は、単位格子の対称性をさす。空間群の名称(例えばC 2)においては、大文字は格子型を、その他の記号は、単位格子の外観を変えず にその上でおこなうことかできる対称操作を表す。 結晶構造に関して「格子」という用語は、ぎっしり詰まった単位格子の頂点に よって定まる点の配列をさす。 「対称操作」という用語は、一つの単位格子の同等な部分を交換するか、また は二つの異なる単位格子間の同等な分子を交換するための、幾何学的に定められ た方法をさす。対称操作の例は、らせん軸、対称心、および鏡面である。 好ましい態様において本発明は、単斜晶系の単位格子がおよそa=208.3 Å、b=57.8Å、c=65.5Åであり、β=107.2°である結晶形を 特色とする。 好ましい態様において本発明は、単斜晶系の単位格子がおよそa=211.6 Å、b=51.3Å、c=66.1Åであり、β=107.7°であるFGFR 1の結晶を特色とする。 もう一つの態様において本発明は、触媒ドメインの、保存された、グリシンに 富む領域における最初のグリシンから上流の少なくとも約20アミノ酸残基と、 当該触媒ドメインのC末端の境界に局在する保存されたアルギニンから下流の少 なくとも約17アミノ酸残基とを含んでいる、タンパク質チロシンキナーゼの触 媒ドメインに相当するポリペプチドを特色とする。 本発明のポリペプチドは、単離、濃縮、または精製することができる。さらに 、本発明の結晶形は、単離、濃縮、または精製されたポリペプチドから形成する ことができる。 ポリペプチドに関して「単離された」が意味するものは、互いに結合した6個 、12個、18個またはそれ以上のアミノ酸のポリマーであって、天然の源から 単 離されたか、または合成されたポリペプチドを含む。本発明の単離されたポリペ プチドは、それらが天然には純粋な、または分離された状態では見つからないと いう意味で独特である。「単離された」という用語は、天然に生じた配列がその 正常な細胞環境から取り去られたことを意味する。したがって、当該配列は無細 胞溶液中か、または異なる細胞環境に置かれてもよい。当該用語は、当該配列が アミノ酸鎖のみの存在であることを意味しないが、基本的には天然にはそれに結 合していた物質がないこと(少なくとも約90ないし95%の純度)を意味する 。 ポリペプチドに関して「濃縮された」という用語を用いることにより、特定の アミノ酸配列が、正常または病気の細胞か、または当該配列を採取した細胞にお けるよりも、細胞または興味のある溶液中に存在しる全アミノ酸が有意に高い分 画(2ないし5倍)を構成することが意味される。このことは、存在する他のア ミノ酸の量の選択的な減少によるか、または興味のある特定のアミノ酸配列の量 の優先的な増加により、あるいはこの二つの組み合わせにより人為的に引き起こ すことができた。しかしながら、「濃縮された」は、存在する他のアミノ酸配列 がないことを意味するものではなく、興味のある配列の相対的な量が有意に増加 したにすぎないということに注目すべきである。本文中では有意にという用語は 、増加のレベルが、かかる増加を生じさせた人にとって有用であるということを 意味するために用いられており、一般的には他のアミノ酸に対して約2倍、より 好ましくは少なくとも5ないし10倍またはそれ以上の増加を意味する。当該用 語はまた、他の源からのアミノ酸がないことを意味するものではない。アミノ酸 の他の源は、例えば酵母または細菌のゲノムか、またはpUC19のようなクロ ーニングベクターにコードされているアミノ酸を含む。当該用語は、所望の核酸 の割合を高めるためにある人が介入させたような状況のみを網羅することを意味 するものである。 アミノ酸配列が精製された形であることは、ある目的にとっても好都合である 。ポリペプチドに関して「精製された」という用語は、絶対的な純度(均一な標 本のような)を必要とするのではなく;そのかわりに、当該配列が天然の環境に おけるよりも相対的により純粋である(天然のレベルと比較して、このレベルは 少なくとも2ないし5倍大きい(例えばmg/mlについて))ことの指標を表し ている。少なくとも一桁分の、好ましくは二または三桁分の、さらに好ましくは 四または五桁分の大きさの精製が特に期待される。基質は、好ましくは機能上有 意 なレベルの汚染物質がなく、例えば、90%、95%、または99%純粋である 。 好ましい態様においては、本発明は受容体PTKの触媒ドメインに相当するポ リペプチドを特色とする。受容体PTKは、たとえアミノ酸含有量が異なっても よいとしても、インシュリン受容体の三次元構造と実質的に類似した三次元構造 を有してよい。 好ましい態様においては、本発明は、非インシュリン受容体チロシンキナーゼ が細胞質のチロシンキナーゼである、非受容体PTKの触媒ドメインに相当する ポリペプチドを特色とする。 好ましい態様においては、本発明は、FGF−R、PDGF−R、KDRNC CK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS 、RET、LTK、ROR1、またはMUSKから成る群より選ばれる、受容体 PTKの触媒ドメインに相当するポリペプチドを特色とする。 好ましい態様においては、本発明は、SRC、BRK、BTK、CSK、AB L、ZAP70、FES、FAK、JAK、またはACKから成る群より選ばれ る、非受容体PTKの触媒ドメインに相当するポリペプチドを特色とする。 好ましい態様においては、本発明は、表1または表2に示したアミノ酸配列を 有する、PTKの触媒ドメインに相当するポリペプチドを特色とする。 もう一つの態様においては、本発明は本文中に記述した結晶形を作り出す方法 を特色とする。この方法は、結晶を形成するために本文中に記述したポリペプチ ドを利用してもよい。当該方法は段階: (a)ある量のポリペプチド溶液を貯蔵溶液と混合すること;および (b)段階(a)で得られた混合物を、結晶化に適した条件下において、密閉容 器内の貯蔵溶液上でインキュベートすること、 を含んでいる。 これらの工程は、「発明の詳細な説明」と題した章において詳細に記述されてい る。 もう一つの態様においては、本発明はFGF受容体チロシンキナーゼのドメイ ンポリペプチドを結晶形で取得する方法であって、段階:(a)ある量のポリペ プチド溶液を同量の貯蔵液と混合することであって、当該ポリペプチド溶液が1 mg/mlないし60mg/mlのFGF型チロシンキナーゼドメインタンパク 質、10mMないし200mMの緩衝剤、0mMないし20mMのジチオスレイ トールを含み、約5.5ないし約7.5のpHを有し、また貯蔵液が10%ない し30%(w/V)のポリエチレングリコール、0.1Mないし0.5Mの硫酸 アンモニウム、0%ないし20%(W/V)のエチレングリコールまたはグリセ ロール、10mMないし200mMの緩衝剤を含み、約5.5ないし約7.5の pHを有すことを特徴とし;さらに(b)段階(a)で得られた混合物を、密閉 容器内の前記貯蔵液上で、0℃と25℃の間の温度下で結晶が形成されるまでイ ンキュベートすること、を含む・ 好ましい態様において本発明は、FGF受容体チロシンキナーゼドメインポリ ペプチドを結晶の形で取得する方法であって、ポリペプチド溶液が約10mg/ mLのFGF受容体チロシンキナーゼドメイン、約10mMの塩化ナトリウム、 約2mMのジチオルスレイトール、約10mMのトリスーHClを含み、約8の pHを有しており;貯蔵緩衝液が約16%(W/V)のポエチレングリコール( MW10000)、約0.3Mの硫酸アンモニウム、約5%のエチレングリコー ルまたはグリセロール、約100mMのビス−トリスを含み、約6.5のpHを 有しており;温度が約4℃である、方法を特色とする。 もう一つの好ましい態様において本発明は、FGF受容体チロシンキナーゼド メインポリペプチドを結晶の形で取得する方法であって、ポリペプチド溶液が補 因子、基質、基質類似体、阻害剤、またはアロステリックエフェクターを含む方 法を特色とする。 さらにもう一つの好ましい態様において本発明は、FGF受容体チロシンキナ ーゼドメインポリペプチドを結晶の形で取得する方法であって、化合物が加水分 解不能のATP類似体のようなヌクレオチド類似体か、またはインドリノンであ る方法を特色とする。インドリノン化合物は、本文中に記述したような一般構造 式を有する。 もう一つの態様において本発明は、FGF受容体チロシンキナーゼドメインタ ンパク質をコードしているcDNAであって、当該cDNAのコード鎖が、SE Q ID NO:5のヌクレオチド配列を有するcDNAを特色とする。 もう一つの態様において本発明は、表1、表2、表3、および表4の構造座標 を利用して、末知の構造のPTKの三次元構造を決定する方法に関する。これら の方法は、ホモロジーモデリング(homology modeling)、分子置換、および核磁 気共鳴法と関連させることができる。 好ましい態様において本発明は、表1、表2、表3、および表4の構造座標を PTKのアミノ酸配列と一緒に利用することにより、未知の構造のPRKの三次 元構造を決定する方法に関する。このホモロジーモデリング法は、段階:(a) 未知の構造をもつPTKのアミノ酸配列のコンピューター画像を、既知の構造を もつPTKのそれと整列させることであって、アミノ酸配列の一致する領域を揃 えることにより整列を行ない;(b)既知の構造のPTK配列におけるアミノ酸 構造のコンピューター画像を、未知の構造のPTK配列における対応するアミノ 酸構造のコンピユーター画像に転送することと;さらに(c)結果として得られ るPTK構造の低エネルギーの立体配座を決定すること、を含む。 「アミノ酸配列」という用語は、PTKの触媒ドメインに相当するポリペプチ ドを含んでいるアミノ酸鎖における、アミノ酸の順序をいう。 「整列させること」という用語は、2以上のアミノ酸配列の最初と最後を揃え ることをいう。整列の工程においては、対応するアミノ酸配列をお互いの上に置 く。 「相同」という用語は、二つの配列におけるアミノ酸が、同等かまたは同様の 側鎖の化学基(例えば、脂肪族、芳香族、極性、負に帯電した、または正に帯電 した)を有することをいう。 「対応する」という用語は、前文に述べた配列の整列において、他のものと共 に整列されたアミノ酸をさす。 「低エネルギーの立体配座を決定すること」という用語は、PTK構造の立体配 座を、当該構造の自由エネエルギーが低くなるように変える方法をいう。PTK構 造は、それと結合するモジュレーターのような分子を有してもよく、有していな くてもよい。 「低い自由エネルギー」という用語は、分子が当該方法によって測定される安 定状態にある状態をいう。安定状態は、複合体内で都合のよい相互作用がおこな われる場合に成就される。 「都合のよい相互作用」という用語は、疎水性、芳香性、およびイオン性の力 、ならびに水素結合をさす。 もう一つの好ましい態様においては、本発明は未知の構造をもつPTKの三次 元構造を測定する方法に関する。この方法は、表1、表2、表3、および表4の 構造座標を、PTKのための不完全なX線結晶学的データセットに適用すること によっておこなわれる。当該方法は、段階:(a)一方のデータセットは完全で あり他方は不完全であるという、二つの結晶からの電子回折データを突き合わせ ることにより単位格子における原子の位置を整列させること;および(b)結果 としてえられたPTK構造の低エネルギーの立体配置を測定すること、を含む。 「不完全なデータセット」という用語は、三次元構造を生じるために十分な情 報を有していないX線結晶学的データセットをさす。 もう一つの好ましい態様においては、本発明は、表1、表2、表3、および表 4の構造座標をPTKの核磁気共鳴(NMR)のデータに適用することにより、 未知の構造をもつPTKの三次元構造を決定する方法に関する。この方法は、段 階:(a)NMRのデータを用いてPTK構造の二次構造を決定すること;およ び(b)アミノ酸のスルースペース相互作用の割り当て(assignment)を簡単にす ること、とを含む。当該PTK構造は、化合物またはモジュレーターと複合体形 成していなくてもよい。 「二次構造」という用語は、三次元構造における、αヘリックスまたはβシー ト構成成分のようなアミノ酸の配置をいう。 「スルースペース相互作用」という用語は、三次元構造における二次構造成分 の方向性を定義し、アミノ酸配列上の異なる位置からのアミノ酸の間の距離を定 義する。 「割り当て(assignment)」という用語は、NMRのデータを分析し、かつNM Rスペクトルにおいてどのアミノ酸がシグナルを生じるかを同定する方法をさす 。 もう一つの態様においては、本発明はPTK機能の潜在的なモジュレーターを 同定する方法を特色とする。これらのモジュレーターは、化合物の構造のコンピ ューター画像を、PTKの活性部位によって形成されるくぼみのコンピューター 画像とドッキングさせることにより同定される。PTKの活性部位のコンピュー ター画像は、構造座標により定めることができる。 「化学基」という用語は、水素結合、疎水性、芳香性、またはイオン性相互作 用を形成することができる成分をさす。 「ドッキング」という用語は、化合物をPTKにきわめて接近して位置させる 工程をさす。当該用語はまた、化合物/PTK複合体の低いエネルギーの立体配 座を見つける工程もさす。 本発明の好ましい態様は、PTK機能の潜在的なモジュレーターを同定する方 法である。この方法は、構造座標またはPTKの三次元構造の利用を含む。表1 、表2、表3、および表4に明示した構造座標を利用することが可能である。当 該方法は、段階(a)PTK構造のコンピューター画像を移動し、コンピュータ ーデータベースからの化合物のコンピューター画像を、PTKの活性部位のコン ピューター画像とドッキングさせること;(b)都合のよい幾何学的な合い具合 と都合のよい補足的相互作用とをもつ当該複合体の立体配座を決定すること;お よび(c)PTK機能の潜在的モジュレーターとして、PTKの活性部位に最も 合う化合物を同定すること、を含む。最初のPTK構造は、それに結合している 化合物を有していてもよいし、あるいは有していなくてもよい。 「都合のよい幾何学的な合い具合」という用語は、当該化合物の表面領域が、 不都合な相互作用を形成することなく、当該活性部位の表面領域にきわめて接近 している、化合物−PTK複合体の立体配座をさす。不都合な相互作用は、化合 物中の原子とPTKの活性部位の原子との間の立体障害である可能性がある。 「都合のよい補足的相互作用」という用語は、化合物とPTKの活性部位との 間に形成される、疎水性、芳香性、イオン性、および水素結合を与え、かつ水素 結合を引き受ける力をさす。 「潜在的」という用語は、「PTK機能のモジュレーター」という用語を修飾 するが、それはPTK機能の潜在的モジュレーターが、インヴィトロまたはイン ヴィヴォにおける活性についてまだ調べられていないからである。 「最も合う」という用語は、複合体中の最も多くの表面領域が複合体を形成し ている化合物および/または所与の実験でのスクリーンにおけるPTKと、最も 多くの補足的な相互作用を形成する化合物をいう。 本発明のもう一つの好ましい態様は、PTK機能の潜在的モジュレーターを同 定する方法である。この方法は、それに結合している化合物のある、またはない PTKの三次元構造の利用を含む。この方法は、段階:(a)1以上の結合して いる化合物を有しているPTKのコンピューター画像であって、化合物または複 数の化合物とPTKとのコンピューター画像が構造座標によって定められるコン ピューター画像を修正すること;(b)都合のよい幾何学的な合い具合と都合の よい補足的相互作用とをもつ当該複合体の立体配座を決定すること;および(c )PTK機能の潜在的モジュレーターとして、PTKの活性部位に最も合う化合 物を同定すること、を含む。 「修正すること」という用語は、化学基または複数の化学基の削除か、または 化学基または複数の化学基の付加をさす。化学基のコンピューター画像は、コン ピューターデータベースから選択することができる。 本発明のさらにもう一つの態様は、モジュレーターコンストラクション(consr truction)を操作することによるか、またはPTKと複合体を形成する化合物に ついてのモジュレーター検索コンピュータープログラムにより、PTK機能の潜 在的なモジュレーターを同定する方法である。この方法は、段階:(a)PTK と複合体を形成している1以上の化合物のコンピューター画像を移すこと;およ び(b)化合物検索コンピュータープログラムを用いることにより、移した化合 物と類似した化合物のデータベースを検索すること、または、当該化合物の画像 が構造座標により定義されている、化合物コンストラクションコンピュータープ ログラムを用いてデータベースから、PTKと複合体を形成した化合物の部位を 類似した化学構造で置換すること、を含む。 本文において用いられているように、「操作すること」という用語は、種々のコ ンピュータープログラムにおいて、本文に記述した手順によって定義される分子 の、三次元の立体配座を利用することをさす。 「類似した化合物」という用語は、コンピューターデータベースにおいて、P TKに結合することができる化合物としての、類似した幾何学的構造を有する化 合物をさす。類似した化合物はまた、PTKに結合しているかまたは一度PTK に結合した化合物と類似した化学基を有することが可能である。類似した化学基 は、PTKと補足的な相互作用を形成することができる。 「化合物検索コンピュータープログラム」という用語は、コンピューターデー タベースから、興味のある化合物と類似した三次元構造および類似した化学基を 有する化合物のコンピューター画像を検索するコンピュータープログラムをいう 。興味のある化合物は、好ましくはインドリノン化合物である。 「類似した化学構造」という用語は、PTKとの複合体における化合物か、ま たはPTK構造から除去された化合物の部分として、類似した幾何学的配置を共 有している化学基をさす。類似した化学構造はまた、PTKとの複合体における 化合物か、またはPTK構造から除去された化合物の部分として、補足的な相互 作用を形成してもよい化学基をさすことができる。 「構造を置換すること」という用語は、PTKとの複合体における化合物か、 またはPTK構造から除去された化合物の部分を除去し、かつ切断された結合を 、類似した化学構造物へ連結することをさす。 「化合物コンストラクションコンピュータープログラム」という用語は、化合 物中の化学基のコンピューター画像を、コンピューターデータベースからの基で 置換するコンピュータプログラムをいう。当該化合物は好ましくはインドリノン 化合物である。 「類似した三次元構造」という用語は、ほとんど同等の形および体積をもつ二 つの分子をいう。 本発明のもう一つの好ましい態様においては、本発明のモジュレーターの設計 または識別法に用いられるPTK構造は、表1、表2、表3、および表4の構造 座標によって定められる。 本発明の結晶形ならびに三次元構造を用いる方法は、広範囲のプロテインキナ ーゼに関連させることができる。従って、好ましい態様においては、本発明は受 容体PTKに関する。受容体PTKは、FGF−R、PDGF−R、FLK、C CK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS 、RET、LTK、RORI、およびMUSKから成る群より選択することがで きる。PTKはまた、非受容体PTKとして存在してもよい。非受容体PTKは 、SRC、BRK、BTK、CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、J AK、およびACKから成る群より選択することができる。 もう一つの態様において本発明は、本発明に開示された方法によって同定され るPTK機能の潜在的なモジュレーターを特色とする。 本発明の好ましい態様は、PTK機能の潜在的なモジュレーターが、前文に開 示した式IまたはIIの、オキシインドリノンまたはチオールインドリノンであ ることである。 本発明のもう一つの態様は、この技術において周知の標準的な合成法により、 PTK機能の潜在的なモジュレーターか、または製薬上許容されるその塩、異性 体、代謝産物、エステル、アミド、またはそれらのプロドラッグを合成する方法 である。合成の手技は以下に議論する。 もう一つの態様において本発明は、潜在的なPTK機能のモジュレーターを、 PTK機能のモジュレーターとして同定する方法を特色とする。この方法は、段 階:(a)潜在的なPTK機能のモジュレーターを細胞に加えること;(b)潜 在的なモジュレーターを投与された細胞と、潜在的なモジュレーターを投与され なかった細胞との間で、PTKのリン酸化のレベルを比較すること;および(c )PTKのリン酸化のレベルにおける差異に基づき、潜在的なモジュレーターを PTK機能のモジュレーターとして同定すること、を含む。 「細胞」という用語は、初代または培養されたいかなるタイプの細胞もさす。 初代細胞は器官から直接抽出することができ、一方培養細胞は速やかに分裂し、 何度も継代を繰り返して培養することができる。細胞は、フラスコ、皿、および ウェルプレートを含むがこれに限定されない種々の容器内て成長することができ る。 「投与」という用語は、化合物を細胞に送達する方法をさす。当該化合物は、 水溶液中のジメチルスルホキサイド(DMSO)のような担体を用いて調製する ことができる。化合物を含んでいる水溶液はまた「水性標本」とも呼ばれ、細胞 層を浸している培地に単に混合するか、または細胞自体にマイクロインジェクト することができる。当該化合物は、適当な緩衝溶液を用いて細胞に投与してもよ い。 「適当な緩衝溶液」という用語は、低濃度で溶液のpHを調整することができ る塩を含む、化合物の水性標本をさす。この塩は低い濃度で存在しているため、 好ましくは当該塩は細胞の機能を変えない。 「PTKのリン酸化」という用語は、PTK上のホスフェートの存在をさす。P TK上のホスフェートは、高い親和性をもってそれらと特異的に結合する抗体に より、同定することができる。 もう一つの態様において本発明は、潜在的なPTK機能のモジュレーターを、 PTK機能のモジュレーターとして同定する方法を特色とする。この方法は、段 階:(a)PTK機能の潜在的なモジュレーターを細胞に加えること;(b)潜 在的なモジュレーターを投与された細胞と、潜在的なモジュレーターを投与され なかった細胞との間で、細胞の成長のレベルを比較すること;および(c)細胞 の成長における差異に基づき、潜在的なモジュレーターをPTK機能のモジュレ ーターとして同定すること、を含む。 「細胞の成長」という用語は、細胞群が分裂する速度をさす。細胞分裂の速度 は、当業者に用いられる方法により容易に測定することができる。 本発明のもう一つの態様は、不適切な活性をもつPTKを収容している細胞を 同定することにより、病気を診断する方法を特色とする。この方法は、段階:( a)PTK機能のモジュレーターを細胞に投与すること;(b)モジュレーター を投与された細胞とモジュレーターを投与されなかった細胞との間で、細胞の成 長速度を比較すること;および(c)細胞の成長速度の差異についてのモジュレ ーターの効果から、不適切な活性をもつPTKを収容している細胞の特質を規定 することによって失病を診断すること、を含む。当該モジュレーターは、本発明 の方法により同定することができる。 「不適切な活性」という用語は、シグナルトランスダクションの過程における 段階を、正常な細胞よりも高いかまたは低い速度に調節するPTKをさす。シグ ナルトランスダクションの速度の異常は、成長因子による受容体PTKの刺激に おける変化、PTKに特異的なホスファターゼ活性における変化、細胞内におけ るPTKの過度の発現、またはPTK自身の触媒領域における突然変異によって 引き起こすことができる。 「シグナルトランスダクションの過程」という用語は、細胞外のシグナルが細 胞内シグナルへ伝達される事象のカスケードにおける段階をいう。 「PTKに特異的なホスファターゼ」という用語は、特定のPTKを脱リン酸 化し、それによりPTKの活性を調節する酵素をいう。 本発明のもう一つの態様は、細胞性の個体における不適切な活性をもつPTK に関係している病気の治療法であって、段階:(a)製薬土許容される、PTK 機能のモジュレーターを当該個体に投与すること、および(b)病気の治療のた め、PTK活性を活性化または阻害すること、を含む。 「個体」という用語は、少なくとも1個の細胞を含んでいるいかなる生物もさ す。個体は、1個の真核生物細胞のように単純か、または哺乳類のように複雑で あることが可能である。 個体に関して「投与すること」という用語は、化合物を個体に導入する方法を さす。化合物は、個体の細胞または組織が個体内または個体外に存在している場 合に、投与することができる。個体の外に存在している細胞は、細胞培養皿にお いて維持または成長させることができる。個体内に収容されている細胞について は、化合物を投与するための、経口、消化管外からの、真皮からの、および注射 による適用を含む(がこれらに限定されない)多くの技術がこの技術に存在する 。患者の外の細胞については、細胞マイクロインジェクション技術、形質転換技 術、 および担体技術を含む(がこれらに限定されない)多くの技術がこの技術に存在 する。 「製薬上許容される化合物」という用語は、PTK活性のモジュレーターを含 んでいる標品をさす。化合物は、当該化合物を投与された個体に明らかに刺激を 生じない場合に許容される。 本発明の好ましい態様は、PTKが、FGF−R、PDGF−R、FLK−1 、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、R OS、RET、LTK、RORI、およびMUSKから成る群より選択される受 容体PTKである。他の好ましい態様は、PTKが、SRC、BRK、BTK、 CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKから成る 群より選択される非受容体PTKである。 前文に記述した本発明の概要は、何ら制限するものではなく、本発明の他の特 徴および利益は、以下の詳細な記述および請求の範囲から明らかになるであろう 。 図面の簡単な説明 第1図は、分子のチロシン側鎖Tyr−653ならびにTyr−654と、α ヘリックス(αC、αD、αE、αEF、αF−αI)、β鎖(β1−β5、β7 、β8)、ヌクレオチド結合ループ、触媒ループ、活性化ループ、およびキナー ゼ挿入部位を示しているFGFR1の構造のリボンダイアグラム(ribbon diagr am)を提供する。末端は、NおよびCで示してある。β2とβ3の間のループは 、この領域での鎖の切断によって示したように乱れている。 第2図は、第1図と同じ方向で示したFGFRIのCαトレースの空間図を提 供しており、アミノ酸10残基ごとに黒丸で印し、アミノ酸20残基ごとに残基 数を表示した。 第3図は、ヒト繊維芽細胞成長因子受容体1(FGFR1)、ヒト繊維芽細胞成 長因子受容体2(FGFR2)、ヒト繊維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、 ヒト繊維芽細胞成長因子受容体4(FGFR4)、およびキイロショウジョウバエ (D.melanogaster)の相同物(DFGFR1)、C.エレガンス(C.elegance)の 相同物(EGL−15)、およびインシュリン受容体チロシンキナーゼ(IRK)の 、構造を基に整列させた配列を提供する。 第4図は、FGFR1およびIRKのN末端の突出部(4A)およびC末端の 突出部(4B)のリボンダイアグラムを提供しており、二つのタンパク質のβシ ート(4A)またはαヘリックス(4B)のCα原子を重ねたものである。 第5図は、FGFR1の主鎖の画像上の、FGFR1のチロシン自己リン酸化 部位の側鎖の位置を示す。 第6Aおよび6B図は、受容体および非受容体型のPTKを含めた、PTKの 触媒ドメインのアミノ酸配列を整列させたものである。第6A図は、受容体チロ シンキナーゼの18個のサブファミリーの各々からの代表的な一員を描いたもの である。第6B図は、細胞質チロシンキナーゼのサブファミリーの各々からの代 表的な一員を描いたものである。第6Aおよび6B図において、高度に保存され ている残基には囲みを入れてある。グリシンに富むドメイン、キナーゼ挿入、触 媒ループ、および活性化ループが示されている。番号づけは、ヒトFGF受容体 についてのものである。 結晶学的原子構造座標の簡単な説明 結晶学的構造座標は、「実施例」と題した章の終わり、かつ請求の範囲の前に 置かれている。三つの座標のセットは、IFGK、1AGW、および1FGIと いうアクセス名で、プロテインデータバンク(Protein Data Bank)に見い出され る。1FGK座標は、表1にリストしたものに対応し、1AGW座標は表4にリ ストしたものに対応し、1FGI座標は表3にリストしたものに対応する。1A GWおよび1FGI座標のセットは、1998年3月に公に入手できるであろう 。 表1は、X線結晶学により測定した本発明の天然のFGFR1結晶の原子構造 座標を提供しており; 表2は、X線結晶学により測定した本発明のFGFR1:AMP−PCPコク リスタルの原子構造座標を提供している。 表3は、3−[(3−(2−カルボキシエチル)−4−メチルピロール−5−イ ル)メチレン]−2−インドリノンと複合体を形成したFGFR1の三次元構造を 定義する結晶学的座標を列挙している。縦の列は(左から右へ)、原子の番号およ びタイプによる記述、アミノ酸および当該原子の含有数、x座標、y座標、z座 標、結合の連結度、および温度因子である。これらのパラメーターは、この技術 においては十分定義されている。 表4は、3−[4−(4−ホルミルピペラジン−1−イル)ベンジリデニル] − 2−インドリノンと複合体を形成したFGFR1の三次元構造を定める結晶学的 座標のファイルである。縦の列は、表3に記述されているものと同様である。 発明の詳細な説明 本発明はタンパク・チロシンキナーゼサブファミリー特異的であり、酸性条件 下非水解性であり、かつ、高生物利用性であるPTK機能モジュレーターの設計と 同定を目的とするものである。化合物と任意に複合体形成したPTKの三次元構造 はPTK機能モジュレーターの設計と同定を容易にする。 タンパク・チロシンキナーゼ(PTK)は多くの多様なクラスの酵素を包含する 。シュレージンガー(Schlessinger)およびウルリッヒ(Ullrich)、1992、Neuron 9:383〜391。PTKファミリーはさらにレセプターの部分と非レセプターの部分 に分けられる。PTKレセプターファミリーは複数のサブファミリーを含み、その 一つは繊維芽細胞増殖因子レセプター(FGF-R)であり、血管形成ならびに細胞増 殖・分化の調整に関係する分子である。ジボル(Givol)およびヤイオン(Yayon)、 1992、FASEB J.6(15):3362〜3369。 FGF-R1は1またはそれ以上の細胞シグナル変換過程におけるその役割として細 胞機能を仲介する。細胞シグナル変換過程は複数の工程からなり、細胞外シグナ ルを細胞内シグナルに変換する。 レセプターPTK仲介シグナル変換は、特定の細胞外リガンドへの結合に始まり 、レセプターの二量化、さらにレセプターPTKの自己リン酸化へと続く。リン酸 エステル基は細胞内のシグナル変換分子に対する結合部位であり、細胞膜でのタ ンパク複合体形成に導く。これらの複合体は、事象のカスケードを開始するリガ ンドに応答して適切な細胞効果(例えば、細胞分裂、細胞外微小環境への代謝効 果)を容易なものとする。 レセプターPTKは数種の細胞内タンパクに対して結合部位として機能する。細 胞内PTK結合タンパクは二つの主要な群に分けられる:(1)触媒ドメインを包 含する群;および(2)そのようなドメインを欠くが、アダプターとして作用し 、触媒活性分子と連携する群。ソンジャン(Songyang)ら、1993、Cell 72:767 〜778。SH2(src同族体)ドメインはレセプターPTKに直接結合するタンパクに見 出 される共通のアダプターである。SH2ドメインは上記の両群タンパクに結合するP TKに包含されている。ファントル(Fantl)ら、1992、Cell 69:413〜423;ソン ジャン(Songyang)ら、1994、Mol.Cell.Biol.14:2777〜2785;ソンジャン(S ongyang)ら、1993、Cell72:767〜778;およびコッホ(Koch)ら、1991、Science 252:668〜678。 レセプターPTKとそれら結合タンパクのSH2ドメイン間の特異性は、リン酸化 チロシン残基を直接に取り囲むアミノ酸残基により決められる。SH2ドメインの 結合親和性の差異は、シグナル変換過程における下流分子の基質リン酸化プロフ ィールにおいて観察される差異と関係づけられる。ソンジャン(Songyang)ら、 1993、Cell 72:767〜778。これらの観察結果は、各レセプターPTKの機能がその 発現パターンとリガンドの利用能のみならず、特定のレセプターにより活性化さ れる下流シグナル変換経路の配列により決定されることを示唆している。このよ うに、PTKは自己リン酸化の結果としてシグナル変換過程において制御調整の役 割を提供する。 PTK−仲介シグナル変換は細胞増殖、分化、および細胞における代謝応答を調 整する。それ故、不適切なPTK活性は多様な多くの障害と疾患を惹起する。以下 に記載するこれらの障害は、ここに開示する方法により設計し、同定されるPTK 機能モジュレーターにより治療することができる。 本発明はまた、レセプターチロシンキナーゼの触媒ドメインに対応する結晶性 ポリペプチドにも関する。そのようなチロシンキナーゼは、共有結合架橋ではな く、リガンド誘導二量化を受けると理解されるクラスのレセプターならびに細胞 質チロシンキナーゼを包含する。好ましくは、結晶性触媒ドメインとは、三次元 X線回折構造の決定を約1.5Åないし約2.5Åの分解能で可能とするに十分な品質 のものである。本発明はまた、該ポリペプチドを調製する方法および結晶化する 方法にも関する。該ポリペプチドそれ自体は、その結晶構造から導かれる情報同 様、チロシンキナーゼ活性の分析および修飾をするために、また、該触媒ドメイ ンと相互作用する化合物を同定するために使用することができる。 本発明ポリペプチドは、触媒ドメインを有するレセプターチロシンキナーゼの 細胞質ドメイン領域の構造に基づき設計する。実例として、図6Aは18種のヒ トレセプターチロシンキナーゼ触媒ドメインのアミノ酸配列を示す;18種のサ ブファミリーそれぞれからの一つの代表番号を示してある。図6Bは細胞質キナ ーゼの配列を示す。本出願人は生成したポリペプチドの結晶化に必要なドメイン の境界域を見出し、決定した。驚くべきことに、これらの境界域は触媒活性に必 要な境界域とは異なっている。例えば、図6Aについて言えば、触媒活性に必要 なドメインは、一般に、N-末端グリシン富有領域の第一グリシン(図6Aの残基 番号485)の上流約7アミノ酸残基から、C-末端保存アルギニン(図6Aの残 基番号744)を越えた約10残基に及ぶと信じられている。しかし、N-末端グ リシン富有領域上流の付加的配列およびC-末端保存アルギニンの下流は、結晶化 に必要である。特に、触媒ドメインの保存グリシン富有領域の第一グリシン(す なわち、図6Aの残基番号485)上流の少なくとも約20アミノ酸残基(+/− 5アミノ酸残基)、および触媒ドメインのC-末端境界域に位置する保存アルギニ ン(すなわち、図6Aの残基番号744)下流の少なくとも約17アミノ酸残基( +/−5アミノ酸残基)が結晶化に適したポリペプチドを構築するのに必要である 。 得られたポリペプチドが結晶化を阻害するシステイン残基を含む状況下では( 例えば、図6Aに示したFGF-R1のシステイン残基番号488および584)、その ようなシステイン残基を、結晶化条件下、他のアミノ酸残基と容易には共有結合 を形成しない適切なアミノ酸と置換することができる。例えば、該システインを Ala、SerまたはGlyと置換する。二次構造のアサインメントに基づき、非ラセン もしくは非β−鎖セグメントに位置するシステインはいずれも好ましい置換え候 補である。例えば、グリシン富有ループ、キナーゼ挿入断片、膜近傍領域または 活性化ループに相応する領域に位置するシステインは、最も重要な置換え候補で ある。しかし、キナーゼ内に保存されるシステイン(例えば、図6Aの第725 および736位)の置換は、好ましくは、避ける。 I.PTK関連疾患 血管増殖性障害とは、一般に、血管の異常増殖に至る血管形成性障害および脈 管形成性障害をいう。血管の形成および拡散は種々の生理学的過程、例えば、胎 児発育、黄体形成、創傷治癒、器官再生などにおいて重要な役割を果たしている 。それらはまた、癌の発生においても重要な役割を演じている。血管増殖障害の 他の例としては、関節炎であるが、この場合には新しい毛細血管が関節に浸入し 、軟骨を破壊する。また、他の例として糖尿病性網膜症などの眼疾患があり、こ の場合には網膜中の新しい毛細管が硝子体に浸入し、出血させ、失明させる。逆 に、血管の縮小、収縮または閉塞に関係する障害は再狭窄などの疾患に関係して いる。 繊維形成障害とは細胞外マトリックスの異常形成をいう。繊維形成障害の例は 肝硬変症およびメサンギウム細胞増殖障害を包含する。肝硬変症は肝臓瘢痕の形 成に至る細胞外マトリックス成分の増加により特徴づけられる。肝硬変症は肝臓 の硬変などの疾患を惹起する。肝臓瘢痕に至る増加細胞外マトリックスは、肝炎 などのウイルス感染によってもまた、惹起される。 メサンギウム細胞増殖障害は、メサンギウム細胞の異常増殖が引起こす障害を いう。メサンギウム増殖障害は、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血 栓性微小血管障害症候群、移植拒絶反応、および糸球体症などの種々のヒト腎臓 疾患を包含する。PDGF-Rはメサンギウム細胞増殖の維持に関係している。フロー ジ(Floege)ら、1993、Kidney International 43:47S〜54S。 PTK類は上記の細胞増殖障害と直接関連がある。例えば、レセプターPTKファミ リーのあるものは癌発生に関係する。EGFR(ツジ(Tuzi)ら、1991、Br.J.Cancer 63:227〜233;トープ(Torp)ら、1992、APMIS 100:713〜719)、HER2/neu(ス ラモン(Slamon)ら、1989、Science244:707〜712)およびPDGF-R(クマベ(Kumabe) ら、1992、Oncogene 7:627〜633)などのこれらレセプターのあるものは、多く の腫瘍中で過剰発現するか、および/またはオートクリン・ループにより絶えず 活性化される。事実、PTK過剰発現(アクバサック(Akbasak)およびサナー−ア クバサック(Suner-Akbasak)ら、1992、J.Neurol.Sci.111:119〜133;ディク ソン(Dickson)ら、1992、Cancer Treatment Res.61:249〜273;コーク(Kor c)ら、1992、J.Clin.Invest.90:1352〜1360)およびオートクリン・ループ 刺激(リー(Lee)およびドノグー(Donoghue)、1992、J.Cell.Biol.118:1057〜10 70;コーク(Korc)ら、上記;アクバサック(Akbasak)およびサナー−アクバ サック(Suner-Akbasak)ら、上記)は最も一般的な重症の癌と見なされている 。例えば、 EGFRは偏平上皮癌、星状細胞腫、グリア芽細胞腫、頭部および頚部癌、肺癌およ び膀胱癌などと関係がある。HER2は乳房、卵巣、胃、肺、膵臓および膀胱癌など と関係がある。PDGF-Rはグリア芽細胞腫、肺、卵巣、皮膚および前立腺癌などと 関係がある。レセプターPTK c-metは一般に肝臓癌発生と関連し、従って、肝細 胞癌と関係する。さらに、c-metは悪性腫瘍形成に関係している。さらに特定す ると、c-metは他の癌の中でも、結腸直腸、甲状腺、膵臓および胃の癌、白血病 およびリンパ腫に関係する。さらに、c-met遺伝子の過剰発現はホジキン病、バ ーキット病患者、およびリンパ腫細胞系に検出されている。 IGF-IレセプターPTKは、栄養の維持およびII型糖尿病に関連していることに加 えて、数種の型の癌とも関係がある。例えば、IGF-Iは幾つかの腫瘍型に対して のオートクリン成長刺激剤として関連づけられており、例えば、ヒト乳癌細胞( アルテガ(Arteaga)ら、1989、J.Clin.Invest.84:1418〜1423)および小型肺 腫瘍細胞(マッコウレイ(Macauley)ら、1990、Cancer Res.50:2511〜2517) などである。さらに、神経系の正常な増殖と分化に必須なものとして関与するIG F-Iは、ヒト・グリオーマのオートクリン刺激剤であると思われる。サンドバー グ−ノルドクビスト(Sandberg-Nordqvist)ら、1993、Cancer Res.53:2475〜 2478。IGF-IRおよびそのモジュレーターが細胞の増殖において重要なことは、培 養中の多くの細胞型(繊維芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、T-リンパ球、骨髄細 胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨髄の幹細胞)がIGF-Iにより刺激を受け増殖すると いう事実がさらに支持している。ゴールドリング(Goldring)およびゴールドリ ング(Goldring)、1991、Eukaryotic Gene Expression 1:301〜326。最近の一連 の出版物でも、IGF-IRは癌化のメカニズムにおいて中心的な役割を担っており、 従って、それ自体が広範なスペクトルのヒト悪性腫瘍に対する治療介入のための 好適な標的であることを示唆している。バセルガ(Baserga)、1995、Cancer-Res .55:249〜252;バセルガ(Baserga)、1994、Cell79:927〜930;コッポラ(Coppola )ら、1994、Mol.Cell.Biol.14:4588〜4595。 しかし、レセプターPTKの異常と疾患との間の関連性は癌に限定されるもので はない。例えば、レセプターPTKは、乾癬などの代謝性疾患、糖尿病、創傷治癒 、炎症、および神経変性疾患とも関連している。EGF-Rは角膜および皮膚創傷治 癒 に必要である。インシュリン-RおよびIGF-IRの欠損がII型糖尿病に必要である。 特異レセプターPTKとその治療適用との間のより完全な相関がプローマン(Plowm an)ら、1994、Dy&P7:334〜339に述べられている。 非レセプターPTKはsrc、abl、fps、yes、fyn、lyn、lck、blk、hck、fgr、yrk を包含し(総説:ボーレン(Bolen)ら、1992、FASEB J.6:3403〜3409)、レセプ ターPTKとも関連する増殖・代謝シグナル変換経路に関係している。それ故、本 発明はこのクラスのPTKに対するモジュレーターを設計することをも目的とする 。例えば、変異src(v-src)はニワトリの腫瘍タンパク(pp6v-src)である。さ らに、その細胞性同族体、プロト腫瘍遺伝子pp60v-srcは多くのレセプターの腫 瘍遺伝子シグナルを伝達する。例えば、腫瘍におけるEGF-RまたはHER2/neuの過 剰発現はpp60v-srcを構成的活性化に導くか、これは悪性腫瘍細胞の特徴であっ て、正常細胞には存在しない。他方、c-srcの発現を欠くマウスは骨化石症の表 現型を示すが、このことは破骨細胞機能においてc-srcが重要な位置を占めるこ と、従って、関連障害に関与する可能性を示している。同様に、Zap70はT-細胞 のシグナリングに関係している。レセプターPTKおよび非レセプターPTK双方が高 度免疫障害に結び付いている。 本発明は、生命維持の源泉を断ち切ることにより腫瘍を間接的に死滅させるこ とのできるPTK機能モジュレーターの設計を一部目的とする。正常な脈管形成お よび血管形成は種々の生理的過程、例えば、胚生育、創傷治癒、器官再生、また 、メスの生殖過程、例えば、排卵時の黄体中卵胞発育および妊娠後の胎盤生育に おいて重要な役割を演じている。フォークマン(Folkman)およびシン(Shing)、19 92、J.Biological Chem.267:10931〜34。しかしながら、多くの疾患が頑固な非 制御または不適切血管形成により進行する。例えば、関節炎では新しい毛細血管 が関節に浸入し、軟骨を破壊する。糖尿病では網膜中の新しい毛細管が硝子体に 浸入し、出血させ、失明させる。フォークマン(Folkman)、1987、Congress of T hrombosi and Haemostasis(フェルストレート(Verstraete)ら、編纂)、ルーベ ン大学出版、ルーベン、583〜596頁。眼部血管新生は最も一般的な失明の原因で あり、約20種の眼疾患の首位を占める。 さらに、脈管形成および/または血管形成は悪性固形腫瘍の成長および転移に 関 係している。腫瘍は腫瘍自体の成長のために、常に新しい毛細血管の成長を刺激 し続けなければならない。さらに、腫瘍に取り込まれた新しい血管は、腫瘍細胞 が循環系に入り込み、身体の遠隔部位に転移するための関門を提供する。フォー クマン(Folkman)、1990、J.Natl.Cancer Inst.82:4〜6;クラグスブラン(Kla gsbrunn)およびソーカー(Soker)、1993、Current Biology 3:699〜702;フォ ークマン(Folkman)、1991、J.Natl.Cancer Inst.82:4〜6;ワイドナー(Weidn er)ら、1991、New Engl.J.Med.324:1〜5。 インビトロで上皮細胞成長促進活性を有する数種のポリペプチドが同定されて いる。その例としては、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(αFGF、βFGF)、 血管上皮増殖因子(VEGF)および胎盤成長因子などである。αFGFおよびβFGFと 違って、VEGFは上皮細胞特異分裂促進因子であることが最近報告されている。フ ェララ(Ferrara)およびヘンゼル(Henzel)、1989、Biochem.Biophys.Res.Comm.16 1:851〜858;バイスマン(Vaisman)ら、1990、J.Biol.Chem.265:19461〜19566。 この様に、FGFまたはVEGFに結合する特異レセプターを同定することは、上皮 細胞増殖制御を理解するために重要である。高い親和性によってVEGFと結合する 2つの構造的に関連するレセプターPTKが確認されている:flt-1レセプター(シブ ヤ(Shibuya)ら、1990、Oncogene 5:519〜524;デ・ブリス(De Vries)ら、1 992、Science 255:989〜991)およびKDR/FLK-1レセプター(米国特許出願第08/19 3,829にて検討)。さらに、αFGFおよびβFGFと結合するレセプターが確認されて いる。ジェイ(Jaye)ら、1992、Biochem.Biophys.Acta 1135:185〜199。従っ て、これらのレセプターPTKは恐らく上皮細胞増殖を制御している。 FGFRは血管形成、創傷治癒、胚芽成長、および悪性腫瘍転換などにおいて重要 な役割を果たしている。バシリコ(Basilico)およびモスカテリー(Moscatelli) 、1992、Adv.Cancer Res.59:115〜165。4種の哺乳動物FGFR(FGFR1〜4)が記載 されており、さらなる多様性が細胞外ドメイン内での代替RNAスプライシングに より生じる。ジェイ(Jaye)ら、1992、Biochem.Biophys.Acta 1135:185〜199 。他のレセプターPTK同様に、FGFの二量化がその活性化にとって必須である。可 溶性または細胞表面結合性硫酸ヘパリン・プロテオグリカンはFGFと協力して作 用し、二量化を誘導して(シュレージンガー(Schlessinger)ら、1995、Cell83 : 357〜360)、細胞質ドメインの特異チロシン残基を自己リン酸化に導く。モハマ ディ(Mohammadi)ら、1996、Mol.Cell Biol.16:977〜989。 3種のヒトFGFレセプター遺伝子、FGFR1、FGFR2およびFGFR3の変異は、多様な ヒト遺伝性骨格障害に関係している。FGFR1およびFGFR2の変異は、頭骨偏平骨の 未成熟融合に至り、アパート(Apert)(FGFR2)(ウイルキー(Wilkie)ら、1994、Nat .Oenet.8:269〜274)、ファイファー(Pfeiffer)(FGFR1およびFGFR2)(ミューン ケ(Muenke)ら、1994、Nat.Genet.8:269〜274)、ジャクソン−ワイズ(Jack son-Weiss)(FGFR2)(ヤブス(Jabs)ら、1994、Nat.Genet.8:275〜279)およ びクルーゾン(Crouzon)(FGFR2)(ヤブス(Jabs)ら、1994、Nat.Genet.8:275 〜279)症候群などの頭骸骨癒合症を惹起する。これに対し、FGFR3の変異は長骨 障害に関係して、軟骨発育不全症(シアン(Shiang)ら、1994、Cell 78:335〜3 42)、軟骨形成不全(ベルース(Bellus)ら、1995、Nat.Genet.10:357〜359)お よび新生児致死性形成異常症(タボルミナ(Tavormina)ら、1995、Nat.Genet.9 :321〜328)などを含む数種の臨床的に関連する小人症形成の原因となる。これ らの変異はFGFR3のチロシンキナーゼ活性を構成的活性化に導くことが示されて いる(ウエブスター(Webster)ら、1996、EMBO J.15:520〜527)。さらに、マ ウスの遺伝子標的実験によると、発育性骨形成におけるFGFR3の本質的な役割が 明らかとなっている(デン(Deng)ら、1996、Cell 84:911〜921)。 FGFについて提案されているインビボでの他の主要な役割は血管形成の誘発で ある(フォークマン(Folkman)およびクラグスブルーン(Klagsbrun)、1987、Sci ence 236:442)。それ故、FGFもしくはそのレセプターの不適切な発現またはチ ロシンキナーゼ活性の異常な機能は、幾つかのヒト血管形成病理学、例えば、糖 尿病性網膜症、慢性関節リューマチ、動脈硬化症および血管新生に寄与している (クラグスブルーン(Klagsbrun)およびエーデルマン(Edelman)、1989、Arteros clerosis 9:269)。さらに、FGFは悪性腫瘍の形質転換に関与すると考えられる 。実際、3種のFGF類似体、int-2、FGF-5およびhst-1/K-fgfをコードする遺伝子 は当初発癌遺伝子として単離された。さらに、FGFR1およびFGFR2をコード化する cDNAは乳癌の集団中で増幅される(アドナン(Adnane)ら、1991、Oncogene 6:6 59〜663)。FGFレセプターの過剰発現がヒトの膵臓癌、星状細胞腫、 唾液腺肉腫、カボジ肉腫、卵巣癌および前立腺癌においても検出されている。 係属中の米国出願番号第08/193,829号に記述の開示のように、VEGFは上皮細胞 増殖に関わるのみならず、正常および病的血管形成の主要な調整剤であることを 証拠が強く示唆している。参照総論:クラグスバーン(Klagsburn)およびソー カー(Soker)、1993、Current Biology 3:699〜702;フック(Houck)ら、1992 、J.Biol.Chem.267:26031〜26037。さらに、KDR/FLK-1およびflt-1は成長下の 腫瘍の増殖上皮細胞中に大量に発現しているが、周囲の休止上皮細胞には発現し ないことが示されている。プレート(Plate)ら、1992、Nature359:845〜848; シュバイキー(Shweiki)ら、1992、Nature 359:843〜845。 本発明は臨床的障害に関与するPTKの不適切な活性を修飾すことのできるレセ プターと非レセプターPTK機能のモジュレーターを設計し、同定することを目的 とする。PTK機能モジュレーターの設計と同定は、PTKの三次元構造を規定する構 造相関性を利用して実施し得る。 II.疾患治療剤としてのPTK機能モジュレーター 上に検討した障害の結果として、生物医学界の化学者達は、不適切なPTK活性 と関連するシグナル変換経路をダウンレギュレーションするPTK機能モジュレー ターを探索しつつある。 特に、小分子のPTK機能モジュレーターは、場合により細胞膜を透過し、酸性 環境において水解されないので探索対象となる。ある種化合物がすでに発見され ている。例えば、以下の化合物がPTKインヒビターとして記載されている:ビス 単環性、二環性もしくはヘテロ環性アリール化合物(PCT WO 92/20642)、ビニレ ン−アザインドール誘導体(PCT WO 94/14808)、1-シクロプロピル−4−ピリジル キノロン(USP 5,330,992)、スチリル化合物(USP 5,217,999)、スチリル置換ピリ ジル化合物(USP 5,302,606)、ある種キナゾリン誘導体(EP出願番号0 566 266A1) 、セレノインドールおよびセレン化物(PCT WO 94/03427)、三環性ポリヒドロキ シ化合物(PCT WO 92/21660)、およびベンジルホスホン酸化合物(PCT WO 91/1549 5)。 幾種類かのPTK機能モジュレーターが知られているが、それらの多くはPTKサ ブファミリーに特異的でなく、それ故、治療薬として多様な副作用を引起こすと 思われる。しかし、オキシインドリノン/チオールインドリノンファミリーの化 合物はFGFレセプターサブファミリーに特異的である(米国出願番号S.N.08/702, 232;1996年8月23日出願;発明者:タン(Tang)ら;標題:インドリノン・コ ンビナトリアルライブラリーと関連生成物および疾患の治療法;代理人ファイル No.221/187)。さらに、このオキシインドリノン/チオールインドリノンファミ リーの化合物は酸性条件下で非水解性であり、高生物利用性である。 本発明はPTKとオキシインドリノン/チオールインドリノンファミリーの化合物 との間の特異相互作用に関する情報を提供する。X線結晶学を使用すると他のPTK 類についての三次元構造が得られるが、これら構造のPTKは、PTKサブファミリー に特異的な、水解抵抗性、高生物利用性小分子と複合体を形成しない。本発明に 用いられるX線結晶学技術は、PTKと原子レベルでPTKと複合体を形成する化合物 との間の相互作用を解明し、有効なPTK機能モジュレーターを規定する化学基の 配向に関し詳細な情報を提供する。 III.結晶性チロシンキナーゼ 本発明の結晶性PTKは未変性結晶、誘導体結晶(derivative crystal)および 共結晶(co-crystal;共晶)を包含する。本発明の未変性結晶は、一般に、結晶 形中にチロシンキナーゼドメインに相当する実質的に純粋なポリペプチドを含む 。 本発明の結晶性チロシンキナーゼドメインは、天然産もしくは未変性チロシン キナーゼドメインに限定されるものではない。事実、本発明の結晶は未変性チロ シンキナーゼドメインの変異体を包含する。未変性チロシンキナーゼドメインの 変異体は、未変性チロシンキナーゼドメインの少なくとも1個のアミノ酸残基を 異なるアミノ酸残基と置換えることにより、あるいは未変性ポリペプチド内で、 または未変性ポリペプチドのN-もしくはC-末端で、アミノ酸残基を付加もしくは 削除することにより得ることができるが、該変異体を誘導した未変性チロシンキ ナーゼドメインと同一の三次元構造を実質的に有するものである。 同一の三次元構造を実質的に有することが意味することは、一組の原子構造座 標が、該変異体を誘導した未変性チロシンキナーゼドメインの原子構造座標と重 ね合わせたときに、未変性チロシンキナーゼドメインの少なくとも約50%ない し100%のCα原子が重なり内に含まれていて、約2Åよりも小さい、あるい はそれに等しい二乗平均偏差を有することである。 未変性チロシンキナーゼドメインの三次元構造を有意に妨害しないアミノ酸の 置換、削除および付加は、部分的に、該置換、削除および付加が生じたチロシン キナーゼドメイン領域に依存することになる。該分子の高次変換可能領域におい ては、図6に示すもののように、同類置換同様に非同類置換が分子の三次元構造 を有意に乱すことなく許容される。高次保存領域または有意な二次構造を有する 領域においては、図6に示す領域のように、同類アミノ酸置換が好ましい。 同類アミノ酸置換は周知の技術であるが、これは関与するアミノ酸残基の極性 、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいてな される置換反応を意味する。例えば、負に帯電したアミノ酸はアスパラギン酸お よびグルタミン酸を含み、正に帯電したアミノ酸はリジンおよびアルギニンを含 み、同様親水性値の非電荷極性先端基を有するアミノ酸とは以下のものである: ロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタ ミン;セリン、スレオニン;フェニルアラニン、チロシン。他の同類アミノ酸置 換は周知の技術である。 化学合成により全体としてまたは部分的に得られるチロシンキナーゼドメイン に対して、置換もしくは付加のために利用可能なアミノ酸の選択は、遺伝子的に コード化されたアミノ酸に限定されるものではない。事実、ここに記載された変 異体は非遺伝子的にコード化されたアミノ酸を包含する。通常既知の非遺伝子的 にコード化されたアミノ酸の多くにとって、同類アミノ酸置換は周知の技術であ る。他のアミノ酸に対する同類置換は、その物理的性質に基づき、遺伝子的にコ ード化されたアミノ酸の性質と比べて決定することができる。 ある場合には、未変性チロシンキナーゼドメインにおいて、該ポリペプチドを コード化するcDNAの便利なクローニング部位を提供するために、また、該ポリペ プチドの精製を目的として、また、該ポリペプチドの結晶化のために、アミノ酸 残基を置換、削除および/または付加することが特に有利であり、好都合である 。そのような置換、削除および/または付加は、未変性チロシンキナーゼドメイ ンの 三次元構造を実質的に変化させるものではなく、当該分野において通常の技術を 有する者にとって明白なものである。 ここで考慮される変異体はPTK活性を示す必要がないことに注目すべきである 。事実、チロシンキナーゼドメインのキナーゼ活性を阻害するが、該ドメインの 三次元構造を有意に変化させないアミノ酸の置換、付加または削除が本発明によ り特に注目されるものである。そのような結晶性ポリペプチド、またはそこから 得られる原子構造座標は、未変性ドメインに結合する化合物を同定するのに用い ることができる。これらの化合物はその活性または未変性ドメインに影響する可 能性がある。 本発明の誘導体結晶は通常、1個またはそれ以上の重金属原子と共有結合で会 合した結晶性チロシンキナーゼドメインポリペプチドを含む。該ポリペプチドは 未変性または変異チロシンキナーゼドメインに相当する。誘導体結晶を提供する ために有用な重金属は、例としては、金、水銀などであるが、これに限定される ものではない。 本発明の共結晶は一般に、1個またはそれ以上の化合物と会合した結晶性チロ シンキナーゼドメインポリペプチドを含む。該会合は共有結合であっても、非共 有結合であってもよい。そのような化合物は、補助因子、基質、基質類似体、イ ンヒビター、アロステリックエフェクターなどであるが、これらに限定されるも のではない。 IV.X 線結晶学による三次元構造の決定 X線結晶学は分子の三次元構造を解明する方法である。分子の構造は回折格子 として結晶を用い、X線回折パターンから計算される。タンパク分子の三次元構 造は該タンパクの濃厚水溶液から成長させた結晶から生じる。X線結晶学の方法 は以下の工程からなる。 (a)ポリペプチドの合成と単離; (b)モジュレーターの存在または不存在下、該ポリペプチドを含む水溶液か らの結晶の成長;および (c)該結晶からのX線回折パターン収集、単位セル次元と対称性の決定、電子 密度の決定、ポリペプチドのアミノ酸配列を電子密度に適合させること、 および構造の純化。ポリペプチドの製造 ここに記載する未変性および変異化チロシンキナーゼドメインポリペプチドは 、この分野で周知の技術を用い、その全部または一部を化学的に合成することが できる(例えば、クレイトン(Creighton)1983参照)。あるいは、当該技術の熟 練者が周知の方法を用い、未変性または変異化チロシンキナーゼドメインポリペ プチドをコードする配列と適当な転写/翻訳制御シグナルを有する発現ベクター を構築することもできる。これらの方法としては、インビトロでの組換えDNA技 術、合成技術、およびインビボでの組換え/遺伝子組換えを包含する。例えば、 マニアティス(Maniais)ら、1989、およびオースベル(Ausubel)ら、1989に記 載の技術を参照。 種々の宿主発現ベクター系がチロシンキナーゼドメインをコードする配列の発 現に利用することができる。その系としては以下の微生物類を含むが、これらに 限定されるものではない:チロシンキナーゼドメイン・コード配列を有する組換 えバクテリオファージDNA,プラスミドDNAまたはコスミドDNAの発現ベクターで形 質転換したバクテリア;チロシンキナーゼドメイン・コード配列を有する組換え 酵母発現ベクターで形質転換した酵母;チロシンキナーゼドメイン・コード配列 を有する組換えウイルス発現ベクター(例:バキュロウイルス)を感染した昆虫 細胞系;チロシンキナーゼドメイン・コード配列を有する組換えウイルス発現ベ クター(例:カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(T MV))を感染した植物細胞系または組換えプラスミド発現ベクター(例:Tiプラ スミド)で形質転換した植物細胞系;または動物細胞系。これらの系の発現要素 はその強度および特異性が異なる。 利用する宿主/ベクター系により、構成および誘導プロモーターを含め、多く の転写・翻訳要素が発現ベクター中で使用し得る。例えば、バクテリア系にてク ローニングする際は、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lac ハイブリツドプロモーター)などの誘導プロモーターが使用し得る;昆虫細胞系 にてクローニングする際は、バキュロウイルス・ポリヘドリン・プロモーターな どのプロモーターが使用し得る;植物細胞系にてクローニングする際は、植物細 胞ゲノムから誘導したプロモーター(例:熱ショックプロモーター;RUBISCOの 小サブユニット用プロモーター;クロロフィルa/b結合タンパク用プロモーター )または植物ウイルスから誘導したプロモーター(例:CaMVの35S RNAプロモー ター;TMVのコートタンパクプロモーター)が使用し得る;哺乳動物細胞系にて クローニングする際は、哺乳動物細胞ゲノムから誘導したプロモーター(例:メ タロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスから誘導したプロモータ ー(例:アデノウイルス後期プロモーター;ワクチニアウイルス7.5Kプロモータ ー)が使用し得る;チロシンキナーゼドメインDNAの多重コピー含有細胞系を生 成させる際は、SV40-、BPV-およびEBV-をベースとするベクターを適当な選択マ ーカーと共に使用することができる。 DNAの取り扱い法の記載方法、ベクター、種々の型の使用細胞、ベクターを細 胞に包含させる方法、発現技術、タンパクの精製・単離方法、およびタンパク濃 縮方法については、タンパクPYK-2に関し、PCT公開WO 96/18738に詳細に開示さ れている。当該公開公報は、図面も含め、その全体を参照文献として本明細書に 組み入れられる。当業者は、そのような記載が本発明に適用し得るものであり、 かつ、容易に適合させ得ることを認めるであろう。結晶成長 結晶は種々の技法により、精製・濃縮したポリペプチド含有水溶液から成長さ せる。これらの技法とは、バッチ法、液体法、ブリッジ法、透析法、蒸気拡散法 、懸垂滴下法などである。マックファーソン(McPherson)、1982、John Wiley,ニ ューヨーク;マックファーソン(McPherson)、1990、Eur.J.Biochem.189:1〜23 ;ウエバー(Webber)、1991、Adv.Protein Chem.41:1〜36;これらの図形、表 、図面のすべてを含め、その全体を参照文献として本明細書に組み入れる。 一般に、本発明の未変性結晶は、PTK触媒ドメインに相当するポリペプチドの 濃厚溶液に沈殿剤を添加することにより成長させる。沈殿剤は該タンパクを沈殿 させるのに必要な濃度以下の濃度で添加する。水は沈殿条件を生じる制御下蒸発 により除去し、その条件は結晶の成長が止まるまで維持する。 本発明の結晶については、約2.0μLのチロシンキナーゼドメインポリペプチド を含有する懸垂滴(10mMトリス−HCl、pH8.0、10mM NaClおよび2mMジチオトレ イトール中10mg/mL)および0.5mLの貯留バッファーに懸濁して、4℃で約3〜4 週間保持した2.0μLの貯留溶液(16%w/vポリエチレングリコールMW10000、0.3M (NH42SO4、5%v/vエチレングリコールもしくはグリセロール、および100mMビ スートリス、pH6.5)が、高分解能X線構造決定に適した結晶を与えることが判明 している。 当業者は上記の結晶化条件が変更し得ることを認めるだろう。そのような変更 は単独であっても組合わせであってもよく、以下のものを包含する:約1mg/mL と約60mg/mLの間のポリペプチド濃度、約10mMと約200mMの間のトリス−HCl濃度 、約0mMと約20mMの間のジチオトレイトール濃度からなるポリペプチド溶液であ って、pHが約5.5と約7.5の領域にある溶液;約10%と約30%(w/v)の間のポリエ チレングリコール濃度、約1000と約20,000の間のポリエチレングリコール分子量 、約0.1Mと約0.5Mの間の(NH42SO4濃度、約0%と約20%(v/v)エチレングリコ ールまたはグリセロール濃度、約10mMと約200mMの間のビス−トリス濃度からな る貯留溶液であって、pHが約5.5と約7.5の領域にあり、温度が約0℃と約25℃の 範囲にある溶液。他のバッファー溶液は、所望のpH範囲が維持される限り、HEPE Sバッファーをそのまま用いてもよい。 本発明の誘導体結晶は、未変性結晶を重金属原子塩含有母液に浸漬することに より得られる。約0.1mMないし約5mMのチメロサール、4−クロロマーキュリー安 息香酸またはKAu(CN)2含有溶液に未変性結晶を約2時間ないし約72時間浸漬する と、チロシンキナーゼドメインポリペプチドのX線結晶構造決定において同型置 換法に使用するのに適した誘導体結晶を与える。 本発明の共結晶は、キナーゼドメインに結合する化合物含有母液に未変性結晶 を浸漬することにより、または上記のように得ることができるか、あるいは1個 またはそれ以上の結合化合物の存在下キナーゼドメインポリペプチドを共結晶化 することにより得ることができる。 AMP-PCPとの共複合体状にあるチロシンキナーゼドメインポリペプチドの共結 晶(co-crystal;共晶)については、未変性結晶を得るための上記結晶化条件を 用い、さらに10mM ANP-PCPと20mM MgCl2を含有するポリペプチド溶液によりAMP- PCPの存在下キナーゼドメインポリペプチドを共結晶化すると、X線結晶学による 高分解能構造決定に適した共結晶を得る。勿論、当業者は該ポリペプチド溶液中 のAMP-PCPおよびMgCl2濃度が変更可能なものであり、未変性結晶について上に記 したように、その変更は単独または組み合せて用いることができる。そのような 変更は、0.1mMと50mMの間の濃度のAMP-PCPおよび0mMと50mMの間の濃度のMgCl2 を含むポリペプチド溶液を包含する。 1つの化合物と複合体を形成したPTK触媒ドメインに相当するポリペプチドか らなる結晶は、2つの方法の1つにより成長させることができる。第一の方法で は、結晶が成長する前に、PTK触媒ドメインに相当するポリペプチド含有水溶液 にモジュラーを添加する。第二の方法では、PTK触媒ドメインに相当するポリペ プチドのすでに存在する結晶にモジュラーを浸漬する。結晶性FGFR 1つの具体例において、本発明はFGFR1の結晶を提供する。該結晶は実施例に 示した方法により得られた。FGFR1結晶は、未変性結晶であっても、誘導体結晶 であっても、または共結晶であってもよいが、単斜晶単位格子(例:a≠b≠c; α=γ=90°;およびβ>90°)および空間群対称C2を有する。非対称単位 には、略2つ折りの軸に関連して2つのFGFR1分子が存在する。 2つの形状の結晶性FGFR1が得られた。一方の形状(“C2-A型”という)にお いては、該単位格子がa=208.3Å、b=57.2Å、c=65.5Å、およびβ=107.2 °の次元を有する。他方の形状(“C2-B型”という)においては、該単位格子が a=211.6Å、b=51.3Å、c=66.1Å、およびβ=107.7°の次元を有する。 3つの異なる二折関連FGFR1二量体がFGFR1結晶のC2-AおよびC2-B型の双方に観 察されるが、その1つは非結晶学関連二量体であり、2つは結晶学関連二量体で ある。非結晶学関連二量体は非対称単位の2分子からなる。二量体界面を形成す る残基はC-末端ローブに位置している。この二量体では、該C-末端ローブがN-末 端ローブと互いに末端同士で隣接している。表面に埋もれた表面領域の総面 積は約950Å2である。界面での相互作用が非常に僅かなのはその特異性であって 、例えば、水素結合または疎水性残基の近接パッキングなどである。 C2格子には2つの結晶学関連二量体がある。第一の二量体では、二量体界面を 構成する残基は、N−末端ローブ(アミノ酸残基477、479、498、50 6、508および496)のβシート状のものに限定される。この界面に埋もれ た総表面面積は約670Å2である。相互作用はむしろ特異的である。単量体中の部 分的に溶媒露出している3つの疎水性残基、Val−479、Ile−498およびVal−508 はその二折関連残基と一緒になって緻密な疎水性プラグを形成する。このプラグ はArg−477とGlu−496間の塩架橋により両側が被われる。さらに、2つの主鎖水 素結合が2つの単量体のβシートをβ3の発端部(アミノ酸残基506および5 08)に結合している。この二量体界面の残基またはその残基の特性は、一般に 、哺乳動物のFGFレセプターに保存されるが、無脊椎動物の同族体では保存され ない。 他の結晶学的に関係のある二量体は約1650Å2その界面に埋もれている。この 二量体においては、2つの単量体のαCラセンが殆ど平行にあり、そのC−末端部 で互いに接触している。Met−534とMet−537はその二折関連残基とファンデルワ ールス力で接触している。他の疎水性接触はPro−466とIle−648およびPro−469 とIle−676およびThr−678のものである。さらに、水素結合は(側鎖と主鎖で) Arg−470とLys−618の間、およびHis−649とGlu−464の間に造られ、そこでは幾 つかの水分子が水素結合により2つの単量体を架橋している。 結晶のC2−B型においては、この第二の結晶学的に関連する二量体の単量体が 互いに僅かにシフト(6°の回転)しており、このことはこの界面が幾分流動的 であること示している。 結晶学的に関連する二量体の双方において、二量体からなる2つの分子のN− 末端は同じ方向に向いており、互いに適度に接近している。単位格子次元とポリペプチドまたはポリペプチド複合体の三次元構造の決定 成長した結晶はガラス毛細管に入れ、X線発生装置とX線検出装置に連結した保 持装置に載せる。X線回折パターンの収集については当該技術における文献が 揃っている。デュクロワ(Ducruix)およびゲイジ(Geige)、1992、IRLプレス、 オックスフォード、英国、およびそこでの引用文献。X線のビームは結晶に入り 、その結晶から回折する。X線検出装置は結晶から放出される回折パターンを記 録するのに利用することができる。これら装置の古い型のX線検出装置は一片の フィルムであるが、最新型の装置ではX線回折散乱をデジタルで記録する。 ペプチド分子または分子複合体の結晶形の三次元構造を得る方法は技術上周知 である。デュクロワ(Ducruix)およびゲイジ(Geige)、1992、IRLプルス、オッ クスフォード、英国、およびそこでの引用文献。以下の工程はX線回折データか ら分子または複合体の三次元構造を決定する過程である。 X線回折パターンを該結晶から収集した後、該結晶の単位格子次元および配向 を決定することができる。これらは回折放出間の間隙ならびにこれらの放出から 作られるパターンから決定される。単位格子次元は三次元によりオングストロー ム単位(1Å=10-10)で、また、各頂点の角度により特性づけられる。該結 晶単位格子の対称性はまた、この段階で特性づけられる。該結晶単位格子の対称 性は、収集したデータの複雑さを繰り返しパターンの同定により単純化する。単 位格子の対称性と次元の応用について以下に記載する。 各回折パターンの放出はベクトルとして特性づけられ、この方法のこの段階で 収集したデータは各ベクトルの振幅を決定する。このベクトルの位相は種々の技 法を用いて決定することができる。その1つの方法は、重金属を結晶に浸漬する もので、同型置換法と称されるが、該ベクトルの位相は、X線分析の基準点とし てこれらの重原子を用いることにより決定することができる。オトウイノウスキ ー(Otwinowski)、ダレンスバリー、英国、80〜86。同型置換法は、通常、1個よ り多い重原子誘導体を必要とする。もう一つの方法において、すでに構造の決ま った結晶性ポリペプチドからのベクトルの振幅および位相は、未知構造結晶性ポ リペプチドからのベクトルの振幅に適応可能であり、その結果、これらベクトル の位相を決めることができる。この第二の方法は分子置換法として知られており 、対照として用いるタンパク構造は、対象のタンパクと密接に関連した構造でな ければならない。ナラザ(Naraza)、1994、Proteins 11:281〜296。このように 、既知構造PTKからのベクトル情報は、ここに報告してあるように、他の未 知構造PTKの分子置換分析に有用である。 結晶の単位格子を表すベクトルの位相が決まると、ベクトル振幅と位相、単位 格子次元、および単位格子対称性がフーリエ変換関数の項として使用することが できる。フーリエ変換関数はこれらの測定値から単位格子の電子密度を計算する 。単位格子中の分子の一つまたは分子複合体の一つを表す電子密度は、電子密度 マツプとして参照することができる。結晶性ポリペプチドと複合体形成した化合 物のアミノ酸配列構造または分子構造は、種々のコンピュータープログラムを用 いて電子密度に適合させることかできる。この工程のこの段階はある場合にモデ ル構築物として参照し、TOM/FRODOなどのコンピュータープログラムを用いて実 施することができる。ジョーンズ(Jones)、1985、Methods in Enzymology 115: 157〜171。 理論的電子密度マップは実験的に決定した電子密度に適合するアミノ酸構造か ら計算することができる。理論的および実験的電子密度マップは互いに比較して 2つのマップ間の一致点をR−因子と呼ぶパラメーターにより表すことができる 。R−因子に対する低値は理論的および実験的電子密度マップ間の高度に重なり 合った電子密度を表す。 R−因子は理論的電子密度マップを精密化するコンピュータープログラムを用 いて最小化する。X−PLORなどのコンピュータープログラムは、当該技術の熟練 者がモデル精密化のために使用することのできるものである。ブリュンゲルる。第一工程では、電子密度マップで限定された原子のコンホメーションを変化 させる必要がある。原子のコンホメーションは、温度上昇をシミュレートし、結 合の振動数を上げて構造中の原子の位置を加減することにより変化させることが できる。原子振動工程の特定点で、許容し得る結合角と結合長による原子間の相 互作用、ファンデルワールス相互作用、水素結合、イオン相互作用、疎水性相互 作用などを一般に規定する力の場が原子の系に加えられる。好ましい相互作用は 自由エネルギーとして表され、原子は自由エネルギーが最小となるまで多くの相 互作用に渡り移動する。精密化工程はR−因子が最小値に達するまで繰り返され る。 分子または分子複合体の三次元構造は、最小R−値により特徴づけられる理論 上電子密度に適合する原子により表される。三次元座標により各原子を規定する 三次元構造についてのファイルを作ることができる。そのような構造座標の例を 表1、表2、表3および表4に定義してある。 V.FGFR1 の構造 本発明は高分解能三次元構造およびX線結晶学により決定した結晶性FGFR1と結 晶性FGFR1:AMP−PCP共複合体の原子構造座標を提供する。構造座標を得るため に用いる特定方法は実施例中に提供してある。C2−A型結晶から2.0Åの分解能用 に得られた結晶性FGFR1の原子構造座標を表3に掲げてある;C2−A型結晶から2. 3Åの分解能用に得られた結晶性FGFR1:AMP−PCP共複合体の座標を表4に掲げて ある。 当該技術の熟練者は、X線結晶学により決定される原子構造座標は誤りのない ものではないことを認めるだろう。従って、理解されることは、FGFR1の結晶に ついて得られたどの組の構造座標も、それが未変性結晶、誘導体結晶、あるいは 共結晶であろうと、表3または表4に掲げた構造座標に関し、バックボーン原子 (N、Cα、CおよびO)を用いてそれを重ね合わせたときに約1.5Åより小さいか 、あるいはそれに等しい二乗平均偏差(“r.m.s.d.”)をもち、FGFR1のバック ボーン原子の少なくとも約50%ないし100%が重なり合うときに、表に掲げた 構造座標と一致すると考えられることである。 図1に示すFGFR1の全体構造は二重ローブ体(bi-lobate)である。FGFR1のN− 末端ローブ(lobe)はアミノ酸残基456〜567(図3)に渡っており、5個 のアンチパラレル(anti-parallel)鎖の丸まったβシート(β1〜β5)およ び1個のα−ラセン(αC)からなる。C−末端ローブはアミノ酸残基568〜7 65(図3)に渡り、2つのβ鎖(β7、β8)と7つのαラセン(αD,αE、 αEF、αF−αI)からなる。二次構造の命名はIRKに用いるもの(ハッバード(H ubbard)ら、1994)に従うが、順次cAPKのアサインメントに基づく(ナイトン(K nighton)ら、1991)。図2はFGFR1のCαトレースの立体図を図1と同じ配向で示 す。 ヒト線維芽細胞増殖因子レセプター1(ヒトFGFR1;標識FGFR1)、ヒト線維芽細 胞増殖因子レセプター2、3および4(それぞれ標識FGFR2、FGFR3およびFGFR4) 、D.メラノガスター(D.melanogaster)同族体(標識DFDFR1)、C.エレガンス( C.elegans)同族体(標識EGL−15)およびインスリン・レセプターキナーゼ( 標識IRK)のチロシンキナーゼドメインの構造をベースとする配列を図3に示す 。図3に示していないFGFR1の配列は、FGFR1が以下のアミノ酸の置換と付加を有 する以外、FGFR1の配列と同一である:Cys−488→Ala、Cys-584→Ser、Leu-457 →Val、およびさらに付加する5個のN-末端アミノ酸(Ser-Ala-Ala-Gly-Thr)。FG FR1およびIRKについての二次構造アサインメントは、プロチェック(PROCHECK) (ラスコウスキー(Laskowski)ら、1993)において満足するカブシュ(Kabsch) とサンダー(Sander)の演算法(カブシュおよびサンダー、1983)を用いて得た 。FGFレセプター配列において、ピリオドはFGFR1に一致する配列を表す。IRK配 列においては、FGFR1と同一の残基が強調されて描かれている。ハイフンは挿入 を意味する。 EGL−15配列の下部の数字は、FGFR1構造中の残基の分別溶媒接近性(FSA2)を 表す。FSA比とは、Gly-X-Glyトリペプチド1残基の溶媒−接近可能表面域をFGFR 1構造のものに比較しての比である。0の値は0.00と0.09の間のFSAを表す;1は 0.10と0.19の間のFSAを表す。値が高いほど、残基はより溶媒に露出される。FSA ラインの星印またはボンド記号は、残基(星印)または側鎖(ボンド記号)が障 害のために原子モデルに含まれていないことを意味する。FSAライン下の番号は 、二量体の接点部分を形成するこれら残基に対するFSAである。 図3に示したFGFR1およびその後のFGFR1、およびIRKに対するアミノ酸残基の 番号は、以下の検討で用いる。IRKと比較したFGFR1のN-末端ローブにおける有意 差が、β鎖間およびαCのループに見出される。β1の末端からβ2の始まりに 至る残基(アミノ酸残基485〜490)は、ATP配位での役割の故にそう命名された ヌクレオチド結合ループを形成する。この残基の広がりはタンパクキナーゼ保存 GXGXXG配列モチーフを含む(ただし、Xはいずれかのアミノ酸である)。このルー プは非対称単位の一方のFGFR1分子においては余り整っておらず、非対称単位の 他のFGFR1分子においては乱雑になっている(すなわち、原子モデルに含ま れていない)。β1とβ3間のループは非対称単位からなるFGFR1分子の双方にお いて乱れている。 図4Aを参照すると、ここではFGFR1とIRKのN-末端ローブのリボン状図解を提 示しているが、そのβシートのCα原子が重なり合っており、そこで見られるの は、FGFR1のαCがIRKよりも1ラセン回転分だけ長いことと、タンパクキナーゼ に保存されている残基Lys−514とGlu−531が塩の架橋(黒線で表現)を形成する ように方向づけられていることである。理論に拘束されるつもりはないが、この 塩架橋は保存リジン側鎖の適切な配置にとって重要であると信じられており、こ の側鎖はATPの2個のリン酸酸素に配位している。塩架橋はcAPK(ナイトン(Kni ghton)ら、1991)およびマイトジェン活性化タンパクキナーゼ(MAPK)(ツアン (Zhang)ら、1994)の構造に観察される。 図4Bを参照すると、ここではFGFR1とIRKのC-末端ローブのリボン状図解を提 示しているが、そのαラセンのCα原子が重なり合っており、FGFR1のC−末端ラ センにはIRKに比較して有意差が認められる;FGFR1のラセンαIは、IRKの対応部 分よりも7残基(ラセン2回転分)だけ長い。αIの伸長部分は、PLCγのSH2ド メインが結合するチロシン自己リン酸化部位がこのラセンに対してC-末端6残基 であるので、FGFレセプターの生物学的機能発揮において恐らく重要である。 FGFR1の構造は、N-およびC-末端ローブにつき開放的な配置をとっている。非 対称単位の2個のFGFR1分子は、異なる組み合わせの格子接触を有するにかかわ らず、相対ローブ配向においてその差は僅か2°である。これは、活性化ループ の始まり部分のタンパクキナーゼ保存DFG配列のPhe-642とGly-643をもつαC(Gl u-531およびMet-534)における残基間の立体的相互作用が、FGFR1の開放的コン ホメーションの説明となっているかのように見える。 FGFR1の活性部位は、少なくともアミノ酸残基が触媒ループ、活性化ループお よびヌクレオチド結合ループに広がっていることにより特徴づけられる。Tyr-11 62が分子の活性部位を占拠しているIRKの構造とは違って、非対称単位のFGFR1分 子双方の活性部位は占拠されていない。 リン酸化を制御する活性化ループは少なくとも残基640〜663により特徴づけ られる。全く驚くことに、FGFR1とIRKの活性化ループが同じ数のアミノ酸残基を 含み、50%以上の配列相同性を共有する一方、ポリペプチド鎖の方向が著しく 異なり、Ala-640(IRKではGly-1149)で分岐し、Val−664(IRKではVal−1173)で再 集中する。Tyr-653とTyr-564は活性部位に結合していない。代りに、これらの残 基はそこから離れた方向に向いている。Tyr-653は幾つかの疎水性残基(Val−664 、Leu−672およびPhe−710)とファンデルワールスの接触状態にあり、そのヒド ロキシ基を経てバックボーンカルボニル酸素(Leu-672)に水素結合している。T yr−654はTyr−653よりもより溶媒にさらされ、Val−706ではファンデルワール スの接触のみである。温度因子のデータは、活性化ループが比較的可動性であり 、多様なコンホメーションを採ることを示唆している。 タンパクキナーゼの触媒ループは二次構造要素αEとβ7の間にあるが、リン 酸転移反応における触媒塩基として作用し、基質チロシン、セリンまたはスレオ ニンのヒドロキシ基からプロトンを抜き取る不変異アスパラギン酸残基(FGFR1 のAsp−623)を含む。FGFR1の触媒ループ配列は少なくとも残基His−621ないしA sn−628(アミノ酸配列:HRDLAARN)からなり、IRKと殆どのレセプターおよび非 レセプターPTKのものと一致する。 活性化ループ(Tyr−653およびTyr−654)の2つのチロシン自己リン酸化部位 に加えて、本発明のFGFR1に存在する4つの他の自己リン酸化部位がある:その 1つは膜近傍領域(Tyr−463)に、2つはキナーゼ挿入断片(Tyr−583およびTyr −585)に、他の1つはC-末端ローブ(Tyr−730)にある(モハンマディ(Mohammadi) ら、1996)。それらは哺乳動物FGFレセプターにおいて様々な度合いで保存されて いる:FGFR1および2におけるTyr−463およびTyr−585;FGFR1、2および3にお けるTyr−583;およびFGFR1、2、3および4におけるTyr−730(図3)。 図5を参照すると、自己リン酸化の位置はFGFR1構造上にマップ化してある。 膜近傍部位(Tyr−463)およびそれに対してN-端となる残基は、非対称単位のFGFR 1分子の一つにおいて乱されている。非対称単位の他の分子において、Tyr−463 が格子接触に関与している。 キナーゼ挿入断片領域(ラセンαDとαE間の領域)は自己リン酸化部位Tyr−5 83とTyr−585を含み、C2-A型結晶の非対称単位におけるFGFR1分子双方にお いて乱されている。C2-B型においては、幾つかの格子接触が部分的に非対称単位 における2つのFGFR1分子の一方においてこの領域を拘束し、微量のポリペプチ ド鎖が形成されるのを可能とする。これらの残基については、十分に解明された 二次構造はない。C−末端ローブのαHに位置するTyr−730は殆ど埋もれていて、 側鎖ヒドロキシ基が2つの水素結合を形成する。近傍Met−732およびMet−733の 側鎖は両方とも埋もれている。それ故、Tyr−730のリン酸化がαHの変性に先立 って多分必要となる。 Tyr−730を別として、5つの他の自己リン酸化部位(Tyr−653とTyr−654を含 む)がFGFR1分子の比較的可動性の部分に見出される。理論に拘束されるつもり はないが、活性部位に関して自己リン酸化部位の空間位置は、自己リン酸化が2 つのキナーゼドメイン間のトランス(trans)機構により起こることを示唆し、 リガンドー誘導レセプター二量化が自己リン酸化事象の開始にとって重要である ことを示唆している。 結晶性FGFR1:AMP-PCP共複合体の構造は、結晶性FGFR1について観察される構 造に実質的に類似している。AMP−PCP結合により誘導されるFGFR1の構造に有意 な変化はない。特に、AMP−PCPの結合は、また、拡張ATPにより、用いる結晶化 条件下ではそれ自体ローブの閉鎖を促進しない。さらに、複合体形成は活性化の コンホメーションおよびヌクレオチド結合ループに目立った変化をもたらさなか った。 結晶性FGFR1:AMP−PCP共複合体は、アデニンのN1とAla−564のアミド窒素の 間およびアデニンのN6とGlu−562のカルボニル酸素の間に水素結合を有している 。アデニン環は一方の側がLeu−484およびVal−492(N−端ローブ)に、他方側 がLeu−630(C−端ローブ)に置かれている。リボースのヒドロキシ基はタンパ ク原子と直接の水素結合を形成しない。Lys−514はβ−およびγ−リン酸エステ ルの酸素に水素結合されている。Mg2+イオンの位置を示すあいまいではない電子 密度は存在しない。一般に、AMP−PCPは未リン酸化FGFR1にむしろゆるく配位し ているように思われるが、2つのキナーゼローブ間にしっかりとサンドイッチさ れているよりもむしろ窪みの“頂部”に結合している。FGF −RとIRK間の構造の違い 幾つかの特徴がFGF−レセプター構造をインシュリン−レセプターチロシンキ ナーゼの構造から区別している。これらの特徴は、FGF-レセプター、およびリガ ンド誘導二量化を受けると信じられている他の単量体レセプターによるシグナル 伝達において重要であると思われる。 FGFR1およびIRKの構造間における最も有意な相違は活性化ループのコンホメー ションである。FGFR1において、活性化ループは、基質ペプチドに対する結合部 位が、IRKでのように活性化ループのチロシンによってではなく、Arg−661とPTK −非変異体Pro−663によりブロックされるように配置されており、一方ATP結合 部位は接近し得るものである。このことはもう一つの分子機構を表しており、そ れによってレセプターPTKは自己抑制されている。FGFR1において観察される自己 抑制は、FGFR1活性化ループの残基によりなされる特異的相互作用(比較的高いB −値において現われる)が僅かであり、それとATP部位の近づきやすさの故に、I RKのものよりも弱いように思われる。インシュリンおよびFGFレセプターファミ リー間の一つの明らかな相違は、前者ではレセプターが共有結合によりヘテロ4 量体(α2β2)に結合しているのに対し、後者ではレセプターの二量化がリガン ド依存性であることである。キナーゼドメインが常に極めて接近した状態にある ようなレセプターでは、リガンドの結合にのみ関係しているレセプターよりもよ り強力な自己抑制機構を必要とする(テイラー(Taylor)ら、1995)。殆どの増殖 因子レセプターがリガンド依存性二量化と活性化を受けるので、FGFレセプター 自己抑制機構はより一般的なもののように思われる。 VI.結晶と原子構造座標の用途 本発明の結晶、特にそこから得られる原子構造座標は多様な用途をもつ。例え ば、ここに記載した結晶は、レセプターおよび非レセプターチロシンキナーゼの 技術上既知の使用法において出発物質として使用することができる。そのような 使用法は、例えば、チロシンキナーゼの未変性または変異触媒ドメインに結合す る分子の同定である。該結晶と構造座標は、新しい治療剤開発の手段として、レ セプターおよび非レセプターチロシンキナーゼを阻害する化合物を同定するため にとりわけ有用である(例えば、レビツキー(Levitzki)およびガジット(Gazit) 、1995)。 ここに記載の構造座標はさらなる未変性または変異チロシンキナーゼドメイン の結晶構造、ならびにインヒビター、アゴニスト、および他の分子などのリガン ドをもつドメインの共結晶構造を決定するための段階的実施用のモデルとして用 いることができる。構造座標、ならびにそこから得られる三次元構造のモデルは 、NMRを介して得られるものなど、未変性または変異チロシンキナーゼドメイン の溶液にもとづく構造の解明を目的としても使用することができる。このように 、本発明の結晶および原子構造座標は、レセプターおよび非レセプターチロシン キナーゼの構造と機能を解明するための簡便な手段を提供する。 解明と検討を目的として、本発明の結晶については特定FGFR1の典型的な結晶 を参照して記載する。当該技術の熟練者は、ここに記載の原理がリガンド誘導二 量化を受ける細胞質チロシンキナーゼまたはレセプターチロシンキナーゼのチロ シンキナーゼドメインの結晶に一般に適用できるものであり、該チロシンキナー ゼは図6のものに制限されるものではないことを認識するだろう。 VII.構造座標を用いる未知構造PTK類の構造決定 表1、表2、表3、および表4に示したような構造座標は、未知構造PTK類の 三次元構造を決めるのに用いることができる。下記方法は既知構造ポリペプチド の構造座標をもう一組のデータ、例えば、アミノ酸配列、X線結晶回折データ、 または核磁気共鳴(NMR)データなどに適用することができる。本発明の好まし い態様はPTKおよび関連ポリペプチドの三次元構造を決定することに関連する。 これらのものはレセプターPTK類、例えば、FGF−R、PDGF−R、KDR、CCK4、MET、 TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびMUSKなどである 。非レセプターPTK類、例えば、SRC、BRK、BTK、CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、J AK、およびACKなどもここに記載の方法に用いることができる。アミノ酸相同性を用いる構造 相同性モデル化とは、既知構造ポリペプチドの構造座標を未知構造ポリペプチ ドのアミノ酸配列に適用する方法である。この方法はポリペプチドまたはポリペ プチド複合体の三次元構造のコンピューター画像化、既知または未知構造ポリペ プチドのアミノ酸配列のコンピューター画像化、およびアミノ酸構造の標準的コ ンピューター画像化を用いて実施する。相同性モデル化は:(a)既知構造をもつ またはもたないポリペプチドのアミノ酸配列を整列させる工程;(b)既知構造の 保存アミノ酸の座標を対応する既知構造ポリペプチドのアミノ酸に移動させる工 程;(c)続く三次元構造を明確化する工程;および(d)該ポリペプチドの残部構造 を構築することからなる。当該技術の熟練者は、2種のタンパク間の保存アミノ 酸を、工程(a)の配列整列工程から決定することができることを認識している。 上記方法は当業者周知のものである。グリアー(Greer)、1985、Science228:1 055。ブルンデル(Blundell)ら、1988、Eur.J.Biochem.172:513。当業者が 相同性モデル化に現在利用するコンピュータープログラムは、モレキュラー・シ ミュレーション・インク(Molecular Simulation Inc.)が拡販しているInsight IIモデル化パッケージ中のホモロジー・モジュールである。 アミノ酸配列の整列は、既知構造ポリペプチドのアミノ酸配列のコンピュータ ー画像を未知構造ポリペプチドのアミノ酸配列上に先ず重ねることにより実施す る。次いで、配列内のアミノ酸を比較し、相同アミノ酸のグループ(例:化学的 性質が類似のアミノ酸側鎖−脂肪族、芳香族、極性、または負荷)を一緒にして 組み分ける。この方法はポリペプチドの保存領域を検出し、アミノ酸の挿入また は切除を考慮する。 既知または未知構造のポリペプチドアミノ酸配列を整列させた後、既知構造ポ リペプチドのコンピューター画像中保存アミノ酸構造を、構造未知のポリペプチ ドの対応するアミノ酸に転写する。例えば、既知構造アミノ酸配列のチロシンを 、未知構造アミノ酸配列の対応する同族アミノ酸であるフェニルアラニンにより 置換してもよい。 非保存領域に位置するアミノ酸の構造は、標準的なペプチド幾何学または分子 シミュレーション技術、例えば、分子動力学などを用いて手作業で決めてもよい 。この工程の最終工程は分子動力学および/またはエネルギー最小化法を用い、 全体構造を確実にすることにより実施する。 相同性モデル化法は当該技術の熟練者に周知のものであり、異なったタンパク 分子を用いて実施されている。セリン/スレオニンタンパクキナーゼ、ミオシン 軽鎖タンパクキナーゼの触媒ドメインに対応するポリペプチドの三次元構造は、 cAMP-依存性タンパクキナーゼ触媒サブユニットから相同性モデル化された。ナ イトン(Knighton)ら、1992、Science 258:130〜135。分子置換を用いる構造 分子置換とは既知構造ポリペプチドのX線回折データを未知構造ポリペプチド のX線回折データに適合させる方法である。この方法は振幅のみが既知の未知構 造ポリペプチドのX線回折データを描写する段階を限定するのに利用することが できる。X−PLORは分子置換に使用された常用コンピューター・ソフトウエア・ AMOREは分子置換に使用される他のプログラムである。ナバザ(Navaza)、1994、A cta Crystallogr.A50:157〜163。好ましくは、得られる構造は3Å以上の二乗 平均偏差を示さない。 分子置換のゴールは、単位格子の原子位置を、2種の結晶からの電子回折デー タを調和させることにより整列させることである。X−PLORなどのプログラムは 4つの工程を含んでいる。第一工程は単位格子中の分子数を決め、その間の角度 を確定することである。第二工程は単位格子中の分子の配向を確定するために、 回折データを回転させることでる。第三工程は単位格子の分子を正確に位置づけ るために、電子密度を三次元に翻訳することである。X線回折データの振幅と位 相が決まると、R−因子を参照データの組から実験的に計算した電子回折マップ と新規データの組から計算したマップとを比較することにより計算する。30〜50 %のR−因子は単位格子中の原子の配向がこの方法により合理的に決まることを 示している。この方法の第4工程は、ここに記載した当業者周知の反復向土させ た技術を用い、新しい電子密度マップの確度を上げて、R−因子をおおよそ20% 低下させることである。NMR データを用いる構造 X線結晶学技術から誘導されるポリペプチドまたはポリペプチド複合体の構造 座標は核磁気共鳴(NMR)データからのポリペプチド三次元構造の解明に応用す ることができる。この方法は当該技術の熟練者が使用するものである。ウスリッ チ(Wuthrich)、1989、John Wiley and Sons、ニューヨーク:176〜199;ブルグ ラス(Pflugrath)ら、1986、J.Molecular Biology 189:383〜386;クライン (Kline)ら、1986、J.Molecular Biology 189:377〜382。ポリペプチドの二 次構造は二次元NMRデータを利用することにより時に容易に決めることができる か、二次構造の個々の断片間の空間的つながりはそれ程簡単に決められない。X 線結晶学技術から誘導されるポリペプチドの三次元構造を規定する座標は、関連 構造ペプチドの二次構造要素間の空間的相互作用をNMR測定者に理解させ得るも のである。 二次構造要素間の空間的相互作用の知識は、二次元NMR実験からの核オーバー ハウザー効果(NOE)データを著しく単純化することができる。さらに、NMR技術 による二次構造の決定後、結晶座標を応用することは、ポリペプチド配列の特定 アミノ酸に関係するNOEのアサインメントを単純化するだけであって、ポリペプ チド構造のNMR分析を著しく偏ったものとするわけではない。逆に、ポリペプチ ドの二次構造を決めながら、NOEデータを単純化するために結晶座標を使用する ことは、タンパク構造のNMR分析を偏ったものとする。 ポリペプチド構造のNMR法による分析は比較的新しい技術なので、PTK構造を規 定する構造座標の使用は、近い将来より頻繁に採用されるだろう。この方法が進 歩するにつれ、PTK触媒ドメインと同一サイズのポリペプチド三次元構造の分析 がより頻繁になるだろう。 VIII.構造座標を利用するPTK機能モジュレーターの構造ベース設計 構造ベースモジュレーターの設計および同定法は、多様な可能性のあるモジュ レーターおよび化学官能基を含むコンピューター・データベースの探索に関与す る強力な技術である。モジユレーターのコンピユーター化設計および同定は、コ ンピューター・データベースが化学ライブラリーよりも時には桁違いの多さで、 より多くの化合物を含むので有用である。構造ベース薬物設計と同定についての 参照総説:クンツ(Kuntz)ら、1994、Acc.Chem.Res.27:117;ギダ(Guida) 、1994、Current Opinion in Struc.Biol.4;777;コールマン(Colman)、1994 、Current Opinion in Struc.Biol.4:868。 構造座標により規定されるポリペプチドの三次元構造はこれらの設計法により 利用することができる。表1、表2、表3、および表4の構造座標はこの方法に より利用することができる。さらに、ここに記載した相同性、分子置換およびNM R技術により決定されるレセプターおよび非レセプターPTKの三次元構造もまた、 モジユレーターの設計と同定法に応用することができる。従って、レセプターPT K類の構造、すなわち、FGF−R、PDGF−R、FLK、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EP H、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびMUSKなどがここに記載の方法に利用 することができる。非レセプターPTK類、すなわち、SRC、BRK、BTK、CSK、ABL、 ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKなども合理的なモジュラー設計法に利用する ことができる。分子データベース検索による設計 合理的なモジュレーター設計の1つの方法は、分子のデータベースから化合物 のコンピューター画像をドッキングさせることによりモジュレーターを探索する 。公的に入手可能なデータベースは以下のとおりである: (a)モレキュラー・デザイン・リミテッドからのACD (b)国立癌研究所からのNCI (c)ケンブリッジ結晶学・データ・センターからのCCDC (d)ケミカル・アブストラタト・サービスからのCAST (e)ダーウエント・インフォメーション・リミテッドからのDerwent (f)メイブリッジ・ケミカル株式会社からのMaybridge (g)アルドリッチ・ケミカル・カンパニーからのAldrich (h)チャップマン&ホールからの天然物事典 そのようなデータベースの一つ(モレキュラー・デザイン・リミテッド情報シス テム)は、例えば、合成的に誘導した化合物あるいは天然物を200,000種含んで いる。当該技術の熟練者に利用可能な方法は、二次元で表されるデータセットを 三次元で表されるものに変換できる。これらの方法はトリポス・アソシエートの CONCORDまたはモレキュラー・シミュレーション・リミテッドのDB−コンバータ ーなどのコンピュータープログラムにより可能である。 構造ベースモジュレーターの多くの設計方法が当業者既知である。クンツ(Ku ntz)ら、1982、J.Mol.Biol.162:269;クンツ(Kuntz)ら、1994、Acc.Chem.Res .27:117;メング(Meng)ら、1992、J.Compt.Chem.13:505;ボーム(Bohm)、19 94、J.Comp.Aided Molec.Design 8:623。 合理的なモジュレーターの設計技術の熟練者により広く利用されているコンピ ュータープログラムは、カリフォルニア大学、サンフランシスコのDOCKである。 このコンピュータープログラムおよび同様のプログラムにより利用される一般法 は下記3つの応用例に記載される。これら技術の幾つかに関するより詳細な情報 は、モレキュラー・シミュレーションのユーザーガイド(1995)に見ることがで きる。 この目的に用いる代表的なコンピュータープログラムは以下の工程からなる: (a)タンパクから既存の化合物を除く; (b)コンピュータープログラム(DOCKなど)を用い一方の化合物の構造を活性 部位にドッキングさせるか、あるいは該化合物を相互作用的に活性部位に移動さ せることによりドッキングさせる; (c)該化合物と活性部位原子の間の空間を特徴づける; (d)(i)該化合物と活性部位間の空の空間に適合し、(ii)該化合物に結合し得る 分子フラグメントをライブラリーで探索する;次いで (e)上で見出したフラグメントを該化合物に結合し、新たに修飾した化合物を 評価する。 項目(c)は活性部位の原子と該化合物の間に形成される幾何学的および補足的 相互作用を特徴づけることである。好適な幾何学的適合は、有意な表面積が不適 切な立体相互作用を形成せずに該化合物と活性部位原子との間で共有するときに 達成される。 当該技術の熟練者は、この方法では項目(d)および(e)は飛ばして、多くの化合 物のデータベースをスクリーニングすることにより実施可能なことに気づくだろ う。 PTK機能モジュレーターの構造ベース設計および同定は、アッセイスクリーニ ングとの連携で使用することができる。化合物についての大型コンピューターデ ータベース(約10,000化合物)は時間の問題で検索できるので、コンピューター をベースとする方法は、PTK機能の可能なモジュレーターとして細胞アッセイに よりテストすべき化合物を狭めることができる。 構造ベースモジユレーター設計についての上の記述はすべてを包含するもので はなく、他の方法も文献に報告されている: (1)CAVEAT:バートレット(Bartlett)ら、1989、「分子認識における化学 的生物学的問題」、ロバート(Roberts,S.M.)、レイ(Ley,S.V.)、キャンプベル(C ampbell,M.M.)編集、ロイヤル・ソサイアティ・オブ・ケミストリー、ケンブリ ッジ、182〜196頁。 (2)FLOG:ミラー(Miller)ら、J.Comp.Aided Molec.Design 8:153. (3)PROモジュレーター:クラーク(Clark)ら、1995、J.Comp.Aided Molec .Design 9:13。 (4)MCSS:ミランカー(Miranker)およびカープラス(Karplus)、1991、Pro teins:Structure,Function,and Genetics 11:29。 (5)AUTODOCK:グッドセル(Goodsell)およびオルソン(Olson)、1990、Pro teins:Structure,Function,and Genetics 9:195。 (6)GRID:グッドフォード(Goodford)、1985、J.Med.Chem.28:849。PTK との複合体化合物を修飾することによる設計 可能なモジュレーターとしての化合物を同定しるもう一つの方法は、ポリペプ チドの既存モジュレーターを修飾することである。例えば、モジュレーターのコ ンピューター画像をPTK活性部位のコンピューター画像内で修飾することができ る。この技術の詳細な指示は、モレキュラー・シミュレーションのユーザーガイ ド(1995、LUDI)により見ることができる。モジュレーターのコンピューター画 像は1個または複数の化学基を削除するか、あるいは1個または複数の化学基を 付加することにより修飾する。 化合物に対する各修飾により、修飾化合物および活性部位の原子がコンホメー ション内でシフトし、モジュラーと活性部位原子間の距離が2つの分子間に形成 される補足的相互作用と共に評点される。評点付けは好適な幾何学的適合および 好適な相互作用が得られるときに完了する。好適な評点をもつ化合物はPTK機能 の潜在的モジュレーターである。PTK に結合する化合物の構造修飾による設計 構造ベースモジュレーター設計の第三の方法は、モジュレーター構築またはモ ジュレーター検索コンピュータープログラムにより設計した化合物をスクリーニ ングすることである。この型のプログラムの例はモレキュラー・シミュレーショ ン・パッケージ、キャタリストに見出すことができる。このプログラムの使用に ついての記述はモレキュラー・シミュレーションのユーザーガイド(1995)に詳 細な説明がある。この応用に用いる他のコンピュータープログラムは、モレキュ ラーデザイン社のISIS/HOST、ISIS/BASE、ISIS/DRAWとトリポス・アソシエート のUNITYである。 これらのプログラムは化合物−PTK複合体の三次元構造の活性部位から除去し た化合物の構造にもとづき操作する。そのような化合物につきプログラムを操作 するのは、それが生物学的に活性なコンホメーションである故に好ましい。 モジュレーター構築コンピュータープログラムは、PTKとの複合体化合物中、 化学基のコンピューター画像をコンピューターデータベースからの基と置換える のに使用することの可能なコンピュータープログラムである。モジュレーター検 索コンピュータープログラムは、PTKに結合した化合物と類似の三次元構造およ び類似の化学基を有するコンピューターデータベースからの化合物のコンピュー ター画像を検索するのに用いることのできるコンピュータープログラムである。 代表的なプログラムは以下の一般工程を用いて操作することができる。 (a)水素結合供与体または受容体、疎水性/親油性、正にイオン化し得る部位 、または負にイオン化し得る部位によりなど、化学的特徴点により化合物をマッ プ化する; (b)幾何学的な拘束をマップ化した特徴点に加える;次いで (c)(b)で生成したモデルでデータベースを検索する。 当業者は、インドリノンについては、重要な化学的特徴点として、それに限定 されるものではないか、水素結合供与体、水素結合受容体、および2つの疎水性 接触点をもつことを認める。当業者はまた、該化合物の可能な化学的特徴点のす べてではないが、それが(b)のモデルに存在することが必要である。データベー ス検索のためには異なるモデルを生成するモデルのサブセットを用いることもで きる。 IX.有機合成技術 コンピューターベースのモジュレーター設計および同定の汎用性は、コンピュ ータープログラムによりスクリーニングした構造の多様性にある。コンピュータ ープログラムは200,000分子を含むデータベースを検索することが可能で、多様 な化学官能基をもつ酵素とすでに複合体を形成しているモジュレーターを修飾す ることができる。この化学的多様性の重要性は、PTK機能の潜在的モジュレータ ーが予測し得ない化学形状を採る可能性があるということである。広範な一連の 有機合成技術は、PTK機能の潜在的モジュレーターを構築することの挑戦に適う 技術にある。これら有機合成法の多くは当業者が利用する標準的な文献類に詳細 に記載されている。そのような文献の一例は:アドバンスド・オルガニック・ケ ミストリー:反応、メカニズムおよび構造、1994年3月、ニューヨーク、マグロ ウヒル、である。このように、コンピューターベース法により同定されるPTK機 能の潜在的モジュレーターを合成するのに必要な技術は、有機化学合成の当業者 に容易に利用可能である。 X.シグナル変換経路におけるPTKモジュレーターの効果を測定する細胞アッセイ 細胞アッセイ法はPTK機能の潜在的モジュレーターの活性をテストならびに不 適切なPTK活性と関連する疾患の診断に使用することができる。PTK機能の潜在的 モジュレーターは、細胞系に過剰発現した特定PTKの自己リン酸化への潜在的 モジュレーターの影響を測定するアッセイにより、インビトロ活性をテストする ことができる。このように、PTKに相当する触媒ドメインの強いインヒピターと して作用するモジュレーターは、そのPTKにより触媒される自己リン酸化量を減 少させる。潜在的モジュレーターはまた、インビトロでの細胞増殖アッセイなら びにインビボでの動物モデルアッセイにおける活性もテストすることができる。 インビボアッセイはまた、本発明法により設計した潜在的モジュレーターの生 物活性をテストするのにも有用である。 これらのアッセイのための材料、方法および実験データについては、「疾患治 療用インドリノン化合物」(Indolinone Compounds for the Treatment of Disea se)と題する1996年12月19日発刊のWO 69/40116に詳細に記載されている。この出 願はその図面、図形および表のすべてを含め、その全体を参照文献としてここに 包含される。 XI.疾患治療薬としのPTK機能モジュレーターの投与 疾患治療薬とし化合物を生物体に投与する方法については、「疾患治療用イン ドリノン化合物」(Indolinone Compounds for the Treatment of Disease)と題 する1996年12月19日発刊のWO 69/40116に詳細に記載されている。この出願はそ の図面、図形および表のすべてを含め、その全体を参照文献としてここに包含さ れる。 実施例 下記の例は非限定的であり、本発明の種々の態様と特徴の単に代表的なもので ある。これらの例は、蛋白キナーゼポリペプチドの結晶形態の製造方法、これら 蛋白キナーゼポリペプチドの三次元構造の決定方法、および蛋白キナーゼの三次 元構造を用いての蛋白キナーゼのモジュレーターの同定方法を説明するものであ る。実施例1FGFR1 のX線結晶構造決定 ポリペプチドの合成と単離 組替えバキュロウイルスを処理(engineer)して、ヒトFGFR1の残基456-765 をコード化した。切断可能なN-末端ヒスチジンタッグを組み込んで、蛋白の精製 を助けた。3つのアミノ酸置換が導入された。すなわち、AlaをCys-488へ、Ser をCys-584へ、そしてValをLeu-457へ導入した。2つのシステイン置換は、天然 の蛋白において生起するジスルフィド結合したオリゴマーの形成を防ぐために行 われた。ValへのLeu-457置換は、Met-456近傍へNcolクローニング部位を導入し た。Tyr-766(TAC)のコドンは停止コドンに変わり、そしてHindIII-クローニング 部位がこの停止コドンに次いで生成された。これらの置換は、メーカーのプロト コール(アマーシャム)に従い部位指向性の突然変異誘発によって、m13MPI9中のF GFR1のヒトcDNAの全長の中へ導入された。 得られた構造は、NcolとHindIIIで消化され、そして適切に消化されたpBlueBa c HistagB(インビトロゲン)の中へ結合された。昆虫細胞(Sf9)のトランスフェ クションが、メーカーのプロトコール(ファーミンゲン)に従いBaculo Goldト ランスフェクション系で行われた。正のプラークの同定のあと、組替えバキュロ ウイルスは、高い力価(1ミリリットルあたり5×107個のウイルス粒子)にまで増 幅された。Sf9細胞は175cm3のフラスコ内で、フラスコあたり2-3×107の密度ま で成長させ、感染多重度(MOI)10で組替えバキュロウイルスに感染させた。 48時間後に、細胞を4℃で35分間3500gの遠心分離で集め、ついで25mMのHEPES( pH7.5)、150mMのNaCl、10%のグリセロール、1.5mMのMgCl2、1%のトリトンX-10 0、10μg/mlのアプロトニン、10μg/mlのロイペプチン、および1mMのフェニル メチルスルホニルフルオライド(PMSF)の中で溶菌した。溶菌液を4℃で1時間40, 000gでSorval RC 5C(デュポン)を用いて遠心分離し、ついで1時間100,000gでXL -80(ベックマン社)を用いて超遠心分離した。遠心分離の後、澄明となった溶 菌液をNi2+キレート化したカラム(ファルマシア)を通過させ、結合したヒスチ ジンでラベルした融合蛋白を、100mMのイミダゾール(pH7.5)で溶離した。プール された画分はモノQ陰イオン交換カラム(ファルマシア)の上へ負荷し、0から5 00mMの勾配のNaClで溶離した。 融合蛋白を含む画分をCentricon-30(アミコン)で濃縮し、エンテロキナーゼ (バイオザイム)により20℃で一晩消化してヒスチジンタグを除去した。この消 化は、アプロトニン、ロイペプチン、PMSF、TPCKおよびウシ膵臓トリプシンイン ヒビター(BPTI)を加えることにより終了した。ついで、切断されたキナーゼ領域 をスーパーローズ12サイズ排除カラム(ファルマシア)の上でヒスチジンタグから 分離した。溶離されたキナーゼ領域はさらにモノQカラムで精製した。精製した キナーゼ領域はN-末端配列決定と質量分析によって分析した。5個のアミノ酸(S AAGT)がヒスチジンタグから残存していた。予測していた分子量が、質量分析で 確認された。結晶成長 精製したFGFR1を20-50mg/mlまで濃縮し、セントリコン-30を用いて10mMのトリ スHCl(pH8.0)、10mMのNaCl、および2mMのDTTの中へ交換した。2.0μlの10mg/m lの蛋白溶液ならびに2.0μlの貯溜溶液(16%のポリエリレングリコール(PEF)10 000、0.3Mの(NH4)2SO4、5%のエチレングリコール、および10mMのビス-トリス(p H6.5))を含有する懸垂液滴のなかへ蒸気拡散させて4℃で結晶を成長させた。 天然のFGFR1の結晶を、4℃で24.48時間、3-[(3-(2-カルボキシエチル)-4-メチ ルピロール-5-イル)メチレン]-2-インドリノン(1-5mM)または3-[4-(4-ホルミル ピペラジン-1-イル)-ベンジリデニル]-2-インドリノン(1mM)を含有する500mlの 安定剤溶液[25%のPEG10000、0.3Mの硫酸アンモニウム、0.1Mのビス-トリス(pH6 .5)、5%のエチレングリコール]へ浸漬した。DMSOの最終浸漬濃度は1%から5% の間であった。結晶は、高濃度のDMSOで破損した。 FGFR1と阻害剤との共結晶もまた、1mMの3-[(3-(2-カルボキシエチル)-4-メチ ルピロール-5-イル)メチレン]-2-インドリノンと3-[4-(4-ホルミルピペラジン-1 -イル)-ベンジリデニル]-2-インドリノンを含む2.0μlの貯溜溶液および2.0μ lの10mg/mlの蛋白溶液を含む懸垂液滴のなかへ蒸気拡散させて得られた。 FGFR1とAMP-PCPが複合した共結晶は、蛋白溶液がさらに10mMのAMP-PCPと20mM のMgC12を含んでいること以外は、天然の結晶作成で述べたのと同様にして得る ことができた。重原子誘導体結晶の製造 重原子誘導体結晶は、FGFR1天然結晶(C2-A型)を、上記の表1に示すような エチルメルクリチオサリチル酸(チメロサール)、KAu(CN)2もしくは4-クロロメル クリ安息香酸、並びに25%のPEG10000、0.3Mの硫酸アンモニウム、5%のエチレ ングリコールかグリセロール、及び100mMのビス-トリス(pH6.5)を含有する溶液 に浸漬することにより得られ、そして直接に液体窒素中(シンクロトロン)か、ま たは−175℃の乾燥窒素流(回転アノード)中でフラッシュ冷却した。データ収集と構造決定 50kVと100mA(CuKα)で作動し二重焦点鏡とR-AXIS IICイメージプレート検出器 を備えたRigaku RU-200回転アノードか、又はブルックヘーブン ナショナル ラ ボラトリーのナショナル シンクロトロン ライト ソースのビームラインX-4Aに より、天然の結晶およびヌクレオチドアナログのAMP-PCPを含む結晶のデータを 収集した。シンクロトロンのデータ(λ=1.07Å)はフジのイメージプレートに収 集しフジのスキャナーで読み取った。1つの低温冷却結晶を、データのセットの 各々に対して用いた。低温冷却結晶を得るために、結晶を、25%のPEG10000、0. 3Mの硫酸アンモニウム、5%のエチレングリコールもしくはグリセロール、およ び100mMのビス-トリス(pH6.5)を含有する低温保護剤溶液に浸漬し、そして直接 液体窒素の中で(シンクロトロンデータ)か−175℃の乾燥窒素気流の中で(回 転アノードデータ)でフラッシュ冷却した。すべてのデータは、DENZOおよびSCA LEPACKを用いて処理した。Otwinowski,1933,“Oscillation Data Reduction Pro gram”,Proceedings of the CCP4 Study Weekend,Sawyer et al.,eds.(Daresbur y,イギリス、SERC Daresbury Laboratory),56-62. 天然の結晶や、ヌクレオチドアナログのAMP-PCPを含む結晶については、分子 置換溶液が、1094-1105残基(キナーゼ挿入)および1153-1170(活性ループ)を除 く993-1263残基(FGFR1残基475-754)に共通な側鎖をもつポリアラニンから成るIR K研究モデルを用いC2-B結晶型において最初に見出された。1.50と3.5Åの間の構 造因子増幅の80%を用いてのAMORE(Navaza,1994,AmoRe:anautomated package f or molecular replacement,”Acta Crystallogr.A50;157-163)では、不斉単位 の中の2分子の1つがあった。正確な1-分子溶液の補正係数(c.c.)は(もっと も不正確な溶液が0.20であるのに対して)0.23であった。こ Connectinut:The Howeared Hughes Medical Institute and Department of Mole cular Biophysics and Biochemistry,Yale University)で精製された硬質体であ り、最初は1つの硬質体単位で、ついで各々がキナーゼのローブを含む2つの単 位であった。硬質体精製(12.0-3.5Å、F>3σ)は、2つのローブの〜10°の相 互回転と、c.c.の0.20から0.25への増加をもたらした。ついで硬質体精製分子は AMOREにおける新しい研究モデルとして用いられ、そしてこのとき不斉単位の中 の両分子が存在していた。正確な2-分子溶液のc.c.は(もっとも不正確な溶液が 0.27であるのに対して)0.35であった。 6.0-2.4Åデータに対してのモデルの形成と精製の複合サイクルは、多くの側 鎖および幾つかの欠損ポリペプチド鎖のモデルへの付加をもたらした。モデルの 形成はTOM/FRODO(Jones,1985,“Diffraction Methods for Biological M acromolecules.Interactive Computer Graphics:FRODO,”Methods in Enzy mology 115:157-171)を用いて行われ、複合勾配最小化とシミュレーショ 値は30%であった(遊離のR値は36%)。モデル形成と精製の促進を助けるために 、実験的な相が得られた。エチレングリコールの存在下に成長した結晶はグリセ リン中で成長したものに比べて操作が容易であるので、いくつもの重原子誘導体 データのセットが、種々の重原子溶液へ浸漬されたC2-A結晶から集められた。C2 -B構造は引き続き、6.0-2.4Åデータに対して、0.008Åの結合距離および1.4Å の結合角のr.m.s.d.値で23.8%のR値(遊離のR値は30.4%)へと精製された。 分子置換を用いて、C2-A結晶型の不斉単位の2つのFGFR1分子(FLGK-AおよびF LGK-Bと称する)を配置した。15.0から3.5Åの構造因子振幅の80%とC2-Bモデル でのAMOREを用いた場合、正確な2.分子溶液のc.c.は(もっとも不正確な溶液の0 .35に対して)0.62であった。重原子位置は、部分的モデルから計算した相を用 いて差フーリエマップから決定した。重原子パラメーターの精製と相決定は、ML PHARE(Otwiinowski,1991,“Maximum Likelihood Refinement of Heavy Atom Par ameters,”Isomorphous Replacement and Anomolous Scattering,Evans and Les lie eds.(Darsnbury,イギリス,SERC Daresbury Laboratory),56-62))によって 行われた。最初の分子同形置換(MIR)相の電子 密度マップは、2.0から2.8Åの分解データに基づいて計算した。このマップは溶 媒フラテニング、ヒストグラムマッチング及びDMを用いる非結晶学的対称(NCS) アベレージング(Cowtan,1994,“Protein Crystallography”,CCP4 and ESF- EACBM Newsletter(Joint)31:34-38)により改良された。 6.0-2.0Åデータに対するC2-AFGFR1構造の精製は、複合勾配最小化とX-PLORを 用いるシミュレートしたアニーリングによって進められた。厳しいNCSの限定は 、限定が上昇する点であるところの2.0Å分解のデータが精製に含まれるまで強 いられた。全体の異方性B値はX-PLORを用いて計算され、観察された構造因子へ 応用され、R値が〜3%減少した。B値が≧70Å2まで精製された水の分子は、こ れ以降の精製工程から省かれた。平均のB値は、すべての蛋白については37.5Å2 であり、FLGK-Aの蛋白原子については35.4Å2であり、FLGK-Bの蛋白原子につい ては39.7Å2であり、水分子については40.2Å2であった。FLGK-AとFLKG-BでのCy s-603及びFLGK-BでのMet-534の側鎖が、2つの異なるコンホメーションにおいて モデル化された。少ない支持の電子密度のため原子モデルに含まれない残基は、 FLGK-Aでは456-463、486-490、501-504、580-591、763-765であり、FLGK-Bでは4 56-460、501-504、578-593、646-651、657-659、762-765である。 2つのAMP-PCP分子(FGFR1分子については1つ)の位置は、2Foba(co-complex) −Fcalc(FGFR1)差フーリエマップで容易に同定された。FLGK-Bに結合するAMP-PC P分子は弱く結合しており、0.5の占有率でモデル化されている。 表5は、本発明の結晶性FGFR1と結晶性FGFR1:AMP-PCP共複合体の構造を決定す るために用いたFGFR1誘導体結晶のX線結晶学的データを要約したものである。表5 データ採取とMIR位相の要約 a:Thi-1,Thi-2:エチルメルクリチオサリチル酸(チメロサール);PCMB:4−クロ ロメルクリ安息香酸 b:Rsym=100×ΣhΣi|Ii(h)-<I(h)>|ΣhΣiIi(h) c:カッコの中の値は最高分解シェルに対するもの d:I(+h)およびI(-h)は独立した反射としてのもの。異常散乱の寄与も含まれる。 e:Riso=100×Σh‖Fp(h)±Fp(h)|−|FPH(h)‖/Σh|Fp(h)|、ここでFpとFPH はそれぞれ天然と誘導体の構造因子 f:位相力:r.m.s.重原子構造因子/r.m.s.閉鎖不足(20.0から2.8Åへの非中心的 反射による) g:Rcullis=100×Σh‖FPH(h)|−FH(calc)(h)|/Σh|FPH(h)±Fp(h)|(20.0か ら2.8Åへの非中心的反射による) h:性能係数:∫P(Φ)exp(iΦ)dΦ/∫P(Φ)d(Φ)、ここでPは位相角Φの確率分布 化合物1及び2並びにFGFR1を含む結晶については、50kVと100mAで作動し、2 重焦点鏡とR-AXIS IICイメージプレート検出器を備えたRigaku RU-200回転アノ ード(CuKα)を用いてデータを採取した。各データのセットについて1つの低温 冷却結晶を用いた。結晶は低温保護剤[25%のPEG10000、0.3Mの硫酸アンモニウ ム、5%のエチレングリコール、100mMのビス-トリス(pH6.5)、および1mMの3-[(3 -(2-カルボキシエチル)-4-メチルピロリル-5-イル)メチレン]-2-インドリノン( 以下では化合物1と称する)または3-[4-(4-ホルミルピペラジン-1-イル-)ベン ジリデニル]-2-インドリノン(以下では化合物2と称する)]に浸漬し、−175℃で 乾燥窒素気流中でフラッシュ冷却した。データはDENSOおよびSCALEPACKを用いて 処理した。Otwinowski,1993,Proceedings of the CCP4 Study Weekend(Dares bury,United Kingdom:SERC Daresbury Laboratory)pp.56-62。 データ採取パラメータの要約を次の表6に示す。 表6 化合物1の構造:残基550、水分子252、化合物2分子1(4589原子) 化合物2の構造:残基550、水分子248、化合物2分子2(4646原子)構造分析 原子重層をTOSS(Hendrickson,1979)を用いて行なった。残基については、溶媒 アクセス可能表面計算をX-PLORで行なった。ダイマー界面に埋もれている表面面 積は、1.4Åのプローブ半径を使ってGRASP(Nicholls et al.,1991)で計算した 。原子モデルの立体化学的品質は、PROCHECK(Laskowski et al.,1993,PROCHEC K: 蛋白構造の立体化学的品質をチェックするための電算機プログラム、J.Appl.C ryst.26:283.291)を使ってモニターを行なった。PROCHECKで定義されてい るように、モデルの中の93%の残基が、ほとんどの好ましいRamachandran領域で 主鎖ねじれ角をもっている。不許可領域には残基はなく、寛大な許可領域には3 つの残基がある。すなわち、FLGK-AとFLGK-BにはArg622、そしてFLGK-AにはArg- 554がある。全体でのG因子スコアは0.42である。 表7は、本発明の結晶性FGFR1:AMP-PCP共複合体と結晶性FGFR1の構造のX線結 晶学的精製パラメータを要約したものである。表8は、FGFR1/化合物複合体のXx 線結晶学的精製パラメータを要約したものである。 表7 精製のパラメータ FGFR1:残基550、水分子252(4589原子) FGFR1:AMP-PCP:残基550、水分子238、AMP-PCP分子2(4638原子) a:R値=100×Σh‖Fobs(h)|−|Fcalc(h)‖/Σh|Fobs(h)|、Fobs>2σの反射に 対して b:結合蛋白原子に対して 表8 a:Rsym=100×ShSi|Ii(h)−I(h)0|/ShSiIi(h) c:カッコの中の値は最高分解シェルに対するもの i:R値=100×Sh‖Fo(h)|−|Fc(h)‖/Sh|Fo(h)|、ここにFoとFcはそれぞれ構 造因子の理論値と実験値(Fo>2σ) j:結合蛋白原子に対して k:カッコの中の値は、5%のデータから定めた遊離のR値原子構造配位 表1および表2はそれぞれ、非リン酸化FGFR1および非リン酸化FGFR1:AMP-PCP 共複合体の原子構造配位を示すものである。これらの表において、不斉単位を含 むダイマーの両方のFGFR1分子の配位が示されている。アミノ酸残基数は、図3 において用いたものと一致している。ダイマーの最初のFGFR1分子では、残基番 号の前に”1”がつけられ、すなわちダイマーの最初のFGFR1分子の残基番号464 は、”1464”と表わされる。表3と4は、FGFR1機能を阻害することがわかった インドリノン化合物との複合体におけるFGFR1の原子構造配位を示す。 表においては次の略語が用いられている。 「原子タイプ」とは、配位が示されている元素を表わす。欄における最初の文 字が元素を表わしている。 「A.A.」はアミノ酸を表わす。 「X、YおよびZ」は、元素の直交座標を表わす。 「B」は、原子の中心の周辺の原子運動を測定する熱因子である。 「OCC」は占有率であって、原子タイプが特定の配位を占有する時間の百分率 を表わすものである。 「PRT1」および「PRT2」は占有率に関するものであって、PRT1は最初のコンホ メーションにある原子の配位を表わし、PRT2は2番目またはその他のコンホメ ーションにある原子の配位を表わす。 FGFR1の構造配位は、数学的操作によって修飾できる。そのような操作には、 粗構造配位の結晶学的並べ替え、粗構造配位の分画、粗構造配位セットへの整数 の追加または削除、粗構造配位の変換およびそれらの組み合わせなどが含まれる が、それらに限定されるものではない。 さらには、構造配位はわずかな修飾も可能であり、ほとんど同等の三次元構造 を尚も示している。そのために、特異な構造配位のセットは、得られる構造の2 乗平均偏差である。1.5Åより少ない2乗平均偏差だけ互いに偏移する三次元構 造を示す構造配位は、同等であるとみなされる。実施例2 PTK 機能のモジュレーターのコンピュータに基づく設計 PTK機能の潜在的なモジュレーターは、3-[(3-(2-カルボキシエチル)-4-メチル ピロール-5-イル)メチレン]-2-インドリノンでCatalystプログラムを作動させて 設計し同定した。調査モデルを拘束する化学的特性としては、水素結合ドナー、 水素結合アクセプター、および2つの疎水性接触点がある。この方法を用いるこ とでおよそ40個の化合物かPTK機能の潜在的モジュレーターと同定された。 この方法によりPTK機能の潜在的モジュレーターと同定された化合物は、商業 的に入手可能である。ついでこれらの化合物は、固相酵素免疫検定法(ELISA) でFLK PTKを阻害する能力のテストを行なった。この検定法を行なう方法は、Tan gほかによって発明され、1996年12月19日に発行された「疾患治療用インドリノ ン化合物」という名称のWO96/40116に記載されている。この特許はその中のデー タ、図面および表をも含め、そのすべてが参照によりここに包含される。Flk-1 特異性の抗体は、次のプロトコールで作成することができる。 1.トレシル活性化アガロース10mlを、重炭酸ソーダ緩衝液(pH9.6)100mM中の精 製GST-Flk-1-D融合蛋白20mgと共に、4℃で一晩培養することにより、トレシル活 性化アガロース/Flk-1-Dカラムを作成する。 2.そのカラムをPBSで一回洗浄する。 3.カラム上の余分な部位を、2Mグリシンにより4℃で2時間ブロックする。 4.カラムをPBSで洗浄する。 5.カラムを、ウサギの抗Flk-1D生産物出血で2時間4℃で培養する。 6.カラムをPBSで洗浄する。 7.100mMのクエン酸(pH3.0)で血清を溶出し、溶出液を直ちに2Mのトリス(pH 9.0)で中和する。 8.溶出液をPBSへ4℃で一晩透析する。ただし緩衝液は3回とりかえる(サンプ ルと緩衝液の比率は1:100である)。 9.透析した抗血清を5%グリセリンで調節し、少量のアリコートとして−80℃ で 貯蔵する。 Flk-1 ELISAは、100mMのクエン酸(無水の)、250mMのリン酸水素ナトリウム(pH 4.0)、0.5mg/mlのABTS(シグマのカタログ番号A-1888)を含有し得るところの2, 2-アジノ-ビス(3-エチルベンズ-チアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)溶液を含むこ とができる。この溶液は、使用直前まで暗所に4℃で貯蔵するのが最も適当であ る。 FLK-1特異的抗体は、Santa Cruz Biotechnology(カタログ番号SC-504)から購 入することもできる。 PTK機能の潜在的モジュレーターとして同定された40個の化合物のうち4つは 、FLK機能の強力なモジュレーターであった。これらの分子は次の構造をもって いる。 これらのモジュレーターは、次の様なIC50値でFLK蛋白を阻害する。 表9 以上において説明的に記載された本発明は、ここで具体的に開示されてない要 素や限定がなくても実施可能である。用いられた用語や表現は説明のためのもの であって、限定のためのものではなく、そのような用語や表現の使用は、記載さ れ説明された態様のいかなる均等物をも排除する意図はなく、種々の変形は本発 明の請求の範囲の中に入り得ると認識される。すなわち、本発明は好ましい実施 態様ならびに任意的な態様によって具体的に開示してきたけれども、ここに開示 した概念の変形および変化は当業者には実施可能であり、そのような変形や変化 はここに添付された請求の範囲で定義される本発明の範囲内にあると考えられる のは言うまでもない。 特許文献および非特許文献を含め、参照によりこれまでに包含されてない文献 は、すべての目的に対してここにはっきりと包含されるものである。他の実施態 様は以下の請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】平成10年10月27日(1998.10.27) 【補正内容】 本発明の他の好ましい態様は、3−[(3−(2−カルボキシエチル)−4− メチルピロール−2−イル)メチレン]−2−インドリノン、ならびに3−[4 −(4−フォルミルピペラジン−1−イル−)ベンジリデニル]−2−インドリ ノンを含む結晶形である。これらの結晶形のポリペプチドは、FGFRおよび特 にFGFR1であることが可能である。 好ましい態様においては、本発明の結晶形は、表3または表4に明らかにした 構造座標によって定義することができる。 X線結晶学の使用は、本発明の結晶形の三次元構造の解明を可能にする。結晶 形のX線結晶学による最初のキャラクタリゼーションで、単位格子形および結晶 におけるその方向性を測定することができる。 他の好ましい態様において、本発明は、単斜晶形の単位格子を有することによ って特徴づけられる、FGF受容体チロシンキナーゼドメインタンパク質の結晶 を特筆する。当該結晶はまた、空間群対称C2を有することによっても特性が規 定される。 「単位格子」という用語は、結晶の最も小さく最も単純な体積要素(すなわち 平行六面体ブロック)をさし、それは結晶パターンの単位を完全に代表する。単 位格子のディメンションは6個の数値により定義される;ディメンションa、b 、およびcと、角度α、β、およびγ。結晶は、数多くの単位格子が能率よく詰 まった配列として見ることができる。結晶学用語の詳しい説明は、本文中に参考 文献として取り入れた、図面、表、および図を含むすべてに記載されている。 第6B図は、細胞質チロシンキナーゼのサブファミリーの各々からの代表的な一 員を描いたものである。第6Aおよび6B図において、高度に保存されている残 基には囲みを入れてある。グリシンに富むドメイン、キナーゼ挿入、触媒ループ 、および活性化ループが示されている。番号づけは、ヒトFGF受容体について のものである。 結晶学的原子構造座標の簡単な説明 結晶学的構造座標は、「実施例」と題した章の終わり、かつ請求の範囲の前に 置かれている。三つの座標のセットは、1FGK、1AGW、および1FGIと いうアクセス名で、プロテインデータバンク(Protein Data Bank)に見い出され る。1FGK座標は、表1にリストしたものに対応し、1AGW座標は表4にリ ストしたものに対応し、1FGI座標は表3にリストしたものに対応する。1A GWおよび1FGI座標のセットは、1998年3月に公に入手できるであろう 。 表1は、X線結晶学により測定した本発明の天然のFGFR1結晶の原子構造 座標を提供しており; 表2は、X線結晶学により測定した本発明のFGFR1:AMP−PCPコク リスタルの原子構造座標を提供している。 表3は、3−[(3−(2−カルボキシエチル)−4−メチルピロール−2− イル)メチレン]−2−インドリノンと複合体を形成したFGFR1の三次元構 造を定義する結晶学的座標を列挙している。縦の列は(左から右へ)、原子の番 号およびタイプによる記述、アミノ酸および当該原子の含有数、x座標、y座標 、z座標、結合の連結度、および温度因子である。これらのパラメーターは、こ の技術においては十分定義されている。 2.0μlの10mg/mlの蛋白溶液ならびに2.0μlの貯溜溶液(16%のポリエリレングリ コール(PEF)10000、0.3Mの(NH4)2SO4、5%のエチレングリコール、および10mMの ビス-トリス(pH6.5))を含有する懸垂液滴のなかへ蒸気拡散させて4℃で結晶を 成長させた。 天然のFGFR1の結晶を、4℃で24-48時間、3-[(3-(2-カルボキシエチル)-4-メチ ルピロール-2-イル)メチレン]-2-インドリノン(1-5mM)または3-[4-(4-ホルミル ピペラジン-1-イル)-ベンジリデニル]-2-インドリノン(1mM)を含有する500mlの 安定剤溶液[25%のPEG10000、0.3Mの硫酸アンモニウム、0.1Mのビス-トリス(pH6 .5)、5%のエチレングリコール]へ浸漬した。DMSOの最終浸漬濃度は1%から5% の間であった。結晶は、高濃度のDMSOで破損した。 FGFR1と阻害剤との共結晶もまた、1mMの3-[(3-(2-カルボキシエチル)-4-メチ ルピロール-2-イル)メチレン]-2-インドリノンと3-[4-(4-ホルミルピペラジン-1 -イル)-ベンジリデニル]-2-インドリノンを含む2.0μlの貯溜溶液および2.0μl の10mg/mlの蛋白溶液を含む懸垂液滴のなかへ蒸気拡散させて得られた。 FGFR1とAMP-PCPが複合した共結晶は、蛋白溶液がさらに10mMのAMP-PCPと20mM のMgCl2を含んでいること以外は、天然の結晶作成で述べたのと同様にして得る ことができた。重原子誘導体結晶の製造 重原子誘導体結晶は、FGFR1天然結晶(C2-A型)を、上記の表1に示すようなエ チルメルクリチオサリチル酸(チメロサール)、KAu(CN)2もしくは4-クロロメル クリ安息香酸、並びに25%のPEG10000、0.3Mの硫酸アンモニウム、5%のエチレ ングリコールかグリセロール、及び100mMのビス-トリス(pH6.5)を含有する溶液 に浸漬することにより得られ、そして直接に液体窒素中(シンクロトロン)か、 または−175℃の乾燥窒素流(回転アノード)中でフラッシュ冷却した。 1.5Åより少ない2乗平均偏差だけ互いに偏移する三次元構造を示す構造配位は 、同等であるとみなされる。実施例2 PTK 機能のモジュレーターのコンピュータに基づく設計 PTK機能の潜在的なモジュレーターは、3-[(3-(2-カルボキシエチル)-4-メチル ピロール-2-イル)メチレン]-2-インドリノンでCatalystプログラムを作動させて 設計し同定した。調査モデルを拘束する化学的特性としては、水素結合ドナー、 水素結合アクセプター、および2つの疎水性接触点がある。この方法を用いるこ とでおよそ40個の化合物がPTK機能の潜在的モジュレーターと同定された。 この方法によりPTK機能の潜在的モジュレーターと同定された化合物は、商業 的に入手可能である。ついでこれらの化合物は、固相酵素免疫検定法(ELISA) でFLK PTKを阻害する能力のテストを行なった。この検定法を行なう方法は、Tan gほかによって発明され、1996年12月19日に発行された「疾患治療用インドリノ ン化合物」という名称のWO96/40116に記載されている。この特許はその中のデー タ、図面および表をも含め、そのすべてが参照によりここに包含される。Flk-1 特異性の抗体は、次のプロトコールで作成することができる。 1.トレシル活性化アガロース10mlを、重炭酸ソーダ緩衝液(pH9.6)100mM中の精 製GST-Flk-1-D融合蛋白20mgと共に、4℃で一晩培養することにより、トレシル活 性化アガロース/Flk-1-Dカラムを作成する。 請求の範囲 1. ポリペプチドを含む結晶形であって、前記ポリペプチドは蛋白質チロシン キナーゼの触媒ドメインからなり、前記蛋白質チロシンキナーゼは非インスリン レセプター蛋白質チロシンキナーゼであることを特徴とする結晶形。 2. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、E GF−R、PDGF−R、FLK、CCK4、MET、TRKA、AXL、TI E、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびMU SKからなる群より選択される、請求項1記載の結晶形。 3. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、P DGF−R、KDR、およびRETからなる群より選択される、請求項1記載の 結晶形。 4. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼであ る、請求項1記載の結晶形。 5. 前記非レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、SRC、BRK、BTK、 CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからなる 群より選択される、請求項4記載の結晶形。 6. 1つまたはそれ以上の重金属原子を含む、請求項1記載の結晶形。 7. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼがFGFRである、 請求項1記載の結晶形。 16. 前記インドリノン化合物が、3−[(3−(2−カルボキシエチル)− 4−メチルピロール−2−イル)メチレン]−2−インドリノンである、請求項 15記載の結晶形。 17. 前記インドリノン化合物が、3−[4−(4−ホルミルピペラジン−1 −イル)ベンジリデニル]−2−インドリノンである、請求項15記載の結晶形 。 18. 表3の原子構造配位により規定される、請求項16記載の結晶形。 19. 表4の原子構造配位により規定される、請求項17記載の結晶形。 20. 単斜晶系単位格子を有する、請求項1記載の結晶形。 21. 前記単斜晶系単位格子が、約a=208.3Å、b=57.8Å、c= 65.5Åおよびβ=107.2°の寸法を有する、請求項20記載の結晶形。 22. 前記単斜晶系単位格子が、約a=211.6Å、b=51.3Å、c= 66.1Åおよびβ=107.7°の寸法を有する、請求項20記載の結晶形。 23. 1つまたはそれ以上の重金属原子を含む、請求項10記載の結晶形。 24. 触媒ドメインの保存グリシンリッチ領域中の第1のグリシンの上流の約 20アミノ酸残基、および 触媒ドメインのC−末端境界に位置する保存アルギニンの下流の約17アミノ酸 残基 からなる境界を有する蛋白質チロシンキナーゼの触媒ドメインからなるポリペプ チドであって、前記蛋白質チロシンキナーゼが非インスリンレセプター蛋白質チ ロシンキナーゼであることを特徴とするポリペプチド。 25. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、 EGF−R、PDGF−R、KDR、CCK4、MET、TRKA、AXL、T IE、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびM USKからなる群より選択される、請求項24記載のポリペプチド。 26. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、 PDGF−R、KDR、およびRETからなる群より選択される、請求項25記 載のポリペプチド。 27. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼで ある、請求項24記載のポリペプチド。 28. 前記非レセプターキナーゼが、SRC、BRK、BTK、CSK、AB L、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからなる群より選択さ れる、請求項27記載のポリペプチド。 29. 配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、請求項24記載のポリペ プチド。 30. 請求項24記載のポリペプチドを使用して結晶を形成する方法であって 、 (a) ある容量のポリペプチド溶液を貯蔵溶液と混合し;そして (b) 工程(a)で得られた混合物を、閉鎖容器中で、結晶化に適する条件下 で貯蔵溶液上でインキュベートする、 の各工程を含む方法。 59. 前記レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、PDGF−R 、FLK、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、D DR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびMUSKからなる群より選択 される、請求項58記載の方法。 60. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼで ある、請求項55、56または57のいずれかに記載の方法。 61. 前記非レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、SRC、BRK、BTK 、CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからな る群より選択される、請求項60記載の方法。 62. 前記触媒ドメインが、 触媒ドメインの保存グリシンリッチ領域中の第1のグリシンの上流の約20アミ ノ酸残基、および 触媒ドメインのC−末端境界に位置する保存アルギニンの下流の約17アミノ酸 残基 からなる境界を有する、請求項1記載の結晶形。 63. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼがFGF−Rであ る、請求項26記載のポリペプチド。 64. 前記貯蔵溶液が、10%から30%のポリエチレングリコール、0.1 Mから0.5Mの硫酸アンモニウム、0%から20%のエチレングリコールまた はグリセロール、10mMから200mMの緩衝剤を含み、かつ約5.5から約 7.5のpHを有する、請求項30記載の方法。 65. ポリペプチドを含む結晶形であって、前記ポリペプチドは蛋白質チロシ ンキナーゼの触媒ドメインからなり、前記蛋白質チロシンキナーゼは非インスリ ンレセプター蛋白質チロシンキナーゼであり、前記結晶形は、 (a) ある容量のポリペプチド溶液を貯蔵溶液と混合し;そして (b) 工程(a)で得られた混合物を閉鎖容器内で結晶化に適当な条件下で貯 蔵溶液上でインキュベートする の各工程を含む方法により調製されることを特徴とする結晶形。 66. 前記貯蔵溶液が、10%から30%のポリエチレングリコール、0.1 Mから0.5Mの硫酸アンモニウム、0%から20%のエチレングリコールまた はグリセロール、10mMから200mMの緩衝剤を含み、かつ約5.5から約 7.5のpHを有する、請求項65記載の結晶形。 67. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、 EGF−R、PDGF−R、FLK、CCK4、MET、TRKA、AXL、T IE、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびM USKからなる群より選択される、請求項65記載の結晶形。 68. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、 PDGF−R、KDR、およびRETからなる群より選択される、請求項65記 載の結晶形。 69. 前記非インスリンレセプター蛋白質チロシンキナーゼがFGF−Rであ る、請求項68記載の結晶形。 70. 前記触媒ドメインが、触媒ドメインの保存グリシンリッチ領域中の第1 のグリシンの上流の約20アミノ酸残基、および触媒ドメインのC−末端境界に 位置する保存アルギニンの下流の約17アミノ酸残基からなる境界を有する、請 求項65記載の結晶形。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE ,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS, LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE ,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT, UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 サン,リ アメリカ合衆国カリフォルニア州94404, フォスター・シティ,ロックハーバー・レ ーン 64 (72)発明者 リィアン,ツォンシァン アメリカ合衆国カリフォルニア州94087― 2242,サニーヴェイル,ウエスト・レミン トン・ドライブ 726 (72)発明者 シュレシンガー,ジョゼフ アメリカ合衆国ニューヨーク州10011,ニ ューヨーク,ワシントン・スクエア・ウエ スト 37 (72)発明者 ハバード,スティーブン・アール アメリカ合衆国ニューヨーク州10471,リ バーデイル,シルヴァン・アベニュー 5465 (72)発明者 マクマホン,ジェラルド アメリカ合衆国カリフォルニア州95452, ケンウッド,シュルツ・ロード 1800 (72)発明者 タン,ペン・シー アメリカ合衆国カリフォルニア州94556, モラガ,カミノ・リカルド 827

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 蛋白質チロシンキナーゼの触媒ドメインに対応するポリペプチドの結晶形 。 2. 前記蛋白質チロシンキナーゼが、レセプター蛋白質チロシンキナーゼであ る、請求項1記載の結晶形。 3. 前記レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、PDGF−R、FLK、CC K4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS、 RET、LTK、ROR1、およびMUSKからなる群より選択される、請求項 2記載の結晶形。 4. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼであ る、請求項1記載の結晶形。 5. 前記非レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、SRC、BRK、BTK、 CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからなる 群より選択される、請求項4記載の結晶形。 6. 1つまたはそれ以上の重金属原子を含む、請求項1記載の結晶形。 7. 前記蛋白質チロシンキナーゼがFGFRである、請求項1記載の結晶形。 8. 前記FGFRがFGFR1である、請求項7記載の結晶形。 9. 表1に記載される原子構造配位により規定される、請求項8記載の結晶形 。 10. 少なくとも1つの化合物を含む、請求項7記載の結晶形。 11. 前記化合物がヌクレオチド類似体である、請求項10記載の結晶形。 12. 前記ヌクレオチド類似体がAMP−PCPである、請求項11記載の結 晶形。 13. 表2に記載される原子構造配位により規定される、請求項12記載の結 晶形。 14. 前記化合物がインドリノン化合物である、請求項10記載の結晶形。 15. 前記インドリノン化合物が式IまたはII:[式中、 (a) A1、A2、A3、およびA4は、独立して、炭素または窒素であり; (b) R1は、水素またはアルキルであり; (c) R2は、オキシインドリノンの場合には酸素であり、またはチオールイ ンドリノンの場合にはイオウであり; (d) R3は、水素であり; (e) R4、R5、R6、およびR7は、任意に存在し、 (i) 独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、 アルカリール、アルカリールオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、 SO2NRR’、SO3R、SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、 OC(O)R、NHC(O)R、(CH2nCO2R、およびCONRR’から なる群より選択される、または (ii) 任意の2つの隣接するR4、R5、R6、およびR7は、一緒になって、 インドリノンのオキシインドール系部分のアリール部分とともに縮合環を形成し ; (f) R2’、R3’、R4’、R5’、およびR6’は、それぞれ独立して、水 素、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカ リールオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、SO2NRR’、SO3 R,SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、OC(O)R、NHC (O)R、(CH2nCO2R、およびCONRR’からなる群より選択され; (g) nは、0、1、2、または3であり; (h) Rは、水素、アルキル、またはアリールであり; (i) R’は、水素、アルキル、またはアリールであり;および (j) Aは、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3 −トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール 、チアゾール、イソチアゾール、フラン、1,2,3−オキサジアゾール、1, 2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキ サジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサ トリアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1 ,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3,4−チ アトリアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、およびテトラゾールから なる群より選択される5員のヘテロアリール環であって、任意に1つまたはそれ 以上の位置においてアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカ リール、アルカリールオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、SO2 NRR’、SO3R、SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、OC( O)R、NHC(O)R、(CH2nCO2R、およびCONRR’で置換され ていてもよい] に記載される構造を有するか、またはその薬学的に許容しうる塩、異性体、代謝 産物、エステル、アミド、またはプロドラッグである、請求項14記載の結晶形 。 16. 前記インドリノン化合物が、3−[(3−(2−カルボキシエチル)− 4−メチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノンである、請求項 15記載の結晶形。 17. 前記インドリノン化合物が、3−[4−(4−ホルミルピペラジン−1 −イル)ベンジリデニル]−2−インドリノンである、請求項15記載の結晶形 。 18. 表3の原子構造配位により規定される、請求項16記載の結晶形。 19. 表4の原子構造配位により規定される、請求項17記載の結晶形。 20. 単斜晶系単位格子を有する、請求項1記載の結晶形。 21. 前記単斜晶系単位格子が、約a=208.3Å、b=57.8Å、c= 65.5Åおよびβ=107.2°の寸法を有する、請求項20記載の結晶形。 22. 前記単斜晶系単位格子が、約a=211.6Å、b=51.3Å、c= 66.1Åおよびβ=107.7°の寸法を有する、請求項20記載の結晶形。 23. 1つまたはそれ以上の重金属原子を含む、請求項10記載の結晶形。 24. 蛋白質チロシンキナーゼの触媒ドメインに対応するポリペプチドであっ て、触媒ドメインの保存グリシンリッチ領域中の第1のグリシンの上流に少なく とも約20アミノ酸残基を含み、かつ触媒ドメインのC末端境界に位置する保存 アルギニンの下流に少なくとも約17アミノ酸残基を含むことを特徴とするポリ ペプチド。 25. 前記蛋白質チロシンキナーゼがレセプター蛋白質チロシンキナーゼであ る、請求項24記載のポリペプチド。 26. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼで ある、請求項24記載のポリペプチド。 27. 前記レセプターチロシンキナーゼが、FGF−R、PDGF−R、KD R、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、 ROS、RET、LTK、ROR1、およびMUSKからなる群より選択される 、請求項25記載のポリペプチド。 28. 前記非レセプターキナーゼが、SRC、BRK、BTK、CSK、AB L、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからなる群より選択さ れる、請求項26記載のポリペプチド。 29. 配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、請求項24記載のポリペ プチド。 30. 請求項24記載のポリペプチドを使用して結晶を形成する方法であって 、 (a) ある容量のポリペプチド溶液を貯蔵溶液と混合し;そして (b) 工程(a)で得られた混合物を、閉鎖容器中で、結晶化に適する条件下 で貯蔵溶液上でインキュベートする、 の各工程を含む方法。 31. FGFレセプターチロシンキナーゼドメインポリペプチドを結晶形で得 る方法であって、 (a) ある容量のポリペプチド溶液を等量の貯蔵溶液と混合し、ここで前記ポ リペプチド溶液は、1mg/mLから60mg/mLのFGF型チロシンキナー ゼドメイン蛋白質、10mMから200mMの緩衝剤、0mMから20mMのジ チオスレイトールを含み、かつ約5.5から約7.5のpHを有し、および前記 貯蔵溶液は、10%から30%(w/v)のポリエチレングリコール、0.1M から0.5Mの硫酸アンモニウム、0%から20%(w/v)のエチレングリコ ールまたはグリセロール、10mMから200mMの緩衝剤を含み、かつ約5. 5から約7.5のpHを有し;そして (b) 工程(a)で得られた混合物を、閉鎖容器中で、前記貯蔵溶液上で0℃ から25℃の温度で、結晶が形成するまでインキュベートする、 の各工程を含む方法。 32. 前記ポリペプチド溶液は、約10mg/mLのFGFレセプターチロシ ンキナーゼドメイン、約10mMの塩化ナトリウム、約2mMのジチオスレイト ール、約10mMのTris−HClを含み、かつ約8のpHを有し;貯蔵緩衝 液は、約16%(w/v)のポリエチレングリコール(MW10000)、約0 .3Mの硫酸アンモニウム、約5%のエチレングリコールまたはグリセロール、 約100mMのビス−Trisを含み、かつ約6.5のpHを有し;および温度 が約4℃である、請求項31記載の方法。 33. 前記ポリペプチド溶液が化合物を含む、請求項31記載の方法。 34. FGFレセプターチロシンキナーゼドメイン蛋白質をコードするcDN Aであって、cDNAのコーディング鎖が配列番号5のヌクレオチド配列を有す ることを特徴とするcDNA。 35. 未知の構造を有する蛋白質チロシンキナーゼの3次元構造を決定する方 法であって、表1、表2、表3、または表4に記載される構造原子配位を適用す る工程を含む方法。 36. 以下の各工程: (a) 未知の構造の蛋白質チロシンキナーゼのアミノ酸配列の第1のコンピュ ータ表示と、既知の構造の蛋白質チロシンキナーゼの第2のコンピュータ表示を 、前記第1のコンピュータ表示のアミノ酸配列と前記第2のコンピュータ表示の アミノ酸配列の相同領域を合わせることにより並列させ; (b) 前記既知の構造の蛋白質チロシンキナーゼにおけるアミノ酸構造のコン ピュータ表示を、前記未知の構造の蛋白質チロシンキナーゼにおける対応するア ミノ酸構造のコンピュータ表示に移し;そして (c) 工程(b)から得られる蛋白質チロシンキナーゼ構造の低エネルギー配 座を決定する、 を含む、請求項35記載の方法。 37. 以下の各工程: (a) 2つの結晶からの電子回折データを合わせることにより、単位格子中の 原子の位置を並列させ;そして (b) 得られる蛋白質チロシンキナーゼ構造の低エネルギー配座を決定する、 を含む、請求項35記載の方法。 38. 以下の各工程: (a) NMRデータを用いて蛋白質チロシンキナーゼ構造の二次構造を決定し ;そして (b) アミノ酸のスルースペース相互作用の帰属を簡便化する、 を含む、請求項35記載の方法。 39. 既知の構造を有するかまたは有しない前記蛋白質チロシンキナーゼが、 レセプター蛋白質チロシンキナーゼである、請求項35、36、37または38 のいずれかに記載の方法。 40. 既知の構造を有するかまたは有しない前記レセプター蛋白質チロシンキ ナーゼが、FGF−R、PDGF−R、FLK、CCK4、MET、TRKA、 AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1 、およびMUSKからなる群より選択される、請求項39記載の方法。 41. 既知の構造を有するかまたは有しない前記蛋白質チロシンキナーゼが、 非レセプター蛋白質チロシンキナーゼである、請求項35、36、37または3 8のいずれかに記載の方法。 42. 既知の構造を有するかまたは有しない前記蛋白質チロシンキナーゼが、 SRC、BRK、BTK、CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、JA K、およびACKからなる群より選択される、請求項41記載の方法。 43. 化合物の構造のコンピュータ表示を、蛋白質チロシンキナーゼの活性部 位により形成される空洞の構造のコンピュータ表示と合体させることにより、蛋 白質チロシンキナーゼ機能の潜在的調節剤を同定する方法であって、前記蛋白質 チロシンキナーゼの前記構造が、表1、表2、表3、または表4に記載される原 子構造配位により規定されることを特徴とする方法。 44. 以下の工程: (a) 蛋白質チロシンキナーゼと錯化させた化合物のコンピュータ表示を除き 、コンピュータデータベースからの化合物のコンピュータ表示を蛋白質チロシン キナーゼの活性部位のコンピュータ表示と合体させ; (b) 工程(a)から得られた錯体の好都合な幾何学的適合および好都合な相 補的相互作用を有する配座を決定し;そして (c) 前記活性部位に最も良く適合する化合物を蛋白質チロシンキナーゼ機能 の潜在的調節剤として同定する、 を含む、請求項43記載の方法。 45. 以下の工程: (a) 1つまたは複数の化学基の削除、または1つまたは複数の化学基の付加 により、蛋白質チロシンキナーゼと錯化させた化合物のコンピュータ表示を改変 し; (b) 工程(a)から得られた錯体の、好都合な幾何学的適合および好都合な 相補的相互作用を有する配座を決定し;そして (c) 蛋白質チロシンキナーゼ活性部位に最も良く適合する化合物を蛋白質チ ロシンキナーゼ機能の潜在的調節剤として同定する、 を含む、請求項43記載の方法。 46. 前記方法が以下の工程: (a) 蛋白質チロシンキナーゼと錯化させた化合物のコンピュータ表示を除き ;そして (b) 化合物検索コンピュータプログラムを用いて、前記化合物に類似するデ ータベース化合物についてデータベースを検索するか、または化合物構築コンピ ュータプログラムを用いて、前記化合物の一部をデータベースからの類似の化学 構造で置き換える、 を含む、請求項43記載の方法。 47. 前記蛋白質チロシンキナーゼがレセプター蛋白質チロシンキナーゼであ る、請求項43、44、45または46のいずれかに記載の方法。 48. 前記レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、PDGF−R 、FLK、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、D DR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびMUSKからなる群より選択 される、請求項47記載の方法。 49. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼで ある、請求項43、44、45または46のいずれかに記載の方法。 50. 前記蛋白質チロシンキナーゼが、SRC、BRK、BTK、CSK、A BL、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからなる群より選択 される、請求項49記載の方法。 51. 請求項43、44、45または46のいずれかに記載の方法により同定 された蛋白質チロシンキナーゼ機能の潜在的調節剤。 52. 前記調節剤がコンピュータデータベースから選択される、請求項51記 載の潜在的調節剤。 53. 前記調節剤がコンピュータデータベースから選択される化学基から構築 される、請求項51記載の潜在的調節剤。 54. 前記調節剤が、式I、またはII: [式中、 (a) A1、A2、A3、およびA4は、独立して、炭素または窒素であり; (b) R1は、水素またはアルキルであり; (c) R2は、オキシインドリノンの場合には酸素であり、またはチオールイ ンドリノンの場合にはイオウであり; (d) R3は、水素であり; (e) R4、R5、R6、およびR7は、任意に存在し、 (i) 独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、 アルカリール、アルカリールオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、 SO2NRR’、SO3R、SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、 OC(O)R、NHC(O)R、(CH2nCO2R、およびCONRR’から なる群より選択されるか、または (ii) 任意の2つの隣接するR4、R5、R6、およびR7は、一緒になって、 インドリノンのオキシインドール系部分のアリール部分とともに縮合環を形成し ; (f) R2’、R3’、R4’、R5’、およびR6’は、それぞれ独立して、水 素、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール、アルカ リールオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、SO2NRR’、SO3 R、SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、OC(O)R、NHC (O)R、(CH2nCO2R、およびCONRR’からなる群より選択され; (g) nは、0、1、2、または3であり; (h) Rは、水素、アルキル、またはアリールであり; (i) R’は、水素、アルキル、またはアリールであり;および (j) Aは、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3 −トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール 、チアゾール、イソチアゾール、フラン、1,2,3−オキサジアゾール、1, 2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキ サジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサ トリアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1 ,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,3,4−チ アトリアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、およびテトラゾールから なる群より選択される5員のヘテロアリール環であり、任意に1つまたはそれ以 上の位置において、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカ リール、アルカリールオキシ、ハロゲン、トリハロメチル、S(O)R、SO2 NRR’、SO3R、SR、NO2、NRR’、OH、CN、C(O)R、OC( O)R、 NHC(O)R、(CH2nCO2R、およびCONRR’で置換されていても よい] のインドリノン化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体、代謝産物、 エステル、アミド、またはプロドラッグである、請求項51記載の蛋白質チロシ ンキナーゼ機能の潜在的調節剤。 55. 蛋白質チロシンキナーゼ機能の潜在的調節剤を蛋白質チロシンキナーゼ 機能の調節剤として同定する方法であって、 (a) 前記潜在的調節剤を細胞に投与し; (b) 潜在的調節剤を投与されていない細胞と前記潜在的調節剤を投与された 細胞との間の蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルを比較し;そして (c) 蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルの相違に基づいて、前記潜在 的調節剤を蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤として同定する、 の各工程を含む方法。 56. 蛋白質チロシンキナーゼ機能の潜在的調節剤を蛋白質チロシンキナーゼ 機能の調節剤として同定する方法であって、前記方法は、 (a) 前記潜在的調節剤の製剤を細胞に投与し; (b) 調節剤を投与されていない細胞と調節剤を投与された細胞との間の細胞 成長の速度を比較し;そして (c) 細胞成長の速度の相違に基づいて、前記潜在的調節剤を蛋白質チロシン キナーゼ機能の調節剤として同定する、 の各工程を含む方法。 57. 細胞性生物において不適切な活性を有する蛋白質チロシンキナーゼに関 連する疾患を治療する方法であって、前記方法は、 (a) 蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を生物に投与し、ここで前記調節 剤は許容しうる薬学的製剤中にあり;そして (b) 蛋白質チロシンキナーゼ機能を活性化または阻害して疾患を治療する、 の各工程を含む方法。 58. 前記蛋白質チロシンキナーゼがレセプター蛋白質チロシンキナーゼであ る、請求項55、56または57のいずれかに記載の方法。 59. 前記レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、FGF−R、PDGF−R 、FLK、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、D DR、ROS、RET、LTK、ROR1、およびMUSKからなる群より選択 される、請求項58記載の方法。 60. 前記蛋白質チロシンキナーゼが非レセプター蛋白質チロシンキナーゼで ある、請求項55、56または57のいずれかに記載の方法。 61. 前記非レセプター蛋白質チロシンキナーゼが、SRC、BRK、BTK 、CSK、ABL、ZAP70、FES、FAK、JAK、およびACKからな る群より選択される、請求項60記載の方法。
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