JP5078947B2 - 有極リレー - Google Patents

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Description

本発明は、有極リレーに関し、特に、いわゆるバランスアーマチュア型の有極リレーに関する。さらに本発明は、バランスアーマチュア型の有極リレーを備えた情報処理装置に関する。さらに本発明は、バランスアーマチュア型の有極リレーの製造方法に関する。
有極リレーにおいて、ベースと、ベースに組み込まれる電磁石と、電磁石に併設される永久磁石と、ベース上に揺動自在に支持され、揺動中心から離れた両端領域に、電磁石の一対の鉄心極面にそれぞれ接触可能に対向配置される一対の接触面を有する接極子と、ベース上で接極子に伴って揺動する少なくとも1つの導電性板ばねと、少なくとも1つの導電性板ばねの各々の両端に設けられる可動接点と、それら可動接点にそれぞれ接触可能に対向してベースに固定的に設置される複数の固定接点とを備えるものは、例えばバランスアーマチュア型有極リレーの呼称で知られている。この種の有極リレーは、無極リレーに比べて一般に高感度、短動作時間等の利点を有し、小形化及び低消費電力化が容易であることから、近年、オフィスや一般家庭におけるモデムやファクシミリ等の、電気通信回線に接続される種々の情報処理機器でも使用される傾向にある。
ところで、電気通信回線接続機器を電気通信回線(例えば電話回線)に接続する際には、国際規格であるIEC60950において使用電圧ごとに規定される絶縁距離で、接続機器の回路(電源回路、信号回路)と電気通信回線とを絶縁することが要求される。従来、このような規定による絶縁距離を確保するために、電気通信回線接続機器に搭載するリレーとして比較的大きな開放接点間隔(すなわち接極子動程中の接点間の最大間隔)を有する無極リレーを使用したり、接続機器の回路と電気通信回線との間にトランスを介在させたりする対策が講じられている。
IEC60950の規定に準ずるための上記した従来の絶縁対策は、電気通信回線接続機器の小形化及び低消費電力化の観点で、解決すべき幾つかの課題を有している。まず、接続機器に無極リレーを搭載する場合には、無極リレーは接極子の動程(トラベル)が長く製品外形寸法が比較的大きいので、接続機器の小形化及び低消費電力化を妨げる要因となり得る。これに対し、電気通信回線接続機器に前述した低消費電力型の有極リレーを搭載する場合、有極リレーは一般に開放接点間隔が小さいので、IEC60950の規定に従うべく、接続機器の回路と電気通信回線との間に介在するトランスを接続機器に搭載することになる。したがってこの場合、十分に小形の有極リレーを使用したとしても、トランスの存在により、結果として電気通信回線接続機器の小形化が妨げられることが懸念される。
さらに、IEC60950の規定に準ずるためには、電気通信回線接続機器に搭載されるリレーは、開放接点間の絶縁距離のみならず、例えば接点と電磁石のコイルとの間や、複回路型の場合には並設接点同士の間においても、十分な絶縁距離を確保することが所望される。特に、小形の有極リレーにおいては、このような種々の構成部品間における絶縁距離の確保が課題となっている。
本発明の目的は、いわゆるバランスアーマチュア型の有極リレーにおいて、電気通信回線接続機器に搭載したときに、それ自体の構造によってIEC60950の規定に準じ得る十分な絶縁距離を確保できる有極リレーを提供することにある。
本発明の他の目的は、いわゆるバランスアーマチュア型の有極リレーにおいて、製品の外形寸法の増加を可及的に抑制しつつ、開放接点間の絶縁距離を拡大できる有極リレーを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、いわゆるバランスアーマチュア型の有極リレーにおいて、製品の外形寸法の増加を可及的に抑制しつつ、接点−コイル間の十分な絶縁距離を確保できる有極リレーを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、いわゆるバランスアーマチュア型の複回路型有極リレーにおいて、製品の外形寸法の増加を可及的に抑制しつつ、並設接点間の十分な絶縁距離を確保できる有極リレーを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、電気通信回線に接続したときにIEC60950の規定に準じ得る十分な絶縁距離を確保できる小形かつ低消費電力型の情報処理装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、ベースと、ベースに組み込まれる電磁石と、電磁石に併設される永久磁石と、ベース上に揺動自在に支持され、揺動中心から離れた両端領域に、電磁石の一対の鉄心極面にそれぞれ接触可能に対向配置される一対の接触面を有する接極子と、ベース上で接極子に伴って揺動する少なくとも1つの導電性板ばねと、少なくとも1つの導電性板ばねの各々の両端に設けられる複数の可動接点と、複数の可動接点にそれぞれ接触可能に対向してベースに固定的に設置される複数の固定接点とを具備する有極リレーにおいて、接触子は、ベース上で揺動する接極子の平衡状態において一対の鉄心極面に平行な主平面をさらに有し、接極子の一対の接触面の各々が、電磁石の一対の鉄心極面の各々との相互接触時の対面角度を低減するように、主平面に対して傾斜する傾斜面として形成され、主平面に対する一対の接触面の各々の傾斜角度が、相互接触時の主平面と一対の鉄心極面の各々との成す角度以下であり、接極子の揺動中で互いに接触可能な1つの可動接点と1つの固定接点との間の最大間隔が1mm以上に設定されていること、を特徴とする有極リレーを提供する。
適な態様において、電磁石、鉄心と、一対の鉄心極面を露出させて鉄心に取り付けられる絶縁巻枠と、絶縁巻枠に巻き付けられるコイルとを備え、ベース、接極子とコイルとの間に介在する絶縁上板であって、絶縁巻枠と協働して一対の鉄心極面とコイルとの間の絶縁距離を拡大する絶縁上板と、絶縁上板と協働して、固定接点をそれぞれに有する複数の端子とコイルとの間の絶縁距離を拡大する絶縁底板とを備え、絶縁巻枠と絶縁上板とが、一対の鉄心極面とコイルとの間の位置で互いに相補的に組み合わされる組合せ部分を有し、絶縁上板と絶縁底板とが、複数の端子とコイルとの間の位置で互いに相補的に組み合わされる。
この場合、絶縁上板と絶縁底板との相補的組合せ部分に、相補的組合せ部分の隙間を封止する封止剤を被着することが好ましい。
の好適な態様において、絶縁上板は、電磁石の一対の鉄心極面と複数の固定接点との間の位置に配置される溝を有し、溝の内面に、複数の固定接点の各々に対して陰になる絶縁表面領域が設けられる。
本発明の実施の形態による有極リレーの分解斜視図である。 図1の有極リレーにおけるベースの上板部材の拡大斜視図である。 図1の有極リレーにおける電磁石の拡大斜視図である。 図3の電磁石の縦断面図である。 図3の電磁石の平面図である。 図1の有極リレーにおける接極子と導電性板ばねとの組立体の拡大斜視図である。 図6の組立体の平面図である。 (A)従来の有極リレーにおける接点開成時の接極子の位置を示す概略正面図、(B)図1の有極リレーにおける接点開成時の接極子の位置を示す概略正面図、(C)図1の有極リレーにおける接点閉成時の接極子の位置を示す概略正面図である。 (A)図8(C)における接極子と鉄心との相互接触形態を示す拡大図、(B)接極子と鉄心との好ましくない相互接触形態を示す拡大図である。 図6に示す接極子の先端領域の拡大図である。 (A)図9の接極子の製造方法におけるプレス前の段階を示す概略正面図、(B)図9の接極子の製造方法におけるプレス後の段階を示す概略正面図である。 図1の有極リレーの全体構造を示す断面図である。 図1の有極リレーにおける磁気回路の変形例を示す概略図である。 図1の有極リレーにおけるベースと電磁石との組立体の図で、図15の線XIV−XIVに沿った断面図である。 図14の組立体の線XV−XVに沿った断面図である。 図1の有極リレーにおけるベースの底板部材の拡大斜視図である。 図14の組立体の線XVII−XVIIに沿った断面図である。 図14の組立体の底面図である。 (A)図1の有極リレーにおける接点−コイル間の間接絶縁壁構造を示す概略図、(B)図1の有極リレーにおける接点−コイル間の間接絶縁溝構造を示す概略図である。 本発明の一実施形態による情報処理装置の構成を示す概略回路図である。 本発明の他の実施形態による情報処理装置の構成を示す概略回路図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は本発明の実施の形態による有極リレー10を示す。図示実施形態による有極リレー10は、例えばモデムやファクシミリ等の、電気通信回線に接続される情報処理装置で使用可能な、小形かつ低消費電力型のバランスアーマチュア構造を有するものである。
図1に示すように、有極リレー10は、ベース12と、ベース12に組み込まれる電磁石14と、電磁石14に併設される永久磁石16と、ベース12上にシーソー式に揺動自在に支持され、揺動中心から離れた両端領域に、電磁石14の一対の鉄心極面18にそれぞれ接触可能に対向配置される一対の接触面20を有する接極子22と、ベース12上で接極子22に伴って揺動する2個の導電性板ばね24と、それら導電性板ばね24の各々の両端に設けられる可動接点26と、それら可動接点26にそれぞれ接触可能に対向してベース12に固定的に設置される複数の固定接点28とを備えて構成される。
ベース12は、各々が電気絶縁性の樹脂成形品である上板部材30と底板部材32とを互いに組み合わせて構成され、それら上板部材30と底板部材32とによって画定される内部空間に、電磁石14が固定的に収容される。ベース12の上板部材30は、電磁石14の主として上側を被覆する略直方体のケース半体であり、その上面の長手方向両端領域に、電磁石14の一対の鉄心極面18を露出させて受容する一対の開口部34が貫通形成されるとともに、その上面の中央領域に、接極子22の揺動支点となる2個の支持台36が一体的に立設される。ベース12の底板部材32は、電磁石14の主として下側を被覆する略直方体のケース半体である。
上板部材30の上面にはさらに、長手方向へ延びる各側縁に沿って、長手方向両端に位置する一対の固定接点28と、それら固定接点28の間で略中央に位置する1個の共通接点38とが、互いに離隔絶縁して整列配置される。図2に明示するように、これら固定接点28及び共通接点38は、両開口部34を結ぶ上面中心線30aに関して対称に配置され、中心線30aのそれぞれの側で、メーク接点28a、ブレーク接点28b及びコモン接点38を構成する。したがって有極リレー10は、2回路型のリレーとなっている。
各固定接点28及び各共通接点38は、それぞれに独立した固定端子40及び共通端子42の一端に担持される。それら固定端子40及び共通端子42は、例えば上板部材30の成形時にインサートとして型(図示せず)内に配置することにより、上板部材30に一体的かつ固定的に組み込まれる。各固定端子40及び各共通端子42は、上板部材30の各側面から下方に延出する脚40a、42aを備える。上板部材30にはさらに、後述する電磁石14のコイルに接続される一対のコイル端子44が、例えばインサート成形工程により一体的かつ固定的に組み込まれる。各コイル端子44は、上板部材30の下方に延出する脚44aを備える。それら固定端子40、共通端子42及びコイル端子44の脚40a、42a及び44aは、互いに実質的平行に配置される。
電磁石14は、鉄心46と、一対の鉄心極面18を露出させて鉄心46に取り付けられる巻枠48と、巻枠48に巻き付けられるコイル50とを備えて構成される。図3〜図5に示すように、鉄心46は、略矩形平板状の基部46aと、基部46aの長手方向両端から基部46aに略直交して一体的に延長される一対の腕部46bとを備え、それら腕部46bの先端面にそれぞれ鉄心極面18が形成される。このような鉄心46は、例えば磁性鋼板を所定形状に打ち抜いた後に、U字状に曲げることにより形成できる。
巻枠48は、電気絶縁性の樹脂成形品であり、例えばその成形時に鉄心46をインサートとして型(図示せず)内に配置することにより、鉄心46に一体的かつ固定的に取り付けられる。巻枠48は、鉄心46の基部46aの大部分を被覆する中間部分48aと、鉄心46の両腕部46bの大部分を被覆する一対の端部分48bと、それら中間部分48aと両端部分48bとの連結領域に形成される一対の鍔部分48cを一体的に有する。コイル50は、鉄心46の幅方向へ延びる中心線46cに関して対称配置で巻枠48の中間部分48aに巻着され、両鍔部分48cの間に固定的に保持される。鉄心46の両腕部46bは、巻枠48の両端部分48bを貫通して上方に突出し、鉄心46の中心線46cに関して対称配置で同一仮想平面上に一対の鉄心極面18を配置する。
なお、巻枠48の一方の端部分48bには、コイル50に接続される一対の端子52(図3)が、例えばインサート成形工程により一体的に設置される。それら端子52は、電磁石14をベース12の上板部材30と底板部材32との間に収容する際に、上板部材30に組み込まれた一対のコイル端子44に、それぞれ例えば溶接により固定的に接続される。
接極子22は、例えば磁性鋼板から所定形状に打ち抜いて形成される平板状部材であり、その一方の面(図1で下面)の長手方向両端領域にそれぞれ接触面20が形成される。図6及び図7に示すように、接極子22は、長手方向中央に位置する揺動中心22aに関して対称な形状を有し、接触面20の間の中間領域22bで、同様に対称形状を有する絶縁部材54に埋設される。接極子22は、絶縁部材54を介して、2個の導電性板ばね24に相互絶縁状態で一体的に連結される。
絶縁部材54は、電気絶縁性の樹脂成形品であり、例えばその成形時に接極子22及び2個の導電性板ばね24をインサートとして型(図示せず)内に配置することにより、それら接極子22及び導電性板ばね24に一体的かつ固定的に取り付けられる。絶縁部材54には、ベース12の上板部材30に対向するその底面54aの中央に、永久磁石16を受容可能な矩形の貫通穴56が形成される。略矩形板状の永久磁石16は、その上下面が異極になるように厚み方向へ着磁され、それ自体の磁気吸引力により、絶縁部材54の貫通穴56に露出する接極子22の中央部分に固着される。絶縁部材54にはさらに、貫通穴56の横方向両側で長手方向中央に、ベース12の上板部材30に突設した一対の支持台36をそれぞれに受ける一対の座部58が設けられる。したがって、それら座部58を結ぶ線分は実質的に、接極子22の揺動中心22aに一致する。
なお図示実施形態では、永久磁石16は上記したように接極子22とともに揺動する構成としたが、本発明はこれに限らず、ベース12の上板部材30に永久磁石を固定的に設置する構成を採用することもできる。この場合、永久磁石は、その長手方向中央部分が、両鉄心極面18に隣接するその長手方向両端部分に対して異極になるように、長手方向へ着磁される。
各導電性板ばね24は、例えば銅板から所定形状に打ち抜いて形成される薄板部材であり、その長手方向両端に形成された可動ばね部分60の一方の面(図6で下面)に、それぞれ可動接点26が担持される。それら可動接点26は、ベース12の上板部材30に設けた固定接点28のメーク接点28a及びブレーク接点28bに対応して、それぞれメーク接点26a及びブレーク接点26bを構成する(図7)。なお、各可動ばね部分60は、接点閉成時の所望の接圧を得るべく二股に形成される。各導電性板ばね24は、両端の可動ばね部分60の間の中間部分で絶縁部材54に実質的に埋設される。それにより両導電性板ばね24は、接極子22の両接触面20を結ぶ中心線22cに関して対称に、かつ接極子22に対して横方向に離間して並列に配置される。
各導電性板ばね24の中間部分の中央には、接極子22の揺動中心22a上で絶縁部材54から側方へ延長されるヒンジばね部分62が一体的に連結される。各ヒンジばね部分62は、揺動中心22aに関してメーク接点26a側へU字状に延びるとともにブレーク接点26b側で終端し、その末端62aで、ベース12の上板部材30に設けた各共通接点38に例えば溶接により固定される。
このように、絶縁部材54を介して一体化された接極子22及び2個の導電性板ばね24は、前述したように電磁石14を収容した組立構造のベース12に対し、絶縁部材54の底面54aに設けた一対の座部58をベース12の上板部材30に突設した一対の支持台36にそれぞれ載置するとともに、両導電性板ばね24のヒンジばね部分62の末端62aを上板部材30に設けた2個の共通接点38にそれぞれ固定することにより組付けられる。このとき、各導電性板ばね24の両端の可動接点26は、ベース12の上板部材30に設けた対応の固定接点28に対向配置される。そして、電磁石14による磁束と永久磁石16による磁束との相互作用下で、接極子22及び2個の導電性板ばね24が一体的に揺動し、それに伴いメーク接点26a、28a及びブレーク接点26b、28bを選択的に開閉する。なお、両導電性板ばね24は、対応のメーク固定接点28a及びブレーク固定接点28bを選択的に共通接点30に導通させるとともに、それぞれのヒンジばね部分62で、接極子22及び両導電性板ばね24をブレーク側に付勢するように作用する。このようにして組み立てられたリレー組立体を、図1に示す外箱64に収納して、外箱64の下面に形成される隙間を封止することにより、有極リレー10が完成する。
本発明に係る有極リレー10は、それ自体、モデムやファクシミリ等の電気通信回線接続型の情報処理装置に搭載したときに、前述したIEC60950の規定に準じ得る十分な絶縁距離を確保するための特徴的構成を有するものである。
IEC60950(1999年)の2.10.3.2では、回路間の絶縁距離は、商用交流供給電圧150V以下に対し1mm以上、同150V超300V以下に対し2mm以上を確保することが規定されている。この規定に準ずるべく、有極リレー10は、接極子22の動程中、互いに接触可能な可動接点26と固定接点28との間の最大間隔(すなわち開放接点間隔)が、1mm以上となるように構成される。従来、小形/低消費電力のバランスアーマチュア構造を有する有極リレーでは、開放接点間隔は0.3mm〜0.5mm程度に抑えられていたが、本発明に係る有極リレー10では、後述する種々の特徴的構成を採用することにより、小形/低消費電力の特性を維持しつつ、1mm以上の開放接点間隔を確保できるようになっている。
まず、開放接点間の絶縁距離を拡大するために、有極リレー10においては、接極子22の動程(すなわち揺動角度)を従来の有極リレーに比べて拡大すると同時に、平板状の接極子22の両端領域の厚み(すなわち揺動方向寸法)を、接極子22の長手方向両端に向けて徐々に減少させ、それにより接極子22の一対の接触面20の双方を、主平面22d(図8(B))に対する傾斜面として形成している。他方、電磁石14の一対の鉄心極面18は、磁性鋼板から打ち抜いたときの形状を有し、したがって平衡状態にある接極子22の主平面22に実質的平行な水平面として形成される。後述するように、傾斜面からなる接触面20は、鉄心極面18との相互接触時の対面角度を可及的に低減するように形成される。
図8(A)〜(C)に模式図的に示すように、接極子22の動程Tを拡大した結果、例えば接極子22の非動作時(すなわちブレーク接点閉成時)に、メーク可動接点26aとメーク固定接点28aとの間の空間的な距離は、従来の有極リレー(図8(A))に比べて拡大され、したがって十分な絶縁距離が確保される(図8(B))。図示しないが、接極子22の動作時(すなわちメーク接点閉成時)のブレーク可動接点26bとブレーク固定接点28bとの間の距離も、同様にして拡大される。このとき、図8(C)に示すように、接極子22の各接触面20が鉄心極面18との相互接触時の対面角度を可及的に低減する傾斜面として形成されているので、メーク可動接点26aとメーク固定接点28aとが閉成している間の、接触面20と鉄心極面18との間の空隙寸法は可及的に縮小される。その結果、接極子22の動程Tを拡大したにも関わらず、メーク接点閉成時の磁気抵抗が低減されて、磁気吸引力の低下が防止される。またこの構成では、接極子22の両端領域の厚みを徐々に減少させているので、接極子22を動作させるための電磁石14による磁気吸引力の低下は最小限に抑制される。
接極子22はさらに、接極子22の主平面22dに対する各接触面20の傾斜角度をα(図8(B))、相互接触時の接極子22の主平面22dと各鉄心極面18との成す角度をβ(図8(C))としたときに、α≦βの関係を有するように構成される。この寸法関係により、接極子22はその揺動中、各接触面20が対応の鉄心極面18に平行に対向する位置を必ず通るようになる。接触面20と鉄心極面18とが平行に対向する位置は、磁気吸引力が接触面20の全体に均一に作用する最高効率位置であるから、上記接触関係を実現することにより、接極子22はこの最高効率位置を必ず通って安定的に動作することになる。
またこの構成では、接極子22は鉄心極面18に接触する際に、図9(A)に示すように、接触面20が揺動中心22aに関し鉄心極面18の外側の角部18aに少なくとも接触することになる。その結果、接極子22の接触面20が鉄心極面18に接触している間も、接極子22の先端近傍領域まで磁束が到達するので、接触面20の全体に効率良く磁気吸引力を発生させることができる。これに対し、図9(B)に示すように、接触面20が鉄心極面18の内側の角部18bに接触する場合には、磁束が接極子22の先端領域まで到達せず、接触面20の全体に効率良く磁気吸引力を発生させることが困難になる。
さらに上記構成においては、接極子22の接触面20を傾斜面としたことにより、主平面22dに平行な接触面を構成した場合(図8(C)に破線で示す)に比べて、対応の鉄心極面18の位置を接触面20に近づけることができる。その結果、接極子22の動程Tの拡大に伴う有極リレー10の製品全体の高さの増加を、最小限に抑制することができる。
なお、接極子22の接触面20は、例えばプレス工程により、所望角度αを有する傾斜面して形成できる。また、接極子22の接触面20を傾斜面とする代わりに、或いはそれに加えて、電磁石14の鉄心極面18を後加工して、平衡状態にある接極子22の主平面22dに対して傾斜する傾斜面として形成することもできる。この場合も、接触面20と鉄心極面18との相互接触時の対面角度が可及的に低減され、しかも接極子22の揺動中、接触面20が対応の鉄心極面18に平行に対向する位置を通るように構成することが有利である。
ところで、有極リレー10を、電磁石14の励磁解除時にメーク接点閉成状態から自動的にブレーク接点閉成状態へ移行できる自己復帰型のリレーとして構成する場合は、起磁力0アンペアのときに永久磁石16によって電磁石14の両鉄心極面18と接極子22の両接触面20との間に作用する磁気吸引力を、メーク側がブレーク側よりも小さくなるように構成する必要がある。そのために、図10に示すように、接極子22のメーク側の接触面20に非磁性層66を形成することが有利である。非磁性層66は、例えば銅、ステンレス等の非磁性材料を、接極子22の表面に例えば溶接することにより形成できる。
上記構成において、メーク側磁気吸引力を正確に調整するためには、接極子22の接触面20の全体に、均一厚みの非磁性層66を形成することが望ましい。ところが、接極子22の接触面20に非磁性層66を形成した後に、上記したようにプレス工程により接触面20を傾斜面に加工すると、非磁性層66の厚みもまた接極子22の長手方向先端に向かって徐々に薄くなってしまう。或いは、傾斜面とした接触面20に後工程で非磁性層66を溶接する場合には、溶接不良が発生し易く、安定して作製することが困難である。
そこで有極リレー10では、以下の特徴的方法により、接極子22を作製している。まず、図11(A)に示すように、平坦な第1面67と、第1面67に平行な主平面部分68a及び主平面部分68aに鈍角に交差して第1面67に徐々に接近する方向へ延びる傾斜面部分68bを有する第2面68とを備える磁性板69を用意する。磁性板69の傾斜面部分68bには、作製される接極子22の接触面20の構成(寸法、形状、角度等)に一致する構成が予め付与される。次いで、磁性板69の第1面67の、傾斜面部分68bの反対側に位置する領域に、全体に均一な厚みtを有する非磁性層66を形成する。
次に、磁性板69の第2面68を平坦な支持面Sに対向させて、磁性板69を支持面S上に固定的に載置し、この状態で図示のように、第1面67の非磁性層66を含む領域を圧力Pでプレスする。そして、非磁性層66の表面の所望範囲が、第2面68に形成されていた傾斜面部分68bの鏡像形状を呈するとともに、その結果として傾斜面部分68bが主平面部分68aと共通の平面上に移行するまで、磁性板69を変形させる。この間、磁性板69の被プレス領域は、それ自体の厚みが変わることなく材料を変位させるので、非磁性層66の厚みtも全体に均一な状態に維持される。このようにして、均一厚みの非磁性層66を有する傾斜面が、磁性板69の第1面67側に形成される(図11(B))。この非磁性層66を有する傾斜面の形状は、接極子22の接触面20の形状に一致するものとなるから、磁性板69の余剰部分を実線Aに沿って切除することにより、全体に均一厚みの非磁性層66を有する傾斜接触面20を備えた接極子22が作製される。
ここで、上記構成の具体例における各構成部分の概略寸法を以下に列記する。図12において、接極子22の長手方向全長L=17.8mm、接極子22の揺動中心22aと鉄心極面18の外側の角部18aとの間の距離D=8.6mm、鉄心極面18と揺動中心22aとの高さの差H1=1.27mm、揺動中心22aから8.6mmの位置における接触面20と主平面22dとの高さの差H2=0.2mm、メーク側の接触面20における非磁性層66の厚みt=1.0mm、各接触面20の傾斜角度α=約7.7°で、上記構成を実現する。このとき、接極子22は揺動中心22aの周りで約9.9°の角度に渡って揺動し、接点閉成時には各接触面20が対応の鉄心極面18の外側の角部18aに接触する。
有極リレー10を自己復帰型のリレーとして構成する他の方策として、図13に模式図的に示すように、接極子22の下面に固定される永久磁石16を、揺動中心22aに関しブレーク側に偏らせて配置することができる。これにより、永久磁石16による磁束密度が、メーク側の鉄心極面18におけるよりもブレーク側の鉄心極面18において大きくなるので、起磁力0Aのときのメーク側磁気吸引力をブレーク側磁気吸引力よりも小さくすることができる。なおこの構成は、上記した接触面20に非磁性層66を形成する構成の代わりに、或いはそれに加えて採用できる。
次に、2回路型の有極リレー10においては、接極子22を挟んで並列に配置される2個の導電性板ばね24の間で、それぞれの可動メーク接点26a同士の絶縁距離及び可動ブレーク接点26b同士の絶縁距離を十分に確保することが要求される。ところが、上記したように開放接点間の絶縁距離を拡大すべく接極子22の動程を拡大すると、接極子22をブレーク側に付勢するヒンジばね62に、必要なばね力を発揮し得る比較的細長い蛇行形状(図7)を付与する必要性が生じる。このような構成で、2個の導電性板ばね24の互いに対応する並設接点同士の、特に接極子22を介した短絡に対して絶縁距離を確保しようとすると、接極子22と各導電性板ばね24との空間的間隔を拡大することになるので、接極子22の両側方へ突出するヒンジばね62の形状に起因して、有極リレー10の全体の幅方向寸法が増大する危惧がある。
そこで有極リレー10では、図7に示すように、接極子22と2個の導電性板ばね24とを一体化する絶縁部材54が、接極子22の長手方向両端領域に向かって延びる一対の延長部分70を有して、接極子22の中間領域の大部分を被覆するように構成されている。これら延長部分70は、各導電性板ばね24の長手方向両端領域を突出させる絶縁部材54の長手方向両端面54bから、接極子22の中間部分22bに沿って一体的に延設され、絶縁部材54の外部に露出する接極子22の長手方向両端領域と各導電性板ばね24の長手方向両端領域との間の絶縁距離を、沿面的に拡大するように作用する。したがって、図示のように各導電性板ばね24を、両端の可動ばね部分60から絶縁部材54の両端面54bに至る範囲で、絶縁部材54の両延長部分70に徐々に接近する形状に形成できる。すなわち各導電性板ばね24は、絶縁部材54の両端面54bから突出する基端部分24aで、両可動接点26と接極子22の両接触面20との幅方向間隔よりも小さな幅方向間隔を、絶縁部材54の両延長部分70との間に有して配置される。その場合にも、各導電性板ばね24の露出部分と接極子22の露出部分との絶縁距離は、空間的にも沿面的にも十分に確保されることになる。
このような構成によれば、図示のように2個の導電性板ばね24の中間部分同士の間隔を可動ばね部分60同士の間隔に比べて狭めた形態であっても、両導電性板ばね24の接点同士の特に接極子22を介した短絡に対し、絶縁距離を十分に確保することができる。このとき、各導電性板ばね24の長手方向中央から接極子22の側方へ突出するヒンジばね62が比較的細長い蛇行形状を有するにも関わらず、両導電性板ばね24の中間部分同士の間隔が狭まっているから、有極リレー10の製品全体の幅方向寸法の増大を抑制することができる。
上記構成は、接極子22が前述した傾斜接触面20を有する構成において、特に有利に作用する。この構成では、絶縁部材54に埋設される接極子22の中間領域22bの厚み(揺動方向寸法)が、接触面20を有する両端領域の厚みに比べて大きいので、接極子22を通る磁束密度に影響を及ぼさない範囲で、揺動方向に直交する幅方向への接極子22の寸法を、中間領域22bが両端領域よりも小さくなるように形成できる。したがって、2個の導電性板ばね24の中間部分同士の間隔を可動ばね部分60同士の間隔に比べて一層顕著に狭めることができ、以って有極リレー10の小形化に寄与することができる。
次に、接点−コイル間の絶縁距離を確保するために、有極リレー10においては、電磁石14の鉄心46及び接極子22を介した接点26、28とコイル50との間の間接的短絡と、接点26、28とコイル50との間の直接的短絡との双方に対して、十分な絶縁距離を確保できる構成を採用している。まず間接的短絡に対しては、接極子22と電磁石14のコイル50との間に介在するベース12の上板部材30と、電磁石14の巻枠48との双方に、鉄心46の一対の鉄心極面18とコイル50との間の位置で互いに相補的に組み合わされる組合せ部分を設けている。それにより、それら上板部材30と巻枠48とが互いに協働して、両鉄心極面18とコイル50との間の絶縁距離を拡大する。
具体的には、図4、図5、図14及び図15に示すように、電磁石14の巻枠48には、鉄心46の各腕部46bの大部分を被覆する各端部分48bと、中間部分48aと各端部分48bとの連結領域にある各鍔部分48cとの間に、電磁石14の幅方向へ延びる溝72が形成され、さらに各端部分48bには鉄心46の各腕部46bの幅方向両側に、溝72に連通する溝74がそれぞれ形成される。これに対し、ベース12の上板部材30には、上板部材30と底板部材32との間の内部空間に向かって突出する板壁76、78が、それぞれ巻枠48の溝72、74に対応する位置で溝72、74に挿入可能な形状及び寸法を有して形成される。そこで、前述したように電磁石14を内部空間に収容して上板部材30と底板部材32とを組み合わせると、上板部材30の各板壁76、78は、巻枠48の対応の各溝72、74に受容されて相補的に組み合わされ、それにより鉄心46の各腕部46bの露出部分を三方から包囲する。このような相補的組合せ構造によれば、有極リレー10の外形寸法を実質的に増加させることなく、両鉄心極面18とコイル50との間に十分な沿面距離を確保することができる。
上記構成に関連して、電磁石14の鉄心46には、一対の腕部46bの先端の鉄心極面18の近傍に、巻枠48の両端部分48bの表面から外側へ僅かに張り出す張出部分80が形成される(図4)。これら張出部分80は、鉄心46をインサートとした巻枠48の成形工程において、型(図示せず)内の所定位置に鉄心46を位置決め支持するための被支持部分として有効に利用できる。この構成によれば、成形された巻枠48は、一対の鉄心極面18と、張出部分80を含むそれら鉄心極面18の周辺領域とを除いて、鉄心46の実質的全体を被覆するようになる。その結果、鉄心極面18とコイル50との間の絶縁距離を拡大する上記構成を採用しさえすれば、鉄心46とコイル50との間を確実に絶縁することができる。
接点−コイル間の直接的短絡に対しては、ベース12の上板部材30と底板部材32との双方に、上板部材30に組み込まれる複数の端子40、42、44と電磁石14のコイル50との間の位置で互いに相補的に組み合わされる組合せ部分を設けている。それにより、それら上板部材30と底板部材32とが互いに協働して、固定接点28及び共通接点38をそれぞれに有する複数の端子40、42、44とコイル50との間の絶縁距離を拡大する。
具体的には、図16及び図17に示すように、ベース12の底板部材32には、コイル50の下面を被覆する底板82と、底板82の長手方向へ延びる両側縁から上方へ一体的に延長され、コイル50の両側面を被覆する一対の側板84とが設けられる。これに対し、ベース12の上板部材30には、コイル50の上面を被覆する上板86と、上板86の長手方向へ延びる両側縁から下方へ一体的に延長され、コイル50の両側面に沿って隙間を介して配置される一対の側板88とが設けられる。そこで、前述したように電磁石14を内部空間に収容して上板部材30と底板部材32とを組み合わせると、底板部材32の各側板84は、上板部材30の各側板88とコイル50との間の隙間に受容されて相補的に組み合わされ、それによりコイル50の両側面全体を被覆する。このような相補的組合せ構造によれば、有極リレー10の外形寸法を実質的に増加させることなく、複数の端子40、42、44とコイル50との間に十分な沿面距離を確保することができる。
上記構成に関連して、上板部材30と底板部材32との相補的組合せ部分には、それら組合せ部分の隙間(例えば図17に符号90で示す)を封止する封止剤92を被着することができる(図18参照)。封止剤92は、例えばエポキシ系接着剤から形成され、製品としての有極リレー10の外面に露出する隙間を封止して、相補的組合せ部分の絶縁強度を向上させるとともに、有極リレー10の気密性を向上させるように作用する。
さらに有極リレー10では、接点−コイル間の間接的短絡への対策として、ベース12の上板部材30の上面に露出する電磁石14の一対の鉄心極面18と複数の固定接点28との間に、複数の固定接点28の各々に対して陰になる絶縁表面領域94を設けている。図示実施形態では、図2及び図15に示すように、上板部材30の一対の開口部34とそれら各々に近接する各2個の固定接点28との間に、上板部材30の上面から上方へ突出する各一対の壁96が形成され、それら壁96の相互対向面が絶縁表面領域94となっている。
図19(A)に模式図的に示すように、壁96によって形成される絶縁表面領域94は、固定接点28の消耗による金属粉の飛散やアーク放電による材料の炭化の影響を受け難い位置にある。したがって絶縁表面領域94は、鉄心極面18と固定接点28との間の沿面距離を拡大する壁96の機能を補助し、接点−鉄心間の絶縁能力の低下を防止するように作用する。なお、図19(B)に示すように、鉄心極面18と固定接点28との間に、壁96の代わりに上板部材30に溝98を刻設し、溝98内に絶縁表面領域94を設けることによっても、同様の作用効果が奏される。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、いわゆるバランスアーマチュア型の有極リレーにおいて、製品の外形寸法を増加させることなく、開放接点間の十分な絶縁距離を確保すること、また接点−コイル間の十分な絶縁距離を確保することが可能になる。また、いわゆるバランスアーマチュア型の複回路型有極リレーにおいて、製品の外形寸法を増加させることなく、並設接点間の十分な絶縁距離を確保することが可能になる。したがって、本発明に係る有極リレーは、電気通信回線接続型の情報処理装置に搭載したときに、それ自体の構造によってIEC60950の規定に準じ得る十分な絶縁距離を確保することができる。
図20は、有極リレー10を備えた本発明の一実施形態による情報処理装置100の構成を概略回路図で示す。情報処理装置100は、電話機能付きファクシミリのデータ処理部の構成を有し、電気通信回線の一例としての電話回線102に絶縁変圧器104を介して電気的に接続されるデータ処理回路106と、電話回線102との間を有極リレー10により絶縁される信号発生回路108とを備える。有極リレー10は、そのメーク接点28aが信号発生回路108に接続され、ブレーク接点28bが電話回線102に接続され、コモン接点38が電話機110に接続されている。
情報処理装置100は、通常はデータ処理回路106と電話回線102との間でファクシミリ信号を送受信する。例えば電話回線102からファクシミリ信号を受信したときには、データ処理回路106は、電話機110のベルを起動することなく、ファクシミリ受信処理を実行する。また電話機110は、通常は有極リレー10を介して電話回線102に接続されており、電話機110からの送話が可能な状態になっている。この構成において、電話回線102から電話信号を受けたときには、データ処理回路106は最初に電話受信を判断するが、電話回線102からのベル起動信号はその間に完了してしまうので、判断後直ちにリレードライバ112を励起させて有極リレー10を動作させる。それにより、電話回線102と電話機110との接続が遮断されるとともに、信号発生回路108が有極リレー10を介して電話機110に接続され、ベル起動信号が信号発生回路108から電話機110に送られる。そして、電話機110が受話状態になると、データ処理回路106が直ちにリレードライバ112を介して有極リレー10を復帰させる。それにより電話機110が電話回線102に再接続され、相互通話可能な状態になる。
上記構成を有する情報処理装置100は、データ処理回路106及び信号発生回路108と電話回線102との間を、IEC60950で規定される絶縁距離で絶縁する必要がある。この点で有極リレー10は、前述したように、バランスアーマチュア型有極リレーが本来有する小形/低消費電力の特性を維持しつつ、IEC60950の規定に準じ得る1mm以上の開放接点間隔を確保している。したがって図示の配置において、有極リレー10は、信号発生回路108と電話回線102との間をIEC60950の要求を満たす絶縁距離で確実に絶縁することになる。その結果、信号発生回路108と電話回線102との間に、絶縁変圧器等の他の絶縁素子を介在させる必要が無くなり、情報処理装置100の小形化が促進される。
図21は、有極リレー10を備えた本発明の他の実施形態による情報処理装置114の構成を概略回路図で示す。情報処理装置114は、一般回線/インターネット両用電話機のデータ処理部の構成を有し、電気通信回線の一例としての電話回線102との間を有極リレー10により絶縁される音声データ処理回路116を備える。有極リレー10は、そのメーク接点28aが音声データ処理回路116に接続され、ブレーク接点28bが電話回線102に接続され、コモン接点38が電話機110に接続されている。音声データ処理回路116は、インターネット118に接続される。
情報処理装置114は、通常は有極リレー10を介して電話機110を電話回線102に接続しており、電話回線102による相互通話が可能な状態になっている。この構成において、電話機110をインターネット電話として使用するときには、使用者の要求によりリレードライバ112を励起させて有極リレー10を動作させる。それにより、電話回線102と電話機110との接続が遮断されるとともに、音声データ処理回路116が有極リレー10を介して電話機110に接続され、電話機110に入出力される音声データが音声データ処理回路116で適宜処理されてインターネット118により送受信される。
上記構成を有する情報処理装置114は、音声データ処理回路116と電話回線102との間を、IEC60950で規定される絶縁距離で絶縁する必要がある。この点で有極リレー10は、前述した情報処理装置110の場合と同様に機能して、音声データ処理回路116と電話回線102との間を、IEC60950の要求を満たす絶縁距離で確実に絶縁する。その結果、音声データ処理回路116と電話回線102との間に、絶縁変圧器等の他の絶縁素子を介在させる必要が無くなり、情報処理装置114の小形化が促進される。なお、この情報処理装置114は、卓上使用型の一般回線/インターネット両用電話機に設置する代わりに、例えばビル設置型の交換機等に設置することもできる。
このように、本発明によれば、電気通信回線に接続したときにIEC60950の規定に準じ得る十分な絶縁距離を確保できる小形かつ低消費電力型の情報処理装置が提供される。
以上、本発明に係る幾つかの好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、有極リレーにおける前述した種々の絶縁対策は、IEC60950の規定に準ずるためには、1つの有極リレーに全ての絶縁対策を取り入れることが望ましいが、有極リレーの適用によっては、それら絶縁対策のうち所望の1つの対策のみを採用することができ、或いは所望の2つ以上の対策を組み合わせて採用することもできる。また、ベースが組合せ構造を有することを前提とする絶縁対策以外の対策は、インサート成形工程により電磁石をベースに一体的に組み込んでなる有極リレーに採用することもできる。同様に、複回路型の有極リレーを前提とする絶縁対策以外の対策は、単回路型の有極リレーに採用することもできる。さらに、前述した電話機能付きファクシミリや一般回線/インターネット両用電話機以外にも、録音機能付きファクシミリ、ボイスモデム等の他の様々な情報処理装置に、回路間絶縁の目的で本発明に係る有極リレーを搭載することができる。

Claims (4)

  1. ベースと、前記ベースに組み込まれる電磁石と、前記電磁石に併設される永久磁石と、前記ベース上に揺動自在に支持され、揺動中心から離れた両端領域に、前記電磁石の一対の鉄心極面にそれぞれ接触可能に対向配置される一対の接触面を有する接極子と、前記ベース上で前記接極子に伴って揺動する少なくとも1つの導電性板ばねと、前記少なくとも1つの導電性板ばねの各々の両端に設けられる複数の可動接点と、前記複数の可動接点にそれぞれ接触可能に対向して前記ベースに固定的に設置される複数の固定接点とを具備する有極リレーにおいて、
    前記接触子は、前記ベース上で揺動する前記接極子の平衡状態において前記一対の鉄心極面に平行な主平面をさらに有し、
    前記接極子の前記一対の接触面の各々が、前記電磁石の前記一対の鉄心極面の各々との相互接触時の対面角度を低減するように、前記主平面に対して傾斜する傾斜面として形成され、
    前記主平面に対する前記一対の接触面の各々の傾斜角度が、前記相互接触時の前記主平面と前記一対の鉄心極面の各々との成す角度以下であり、
    前記接極子の揺動中で互いに接触可能な1つの前記可動接点と1つの前記固定接点との間の最大間隔が1mm以上に設定されていること、
    を特徴とする有極リレー。
  2. 前記電磁石は、鉄心と、前記一対の鉄心極面を露出させて該鉄心に取り付けられる絶縁巻枠と、該絶縁巻枠に巻き付けられるコイルとを備え、前記ベースは、前記接極子と該コイルとの間に介在する絶縁上板であって、該絶縁巻枠と協働して前記一対の鉄心極面と該コイルとの間の絶縁距離を拡大する絶縁上板と、該絶縁上板と協働して、前記固定接点をそれぞれに有する複数の端子と該コイルとの間の絶縁距離を拡大する絶縁底板とを備え、該絶縁巻枠と該絶縁上板とが、前記一対の鉄心極面と該コイルとの間の位置で互いに相補的に組み合わされる組合せ部分を有し、該絶縁上板と該絶縁底板とが、該複数の端子と該コイルとの間の位置で互いに相補的に組み合わされる、請求項1に記載の有極リレー。
  3. 前記絶縁上板と前記絶縁底板との相補的組合せ部分に、該相補的組合せ部分の隙間を封止する封止剤が被着される、請求項2に記載の有極リレー。
  4. 前記絶縁上板は、前記電磁石の前記一対の鉄心極面と前記複数の固定接点との間の位置に配置される溝を有し、該溝の内面に、前記複数の固定接点の各々に対して陰になる絶縁表面領域が設けられる、請求項2又は3に記載の有極リレー。
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