JP5072040B2 - 透明性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート及びその製造方法 - Google Patents
透明性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
近年、この種の用途においては、例えば、スキーソールの底部に描かれた文字や描写図等の意匠性を高める等の目的で、透明性に優れるシートが求められている。しかしながら、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンの結晶性樹脂から得られる成形体は、通常、成形体自身が白色であり、透明性の乏しい白濁した状態にある。すなわち、透明性に関して十分に性能を満たすものが、未だ得られていないのが現状である。
また、同じ透明性を有していても、密度や結晶化度がより高い超高分子量ポリエチレン成形体が望まれる。すなわち、透明性を高めるために密度を下げて結晶化度を低くすると、その成形体の引張降伏強度や引張弾性率、曲げ強度等の機械物性が低下するので好ましくない。
ここで、透明性を改良するために、より多くのα−オレフィン等のコモノマーを共重合させて密度をさらに低下させることは可能である。しかしながら、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応が進み、密度が低下するにつれ、分子量が低下してしまう等の理由から、かかる改良によって、分子量が高く且つ密度の低い超高分子量ポリエチレンを得ることは、非常に困難である。しかも、より多くのα−オレフィン等のコモノマーを共重合させると、不経済であるばかりか、密度の低下とともに剛性等の機械物性が著しく低下する。したがって、かかる手法により、高い透明性と機械物性とを兼ね備えた、十分な性能を得ることはできない。
特に、結晶性樹脂であるポリオレフィンは、透明性や収縮性といった特性が他の非晶性樹脂とは大きく挙動が異なる。したがって、このような新しい機能を達成できれば、具体的には、比較的肉厚でありながらも透明性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン成形体を実現できれば、新たな用途が広がると期待される。
しかしながら、超高分子量ポリオレフィン重合体は、その分子量の高さゆえに絡み合いが強いので、低分子量ポリオレフィンや高密度ポリエチレン等とは異なり、素材選定の幅や製造工程の自由度(プロセス裕度)が狭く、肉厚で透明性及び機械物性の双方の機能を具備したものを実現することができなかった。
(1) 135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン重合体を含む密度が925kg/m3以下の超高分子量オレフィン成形体を、少なくとも一方向に伸長して得られる、厚みが0.2mm以上であり、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが70%以下の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 伸長成形シートの初期長さ
L : 120℃、30分間の状態調節後の伸長成形シートの長さ
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :伸長前の厚み(mm)
t2 :伸長後の厚み(mm)
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :伸長前の厚み(mm)
t2 :伸長後の厚み(mm)
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 伸長成形シートの初期長さ
L : 120℃、30分間の状態調節後の伸長成形シートの長さ
すなわち、本実施形態は、特定の超高分子量ポリオレフィン重合体を用いて得た超高分子量ポリオレフィン成形体を、さらに特定の条件において伸長させることにより、透明性に優れ且つ機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートを得るものである。
超高分子量ポリオレフィン重合体の具体例としては、例えば、エチレンの単独共重合体、プロピレンの単独共重合体、又は、エチレン或いはプロピレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。ここで、炭素数3〜10のα−オレフィンの具体例としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらのなかでも、超高分子量ポリオレフィン重合体は、経済性等の観点から、エチレンの単独共重合体、又は、エチレンを主体とする上記α−オレフィンとの共重合体が好適に用いられ、とりわけ、エチレンにα−オレフィン等のようなコモノマーを分岐として導入した共重合体が好適に用いられる。
超高分子量ポリエチレン重合体は、例えば、エチレンをチーグラー触媒により単独で重合して得られる所謂ホモポリエチレンと呼ばれる密度の高いものに、炭素数3〜10程度のα−オレフィンを共重合させることによって得ることができる。
担体(A−1)を合成する際に使用する有機マグネシウム化合物としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
(M1)α(Mg)β(R1)a(R2)b(OR3)c ・・・ (1)
(一般式(1)中、M1は、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族に属する金属原子群から選択される、マグネシウム以外の少なくとも1種の金属原子であり、R1、R2及びR3は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、α、β、a、b及びcは、各々独立して、0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、kα+2β=a+b+c(kはM1の原子価)の関係を満たす実数である。)
(I)R1及びR2の少なくとも一方が炭素数4〜6である二級又は三級のアルキル基であること、好ましくはR1及びR2がともに炭素数4〜6であり且つ少なくとも一方が二級又は三級のアルキル基であること。
(II)R1及びR2が互いに炭素数の異なるアルキル基であること、好ましくはR1が炭素数2又は3のアルキル基であり、R2が炭素数4以上のアルキル基であること。
(III)R1及びR2の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR1及びR2に含まれる炭素数を加算すると12以上になること。
(I)において炭素数4〜6である二級又は三級のアルキル基としては、例えば、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−メチル−2−エチルプロピル基等が挙げられ、これらのなかでも1−メチルプロピル基であることが好ましい。
(II)において炭素数2又は3のアルキル基としては、例えば、エチル基、1−メチルエチル基、プロピル基等が挙げられ、これらのなかでもエチル基であることが好ましい。また、炭素数4以上のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、これらのなかでもブチル基、ヘキシル基であることが好ましい。
(III)において炭素数6以上の炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、2−ナフチル基等が挙げられ、これらのなかでもアルキル基であることが好ましく、アルキル基のなかでもヘキシル基、オクチル基であることがより好ましい。
なお、一般に、アルキル基に含まれる炭素数が増えると、不活性炭化水素溶媒に溶け易くなる一方で溶液の粘度が高くなるので、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。また、上記一般式(1)の有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用し得るが、この場合、溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され或いは残存していても差し支えなく使用できる。
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、添加の順序については、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は、両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果として得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(α+β)の範囲が、0≦c/(α+β)≦2となるように調整することが好ましく、0≦c/(α+β)<1となるように調整することが特に好ましい。
HdSiCleR4 (4−(d+e)) ・・・ (2)
(一般式(2)中、R4は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、d及びeは、各々独立して、0<d、0<e、0<d+e≦4の関係を満たす実数である。)
なお、有機マグネシウム化合物と塩化珪素化合物とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法においては、予め反応器の温度を所定温度に調節し、同時添加を行ないながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、実際の反応温度を所定温度に設定し得る。一方、塩化珪素化合物を事前に反応器に仕込んだ後に該有機マグネシウム化合物を反応器に導入させる方法においては、塩化珪素化合物を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、有機マグネシウム化合物を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、実際の反応温度を所定温度に設定し得る。他方、有機マグネシウム化合物を事前に反応器に仕込んだ後に塩化珪素化合物を反応器に導入させる方法においては、有機マグネシウム化合物を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、塩化珪素化合物を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、実際の反応温度を所定温度に設定し得る。
(i)無機酸化物。
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩及び/又は硫酸塩。
(iii)無機水酸化物。
(iv)無機ハロゲン化物。
(v)(i)〜(iv)の複塩、固溶体及び/又は混合物。
ここで使用するチタン化合物(A−2)としては、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
Ti(OR5)fX(4−f) ・・・ (3)
(一般式(3)中、fは0以上4以下の実数であり、R5は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
(M2)γ(Mg)ε(R6)h(R7)iYj ・・・ (4)
(一般式(4)中、M2は周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族に属する金属原子群から選択される、マグネシウム以外の少なくとも1種の金属原子であり、R6及びR7は、各々独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Yは、アルコキシ基、シロキシ基、アリロキシ基、アミノ基、アミド基、−N=C−R8,R9、−SR10(ここで、R8、R9及びR10は、炭素数2以上20以下の炭化水素基を表し、jが2以上の場合はそれぞれ異なっていても同じでもよい。)、β−ケト酸残基であり、γ、ε、h、i及びjは、各々独立して、0≦γ、0<ε、0≦h、0≦i、0<h+i、0≦j/(γ+ε)≦2、nγ+2ε=a+b+c(ここで、nはM2の原子価)の関係を満たす実数である。)
(IV)R6及びR7の少なくとも一方が炭素数4〜6である二級又は三級のアルキル基であること、好ましくはR6及びR7がともに炭素数4〜6であり且つ少なくとも一方が二級又は三級のアルキル基であること。
(V)R6及びR7が互いに炭素数の異なるアルキル基であること、好ましくはR6が炭素数2又は3のアルキル基であり、R7が炭素数4以上のアルキル基であること。
(IV)R6及びR7の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR6及びR7に含まれる炭素数を加算すると12以上になること。
(IV)において炭素数4〜6である二級又は三級のアルキル基としては、例えば、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2−メチル−2−エチルプロピル基等が挙げられ、これらのなかでも1−メチルプロピル基であることが好ましい。
(V)において炭素数2又は3のアルキル基としては、例えば、エチル基、1−メチルエチル基、プロピル基等が挙げられ、これらのなかでもエチル基であることが好ましい。また、炭素数4以上のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられ、これらのなかでもブチル基、ヘキシル基であることが好ましい。
(VI)において炭素数6以上の炭化水素基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、2−ナフチル基等が挙げられ、これらのなかでもアルキル基であることが好ましく、アルキル基のなかでもヘキシル基、オクチル基であることがより好ましい。
なお、一般に、アルキル基の炭素数が増えると、不活性炭化水素溶媒に溶け易くなる一方で溶液の粘度が高くなるので、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。また、上記一般式(4)の有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用し得るが、この場合、溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され或いは残存していても差し支えなく使用できる。
ここで、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は、両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率は、特に制限されるものではないが、反応の結果として得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比c/(γ+ε)が、0≦c/(γ+ε)≦2となるように調整することが好ましく、0≦c/(γ+ε)<1となるように調整することが特に好ましい。
AlR14 pZ(3−p) ・・・ (5)
(一般式(5)中、R14は炭素数1以上20以下の炭化水素基、Zは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリロキシ基及びシロキシ基からなる群より選択される1種の置換基であり、pは2以上3以下の数である。)
そして、上述した超高分子量ポリエチレン重合体は、上記のような各成分以外に、超高分子量エチレン重合体の製造に有用な他の成分を含むことができる。
本実施形態の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートを得るためには、上述した特定の超高分子量ポリオレフィン重合体を含む、伸長前の予備成形体である超高分子量ポリオレフィン成形体を準備する必要がある。
かかる超高分子量ポリオレフィン成形体は、例えば、パウダー状の超高分子量ポリオレフィン重合体(原料パウダー)を、一般的な圧縮成形、押出成形(スクリュー押出、ラム押出)又は射出成形等することにより、作製することができる。また、圧縮成形等して得られる一次成形品を、さらにスカイブ等により切削することによっても伸長前の超高分子量ポリオレフィン成形体を得ることができる。
なお、原料パウダーの嵩密度は、添加剤、例えば、ステアリン酸カルシウム等の滑剤を添加することにより増大し得ることが一般的に知られている。一方、原料パウダーに添加剤を含ませると、成形時の熱融着性が悪化したり、添加剤が成形品表面にブリードして表面が汚染されたりする等の不都合が発生し得ることが一般的に知られている。以上のことから、添加剤が存在しない状態で原料パウダーの嵩密度を高めることが好ましい。
前記のように予め作製した特定の超高分子量ポリオレフィン成形体に、伸長等の2次加工を施すことによって、本実施形態の透明性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートが得られる。具体的には、例えば、予め余熱されたシート状の超高分子量ポリオレフィン成形体をロール圧延等により厚み0.2mm以上に伸長することで、かかる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートが得られる。
なお、パーオキサイド等を用いて架橋させることにより、超高分子量ポリオレフィン成形体の分子量(極限粘度)・密度を調整することも可能である。しかしながら、架橋が不均一に起こると局所的に機械物性が低下したり、結晶化度が異なるために透明性が低下したりする等の不都合が生じ得るので、均一性の観点から、原料側で分子量(極限粘度)・密度を調整することが好ましい。
以上のことから、透明性に優れる伸長成形シートを得るためには、原料パウダー等を一旦溶融して圧縮成形、押出成形又は射出成形等して得た超高分子量ポリオレフィン成形体を、融点以下の温度で伸長することが好ましい。より具体的には、伸長温度は、「常温」以上「超高分子量ポリオレフィン成形体の融点」未満の範囲が好ましく、「融点−60℃」以上「融点」未満がより好ましく、「融点−30℃」以上「融点」未満がさらに好ましい。なお、本明細書において用いている用語「融点」は、大気圧下で示差走査型熱量計(DSC)において測定される値である。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1:伸長前の厚み(mm)
t2:伸長後の厚み(mm)
超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの厚み方向における内部ヘイズは、JIS−K7136に準拠して測定した。
なお、ヘイズは伸長成形シートの表面のキズや表面粗さにより影響を受けるので、本明細書においては、水やアルコール類等に浸漬した条件で外部ヘイズの影響を無くした内部ヘイズの測定を実施した。
経験上、伸長成形シートのヘイズの値と厚みの関係は、(ヘイズの値Ht;%)=a×t(伸長成形シート厚み;mm)+bの関係式により定義可能であり、a及びbは成形体密度と関連があり、しかも、伸長成形シートの厚み2mm付近を境に、ヘイズの厚み依存性が異なることが見出されている。
すなわち、厚み2mm以下の伸長成形シートの場合、上記ヘイズの厚み依存性の関係式における傾きaは、a=309×d(密度:g/cm3)−264により求めることができる。したがって、得られたパラメータaと測定対象の伸長成形シートの既知の厚みt(mm)及びヘイズの値Ht(%)とを上記の関係式に挿入することにより、パラメータbを算出できる。このようにして完成した関係式から、t=2の場合である厚み2mmにおけるヘイズの値が外挿される。
一方、伸長成形シートの厚みが2mmを超える場合は、上記ヘイズの厚み依存性の関係式における傾きaは、a=−640×d(密度:g/cm3)+600により求めることができる。したがって、上記と同様に、得られたパラメータaと測定対象の伸長成形シートの既知の厚みt(mm)及びヘイズの値Ht(%)とを上記の関係式に挿入することにより、パラメータbを算出でき、完成した関係式から、t=2の場合である厚み2mmにおけるヘイズの値が外挿される。
上記の経験式は、超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの厚みによらずにヘイズを算定するために、本発明者が鋭意検討した結果、ヘイズの値がある特定の厚みを境に挙動が異なること、さらに、ヘイズの厚み依存性を示す相関式が成形体密度に依存することを見出し、完成するに至ったものである。かかる経験式は、特定の厚みに換算したときの伸長成形シートのヘイズを決める上で、重要な指標となるパラメータとなる。
なお、2mm以下の伸長成形シートにおけるヘイズの厚み依存性の傾きaは、2mm以上の伸長成形シートにおけるヘイズの厚み依存性の傾きaよりも大きい傾向を示す。また、密度の高い伸長成形シートは、厚みが2mm以下のものであっても、ヘイズ実測において80%以上を示すものが多く、2mm以下のヘイズと厚みの関係式で2mmの厚みのヘイズを外挿すると100%を超えてしまう場合がある。この場合は、伸長成形シートの厚みが2mm以下であっても、2mm以上のヘイズの厚み依存性関係式で外挿したものがより実際に近い値となる。
また、上記関係式は、伸長成形を行っていない、成形体のヘイズの値と厚みの関係にも適用できる。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 伸長成形シートの初期長さ
L : 120℃、30分間の状態調節後の伸長成形シートの長さ
なお、伸長成形シートの形状は熱収縮により変化し得るが、透明性の大きな変化は観察されないことが多い。したがって、伸長成形シートの熱収縮は、極めて高い透明性を発現させるために必要とされる伸長工程において、高分子鎖が高度に配向することによって生じた歪みが、120℃で30分間の状態調整により解放することにより生じる現象と考えられる。
T>a×(t)+b ・・・ 式(3)
なお、JIS K−7361−1に基づく全光線透過率は、試験片の平行入射光束に対する全透過光束の割合と定義されており、無色のプラスチックにおける可視光領域の透明性を数値で比較することができる。本規格によると、光学用材料やフィルム等の用途に用いられている透明性の高い樹脂としてPMMA、PVC、PS等が挙げられており、これらの2mm厚みにおける全光線透過率は、それぞれ92.6%、87.0%、89.6%との記載がある。また、30μmの高密度ポリエチレンの薄膜成形体で、全光線透過率が90.7%との記載があり、高密度ポリエチレン成形体の場合は、非常に薄い膜(フィルム)とした場合に、高い透明性を発現していることが理解できる。このことからも推定できるように、上記他の透明樹脂の如く比較的肉厚である0.2mm以上の伸長成形シートとして、透明性に優れる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートは得られていない。
20mlのデカリンにポリマー20mgを入れ、150℃、2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の高温糟で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。なお、ブランクとしてポリマーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。そして、以下の式にしたがい、ポリマーの比粘度(ηsp/C)をプロットし、濃度0に外挿した極限粘度(η)を求めた。
ηsp/C = (ts/tb−1)/0.1
<α−オレフィン含有量>
α−オレフィンの含有量(mol%)の測定は、G.J.Ray等のMacromolecules、10,773(1977)に開示された方法に準じて行ない、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度よりα−オレフィンの含有量を算出した。使用した機器は、日本電子製Lambda−400であった。使用した溶媒はo−オルトジクロロベンゼン−d4であり、測定温度は140℃、観測周波数は100MHz(13C)、パルス幅45°(7.5μsec)、積算回数は10,000回であった。測定基準はPE(−eee−)シグナルであり、29.9ppmとした。
超高分子量ポリエチレン重合体パウダーの嵩密度は、JIS K−7365に準拠して測定した。
パウダー状の超高分子量ポリエチレン重合体サンプル約8mgをアルミパンに入れて封入し、50℃から180℃まで10℃/minで昇温させ、5分間状態を保った後、10℃/minの降温速度で50℃まで降温させ、再び10℃/minで180℃まで昇温させた。このときの融解に伴う吸熱ピークの温度を、融点として測定した。
成形体及び伸長成形シートの厚みは、ミツトヨ製マイクロメーター(395−541:BMD−25DM)を用いて測定した。なお、厚みは、小数点以下第3位まで測定し、小数点第3位を四捨五入した値とした。
ASTM D 1505にしたがって測定した。なお、成形体の密度の測定においては、後述するプレスシートから切り出して得た切片を、120℃で1時間アニーリングし、その後25℃で1時間冷却したものを、試験片として使用した。また、伸長成形シートの密度の測定においては、伸長成形シートから切り出して得た切片を、120℃で1時間アニーリングし、その後25℃で1時間冷却したものを、試験片として使用した。
成形体の厚み方向の寸法を伸長前/伸長後で測定し、上記式(2)に基づいて、伸長前の厚みを伸長後の厚みで除して伸長比を算出した。なお、伸長後の寸法測定は、伸長工程後に室温で30分放置させた後に行った。
各実施例の伸長成形シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は伸長成形シート)から、幅6mm、長さ40mmのシート状サンプルを切削し、このシート状サンプルを、温度120℃に保持した恒温乾燥機に30分間入れた後、室温にて30分間放冷した。この状態調節前後の寸法を測定し、上記式(1)に基づいて熱収縮率を算出した。ここで、MD方向及びTD方向の熱収縮率の測定は、個別のシート状サンプルを用いて、MD方向及びTD方向毎に個別に実施した。
なお、主たるMD方向が不明な伸長成形シート、及び、伸長処理を行なわなかった成形シートについては、シート面内で直行する2方向のうち、熱収縮率が大きい方をMD方向の値とし、小さい方をTD方向の値とした。
内部ヘイズは、各実施例の伸長成形シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は伸長成形シート)を試験片として用いて、JIS−K7136に準拠して測定した。ここでは、外部ヘイズの要因を無くすために、石英ガラス製ホルダーに和光純薬製特級エタノールを充填し、この中に試験片を入れて内部ヘイズを測定した。測定機器は、日本電色工業株式会社 ヘーズメーターNDH2000を用いた。また、厚み2mm換算の内部ヘイズを、既述の(ヘイズ;%)=a×t(伸長成形シート厚み;mm)+bの関係式を用いて算出した。
全光線透過率Tは、各実施例の伸長成形シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は伸長成形シート)を試験片として用いて、JIS−K7316−1に準拠して測定した。測定機器は日本電色工業株式会社 ヘーズメーターNDH2000を用いた。また、上記式(3)において、a=−9.2、b=85.0として右辺のa×(t)+bに相当する全光線透過率Ttを算出した。
各実施例の伸長成形シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は伸長成形シート)を打ち抜いて、JIS K7113に記載のJIS 2号ダンベル試験片を作製した。得られたダンベル試験片を用いて、引張速度50mm/分、温度23℃の条件下において引張試験を行ない、引張降伏強度及び引張破断伸びを測定した。
<固体触媒成分[A]の合成>
十分に窒素置換された8リットルステンレス製オートクレーブに、2モル/リットルのトリクロロシランヘキサン溶液1460ミリリットルを仕込み、80℃で攪拌しながら、組成式AlMg5(C4H9)11(OC3H7)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液3730ミリリットル(マグネシウム2.68モル相当)を4時間かけて滴下し、さらに80℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、2600ミリリットルのヘキサンで4回洗浄して、(A−1)担体を得た。この担体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.43ミリモルであった。
上記担体(A−1)160gを含有するヘキサンスラリー2880ミリリットルを調整し、このスラリー中に、20℃で攪拌しながら1モル/リットルの四塩化チタンヘキサン溶液160ミリリットルと、1モル/リットルの組成式AlMg5(C4H9)11(OC3H7)2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液160ミリリットルとを同時に1時間かけて添加した。添加後、20℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600ミリリットル除去し、ヘキサン1600ミリリットルで2回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。この固体触媒成分1g中に含まれるチタン量は0.98ミリモル、塩素量は14.9ミリモルであった。
<超高分子量ポリオレフィン重合体の合成>
上記固体触媒成分[A]を、ヘキサン、エチレン及び1−ブテンと共に、攪拌装置が付いたジャケット付のベッセル型200リットル重合反応器へ連続的に供給し、重合体の合成を行った。重合温度は68℃に保った。溶媒としてのヘキサンは65リットル/Hrで供給した。
より具体的には、上記固体触媒成分[A]を、ポリマー製造速度が6kg/Hrとなるようにポンプで連続的に供給し、同時に有機金属化合物成分[B]であるタンク濃度18ミリモル/リットルのトリイソブチルアルミニウムを、0.45リットル/hrで供給した。また、1−ブテンを、気相濃度で5モル%になるようにポンプで連続的に供給し、重合圧力が0.3MPaになるように、エチレンを連続的に供給した。そして、重合スラリーは、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に抜き取られ、抜き取られたスラリーは、溶媒分離工程を経て、乾燥工程へ送られた。その結果、塊状のポリマーの存在も無く、スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。触媒活性は20、000gPE/g触媒であった。こうして得られた実施例1の超高分子量ポリエチレン共重合体のデカリン(135℃)中における極限粘度(η)は16.9dl/g、密度919kg/m3であった。
得られた実施例1の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いてロール状の肉厚成形品を作製し、この肉厚成形品を約1mm厚にスカイブしてスカイブシートを作製し、これを実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体とした。このスカイブシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは0.93mmであった。また、このスカイブシートの密度は920kg/m3であった。
実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体を、80℃で30分間の状態調節を行った後に、ロール径400mmφ、ロール長500mmの圧延ロール機を用いて、ギャップを1.0mm、0.5mm、0.3mm、0.1mmの順に狭めて繰り返し通して圧延シートを作製し、これを実施例1の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。この際、ロール表面の温度は80℃に保っておいた。最終ギャップは0.1mmであったが、得られた伸長成形シートの厚み及び密度は、0.45mm及び920kg/m3であった。この伸長成形シートの厚み方向の内部ヘイズは23.5%であり、全光線透過率Tは87.0%であった。また、伸長比は2.2倍であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
<超高分子量ポリオレフィン成形体の作製>
実施例1の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いてロール状の肉厚成形品を作製し、この肉厚成形品を約3mm厚にスカイブしてスカイブシートを作製し、これを実施例2の超高分子量ポリオレフィン成形体とした。このスカイブシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは3.03mmであった。また、このスカイブシートの密度は924kg/m3であった。
<超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの作製>
実施例2の超高分子量ポリオレフィン成形体を、80℃で30分間の状態調節を行った後に、ロール径400mmφ、ロール長500mmの圧延ロール機を用いて、ギャップを1.0mm、0.5mm、0.3mm、0.1mmの順に狭めて繰り返し通して圧延シートを作製し、これを実施例2の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。この際、ロール表面の温度は80℃に保っておいた。最終ギャップは0.1mmであったが、得られた伸長成形シートの厚み及び密度は、0.84mm及び920kg/m3であった。この伸長成形シートの厚み方向の内部ヘイズは6.6%であり、全光線透過率Tは85.6%であった。また、伸長比は3.6倍であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
<超高分子量ポリオレフィン重合体の合成>
重合温度を66℃とした以外は、実施例1と同じ方法で重合を行った。その結果、極限粘度(η)17.2dl/g、密度919kg/m3である、実施例3の超高分子量ポリエチレン共重合体が得られた。
<超高分子量ポリオレフィン成形体の作製>
得られた実施例3の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いて約4mm厚のプレスシートを作製し、これを実施例3の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは4.05mmであった。また、このプレスシートの密度は917kg/m3であった。
<超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの作製>
実施例3の超高分子量ポリオレフィン成形体を、80℃で30分間の状態調節を行った後に、ロール径400mmφ、ロール長500mmの圧延ロール機を用いて、ギャップを1.0mm、0.5mm、0.3mm、0.1mmの順に狭めて繰り返し通して圧延シートを作製し、これを実施例3の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。この際、ロール表面の温度は80℃に保っておいた。最終ギャップは0.1mmであったが、得られた伸長成形シートの厚み及び密度は1.38mm及び917kg/m3であった。この伸長成形シートの厚み方向の内部ヘイズは24.3%であり、全光線透過率Tは82.7%であった。また、伸長比は2.9倍であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
<超高分子量ポリオレフィン重合体の合成>
重合温度を70℃、α−オレフィンをプロピレンに変更し、このプロピレンの気相濃度を10モル%とした以外は、実施例1と同じ方法で重合を行った。その結果、極限粘度(η)11.9dl/g、密度920kg/m3である、参考例1の超高分子量ポリエチレン共重合体が得られた。
<超高分子量ポリオレフィン成形体の作製>
得られた参考例1の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いて約4mm厚のプレスシートを作製し、これを参考例1の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは4.11mmであった。また、このプレスシートの密度は920kg/m3であった。
<超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの作製>
参考例1の超高分子量ポリオレフィン成形体を幅26mm、長さ115mmの形状に切削して得た1次加工品を、80℃で30分間の状態調節を行った後に、50mm/minの引張速度、延伸倍率200%で延伸して延伸シートを作製し、これを参考例1の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。得られた伸長成形シートの幅、厚み及び密度は、それぞれ14.2mm、2.54mm及び920kg/m3であった。この伸長成形シートの厚み方向の内部ヘイズは41.0%であり、全光線透過率Tは81.3%であった。また、伸長比は1.6倍であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
<超高分子量ポリオレフィン成形体の作製>
実施例3の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いて約7mm厚のプレスシートを作製し、これを参考例2の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは7.28mmであった。また、このプレスシートの密度は919kg/m3であった。
<超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの作製>
参考例2の超高分子量ポリオレフィン成形体を40mm×40mmのシート形状に切削して得た1次加工品を、200×200×1mmの型に入れ、100℃の温度環境下、50K/Gで5分、150K/Gで25分の加圧圧縮を順次行ない、この加圧圧縮後、冷却プレスに移し、150K/Gで30分、金型内に冷却水を通水し、取り出し温度が30℃以下となるように冷却加圧圧縮を行って圧縮シートを作製し、これを参考例2の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。得られた伸長成形シートの厚み及び密度は、3.17mm及び920kg/m3であった。この伸長成形シートの厚み方向の内部ヘイズは61.4%であり、全光線透過率Tは60.0%であった。また、伸長比は2.3倍であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
<超高分子量ポリオレフィン成形体の作製>
実施例3の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いて約4mm厚プレスシートを作製し、これを参考例3の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは4.44mmであった。また、このプレスシートの密度は919kg/m3であった。
<超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの作製>
参考例3の超高分子量ポリオレフィン成形体を40mm×40mmのシート形状に切削して得た1次加工品を、200×200×1mmの型に入れ、40℃の温度環境下、50K/Gで5分、150K/Gで25分の加圧圧縮を順次行ない、この加圧圧縮後、冷却プレスに移し、150K/Gで30分、金型内に冷却水を通水し、取り出し温度が30℃以下となるように冷却加圧圧縮を行って圧縮シートを作製し、これを参考例3の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。得られた伸長成形シートの厚み及び密度は、3.03mm及び919kg/m3であった。この伸長成形シートの厚み方向の内部ヘイズは55.8%であり、全光線透過率Tは64.8%であった。また、伸長比は1.5倍であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
極限粘度(η)が15.5dl/g、密度940kg/m3である超高分子量ホモポリエチレン重合体(旭化成ケミカルズ(株)製 サンファインUH900;チーグラー触媒使用品)を用いてロール状の肉厚成形品を作製し、この肉厚成形品を約1mm厚にスカイブしてスカイブシートを作製し、これを比較例1の超高分子量ポリオレフィン成形体及び成形シートとした。このスカイブシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは0.93mmであった。また、このスカイブシートの密度は936kg/m3であり、厚み方向の内部ヘイズは98.5%であり、全光線透過率Tは65.5%であった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
実施例1の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いてロール状の肉厚成形品を作製し、この肉厚成形品を約3mm厚にスカイブしてスカイブシートを作製し、これを比較例2の超高分子量ポリオレフィン成形体及び成形シートとした。このスカイブシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは3.10mmであった。また、このスカイブシートの密度は925kg/m3であり、厚み方向の内部ヘイズは97.7%であり、全光線透過率Tは54.3%であった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
重合温度を70℃、1−ブテンの気相濃度を0.5モル%とした以外は、実施例1と同じ方法で重合を行った。その結果、極限粘度(η)23.7dl/g、密度928kg/m3である、比較例3の超高分子量ポリエチレン共重合体が得られた。
得られた比較例3の超高分子量ポリエチレン共重合体を用いて約2mm厚のプレスシートを作製し、これを比較例3の超高分子量ポリオレフィン成形体及び成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは2.08mmであった。また、このプレスシートの密度は927kg/m3であり、厚み方向の内部ヘイズは88.6%であり、全光線透過率Tは61.5%であった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
極限粘度(η)が16.0dl/g、密度934kg/m3である超高分子量ホモポリエチレン重合体(Ticona社製 GUR4120;チーグラー触媒未使用品)を用いて約2mm厚のプレスシートを作製し、これを比較例4の超高分子量ポリオレフィン成形体及び成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは2.31mmであった。また、このプレスシートの密度は930kg/m3であり、厚み方向の内部ヘイズは91.6%であり、全光線透過率Tは59.2%であった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
極限粘度(η)1.8dl/g、密度921kg/m3である低密度ポリエチレン重合体(旭化成ケミカルズ(株)製 サンテックLD M2102;チーグラー触媒未使用品)を用いて約2mm厚のプレスシートを作製し、これを比較例5の超高分子量ポリオレフィン成形体及び成形シートとした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは1.67mmであった。また、このプレスシートの密度は921kg/m3であり、厚さ方向の内部ヘイズは96.0%であり、全光線透過率Tは72.2%であった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
比較例1のスカイブシートを、80℃で30分間の状態調節を行った後に、ロール径400mmφ、ロール長500mmの圧延ロール機を用いて、ギャップを1.0mm、0.5mm、0.3mm、0.1mmの順に狭めて繰り返し通して圧延シートを作製し、これを比較例6の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートとした。この際、ロール表面の温度は80℃に保っておいた。最終ギャップは0.1mmであったが、得られた伸長成形シートの厚み及び密度は、0.53mm及び933kg/m3であった。この伸長成形シートの厚さ方向の内部ヘイズは88.8%であり、全光線透過率Tは76.2%であった。また、伸長比は1.8倍であった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
国際公開WO2004/081064号明細書の実施例5に記載の条件にしたがって、メタロセン系触媒を用いた超高分子量ポリエチレン共重合体の重合を行った。その結果、極限粘度(η)20.7dl/g、密度919kg/m3である、比較例7の超高分子量ポリオレフィン共重合体が得られた。
得られた比較例7の超高分子量ポリオレフィン重合体を用いて約1.5mm厚のプレスシートを作製し、これを比較例7の超高分子量ポリオレフィン成形体とした。このプレスシートの厚みを正確に測定したところ、厚みは1.39mmであった。また、このプレスシートの密度は918kg/m3であった。
得られたプレスシートを幅26mm、長さ115mmのシート形状に切削して得た1次加工品を、110℃で15分間の状態調節を行った後、3mm/minの引張速度で延伸しようとしたが、絡み合いが強く延伸することができず、伸長成形シートを作製することができなかった。表2に、その他の評価結果を併せて示す。
縦200mm、横200mm、厚み4mm及び7mmの金型を用い、ISO11542−2(JIS K6936−2:1999)に準拠して、以下の条件で超高分子量ポリオレフィンをプレスすることによりプレスシートを作製した。
まず、厚さ5mmの平滑な鉄板に厚さ0.1mmのアルミニウム板を載せ、さらに厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム;東レ株式会社製 ルミラー)を載せた。このPETフィルム上に、上記の縦200mm、横200mm、厚み4mm及び7mmの金型を載せ、この金型内にそれぞれ所定量の超高分子量ポリエチレン粉末を入れ、この粉末上に前述のポリエチレンテレフタレートフィルムを載せ、さらに前述のアルミニウム板を載せ、さらに前述の鉄板を載せた。
そして、上記の金型を、210℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、210℃で300秒間加熱後、エアー抜きを行ない、100K/Gで30分の加圧を行った。加圧終了後サンプルを取り出し、取り出してから5秒後に25℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、25℃で100K/Gにて600秒間加圧しながら15±2℃/分の冷却速度で冷却した。冷却速度は金型を厚紙で挟むことにより調節した。冷却後に金型からサンプルを取り出すことで、目的とするプレスシートを得た。
外径600mmφ、内径90mmφの中空ドーナツ状の金型内に、厚みが最終的に130mm程度になるように、超高分子量ポリエチレン粉末を投入し、約100K/Gで30分内部のエアーを逃がし、その後、圧力を約90K/G前後、約140〜145℃の条件下で13時間加熱を行った。さらに、圧力を約90K/Gに保ったまま、約7時間冷却を行った。金型から取り出したドーナツ状の成形体を48時間室温にて放置し、内部の熱をさらに徐熱することにより冷却させた。その後、ドーナツ状の成形体をスカイブマシーンに固定し、所定の厚みにスカイブすることで、目的とする該所定の厚みのスカイブシートを得た。
所定のギャップに調整された、ロール径400mmφ、ロール幅500mm、加圧能力200tの圧延ロールを用い、予め80℃に予熱しておいた所定厚みの伸長前成形体を1m/minの速さで圧延し、圧延後、常温で24時間放置し冷却を行ない、目的とする圧延シートを得た。
所定の厚みの伸長前成形体を幅26mm、長さ115mmのシート形状に切削して得られたサンプルを、80℃の温度下で30分放置した後、チャック間を50mmとして、50mm/minの速度で200%延伸した。その後、200%延伸させた状態のまま室温で30分放置し、内部応力による収縮を取り除き、目的とする延伸シートを得た。
所定の厚みの伸長前成形体を40mm×40mmのサイズのシート形状に切削して得られたサンプルを、上記プレス成形条件と同じように鉄板とアルミニウム板で挟んだ。但し、ポリエチレンテレフタレートフィルムだけは、圧縮延伸、収縮時に皺を発生する原因となるので除いた。これを200×200×1mmの型に入れ、100℃で、50K/Gにて5分、150K/Gにて25分の加圧を行った。加圧後、冷却プレスに移し、150K/Gで30分冷却を行ない、冷却後に金型からサンプルを取り出すことで、目的とする圧縮シートを得た。
Claims (9)
- 135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン重合体を含む密度が925kg/m3以下の超高分子量オレフィン成形体を、少なくとも一方向に圧延にて伸長して得られる、厚みが0.2mm以上であり、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが70%以下の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
- 下記式(1)で示される熱収縮率(γ)が、前記伸長した方向MD及び該伸長方向と直交する方向TDの少なくともいずれか一方において5%以上である、請求項1に記載の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 伸長成形シートの初期長さ
L : 120℃、30分間の状態調節後の伸長成形シートの長さ - 前記超高分子量ポリオレフィン重合体は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなる、請求項1又は2に記載の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
- 前記超高分子量ポリオレフィン重合体は、前記α−オレフィンの含有量が0.01mol%以上1mol%未満である、請求項3に記載の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
- 厚さ2mm換算時の厚み方向における内部ヘイズが70%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
- 前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、下記式(2)で表される伸長比(χ)で1.3倍以上に伸長して得られる、請求項1から5のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :伸長前の厚み(mm)
t2 :伸長後の厚み(mm) - 135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン重合体を含む密度が925kg/m3以下の超高分子量ポリオレフィン成形体を準備する工程と、
前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、該超高分子量ポリオレフィンの融点(Tm)未満、常温以上の温度で、少なくとも一方向に圧延にて伸長し、厚み0.2mm以上、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが70%以下である伸長成形シートを作製する工程と、
を有する超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの製造方法。 - 前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、下記式(2)で表される伸長比(χ)で1.3倍以上に伸長する、請求項7に記載の超高分子量ポリオレフィン伸長成形シートの製造方法。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :伸長前の厚み(mm)
t2 :伸長後の厚み(mm) - エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなり、該α−オレフィンの含有量が0.01mol%以上1mol%未満である、超高分子量ポリオレフィン重合体を含み、
厚みが0.2mm以上であり、
厚み方向における内部ヘイズが70%以下であり、
下記式(1)で示される熱収縮率(γ)が、前記伸長した方向MD及び該伸長方向と直交する方向TDのいずれか一方において5%以上であり、
下記式(3)で示される全光線透過率Tt(%)が72.3%以上である、
超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 伸長成形シートの初期長さ
L : 120℃、30分間の状態調節後の伸長成形シートの長さ
Tt=a×(t)+b ・・・ 式(3)
a :−9.2
b :85.0
t :伸長成形シートの厚み(mm)
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