JP5942106B2 - ポリオレフィン樹脂製透明シート - Google Patents
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特許文献2では、低密度の超高分子量ポリエチレンを伸長成形することで透明性のシートを得ているが、用途によっては透明性が十分ではないことがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、透明性が高く、剛性および軽量性に優れる透明シートを得ることを課題とする。
〔1〕
ポリオレフィン樹脂を含み、結晶配向度が、0.92以上であり、かつシート厚みが0.2mm以上であり、密度が930kg/m 3 以上であり、かつ135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7g/dL未満である透明シート。
〔2〕
シート厚みが0.3mm以上である、〔1〕に記載の透明シート。
〔3〕
シート厚みが0.5mm以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の透明シート。
〔4〕
シート厚みが0.5mm以上、1.5mm以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載
の透明シート。
〔5〕
結晶長周期が30nm以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の透明シート。
〔6〕
結晶長周期強度が、1.0×10 6 e 2 /nm 3 以下である、〔5〕に記載の透明シート。
〔7〕
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂を含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の透明シート。
〔8〕
TA−TB≦90(℃)、かつTA≦Tm(℃)を満たす条件で、シートを圧延することを特徴とする、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の透明シートを製造する方法。(ただし、TA:圧延時の圧延ロール温度、TB:圧延ロール直前のシート表面温度、Tm:圧延前の原反シートの融点。)
透明シートとして、より高い透明性と成形加工性のバランスが求められる場合には、135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7g/dL未満が好ましく、5g/dL以下がより好ましく、とりわけ3g/dL以下が更に好ましい。
結晶配向度(以下;fとすることがある)とは、広角X線散乱測定(以下WAXS)により求めることができる指標であり、具体的には以下の方法により求めることができる。
Δ:下記方法で得られるピークの半値幅
成形シートを試験片として、リガク社製Nano Viewerを用い、以下の条件で測定する。光学系は、ポイントコリメーション(1st:0.4mmφ、2nd:0.2mm、guard:0.6mmφ)を用い、シート法線方向からX線を入射(Through View)する。検出器としてイメージングプレートを用い、カメラ長、78.8mm、測定時間、15分間照射し、円環平均WAXSプロファイル散乱像を得る。
結晶長周期(d)は、透明シートの小角X線回折(散乱)解析(SAXS)によって、求めることができる。具体的には、SAXSプロファイルにおいてシートの配向方向に現れるピーク位置から以下のブラッグの式(2)により算出される。
結晶長周期(d)は、透明性と耐衝撃性と剛性の観点から、30nm以下が好ましく、28nm以下がより好ましく、さらに25nm以下が好ましく、特に23nm以下が好ましく、特にとりわけ22nm以下が好ましい。
t1:延伸前のシート厚み(mm)
t2:延伸後のシート厚み(mm)
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の高分子量体は、押出成形によって原反シートを作製すると、粘度が高いためにシートの表面が荒れてしまい延伸後の透明性が劣る場合がある。このため、高分子量体のポリエチレン樹脂を用いる場合には、圧縮成形により作製した円柱状の成形品から切削刃により薄皮状に削ったスカイブシートが、原反シートとしては好ましい。超高分子量ポリエチレンは、極限粘度が7g/dL以上であることが好ましい。
TAは、設定した圧延ロールの温度であり、TBは、圧延ロールに入る直前のシートの表面温度を非接触型の温度計にて測定することができる。Tmは、上述したように、原反シートの融点をDSCにより測定することができる。
(1)密度(ρ:kg/m3)
原反シートについて、JIS K 7112:1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)により測定を行った。
ポリエチレン(PE)のMFRについては、JIS K 7210:1999に準拠し、測定を行った。
超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量については、以下に示す方法によって求めた。
まず、20mLのデカリン(デカヒドロナフタレン)にポリマー20mgをいれ、150℃で2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、ポリマー5mgの場合についても測定した。ブランクとしてポリマーを入れていない、デカリンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めたポリマーの比粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)とポリマーの比粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度(η:IV)を求めた。
ηsp/C=(ts/tb−1)/0.1
原反シートから、試料を切り出し、約8mgを秤量し、アルミパンに入れて封入した。そして、50℃から180℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、5分間維持した後に、降温速度10℃/分で50℃まで降温させ、5分間維持した後に、再び昇温速度10℃/分で180℃まで昇温させた。2回目の昇温時における融解に伴う吸熱ピークの温度を、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製、「Pyris 1 DSC」)により測定し、融点とした。
(5−1)原反シートの作製
[スカイブシートの作製]
外径600mmφ、内径に90mmφの穴があいたドーナツ状の金型に厚みが最終的に130mm程度になるように、ポリエチレン粉末を投入し、約10MPaで30分内部のエアーを逃がし、その後、圧力を約9MPa前後、約140〜145℃の条件下で13時間加熱を行った。さらに、圧力を約9MPaに保ったまま、約7時間冷却を行った。金型から取り出したドーナツ状の成形体を2日以上室温にて放置し、内部の熱を更に徐熱することにより冷却させた。この後、ドーナツ状の成形体をスカイブマシーンに固定し、スカイブすることで厚み5mmのスカイブシートを得た。
押出し成形機として、ダイス幅400mm、リップギャップ2.5〜6mmのコートハンガーTダイを備え付けた直径40mm、L/D=35のフルフライトスクリューの単軸押し出し機を用い、スクリュー回転数を120rpm、シリンダー設定温度200℃、第一ロールと対面するロールは、いずれも鏡面ロールで、50℃に設定した。
[圧延シートの作製]
上記押出し成形により得られた2.0mm厚みのシートをロール径300mmφ、ロール幅500mmの圧延ロールにより、常温で押出成形シートを任意のギャップに調整し、0.6m/分のロール回転速度で圧延を行った。圧延ロールから出た圧延シートは、引き取り速度を変えて引き取り、テンションコントローラーをモニターしながら200N以上の張力を掛けながら巻き取りを行った。巻き取ったシートは常温で数時間放置し冷却を行った。
最終のシートの厚みは、ミツトヨ社製、マイクロメーター(395−541:BMD−25DM)を用いて小数点以下第2位まで測定し、小数点以下第2位の値を四捨五入した。
成形シートを試験片として、リガク社製WAXS(Nano Viewer)を用い、以下の条件で測定を実施した。光学系は、ポイントコリメーション(1st:0.4mmφ、2nd:0.2mm、guard:0.6mmφ)を用い、シート法線方向からX線を入射(Through View)させた。検出器としてイメージングプレートを用い、カメラ長、78.8mm、測定時間、15分間照射し、円環平均WAXSプロファイル散乱像を得た。得られた円環平均WAXSプロファイルより、(110)面由来のピーク(2θ=21.2°)強度の方位角依存性から2θが21.0°< 2θ <22.0°の範囲を積算し、方位角と規格化散乱強度の関係図から180°、もしくは0°(360°)のピークをGauss関数でフィッティングし、得られたピークの半値幅(Δ)を決定し、算出式(1)により決定した。
f=1−(Δ/360°) 式(1)
結晶長周期は、シートの小角X線回折(散乱)解析(SAXS)によって、求めた。
装置:Nano Viewer(株式会社リガク社製)
条件
光学系:ポイントコリメーション
X線入射方向:フィルム法線方向
測定時間:900秒
温度:常温
サンプル形状:シート状
カメラ長:647.4mm
検出器:PILATUS100K(2次元検出器)
X線波長λ:0.154nm
q=4π sinθ/λ 式(4)
2d sinθ=λ 式(5)
結晶長周期強度(e2/nm3)については、円環平均一次元SAXSプロファイルの縦軸の値として得た。
全光線透過率は、JIS K 7361−1:1997に準じて測定した。測定機器は日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。
ROSAND社製 IFW試験機を用い、縦100mm、横100mmの試験片を作成し、常温下において、ストライカー径が10mmφ、ストライカー重量3.2kgfを試験片に落下速度5.9m/sで衝撃を与えた。このときの衝撃エネルギーの値を落錘衝撃強度の値とした。
シートをA4サイズに切り出し(延伸方向が長手方向)、9か所の厚み測定を実施する。これを5枚について実施し、以下の式により厚み精度を5点算出し、最大と最小を除き、残った3点のうち、最大の値を採用する。
(厚み精度)(%)=((厚みの最大値)−(厚み最小値))/(厚みの平均値)×100
最終シート、すなわち圧延した場合は圧延後のシートについて、圧延しない場合は原反シートについて、幅10mm、長さ270mmのサイズに切り出し、固定しろを40mmとって片持ち固定した。残り230mm長さを固定台からつきだした状態にして、固定側と反対の端が水平状態からたわんだ量H(mm)を測定し、以下の判断基準にもとづいて、シート剛性の判定を行った。
◎:0mm≦H<1mm
○:1mm≦H<3mm
△:3mm≦H<6mm
×:6mm≦H
メタロセン系触媒を用いて得られた、高密度ポリエチレン(HDPE;密度942kg/m3、MFR=1.5g/10分)を用いて押出し原反シートを作製した。押出し原反シートの厚みは1.9mmに調整した。この原反シートの融点Tmは、127℃であった。この原反シートを、ロールGAPを0.25mm、TA:ロール温度を120℃、TB:圧延前の原反シートの表面温度を60℃、ロール回転数を0.6m/分とし、ロール圧延後のシートを330Nの張力を掛けて圧延シートを巻き取ったところ、最終のシート厚みは0.3mmであった。このときの結晶配向度は0.965であった。その他の物性については表1に記載した。
リップギャップが6mmのTダイを用い、原反シートの厚みを5mmとし、ロールGAPを0.75mmとして、ロール圧延したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたシートの厚みは、1.0mmであった。このときの結晶配向度は0.946であった。その他の物性については表1に記載した。
TB:圧延前の原反シートの表面温度を25℃としたこと以外は、実施例2と同様に実
施した。最終のシート厚みは1.1mmであった。このときの結晶配向度は0.891で
あった。その他の物性については表1に記載した。
実施例1と同様の高密度ポリエチレン(HDPE;密度942kg/m3、MFR=1.5g/10分)を用いて、実施例2と同様に、押出し原反シートを作製した。ただし、押出しシート原反の厚みは1.0mmになるように調整した。このシートの結晶配向度は、0であった。このシートを、さらに圧延することなく、その他の物性評価を実施し、その結果を表1に示した。
TB:圧延前の原反シートの表面温度を80℃とし、圧延ロールGAPを1.5mmとしたこと以外は、実施例2と同様に実施した。最終のシート厚みは1.7mmであった。このときの結晶配向度は0.782であった。その他の物性については表1に記載した。
1−ヘキセンをコモノマーとする直鎖状低密度ポリエチレン(密度927kg/m3、MFR=2.0g/10分)を用いたこと以外は、実施例2と同様に実施した。得られたシートの厚みは、1.0mmであった。このときの結晶配向度は0.933であった。その他の物性については表1に記載した。
1−ブテンをコモノマーとする超高分子量ポリエチレン(密度918kg/m3、IV=17dL/g)を用いて、上記(5−1)の原反シート作製における、スカイブシート作製例に従って、5mm厚みの原反シートを得たこと以外は、実施例2と同様に圧延を実施した。得られたシートの厚みは、1.2mmであった。このシートの結晶配向度は0.941であった。その他の物性については表1に記載した。
スカイブシートの厚みを1.0mmになるように調整したことと、ロール圧延をしなかったこと以外は、参考例5と同様に実施した。このシートの結晶配向度は0であった。その他の物性については表1に記載した。
圧延ロール温度を140℃(融点を超える温度)としたこと以外は、実施例2と同様に実施した。得られたシートの厚みは、1.0mmであった。このときの結晶配向度は0.223であった。その他の物性については表1に記載した。
Claims (8)
- ポリオレフィン樹脂を含み、結晶配向度が、0.92以上であり、かつシート厚みが0.2mm以上であり、密度が930kg/m 3 以上であり、かつ135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7g/dL未満である透明シート。
- シート厚みが0.3mm以上である、請求項1に記載の透明シート。
- シート厚みが0.5mm以上である、請求項1又は2に記載の透明シート。
- シート厚みが0.5mm以上、1.5mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載
の透明シート。 - 結晶長周期が30nm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の透明シート。
- 結晶長周期強度が、1.0×106e2/nm3以下である、請求項5に記載の透明シート。
- 前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の透明シート。
- TA−TB≦90(℃)、かつTA≦Tm(℃)を満たす条件で、シートを圧延することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の透明シートを製造する方法。(ただし、TA:圧延時の圧延ロール温度、TB:圧延ロール直前のシート表面温度、Tm:圧延前の原反シートの融点。)
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