JP5942106B2 - ポリオレフィン樹脂製透明シート - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオレフィン樹脂製透明シートに関する。
自動車の燃費性能を向上するため、その窓ガラスの軽量化が求められており、プラスチックでの代替材料が求められている。そして、特殊ガラスに代表されるように、破壊形態も脆性破壊ではなく、延性破壊する耐衝撃性の高い材料が求められている。さらに、施工性や自立性の観点から、材料自体の高い剛性が求められている。このような軽量性と耐衝撃性と剛性を同時に高いレベルで達成できる透明シートは、自動車窓ガラスのみならず多くの分野で広く求められている。
透明性を有する樹脂としてはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらの非晶性樹脂は、透明性が高いが、一次構造に酸素原子など、比較的原子量の高い元素を含むため、ポリマーの密度は大きくなり、軽量性に劣る。また、ガラスも透明性が高いが、軽量性の観点で劣る。
結晶性樹脂は、結晶部と非晶部とからなり、一般にそれらの密度は異なる為、光学的透明性は低い。特に可視光線波長領域において、結晶部と非晶部での密度差により、光を散乱し、透明性が低いのが一般である。
結晶性樹脂であるポリオレフィン樹脂は主に炭素と水素からなるため、ポリマーの密度は低くなり、軽量性に優れる。しかしながら、ポリオレフィン樹脂の多くは結晶性樹脂であるため、上述した理由により、透明性に劣るのが一般的である。透明性を有するポリオレフィン樹脂に関していくつかの技術が紹介されているが、用途によっては透明性や剛性などが十分ではない場合があった。
特開平4−73126号公報 国際公開第2008/001772号パンフレット
特許文献1では、透明性と防湿性を改良するため、ポリエチレン系樹脂よりなるシートが提案されているが、その厚みは十分でなく剛性などが十分であるとは言えない。
特許文献2では、低密度の超高分子量ポリエチレンを伸長成形することで透明性のシートを得ているが、用途によっては透明性が十分ではないことがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、透明性が高く、剛性および軽量性に優れる透明シートを得ることを課題とする。
そこで本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意研究を進めた結果、ポリオレフィン樹脂を含み、特定の結晶配向度と特定の厚みを有する透明シートが、透明性が高く、剛性および軽量性に優れる透明シートであることを見出すに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ポリオレフィン樹脂を含み、結晶配向度が、0.92以上であり、かつシート厚みが0.2mm以上であり、密度が930kg/m 3 以上であり、かつ135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7g/dL未満である透明シート。
〔2〕
シート厚みが0.3mm以上である、〔1〕に記載の透明シート。
〔3〕
シート厚みが0.5mm以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の透明シート。
〔4〕
シート厚みが0.5mm以上、1.5mm以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載
の透明シート。
〔5〕
結晶長周期が30nm以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の透明シート。
〔6〕
結晶長周期強度が、1.0×10 6 2 /nm 3 以下である、〔5〕に記載の透明シート。
〔7〕
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂を含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の透明シート。
〔8〕
TA−TB≦90(℃)、かつTA≦Tm(℃)を満たす条件で、シートを圧延することを特徴とする、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の透明シートを製造する方法。(ただし、TA:圧延時の圧延ロール温度、TB:圧延ロール直前のシート表面温度、Tm:圧延前の原反シートの融点。)
本発明によれば、透明性が高く、剛性および軽量性に優れる透明シートを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態の透明シートは、ポリオレフィン樹脂を含み、結晶配向度が0.87以上であり、シート厚みが0.2mm以上であるシートである。
ここで、ポリオレフィン樹脂とは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、シクロオレフィン、ブテン−1樹脂、エチレン・プロピレンゴム、及びこれらの水添物等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましく、特に軽量性と剛性の両立の観点から、ポリエチレン樹脂がより好ましい。本実施形態にいうポリエチレン樹脂とは、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと、エチレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、架橋ポリエチレン(PEX)等が挙げられる。これらのポリエチレン樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本実施形態にいうポリプロピレン樹脂とは、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。これらのポリプロピレン樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、加工性と透明性と厚み精度と耐衝撃性の観点からポリエチレン樹脂が好ましい。
本実施形態で用いるポリオレフィン樹脂の極限粘度としては、特に限定されない。
透明シートとして、より高い透明性と成形加工性のバランスが求められる場合には、135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7g/dL未満が好ましく、5g/dL以下がより好ましく、とりわけ3g/dL以下が更に好ましい。
一方、透明シートとして、耐衝撃性および耐久性が求められる場合には、極限粘度は7g/dL以上が好ましく、10g/dL以上が特に好ましく、とりわけ12g/dL以上が好ましい。
本実施形態の透明シートは、以下に示される結晶配向度が0.87以上である。
結晶配向度(以下;fとすることがある)とは、広角X線散乱測定(以下WAXS)により求めることができる指標であり、具体的には以下の方法により求めることができる。
f=1−(Δ/360°) 式(1)
Δ:下記方法で得られるピークの半値幅
WAXS測定によって得られる円環平均WAXSプロファイルより、2θ=21.2°に存在する(110)面由来のピーク強度の方位角依存性を求める。具体的には、2θが21.0°< 2θ <22.0°の範囲を積算し、方位角と規格化散乱強度の関係図から180°、もしくは0°(360°)のピークをGauss関数でフィッティングし、得られたピークの半値幅(Δ)を決定する。
(WAXS測定条件の一例)
成形シートを試験片として、リガク社製Nano Viewerを用い、以下の条件で測定する。光学系は、ポイントコリメーション(1st:0.4mmφ、2nd:0.2mm、guard:0.6mmφ)を用い、シート法線方向からX線を入射(Through View)する。検出器としてイメージングプレートを用い、カメラ長、78.8mm、測定時間、15分間照射し、円環平均WAXSプロファイル散乱像を得る。
上記で示される結晶配向度を高くすることにより、シートの透明性と剛性を高くすることができる。透明性と剛性および軽量性を両立させるという観点から、透明シートの結晶配向度は0.87以上である。さらに0.92以上がより好ましく、特に0.94以上が好ましく、さらにとりわけ0.95以上が好ましい。
結晶配向度は、後述する圧延時における、ロールギャップ幅、ロール温度、原反シートの圧延前のシート温度やシートとロールの温度差、あるいは原反シートと圧延後シートの厚みとの比(圧延比)等によって制御することが可能である。
本実施形態の透明シートは、厚みが0.2mm以上である。剛性と耐衝撃性の観点から0.3mm以上がより好ましく、特に0.5mm以上が好ましい。一方、透明性の観点から、厚みは1.5mm以下であることが好ましい。したがって、剛性、耐衝撃性および透明性のバランスが必要な場合には、厚みが0.5mm以上、かつ1.5mm以下であることが好ましい。透明シートの厚みは、後述の圧延時における、原反シートの厚みや延伸倍率によって調整することができる。
本実施形態の透明シートは、結晶長周期(d)が、30nm以下であることが好ましい。
結晶長周期(d)は、透明シートの小角X線回折(散乱)解析(SAXS)によって、求めることができる。具体的には、SAXSプロファイルにおいてシートの配向方向に現れるピーク位置から以下のブラッグの式(2)により算出される。
2d sinθ=λ 式(2)
結晶長周期(d)は、透明性と耐衝撃性と剛性の観点から、30nm以下が好ましく、28nm以下がより好ましく、さらに25nm以下が好ましく、特に23nm以下が好ましく、特にとりわけ22nm以下が好ましい。
結晶長周期は、後述する圧延時における、ロールギャップ幅、ロール温度、原反シートの圧延前のシート温度やシートとロールの温度差、あるいは原反シートと圧延後シートの厚みとの比(圧延比)等によって制御することが可能である。
本実施形態の透明シートは、結晶長周期ピーク強度が1.0×1062/nm3以下であることが好ましい。
結晶長周期ピーク強度はSAXSにより得られる円環平均一次元SAXSプロファイルから得ることができる。結晶長周期ピーク強度(e2/nm3)の値は、透明性及びシートの厚み精度の観点から、1.0×106以下が好ましく、さらには8.0×105以下が好ましく、特に5.0×105以下が好ましく、特にとりわけ3.0×105以下が好ましい。
本実施形態の透明シートは、連続的に製造し得ることが好ましい。そのため、シートは長尺であることが好ましく、長さ方向に50cm以上、好ましくは1m以上、より好ましくは5m以上の長尺シートであることが好ましい。なお、ここでいう長尺シートとは、連続的に生産したシートであって、シート形状の少なくとも1つの辺の長さが50cm以上であるシートを意味する。
本実施形態の透明シートは落錘衝撃強度が1.5J以上であることが好ましく、より好ましくは2J以上である。落錘衝撃強度が1.5J以上とすることにより、破壊形態が延性破壊に近い破壊形態を示し、破壊した場合の安全性に適しており、窓ガラス代替用途の場合に特に好ましい。落錘衝撃強度は、常温下において、ストライカー径が10mmφ、ストライカー重量3.2kgfを試験片に落下速度5.9m/sで衝撃を与えたときの衝撃エネルギーの値である。
次に、本実施形態の透明シートの製造方法について説明する。本実施形態において、ポリオレフィン樹脂は一般的な成形加工が可能であり、シートを押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形等の種々の成形方法で成形することが可能である。このシートは、押出、射出、プレス、スカイブ等の種々の成形方法によって得ることができる。例えば、希望する形状のスリットを設けたダイスを押出機先端に取付けて行われる押出成形や、予め円柱状に圧縮成形した成形品を切削刃により薄皮状に削った、いわゆるスカイブすることによって希望する厚さに切削する方法でもよい。また、希望する形状の金型内に樹脂を敷き詰め、所定の温度、圧力下において熱可塑性樹脂を溶融加熱した後、加圧した状態で冷却する圧縮成形によって作製してもよい。或いは、射出成形法によって低温の金型に射出成形させてシートを作製することもできる。
また、本実施形態の透明シートとしては、機械的強度及び透明性に優れるという観点から、配向性を有するポリエチレン樹脂製シートであることが好ましい。配向性ポリエチレン樹脂製シートは、ポリエチレン樹脂の融点未満の温度で、所定方向に延伸させる方法が好ましく、ガラス転移点温度以上融点未満の温度で延伸させる方法がより好ましい。
延伸時の温度が融点以上であると、延伸は容易にできるようになるが、伸長延伸後の冷却過程において再結晶化が起こり、白濁した状態に戻ってしまうため、透明性が低下する傾向にある。融点以下で延伸することにより、シートの透明性をより向上させ、かつ耐衝撃性、厚み精度、剛性に優れるシートが得ることができる。
上記したように、ポリエチレン樹脂製シートを延伸することにより、透明性の高いシートを得ることができる。延伸倍率(χ)は3倍以上が好ましく、より好ましくは4倍以上、更に好ましくは5倍以上である。ここでいう延伸倍率は、延伸前の厚み/延伸後の厚みをいい、下記式(3)により求めることができる。
χ:延伸比=t1/t2 式(3)
t1:延伸前のシート厚み(mm)
t2:延伸後のシート厚み(mm)
このようにして得られるポリエチレン樹脂製シートは、上記した可視光線に対して一層優れた透明性を発揮することができる。この場合、透明性と剛性の両立の観点から、ポリエチレンの密度は918kg/m3以上が好ましく、920kg/m3以上がより好ましく、930kg/m3がさらに好ましく、特に935kg/m3以上が好ましく、とりわけ940kg/m3以上が好ましい。
その他の加工方法としては、例えば、延伸前の原反シートとして圧縮成形により作製した円柱状の成形品から切削刃により薄皮状に削ったスカイブしたシートを圧延加工する方法がある。また、押出成形によって得られた延伸前の原反シートを圧延加工することも可能である。圧延加工に用いるシートの加工手段については特に制限されないが、原反シートの表面状態としては、表面の平滑性が良いもの、例えば切削した際にメスマークのような刃跡がないものや、押出しシートの際にメルトフラクチャー等により、表面が波状になっていないもの等が好ましい。表面平滑性が良好な原反シートを用いることにより、それにより得られる圧延シートの表面平滑性も良好となるので、シート表面における外部散乱や透明性低下を効果的に抑制することができる。従って、延伸前の原反シートとしては、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂の特性により最適な加工条件、加工方法を選択し得ることが好ましい。
延伸によりシートの透明性を改良するには、原反シートの作製方法も重要である。
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の高分子量体は、押出成形によって原反シートを作製すると、粘度が高いためにシートの表面が荒れてしまい延伸後の透明性が劣る場合がある。このため、高分子量体のポリエチレン樹脂を用いる場合には、圧縮成形により作製した円柱状の成形品から切削刃により薄皮状に削ったスカイブシートが、原反シートとしては好ましい。超高分子量ポリエチレンは、極限粘度が7g/dL以上であることが好ましい。
一方、高密度ポリエチレン(HDPE)や分子量の低いポリエチレン樹脂は、密度が高く、圧縮成形体から原反シートとしてスカイブシートを作製すると、成形体の剛性が高いためにシートがうまく削れず、いわゆるメスマークのようなナイフの傷跡等が残り、表面が荒れるため、延伸後の透明性が低下する場合がある。かかる観点から、HDPEや比較的分子量の低いポリエチレン樹脂を原料として原反シートを作製する場合には、押出シートが原反シートとしては好ましい。高密度ポリエチレンは、密度が930〜945kg/m3であることが好ましい。
原反シートの延伸手段は、圧縮成形による二軸延伸、或いは相互に逆方向に回転する一対以上のロールで圧延する延伸方法を取ることも可能であるし、端部をクランプして一軸又は二軸で延伸することでもよい。
シートの延伸時の加工温度は、上述したように融点以下の温度で行われることが好ましい。加工温度の上限は、好ましくは融点−3℃、より好ましくは融点−5℃である。また、加工温度の下限は、好ましくは融点−60℃、より好ましくは融点−30℃、更に融点−10℃である。なお、融点は、延伸前の原反シートについて、JIS K 7121:1987に規定された方法で、DSCを用いて測定し、ピークの頂点を融点とする。尚、複数のピークが認められる場合には、最も低温側のピークの値を用いる。融点以下の温度下において延伸を行う上では、ポリエチレン樹脂製シートの分子量が高いことが好ましい。分子量が高いと延伸する加工温度において樹脂の偏肉が生じ難く、所定の延伸比にまで安定的に延伸できる傾向にある。このように延伸工程においては、選択した原料の分子量、密度、融点等が重要な条件因子になる。
特に、耐衝撃性と透明性と剛性の観点から、延伸条件は、TA−TB≦90(℃)、かつTA≦Tm(℃)を満たす条件で、シートを圧延することが好ましい。(ただし、ここで、TA:圧延時の圧延ロール温度、TB:圧延ロール直前のシート表面温度、Tm:圧延前の原反シートの融点。)
TAは、設定した圧延ロールの温度であり、TBは、圧延ロールに入る直前のシートの表面温度を非接触型の温度計にて測定することができる。Tmは、上述したように、原反シートの融点をDSCにより測定することができる。
また、透明性と厚み精度と剛性の観点から、TA−TB≦90(℃)が好ましく、さらにはTA−TB≦60(℃)が好ましく、さらに特にはTA−TB≦40(℃)が好ましく、とりわけTA−TB≦20(℃)が好ましい。
本実施形態の透明シートは、単層の樹脂シートから製造することができるが、本実施形態の効果を損なわない範囲で他のフィルム、シート等と積層したり、或いはコーティング材料等を樹脂シートに塗布したりしても構わない。また、本実施形態の透明シートは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、耐候剤、着色顔料、難燃剤等の各種添加剤を樹脂に添加してもよい。
上記により得られる透明シートは、これらの特性を生かし、種々の保護カバー、自動車や建築などの窓ガラス代替、各種光学レンズ、可視透明なパーテーション、などの透明性を生かした用途に用いることが可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
測定方法及び条件
(1)密度(ρ:kg/m3
原反シートについて、JIS K 7112:1999に準拠し、密度勾配管法(23℃)により測定を行った。
(2)メルトフローレート(MFR)
ポリエチレン(PE)のMFRについては、JIS K 7210:1999に準拠し、測定を行った。
(3)極限粘度(IV)
超高分子量ポリエチレンの粘度平均分子量については、以下に示す方法によって求めた。
まず、20mLのデカリン(デカヒドロナフタレン)にポリマー20mgをいれ、150℃で2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、ポリマー5mgの場合についても測定した。ブランクとしてポリマーを入れていない、デカリンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めたポリマーの比粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)とポリマーの比粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度(η:IV)を求めた。
ηsp/C=(ts/tb−1)/0.1
(4)融点
原反シートから、試料を切り出し、約8mgを秤量し、アルミパンに入れて封入した。そして、50℃から180℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、5分間維持した後に、降温速度10℃/分で50℃まで降温させ、5分間維持した後に、再び昇温速度10℃/分で180℃まで昇温させた。2回目の昇温時における融解に伴う吸熱ピークの温度を、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製、「Pyris 1 DSC」)により測定し、融点とした。
(5)成形方法
(5−1)原反シートの作製
[スカイブシートの作製]
外径600mmφ、内径に90mmφの穴があいたドーナツ状の金型に厚みが最終的に130mm程度になるように、ポリエチレン粉末を投入し、約10MPaで30分内部のエアーを逃がし、その後、圧力を約9MPa前後、約140〜145℃の条件下で13時間加熱を行った。さらに、圧力を約9MPaに保ったまま、約7時間冷却を行った。金型から取り出したドーナツ状の成形体を2日以上室温にて放置し、内部の熱を更に徐熱することにより冷却させた。この後、ドーナツ状の成形体をスカイブマシーンに固定し、スカイブすることで厚み5mmのスカイブシートを得た。
[押出成形シートの作製]
押出し成形機として、ダイス幅400mm、リップギャップ2.5〜6mmのコートハンガーTダイを備え付けた直径40mm、L/D=35のフルフライトスクリューの単軸押し出し機を用い、スクリュー回転数を120rpm、シリンダー設定温度200℃、第一ロールと対面するロールは、いずれも鏡面ロールで、50℃に設定した。
(5−2)圧延成形
[圧延シートの作製]
上記押出し成形により得られた2.0mm厚みのシートをロール径300mmφ、ロール幅500mmの圧延ロールにより、常温で押出成形シートを任意のギャップに調整し、0.6m/分のロール回転速度で圧延を行った。圧延ロールから出た圧延シートは、引き取り速度を変えて引き取り、テンションコントローラーをモニターしながら200N以上の張力を掛けながら巻き取りを行った。巻き取ったシートは常温で数時間放置し冷却を行った。
(6)シートの厚み
最終のシートの厚みは、ミツトヨ社製、マイクロメーター(395−541:BMD−25DM)を用いて小数点以下第2位まで測定し、小数点以下第2位の値を四捨五入した。
(7)結晶配向度
成形シートを試験片として、リガク社製WAXS(Nano Viewer)を用い、以下の条件で測定を実施した。光学系は、ポイントコリメーション(1st:0.4mmφ、2nd:0.2mm、guard:0.6mmφ)を用い、シート法線方向からX線を入射(Through View)させた。検出器としてイメージングプレートを用い、カメラ長、78.8mm、測定時間、15分間照射し、円環平均WAXSプロファイル散乱像を得た。得られた円環平均WAXSプロファイルより、(110)面由来のピーク(2θ=21.2°)強度の方位角依存性から2θが21.0°< 2θ <22.0°の範囲を積算し、方位角と規格化散乱強度の関係図から180°、もしくは0°(360°)のピークをGauss関数でフィッティングし、得られたピークの半値幅(Δ)を決定し、算出式(1)により決定した。
f=1−(Δ/360°) 式(1)
(8)結晶長周期、結晶長周期強度
結晶長周期は、シートの小角X線回折(散乱)解析(SAXS)によって、求めた。
装置:Nano Viewer(株式会社リガク社製)
条件
光学系:ポイントコリメーション
X線入射方向:フィルム法線方向
測定時間:900秒
温度:常温
サンプル形状:シート状
カメラ長:647.4mm
検出器:PILATUS100K(2次元検出器)
X線波長λ:0.154nm
SAXSプロファイルにおいて、シートの配向方向に現れるピーク強度の極大を示す散乱ベクトル(式4)からθを算出し、これをブラッグの式(式5)により結晶長周期(d)が算出される。
q=4π sinθ/λ 式(4)
2d sinθ=λ 式(5)
結晶長周期強度(e2/nm3)については、円環平均一次元SAXSプロファイルの縦軸の値として得た。
(9)全光線透過率
全光線透過率は、JIS K 7361−1:1997に準じて測定した。測定機器は日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。
(10)落錘衝撃強度:
ROSAND社製 IFW試験機を用い、縦100mm、横100mmの試験片を作成し、常温下において、ストライカー径が10mmφ、ストライカー重量3.2kgfを試験片に落下速度5.9m/sで衝撃を与えた。このときの衝撃エネルギーの値を落錘衝撃強度の値とした。
(11)シートの厚みムラ精度:
シートをA4サイズに切り出し(延伸方向が長手方向)、9か所の厚み測定を実施する。これを5枚について実施し、以下の式により厚み精度を5点算出し、最大と最小を除き、残った3点のうち、最大の値を採用する。
(厚み精度)(%)=((厚みの最大値)−(厚み最小値))/(厚みの平均値)×100
(12)剛性
最終シート、すなわち圧延した場合は圧延後のシートについて、圧延しない場合は原反シートについて、幅10mm、長さ270mmのサイズに切り出し、固定しろを40mmとって片持ち固定した。残り230mm長さを固定台からつきだした状態にして、固定側と反対の端が水平状態からたわんだ量H(mm)を測定し、以下の判断基準にもとづいて、シート剛性の判定を行った。
◎:0mm≦H<1mm
○:1mm≦H<3mm
△:3mm≦H<6mm
×:6mm≦H
(実施例1)
メタロセン系触媒を用いて得られた、高密度ポリエチレン(HDPE;密度942kg/m3、MFR=1.5g/10分)を用いて押出し原反シートを作製した。押出し原反シートの厚みは1.9mmに調整した。この原反シートの融点Tmは、127℃であった。この原反シートを、ロールGAPを0.25mm、TA:ロール温度を120℃、TB:圧延前の原反シートの表面温度を60℃、ロール回転数を0.6m/分とし、ロール圧延後のシートを330Nの張力を掛けて圧延シートを巻き取ったところ、最終のシート厚みは0.3mmであった。このときの結晶配向度は0.965であった。その他の物性については表1に記載した。
(実施例2)
リップギャップが6mmのTダイを用い、原反シートの厚みを5mmとし、ロールGAPを0.75mmとして、ロール圧延したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られたシートの厚みは、1.0mmであった。このときの結晶配向度は0.946であった。その他の物性については表1に記載した。
参考例3)
TB:圧延前の原反シートの表面温度を25℃としたこと以外は、実施例2と同様に実
施した。最終のシート厚みは1.1mmであった。このときの結晶配向度は0.891で
あった。その他の物性については表1に記載した。
(比較例1)
実施例1と同様の高密度ポリエチレン(HDPE;密度942kg/m3、MFR=1.5g/10分)を用いて、実施例2と同様に、押出し原反シートを作製した。ただし、押出しシート原反の厚みは1.0mmになるように調整した。このシートの結晶配向度は、0であった。このシートを、さらに圧延することなく、その他の物性評価を実施し、その結果を表1に示した。
(比較例2)
TB:圧延前の原反シートの表面温度を80℃とし、圧延ロールGAPを1.5mmとしたこと以外は、実施例2と同様に実施した。最終のシート厚みは1.7mmであった。このときの結晶配向度は0.782であった。その他の物性については表1に記載した。
参考例4)
1−ヘキセンをコモノマーとする直鎖状低密度ポリエチレン(密度927kg/m3、MFR=2.0g/10分)を用いたこと以外は、実施例2と同様に実施した。得られたシートの厚みは、1.0mmであった。このときの結晶配向度は0.933であった。その他の物性については表1に記載した。
参考例5)
1−ブテンをコモノマーとする超高分子量ポリエチレン(密度918kg/m3、IV=17dL/g)を用いて、上記(5−1)の原反シート作製における、スカイブシート作製例に従って、5mm厚みの原反シートを得たこと以外は、実施例2と同様に圧延を実施した。得られたシートの厚みは、1.2mmであった。このシートの結晶配向度は0.941であった。その他の物性については表1に記載した。
(比較例3)
スカイブシートの厚みを1.0mmになるように調整したことと、ロール圧延をしなかったこと以外は、参考例5と同様に実施した。このシートの結晶配向度は0であった。その他の物性については表1に記載した。
(比較例4)
圧延ロール温度を140℃(融点を超える温度)としたこと以外は、実施例2と同様に実施した。得られたシートの厚みは、1.0mmであった。このときの結晶配向度は0.223であった。その他の物性については表1に記載した。
Figure 0005942106
本発明の透明シートは、透明性が高く、剛性や軽量性に優れる。更に、衝撃強度や厚み精度も高いという特性を有している。したがって、本発明の透明シートは、種々の保護カバー、自動車や建築などの窓ガラス代替、各種光学レンズ、可視透明なパーテーション、などの透明性を生かした用途に用いることが可能である。

Claims (8)

  1. ポリオレフィン樹脂を含み、結晶配向度が、0.92以上であり、かつシート厚みが0.2mm以上であり、密度が930kg/m 3 以上であり、かつ135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7g/dL未満である透明シート。
  2. シート厚みが0.3mm以上である、請求項に記載の透明シート。
  3. シート厚みが0.5mm以上である、請求項1又は2に記載の透明シート。
  4. シート厚みが0.5mm以上、1.5mm以下である、請求項1〜のいずれかに記載
    の透明シート。
  5. 結晶長周期が30nm以下である、請求項1〜のいずれかに記載の透明シート。
  6. 結晶長周期強度が、1.0×1062/nm3以下である、請求項に記載の透明シート。
  7. 前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の透明シート。
  8. TA−TB≦90(℃)、かつTA≦Tm(℃)を満たす条件で、シートを圧延することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の透明シートを製造する方法。(ただし、TA:圧延時の圧延ロール温度、TB:圧延ロール直前のシート表面温度、Tm:圧延前の原反シートの融点。)
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