JP5302534B2 - 超高分子量ポリオレフィン製シート及びその製造方法 - Google Patents
超高分子量ポリオレフィン製シート及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5302534B2 JP5302534B2 JP2007330672A JP2007330672A JP5302534B2 JP 5302534 B2 JP5302534 B2 JP 5302534B2 JP 2007330672 A JP2007330672 A JP 2007330672A JP 2007330672 A JP2007330672 A JP 2007330672A JP 5302534 B2 JP5302534 B2 JP 5302534B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- molecular weight
- weight polyolefin
- sheet
- ultra
- high molecular
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
- Casting Or Compression Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
Description
近年、この種の用途においては、例えば、スキーソールの底部に描かれた文字や描写図等の意匠性を高める等の目的で、透明性に優れるシートが求められている。しかしながら、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンの結晶性樹脂から得られる成形体は、通常、成形体自身が白色であり、透明性の乏しい白濁した状態にある。すなわち、透明性に関して十分に性能を満たすものが、未だ得られていないのが現状である。
また、同じ透明性を有していても、密度や結晶化度がより高い超高分子量ポリエチレン成形体が望まれる。すなわち、透明性を高めるために密度を下げて結晶化度を低くすると、その成形体の引張降伏強度や引張弾性率、曲げ強度等の機械物性が低下するので好ましくない。
ここで、透明性を改良するために、より多くのα−オレフィン等のコモノマーを共重合させて密度をさらに低下させることは可能である。しかしながら、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応が進み、密度が低下するにつれ、分子量が低下してしまう等の理由から、かかる改良によって、分子量が高く且つ密度の低い超高分子量ポリエチレンを得ることは、非常に困難である。しかも、より多くのα−オレフィン等のコモノマーを共重合させると、不経済であるばかりか、密度の低下とともに剛性等の機械物性が著しく低下する。したがって、かかる手法により、高い透明性と機械物性とを兼ね備えた、十分な性能を得ることはできない。
特に、結晶性樹脂であるポリオレフィンは、透明性や耐熱性(収縮性)といった特性が他の非晶性樹脂とは大きく挙動が異なる。したがって、このような新しい機能を達成できれば、具体的には、比較的肉厚でありながらも透明性、耐熱性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン成形体を実現できれば、新たな用途が広がると期待される。
しかしながら、超高分子量ポリオレフィン重合体は、その分子量の高さゆえに絡み合いが強いので、低分子量ポリオレフィンや高密度ポリオレフィン等とは異なり、素材選定の幅や製造工程の自由度が狭く、肉厚で透明性、耐熱性及び機械物性のそれぞれの機能を具備したものを実現することができなかった。
<1> 135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン重合体を含み、密度が925kg/m3を超える超高分子量オレフィン成形体を、少なくとも一方向に圧延して得られる、厚みが0.3mm以上であり、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが50%以下である、超高分子量ポリオレフィン製シート。
<2> 下記式(1)で示される熱収縮率(γ)が10%以下である、<1>に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 超高分子量ポリオレフィン製シート(45mmφの円形シート状サンプル)の初期外径
L : 130℃、30分間の状態調節後の超高分子量ポリオレフィン製シート(45mmφの円形シート状サンプル)の最小半径
<3> 前記超高分子量ポリオレフィン重合体は、エチレンの単独重合体、又は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなる、<1>又は<2>に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
<4> 前記超高分子量ポリオレフィン重合体は、前記α−オレフィンの含有量が0.5mol%以下である、<3>に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
<5> 厚さ1mm換算時の厚み方向における内部ヘイズが50%以下である、<1>から<4>のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
<6> 前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、下記式(2)で表される圧延比(χ)で3倍以上に圧延して得られる、<1>から<5>のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :圧延前の厚み(mm)
t2 :圧延後の厚み(mm)
<7> <1>から<6>のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートからなる、スキー・スノーボード用ソール材。
<8> <1>から<6>のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートからなる、防護用盾。
前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、該超高分子量ポリオレフィンの融点(Tm)未満、常温以上の温度で、少なくとも一方向に圧延し、厚み0.3mm以上、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが50%以下である圧延成形シートを作製する工程と
を有する、超高分子量ポリオレフィン製シートの製造方法。
<10> 前記圧延成形シートを作製する工程においては、前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、下記式(2)で表される圧延比(χ)で3倍以上に圧延する、<9>に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートの製造方法。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :圧延前の厚み(mm)
t2 :圧延後の厚み(mm)
すなわち、本実施形態は、特定の超高分子量ポリオレフィン重合体を用いて得た超高分子量ポリオレフィン成形体を、さらに特定の条件において圧延させることにより、透明性に優れるばかりでなく、且つ機械物性や耐熱性に優れる超高分子量ポリオレフィン製シートを得るものである。
超高分子量ポリオレフィン重合体の具体例としては、例えば、エチレンの単独共重合体、プロピレンの単独共重合体、又は、エチレン或いはプロピレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。ここで、炭素数3〜10のα−オレフィンの具体例としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらのなかでも、超高分子量ポリオレフィン重合体は、経済性等の観点から、エチレンの単独共重合体、又は、エチレンを主体とする上記α−オレフィンとの共重合体が好適に用いられ、とりわけ、エチレンにα−オレフィン等のようなコモノマーを分岐として導入した共重合体が好適に用いられる。
超高分子量ポリエチレン重合体は、例えば、エチレンをチーグラー触媒により単独で重合したり、このようにして得られる所謂ホモポリエチレンと呼ばれる密度の高いものに、さらに炭素数3〜10程度のα−オレフィンを共重合させることによって得ることができる。
本実施形態の超高分子量ポリオレフィン製シートを得るためには、上述した特定の超高分子量ポリオレフィン重合体を含む、圧延前の予備成形体である超高分子量ポリオレフィン成形体(以下、「成形シート」ともいう)を準備する必要がある。
かかる超高分子量ポリオレフィン成形体は、例えば、パウダー状の超高分子量ポリオレフィン重合体(原料パウダー)を、一般的な圧縮成形、押出成形(スクリュー押出、ラム押出)又は射出成形等することにより、作製することができる。また、圧縮成形等して得られる一次成形品を、さらにスカイブ等により切削することによっても圧延前の超高分子量ポリオレフィン成形体を得ることができる。
なお、原料パウダーの嵩密度は、添加剤、例えば、ステアリン酸カルシウム等の滑剤を添加することにより増大し得ることが一般的に知られている。一方、原料パウダーに添加剤を含ませると、成形時の熱融着性が悪化したり、添加剤が成形品表面にブリードして表面が汚染されたりする等の不都合が発生し得ることが一般的に知られている。以上のことから、添加剤が存在しない状態で原料パウダーの嵩密度を高めることが好ましい。
前記のように予め作製した特定の超高分子量ポリオレフィン成形体に、圧延等の2次加工を施すことによって、本実施形態の透明性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン製シート(以下、「圧延成形シート」ともいう)が得られる。具体的には、例えば、予め余熱されたシート状の超高分子量ポリオレフィン成形体をロール圧延等により厚み0.3mm以上に圧延することで、かかる超高分子量ポリオレフィン製シートが得られる。
なお、パーオキサイド等を用いて架橋させることにより、超高分子量ポリオレフィン成形体の分子量(極限粘度)・密度を調整することも可能である。しかしながら、架橋が不均一に起こると局所的に機械物性が低下したり、結晶化度が異なるために透明性が低下したりする等の不都合が生じ得るので、均一性の観点から、原料側で分子量(極限粘度)・密度を調整することが好ましい。
以上のことから、透明性に優れる圧延成形シートを得るためには、原料パウダー等を一旦溶融して圧縮成形、押出成形又は射出成形等して得た超高分子量ポリオレフィン成形体を、融点以下の温度で圧延することが好ましい。より具体的には、圧延するシートの温度は、示差走査型熱量計(DSC)にて観測される、超高分子量ポリオレフィン成形体が溶融し始める開始温度から、融解時に測定される発熱量(ΔH)の全面積の25%以下、より好ましくは20%以下となる面積比に達する温度の範囲内であることが好ましい。超高分子量ポリオレフィン成形体の溶融開始温度未満で圧延を行なうと、圧延前の超高分子量ポリオレフィン成形体の剛性が高く圧縮し難い傾向にある上、また、圧延ロールに対してスリップが生じ易くなり圧延することが困難になる傾向にある。一方、融解時に測定される発熱量(ΔH)の全面積の25%を超える面積比に達する温度よりも高い温度で圧延を行なうと、圧延後の冷却過程において、部分的に溶解した成分の再結晶化が生じて、透明性が低下する傾向にある。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1:圧延前の厚み(mm)
t2:圧延後の厚み(mm)
なお、本明細書において、超高分子量ポリオレフィン製シートの厚み方向における内部ヘイズは、JIS−K7136に準拠して測定した値とする。ここで、ヘイズは超高分子量ポリオレフィン製シートの表面のキズや表面粗さにより影響を受け得るので、本明細書においては、外部ヘイズの影響を抑制すべく、水やアルコール類等に浸漬した条件下で内部ヘイズの測定を実施した。
経験上、超高分子量ポリオレフィン製シートのヘイズの値と厚みの関係は、(ヘイズHt;%)=a×t(シート厚み;mm)+bの関係式により定義可能であり、a及びbはシート密度と関連があり、しかも、超高分子量ポリオレフィン製シートの厚み2mm付近を境に、ヘイズの厚み依存性が異なることが見出されている。
すなわち、厚み2mm以下の超高分子量ポリオレフィン製シートの場合、上記ヘイズの厚み依存性の関係式における傾きaは、a=309×d(密度:g/cm3)−264により求めることができる。したがって、得られたパラメータaと測定対象の超高分子量ポリオレフィン製シートの既知の厚みt(mm)及びヘイズの値Ht(%)とを上記の関係式に挿入することにより、パラメータbを算出できる。このようにして完成した関係式から、t=1の場合である厚み1mmにおけるヘイズの値が外挿される。
一方、超高分子量ポリオレフィン製シートの厚みが2mmを超える場合は、上記ヘイズの厚み依存性の関係式における傾きaは、a=−640×d(密度:g/cm3)+600により求めることができる。したがって、上記と同様に、得られたパラメータaと測定対象の超高分子量ポリオレフィン製シートの既知の厚みt(mm)及びヘイズの値Ht(%)とを上記の関係式に挿入することにより、パラメータbを算出でき、完成した関係式から、t=1の場合である厚み1mmにおけるヘイズの値が外挿される。
上記の経験式は、超高分子量ポリオレフィン製シートの厚みによらずにヘイズを算定するために、本発明者が鋭意検討した結果、ヘイズの値がある特定の厚みを境に挙動が異なること、さらに、ヘイズの厚み依存性を示す相関式が成形体密度に依存することを見出し、完成するに至ったものである。かかる経験式は、特定の厚みに換算したときの超高分子量ポリオレフィン製シートのヘイズを決める上で、重要な指標となるパラメータとなる。
なお、2mm以下の超高分子量ポリオレフィン製シートにおけるヘイズの厚み依存性の傾きaは、2mm以上の超高分子量ポリオレフィン製シートにおけるヘイズの厚み依存性の傾きaよりも大きい傾向を示す。また、密度の高い超高分子量ポリオレフィン製シートは、厚みが2mm以下のものであっても、ヘイズ実測において80%以上を示すものが多く、2mm以下のヘイズと厚みの関係式で2mmの厚みのヘイズを外挿すると100%を超えてしまう場合がある。この場合は、超高分子量ポリオレフィン製シートの厚みが2mm以下であっても、2mm以上のヘイズの厚み依存性関係式で外挿したものがより実際に近い値となる。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 超高分子量ポリオレフィン製シート(45mmφの円形シート状サンプル)の初期外径
L : 130℃、30分間の状態調節後の超高分子量ポリオレフィン製シート(45mmφの円形シート状サンプル)の最小半径
20mlのデカリンにポリマー20mgを入れ、150℃、2時間攪拌してポリマーを溶解させた。その溶液を135℃の高温糟で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。なお、ブランクとしてポリマーを入れていない、デカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。そして、以下の式にしたがい、ポリマーの比粘度(ηsp/C)をプロットし、濃度0に外挿した極限粘度(η)を求めた。
ηsp/C = (ts/tb−1)/0.1
α−オレフィンの含有量(mol%)の測定は、G.J.Ray等のMacromolecules、10,773(1977)に開示された方法に準じて行ない、13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度よりα−オレフィンの含有量を算出した。使用した機器は、日本電子製Lambda−400であった。使用した溶媒はo−オルトジクロロベンゼン−d4であり、測定温度は140℃、観測周波数は100MHz(13C)、パルス幅45°(7.5μsec)、積算回数は10,000回であった。測定基準はPE(−eee−)シグナルであり、29.9ppmとした。
超高分子量ポリエチレン重合体パウダーの嵩密度は、JIS K−6722−1995に準拠して測定した。
パウダー状の超高分子量ポリエチレン重合体サンプル約8mgをアルミパンに入れて封入し、50℃から180℃まで10℃/minで昇温させ、5分間状態を保った後、10℃/minの降温速度で50℃まで降温させ、再び10℃/minで180℃まで昇温させた。このときの融解に伴う吸熱ピークの温度を、融点として測定した。
各実施例及び各比較例の超高分子量ポリオレフィン成形体、各実施例の超高分子量ポリオレフィン製シート、並びに、各比較例の最終加工品(成形シート又は圧延成形シート)の厚みは、ミツトヨ製マイクロメーター(395−541:BMD−25DM)を用いて測定した。なお、厚みは、小数点以下第3位まで測定し、小数点第3位を四捨五入した値とした。
ASTM D 1505にしたがって測定した。なお、超高分子量ポリオレフィン重合体(原料)の密度の測定においては、後述するプレスシートから切り出して得た切片を、120℃で1時間アニーリングし、その後25℃で1時間冷却したものを、試験片として使用した。また、各実施例の超高分子量ポリオレフィン成形体及び超高分子量ポリオレフィン製シート、並びに、各比較例成形シート及び最終加工品(成形シート又は圧延成形シート)の密度の測定においては、各々のシートから切り出して得た切片を、120℃で1時間アニーリングし、その後25℃で1時間冷却したものを、試験片として使用した。
密度の測定において使用するプレスシートは、縦200mm、横200mm、厚み4mmの金型を用い、ISO11542−2(JIS K6936−2:1999)に準拠して、以下の条件で超高分子量ポリオレフィン重合体(原料)をプレスすることにより作製した。
まず、厚さ5mmの平滑な鉄板上に厚さ0.1mmのアルミニウム板を載せ、さらに厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ルミラー、PETフィルム、東レ株式会社製)を載せた。このPETフィルム上に、上記の縦200mm、横200mm、厚み4mmの金型を載せ、この金型内に、それぞれ所定量の超高分子量ポリエチレン重合体(粉末)を入れ、この粉末上に前述のポリエチレンテレフタレートフィルムを載せ、さらに前述のアルミニウム板を載せ、さらに前述の鉄板を載せた。
そして、上記の金型を、210℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、210℃で300秒間加熱後、エアー抜きを行ない、100K/Gで30分の加圧を行った。加圧終了後、サンプルを取り出し、取り出してから5秒後に25℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、25℃で100K/Gにて600秒間加圧しながら15±2℃/分の冷却速度で冷却した。冷却速度は金型を厚紙で挟むことにより調節した。冷却後に金型からサンプルを取り出すことで、目的とするプレスシートを得た。
各実施例及び各比較例の超高分子量ポリオレフィン成形体の厚み方向の寸法を圧延前/圧延後で測定し、上記式(2)に基づいて、圧延前の厚みを圧延後の厚みで除して圧延比を算出した。なお、圧延後の寸法測定は、圧延工程後に室温で30分放置させた後に行った。
各実施例の超高分子量ポリオレフィン製シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は圧延成形シート)から、45mmφの円形シート状のサンプルを打ち抜きし、この円形シート状サンプルを、温度130℃に保持した恒温乾燥機に30分間入れた後、室温にて30分間放冷し、状態調節を行った。この状態調節前後の寸法を測定し、上記式(1)に基づいて熱収縮率を算出した。ここでは、圧延方向による熱収縮率の方向異方性の影響を均一化するために、円形シート状サンプルによる測定を行った。
内部ヘイズは、各実施例の超高分子量ポリオレフィン製シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は圧延成形シート)を試験片として用いて、JIS−K7136に準拠して測定した。ここでは、外部ヘイズの影響を抑制すべく、石英ガラス製ホルダーに和光純薬製特級エタノールを充填し、この中に試験片を入れて内部ヘイズを測定した。測定機器は、日本電色工業株式会社 ヘーズメーターNDH2000を用いた。
全光線透過率Tは、各実施例の超高分子量ポリオレフィン製シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は圧延成形シート)を試験片として用いて、JIS−K7316−1に準拠して測定した。測定機器は日本電色工業株式会社 ヘーズメーターNDH2000を用いた。
各実施例の超高分子量ポリオレフィン製シート及び各比較例の最終加工品(成形シート又は圧延成形シート)を打ち抜いて、JIS K7113に記載のJIS 2号ダンベル試験片を作製した。得られたダンベル試験片を用いて、引張速度50mm/分、温度23℃の条件下において引張試験を行ない、引張降伏強度及び引張破断伸びを測定した。また引張試験においては引張最大応力を指標とした。
<超高分子量ポリオレフィン成形体の作製>
まず、外径600mmφ、内径90mmφの中空ドーナツ状の金型内に、厚みが最終的に130mm程度になるように、超高分子量ポリエチレン重合体(サンファインTM UH900)を投入し、約100K/Gで30分内部のエアーを逃がし、その後、圧力を約90K/G前後、約140〜150℃の条件下で13時間加熱を行った。さらに、圧力を約90K/Gに保ったまま、約7時間冷却を行った。そして、金型から取り出した円柱状(中空ドーナツ状)の肉厚成形品を48時間室温にて放置し、内部の熱をさらに徐熱することにより冷却させた。このようにして得られた円柱状(中空ドーナツ状)の肉厚成形品をスカイブマシーンに固定し、表1に記載の厚みにスカイブして、実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体(スカイブシート)を作製した。この実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体の密度は、944kg/m3であった。
<超高分子量ポリオレフィン製シートの作製>
実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体を、槽内で5分から10分間滞留するように、160℃から170℃の予備加熱槽に連続で通過させ、圧延ロール直前の温度が115℃から125℃となるように状態調節を行った。状態調節前の実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体の厚みは、3.90mmであった。
次に、状態調節後の実施例1の超高分子量ポリオレフィン成形体を連続で、ロール径300mmφ、ロール長400mm、ギャップ0.6mmの圧延ロール機を用いて、ロール温度130℃及びロール回転数2.0m/分の条件で通過させて圧延した後、常温で24時間放置して冷却することにより、実施例1の超高分子量ポリエチレン製シートを作製した。
得られた実施例1の超高分子量ポリエチレン製シートの厚みは、0.78mmであった。このシートの厚み方向の内部ヘイズは13.2%であり、全光線透過率Tは93.6%であった。また、このシートの圧延比は5.0倍であり、熱収縮率は3.4%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
圧延処理時のギャップを0.8mmにすること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の超高分子量ポリエチレン成形体及び超高分子量ポリエチレン製シートを作製した。
得られた実施例2の超高分子量ポリエチレン製シートの厚みは0.96mmであった。このシートの厚み方向の内部へイズは24.9%であり、全光線透過率Tは89.5%であった。また、このシートの圧延比は4.1倍であり、熱収縮率は4.0%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
実施例1の肉厚成形品を表1に記載の厚みにスカイブして、比較例1の超高分子量ポリエチレン成形体(スカイブシート;最終加工品)を作製した。
得られた比較例1のスカイブシートの厚みは0.97mmであった。このシートの厚み方向の内部へイズは98.5%であり、全光線透過率Tは65.5%であった。また、このシートの熱収縮率は0.9%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
実施例1の肉厚成形品を表1に記載の厚みにスカイブして、比較例2の超高分子量ポリエチレン成形体(スカイブシート;最終加工品)を作製した。
得られた比較例2のスカイブシートの厚みは0.49mmであった。このシートの厚み方向の内部へイズは84.1%であり、全光線透過率Tは58.2%であった。また、このシートの熱収縮率は0.4%であった。表1にその他の評価結果を併せて示す。
圧延処理時のギャップを1.2mmにすること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例3の超高分子量ポリエチレン成形体(スカイブシート)及び圧延成形シート(最終加工品)を作製した。
得られた比較例3の圧延成形シートの厚みは1.41mmであった。このシートの厚み方向の内部へイズは61.4%であり、全光線透過率Tは64.5%であった。また、このシートの圧延比は2.8倍であり、熱収縮率は20.4%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
サンファインTM UH900の代わりにサンファインTM UL901を用いて肉厚成形品を作製し、この肉厚成形品を表1に記載の厚みにスカイブすること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例4の超高分子量ポリエチレン成形体(スカイブシート;最終加工品)を作製した。比較例4のスカイブシートの密度は、924kg/m3であった。
得られた比較例4のスカイブシートの厚みは0.97mmであった。このシートの厚み方向の内部へイズは66.1%であり、全光線透過率Tは69.6%であった。また、このシートの熱収縮率は1.4%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
比較例4の肉厚成形品を表1に記載の厚みにスカイブして、比較例5の超高分子量ポリエチレン成形体(スカイブシート;最終加工品)を作製した。
得られた比較例5のスカイブシートの厚みは0.50mmであった。このシートの厚み方向の内部へイズは53.9%であり、全光線透過率Tは82.5%であった。また、このシートの熱収縮率は2.4%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
比較例4の肉厚成形品を表1に記載の厚みにスカイブして、比較例6の超高分子量ポリエチレン成形体(スカイブシート)を作製し、この比較例6のスカイブシートを、槽内で10分から20分間滞留するように、120℃から130℃の予備加熱槽に連続で通過させ、圧延ロール直前の温度が105℃から115℃となるように状態調節を行った。状態調節後の比較例6のスカイブシートの厚みは、3.90mmであった。
次に、状態調節後の比較例6のスカイブシートを、ロール径300mmφ、ロール長400mm、ギャップ0.8mmの圧延ロール機を用いて、ロール温度120℃及びロール回転数1.0m/分の条件で通過させて圧延した後、常温で24時間放置して冷却することにより、比較例6の圧延成形シート(最終加工品)を作製した。
得られた比較例6の圧延成形シートの厚みは、1.21mmであった。このシートの厚み方向の内部ヘイズは4.5%であり、全光線透過率Tは87.0%であった。また、このシートの圧延比は3.2倍であり、熱収縮率は67.2%であった。表1に、その他の評価結果を併せて示す。
Claims (11)
- 135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン重合体を含み、密度が925kg/m3を超える超高分子量ポリオレフィン成形体を、融点以下の温度で少なくとも一方向に圧延して得られる、厚みが0.3mm以上であり、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが50%以下であり、全光線透過率が89.5%以上である、超高分子量ポリオレフィン製シート。
- 下記式(1)で示される熱収縮率(γ)が10%以下である、請求項1に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
γ(%)=100×(L0−L)/L0 ・・・ 式(1)
γ : 熱収縮率
L0 : 超高分子量ポリオレフィン製シート(45mmφの円形シート状サンプル)の初期外径
L : 130℃、30分間の状態調節後の超高分子量ポリオレフィン製シート(45mmφの円形シート状サンプル)の最小半径 - 前記超高分子量ポリオレフィン重合体は、エチレンの単独重合体、又は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなる、請求項1又は2に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
- 前記超高分子量ポリオレフィン重合体は、前記α−オレフィンの含有量が0.5mol%以下である、請求項3に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
- 厚さ1mm換算時の厚み方向における内部ヘイズが50%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
- 前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、下記式(2)で表される圧延比(χ)で3倍以上に圧延して得られる、請求項1から5のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シート。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :圧延前の厚み(mm)
t2 :圧延後の厚み(mm) - 請求項1から6のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートからなる、
スキー・スノーボード用ソール材。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートからなる、
防護用盾。 - 135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度が7dl/g以上である超高分子量ポリオレフィン重合体を含み、密度が925kg/m3を超える超高分子量ポリオレフィン成形体を準備する工程と、
前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、該超高分子量ポリオレフィンの融点(Tm)未満、常温以上の温度で、少なくとも一方向に圧延し、厚み0.3mm以上、且つ、該厚み方向における内部ヘイズが50%以下であり、全光線透過率が89.5%以上である圧延成形シートを作製する工程と
を有する、超高分子量ポリオレフィン製シートの製造方法。 - 前記圧延成形シートを作製する工程においては、前記超高分子量ポリオレフィン成形体を、下記式(2)で表される圧延比(χ)で3倍以上に圧延する、請求項9に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートの製造方法。
χ=t1/t2 ・・・ 式(2)
t1 :圧延前の厚み(mm)
t2 :圧延後の厚み(mm) - 前記圧延成形シートを作製する工程においては、115℃から125℃となるように状態調節を行った前記超高分子量ポリオレフィン成形体を用いる、請求項9又は10に記載の超高分子量ポリオレフィン製シートの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007330672A JP5302534B2 (ja) | 2007-12-21 | 2007-12-21 | 超高分子量ポリオレフィン製シート及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007330672A JP5302534B2 (ja) | 2007-12-21 | 2007-12-21 | 超高分子量ポリオレフィン製シート及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009149816A JP2009149816A (ja) | 2009-07-09 |
JP5302534B2 true JP5302534B2 (ja) | 2013-10-02 |
Family
ID=40919327
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007330672A Expired - Fee Related JP5302534B2 (ja) | 2007-12-21 | 2007-12-21 | 超高分子量ポリオレフィン製シート及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5302534B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11279419B2 (en) | 2019-03-29 | 2022-03-22 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Member for automobile roof and method for producing member for automobile roof |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20130329765A1 (en) * | 2010-12-13 | 2013-12-12 | The Japan Atomic Power Company | Infrared Transmissive Protective Cover, Method for Manufacturing the Same and Monitoring Method Using the Same |
JP5942106B2 (ja) * | 2011-12-01 | 2016-06-29 | 旭化成株式会社 | ポリオレフィン樹脂製透明シート |
US10392481B2 (en) * | 2013-05-26 | 2019-08-27 | Reliance Industries Limited | High strength polyethylene products and a process for preparation thereof |
JP6705467B2 (ja) * | 2018-04-16 | 2020-06-03 | 東ソー株式会社 | 超高分子量ポリエチレン製圧縮成形体 |
JP6604398B2 (ja) * | 2018-04-18 | 2019-11-13 | 東ソー株式会社 | 超高分子量ポリエチレン製圧延成形体 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS55135630A (en) * | 1979-04-10 | 1980-10-22 | Nitto Electric Ind Co Ltd | Improvement of characteristics of superhigh molecular polyethylene sheet |
JPS59215826A (ja) * | 1983-05-24 | 1984-12-05 | Mitsui Petrochem Ind Ltd | 超高分子量ポリエチレンフイルムの製造方法 |
JP2938613B2 (ja) * | 1990-11-01 | 1999-08-23 | 日石三菱株式会社 | スプリット化ポリエチレン延伸材料およびその製造方法 |
-
2007
- 2007-12-21 JP JP2007330672A patent/JP5302534B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11279419B2 (en) | 2019-03-29 | 2022-03-22 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Member for automobile roof and method for producing member for automobile roof |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2009149816A (ja) | 2009-07-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5072040B2 (ja) | 透明性及び機械物性に優れる超高分子量ポリオレフィン伸長成形シート及びその製造方法 | |
JP5302534B2 (ja) | 超高分子量ポリオレフィン製シート及びその製造方法 | |
EP2178689B1 (en) | Process for manufacturing a polyethylene film with high tensile strength and high tensile energy to break | |
KR0169075B1 (ko) | 프로필렌 중합체 수지 압출 발포체 | |
EP1878764B1 (en) | High density polyethylene | |
KR20180122459A (ko) | 2축 연신 적층 폴리프로필렌 필름 | |
EA029677B1 (ru) | Полиэтилен низкой плотности для экструзионного покрытия | |
EP2077296B1 (en) | Extrusion Coating Polyethylene Composition | |
KR102593205B1 (ko) | 폴리프로필렌계 적층 필름 | |
US20130041124A1 (en) | Polymer article and method for producing polymer article | |
WO2008112116A1 (en) | Resin compositions for producing biaxially oriented polypropylene films | |
CN115175960A (zh) | 聚乙烯粉末及其成型体 | |
JP2023506064A (ja) | シート及び物品に適した発泡ポリプロピレン組成物 | |
KR101871737B1 (ko) | 복합 수지 입자, 발포성 입자, 예비 발포 입자 및 발포 성형체 | |
CN114466871B (zh) | 聚乙烯粉末及其成型体 | |
JP5356679B2 (ja) | 超高分子量ポリオレフィンシートの製造方法 | |
CN110582536A (zh) | 聚乙烯组合物 | |
US20110178262A1 (en) | Method for improving the bubble stability of a polyethylene composition suitable for blown film extrusion process | |
JP2000313751A (ja) | 透明性に優れる高強度高分子量ポリオレフィンフィルムおよびその製造方法 | |
JP7189477B1 (ja) | ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及び発泡粒子成形体の製造方法 | |
WO2023076818A1 (en) | Highly oriented linear low density polyethylene films with outstanding processability and mechanical properties | |
WO2023012125A1 (en) | Polyethylene film | |
JP2000313752A (ja) | 高伸びを有する高分子量ポリオレフィン透明フィルムおよびその製造方法 | |
Fallatah | A study of mechanical properties and processability of blown films using b-LLDPE and LDPE blends | |
JP2000313070A (ja) | 透明性の改善された高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20101221 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20120118 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120209 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120409 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130108 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130129 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130617 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130621 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5302534 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |