JP2000313070A - 透明性の改善された高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法 - Google Patents

透明性の改善された高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法

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JP2000313070A
JP2000313070A JP11123238A JP12323899A JP2000313070A JP 2000313070 A JP2000313070 A JP 2000313070A JP 11123238 A JP11123238 A JP 11123238A JP 12323899 A JP12323899 A JP 12323899A JP 2000313070 A JP2000313070 A JP 2000313070A
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film
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weight polyolefin
high molecular
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JP11123238A
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Akinao Hashimoto
暁直 橋本
Katsunari Matsumoto
克成 松本
Kazuo Yagi
和雄 八木
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Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 透明性が改善され、かつ機械軸方向(MD)
とその直交方向(TD)の物性バランスに優れる高分子
量ポリオレフィンフィルムの製造方法を提供する。 【解決手段】 透明性に優れる高分子量ポリオレフィン
フィルムの製造方法は、極限粘度[η]が4dl/g以
上の高分子量ポリオレフィンよりなり、かつ溶剤や可塑
剤を実質的に使用することなく得られた処理前フィルム
を、0.1MPa以上の圧力と、該処理前フィルムの融
点−30℃から分解温度までの温度において圧縮加熱処
理することからなる。処理前フィルムとしては、一軸延
伸フィルム、二軸延伸フィルムまたはインフレーション
フィルムが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明性の改善され
た高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】高分子量ポリオレフィンは、汎用のポリ
オレフィンに比べ、耐衝撃性、耐磨耗性、耐薬品性、引
張強度等に優れており、エンジニアリングプラスチック
としてその用途が拡がりつつある。しかしながら、高分
子量ポリオレフィンは汎用のポリオレフィンに比較して
溶融粘度が極めて高く流動性が悪いため、従来のTダイ
成形、インフレーションフィルム成形等の押出成形や射
出成形によって成形することは非常に難しく、そのほと
んどは圧縮成形によって成形されており、一部ロッド等
が極く低速で押出成形されている状況にあった。
【0003】そこで本出願人により、この成形性に劣る
高分子量ポリオレフィンを使用したフィルムについて鋭
意検討された結果、以下の知見が得られている。特公平
6−55433号公報において、極限粘度[η]が5d
l/g以上の超高分子量ポリエチレンからなり、縦方向
の破断点抗張力が800kg/cm2以上、横方向の破
断点抗張力が700kg/cm2以上、厚さが10〜1
000μmであることを特徴とするインフレーションフ
ィルムが開示されている。
【0004】また、特開平2−30514号公報におい
て、極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリ
エチレンからなり、厚さが0.5〜500μm、破断点
抗張力が700kg/cm2以上である超高分子量ポリ
エチレン二軸延伸フィルムが開示されている。さらに、
特公平4−16330号公報において、高分子量ポリオ
レフィンに多量の可塑剤を混合して押出成形し、二軸延
伸フィルムを製造する方法が開示されている。
【0005】しかし、これらの高分子量ポリオレフィン
フィルム、或いは成形方法で得られた高分子量ポリオレ
フィンフィルムは、優れた機械的性質を有するものの、
汎用ポリオレフィンのフィルムに比し透明性に劣るとい
う欠点があった。また、多量の可塑剤を用いる方法で
は、用途によっては得られたポリオレフィンフィルムか
ら可塑剤を抽出する必要があり、工程がさらに複雑にな
るばかりか、可塑剤が存在した部分には空隙が形成さ
れ、透明性を悪化させる原因となっていた。
【0006】一方、高分子量ポリオレフィンを使用した
高強度な透明フィルムに関しては、以下の文献に記載が
ある。すなわち特開昭60−255415号公報には、
粘度平均分子量が40万以上のポリエチレンからなり、
いずれの方向にも25kg/mm2以上の引張強度を示
すポリエチレン樹脂フィルムが開示されており、実施例
において透明フィルムであることが記載されている。
【0007】また、特開昭61−84225号公報に
は、高分子量直鎖状ポリエチレンを基本とし、重量平均
分子量が少なくとも40万、引張強度が少なくとも1G
Pa、厚さが最大25μm、不透明度が最大15%のも
のが記載されている。さらには特開昭60−22812
2号公報に、重量平均分子量が5×105以上のポリエ
チレンからなり厚さが3μm以下、引張弾性率が200
0kg/cm2以上、破断強度が500kg/cm2
上、ヘイズが10%以下であるポリエチレン極薄フィル
ムが記載されている。
【0008】これらの公報に記載された方法を使用する
と、比較的透明性に優れたフィルムを得ることが可能で
あるが、透明性を得るために高倍率の二軸延伸を必要と
するためフィルムが薄くなり、厚いフィルムを得ること
ができないという欠点を有する。また、溶剤や可塑剤を
多量に使用して延伸処理前のシートやフィルムを成形し
なければならず、そして用いた溶剤や可塑剤を延伸後に
抽出する必要があり、工程が複雑になるばかりか、溶剤
や可塑剤が存在した部分には空隙が形成され透明性を悪
化させる原因となっていた。これらの空隙をプレスして
加圧状態でつぶす試みもなされているが、非常に薄いフ
ィルムにもかかわらず、良好な透明性を得るに至ってい
ない。これはフィルムに存在する空隙を圧縮して完全に
なくすことが困難なためと推測される。
【0009】また、特公平3−73452号公報には、
極限粘度が5.0dl/g以上の超高分子量ポリエチレ
ンシートを、融点以上、融点+15℃未満の温度でロー
ル圧延しながら張力をかけて引取ることを特徴とする超
高分子量ポリエチレンフィルムの製造方法が開示されて
いる。この方法は比較的透明なフィルムを、溶剤や可塑
剤を使用することなく得ることができる点で優れている
が、圧延を行うためにフィルムの機械軸方向(MD)と
機械軸方向に直交方向(TD)のフイルム物性のバラン
スが悪くなる、圧延前のシートの幅が比較的狭いため広
幅のフィルムを作製することが難しいなどの改良すべき
点を有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
のものよりも透明性が改善され、かつ機械軸方向(M
D)とその直交方向(TD)の物性バランスに優れる高
分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法を提供するこ
とにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の問
題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の高分子
量ポリオレフィン処理前フィルムを、特定条件下で圧縮
加熱処理すれば、透明性が改善され、しかも機械軸方向
(MD)とその直交方向(TD)の物性バランスに優れ
る高分子量ポリオレフィンフィルムが得られることを見
出し本発明を完成するに至った。
【0012】本発明に係る高分子量ポリオレフィンフィ
ルムの製造方法は、極限粘度[η]が4dl/g以上の
高分子量ポリオレフィンよりなり、かつ溶剤や可塑剤を
実質的に使用することなく得られた処理前フィルムを、
0.1MPa以上の圧力と、該処理前フィルムの融点−
30℃から分解温度までの温度において圧縮加熱処理す
ることを特徴としている。
【0013】本発明においては、前記の処理前フィルム
が、溶剤や可塑剤を実質的に用いることなく得られる一
軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムまたはインフレーシ
ョンフィルムであることが好ましい。さらには、高分子
量ポリオレフィンからなる該処理前フィルムが、高配向
融点を有していることが好ましい。
【0014】本発明において得られる好適なフィルムで
は、厚さ(t[μm])200μm以下において、高分
子量ポリオレフィンフィルムのヘイズ(H[%])が、
H≦15+(t/3)の関係を有する。
【0015】本発明では、前記高分子量ポリオレフィン
が、高分子量ポリエチレンであることが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る透明性の改
善された高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法に
関し、成形原料、処理前フィルム、圧縮加熱処理、得ら
れた透明性の改善されたフィルムの特徴について詳述す
る。
【0017】成形原料 本発明で用いられる高分子量ポリオレフィンとは、エチ
レン、プロピレンおよび炭素数4ないし8のα−オレフ
ィンを、例えばチーグラー系触媒を用いたスラリー重合
などにより、単独もしくは二つ以上を組み合わせて重合
して得られる。好ましい共重合体は、エチレンと少量の
プロピレン、もしくは炭素数4ないし8のα−オレフィ
ン単独ないし二つ以上の組み合わせによる共重合体であ
る。エチレン共重合体の場合、共単量体の含有量は5モ
ル%以下が好ましい。これらの中で特に好ましいもの
は、エチレンの単独重合体である。
【0018】本発明に係る処理前フィルム成形に用いら
れる高分子量ポリオレフィンの極限粘度[η]は、フィ
ルム成形に支障をきたさない限り特に限定されないが、
極限粘度[η]で4dl/g以上が好ましく、さらに好
ましくは4ないし25dl/gである。特に高強度な透
明フィルムを得る目的では、極限粘度[η]で5ないし
20dl/gが好ましく、特に7ないし20dl/gが
好ましい。極限粘度[η]が20dl/gを超えると溶
融成形性が悪化し、広幅のフィルムやシートを連続的に
作製することが困難となることがある。
【0019】処理前フィルム 処理前フィルムの成形には、インフレーションフィルム
成形やTダイ成形等の押出成形、押出成形後の一軸延伸
や二軸延伸等の公知の方法を用いることができる。本発
明では、これらの高分子量ポリオレフィン処理前フィル
ムの成形において溶剤や可塑剤を実質的に使用しない。
【0020】溶剤や可塑剤を実質的に使用しないとは、
フィルム成形時に成形原料としての高分子量ポリオレフ
ィンが多量の溶剤や可塑剤を含まないことを意味する。
したがって、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、核剤、ア
ンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、染料、充填剤
等の通常ポリオレフィンに添加して使用される各種添加
剤は、本発明の目的を損なわない範囲で配合されていて
もよいが、その上限は総量で好ましくは10重量%以
下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3
重量%以下である。また、フィルム成形時や成形後に溶
剤や可塑剤に接触させないことが、使用できるフィルム
用途が限定されないという意味で好ましい。
【0021】高分子量ポリオレフィン処理前フィルムと
しては、一軸延伸フィルム(機械軸方向(MD)またはそ
の直交方向(TD)への延伸)、二軸延伸フィルム(MD
およびTDへの延伸)またはインフレーションフィルム
を使用するのが好ましい。
【0022】この理由としては次の様に推定される。押
出後の高分子量ポリオレフィンのフィルムには、目視で
は観察されないポリオレフィン原料粉末の融着界面が残
存し、光の散乱を起こしてフィルムの透明性を悪化させ
る可能性があるが、フィルムを延伸することによってこ
の界面の影響を取り除くことができ、良好な透明性が得
られるためである。
【0023】高分子量ポリオレフィン処理前フィルムと
して上記のなかでは、圧縮加熱処理後のフィルムの引張
強度や伸び等の物性バランス(MDとTD)の観点か
ら、二軸延伸フィルム、インフレーションフィルムが好
ましく、特にインフレーションフィルムが好ましい。高
分子量ポリオレフィン処理前フィルムの成形について、
インフレーションフィルムの成形方法を例にとり以下に
具体的に説明する。
【0024】高分子量ポリオレフィンのなかで、極限粘
度[η]が5dl/g未満のものは、通常のインフレー
ションフィルム成形法によって成形することができる。
通常のインフレーションフィルムの成形法について詳し
くは、「プラスチックの押出成形とその応用」(澤田慶
司著、誠文堂新光社発行(1966年))の第4編第2章に述
べられたポリエチレンやポリプロピレンで行われるよう
な一般的な方法が挙げられる。
【0025】Tダイ成形法の場合、シート成形後さらに
延伸した方が望ましい。インフレーションフィルム成形
法では、ドラフト比と膨比は、特に限定しないが、高ド
ラフト比、高膨比である方が望ましい。
【0026】高分子量ポリオレフィンのなかで、極限粘
度[η]が5dl/g以上、25dl/g以下のもので
は、例えば以下のようなインフレーションフィルム成形
法によって処理前フィルムを成形することができる。
【0027】すなわち高分子量ポリオレフィンをスクリ
ュー押出機で溶融し、次いでマンドレルがスクリューの
回転に伴って、または独立して回転するL/D(L:マ
ンドレルとアウターダイで構成されるチューブダイの長
さ、D:マンドレルとアウターダイのクリアランスすな
わちダイリップの厚さ)が5以上のチューブダイから押
し出した後、溶融状態のチューブ状フィルムの内部に気
体を吹き込んで、膨比1.1ないし20に膨張させ、冷
却してフィルムとするインフレーションフィルム成形法
によって得られる。
【0028】ここで、好ましいドラフト比は、5以上で
あり、より好ましくは8以上である。また、好ましい膨
比は、5以上であり、より好ましくは8以上である。イ
ンフレーションフィルム成形装置に関する態様は、本出
願人により出願された特公平6−55433号公報に詳
述されている。また、特開平9−183156号公報に
記載されたような方法で成形することもできる。
【0029】上記の様にして得られる処理前フィルムを
形成する高分子量ポリオレフィンの極限粘度[η]は、
4dl/g以上であり、好ましくは5dl/g以上、よ
り好ましくは6dl/g以上、さらに好ましくは7dl
/g以上であり、その上限値は、成形原料の極限粘度
[η]によって決まり、通常25dl/g以下、好まし
くは20dl/g以下である。極限粘度[η]が4dl
/g未満では、融点以上の温度で溶融流動性が大きくな
りすぎ圧縮加熱処理が困難となるので好ましくない。ま
た、高分子量ポリオレフィンが有する優れた物性が得ら
れないため好ましくない。
【0030】また、処理前フィルムを形成する高分子量
ポリオレフィンの結晶化度(示差走査型熱量計(DSC)
により結晶融解熱から求められる)は、好ましくは40
%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは
60%以上、特に好ましくは60ないし70%である。
【0031】さらに、優れた透明性を得るためには、処
理前フィルムを形成する高分子量ポリオレフィンが高配
向融点を有するものであることが好ましい。高配向融点
を有するポリオレフィンフィルム内には、分子鎖が伸張
された状態のポリオレフィン配向結晶が存在し、それが
網目状のマトリックス構造を形成していると考えられ
る。このことは、高配向融点を有するポリオレフィンフ
ィルムで高引張強度が観測できることから推定できる。
この網目状マトリックス構造が存在することにより、圧
縮加熱処理後においても、上記ポリオレフィン原料粉末
の融着界面等の影響を受けにくく、高透明性を達成しや
すい。
【0032】ここで、本発明における高配向融点とは、
ASTM D3417に準拠して、固定端にて示差走査
型熱量計(DSC)により昇温速度10℃/minで融
点測定したとき、ピークが二つ以上に分離して現れた場
合の高温側のピーク(三つ以上のピークが現れる場合は
最も高い温度のピーク)をいう。一方低温側で最も低い
温度のピークを単に融点とした。
【0033】上記の様な処理前フィルムの成形方法によ
れば、従来の高分子量ポリオレフィンフィルムの成形方
法に比べて比較的厚いものまで成形できるが、本発明の
高分子量ポリオレフィン処理前フィルムの厚さは、特に
制限はないが、通常200μm以下、好ましくは180
μm未満であり、下限は1μm以上、通常3μm以上、
好ましくは5μm以上である。特に好ましいフィルム厚
さは、5μmないし150μm、最も好ましくは5μm
ないし100μmである。フィルムの厚さが200μm
以下の範囲であれば、網目状のマトリックス構造が形成
され易く、圧縮加熱処理によって優れた透明性を得るこ
とができる。
【0034】圧縮加熱処理 本発明における圧縮加熱処理は、プレス成形機や一対の
ロール等の、既知の圧縮装置を用いて行われる。圧縮加
熱処理は、処理後のフィルムのヘイズ値が、後述する範
囲内に収まるような温度、圧力、処理時間の、選ばれた
条件下で行われる。
【0035】圧縮加熱処理の温度は、処理時間や圧力に
もよるが、通常、高分子量ポリオレフィン処理前フィル
ムを形成する高分子量ポリオレフィンの、融点−30℃
から分解温度未満までの温度である。より好ましい温度
範囲としては、該高分子量ポリオレフィンフィルムの、
融点−20℃から高分子量ポリオレフィンの空気中での
分解温度未満までの温度範囲、さらに好ましくは、該高
分子量ポリオレフィンフィルムの、融点−20℃から高
配向融点+45℃以下までの温度範囲である。温度がこ
の範囲であれば、高分子量ポリオレフィンが有する優れ
た物性の特徴が保たれたまま、透明性が改良される。
【0036】高分子量ポリオレフィンフィルムは、それ
が高配向フィルムであれば、通常、融点を越えて加熱す
ると、熱収縮が起こり圧縮加熱処理の操作がしにくくな
るが、本発明においては、高分子量ポリオレフィンフィ
ルムを圧力下で加熱するので、融点以上であっても熱収
縮を起こさせることなく圧縮加熱処理を行うことが可能
となる。
【0037】高分子量ポリオレフィンの融点は、示差走
査型熱量計(DSC)による融点測定によりもとめら
れ、分解温度は、熱重量測定(TG)による重量変化開
始温度から求められる。高分子量ポリエチレンの場合、
融点は、概ね125℃ないし160℃の範囲にあり、高
配向融点を有する場合には、融点は通常135℃ないし
160℃の範囲に観察され、分解温度は、雰囲気にもよ
るが、220℃ないし500℃の範囲にある。
【0038】圧縮加熱処理の圧力は、圧縮時にプレス板
やロールがフィルムに接触して加える圧力であり、0.
1MPa以上が好ましい。上限値は特に限定されない
が、高圧を得るための装置が煩雑になるため、おおむね
30MPa以下であり、20MPa程度までであれば十
分な効果が得られる。上記の範囲を超えて圧力が低くな
りすぎると、フィルムの透明性にむらが生じる可能性が
あるので好ましくない。高分子量ポリオレフィンの融点
未満の温度で加熱を行う場合は、圧力は通常10MPa
以上であることが好ましい。
【0039】圧縮加熱処理の時間は、通常10分以下、
好ましくは5分以下、より好ましくは1分以下の時間
で、圧力と温度に応じて適宜調節される。圧縮加熱処理
の雰囲気は、不活性ガス中でも良いし、空気中でも良い
が、通常は空気中で行われる。この場合、処理温度は処
理前フィルムの高分子量ポリオレフィンの空気中におけ
る分解温度未満であることが好ましい。
【0040】本発明では、圧縮加熱処理は膜厚を薄くし
たり、高配向させて高強度化したりすることを目的とす
るものではなく、圧延処理とは本質的に異なる。フィル
ム厚さは圧縮加熱処理前後で大きくは変化せず、仮に薄
くなったとしても、その差は処理前フィルムの厚さの2
0%未満、好ましくは10%未満、通常は5%未満であ
り、膜厚が圧縮加熱処理前後で大きく変化しないことが
望ましい。
【0041】高分子量ポリオレフィンフィルム 本発明の圧縮加熱処理で得られる、透明性の改善された
高分子量ポリオレフィンフィルムは、以下の物性を有す
る。
【0042】フィルム厚さは、200μm以下であるこ
とが好ましく、より好ましくは180μm未満、下限値
は1μm以上、通常は3μm以上、好ましくは5μm以
上である。特に好ましくは5μmないし150μm、最
も好ましくは5μmないし100μmである。本発明の
好適なフィルムでは、厚さ(t[μm])200μm以
下において、ヘイズ(H[%])が、H≦15+(t/
3)の関係を、より好ましくはH≦10+(t/3)の関
係を満たす。
【0043】極限粘度[η]は、4dl/g以上である
ことが好ましく、より好ましくは5dl/g以上、さら
に好ましくは6dl/g以上、特に7dl/g以上であ
ることが好ましい。極限粘度[η]の上限値は高分子量
ポリオレフィン処理前フィルムの極限粘度[η]によっ
て決まり、通常25dl/g以下、好ましくは20dl
/g以下である。
【0044】引張強度は、特に限定されないが、通常3
0ないし500MPaの範囲内にあり、好ましくは40
ないし500MPaである。好適なフィルムのMD引張
強度とTD引張強度の比(MD/TD)は、0.25な
いし4、好ましくは0.33ないし3、より好ましくは
0.5ないし2の範囲内にある。
【0045】引張弾性率は、特に限定されず、通常30
0MPaないし2GPaの範囲内にあり、好ましくは4
00MPaないし2GPaである。好適なフィルムのM
D引張弾性率とTD引張弾性率の比(MD/TD)は、
0.25ないし4、好ましくは0.33ないし3、より
好ましくは0.5ないし2の範囲内にある。
【0046】また、引張伸びは、特に限定されず、通常
50ないし1500%の範囲内にある。好適なフィルム
のMD引張伸びとTD引張伸びの比(MD/TD)は、
0.25ないし4、好ましくは0.33ないし3、より
好ましくは0.5ないし2の範囲内にある。
【0047】さらに、透明性の改善されたフィルムを形
成する高分子量ポリオレフィンの結晶化度は、特に限定
されることなく、通常10%ないし80%の範囲内にあ
り、好ましくは50%ないし80%である。
【0048】本発明の高分子量ポリオレフィンフィルム
の製造方法によれば、従来の方法に比べて広い厚み範囲
で透明性の改善された高分子量ポリオレフィンフィルム
が得られるだけでなく、高分子量であることによりもた
らされる耐衝撃性、耐摩耗性、自己潤滑性、耐薬品性、
高引張強度等の物性を兼ね備えたフィルムを得ることが
可能となる。また、広幅のフィルムを生産性良く得られ
る。
【0049】上記により得られる透明性に優れた高分子
量ポリオレフィンフィルムは、これらの特性をいかし、
スライディングテープ、スラストワッシャー、すべりシ
ート、ガイド、スキー,スノーボード等の裏張り、ホッ
パーおよびシュート等のライニング材、ドクターナイ
フ、カセットテープ用ライナー、カセットテープ用スリ
ットシート、ロール,パイプ,鋼管等の被覆用フィルム、
食品包装用フィルムや耐低温保存用袋等の包装用フィル
ム、血液保存バック等の医療用滅菌・殺菌材料、電気絶
縁材料、コンデンサーフィルム、農業用ハウス,マルチ
フィルム等の農業用フィルム、エレクトレットフィル
ム、ハウスラップ等の建築用資材、包装用テープ、回路
基板用フィルム、スピーカー振動板、航空便用封筒等に
好適に使用することができる。
【0050】本明細書中において用いた特性は、下記の
方法により測定されたものである。極限粘度 [η] ASTM D4020に基づいて、デカリン溶媒にて1
35℃で測定した。厚さ JIS Z1702に従い、デジシックネステスター
(東洋精機(株)製、検出能力1μm)を用い、圧子5m
mφ、荷重125g、測定圧637Kg/cm2で測定
した。
【0051】ヘイズおよび全光線透過率 全自動ヘイズメーター(東京電色技術センター社製、T
C−H III DPK)を用いて、JIS K6714に
準じて測定した。引張強度、引張弾性率、引張伸び オリエンテック社製引張試験機テンシロン(型式RTM
100型)を使用し、室温(23℃)で測定した。測定
方法はJIS K6781に準拠した。
【0052】融点 ASTM D3417に準拠し、示差走査型熱量計(D
SC)により測定した。測定は固定端で、昇温速度10
℃/minで行い、ピーク値を融点とした。また、ピー
クが二つ以上に分離する場合は、低温側で最も低い温度
のピークを融点とし、高温側の最も高温のピークを高配
向融点とした。分解温度 熱重量測定(TG)により、重量変化開始温度を熱分解
温度とした。測定は、昇温速度20℃/minで、空気
中および窒素中で行い、重量の増加または減少が全重量
の1%に達した温度を分解温度とした。
【0053】結晶化度 結晶化度の測定は、示差走査熱量計(DSC)により、
ASTM D3417に示された条件で融点測定した
際、同時に測定される融解熱量を用いて、理論融解熱量
の値(ポリエチレンの場合286.186J/g を使用)に対す
る比率(%)として計算で求めた。
【0054】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はその趣旨を越えない限りこれらの実
施例に何ら制約されるものではない。
【0055】(実験例1) 〔処理前フィルムの作製〕高分子量ポリエチレン処理前
フィルムの作製を、図1に示すインフレーションフィル
ム製造装置を使用して行った。インフレーションフィル
ム製造装置の仕様は以下の通りである。 押出機の第1スクリュー外径 50mmφ スクリューの有効長さ 1100mm フライトピッチ 30mm一定 スクリュー圧縮比 1.8 スクリューダイ有効長さ 1490mm(L/D=28) ダイ出口アウターダイ内径 66mmφ ダイ出口マンドレル外径 58mmφ スクリューダイの第2スクリュー外径 70mmφ 第2スクリュー有効長さ 238mm フライトピッチ 25mm一定 第2スクリュー圧縮比 1.0 安定棒の外径 39mmφ 安定棒の長さ 600mm 気体流路の内径 8mmφ
【0056】極限粘度[η]:7.5dl/g、融点:
約135℃、分解温度(窒素中):490℃(空気中2
50℃)である高分子量ポリエチレンの粉末樹脂を用
い、図1に示す装置において押出機、ジョイント部
(J)、ダイ基部(D1)及びダイ先端部(D2)の設
定温度をそれぞれ200℃、180℃、170℃、16
2℃として成形した。第2スクリュー内部、マンドレル
及び安定棒シャフトの内部に延在する気体流路から圧搾
空気を吹き込んで、パリソンをアウターダイ内径(66
mmφ)の約7.5倍(膨比)に膨らませ、約35.7
倍のドラフト比で引き取って、高分子量ポリエチレン処
理前フィルムNo.1を作製した。
【0057】(実験例2)実験例1と同様に、極限粘度
[η]:8.9dl/g、融点:約135℃、分解温度
(窒素中):495℃(空気中255℃)である高分子
量ポリエチレンの粉末樹脂を使用し、図1に示す装置に
おいて押出機、ジョイント部(J)、ダイ基部(D1)
及びダイ先端部(D2)の設定温度をそれぞれ200
℃、180℃、170℃、170℃として、膨比約8.
5倍、ドラフト比約11.2倍で高分子量ポリエチレン
処理前フィルムNo.2を作製した。
【0058】(実験例3)実験例1と同様に、極限粘度
[η]:5.0dl/g、融点:約135℃、分解温度
(窒素中):485℃(空気中245℃)である高分子
量ポリエチレンの粉末樹脂を使用し、図1に示す装置に
おいて押出機、ジョイント部(J)、ダイ基部(D1)
及びダイ先端部(D2)の設定温度をそれぞれ190
℃、170℃、160℃、155℃として、膨比約9.
0倍、ドラフト比約72倍で高分子量ポリエチレン処理
前フィルムNo.3を作製した。表1、2に各実験例のフ
ィルム物性を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】(実施例1〜13、比較例1)実験例1〜
3で作製した高分子量ポリエチレン処理前フィルムを使
用して、圧縮加熱処理を行った。圧縮加熱処理は、東洋
精機(株)製 MINI TEST PRESS-10を使用し、表3に記載
した各条件により以下の方法で行った。処理前フィルム
の両面に、離型フィルムとして東レ(株)製ルミラーTM
60(25μm)を重ね、それを一対のステンレス板間に挟
み、まず115℃にて表3記載の各圧力で圧縮した。そ
の後所定の圧縮処理温度まで昇温(昇温速度:約6〜7
℃/min)して各加圧時間保持し圧縮状態のまま室温
(23℃)で徐冷した。115℃まで降温後、フィルム
をとりだしてフィルム物性を測定した。急冷の場合は加
圧時間経過後、各圧縮温度でフィルムを取り出しフィル
ム物性を測定した。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】 比較例1では、処理温度が低すぎたため、ヘイズが高く
透明性は改善されていない。
【0063】
【発明の効果】本発明の高分子量ポリオレフィンフィル
ムの製造方法によれば、広い厚み範囲において良好な透
明性を有し、しかも引張強度などの優れた機械物性が機
械軸方向(MD)とその直交方向(TD)でバランスの
とれた高分子量ポリオレフィンフィルムを生産性良く得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において高分子量ポリオレフィン処理前
フィルムを製造するための成形装置の一例を示す正面断
面図である。
【符号の説明】
1 押出機 2 溝付シリンダー 3 第1スクリュー 10 トーピド 11 圧力計 20 スクリューダイ 20A 第2スクリュー先端部 20B スクリューダイ中間部 20C スクリューダイ出口 21 第2スクリュー 22 アウターダイ 23 マンドレル 24 気体流路 25 エアリング 26 安定棒 27 防風筒 30 パリソン 31 インフレーションフィルム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 23:00 B29L 7:00 C08L 23:00 (72)発明者 八木 和雄 愛知県名古屋市南区丹後通二丁目1番地 三井化学株式会社内 Fターム(参考) 4F071 AA14 AA15 AA88 AF30 AF30Y AH04 BB03 BB06 BB07 BB08 BB09 BB13 BC01 4F201 AA03A AG01 AR02 AR06 AR12 AR17 AR20 BA07 BC01 BC12 BC15 BD02 BD05 BD06 BM06 BM07 BM14 BR01 BR06 4F210 AA03A AG01 AR02 AR06 AR12 AR17 AR20 QA01 QA02 QC01 QC05 QG01 QW06 QW21

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極限粘度[η]が4dl/g以上の高分
    子量ポリオレフィンよりなり、かつ溶剤や可塑剤を実質
    的に使用することなく得られた処理前フィルムを、0.
    1MPa以上の圧力と、該処理前フィルムの融点−30
    ℃から分解温度までの温度において圧縮加熱処理するこ
    とを特徴とする高分子量ポリオレフィンフィルムの製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記処理前フィルムが、一軸延伸フィル
    ム、二軸延伸フィルムまたはインフレーションフィルム
    である請求項1に記載の高分子量ポリオレフィンフィル
    ムの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記高分子量ポリオレフィンからなる処
    理前フィルムが、高配向融点を有している請求項2に記
    載の高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記高分子量ポリオレフィンが、高分子
    量ポリエチレンである請求項1ないし3のいずれかに記
    載の高分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  5. 【請求項5】 得られるフィルムの厚さ(t[μm])
    が、200μm以下であって、ヘイズ(H[%])が、 H≦15+(t/3) の関係を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の高
    分子量ポリオレフィンフィルムの製造方法。
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