JP3852326B2 - プロピレン系組成物およびその製造方法ならびにポリプロピレン系組成物および成型品 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プロピレン系組成物に関し、さらに詳しくは、プロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーとからなる組成物およびその製造方法、ならびにこの組成物を主成分とするポリプロピレン系組成物およびこれらの組成物による成型品、特に射出成型品、押出しシート、フィルムおよび中空成型品に関する。
【0002】
【発明の背景】
ポリプロピレン樹脂は比較的に安価で、優れた諸特性を有することから今日では各種の成型品、たとえばシート状、容器、キャップ(栓)などおよびそれらのヒンジ構造を有する射出成型品、フィルム、エアーダクトなどの中空成型品など多岐の分野にわたり使用されている。またフィルムはその機械的、光学的、熱的特性を利用して食品、繊維製品等の包装用資材にも広く採用されている。
【0003】
そして、それぞれの成形用途に要求される特性に対応して、プロピレンホモポリマー、プロピレンとα−オレフィン、特にエナレンとのコポリマー、およびプロピレンポモポリマーとプロピレン−α−オレフィンコポリマーとからなる組成物を主成分とするポリプロピレン系組成物が使用されている。
【0004】
一般にプロピレンホモポリマーは、高い剛性を有し、耐熱性に優れるものの、柔軟性が不足し、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、およびフィルムとした場合の引裂強度が劣っている。プロピレン−α−オレフィンコポリマーは、透明性、柔軟性に優れるが、耐熱性、低温での耐衝撃性が劣る。また従来公知の組成物は、耐熱性および低温での耐衝撃性に優れることから、自動車、家電分野等をはじめとして各種の産業分野に広く採用されているが、ホモポリマーに比較して透明性、光沢が劣り、ホモポリマーと同様に成形収縮率が大きく、一方コポリマーに比較して引裂強度、柔軟性が劣る。いずれにしても衝撃や折り曲げにより白化する現象が観測され、難白化性が不十分である。
【0005】
これらの不十分な諸特性を改善する方法としては、ポリマー、コポリマーまたは組成物の諸特性を変更する方法と添加剤による方法とがある。
【0006】
たとえば、一般的な方法として、組成物の成形収縮率をタルク等の無機物を充填することにより改善する方法が採用されているが、成形収縮率を向上させるには多量のタルク等の無機物の添加が必要となり、成型品の重量増加が大きく外観が著しく悪化する。一方、組成物中のコポリマーのエチレン含量を低下させて透明性や光沢を向上させる方法も採用されているが、コポリマー中のエチレン含量の低下は光沢の向上に寄与するものの低温での耐衝撃性と共に剛性が低下するのが一般的である。
【0007】
特開昭60−28411号公報は、エチレン−プロピレンコポリマーを3段階に分け、それぞれエチレン含有量を変えて逐次共重合する高剛性エチレン・プロピレン共重合体、すなわちプロピレン系組成物の製造方法を開示している。この方法で得られる組成物は、高剛性を有するだけでなく、優れた耐白化性、耐衝撃性、耐熱性などを有するが、成型品の透明性、光沢、外観、成形時の成形収縮率などになお改善されるべき点を有している。
【0008】
特公平7−30145号公報は、結晶性ポリプロピレン部とエチレンプロピレンランダム共重合ブロックとからなり、結晶性ポリプロピレン成分の含有率が55〜95重量%、両成分の極限粘度比([η]EP/[η]PP)が0.5〜2.0、かつエチレンプロピレンランダム共重合体ブロックのガラス転移温度が−30℃以下であるプロピレンブロック共重合体、すなわちプロピレン系組成物を開示している。この組成物はエチレン−プロピレン共重合成分含有率およびプロピレンホモポリマーと共重合成分の極限粘度比がほぼ同一の範囲にあり、優れた耐衝撃性、剛性などの機械的特性を有するが、成型品の透明性、光沢、外観など、特に成型品の難白化性および成形時の成形収縮率に改善されるべき点を有している。
【0009】
特開平6−93061号公報は、プロピレンを主体とする重合体を全重合量の60〜80重量%重合し、次いでエチレン含有量が20〜50重量%であるエチレン−プロピレン共重合部を重合したブロック共重合体であって、エチレン−プロピレン共重合部の極限粘度([η]B)が2.0dl/g以上、かつ両成分の極限粘度比([η]B/[η]A)が1.8以下のブロック共重合体を溶融混練したポリプロピレンブロック共重合体を提案している。この組成物もエチレン−プロピレン共重合成分含有率およびプロピレンホモポリマーと共重合成分の極限粘度比がほぼ同一の範囲にあり、優れた低温での耐衝撃性、耐ブロッキング性、外観などを有するが、剛性などの機械的特性や、成形時の成形収縮率の面に改善されるべき点を有している。
【0010】
特開平6−328640号公報は、直鎖状低密度ポリエチレン層の両面にポリプロピレン系樹脂の層を積層した引裂強度が大幅に改善された多層フィルムを提案している。この多層フィルムにおいては、積層する低密度ポリエチレンとポリプロピレン系樹脂との相溶性が余りよくないので、再溶融してフィルムとして再利用性がする場合にフィッシュアイが発生し易い。
【0011】
特開昭52−126450号公報は、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、ポリプロピレンまたは高密度ポリエチレン、およびパラフィン油またはナフテン油の3成分配合物を開示している。この配合物は柔軟性に優れるが、耐熱性が低下する。
【0012】
特開平4−282232号公報は、硬質ポリオレフィン系樹脂で形成された剛性部と熱可塑性エラストマーで形成された可撓性部とを接続した樹脂性管状体を提案している。この管状体は、剛性部と可撓性部との接合強度が不足している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種成型品の耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、剛性、引裂強度、耐熱性、透明性、光沢、難白化性などの諸特性およびその成形時の成形収縮率に優れ、ならびにそれらの間に優れたバランスを有するポリプロピレン系組成物のベース樹脂として好適なプロピレン系組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、上記プロピレン系組成物をベース樹脂とするポリプロピレン系組成物を提供すること別の目的とする。
【0015】
さらに本発明は、上記ポリプロピレン系組成物を用いた各種成型品およびそれらの製造方法を提供すること目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、大粒径のチタン含有固体触媒成分を用いた立体規則性触媒の存在下に、プロピレンの単独、次いでプロピレンとエチレンとの混合物を連続的に気相重合させて得られるプロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーとからなるプロピレン系組成物が、プロピレン−エチレンコポリマーの極限粘度、両成分の極限粘度比およびこの極限粘度比と両成分の重量比との積が一定の範囲にある場合に、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、剛性、透明性、光沢、難白化性、成形時の成形収縮率など、およびそれらの間のバランスが優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
本発明は、プロピレンホモポリマー(PP)およびプロピレン−エチレンコポリマー(RC)からなり、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度([η]RC)が1.7〜2.8dl/g;プロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)との極限粘度比([η]RC/[η]PP)が0.7〜1.2;かつプロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量比(WPP/WRC)とそれらの極限粘度比([η]RC/[η]PP)との積([η]RC/[η]PP)×(WPP/WRC)が1.0〜3.0;の範囲にあることを特徴とするプロピレン系組成物(A)である。
【0018】
別の発明は、平均粒径が25〜300μmのチタン含有固体触媒成分(a);
一般式AlR1mX3-m(式中、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表し、mは3≧ m>1.5の正数である)で表される有機アルミニウム化合物(b);および一般式R2 XR3 YSi(OR4)Z(式中、R2およびR4は炭化水素基、R3は炭化水素基またはヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、X、YおよびZは0≦X≦2、1≦Y≦3、1≦Z≦3、かつX+Y+Z=4である)で表される有機ケイ素化合物(c);を組み合わせた立体規則性触媒の存在下に、気相中においてプロピレンを単独重合し、全重量の78〜60重量%のプロピレンホモポリマー(PP)を生成させる第1重合工程;次いでエチレンとプロピレンとを共重合し、ポリマー中のエチレン単位含有率が25〜55重量%であるプロピレン−エチレンコポリマー(RC)を全重量の22〜40重量%生成させる第2重合工程;を実施することを特徴とする、前記プロピレン系組成物(A)の製造方法である。
【0019】
別の発明は、前記プロピレン系組成物(A)を主成分とし、所望により添加される添加剤を含有するポリプロピレン系組成物(C)である。
【0020】
さらに別の発明は、このポリプロピレン系組成物を用いた成型品(D)、特に射出成型品、シート、フィルムおよび中空成型品である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のプロピレン系組成物(A)において、プロピレンホモポリマー(PP)は、アイソタクチックペンタッド分率(P)が0.95以上、好ましくは0.955以上の高結晶性、すなわち立体規則性を有するポリプロピレンである。プロピレンホモポリマー(PP)のアイソタクチックペンタッド分率(P)は、成型品(D)の剛性、耐熱性などの機械的特性に影響し、その値が大きいほど剛性および耐熱性が大きくなる。
【0022】
一方、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)は、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量基準で25〜55重量%、好ましくは30〜55重量%のエチレン重合単位を含有するエチレン−プロピレン・ランダム・コポリマーである。
【0023】
プロピレン−エチレンコポリマー(RC)中のエチレン重合単位は、成型品(D)の剛性、柔軟性、耐衝撃性、特に低温における耐衝撃性および難白化性に影響し、大きいほど柔軟性および耐衝撃性が向上するが、大きすぎるとプロピレン−エチレンコポリマー(RC)のプロピレンホモポリマー(PP)への分散性に影響し、成型品(D)の透明性、光沢、難白化性などが低下する。
【0024】
また、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)は、135℃のテトラリン中で測定した極限粘度([η]RC)が1.7〜2.8dl/gの範囲にあり、かつプロピレンホモポリマー(PP)の同一条件で測定した極限粘度([η]PP)との間の極限粘度比([η]RC/[η]PP)が0.7〜1.2、好ましくは0.8〜1.2の範囲にある。
【0025】
プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度([η]RC)は直接測定できないので、直接測定可能なプロピレンホモポリマー(PP)の極限粘度([η]PP)およびプロピレン系組成物(A)全体の極限粘度([η]WHOLE)、ならびにプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量%(WRC)から、下記式により求められる。
【0026】
【数1】
[η]RC=[[η]WHOLE−(1−WRC/100)[η]PP]/(WRC/100)
プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度([η]RC)は、ポリプロピレン系組成物(C)の成形サイクル性、フイルムを製造する場合の製膜性および成型品(D)の剛性、耐熱性などの機械的特性に影響し、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)とプロピレンホモポリマー(PP)の極限粘度比([η]RC/[η]PP)は、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)のプロピレンホモポリマー(PP)への分散性に影響する。プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度([η]RC)が大きいほど成型品(D)の機械的特性は向上するが、ポリプロピレン系組成物(C)の成形サイクル性が低下し、プロピレンホモポリマー(PP)との極限粘度比([η]RC/[η]PP)が大きすぎても、また小さすぎても成型品(D)の低温での耐衝撃性および難白化性が不足する。さらに過小な場合には成型品(D)の柔軟性が不足し、過大な場合にはポリプロピレン系組成物(C)の成形収縮率および成型品(D)の透明性の改善効果が低下し、目的とする特性を達成できない。
【0027】
プロピレン−エチレンコポリマー(RC)は、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量基準で80重量%以上、好ましくは85重量%の20℃キシレン可溶成分を含有する。プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の20℃キシレン可溶成分重量%(CXSRC)は直接測定できないのでプロピレンホモポリマー(PP)の20℃キシレン可溶成分重量%(CXSPP)および組成物(A)全体の20℃キシレン可溶成分重量%(CXSWHOLE)、ならびにプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量%(WRC)から、下記式により求められる。
【0028】
【数2】
CXSRC=[CXSWHOLE−(1−WRC/100)CXSPP]/(WRC/100)
本発明のプロピレン系組成物(A)において、プロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)との重量比(WPP/WRC)は、前記した両成分の極限粘度比([η]RC/[η]PP)との積として、([η]RC/[η]PP)×(WPP/WRC)が1.0〜3.0の範囲である。
【0029】
両成分の重量比と極限粘度比との積は、ポリプロピレン系組成物(C)の成形収縮率を表す指標である。その値が小さくなると成形収縮率ならびに成型品(D)の引裂強度およびウェルド強度は改善されるが、成型品(D)の耐熱性や剛性の低下が大きくなり、一方、大きくなると難白化性が低下しまた目的とする成形収縮率ならびに引裂強度およびウェルド強度の改善効果が得られない。
【0030】
プロピレン系組成物(A)の具体的な組成は、組成物(A)の重量基準でプロピレン−エチレンコポリマー(RC)が22〜40重量%、好ましくは25〜40重量%である。
【0031】
また、プロピレン系組成物(A)は、Q値(Mw/Mn)が5以下、より好ましくは4.5以下の狭分散性分子量分布を有する。分子量分布幅が大きくなると成形品(D)の光沢およびウェルド強度が低下する。
【0032】
本発明のプロピレン系組成物(A)は、上記した諸特性を満足することにより、成形時の成形収縮率、製膜性、ならびに成型品の透明性、光沢、剛性、柔軟性、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、引裂強度、ウェルド強度などの機械的特性およびそれらの間のバランスの優れた成形品製造用のポリプロピレン系組成物(C)のベース樹脂とし好適に使用される。
【0033】
本発明のプロピレン系組成物(A)は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよい。たとえば、別々に製造したプロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)とを混合装置を用いて混合して製造することができるが、本発明の製造方法を採用することにより好適に製造することができる。
【0034】
本発明のプロピレン系組成物(A)の製造方法は、大粒径のチタン含有固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および有機ケイ素化合物(c)からなる立体規則性触媒の存在下、気相中において第一段階でプロピレンホモポリマーを製造し(第1重合工程)、引続き第二段階でプロピレン−エチレンコポリマーを製造する(第2重合工程)ことを特徴とする。
【0035】
本発明の製造方法において、チタン含有固体触媒成分(a)は、マグネシウム化合物、シリカ化合物、アルミナ等の無機担体やポリスチレン等の有機担体にチタン化合物を担持したもの、またかかる担持体に必要に応じてエーテル類、エステル類の電子供与性化合物を反応せしめたものなら公知のどの様なものでも使用できる。
【0036】
たとえば、マグネシム化合物のアルコール溶液をスプレーし、固体成分を部分乾燥し、その後に乾燥固体成分をハロゲン化チタンおよび電子供与性化合物で処理したチタン含有固体触媒成分(特開平3−119003号公報)、マグネシウム化合物をテトラヒドロフラン/アルコール/電子供与体に溶解させ、TiCl4単独または電子供与体の組み合わせで析出させたマグネシム単体をハロゲン化チタンおよび電子供与性化合物で処理したチタン含有固体触媒成分(特開平4−103604号公報)などが挙げられる。
【0037】
チタン含有固体触媒成分(a)として、平均粒径が25〜300μm、好ましくは30〜150μmのものを使用する。チタン含有触媒成分の平均粒径が25μm以下では、製造されるプロピレン系組成物(A)のパウダーの流動性が著しく損なわれ、重合器の器壁や攪拌翼等への付着による重合系内の汚染や重合器から排出されたパウダーの搬送が困難になる等、安定運転の大きな妨げとなる。
【0038】
また、チタン含有触媒成分(a)は、正規分布における均一度が2.0以下のものが好ましい。均一度が2を越えるとプロピレン系組成物(A)のパウダー流動性が悪化して第1重合工程と第2重合工程とを連続させる安定運転が困難となる。
【0039】
有機アルミニウム化合物(b)として、一般式R1 mX3-m(式中R1は、炭素数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表し、mは3≧m>1.5の正数である)で表される有機アルミニウム化合物を用いることができる。
【0040】
具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライ、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロリド,ジエチルアルミニウムアイオダイド、エトキシジエチルアルミニウム等を挙げることができ、好ましくはトリエチルアルミニウムを使用する。
【0041】
これら有機アルミニウム化合物は1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0042】
有機ケイ素化合物(c)として、一般式R2 XR3 YSi(OR4)Z(式中R2およびR4は炭化水素基、R3は炭化水素基あるいはヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、X、YおよびZは0≦X≦2、1≦Y≦3、1≦Z≦3、かつX+Y+Z=4である)で表される有機ケイ素化合物が使用される。
【0043】
具体的には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランが使用される。
【0044】
これらの有機ケイ素化合物は1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0045】
本発明のプロピレン系組成物(A)の製造方法において、第1重合工程のプロピレンの単独重合に先立って、チタン含有固体触媒成分(a)を、有機アルミニウム化合物(b’)および必要に応じて有機ケイ素化合物(c’)の存在下に、α−オレフィンを予め反応させることにより予備活性化処理して用いることが好ましい。チタン含有固体触媒成分(a)の予備活性化処理においては、有機アルミニウム化合物(b’)の使用量は特に限定されるものではないが、通常チタン含有固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.1〜40モル、好ましくは0.3〜20モルの範囲で用い、α−オレフィンを10〜80℃で10分〜48時間かけてチタン含有固体触媒成分1グラム当たり0.1〜100グラム、好ましくは0.5〜50グラムを反応させる。
【0046】
予備活性化処理においては、予め有機シラン化合物(c’)を有機アルミニウム化合物1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モルの範囲で用いてもよい。
【0047】
上記の予備活性化処理に用いる有機アルミニウム(b’)として、本重合に用いられる前記例示した有機アルミニウム(b)を挙げることができる。この(B’)有機アルミニウム化合物(b’)として、本重合時に使用される有機アルミニウム化合物(b)と同種のものでも、または異なる種類のものを使用できるが、好ましくはトリエチルアルミニウムを用いる。
【0048】
また予備活性化処理に必要に応じて用いられる有機ケイ素化合物(c’)としては、前記例示した有機ケイ素化合物(c)と同種のものを挙げることができる。この有機ケイ素化合物(c’)としても、本重合に使用される有機ケイ素化合物(c)と同種のものでも、また異なる種類ものでを使用できる。好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランを用いる。
【0049】
チタン含有固体触媒成分(a)の予備活性化処理に用いられるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等である。これらのオレフィンは、単独のみならず、他のオレフィンの1種または2種以上の混合物をも含んでいてもよい。また、その重合に際してポリマーの分子量を調節するために水素等の分子量調節剤を併用することもできる。
【0050】
チタン含有固体触媒成分(a)の予備活性化処理に用いられる不活性溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび流動パラフィン等の液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイル等重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶剤である。これらの不活性溶剤は1種の単独溶剤または2種以上の混合溶剤のいずれでもよい。
【0051】
これらの不活性溶剤の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物等の不純物は取り除いた後で使用することが好ましい。
【0052】
本発明のプロピレン系組成物(A)の製造方法において、上記予備活性化処理されたチタン含有固体触媒成分(a)の存在下に、気相中においてプロピレンを重合してプロピレンホモポリマー(PP)を生成させるる第1重合工程、次いでエチレンとプロピレンとを共重合させプロピレン−エチレンコポリマー(RC)を生成させる第2重合工程を連続実施する。第1重合工程は気相重合には限定されずスラリー重合や塊状重合を採用してもよいが、それに連続する第2重合工程が気相重合であること好ましいことから、第1重合工程も気相重合を採用することが好ましい。第2重合工程としてスラリー重合や塊状重合を採用した場合、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)が溶液中に溶出し、安定運転の継続が困難となる。
【0053】
プロピレンホモポリマー(PP)の重合条件は重合形式で異なるが、気相重合法の場合、一定量のパウダーを混合撹拌しながら予備活性化処理されたチタン含有固体触媒成分(a)、有機アルミニウム成分(b)および有機ケイ素化合物(c)からなる立体規則性触媒の存在下、重合温度20〜120℃、好ましくは40〜100℃、重合圧力大気圧〜9.9MPa、好ましくは0.59〜5.0MPaの条件下にプロピレンを供給して重合させプロピレンホモポリマー(A)を生成させる。有機アルミニウム化合物(b)とチタン含有固体触媒成分(a)の使用率はAl/Ti=1〜500(モル比)、好ましくは10〜300である。この場合、チタン含有固体触媒成分(a)のモル数とは実質的にチタン含有固体触媒成分(a)中のTiグラム原子数をいう。
【0054】
有機ケイ素化合物(c)と有機アルミニウム成分(b)の使用率はb/c=1〜10(モル比)、好ましくは1.5〜8である。
【0055】
b/cのモル比が過大な場合、プロピレンホモポリマー(PP)の結晶性が低下して成型品(D)の剛性が不十分となる。また、b/cモル比が過小な場合には重合活性が著しく低下し、生産性が低下する。
【0056】
プロピレンホモポリマー(PP)の分子量の調節には、重合時に水素のような分子量調節剤の使用が可能であり、プロピレンホモポリマー(PP)の極限粘度が本発明の要件を満たすように実施される。プロピレンホモポリマー(PP)を重合後、生成したパウダーの一部を抜き出し、極限粘度([η]PP)、メルトフローレート(MFRPP)、20℃キシレン可溶成分量およびアイソタクチック分率(P)の測定ならびに触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
【0057】
第1重合工程のプロピレン単独重合に引き続いて、重合温度20〜120℃、好ましくは40〜100℃、重合圧力大気圧〜9.9MPa、好ましくは0.59〜5.0MPaの条件下でエチレンとプロピレンの混合モノマーを共重合してプロピレン−エチレンコポリマー(RC)を生成させる第2重合工程を実施する。プロピレン−エチレンコポリマー(RC)中のエチレン単位含有量はコモノマーガス中のエチレンモノマーとプロピレンモノマーのガスモル比を制御して、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)中のエチレン単位含有量が25〜55重量%になるように調節する。
【0058】
一方、プロピレンホモポリマー(PP)の重量に対するプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量は、重合時間の調節や一酸化炭素や硫化水素等の触媒の重合活性調節剤を使用して、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の重量が22〜40重量%になるよう調節する。さらに、プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の分子量はプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度が、プロピレン系組成物(A)の要件を満たすように水素のような分子量調節剤をプロピレン−エチレンコポリマー重合時に加えて調節される。また、水素の供給方法はプロピレン系組成物(A)のQ値(Mw/Mn)がプロピレン系組成物(A)の要件を満たすように供給される。
【0059】
重合方式は、回分式、反連続式あるいは連続式のいずれをも採用できるが、工業的には連続式重合が好ましい。
【0060】
第2重合工程の終了後に、重合系からモノマーを除去して粒子状ポリマーを得ることができる。得られたポリマーを極限粘度([η]WHOLEE)、20℃キシレン可溶成分量、Q値(Mw/Mn)およびエチレン含有量の測定ならびに触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
【0061】
本発明のポリプロピレン系組成物(C)は、前記プロピレン系組成物(A)をベース樹脂とし、成型品の要求特性および成形方法に対応した所望の添加成分を配合した組成物である。
【0062】
本発明のポリプロピレン系組成物(C)は、通常、添加剤として、ポリオレフィン組成物に一般的な各種の添加剤、たとえば、酸化防止剤たとえばフェノール系、チオエーテル系、リン系の酸化防止剤など;分散剤または中和剤たとえばステアリン酸カルシウムなど高級脂肪酸塩類(金属石鹸類)等;光安定剤;重金属不活性化剤(銅害防止剤);透明化剤;β晶造核剤;滑剤たとえばステリン酸アマイドなど;帯電防止剤たとえばグリセリンモノステアレートなど脂肪酸エステル類等;防雲剤;無滴剤;難燃剤;難燃助剤;顔料;ハロゲン捕捉剤;有機系や無機系の抗菌剤;無機充填剤およびブロッキング防止剤たとえばタルク、マイカ、クレー、ウォラストナイト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、パーライト、ケイソウ土、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレート、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ガラス繊維、チタン酸カリウム、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイトおよび金属繊維など、カップリング剤、たとえばシラン系、チタネート系、ボロン系、アルミネート系、ジルコアルミネート系など、ならびにそれらで表面処理された無機充填剤または有機充填剤、たとえば木粉、パルプ、古紙、合成繊維、天然繊維などを、通常、発明の目的を損なわない範囲で含有する。
【0063】
一般に、ポリプロピレン系組成物(C)には、フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤ならびに中和剤(分散剤)としてのステアリン酸カルシウムが配合される。
【0064】
本発明の前記ポリオレフィンに一般的な添加剤を配合したポリプロピレン系組成物(C)は、そのままで射出成形用ポリプロピレン系組成物(Ci)、シート成形用ポリプロピレン系組成物(Cs)およびフィルム成形用ポリプロピレン系組成物(Cf)として好適に使用できる。
【0065】
また、上記のポリプロピレン系組成物(Ci)において、プロピレン系組成物(A)100重量部に対して、α晶造核剤0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.8重量部を配合することにより、射出成型品の剛性を高めおよび低温での耐衝撃性をさらに改善することができる。
【0066】
α晶造核剤としては、タルク、ミョウバン、シリカ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、カーボンブラック、粘土鉱物などの無機化合物;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの脂肪族モノカルボン酸を除くカルボン酸;前記非脂肪族モノカルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどの正塩または塩基性塩;1・2,3・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン-2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1・3−(2'・4'−ジメチルベンジリデン)−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−(2'・4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(2',4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(3',4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1・3−ベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−ベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1・3−p−メチルベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1・3−p−エチルベンジリデン−2・4−p−クロルベンジリデンソルビトール、および1・3,2・4−ビス(p−クロルベンジリデン)ソルビトールなどのジベンジリデンソルビトール系化合物;リチウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−ビス(4−クミルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−クミルフェニル)フォスフェート、カリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−モノ(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム−モノ(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ジンク−モノ(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ジンク−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムジヒドロキシ−(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒドロキシ−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-トリス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン-ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4'−ジメチル−6,6'−ジ−t−ブチル−2,2'−ビフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ジンク−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−チオビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2'−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−チオビス(4−t−オクチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[(4,4'−ジメチル−6,6'−ジ−t−ブチル−2,2'−ビフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒロドオキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムヒロドオキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4−クミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、チタンジヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、チンジヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ジルコニウムオキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムヒドロキシ−ビス[2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]などのアリールフォスフェート系化合物;前記アリールフォスフェート系化合物の内、環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と酢酸、乳酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ベヘン酸、エルカ酸、モンタン酸、メリシン酸、ステアロイル乳酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−N−ラウロイルアミノプロピオン酸などの脂肪酸族モノカルボン酸のリチウム、ナトリウムまたはカリウム塩など脂肪酸モノカルボン酸アルカリ金属塩、もしくは塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレートとの混合物;ポリ3−メチル−1−ブテン、ポリ3−メチル−1−ペンテン、ポリ3−エチル−1−ペンテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ4−メチル−1−ヘキセン、ポリ4,4−ジメチル−1−ペンテン、ポリ4、4−ジメチル−1−ヘキセン、ポリ4−エチル−1−ヘキセン、ポリ3−エチル−1−ヘキセン、ポリアリルナフタレン、ポリアリルノルボルナン、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリアリルベンゼン、ポリアリルトルエン、ポリビニルシクロペンタン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペプタン、ポリビニルトリメチルシラン、ポリアリルトリメチルシランなどの高分子化合物;などを例示できる。
【0067】
その中でも、特にタルク、アルミニウムヒドロキシ−ビス(4−t−ブチルベンゾエート)、1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(2',4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3,2・4−ビス(3',4'−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1・3−p−クロルベンジリデン−2・4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−クロルベンジリデン)ソルビトール、ナトリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウムジヒドロキシ−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、もしくはアルミニウムヒドロキシ−ビス[2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]など環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と脂肪酸モノカルボン酸アルカリ金属塩との混合物、ポリ3−メチル−1−ブテン、ポリビニルシクロヘキサンまたはポリアリルトリメチルシランが好ましい。
【0068】
これらα晶造核剤の単独使用はもちろんのこと、2種以上のα晶造核剤を併用することもできる。
【0069】
本発明の前記ポリプロピレン系組成物(Ci)には、さらにラジカル発生剤および/または結晶性プロピレンホモポリマー(PHP)を配合し、射出成型品の難白化をさらに改善することができる。
【0070】
配合される結晶性プロピレンホモポリマー(PHP)は、密度0.91〜0.89g/cm3およびプロピレン系組成物(A)と結晶性プロピレンホモポリマー(PHP)とのメルトフローレート比(MFRWHOLE/MFRPh)0.5〜2、好ましくは0.8〜1.2を有するプロピレンホモポリマーである。
【0071】
この組成物において、プロピレン系組成物(A)と結晶性プロピレンホモポリマー(Ph)とのMFR比は、成型品の難白化性に影響し、大きすぎても、小さすぎても難白化性が不足する。
【0072】
結晶性プロピレンホモポリマー(PHP)の配合量は、樹脂基準で10〜95重量%であり、プロピレン系組成物(A)の含有率は、成型品の剛性と耐衝撃性のバランスから樹脂基準で5〜90重量%の範囲である。
【0073】
すなわちこの組成物において、プロピレン系組成物(A)は成型品の白化を防止する難白化剤として作用するので、この組成物はヒンジや容器の栓(キャップ)など折り曲げ部を有する成型品の成形用として好適である。
【0074】
一方、ラジカル発生剤は、コンパウンドを高流動化させ成形性を著しく改善する。
【0075】
ラジカル発生剤としては、均一な組成物を得るために分解温度は低すぎない方が望ましく、半減期10時間を得るための温度が70℃以上、好ましくは100℃以上のものである。たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−(t−ブチルパーオキシブタン)、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイドおよび2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンなどの有機過酸化物が挙げられる。特に2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3および1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。これらのラジカル発生剤は単独で使用でき、また2種以上を併用することもできる。本発明の前記したポリオレフィンに一般的な添加剤を配合したポリプロピレン系組成物(C)は、中空成型品成形用ポリプロピレン系組成物(Cb)としても使用することができる。
【0076】
このポリプロピレン系組成物(Cb)には、プロピレン系組成物(A)100重量部に対し、可塑化成分5〜20重量部を配合し、成型品に柔軟性を付与することができる。
【0077】
可塑化成分(Ps)として、通常、低密度ポリエチレンと総称されている、密度0.910〜0.930g/cm3、結晶融点(Tm)100〜115℃、メルトフローレート(MFR:190℃;21.18N)0.1〜5g/10min、好ましくは0.1〜1g/10minのエチレンホモポリマーおよびエチレン−α−オレフィンコポリマー、ならびに密度0.92〜0.935g/cm3、結晶融点(Tm)90〜108℃、メルトフローレート(MFR:190℃:21.18N)0.1〜5g/10min、好ましくは0.1〜1g/10minのエチレン−酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。
【0078】
可塑化成分の配合は、成型品に柔軟性を付与するので、このポリプロピレン系組成物(Cb)は、蛇腹構造を有する中空成型品およびフィルムなどの成形用として好適である。
【0079】
上記した本発明の各ポリプロピレン系組成物は、プロピレン系組成物(A)と所望による各添加成分とを、高速混合装置、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名)、リボンブレンダー、タンブラーミキサーなどにより混合し、単軸押出機、二軸押出機、混練機などを用いて150から300℃、好ましくは200〜250℃で溶融混練してペレット化し、各種成型品の成形用に供する。
【0080】
本発明の成型品は、前記各ポリプロピレン系組成物を使用し各種の成形法により成形した成型品である。
【0081】
第一の態様の成型品は、射出成型品である。より具体的には、シート状成型品、容器および容器の栓(キャップ)、ヒンジ付き成型品など前記各ポリプロピレン系組成物のペレットを射出成形して得られる成型品である。
【0082】
射出成形用のポリプロピレン系組成物として、前記したいずれを使用してもよいが、好ましくは射出成形用ポリプロピレン系組成物(Ci)を使用する。
【0083】
成形対象の成型品およびそれに要求される特性によりα晶造核剤、ラジカル発生剤および/または結晶性プロピレンホモポリマーなどを配合した組成物を使用する。
【0084】
これらのポリプロピレン系組成物(Ci)を用いることにより折り曲げ部(ヒンジ構造部など)の難白化性、透明性、光沢、剛性、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、成形時の成形収縮率およびそれらのバランスが優れた射出成型品を製造することができる。
【0085】
本発明の第二の態様の成型品はシートであり、シートの印刷性および柔軟性の観点から、シートは23℃における長手方向のヤング率200〜450MPa、好ましくは300〜400MPa、かつ50℃における長手方向の引張り降伏点強度15MPa以上、好ましくは17MPa以上を有する。
【0086】
本発明のシートは、公知のシート成形法のいずれを採用しても製造できるが、生産性が良好であることから、押出し成形またはカレンダー成形が好ましい。具体的には、押出機、Tダイ、ポリシングロール(冷却ロール)、ガイドロール、引取りロール、トリミングカッター、マスキング、定尺切断カッター、スタッカー等の工程をもつ装置(Tダイシート成型機)を用いるTダイ法、ならびにバンバリミキサー、ミキシングロール、ウォーミングロール、押出機、カレンダーロール、冷却ロール、トリミングカッター、マスキング、定尺切断カッター、巻き取り機など工程を有する装置(カレンダー成型機)によりシート成形する。
【0087】
さらに好ましくは、本発明のシートの製造方法、すなわちTダイ法により前記ポリプロピレン系組成物(C)、好ましくは前記射出成形で掲げたと同様のポリプロピレン系組成物(Cs)を、樹脂温度180〜300℃で押出し、冷却ロール温度を5〜80℃、かつ樹脂温度との差が120℃以上となるように設定し、シート速度0.1〜100m/分で成形する。
【0088】
樹脂温度が180〜300℃の範囲であれば、ポリプロピレン系組成物(Cs)が十分に溶融し、かつ熱劣化しない範囲であるので、シートの溶融張力が保て良好な成形性が得られ、かつシートの表面が鮫肌状に成らず外観の優れたシートが得られる。
【0089】
冷却ロール温度は、5℃以上であれば冷却ロールが結露しないことによりシート表面に斑点状の模様が発生せず、また80℃以下であればシートを十分に冷却でき、ロール状のシートを解く時に線状の模様が発生せず良好な外観のシートが得られる。
【0090】
シートは分子配向が弱く、それにより縦方向と横方向の熱収縮率の差が少ないので、樹脂温度と冷却ロール温度との間に、下記式
【0091】
【数3】
樹脂温度−冷却ロール温度≧120
に表される関係を保持することにより、成形性の優れたシートが得られる。
【0092】
シートの成形速度は、0.1m/分以上であれば、厚みが均一なかつ不良率の少ないシートが十分な生産速度で得られ、一方100m/分以下であればシートを十分に冷却でき、ロール状のシートを解く時の線状模様の発生を防止できるので良好な外観のシートが得られる。
【0093】
本発明の第三の態様の成型品は、前記ポリプロピレン系組成物(C)、好ましくはプロピレン系組成物(A)に一般的なポリオレフィン用添加剤を配合したポリプロピレン系組成物(Cf)を用いて成形したフィルムである。このフィルムは、未延伸、一軸延伸および二軸延伸フィルムを包含する。
【0094】
未延伸フィルムは、通常のポリオレフィンフィルムの製造に使用されるTダイ法またはインフレーション法により、また一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムは、前記方法で得られた未延伸フィルムをテンター方式による一軸延伸または逐次二軸延伸法やチューブラー方式による同時二軸延伸法により延伸することにより製造することができる。
【0095】
これらのフィルムは、本発明のプロピレン系組成物をベース樹脂とするポリプロピレン系組成物(C)を用いていることにより、低温での耐衝撃性、耐熱性および引裂強度に優れている。
【0096】
本発明のフィルムの別の態様は、上記フィルムの片面または両面に機能性ポリマー層を積層した積層フィルムである。
【0097】
本発明の積層フィルムは、上記ポリプロピレン系組成物(C)からなるフィルムに特定の機能を付与可能なポリマー層を積層したものであれば、特に限定されないが、少なくともヒートシール性層を有する。
【0098】
ヒートシール性層として、密度0.89〜0.91g/cm3、結晶融点165〜160℃のプロピレンホモポリマーおよび/または密度0.89〜0.91g/cm3、結晶融点159〜110℃のプロピレン−α−オレフィンコポリマーが好適に使用される。
【0099】
これらのヒートシール性層に用いるポリマーのメルトフローレート(230℃;21.18N)は、フィルム成形時の成形性、得られるフィルムの外観の点から0.1〜50g/10分、好ましくは1〜20g/10分である。またプロピレンと共重合させるα−オレフィンとして、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1などを例示できる。
【0100】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーとして、エチレン成分含有量が0.2〜10重量%のエチレン−プロピレンコポリマー、エチレン成分含有量が0.2〜10重量%、ブテン−1成分含有量が0.4〜5重量%のエチレン−プロピレン−ブテン−1−コポリマー等が例示できる。
【0101】
プロピレンホモポリマーの結晶融点は、表面光沢、表面硬度、剛性の優れる多層フイルムが得られる点で、165〜160℃である。
【0102】
またプロピレン−α−オレフィンコポリマーの結晶融点は、ヒートシール性に優れる積層フイルムが得られる点で、159℃〜110℃、好ましくは140〜110℃である。
【0103】
これらのプロピレンホモポリマーおよびプロピレン−α−オレフィンコポリマーは、少なくともマグネシウム、チタン及びハロゲンを含有する複合体、周期律表第1ないし第3属金属の有機金属化合物、ならびに電子供与体とから形成される触媒を用い、公知公用の重合方法でプロピレンを単独重合、若しくはプロピレンとα−オレフィンを共重合する方法で製造することができる。
【0104】
本発明の多層フィルムは、ポリプロピレン系組成物を用いた層および前記機能性ポリマー層を有する、未延伸、一軸延伸または二軸延伸多層フィルムである。
【0105】
多層フイルムの層構成としては、機能性ポリマー層/ポリプロピレン系組成物層である2種2層、機能性ポリマー層/ポリプロピレン系組成物層/機能性ポリマー層である2種3層または3種3層を例示できる。中でもプロピレンホモポリマー層/ポリプロピレン系組成物層/プロピレン−α−オレフィンコポリマー層からなる積層フィルムが、得られる積層フィルムの耐熱性、ヒートシール性の点で好ましい。
【0106】
積層フィルムの厚みは特に限定するものではないが、フィルムの成形性の点で10〜100μが好ましく、更に好ましくは15〜70μである。また、積層フィルムの各層の厚みは特に限定するものではないが、低温での耐衝撃性、耐熱性、引裂強度の点で、フィルムの全厚みに対するプロピレン系組成物層の厚みの比率が30〜90%、好ましくは50〜90%である。
【0107】
積層フィルムの製造方法として、多層押出し成形法、ドライラミネート法、押出ラミネート法等を例示でき、多層押出し成形法として、通常ポリオレフィンフィルムの製造に用いられるTダイ法またはインフレーション法を例示できる。また延伸方法としてテンター方式による逐次二軸延伸法やチューブラー方式による同時二軸延伸法等を例示できる。
【0108】
上記公知公用の方法で積層フィルムを製造する場合、各層を構成するポリプロピレン系組成物および機能性ポリマーのメルトフローレート(MFR)に特に制限はないが、フィルムの成形性および製品フィルムの外観の点で、ポリプロピレン系組成物と機能性ポリマーのMFRの比は0.1〜10、好ましくは0.5〜2である。
【0109】
また本発明の積層フィルムは、ドライラミネートなどの方法により接着剤を介して、BOPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム、エバールフィルムといった透明な基材フィルムと積層して製造することも可能である。
【0110】
本発明のフィルムおよび積層フィルムは、印刷性、ラミネート適性、金属蒸着特性を付与する目的の、通常工業的に採用されている方法によるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面処理がさらに可能である。
【0111】
本発明の第四の態様の成型品は、前記したポリプロピレン系組成物(C)、特にプロピレン系組成物に可塑化成分を配合した組成物(Cb)による中空成型品である。
この中空成型品は、好ましくは蛇腹構造を有する。
【0112】
本発明の中空成型品は、ブロー成形機の押出機にポリプロピレン系組成物(C)のペレットを供給し、中空の円柱状に押出すブロー成形法により容易に製造することができる。また、成形機の金型として凹凸面(蛇腹面)を有する金型を用いることにより、容易に蛇腹構造を有する中空成型品を製造することができる。
【0113】
本発明の中空成型品の別の態様は、蛇腹構造を有する中空成型品部分と剛性、耐衝撃性の優れたポリオレフィン系組成物(PO)による中空成型品部分とが接続された複合中空成型品である。
【0114】
この蛇腹構造に接続する中空成型品部分に用いるポリオレフィン系組成物(PO)は、エチレン重合単位25〜55重量%、好ましくは35〜55重量%を含有するエチレン−プロピレンコポリマー1〜20重量%、好ましくは10〜20重量%およびプロピレンホモポリマー99〜80重量%からなる組成物に、剛性を付与する目的で添加される無機フィラー、たとえばタルク、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなどを本発明の目的を損なわない範囲で配合した組成物である。無機フィラーの配合比は、組成物の重量基準で20重量%以下であることが好ましい。
【0115】
この中空成型品は、1組の型締め装置、1つのラムシリンダーおよび少なくとも2台の押出機を備えたアキュームレーター式ブロー成形機を用い、1の押出機に本発明のポリプロピレン系組成物(C)、他の押出機に前記ポリオレフィン系組成物(PO)を供給し、はじめに一方の押出機より溶融した組成物をラムシリンダーに蓄え、次いで他方の押出機より溶融した組成物をラムシリンダーに蓄える。
【0116】
次に溶融したポリプロピレン系組成物(C)のパリソンが凹凸面(蛇腹面)を有する金型部に導入されるように設定してラムシリンダーよりパリソンを押出し、パリソン内部に圧力が0.5〜1MPaの加圧空気を吹き込むことにより製造することができる。
【0117】
[実施例]
以下、本発明を実施例、製造例、参考例、および比較例によりさらに詳細に説明する。A. プロピレン系組成物(A)の合成1)各種物性の測定
プロピレン系組成物の合成過程において、中間生成物および最終生成物について諸物性を下記の方法により測定した。
合成条件および測定結果を表1および表2に示す。
a)チタン含有固体触媒成分(a)の平均粒径(μm):マスターサイザー(MALVERN社製)を用いて測定した粒度分布から算出。
b)チタン含有固体触媒成分(a)の均一度:マスターサイザー(MALVERN社製)を用いて測定した粒度分布から得られた60%篩下の粒径を10%篩下の粒径で除して算出。
c)触媒単位重量当たりポリマー生成量:試料中のMgの誘導結合プラズマ発光分析(IPC法)により測定。
d)ポリプロピレン分子鎖中のアイソタクチックペンタッド分率P:macromolecules 8687(1975)に準拠し、13C−NMRを使用して測定。
e)エチレン単位含有率(重量%):赤外線吸収スペクトル法により測定。
f)極限粘度(dl/g):テトラリン(テトラクロロナフタレン)溶媒中、135℃の温度条件下、自動粘度測定装置(AVS2型、三井東圧(株)製)を使用して測定。
g)メルトフローレート(g/10分):JIS K 6760に準拠して測定。
h)平均分子量Q値(Mn/Mw):135℃のオルトジクロルベンゼン溶解した試料について、GPC装置(Gel Permination Chromatograph,150C型、ウォーターズ社製、使用カラム;TSK GEL GMH6-HT)を用いて測定。
i)20℃キシレン可溶成分量(重量%):ISO/DIS 1873−1に準拠して測定。
j)パウダー流動性:下記式によりパウダーの圧縮度を算出。
[数4]
圧縮度=(固め見掛け密度−ゆるみ見掛け密度)×100/固め見掛け密度
圧縮度の値が高いほどパウダー流動性が悪い。
【0118】
2)チタン含有固体触媒成分(a)の調製
a)チタン含有固体触媒成分:a−1
窒素置換したSUS製オートクレーブに、無水MgCl2を95.3g、乾燥EtOH352mlを入れ、この混合物を攪拌下に105℃に加熱し溶解させた。1時間攪拌後、この溶液を105℃に加熱した加圧窒素(1.1MPa)で二流体スプレーノズルに送入した。窒素ガスの流量は381/分であった。スプレー塔中には、冷却用として液体窒素を導入し、塔内温度を−15℃に保持した。生成物は塔内底部に導入した冷却ヘキサン中に集められ、256gを得た。生成物の分析結果から、この担体の組成は出発溶液と同じMgCl2・6EtOHであった。
担体に用いるため、45〜212μmの粒径で球形な担体205gを篩別して得た。得られた担体を室温で、181時間、31/分の流量の窒素を用いて通気乾燥して組成がMgCl2・1.7EtOHの乾燥担体を得た。
【0119】
ガラスフラスコ中において、乾燥担体20g、四塩化チタン160ml、精製1,2−ジクロルエタン240mlを混合し、攪拌下に100℃に加熱した。次いでジイソブチルフタレート6.8ml加え、さらに100℃で2時間加熱した後、デカンテーションにより液相部を除いた。再び、四塩化チタン160ml、精製1,2−ジクロルエタン320mlを加え、100℃に1時間加熱保持した。デカンテーションにより液相部を除き、精製ヘキサンで洗浄した後、乾燥してチタン含有固体触媒成分:a−1を得た。得られたチタン含有固体触媒成分:a−1の平均粒径は115μmであり、その分析値は、Mg;19.5重量%、Ti;1.6重量%、Cl;59.0重量%、ジイソブチルフタレート;4.5重量%であった。
【0120】
b)チタン含有固体触媒成分:a−2
窒素置換したSUS製オートクレーブに、精製灯油1,050ml、無水MgCl2を15g、乾燥エタノール36.3gおよび界面活性剤(商品名エマゾール320、花王アトラス(株)製)4.5gを入れた後、この混合物を800rpmで攪拌しながら昇温し120℃に30分間保持した。溶融混合物を高速で攪拌しながら、内径5mmのテフロン製チューブを使用して、−10℃に冷却した精製灯油1,500mlを張り込んだ3,000mlの攪拌付きフラスコに移送した。生成物を濾過後、ヘキサンで充分洗浄して担体を得た。
【0121】
担体15gを室温下、四塩化チタン300mlに懸濁させた後、ジイソブチルフタレート2.6mlを添加し、混合物の溶液を120℃まで昇温した。120℃の温度で2時間攪拌混合した後、固体物を濾過し、再び300mlの四塩化チタン中に懸濁させた。懸濁溶液を130℃で2時間攪拌混合した後、固体物を濾過し精製ヘキサンにて充分に洗浄して、チタン含有固体触媒成分:a−2を得た。
得られたチタン含有固体触媒成分:a−2の平均粒径は72μmであり、その分析値は、Mg;21.1重量%、Ti;2.4重量%、Cl;64.15重量%、ジイソブチルフタレート;5.3重量%であった。
【0122】
c)チタン含有固体触媒成分:a−3
マグネシウムエトキサイド300g、2−エチルヘキサノール550mlおよびトルエン600mlの混合物を0.20MPaの二酸化炭素雰囲気下に93℃で3時間攪拌した。さらにトルエン800mlおよびn−デカン800mlを加え、炭酸マグネシウム溶液を得た。
トルエン800ml、クロロベンゼン60ml、テトラエトキシシラン18ml、四塩化チタン17mlおよびイソパールG(平均炭素数10のイソパラフィン系炭化水素、沸点156〜176℃)200mlを30℃で5分間攪拌した中に、前記調製した炭酸マグネシウム溶液100mlを添加した。
【0123】
さらに5分間攪拌した後、テトラヒドロフラン44mlを添加し、60℃で1時間攪拌した。攪拌を停止し上澄み液を除去後、生成した固体をトルエン100mlで洗浄し、得られた固体にクロロベンゼン200mlおよび四塩化チタン200mlを添加し、135℃で1時間攪拌した。攪拌を停止し、上澄み液を除去後、クロロベンゼン500ml、四塩化チタン200mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル4.2mlを添加し135℃で1.5時間攪拌した。上澄み液を除去後、トルエン1,200ml、イソパールG1,600ml、ヘキサン800mlで順次固体を洗浄して比較用のチタン含有固体触媒成分:a−3を採取した。
得られたチタン含有固体触媒成分:a−3の平均粒径は18.5μmであり、その分析値は、Mg;17.0重量%、Ti;2.3重量%、Cl;55.0重量%、フタル酸ジ−n−ブチル;7.5重量%であった。
【0124】
3)チタン含有固体触媒成分(a)の予備活性化処理
内容積15リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換した後、40℃での動粘度が7.3センチストークスである飽和炭化水素溶剤(CRYSTOL-52、エッソ石油(株)製)8.3リットル、トリエチルアルミニウム525mmol,ジイソプロピルジメトキシシラン80mmol、前項で調製したチタン含有固体触媒成分700gを室温で加えた後、40℃まで加温し、プロピレンを分圧0.15MPaで7時間反応させ、予備活性化処理を行った。分析の結果、チタン含有固体触媒成分1g当りプロピレン3.0gが反応していた。
【0125】
4)プロピレンホモポリマー(PP)の合成:第1重合工程
添付図3に示すフローシートにおいて、攪拌羽根を有する横型重合器;1(L/D=6、内容積100リットル)に予備活性化処理したチタン含有固体触媒成分を0.5g/hr、有機アルミニウム化合物(b)としてトリエチルアルミニウムおよび有機ケイ素化合物(c)としてジイソプロピルジメトキシシランを表1および表2に示すAl/Siモル比となるように連続的に供給した。反応温度70℃、反応圧力2.5MPa、攪拌速度40rpmの条件を維持するようにプロピレンを連続供給し、さらに生成プロピレンホモポリマーの分子量を調節するために水素ガスを循環配管;2より連続的に供給し、反応器の気相中の水素濃度にて生成プロピレンホモポリマーの極限粘度を制御した。
反応熱を配管;3から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。
【0126】
重合器から排出される未反応ガスは配管;4を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器;1に還流した。
重合器;1で得られたプロピレンホモポリマーは、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に配管;5を通して重合器;1から連続的に抜き出し第2重合工程の重合器;10に供給した。この時、配管;5からプロピレンホモポリマーの一部を間欠的に抜き出して、アイソタクチックペンタッド分率(P)、20℃キシレン可溶成分量、極限粘度([η]PP)および触媒単位重量当りの重合体収量を測定する試料とした。
【0127】
5)プロピレン−エチレンコポリマー(RC)の合成:第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器;10(L/D=6、内容積100リットル)に第1重合工程からのプロピレンホモポリマーおよびエチレン−プロピレン混合ガスを連続的に供給し、エチレンとプロピレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度40rpm、温度60℃、圧力2.1MPa、気相のガス組成はエチレン/プロピレンモル比および水素/エチレンモル比を表1および表2に示すように調節した。生成プロピレン−エチレンコポリマーの重合量を調節するために重合活性抑制剤として一酸化炭素、また生成プロピレン−エチレンコポリマーの分子量を調節するため水素ガスを配管;7よりそれぞれ供給した。
反応熱は配管;6から供給される原料液状プロピレンの気化熱で除去した。
【0128】
重合器から排出される未反応ガスは、配管;8を通して反応器系外で冷却、凝縮させて共重合工程に還流させた。共重合工程で生成したプロピレン系組成物(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となるように配管;9で重合器;10から抜き出した。
プロピレン系組成物(A)の生産速度は、8〜12kg/hrであった。
【0129】
抜き出したプロピレン系組成物(A)からモノマーを除去し、一部は極限粘度([η]WHOLE)、Q値(Mw/Mn)、20℃キシレン可溶成分量および赤外によるプロピレン−エチレンコポリマー中のエチレンの測定に、またプロピレン−エチレンコポリマーの重合比率の測定に供した。さらに、プロピレン系組成物(A)のパウダーの流動性を評価した。
【0130】
使用するチタン含有固体触媒成分(a)の種類、第1重合工程におけるAl/Siモル比および水素/プロピレンモル比、第2重合工程におけるエチレン/プロピレンモル比および水素/エチレンモル比を変えて本発明試料A−1〜A−14および比較試料cA−1〜cA−14を得た。
【0131】
プロピレン系組成物の製造条件およびその特性を表1、表2に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
B.射出成形用ポリプロピレン系組成物(Ci)および射出成型品
1)ポリプロピレン系組成物
プロピレン系組成物A−1〜6およびcA−1〜7の各パウダーに、各種添加成分を加え高速撹拌式混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて、室温下に5〜10分間混合し、混合物をスクリュー口径40mmの押出造粒機を用い、シリンダー設定温度230℃で造粒してペレットを調製した。
【0137】
表3および表4に射出成形用ポリプロピレン系組成物Ci−1〜12およびCi−13〜18を、表5および表6に組成物cCi−1〜7およびcCi−13の各添加成分およびそれらの添加量を示す。
使用した添加成分およびその表中の略号を下記に示す。
【0138】
プロピレンホモポリマー
PHP1:チタン含有固体触媒成分:a−1を用い、Al/Siモル比2、水素/プロピレンモル比0.03、重合圧力2.5MPaおよび重合温度70℃の条件でプロピレンを単独重合して得たメルトフローレートMFRPHP1および融点163℃の結晶性プロピレンホモポリマー。
PHP2:チタン含有固体触媒成分:a−1を用い、Al/Siモル比2、水素/プロピレンモル比0.01、重合圧力2.5MPaおよび重合温度70℃の条件でプロピレンを単独重合して得たメルトフローレートMFRPHP1.9および融点164℃の結晶性プロピレンホモポリマー。
PHP3:チタン含有固体触媒成分:a−1を用い、Al/Siモル比2、水素/プロピレンモル比0.055、重合圧力2.5MPaおよび重合温度70℃の条件でプロピレンを単独重合して得たメルトフローレートMFRPHP6および融点164℃の結晶性プロピレンホモポリマー(比較用)。
【0139】
酸化防止剤
Ph−1:フェノール系熱安定剤
Ph−2:テトラキス(メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン。
【0140】
α晶造核剤
α−1:アルミニウムヒドロキシ−ビス(4−t−ブチルベンゾエート)
α−2:1・3,2・4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール
α−3:ナトリウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート。
ラジカル発生剤:1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン
中和剤:ステアリン酸カルシウム
【0141】
【表5】
【0142】
【表6】
なお、上記番号13、16は比較例であり、14、15、17、18は実施例である。
【0143】
【表7】
【0144】
【表8】
【0145】
2)射出成形
上記調製した各ペレットを射出成形機で溶融樹脂温度230℃、金型温度50℃に設定し、JIS形のテストピースおよび諸物性測定用テストピースを作成した。
テストピースを湿度50%、室温23℃の室内で72時間状態調整した後、下記方法により諸物性値を測定した。
【0146】
a)成形収縮率:成形機の金型の全長から調製した引張試験片(JIS K 7113 1号引張り試験片)の全長の長さを減じた長さと金型の長さの比を100倍する下記式により算出。
【数5】
成形収縮率=(金型の全長−試験片の全長)×100/金型の全長
b)曲げ弾性率(MPa):JIS K 7203に準拠して測定。
c)耐衝撃性(J/m):JIS K 7110に準拠して−20℃または23℃で測定。
d)アイゾット衝撃強度(J/m2):JIS K 7110に準拠して−30℃で測定。
e)ヘイズ:25×50×1mmの平板状テストピースによりASTM D1003に準拠して測定。
f)光沢:ASTM D 523 鏡面光沢度法に準拠して指示角60度で測定。
g)難白化性:ヒンジ構造を有するテストピースを用い、ヒンジ部分で折り曲げ白化の程度を目視観察し、下記の3段階で評価した。
○:ヒンジ部分の色が他の部分と同等。
△:ヒンジ部分の色が他の部分に比較してわずかに白い。
×:ヒンジ部分の色が他の部分に比較して著しく白い。
測定結果を表3〜表6中に示す。なお、表中の衝撃試験データでNBは、設定条件で試験片が破壊しなかったことを意味する。
【0147】
また、試料Ci−1〜6およびcCi−1〜6のプロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーの極限粘度比と重量比の積対成形収縮率の関係を図1に、曲げ弾性率の関係を図2に示す。
【0148】
C.シート成形用ポリプロピレン系組成物(Cs)およびシートの製造
1)ポリプロピレン系組成物
プロピレン系組成物A−1〜A−6およびcA−1、3、5および7の
各パウダーに、各種添加成分を加え高速撹拌式混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて、室温下に5〜10分間混合し、混合物をスクリュー口径
40mmの押出造粒機を用い、シリンダー設定温度230℃で造粒してペレットを調製した。
【0149】
ポリプロピレン系組成物Cs−1〜6およびcCs−1〜4の各添加成分およびそれらの添加量を表7および表8に示す。
使用した添加成分およびその表中の略号を下記に示す。
酸化防止剤
P−1:リン系熱安定剤
P−2:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
中和剤:前記に同じ。
【0150】
【表9】
【0151】
【表10】
【0152】
2)シート成形
上記調製した各組成物をTダイおよびポリッシングロールを有するシート成形機を用い、表9および10中に示す、シリンダー設定温度、冷却ロール温度および成形速度で厚さ5mmのシートを成形した。
成形したシートを、湿度50%、室温23℃の室内で72時間状態調整し、下記の物性を測定した。成形条件および物性測定結果を表7および表8に示す。
【0153】
a)引張降伏点強度(MPa):50℃の恒温槽中に30分以上放置後、ASTM D 882に準拠して測定。
b)ヤング率(MPa):23℃の室内に48時間以上放置後、ASTM D 882に準拠して測定。
c)打抜衝撃強度(J):ASTM D 781に準拠して測定。
d)折曲げ白化性(mmφ):幅10mm、長さ120mmのシートを打ち抜き試験片とした。この試験片の両端を徐々に近づけながら折り曲げ、湾曲部に白化が生起した時点での曲率を測定し、この曲率に対応する円の直径を算出して折り曲げ白化性とし、難白化性の指標とした。
e)印刷性:グラビア印刷機を用いて、乾燥温度50℃、印刷速度5m/分で3色刷り印刷を行い、印刷ズレを目視観察した。
○:印刷ズレなし
×:明白な印刷ズレあり
表7および表8に成形条件および物性測定結果を示す。
【0154】
D.フィルム用ポリプロピレン系組成物(Cf)およびフィルムの製造
1)ポリプロピレン系組成物
プロピレン系組成物A−7〜14、2、4および5、ならびにcA8〜14、5および6に、各添加成分を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で混合後、単軸押出機(口径40mmφ)を用いて溶融混練してペレット化し、フィルム用ポリプロピレン系組成物Cf−1〜12およびcCf−1〜9を調製した。
ポリプロピレン系組成物を表9および表10に示す。
【0155】
使用した添加成分およびその表中の略号を下記に示す。
【0156】
酸化防止剤
Ph−2:テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
P−2:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
中和剤:ステアリン酸カルシウム
ブロッキング防止剤:シリカ
滑 剤:オレイン酸アマイド
【0157】
【表11】
【0158】
【表12】
【0159】
2)単層フィルムの成形
a)無延伸フィルム
Tダイを備えた単層押出機(口径65mmφ)を用いCf−1〜8およびcCf−1〜7を押出温度230℃で押出し、エアーチャンバーおよび表面温度30℃の冷却ロールで急冷して厚み25μmの無延伸フィルムを得た。
b)二軸延伸フィルム
Tダイを備えた単層押出機(口径40mmφ)を用いCf−9〜11、cCf8−8および9を押出温度230℃で押出し、エアーナイフおよび表面温度30℃の冷却ロールで冷却固化して厚み2.0mmの未延伸シートを成形した。次いで、得られた未延伸シートをバッチ式二軸延伸機を用いて延伸温度157℃で二軸延伸(押出方向に5.0倍、横方向に8.0倍)して厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。
c)一軸延伸フィルム
Tダイを備えた単層押出機(口径40mmφ)を用いCf−9〜11、cCf8−8および9を押出温度230℃で押出し、エアーナイフおよび表面温度60℃の冷却ロールで冷却固化して厚み0.25mmの未延伸シートを成形した。次いで、得られた未延伸シートをバッチ式二軸延伸機を用いて延伸温度120℃で押出方向に5.0倍一軸延伸して厚み50μmの一軸延伸フィルムを得た。
【0160】
3)積層フィルムの成形
a)無延伸フィルム
ポリプロピレン系組成物Cf−2および4ならびにcCf−1および6と、下記のポリオレフィン系組成物との2種3層または3種3層無延伸フィルムを調製する。
【0161】
ポリオレフィン系組成物
PO−1:密度0.90g/cm3、結晶融点163℃、メルトフーレート(MFR)7.0g/10分であるプロピレンホモポリマー99.49重量%に、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.03重量%、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.08重量%、ステアリン酸カルシウム0.1重量%、シリカ(ブロッキング防止剤)0.2重量%およびオレイン酸アマイド(滑剤)0.1重量%を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で混合後、単軸押出機(口径40mmφ)を用いて溶融混練し、ペレット化した組成物。
【0162】
PO−2:密度0.90g/cm3、結晶融点が132℃、メルトフーレート(MFR)6.0g/10分であるプロピレン−エチレン−ブテン−1コポリマー99.49重量%に、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.03重量%、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.08重量%、ステアリン酸カルシウム0.1重量%、シリカ(ブロッキング防止剤)0.2重量%およびオレイン酸アマイド(滑剤)0.1重量%を配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で混合後、単軸押出機(口径40mmφ)を用いて溶融混練し、ペレット化した組成物。
【0163】
多層Tダイを備えた3種3層押出機(口径65mmφの中間層用単軸押出機が1台、口径50mmφの表層用単軸押出機が2台)を用い、前記ポリプロピレン系組成物を中間層用単軸押出機に、前記ポリオレフィン系組成物を表層用単軸押出機に供給し、230℃で溶融させ、2種3層または3種3層多層共押出を行い、エアーチャンバーおよび表面温度30℃の冷却ロールで冷却固化して厚み30μm(厚み構成比=1:4:1)からなる2種3層または3種3層無延伸フィルムを得た。
表11および表12に層構成を示す。
【0164】
b)二軸延伸フィルム
多層Tダイを備えた3種3層押出機(口径65mmφの中間層用単軸押出機が1台、口径50mmφの表層用単軸押出機が2台)を用い、ポリプロピレン系組成物Cf−12またはcCf−8を中間層用単軸押出機に、前記ポリオレフィン系組成物を表層用単軸押出機に供給し、230℃で溶融させ、2種3層多層共押出を行い、エアーナイフおよび表面温度30℃の冷却ロールで冷却固化して厚み2.0mm(厚み構成比=1/18/1)からなる2種3層未延伸シートを成形した。次いで、得られた2種3層未延伸シートをバッチ式二軸延伸機を用いて延伸温度157℃で二軸延伸(押出方向に5.0倍、横方向に8.0倍)して厚み50μmの二軸延伸フィルムを得た。
表11および表12に層構成を示す。
【0165】
【表13】
【0166】
【表14】
【0167】
4)フィルム物性
上記調製した単層フィルムおよび積層フィルムについて下記物性を評価した。
a)透明性(%):ASTM D 1003に準じ、フィルムのヘイズを測定して透明性の基準とした。
b)光沢(%):ASTM D 523に準じ、フィルムの光沢度を指示角を20度で測定。
c)引裂強度(N/mm):ASTM D 1922に準じ、フィルムのエレメンドルフ引裂強度を測定。
d)引張破断強度(MPa):ASTM D 882に準じ、フィルムの引張り破断強度を測定。
e)引張破断伸度(MPa):ASTM D 882に準じ、フィルムの引張り破断伸度を測定。
f)耐寒温度(℃):恒温槽中で15分間フィルムを保持した後、ASTMD 781に準じてフィルムのインパクト強度を測定し、0.5J以上のインパクト強度が得られるフィルムの保持温度。
g)耐熱性(℃):フィルムから10×100mmの短冊状に切り抜いたサンプルを所定温度に設定したシリコンオイル槽に10分間保持した後、長手方向の長さを測定し、収縮した長さの初期長さに対する百分率で表した値が2%を越える時の温度。
h)ヒートシール温度(℃):二軸延伸ポリプロピレンフィルム(20μ)と接着剤を用いてドライラミネートし、ラミネートを行ったフィルムをシール温度130℃〜190℃の範囲で5℃間隔(計8温度条件)に、シール圧力2MPa、シール時間0.5秒で幅10mmのヒートシールをした後、15mm幅の短冊状に切り抜いたサンプルを用いて各シール温度でのシール部の90℃の剥離試験を、引張り速度300mm/分で引張り試験機により測定し、0.5N/15mm以上の剥離強度を示す最低シール温度。
単層フィルムの評価結果を表9および表10中に、積層フィルムの評価結果を表11および表12中に示す。
【0168】
E. 中空成型品用ポリプロピレン系組成物(Cb)および中空成型品
1)ポリプロピレン系組成物
プロピレン系組成物A−1、2およびcA−3に各種添加成分を配合し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して250℃に設定された押出機によって溶融混練および押出を行い、ペレット状のポリプロピレン系組成物Cb−1〜7およびcCb−1〜4を調製した。
【0169】
ポリプロピレン系組成物を表13および表14に示す。
【0170】
使用した添加成分およびその表中の略号を下記に示す。
【0171】
可塑化成分
LPDE:メルトフーレート(MFR)0.4g/10分、結晶融点110℃、密度0.920g/cm3である低密度ポリエチレン。
EVAC:メルトフーレート(MFR)0.5g/10分、結晶融点104℃、密度0.925g/cm3、酢酸ブチル含有量3重量%であるエチレン酢酸ビニール共重合体。
酸化防止剤および中和剤:前記のとおり。
【0172】
【表15】
なお、上記番号1、4、7、8が比較例であり、2、3、5、6、9、10、11、12が実施例である。
【表16】
【0173】
2)中空成型品の成形
a)中空成型品(単品)
上記調製したペレット状のポリプロピレン系組成物Cb−1〜6またはcCb−1〜3を中空成形機(SN−50(プラコー社製))の押出機に供給して200℃でパリソンを押出し、このパリソンを30℃に調整した金型内でブローして側面部に蛇腹構造部を持つ円柱状の中空成型品(60φ×300×1.6mmt/中央部に蛇腹構造7ピッチ、ピッチ間10mm、溝の深さ10mm、蛇腹部の平均肉厚0.9mmt)を成形した。上面および底面を切断して中空成型品を得た。
b)中空成型品(複合品)
ペレット状のポリプロピレン系組成物Cb−1、2または7、もしくはcCb−1、2または4を押出機を2機持つ中空成形機の1方の押出機に供給し、他方の押出機に下記のポリマー組成物のいずれかを供給し、はじめに前記押出機より200℃でパリソンを押出し、続いて後記押出機より200℃でパリソンを押出し、2つの組成物が連結したパリソンを作り、このパリソンを30℃に調整した金型内でブローして側面部に蛇腹構造部を持つ円柱状の中空成型品(60φ×300×1.6mmt/中央部に蛇腹構造7ピッチ、ピッチ間10mm、溝の深さ10mm、蛇腹部の平均肉厚0.9mmt)を成形した。この際、前記押出機より押し出されたパリソンが蛇腹部へ来るよう調節を行った。上面および底面を切断して中空成型品(複合品)を得た。
【0174】
EP−1:結晶融点165℃、曲げ弾性率1,100Mpa、MFR0.65g/10分である、エチレン含有量59重量%のエチレン−プロピレンコポリマー12.7重量%およびプロピレンホモポリマー87.3重量%よりなるプロピレン系組成物100重量部に対してトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.05重量部、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン0.15重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部を配合したポリマー組成物。
【0175】
EP−2:EP−1100重量部に平均粒径が1.6μmのタルクを10重量部配合した曲げ弾性率2,100Mpa、MFR0.72g/10分であるポリマー組成物。
【0176】
ポリプロピレン系組成物とポリマー組成物の組み合わせを表13および表14中に示す。
【0177】
3)中空成型品の評価
上記調製した中空成型品について、下記の特性および評価基準で評価した。
【0178】
a)成形性:成形温度200℃、スクリュウ径50φ、スクリュウ回転数40rpm、にて溶融パリソンを押し出し(ダイス径21mm、コアー径19mm)パリソンが12cmおよび50cmまで垂れ下がる速度を測定し、両者の垂れ下がり速度の差(50cmまでの速度−12cmまでの速度)で判定。
A:ドローダウンが小さく速度差が5%未満
B:ドローダウンの速度差が5〜20%
C:ドローダウンの速度差が20%を超える。
【0179】
b)柔軟性:23±2℃の室内にて中空成形品の一端を固定し、一方に1Kgの荷重を乗せた時の変形量を角度で判定。
A:30度以上の変形量
B:20度以上、30度未満の変形量
C:10度以上、20度未満の変形量
D:10度未満の変形量。
【0180】
c)耐衝撃白化性:20〜25℃の環境下にて中空成形品を水平に寝かせ成形品(ポリプロピレン系組成物使用部位)に先端半径が6.35mmの撃芯(190g)をあて、500gの荷重を高さ50cmから撃芯上に落とし撃芯周辺に発生する白化面の直径を測定。
A:撃芯部に傷が見られるが白化が見られない
B:撃芯部の白化が8mmφ未満
C:撃芯部の白化が8〜15mmφ
D:撃芯部の白化が15mmφを超える。
【0181】
d)耐熱性:成形品を150℃のオーブン中に500時間放置したときの変形、外観を目視観察。
A:変形、外観異常なし
B:寸法変化が2%以下で外観変化が殆どなし
C:寸法変化が2%以上で外観変化(劣化)あり。
【0182】
e)ウェルド強度:成形品のウェルド部を圧縮し(50mm)パリソンの押し出し方向に沿ったの白化および亀裂を目視観察。
A:白化および亀裂の発生なし
C:白化または亀裂が発生。
【0183】
f)接合強度:筒状成形品より重合体組成物及びそれ以外の組成物との接合部より試験片を切り出し引張強度を測定し、その値を下記標準品の値と比較。
標準品:中空成型品よりポリプロピレン系組成物よりなる部位より切り出した試験片。
A:標準品の85%を超える強度
B:標準品の85〜70%の強度
C:標準品の70%未満の強度。
【0184】
表13および表14中に、各物性の評価結果を示す。
【0185】
本発明のプロピレン系組成物は、成形性、成形収縮率、剛性、柔軟性、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、透明性、光沢、難白化性に優れ、かつそれらのバランスの優れた各種の成型品を得るための本発明のポリプロピレン系組成物のベース樹脂として好適に使用される。
【0186】
本発明によれば、プロピレン系組成物をベース樹脂とするポリプロピレン系組成物を使用した射出成型品においては、図1および図2に示すように、プロピレン系組成物を構成するプロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度比と重量比との積([η]RC/[η]PP)×(WPP/WRC)が、1.0〜3.0の範囲にある場合に成形収縮率はほぼ1にあり、高い曲げ弾性率(剛性)を示し、さらに表3および表5に示すように優れた低温耐衝撃性、透明性、光沢および難白化性を示す。さらにα晶造核剤を配合したポリプロピレン系組成物Ci−7〜12においては、さらに低温耐衝撃性が改善され、また表4および表6に示すようにラジカル発生剤および/または高結晶性プロピレンホモポリマーを配合したポリプロピレン系組成物Ci−13〜18においては、難白化性がさらに改善される。
【0187】
また、これらのポリプロピレン系組成物を使用して、各種のシート状成型品はもとより、容器およびその栓(キャップ)、ヒンジ構造を有する成型品など複雑な構造を有する成型品を射出成形により製造することができる。
【0188】
本発明によれば、プロピレン系組成物をベース樹脂とするポリプロピレン系組成物を使用したシートにおいては、その成形方法との組み合わせによって表7および表8に示すように打ち抜き衝撃強度、折曲げ難白化性および印刷性に優れ、かつ引張降伏点強度およびヤング率のバランスの優れたシートが得られる。
【0189】
本発明によれば、プロピレン系組成物をベース樹脂とするポリプロピレン系組成物を使用して成形した単層フィルムは、表9および表10に示すように透明性および耐熱性に優れ、引裂強度、引張破断強度、破断伸度および低温耐衝撃性などの機械的特性のバランスに優れた無延伸、二軸延伸および一軸延伸フィルムを提供する。また、このポリプロピレン系組成物とポリオレフィン系組成物との積層フィルムは、表11および12に示すように上記の単層フィルムの特性を維持した上で、優れたヒートシール性を有する。
【0190】
これらのフィルムは、食品包装用をはじめとする各種の包装用フィルムとして好適である。
【0191】
本発明によれば、プロピレン系組成物をベース樹脂とするポリプロピレン系組成物を使用して成形した中空成型品、特に蛇腹構造を有する中空成型品は、表13および表14に示したように成形性、柔軟性、衝撃難白化性、耐熱性、ウェルド特性に優れ、特に可塑化成分を添加したポリプロピレン系組成物Cb−2、3、5および7においては、柔軟性がさらに改善される。また他のポリマー組成物と接合させた複合品においては高い接合強度を有する。
【0192】
これらの蛇腹構造を有する中空成型品およびその複合品は、エアーダクトなどとして好適である。
【0193】
本発明は、各種の成型品の成形に使用されるポリプロピレン系組成物およびそのベース樹脂として好適なプロピレン系組成物を提供するものであり、当該分野における意義は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度比と重量比との積([η]RC/[η]PP)×(WPP/WRC)に対する成形収縮率を表す曲線。
【図2】 プロピレンホモポリマー(PP)とプロピレン−エチレンコポリマー(RC)の極限粘度比と重量比との積([η]RC/[η]PP)×(WPP/WRC)に対する曲げ弾性率を表す曲線。
【図3】 製造例で用いたプロピレン系組成物の連続重合装置のフローシート。
【符号の説明】
1、10:重合器
2:水素配管
3:原料プロピレン配管
4、8:未反応ガス配管
5、9:重合体抜き出し配管
6:原料混合ガス配管
Claims (13)
- プロピレンホモポリマーおよびプロピレン−エチレンコポリマーからなり、プロピレン−エチレンコポリマーの極限粘度([η]RC)が1.7〜2.8dl/gの範囲;プロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーとの極限粘度比([η]RC/[η]PP)が0.7〜1.2の範囲;かつプロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーの重量比(WPP/WRC)とそれらの極限粘度比([η]RC/[η]PP)との積(WPP/WRC)×([η]RC/[η]PP)が1.0〜3.0の範囲;にあるプロピレン系組成物をベース樹脂とし、さらに密度0.91〜0.89g/cm3を有し、かつプロピレン系組成物とのメルトフローレートの比が0.5〜2の範囲にあるプロピレンホモポリマーを樹脂基準で10〜95重量%含有することを特徴とする射出成形用ポリプロピレン系組成物。
- プロピレンホモポリマーおよびプロピレン−エチレンコポリマーからなり、プロピレン−エチレンコポリマーの極限粘度([η]RC)が1.7〜2.8dl/gの範囲;プロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーとの極限粘度比([η]RC/[η]PP)が0.7〜1.2の範囲;かつプロピレンホモポリマーとプロピレン−エチレンコポリマーの重量比(WPP/WRC)とそれらの極限粘度比([η]RC/[η]PP)との積(WPP/WRC)×([η]RC/[η]PP)が1.0〜3.0の範囲;にあるプロピレン系組成物をベース樹脂とし、さらに該ベース樹脂100重量部に対し可塑化成分5〜20重量部を含有するポリプロピレン系組成物であって、前記可塑化成分が、密度0.910〜0.930g/cm3、結晶融点(Tm)100〜115℃を有するエチレンホモポリマーまたはエチレン−α−オレフィンコポリマー、ならびに/もしくは密度0.92〜0.935g/cm3、結晶融点(Tm)90〜108℃、酢酸ビニル単位含有量1〜10重量%を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とするポリプロピレン系組成物。
- さらに酸化防止剤および中和剤を含有する請求項1または2に記載のポリプロピレン系組成物。
- 酸化防止剤が、フェノール系熱安定剤および/またはリン系熱安定剤、中和剤がステアリン酸カルシウムである請求項3に記載のポリプロピレン系組成物。
- さらにα晶造核剤を0.0001〜1重量%含有する請求項1に記載のポリプロピレン系組成物。
- α晶造核剤が、タルク、芳香族カルボン酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール系化合物、芳香族リン酸金属塩、ポリ3−メチル−1−ブテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリアリルトリメチルシランまたはこれらの混合物である請求項5に記載のポリプロピレン系組成物。
- さらにラジカル発生剤を含有する請求項1、5または6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系組成物。
- ラジカル発生剤が、有機過酸化物である請求項7に記載のポリプロピレン系組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリプロピレン系組成物からなる成型品。
- 請求項1、3〜8のいずれか1項に記載のポリプロピレン系組成物からなるペレットを射出成形する成型品の製造方法。
- 請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系組成物からなる中空成型品。
- 蛇腹構造を有する請求項11に記載の中空成型品。
- 請求項12に記載の蛇腹構造を有する中空成型品からなる部位;および エチレン単位25〜55重量%を含有するエチレン−プロピレンコポリマー1〜20重量%およびプロピレンホモポリマー99〜80重量%からなり、さらに所望による添加剤を含有するポリオレフィン系組成物の中空成型品からなるその他の部位;からなり両部位が接合されている中空成型品。
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