JP5047440B2 - Dmc触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、アルキレンオキシドを活性水素原子含有出発化合物に重付加させることによってポリエーテルポリオールを製造するための複金属シアン化物(DMC)触媒の改良された製造方法に関する。
【0002】
(背景技術)
アルキレンオキシドを活性水素原子含有出発化合物に重付加させるための複金属シアン化物(DMC)触媒は、長く知られてきた(例えば、US-A3404109、 US-A3829505、 US-A3941849、および US-A5158922参照)。これらのDMC触媒をポリエーテルポリオールの製造のために用いると、水酸化アルカリ金属のようなアルカリ金属触媒によるポリエーテルポリオールの従来の製造方法に比し、末端に二重結合を有する単官能性ポリエーテル、いわゆるモノオールの含量を特に減少させる効果を有する。この方法で得られたポリエーテルポリオールは、高品質ポリウレタン(例えば、エラストマー、フォーム、塗料)に加工することが出来る。
【0003】
通常、DMC触媒は、金属塩の水溶液と金属シアン化物塩の水溶液とを、有機錯体配位子、例えば、エーテルの存在下で反応させることにより得られる。典型的な触媒製造では、例えば、(過剰の)塩化亜鉛水溶液とヘキサシアノコバルト酸カリウムとを混合し、次いで、形成した分散体にジメトキシエタン(グライム)を添加する。触媒をろ取し、グライム水溶液で洗浄した後、一般式:
【化1】
Zn[Co(CN)]・xZnCl・yHO・zグライム
で示される活性触媒が得られる(例えば、EP 700949参照)。
【0004】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
従来技術によると、DMC触媒は、例えば金属塩(好ましくは、例えば塩化亜鉛のような亜鉛塩)および金属シアン化物塩(例えばヘキサシアノコバルト酸カリウム)の水溶液を、有機錯体配位子(好ましくはtert-ブタノール)および場合により更なる配位子の存在下、攪拌タンク中で分散体を得るために混合することにより製造される。触媒は、既知の技術、好ましくは、遠心分離またはろ過により、分散体から単離される。十分に高い触媒活性を達成するために、その後水性配位子溶液により触媒を洗浄することが必要である。触媒の活性を低減し得る例えば塩化カリウムのような水溶性副生成物は、この洗浄工程により触媒から除去される。従来技術によれば、この洗浄工程は、水性配位子溶液中、例えば触媒を攪拌槽中で再分散し、引き続く固体の更なる単離、例えば遠心分離またはろ過により実施される。高活性DMC触媒を得るためには、触媒を少なくとももう一度洗浄することが一般に必要であり、非水性配位子溶液が更なる洗浄操作に好ましく用いられる。従来技術によると、更なる洗浄工程も、続く触媒の単離を伴う再分散により実施される。最後に、DMC触媒は乾燥されなければならない。この触媒調製の方法は、非常に時間がかかり高コストである。100時間を越える工程時間が、商業規模でのDMC触媒の製造に要求される(例えば、US-A 5900384参照)。高い触媒コストのために、ポリエーテルポリオール製造のDMC触媒法の利点が、その結果、少なからず損なわれる。
【0005】
(その解決方法)
DMC触媒分散体を形成するために、金属塩および金属シアン化物塩の水溶液を、有機錯体配位子a)および場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の存在下、まず反応させ、次いでこれをろ過し、続いて、ろ過ケークをろ過ケーク洗浄により洗浄し、場合により水分をプレスまたは機械的に除去後、洗浄されたろ過ケークを最終的に乾燥する、かなり簡単な方法により、高活性DMC触媒が得られることが見出された。
【0006】
触媒製造のためのこの改良された方法は、高活性DMC触媒の製造のために、これまでの従来技術では欠かせない数回の触媒の再分散とその後の単離を避け、その結果DMC触媒製造にかかる工程時間を相当短縮する。新規な改良された方法により調製されたDMC触媒は、これまでの従来技術による顕著により高価な方法で製造されたDMC触媒と同等の活性を有する。
【0007】
故に、本発明は、複金属シアン化物(DMC)触媒の製造のために改良された方法を提供するものであって、有機錯体配位子a)および場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の存在下、金属塩および金属シアン化物塩の水溶液をまず反応させて、DMC触媒分散体を形成し、次いで、この分散体をろ過し、ろ過ケークを1つまたはそれ以上の有機錯体配位子a)および場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の水性または非水性溶液で、ろ過ケーク洗浄によりその後洗浄し、場合により水分をプレスによりまたは機械的に除去した後、洗浄されたろ過ケークを、最終的に乾燥する。
【0008】
本発明による方法に適したDMC触媒中に含まれる複金属シアン化物化合物は、水溶性金属塩と水溶性金属シアン化物塩の反応生成物である。
【0009】
複金属シアン化物化合物の製造に適した水溶性金属塩は、一般式(I):
【化2】
M(X) (I)
[式中、Mは、Zn(II), Fe(II), Ni(II), Mn(II), Co(II), Sn(II), Pb(II), Fe(III), Mo(IV), Mo(VI), Al(III), V(V), V(IV), Sr(II), W(IV), W(VI), Cu(II)およびCr(III) の金属群から選ばれる。Zn(II), Fe(II), Co(II)またはNi(II) が特に好ましい。Xは同一または相違し、好ましくは同一のアニオンであって、好ましくはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンからなる群から選ばれるアニオンである。nの値は1,2または3である。]
により示される。
【0010】
適当な水溶性金属塩の例は、塩化亜鉛、臭化亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトナト亜鉛、安息香酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)、塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)、チオシアン酸コバルト (II)、塩化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)である。異なる水溶性金属塩の混合物も用いられ得る。
【0011】
複金属シアン化物化合物の製造に適した水溶性金属シアン化物塩は、一般式(II):
【化3】
(Y)M’(CN)(A) (II)
[式中、M’はFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ir(III)、Ni(II)、Rh(III)、Ru(II)、V(IV)および V(V)の金属群から選ばれる。特にM’は、Co(II)、Co(III)、Fe(II)、Fe(III)、Cr(III)、Ir(III)および Ni(II)の金属群から好ましく選ばれる。水溶性金属シアン化物塩はこれらの金属の1つまたはそれ以上を含んでいてよい。Yは、同一でも相違していてもよく、好ましくは同一のアルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンである。Aは同一でも相違していても良く、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、イソシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、カルボン酸イオン、シュウ酸イオンおよび硝酸イオンからなる群から選ばれる好ましくは同一のアニオンである。a、bおよびcは共に整数であり、存在する金属シアン化物塩の電気的中性を保つように選ばれ、好ましくは、aは、1、2、3または4であり、bは、4、5または6であり、cは0である。]
により示される。本発明で適当な水溶性金属シアン化物塩の例は、ヘキサシアノコバルト(III) 酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III) 酸カリウム、ヘキサシアノコバルト(III) 酸カルシウムまたはヘキサシアノコバルト酸(III) リチウムである。
【0012】
DMC触媒中に含まれる好ましい複金属シアン化物化合物は、一般式(III):
【化4】
[M’x’(CN) (III)
[式中、Mは式(I)で定義され、M'は式(II)で定義され、x 、x' 、y および z は複金属シアン化物化合物の電気的中性を保つように選ばれる整数である。好ましくは x = 3、x' = 1、y = 6 および z = 2であり、M = Zn(II)、Fe(II)、Co(II)または Ni(II)であり、M'=Co(III)、Fe(III)、Cr(III)または Ir(III)である。]
で示される化合物である。
【0013】
適当な複金属シアン化物化合物の例は、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛、ヘキサシアノイリジウム(III)酸亜鉛、ヘキサシアノ鉄(III)酸亜鉛およびヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)である。更に、適当な複金属シアン化物化合物は、例えば,US 5158922に見られる。ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛が好ましく用いられる。
【0014】
本発明の方法に用いることの出来る有機錯体配位子a)は、複金属シアン化物化合物と錯体を形成することができる酸素、窒素、リンまたは硫黄などのヘテロ原子を含む水溶性有機化合物である。適当な有機錯体配位子は、例えば、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミド、尿素、ニトリル、スルフィド、およびそれらの混合物である。好ましい有機錯体配位子は、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノールのような水溶性脂肪族アルコールである。tert−ブタノールが特に好ましい。
【0015】
有機錯体配位子a)を触媒製造中または複金属シアン化物化合物の分散体形成後直接に加える。有機錯体配位子a)は、通常過剰に用いられる。
【0016】
本発明の方法に好ましいDMC触媒は、上記有機錯体配位子a)に加えて、1つまたはそれ以上の更なる有機錯体形成成分b)も含んで成る。この成分b)は、錯体配位子a)と同じ化合物の種類から選ばれる。成分b)は、好ましくは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、グリシジルエーテル、グリコシド、多価アルコールのカルボン酸エステル、ポリアルキレングリコールソルビタンエステル、胆汁酸、胆汁酸塩、胆汁酸エステル、胆汁酸アミド、シクロデキストリン、有機ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスホナイト、ホスフィネートまたはホスフィナイト、イオン性表面または界面活性化合物、またはα,β−不飽和カルボン酸エステルである。そのような配位子の組み合わせを有するDMC触媒は、例えば、EP-A700949、 EP-A761708、 WO97/40086、 WO98/08073、 WO98/16310、 WO99/01203、 WO99/19062、 WO99/19063またはドイツ国特許出願19905611.0に記載されている。
【0017】
本発明の方法に適当なDMC触媒は、場合により、複金属シアン化物化合物の製造からの、水および/または1つまたはそれ以上の式(I)の水溶性金属塩を含むことが出来る。
【0018】
本発明のDMC触媒は、通常、水溶液中で、金属塩、特に式(I)の金属塩と、金属シアン化物塩、特に式(II)の金属シアン化物塩、有機錯体配位子a)および場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の反応により製造される。
【0019】
金属塩(例えば、化学量論過剰(金属シアン化物塩に基づき少なくとも50モル%)で用いられた塩化亜鉛)および金属シアン化物塩(例えばヘキサコバルト酸カリウム)の水溶液は、有機錯体配位子a)(例えばtert−ブタノール)の存在下、分散体を形成しながら好ましくまず反応させる。
【0020】
有機錯体配位子a)は、金属塩および/または他の金属シアン化物塩の水溶液中に存在でき、または、それを複金属シアン化物化合物の析出後に得られた分散体へ直接加える。
【0021】
その後、形成した分散体も、1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)により好ましく処理される。更なる錯体形成成分b)は、水および有機錯体配位子a)の混合物中に好ましく用いられる。
【0022】
DMC触媒分散体を、例えば攪拌タンク中で、場合によりUS-A5891818に記載された変法により調製出来、その変法では、攪拌反応器中で調製された触媒分散体のいくらかは、反応器の頭部へ循環噴霧され、この循環流は、「高せん断インラインミキサー」を通過する。
【0023】
しかし、DMC触媒分散体は、混合ノズル(例えば、平滑ジェットノズル、レボス(Levos)ノズル、ボッシュ(Bosch)ノズルなど)、特に好ましくは、ドイツ国特許出願19958355.2に記載されるようなジェット分散機を用いて、好ましく調製される。
【0024】
平滑ジェットノズルにおいて、第一遊離物流は、ノズル内でまず加速されて、ゆっくりと流れている第二遊離物流へ高流速で噴霧される。その後、異なるサイズの渦(渦カスケード)への得られるジェットの激しい分散により、二つの遊離物流の混合が生じる。非常に高くかつより均一な出力密度が達成されるので、攪拌タンクと比べ、濃度の差をこの方法で顕著により早く消失することができる。
【0025】
しかし、好ましくはジェット分散機を本発明の方法に用いるべきである。ジェット分散機は、二つのノズルが直列に配置されるように構成され得る。第一遊離物流は、横断面が狭くなるので第一ノズルでまず高度に加速される。加速されたジェットは、速い流速のために第二の成分を吸いこむ。得られたジェットは、混合室から、第一遊離物流の方向に対して垂直に配置された更なるノズルを通過する。ノズル間の距離は、短い滞留時間のため、混合室内で種晶のみ形成するが結晶成長は生じないように、好ましく選ばれる。固体の種晶形成速度は、ジェット分散機の最適な設計に決定的に重要である。0.0001秒〜0.15秒、好ましくは0.001秒〜0.1秒の滞留時間が有利に確立される。結晶成長は、流出物中のみで生じる。さらなるノズルの直径は、部分的に混合された遊離物流の更なる加速がここで生じるように好ましく選ばれる。結果として更なるノズル中で更に生じるせん断力のために、均一混合の状態が、平滑ジェットノズルと比べてより短時間により速い渦分散により達成される。その結果、種晶の非常に早い形成速度を伴う析出反応においてさえ、析出反応の間の規定された化学量論組成を確立することが可能であるように、遊離物の理想的な混合状態を達成することが可能である。5000μm〜50μm、好ましくは、2000μm〜200μmのノズル直径は、ノズル内の0.1〜1000barの圧力損失または、1×10W/m〜1×1013W/mの範囲の出力密度で都合よいことが明らかになった。
【0026】
多段ジェット分散機が得られるように、所望の粒径に依存して、n個のノズル(n=1〜5)を連続して配置することが出来る。更なる分散機の付加的な利点は、すでに形成した粒子をノズル中の高いせん断力により機械的に細かく砕くことが出来ることである。この方法では20μmから0.1μmの直径を有する粒子を製造することが可能である。しかし、直列に配置された数個のノズルを有する代わりに、分散体を循環することによっても、粉砕することはできる。
【0027】
分散体を製造するための他の混合機、例えばEP-A101007、WO95/30476またはドイツ国出願特許19928123.8に記載されるようなものまたはこれらの混合機の組み合わせも用いることが出来る。
【0028】
分散体の加熱は、ノズル中のエネルギー発散および結晶化エンタルピーによって生ずることがある。温度は、結晶形成過程に相当影響することがあるので、熱交換器を、等温工程のために混合器の下流に設けることが出来る。
【0029】
例えば、比較的多数の穴の使用、数個の混合器の平行配置、またはノズルのない領域の拡大により、問題なしにスケールアップが可能である。しかし、後者は、ノズル径を大きくすることによっては達成されない。なぜなら、この方法では、コア流れの発生の可能性が存在し、その結果、混合結果が悪化するからである。故に、ノズルのない領域が大きいノズルの場合に、適当な広さのスリットが好ましく用いられる。
【0030】
次いで、形成したDMC触媒の分散体は、ろ過により分離される。基本的に、この為に、液体の機械的分離に適当な多くのろ過装置を用いることが出来る。適当なろ過装置は、例えば「Ullmann's Encyclopaedia of Industrial Chemistry」 B2巻、 9および10章, VCH, Weinheim, 1998、およびH. Gasper, D. Oechsle, E. Pongratz編「Handbuch der industriellen Fest/Fluessig-Filtration[ Handbook of Industrial Solid/Liquid Filtration]」Wiley-VCH Verlag GmbH, Weinheim, 2000に記載されている。
【0031】
ろ過に必要な圧力勾配を、重力、遠心力(例えばフィルター遠心機)、または好ましくは気体圧の差(例えば、吸引フィルターまたは加圧フィルター)、または液圧(例えば、フィルタープレス、ドラムまたはディスクフィルターまたは横断流ろ過モジュール)により適用することが出来る。続くろ過ケーク洗浄を、押しつぶし、または好ましくは流通洗浄により行う。この場合、ケークを通る洗浄液流およびケーク中に事前に含まれる液体は置換され、拡散効果も効果的になる。洗浄されたケークからの水分の除去は、気体圧の差、遠心力または機械的プレス、または好ましくは気体圧の差と続く機械的プレスの組み合わせにより実施される。機械的プレスのための圧力は、機械的に、または膜により適用される。
【0032】
不連続および連続的に操作されるろ過装置の両方を、触媒を分離するために用いることができる。不連続操作ろ過装置の例は、トレーリングブレードおよび折りたたみ(turned-down)フィルター遠心機、膜、チャンバー、枠または管状フィルタープレス、圧力ろ過機、自動プレス装置、円板プレス機、多管および板状フィルター並びに真空および減圧フィルターである。連続操作ろ過装置の例は、スクリーンコンベアープレス、および、加圧および真空ドラムフィルター、加圧および真空円板フィルター、コンベヤーベルトフィルターおよび横断流フィルターである。
【0033】
真空または加圧フィルターまたは吸引フィルターが、実験室スケールでのDMC触媒分散体のろ過に特に適しており、加圧吸引フィルター、フィルタープレスおよび加圧ろ過機が工業的かつ産業的規模で特に適している。
【0034】
膜フィルタープレスがパイロットプラントおよび実用規模において特に適当であることが明らかにされた。適当なろ過布、好ましくは膜布を用いることにより、これらは、加えられた液圧勾配に基づいてDMC触媒分散体のろ過を可能にする。続くろ過ケーク洗浄を、製造工程を簡素化して加速させるために、フィルタープレス中で、流通洗浄として、実施する。ろ過ケーク体積に対する洗浄液の好ましい比は、元のろ過ケーク中に存在する液体量の完全な交換をもたらす量にある。ろ過ケークの洗浄の後で、乾燥の前に好ましく実施されるろ過ケークからの水分の機械的除去は、フィルタープレス中、膜へ適用される圧力による機械的プレスにより、好ましくもたらされる。水分の機械的除去は、ろ過ケークから洗浄液をできるだけ多く除去することが重要である。
【0035】
ろ過は、一般に10〜80℃の温度で実施される。適用される圧力の差は、0.001bar〜200bar、好ましくは0.1bar〜100bar、特に好ましくは0.1bar〜25barであってよく、適用される圧力差は用いられる装置に依存する。
【0036】
ろ過後、湿潤ろ過ケーク(一般に、残留水分30〜95質量%)は、場合により先のプレスまたは機械的な水分除去後、適当な装置により洗浄される。この洗浄は、好ましくは、ろ過装置上で、有機錯体配位子a)および、場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の1つまたはそれ以上の水性または非水性溶液で、流通洗浄により実施され、この方法では、ろ過ケークは液中に分散されず、洗浄効果は、溶液がろ過ケークを流通することおよび場合により拡散効果が加わることにより生じる。
【0037】
湿潤ろ過ケークは、まず有機錯体配位子a)(例えばtert−ブタノール)の水溶液により好ましく洗浄される。例えば塩化カリウムなどの水溶性副生成物を、この方法で触媒から除去することが出来る。水性洗浄溶液中の有機錯体配位子a)の量は、全溶液に基づいて好ましくは40〜80質量%である。更に、水性洗浄溶液へ、全溶液に基づいて好ましくは0.5〜5質量%の更なる錯体形成成分b)を加えることは、より好ましい。
【0038】
この第一洗浄段階の後、有機錯体配位子a)および場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の水性または非水性溶液による更なる洗浄段階を、ろ過ケーク洗浄として本発明により実施されるのと同様に、続いて行うことが出来る。触媒の活性は、この方法により更に向上できる。しかし、ろ過ケーク洗浄により、有機錯体配位子a)および場合により1つまたはそれ以上の更なる錯体形成成分b)の水溶液を用いて、ろ過ケークを1回洗浄することが、非常に高い活性を有するDMC触媒を得るために、しばしば既に十分であることが、見出された。
【0039】
従来技術の方法と比べて、用いられる洗浄溶液の全量を顕著に減少させることが、本発明の方法においてしばしば可能であって、故に本発明の方法はDMC触媒の製造の原料コストも低減する。
【0040】
ろ過ケーク体積に基づく用いられる洗浄液の量は、通常、0.5/1〜1000/1、好ましくは1/1〜500/1(各場合体積に基づく)であって、特に好ましくは、正確には、ろ過ケーク中に初めから存在する液体を出来るだけ完全に置換するのに必要な洗浄液の量である。ろ過ケーク洗浄は、通常10〜80℃、好ましくは15〜60℃の温度で行われる。
【0041】
ろ過ケーク洗浄は、0.001bar〜200bar、好ましくは0.1bar〜100bar、特に好ましくは0.1bar〜25barの圧力下で行われる。
洗浄時間は、数分から数時間である。
【0042】
ろ過ケーク洗浄後、0.5〜200bar、好ましくは出来るだけ高い圧力下で、洗浄したろ過ケークをプレスすることが有利であることが明らかになった。これは、ろ過ケーク洗浄後、例えば直接的に、フィルタープレスまたは他の機械的圧力を適用できる適当な圧力装置を用いて行われ、その結果、ろ過ケーク中に存在した液は膜または適当なろ過布を通って漏出することが出来る。
【0043】
DMC触媒は、その後、約20〜120℃の温度で、0.1mbar〜常圧(1013mbar)の圧力下乾燥される。接触乾燥機、対流乾燥機および噴霧乾燥機もこのために適している。乾燥は、このために適当であれば、機械的に液体を分離する装置(例えば、吸引乾燥機、遠心乾燥機および「熱フィルタープレス」)の中で場合により直接的に行うことも出来る。
【0044】
本発明は、アルキレンオキシドを活性水素原子含有出発化合物に重付加させることによってポリエーテルポリオールを製造する方法における、本発明の方法により製造されたDMC触媒の使用も提供する。
【0045】
(従来技術より有効な効果)
従来技術に比してDMC触媒の工程時間の顕著な短縮が、DMC触媒のこの改良された製造方法により可能となる。新規な改良された方法により調製されたDMC触媒は、これまでの従来技術による相当に高価な方法で調製されたDMC触媒の活性と比べて、ポリ−テルポリオールの製造において同等の活性を有するので、このことは、ポリエーテルポリオール製造のためのDMC触媒方法の収益性を相当に増す。
【0046】
その非常に高い活性のため、本発明により調製されたDMC触媒は、しばしば非常に低い濃度(製造されるポリエーテルポリオールの量に基づいて、25ppmおよびそれ未満)で使用される。本発明の方法により調製されたDMC触媒の存在下に製造されたポリエーテルポリオールが、ポリウレタンの製造のために使用されたならば、ポリエーテルポリオールからの触媒の除去を、得られるポリウレタンの品質に悪影響を及ぼすことなく、省略出来る。
【0047】
実施例
触媒調製
実施例1(比較例):触媒A
(再分散とその後のろ過により、ろ過ケークを1回洗浄する触媒の調製)
蒸留水810g中の塩化亜鉛81.25gの溶液を、ジェット分散機(直径0.7mmの穴1個)を含んでなるループ反応器中、45℃で循環する。蒸留水200g中のヘキサシアノコバルト酸カリウム26gの溶液を、これに計量供給する。ジェット分散器中の圧力損失は2.5barである。析出直後、tert−ブタノール325gおよび蒸留水325gの混合物を計量供給し、分散体を、2.5barのジェット分散機中の圧力損失の下、45℃で80分間循環する。次いで、コール酸ナトリウム塩6.5g、tert−ブタノール6.5gおよび蒸留水650gの混合物を計量供給し、続いて分散体を2.5barのジェット分散機の圧力損失下、20分間循環する。固体を真空吸引フィルター上でろ過により単離する。その後、湿潤過ケークを、コール酸ナトリウム塩13g、tert−ブタノール455gおよび蒸留水195gの混合物で、2.5barのジェット分散機中の圧力損失下、45℃で20分間ループ反応器中での循環により洗浄する。固体を、再度、真空吸引フィルター上でろ過し、その後、湿潤ろ過ケークを高真空下100℃で5時間乾燥する。
【0048】
実施例2(比較例):触媒B
(再分散とその後のろ過により、ろ過ケークを2回洗浄する触媒の調製)
蒸留水810g中の塩化亜鉛81.25gの溶液を、ジェット分散機(直径0.7mmの穴1個)を含んでなるループ反応器中45℃で循環する。蒸留水200g中のヘキサシアノコバルト酸カリウム26gの溶液を、これに計量供給する。ジェット分散器中の圧力損失は2.5barである。析出直後、tert−ブタノール325gおよび蒸留水325gの混合物を計量供給し、分散体を、2.5barのジェット分散機中の圧力損失の下、45℃で80分間循環する。次いで、コール酸ナトリウム塩6.5g、tert−ブタノール6.5gおよび蒸留水650gの混合物を計量供給し、続いて分散体を2.5barのジェット分散機の圧力損失下、20分間循環する。固体を真空吸引フィルター上でろ過により単離する。その後、湿潤ろ過ケークを、コール酸ナトリウム塩13g、tert−ブタノール455gおよび蒸留水195gの混合物で、2.5barのジェット分散機中の圧力損失下、45℃で20分間ループ反応器中での循環により洗浄する。固体を再度、真空吸引フィルター上でろ過し、湿潤ろ過ケークを、コール酸ナトリウム塩4.8g、tert−ブタノール650gおよび蒸留水65g混合物で、2.5barのジェット分散機中の圧力損失下、45℃で20分間ループ反応器中での循環により最終的に再度洗浄する。真空吸引フィルター上で再度ろ過した後、洗浄された湿潤ろ過ケークを、高真空下100℃で5時間乾燥する。
【0049】
実施例3:触媒C
(1回のろ過ケーク洗浄による触媒の調製)
蒸留水810g中の塩化亜鉛81.25gの溶液を、ジェット分散機(直径0.7mmの穴1個)を含んでなるループ反応器中45℃で循環する。蒸留水200g中のヘキサシアノコバルト酸カリウム26gの溶液を、これに計量供給する。ジェット分散器中の圧力損失は2.5barである。析出直後、tert−ブタノール325gおよび蒸留水325gの混合物を計量供給し、分散体を、2.5barのジェット分散機中の圧力損失の下、45℃で80分間循環する。次いで、コール酸ナトリウム塩6.5g、tert−ブタノール6.5gおよび蒸留水650gの混合物を計量供給し、続いて分散体を、2.5barのジェット分散機の圧力損失下、20分間循環する。この分散体350gを2.0barの加圧下、圧力吸引フィルターによりろ過する。次いで、圧力吸引フィルター中の湿潤ろ過ケークを3.0barの加圧下で、コール酸ナトリウム塩2g、tert−ブタノール70gおよび蒸留水30gの混合物を用いて、ろ過ケーク洗浄により洗浄する。洗浄された湿潤ろ過ケークを、高真空下100℃で5時間乾燥する。
【0050】
実施例4(比較例):触媒D
(再分散とその後のろ過により、ろ過ケークを2回洗浄する触媒の調製)
蒸留水16.2kg中の塩化亜鉛1.625kgの溶液を、ジェット分散機(0.7mm直径の穴110個)を含んで成るループ反応器中35℃で循環する。蒸留水4.0kg中のヘキサシアノコバルト酸カリウム0.52kgの溶液をこれに計量供給する。ジェット分散器中の圧力損失は1.2barである。析出直後、tert−ブタノール6.5kgおよび蒸留水6.5kgの混合物を計量供給し、ジェット分散機中の圧力損失1.2barの下、35℃で20分間分散体を循環する。コール酸ナトリウム塩0.13kg、tert−ブタノール0.13kgおよび蒸留水13kgの混合物を計量供給し、続いて分散体を0.1barのジェット分散機中の圧力損失下で10分間循環する。固体を膜フィルタープレス中で2.0barの加圧下ろ過し、4.0bar下でのプレスする。その後、湿潤圧縮ろ過ケークを、コール酸ナトリウム塩0.26kg、tert−ブタノール9.1kgおよび蒸留水3.9kgの混合物で、ジェット分散機中1.8barの圧力損失の下、35℃で20分間ループ反応機中で循環により洗浄する。再度、固体を、膜フィルタープレス中で2.0barの加圧下ろ過し、4.0barの下で、プレスし、湿潤圧縮ろ過ケークを、コール酸ナトリウム塩0.096kg、tert−ブタノール13kgおよび蒸留水1.3kgの混合物を用いて、ジェット分散機中1.8barの圧力損失下、35℃で20分間ループ反応機中で循環することにより、再度最終的に洗浄する。2.0barの下、膜フィルタープレスで再度ろ過後、湿潤プレスろ過ケークを、高真空下100℃で5時間乾燥する。
【0051】
実施例5:触媒E
(1回のろ過ケーク洗浄による触媒の調製)
蒸留水16.2kg中の塩化亜鉛1.625kgの溶液を、ジェット分散機(0.7mm直径の穴110個)を含んで成るループ反応器中35℃で循環する。蒸留水4.0kg中のヘキサシアノコバルト酸カリウム0.52kgの溶液をこれに計量供給する。ジェット分散器中の圧力損失は1.2barである。析出直後、tert−ブタノール6.5kgおよび蒸留水6.5kgの混合物を計量供給し、ジェット分散機中の圧力損失1.2barの下、35℃で20分間分散体を循環する。コール酸ナトリウム塩0.13kg、tert−ブタノール0.13kgおよび蒸留水13kgの混合物を計量供給し、分散体を0.1barのジェット分散機中の圧力損失下で10分間引き続き循環する。固体を、2.0barの加圧下で、膜フィルタープレス中ろ過する。次いで、膜フィルター中の湿潤ろ過ケークを、2.5barの加圧下で、コール酸ナトリウム塩0.22kg、tert−ブタノール8.0kgおよび蒸留水3.4kgの混合物を用いて、ろ過ケーク洗浄により洗浄し、その後、洗浄したろ過ケークを5.0barの加圧下でプレスする。湿潤圧縮ろ過ケークを、高真空下100℃で5時間乾燥する。
【0052】
ポリエーテルポリオールの製造
一般的手順
ポリプロピレングリコール出発物質(数平均分子量=1000g/mol)50gおよび触媒5mg(製造されるポリオールの量に対して25ppm)を、まず不活性ガス(アルゴン)下の500ml加圧反応器内に導入し、攪拌しながら105℃に加熱する。次いで、プロピレンオキシド10gを一度に計量供給する。更なるプロピレンオキシドを、反応器内の圧力の加速度的な降下が見られたときのみ再び計量供給する。圧力のこの加速度的な降下は、触媒が活性化されたことを示す。その後、残りのプロピレンオキシド(140g)を、2.5barの一定の全圧下に連続的に計量供給する。プロピレンオキシドの計量供給が完結し、105℃で2時間の後反応の後、揮発性の内容物を90℃(1mbar)で留去し、次いで、混合物を室温まで冷却する。
【0053】
生じたポリエーテルポリオールは、OH価、二重結合含量および粘度の決定によって特徴づける。
反応の進行は、時間−転化率曲線(プロピレンオキシドの消費量(g)対反応時間(分))によって監視する。誘導時間は、時間−転化率曲線上の最も勾配の大きい点での接線と曲線から外挿したベースラインとの交点から決定した。触媒活性の決定に重要なプロポキシル化時間は、触媒活性化(すなわち、誘導時間の終点)からプロピレンオキシドの計量供給の終点までの期間に相当する。
【0054】
実施例6(比較例):触媒A(25ppm)によるポリエーテルポリオールの製造
【表1】
Figure 0005047440
【0055】
実施例7(比較例):触媒B(25ppm)によるポリエーテルポリオールの製造
【表2】
Figure 0005047440
【0056】
実施例8:触媒C(25ppm)によるポリエーテルポリオールの製造
【表3】
Figure 0005047440
【0057】
実施例9(比較例):触媒D(25ppm)によるポリエーテルポリオールの製造
【表4】
Figure 0005047440
【0058】
実施例10:触媒E(25ppm)によるポリエーテルポリオールの製造
【表5】
Figure 0005047440

Claims (7)

  1. A)有機錯体配位子の存在下、金属塩の水溶液を金属シアン化物塩の水溶液と反応させて、DMC触媒分散体を形成し、
    B)形成した分散体をろ過し、
    C)得られたろ過ケークをろ過ケーク洗浄により有機錯体配位子の溶液で洗浄し、
    D)洗浄したろ過ケークを乾燥する
    DMC触媒の製造方法であって、前記工程C)において、ろ過ケークを、有機錯体配位子a)、および場合によりa)と異なる1つまたはそれ以上の更なる錯体配位子b)の水溶液で洗浄する、前記方法。
  2. 有機錯体配位子a)および、a)と異なる1つまたはそれ以上の更なる有機錯体配位子b)の存在下、工程A)を実施する請求項1に記載の方法。
  3. ろ過ケーク洗浄を流動洗浄として実施する請求項1または2に記載の方法。
  4. 洗浄したろ過ケークを、乾燥前に、プレスし、または水分の機械的除去に付する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 工程B)および工程C)を、フィルタープレスを用いて実施する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 工程A)を、混合ノズルを用いて実施する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 混合ノズルがジェット分散機である請求項6に記載の方法。
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