JP4951183B2 - スパンデックスを製造するための分散剤含有スラリー - Google Patents
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Description
関連出願
本出願は、審査中の、出願番号09/525,243(2000年3月15日出願)の部分継続出願である。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、少なくとも1種の無機微粒子、少なくとも1種の分散剤、及び少なくとも1種の液状アミドを有する分散剤含有スラリー(dispersant slurry)に関し、より詳細には、その分散剤が、改質されたリン酸処理(phosphated)ポリ(アルキレンエーテル)アルコールである、そのようなスラリーに関する。
背景技術の説明
無機微粒子は、湿式紡糸されたスパンデックス等の繊維を製造する際の添加剤として使用されている。多種多様なそのような添加剤が米国特許第4,525,420号、第3,389,942号及び第5,626,960号に記載されておりそして混合物の形で紡糸溶液に添加することができる。無機微粒子が存在するために、紡糸に先立ってそのような溶液を濾過する際に種々の困難が起ったり紡糸口金の中での沈着が生じる可能性がある。
【0003】
欧州特許出願558,758及び米国特許第5,969,028号は、分散剤として脂肪酸及び脂肪酸の金属塩の使用を開示しているけれどもこれらは特に効果的ではない。英国特許第1,169,352号及び日本公開特許公報JP63−151352は、無機物質用の分散剤としてリン酸ポリエーテルの使用を開示しているけれども、ポリウレタンを湿式紡糸してスパンデックスを得るのに適した液体においての使用は開示していない。
【0004】
国際特許出願WO00/09789及び日本公開特許公報JP11−229235も、ポリウレタン繊維に耐塩素性を付与するための、スパンデックスにおける何種類かの分散剤及び選択された添加剤を開示している。これらの文献は両者共、亜鉛、マグネシウム又はアルミニウムの酸化物又は水酸化物と組み合わせたリン酸エステル(「処理剤」)を開示している。WO00/09789は、弾性ウレタン繊維を製造するために、金属粒子が処理剤に付着することを要求している。処理剤の例としては、とりわけ、ポリオキシアルキレングリコールアルキレンエーテルアシッドフォスフェイトが挙げられている。これらの分散剤を用いて製造されたスラリーは、特に無機微粒子の含量が高い場合に、安定性が不十分である。
【0005】
無機の添加物を含有するスパンデックスの紡糸における改良が依然として要望されている。
【0006】
発明の概要
本発明の分散剤含有スラリーは、本質的に、
(A)分散剤含有スラリーの全重量基準で10〜78重量%の無機微粒子;
(B)無機微粒子基準で2〜50重量%の、成分(C)の液体に可溶な、
(i)リン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)ポリ(アルキレンエーテル)アルコール及び
(ii)芳香族又はアルキル芳香族末端基を有する、リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール
から成る群から選ばれる分散剤;並びに
(C)ジメチルスルフォキシド、テトラメチル尿素及びアミドから成る群から選ばれる液体
から成っている。
【0007】
本発明の分散剤含有スラリーを用いるスパンデックスの製造方法は、
(A)スラリーを、微粒子の粒子サイズの中央値が約5ミクロン以下になるように摩砕する工程;
(B)スラリーを、ポリウレタンを紡糸溶媒に溶解した溶液に添加する工程;
及び
(C)工程(B)からの混合物を紡糸してスパンデックスを形成する工程
を含んで成っている。
【0008】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する「スパンデックス」は、その慣用されている意味を持つ、即ち、繊維形成物質が、その少なくとも85重量%がセグメント(segmented)ポリウレタンで構成される長鎖の合成エラストマーである人造繊維である。その繊維を製造するためには、ポリウレタンを適切な紡糸溶媒に溶解した溶液を調製し、紡糸口金を通して、加熱したガスが入ったカラム中(乾式紡糸)へ又は水性の浴の中(湿式紡糸)へ紡糸して溶媒を除去する。通常、目詰まりを低減させるために、溶液を、紡糸口金に到達する前に濾過する。本明細書でリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤及びその前駆物質に対して用いた「改質された」は、分散剤及びその前駆物質が、芳香族又はアルキル芳香族末端基、或いはポリアルキルシロキサンブロックを有することを意味する。本発明のスラリーの製造において使用されるより好ましい分散剤のシリコーンブロックは、部分的にアルキル化されているだけであり、シラン型の水素を含有していてポリエーテルブロックをグラフトするために利用することができる。そのようなシリコーンブロックは、本明細書では「ポリアルキルシロキサン」と呼び、その最も一般的な形が「ポリメチルシロキサン」である。
【0009】
スパンデックスを製造するのに適切な溶媒は、一般的には、液状アミド、例えば、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、N−メチル−2−ピロリドン(「NMP」)及びジメチルホルムアミドである。ジメチルスルホキシド(DMSO)及びテトラメチル尿素(TMU)も使用することができる。多種多様な安定剤(例えば、耐塩素剤及び粘着防止剤)、光沢除去剤及び潤滑剤を、紡糸前に、ポリウレタン溶液に添加することができる。微粉砕した無機の微粒子は、安定剤、顔料及び光沢除去剤として使用することができる。
【0010】
本発明は、少なくとも1種の無機微粒子添加剤、少なくとも1種の分散剤、及び少なくとも1種の、アミド、DMSO及びTMUのような液体で構成されている分散剤含有スラリー(摩砕ベースと呼ぶこともある)である。そのスラリーは、スラリーの全重量基準で約10〜78重量%の典型的には約10〜70重量%の無機微粒子、及び、無機微粒子の重量基準で2〜50重量%の、少なくとも1種の分散剤を含んで成っている。好ましい範囲は、2〜25重量%である。
【0011】
より小さな装置を使用しそして処理を困難にする可能性があるスラリー粘度の急速な上昇を避けながら摩砕効率を向上させるためには、スラリーは、約35〜70重量%の無機微粒子を含んで成るのが好ましい。非水性で、低粘度で、摩砕可能なスラリーがそのような高い微粒子濃度において製造できるのは予想外であった。
【0012】
混合物中の無機微粒子は、サイズの中央値(容積分布に基づく)が約5ミクロン以下であることができ、繊維への紡糸性が向上するためには、約1ミクロン以下であることが好ましい。無機微粒子の粒子サイズが1ミクロン以下の場合には、分散剤は4〜15重量%であるのが好ましい。そのようなスラリーを摩砕するか又は粉砕し、ポリウレタン紡糸溶液と混合すると、大きすぎる粒子の含量が減少しているので、スパンデックスへの紡糸の前に容易に濾過することができる。紡糸口金の内部での沈着もまた低減することができる。
【0013】
本発明の分散剤含有スラリー及びスパンデックスの製造において有用な分散剤は、芳香族又はアルキル芳香族末端基を有するリン酸処理(された)ポリ(アルキレンエーテル)アルコール、及びポリアルキルシロキサン骨格に末端ブロックとして又は櫛状のブロックとして付加したリン酸処理(された)ポリ(アルキレンエーテル)アルコールであることができる。芳香族末端基を有するリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールが好ましく、そしてポリアルキルシロキサン骨格に末端ブロックとして又は櫛状のブロックとして付加したリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールが、より好ましい。上記の、改質されたリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールにおいて、前駆物質である高分子アルコールは、単独重合ポリエーテル、ランダム共重合ポリエーテル及びブロック共重合ポリエーテルのいずれであっても良い。単独重合ポリエーテル前駆物質の1例は、ポリ(エチレンエーテル)アルコールであり、共重合ポリエーテル前駆物質の1例は、(エチレンエーテル・プロピレンエーテル共重合体)アルコールである。改質されたリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールは、例えば、国際特許出願WO97/19748、米国特許第3,567,636号及びその中の参照文献に記載されているように、対応する改質されたポリ(アルキレンエーテル)アルコール(モノアルコール又はジアルコールのいずれか)の、ポリリン酸、オキシ三塩化リン又は五酸化リンとの反応によって製造することができる。得られる改質されたリン酸ポリ(アルキレンエーテル)モノ及びジエステルの遊離酸形態の生成物は使用されるが、アルカリ金属塩のような他の形態の生成物は、一般的に本発明に使用される液体に不溶である。
【0014】
改質されそしてリン酸処理されて、本発明で使用される、対応するリン酸エステル分散剤を形成するポリ(アルキレンエーテル)アルコールはまた、オキシラン(共)重合体、(共重合)ポリ(オキシアルキレン)アルコール、エチレンオキシド・プロピレンオキシド(共)重合体、又は(共重合)ポリアルキレングリコールと呼ばれる場合もある。
【0015】
改質されたリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールは、フェニル、トリスチリルフェニル、ノニルフェニル、及び類似の基のような芳香族又はアルキル芳香族原子団を末端基に持つことができる。例えば、フェニル又はトリスチリルフェニル基を有する末端が好ましい。例えば、トリスチリルフェニル末端を有し、エチレンエーテル単位が16個であるリン酸ポリ(エチレンエーテル)アルコールは、式:
【0016】
【化1】
【0017】
によって表される。
【0018】
本発明において使用される改質されたリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールのより好ましい形態は、例えばポリメチルシロキサンの、シリコーン骨格を有する末端又は櫛形ブロック共重合体である。米国特許第5,070,171号、第5,149,765号及び第5,785,894号に記載されているように、そのようなポリマーは、シラン型の水素を含有しているポリメチルシロキサンをアリルアルコール、又は所望のポリエーテルのアリルアルコールアルコキシラートと反応させてブロックポリシロキサンポリエーテルを得、次いでポリリン酸又は五酸化リンを用いてリン酸処理することによって製造することができる。そのような好ましい分散剤を、本明細書では、「リン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)−ポリ(アルキレンエーテル)アルコール」と呼び、その最も一般的な形を、「リン酸処理ブロックポリ(メチルシロキサン)−トリメチレン−ポリ(エチレンエーテル)アルコール」と呼ぶ。任意の原子団である「トリメチレン」項は、アリルアルコールの反応によって生成した、ブロックとブロックの間の結合を示す。これらの分散剤は、以下の式:
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、
Rは、
【0021】
【化3】
【0022】
aは、0〜200の整数であり、
bは、0〜200の整数であり、
cは、0〜200の整数であり、
R1は、−(CH2)nCH3及びフェニルから選ばれ、
nは、0〜10の整数であり、
R2は、−(CH2)3−(OCH2CH2)x−[OCH2CH(CH3)]y
−(OCH2CH2)x−OHであり、
x、y及びzは、整数であり、そしてそれぞれ独立に0〜20から選ばれ、
そして
e及びfは、1〜2の範囲の数で、但し、e+f=3である)、及び
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、
aは、0〜200の整数であり、
bは、0〜200の整数であり、
cは、0〜200の整数であり、
R1は、−(CH2)nCH3及びフェニルから選ばれ、
nは、0〜10の整数であり、
R2は、−(CH2)3−(OCH2CH2)x−[OCH2CH(CH3)]y−
(OCH2CH2)x−OHであり、
x、y及びzは、整数であり、そしてそれぞれ独立に0〜20から選ばれる)によって表すことができる。
【0025】
本発明において有用な、改質されたリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールには、本発明のスラリー、工程及び/又はスパンデックスに悪影響を与えないならば、例えばポリエーテル部分において、その他の原子団が存在することができる。そのような原子団の例として、ケト、ウレタン、尿素及びエステル基が挙げられる。
【0026】
本発明の分散剤含有スラリーに用いることができる無機微粒子の例として、炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、並びにハイドロタルサイト及びハンタイト、Mg3Ca(CO3)4とハイドロマグネサイト、Mg4(CO3)・Mg(OH)2・4H2Oの物理的混合物のような複合炭酸塩)、硫酸塩(例えば、硫酸バリウム及び硫酸カルシウム)、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム)及び酸化物(例えば、珪酸塩、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、及び酸化亜鉛)が挙げられる。ハイドロタルサイトは合成品であっても天然品であってもよく、そして一般式M2+ xAl2(OH)2x+1-nx(An-)z・mH2O(式中、MはMg又はZn、xは少なくとも2の正の整数、zは2以下の正の整数、mは正の整数、An-はn価のアニオンである)を有する。本発明において有用なハイドロタルサイトの例として、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg8Al2(OH)20CO3・3.6H2O、Mg4.7Al2(OH)13.4CO3・3.7H2O、Mg3.9Al2(OH)5.8CO3・2.7H2O、及びMg3Al2(OH)10CO3・1.7H2Oを挙げることができる。
【0027】
本発明で用いることができる液状アミドの例として、DMAc、NMP、及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0028】
分散剤含有スラリーは、液状アミド、TMU及びDMSOの少なくとも1種、無機微粒子の少なくとも1種、及び少なくとも1種の分散剤を、一緒に混合し、次いで、場合によっては、磨砕又は粉砕することにより製造される。スラリーは、他の添加剤をも含有することができる。
【0029】
スラリーの成分はどのような順序で混合してもよいが、最初に分散剤を液体と混合し、次いで無機微粒子を添加するか、或いは、最初に分散剤を無機微粒子と混合するか又は無機微粒子上にコーティングし、次いで液体を加えるのが好ましい。液体と無機微粒子とを最初に、少なくとも分散剤を加えるまでに、混合すると、望ましくない高い初期粘度が生じる可能性がある。
【0030】
場合によっては、スラリーは、追加の液状アミド及び/又はポリウレタンをアミドに溶解した溶液で希釈する、即ちスラリー濃度を下げることができる。濃度が下がったスラリーを次に追加のポリウレタン溶液及びその他の添加剤と混合物して、いわゆるポリウレタン紡糸溶液を調製し、次いでこの溶液を乾式又は湿式紡糸して、繊維の重量基準で約0.1〜10重量%の無機添加物を含有するスパンデックスを形成することができる。例えば、スパンデックスの重量基準で約0.5重量%のハンタイトとハイドロマグネサイトの物理的混合物を用いることができる。
【0031】
他に特記されていない場合は、実施例で試験されている分散剤は純品又は純品に近いものが用いられているが、分散剤含有スラリー又は生成するスパンデックスの製造、加工、使用に悪影響を与えない物質であれば、他の物質を分散剤中に存在させることができる。実施例で用いている市販のリン酸処理ポリエ−テルアルコールは、モノエステル、ジエステル、未反応リン酸、及びリン酸処理されていないポリエーテルアルコールの複合混合物である(AATCC Journal,November1995,pp17〜20)。リン酸処理されたブロックポリメチルシロキサントリメチレン−ポリエチレンエーテルアルコールである、Lambent Phos A−100は、櫛の歯として複数のポリエチレンエーテル基を持った櫛形ポリマーであり、各ブロックコポリマー分子中の水酸基の約40%がリン酸エステル化され、5〜8%がモノエステルで、26〜33%がジエステルであり、そしてポリエチレンエーテル歯上のヒドロキシル基の残りが、実質的に未反応の(ノニオン性)原子団になっている。Lambent Phos A−100の1%未満がリン酸である。
【0032】
実施例で用いている無機微粒子物質は、以下の通りである。全ての粒子径に対する参照事項は容積分布に基づいている。
【0033】
Ultracarb(登録商標)U5: Microfine Minerals,Ltd.粒子サイズの中央値が5ミクロンである、ハンタイトとハイドロマグネサイトの重量比が約50/50の無機微粒子物質。
【0034】
Ultracarb(登録商標)UF: Microfine Minerals,LTD.Ultracarb U5と類似であるが、粒子サイズの中央値が1ミクロンであって、粒子サイズの中央値が30ミクロンである粒子凝集体を伴っている。
【0035】
Ultracarb(登録商標)UF、空気摩砕済: エアージェットミルを用いて処理して、凝集体を砕いてある、Ultracarb UF。粒子サイズの中央値が約1ミクロン。
【0036】
Mag(登録商標)Chem BMC−2: Martin Marietta Magnesia Specialties,Inc. 高純度、高反応性の塩基性炭酸マグネシウム粉末、Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O。粒子サイズが1.5ミクロン。
【0037】
Mag(登録商標)Chem 50M: Martin Marietta Magnesia Specialties,Inc。粒子サイズの中央値が1ミクロンである、軽量焼成酸化マグネシウム。
【0038】
R902(登録商標)DuPont: 粒子サイズの中央値が0.42ミクロンである二酸化チタン。
【0039】
Kodex 911: E.W.Kaufmann Co。純度が99.9%以上、平均粒子サイズが0.1ミクロンである酸化亜鉛。
【0040】
DHT−4A: Kyowa Chemical Industry Co.,Ltd。合成ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O。
【0041】
硫酸バリウム: Sachtleben Chemie GmbH,Micro grade blanc fixe (永久白)、粒子サイズ1ミクロン。
【0042】
候補に挙げた分散剤は、先ず、DMAc中の溶解度を基準としてスクリーニングした。可溶である分散剤だけを、本発明で用いられる液体中で無機微粒子を効率よく分散する能力について試験した。次いで、DMAc中で完全に攪拌し次いで静置した後、DMAc中で無機微粒子と共に少容積で濃縮された沈降物を形成することにおける分散剤の効率性を定量する追加の試験を行った。沈降物容量が少ないことは、粒子が、互いに反発し、良く分散し、凝集又は集塊せず、従って沈殿してよく纏まった沈降物を生成することができることを示しているので望ましい。(「近代的コロイド科学入門」Robert J.Hunter,Oxford University Press,1993,pp.294ff.参照)
他に特記されていない限り、沈降テストは、DMAcの重量基準で15重量%という、DMAc中での無機固体の希薄混合物を用いて行った。試料を、IKA Ultra−Turrax T25 Basic Disperser(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)を用いて、50〜2500mlの混合物容量に対してはS25N−25Gの、1〜50mlの混合物容量に対してはS25N−10Gの分散用具(これら2つの道具は、エマルジョン「細かさ」の格付けが同一である)を用いて、16000rpm(設定3)で3分間激しく混合した。分散機を止めた後直ちに、25mlの混合物を25ml目盛り付きシリンダーに移した。このシリンダーをシールして、液体の蒸発を抑え、沈降物容量を、時間の関数として記録した。少ない沈降物容量は、効果的な分散剤と安定な分散系を示している。表において、「重量%」は、無機微粒子を基準とした分散剤の重量%を示す。
【0043】
実施例での濾過性能を定量するために用いられた試験では、80psi(550キロパスカル)圧下で、孔サイズが12ミクロンの篩が完全に詰まるまでにその篩を通過する分散剤含有スラリーの量を測定した。テスト装置は、直径1.75インチ(4.4cm)で長さ18インチ(46cm)の、各端にねじが切られ、垂直方向に保持された金属パイプで構成されていた。パイプの低い側の端を、中心に径0.31インチ(7.9mm)の開口部を持った金属蓋でシールした。この開口部の上で、蓋とパイプの間に、3個の金属篩1セットと1インチ(2.54cm)直径の開口部を持った板紙ガスケットが配置され、この篩は底部が20メッシュ、中間が200メッシュ、そして最上部が絶対保持評点(absolute retention rating)が11〜13ミクロンであるDutch Twilled Weave構造の200x1400メッシュであった。ガスケットは、圧力の漏れないシールをする役目及びスラリーが流れ抜ける断面積をコントロールする役目を果たしていた。パイプの上端は、高圧空気ラインに接続されている金属蓋でシールされた。テストは、無機微粒子、液体、及び分散剤を有するスラリー500グラムを、篩パックと底蓋を含有するパイプの中に注ぎ込み、次いで頂上の蓋をねじって密封して行なった。スラリーを、篩を通して底蓋に流しながら、バルブを開いて装置に80psi(550キロパスカル)の空気圧をかけた。流れが完全に止まったとき、底蓋中のスラリーの量を計量した。集められたスラリーの重量はスパンデックス紡糸工程の作業の連続性の良い指標となり、集められるスラリーが多ければ多いほど、乾式紡糸での作業の連続性は、より良好であった。
【0044】
Microtrac X100(Honeywell,Leeds,and Northrup)計器を、それ未満では試料中の粒子容量の90%が落ちる粒子サイズであるD90の測定に用いた。
【0045】
本発明に有用である市販の分散剤のいくつかの特定の例が、表IA及びIBに示されている。この情報は製造者によって提供された情報に基づいており、「CRN」は化学品登録番号を意味している。ポリ(アルキレンエーテル)鎖中のアルキレンオキサイド単位の平均数が既知である、改質されたリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールに関して、エチレンオキシド原子団に対しては「数EO」、プロピレンオキシド原子団に対しては「数PO」で表示してある。
【0046】
比較の目的に用いられるポリ(アルキレンエーテル)アルコールは、リン酸処理されていないか、又はもしリン酸処理されている場合には、芳香族基、アルキル芳香族基、又はポリアルキルシロキサンブロックで改質されていなかったので、本発明の範囲外である。
【0047】
【表1】
【0048】
表 I B
分散剤 化学的同義語
(アルキル)芳香族末端リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール
SipophosP-6P リン酸フェニル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコール
(6EO)
ChemphosTC-227 リン酸芳香族末端ポリ(エチレンエーテル)アルコール
(分子量約1000)
FindetOJP-5 リン酸ノニルフェニル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコー
ル
Monafax785 リン酸ノニルフェニル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコー
ル(9.5EO)
Monafax786 リン酸ノニルフェニル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコー
ル(6EO)
SipophosNP-9P リン酸ノニルフェニル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコー
ル(9EO)
Sopropher3D-33 リン酸トリスチリルフェニル末端ポリ(エチレンエーテル)ア
ルコール(16EO)
リン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)ポリ(アルキレンエーテル)アルコール
Lambert Phos A-100 リン酸ブロックポリ(ジメチルシロキサン)−トリメチレ
ン−ポリ(エチレンエーテル)アルコール(分子量約35
00;7.5〜8.3EO)
Lambert Phos A-150 リン酸ブロックポリ(ジメチルシロキサン)−トリメチレ
ン−ポリ(エチレンエーテル)アルコール(分子量約35
00;7EO)
Lambert Phos A-200 リン酸ブロックポリ(ジメチルシロキサン)−トリメチレ
ン−共重合(エチレンエーテル−プロピレンエーテル)ア
ルコール(分子量約3500、ランダム7EO+4PO)
アルキル末端リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)ポリオール
Monafax 831 リン酸イソデシル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコー
ル(10EO)
Sipophos DA-6P リン酸イソデシル末端ポリ(エチレンエーテル)アルコー
ル(6EO)
Sipophos TDA-6P リン酸イソトリデシル末端ポリ(エチレンエーテル)アル
コール(6EO)
比較 : リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)ポリオール
Atphes 3232 リン酸ポリ(エチレンエーテル)ポリオール
Chemax X-1118 リン酸共重合(エチレンエーテル−プロピレンエーテル)
ポリオール(分子量約8500)
Solsperse 53095 リン酸共重合(エチレンエーテル−プロピレンエーテル)
ポリオール
比較:ポリ(アルキレンエーテル)ポリオール
Pluronic L-61 ブロック共重合(エチレンエーテル−プロピレンエーテル)
ポリオール(分子量2000;10重量%EO;EO末端)
Pluronic F-68 ブロック共重合(エチレンエーテル−プロピレンエーテル)
ポリオール(分子量8400;80重量%EO;EO末端)
Pluronic F-127 ブロック共重合(エチレンエーテル−プロピレンエーテル)
ポリオール(分子量12600;70重量%EO;EO末端)
Pluronic 17R2 ブロック共重合(プロピレンエーテル−エチレンエーテル)
ポリオール(分子量2150;20重量%EO;PO末端)
Pluronic 25R2 ブロック共重合(プロピレンエーテル−エチレンエーテル)
ポリオール(分子量3100;20重量%EO;PO末端)
実施例 I
無機微粒子であるUltracarb(登録商標)U5の、DMAc中での沈降挙動に対する数種の分散剤の効果を測定した。その結果を表IIに報告する。沈降時間は、沈降物の容積のそれ以上の変化が実質的に観察されなかった時点について測定した。
【0049】
【表2】
【0050】
表IIに列挙した分散剤は、全て、沈降物の容積を減少させた。
実施例II
選択した分散剤の量を変化させ、その量の、沈降物の容積に対する効果を、DMAc中にUltracarb(登録商標)U5を15重量%(DMAcの重量を基準として)混合した混合物について、68時間と70時間の間で測定し、その結果を表IIIに示してある。
【0051】
【表3】
【0052】
分散剤を使用しない試料に比べると、3種の分散剤全てが沈降物の容積を減少させた。図1に、分散剤を使用しない場合及び Ultracarb(登録商標)U5基準で7.5重量%のLambent Phos(登録商標)A−100の存在下の場合の、DMAc中の15重量%Ultracarb(登録商標)U5の沈降挙動を、具体的に示す。沈降物の容積が分散剤が存在しない場合より非常に少ないことから見て、分散剤の有効性は明白である。
実施例III
選択した分散剤の量を変化させ、その量の、沈降物の容積に対する効果を、DMAc中にUltracarb(登録商標)UFを15重量%(DMAcの重量を基準として)混合した混合物について試験し、その結果を表IVに報告してある。Soprophor(登録商標)3D−33を使用した場合の沈降時間は55〜56時間、Lambent Phos(登録商標)A−100の場合には70〜71時間、そしてSolsperse (登録商標)53095の場合には77〜79時間であった。最後の分散剤は本発明の範囲外である。
【0053】
【表4】
【0054】
表IVに記載された結果を外挿すると、粒子サイズが約1ミクロン以下の無機粒子の場合には、分散剤の量が無機微粒子基準で約4〜15重量%の範囲であった場合に、沈降物の容積が有意に減少したことが示されている。
【0055】
Lambent Phos(登録商標)A−100を使用した場合には、沈降物の容積は70時間後も若干減少し続けて、約143時間の時点で6.2mlに低下した。
実施例IV
4種類の異なったSipophos(登録商標)分散剤であって、全てDMAcに可溶であり、全てリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールであるが、末端炭化水素基が異なっている分散剤の試験を、DMAcの重量基準で55〜56重量%のUltracarb(登録商標)UF混合物、 及びUltracarb(登録商標)UF基準で7重量%の分散剤を調製し、そしてそれらの混合物を旋回及び/又は攪拌した場合の挙動を観察して粘度を定性的に判定することによって試験した。結果を表Vに示す。表において粘度がより低いことは、分散がより良好であることを示している。
【0056】
【表5】
【0057】
この表のデータによって、意外にも、本発明のスラリーにおいて使用される場合には、芳香族末端基を有するリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤[Sipophos(登録商標)P−6P]又はアルキル芳香族末端基を有するリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤[Sipophos(登録商標)NP−9P]は、本発明の範囲外であるアルキル末端基を有するリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤[Sipophos(登録商標)DA−6P TDA−6P]よりも優れていることが分かる。
実施例V
他の無機微粒子物質について、15重量%無機微粒子含量(DMAc重量基準)で、Lambent Phos(登録商標)A−100を使用して試験した。結果を表VIに示す。
【0058】
【表6】
【0059】
分散剤を使用しない場合の沈降物の容積を、無機粒子基準で8重量%の分散剤を使用した場合の沈降物の容積と比較すると、Lambent Phos(登録商標)A−100は、各種の無機微粒子物質に対して効果的なDMAc中における分散剤であることが分かる。
実施例VI(比較)
Pluronic(登録商標)シリーズのいくつかの非イオン性ポリエステル分散剤10重量%[Ultracarb(登録商標)U5の重量を基準として]を用いて、15重量%のUltracarb(登録商標)U5(DMAcの重量基準)について、沈降試験を実施した。これらの分散剤はDMAcに可溶である。結果を表VIIに報告する。
【0060】
【表7】
【0061】
この結果から、本発明の範囲外であるリン酸処理されていないポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤は、DMAc中において無機物質の効果的な分散剤ではないことが分かる。無機微粒子基準で20重量%の分散剤においても、同様の結果が得られた。
実施例VII
次に示す組成の分散剤含有スラリーを、各試薬を攪拌機付槽に下記の順で仕込み、2時間混合して調製した。
DMAc 81.1 ポンド(36.8kg)
KP−32(DMAc中20重量%溶液)49.0 グラム
Lambent Phos(登録商標)A−100
8.8 ポンド(4.0kg)
Ultracarb(登録商標)UF 101.5 ポンド(46.0kg)
TiO2 8.5 ポンド(3.9kg)
KP−32(Clariant Corp.)は光輝剤及びトナーとして使用されるアントラキノン染料である。このスラリーは、無機微粒子(TiO2及びUltracarb(登録商標)UFの合計)含量が55重量%であった。良好な摩碎性能を得るためにポリウレタン溶液を添加することは不要であった。分散剤は、スラリー粘度を低く維持するために、無機粒子の添加前に添加した。
【0062】
次いで、分散剤含有スラリーを、摩碎用媒体として使用される0.8〜1.0mmのケイ酸ジルコニウムビーズを具備した、15リットル容積の水平型媒体ミル(Supermill model HM−15,Premier Mill Corp.)中で摩碎した。ビーズ充填量は83容量%、軸速度は1380rpm(ディスクの周速は12.6m/秒)、そして生成物の出口温度は52℃に維持した。混合物は、5時間、再循環方式で1400g/分の流速で摩碎し、次いで最後にミルを通して最終仕上げとした。前に記載した濾過試験による濾過性は366グラムであり、そしてD90粒子サイズは0.57ミクロンであった。
【0063】
次にこの摩碎したスラリーを、600〜800rpmで操作するHockmeyer Model ES−25(Hockmeyer Equipment Corp.)高速ディスク分散機を使用して、DMAc及びDMAc中のポリウレタン溶液Aと組み合わせた。ポリウレタン溶液Aは、シリコーン油0.6重量%、Cyanox(登録商標)1790(立体障害フェノール酸化防止剤[2,4,6−トリス(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌラート]、Cytec Industries)1.5重量%、Methacrol(登録商標)2462B[(ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン)及び3−t−ブチル−3−アザ−1,5−ペンタンジオールのポリマー、DuPont]0.5重量%、及び分子量1800のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、1,1’−メチレンビス(4−イソシアナトベンゼン)(ジイソシアナートの高分子グリコールに対するモル比は1.69)、モル比90/10のエチレンジアミン及び1,3−シクロヘキサンジアミン鎖共延長剤そしてジエチルアミン連鎖停止剤から製造したポリウレタン35.2重量%(溶液重量基準)を含有していた。ポリマーの溶液粘度(40度の落下球)は約3000ポアズであった。ポリウレタン溶液Aに関する全ての重量%は、ポリマーの重量%を除いて、最終製品である繊維の重量を基準とした。
【0064】
次の割合を用いた。
【0065】
摩碎したスラリー 32.7重量%
ポリウレタン溶液A 44.6重量%
DMAc 22.7重量%
得られた濃度が低下したスラリーを、次いで、最終の繊維の重量に対して4.0重量%Ultracarb(登録商標)UFになるような量で、同じポリウレタン溶液Aと組み合わせた。得られた紡糸用溶液(懸濁無機微粒子を含有する)を、溶液の温度80℃及び紡糸ヘッド/紡糸口金面温度435〜440℃で、乾式紡糸にかけて3−フィラメント、44dtexの糸を得、そして870m/分で巻き上げた。紡糸中、紡糸口金キャピラリの出口での沈着物の生成を観察し記録する目的で、紡糸セルの覗き窓を通して紡糸口金面に、ビデオカメラ付の小型望遠鏡の焦点を当てた。6日間連続性が優れた紡糸を行うことができ、そして紡糸口金面には、沈着物は何も観察されなかった。
実施例VIII(比較)
次の試薬を下記の順に混合して、比較用スラリーを作製した:
DMAc 55.9重量%
KP−32(DMAc中、20%溶液) 0.026重量%
ポリウレタン溶液 B 17.0重量%
Ultracarb(登録商標)UF 24.9重量%
TiO2 2.1重量%
より高いスラリー粘度のために、実施例VIIIの無機微粒子充填量の約半量しか摩碎できず、全無機微粒子( Ultracarb(登録商標)UF及びTiO2 の合計)含量は27重量%であった。適切な摩碎のために必要なポリウレタン溶液Bは、添加剤を含有していない点を除いて実施例VIIIのポリウレタン溶液Aに類似していた。次いで、混合物を、200lbs/時(90.7kg/時)で、12.6m/秒のディスク周速度で、45リットル容量のミル(Model HM−45,Premier Mill Corp.)を2回通すことによって摩碎した。生成物の出口温度は53℃であり、そして摩砕用媒体は充填率83%で充填されたケイ酸ジルコニウムであった。第1回目のミル通しでは、1.2〜1.6mmビーズを使用し、第2回目では0.8〜1.0mmビーズを使用した。この時点で、比較スラリーは、実施例VIIIのスラリーとほぼ同じ時間(計算したミル内滞留時間は30分)摩碎されていた。粒子サイズD90は0.84ミクロンであり、ろ過性は250gであった。この値を実施例VIIIで観察した366gのろ過性と比較すべきである。
【0066】
次に、このスラリーをさらに実施例VIIIにおけると同じ摩碎条件下で再循環方式によって15リットルミルで摩碎した。粒子サイズD90が0.64ミクロンに達するには、さらに8時間の摩碎が必要であり、この時点で比較スラリーの最終回の摩碎とした。
【0067】
次いで、上記の比較出発スラリーの濃度を、このスラリー2重量部に対してポリウレタン溶液A1部を実施例VIIIにおけると同じディスク分散機を用いて混合することによって、低下させた。濃度低下したスラリーを実施例VIIIにおけると同じようにポリウレタン溶液Aに添加し、得られた紡糸溶液(懸濁無機微粒子を含む)を、実施例VIIIにおけると同じように乾式紡糸してスパンデックスを得た。一日以内に紡糸口金上に沈着物が観察され、また紡糸破損がより高頻度に起こった。
実施例IX
Lambent Phos(登録商標)A−100の量の変化がスラリー粘度に及ぼす影響を、Ultracarb(登録商標)V5がDMAc重量基準で25重量%、55重量%及び65重量%の場合について試験した。M5駆動装置を有するHaake RV20レオメーター(Searle型;Haake,GmbH,Germany)を用いて、本発明の選択されたスラリーの粘度を測定した。各々が異なった粘度範囲に適した、3種の異なったカップ及びローターの組合せ(NV,MV1,SV1P)を使用して試験を行った。各試料を震蕩し、スパチュラを用いて、コンシステンシーが均一になるまで手動で混合し、次いでレオメーターカップに充填した。カップをローターと恒温ジャケット間の位置に置いた。試料を、スラリーに挿入した1/16インチ(1.6mm)の熱電対で測定して、平衡温度25℃に達するまで保持し、次いでせん断速度を零から300秒-1まで上げ(65重量%の固形分試料に対しては100秒-1迄のみ)、そして4分間隔で零に戻した。対応するせん断応力を測定し、自動的にプロットさせた。次いでせん断応力対せん断速度曲線を、「Rot3.0」ソフトウエア(同じくHaakeから入手)を用いて「最適な」数学的曲線に一致させてプロットした。粘度は、せん断応力をせん断速度で除すことによって求め、後者としては100秒-1を選択した。次に、いくつかの全固形分含量について、粘度を重量%分散剤に対してプロットして、図2の片対数プロットを得た。無機微粒子重量基準で約2〜15重量%の分散剤を使用すると、スラリーの粘度は、加工が可能であると判断される水準まで低下した、従って分散剤を使用しない場合よりも、より高い固形分含量を使用することが可能になった、ということがわかる。
実施例X
DMAcの重量基準で15重量%の「Micro」グレードのblanc fixe(永久白)(硫酸バリウム)、及び硫酸バリウム重量基準で8重量%のLambent PhosA−100を使用して沈降試験を行った。分散剤を含まない試料中の硫酸バリウムは「構造的な」沈降(時間とともに沈降容積が減少する)を示し、そして分散剤及び硫酸バリウムを含有する混合物は、時間と共に沈降物の容積が増大する、いわゆる「自由(free)」沈降を示した。分散した混合物も分散しない混合物も、攪拌後22時間の後には沈降容積にそれ以上の変化は見られなかった。その時点で、分散剤を含有しないスラリーは沈降物容積が5.1cm3であり、そして本発明のスラリーは、沈降容積が2.5cm3であった。
実施例XI
液体アミドとしてN−メチルピロリドン(「NMP」)を使用して、NMP重量基準で15重量%のUltracarb(登録商標)UF及び無機微粒子重量基準で8重量%のLambent PhosA−100を用いて、沈降試験を実施した。分散剤の存在下では、沈降物容積は167時間後9.5cm3であり、分散剤が存在しない場合では、沈降物容積は168時間後17.8cm3であり、これによって、DMAcにおけると同様にNMPにおいても分散剤が効果的であることが分かった。
実施例XII
ステアリン酸マグネシウム(Pfaltz & Bauer,Inc.)又はステアリン酸(Aldrich Chemical Company, Inc.)を8重量%(Ultracarb(登録商標)U5重量基準)用いて、15重量%Ultracarb(登録商標)UF(DMAc重量基準)について、沈降試験を実施した。結果を表VIIIに示す。
【0068】
【表8】
【0069】
表VIIIの結果を例えば表IVの結果と比較すると、カルボン酸及びその塩は、本発明の系において、分散剤が存在しない場合に得られる結果よりも悪い結果を与えるので、良好な分散剤ではないことが分かる。
【0070】
更に追加の実験を行い、ステアリン酸が前コーティングされたハンタイトとハイドロマグネサイトの混合物は、DMAc中において、ステアリン酸が存在しない場合よりも粘性が高いスラリーを形成することが分かった。
【0071】
同様の結果は、本発明の範囲外であるクエン酸をスパンデックス製造に使用するスラリー中に含有させた場合に観察された。
実施例XIII
次の組成を有する数種のスラリーの粘度を比較した:
【0072】
【表9】
【0073】
各スラリーは、DMAc中に分散剤を溶解し、ゆっくり攪拌しながら(プロペラ攪拌機)無機微粒子を添加し、さらに15分間スラリーを攪拌し、次いで攪拌せずに4日間放置することによって、調製した。 Ultracarb(登録商標)UFは全スラリー基準で57重量%、二酸化チタン(Ti−Pure(登録商標)R902,E.I.du Pont de Nemours and Companyの登録商標)は全スラリー基準で70重量%であった。スラリーを震蕩して沈殿した固形分を全て再分散させ、そしてBrookfield Model RT−TDV−II 粘度計を19℃、5rpmで使用して粘度を測定した。粘度間に大きな差があるので、スラリーA及びCに対してはスピンドル#2、スラリーB及びDに対してはスピンドル#6を用いて、それぞれの粘度を測定した。粘度及び定性的な観察事項を表Xに示す。
表Xの結果から、Lambent(登録商標)Phos A−100のようなリン酸処理ブロックポリ(メチルシロキサン)−ポリ(アルキレンエーテル)アルコールは、Sipophos(登録商標)TDA−6P(許容できない高粘度及び貧弱な流れ特性)のようなアルキル末端リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤を用いて製造したスラリーと比較した場合、本発明の、有用で流動性のあるスラリーの製造において著しく優秀であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 DMAc中のハンタイトとハイドロマグネサイトの物理的混合物の沈降物容積に対する、リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールのポリメチルシロキサン)とのブロック共重合体の効果を具体的に示す図である。
【図2】 DMAc、ハンタイトとハイドロマグネサイトの物理的混合物及びリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールのポリメチルシロキサンとのブロック共重合体を有するスラリーの粘度に対する、ブロック共重合体の量の影響を具体的に示す図である。
Claims (10)
- (A)分散剤含有スラリーの全重量基準で10〜78重量%の無機微粒子;
(B)無機微粒子基準で2〜50重量%の、成分(C)の液体に可溶な、
(i)リン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)−ポリ(アルキレンエーテル)アルコール及び
(ii)芳香族又はアルキル芳香族末端基を有する、リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール
から成る群から選ばれる分散剤;並びに
(C)ジメチルスルフォキシド、テトラメチル尿素及びアミドから成る群から選ばれる液体
から本質的に成る分散剤含有スラリー。 - 無機微粒子が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、合成ハイドロタルサイト、天然ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、及びハンタイトとハイドロマグネサイトの物理的混合物から成る群から選ばれ、そして液状アミドが、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドから成る群から選ばれる、請求項1に記載のスラリー。
- 10〜70重量%の無機微粒子を含んで成る請求項1に記載のスラリーであって、分散剤が、リン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)−トリメチレン−ポリ(アルキレンエーテル)アルコール及び芳香族末端基を有するリン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコールから成る群から選ばれ、無機微粒子は、容積分布に基づく粒子サイズの中央値が5ミクロン以下であり、液体が、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドから成る群から選ばれる液状アミドである、スラリー。
- 35〜70重量%の無機微粒子を含んで成る請求項2に記載のスラリーであって、分散剤が、リン酸処理ブロックポリ(メチルシロキサン)−トリメチレン−ポリ(アルキレンエーテル)アルコールでありそして無機微粒子基準で4〜15重量%の範囲で存在し、そして無機微粒子は、容積分布に基づく粒子サイズの中央値が1ミクロン以下である、スラリー。
- 請求項1に記載のスラリーを用いて製造されたスパンデックス。
- 請求項4に記載のスラリーを用いて製造されたスパンデックス。
- スパンデックスの製造方法であって、
(A)(a)分散剤含有スラリーの全重量基準で10〜78重量%の無機微粒子;
(b)無機微粒子基準で2〜50重量%の、成分(c)の液体に可溶な、
(i)リン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)−ポリ(アルキレンエーテル)アルコール及び
(ii)芳香族又はアルキル芳香族末端基を有する、リン酸処理ポリ(アルキレンエーテル)アルコール
から成る群から選ばれる分散剤;並びに
(c)ジメチルスルフォキシド、テトラメチル尿素及びアミドから成る群から選ばれる液体
から本質的に成る分散剤含有スラリーを用意する工程、
(B)スラリーを、微粒子の容積分布に基づく粒子サイズの中央値が5ミクロン以下になるように摩砕する工程;
(C)スラリーを、ポリウレタンを紡糸溶媒に溶解した溶液に添加して紡糸溶液を調製する工程;及び
(D)工程(C)で得られた紡糸溶液を紡糸してスパンデックスを形成する工程
を含んで成る方法。 - スラリーが、35〜70重量%の無機微粒子、及び無機微粒子基準で4〜15重量%のリン酸処理ブロックポリ(アルキルシロキサン)−トリメチレン−ポリ(アルキレンエーテル)アルコール分散剤から本質的に成り、無機微粒子は、容積分布に基づく粒子サイズの中央値が1ミクロン以下であり、そしてスパンデックスが、スパンデックス基準で0.1〜10重量%の無機微粒子を含んで成る、請求項7に記載の方法。
- スラリーが、分散剤含有スラリーの全重量基準で10〜78重量%の、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、合成ハイドロタルサイト、天然ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、及びハンタイトとハイドロマグネサイトの物理的混合物から成る群から選ばれる無機微粒子から本質的に成り、そして液体が、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドから成る群から選ばれる液状アミドである、請求項7に記載の方法。
- 分散剤が、リン酸処理ブロックポリ(メチルシロキサン)−トリメチレン−ポリ(アルキレンエーテル)アルコールである、請求項7に記載の方法。
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