JP4886937B2 - ダイシングシート及びダイシング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイシングシート及びダイシング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハの切断にはダイシング加工が一般的に用いられている。半導体ウエハをダイシングする際には、ダイシングブレードが高速の回転を行ってダイシングラインを掘削する形で切断する。切断面には微細な欠け(チッピング)が発生し、これが半導体チップの信頼性を下げるという問題があった。
これに対し、レーザー光線を用いるレーザー加工は、被加工物に物理的な負荷をかけることが無いため切断面がきれいに仕上がる。また、レーザー加工は、光線の径を絞ることにより被加工物に微細な加工を行うことができ、更に光線の軌跡を変えることにより複雑な形状に加工を行うことができる。このため、半導体ウエハの切断加工にレーザー光線を用いるレーザーダイシングが検討されている。
ところで、被加工物として半導体ウエハを加工する場合には、切断された後の半導体チップが微小で脆質の物質であるため、その後の取り扱いにきわめて注意を要する。そこで、従来から、半導体ウエハを粘着テープに貼付し、その粘着テープを支持フレームに固定した状態で、粘着テープ上の半導体ウエハを切断(すなわち、ダイシング)し、切断後の半導体チップを粘着テープに貼付したまま支持フレームの状態で搬送し、次の加工が行われている。そのため、切断後の半導体チップがバラバラにならず、搬送の際の破損も少ない。
しかし、従来のレーザー加工では被加工物を支持体上に支持した状態で切断することは実施していない。一方、通常の粘着テープを用いてレーザー加工を実施すると、粘着テープも完全に切断されてしまうため、上記の半導体ウエハからチップへ切断するような微小な加工には向いていなかった。また、粘着テープの材料として、レーザー光線では切断することのできない素材を用いたとしても、被加工物と粘着テープの境界は非常に高温となるため、粘着テープが局所的に変形し、精密な加工は不可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、レーザー光線を用いて半導体ウエハなどの被加工物を切断する際に、切断面に切り欠きが発生しにくく、また、切断工程後の搬送や次工程の加工を簡単に行うことができるように、被加工物を固定することのできるレーザーダイシング用のダイシングシート、及びこのダイシングシートを用いて被加工物をレーザーダイシングする方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、レーザー光線を使用して、被加工物を切断する際に前記被加工物を支持固定するためのダイシングシートであって、
支持シートを含む基材と、前記基材の片側表面に配置される粘着剤層とからなり、前記粘着剤層が、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能なレーザー光線エネルギー吸収性の粘着剤層であり、前記支持シートが、被加工物を切断するレーザー光線によって切断不可能なレーザー光線エネルギー非吸収性の支持シートであることを特徴とするダイシングシートに関する。
本発明によるダイシングシートの好ましい態様においては、前記基材が、前記支持シートと、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能なレーザー光線エネルギー吸収性の中間層とを含む積層体であり、前記中間層が、前記粘着剤層と前記支持シートとの間に配置される。
本発明によるダイシングシートの別の好ましい態様においては、前記支持シートは、破断伸度が100%以上であり、破断応力が50〜30000N/mである。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記支持シートが、被加工物を切断するレーザー光線の波長に対して、透過性であるか又は反射性である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記支持シートの透過率が85%以上であるか、又は前記支持シートの粘着剤形成面側に、蒸着やスパッタリングにより金属薄膜を形成する。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤層からなり、前記基材の紫外線透過率が10%以上である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記粘着剤層用の粘着剤が、
(1)感圧接着剤成分にレーザー光線の波長を吸収する添加剤を含む粘着剤、
(2)感圧接着剤成分を構成する化合物として、レーザー光線の波長を吸収する官能基を結合させた化合物を含む粘着剤、
(3)感圧接着剤成分そのものが着色している粘着剤、及び
(4)感圧接着剤成分を構成する添加物が着色している粘着剤
からなる群から選択される粘着剤である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記の粘着剤に含まれる添加剤が、顔料又は染料の着色剤である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記の粘着剤に含まれる添加剤が、黒色の顔料である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記中間層がレーザー光線の波長を吸収する添加剤を含有し、前記中間層の透過率が80%以下である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記の中間層に含まれる添加剤が、顔料又は染料の着色剤である。
本発明によるダイシングシートの更に別の好ましい態様においては、前記の中間層に含まれる添加剤が、黒色の顔料である。
【0005】
また、本発明は、レーザー光線を用いて被加工物を切断してチップを形成する方法において、
被加工物を切断するレーザー光線によって切断不可能なレーザー光線エネルギー非吸収性の支持シートを含む基材と、前記基材の片側表面に配置され、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能なレーザー光線エネルギー吸収性の粘着剤層とからなるダイシングシートを被加工物の一面に貼付して支持固定し、
前記被加工物に対してレーザー光線を照射して、前記被加工物と前記粘着剤層を切断し、少なくとも前記支持シートを切り残すことを特徴とするダイシング方法にも関する。
本発明によるダイシング方法の好ましい態様においては、前記被加工物を切断してチップを切断した後、ダイシングシートを引き伸ばして各チップを相互に離間し、ピックアップする。
本発明によるダイシング方法の別の好ましい態様においては、被加工物が半導体ウエハである。
本発明によるダイシング方法の更に別の好ましい態様においては、ウォータージェットレーザーによるレーザー光線を用いる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明によるダイシングシートは、粘着剤層と基材との積層体よりなる。前記の基材は、例えば、(1)支持シートからなることも、(2)支持シート及び中間層(及びそれらの間の接着剤層)とからなることもできる。以下、基材が支持シートからなる態様を「基材非切断型ダイシングシート」と称し、基材が支持シート及び中間層(及びそれらの間の接着剤層)とからなる態様を「基材半切断型ダイシングシート」と称して、本発明の特定の態様を説明する。
【0007】
本発明による前記の基材非切断型ダイシングシートは、ダイシング工程において、粘着剤層についてはその上面から下面まで完全に切断し、基材(すなわち、支持シート)については切り残す態様で用いるのが好ましい。一方、本発明による前記の基材半切断型ダイシングシートは、ダイシング工程において、粘着剤層及び中間層についてはその上面から下面まで完全に切断し、そして、前記基材の支持シートについては切り残す態様で用いるのが好ましい。
【0008】
以下、添付図面に沿って、本発明による前記の基材非切断型ダイシングシート及び前記の基材半切断型ダイシングシートを順に説明する。
図1は、本発明による基材非切断型ダイシングシート10の基本的態様を模式的に示す断面図である。
図1に示す基材非切断型ダイシングシート10は、支持シート21(すなわち、基材2)と、その片側表面上に設けた粘着剤層3とを含む。従って、ダイシングシート10は、全体として、2層構造からなる。基材非切断型ダイシングシート10においては、前記粘着剤層3がレーザー光線エネルギー吸収性(すなわち、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能)であり、前記支持シート21(すなわち、基材2)がレーザー光線エネルギー非吸収性(すなわち、被加工物を切断するレーザー光線によっては切断不可能)である。
【0009】
図3は、本発明による基材半切断型ダイシングシート11の基本的態様を模式的に示す断面図である。
図3に示す基材半切断型ダイシングシート11は、基材2と、その片側表面上に設けた粘着剤層3とを含み、基材2は、中間層22と支持シート23とからなる。また、粘着剤層3は、中間層22と接触し、その上に配置する。従って、ダイシングシート11は、全体として、3層構造からなる。基材半切断型ダイシングシート11においては、前記粘着剤層3がレーザー光線エネルギー吸収性(すなわち、半導体ウエハ4を切断するレーザー光線によって切断可能)であり、前記基材3の内、前記粘着剤層3と接触する中間層22がレーザー光線エネルギー吸収性(すなわち、半導体ウエハ4を切断するレーザー光線によって切断可能)であり、支持シート23がレーザー光線エネルギー非吸収性(すなわち、半導体ウエハ4を切断するレーザー光線によって切断不可能)である。なお、中間層22と支持シート23とを接着剤を介して接着している場合、この接着剤層は、レーザー光線エネルギー吸収性(すなわち、半導体ウエハ4を切断するレーザー光線によって切断可能)であることも、あるいはレーザー光線エネルギー非吸収性(すなわち、半導体ウエハ4を切断するレーザー光線によって切断不可能)であることもできる。
【0010】
本発明のダイシングシートにおいては、被加工物を切断するレーザー光線により切断可能な粘着剤層を用いる。このような粘着剤層用の粘着剤は、例えば、
(イ)感圧接着剤成分にレーザー光線の波長を吸収する添加剤(以下、吸収性付与剤と称することがある)を含む粘着剤、又は
(ロ)感圧接着剤成分を構成する化合物として、レーザー光線の波長を吸収する官能基を結合させた化合物を含む粘着剤
等により構成することができる。
感圧接着剤成分としては、汎用の感圧接着剤を構成する化合物より選択することができ、例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系、又はポリビニルエーテル系接着剤等を挙げることができる。
【0011】
吸収性付与剤は、特定の波長領域のエネルギーを吸収する物質よりなる。このような物質としては、例えば、顔料や染料等の着色剤の他、使用するレーザー光線の波長と同じ波長領域のエネルギーを吸収することのできる物質を挙げることができる。例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーは、近赤外領域の1064nmで発振するので、レーザー光線としてYAGを使用する場合の吸収性付与剤としては、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、又は錫ドープ酸化インジウム(ITO)などの有機系又は無機系の赤外線吸収剤を挙げることができる。
また、被加工物を切断するレーザー光線の波長の近辺に吸収領域を持つ官能基を、感圧接着剤を構成するポリマー成分の側鎖に結合させてもよい。
更に、レーザー光線の吸収性付与剤として、黒色の顔料及び/又は染料を用いれば紫外赤外領域を含む可視光の波長領域を吸収することができるようになるので、レーザー光線の波長の変更に伴って粘着剤の組成を変更する必要がない。
また、感圧接着剤成分そのもの、あるいは粘着付与剤樹脂のように感圧接着剤成分を構成する添加物が着色している場合は、レーザー光線の吸収率が充分である場合があるので特に吸収性付与剤は使用しなくてもよい。
【0012】
粘着剤層は、紫外線硬化型粘着剤から形成することもできる。
紫外線硬化型の粘着剤としては、上記の感圧接着剤成分に紫外線硬化性成分及び光開始剤、更に前述のレーザー光線の吸収性付与剤を配合した組成物を挙げることができる。紫外線硬化性成分としては、分子内に重合性の二重結合を有する低分子化合物を挙げることができ、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ポリエステル型又はポリオール型のウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシ変性アクリレート等を用いることができる。
【0013】
また、感圧接着剤成分のポリマー成分として、その側鎖に重合性の二重結合を持った官能基を結合させたポリマー成分を用いて、紫外線硬化性成分とすることもできる。
このような光開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などを挙げることができ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどを例示することができる。
【0014】
感圧接着剤成分に吸収性付与剤を配合すれば、レーザー光線の波長の吸収率が増大する。レーザー光線が照射された部分はエネルギーを吸収し、その瞬間に高熱を発生して熱分解を起こし、これによって切断が可能になる。粘着剤層における吸収性付与剤の配合比は、粘着剤層がレーザー光線により切断可能であれば特に限定されない。すなわち、レーザー光線の出力が大きかったり、スポット照射時間が長ければレーザー光線の波長の吸収率が低くても切断が可能になる。通常は、レーザー光線の波長における透過率が80%以下となるよう配合される。
粘着剤層の厚みも特に限定されないが、通常1〜100μmであり、好ましくは5〜50μmである。
【0015】
本発明のダイシングシートにおける支持シートは、被加工物を切断するレーザー光線によって切断不可能なシートであり、従来公知の樹脂から形成した自己支持性のシートから選択することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、延伸ポリプロピレン、非延伸ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アイオノマー、又はフッ素樹脂等からなるシートを挙げることができる。支持シートは、単層であっても、あるいは全体として切断不可能である限り、複層であってもよい。また、膜状やメッシュ状など種々の形状のものを選択することができる。また、レーザーダイシングでは後述のように水を使用する場合があるので、支持シートは耐水性のものが好ましい。
【0016】
支持シートは、被加工物を切断するレーザー光線に対し非吸収性となるよう選択される。レーザー光線に対し非吸収性とは、使用されるレーザー光線の波長に対し透過性である場合と、反射性である場合とを挙げることができる。透過性である場合、その透過率はレーザー光線の出力やスポット照射時間により異なるが、通常85%以上であればよい。
反射性の支持シートは、粘着剤形成面側に蒸着やスパッタリングにより金属薄膜を形成することによって調製することができる。金属薄膜によりレーザー光線は全反射され、支持シートを通過しないので、支持シートは切断されない。
【0017】
本発明のダイシングシートに用いられる支持シートは、通常、破断伸度が100%以上であり、破断応力が50〜50000N/m2である。破断伸度が100%以上であり、破断応力が50〜50000N/m2の支持シートは、レーザーダイシングを行った後にダイシングシートを引き伸ばして、被加工物を切断して形成したチップを離間しやすくなるので、被加工物のチップを破損せずに回収することができるので好ましい。
支持シートは押し出し製膜又はキャスト製膜によって形成することができる。また、その厚さは特に限定されるものではないが、通常30〜300μmであり、好ましくは50〜100μmである。
【0018】
本発明のダイシングシートは、被加工物を切断するレーザー光線によって切断不可能な支持シート上に前記レーザー光線で切断可能な中間層を形成した複層の基材を用い、前記中間層上に前述の粘着剤層を形成する構造を有することもできる。このような構造を有していると、レーザー光線による切り込みの深さを大きくとりたい場合に、粘着剤層の厚さを変えずに切り込み深さを大きくすることができる。粘着剤層の厚みを厚くしすぎると再剥離性が劣ってしまい、被加工物から形成されるチップをダイシングシートから剥離する際に、糊のこりが発生する場合がある。従って、本発明のダイシングシートに中間層を設けることにより、粘着剤層の厚さを適宜選択することができるようになる。
【0019】
中間層は、前述の支持シートに使用される樹脂に、前述の粘着剤層に用いられる吸収性付与剤として列挙した物質と同じ物質を添加することにより得られる。中間層における透過率はレーザー光線の出力やスポット照射時間により異なるが、通常80%以下であればよい。
中間層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常は5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。
本発明のダイシングシートの粘着剤層を紫外線硬化型とする場合は、基材の紫外線透過率が10%以上、好ましくは30%以上となるように構成する。このようにすれば粘着剤層に充分な紫外線が到達し、粘着剤層が硬化可能であり、被加工物から形成されるチップを剥離する際の接着力を極めて小さくして、被加工物から形成されるチップに与える影響を少なくすることができる。
【0020】
基材の製膜方法としては、支持シート及び中間層をそれぞれ押し出し製膜やキャスト製膜した後、接着剤で貼り合わせてもよいし、共押し出しで形成してもよい。また、一方を押し出し製膜又はキャスト製膜した後、もう一方を製膜した面上にキャスト製膜してもよい。接着剤を用いて積層する場合は、接着剤自身はレーザー光線で切断可能であっても、切断不可能であってもよく、切断可能な厚さが前述の目的に合致するように設定すればよい。
【0021】
本発明に適用可能な被加工物としては、レーザー光線によって切断処理を実施することができる限り、その素材に限定はなく、例えば、半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、FPC等の有機材料基板、又は精密部品等の金属材料など種々の物品を挙げることができる。切断前の形状が板状であり、切断後の寸法が小さく、バラバラでは取り扱いが困難となるような被加工物に対し、本発明のダイシングテープ及びダイシング方法はより効果的である。
【0022】
レーザーは、波長及び位相が揃った光を発生させる装置であり、YAG(波長=1064nm)、もしくはルビー(波長=694nm)などの固体レーザー、又はアルゴンイオンレーザー(波長=1930nm)などの気体レーザーなどが知られており、本発明では、それらの種々のレーザーを用いることができる。
本発明で用いることのできるレーザーダイシング装置としては、例えば、図5に示すように、被加工物(例えば、半導体ウエハ4)の切断部位Cに対し焦点が合うようレーザー光線Lを照射し、被加工物を切断する装置がある。この装置は焦点からずれた深さではレーザー光線が広がりエネルギー密度が小さくなっているため、加工された後の切断面は精度が若干落ちる。すなわち、切断面(溝5の壁面)がわずかながら湾曲する(図5は、図1に示す基材非切断型ダイシングシート10を用いた場合の溝部分の模式的拡大断面図であり、説明のために、湾曲状態を誇張して図示してある)。こうした装置を用いる場合には、被加工物が前記のような湾曲切断面に影響を受けないように、焦点位置の制御や、粘着剤層の厚さ調整などを行うのが好ましい。
【0023】
これに対し、図6に示すように垂直方向に平行なレーザー光線を照射し、切断面(溝5の壁面)の加工精度を高めたレーザー加工装置(ウォータージェットレーザー:water jet guided laser)が提案されている。この装置は細径のウォータージェットを被加工物(例えば、半導体ウエハ4)の切断ラインに流し、このウォータージェットの中をレーザー光線を通過させ、切断ラインに照射させている。この装置は、例えば、特表平10−500903号公報に詳述され、SYNOVA社(スイス)より「Laser μ Jet」の商品名で販売されている。本発明のレーザーダイシング方法は前記のいずれの装置にも適用可能である。
【0024】
次に、本発明のレーザーダイシング方法について説明する。本発明のレーザーダイシング方法は、本発明のレーザーダイシングシートを用いて実施することができる。
まず、前述の本発明によるダイシングシートの粘着剤層を被加工物の一面に貼付する。この際、ダイシングシートは被加工物の貼付面よりも大きいものを使用し、ダイシングシートの外周部を搬送用のフレームに貼付する。被加工物はフレームに支持され、この状態でレーザーダイシング装置に搭載される。
被加工物上に設けられた切断ライン上の1点に対しレーザー光線を照射する。照射とともに被加工物とレーザー光線の相対位置を切断ラインに沿って徐々にずらしていく。これにより、被加工物は切断ラインに沿ってレーザー光線が照射され、切断される。
この時、レーザー光線は被加工物、ダイシングシートの粘着剤層、(及び場合により、レーザー光線により切断可能な中間層を有する場合は、この中間層)を、瞬時に加熱分解して切断する。支持シートはレーザー光線を透過又は反射し、エネルギーを吸収しないため切断されない。
【0025】
図1に示すダイシングシート10を用いて半導体ウエハ4のダイシング処理を実施する場合には、図2に示すように、その粘着剤層3の上に、半導体ウエハ4を貼付する。続いて、半導体ウエハ4の上方から(図2の矢印Bの方向から)レーザー光線を照射して半導体ウエハ4を個々のチップ4’に切断し、溝5を形成する。この際、半導体ウエハ4には、ダイシングブレードを用いる場合のようなストレスが負荷されないので、切断面には切り欠きなどは発生せず、平滑な切断面が形成される。
【0026】
レーザー光線は、半導体ウエハ4を切断した後に、前記粘着剤層3を通過し、更に前記支持シート21(すなわち、基材2)を通過する。前記粘着剤層3は、半導体ウエハ4を切断したレーザー光線に対してエネルギー吸収性であるので、発熱して切断される。一方、前記支持シート21(すなわち、基材2)は、半導体ウエハ4を切断したレーザー光線に対してエネルギー非吸収性であるので、発熱せず、従って切断されない。
このように、本発明によるダイシングシート10では、前記粘着剤層3に溝5が形成されるのに対し、前記支持シート21(すなわち、基材2)が切り残されるので、次のエキスパンド工程で、ダイシングシート10を引き伸ばし、隣接するチップを離間することができる。
【0027】
図3に示すダイシングシート11を用いる場合には、図4に示すように、その粘着剤層3の上に、半導体ウエハ4を貼付する。続いて、半導体ウエハ4の上方から(図4の矢印Bの方向から)レーザー光線を照射して半導体ウエハ4を個々のチップに切断し、溝5を形成する。この際、半導体ウエハ4には、ダイシングブレードを用いる場合のようなストレスが負荷されないので、切断面には切り欠きなどは発生せず、平滑な切断面が形成される。
【0028】
レーザー光線は、半導体ウエハ4を切断した後に、前記粘着剤層3を通過し、更に前記基材2の中間層22及び続いて支持シート23を通過する。前記粘着剤層3は、半導体ウエハ4を切断したレーザー光線に対してエネルギー吸収性であるので、発熱して切断される。また、前記基材2の中間層22も半導体ウエハ4を切断したレーザー光線に対してエネルギー吸収性であるので、発熱して切断される。一方、前記基材2の支持シート23は、半導体ウエハ4を切断したレーザー光線に対してエネルギー非吸収性であるので、発熱せず、従って切断されない。
このように、本発明によるダイシングシート11でも、前記粘着剤層3及び前記基材2の中間層22に溝5が形成されるのに対し、前記基材2の支持シート23が切り残されるので、次のエキスパンド工程で、ダイシングシート11を引き伸ばし、隣接するチップどうしを離間することができる。
【0029】
本発明のダイシングシートの代わりに、基材と粘着剤層とが共にレーザー光線を透過するダイシングシートを使用した場合には、次のような不具合が発生する。
例えば、レーザーダイシング装置として、図5に示すレーザー光線を発生するダイシング装置を使用する場合は、レーザー光線により切断された部分は高熱となっているので、被加工物の切断された部分に接する粘着剤層の側は熱により変形が起きやすい。このため、切断後のチップの支持が不十分になるおそれがある。
しかし、本発明のダイシングシートを使用すれば、レーザー光線によって分解されずに、余分な熱が発生する場所は粘着剤層と支持シートとの界面又はその近傍となる。この場合、被加工物と熱により変形してしまう部分とが相互に離れているので、被加工物の加工適性に影響を与えない。
【0030】
また、本発明のダイシングシートの代わりに、基材と粘着剤層とが共にレーザー光線を透過するダイシングシートを使用し、レーザーダイシング装置として、図6に示すウォータージェットレーザーを用いた場合は、ウォータージェットの水が冷却水として作用し、粘着剤層が熱変形することはないが、粘着剤層がレーザー光線で切断されずに、粘着剤層に面する被加工物の側で水の行き場が失われ乱流を起こし、乱流に沿った被加工物の部分がレーザー光線により加熱分解され、切断面の精度を下げる。
しかし、本発明のダイシングシートを使用すれば、乱流の部分はダイシングシートの内部51(支持シートに面する粘着剤層又は中間層)で起こるため、被加工物の切断精度を落とすことはない。
この時、支持シートとして水を透過することのできるメッシュ状の材料を用いた場合は、水の乱流は小さくなり、レーザー光線により切断可能な層(例えば、粘着剤層)の厚さを薄くすることができる。
【0031】
ダイシング工程が終了した後の被加工物は、支持シートが切断されていないためフレームに元の状態と同じように支持されており、切断された被加工物(チップ)をバラバラにすることなくフレームごと搬送することができる。被加工物から切断されたチップは、任意の方法でダイシングシートから剥離し取り出すことができる。ダイシング後のダイシングシートを引き伸ばし、被加工物を切断したチップを相互に離間させた後、チップをピックアップすることによって取り出してもよい。この場合、ダイシングシートは、支持シートとして破断伸度が100%以上であり、破断応力が50〜30000N/m2の支持シートを使用することにより、スムーズに引き伸ばしが可能となる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
最初に、以下の実施例及び比較例に使用した「粘着剤」の構成、「基材」の構成、「光透過率」、「紫外線透過率」、「破断伸度」、「破断応力」及び「切断面の状態」の測定方法を示す。
(1)粘着剤1の調製
2−エチルヘキシルアクリレート80重量部とヒドロキシエチルアクリレート20重量部とを共重合して調製したアクリル共重合体(重量平均分子量=40万)に、その共重合体中の水酸基に対し80当量のイソシアナートエチルメタクリレートを反応させて、前記共重合体の側鎖にエネルギー線重合性の二重結合を有する感圧接着性のポリマーを得た。このポリマーの固形分100重量部に対し、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)1重量部、架橋剤(トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物)1重量部、レーザー光線吸収付与剤として、黒色顔料(大日精化工業(株)社製、DYMIC SZ 7740ブラック)5重量部を添加して粘着剤1を配合した。
(2)基材1の調製
支持シートとして、厚さ160μm、破断伸度(MD275%、CD245%)、及び破断応力(MD3130N/m2、CD2890N/m2)のポリウレタンフィルム(ウレタンアクリレート樹脂をキャスティングした後、紫外線硬化したフィルム)の単層を基材1とした。
(3)基材2の調製
前記基材1のポリウレタンフィルムを支持シートとし、その片面に厚さ5μmの透明な二液架橋型アクリル系感圧接着剤を介して、中間層として、レーザー光線吸収性付与剤としてカーボンブラックを含み、厚さが70μmの黒色のポリ塩化ビニルフィルムを積層し、基材2とした。
(4)レーザー光線透過率の測定方法
紫外可視分光光度計を用いてダイシングシートの各層の1064nmの透過率を測定し、レーザー光線透過率とした。
(5)紫外線透過率の測定方法
紫外可視分光光度計を用いてダイシングシートの基材の365nmの透過率を測定し、紫外線透過率とした。
(6)破断伸度の測定方法
万能引張試験機により引張速度200mm/minで、JIS K−7127に基づき測定した。
(7)破断応力の測定方法
万能引張試験機により引張速度200mm/minで、JIS K−7127に基づき測定した。
(8)切断面の状態の測定方法
レーザーダイシングを行った後のチップを取り出し、チップの裏面に発生した欠けを顕微鏡を用いて観察した。チップの最大の欠けの大きさを、ランダムに選択した20個について平均した値によって切断面の状態をあらわした。切断面の状態の評価は、下記の基準とした。
◎・・・20μm未満のもの
○・・・20μm以上で40μm未満のもの
×・・・40μm以上のもの
【0033】
【実施例1】
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ=38μm)の剥離処理面に、粘着剤1の配合物を乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層を基材1の片面に転写し、レーザーダイシング用のダイシングシートを作成した。各層のレーザー光線透過率、基材の紫外線透過率を表1に示す。
【0034】
【実施例2】
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ=38μm)の剥離処理面に、粘着剤1の配合物を乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布乾燥して粘着剤層を形成した。基材2の中間層(黒色のポリ塩化ビニルフィルム)側に前記粘着剤層を転写し、レーザーダイシング用のダイシングシートを作成した。各層のレーザー光線透過率、及び基材の紫外線透過率を表1に示す。
【0035】
【比較例】
粘着剤1の配合に、レーザー光線吸収付与剤としての黒色顔料を添加しなかったことを除いて、実施例1と同様にしてダイシングシートを作成した。各層のレーザー光線透過率、及び基材の紫外線透過率を表1に示す。
【0036】
実施例1及び2並びに比較例で作成したダイシングシートを用いて、6インチ径、及び厚さ350μmのシリコンウエハを6インチウエハ用のリングフレームに固定し、レーザーダイシング装置に搭載し、以下の条件でレーザーダイシングを行った。
レーザーダイシング装置 :シノバ社製、Laser μ jet
レーザー発振子 :YAG
レーザー光線波長 :1064nm
レーザー光線(ノズル)径 :100μm
周波数 :700Hz
パルス幅 :180μsec
ステップ :30μm
加工速度 :1260mm/min
ダイシングサイズ :10mm×10mm
実施例1及び2並びに比較例ともに、シリコンウエハはフルカットの状態にダイシングすることが可能であった。また、支持シートが切断されなかったので、ダイシングに続きダイシングシートをエキスパンドして、チップをピックアップすることがすることができた。しかし、比較例のダイシングシートでは、ダイシングによって形成された溝の切断面に巨大な欠けがあらわれた。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004886937
【0038】
【発明の効果】
本発明のダイシングシートは、切断面に切り欠きを発生しにくいレーザーダイシングに適用可能であり、被加工物を切断して形成したチップをバラバラにすることなく、搬送して次工程を行うことができる。また、本発明のダイシング方法によれば、被加工物の切断を高い精度で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基材非切断型ダイシングシートを模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す本発明の基材非切断型ダイシングシートに半導体ウエハを貼付し、更に溝を形成した状態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の基材半切断型ダイシングシートを模式的に示す断面図である。
【図4】図3に示す本発明の基材半切断型ダイシングシートに半導体ウエハを貼付し、更に溝を形成した状態を模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示す本発明の基材非切断型ダイシングシートを通常のレーザーで切断した場合に形成される溝部分を拡大して模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す本発明の基材非切断型ダイシングシートをウオータージェットガイデッドレーザーで切断した場合に形成される溝部分を拡大して模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
2・・・基材;3・・・粘着剤層;4・・・半導体ウエハ;
5・・・溝;10,11・・・ダイジングシート;
21,23・・・支持シート;22・・・中間層;
51・・・乱流に沿った部分。

Claims (16)

  1. レーザー光線を使用して、被加工物を切断する際に前記被加工物を支持固定するためのダイシングシートであって、
    支持シートを含む基材と、前記基材の片側表面に配置される粘着剤層とからなり、前記粘着剤層が、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能なレーザー光線エネルギー吸収性の粘着剤層であり、前記支持シートが、被加工物を切断するレーザー光線によって切断不可能なレーザー光線エネルギー非吸収性の支持シートであることを特徴とするダイシングシート。
  2. 前記基材が、前記支持シートと、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能なレーザー光線エネルギー吸収性の中間層とを含む積層体であり、前記中間層が、前記粘着剤層と前記支持シートとの間に配置されることを特徴とする請求項1記載のダイシングシート。
  3. 前記支持シートは、破断伸度が100%以上であり、破断応力が50〜30000N/mであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のダイシングシート。
  4. 前記支持シートが、被加工物を切断するレーザー光線の波長に対して、透過性であるか又は反射性であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  5. 前記支持シートの透過率が85%以上であるか、又は前記支持シートの粘着剤形成面側に、蒸着やスパッタリングにより金属薄膜を形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  6. 前記粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤層からなり、前記基材の紫外線透過率が10%以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  7. 前記粘着剤層用の粘着剤が、
    (1)感圧接着剤成分にレーザー光線の波長を吸収する添加剤を含む粘着剤、
    (2)感圧接着剤成分を構成する化合物として、レーザー光線の波長を吸収する官能基を結合させた化合物を含む粘着剤、
    (3)感圧接着剤成分そのものが着色している粘着剤、及び
    (4)感圧接着剤成分を構成する添加物が着色している粘着剤
    からなる群から選択される粘着剤であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  8. 前記の粘着剤に含まれる添加剤が、顔料又は染料の着色剤であることを特徴とする、請求項7に記載のダイシングシート。
  9. 前記の粘着剤に含まれる添加剤が、黒色の顔料であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のダイシングシート。
  10. 前記中間層がレーザー光線の波長を吸収する添加剤を含有し、前記中間層の透過率が80%以下であることを特徴とする、請求項2〜9のいずれか一項に記載のダイシングシート。
  11. 前記の中間層に含まれる添加剤が、顔料又は染料の着色剤であることを特徴とする、請求項10に記載のダイシングシート。
  12. 前記の中間層に含まれる添加剤が、黒色の顔料であることを特徴とする、請求項10又は11に記載のダイシングシート。
  13. レーザー光線を用いて被加工物を切断してチップを形成する方法において、
    被加工物を切断するレーザー光線によって切断不可能なレーザー光線エネルギー非吸収性の支持シートを含む基材と、前記基材の片側表面に配置され、被加工物を切断するレーザー光線によって切断可能なレーザー光線エネルギー吸収性の粘着剤層とからなるダイシングシートを被加工物の一面に貼付して支持固定し、
    前記被加工物に対してレーザー光線を照射して、前記被加工物と前記粘着剤層を切断し、少なくとも前記支持シートを切り残すことを特徴とするダイシング方法。
  14. 前記被加工物を切断してチップを切断した後、ダイシングシートを引き伸ばして各チップを相互に離間し、ピックアップすることを特徴とする、請求項13に記載のダイシング方法。
  15. 被加工物が半導体ウエハであることを特徴とする、請求項13又は14に記載のダイシング方法。
  16. ウォータージェットレーザーによるレーザー光線を用いることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載のダイシング方法。
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