JP4087144B2 - レーザーダイシング用粘着テープ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーダイシング用粘着テープに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回路パターンの形成された半導体ウェハを素子小片に切断・分割する、いわゆるダイシング加工を行う際は、半導体ウェハをあらかじめ放射線硬化性粘着テープに貼着して固定した後、このウェハをダイヤモンドブレード(回転丸刃)により素子形状に沿って切断し、この粘着テープの裏面から放射線、たとえば紫外線のような光、または電子線のような電離性放射線を照射して、次のピックアップ工程に移る方式が提案されている。
【0003】
この方式で用いられる放射線硬化性粘着テープは放射線透過性の基材と、この基材の上に塗工された放射線硬化性の粘着剤層とからなる粘着テープである。この粘着テープは、放射線照射前には強力な粘着強度を有し、放射線照射後にはその粘着強度が大幅に低下する特性を有する。従って上記の方式では、ダイシング工程では半導体ウェハの素子小片への切断分離は容易となり、さらに放射線照射後のピックアップ工程では素子小片の大きさに関係なく、たとえば25mm以上の大きな素子であっても容易にピックアップすることができるようになる利点がある。このような粘着テープとしては、特開昭60−196956号、特開昭60−201642号、特開昭61−28572号、特開平1−251737号、特開平2−187478号などに開示されたものがある。
【0004】
ところで、従来のダイシング装置はダイヤモンドブレードを回転させながら切断する方法である。このため、1mm以下の非常に小さい素子に切断するときにはブレード厚さを極力薄くしてスクライブラインの幅を狭めることにより1枚のウェハから取れる素子数を多くしている。しかし、それでも切断幅は40μm程度になってしまうこと及び切断時に発生する素子のチッピング(欠け)が大きな問題となっていた。また、ブレードが薄いため寿命が短くなり、また容易に破損しやすくなるためランニングコストが上昇してしまっていた。逆に厚い金属を切断しようとするとブレードの刃先を長くする必要があり、結果的にブレードの厚さが250μm等の様に非常に厚くなってしまうが、それでもブレードの強度を維持するには限界があった。また、ガラスのような硬い材質を切断しようとすると、1〜5mm/sと切断速度が非常に遅かった。更に、ダイヤモンドブレードは回転丸刃であるため切断形状が固定され、自由な形状に切断することはできなかった。
【0005】
これに対し、近年、ウォーターマイクロジェットとレーザーを組み合わせて金属材料を切断するというレーザー・マイクロジェット方式を利用した新しい加工装置が開発された。かかるレーザー・マイクロジェット方式を利用した加工装置は、例えば、SYNOVA社製レーザー・マイクロジェット(商品名)を使用することができる。この装置を半導体ウェハダイシングに用いると、従来のダイヤモンドブレードを用いたダイシングより優れた効果が得られる。すなわち、レーザーを用いることにより、素子のチッピングが発生せず、使用寿命が長く、ブレード破損による品質低下という問題がなく、厚い材料でもスクライブラインが狭いまま高速で切断しうることが期待された。
【0006】
しかし、レーザー・マイクロジェット方式の装置を半導体ウェハダイシングに使用する場合には、従来の粘着テープでは上記の問題は必ずしも充分に解決されなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シリコンウェハ、セラミック、ガラスや金属などをウォータージェットとともにレーザーで切断分離(ダイシング)する際に溶融せず、かつ破断せず、素子の飛びがなく、伸展可能であり、伸展時に材料が整直性を維持するレーザーダイシング用粘着テープを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水(ウォータージェット)が透過するフィルムをテープの基材に用い、非放射線硬化型粘着材層を基材と放射線硬化型粘着剤層の間に設けることで上記問題の解決策につながることを見出した。すなわち、本発明は、
(1)レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングに用いる粘着テープであって、該テープの基材の片面上に非放射線硬化型粘着剤層および放射線硬化型粘着剤層を有してなり、基材が前記ウォータージェットのジェット水流を透過しうるものであり、かつ、非放射線硬化型粘着剤層が基材と放射線硬化型粘着剤層の間に設けられていることを特徴とするレーザーダイシング用粘着テープ、
(2)少なくとも50μm幅の水流を透過しうることを特徴とする(1)項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ、
(3)基材の構造が網目状で、かつ繊維径が10μm以上50μm未満であることを特徴とする(1)〜(2)項のいずれか1項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ、
(4)基材の構造が多孔質で、かつ孔径が10〜50μmであることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれか1項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ、および
(5)基材がゴム状弾性体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ
を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のレーザーダイシング用粘着テープについて詳しく述べる。
本発明の粘着テープは、レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングに用いる粘着テープである。ウォーターマイクロジェット方式とはウォータージェットをガイドとしてレーザーを制御する方式をいう。空中でレーザーを照射すると光が拡散してしまうが、水を媒体とするとその中をレーザー光が屈折しながら進むため、効率的にレーザーを照射することができる。
ウォータジェットの圧力は、好ましくは30〜70MPaであり、これに限定するものではないが、ウォータージェット圧が小さすぎるとレーザーのガイドとして不十分で切断面の品質が低下する場合があり、大きすぎるとワーク(切断物)やテープに衝突した時の衝撃が強すぎて、ぶれ(バタツキ)が生じ、やはり切断面の品質が悪化する場合がある。
【0010】
本発明の粘着テープは、水(ジェット水流)が透過するフィルムを基材とする。基材が透過するウォータジェットの直径は、その噴射に用いられるノズル径(通常、50、75、100、150、200μm)によって決まる。本発明において、基材によって透過される水流の好ましい直径は30〜200μmであり、さらに好ましくは30〜100μm、特に好ましくは50〜100μmである。このような基材を用いることによりウォータージェットの水が粘着テープとウェハとの間に溜まらずに粘着テープから流出することができ、テープが溶融して破断するという問題を解消することができる。
【0011】
かかる基材が水を透過するためには、基材の構造は網目状または多孔質であることが好ましい。
基材としては、不織布、中空糸、織物、PDPの電磁波シールド用に使用されているポリアミド(ナイロン)メッシュなどの繊維質や、ゴム状弾性体が挙げられ、特に不織布が好ましい。不織布の場合でも方向性のない延伸性を示すことが望ましい。なお、ゴム状弾性体はハニカム構造を有していてもよい。
【0012】
繊維質を基材として使用する場合には、繊維径は10μm以上50μm未満が好ましい。繊維径が50μm以上の基材では、平坦部が溶融しチャッキングテーブルに融着してしまうため好ましくない。また、繊維が折り重なった部分の径も50μm以上あるとその部分は溶融してしまうため好ましくない。
【0013】
また、切断速度、レーザーの出力、水量等のレーザーダイシングの条件によって、使用される基材の耐熱性は適宜選択される。必要なのはレーザーダイシング時の熱で溶融しないものを使用することである。
【0014】
基材の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のエンジニアリングプラスチック、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン12、アラミドなどのポリアミド、またはポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、これらの群から選ばれる2種以上が混合されたものでもよく、粘着剤層との接着性によって任意に選択することができる。これらのうち、特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6,6が好ましい。
【0015】
基材の厚さは材料の振動を防止するために薄い方が好ましく、また、基材まで切断しないため伸展性さえ維持できれば基材は薄い方が好ましい。従って、基材の厚さは通常30〜300μmであり、好ましくは30〜200μmであり、さらに好ましくは50〜200μmであり、特に好ましくは100μmである。
【0016】
粘着テープの片面は従来品と同様にアクリル系粘着剤の溶液を塗布、乾燥して得られる粘着剤層からなる。かかる粘着剤層は放射線硬化型粘着剤層及び非放射線硬化型粘着剤層からなる。なお、本発明でいう放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線をいう。
【0017】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体および硬化剤を必須成分とする。(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、アクリル酸アルキルエステル等のモノマー(A)と、後述する硬化剤と反応しうる官能基を有するモノマー(B)とを常法により溶液重合法によって共重合させることによって得られる。アクリル系粘着剤は、2種以上のモノマー(A)同士を共重合させたものであってもよい。
【0018】
モノマー(A)としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
モノマー(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と反応させて粘着力および凝集力を調整するために用いられるものである。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ系化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
【0021】
硬化剤の添加量は、所望の粘着力に応じて調整すればよく、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましい。
【0022】
粘着力は、JIS Z 0237(1991)に準拠して測定した値(90゜引き剥がし法、剥離速さ50mm/分 試験板:シリコンウェハ)で、0.2〜1.3N/25mm程度が好ましい。
【0023】
アクリル系粘着剤の溶剤としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0024】
放射線硬化型粘着剤は、一般的には、アクリル系粘着剤と、放射線重合性化合物とを主成分としてなる。放射線硬化型粘着剤に用いられる放射線重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196956号公報および特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0025】
さらに放射線重合性化合物として、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
【0026】
放射線硬化型粘着剤中のアクリル系粘着剤と放射線重合性化合物との配合比は、アクリル系粘着剤100質量部に対して放射線重合性化合物は50〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部、特に好ましくは70〜120質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。この場合には、得られる粘着シートは初期の接着力が大きく、しかも放射線照射後には粘着力は大きく低下する。したがって、裏面研削終了後におけるウェハと放射線硬化型粘着剤層との界面での剥離が容易になる。
【0027】
また、放射線硬化型粘着剤は、側鎖に放射線重合性基を有する放射線硬化型共重合体から形成されていてもよい。このような放射線硬化型共重合体は、粘着性と放射線硬化性とを兼ね備える性質を有する。側鎖に放射線重合性基を有する放射線硬化型共重合体は、たとえば、特開平5−32946号公報、特開平8−27239号公報等にその詳細が記載されている。
【0028】
また、放射線硬化型粘着剤には、例えばα―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの光重合開始剤を含有させても良い。
【0029】
上記のようなアクリル系放射線硬化型粘着剤は、放射線照射前にはウェハに対して充分な接着力を有し、放射線照射後には接着力が著しく減少する。すなわち、放射線照射前には、粘着シートとウェハとを充分な接着力で密着させ表面保護を可能にし、放射線照射後には、研削されたウェハから容易に剥離することができる。
【0030】
放射線硬化型粘着剤層の厚さは適用される被着体により、本発明の趣旨を損なわない範囲内で適宜設定され、通常500μm以下とされ、好ましくは1〜200μm、さらに好ましくは3〜100μm、特に好ましくは5〜20μmである。
【0031】
本発明のレーザダイシング用粘着テープは、前記放射線硬化型粘着剤層と基材の間に、中間層として非放射線硬化型粘着剤層を有する。このような非放射線硬化型粘着剤層を設けることは、例えば、以下の点などから好ましい。
【0032】
(1)硬化阻害防止(Nパージ工程が不要)
基材として多孔質の基材や網目状構造の基材(以下、これらをまとめて多孔質基材等という)を使用する場合、基材と放射線硬化型粘着剤層との間に非放射線硬化型粘着剤層を設けることで、放射線硬化型粘着剤と酸素との接触を遮断できる。このため酸素ラジカルによる硬化阻害が起こらないので、紫外線等の放射線照射後に粘着力が充分に低下する。よって、ピックアップ時に剥離がし易くなる。この場合、酸素ラジカルの発生を防止するために放射線照射時にNパージを行う必要がなく、大気下で照射が行えるので作業性がよい。
【0033】
(2)接触面積の増加、基材と粘着剤層との密着性向上
多孔質基材等を使用する場合、基材と放射線硬化型粘着剤層とは点接触の状態となっている。基材と放射線硬化型粘着剤層との間に中間層として非放射線硬化型粘着剤層を設けると、非放射線硬化型粘着剤が基材に若干浸透した状態となり、中間層と基材はより強固に接合される。これにより、中間層と放射線硬化型粘着剤層は面接触の状態となる。このため密着性が向上し、剥離する際に、基材と放射線硬化型粘着剤層との間での界面剥離(糊残り)が生じない。
【0034】
(3)基材裏面への粘着剤(糊)の染み出し防止
基材と放射線粘着剤層との間に非放射線硬化型粘着剤層を設けることにより、基材側への粘着剤の染み出しが防止できる。このことは、基材が多孔質基材等である場合により顕著である。このように中間層として設けられる非放射線硬化型粘着剤層の硬さは粘着テープに要求される硬さなどの性質に関わらず変更調整が可能であるため、粘着剤染み出しを該中間層を設けることによって防止することが好ましい。粘着剤の染み出しを防止するために、放射線硬化型粘着剤の硬さを硬く(つまり初期の紫外線などの放射線照射前の粘着力を低く)することも考えられる。しかしながら、そのようにして得られる粘着テープは硬さなどの点で満足できるものではなく、また基材との密着性も低下するので実際的ではない。また、粘着剤の染み出しは、例えば放射線硬化型粘着剤層を基材とラミネートする際にラミネート圧等の調整をすることでも解消できるが、操作が煩雑となる。
【0035】
本発明において、非放射線硬化型粘着剤の材質は特に制限されるものではなく、従来公知の一般的なアクリル系粘着剤がいずれも適用可能である。
【0036】
そのようなアクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル系共重合体及び硬化剤を必須成分とするものである。(メタ)アクリル系共重合体は、例えば(メタ)アクリル酸エステルを重合体構成単位とする重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の(メタ)アクリル系重合体、或いは官能性単量体との共重合体、及びこれらの重合体の混合物等が挙げられる。これらの重合体の分子量としては重量平均分子量が50万〜100万程度の高分子量のものが一般的に適用される。
【0037】
硬化剤の例としては、前記放射線硬化型粘着剤の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。硬化剤の添加量は、所望の粘着力に応じて調整すればよく、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が好ましい。
【0038】
本発明において非放射線硬化型粘着剤としては、放射線重合性化合物や光重合開始剤を含まない以外は放射線硬化型粘着剤と同じものを用いることができる。
【0039】
放射線硬化型粘着剤層と基材の間に設置する非放射線硬化型粘着剤層の厚みについては特に制限されるものではないが、1〜100μmの範囲にあるのが好ましい。この厚さが薄すぎると塗工が比較的困難になる場合がある。また、厚すぎるとガイドとなる水の抜け性が悪くなり切断が困難になる原因になり、また、剥離後の被加工物やチップ表面の糊残りの原因になる場合もある。該中間層の厚さはさらに好ましくは3〜20μm、より好ましくは5〜10μmである。
【0040】
本発明において、放射線硬化型粘着剤層は、好ましくは、非放射線硬化型粘着剤層を設けた基材の非放射線硬化型粘着剤層上に放射線硬化型粘着剤を直接塗工することにより基材上に形成される。または、放射線硬化型粘着剤層は、従来公知のライナーフィルムに放射線硬化型粘着剤を塗工し、乾燥直後に、非放射線硬化型粘着剤層を設けた基材とラミネートする転写塗工により設けることも好ましい。一般的に、多孔質基材等を用いて、中間層(非紫外線硬化型粘着剤層)を設けないで、放射線硬化型粘着剤層を形成する際には、密着性を向上させ、粘着剤の染み出しを防止するために、基材とのラミネート時のラミネート圧等の調整が必要となる場合があり、これらの場合は作業が煩雑となる。
【0041】
非放射線硬化型粘着剤層は、塗布により形成してもよいが、ライナーフィルムを用いる等して放射線硬化型粘着剤層及び非放射線硬化型粘着剤層を別々に形成した後に、両層をラミネートする方法(転写塗工)により本発明の粘着テープを得てもよい。放射線硬化型粘着剤層と非放射線硬化型粘着剤層を塗布により形成する方法としては、多層用の粘着剤を同時に塗工する同時塗工によっても、1層塗工後に更にもう1層塗工する重ね塗りによってもよい。また、前記各層を転写塗工により形成する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。まず、ライナーフィルム上に非放射線硬化型粘着剤を塗布し、乾燥して該非放射線硬化型粘着剤コーティングとし、その乾燥直後に、該コーティングと基材を、非放射線硬化型粘着剤コーティング側で基材と積層するようにラミネートして粘着シートを得る。これとは別に、ライナーフィルム上に放射線硬化型粘着剤を塗布し、乾燥して該放射線硬化型粘着剤コーティングとし、その乾燥直後に、前記粘着シートと放射線硬化型粘着剤コーティングとを、先に製造した粘着シートのライナーフィルムを剥がしながら、該非放射線硬化型粘着剤コーティング側と該放射線硬化型粘着剤コーティングが積層するようにラミネートして、本発明の粘着テープを得ることができる。
【0042】
前記転写塗工によって得られた粘着テープにおいては、その使用時に粘着剤層側表面のライナーフィルムを剥がして使用することができ、転写塗工後使用時まではライナーフィルムを剥がさないでおくことも通常行われる。
【0043】
以下に、本発明の別の好ましい実施態様を挙げる。
【0044】
(I)本発明においては、粘着テープを予め加熱された刃によりプリカットしておくことも好ましい。例えば、本発明の粘着テープを、150℃程度に加熱された刃(例えば金属刃)によって、ダイシングフレームの形状(直径)にあわせてプリカットしておく。加熱された刃で切断することで、例えば不織布などの基材であってもその切断面が熱融着され、切断面から繊維くずが生じることがない。
【0045】
(II)本発明においては、粘着テープをダイシング用フレームにマウント後、ブレードではなくレーザ光でカットすることも好ましい。粘着テープをレーザ光で切断することで、例えば不織布などの基材であってもその切断面が熱融着され、切断面から繊維くずが生じることがない。
【0046】
(III)本発明においては、粘着テープの基材として、予め全面が熱融着された基材を用いることも好ましい。基材を熱融着する方法としては特に制限はなく、基材の全面が熱融着するのに十分な加熱処理であれば、火炎処理でも熱プレスでもよい。このような基材としては、予め全面が熱融着された不織布、例えば、呉羽テック製 PET6030A(商品名)等を用いることができる。全面が熱融着された基材を有する粘着テープによれば、通常のブレードによるテープカット方式でもその切断面から繊維くずが生じることがない。
【0047】
これらの(II)と(III)の場合には、粘着テープをウエハフレームに貼りつけた後、該テープを所定の形状にカットする、例えばダイシング用フレームの形状にくり貫く工程で、基材の切り口がほつれて繊維くずが生じることがない。また、(I)の場合にはそのようなくり貫く工程自体が不要なので、基材の切り口がほつれて繊維くずが生じることがない。したがって、これらいずれの場合にも、半導体チップ形成の際にクリーンルーム内に繊維くずが飛散することを防止することができる。また、(III)の場合には、ダイシング加工後に粘着テープに放射線照射し、被加工物やチップからテープを剥離するピックアップ工程で、基材が材破し、粘着剤と材破した基材の一部が被加工物やチップの表面に転着することがない。
上記(I)〜(III)は、本発明の非放射線硬化型粘着剤層を基材と放射線硬化型粘着剤層の間に設けた粘着テープに限らず、放射線硬化型粘着剤層が基材上に直接設けられた粘着テープなどの公知の粘着テープにおいても好ましく適用することができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
アクリル酸エステル共重合体100質量部、硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2質量部からなる非放射線(紫外線)硬化型粘着剤を38μm厚さのライナーフィルムの片面に10μmの厚さでコーティングした後、110℃で2分間乾燥した。乾燥後直ちに、基材として不織布(呉羽テック社製(商品名:ボンデン)CX26026、繊維径10μm以上50μm未満、厚さ140μm)を上記コーティング上にラミネートして粘着シートを得た。これとは別に、アクリル系粘着剤(2−エチルヘキシルアクリレートとn−ブチルアクリレートとの共重合体)100質量部にポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)3質量部、イソシアヌレート化合物としてトリス−2−アクリロキシエチルイソシアヌレート60質量部及び光重合開始剤としてα―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部を添加混合してなる放射線(紫外線)硬化型粘着剤を、38μm厚さのライナーフィルムの片面に10μmの厚さでコーティングした後、110℃で2分間乾燥した。乾燥後直ちに、上記で得られた多孔質基材と非放射線硬化型粘着剤層からなる粘着シートを上記放射線硬化型粘着剤のコーティング上に、粘着シートのライナーフィルムを剥がしながら、該非放射線硬化型粘着剤コーティング側と該放射線硬化型粘着剤コーティングとが積層するようにラミネートして、レーザーダイシング用粘着テープを得た。この粘着テープは、フレームにマウントするときにライナーフィルムを剥がして使用した。
【0050】
実施例2
非放射線硬化型粘着剤をライナーフィルムの片面に50μmの厚さでコーティングした以外は実施例1と同様にして、レーザーダイシング用粘着テープを得た。
【0051】
実施例3
アクリル酸エステル共重合体100質量部、硬化剤1質量部からなる非放射線硬化型粘着剤を用いた以外は実施例1と同様にして、レーザーダイシング用粘着テープを得た。
【0052】
比較例1
アクリル系粘着剤(2−エチルヘキシルアクリレートとn−ブチルアクリレートとの共重合体)100質量部にポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)3質量部、イソシアヌレート化合物としてトリス−2−アクリロキシエチルイソシアヌレート60質量部及び光重合開始剤としてα―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部を添加混合してなる放射線硬化型粘着剤を38μm厚さのライナーフィルムの片面に5μmの厚さでコーティングした後、110℃で2分間乾燥した。乾燥後直ちに、多孔質基材として不織布(呉羽テック社製(商品名:ボンデン)CX26026、厚さ140μm)を上記コーティングの上部にラミネートしてレーザーダイシング用粘着テープを得た。
【0053】
比較例2
放射線硬化型粘着剤中のポリイソシアネート化合物を1質量部とし、放射線硬化型粘着剤を厚さ50μmとなるようにコーティングした以外は、比較例1と同様にしてレーザーダイシング用粘着テープを得た。
【0054】
比較例3
比較例2の粘着テープを得る際にラミネート圧力を比較例2の0.5倍に調整してレーザーダイシング用粘着テープを得た。
【0055】
比較例4
比較例1で得られたレーザーダイシングテープをダイシング終了後、窒素雰囲気下で紫外線照射を行った。
【0056】
比較例5
比較例3で得られたレーザーダイシングテープをダイシング終了後、窒素雰囲気下で紫外線照射を行った。
【0057】
実施例1〜3、比較例1〜5については下記の評価を行った。
【0058】
・硬化阻害の有無、基材と粘着剤層との密着性
厚み100μmの6インチのシリコンウェハを、6インチリングフレームに貼着固定した各レーザーダイシング用粘着テープにて貼合支持固定した。これをレーザーマイクロジェットダイシング装置(商品名:レーザー・マイクロジェット、SYNOVA社製)に設置し、カットスピード100mm/s、レーザービーム径(ウォータージェット径)40μmの条件にて、2mm×2mmのチップサイズにダイシングした。
ダイシング終了後にダイシングしたチップを大気下と窒素雰囲気下で紫外線照射した。また、得られたチップについて、ピックアップ性、および基材と粘着剤層との密着性を確認した。
ピックアップ性は、硬化阻害の有無による紫外線照射後の粘着力の度合いで評価した。紫外線照射の結果、粘着剤の硬化により粘着テープの粘着力が充分に低下し粘着テープからの剥離が容易であった場合を“○”(良)、硬化阻害により充分に粘着力が低下せず粘着テープからの剥離に支障をきたした場合を“×”(不良)とした。
また、密着性は、基材と粘着剤層を剥離する際に、両者の間で界面剥離が生じなかった場合を“○”、界面剥離が生じた場合を“×”とした。
【0059】
・作業性
紫外線照射時の作業性、及びラミネート時の作業性を評価した。紫外線照射時に大気下で作業ができ窒素パージが不要であり、かつ、粘着シートのラミネート時にラミネート圧の調整が不要であった場合を“○”とし、紫外線照射時に窒素パージが必要であったかまたは粘着シートのラミネート時にラミネート圧の調整が必要であった場合を“×”とした。さらに、これらの窒素パージとラミネート圧調整が両方とも必要であった場合を特に作業性が悪かったものとして“××”とした。
【0060】
・粘着剤の染み出し状況の確認
ラミネートして得られたレーザーダイシング用粘着テープの基材側を目視観察し、粘着剤の染み出しの有無を確認した。
【0061】
上記の評価項目について試験した結果を表1に記載する。
【0062】
【表1】
Figure 0004087144
【0063】
評価結果
実施例1〜3:ラミネート後の観察では、粘着剤の染み出しは確認されなかった。また、ダイシング後のピックアップ性は、硬化阻害を受けないため、大気下でも充分粘着力が低下し、良好なピックアップ性を示した。また、基材と粘着剤との密着性も良好で、ワークへの糊残りもなかった。また、紫外線照射時の窒素パージ、ラミネート時のラミネート圧調整ともに不要であり、作業性は良好であった。
比較例1:大気下での紫外線照射では充分に粘着剤の粘着力が低下せず、また基材と粘着剤との密着性も悪いため、基材と粘着剤層との間で界面剥離が発生した。
比較例2:基材側への粘着剤の染み出しが観察された。
比較例3:基材側への粘着剤の染み出しはなかった。ダイシング後に大気下で紫外線照射を行ったところ、充分に粘着力が低下しなかった。また、コーティング時にラミネート圧を調整しなくてはならず作業性が悪かった。
比較例4:ダイシング後に窒素雰囲気下で紫外線照射することで粘着力は充分低下したが、基材と粘着剤との密着性が悪いため、被加工物側への糊残りが若干発生した。また、紫外線照射時に窒素パージをしなければならず、作業性が悪かった。
比較例5:ラミネート後の観察では、粘着剤の染み出しは確認されなかった。また、ダイシング後のピックアップ性は、粘着力が充分低下し良好なピックアップ性を示した。しかし、ラミネート時にラミネート圧を調整しなければならず、また、紫外線照射時には窒素パージを行わなければならなかったので、作業性は非常に悪かった。
【0064】
【発明の効果】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープは、シリコンウェハ、セラミック、ガラスや金属などをレーザーで細かく切断・分割(ダイシング)する際に、切断速度が速く、溶融、破断せず、被ダイシング物(チップ)の飛び又は特に端部での素子のチッピングの発生を防止することができ、かつ、適宜に延伸可能であり、延伸時に材料が整直性を維持するという優れた作用効果を奏する。
また、本発明は、基材と放射線硬化型粘着剤層の間に非放射線硬化型粘着剤層を設けることで、基材とこれら粘着剤層との密着性をより向上させ、且つ基材側への粘着剤の染み出しを防止し、更に放射線照射時の硬化阻害を防止することができる。

Claims (5)

  1. レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングに用いる粘着テープであって、該テープの基材の片面上に、非放射線硬化型粘着剤層および放射線硬化型粘着剤層を有してなり、基材が前記ウォータージェットのジェット水流を透過しうるものであり、かつ、非放射線硬化型粘着剤層が基材と放射線硬化型粘着剤層の間に設けられていることを特徴とするレーザーダイシング用粘着テープ。
  2. 少なくとも50μm幅の水流を透過しうることを特徴とする請求項1記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
  3. 基材の構造が網目状で、かつ繊維径が10μm以上50μm未満であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
  4. 基材の構造が多孔質で、かつ孔径が10〜50μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
  5. 基材がゴム状弾性体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
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