JPWO2020091064A1 - 偏光性光学機能フィルム積層体及びこれに用いる偏光フィルム - Google Patents

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Abstract

高温高湿環境における偏光フィルム切断端面の保護機能を高め、偏光フィルムの信頼性を向上させることができる、偏光性光学機能フィルム積層体と、これに用いる偏光フィルムを提供する。偏光子と該偏光子の少なくとも片側に積層された保護フィルムとを含む偏光フィルムを少なくとも有し、切断端面により形成される所定形状を有する偏光性光学機能フィルム積層体であって、切断端面のうち少なくとも偏光子の切断端面には、偏光性光学機能フィルム積層体には含まれない樹脂材料の成分を第1樹脂成分として含む被覆層が形成されている。

Description

本発明は、偏光性光学機能フィルム積層体、より具体的には、偏光性光学機能フィルム積層体に含まれる偏光子の切断端面に被覆層が形成されている偏光性光学機能フィルム積層体と、これに用いる偏光フィルムに関する。
近年、自動車のメーター表示部やスマートウォッチ、ゴーグル、スマートフォン、ノートパソコン、ノートパッド、さらにはモニターといった多くの種類の画像表示装置において、偏光性光学機能フィルム積層体又はその一部である偏光フィルムが使用されている。また、これらの画像表示装置においては、そのデザイン性の観点から、これらの偏光フィルム等を、矩形形状のみならず、曲線形状、ノッチ形状、又は穴を有する形状といった、様々な形状に加工することが要求されており、そのような要求を満たすために、トムソン刃及びピナクル刃をはじめとした刃型による打抜き加工、フルバック及びエンドミルを用いた端面加工、さらにはレーザー光を用いたレーザー切断加工などの方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、最近では、画像表示装置の表示部を最大化したいとの要望から、額縁部の幅を狭くしたデザインが主流化してきており、所望形状に切断加工された偏光フィルムの切断端部に対する品質要求及び寸法精度要求が、更に厳しさを増してきている。
一方で、前述のように偏光フィルムを搭載した画像表示装置の用途は多岐にわたっているため、高温高湿環境などで長時間利用される場合も多くなっており、そのような環境においては、熱負荷のかかった偏光フィルムの切断端面から水分が出入りする現象を生じる。一般に、偏光子は、PVAベースの樹脂材料からなる延伸フィルムに、ヨウ素を含侵させ、PVA−ポリヨウ素イオン錯体を形成させることにより偏光性能を発現させるようにした形式のものが主流であるが、このようなPVA-ヨウ素系偏光子の切断端面が高温多湿環境に曝されると、該切断端面から出入りする水分の影響で、PVAフィルム内のPVA-ポリヨウ素イオン錯体が変質し流動性を帯びて外部へ抜けていき(脱色)、端部の偏光機能を損なう、という品質に関する課題が生じることになる。以下において、本明細書では、この現象を「偏光解消」と呼ぶ。
上述の課題を解決するために、所望形状に切断加工された偏光フィルムの外周切断面を樹脂被膜によって被覆する手法が提案されている(特許文献2)が、この特許文献2において提案された手法では、被膜を形成するために、樹脂を溶媒に溶解させた溶液を、ロールコーター等によって偏光フィルムの切断面に塗布し、乾燥させる必要があり、製造工程が長く、かつ煩雑になり、製造コストの増大を招くという別の問題を生じる。また、特許文献3は、偏光子の表裏両面に配置される保護層を偏光子より大きく形成することによって、これら保護層の間に溝状の隙間を設け、この隙間にシール材を充填することを提案しているが、この提案による方法も、特許文献2の場合と同様に、製造工程が長く、かつ煩雑になる。さらに、外周が曲線を含む非直線形状に切断加工された偏光フィルムの切断端面に対して、ロールコーター又はスロットダイコーターといった普遍的な塗工手段を用いて被膜を形成する場合には、コーターの液吐出部と偏光フィルムの切断端面との間のギャップを均一に保つ必要があるが、そのようなギャップ調整は極めて困難であり、厚みが均一な被膜を切断端面に形成する事は困難である。また、樹脂被膜の形成にスプレーコーターを使用することも考えられるが、この方法では、樹脂材料を有機溶媒に溶解した溶液を塗工液として用いることになり、その場合には、多層構造である偏光フィルムの層間に塗工液が浸透する可能性があり、層間に浸透した塗工液によって層間接着力が低下するという問題を生じる。また、この手法では、塗工液に含まれる希釈用有機溶媒によって偏光フィルムの構成基材が浸食されるといった問題を生じることも考えられる。この問題を回避するため、無溶剤系のUV硬化樹脂をスプレーコートすることも考えられるが、その場合には、被膜形成のための材料が限定され、しかも、希釈液と比べて粘度が高い為に薄膜形成が困難となり、被膜は、非直線形状に切断加工された製品の寸法精度に影響を及ぼす程の厚みになってしまう。
インクジェットプリンティング又はディスペンサ方式のような、切断加工形状に沿った滴下コーティング方法も存在するが、この種の方法によっても、被膜の薄型化が困難であり、かつ被膜形成に伴う偏光フィルム表層への飛沫汚染などの問題が生じる為、技術的に適用困難である。
なお、光学フィルムは、片側もしくは両側に、デバイスへの実装に際して剥離される表面保護フィルム及び剥離ライナーを有する事が一般的であり、このような構成の光学フィルムの切断加工端部に特許文献2に教示される被膜を形成すると、表面保護フィルム及び剥離ライナーの切断端面にも被膜が同時に形成されることになるため、表面保護フィルム及び剥離ライナーの切断端面と、光学フィルムの切断端面とが、切断端部を被覆する被膜によって互いに固定された状態になり、表面保護フィルム及び剥離ライナーを剥離させることが困難になる。また、表面保護フィルム及び剥離ライナーを無理に剥がそうとすると、切断加工端部に形成した被膜が光学フィルムから脱落する問題を生じる。さらに、脱落した被膜の一部が製造工程における異物汚染の原因になるという問題が生じる。
蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition)、その他の、いわゆる真空ドライコーティング法の適用も考えられるが、蒸着は金属成分の被膜形成が主対象であって、原理的に有機膜を成膜することが難しく、CVDに関しては、有機物モノマーを反応炉に封入して、プラズマCVD法などにより成膜することは可能ではあるが、100nm以上の厚みを成膜するには時間がかかり過ぎるため、生産性が低く、現実的には適用困難である。
また、赤外線波長を有するレーザー光を用いた切断加工方法を採用することにより、偏光フィルムの一構成要素である保護フィルムを溶融させ、この溶融物により偏光子の切断端面を覆う被覆層を形成することで切断端面の信頼性を向上させる方法も提案されている(特許文献4)。この文献は、本来的に透湿度の低い材料により形成されている保護フィルムを、切断時の熱により溶融させ、その溶融物によってレーザー切断加工された偏光子端面を被覆することを教示する。特許文献4には、この方法によれば、偏光フィルム加工端部の高温高湿環境における信頼性を向上させることが可能であると述べられている。この方法によれば、レーザー切断加工と同時に被覆層を形成できるので、形状加工した後の外周コーティング工程を省略できる。
さらに、レーザー切断加工において、長尺の光学フィルムと該光学フィルムの両面に積層された保護シートとからなる長尺の光学積層体をロール状に巻いた光学積層体ロールを準備し、このロールから光学積層体を繰り出しながら、光学積層体に対してレーザー切断加工処理する方法も提案されている(特許文献5)。この特許文献5の教示によれば、光学フィルムの両面に積層された保護シートのうち、下側に位置する保護シートを、搬送基材として機能させることができる。この場合には、下側の保護シートに対しては、レーザー照射によるハーフカットが行われるものと理解できる。
特開2018−22140号公報 特開平8−146219号公報 実公平7−34415号公報 特許5558026号公報 特開2017−207585号公報
しかしながら、特許文献4に教示された方法を採用しても、偏光子の一方の面に設けられた保護フィルムからの溶融物のみによる被膜によって、偏光子の切断端面に十分な保護機能を与えることは困難である。その理由は、偏光フィルムを構成する偏光子及び保護フィルムの厚みは多岐にわたっており、偏光子の一方の面に設けられた保護フィルムからの溶融物の体積が、偏光子の厚み全体にわたって偏光子の切断面を十分に覆うことができる幅で、切断端面からの水分の透過を十分に阻止できる厚みをもった被膜を形成するのに足りるという保証はないからである。
特許文献4は、偏光子の保護フィルムを所定の低い透湿度の樹脂材料によって形成することを教示しているが、仮にそのような材料を使用したとしても、偏光フィルムのレーザー切断加工の際に生じる保護フィルムからの溶融物が偏光子の切断端面を覆う被膜を形成するのに量的に十分であるという保証はなく、切断端面からの水分の透過を十分に阻止できる厚みをもった被膜を形成することは困難である。
このように、従来提案された上述の手法では、偏光子切断端面からの色抜けによる「偏光解消」に対する近年の厳しい品質要求を満足できる偏光フィルムを得ることはできなかった。
本発明者らは、従来技術における上述の課題を認識し、その課題を解決することを目指して鋭意検討を重ねた結果、偏光子の少なくとも片側に保護フィルムが積層された偏光フィルムを少なくとも有する偏光性光学機能フィルム積層体において、該偏光性光学機能フィルム積層体とは別体であり、樹脂材料により形成されたシート材を、該偏光性光学機能フィルム積層体の一方の面に重ねて配置し、該偏光性光学機能フィルム積層体のシート材とは反対側に位置する他方の面から該偏光性光学機能フィルム積層体の厚み方向にレーザーを照射し、レーザーの照射位置を該積層体の面内において所定形状に沿って移動させるレーザー切断処理を行うことにより、該偏光性光学機能フィルム積層体を所定形状に切断することで、該レーザー照射のもとで、厚み方向の一部に存在するシート材成分がレーザーエネルギーにより飛沫となって飛散させられて、該シート材成分の飛沫の少なくとも一部が偏光性光学機能フィルム積層体の偏光子に形成されるレーザー切断端面に堆積するようにして、該シート材の成分を少なくとも含む被覆層が、偏光子のレーザー切断端面を覆うように形成される、という現象を見出し、この現象を利用して、偏光フィルムの切断端面に水分の透過を抑制する被膜を形成することを想到するに至った。このようにして形成された被膜は、高温高湿環境における偏光フィルム切断端面の保護機能を高め、偏光フィルムの信頼性を向上させることができる。
本発明は、上記の現象を利用して、偏光性光学機能フィルム積層体に含まれる偏光子の切断端面に被覆層を形成した偏光性光学機能フィルム積層体と、これに用いる偏光フィルムを提供するものである。
本発明の一態様による偏光性光学機能フィルム積層体は、偏光子と該偏光子の少なくとも片側に積層された保護フィルムとを含む偏光フィルムを少なくとも有し、切断端面により形成される所定形状を有する偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記切断端面のうち少なくとも前記偏光子の切断端面には、偏光性光学機能フィルム積層体には含まれない樹脂材料の成分を第1樹脂成分として含む被覆層が形成されていることを特徴として有する。
本発明によれば、上記従来技術における切断端面における問題点を改善した偏光性光学機能フィルム積層体及びこれに用いる偏光フィルムを提供することができる。
本発明の一実施形態による偏光性光学機能フィルム積層体の一例を切断加工を行う前の状態で示した概略断面図。 図1の偏光性光学機能フィルム積層体をレーザー照射により所望形状に切断加工する際の状態の一例を示した概略断面図。 レーザー照射による切断処理中のシート材付き積層体の状態を示した積層体断面の模式図。 偏光子の光吸収軸に対し直角方向の切断端面をクロスニコルの透過照明のもとで観察した偏光解消を示す光学顕微鏡画像であって、色抜けによる偏光解消を生じていない例を示す図。 偏光子の光吸収軸に対し直角方向の切断端面をクロスニコルの透過照明のもとで観察した偏光解消を示す光学顕微鏡画像であって、色抜けによる偏光解消を生じている例を示す図。 レーザー切断加工された本発明のシート材付き積層体の切断断面におけるSEM画像の一例を示す図。 本発明の一実施例によるシート材付き積層体を用いることによって達成される偏光解消幅の一例を示す図。 従来のエンドミルを用いることによって達成される偏光解消幅の一例を示す図。 レーザー切断加工された本発明の一実施例によるシート材付き積層体の偏光フィルムの近傍における断面SEM画像。 図7と同一箇所のEDX(エネルギー分散型X線分析)画像。 図7に示される画像において偏光子の切断端部を拡大して示す断面SEM画像。 図9と同一箇所のEDX画像。 長尺帯状の偏光性光学機能フィルム積層体をロール・トゥー・ロール方式でレーザー切断するレーザー形状加工装置の概略図。 大判の偏光フィルムからスマートフォン形状に切り出された製品を製造する場合の切断加工レイアウト例を示す図であって、その全体を示す平面図。 大判の偏光フィルムからスマートフォン形状に切り出された製品を製造する場合の切断加工レイアウト例を示す図であって、その一部を拡大して示す平面図。 大判の偏光フィルムから自動車メーターパネル形状に切り出された製品を製造する場合の切断加工レイアウト例を示す図であって、その全体を示す平面図。 大判の偏光フィルムから自動車メーターパネル形状に切り出された製品を製造する場合の切断加工レイアウト例を示す図であって、その一部を拡大して示す平面図。 スマートフォン形状に切り出された偏光フィルムの例を、複数枚並べて示す写真。 実施例1について、切断端面を分子配向方向から観察したSEM画像。 実施例2について、切断端面を分子配向方向から観察したSEM画像。 比較例1について、切断端面を分子配向方向から観察したSEM画像。 比較例2について、切断端面を分子配向方向から観察したSEM画像。 実施例1におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。 レーザー切断加工後に剥離したシート材に形成されたレーザー加工溝を示す光学顕微鏡画像。 実施例1で切断端面に形成された被覆層の元素分析結果を示す図。 実施例6におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。 実施例7におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。 比較例4におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。 比較例5におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。 参考例1におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。 参考例2におけるTOF-SIMSによる分析結果を示した画像。
以下、本発明を実施形態に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
(偏光性光学機能フィルム積層体)
図1に、本発明の一実施形態による偏光性光学機能フィルム積層体の一例を、切断加工を行う前の状態で、更に詳細には、偏光子の切断端面を覆う被覆層を形成する前の状態で概略断面図で示す。偏光性光学機能フィルム積層体1は、偏光フィルム12を少なくとも含み、更に、これらに限定されるわけではないが、表面処理層13、表面保護フィルム14、及び、汚染対策フィルム23を任意の要素として含むことができる。
偏光性光学機能フィルム積層体1には更に、粘着剤層15を介して剥離ライナー16を貼り合わせてもよい。以下、粘着剤層15と剥離ライナー16を設けた偏光性光学機能フィルム積層体1を、符号「1A」で示し、この偏光性光学機能フィルム積層体1Aを例として説明を行う。
通常、偏光フィルム12は、図1に示すように、主として、偏光子10と、該偏光子10の一方又は両方の主面に積層された保護フィルム11とから構成されるが、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角補償フィルムといった光学的な機能を発現するその他の光学機能フィルムを更に積層しても良い。そのような場合には、これら光学機能フィルムを含む積層体が偏光フィルム12を構成する。また、図1には偏光子10の両方の主面に保護フィルム11a、11bが積層された例を示したが、一方の主面のみに保護フィルム11が積層されていても良い。
偏光子10は、樹脂フィルムから構成される。この樹脂フィルムとしては、任意の適切な樹脂を用いることができるが、通常は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂と称する)が用いられる。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%以上、さらに好ましくは99.0モル%以上、特に好ましくは99.93モル%以上である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子10を得ることができる。
偏光子10を構成するPVA系樹脂は、慣用された手法により、膨潤処理、延伸処理、二色性物質、典型的にはヨウ素による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理が施されて、偏光子として使用し得る状態にされる。各々の処理の回数、順序、時間等は、適宜設定することができる。PVA系樹脂は、別の基材上に塗膜層として形成された薄膜とし、この薄膜に、上述の各処理を施すことにより形成したものであってもよい。延伸処理における延伸方向は、得られる偏光子の吸収軸方向に相当する。優れた偏光特性を得る観点から、PVA系樹脂は、通常、3倍〜7倍に一軸延伸される。
PVA系樹脂フィルムとしては、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押し出し法等、任意の方法で成膜されたものを適宜使用することが出来る。
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択することができる。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜6000、さらに好ましくは2000〜5000である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
偏光子10を構成する樹脂フィルムには、代表的には、二色性物質が含侵させられる。二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、又は、二種以上を組み合わせて用いることができる。二色性物質としては、好ましくは、ヨウ素が用いられる。
有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等を使用できる。これらの二色性物質は、一種類のみ使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
偏光子10の厚みは、任意の適切な値に設定することができる。実用されている偏光子の厚みは、5μm〜30μmである。
偏光子10は、波長380nm〜780nmの範囲で吸収二色性を示す特性であることが好ましい。偏光子10の単体透過率(Ts)は、一般的に43%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701に基づき、2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、分光光度計(日本分光製、V7100)を用いて測定することができる。偏光子10の偏光度は、一般的に99.9%以上である。
保護フィルム11a、11bを形成する材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及び、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」という表記は、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を意味する。
保護フィルム11a、11bの厚みは、通常は10μm〜200μmの範囲内で任意の値に選定される。
尚、これら材料及び厚み等は、保護フィルム11aと保護フィルム11bとの間で、同じものとされていてもよいし、異なるものとされていてもよい。
保護フィルム11a、11bの各々は、代表的には、偏光子10の主面の各々に、接着剤層(図示せず)を介して積層される。接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤を用いることができる。例えば、水系接着剤、溶剤系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等が用いられる。水系接着剤としては、PVA系樹脂を含む接着剤を用いることが好ましい。
保護フィルム11a、11bには、任意の適切な添加剤が1種以上含まれていても良い。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。
保護フィルム11a、11bそれぞれの、偏光子10とは反対側の面に、ハードコート処理、反射防止処理、或いは、拡散及びアンチグレアを目的とした処理を施した、表面処理層13を形成してもよい。図1に示す実施形態では、偏光子10の一方の主面に積層される保護フィルム11aにのみ、表面処理層13を形成した例を示している。
表面保護フィルム14は、表面処理層13が形成されている場合には、表面処理層13を介して、表面処理層13が形成されていない場合には、保護フィルム11に積層される。表面保護フィルム14は、接触による傷又は異物の付着から保護フィルム11aを保護する目的で保護フィルム11aに剥離可能に貼り合わされる部材であり、粘着剤層14aと樹脂フィルム14bで構成されている。
粘着剤層14aを構成する粘着剤は、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系及びポリエステル系のいずれかの高分子材料を主成分とする材料が用いられ、1〜100μmの範囲で厚みを適宜選択することができる。
樹脂フィルム14bとしては、アクリル系樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂等が挙げられ、厚みは5μm〜100μmの範囲とすることが好ましい。
表面保護フィルム14は、偏光フィルムが光学表示デバイスへ搭載等される際には剥離される。このため、粘着剤層14aを構成する粘着剤は、軽粘着力であることが好ましく、好ましい剥離力は、5N/20mm以下である。
剥離ライナー16は、表面保護フィルム14とは反対側の偏光フィルム12の面、すなわち、保護フィルム11bの、偏光子10とは反対側の面に、粘着剤層15を介して積層される。剥離ライナー16の粘着剤層15に接する主面には、良好な剥離性を得るために、離型処理が施されている。剥離ライナー16は、偏光フィルム12が光学的表示パネルに貼り合わされる時点まで、粘着剤層15を被覆する。剥離ライナー16は、偏光フィルム12が光学的表示パネルに貼り合わされるときに、粘着剤層15を偏光フィルム12の側に残して保護フィルム11bから剥がされ、該偏光フィルム12が、粘着剤層15を介して該光学的表示パネルに貼り合わされる。作業性を考慮して、粘着剤層15に対する剥離ライナー16の剥離力は、5N/20mm以下であることが好ましい。
剥離ライナー16は、樹脂フィルムにより構成することが好ましく、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂を用いることができるが、これらに限定されるものではない。剥離ライナー16の厚みは1μm〜100μmの範囲で適宜選択可能である。また、剥離ライナー16は、透湿度が低い材料から形成されることが望ましく、剥離ライナー16の材料の透湿度の好ましい値は、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気のもとで、200g/m2・24h以下であり、150g/m2・24h以下がより好ましい。
粘着剤層15を構成する粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、オレフィン系、ポリエステル系の群から成るいずれかの高分子材料を主成分とするものを使用することができる。コストを抑制するという観点からは、アクリル系又はゴム系の粘着剤が好ましい。粘着剤層15の厚みは、1μm〜50μmの範囲で適宜設定可能である。
表面保護フィルム14の上に、汚染対策フィルム23を設けてもよい。汚染対策フィルム23は、樹脂材料からなる樹脂フィルム基材23aを少なくとも含み、更に、該樹脂フィルム基材23aの一方の面に配置される粘着剤層23bを含む。樹脂フィルム基材23aは、粘着剤層23bを介して表面保護フィルム14に積層される。
樹脂フィルム23aとしては、一般的な樹脂フィルムを使用でき、例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、又はポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂等を使用することができる。樹脂フィルム23aは、20μm〜100μmの範囲の厚みを有することが好ましい。
一方、粘着剤層23bを構成する粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系及びポリエステル系の高分子材料のいずれかを主成分とする材料を用いることができ、該粘着剤層23bの厚みは、1〜100μmの範囲で適宜選択可能である。
汚染対策フィルム23は、レーザー切断加工工程の後に剥離される。このため、粘着剤層23bを構成する粘着剤は、表面保護フィルム14に対して軽粘着力を有するものが好ましく、その粘着力は、用いる表面保護フィルム14の粘着力と同等か、これより小さいことが好ましい。表面保護フィルム14の粘着力よりも該粘着剤の粘着力が大きいと、汚染対策フィルム23を剥離する際に、表面保護フィルム14が剥がされてしまう可能性があり、好ましくない。
偏光性光学機能フィルム積層体1Aは、粘着剤層15を介して偏光フィルム12を光学的表示パネルに貼り合わせる前に、レーザー切断加工により所望形状に切断される。このレーザー切断加工時に発生する溶融物又は微粒子等は、飛沫となって飛散し、この飛散した成分が、レーザー入射面側の偏光フィルムの主面において表層を汚染する恐れがある。汚染対策フィルム23を設けることにより、この汚染を防止し、或いは抑制することができる。
さらに、このように汚染対策フィルムを設けると、切断端面に生じることがあるバリを抑制することもできる。偏光性光学機能フィルム積層体1Aを構成する層又はフィルムのうち、レーザー照射方向にみて最も表側に位置する層又はフィルム、図1の例では、表面保護フィルム14を構成する樹脂フィルム14bの切断端面には、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの外部に突出した状態でバリ「A」(図5参照)が生じることがあるが、汚染対策フィルム23を設けることにより、このようなバリを偏光性光学機能フィルム積層体1Aの積層方向において0〜20μmに抑制することが可能である。これにより、切断加工後に、所定の同じ形状に切断加工された積層体を複数枚、積層して集積する際に、バリによる積み高さの増大を抑制して、輸送効率を高めることが可能となる。バリを10μm以下とすることで更に輸送効率が高まり、5μm以下とすることで特に輸送効率が高まる。
(レーザー切断加工)
図2に、図1の偏光性光学機能フィルム積層体1Aをレーザー照射により所望形状に切断加工する際の状態の一例を、図1と同様の方法で示す。レーザーを用いることにより、偏光性光学機能フィルム積層体1Aを所定の形状に容易に切断することができるだけでなく、更に、この切断加工に伴って、偏光性光学機能フィルム積層体1Aに含まれる偏光子10の切断端面に被覆層を形成することができる。切断加工に際しては、偏光フィルム12の、レーザー入射面とは反対側の主面に対向させて、例えば、本実施形態では、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの剥離ライナー16の外側に位置する面16aに対向させてシート材17を配置する。以下、シート材17が配置された偏光性光学機能フィルム積層体1Aを、「シート材付き積層体」と呼び、全体を符号「2」で示す。
シート材17は、樹脂材料からなる樹脂フィルム基材17aを少なくとも含み、更に、該樹脂フィルム基材17aの一方の面に配置される粘着剤層17bを含む。樹脂フィルム基材17aは、粘着剤層17bを介して剥離ライナー16に剥離可能に貼り合わされ、また、切断加工の後に、剥離ライナー16から剥離される。
樹脂フィルム基材17aを構成する樹脂フィルムとしては、一般的な樹脂フィルムを使用でき、例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、又はポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂等を使用することができる。樹脂フィルム基材17aは、5μm〜200μmの範囲の厚みを有することが好ましい。また、樹脂フィルム基材17aは、透湿度が低い材料から形成されることが望ましく、樹脂フィルム基材17aの材料の透湿度の好ましい値は、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気のもとで、200g/m2・24h以下であり、150g/m2・24h以下がより好ましい。
一方、粘着剤層17bは、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系又はポリエステル系のいずれかを主成分とする高分子材料により形成することが好ましい。また、粘着剤層17bは、軽剥離の粘着力を有する粘着剤からなるものとすることが好ましく、粘着剤層17bの剥離力は、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの剥離ライナー16の剥離力と同等か、それより小さいことが好ましい。剥離ライナー16の剥離力よりもシート材17の粘着剤層17bの剥離力が大きいと、レーザー切断加工工程の後にシート材17が剥離される際に、剥離ライナー16が一緒に剥離されてしまう弊害が生じる可能性があるためである。粘着剤層17bは、通常、レーザー切断加工工程の後にシート材17が剥離される際に、樹脂フィルム基材17aとともに取り取り除かれる。
シート材付き積層体2に対して、レーザーは、シート材17とは反対側に位置する偏光性光学機能フィルム積層体1Aの他方の面から、図示実施形態では、汚染対策フィルム23の側の面から、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの厚み方向に照射される。この「厚み方向」は、偏光性光学機能フィルム積層体1Aを構成する層を貫通する方向であれば足り、例えば、それらの層に対して必ずしも直交する方向である必要はない。レーザーによるこの切断加工は、偏光性光学機能フィルム積層体1Aを単板状態に個片化した状態で行っても良いが、効率的に生産する観点からは、後に詳述するように、長尺帯状フィルムの状態で行うのが好ましい。従って、シート材付き積層体2は、ロール状に巻き回された長尺帯状フィルムの形態と形成しておくのが好ましい。
図3に、レーザー照射による切断処理中のシート材付き積層体2の状態を、積層体断面の模式図で示す。レーザー照射によって、シート材付き積層体2の偏光性光学機能フィルム積層体1Aには、剥離ライナー16を含むその厚み全体に亘って切断溝2aが形成される。よって、レーザーの照射位置を偏光性光学機能フィルム積層体1Aの面内において所定形状に沿って移動させることにより、偏光性光学機能フィルム積層体1Aを所望形状に切断することができる。切断は、シート材付き積層体2を構成する偏光性光学機能フィルム積層体1Aを厚み方向に完全に切断し、更にシート材の一部を残す深さまで切断する。後述する被覆層(特に、被覆層18b)を十分に形成するため、また、シート材をキャリアフィルムとして再使用できるようにするため、更にまた、後工程でのハンドリング性を考慮して、位置ずれを防止するためである。位置ずれ防止等のため、このレーザー切断加工は、図3に示すように、シート材付き積層体2を、吸着型固定ステージ19上に配置し、吸引力により保持した状態で行うことが好ましい。
偏光性光学機能フィルム積層体1Aの形状加工において、シート材付き積層体2を用いることにより、レーザー切断加工と同時に、偏光フィルム12の切断端面、取り分け、偏光子10の切断端面に、被覆層18a、18bを形成することができる。これらの被覆層18a、18bを形成することによって、以下に説明する「偏光解消幅」が減少する、言い換えれば、高温高湿環境における信頼性向上を図ることが可能となる。
(偏光解消幅)
偏光フィルム12の主要構成要素である偏光子10は、高温高湿環境のもとで長時間放置されると、熱負荷のかかった偏光フィルムの切断端面から水分が出入りし、このため、偏光子10に含まれるポリヨウ素イオン錯体が変質して流動性を帯び偏光子10から抜けていく脱色現象を生じる。その結果、偏光子10の端部において、偏光機能が消失するという、品質に関連する課題が生じる。この偏光機能が消失することを偏光解消と言い、切断端面から偏光解消した領域の幅を偏光解消幅と呼ぶ。図4A、図4Bに、偏光子の光吸収軸に対し直角方向の切断端面をクロスニコルの透過照明のもとで平面視した偏光解消幅を示す光学顕微鏡画像を示す。図4Aは、色抜けによる偏光解消を生じていない偏光フィルムの例を示し、一方、図4Bは、高温高湿環境で信頼性試験を実施したことによって偏光解消を生じた偏光フィルムの例を示す。図4Bにおいて、偏光フィルム12の切断端縁は、符号12aで示されており、該切断端縁12aから幅12bの領域において、色抜けを生じている。この領域の幅12bが偏光解消幅である。
(被覆層18a)
偏光フィルム12を構成する保護フィルム11a、11b、その他、偏光子10と保護フィルム11a、11bとを接着する接着剤(図示せず)は、一般的に、閾値以上の赤外線レーザーエネルギーを投入することで軟化若しくは溶融する性質を示す樹脂材料から構成されている。このため、少なくとも切断溝2aに隣接する保護フィルム11a、11b等は、レーザー切断加工時にレーザーの熱エネルギーによって溶融して、溶融物を形成し得る。便宜上、図3には、保護フィルム11aとこれに付随する接着剤によって形成された溶融物のみを示している。この溶融物には、保護フィルム11a、11bの成分が多く含まれると考えられ、切断加工によって露出する偏光子10のレーザー切断端面に沿って流れて、切断端面の一部又は全部を被覆する被覆層18aを形成する。従って、本実施形態によれば、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの形状加工において、レーザー切断加工と同時に、偏光フィルム12の切断端面、取り分け、偏光子10の切断端面に、被覆層18aを形成することができ、高温高湿環境における信頼性向上を図ることが可能となる。
レーザーの熱エネルギーによって影響を受け形成される領域は、該保護フィルム11の面に沿って、切断端面から200μm以下の範囲であることが好ましく、100μm以下が更に好ましく、50μm以下が特に好ましい。200μmを超えると、偏光フィルム12を表示パネルに貼り合わせた状態で、該溶融領域が表示パネルの額縁部からはみ出してしまい、外観品位を損ねる恐れがあるからである。
(被覆層18b)
レーザーが偏光性光学機能フィルム積層体1Aを厚み方向に貫通してシート材17に到達した場合、レーザーの熱エネルギーによって、偏光性光学機能フィルム積層体1、1Aには含まれないが、その厚み方向の一部に存在する少なくともシート材17の成分(第1樹脂成分)が、また、偏光性光学機能フィルム積層体1には含まれないが、その厚み方向の一部に存在し得る粘着剤層15及び剥離ライナー16の成分(第2樹脂成分)が、更に、偏光性光学機能フィルム積層体1に含まれ得るその他の成分が、飛沫となって飛散させられ、この飛沫の少なくとも一部は偏光子10に形成されるレーザー切断端面に堆積する。この結果、少なくともシート材17の成分(第1樹脂成分)を、場合によっては、粘着剤層15及び剥離ライナー16の成分(第2樹脂成分)を、更に、その他の成分を含む被覆層18bが形成され、形成される被覆層18bの水分遮断性(疎水性又は透湿度)によっては、所望の効果が期待できる。また、形成される被覆層の成分又は性状とは無関係に、更に詳細には、形成される被覆層の水分遮断性(疎水性又は透湿度)によって、同じ厚みであっても、高温高湿環境下における偏光フィルム12の切断加工端部の信頼性に及ぼす影響の度合は変わってくるにもかかわらず、切断端面にこのような被覆層18bが形成されることにより、少なくとも、物理的に水分の浸入を遮断する所定の効果が期待できる。従って、本実施形態によれば、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの形状加工において、レーザー切断加工と同時に、偏光フィルム12の切断端面、取り分け、偏光子10の切断端面に、被覆層18aに加えて、被覆層18bを形成することができ、高温高湿環境における信頼性向上を図ることが可能となる。
被覆層18bの形成を容易にするため、シート材17上に生じさせる切断溝2aの幅は、5μm〜300μmの範囲で適宜定めるのが好ましく、また、切断溝2aの深さは、5μm〜200μmの範囲で適宜定めるのが好ましい。
また、偏光フィルム12の切断端面に形成される被覆層18bの厚み、更に詳細には、偏光フィルム12の切断端面の面に対して直交する方向における長さは、10μm以下であることが好ましい。被覆層18bの厚みが10μmを超えると、製品の寸法精度に影響を与える可能性が生じ、目的の表示パネルに搭載する際に不具合が生じることがあり、また、表示パネルへの搭載時に剥離する表面保護フィルムの剥離性への影響が懸念されるため、好ましくないからである。
また、シート材17の粘着剤層17bの成分(第1樹脂成分)が、偏光フィルム12の切断端面に形成される被覆層18bの成分の一部または全部を構成することになることを考慮すると、粘着剤層17bの厚みは、1μm〜100μmの範囲が好ましく、5μm〜50μmの範囲がより好ましい。粘着剤層17bの厚みが1μm未満の場合には、十分な粘着力が得られず、搬送中に剥がれてしまう恐れが生じてしまい、また、粘着剤層17bの厚みが100μmより大きいと、シート材付積層体2の総厚が厚くなりすぎてハンドリング性が低下するからである。更に、高温高湿環境において偏光子への外部からの水分の浸入を効果的に遮断する目的で、粘着剤層17bには、疎水性を示すシリコーン系又はゴム系を主成分とするものを用いることが好ましく、特に、メチル基又はエチル基などのアルキル基、或いはフェニル基などの疎水基を有するものであることが好ましい。更にまた、粘着剤層17bは、透湿度が低い材料から形成されることが望ましく、粘着剤層17bの材料の透湿度の好ましい値は、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気のもとで、200g/m2・24h以下であり、150g/m2・24h以下がより好ましい。しかしながら、上に説明したように、切断端面に形成される被覆層18bによって、物理的に水分の浸入を遮断する一定の効果が期待できるため、粘着剤層17bの成分等は、上述したものに限定されるものではない。
更に、レーザーが、シート材17の粘着剤層17bを貫通して、樹脂フィルム基材17aにまで達する場合は、粘着剤層17bの成分とともに樹脂フィルム基材17aの成分(第1樹脂成分)も、偏光フィルム12の切断端面に形成される被覆層18bの成分の一部を構成することになるため、この観点から、また、取り扱い中の破損を防止する等観点から、樹脂フィルム基材17aの厚みは、10μm〜150μmの範囲が好ましい。
(被覆層18aと被覆層18bの関係)
上の記載から明らかなように、被覆層18aには、保護フィルム11a、11bの溶融物が多く含まれると考えられる。
一方、被覆層18bには、偏光性光学機能フィルム積層体1、1A以外の成分である、少なくともシート材17の成分(第1樹脂成分)が、また、偏光性光学機能フィルム積層体1以外の成分である、粘着剤層15及び剥離ライナー16の成分(第2樹脂成分)が多く含まれると考えられる。
このように、被覆層18aと被覆層18bは、理論的には、図3の模式図に示すように比較的明確に区別することができるものの、実際上、それらを明確に区別することは困難である。なぜなら、例えば、用いるレーザーに対する粘着剤の反応性及び加熱時の流動性といった熱的特性等によって、被覆層の状態は容易に変化してしまうからである。後述する実施例等の記載からも明らかなように、実際のところ、被覆層18aと被覆層18bは双方ともに、それぞれ、少なくとも保護フィルム11a、11bの成分及びシート材17から溶融飛散した成分を、更に、剥離ライナー16、粘着剤層15等から溶融飛散した成分を含むものとなっている。言い換えれば、被覆層18aの成分と被覆層18bの成分は混合又は混和した状態にあり、従って、被覆層18aの成分と被覆層18bを明確に区別することはできないし、そのようにする必要もない。なぜなら、被覆層18aと被覆層18bは双方ともに、偏光性光学機能フィルム積層体等の形状加工において、レーザー切断加工と同時に、偏光フィルムの切断端面に形成されて、高温高湿環境における信頼性向上に寄与し得るからである。従って、図3は、説明を容易にするための単なる概念図を示すものである。尚、後の記載から明らかなように、実施例等では、被覆層18a、18bに含まれる成分を、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)、又は、エネルギー分散型X線分析によって分析している。
図5に、レーザー切断加工された本発明の一例としてのシート材付き積層体2の切断断面におけるSEM画像を示す。更に、図6Aに、本発明の一実施例によるシート材付き積層体2によって得られる効果を、図6Bに示した従来技術によるエンドミルによって得られる効果との比較において「偏光解消幅」によって示す。図6Aは、後述する実施例4によって達成される偏光解消幅の一例を示したもの、図6Bは、後述する比較例3によって達成される偏光解消幅の一例を示したものである。
図5に示した画像からは必ずしも明らかではないが、実施例等に示したTOF-SIMSによる分析結果等を考慮すると、被覆層(18a)には、剥離ライナー16及びシート材17から溶融飛散した成分が含まれると考えられる。よって、図6A及び図6Bの比較結果からも明らかなように、この被覆層(18a)は、高温高湿環境における偏光子10の切断端面の品質信頼性の向上に貢献するものである。
尚、粘着剤層15を設けた例を示したが、粘着剤層15は必ずしも必要なものではなく、また、粘着剤層15が設けられている場合であっても、用いるレーザーに対する粘着剤の反応性及び加熱時の流動性といった熱的特性によっては、被覆層(18a)に、この粘着剤層15からの溶融物の成分が含まれない場合もある。しかしながら、被覆層18aの成分と被覆層18bの成分は混合又は混和した状態にあり、従って、そのような場合であっても、偏光子10の切断端面の品質信頼性の向上を図ることができる。
図7に、レーザー切断加工された本発明の一実施例(後述する実施例1に相当)によるシート材付き積層体の偏光フィルムの近傍における断面SEM画像、更に詳細には、偏光子の分子配向(光吸収軸)に対し直角方向の切断端面の断面SEM画像を、図8に、図7と同一箇所のEDX(エネルギー分散型X線分析)画像を、図9に、図7に示される画像において偏光子の切断端部を拡大して示す断面SEM画像を、図10に、図9と同一箇所のEDX画像を、それぞれ示す。
(偏光子の膨れ)
ヨウ素を含むPVA系樹脂で構成された偏光子10が、レーザー切断されると、該偏光子10の光吸収軸方向に対して垂直方向の切断端面においては、偏光子10の厚みが、図7〜図10に示すように、切断端面近傍以外の厚みと比べて膨れ(10a)を生じ、厚みが1.1倍〜2.5倍に増加する。これは、レーザーエネルギーによってヨウ素を含むPVA系樹脂が熱応力を受けることで、PVA系樹脂の延伸方向である光吸収軸方向に収縮し、その結果、PVA系樹脂が光吸収軸方向に圧縮されて、厚み方向に膨張するためと考えられる。この現象に伴って、圧縮によってできた空間に、軟化若しくは溶融した保護フィルム11及び粘着剤が流れ込むことで、被覆層(18a)が形成され易くなる。偏光子10の光吸収軸方向に平行な切断端面においては、このような現象は見られない。
(レーザー)
レーザー光源としては、例えば、レーザー光の発振波長が赤外域の9〜11μmであるCO2レーザー光源を含む赤外線レーザーを用いることが高生産性の観点で好ましい。赤外線レーザーは、数10W級のパワーを容易に得ることができ、さらに偏光性光学機能フィルム積層体1Aを構成するフィルム及び粘着剤層を赤外線吸収に伴う分子振動によって効率的に発熱させることで、物質の相転移に伴うエッチングを起こすことが可能である。
ただし、赤外線レーザーに限らず、レーザー光の発振波長が5μmであるCO2レーザー光源を用いることも可能である。
また、レーザー光源として、パルスレーザー光源であれば、近赤外線(NIR)光源、可視光(Vis)光源、及び紫外線(UV)光源を用いることも可能である。NIR、Vis及びUV波長のパルスレーザー光源の例としては、レーザー光の発振波長が1064nm、532nm、355nm、349nm又は266nm(Nd:YAG、Nd:YLF、又はYVO4を媒質とする固体レーザー光源の高次高調波)であるもの、レーザー光の発振波長が351nm、248nm、222nm、193nm又は157nmであるエキシマレーザー光源、レーザー光の発振波長が157nmであるF2レーザー光源を挙げることができる。
レーザー光源の発振形態としては、偏光フィルムの熱ダメージを抑制する観点で、連続波(CW)よりもパルス波が好ましい。この場合のパルス幅は10フェムト秒(10-14秒)〜1ミリ秒(10ー3秒)の範囲で適宜設定することができる。2種類以上のパルス幅を設定して加工することも可能である。また、パルスの時間的な間隔である繰り返し周波数は、1〜1,000kHzが好ましく、10〜500kHzが更に好ましい。
レーザー光の偏光状態に関しては、特に制約はなく、直線偏光、円偏光、ランダム偏光が適用可能である。
レーザー光の空間強度分布に関しても、特に制約はないが、良好な集光性を示し、小スポット化が可能であり、生産性向上が期待できるガウシアンビームが好ましい。回折光学素子や非球面レンズ等を用いてフラットトップビームに整形されたものであってもよい。
所望の形状に切断加工するために、レーザー光を目的の形状に沿って、1回照射してもよいし、複数回照射することで所望の切断深さを達成してもよい。また、1回目と2回目以降の加工条件を上述の条件範囲で適宜調整することが可能である。
XY精密ステージなどのステージ駆動系、ガルバノスキャナ及びポリゴンスキャナなどの光スキャン系、若しくは、それらの組み合わせ(多軸同期制御)といった一般的な走査装置を使用することによって、ワークとなる偏光性光学機能フィルム積層体1Aとレーザー光の相対位置を所定の速度で変更しつつ、レーザー照射を機械的シャッター機構、又はAOM(音響光学素子)などを利用してオン・オフ制御することで、所望の形状に加工することが可能となる。
レーザー照射のスキャン速度は、偏光性光学機能フィルム積層体1Aを厚み方向に完全に切断し、さらにシート材17に十分な深さまで切断溝を形成することができる、所望のエッチング深さを達成するように適宜設定すればよい。
Fθレンズなどの対物レンズによってレーザー光を集光して、加工対象となる偏光性光学機能フィルム積層体1Aに照射することが、加工効率の向上及び熱ダメージ抑制の観点で好ましい。レーザー光は、500μm以下の切断幅で加工可能な集光スポット径とすることが好ましく、300μm以下の切断幅で加工可能な集光スポット径とすることがさらに好ましい。ピーク強度値と比べて1/e2の強度まで減衰した点をスポット径と定義した場合には、200μm以下の集光スポット径とすることが好ましく、100μm以下のスポット径がさらに好ましい。ガルバノスキャナを用いる場合には、ワークに対して垂直にレーザー光を照射するために、テレセントリックFθレンズを用いることが好ましい。
所望の集光スポット径及び切断幅を得るために、レーザー発振器の出射端から対物レンズの光路の途中にビーム径を調整するビームエキスパンドユニットを配置しても良い。
レーザーパワーは、加工対象となる偏光性光学機能フィルム積層体1Aの厚み及び性状に応じて適宜設定すればよく、例えばレーザー光源としてCO2レーザーを用いる場合には、レーザーパワーを5〜300Wの範囲に設定することが好ましく、20〜200Wの範囲に設定することがさらに好ましい。
2種類以上のレーザーを同時に照射することも可能であり、また2種類以上のレーザーを逐次的に照射することも可能である。
(加工装置)
偏光性機能光学フィルム積層体1Aに対するレーザー切断加工は、ロール状に巻き回された偏光性光学機能フィルム積層体1Aを連続的に繰り出しながら行ってもよいし、また、予め所定長さに切断することによって個片化された偏光性機能光学フィルム積層体1Aに対して行ってもよい。
ロール状に巻き回された長尺帯状フィルムを切断加工処理する場合には、いわゆるロール・トゥー・ロール方式によって連続的又は間欠的に偏光性光学機能フィルム積層体1Aを供給し、その間に、所望の形状に加工するために、レーザー光と偏光性光学機能フィルム積層体とを相対的に2次元走査させながら該積層体を切断することが好ましい。この場合には、例えば、レーザー光源及びレンズ又はミラーといった光学素子をXY2軸可動ステージ上に載置して固定し、XY2軸可動ステージを駆動することで、偏光フィルムに照射されるレーザー光のXY2次元平面上での位置を変更する。また、XY稼働2軸ステージを用いたレーザー光源の走査と、ガルバノミラー等を用いたレーザー光の走査との双方(いわゆる、協調制御)を採用することも可能である。レーザー処理中は、長尺帯状のフィルム積層体は、その搬送を停止してもよいし、連続的に搬送しながら、送り速度及び位置に応じて同期加工することも可能である。
なお、加工中にシート材付き積層体2を保持する吸着固定ステージは、あってもよいし、なくても良い。
加工中に発生する被覆層の形成に寄与しない飛散物の製品への付着を抑制する目的で、レーザー照射部近傍に集塵機構を設けることが好ましい。
本発明によれば、シート材の厚みを適宜設定することで、レーザー切断加工に際して受けるレーザーエネルギーにより該シート材から飛散させられて偏光フィルムの切断端面に付着するシート材起因材料の量を所望の値にすることが可能である。したがって、レーザー切断加工と同時に、高温高湿環境における信頼性向上に寄与する被覆層を、偏光フィルムの切断端面に形成して、偏光解消防止効果を得ることができる。
図11は、ロール・トゥー・ロール方式で連続的にレーザー切断加工処理を行う方法に使用できるレーザー切断装置30の一例を示す概略図である。この装置30では、図1に示す偏光性光学機能フィルム積層体1Aと同様な構成の、表面保護フィルム34と偏光フィルム32と剥離ライナー36とが積層された積層体31が、長尺帯状に形成された状態で使用される。長尺帯状の積層体31は、卷回されてロール31aに形成され、このロール31aが、図示しないロール支持部に回転自在に支持される。同様に、シート材17と同様な構成のシート材37が、長尺帯状に形成された状態で使用される。長尺帯状のシート材37は、卷回されてロール37aに形成され、このロール37aが、図示しないロール支持部に回転自在に支持される。
ロール31a及びロール37aから繰り出された積層体31及びシート材37は、互いに重ね合わされた状態で、一対の重ね合せローラ40のニップに送り込まれる。積層体31及びシート材37は、重ね合せローラ40により積層されて、シート材付き積層体41となり、次段の第二重ね合せローラ42のニップに送り込まれる。第二重ね合せローラ42には、シート材付き積層体41の表面保護フィルム34に重なる側に、汚染対策フィルム43が送り込まれる。汚染対策フィルム43は、ロールの形態で供給され、図示しないロール支持部に回転自在に支持される。第二重ね合せローラ42は、シート材付き積層体41の表面保護フィルム34の上に汚染対策フィルム43を貼り合わせ、該汚染対策フィルム43が貼り合わせられたシート材付き積層体41を、次段の案内ローラ44の下側に送り込むように作用する。
第二重ね合せローラ42と案内ローラ44との間に、X−Y2軸移動可能なレーザー照射装置45が配置される。レーザー照射装置45は、汚染対策フィルム43の上側からシート材付き積層体41にレーザー光を照射し、その間に、X−Y2軸移動して、汚染対策フィルム43及びシート材付き積層体41に、図11において下側の断面図に示すように切断溝46を形成する。この切断溝46により、所望パターンのレーザー切断加工が遂行される。図11の下側断面図に示すように、切断溝46は、汚染対策フィルム43とシート材付き積層体41を厚み方向に切断し、シート材37の厚さ方向に或る程度の深さまで達する。この切断溝46により、汚染対策フィルム43及びシート材付き積層体41には所定パターンの切断部47が形成される。
汚染対策フィルム43が貼り合わせられたシート材付き積層体41が、一対の汚染対策フィルム回収用ローラ48を通過する際、粘着テープにより構成される汚染対策フィルム回収用テープ49は、その粘着面を汚染対策フィルム43に押し付けられ、積層体41の上面から汚染対策フィルム43が回収される。その後、案内ローラ44を通過したシート材付き積層体41は、切断溝46で区画される製品部分をシート材37に残しつつその他の不要となる部分(不要材)が巻き取られ回収される。その後、製品部分が残ったシート材付き積層体41は、一対の案内ローラ50を経て、シート材剥離部51に送られる。シート材剥離部51には、楔状の剥離板51aが備えられており、この剥離板51aにおいて、レーザー切断加工後の用済シート材が製品部分となる積層体31から剥がされる。残った積層体31は、製品収集部52に送られて、製品として収集される。製品収集部52に到達した積層体31は、ここでロール状に巻回されて、製品ロールとされても良い。図11では、不要材と汚染対策フィルムを分けて回収した構成を示しているが、これに限定されることはなく、同時に回収する事も可能である。
(加工形状)
本発明の偏光性光学機能フィルム積層体に含まれている偏光フィルム12は、自動車のメーター表示部、スマートウォッチ、ゴーグル、スマートフォン、ノートパソコン、及びノートパッドを含む液晶表示装置、さらには有機EL表示装置等の光学表示デバイスまたはプラズマディスプレイパネル(PDP)等の光学的表示パネルといった多くの装置に利用されるため、図12A乃至図14に例示されているように、矩形形状のみならず、曲線状縁部や穴をもった形状のように、様々な形状に切断加工される。ここで、図12A、図12Bは、大判の偏光フィルムからスマートフォン形状に切り出された製品を製造する場合の切断加工レイアウト例を示す図であって、図12Aは全体を示す平面図、図12Bはその一部を拡大して示す平面図、図13A、図13Bは、大判の偏光フィルムから自動車メーターパネル形状に切り出された製品を製造する場合の切断加工レイアウト例を示す図であって、図13Aは全体を示す平面図、図13Bはその一部を拡大して示す平面図、図14は、スマートフォン形状に切り出された偏光フィルムの例を、複数枚並べて示す写真である。したがって、本発明は、それらすべての形状の切断加工に適用可能である。切断にレーザーを用いることで、曲率半径(R)の小さい曲線部を有する加工も可能となり、曲率半径Rが2mm以下の切断にも対応可能である。
たとえば、自動車のメーターパネルに用いられる偏光フィルムは、メーター針を固定する為に貫通孔を形成する構造が採用されることがあり、例えば0.5mm〜100mmの直径を有する貫通孔の形成が求められることもあるが、このような要求に対して、レーザー切断技術を用いることで、対応が可能となる。
偏光フィルム12のレーザー切断加工は、上述した形状に限定されず、様々な形状に適用可能である。
さらに、このレーザー切断加工方法は、偏光フィルムを含む長尺帯状フィルム積層体をレーザーにより長手方向にスリット切断する工程にも応用可能であり、スリット切断された長尺帯状フィルム積層体の切断端面に本発明による被覆層を形成することができる。この被覆層により、長尺帯状フィルム積層体の保存中及び輸送中に、該積層体切断端面から水分が浸入することによる長尺帯状フィルム積層体の切断端面の劣化を抑制することが可能になる。
また、このレーザー切断加工方法は、偏光フィルムを含む長尺帯状フィルム積層体を、ロール・トゥー・ロール方式により、搬送しながら、所定の送り量で搬送したのちに停止した状態で、搬送方向に対し垂直の方向に長尺帯状フィルム積層体を切断する定尺切断工程への応用も可能である。
[実施例等]
以下、実施例等を参照しつつ本発明を具体的に説明する。しかしながら、以下に説明する実施例は、あくまで本発明の理解を助け、本発明が実施可能であることを示すために提示されるものであって、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
[表1]
Figure 2020091064

Figure 2020091064
〔実施例1〕
(偏光性光学機能フィルム積層体)
PVA系樹脂を主成分とする厚み30μmの高分子フィルムを、下記[1]〜[5]の5浴に順次、フィルム長手方向に延伸可能な張力を付与しながら浸漬し、延伸倍率6倍(株式会社クラレ社製の高分子フィルム)で延伸した。この延伸フィルムを乾燥させて、厚み12μmの偏光子10を得た。
<条件>
[1]膨潤浴:30℃の純水
[2]染色浴:ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液
[3]第1の架橋浴:ヨウ化カリウムとホウ酸とを含む、40℃の水溶液
[4]第2の架橋浴:ヨウ化カリウムとホウ酸とを含む、60℃の水溶液
[5]洗浄浴:ヨウ化カリウムを含む、25℃の水溶液
上記偏光子の一方の側にPVA系接着剤を乾燥後の厚みが100nmとなるように塗布し、長尺状で厚み25μmのTACフィルムを互いの長手方向を揃えるように貼り合わせて保護フィルム11aとした。
続いて、上記偏光子の他方の側にPVA系接着剤を乾燥後の厚みが100nmとなるように塗布し、長尺状で厚み25μmのTACフィルムを互いの長手方向を揃えるように貼り合わせて保護フィルム11bとした。
以上により、偏光フィルム12を作製した。
次に一方のTACフィルム11aの、偏光子とは反対側の主面には、乾燥後の厚みが7μmとなるようにハードコート層を形成して表面処理層13とし、さらにその上に、表面保護フィルム14を形成した。尚、表面保護フィルム14は、ポリエチレンテレフタレート基材(厚み38μm)及びアクリル系粘着剤(厚み23μm)からなる。
他方のTACフィルム11bの、偏光子とは反対側の主面には、厚さ12μmのアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層15を形成し、さらにその上に、ポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナー16を貼り合わせた。
アクリル系粘着剤層(厚み20μm)及びポリエチレンテレフタレート基材(厚み38μm)で構成された日東電工社製表面保護フィルムE−MASKを、アクリル系粘着剤汚染対策フィルム23(43)として該偏光性光学機能フィルム積層体1Aの上記表面保護フィルム14の主面に貼付した。
この手順により、汚染対策フィルム23/表面保護フィルム14/ハードコート13/TACフィルム11a/PVA系接着剤/偏光子10/PVA系接着剤/TACフィルム11b/感圧型アクリル系粘着剤層15/剥離ライナー16の構成を有する総厚約180μmの偏光性光学機能フィルム積層体1Aを得た。
(レーザー)
レーザー発振器は、CO2レーザー(コヒレント社製J−3、波長9.4μm、ガウシアンビーム、パルス発振)を用い、対物レンズによって理論スポット径(ピーク値の1/e2の強度でスポット径を規定)が約90μmとなるように集光して、X―Yステージ及びガルバノスキャナを併用の上、所望の加工形状をレーザーパワー65W、繰り返し周波数30kHz、スキャン速度500mm/sで、1回スキャンして80mm×50mmの寸法の矩形形状に切断加工した。
(シート材)
シリコーン系粘着剤層17b(厚み75μm)及びポリエチレンテレフタレート基材17a(三菱ケミカル社製、T100−75S、厚み75μm)で構成されたシート材17を、上述のシリコーン系粘着剤層17bを介して、上述の偏光性光学機能フィルム積層体1Aの剥離ライナー16の主面16aに貼付した。
(レーザー切断加工)
上記「レーザー」の項に記載したレーザー諸条件にて、シート材17及び汚染対策フィルム43が貼付された偏光性光学機能フィルム積層体1Aに対し、所望形状のレーザー切断加工を実施した。このレーザー切断加工により、偏光性光学機能フィルム積層体1Aは、シート材17のシリコーン系粘着剤層17bとともに厚み全体にわたりフルカットされ、一方、ポリエチレンテレフタレート基材17aは完全には切断されることなく、ハーフカット状態に切断加工がなされたことが確認された。
このレーザー切断加工後に汚染対策フィルム43を剥離して、表面保護フィルム14の切断端面に形成されたバリ高さを計測したところ、3μmであり、十分に低い値であることが確認された。
また、偏光子10の延伸方向に対して垂直方向、すなわちPVA系分子の配向方向に対して垂直方向の切断端面における偏光子の厚みは、切断端面近傍以外の偏光子の厚みと比べて、1.8倍であった。
(評価)
矩形形状にレーザー切断加工した偏光フィルムの試料から、シート材17及び汚染対策フィルム43を剥離し、切断面をエポキシ樹脂で包埋し、切断断面の状態をFE−SEM(走査型電子顕微鏡、日本電子株式会社製、JSM−7001F)で観察して、SEM画像を取得した(図7及び図9)。
また、偏光子10の切断端面の状態、言い換えれば、被覆層の状態を、同FE−SEMを用いて分子配向方向から観察してSEM画像を取得した(図15A)。この図15Aは、実施例1におけるSEM画像であって、図9の矢印「C」の方向から見たSEM画像に相当する。比較を容易にするため、図15Bに、実施例2における同様のSEM画像を、更に、図15C及び図15Dにそれぞれ、比較例1及び2における同様のSEM画像を示す。
これらの画像から分かるように、偏光子10の切断端面は、被覆層18a、18bによって確実に覆われている。
被覆層18a、18bに含まれる物質に関する情報を得るために、図9と同一の箇所に対し、EDX(エネルギー分散型X線分析、オックスフォードインスツルメンツ社製、Energy250)による元素分析を実施した(図8及び図10)。図8及び図10は、被覆層18a、18bにケイ素が含まれている場合に、そのケイ素が明るく輝いて画像表示されるようにソフトウェア処理されたEDX画像である。特に図10において明らかなように、偏光フィルムの切断端面に形成される被覆層18bが、シート材17を構成するシリコーン系粘着剤層17b由来のケイ素(Si元素)が含まれていることが分かる。さらに、被覆層18bその厚みは約2〜5μmであった。
被覆層18a、18bに含まれる物質に関する情報を更に得るため、図9と同一の箇所に対応する箇所に対し、アルバック・ファイ株式会社の飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いて、TOF-SIMSによる分析を行った。更に言えば、分析により得られた、PET由来のC854 -(m/z 165)(m/zは、質量対電荷比を表す)のイオン強度に着目して、データをマッピングした。図16に、分析結果を示す画像を示す。この画像から、被覆層18bに限らず、被覆層18aにも、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていることが確認された。
さらに、剥離後のシート材のレーザー照射部を確認したところ、幅40μm、深さ100μm程度の、レーザーエネルギーによる切断で形成された切断溝17−1aが確認された。これは、少なくとも、該切断溝17−1aから飛散したシート材17の成分が偏光フィルム12の切断端面に付着し、被覆層18a、18bを形成していることを示すものである(図17)。
図18は、実施例1における被覆層18a、18bに含まれる材料の成分分析の結果を示すグラフである。更に詳細には、図10の矢印「B」で指示した箇所のEDX元素分析結果を示したグラフであり、横軸はX線エネルギー(keV)、縦軸はX線カウント数をそれぞれ示す。この図に示すように、本実施例においては、被覆層18a、18bからはケイ素(Si)のほかに、炭素(C)及び酸素(O)が検出された。このことから分かるように、偏光子10の切断端面に形成される被覆層18a,18bは、少なくとも偏光フィルム12、粘着剤層15、剥離ライナー16、シート材に由来する有機成分と、シート材の粘着剤層17bに由来するケイ素(Si)とが混和して形成された層であることがわかる。
(高温高湿環境における信頼性試験)
作製した矩形形状の偏光性光学機能フィルム積層体1Aの試料から表面保護フィルム14及び剥離ライナー16を剥離して、ガラス板に粘着剤層15の面が接触するように貼り合わせた。この状態で、試料を、温度65℃、湿度90%の環境に設定したオーブン内に入れて信頼性試験を行った。信頼性試験の条件は、上記環境のオーブン内に試料を240時間(10日間)保持し、高温高湿環境における加工端面における偏光フィルム12の色抜けによる偏光解消を観測するものであった。
(加工端部信頼性の評価結果確認)
前述の信頼性試験を経たサンプルを、光学顕微鏡(クロスニコル、透過照明)を用いて観測し、図4A、図4Bに関連して前述した定義に基づく、レーザー切断加工された切断端部からの偏光解消幅を測定した。
測定の結果、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面(配向並行面)の偏光解消幅は135μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面(配向分断面)の偏光解消幅は183μmであった。後述の比較例と比べて、偏光解消幅を抑制できたことが分かる。
〔実施例2〕
シート材17において、粘着剤層17bとしてアクリル系粘着剤層(厚み23μm)を使用し、樹脂フィルム基材17aとしてポリエチレンテレフタレート基材(厚み38μm)を使用したこと、及び、レーザーパワーを55Wに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。
その結果、偏光子10の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は153μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は216μmであった。後述の比較例と比べて、偏光解消幅を抑制することができた。
〔実施例3〕
シート材17において、粘着剤層17bとしてゴム系粘着剤層(厚み10μm)を使用し、樹脂フィルム基材17aとしてポリエチレンテレフタレート基材(厚み38μm)を使用したこと、及び、レーザーパワーを55Wに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。
その結果、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は120μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は191μmであった。後述の比較例と比べて、偏光解消幅を抑制することができた。
〔実施例4〕
偏光子10の厚みを5μmとし、保護フィルム11bを取り除いて、シリコーン系粘着剤層の厚みを20μmとした基材を用いること、レーザーパワーを35Wに変更したこと以外は、実施例2と同じ条件で、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。尚、図5は、実施例4の構成から汚染対策フィルムを取り除いたSEM画像に相当する。
その結果、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は113μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は103μmであった。後述の比較例3と比べて、偏光解消幅を抑制することができた。
〔比較例1〕
シート材と汚染対策フィルム23を用いていない、実施例1記載の偏光性光学機能フィルム積層体1Aを、エンドミルを用いて、所定形状、即ち、80mm×50mmの寸法の矩形形状に切断加工した以外、実施例1と同じ条件で評価を行った。
その結果、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は182μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は251μmであった。実施例1及び実施例2と比べて、偏光解消幅は大きくなった。
〔比較例2〕
シート材を用いないこと、及びレーザーパワーを55Wに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。この場合、偏光性光学機能フィルム積層体1Aはフルカットされ、一方、剥離ライナー16は完全には切断されることなく、ハーフカット状態に切断加工がなされたことが確認された。
その結果、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は170μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は231μmであった。赤外線レーザーを用いたことで保護フィルムの溶融物によって偏光子の端部を被覆する効果を生じ、比較例1に比べて、わずかな改善は見られたが、前述の実施例1及び実施例2と比べると、偏光解消を抑制する効果は薄れた。
〔比較例3〕
シート材と汚染対策フィルム23を用いていない、実施例4記載の偏光性光学機能フィルム積層体1Aを、比較例1と同じ条件でエンドミル加工し、得られた形状加工サンプルの評価を行った。
その結果、偏光子10の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は129μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は177μmであった。実施例4と比べて、偏光解消幅は大きくなった。
〔実施例5〕
汚染対策フィルム23を用いないこと、及び、レーザーパワーを43Wに変更し、繰り返し周波数を15kHzとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。
その結果、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は122μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は195μmであった。後述の比較例と比べて、偏光解消幅を抑制することができた。
〔実施例6〕
汚染対策フィルム23を用いないこと、及び、レーザーパワーを39Wに変更し、繰り返し周波数を15kHzとしたこと以外は、実施例2と同じ条件で、TOF-SIMSによる分析を行い、また、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。
図19は、TOF-SIMSによる分析結果を示す画像である。この図から、被覆層18bに限らず、被覆層18aにも、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていることが確認された。
また、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は132μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は214μmであった。後述の比較例と比べて、偏光解消幅を抑制することができた。
〔実施例7〕
汚染対策フィルム23を用いないこと、及び、レーザーパワーを20Wに変更し、繰り返し周波数を15kHzとし、スキャン回数を2回としたこと以外は、実施例2と同じ条件で、TOF-SIMSによる分析を行い、また、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。
図20は、TOF-SIMSによる分析結果を示す画像である。この図から、被覆層18bに限らず、被覆層18aにも、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていることが確認された。
また、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は133μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は233μmであった。後述の比較例と比べて、偏光解消幅を抑制することができた。
また、レーザーパワーを弱くしてスキャンの回数を増やすことにより、レーザーパワーが強く、スキャンの回数が少ない場合と、遜色無い結果が得られることが明らかとなった。
〔比較例4〕
シート材を用いないこと、及び、レーザーパワーを20Wに変更したこと以外は、実施例5と同じ条件で、TOF-SIMSによる分析を行い、また、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。この場合、偏光性光学機能フィルム積層体1Aの剥離ライナー16は完全には切断されることなく、ハーフカット状態に切断加工がなされたことが確認された。
図21は、TOF-SIMSによる分析結果を示す画像である。この図から、被覆層18a、18bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていないことが確認された。
また、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は158μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は235μmであった。実施例5と比べて、偏光解消幅は大きくなった。
〔比較例5〕
シート材を用いないこと、及び、レーザーパワーを27Wに変更したこと以外は、実施例6と同じ条件で、TOF-SIMSによる分析を行い、また、レーザー切断加工及び偏光子10の色抜けに起因する偏光解消の評価を実施した。
このレーザー切断加工では、偏光性光学機能フィルム積層体1Aは完全に切断され、フルカット状態に切断加工がなされたことが確認された。ここでは、シート材を設けていないことから、レーザーは、照射方向に完全に抜けた状態となった。
図22は、TOF-SIMSによる分析結果を示す画像である。この図から、被覆層18a、18bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていないことが確認された。
また、偏光子の光吸収軸と平行な切断端面の偏光解消幅は163μmであり、光吸収軸と垂直な切断端面の偏光解消幅は268μmであった。実施例6と比べて、偏光解消幅は大きくなった。
〔参考例1〕
汚染対策フィルム23及び表面保護フィルム14を用いないこと以外は、実施例1と同じ条件で、TOF-SIMSによる分析を行った。
図23は、TOF-SIMSによる分析結果を示す画像である。この図から、被覆層18bに限らず、被覆層18aにも、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていることが確認された。
この結果、汚染対策フィルム23等が存在しない場合にも、被覆層18a、18bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されることが分かった。
〔参考例2〕
剥離ライナー16とシート材17を用いないこと以外は、実施例1と同じ条件で、TOF-SIMSによる分析を行った。レーザー切断加工によって、偏光性光学機能フィルム積層体1及び粘着剤層15はフルカットした。
図24は、TOF-SIMSによる分析結果を示す画像である。この図から、被覆層18bに限らず、被覆層18aにも、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されていないことが確認された。
この結果、剥離ライナーとシート材を用いない場合には、汚染対策フィルム23等が存在しても、被覆層18a、18bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)の膜が形成されないことが分かった。
〔考察〕
被覆層18a、18bには、少なくとも、シート材17の成分、即ち、粘着剤層17bの成分、及び/又は、樹脂フィルム基材17aのPET成分が含まれる。従って、これらシート材の成分によって、特に粘着剤層17bについてはその成分を適当に選択することによって、切断端面を通じて外部から偏光子10へ水分が浸入してしまうことを効果的に防止して、色抜けの防止、言い換えれば、偏光解消幅の減少が期待できる。
また、偏光性光学機能フィルム積層体1が、粘着剤層15及び剥離ライナー16を含む偏光性光学機能フィルム積層体1Aを構成するものである場合には、粘着剤層15の成分によって、更には、剥離ライナー16由来のPET成分によって、被覆層18a、18bをより厚くして、水分の侵入を更に効果的に防止することができる。

Claims (13)

  1. 偏光子と該偏光子の少なくとも片側に積層された保護フィルムとを含む偏光フィルムを少なくとも有し、切断端面により形成される所定形状を有する偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記切断端面のうち少なくとも前記偏光子の切断端面には、偏光性光学機能フィルム積層体には含まれない樹脂材料の成分を第1樹脂成分として含む被覆層が形成されていることを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  2. 請求項1に記載した偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記偏光性光学機能フィルム積層体の一方の面に粘着剤層を介して剥離ライナーが剥離可能に貼り合わされており、前記被覆層は、前記第1樹脂成分の他に、前記粘着剤層及び/又は前記剥離ライナーの成分を第2樹脂成分として含むことを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  3. 請求項1又は2に記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記被覆層が、温度が40℃、湿度が90%RHの雰囲気のもとにおける透湿度が200g/m2・24h以下である材料を含むことを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記被覆層が、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、オレフィン系、またはポリエステル系の群から成るいずれかの高分子材料を含むことを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記被覆層が、前記保護フィルムの成分、及び/又は、前記偏光子と前記保護フィルムを接着する接着剤の成分を含むことを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記保護フィルムが、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂を含むことを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記偏光フィルムの一方の面に積層された表面保護フィルムの切断端面が、0以上20μm以下のバリを有することを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記偏光フィルムの一方の面に、ハードコート処理、反射防止処理及びアンチグレアを目的とした表面処理層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記切断端面の少なくとも一部は、前記偏光子の光吸収軸方向と交差する方向に延びており、前記切断端面における前記偏光子の厚みが、前記切断端面近傍以外の偏光子の厚みと比べて1.1倍以上2.5倍以下であることを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体が自動車のメーター表示部、スマートウォッチ、ゴーグル、スマートフォン、ノートパッド及びノートパソコンを含む液晶表示装置、有機EL表示装置またはプラズマディスプレイパネル(PDP)に搭載されていることを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  11. 請求項1乃至10のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体であって、前記被覆層は厚みが10μm以下であることを特徴とする偏光性光学機能フィルム積層体。
  12. 請求項1乃至11のいずれかに記載の偏光性光学機能フィルム積層体に用いる前記偏光フィルム。
  13. 請求項12に記載の偏光フィルムであって、前記偏光フィルムは長尺状に巻回されていることを特徴とする偏光フィルム。
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