JP4840370B2 - 半導体装置とその半導体装置を備えている給電装置の駆動方法 - Google Patents
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Description
モータ等の電気的負荷に給電する給電装置は、複数個のIGBTと複数個のFWDから構成される。従来は、複数個のIGBTと複数個のダイオードを用意して配線することによって給電装置を構成していた。逆導通型の半導体装置を用いると、IGBTとFWDが同一半導体基板に形成されているために、従来と比較して給電装置を小型化することができる。
特許文献1に、逆導通型の半導体装置を用いると、従来と比較してダイオードが導通状態から非導通状態に移行する際のリカバリ損失が増大することが指摘されている。この問題を解決するために、特許文献1に開示されている半導体装置では、IGBT素子領域ではボディ層として機能するとともにダイオード素子領域ではアノード層として機能するp型層を、例えば、半導体基板の表面に断続的に形成している。この構造によると、ダイオード素子領域が導通状態の際にp型層から流出するホールの量を抑制することができるので、ダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化することができる。
本発明は、上記の問題を解決するために創案された。すなわち、本発明は、逆導通型の半導体装置のダイオード素子領域のリカバリ損失を増大させないでダイオード素子領域の定常損失を低減化する技術を提供する。
IGBT素子領域では、p型のコレクタ層とn型のドリフト層とp型のボディ層が順に積層されている。また、半導体基板の表面からボディ層を貫通してドリフト層内に突出して伸びている第1トレンチゲート電極が形成されている。また、第1トレンチゲート電極に接しているとともに半導体基板の表面に臨む範囲にn型のエミッタ領域が形成されている。そのエミッタ領域はボディ層によってドリフト層から分離されている。
ダイオード素子領域では、n型のカソード層とドリフト層とp型のアノード層が順に積層されている。また、半導体基板の表面からアノード層を貫通してドリフト層内に突出して伸びている第2トレンチゲート電極が形成されている。また、半導体基板の表面に臨む範囲にp型のアノード領域が形成されている。そのアノード領域は、アノード層によってドリフト層から分離されている。
本発明の半導体装置では、第2トレンチゲート電極がアノード層から突出している長さが、第1トレンチゲート電極がボディ層から突出している長さよりも長い。第2トレンチゲート電極は、第1トレンチゲート電極よりも深くまで伸びている。
なお、本明細書では、トレンチの内面に形成されている絶縁膜と、絶縁膜に覆われた状態でトレンチ内に収容されているゲート電極を合わせてトレンチゲート電極という。
第1トレンチゲート電極と第2トレンチゲート電極の双方が浮遊状態ではない場合には、共通のゲート配線に接続されていてもよいし、各々が独立のゲート配線とゲート制御回路に接続されていてもよい。
アノード領域に印加されている電圧が、カソード層に印加されている電圧よりも高くなると、ダイオード素子領域では、p型アノード領域からp型アノード層を介してn型ドリフト層にホールが注入される。ダイオード素子領域が導通状態となる。
アノード層をボディ層よりも浅く形成すると、ダイオード素子領域が導通状態の際のホールの注入量を抑制することができる。ダイオード素子領域が導通状態から非導通状態に移行する際のリカバリ損失を低減化することができる。ダイオード素子領域が導通状態の際には、第2絶縁トレンチゲート電極に負電圧を印加する制御を行うことにより、リカバリ損失を低減化しながら定常損失を低減化することができる。
同一半導体基板に深さの異なるトレンチが形成されていると(第2トレンチゲート電極が第1トレンチゲート電極よりも深くまで伸びていると)、深い方のトレンチ(第2トレンチゲート電極)の底面と側面が交わっているエッジに電界が集中する。これによって半導体装置の耐圧が低下することがある。上記したp型の拡散領域を備えていると、電界が集中し易いエッジがp型の拡散領域で覆われるので、半導体装置の耐圧が低下しない。
本方法では、半導体装置のIGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、そのIGBT素子領域を備えている半導体装置の第1トレンチゲート電極に正電圧を印加する。そのIGBT素子領域をオフ状態に切換えることによって他の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流が流れる際には、その還流電流が流れる半導体装置の第2トレンチゲート電極に負電圧を印加する。
この駆動方法は、リカバリ損失を低化させる目的でダイオード素子領域が導通状態の際に注入するホールの量を低減化する構成を採用した場合に特に有用となる。
第2トレンチゲート電極に負電圧を印加した状態では、ドリフト層に対するホールの注入量が増加している。このまま、先にオフ状態にしたIGBT素子領域を再びオン状態に切換え、還流電流が流れているダイオード素子領域を非導通状態に切換えると、ドリフト層に蓄積されていたホールによってダイオード素子領域にリカバリ電流が流れる。そこで、IGBT素子領域をオフ状態から再びオン状態に切換えるに先立って(還流電流が流れているダイオード素子領域が非導通状態に切換えられるのに先立って)、還流電流が流れている半導体装置の第2トレンチゲート電極に、負電圧を印加することを中断する。これにより、ドリフト層に蓄積されるホールの量が減少し、ダイオード素子領域が非導通状態に切換えられるときに流れるリカバリ電流を小さくすることができる。ダイオード素子領域のリカバリ損失を低減化することができる。
本方法では、少なくとも2個のIGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、オン状態に切換える各々のIGBT素子領域を備えている各々の半導体装置の各々の第1トレンチゲート電極に正電圧を印加する。そうしてオン状態に切換えたIGBT素子領域のうち、少なくとも1個のIGBT素子領域をオフ状態に切換えるとともに少なくとも他の1個のIGBT素子領域をオン状態に維持することにより、別の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流を流す。そして、先にオン状態からオフ状態に切換えたIGBT素子領域を再びオン状態に切換えた後に、還流電流が流れていた別の半導体装置の第2トレンチゲート電極に負電圧を印加する。
ダイオード素子領域が導通状態から非導通状態に移行してリカバリ電流が流れているときに、そのリカバリ電流が流れている半導体装置の第2トレンチゲート電極に負電圧を印加する。すると、ドリフト層に蓄積していたホールが、第2トレンチゲート電極に引き付けられ、ホールがアノード領域に戻る速度が遅くなる。ソフト・リカバリ特性を実現することができ、リカバリ電流が大きな電流に発達することを抑制することができる。サージ電圧の発生を抑制することができる。
(特徴1)本発明の駆動方法で駆動する給電装置Kは、4個の逆導通型の半導体装置A1,A2,B1,B2を備えているインバータ回路である。
(特徴2)IGBT素子領域J1のゲート電極12と、ダイオード素子領域J2のゲート電極13は、共通のゲート配線に接続されている。
本発明を具現化した半導体装置と、その半導体装置を備えている給電装置の駆動方法の第1実施例を、図1から図13を参照して説明する。本実施例の半導体装置は、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在している逆導通IGBTである。図1に示すように、本実施例の半導体装置B1の特徴は、ダイオード素子領域J2に形成されている複数個の第2トレンチゲート電極TG2がアノード層50から突出している長さX2が、IGBT素子領域J1に形成されている複数個の第1トレンチゲート電極TG1がボディ層30から突出している長さX1よりも長いことである。
図1は、半導体装置B1の要部断面図である。図2から図7は、半導体装置A1,A2,B1,B2を備えている給電装置Kが、モータMに給電している状態を説明する図である。なお、半導体装置A1,A2,B1,B2の各々は、同一の構成である。図8は、半導体装置A1,A2,B1,B2の各々のゲートGA1,GA2,GB1,GB2に印加するゲート電圧VGA1,VGA2,VGB1,VGB2のタイミングチャート図である。図9は、半導体装置B1のIGBT素子領域J1のオン状態を説明する図である。図10は、半導体装置B2のダイオード素子領域J2の導通状態を説明する図である。図11は、図10のダイオード素子領域J2の第2トレンチゲート電極TG2近傍を拡大した図である。図12は、半導体装置B2のダイオード素子領域J2が導通状態であり、半導体装置B1のIGBT素子領域J1を再びオン状態にする直前の状態を説明する図である。図13は、半導体装置B1のIGBT素子領域J1を再びオン状態にした後に、半導体装置B2のダイオード素子領域J2にリカバリ電流が流れている状態を説明する図である。
半導体装置B1は、n-型の半導体基板2を用いて形成されている。半導体基板2には、IGBT素子領域J1とダイオード素子領域J2が混在している。IGBT素子領域J1とダイオード素子領域J2は、分離領域J4によって分離されている。図1には、限られた範囲しか図示されていないが、実際には、IGBT素子領域J1と分離領域J4とダイオード素子領域J2と分離領域J4の組合せが左右方向に繰り返し形成されている。
IGBT素子領域J1では、p+型のコレクタ領域80とn-型のドリフト層60とp-型のボディ層30が順に積層されている。IGBT素子領域J1の上層部2Uでは、半導体基板2の表面2aからボディ層30を貫通してn-型のドリフト層60内に長さx1だけ突出して伸びている複数本の第1トレンチゲート電極TG1が形成されている。各々の第1トレンチゲート電極TG1は、その長手方向を図1の奥行き方向に揃えて伸びている。第1トレンチゲート電極TG1は、トレンチの内面に形成されている絶縁膜14を備えている。第1トレンチゲート電極TG1は、絶縁膜14で覆われた状態でトレンチに収容されているゲート電極12を備えている。
また、IGBT素子領域J1では、上層部2Uに、p+型のボディコンタクト領域22が形成されている。ボディコンタクト領域22は、表面2aに臨む範囲に形成されている。ボディコンタクト領域22は、隣接するエミッタ領域20の間に配置されている。
IGBT素子領域J1では、エミッタ領域20とボディコンタクト領域22が、ボディ層30によってn-型のドリフト層60から分離されている。
ダイオード素子領域J2の上層部2Uでは、半導体基板2の表面2aからアノード層50を貫通してn-型のドリフト層60内に長さx2(x2>x1)だけ突出して伸びている複数本の第2トレンチゲート電極TG2が形成されている。各々の第2トレンチゲート電極TG2は、その長手方向を図1に示す奥行き方向に揃えて伸びている。第2トレンチゲート電極TG2は、トレンチの内面に形成されている絶縁膜15を備えている。第2トレンチゲート電極TG2は、絶縁膜15で覆われた状態でトレンチに収容されているゲート電極13を備えている。
ゲート電極12,13と表面電極1の間には絶縁膜10が形成されており、両者は接続していない。ゲート電極12,13は、表面電極1が形成されていない領域(図1の奥行き方向のいずれかの断面)で、図示していないゲート配線と接続している。
半導体基板2の裏面2bには、裏面電極3が形成されている。裏面電極3は、IGBT素子領域J1の裏面とダイオード素子領域J2の裏面に連続して伸びている。裏面電極3は、半導体基板2の下層部2Lで裏面2bに臨んで形成されているコレクタ領域80とカソード領域70の双方と導通している。
これにより、逆導通IGBTとして機能する半導体装置B1が構成されている。
図2から図7に示す半導体装置B1のコレクタCB1は、半導体装置B1の裏面電極3(図1参照)と導通している。半導体装置B1のエミッタEB1は、半導体装置B1の表面電極1(図1参照)と導通している。半導体装置B1のゲートGB1は、半導体装置B1のゲート電極12,13(図1参照)と導通している。半導体装置A1のコレクタCA1とエミッタEA1とゲートGA1も半導体装置B1と同様に各々の電極と導通している。半導体装置A2のコレクタCA2とエミッタEA2とゲートGA2も半導体装置B1と同様に各々の電極と導通している。半導体装置B2のコレクタCB2とエミッタEB2とゲートGB2も半導体装置B1と同様に各々の電極と導通している。
給電装置Kは、逆導通IGBTの2個の半導体装置A1,A2が直列に接続されている直列回路Aと、逆導通IGBTの2個の半導体装置B1,B2が直列に接続されている直列回路Bを備えている。それらの直列回路A,Bは並列に接続されている。その並列回路が、電源Sの一対の端子c,d間に接続されている。直列回路Aの半導体装置A1,A2間の中間電位点xは、モータMの一方の給電点に接続されている。直列回路Bの半導体装置B1,B2間の中間電位点yは、モータMの他方の給電点に接続されている。
IGBTがオン・オフしている時のIGBT素子領域J1のオン状態・オフ状態については、後述する。また、ダイオードが導通・非導通の時のダイオード素子領域J2の状態(導通状態・非導通状態)についても、後述する。まずは、給電装置KのがモータMに給電する動作のみを説明する。
以下の説明では、半導体装置A1,A2,B1,B2のIGBT素子領域J1で構成されるIGBTを簡単にIGBTという。また、半導体装置A1,A2,B1,B2のダイオード素子領域J2で構成されるダイオードをダイオードという。
図3は、給電装置KがモータMに給電している1つの状態を示している。半導体装置B1,A2のIGBTをオンし、半導体装置A1,B2のIGBTをオフする。この場合、電源Sの正側から半導体装置B1のIGBTとモータMと半導体装置A2のIGBTを介して電源Sの負側に戻る閉ループが形成される。これにより、モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れる。モータMが給電される。
次に、図4に示すように、半導体装置B1のIGBTをオフし、半導体装置A2のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続は切断される。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置A2のIGBTと半導体装置B2のダイオードを介して流れる。モータMに図4に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図3に示す状態に戻す。モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
次に、図2に示すように、半導体装置A2のIGBTをオフし、半導体装置B1のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続は切断される。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置A1のダイオードと半導体装置B1のIGBTを介して流れる。モータMに図2に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図3に示す状態に戻す。モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
この状態を繰り返すことによって給電装置Kは、モータMに同じ方向の電流を流しながら、モータMに供給する電力の実効値を調整することができる。
図6は、給電装置KがモータMに給電している別の状態を示している。半導体装置A1,B2のIGBTをオンし、半導体装置B1,A2のIGBTをオフする。この場合、電源Sの正側から半導体装置A1のIGBTとモータMと半導体装置B2のIGBTを介して電源Sの負側に戻る閉ループが形成される。これにより、モータMに図6に示す矢印方向(図3とは逆方向)の電流が流れる。モータMが給電される。
次に、図7に示すように、半導体装置A1のIGBTをオフし、半導体装置B2のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続が切断する。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置B2のIGBTと半導体装置A2のダイオードを介して流れる。モータMに図7に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図6に示す状態に戻す。モータMに図6に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
次に、図5に示すように、半導体装置B2のIGBTをオフし、半導体装置A1のIGBTのオン状態を維持する。すると、モータMと電源Sとの接続が切断する。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によって、還流電流が流れる。還流電流は、モータMと半導体装置B1のダイオードと半導体装置A1のIGBTを介して流れる。モータMに図5に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
次に、再び、図6に示す状態に戻す。モータMに図6に示す矢印方向の電流が流れ、モータMが給電される。
この状態を繰り返すことによって給電装置Kは、モータMに同じ方向の電流を流しながら、モータMに供給する電力の実効値を調整することができる。
なお、以下では、給電装置KがモータMに、図2から図4に示す矢印方向の電流を流す場合について説明する。図5から図7に示す矢印方向の電流を流す場合も同様な方法を用いるので、この場合に関する説明は省略する。
図8の期間Q1(時刻t1まで)では、給電装置Kが図3に示す状態になる。
図8に示すように、半導体装置B1のゲートGB1に閾値以上のゲート電圧VGB1(+V(V))を印加している。また、半導体装置A2のゲートGA2に閾値以上のゲート電圧VGA2(+V(V))を印加している。また、半導体装置B2と半導体装置A1に印加するゲート電圧VGB2とゲート電圧VGA1は0Vとしている。
半導体装置B1のコレクタCB1が電源Sの正側に接続され、エミッタEB1が負側に接続され、ゲートGB1に+V(V)が印加される。これにより、半導体装置B1のIGBTがオンする(IGBT素子領域J1がオン状態となる)。また、半導体装置A2のコレクタCA2が正側に接続され、エミッタEA2が負側に接続され、ゲートGA2に+V(V)が印加される。これにより、半導体装置A2のIGBTがオンする(IGBT素子領域J1がオン状態となる)。モータMに図3に示す矢印方向の電流が流れる。
半導体装置B1の裏面電極3(コレクタCB1)に、図3に示す電源Sの正側が接続されて正電圧が印加されている。半導体装置B1の表面電極1(エミッタEB1)が負側に接続されている。また、ゲート電極12(ゲートGB1)に+V(V)が印加されている。
半導体装置B1のIGBT素子領域J1では、ゲート電極12に絶縁膜14を介して対向しているp-型のボディ層30がn型に反転してn型チャネル(図9では、バツ印で模式的に示している。)が形成される。これにより、エミッタ領域20から流出した電子(図9では、マイナス印で模式的に示している)が、n型チャネルを介してドリフト層60に注入される。この結果、コレクタ領域80からは、ドリフト層60に向けてホール(図9では、プラス印で模式的に示している。)が移動する。ドリフト層60には電子とホールが注入されて伝導度変調現象が起こり、半導体装置B1のIGBT素子領域J1が低いオン電圧でオン状態となる。ホールは、電子と再結合して消滅するか、ボディ層30とボディコンタクト領域22を経由して表面電極1へと排出される。
半導体装置B1のダイオード素子領域J2でも、ゲート電極13に絶縁膜15を介して対向しているp-型のアノード層50がn型に反転し、n型チャネルが形成される。しかしながら、ダイオード素子領域J2には、n型のエミッタ領域20がないので、電子がドリフト層60に注入されることはない。
期間Q2では、半導体装置B1のIGBT素子領域J1がオフ状態となり、半導体装置A2のIGBT素子領域J1のオン状態が維持される。この結果、モータMと電源Sとの接続は切断する。しかしながら、モータMのインダクタンス成分によってモータMが電圧源となる。この電圧によって、半導体装置B2の表面電極1に裏面電極3よりも高い電圧が印加される。これにより、半導体装置B2のダイオード素子領域J2が導通状態となる。モータMと半導体装置A2のIGBT素子領域J1と半導体装置B2のダイオード素子領域J2を介して還流電流が流れる。モータMに図4に示す矢印方向の電流が流れ続ける。
時刻t1から時刻t2までの期間に還流電流が流れている半導体装置B2の要部断面図を図10に示す。
図10に示すように、半導体装置B2の表面電極1(アノード)に正電圧が印加されている。半導体装置B2の裏面電極3(カソード)が負側となっている。
これにより、アノード領域40からホールが流出してダイオード素子領域J2が導通状態となる。
ゲート電極13に負電圧を印加すると、アノード層50のうちのゲート電極13に絶縁膜15を介して対向する範囲(図11に示す範囲H1)に、ホールが集中する。また、ゲート電極13に負電圧を印加すると、n-型のドリフト層60のうちの絶縁膜15を介してゲート電極13に対向する範囲(図11に、バツ印で模式的に示している。)にホールが誘起され、p型領域に反転する。アノード領域40から流出したホールが、ホールの集中範囲H1とトレンチ底部の周囲に形成されたp型反転領域を介して、n-型のドリフト層60に効率的に注入される。ホールの集中範囲H1とp型反転領域を介してホールが移動するために、ダイオード素子領域J2での順方向電圧降下が低く、定常損失を低減化することができる。この駆動方法は、半導体装置A1,A2,B1,B2のダイオード素子領域J2のリカバリ損失を低減するために、ダイオード素子領域J2が導通状態の際にドリフト層60に注入されるホールの量を少なく設定した場合に特に有用となる。
このときの半導体装置B2の要部断面図を図12に示す。
図12に示すように、図10の場合と同様に(期間Q2の時刻t1から時刻t2までと同様に)、半導体装置B2の表面電極1(アノード)に正電圧が印加されている。半導体装置B2の裏面電極3(カソード)が負側となっている。これにより、図10の場合と同様に、アノード領域40からホールが流出してダイオード素子領域J2が導通状態となっている。
この期間では、半導体装置B2のゲートGB2に負のゲート電圧VGB2(−V(V))を印加することを中断しているので、ホールの集中範囲H1は消失している。また、トレンチ底部の周囲に形成されていたp型反転層も消失している。このために、ドリフト層60にホールが注入される効率が低下する。半導体装置B2のゲートGB2に負のゲート電圧VGB2(−V(V))を印加した場合(図10の場合)と比較して、ドリフト層60に蓄積されるホールの量が減少する。半導体装置B1のIGBTを再びオンする前に(すなわち還流電流が流れていた半導体装置B2のダイオード素子領域J2が非導通状態となる前に)、予め、半導体装置B2のダイオード素子領域J2のドリフト層60に蓄積されているホールの量を低減化しておくことができる。このために、半導体装置B2のダイオード素子領域J2が非導通状態となる際に発生するリカバー損失を低下させることができる。
期間Q3のうち、時刻t3から時刻t4までの間は、期間Q2で還流電流が流れていた半導体装置B2のゲートGB2のゲート電圧VGB2を、0(V)としている。時刻t4以降は、ゲートGB2に再び負のゲート電圧VGB2(−V(V))を印加する。
なお、時刻t4は半導体装置B1のIGBTを再びオンした時刻t3よりも後であり、半導体装置B2のダイオード素子領域J2がリカバリ動作をしている時に設定する。
ダイオード素子領域J2では、導通状態から非導通状態となった時に、導通状態のときとは逆方向のリカバリ電流が流れる。リカバリ電流の発生は、導通状態の期間に、ドリフト層60に流入したホールがアノード層50やアノード領域40に戻ることに起因する。本実施例では、半導体装置B2にリカバリ電流が発生する時に、半導体装置B2のゲート電極13に負のゲート電圧VGB2を印加している。負電圧を印加すると、図13に示すように、ドリフト層60に残留していたホールが、ゲート電極13に引き寄せられ、ホールがアノード層50やアノード領域40に戻る速度を遅くすることができる。これにより、リカバリ電流の変化速度を抑制することができ、ソフト・リカバリ特性を実現することができる。リカバリ電流の変化速度に起因するサージ電圧を抑制することができる。また、リカバリ電流が大きな電流に発達することを防止することができる。
本実施例では、図4に示す半導体装置B2のダイオード素子領域J2に還流電流が流れる場合について説明したが、他の半導体装置のダイオード素子領域J2に還流電流が流れる場合(図2、図5、図7に示す各々の状態)も、半導体装置B2の場合と同様である。
いずれかの半導体装置のダイオード素子領域J2に還流電流が流れるときには、そのダイオード素子領域J2のホールの流入量を増加する。還流電流が流れるダイオード素子領域J2の第2絶縁トレンチゲート電極TG2に負電圧を印加する。これにより、ダイオード素子領域J2のn型ドリフト層60のうちの第2トレンチゲート電極TG2と接している部分の導電型が反転してp型の反転領域が形成される。反転領域にホールが集まる。給電装置Kを構成している半導体装置A1,A2,B1,B2は、第2トレンチゲート電極TG2がアノード層50から突出している長さが長い。これにより、上記反転領域が広く形成される。ダイオード素子領域J2に還流電流が流れる際に、広く形成された反転領域に多くのホールが集まる。ダイオード素子領域J2に還流電流が流れ易い。ダイオード素子領域J2が導通状態の際の順方向電圧降下を効果的に低減し、定常損失を低減化することができる。
また、そのダイオード素子領域J2にリカバリ電流が流れるときには、予めそのダイオード素子領域J2に蓄積されているホールの量を減少させておくことでリカバリ電流を抑制することができる。
また、そのダイオード素子領域J2にリカバリ電流が流れているときには、そのダイオード素子領域J2におけるホールの移動を抑制することでリカバリ電流が増大化することを抑制し、リカバリ電流の変化速度を遅くすることができる。
なお、本実施例では、モータMが単相の場合の給で装置Kについて説明したが、例えばモータMが3相の場合には、6個の逆導通型の半導体装置を用いて給電装置を構成することができる。本発明は、給電回路の相数に限定されるものではない。
また、図15に示すように、第2トレンチゲート電極TG2が第1トレンチゲート電極TG1よりも深くまで伸びていれば、IGBT素子領域J1とダイオード素子領域J2の上層部2Uの構成(隣接する第1トレンチゲート電極TG1間に形成されている半導体領域のレイアウトと、隣接する第2トレンチゲート電極TG2間に形成されている半導体領域のレイアウト)が同じであっても、本発明の効果を得られることができる。
また、図17に示すように、ダイオード素子領域J2のアノード層50がIGBT素子領域J1のボディ層30よりも浅ければ、IGBT素子領域J1とダイオード素子領域J2の上層部2Uの構成が同じであっても、本発明の効果を得られることができる。
逆導通型の半導体装置では、同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が存在するために、IGBT素子領域のコレクタ電圧VCEとコレクタ電流ICの関係がスナップバック特性を示すことがある。この現象は、逆導通型の半導体装置のコレクタショート構造に起因している。図23に示すように、逆導通型の半導体装置100は、IGBT素子領域J101のp+型コレクタ領域182とダイオード素子領域J102のn+型カソード領域172が共通の裏面電極3に接続される。このため、トレンチゲート電極に閾値以上のゲート電圧を印加している状態でコレクタ電圧VCE(表面電極1と裏面電極3間の電圧)を上昇させていくと、初期段階で、エミッタ領域120から流出した電子がチャネル(バツ印で模式的に示している。)とドリフト層162とn+型フィールドストップ領域174を介してコレクタ領域182を迂回して(電子迂回経路によって)カソード領域172に流れ去ってしまうことがある。これにより、コレクタ電圧VCEを上げても、p+型コレクタ領域182とn+型フィールドストップ領域174の間の電位差が、pn接合D101が導通する電位差に達し難い。コレクタ領域182からドリフト層162にホールが注入され難い。すなわち、コレクタ電圧VCEを上昇させていく過程の初期段階でIGBT素子領域J101は、同じ構成のIGBT素子単体と比較してオン状態になり難い。エミッタ領域120とコレクタ領域182の間にコレクタ電流ICが流れるタイミングに遅れが生じる。電子迂回経路に電流が流れることによってフィールドストップ領域174に電圧降下が発生する。コレクタ領域182とフィールドストップ領域174の電位差がpn接合D101が導通する電位差に達した時点で、ようやくpn接合D101が順バイアスされて導通する。コレクタ領域182からドリフト層162にホールが注入されてIGBT素子領域J101がオン状態となる。この時点のコレクタ電圧VCEをIGBT素子領域J101のスナップバック電圧という。
しかしながら、この技術では、裏面102b側からトレンチを形成して絶縁体を埋める等の工程を追加して抵抗値R101を増大する構成を形成するのに手間がかかる。
また、IGBT素子領域J101のコレクタ領域182の上にフィールドストップ領域174を形成しない構成とすると、ホールがコレクタ領域182からドリフト領域162に注入され易くなり、スナップバック特性を改善することができる。しかしながら、IGBT素子領域J101がターンオフする際のテール電流が増加してしまう。
他の特性を劣化させることなく、逆導通型半導体装置のIGBT素子領域のスナップバック特性を改善することは難しい。
本実施例では、逆導通型半導体装置のIGBT素子領域のスナップバック特性を、他の特性を劣化させないで改善する技術を提供する。
(特徴1)同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在している半導体装置であり、
IGBT素子領域では、p型のコレクタ層とn型のフィールドストップ領域とn型のドリフト層とp型のボディ層が順に積層されており、前記半導体基板の表面から前記ボディ層を貫通して前記ドリフト層内に突出して伸びている第1トレンチゲート電極が形成されており、その第1トレンチゲート電極に接しているとともに前記表面に臨む範囲にn型のエミッタ領域が形成されており、そのエミッタ領域が前記ボディ層によって前記ドリフト層から分離されており、
ダイオード素子領域では、n型のカソード層と前記フィールドストップ領域と前記ドリフト層とp型のアノード層が順に積層されており、前記表面から前記アノード層を貫通して前記ドリフト層内に突出して伸びている第2トレンチゲート電極が形成されており、前記表面に臨む範囲にp型のアノード領域が形成されており、そのアノード領域が前記アノード層によって前記ドリフト層から分離されており、
IGBT素子領域に隣接している周辺領域を備えており、
周辺領域では、p型のコレクタ延伸層と前記ドリフト層が順に積層されており、前記コレクタ延伸層は、前記IGBT領素子領域の前記コレクタ層と連続している。(図19)
(特徴2)コレクタ延伸層は、半導体基板の周辺領域の裏面に、チップの端部から270μm程度の幅をもって形成されている。(図18)
上記の半導体装置によって、IGBT素子領域のスナップバック特性を、他の特性を劣化させないで改善することができる。
図18は、半導体装置9を上面視した図である。図19は、半導体装置9のコレクタ電圧VCEとコレクタ電流ICの関係を示している。図20から図22は、半導体装置9を図18のXX-XX線で切断した図であり、半導体装置9の要部断面図である。
IGBT素子領域J11では、p+型のコレクタ領域82とn型のフィールドストップ領域74とn-型のドリフト層62とp-型層32が順に積層されている。一方、ダイオード素子領域J12では、n+型のカソード領域72とn型のフィールドストップ領域74とn-型のドリフト層62とp-型層32が順に積層されている。
半導体基板2の上層部2Uでは、表面2aからp-型層32を貫通してn-型のドリフト層62内に突出して伸びている複数本のトレンチゲート電極TGが形成されている。各々のトレンチゲート電極TGは、その長手方向を図19の奥行き方向に揃えて伸びている。トレンチゲート電極TGは、トレンチの内面に形成されている絶縁膜17を備えている。トレンチゲート電極TGは、絶縁膜17で覆われた状態でトレンチに収容されているゲート電極16を備えている。また、隣接するトレンチゲート電極TG間の上層部2Uに、複数個のn+型領域21が形成されている。各々のn+型領域21は、表面2aに臨む範囲に形成されている。各々のn+型領域21は、トレンチゲート電極TGと接している。したがって、n+型領域21は、絶縁膜17を介してゲート電極16と対向している。また、上層部2Uに、p+型領域23が形成されている。p+型領域23は、表面2aに臨む範囲に形成されている。p+型領域23は、隣接するn+型領域21の間に配置されている。
n+型領域21とp+型領域23が、p-型層32によってn-型のドリフト層62から分離されている。IGBT素子領域J11では、n+型領域21がエミッタ領域として機能し、p+型領域23がボディコンタクト領域として機能し、p-型層32がボディ層32として機能する。ダイオード素子領域J12では、p+型領域23がアノード領域として機能し、p-型層32がアノード層として機能する。
半導体基板2の裏面2bには、裏面電極(図示していない)が形成されている。裏面電極は、IGBT素子領域J11の裏面とダイオード素子領域J12の裏面に連続して伸びている。裏面電極は、半導体基板2の下層部2Lで裏面2bに臨んで形成されているコレクタ領域82とカソード領域72の双方と導通している。
これにより、逆導通IGBTとして機能する半導体装置9が構成されている。
なお、IGBT素子領域J11として第1実施例で説明したIGBT素子領域J1を採用し、ダイオード素子領域J12として第1実施例で説明したダイオード素子領域J2を採用してもよい。IGBT素子領域J11とダイオード素子領域J12の間に、第1実施例で説明した分離領域J4を形成してもよい。
半導体装置9の裏面電極が正側に接続されているとともに、表面電極が接地されている状態(コレクタ電圧VCEとして正電圧が印加されている状態)で、トレンチゲート電極TGに印加するゲート電圧をオン・オフすることによってIGBT素子領域J11のエミッタ・コレクタ間(n+型領域21とコレクタ領域82との間)に流れる電流をオン・オフする。
トレンチゲート電極TGに、閾値以上のゲート電圧を印加すると、ゲート電極16が絶縁膜17を介して対向している範囲のp-型層32にn型チャネル(図22ではバツ印で模式的に示している。)が形成される。n+型領域21から流出した電子が、チャネルを介してドリフト層62に注入される。また、ドリフト層62に電子が注入されると、コレクタ領域82からドリフト層62に向けてホールが注入される。ドリフト層62には電子とホールが注入されて伝導度変調現象が起こり、半導体装置9のIGBT素子領域J11が低いオン電圧でオン状態となる。
トレンチゲート電極TGに印加するゲート電圧が閾値未満となると、p-型層32に形成されていたn型チャネルが消失する。n+型領域21からから流出した電子がドリフト層62に注入されなくなり、半導体装置9のIGBT素子領域J11がオフ状態となる。
一方、半導体装置9の表面電極が正側に接続されるとともに、裏面電極が接地されると、ダイオード素子領域J12のアノード・カソード間(p+型領域23とカソード領域72の間)に電流が流れて導通状態となる。
グラフW1は、コレクタ延伸領域84のチップ端部Fからの幅が90μmの場合である。グラフW2は、その幅が144μmの場合である。グラフW3は、その幅が180μmの場合である。グラフW4は、その幅が216μmの場合である。グラフW5は、本実施例の半導体装置9の場合であり、その幅が270μmの場合である。
グラフW1からグラフW4では、コレクタ電圧VCEを上昇させていく初期段階で、スナップバックが発生しているが、グラフW5では発生していない。チップ端部Fからのコレクタ延伸領域84の幅を、本実施例の半導体装置9のように270μmとすると、スナップバックが発生しない。
また、コレクタ延伸領域84の幅が270μmであれば、IGBT素子領域J11とダイオード素子領域J12の双方をチップ上に自由にレイアウトすることができる。また、コレクタ延伸領域84は、IGBT素子領域J11のコレクタ領域82を形成する際に同時に裏面2bからp型不純物を注入して形成すればよい。特別な工程を追加することなく簡単にコレクタ延伸領域84を形成することができる。
なお、チップサイズが大きい場合には、270μmを超えてコレクタ延伸領域84の幅を伸ばしても良い。
(第1段階:図19のグラフW5の期間S1)
トレンチゲート電極TGに、閾値以上のゲート電圧を印加している状態で、コレクタ電圧VCEを上昇させていく。図20に示すように、ゲート電極16が絶縁膜17を介して対向している範囲のp-型層32にn型チャネル(図20ではバツ印で模式的に示している。)が形成される。n+型領域21から流出した電子が、チャネルを介してドリフト層62に注入される。しかしながら、図20に示す第1段階では、IGBT素子領域J11のコレクタ領域82とフィールドストップ領域74の間の電位差が、pn接合D11が導通状態となる電位差に達していない。また、周辺領域J3のコレクタ延伸領域84とドリフト層62の間の電位差も、pn接合D3が導通状態となる電位差に達していない。チャネルを介してドリフト層62に注入された電子は、そのほとんどがダイオード素子領域J12のカソード領域72を介して裏面電極に流れる。このため、図19のグラフW5の期間S1では、コレクタ電圧VCEの値を上昇させると、コレクタ電流IC(コレクタ領域82とn+型領域21との間に流れる電流)の値がなだらかに上昇している。第1段階では、半導体装置9が、縦型のMOSFETのように動作する。
第1段階から、さらにコレクタ電圧VCEを上昇させる。図21に示す第2段階では、周辺領域J3のコレクタ延伸領域84とドリフト領域62の間の電位差が、pn接合D3が導通状態となる電位差に達する。コレクタ延伸領域84の上には、フィールドストップ領域74が形成されていないので、pn接合D3はIGBT素子領域J11のpn接合D11と比較して導通状態になり易い。第2段階では、IGBT素子領域J11のpn接合D11は、まだ導通状態となっていない。pn接合D3によって、周辺領域J3のコレクタ延伸領域84からドリフト領域62に、少量のホールが注入され始める。チャネルを介してドリフト層62に注入された電子が、周辺領域J3のホールに導かれて周辺領域J3に注入される。これにより、周辺領域J3で伝導度変調現象が始まる。このため期間S2では、図19のグラフW5の勾配が急になっており、コレクタ電流ICの増加率が増えている。
第2段階から、さらにコレクタ電圧VCEを上昇させる。図22に示す第3段階では、コレクタ領域82とドリフト領域62の間の電位差が、pn接合D11が導通状態となる電位差に達する。pn接合D11によって、IGBT素子領域J11のコレクタ領域82からドリフト層62にホールが注入される。IGBT素子領域J11のドリフト層62でも伝導度変調現象が始まる。この状態に達すると、ドリフト層62の伝導度変調現象が第2段階よりも活発になり、コレクタ電圧VCEの上昇に対してコレクタ電流ICが飛躍的に増大する。IGBT素子領域J11は、周辺領域J3と比較して裏面2bの占有面積が大きい。すなわち、コレクタ領域82は、コレクタ延伸領域84と比較して裏面2bの占有面積が大きい。また、コレクタ領域82は、コレクタ延伸領域84と比較して、電子が流出するn+型領域21までの距離が短い。このため、第3段階では、ドリフト層62の伝導度変調が、コレクタ領域82からドリフト層62に注入されるホールによって維持される。このように、IGBT素子領域J11が、前述したオン状態の定常状態に移行する。
半導体装置9の周辺領域J3では、コレクタ延伸領域84の上にはフィールドストップ領域74を形成していない。IGBT素子領域J11では、コレクタ領域82の上にフィールドストップ領域74を形成している。このため、IGBT素子領域J11のテール電流を増大させることなく、IGBT素子領域J11のスナップバック特性を改善することがきる。
半導体装置9では、第3段階以降の大電流が流れている状態では伝導度変調現象にほとんど寄与していない周辺領域J3の裏面2bに、コレクタ延伸領域84を形成している。これにより、スナップバック特性を改善している。スナップバック特性を改善するためにコレクタ領域82の占有面積を増大する必要がないので、ダイオード素子領域J12の占有面積を充分に確保することができる。ダイオード素子領域J12の特性を劣化させることなく、IGBT素子領域J11のスナップバック特性を改善することができる。
また、半導体装置9の周辺領域J3には、p型のコレクタ延伸領域84が形成されているため、前述した第3段階以降の大電流が流れている状態であっても、少量ではあるもののコレクタ延伸領域84からドリフト層62にホールが注入されている。このため、図19に示すように、IGBT素子領域J11がオン状態の定常状態となった後のオン電圧が、グラフW5の場合が最も低い。
2:半導体基板
2G:耐圧確保領域
2L:下層部
2U:上層部
2a:表面
2b:裏面
3:裏面電極
4,5,6,7,9:半導体装置
10,14,15,17:絶縁膜
11:底面
12,13,16:ゲート電極
18:側面
19:エッジ部
20:エミッタ領域
21:n+型領域
22:ボディコンタクト領域
23:p+型領域
30:ボディ層
32:p-型層
40:アノード領域
50,52:アノード層
60,62:ドリフト層
70,72:カソード領域
74:フィールドストップ領域
80,82:コレクタ領域
84:コレクタ延伸領域
90:p型拡散領域
100: 半導体装置
102b:裏面
120:エミッタ領域
162:ドリフト層
172:カソード領域
174:フィールドストップ領域
182:コレクタ領域
A,B:直列回路
A1,A2,B1,B2: 半導体装置
c,d: 端子
CA1,CA2,CB1,CB2:コレクタ
D101 :D11:D3:pn接合
EA1,EA2,EB1,EB2:エミッタ
F:端部
GA1,GA2,GB1,GB2 ゲート
H1:集中範囲
IC:コレクタ電流
IS:電流
J1,J101,J11:IGBT 素子領域
J2,102,J12:ダイオード素子領域
J3:周辺領域
J4:分離領域
K:給電装置
M:モータ
S:電源
TG,TG1,TG2:トレンチゲート電極
VGA1,VGA2,VGB1,VGB2:ゲート電圧
x,y: 中間電位点
ZT:絶縁トレンチ
Claims (5)
- 同一半導体基板にIGBT素子領域とダイオード素子領域が混在している半導体装置であり、
IGBT素子領域では、p型のコレクタ層とn型のドリフト層とp型のボディ層が順に積層されており、前記半導体基板の表面から前記ボディ層を貫通して前記ドリフト層内に突出して伸びている第1トレンチゲート電極が形成されており、その第1トレンチゲート電極に接しているとともに前記表面に臨む範囲にn型のエミッタ領域が形成されており、そのエミッタ領域が前記ボディ層によって前記ドリフト層から分離されており、
ダイオード素子領域では、n型のカソード層と前記ドリフト層とp型のアノード層が順に積層されており、前記表面から前記アノード層を貫通して前記ドリフト層内に突出して伸びている第2トレンチゲート電極が形成されており、前記表面に臨む範囲にp型のアノード領域が形成されており、そのアノード領域が前記アノード層によって前記ドリフト層から分離されており、
前記第2トレンチゲート電極が前記アノード層から突出している長さが、前記第1トレンチゲート電極が前記ボディ層から突出している長さよりも長く、
前記第2トレンチゲート電極が、前記第1トレンチゲート電極よりも深くまで伸びていることを特徴とする半導体装置。 - 前記IGBT素子領域と前記ダイオード素子領域の間に、p型の拡散領域が形成されており、そのp型の拡散領域が、前記第2トレンチゲート電極に等しいか又は深くまで形成されており、そのp型の拡散領域が、隣接する第2トレンチゲート電極の底面とその第2トレンチゲート電極の拡散領域側の側面が交わるエッジを覆っていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 請求項1または2に記載の半導体装置の複数個を組み合わせて構成した給電装置の駆動方法であり、
IGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、そのIGBT素子領域を備えている半導体装置の前記第1トレンチゲート電極に正電圧を印加し、
そのIGBT素子領域をオフ状態に切換えることによって他の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流が流れる際には、その還流電流が流れる半導体装置の前記第2トレンチゲート電極に負電圧を印加することを特徴とする給電装置の駆動方法。 - 前記IGBT素子領域をオフ状態から再びオン状態に切換えるのに先立って、前記他の半導体装置の前記第2トレンチゲート電極に負電圧を印加することを中断すること特徴とする請求項3に記載の給電装置の駆動方法。
- 請求項1または2に記載の半導体装置の複数個を組み合わせて構成した給電装置の駆動方法であり、
少なくとも2個のIGBT素子領域をオン状態に切換えて給電する際には、オン状態に切換える各々のIGBT素子領域を備えている各々の半導体装置の各々の前記第1トレンチゲート電極に正電圧を印加し、
先にオン状態に切換えたIGBT素子領域のうち、少なくとも1個のIGBT素子領域をオフ状態に切換えるとともに、少なくとも他の1個のIGBT素子領域をオン状態に維持することにより、別の半導体装置のダイオード素子領域に還流電流を流し、
先にオン状態からオフ状態に切換えたIGBT素子領域を再びオン状態に切換えた後に前記還流電流を流していた前記別の半導体装置の前記第2トレンチゲート電極に負電圧を印加することを特徴とする給電装置の駆動方法。
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