JP4706344B2 - 同期モータの制御装置 - Google Patents
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同期モータは、所定の電源から給電を受ける複数相の電機子コイルを有するステータと、磁石が装着されたロータとを備え、電機子コイルと磁石との相互作用によりロータを回転駆動して出力トルクを得るものである。また、同期モータの制御装置(以下、制御装置と略す)は、電機子コイルへの給電を制御するための制御信号を合成し、この制御信号をインバータのスイッチング素子に出力する。
この同期モータは、回転数の可変範囲が広く高効率であるため、近年のインバータ制御の発達に伴い適用分野が広がっている。そして、適用分野の広がりにより、さらに回転数の可変範囲の拡大が要請されており、特に高回転数側での拡大が強く要請されている。しかし、回転数の高速化に伴い、以下のような様々な問題が生じている。
請求項1に記載の同期モータの制御装置は、ステータに設けられ所定の電源から給電を受ける複数相の電機子コイルと、ロータに装着された磁石との相互作用により、ロータを回転駆動するとともに、電機子コイルへの給電を制御するための制御信号の変調度を、電源電圧に応じて算出するものである。この制御装置は、磁石により形成される磁界を弱める方向に電機子コイルへの給電を制御する弱め界磁制御を実行している時に、電源電圧が上昇を開始したら、変調度の低減を開始する変調度低減手段を備える。そして、変調度低減手段は、変調度の低減幅を漸増させた後に漸減させ、電源電圧が弱め界磁制御を停止できる大きさに到達する前に変調度の低減を開始する。
この手段によれば、制御装置は、弱め界磁制御の実行中に電源電圧が上昇すれば、従来のタイミング(つまり、電源電圧が、弱め界磁制御を停止できる大きさに到達するタイミング)よりも早く変調度を低減する。このため、制御装置は、電源電圧の上昇に伴う相電圧の上昇開始、および相電流の位相の振動に対し、従来よりも早期に対応することができる。
以上より、制御装置が弱め界磁制御を実行しているときに電源電圧が急激に上昇しても、相電流は安定して推移することができる。この結果、弱め界磁制御実行中の電源電圧の急上昇により相電流の位相が振動するのを、防止することができる。
請求項2に記載の制御装置は変調度低減手段により、変調度を低減することで相電圧の上昇速度を低下させる。
この手段は、請求項1の手段の一形態を示すものである。
請求項3に記載の制御装置によれば、変調度低減手段は、電源電圧の全成分の内で、所定の第1遮断値よりも小さい成分を第1通過成分として通過させる第1低減フィルタを有し、電源電圧の全成分に対する第1通過成分の比率を低減係数として算出し、変調度に低減係数を乗じることで変調度を低減する。
この手段は、請求項1の手段の一形態を示すものである。
請求項4に記載の制御装置によれば、変調度低減手段は、第1低減フィルタを一次遅れ要素の形式を含んで構成している。
この手段は、請求項3の手段の一形態を示すものである。
請求項5に記載の制御装置によれば、変調度低減手段は、電源電圧を検出する電源電圧検出手段から入力される検出成分の内で、所定の第2遮断値よりも小さい成分を前記電源の電圧の全成分として通過させる第2低減フィルタを有し、第2低減フィルタを一次遅れ要素の形式を含んで構成し、第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数を、第2低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数よりも長い値に設定している。
この手段は、請求項4の手段において、第1低減フィルタの一形態を示すものである。
請求項6に記載の制御装置によれば、第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数は、相電流の経時変化を構成する一次遅れ要素の時定数よりも長い。
この手段は、請求項4または請求項5の手段において、第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数を限定するものである。これにより、弱め界磁制御実行中の電源電圧の急上昇により相電流の位相が振動するのを、確実に防止することができる。
請求項7に記載の制御装置によれば、第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数は、1ミリ秒よりも長い。
この手段は、請求項4ないし請求項6のいずれか1つの手段において、第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数を、数値的に限定するものである。
請求項8に記載の制御装置によれば、変調度低減手段が低減幅を漸減させる期間は、相電流の経時変化を構成する一次遅れ要素の時定数よりも長い。
この手段は、請求項1の手段の一形態を示すものである。
請求項9に記載の制御装置によれば、変調度低減手段が低減幅を漸減させる期間は、1ミリ秒よりも長い。
この手段は、請求項1ないし請求項8のいずれか1つの手段の一形態を示すものである。
また、制御装置は、変調度低減手段により変調度を低減することで、電機子コイルに給電するために印加される相電圧の上昇速度を低下させる。
また、変調度低減手段は、第1低減フィルタを一次遅れ要素の形式を含んで構成している。
また、変調度低減手段が低減幅を漸減させる期間は、電機子コイルへの給電により生じる相電流の経時変化を構成する一次遅れ要素の時定数よりも長く、1ミリ秒よりも長い。
また、制御装置は、アームの下段に組み込まれたシャント抵抗により、相電流を検出する。
また、デッドタイム補償手段は、回転数に応じて補償量を低減するとともに、回転数に対し補償量の低減を停止する限界値を設定する。
限界値は、閾値よりも100rpm以上大きい。
なお、同期モータは、車両に搭載される。
実施例1の制御装置1を、図1ないし図5に基づいて説明する。まず、制御装置1により制御される同期モータ2について説明する。
これにより、生の検出値が、第2低減フィルタ29により、図4(a)に示す検出値Vdc2のように変換される。
なお、時定数τ1は、時定数τ2よりも長い値に設定され、かつ1ミリ秒よりも長い値に設定されている。
〔数式1〕
Ma=Va*/Vdc2
〔数式2〕
Ma’=Vdc1/Vdc2×Ma
〔数式3〕
Mu*=Ma’sin(θ+Vθ*)
〔数式4〕
Mv*=Ma’sin(θ−2/3・π+Vθ*)
〔数式5〕
Mw*=Ma’sin(θ−4/3・π+Vθ*)
〔数式6〕
mu*=ma’×Sign(iu)
〔数式7〕
mv*=ma’×Sign(iv)
〔数式8〕
mw*=ma’×Sign(iw)
実施例1の制御装置1は、弱め界磁制御を実行している時に電源電圧が上昇を開始したら、弱め界磁停止可能時間よりも前に変調度の低減を開始する変調度低減手段38の機能を備える。そして、変調度低減手段38は、変調度の低減幅を漸増させた後に漸減させる(図4(b)参照)。
これにより、弱め界磁制御実行中の電源電圧の急上昇により相電流の位相が振動するのを、確実に防止することができる。
これにより、回転数が高く電気角周期に対する制御割り込み周期の割合が大きいときに、デッドタイムによる影響を補償することで発生する相電圧および相電流の蛇行経時変化を防止することができる。
なお、回転数が高い場合、相電圧の振幅は大きいので、相電圧の振幅変動の影響(つまり、デッドタイムによる影響)は極めて小さくなる。よって、デッドタイム補償量を低減しても、同期モータ2の運転に対する悪影響は発生しない。
これにより、図6(c)に示すように、補償電圧がゼロになるため、相電圧の振幅は補償前後で差異がなくなる。このため、電流ゼロクロス時のパルスが発生しなくなるので、相電圧および相電流の蛇行経時変化を、確実に防止することができる。
これにより、下段シャント抵抗11で相電流を検出する場合に、高回転数のときに顕著になる相電圧の振幅の経時変化におけるパルス発生(図16(b)参照)を防止することができる。このパルスは、相電流の極性が正確に判定できないときに、誤った方向に補償電圧を印加することで発生する。そこで、上記のように算出値ωが閾値ωc1以上になったら補償電圧のようなデッドタイム補償量を低減したり、ゼロにしたりする。これにより、補償電圧の誤印加量が低減したり、ゼロになったりするので、相電圧の振幅の経時変化におけるパルス発生を抑制することができる。
電気角周期に対する制御割り込み周期の割合が大きくなるほど、相電圧の振幅のパルス幅が大きくなり、相電圧および相電流の経時変化の蛇行が顕著になる(図14(b)および図15(b)、(c)参照)。そこで、電気角周期に対する制御割り込み周期の割合に応じて閾値ωc1を設定すれば、効果的に、相電圧および相電流の経時変化の蛇行を抑制することができる。
実施例2の電圧指令部22は、図7に示すように、相電流の検出値i、回転位置の検出値θ、および相電流の指令値i*を用いてd軸電圧の指令値Vd*およびq軸電圧の指令値Vq*を算出する。
〔数式9〕
Mua*=Vu*/Vdc2
〔数式10〕
Mva*=Vv*/Vdc2
〔数式11〕
Mwa*=Vw*/Vdc2
実施例3の制御装置1を、図9および図10に基づいて説明する。なお、実施例1と同様の機能を有する部分は同一の符号を用いる。
実施例3のデッドタイム補償手段40は、変調度の基本値Maに対し閾値Mac1を設定し、基本値Maが閾値Mac1以上になったらデッドタイム補償量を低減したり、ゼロにしたりするものであり、閾値Mac1を、90%以上の値に設定する。
変調度が90%以上であれば、デッドタイム補償量を低減したり、ゼロにしたりしても、同期モータ2の運転に対する悪影響は発生しない。そこで、閾値Mac1を90%以上の値に設定することで、同期モータ2の運転に対する悪影響を発生させることなく、相電圧および相電流の経時変化の蛇行を抑制することができる。
実施例4の電圧指令部22は、実施例2と同様にd軸電圧の指令値Vd*およびq軸電圧の指令値Vq*を算出する。PWM指令部23は、実施例2と同様に、指令値Vd*、Vq*を用いて相電圧の指令値Vu*、Vv*、Vw*を算出するdq/3相変換部46の機能を有する。また、基本算出部31も、実施例2と同様に、各相ごとに変調度の基本指令値Mua*、Mva*、Mwa*を算出する。
本実施例の第1、第2低減フィルタ28、29は、一次遅れ要素の形式を含んで構成されていたが、一次遅れ要素の形式の替わりに、例えば、移動平均を算出する形式などのように、ボード線図でゲインを低減する他の形式を含んで構成されていてもよく、一次遅れ要素の形式とともに、他の形式を含んで構成されていてもよい。
2 同期モータ
3 インバータ
7 電源
9、10 スイッチング素子
11 下段シャント抵抗(シャント抵抗)
13 コンパレータ(電源電圧検出手段)
28 第1低減フィルタ
29 第2低減フィルタ
38 変調度低減手段
40 デッドタイム補償手段
Vdc1 検出値(電源電圧、第1通過成分)
Vdc2 検出値(電源電圧、電源電圧の全成分)
Mu*、Mv*、Mw*、Mu’*、Mv’*、Mw’* 指令値(変調度)
τ1、τ2 時定数
i 検出値(相電流)
ω 算出値(回転数)
mu*、mv*、mw* 指令値(補償量)
ωc1、Mac1 閾値
ωc2、Mac2 限界値
Claims (9)
- ステータに設けられ所定の電源から給電を受ける複数相の電機子コイルと、ロータに装着された磁石との相互作用により、前記ロータを回転駆動するとともに、前記電機子コイルへの給電を制御するための制御信号の変調度を、電源電圧に応じて算出する同期モータの制御装置において、
前記磁石により形成される磁界を弱める方向に前記電機子コイルへの給電を制御する弱め界磁制御を実行している時に、前記電源電圧が上昇を開始したら、前記変調度の低減を開始する変調度低減手段を備え、
前記変調度低減手段は、前記変調度の低減幅を漸増させた後に漸減させ、前記電源電圧が前記弱め界磁制御を停止できる大きさに到達する前に前記変調度の低減を開始することを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項1に記載の同期モータの制御装置において、
前記変調度低減手段により前記変調度を低減することで、前記電機子コイルに給電するために印加される相電圧の上昇速度を低下させることを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項1に記載の同期モータの制御装置において、
前記変調度低減手段は、
前記電源電圧の全成分の内で、所定の第1遮断値よりも小さい成分を第1通過成分として通過させる第1低減フィルタを有し、
前記電源電圧の全成分に対する前記第1通過成分の比率を低減係数として算出し、
前記変調度に前記低減係数を乗じることで前記変調度を低減することを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項3に記載の同期モータの制御装置において、
前記変調度低減手段は、
前記第1低減フィルタを一次遅れ要素の形式を含んで構成していることを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項4に記載の同期モータの制御装置において、
前記変調度低減手段は、
前記電源電圧を検出する電源電圧検出手段から入力される検出成分の内で、所定の第2遮断値よりも小さい成分を前記電源電圧の全成分として通過させる第2低減フィルタを有し、
前記第2低減フィルタを一次遅れ要素の形式を含んで構成し、
前記第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数を、前記第2低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数よりも長い値に設定していることを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項4または請求項5に記載の同期モータの制御装置において、
前記第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数は、前記電機子コイルへの給電により生じる相電流の経時変化を構成する一次遅れ要素の時定数よりも長いことを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の同期モータの制御装置において、
前記第1低減フィルタに含まれる一次遅れ要素の時定数は、1ミリ秒よりも長いことを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項1に記載の同期モータの制御装置において、
前記変調度低減手段が前記低減幅を漸減させる期間は、前記電機子コイルへの給電により生じる相電流の経時変化を構成する一次遅れ要素の時定数よりも長いことを特徴とする同期モータの制御装置。 - 請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の同期モータの制御装置において、
前記変調度低減手段が前記低減幅を漸減させる期間は、1ミリ秒よりも長いことを特徴とする同期モータの制御装置。
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