JP5013188B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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この発明は、モータを駆動する駆動回路の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子とを同時にオフするデッドタイム制御を行うモータ制御装置に関する。
モータが発生する駆動力を舵取り機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置が知られている。電動パワーステアリング装置は、具体的には、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを検出するトルクセンサと、このトルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいてモータを駆動するモータ制御装置とを備えている。
モータには、たとえば、三相DCブラシレスモータが適用される。モータ制御装置は、ロータの電気角に基づいて、ステータの各相に正弦波状に変化する電圧を印加する正弦波駆動を行う。より具体的には、たとえば、モータ制御装置は、トルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいて、dq座標における二相電流の指令値、すなわち、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を設定する。さらに、モータ制御装置は、モータに実際に流れているd軸電流およびq軸電流を検出し、各指令値に対するd軸電流およびq軸電流の偏差を求め、それらの偏差に対応したd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを演算する。そして、モータ制御装置は、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを三相(U相,V相,W相)の電圧値に変換し、これらの値の電圧をモータの各相に印加する。
低中速回転域では、d軸電流指令値を零とする一方で、q軸電流指令値を操舵トルクに応じた値に設定することにより、モータから必要なトルクを発生させることができる。しかし、高速回転域では、モータの逆起電力のために出力(トルク)が不足する。そこで、モータの出力を増加させるために、d軸電流指令値を零以外の有意値とし、d軸の界磁を弱める方向に電流を流す弱め磁束制御が行われる。
一方、各相の電圧が正弦波となるようにするためには、各相電圧の振幅を電源電圧Edの1/2以下とする必要があり、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに関して、次式(P1)が成立する必要がある(特許文献1)。
√(Vd 2+Vq 2)≦Ed√3/2√2 …… (P1)
したがって、d軸電流指令値およびq軸電流指令値によっては、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqが前記式(P1)の条件を満たさず、正弦波駆動ができなくなる。そのため、モータに振動が生じ、この振動が舵取り機構を介してステアリングホイールに伝達され、操舵フィーリングの悪化を招く。
そこで、特許文献1の先行技術は、前記式(P1)の条件が成立するようにq軸電圧指令値Vqを制限している。
WO2006/109809 特開2006−352957号公報
モータには、インバータ回路で構成した駆動回路から駆動電流が供給される。駆動回路は、U相、V相およびW相のそれぞれに対応するように、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との直列回路を3個備えており、これらが電源(バッテリ)に対して並列に接続されている。そして、前記3個の直列回路における上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との間に、モータのU相、V相およびV相の電機子巻線がそれぞれ接続されるようになっている。
モータ制御装置は、駆動回路にPWM(パルス幅変調)制御信号を与え、このPWM制御信号によって前記3個の直列回路における各上側スイッチング素子および下側スイッチング素子をオン/オフする。そして、上側スイッチング素子に与えられるPWM制御信号のデューティ比が電圧指令値に応じて適切に制御されることにより、U相、V相およびW相の電圧が正弦波状に変化し、正弦波駆動が行われる。
PWM駆動を行うとき、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子のオン/オフを切り換える際の短絡を防ぐ目的で、それらの両方を一時的にオフ状態とするデッドタイムが設定される(特許文献2)。これをデッドタイム制御という。このデッドタイム制御のために、U相、V相およびW相に印加される電圧が、指令値よりも低くなる。
この場合、PI(比例積分)制御部等を含むフィードバックループの働きにより、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値が増加させられ、デッドタイム制御に起因する電圧低下が補われる。その結果、前記式(P1)の条件を満たさず、正弦波駆動ができなくなるおそれがある。そのため、モータに振動が生じ、この振動が舵取り機構を介してステアリングホイールに伝達され、操舵フィーリングの悪化を招く。
一方、特許文献1の先行技術でも、やはり、モータの振動の問題を解決できない。
すなわち、フィードバックループの働きによりd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値が増加させられ、その結果、q軸電圧指令値が制限される状況になりやすくなる。
ところが、q軸電圧指令値が制限される状況では、q軸電流iqが変動的になり、モータが発生するトルクが変動して、モータの振動を生じ、ひいてはステアリングホイールを振動させてしまう。すなわち、q軸電圧指令値に制限がかかるほどの高速回転域および高電流値域では、q軸電圧指令値を制限すると、q軸電流iqが狙い値よりも強制的に小さくされる。一方、d軸電圧には、d軸電流idを含む項とともにq軸電流iqを含む項(後記式(12)参照)も含まれているため、q軸電流iqが少なくなることによって、d軸電流id(≦0)が狙い値よりも大きな絶対値をとることになる。そして、d軸電流iqの絶対値が大きくなることにより、q軸電圧に余裕ができ(後記式(13)参照)、q軸電流iqを大きくできる要素が発生する。したがって、モータ制御装置は、q軸電流iqを大きくしようとする。
このように、q軸電圧指令値に制限がかかる状況では、dq軸上で干渉し合いながらd軸電流idおよびq軸電流iqが決まる。そして、フィードバックループは、その成り行きで決まったd軸電流idおよびq軸電流iqをd軸電流指令値およびq軸電流指令値に修正するための電圧指令値を設定することになる。このようにしてq軸電流iqが変動的になり、モータに微振動が生じて、操舵違和感を生じることになる。
そこで、この発明の目的は、デッドタイム制御の影響による電圧変動に起因するモータの振動を抑制しつつ、モータ出力の増加を図ることができるモータ制御装置を提供することである。
請求項1記載の発明は、モータ(3)を駆動する駆動回路(9)の上側スイッチング素子(61U,61V,61W)と下側スイッチング素子(62U,62V,62W)とを同時にオフするデッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧(Vmax)に基づいて、前記モータを弱め磁束制御するための指令値を演算する指令値演算手段(26)と、この指令値演算手段によって演算された指令値に基づいて、前記駆動回路の上側スイッチング素子および下側スイッチング素子のオン/オフ制御ならびに前記デッドタイム制御を行うための制御信号を生成する制御信号生成手段(32)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、モータを弱め磁束制御するための指令値が、デッドタイム制御に起因する電圧変動(モータ印加電圧の変動)を加味した制限電圧に基づいて定められる。そして、その指令値に基づく制御信号が制御信号生成手段から駆動回路に与えられることにより、上側スイッチング素子および下側スイッチング素子のオン/オフ制御ならびにデッドタイム制御が行われる。したがって、デッドタイム制御の影響を予め考慮したうえで指令値が定められているので、モータに印加される電圧が制限電圧を超えることを抑制または防止できる。これにより、モータに振動が生じることを抑制または防止しながら、弱め磁束制御によってモータ出力の増加を図ることができる。
たとえば、前記モータ制御装置は、モータに流れる電流を検出する電流検出手段(7U,7V)を備え、前記指令値演算手段は、前記電流検出手段によって検出されてフィードバックされる電流値に基づいて電圧指令値を設定するものであってもよい。このようなフィードバックループは、デッドタイム制御による電圧変動を補償するように電圧指令値を設定するように働く。この場合でも、デッドタイム制御による電圧変動が制限電圧に予め加味されているので、モータに印加される電圧が制限電圧を超えることを効果的に抑制または防止できる。
前記制限電圧は、前記モータを正弦波駆動するための上限電圧以下とされることが好ましい。これにより、デッドタイム制御によらずにモータを確実に正弦波駆動できるから、モータの振動をより一層確実に抑制または防止できる。
請求項2記載の発明は、前記モータが三相モータであり、前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧(Vmax)が、dq座標における制限電圧であり、前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味しないときのdq座標における制限電圧(Vlim)から、前記デッドタイム制御に起因する各相電圧の変動絶対値(|VDT|)の2√6/3倍以上を減算した値である、請求項1記載のモータ制御装置である。
デッドタイム制御に起因する各相電圧の変動の影響は、dq座標において、その電圧変動の絶対値の2√6/3倍に見積もられる。そこで、デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味しないときのdq座標における制限電圧(仮想的な制限電圧)から、デッドタイム制御に起因する各相電圧の変動絶対値の2√6/3倍以上を減算してdq座標における制限電圧を定めておけば、モータに印加される電圧が制限電圧を超えることを抑制または防止できる。これにより、モータの振動を抑制できる。
請求項3記載の発明は、前記モータ制御装置が、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することによりモータを制御するものであり、前記指令値演算手段が、q軸電流指令値を設定するq軸電流指令値設定手段(S3)と、前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧に基づいて、前記q軸電流指令値設定手段によって設定されるq軸電流指令値に制限を加えるq軸電流指令値制限手段(S5,S7)と、このq軸電流指令値制限手段による制限後のq軸電流指令値に基づいて、d軸電流指令値を設定するd軸電流指令値設定手段(S8)とを含む、請求項1または2記載のモータ制御装置である。
この構成によれば、制限電圧に基づいてq軸電流指令値に制限を加え、この制限が加えられたq軸電流指令値に対応するd軸電流指令値が設定される。こうして、q軸電流指令値に予め制限が加えられ、それに応じてd軸電流指令値が設定されるので、d軸電圧およびq軸電圧が満たすべき条件(制限電圧)を確実に満足することができる。しかも、q軸電流指令値を予め制限する構成であるので、電圧指令値を事後的に制限する特許文献1の先行技術のように、q軸電流が変動的になるおそれもない。これにより、モータに振動が生じることを抑制または防止しつつ、d軸電流による弱め磁束制御を行って、とくに高速回転域における出力の増加を図ることができる。
請求項4記載の発明は、前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧を、前記駆動回路への入力電圧に基づいて設定する制限電圧設定手段(S1)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置である。
この構成によれば、駆動回路への入力電圧に応じて制限電圧が設定されるから、電源電圧の変動等によらずに適正な制限電圧が設定される。これにより、より確実にモータの振動を抑制または防止できる。
さらに、駆動回路への入力電圧に基づいて制限電圧が設定されるので、電源と駆動回路との間にリレーやコイル等の電気部品が介装されている場合でも、これらの電気部品による電圧降下の影響を排除できる。したがって、適正な制限電圧の設定が確保される。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3と、この電動モータ3を駆動制御するモータ制御装置(ECU:電子制御ユニット)5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクと車内LAN(CANバス)を通じて与えられる車速情報とに応じて電動モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスDCモータである。
モータ制御装置5は、CPU、RAMおよびROMを含むマイクロコンピュータ6と、電動モータ3に流れるU相電流iuaおよびV相電流ivaをそれぞれ検出するモータ電流検出回路7Uおよび7Vと、電動モータ3に付設されたロータ位置センサとしてのレゾルバ4の出力信号を増幅するレゾルバアンプ8と、電動モータ3に電力を供給するモータドライバ9(駆動回路)と、モータドライバ9への入力電圧を検出する入力電圧検出部10とを備えている。レゾルバアンプ8は、レゾルバ4とともに信号出力手段を構成しており、レゾルバ4からの信号を処理して、電動モータ3のロータ回転角度θに関する正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを出力する。ロータ回転角度θは、電動モータ3のU相電機子巻線の位置を基準とするロータ(界磁)の角度(電気角)である。
マイクロコンピュータ6は、トルクセンサ1の出力信号をA/D変換ポート11を介してディジタルデータで表された操舵トルクとして取り込み、また、車内LANからの車速情報を通信ポート12を介して取り込む。そして、マイクロコンピュータ6は、操舵トルクおよび車速に基づいて電動モータ3の電流指令値を設定し、さらに、この電流指令値とモータ電流検出回路7U,7Vの出力信号とに基づいて電圧指令値を設定し、この電圧指令値をモータドライバ9に与える。これにより、モータドライバ9から電動モータ3に適切な電圧が印加され、電動モータ3から操舵補助に必要十分なトルクが発生する。
モータドライバ9には、電源としてのバッテリ50(車載バッテリ)から電力が供給されている。その電力を供給する給電ライン53には、リレー51およびコイル52が直列に介装されている。リレー51は、イグニッションキースイッチに連動してオン/オフするほか、モータ制御装置5に異常が生じたときにマイクロコンピュータ6の制御によって遮断されるフェールセーフリレーとしての働きを有している。コイル52は、ノイズ低減のためのものである。
入力電圧検出部10は、コイル52とモータドライバ9との間で給電ライン53に現れる入力電圧Vbを検出する。この検出結果を表す信号は、マイクロコンピュータ6に入力されるようになっている。この構成では、リレー51やコイル52における電圧降下の影響を排除してモータドライバ9への入力電圧Vbを検出できるので、入力電圧Vbに応じて、電動モータ3に印加することができる最大電圧を適正に設定することができる。
マイクロコンピュータ6は、所定のプログラムを実行することによって実現される複数の機能処理手段を備えている。この複数の機能処理手段には、操舵トルクおよび車速に基づいて目標電流値を演算する目標電流演算部21が含まれている。この目標電流演算部21が出力する目標電流値は、加算部22に入力されるようになっている。この加算部22には、各種の補償制御を行う補償制御部23からの補正値が与えられ、この補正値が目標電流値に加算されて、補正後の目標電流値が求められるようになっている。
補償制御部23は、たとえば、ステアリングホイールの収斂性を向上させるための収斂性補正値を演算する収斂性補正部などを含み、通信ポート12からの車速および電動モータ3のロータの回転角速度ωに基づいて、目標電流値を補正するための補正値を演算するようになっている。
マイクロコンピュータ6は、電動モータ3のロータの回転角速度ω(電気角における回転角速度)を演算するための角速度演算部25を備えている。この角速度演算部25には、レゾルバアンプ8の出力信号をディジタルデータに変換して取り込むA/D変換ポート13からのデータが与えられている。A/D変換ポート13は、所定のサンプリング周期でレゾルバアンプ8の出力信号をサンプリングしてディジタルデータに変換し、ディジタル化された正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを生成する。
角速度演算部25は、たとえば、次式に従って、回転角速度ωを求めるように構成されていてもよい。
ω=Δθ≒sinΔθ=sinθicosθi-1−cosθisinθi-1
ただし、θiは今サンプリング周期でのロータ回転角度、
θi-1は前サンプリング周期でのロータ回転角度
Δθ=θi−θi-1である。
マイクロコンピュータ6は、さらに、dq軸電流指令値演算部26を備えている。このdq軸電流指令値演算部26は、前述の補正後の目標電流値に基づいて、dq座標系におけるd軸電流指令値ida *およびq軸電流指令値iqa *を求める。dq座標系は、電動モータ3のロータと同期して回転するd軸およびq軸からなる回転直交座標系である。d軸は、ロータが形成する磁束の方向に沿った軸であり、q軸は、d軸に対してπ/2進んだ位相にある軸である。ただし、この実施形態では、界磁(ロータ)のS極からN極に向かう方向をd軸の正方向にとることにする。
dq軸電流指令値演算部26は、高速回転域(たとえば、800rpmを超える回転速度域)では、d軸電流指令値ida *≠0に設定して、いわゆる弱め磁束制御を行って出力を増加させる。
dq軸電流指令値演算部26によって算出されたq軸電流指令値iqa *は、減算部27qに入力されるようになっている。この減算部27qには、U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vがそれぞれ検出するU相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して求められるq軸電流iqaが入力されている。U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vの出力信号は、A/D変換ポート14,15によってディジタルデータに変換されてマイクロコンピュータ6に取り込まれ、電流検波部16,17で検波された後、三相交流/dq座標変換部28に入力されるようになっている。三相交流/dq座標変換部28は、下記(1)式に従って、U相電流iuaおよびV相電流ivaをdq座標系の値に変換する。
Figure 0005013188
三相交流/dq座標変換部28には、A/D変換ポート13からの正弦信号sinθおよび余弦信号cosθが与えられており、これらを用いて前記(1)式に従う演算が行われるようになっている。
三相交流/dq座標変換部28は、三相交流/dq座標変換により得られたq軸電流iqaを減算部27qに与える。したがって、減算部27qからは、q軸電流指令値iqa *に対するq軸電流iqaの偏差が出力されることになる。
一方、d軸電流指令値ida *は、減算部27dに入力されるようになっている。そして、減算部27dには、三相交流/dq座標変換部28において前記(1)式に従い、U相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して得られるd軸電流idaが入力されている。これにより、減算部27dは、d軸電流指令値ida *に対するd軸電流idaの偏差を出力することになる。
減算部27d,27qから出力される偏差は、それぞれd軸電流PI(比例積分)制御部29dおよびq軸電流PI制御部29qに与えられる。PI制御部29d,29qは、それぞれ、減算部27d,27qから入力される偏差に基づいてPI演算を行い、これによりd軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *を求める。
d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *は、dq/三相交流座標変換部31に入力されるようになっている。このdq/三相交流座標変換部31にはまた、レゾルバアンプ8からA/D変換ポート13を介して取り込まれた正弦信号sinθおよび余弦信号cosθが入力されている。dq/三相交流座標変換部31は、これらを用い、下記(2)式に従って、d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *を三相交流座標系の指令値Vua *,Vva *,Vwa *に変換する。そして、その得られたU相電圧指令値Vua *、V相電圧指令値Vva *およびW相電圧指令値Vwa *を、三相PWM形成部32に入力する。
Figure 0005013188
なお、W相電圧指令値Vwa *は、上記(2)式の演算によるのではなく、零からU相電圧指令値Vua *およびV相電圧指令値Vva *を減算することにより求めることができる。このようにすれば、CPUへの負担を軽減できる。むろん、CPUの演算速度が十分である場合には、上記第(2)式に従う演算によってW相電圧指令値Vwa *を算出するようにしてもよい。
三相PWM形成部32は、U相電圧指令値Vua *、V相電圧指令値Vva *およびW相電圧指令値Vwa *にそれぞれ対応したPWM信号Su,Sv,Swを作成し、その作成したPWM信号Su,Sv,Swをモータドライバ9に向けて出力する。これにより、モータドライバ9から、電動モータ3のU相、V相およびW相に、それぞれPWM信号Su,Sv,Swに応じた電圧Vua,Vva,Vwaが印加され、電動モータ3から、操舵補助に必要なトルクが発生される。
図2は、モータドライバ9の構成例を説明するための電気回路図である。モータドライバ9は、インバータ回路として構成されており、電動モータ3のU相、V相およびW相にそれぞれ対応した3つのスイッチング素子対を備えている。すなわち、U相に対応して、U相上側スイッチング素子61UとU相下側スイッチング素子62Uとの対からなる直列回路が設けられている。また、V相に対応して、V相上側スイッチング素子61VとV相下側スイッチング素子62Vとの対からなる直列回路が設けられている。さらに、W相に対応して、W相上側スイッチング素子61WとW相下側スイッチング素子62Wとの対からなる直列回路が設けられている。そして、これらの3つの直列回路が、バッテリ50に並列に接続されている。スイッチング素子61U,62U;61V,62V;61W,62Wは、パワートランジスタ(たとえば、パワーMOSFET)で構成されている。
U相上側スイッチング素子61UとU相下側スイッチング素子62Uとの間に、電動モータ3のU相電機子巻線3uが接続されている。また、V相上側スイッチング素子61VとV相下側スイッチング素子62Vとの間に、電動モータ3のV相電機子巻線3vが接続されている。同様に、W相上側スイッチング素子61WとW相下側スイッチング素子62Wとの間に、電動モータ3のW相電機子巻線3wが接続されている。
三相PWM形成部32がU相のために形成するPWM信号Suは、U相上側スイッチング素子61Uをオン/オフするための上側制御信号(PWM制御信号)Su1と、U相下側スイッチング素子62Uをオン/オフするための下側制御信号(オン/オフ制御信号)Su2とを含む。また、三相PWM形成部32がV相のために形成するPWM信号Svは、V相上側スイッチング素子61Vをオン/オフするための上側制御信号(PWM制御信号)Sv1と、V相下側スイッチング素子62Vをオン/オフするための下側制御信号(オン/オフ制御信号)Sv2とを含む。さらに、三相PWM形成部32がW相のために形成するPWM信号Swは、W相上側スイッチング素子61Wをオン/オフするための上側制御信号(PWM制御信号)Sw1と、W相下側スイッチング素子62Wをオン/オフするための下側制御信号(オン/オフ制御信号)Sw2とを含む。
このような構成により、いわゆる転流制御が行われる。すなわち、上側制御信号Su1,Sv1,Sw1によって上側スイッチング素子61U,61V,61Wがタイミングをずらして循環的にPWM制御される一方で、下側制御信号Su2,Sv2,Sw2によって下側スイッチング素子62U,62V,62Wがタイミングをずらして循環的にオン状態とされる。むろん、各相の上側スイッチング素子がPWM制御される期間と、下側スイッチング素子がオン状態とされる期間とは、タイミングがずれている。そして、各相の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子とが同時にオンして短絡状態に至ることがないように、上側スイッチング素子のPWM制御期間と下側スイッチング素子のオン期間との間には、上側および下側スイッチング素子のいずれをもオフ状態とするデッドタイムが設定される。すなわち、三相PWM形成部32は、このようなデッドタイムが設定されるようにPWM信号Su,Sv,Swを形成するデッドタイム制御を実行する。
図3は、dq軸電流指令値演算部26の動作を説明するための図であり、モータ回転角速度ωに応じたq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。これらの上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの間でq軸電流指令値iqa *が設定されることによって、電動モータ3のU相、V相およびW相に正弦波電圧を印加する正弦波駆動が可能になる。
弱め磁束制御をしないとき、すなわち、d軸電流指令値ida *=0とするときには、破線で示す特性L1+,L1-に従ってq軸電流指令値iqa *が制限される。特性L1+は、一方向(たとえば右回り方向)へのトルクを発生させるために正のq軸電流指令値iqa *を設定するときの上限値を示し、特性L1-は他方向(たとえば左回り方向)へのトルクを発生させるために負のq軸電流指令値iqa *を設定するときの下限値を示す。この場合、モータ回転角速度ωの絶対値が所定の第1閾値ω1(たとえば、ω1=800rpm)以下の低中速回転域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値はそれぞれ一定値α、−α(ただしαは正の定数)であり、モータ回転角速度ωの絶対値が前記第1閾値ω1を超える高速回転域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値は、モータ回転角速度ωの増加に伴ってリニアに減少し、q軸電流指令値iqa *の下限値は、モータ回転角速度ωの絶対値の増加に伴ってリニアに増加する(絶対値が減少する)特性とされる。つまり、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値の絶対値は、第1閾値ω1以下の中低速回転域において一定値に保持される一方で、第1閾値ω1を超える高速回転域においてモータ回転角速度ωの絶対値の増加に応じてリニアに減少する特性とされる。
一方、弱め磁束制御をするときには、実線で示す特性L2+,L2-に従ってq軸電流指令値iqa *が制限される。特性L2+は、一方向(たとえば右回り方向)へのトルクを発生させるために正のq軸電流指令値iqa *を設定するときの上限値を示し、特性L2-は他方向(たとえば左回り方向)へのトルクを発生させるために負のq軸電流指令値iqa *を設定するときの下限値を示す。この場合、モータ回転角速度ωの絶対値が前記第1閾値ω1よりも大きな第2閾値ω2(>ω1。たとえば、ω2=900rpm)以下の回転角速度域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値はそれぞれ一定値α,−αである。そして、モータ回転角速度ωの絶対値が前記第2閾値ω2を超える回転角速度域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値は、モータ回転角速度ωの増加に伴って非線形に減少し、q軸電流指令値iqa *の下限値は、モータ回転角速度ωの絶対値の増加に伴って非線形に増加(絶対値が減少)する特性とされる。つまり、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値の絶対値は、第2閾値ω2以下の回転角速度域において一定値に保持される一方で、第2閾値ω2を超える回転角速度域においてモータ回転角速度ωの絶対値の増加に応じて非線形に減少する特性とされる。
q軸電流は、電動モータ3の出力トルクに対応する。したがって、弱め磁束制御を行わないときには、特性L1+,L1-から理解されるとおり、モータ回転角速度ωの絶対値が第1閾値ω1を超える高速回転域では、モータ回転角速度ωの絶対値の上昇に応じて、出力トルクが減少していき、或る回転速度ω10(たとえば、ω10=1500rpm)でトルクを発生することができなくなる。そこで、第1閾値ω1を超える高速回転域において、d軸電流指令値ida *を零以外の有意な値に設定して弱め磁束制御を行うことで、第1閾値ω1を超える高速回転域において、電動モータ3の出力を増加させることができる。
弱め磁束制御を行うときのq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimは下記(3)式で与えられ、その下限値iqa_downlimは下記(4)式で与えられる。ただし、上限値iqa_uplimは正のq軸電流指令値iqa *に対して適用され、下限値iqa_downlimは負のq軸電流指令値iqa *に対して適用される。
Figure 0005013188
Rはモータの固定子巻線抵抗
φは界磁による固定子鎖交磁束から計算されるdq座標上の磁束
ωはモータの電気角における回転角速度
dはd軸インダクタンス
qはq軸インダクタンス
maxはデッドタイム制御の影響を考慮したdq座標での制限電圧
limは正弦波駆動が可能なdq座標での制限電圧
(デッドタイム制御の影響を考慮しない場合のdq座標での制限電圧)
DTはデッドタイム制御により各相に発生する電圧変動
bはモータドライバへの入力電圧
dはデッドタイム時間
cはPWM周波数
αは正の定数
である。
また、弱め磁束制御のためのd軸電流指令値ida *は、下記(5)式で与えられる。
Figure 0005013188
図4は、弱め磁束制御を行うときのdq軸電流指令値演算部26の動作を説明するためのフローチャートである。dq軸電流指令値演算部26は、入力電圧検出部10によって検出される入力電圧Vbに基づいて制限電圧Vmaxを求める(ステップS1)。そして、dq軸電流指令値演算部26は、図3の特性L2+,L2-に従って、モータ回転角速度ωに対応する上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimを設定する(ステップS2)。これらの上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimは、前記(3)式および(4)式から理解されるとおり、制限電圧Vmaxに基づいて設定される。さらに、dq軸電流指令値演算部26は、車速および操舵速度等に基づいて設定された目標電流値に基づいて、q軸電流指令値iqa *を設定する(ステップS3)。
次に、dq軸電流指令値演算部26は、q軸電流指令値iqa *と上限値iqa_uplimとを比較する(ステップS4)。もしも、q軸電流指令値iqa *が上限値iqa_uplimよりも大きければ(ステップS4:YES)、このq軸電流指令値iqa *に制限が加えられる。すなわち、その後の制御に用いるためのq軸電流指令値iqa *として上限値iqa_uplimが代入される(ステップS5)。
一方、q軸電流指令値iqa *が上限値iqa_uplim以下であれば(ステップS4:NO)、次に、dq軸電流指令値演算部26は、q軸電流指令値iqa *と下限値iqa_downlimとを比較する(ステップS6)。もしも、q軸電流指令値iqa *が下限値iqa_downlim未満であれば(ステップS6:YES)、このq軸電流指令値iqa *に制限が加えられる。すなわち、その後の制御に用いるためのq軸電流指令値iqa *として下限値iqa_downlimが代入される(ステップS7)。
ステップS2で設定されたq軸電流指令値iqa *が、上限値iqa_uplim以下(ステップS4:NO)で、かつ、下限値iqa_downlim以上(ステップS6:NO)の値であれば、そのq軸電流指令値iqa *がそのまま用いられる。
こうして、q軸電流指令値iqa *に必要に応じた制限を加えた後、dq軸電流指令値演算部26は、前記(5)式に従って、d軸電流指令値ida *を設定する。
こうして求められたq軸電流指令値iqa *およびd軸電流指令値ida *に基づいて、減算部27d,27qにおいて電流偏差が求められ、さらにそれらの電流偏差に基づいて、電流PI制御部29d,29qによるPI制御が行われる。これにより、d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *が求められて、dq/三相交流座標変換部31に与えられることになる。
図5は、正弦波駆動のためにd軸電圧指令値Vda *とq軸電圧指令値Vqa *とに課される条件を説明するための図である。電動モータ3の各相の電圧が正弦波となるようにするためには、各相電圧の振幅を入力電圧Vbの1/2以下とする必要があり、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに関して、次の(6)式が成立する必要がある(特許文献1)。
√(Vd 2+Vq 2)≦Vb√3/2√2=Vlim …… (6)
一方、前述のデッドタイム制御により各相に電圧変動が生じる。この電圧変動のためにd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqが正弦波駆動の可能な範囲外の値となるおそれがあることは、前述のとおりである。そこで、この実施形態では、デッドタイム制御の影響を考慮して、正弦波駆動を行うためにdq座標上で設定する制限電圧を次の(6A)式で与えられる制限電圧Vmaxとする。
Figure 0005013188
前記(6A)式は、次のようにして導き出される。
dq座標でのデッドタイム制御の影響は、座標変換して、次のように表される。
Figure 0005013188
したがって、dq座標での電圧変動の大きさは次のようにして求めることができる。
Figure 0005013188
さらに、VuDT,VvDT,VwDTのすべてが同符号となることはないので、次式が成立する。
−VuDTvDT−VvDTwDT−VwDTuDT=VDT 2 ……(10)
これを前記(9)式に代入して、次式を得る。
Figure 0005013188
すなわち、デッドタイム制御の影響により、dq座標では、デッドタイム制御による相電圧変動VDTの2√6/3倍の電圧変動が生じる。
したがって、電動モータ3に実際に印加される実電圧は、dq軸電圧指令値Vda *,Vda *よりも前記(11)式の値だけ不足する。この電圧不足分を補うように、d軸電流PI制御部29dおよびq軸電流PI制御部29qを含むフィードバックループが作動することになる。
そこで、dq座標における制限電圧Vmaxを前記(6A)式のように定める。これにより、フィードバックループの働きで電圧不足分が補われたときに、dq座標において正弦波駆動を行うための制限電圧Vlim(デッドタイム制御の影響を考慮する前の制限電圧)範囲内に収まるように電圧指令値Vda *,Vda *が生成されることになる。
定常状態におけるq軸電圧Vqおよびd軸電圧Vdは、次のように、表される。
Figure 0005013188
これらを前記(6A)式に代入すると、次の(14)式が得られる。
Figure 0005013188
弱め磁束制御をしないとき、すなわち、d軸電流指令値ida *=0で前記(14)式が満たされる条件は、次の(15)式である。
Figure 0005013188
これを変形すると、弱め磁束制御をしないときに正弦波駆動を行うための条件は、次の(16)式で与えられることがわかる。
Figure 0005013188
一方、ida *=0では前記(15)式を満たさないとき、すなわち、下記(17)式の条件のときには、d軸電流指令値ida *≠0とすることにより前記(14)式を満たす必要がある。
Figure 0005013188
そこで、前記(14)式をida *について解くと、下記(18)式を得る。
Figure 0005013188
d軸電流の絶対値が大きくなるほどモータ効率が低下するので、前記(18)式の条件を満たす絶対値が最小の値をd軸指令電流値ida *とすればよい。
A>0は自明であり、前記(17)式よりC>0であるので、次の(19)式および(20)式のとおりとなる。
Figure 0005013188
前記(20)式のときは、d軸指令電流値ida *が正値となり、d軸の界磁を強める方向に電流を流すことになるので、B<0のときは、ida *=0とする。
ここで、B2−AC≧0を満たさなければ、前記(20)式の値が虚数となり、この(20)式を満たすida *が存在しない。つまり、どのようなq軸電流指令値ida *を設定しても、図5の内側の円で示される制限電圧Vmaxの範囲内に収まらない。そこで、B2−AC≧0をida *について解くと、下記(21)式が得られ、これが、デッドタイム制御の影響によらずに制限電圧Vlimの範囲にd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを収めるために、すなわち、正弦波駆動を行うために、q軸電流指令値iqa *に課される条件となる。
Figure 0005013188
したがって、q軸電流指令値iqa *を予め前記(21)式の範囲に制限し(図4のステップS4〜S7)、その後に、前記(20)式によりd軸電流指令値ida *を求めればよい(図4のステップS8)。これにより、デッドタイム制御による電圧変動の影響によらずに、制限電圧範囲Vlimの内で最大の出力を得ることができる。すなわち、高速回転域においても、振動を生じさせることなく、出力の増加を図ることができる。これにより、電動パワーステアリング装置の操舵フィーリングを向上することができる。
また、q軸電圧指令値に事後的に制限をかける特許文献1の先行技術とは異なり、予めq軸電流指令値iqa *を制限し、このq軸電流指令値iqa *に対応したd軸電流指令値ida *を設定する構成であるので、q軸電流が変動的になることもない。
さらに、バッテリ50の出力電圧ではなく、モータドライバ9への入力電圧Vbを入力電圧検出部10で検出し、これを用いて制限電圧Vmaxを求めるようにしている。そのため、リレー51やコイル52での電圧降下の影響を排除して、適正な制限電圧Vmaxを設定することができるので、振動を生じさせることなく電動モータ3の出力を増加させることができる。もしも、バッテリ電圧をそのまま用いて制限電圧Vmaxを求めると、その値はモータドライバ9への入力電圧Vbを用いた制限電圧Vmaxよりも大きくなる。そのため、正弦波駆動ができない範囲に電流指令値ida *,iqa *が設定されるおそれがあり、電動モータ3の振動が発生するおそれがある。
また、たとえば、リレー51の抵抗値を1.5mΩとすると、リレー51での電圧降下は、電流が50Aの場合は0.075Vとなる。このとき、dq座標での制限電圧Vmaxは前記電圧降下のために0.048Vだけ小さくなる。よって、モータドライバ9への入力電圧Vbではなくバッテリ電圧を用いて弱め磁束量(d軸電流指令値ida *)を演算するとすれば、0.048Vだけ損をすることになる。この分は、モータドライバ9への入力電圧Vbに基づいて制限電圧Vmaxを求める構成とすることにより確保することができる。
たとえば、電動モータ3の抵抗値が0.025Ωだとすると、0.048Vの電圧損失は、q軸電流に換算して約2Aの損失となる。電動パワーステアリング装置の駆動源とされる電動モータ3では、たとえば、q軸電流の最大値は90A〜100Aである。したがって、バッテリ電圧をそのまま用いて制限電圧Vmaxを求めると、約2%の出力減となる。この問題が、この実施形態の構成により克服される。
図6は、この発明の第2の実施形態を説明するための図であり、前述の図1の構成におけるdq軸電流指令値演算部26が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。
この実施形態では、モータ回転角速度ωの絶対値が所定の第3閾値ω3(>ω2。たとえば、ω3=3500rpm)を超える回転速度域においては、q軸電流指令値iqa *に対して、前記(21)式による制限よりもさらに大きな制限をかける特性L3+,L3-が適用される。すなわち、モータ回転角速度絶対値|ω|が第3閾値ω3を超える範囲では、前記(21)式の場合よりも上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの絶対値が小さく設定されるように、モータ回転角速度絶対値|ω|の増加に伴って、前記(21)式の場合よりも大きな変化率で上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの絶対値がリニアに減少する。そして、上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimは、それぞれ、第4閾値ω4,−ω4(>ω3。たとえば、ω4=4000rpm)で零となっている。
このような構成とすることによって、モータ回転角速度ωが異常に大きな値となることを防止できるので、マイクロコンピュータ6が実行するソフトウェアの変数がオーバーフローしたりすることがなく、安定な制御が可能になる。
図7は、この発明の第3の実施形態を説明するための図であり、前述の図1の構成におけるdq軸電流指令値演算部26が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。
この実施形態では、図3の特性L2+の曲線に内接する線分(原点O側から接する線分)で構成された折れ線特性L2A+に従ってq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimが定められている。図示は省略するが、同様に、特性L2-の曲線に内接する線分(原点O側から接する線分)で構成された折れ線特性L2A-に従ってq軸電流指令値iqa *の下限値iqa_downlimが定められるようになっている。より具体的には、折れ線特性L2A+,L2A-を形成する複数の頂点40の値がマイクロコンピュータ6に備えられたメモリ(図示せず)に記憶されており、頂点40の間の線分41上の値は線形補間によって求められる。このような構成とすることにより、前記(21)式の制限範囲内にq軸電流指令値iqa *を制限するための演算負荷を軽減することができる。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、弱め磁束制御を行うときのq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimは、図3の特性L1+と特性L2+との間の値に定めればよく、同じく弱め磁束制御を行うときのq軸電流指令値iqa *の下限値iqa_downlimは、図3の特性L1-と特性L2-との間の値に定めればよい。したがって、たとえば、図3に二点鎖線で示す特性L4+,L4-のように特性L2+,L2-のよりも絶対値が低めの上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが設定される特性にしてもよい。このような特性L4+,L4-は、たとえば、モータドライバ9などの回路素子の特性のばらつき(製造ばらつき、温度変化、経年変化など)や、入力電圧(バッテリ電圧)の変動を考慮して、これらのばらつきや変動によらずに、特性L1+,L2+間に上限値iqa_uplimが収まり、特性L1-,L2-間に下限値iqa_downlimが収まるように定めてもよい。この場合、特性L4+,L4-は、下記(22)式および(23)式に示すように、前記(3)式および(4)式の右辺に定数K(0<K<1)を乗じて設定してもよい。
Figure 0005013188
また、図1に二点鎖線で示すように、電流PI制御部29d,29qとdq/三相交流座標変換部31との間に制限処理部30を設け、特許文献1の場合と同様にして、q軸電圧指令値Vqa *に制限をかけるようにしてもよい。前述のとおり、q軸電流指令値iqa *に予め制限をかけるようにしているので、q軸電圧指令値Vqa *およびd軸電圧指令値Vda *がdq座標での制限電圧Vlimを超える値に設定されることはほとんどないが、制限処理部30を設けておくことにより、より確実に正弦波駆動を行うことができる。
また、前述の実施形態では、コイル52とモータドライバ9との間の給電ライン53に現れる電圧を入力電圧検出部10で検出するようにしているが、たとえば、コイル52とモータドライバ9との間にさらに昇圧回路が介装されもよい。この場合には、入力電圧検出部10は、昇圧回路とモータドライバ9との間でモータドライバ9への入力電圧Vbを検出するように接続すればよい。
さらに、前述の実施形態では、この発明が電動パワーステアリング装置に適用される例について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置の駆動源としてのモータの制御に限らず、他の任意の用途のモータの制御にも容易に拡張して適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータドライバの構成を説明するための電気回路図である。 dq軸電流指令値演算部の動作を説明するための図であり、モータ回転角速度に応じたq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。 弱め磁束制御を行うときのdq軸電流指令値演算部の動作を説明するためのフローチャートである。 正弦波駆動のためにd軸電圧指令値Vda *とq軸電圧指令値Vqa *とに課される条件を示す図である。 この発明の第2の実施形態を説明するための図であり、dq軸電流指令値演算部が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimを示す。 この発明の第3の実施形態を説明するための図であり、dq軸電流指令値演算部が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimを示す。
符号の説明
3…電動モータ、4…レゾルバ、5…モータ制御装置、6…マイクロコンピュータ、61U…U相上側スイッチング素子、62U…U相下側スイッチング素子、61V…V相上側スイッチング素子、62V…V相下側スイッチング素子、61W…W相上側スイッチング素子、62W…W相下側スイッチング素子

Claims (4)

  1. モータを駆動する駆動回路の上側スイッチング素子と下側スイッチング素子とを同時にオフするデッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧に基づいて、前記モータを弱め磁束制御するための指令値を演算する指令値演算手段と、
    この指令値演算手段によって演算された指令値に基づいて、前記駆動回路の上側スイッチング素子および下側スイッチング素子のオン/オフ制御ならびに前記デッドタイム制御を行うための制御信号を生成する制御信号生成手段とを含む、モータ制御装置。
  2. 前記モータが三相モータであり、
    前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧が、dq座標における制限電圧であり、前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味しないときのdq座標における制限電圧から、前記デッドタイム制御に起因する各相電圧の変動絶対値の2√6/3倍以上を減算した値である、請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記モータ制御装置が、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することによりモータを制御するものであり、
    前記指令値演算手段が、
    q軸電流指令値を設定するq軸電流指令値設定手段と、
    前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧に基づいて、前記q軸電流指令値設定手段によって設定されるq軸電流指令値に制限を加えるq軸電流指令値制限手段と、
    このq軸電流指令値制限手段による制限後のq軸電流指令値に基づいて、d軸電流指令値を設定するd軸電流指令値設定手段とを含む、請求項1または2記載のモータ制御装置。
  4. 前記デッドタイム制御に起因する電圧変動を加味した制限電圧を、前記駆動回路への入力電圧に基づいて設定する制限電圧設定手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。

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