JP2009044821A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータの振動を抑制しつつ、出力の増加を図ることができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3は、モータ制御装置5によって制御される。モータ制御装置5は、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することにより電動モータ3を制御する。dq軸電流指令値演算部26は、操舵トルクおよび車速に基づいてq軸電流指令値iqa *を設定する。また、dq軸電流指令値演算部26は、q軸電流指令値iqa *に対応するq軸電圧指令値とq軸電圧上限値との差に所定の加算電圧を加算し、その加算結果をモータ回転速度およびd軸インダクタンスで除することにより、d軸電流指令値ida *を設定する。
【選択図】図1

Description

この発明は、モータのdq座標における二相電流の指令値を定め、この指令値に基づいてモータを制御するためのモータ制御装置に関する。
モータが発生する駆動力を舵取り機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置が知られている。電動パワーステアリング装置は、具体的には、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを検出するトルクセンサと、このトルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいてモータを駆動するモータ制御装置とを備えている。
モータには、たとえば、三相DCブラシレスモータが適用される。モータ制御装置は、ロータの電気角に基づいて、ステータの各相に正弦波状に変化する電圧を印加する正弦波駆動を行う。より具体的には、たとえば、モータ制御装置は、トルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいて、dq座標における二相電流の指令値、すなわち、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を設定する。さらに、モータ制御装置は、モータに実際に流れているd軸電流およびq軸電流を検出し、各指令値に対するd軸電流およびq軸電流の偏差を求め、それらの偏差に対応したd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を演算する。そして、モータ制御装置は、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を三相(U相,V相,W相)の電圧値に変換し、これらの値の電圧をモータの各相に印加する。
WO2006/109809
低中速回転域では、d軸電流指令値を零とする一方で、q軸電流指令値を操舵トルクに応じた値に設定することにより、モータから必要なトルクを発生させることができる。しかし、高速回転域では、モータの逆起電力のために出力(トルク)が不足する。そこで、モータの出力を増加させるために、d軸電流指令値を零以外の有意値とし、界磁を弱める方向に電流を流す弱め磁束制御が行われる。
一方、各相の電圧が正弦波となるようにするためには、各相電圧の振幅を電源電圧Edの1/2以下とする必要があり、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに関して、次式(P1)が成立する必要がある(特許文献1)。
√(Vd 2+Vq 2)≦Ed√3/2√2 …… (P1)
したがって、d軸電流指令値およびq軸電流指令値によっては、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqが前記式(P1)の条件を満たさず、正弦波駆動ができなくなる。そのため、モータに振動が生じ、この振動が舵取り機構を介してステアリングホイールに伝達され、操舵フィーリングの悪化を招く。
特許文献1の先行技術は、前記式(P1)の条件が成立するようにq軸電圧指令値を制限している。しかし、q軸電圧指令値が制限される状況では、q軸電流iqが変動的になり、モータが発生するトルクが変動して、モータの振動を生じ、ひいてはステアリングホイールを振動させてしまう。
すなわち、q軸電圧指令値に制限がかかるほどの高電流高速回転域では、q軸電圧指令値を制限すると、q軸電流iqが狙い値よりも強制的に小さくされる。一方、d軸電圧には、d軸電流idを含む項とともにq軸電流iqを含む項(後記式(5)参照)も含まれているため、q軸電流iqが少なくなることによって、d軸電流id(≦0)が狙い値よりも大きな絶対値をとることになる。そして、d軸電流iqの絶対値が大きくなることにより、q軸電圧に余裕ができ(後記式(6)参照)、q軸電流iqを大きくできる要素が発生する。したがって、モータ制御装置は、q軸電流iqを大きくしようとする。
このように、q軸電圧指令値に制限がかかる状況では、dq軸上で干渉し合いながらd軸電流idおよびq軸電流iqが決まる。そして、PI(比例積分)制御部等を含むフィードバックループは、その成り行きで決まったd軸電流idおよびq軸電流iqをd軸電流指令値およびq軸電流指令値に修正するための電圧指令値を設定することになる。このようにしてq軸電流iqが変動的になり、モータに微振動が生じて、操舵違和感を生じることになる。
そこで、この発明の目的は、モータの振動を抑制しつつ、出力の増加を図ることができるモータ制御装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することによりモータを制御するためのモータ制御装置であって、q軸電流指令値を設定するq軸電流指令値設定手段(S1)と、このq軸電流指令値設定手段によって設定されるq軸電流指令値に基づいてq軸電圧指令値を設定するq軸電圧指令値設定手段(S2)と、前記q軸電圧指令値設定手段によって設定されるq軸電圧指令値とq軸電圧上限値との差に所定の加算電圧を加算し、その加算結果をモータ回転速度およびd軸インダクタンスで除することにより、d軸電流指令値を設定するd軸電流指令値設定手段(S6)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、q軸電圧指令値とq軸電圧上限値(具体的には、正弦波駆動のための上限値)との差に所定の加算電圧を予め加算し、その加算結果をモータ回転速度およびd軸インダクタンスで除することによって、d軸電流指令値が設定される。これにより、加算電圧を適切に定めておけば、d軸電流指令値が零以外の有意値に設定されることでd軸電圧が増加したときにも、dq座標上での制限電圧(より具体的には、正弦波駆動のための制限電圧)の範囲内にd軸電圧およびq軸電圧を収めることができる。これにより、モータに振動が生じることを抑制または防止しつつ、d軸電流による弱め磁束制御を行って、とくに高速回転域における出力の増加を図ることができる。
請求項2記載の発明は、前記q軸電圧指令値設定手段によって設定されたq軸電圧指令値を、前記q軸電圧上限値以下に制限する制限処理手段(S8)をさらに含む、請求項1記載のモータ制御装置である。これにより、q軸電圧指令値をq軸電圧上限値に制限できる。しかも、d軸電流指令値は、d軸電圧の増加を予め見越して設定されているので、制限処理に起因してq軸電流が変動的になることもない。これにより、モータに振動が生じることを抑制または防止できる。
前記モータ制御装置は、前記d軸電流指令値設定手段によって設定されるd軸電流指令値に基づいてd軸電圧指令値を演算する手段(S7)をさらに含むものであってもよい。この場合に、前記制限処理手段は、次の(A)式に従ってq軸電圧指令値を制限するものであってもよい。この場合、q軸電圧上限値は、(A)式の右辺の値としてもよい。
Figure 2009044821
ただし、Vda *はd軸電圧指令値、Vqa *はq軸電圧指令値、Edは電源電圧である。
請求項3記載の発明は、前記加算電圧を、q軸電圧、q軸電圧指令値、q軸電流、q軸電流指令値、モータ回転速度、およびq軸電圧指令値とq軸電圧上限値との差のうちの一つ以上に応じて可変設定する加算電圧設定手段(S5)をさらに含む、請求項1または2記載のモータ制御装置である。この構成により、加算電圧を適切に設定することができるので、モータの振動を抑制しながら、モータの出力を効率的に増加させることができる。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3と、この電動モータ3を駆動制御するモータ制御装置(ECU:電子制御ユニット)5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクと車内LAN(CANバス)を通じて与えられる車速情報とに応じて電動モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスDCモータである。
モータ制御装置5は、CPU、RAMおよびROMを含むマイクロコンピュータ6と、電動モータ3に流れるU相電流iuaおよびV相電流ivaをそれぞれ検出するモータ電流検出回路7Uおよび7Vと、電動モータ3に付設されたロータ位置センサとしてのレゾルバ4の出力信号を増幅するレゾルバアンプ8と、電動モータ3に電力を供給するモータドライバ9とを備えている。レゾルバアンプ8は、レゾルバ4とともに信号出力手段を構成しており、レゾルバ4からの信号を処理して、電動モータ3のロータ回転角度θに関する正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを出力する。ロータ回転角度θは、電動モータ3のU相電機子巻線の位置を基準とするロータ(界磁)の角度(電気角)である。
マイクロコンピュータ6は、トルクセンサ1の出力信号をA/D変換ポート11を介してディジタルデータで表された操舵トルクとして取り込み、また、車内LANからの車速情報を通信ポート12を介して取り込む。そして、マイクロコンピュータ6は、操舵トルクおよび車速に基づいて電動モータ3の電流指令値を設定し、さらに、この電流指令値とモータ電流検出回路7U,7Vの出力信号とに基づいて電圧指令値を設定し、この電圧指令値をモータドライバ9に与える。これにより、モータドライバ9から電動モータ3に適切な電圧が印加され、電動モータ3から操舵補助に必要十分なトルクが発生する。
マイクロコンピュータ6は、所定のプログラムを実行することによって実現される複数の機能処理手段を備えている。この複数の機能処理手段には、操舵トルクおよび車速に基づいて目標電流値を演算する目標電流演算部21が含まれている。この目標電流演算部21が出力する目標電流値は、加算部22に入力されるようになっている。この加算部22には、各種の補償制御を行う補償制御部23からの補正値が与えられ、この補正値が目標電流値に加算されて、補正後の目標電流値が求められるようになっている。
補償制御部23は、たとえば、ステアリングホイールの収斂性を向上させるための収斂性補正値を演算する収斂性補正部などを含み、通信ポート12からの車速および電動モータ3のロータの回転角速度ωに基づいて、目標電流値を補正するための補正値を演算するようになっている。
マイクロコンピュータ6は、電動モータ3のロータの回転角速度ω(電気角における回転角速度)を演算するための角速度演算部25を備えている。この角速度演算部25には、レゾルバアンプ8の出力信号をディジタルデータに変換して取り込むA/D変換ポート13からのデータが与えられている。A/D変換ポート13は、所定のサンプリング周期でレゾルバアンプ8の出力信号をサンプリングしてディジタルデータに変換し、ディジタル化された正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを生成する。
角速度演算部25は、たとえば、次式に従って、回転角速度ωを求めるように構成されていてもよい。
ω=Δθ≒sinΔθ=sinθicosθi-1−cosθisinθi-1
ただし、θiは今サンプリング周期でのロータ回転角度、
θi-1は前サンプリング周期でのロータ回転角度
Δθ=θi−θi-1である。
マイクロコンピュータ6は、さらに、dq軸電流指令値演算部26を備えている。このdq軸電流指令値演算部26は、前述の補正後の目標電流値に基づいて、dq座標系におけるd軸電流指令値ida *およびq軸電流指令値iqa *を求める。dq座標系は、電動モータ3のロータと同期して回転するd軸およびq軸からなる回転直交座標系である。d軸は、ロータが形成する磁束の方向に沿った軸であり、q軸は、d軸に対してπ/2進んだ位相にある軸である。ただし、この実施形態では、界磁(ロータ)のS極からN極に向かう方向をd軸の正方向にとることにする。
dq軸電流指令値演算部26は、高速回転域(たとえば、800rpmを超える回転速度域)では、d軸電流指令値ida *≠0に設定して、いわゆる弱め磁束制御を行って出力を増加させる。
dq軸電流指令値演算部26によって算出されたq軸電流指令値iqa *は、減算部27qに入力されるようになっている。この減算部27qには、U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vがそれぞれ検出するU相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して求められるq軸電流iqaが入力されている。U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vの出力信号は、A/D変換ポート14,15によってディジタルデータに変換されてマイクロコンピュータ6に取り込まれ、電流検波部16,17で検波された後、三相交流/dq座標変換部28に入力されるようになっている。三相交流/dq座標変換部28は、下記(1)式に従って、U相電流iuaおよびV相電流ivaをdq座標系の値に変換する。
Figure 2009044821
三相交流/dq座標変換部28には、A/D変換ポート13からの正弦信号sinθおよび余弦信号cosθが与えられており、これらを用いて前記(1)式に従う演算が行われるようになっている。
三相交流/dq座標変換部28は、三相交流/dq座標変換により得られたq軸電流iqaを減算部27qに与える。したがって、減算部27qからは、q軸電流指令値iqa *に対するq軸電流iqaの偏差が出力されることになる。
一方、d軸電流指令値ida *は、減算部27dに入力されるようになっている。そして、減算部27dには、三相交流/dq座標変換部28において前記(1)式に従い、U相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して得られるd軸電流idaが入力されている。これにより、減算部27dは、d軸電流指令値ida *に対するd軸電流idaの偏差を出力することになる。
減算部27d,27qから出力される偏差は、それぞれd軸電流PI(比例積分)制御部29dおよびq軸電流PI制御部29qに与えられる。PI制御部29d,29qは、それぞれ、減算部27d,27qから入力される偏差に基づいてPI演算を行い、これによりd軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *を求める。
d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *は、制限処理部30による制限処理を受けた後に、dq/三相交流座標変換部31に入力されるようになっている。
制限処理部30は、モータドライバ9に接続された電源(車載バッテリ)からの電源電圧Edに基づいて、下記(2)式に従って、q軸電圧指令値Vqa *に制限を加える。この制限を加えることによって、電動モータ3の各相の電圧指令値を正弦波とすることができる(特許文献1参照)。
Figure 2009044821
dq/三相交流座標変換部31には、レゾルバアンプ8からA/D変換ポート13を介して取り込まれた正弦信号sinθおよび余弦信号cosθが入力されている。dq/三相交流座標変換部31は、これらを用い、下記(3)式に従って、d軸電圧指令値Vda *および前記制限処理後のq軸電圧指令値Vqa *を三相交流座標系の指令値Vua *,Vva *,Vwa *に変換する。そして、その得られたU相電圧指令値Vua *、V相電圧指令値Vva *およびW相電圧指令値Vwa *を、三相PWM形成部32に入力する。
Figure 2009044821
なお、W相電圧指令値Vwa *は、上記(3)式の演算によるのではなく、零からU相電圧指令値Vua *およびV相電圧指令値Vva *を減算することにより求めることができる。このようにすれば、CPUへの負担を軽減できる。むろん、CPUの演算速度が十分である場合には、上記(3)式に従う演算によってW相電圧指令値Vwa *を算出するようにしてもよい。
三相PWM形成部32は、U相電圧指令値Vua *、V相電圧指令値Vva *およびW相電圧指令値Vwa *にそれぞれ対応したPWM信号Su,Sv,Swを作成し、その作成したPWM信号Su,Sv,Swをモータドライバ9に向けて出力する。これにより、モータドライバ9から、電動モータ3のU相、V相およびW相に、それぞれPWM信号Su,Sv,Swに応じた電圧Vua,Vva,Vwaが印加され、電動モータ3から、操舵補助に必要なトルクが発生される。
図2は、正弦波駆動のためにd軸電圧指令値Vda *とq軸電圧指令値Vqa *とに課される条件を示す図である。電動モータ3の各相の電圧が正弦波となるようにするためには、各相電圧の振幅を電源電圧Edの1/2以下とする必要があり、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに関して、次の(4)式が成立する必要がある(特許文献1)。
√(Vd 2+Vq 2)≦Ed√3/2√2=Vlim …… (4)
ただし、Vlimは正弦波駆動が可能なdq座標での制限電圧である。
一方、定常状態でのq軸電圧Vqおよびd軸電圧Vdは、次のように、表される。
Figure 2009044821
これらを前記(4)式に代入すると、次の(7)式が得られる。
Figure 2009044821
弱め磁束制御をしないとき、すなわち、d軸電流指令値ida *=0で前記(7)式が満たされる条件は、次の(8)式である。
Figure 2009044821
これを変形すると、弱め磁束制御をしないときに正弦波駆動を行うための条件は、次の(9)式で与えられることがわかる。
Figure 2009044821
この条件が満たされないとき、すなわち、下記(10)式の条件のときには、d軸電流指令値ida *<0とすることにより前記(7)式を満たす必要がある。
Figure 2009044821
この場合、q軸電圧Vqは、ωLdda *だけ減少する。この減少分がd軸電圧Vdの増加分Rida *で補われる。
一方、制限処理部30は、前記(4)式の条件を満たすべく、q軸電圧指令値Vqa *を、前記(2)式に従って制限する。すなわち、q軸電圧指令値Vqa *が前記(2)式の右辺を超えるときには、q軸電圧指令値Vqa *が当該(2)式の右辺の値に修正される。これにより、q軸電圧Vqに不足分電圧ΔVq *が生じるが、この不足分電圧ΔVq *がd軸電圧Vdの増加によって補われることになる。
ところが、図2から理解されるように、q軸電圧Vqの不足分電圧ΔVq *にそのまま対応するようにd軸電流指令値ida *(弱め磁束量)を定めると、d軸電圧Vdが大きくなりすぎて、正弦波駆動が可能な制限電圧Vlimの範囲を超えてしまう。そのため、制限処理部30は、q軸電圧指令値Vqa *をさらに制限するように動作する。このような動作の結果、q軸電流iqが変動的になり、電動モータ3の振動が引き起こされるおそれがある。
そこで、この実施形態では、不足分電圧ΔVq *に対して所定の加算電圧Vaddを加算し、その加算結果をモータ回転角速度ωおよびd軸インダクタンスLdで除することにより、d軸電流指令値ida *が求められる。
すなわち、まず、q軸電流指令値iqa *に基づいてq軸電圧指令値Vqa *が設定され、このq軸電圧指令値Vqa *と前記(2)式の右辺で表されるq軸電圧上限値Vq_lim(ただしida *=0のときの値)との差が不足分電圧ΔVq *(=Vq_lim−Vqa *)として求められる。
この不足分電圧ΔVq *に対して加算電圧Vaddが加算される。この加算結果の電圧分(ΔVq *+Vadd)がd軸電圧Vdの増加分Rida *で補われるように、d軸電流指令値ida *が定められる。すなわち、d軸電流指令値ida *は、次の(11)式によって求められる。
da *=(ΔVq *+Vadd)/(ω・Ld) ……(11)
これにより、d軸電圧指令値Vda *と制限処理部30で制限処理を受けたq軸電圧指令値Vqa *とは、前記(4)式で表される半径Vlimの円内にとどまる。そのため、q軸電流iqが変動的になることを抑制または防止できる。これにより、電動モータ3の振動を抑制して、操舵フィーリングを向上することができる。
図3は、加算電圧Vaddの設定例を説明するための図である。
図3(a)の例では、加算電圧Vaddは、制限処理部30での制限処理前のq軸電圧指令値Vqa *に応じて可変設定されるようになっている。加算電圧Vaddは、q軸電圧指令値Vqa *の増加に伴って単調に減少するようになっている。より具体的には、q軸電圧指令値Vqa *が正の値のとき(たとえば、右回り方向のトルクを発生するとき)には加算電圧Vaddは負の値をとり、q軸電圧指令値Vqa *が負の値のとき(たとえば、左回り方向のトルクを発生するとき)には加算電圧Vaddは正の値をとる。そして、q軸電圧指令値Vqa *の絶対値の増加に伴って、加算電圧Vaddの絶対値が単調に増加する。q軸電圧指令値Vqa *の絶対値が比較的小さな領域では加算電圧Vaddの絶対値の変化率は比較的小さく、q軸電圧指令値Vqa *の絶対値が比較的大きな領域では加算電圧Vaddの絶対値の変化率が比較的大きくなっている。このように、この例では、q軸電圧指令値Vqa *に対して非線形に変化するように加算電圧Vaddが定められるようになっている。
また、図3(b)の例では、加算電圧Vaddは、モータ回転角速度ω応じて可変設定されるようになっている。加算電圧Vaddは、モータ回転角速度ωの増加に伴って単調に減少するようになっている。より具体的には、モータ回転角速度ωが正の値のとき(たとえば右回り方向のとき)には加算電圧Vaddは負の値をとり、モータ回転角速度ωが負の値のとき(たとえば左まわり方向のとき)には加算電圧Vaddは正の値をとる。そして、モータ回転角速度ωの絶対値の増加に伴って、加算電圧Vaddの絶対値が単調に増加する。モータ回転角速度ωの絶対値が比較的小さな領域では加算電圧Vaddの絶対値の変化率は比較的小さく、モータ回転角速度ωの絶対値が比較的大きな領域では加算電圧Vaddの絶対値の変化率が比較的大きくなっている。このように、この例では、モータ回転角速度ωに対して非線形に変化するように加算電圧Vaddが定められるようになっている。
加算電圧Vaddは、q軸電圧指令値Vqa *やモータ回転角速度ωに限らず、q軸電圧Vqに応じて可変設定するようにしてもよいし、不足分電圧ΔVq *に応じて可変設定するようにしてもよいし、q軸電流指令値iqa *に応じて可変設定してもよいし、q軸電流iq(検出値)に応じて可変設定してもよい。さらには、これらの2つ以上の組み合わせに基づいて加算電圧Vaddを可変設定する構成とすることもできる。
図4は、dq軸電流指令値およびdq軸電圧指令値の設定動作を説明するためのフローチャートである。dq軸電流指令値演算部26は、車速および操舵速度等に基づいてq軸電流指令値iqa *を設定する(ステップS1)。このq軸電流指令値iqa *とq軸電流iqとの偏差に対応するq軸電圧指令値Vqa *がq軸電流PI制御部29qによって設定される(ステップS2)。
次に、dq軸電流指令値演算部26は、q軸電圧指令値Vqa *の絶対値と前述の上限値Vq_limの絶対値とを比較する(ステップS3)。
q軸電圧指令値Vqa *の絶対値が上限値Vq_limの絶対値よりも大きければ(ステップS3:YES)、dq軸電流指令値演算部26は、上限値Vq_limとq軸電圧指令値Vqa *との差を、前記不足分電圧ΔVq *として演算する(ステップS4)。さらに、dq軸電流指令値演算部26は、さらに、q軸電圧指令値Vqa *などに基づいて前述の加算電圧Vaddを演算する(ステップS5)。
次いで、dq軸電流指令値演算部26は、前記(11)式に従って、d軸電流指令値ida *を求める(ステップS6)。このd軸電流指令値ida *と実際のd軸電流idとの偏差に基づき、d軸PI制御部29dによって、d軸電圧指令値Vda *が設定される(ステップS7)。そして、制限処理部30によって、前記(2)式による制限が加えられる(ステップS8)。こうして、ステップS7で設定されたd軸電圧指令値Vda *と前記制限後のq軸電圧指令値Vqa *とに基づいて、電動モータ3が制御されることになる。
一方、q軸電圧指令値Vqa *の絶対値が上限値Vq_limの絶対値以下であれば(ステップS3:NO)、ステップS2で設定されたq軸電圧指令値Vqa *を用いて電動モータ3が駆動される。すなわち、dq軸電流指令値演算部26は、d軸電流指令値ida *を零とし(ステップS9)、弱め磁束制御を行わない。このd軸電流指令値ida *(=0)と実際のd軸電流idとの偏差に基づき、d軸電流PI制御部29dによって、d軸電圧指令値Vda *が設定される(ステップS7)。そして、制限処理部30によって、前記(2)式による制限がq軸電圧指令値Vqa *に加えられる(ステップS8)が、この場合には、制限処理は働かずに、q軸電流PI制御部29qによって求められたq軸電圧指令値Vqa *がそのまま用いられることになる。
以上のように、この実施形態によれば、制限処理部30によるq軸電圧指令値Vda *の制限を補うためのd軸電圧Vdの増加を予め見越してd軸電流指令値ida *が設定されている。これにより、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを制限電圧Vlimの範囲内に抑制できるので、制限処理部30によるq軸電圧指令値Vqa *の制限に起因するq軸電流iqの変動を抑制できる。その結果、電動モータ3の振動を抑制しつつ、弱め磁束制御による出力の増加を図ることができる。これにより、操舵フィーリングを向上できる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、この発明が電動パワーステアリング装置に適用される例について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置の駆動源としてのモータの制御に限らず、他の任意の用途のモータの制御にも容易に拡張して適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 正弦波駆動のためにd軸電圧指令値Vda *とq軸電圧指令値Vqa *とに課される条件を示す図である。 加算電圧の設定例を説明するための図である。 dq軸電流指令値およびdq軸電圧指令値の設定動作を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
3…電動モータ、4…レゾルバ、5…モータ制御装置、6…マイクロコンピュータ

Claims (3)

  1. dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することによりモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    q軸電流指令値を設定するq軸電流指令値設定手段と、
    このq軸電流指令値設定手段によって設定されるq軸電流指令値に基づいてq軸電圧指令値を設定するq軸電圧指令値設定手段と、
    前記q軸電圧指令値設定手段によって設定されるq軸電圧指令値とq軸電圧上限値との差に所定の加算電圧を加算し、その加算結果をモータ回転速度およびd軸インダクタンスで除することにより、d軸電流指令値を設定するd軸電流指令値設定手段とを含む、モータ制御装置。
  2. 前記q軸電圧指令値設定手段によって設定されたq軸電圧指令値を、前記q軸電圧上限値以下に制限する制限処理手段をさらに含む、請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記加算電圧を、q軸電圧、q軸電圧指令値、q軸電流、q軸電流指令値、モータ回転速度、およびq軸電圧指令値とq軸電圧上限値との差のうちの一つ以上に応じて可変設定する加算電圧設定手段をさらに含む、請求項1または2記載のモータ制御装置。
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