JP2009137323A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モータの高速回転域においても電流偏差に基づく異常判定処理を行うことができ、これにより、電流偏差に基づく異常判定機能を高めることができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3は、モータ制御装置5によって制御される。モータ制御装置5は、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することにより電動モータ3を制御する。dq軸電流指令値演算部26は、操舵トルクおよび車速に基づいてq軸電流指令値iqa *を設定し、これをq軸電流上限値およびq軸電流下限値と比較して、その比較結果に応じてq軸電流指令値iqa *に制限を加える。この制限されたq軸電流指令値iqa *に対するq軸電流iqaの偏差(q軸電流偏差)δiqに基づいて、異常判定部33による異常判定処理が行われる。
【選択図】図1
【解決手段】舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3は、モータ制御装置5によって制御される。モータ制御装置5は、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することにより電動モータ3を制御する。dq軸電流指令値演算部26は、操舵トルクおよび車速に基づいてq軸電流指令値iqa *を設定し、これをq軸電流上限値およびq軸電流下限値と比較して、その比較結果に応じてq軸電流指令値iqa *に制限を加える。この制限されたq軸電流指令値iqa *に対するq軸電流iqaの偏差(q軸電流偏差)δiqに基づいて、異常判定部33による異常判定処理が行われる。
【選択図】図1
Description
この発明は、モータが発生する駆動力を舵取り機構に伝達して操舵補助する構成の電動パワーステアリング装置に関する。
モータが発生する駆動力を舵取り機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置が知られている。電動パワーステアリング装置は、具体的には、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクを検出するトルクセンサと、このトルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいてモータを駆動するモータ制御装置とを備えている。
モータには、たとえば、三相DCブラシレスモータが適用される。モータ制御装置は、ロータの電気角に基づいて、ステータの各相に正弦波状に変化する電圧を印加する正弦波駆動を行う。より具体的には、たとえば、モータ制御装置は、トルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいて、dq座標における二相電流の指令値、すなわち、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を設定する。さらに、モータ制御装置は、モータに実際に流れているd軸電流値およびq軸電流値を検出し、各指令値に対するd軸電流値およびq軸電流値の偏差を求め、それらの偏差に対応したd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を演算する。そして、モータ制御装置は、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を三相(U相,V相,W相)の電圧値に変換し、これらの値の電圧をモータの各相に印加する。
モータには、たとえば、三相DCブラシレスモータが適用される。モータ制御装置は、ロータの電気角に基づいて、ステータの各相に正弦波状に変化する電圧を印加する正弦波駆動を行う。より具体的には、たとえば、モータ制御装置は、トルクセンサによって検出される操舵トルクに基づいて、dq座標における二相電流の指令値、すなわち、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を設定する。さらに、モータ制御装置は、モータに実際に流れているd軸電流値およびq軸電流値を検出し、各指令値に対するd軸電流値およびq軸電流値の偏差を求め、それらの偏差に対応したd軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を演算する。そして、モータ制御装置は、d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値を三相(U相,V相,W相)の電圧値に変換し、これらの値の電圧をモータの各相に印加する。
一方、モータ制御系に異常が生じたときのフェールセーフのために、電流指令値と電流値との差である電流偏差がモニタされるようになっている。この電流偏差が所定の閾値以上である状態が予め定める異常判定時間以上継続した場合には、異常が発生したものと判定され、モータの制御が中断される。
特開2000−177610号公報
ところが、高速回転域では、図10に示すように、モータの逆起電力のためにモータ電流が低下し、電流指令値に対応するアシストトルクが得られない状態(いわゆるアシスト切れ)が生じる。このようなアシスト切れが生じると、図11に示すように、電流指令値が一定に保持されていても、モータ回転角速度の増加に伴って、実電流値が低下する。その結果、異常が発生していない状態でも、電流偏差が大きくなるから、異常判定に誤りが生じる。この問題を解決するために、モータ回転角速度が所定値以上のときには、電流偏差に基づく異常判定を中断することが考えられるが、高速回転域での異常判定が犠牲となる。
また、電流制御をフィードバック制御で行っているため、図12に示すように、応答遅れに起因する電流偏差が生じる。そのため、異常判定時間を長く(たとえば、100ミリ秒)設定する必要があり、異常判定に遅れが生じるという課題がある。これらのために、電流偏差に基づく異常判定は、異常判定機能を高めることが求められている。
そこで、この発明の目的は、モータの高速回転域においても電流偏差に基づく異常判定処理を行うことができ、これにより、電流偏差に基づく異常判定機能を高めることができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
そこで、この発明の目的は、モータの高速回転域においても電流偏差に基づく異常判定処理を行うことができ、これにより、電流偏差に基づく異常判定機能を高めることができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、電流偏差に基づく異常判定処理に要する時間を短縮でき、これにより、電流偏差に基づく異常判定機能を高めることができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、モータ指示電流に基づいてモータ(3)を駆動して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、前記モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段(7U,7V,16,17,28)と、モータ指示電流と所定の上限値および下限値とを比較し、前記モータ指示電流が前記上限値を超える場合は当該上限値を、前記モータ指示電流が前記下限値未満の場合は当該下限値を、前記モータ指示電流が前記下限値以上前記上限値以下の場合は当該モータ指示電流を、それぞれ比較結果として出力する比較手段(26,S3〜S6)と、この比較手段が出力する比較結果と前記モータ電流検出手段によって検出されるモータ電流との差に基づいて異常の有無を判定する異常判定手段(27q,33,36)とを含むモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、モータ指示電流が所定の上限値および下限値と比較され、この上限値および下限値の間の値に制限された比較結果が求められる。この比較結果とモータ電流(検出値)との差(電流偏差)に基づいて異常の有無が判定される。このように、モータ指示電流を予め上限値と下限値との間の値に制限していることにより、高速回転時等であっても、正常時に電流偏差が拡大してしまうような事態を回避できる。こうして、電流偏差を用いた異常判定処理を、高速回転時等においても適用することができるようになり、電流偏差を用いた異常判定処理の機能を高めることができる。
請求項2記載の発明は、前記モータ制御装置が、dq座標上のd軸電流およびq軸電流を制御することによりモータを制御するものであり、前記モータ指示電流としてのq軸電流指令値に対する前記上限値および下限値が、下記(A)式で与えられる最上限値iqa_uplimと、下記(B)式で与えられる最下限値iqa_downlimとの間で設定されている、請求項1記載の電動パワーステアリング装置である。
Rはモータの固定子巻線抵抗
φは界磁による固定子鎖交磁束から計算されるdq座標上の磁束
ωはモータの電気角における回転角速度
Ldはd軸インダクタンス
Lqはq軸インダクタンス
Vlimは正弦波駆動が可能なdq座標での制限電圧
この構成によれば、正弦波駆動が可能な上限値および下限値の間に制限された比較結果が求められることになる。これにより、モータの逆起電力の影響でアシスト切れが生じる高速域においても、電流偏差に基づく異常判定を誤りなく行うことができるようになる。
Rはモータの固定子巻線抵抗
φは界磁による固定子鎖交磁束から計算されるdq座標上の磁束
ωはモータの電気角における回転角速度
Ldはd軸インダクタンス
Lqはq軸インダクタンス
Vlimは正弦波駆動が可能なdq座標での制限電圧
この構成によれば、正弦波駆動が可能な上限値および下限値の間に制限された比較結果が求められることになる。これにより、モータの逆起電力の影響でアシスト切れが生じる高速域においても、電流偏差に基づく異常判定を誤りなく行うことができるようになる。
請求項3記載の発明は、前記比較手段の比較結果が入力されるフィルタ(35)をさらに含み、前記異常判定手段が、前記フィルタの出力と前記モータ電流検出手段によって検出されるモータ電流との差に基づいて異常の有無を判定するものである、請求項1または2記載の電動パワーステアリング装置である。
この構成によれば、比較結果をフィルタによってさらに最適化できるので、電流偏差に基づく異常判定処理をより適切に行うことができる。たとえば、電流応答特性のフィルタを用いれば、電流応答の遅れに対応させた比較結果が得られることになる。したがって、このような比較結果とモータ電流(検出値)との偏差を用いることにより、電流応答遅れに起因する電流偏差成分を排除できる。その結果、電流偏差を用いた異常判定処理をより適切に行うことができるようになる。
この構成によれば、比較結果をフィルタによってさらに最適化できるので、電流偏差に基づく異常判定処理をより適切に行うことができる。たとえば、電流応答特性のフィルタを用いれば、電流応答の遅れに対応させた比較結果が得られることになる。したがって、このような比較結果とモータ電流(検出値)との偏差を用いることにより、電流応答遅れに起因する電流偏差成分を排除できる。その結果、電流偏差を用いた異常判定処理をより適切に行うことができるようになる。
請求項4記載の発明は、モータ指示電流に基づいて基本駆動値を演算する基本駆動値演算手段(51a,52a)と、この基本駆動値演算手段によって演算される基本駆動値に対して、非干渉化制御量による補正を加えてモータ駆動値を求める非干渉化制御手段(51b,51c,52b,52c)と、この非干渉化制御手段によって求められたモータ駆動値に基づいてモータを駆動する駆動手段(31,32,9)とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置である。
非干渉化制御とは、ロータの回転に伴ってモータ内部で生じる速度起電力を補償するように電圧指令値を定める制御である。非干渉化制御を行うことによって、速度起電力による応答性や追従性の低下を効果的に抑制できる。その結果、電流フィードバック制御に起因する応答遅れを改善できる。これにより、応答遅れに起因する電流偏差成分を抑制できるから、電流偏差に基づく異常判定処理の時間を短縮することができる。その結果、電流偏差に基づく異常判定処理機能を向上することができる。それに応じて、電動パワーステアリング装置において用いられている他の異常判定処理を省いたり、電流偏差を利用した異常判定処理の優先順位を高めたりすることができる。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3と、この電動モータ3を駆動制御するモータ制御装置(ECU:電子制御ユニット)5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクと車内LAN(CANバス)を通じて与えられる車速情報とに応じて電動モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスDCモータである。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両のステアリングホイールに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に操舵補助力を与える電動モータ3と、この電動モータ3を駆動制御するモータ制御装置(ECU:電子制御ユニット)5とを備えている。モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルクと車内LAN(CANバス)を通じて与えられる車速情報とに応じて電動モータ3を駆動することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。電動モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスDCモータである。
モータ制御装置5は、CPU、RAMおよびROMを含むマイクロコンピュータ6と、電動モータ3に流れるU相電流iuaおよびV相電流ivaをそれぞれ検出するモータ電流検出回路7Uおよび7Vと、電動モータ3に付設されたロータ位置センサとしてのレゾルバ4の出力信号を増幅するレゾルバアンプ8と、電動モータ3に電力を供給するモータドライバ9とを備えている。レゾルバアンプ8は、レゾルバ4からの信号を処理して、電動モータ3のロータ回転角度θに関する正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを出力する。ロータ回転角度θは、電動モータ3のU相電機子巻線の位置を基準とするロータ(界磁)の角度(電気角)である。
マイクロコンピュータ6は、トルクセンサ1の出力信号をA/D変換ポート11を介してディジタルデータで表された操舵トルクとして取り込み、また、車内LANからの車速情報を通信ポート12を介して取り込む。そして、マイクロコンピュータ6は、操舵トルクおよび車速に基づいて電動モータ3の電流指令値を設定し、さらに、この電流指令値とモータ電流検出回路7U,7Vの出力信号とに基づいて電圧指令値を設定し、この電圧指令値をモータドライバ9に与える。これにより、モータドライバ9から電動モータ3に適切な電圧が印加され、電動モータ3から操舵補助に必要十分なトルクが発生する。
マイクロコンピュータ6は、所定のプログラムを実行することによって実現される複数の機能処理手段を備えている。この複数の機能処理手段には、操舵トルクおよび車速に基づいて目標電流値を演算する目標電流演算部21が含まれている。この目標電流演算部21が出力する目標電流値は、加算部22に入力されるようになっている。この加算部22には、各種の補償制御を行う補償制御部23からの補正値が与えられ、この補正値が目標電流値に加算されて、補正後の目標電流値が求められるようになっている。
補償制御部23は、たとえば、ステアリングホイールの収斂性を向上させるための収斂性補正値を演算する収斂性補正部などを含み、通信ポート12からの車速および電動モータ3のロータの回転角速度ωに基づいて、目標電流値を補正するための補正値を演算するようになっている。
マイクロコンピュータ6は、電動モータ3のロータの回転角速度ω(電気角における回転角速度)を演算するための角速度演算部25を備えている。この角速度演算部25には、レゾルバアンプ8の出力信号をディジタルデータに変換して取り込むA/D変換ポート13からのデータが与えられている。A/D変換ポート13は、所定のサンプリング周期でレゾルバアンプ8の出力信号をサンプリングしてディジタルデータに変換し、ディジタル化された正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを生成する。
マイクロコンピュータ6は、電動モータ3のロータの回転角速度ω(電気角における回転角速度)を演算するための角速度演算部25を備えている。この角速度演算部25には、レゾルバアンプ8の出力信号をディジタルデータに変換して取り込むA/D変換ポート13からのデータが与えられている。A/D変換ポート13は、所定のサンプリング周期でレゾルバアンプ8の出力信号をサンプリングしてディジタルデータに変換し、ディジタル化された正弦信号sinθおよび余弦信号cosθを生成する。
角速度演算部25は、たとえば、次式に従って、回転角速度ωを求めるように構成されていてもよい。
ω=Δθ≒sinΔθ=sinθicosθi-1−cosθisinθi-1
ただし、θiは今サンプリング周期でのロータ回転角度、
θi-1は前サンプリング周期でのロータ回転角度
Δθ=θi−θi-1である。
ω=Δθ≒sinΔθ=sinθicosθi-1−cosθisinθi-1
ただし、θiは今サンプリング周期でのロータ回転角度、
θi-1は前サンプリング周期でのロータ回転角度
Δθ=θi−θi-1である。
マイクロコンピュータ6は、さらに、dq軸電流指令値演算部26を備えている。このdq軸電流指令値演算部26は、前述の補正後の目標電流値に基づいて、dq座標系におけるd軸電流指令値ida *およびq軸電流指令値iqa *を求める。dq座標系は、電動モータ3のロータと同期して回転するd軸およびq軸からなる回転直交座標系である。d軸は、ロータが形成する磁束の方向に沿った軸であり、q軸は、d軸に対してπ/2進んだ位相にある軸である。ただし、この実施形態では、界磁(ロータ)のS極からN極に向かう方向をd軸の正方向にとることにする。
dq軸電流指令値演算部26は、高速回転域(たとえば、800rpmを超える回転速度域)では、d軸電流指令値ida *≠0に設定して、いわゆる弱め磁束制御を行って出力を増加させる。
dq軸電流指令値演算部26によって算出されたq軸電流指令値iqa *は、減算部27qに入力されるようになっている。この減算部27qには、U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vがそれぞれ検出するU相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して求められるq軸電流iqaが入力されている。U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vの出力信号は、A/D変換ポート14,15によってディジタルデータに変換されてマイクロコンピュータ6に取り込まれ、電流検波部16,17で検波された後、三相交流/dq座標変換部28に入力されるようになっている。三相交流/dq座標変換部28は、下記(1)式に従って、U相電流iuaおよびV相電流ivaをdq座標系の値に変換する。
dq軸電流指令値演算部26によって算出されたq軸電流指令値iqa *は、減算部27qに入力されるようになっている。この減算部27qには、U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vがそれぞれ検出するU相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して求められるq軸電流iqaが入力されている。U相モータ電流検出回路7UおよびV相モータ電流検出回路7Vの出力信号は、A/D変換ポート14,15によってディジタルデータに変換されてマイクロコンピュータ6に取り込まれ、電流検波部16,17で検波された後、三相交流/dq座標変換部28に入力されるようになっている。三相交流/dq座標変換部28は、下記(1)式に従って、U相電流iuaおよびV相電流ivaをdq座標系の値に変換する。
三相交流/dq座標変換部28は、三相交流/dq座標変換により得られたq軸電流iqaを減算部27qに与える。したがって、減算部27qからは、q軸電流指令値iqa *に対するq軸電流iqaの偏差(q軸電流偏差)δiqが出力されることになる。
一方、d軸電流指令値ida *は、減算部27dに入力されるようになっている。そして、減算部27dには、三相交流/dq座標変換部28において前記(1)式に従い、U相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して得られるd軸電流idaが入力されている。これにより、減算部27dは、d軸電流指令値ida *に対するd軸電流idaの偏差(d軸電流偏差)δidを出力することになる。
一方、d軸電流指令値ida *は、減算部27dに入力されるようになっている。そして、減算部27dには、三相交流/dq座標変換部28において前記(1)式に従い、U相電流iuaおよびV相電流ivaを三相交流/dq座標変換して得られるd軸電流idaが入力されている。これにより、減算部27dは、d軸電流指令値ida *に対するd軸電流idaの偏差(d軸電流偏差)δidを出力することになる。
減算部27d,27qから出力される偏差は、dq軸電圧指令値演算部29に与えられる。dq軸電圧指令値演算部29は、減算部27d,27qから入力される各偏差δid,δiqに基づいてPI(比例積分)演算を行い。さらに、三相交流/dq座標変換部28から入力されるd軸電流およびq軸電流、ならびに角速度演算部25から入力される回転角速度ωに基づいて、後述の非干渉化制御を行う。これにより、dq軸電圧指令値演算部29は、d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *を求める。
d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *は、dq/三相交流座標変換部31に入力されるようになっている。このdq/三相交流座標変換部31にはまた、レゾルバアンプ8からA/D変換ポート13を介して取り込まれた正弦信号sinθおよび余弦信号cosθが入力されている。dq/三相交流座標変換部31は、これらを用い、下記(2)式に従って、d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *を三相交流座標系の指令値Vua *,Vva *,Vwa *に変換する。そして、その得られたU相電圧指令値Vua *、V相電圧指令値Vva *およびW相電圧指令値Vwa *を、三相PWM形成部32に入力する。
三相PWM形成部32は、U相電圧指令値Vua *、V相電圧指令値Vva *およびW相電圧指令値Vwa *にそれぞれ対応したPWM信号Su,Sv,Swを作成し、その作成したPWM信号Su,Sv,Swをモータドライバ9に向けて出力する。これにより、モータドライバ9から、電動モータ3のU相、V相およびW相に、それぞれPWM信号Su,Sv,Swに応じた電圧Vua,Vva,Vwaが印加され、電動モータ3から、操舵補助に必要なトルクが発生される。
マイクロコンピュータ6は、さらに、q軸電流指令値iqa *とq軸電流値iqとの偏差(q軸電流偏差δiq)に基づいて、異常判定処理を行う異常判定部33を備えている。この異常判定部33は、減算部27qが出力するq軸電流偏差δiqを監視しており、このq軸電流偏差δiqが所定の閾値Ith(たとえば、10アンペア)を超える状態が所定の異常判定時間Tth(たとえば、0.1秒)だけ継続したときに、異常が発生したと判定し、そのことを表す異常発生信号を生成する。この異常判定部33が異常発生信号を生成すると、マイクロコンピュータ6は、所定のフェールセーフ処理を行う。フェールセーフ処理は、たとえば、電動モータ3の駆動制御を中止する処理を含む。
図2は、dq軸電流指令値演算部26の動作を説明するための図であり、モータ回転角速度ωに応じたq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。これらの上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの間でq軸電流指令値iqa *が設定されることによって、電動モータ3のU相、V相およびW相に正弦波電圧を印加する正弦波駆動が可能になる。
弱め磁束制御をしないとき、すなわち、d軸電流指令値ida *=0とするときには、破線で示す特性L1+,L1-に従ってq軸電流指令値iqa *が制限される。特性L1+は、一方向(たとえば右回り方向)へのトルクを発生させるために正のq軸電流指令値iqa *を設定するときの上限値を示し、特性L1-は他方向(たとえば左回り方向)へのトルクを発生させるために負のq軸電流指令値iqa *を設定するときの下限値を示す。この場合、モータ回転角速度ωの絶対値が所定の第1閾値ω1(たとえば、ω1=800rpm)以下の低中速回転域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値はそれぞれ一定値α、−α(ただしαは正の定数)であり、モータ回転角速度ωの絶対値が前記第1閾値ω1を超える高速回転域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値は、モータ回転角速度ωの増加に伴ってリニアに減少し、q軸電流指令値iqa *の下限値は、モータ回転角速度ωの絶対値の増加に伴ってリニアに増加する(絶対値が減少する)特性とされる。つまり、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値の絶対値は、第1閾値ω1以下の中低速回転域において一定値に保持される一方で、第1閾値ω1を超える高速回転域においてモータ回転角速度ωの増加に応じてリニアに減少する特性とされる。
一方、弱め磁束制御をするときには、実線で示す特性L2+,L2-に従ってq軸電流指令値iqa *が制限される。特性L2+は、一方向(たとえば右回り方向)へのトルクを発生させるために正のq軸電流指令値iqa *を設定するときの上限値を示し、特性L2-は他方向(たとえば左回り方向)へのトルクを発生させるために負のq軸電流指令値iqa *を設定するときの下限値を示す。この場合、モータ回転角速度ωの絶対値が前記第1閾値ω1よりも大きな第2閾値ω2(>ω1。たとえば、ω2=900rpm)以下の回転速度域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値はそれぞれ一定値α,−αである。そして、モータ回転角速度ωの絶対値が前記第2閾値ω2を超える回転速度域においては、q軸電流指令値iqa *の上限値は、モータ回転角速度ωの増加に伴って非線形に減少し、q軸電流指令値iqa *の下限値は、モータ回転角速度ωの絶対値の増加に伴って非線形に増加(絶対値が減少)する特性とされる。つまり、q軸電流指令値iqa *の上限値および下限値の絶対値は、第2閾値ω2以下の回転速度域において一定値に保持される一方で、第2閾値ω2を超える回転速度域においてモータ回転角速度ωの増加に応じて非線形に減少する特性とされる。
q軸電流は、電動モータ3の出力トルクに対応する。したがって、弱め磁束制御を行わないときには、特性L1+,L1-から理解されるとおり、モータ回転角速度ωの絶対値が第1閾値ω1を超える高速回転域では、モータ回転角速度ωの絶対値の上昇に応じて、出力トルクが減少していき、或る回転速度ω10(たとえば、ω10=1500rpm)でトルクを発生することができなくなる。そこで、第1閾値ω1を超える高速回転域において、d軸電流指令値ida *を零以外の有意な値に設定して弱め磁束制御を行うことで、第1閾値ω1を超える高速回転域において、電動モータ3の出力を増加させることができる。
弱め磁束制御を行うときのq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimは下記(3)式で与えられ、その下限値iqa_downlimは下記(4)式で与えられる。ただし、上限値iqa_uplimは正のq軸電流指令値iqa *に対して適用され、下限値iqa_downlimは負のq軸電流指令値iqa *に対して適用される。
φは界磁による固定子鎖交磁束から計算されるdq座標上の磁束
ωはモータの電気角における回転角速度
Ldはd軸インダクタンス
Lqはq軸インダクタンス
Vlimは正弦波駆動が可能なdq座標での制限電圧
αは正の定数
である。
また、弱め磁束制御のためのd軸電流指令値ida *は、下記(5)式で与えられる。
図3は、弱め磁束制御を行うときのdq軸電流指令値演算部26の動作を説明するためのフローチャートである。dq軸電流指令値演算部26は、図2の特性L2+,L2-に従って、モータ回転角速度ωに対応する上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimを設定する(ステップS1)。さらに、dq軸電流指令値演算部26は、車速および操舵速度等に基づいてq軸電流指令値iqa *を設定する(ステップS2)。
次に、dq軸電流指令値演算部26は、q軸電流指令値iqa *と上限値iqa_uplimとを比較する(ステップS3)。もしも、q軸電流指令値iqa *が上限値iqa_uplimよりも大きければ(ステップS3:YES)、このq軸電流指令値iqa *に制限が加えられる。すなわち、その後の制御に用いるためのq軸電流指令値iqa *として上限値iqa_uplimが代入される(ステップS4)。
一方、q軸電流指令値iqa *が上限値iqa_uplim以下であれば(ステップS3:NO)、次に、dq軸電流指令値演算部26は、q軸電流指令値iqa *と下限値iqa_downlimとを比較する(ステップS5)。もしも、q軸電流指令値iqa *が下限値iqa_downlim未満であれば(ステップS5:YES)、このq軸電流指令値iqa *に制限が加えられる。すなわち、その後の制御に用いるためのq軸電流指令値iqa *として下限値iqa_downlimが代入される(ステップS6)。
ステップS2で設定されたq軸電流指令値iqa *が、上限値iqa_uplim以下(ステップS3:NO)で、かつ、下限値iqa_downlim以上(ステップS5:NO)の値であれば、そのq軸電流指令値iqa *がそのまま用いられる。
こうして、q軸電流指令値iqa *に必要に応じた制限を加えた後、dq軸電流指令値演算部26は、前記(5)式に従って、d軸電流指令値ida *を設定する。
こうして、q軸電流指令値iqa *に必要に応じた制限を加えた後、dq軸電流指令値演算部26は、前記(5)式に従って、d軸電流指令値ida *を設定する。
こうして求められたq軸電流指令値iqa *およびd軸電流指令値ida *に基づいて、減算部27d,27qにおいてd軸電流偏差δidおよびq軸電流偏差δiqがそれぞれ求められる。さらにそれらの電流偏差δid,δiqに基づいて、dq軸電圧指令値演算部29によって、d軸電圧指令値Vda *およびq軸電圧指令値Vqa *が求められる。また、q軸電流偏差δiqに基づいて、異常判定部33による異常判定処理が行われる。
図4は、正弦波駆動のためにd軸電圧指令値Vda *とq軸電圧指令値Vqa *とに課される条件を示す図である。電動モータ3の各相の電圧が正弦波となるようにするためには、各相電圧の振幅を電源電圧Ed(モータドライバ9に印加される電圧。バッテリ電圧で代用してもよい。)の1/2以下とする必要があり、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに関して、次の(6)式が成立する必要がある。
√(Vd 2+Vq 2)≦Ed√3/2√2=Vlim …… (6)
一方、定常状態でのq軸電圧Vqおよびd軸電圧Vdは、次のように、表される。
一方、定常状態でのq軸電圧Vqおよびd軸電圧Vdは、次のように、表される。
d軸電流の絶対値が大きくなるほどモータ効率が低下するので、前記(13)式の条件を満たす絶対値が最小の値をd軸電流指令値ida *とすればよい。
A>0は自明であり、前記(12)式よりC>0であるので、次の(14)式および(15)式のとおりとなる。
A>0は自明であり、前記(12)式よりC>0であるので、次の(14)式および(15)式のとおりとなる。
ここで、B2−AC≧0を満たさなければ、前記(14)式の値が虚数となり、この(14)式を満たすida *が存在しない。つまり、どのようなq軸電流指令値ida *を設定しても、図4の円で示される制限電圧範囲内に収まらない。そこで、B2−AC≧0をiqa *について解くと、下記(16)式が得られ、これが、制限電圧範囲内とするために、すなわち、正弦波駆動を行うために、q軸電流指令値iqa *に課される条件となる。
したがって、q軸電流指令値iqa *を予め前記(16)式の範囲に制限し(図3のステップS3〜S6)、その後に、前記(15)式によりd軸電流指令値ida *を求めればよい(図3のステップS7)。これにより、制限電圧範囲内で最大の出力を得ることができる。すなわち、高速回転域においても、振動を生じさせることなく、出力の増加を図ることができる。これにより、電動パワーステアリング装置の操舵フィーリングを向上することができる。
図5は、異常判定部33が所定の制御周期毎に繰り返し実行する処理を説明するためのフローチャートである。異常判定部33は、減算部27qによって求められるq軸電流偏差δiqと、予め定める閾値Ithとを比較する(ステップS11)。q軸電流偏差δiqが閾値Ith以上のときには(ステップS11:YES)、異常判定部33は、さらに、δiq≧Ithの状態の継続時間Tが予め定める異常判定時間Tth以上継続しているかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されるときは、q軸電流偏差δiqが過大な状態が長時間継続しているので、異常が発生していると判定して、異常発生信号を生成する(ステップS13)。δiq≧Ithの状態の継続時間Tが異常判定時間Tthに満たないときには、以後の処理を行わずにリターンする。
q軸電流偏差δiqが閾値Ith未満であれば(ステップS11:NO)、前記継続時間Tを零にリセットして(ステップS14)、リターンする。したがって、δiq≧Ithの状態が異常判定時間Tthだけ継続する前にδiq<Ithの状態となったときには、異常発生信号は生成されない。
q軸電流指令値iqa *は、前述のとおり、前記(16)式の範囲に制限されている。つまり、電動モータ3に生じる逆起電力のためにアシスト切れが生じる高速回転域においては、当該逆起電力の影響による電流低下の影響を予め加味して、q軸電流指令値iqa *が設定される。そのため、q軸電流指令値iqa *とq軸電流iqa(検出値)との差であるq軸電流偏差δiqは、正常時には、アシスト切れが生じる高速回転域においても、大きな値になることがない。その結果、高速回転域においても、異常判定部33による異常判定処理は信頼性を維持している。このように、q軸電流偏差δiqを用いた異常判定処理を高速回転域においても有効に用いることができるので、この異常判定処理の機能を高めることができる。
q軸電流指令値iqa *は、前述のとおり、前記(16)式の範囲に制限されている。つまり、電動モータ3に生じる逆起電力のためにアシスト切れが生じる高速回転域においては、当該逆起電力の影響による電流低下の影響を予め加味して、q軸電流指令値iqa *が設定される。そのため、q軸電流指令値iqa *とq軸電流iqa(検出値)との差であるq軸電流偏差δiqは、正常時には、アシスト切れが生じる高速回転域においても、大きな値になることがない。その結果、高速回転域においても、異常判定部33による異常判定処理は信頼性を維持している。このように、q軸電流偏差δiqを用いた異常判定処理を高速回転域においても有効に用いることができるので、この異常判定処理の機能を高めることができる。
図6は、dq軸電圧指令値演算部29の構成例を説明するためのブロック図である。dq軸電圧指令値演算部29は、d軸電圧指令値演算部51、およびq軸電圧指令値演算部52を有する。d軸電圧指令値演算部51は、d軸電流偏差δidを低減するように、d軸電流偏差δidのPI演算(以下「d軸PI演算」という。)等に基づいてd軸電圧指令値Vda *を求める。q軸電圧指令値演算部52は、q軸電流偏差δiqを低減するように、q軸電流偏差δiqのPI演算(以下「q軸PI演算」という。)等に基づいてq軸電圧指令値Vqa *を求める。
d軸電圧指令値演算部51は、d軸PI演算部51a、d軸非干渉化制御量演算部51b、およびd軸加算部51cを有する。
d軸PI演算部51aは、d軸電流偏差δidのPI演算によりd軸PI演算値Vdoを演算し、このd軸PI演算値Vdoをd軸加算部51cに出力する。
d軸非干渉化制御量演算部51bは、三相交流/dq座標変換部28により求められるq軸電流iqaと、角速度演算部25によって求められる回転角速度ω(rad/sec)とに基づき、d軸非干渉化制御量Ddを求める。
d軸PI演算部51aは、d軸電流偏差δidのPI演算によりd軸PI演算値Vdoを演算し、このd軸PI演算値Vdoをd軸加算部51cに出力する。
d軸非干渉化制御量演算部51bは、三相交流/dq座標変換部28により求められるq軸電流iqaと、角速度演算部25によって求められる回転角速度ω(rad/sec)とに基づき、d軸非干渉化制御量Ddを求める。
d軸加算部51cは、d軸PI演算値Vdoにd軸非干渉化制御量Ddを加算する。この加算結果が、d軸電圧指令値Vda *(=Vdo+Dd)となる。これにより、d軸PI演算値Vdoをd軸非干渉化制御量Ddにより補正して、d軸電圧指令値Vda *が求められている。
q軸電圧指令値演算部52は、q軸PI演算部52a、q軸非干渉化制御量演算部52b、およびq軸加算部52cを有する。
q軸電圧指令値演算部52は、q軸PI演算部52a、q軸非干渉化制御量演算部52b、およびq軸加算部52cを有する。
q軸PI演算部52aは、q軸電流偏差δiqのPI演算によりq軸PI演算値Vqoを演算し、このq軸PI演算値Vqoをq軸加算部52cに出力する。
q軸非干渉化制御量演算部52bは、三相交流/dq座標変換部28により求められるd軸電流idaと、角速度演算部25によって求められる回転角速度ω(rad/sec)とに基づき、q軸非干渉化制御量Dqを求める。
q軸非干渉化制御量演算部52bは、三相交流/dq座標変換部28により求められるd軸電流idaと、角速度演算部25によって求められる回転角速度ω(rad/sec)とに基づき、q軸非干渉化制御量Dqを求める。
q軸加算部52cは、q軸PI演算値Vqoにq軸非干渉化制御量Dqを加算する。この加算結果が、q軸電圧指令値Vqa *(=Vqo+Dq)となる。これにより、q軸PI演算値Vqoをq軸非干渉化制御量Dqにより補正して、q軸電圧指令値Vqa *が求められている。
電動モータ3の内部で生じる速度起電力は、d軸については、−ωLqiqaと表され、q軸については、ωLdida+ωΦと表される。したがって、これらを補償するd軸非干渉化制御量Ddおよびq軸非干渉化制御量Dqは次式(17)(18)のとおりとなる。これらがd軸非干渉化制御量演算部51bおよびq軸非干渉化制御量演算部52bによってそれぞれ演算される。
電動モータ3の内部で生じる速度起電力は、d軸については、−ωLqiqaと表され、q軸については、ωLdida+ωΦと表される。したがって、これらを補償するd軸非干渉化制御量Ddおよびq軸非干渉化制御量Dqは次式(17)(18)のとおりとなる。これらがd軸非干渉化制御量演算部51bおよびq軸非干渉化制御量演算部52bによってそれぞれ演算される。
Dd=−ωLqiqa …(17)
Dq=ωLdida+ωΦ …(18)
このように非干渉化制御を行うことによって、電動モータ3の応答性および追従性を向上することができる。そして、電動モータ3の応答性および追従性が向上されることによって、フィードバック制御による電流応答の遅れを抑制することができる。そのため、減算部27qで求められるq軸電流偏差δiqが、電流応答の遅れに起因して、大きな値となったり、大きな値の状態が長時間継続したりすることを抑制または防止できる。しかも、様々な状況において、一様な電流応答が得られる。これにより、異常判定部33での異常判定処理をより正確に行うことができる。また、電流応答の遅れが抑制されるので、異常判定時間Tthを短く設定することができる。これにより、q軸電流偏差δiqに基づく異常判定処理に要する時間を短縮できる。
Dq=ωLdida+ωΦ …(18)
このように非干渉化制御を行うことによって、電動モータ3の応答性および追従性を向上することができる。そして、電動モータ3の応答性および追従性が向上されることによって、フィードバック制御による電流応答の遅れを抑制することができる。そのため、減算部27qで求められるq軸電流偏差δiqが、電流応答の遅れに起因して、大きな値となったり、大きな値の状態が長時間継続したりすることを抑制または防止できる。しかも、様々な状況において、一様な電流応答が得られる。これにより、異常判定部33での異常判定処理をより正確に行うことができる。また、電流応答の遅れが抑制されるので、異常判定時間Tthを短く設定することができる。これにより、q軸電流偏差δiqに基づく異常判定処理に要する時間を短縮できる。
図7は、この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するための図であり、異常判定に関連する部分の構成が示されている。この図7において、前述の図1の各部に対応する部分には、同一の参照符号を付して示す。
この実施形態では、dq軸電流指令値演算部26が生成するq軸電流指令値iqa *に対して所定のフィルタ処理を行うフィルタ35と、このフィルタ35によって処理されたq軸電流指令値iqa *′とq軸電流値iqa(検出値)との偏差を演算するq軸電流偏差演算部36とが設けられ、このq軸電流偏差演算部36によって求められたq軸電流偏差δiq′が異常判定部33に与えられるようになっている。
この実施形態では、dq軸電流指令値演算部26が生成するq軸電流指令値iqa *に対して所定のフィルタ処理を行うフィルタ35と、このフィルタ35によって処理されたq軸電流指令値iqa *′とq軸電流値iqa(検出値)との偏差を演算するq軸電流偏差演算部36とが設けられ、このq軸電流偏差演算部36によって求められたq軸電流偏差δiq′が異常判定部33に与えられるようになっている。
フィルタ35は、q軸電流iqaに対応した電流応答特性(たとえば一次遅れ特性)のフィルタ処理をq軸電流指令値iqa *に対して行い、その処理後のq軸電流指令値iqa *′を出力する。したがって、フィルタ処理後のq軸電流指令値iqa *′は、フィルタ処理前のq軸電流指令値iqa *に対して、q軸電流iqaの応答特性に近似した応答特性を有することになる。したがって、q軸電流偏差演算部36が演算するq軸電流偏差δiq′は、q軸電流iqaの応答遅れの影響がほぼ排除された値となっている。
しかも、非干渉化制御が導入されていることにより、前述のとおり、電流応答特性は種々の状況でほぼ一様となっている。そのため、その一様な電流応答特性に整合するようにフィルタ35の処理を設定しておくことにより、正常時には、フィルタ処理後のq軸電流指令値iqa *′は、q軸電流iqにごく近似した値を有することになる。その結果、q軸電流偏差演算部36が求めるq軸電流偏差δiq′は、電流応答特性の影響をほぼ排除した値となる。このようなq軸電流偏差δiq′を用いて、図5に示す異常判定処理を行うことにより、より一層正確な異常判定処理が可能になる。
図8は、この発明の第3の実施形態を説明するための図であり、前述の図1または図7の構成におけるdq軸電流指令値演算部26が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。
この実施形態では、回転角速度ωの絶対値が所定の第3閾値ω3(>ω2。たとえば、ω3=3500rpm)を超える回転速度域においては、q軸電流指令値iqa *に対して、前記(16)式による制限よりもさらに大きな制限をかける特性L3+,L3-が適用される。すなわち、モータ回転角速度絶対値|ω|が第3閾値ω3を超える範囲では、前記(16)式の場合よりも上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの絶対値が小さく設定されるように、モータ回転角速度絶対値|ω|の増加に伴って、前記(16)式の場合よりも大きな変化率で上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの絶対値がリニアに減少する。そして、上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimは、それぞれ、第4閾値ω4(>ω3。たとえば、ω4=4000rpm),−ω4で零となっている。
この実施形態では、回転角速度ωの絶対値が所定の第3閾値ω3(>ω2。たとえば、ω3=3500rpm)を超える回転速度域においては、q軸電流指令値iqa *に対して、前記(16)式による制限よりもさらに大きな制限をかける特性L3+,L3-が適用される。すなわち、モータ回転角速度絶対値|ω|が第3閾値ω3を超える範囲では、前記(16)式の場合よりも上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの絶対値が小さく設定されるように、モータ回転角速度絶対値|ω|の増加に伴って、前記(16)式の場合よりも大きな変化率で上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimの絶対値がリニアに減少する。そして、上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimは、それぞれ、第4閾値ω4(>ω3。たとえば、ω4=4000rpm),−ω4で零となっている。
このような構成とすることによって、回転角速度ωが異常に大きな値となることを防止できるので、マイクロコンピュータ6が実行するソフトウェアの変数がオーバーフローしたりすることがなく、安定な制御が可能になる。
図9は、この発明の第4の実施形態を説明するための図であり、前述の図1または図7の構成におけるdq軸電流指令値演算部26が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。
図9は、この発明の第4の実施形態を説明するための図であり、前述の図1または図7の構成におけるdq軸電流指令値演算部26が設定するq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが示されている。
この実施形態では、図2の特性L2+の曲線に内接する線分(原点O側から接する線分)で構成された折れ線特性L2A+に従ってq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimが定められている。図示は省略するが、同様に、特性L2-の曲線に内接する線分(原点O側から接する線分)で構成された折れ線特性L2A-に従ってq軸電流指令値iqa *の下限値iqa_downlimが定められるようになっている。より具体的には、折れ線特性L2A+,L2A-を形成する複数の頂点40の値がマイクロコンピュータ6に備えられたメモリ(図示せず)に記憶されており、頂点40の間の線分41上の値は線形補間によって求められる。このような構成とすることにより、前記(16)式の制限範囲内にq軸電流指令値iqa *を制限するための演算負荷を軽減することができる。
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、弱め磁束制御を行うときのq軸電流指令値iqa *の上限値iqa_uplimは、図2の特性L1+と特性L2+(最上限値)との間の値に定めればよく、同じく弱め磁束制御を行うときのq軸電流指令値iqa *の下限値iqa_downlimは、図2の特性L1-と特性L2-(最下限値)との間の値に定めればよい。したがって、たとえば、図2に二点鎖線で示す特性L4+,L4-のように特性L2+,L2-のよりも絶対値が低めの上限値iqa_uplimおよび下限値iqa_downlimが設定される特性にしてもよい。このような特性L4+,L4-は、たとえば、モータドライバ9などの回路素子の特性のばらつき(製造ばらつき、温度変化、経年変化など)や、入力電圧(バッテリ電圧)の変動を考慮して、これらのばらつきや変動によらずに、特性L1+,L2+間に上限値iqa_uplimが収まり、特性L1-,L2-間に下限値iqa_downlimが収まるように定めてもよい。この場合、特性L4+,L4-は、下記(19)式および(20)式に示すように、前記(3)式および(4)式の右辺に定数K(0<K<1)を乗じて設定してもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
3…電動モータ、4…レゾルバ、5…モータ制御装置、6…マイクロコンピュータ,27q…減算部、36…q軸電流偏差演算部
Claims (4)
- モータ指示電流に基づいてモータを駆動して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、
前記モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
モータ指示電流と所定の上限値および下限値とを比較し、前記モータ指示電流が前記上限値を超える場合は当該上限値を、前記モータ指示電流が前記下限値未満の場合は当該下限値を、前記モータ指示電流が前記下限値以上前記上限値以下の場合は当該モータ指示電流を、それぞれ比較結果として出力する比較手段と、
この比較手段が出力する比較結果と前記モータ電流検出手段によって検出されるモータ電流との差に基づいて異常の有無を判定する異常判定手段とを含むモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置。 - 前記比較手段の比較結果が入力されるフィルタをさらに含み、
前記異常判定手段が、前記フィルタの出力と前記モータ電流検出手段によって検出されるモータ電流との差に基づいて異常の有無を判定するものである、請求項1または2記載の電動パワーステアリング装置。 - モータ指示電流に基づいて基本駆動値を演算する基本駆動値演算手段と、
この基本駆動値演算手段によって演算される基本駆動値に対して、非干渉化制御量による補正を加えてモータ駆動値を求める非干渉化制御手段と、
この非干渉化制御手段によって求められたモータ駆動値に基づいてモータを駆動する駆動手段とをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
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-
2007
- 2007-12-03 JP JP2007312559A patent/JP2009137323A/ja active Pending
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